説明

画像形成装置

【課題】 パターン濃度センサや補給手段用センサを用いない簡易な構成とするとともに、トナー補給手段の交換が適切に行われていないことを検知し、トナー補給手段が適切に交換されないために生じるトナーの劣化を防ぐことのできる画像形成装置を提供する。
【解決手段】 現像手段にトナーを補給する、交換可能なトナー補給手段と、前記現像手段中のトナー量を検知し、該トナー量に応じた出力電圧を出力する現像手段用センサを有する画像形成装置であって、前記トナー補給手段の交換直後に、該トナー補給手段から、該トナー補給手段を交換したことを前記現像手段用センサに検知させるための交換検知用トナーを、前記現像手段に供給することを特徴とする画像形成装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現像手段内のトナー量を調整するためのトナーセンサを有する画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
複写機やプリンタ等の画像形成装置としては、現像手段内にトナーが補給される構造を有する装置を挙げることができる。このような構造の画像形成装置は、画像を形成していくにつれトナーが消費されていくため、トナーが残り少なくなった場合、使用者又はメンテナンス作業者が着脱可能なトナー補給手段(トナーカートリッジ)を交換することにより、トナーを補給している。
また、このような画像形成装置において、現像手段中のトナー量を一定の範囲内にするために、現像手段内のトナー量を測定するトナーセンサ(以下、現像手段用センサと称す)を設けることも知られている。
【0003】
しかしながら、現像手段内の環境が変化することにより、未帯電トナーや逆帯電トナーが発生すると、画像の濃度が変化してしまう恐れがある。その場合、トナー量が一定でも画像の濃度が一定とならないという問題が生じる。
当該問題に鑑み、例えば、下記特許文献1には、現像手段用センサの他に、パターン濃度センサを設けた画像形成装置が開示されている。
このパターン濃度センサは、一定枚数以上の出力動作が終了する度に、基準パターンを作像し、その基準パターンのトナー像部分のトナー量(濃度)を検知するためのものである。パターン濃度センサを設けることにより、一定濃度の画像が形成できるよう、現像剤中のトナー量(濃度)を制御することができる。
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された画像形成装置では、パターン濃度センサを設けるために、構造が複雑となるといった問題を有する。
また、特許文献1に開示された画像形成装置は、パターン濃度センサにより、画像の濃度が一定となるようにトナー濃度を調整するため、トナー濃度が低い状態で画像が形成される場合がある。このような場合、トナーにストレスがかかり、トナーの劣化が生じやすい。
特に、トナー補給手段交換直前は現像剤内のトナー濃度が定常状態(トナー濃度が一定に保たれた状態)に比べて低下するので、トナーへのストレスが定常状態よりも大きくなり、トナーがさらに劣化しやすい状態となる。このような状態で新しいトナーを急激に補給すると、劣化トナーとの接触によって未帯電トナーや逆帯電トナーが定常状態よりも発生しやすくなる。それにより、本来白抜けとなるべき非画像部にトナーが付着して濃度が高くなる現象(以下、補給かぶりと称す)が発生する。
【0005】
また、特許文献1に記載の画像形成装置では、現像手段用センサが現像手段内にあるため、トナーを実際に補給し始めてから、トナーが補給されたことを検知するまで一定の時間を要する。具体的に説明すると、トナーを検知するまでの時間を短くし過ぎると、単なる初期トナー落ちの悪化等でトナー量が増えない場合でも、トナー切れと判断されてしまうため、トナーを検知するため一定の時間を設ける必要がある。そのため、トナー補給手段(トナーカートリッジ)を装着し忘れたり、しっかりと装着していなかったりして、トナー補給手段の交換が適切に行われなかった場合でも、トナーを検知するために要する一定の時間には画像の形成がなされる。このような場合、トナーの補給が十分に行われず、トナーの劣化が進行し、最終的にはトナー切れによって部分的に画像が形成できず、トナーの劣化が更に進む事態に陥るといった問題が生じる。また、トナーを検知するために要する一定の時間に画像形成を行わなかったとしても、現像手段を駆動させてトナーを撹拌搬送する必要があるため、現像手段内の現像剤にストレスがかかり、トナーが劣化することとなる。
さらに、利用者の中には、トナー補給手段内のトナーを使い切るために、古いトナー補給手段を振って、再度利用しようとする場合もある。このとき、古いトナー補給手段にトナーが残っていないと、トナー補給手段の装着不備の場合と同様に、トナー切れによるトナーの劣化が進むこととなる。
【0006】
また、現像手段内のトナー量を測定する現像手段用センサの他に、トナー補給手段内のトナー量を測定するためのトナーセンサ(以下、補給手段用センサと称す)を別途設けることにより、トナー補給手段内のトナーが少なくなったことを検知することもできる。これにより、交換した新しいトナー補給手段内にトナーが残っているか検知することができる。
しかしながら、補給手段用センサの取り付け位置やトナー補給手段の大きさ等により、トナーの有無を即座に判断できない場合もある。特に、少なくなったトナーが片寄って存在している場合等は、トナーの有無が判断しづらくなる。トナー補給手段内でトナーを攪拌すれば、トナーの片寄りは防ぐことができるが、トナーが攪拌により劣化してしまう。また、パターン濃度センサの場合と同様、現像手段用センサと別に補給手段用センサを設ける必要があるため、構造が複雑となるといった問題も有する。
【0007】
【特許文献1】特開平10−186830号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであって、パターン濃度センサや補給手段用センサを用いない簡易な構成とするとともに、トナー補給手段の交換が適切に行われていないことを検知し、トナー補給手段が適切に交換されないために生じるトナーの劣化を防ぐことのできる画像形成装置を提供することを解決課題とする。
さらに、トナー補給手段交換直後のトナーの劣化を抑制し、補給かぶりの発生を抑えることのできる画像形成装置を提供することも解決課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る発明は、現像手段にトナーを補給する、交換可能なトナー補給手段と、前記現像手段中のトナー量を検知し、該トナー量に応じた出力電圧を出力する現像手段用センサを有する画像形成装置であって、前記トナー補給手段の交換直後に、該トナー補給手段から、該トナー補給手段を交換したことを前記現像手段用センサに検知させるための交換検知用トナーを、前記現像手段に供給することを特徴とする画像形成装置に関する。
【0010】
請求項2に係る発明は、前記現像手段用センサから出力される出力電圧が、基準となるターゲット電圧と同程度となるように、前記トナー補給手段からのトナー補給量を制御する制御手段を有し、該制御手段が、前記トナー補給手段交換直後に、前記ターゲット電圧を前記トナー補給手段交換直前の前記出力電圧と同程度まで引き下げることを特徴とする請求項1記載の画像形成装置に関する。
【0011】
請求項3に係る発明は、前記交換検知用トナーの供給を現像手段用センサが検知した後、前記ターゲット電圧を段階的に定常状態まで引き上げることを特徴とする請求項2記載の画像形成装置に関する。
【0012】
請求項4に係る発明は、前記ターゲット電圧を定常状態まで引き上げることにより補給されるトナーの補給速度が、トナーの最大消費速度より大きいことを特徴とする請求項3記載の画像形成装置に関する。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る発明によれば、トナー補給手段の交換直後に、該トナー補給手段から、該トナー補給手段を交換したことを現像手段用センサに検知させるための交換検知用トナーを、現像手段に供給することにより、トナーが適切に補給される状態になるよう、適切にトナー補給手段が交換されているか確かめることができる。それにより、トナー補給手段が適切に交換されないために生じるトナーの劣化を防ぐことができる。
【0014】
請求項2に係る発明によれば、制御手段が、トナー補給手段交換直後に、ターゲット電圧をトナー補給手段交換直前の出力電圧と同程度まで引き下げることにより、トナー補給手段交換時に大量のトナーが補給されることを防ぐことができ、未帯電トナーや逆帯電トナーの発生によるトナーの劣化を防ぐことができる。それにより、パターン濃度センサを用いなくても、画像の濃度が変化することを抑えることができ、簡易な構成の画像形成装置を提供することができる。また、トナー補給手段交換時に大量のトナーが補給されることを防ぐことができるため、トナー補給手段交換時の補給かぶりも抑制することができる。
【0015】
請求項3に係る発明によれば、交換検知用トナーの供給を現像手段用センサが検知した後、ターゲット電圧を段階的に定常状態まで引き上げることにより、トナー補給手段交換直後だけでなく、トナー量が一定に保たれた状態となるまでの間も、未帯電トナーや逆帯電トナーの発生が抑制され、パターン濃度センサを設けなくても、より確実に画像の濃度を一定に維持することができる。また、補給かぶりの発生も、より確実に防ぐことができる。
【0016】
請求項4に係る発明によれば、ターゲット電圧を定常状態まで引き上げることにより補給されるトナーの補給速度が、トナーの最大消費速度より大きいことにより、現像剤中のトナー量が低下し、所謂、白抜け現象が生じることを防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明に係る画像形成装置について図面を参照しつつ説明する。
図1は本発明の実施例に係る画像形成装置100の概略構成図である。
画像形成装置100は感光体1の周辺に、帯電手段2、露光手段3、現像手段4、転写手段5、搬送手段6、定着手段7、クリーニング手段8、トナー補給手段(トナーカートリッジ)9を有している。
【0018】
まず、図1を用いて、画像形成装置100の全体構成について説明する。
感光体1はドラム状の像担持体としての役割を果たすものであり、矢印A方向に回転している。感光体1としては、a−Si感光体を挙げることができる。
帯電手段2は、感光体1表面を所定の電位に帯電されるためのものである。また、帯電手段2は、エピクロルヒドリンを主成分としたイオン系帯電ローラ2aを備えている。加えて、帯電手段2に、帯電ローラ表面に付着する紙粉等を除去するためのブラシクリーナーを設けることにより、帯電手段2の長寿命化を図ることができる。
【0019】
露光手段3は、実際に形成する画像情報に基づき、感光体1にレーザー光Lを照射し、静電潜像を形成するためのものである。より詳しく説明すると、帯電手段2により所定の電位に帯電された感光体1に、露光手段3から発生するレーザー光Lが照射されることにより、レーザー光が照射された部分は抵抗が低下する。そして、この抵抗が低下した部分が潜像画像となる。
【0020】
現像手段4は、内部にトナーを含む現像剤を有しており、感光体1表面に帯電したトナーを供給するためのものである。感光体1表面に形成された静電潜像には、トナーが静電的に付着するため、静電潜像に応じたトナー像が現像されることとなる。
なお、現像剤中のトナーは画像形成に伴い減少していくが、減少した分のトナーはトナー補給手段(トナーカートリッジ)9により補給される。
【0021】
転写手段5は、現像手段4により現像されたトナー像を転写紙上に転写させるものである。
搬送機構6は、トナー像が転写された転写紙を定着手段7へ搬送させるものであり、定着手段7によりトナー像が紙面に定着された後、機外に排出される。
また、クリーニング手段8は、定着処理後に感光体1上に残ったトナーを除去するためのものである。
【0022】
次いで、現像手段4についてより詳しく説明する。
図2は、図1における現像手段4及びトナー補給手段9周辺を拡大した図であり、図3は現像手段4の内部を示す平面図である。
現像手段4は、上述したように、内部にトナーを含む現像剤を有している。また、図2又は図3に示す如く、現像手段4には、攪拌器4a、現像手段センサ4b、マグローラ4cが設けられている。さらに、画像形成装置100にはトナーの補給量を制御するための制御手段(図示せず)も設けられている。なお、図2において、9aはトナー補給手段装着部を示し、トナー補給手段装着部9aにトナー補給手段9(図2には図示せず)が装着される。
【0023】
現像手段4中の現像剤としては、キャリアを必要とせず、トナーのみからなる一成分系現像剤、キャリアとトナーの二成分からなる二成分系現像剤等を挙げることができる。
【0024】
攪拌器4aは、現像手段4中の現像剤を攪拌するためのものである。攪拌器4aを有することにより、現像剤の濃度が略均一となり、形成された画像も一定の濃度となる。
【0025】
現像手段用センサ4bは現像手段内のトナー量を検知するためのものである。具体的には、一成分系現像剤の場合はトナー量を直接的に検知し、二成分系現像剤の場合は、現像剤中のトナー濃度を検知することで、トナー量を検知する。
さらに、現像手段センサ4bは検知したトナー量に対応する出力電圧を出力する。
また、現像剤は攪拌器4aで攪拌されているため、全体の濃度が略一定となり、現像手段用センサ4bによる出力電圧も安定する。
現像手段用センサ4bとしては、透磁率センサ等のキャリアの電磁気特性を利用したもの、現像剤の流動性を利用したもの、現像量変化を検知するものなどを挙げることができる。
また、図4は現像手段用センサの一例における、トナー量(トナー重量)と出力電圧の関係を示す図であり、横軸がトナー量(g)、縦軸が出力電圧(V)を示す。図4で示す如く、トナー量(トナー重量)が上昇することにより、出力電圧も高くなる。
【0026】
制御手段は、現像手段4内のトナー量が適当な範囲になるよう、新しいトナーの補給量を調整する役割を果たすものである。具体的には、制御手段のメモリ内に、予め所望のトナー量に対応するターゲット電圧を記憶しておき、ターゲット電圧と現像手段4に取り付けられた現像手段用センサ4bからの出力電圧とを比較する。そして、現像手段用センサ4bの出力電圧が、ターゲット電圧と同程度になるよう、トナーの補給動作を制御する。具体的には、出力電圧がターゲット電圧より低ければ、トナー補給手段9内の搬送部材を回転させてトナーを補給し、出力電圧がターゲット電圧より高ければ、トナー補給手段9内の搬送部材の回転を停止させ、トナーの補給を中止する。
【0027】
また、制御手段は、トナー補給手段9の交換時には、特有の動作をする。以下、トナー補給手段9の交換時の動作について説明する。
図5はトナー補給手段9を交換したときの動作のフローを示す図である。
【0028】
使用者やメンテナンス作業者は、トナー補給手段9を交換する必要が生じた場合、古いトナー補給手段9を取り外す。このとき、制御手段は、トナー補給手段9交換直前の出力電圧(以下、Vbとする)を記憶しておくよう設定する(ステップa)。トナー補給手段9交換時は現像手段4内のトナー量が定常状態に比して低下しており、出力電圧Vbも定常状態の出力電圧よりも低い値となっている。
そして、使用者やメンテナンス作業者は、古いトナー補給手段の代わりに新しいトナー補給手段を装着することで、トナー補給手段9の交換を行う(ステップb)。
なお、トナー補給手段9の交換時期としては、現像手段用センサ4bによって検知される出力電圧が所定の値より小さくなったときに、トナー補給手段9の交換時期であることをランプ等で報知するようにすることもできる。
【0029】
トナー補給手段9の交換直後、制御手段は、ターゲット電圧を一旦Vbに修正する(ステップc)。これにより、ターゲット電圧と実際の出力電圧の差が小さいものとなり、新しいトナー補給手段9に交換したとしても、トナーが殆ど補給されない状態となる。そのため、トナー補給手段9交換時に大量のトナーが補給されて、トナーの劣化が進み、補給かぶりが生じることを防ぐことができる。
【0030】
ターゲット電圧をVbとした後、トナー補給手段9が交換したことを報知するための一定量のトナー(以下、交換検知用トナーと称す)を供給する(ステップd)。
供給された交換検知用トナーは現像手段用センサ4bにより検知される。これにより、トナー補給手段9が適切に交換され、トナーが補給できる状態にあることを確かめることができる。つまり、仮にトナー補給手段9が完全に装着されていなかったり、トナーの入っていないトナー補給手段9(古いトナー補給手段)が装着されたりした場合等は、交換検知用トナーが供給されないため、トナーが補給できない状態であることがわかる。
また、トナーの入っていないトナー補給手段9を装着した場合、そのことを検知することができるので、現像手段用センサがトナー補給手段9内のトナー量を測定するための補給手段用センサ4bの役目も果たすこととなる。そのため、補給手段用センサを設ける必要がなく、簡易な構造の画像形成装置とすることができる。
【0031】
また、交換検知用トナーが検出できない場合は、次工程に移行しない。そのため、トナーが補給されない状態で画像形成が続いて、トナーが劣化し、所謂、白抜け現象が生じることを防ぐことができる。
このとき、交換検知用トナーの供給量は、現像手段用センサ4bのノイズにより出力される電圧(ノイズレベル)より高い電位差を生じさせる量であることが好ましい。これにより、ノイズが発生したとしても、交換検知用トナーが供給されたと誤認することがないからである。また、交換検知用トナーの供給量は、補給かぶりを抑制する観点から、補給かぶりが発生しない程度の量に設定することが好ましい。
なお、交換検知用トナーの供給を認識しない場合は、トナー補給手段9の交換を報知するランプを点灯し続ける等して、トナー補給手段9が適切に交換されていないことを使用者に報知すればよい。
【0032】
また、トナー補給手段9交換時にターゲット電圧をVbにまで引き下げることができるのは、交換検知用トナーを供給しているためである。つまり、仮に交換検知用トナーの供給を行わない場合、トナー補給手段9の交換が完了したことが分からないため、ターゲット電圧をVbより高く設定する必要がある。このように設定した場合、大量のトナーが補給されて、補給かぶりが発生する可能性が高くなる。
【0033】
交換検知用トナーが供給されたことを現像手段用センサで検知した後、実際にトナーの補給を開始する(ステップe,f)。
この時、ターゲット電圧は、トナー補給手段9交換直前の出力電圧Vbと同程度であるため、この状態では、トナーが殆ど補給されない。そこで、ターゲット電圧を段階的に引き上げることで、トナーを補給する(ステップe)。段階的に引き上げることにより、トナーの補給量を調整することができ、大量のトナーが補給されることがなく、新しいトナーと古いトナーの接触により未帯電トナーや逆帯電トナーが発生することを防ぐことができる。それにより、補給かぶりの発生を防ぐことができる。
さらに、未帯電トナーや逆帯電トナーの発生が抑制されるため、パターン濃度センサを設けなくても、画像の濃度を一定に維持することができる。
また、ターゲット電圧の引き上げは、ターゲット電圧の引き上げにより補給されるトナーの補給速度が、トナーの最大消費速度を下回らないように設定する。最大消費速度を下回ると、トナー量が低下し、所謂、白抜け現象が生じる可能性があるからである。
なお、トナーの最大消費速度は、例えば、用紙一面を塗りつぶした所謂ベタ状態の画像を形成するときの消費速度としてもよいし、実際の印字量に対応した最大消費速度を予め計測しておき、実際の印字量に応じて最大消費速度を設定してもよい。
【0034】
ターゲット電圧を段階的に引き上げつつトナーを補給していき、最終的にはターゲット電圧を定常状態の電圧(定常電圧)まで引き上げる(ステップf)。ターゲット電圧を定常電圧とすることで、トナー量を一定に(定常状態に)維持することができる。
【0035】
なお、上記説明では、ターゲット電圧を用いてトナーの補給を制御しているが、トナーの補給をターゲット電圧を用いずに行う画像形成装置も本発明には含まれる。このような画像形成装置でも、交換検知用トナーを補給することによる、トナー補給手段9の交換が適切に行われているか確認できるといった効果を奏するため、従来の画像形成装置より優れている。また、この場合、出力電圧は、トナーの有無を報知する役目を果たせばよいため、図4のようにトナー量の増加に伴って出力電圧を高くする必要はなく、トナーが現像手段内に一定量以上あるか否かを検知して、一定量以上であれば一定の出力電圧を出力させるようにすればよい。
【0036】
(試験例)
以下、本発明の試験例を示すことにより、本発明の効果をより明確なものとする。
【0037】
まず、本試験例を行うための画像形成装置(図1参照)について説明する。
本試験例における画像形成装置としては、一成分ジャンピング現像法を採用した装置を用いた。また、感光体1としてa−Si感光体を用い、周速307mm/sで回転させた。また、帯電手段2はエピクロルヒドリンを主成分としたイオン系帯電ローラによって構成した。また、長寿命化のためにブラシクリーナーを設けた。さらに、直流(DC)に交流(AC)を重畳したACバイアスを印加することで帯電手段2を帯電させる構成とした。また、トナーはスチレンアクリル系の粉砕トナーを用い、感光体1の表面研磨剤としての酸化チタンや帯電制御剤としての複数のシリカを外添した。加えて、現像手段用センサとしては透磁率センサを用いた。
転写手段5としてはローラ転写方式を採用した。当該ローラの材質はEPDMを用い、電気抵抗を10〜107.5Ωとした。定着手段7としては熱ローラ定着方式を採用し、熱ローラは0.7mm厚のアルミニウムシリンダに30μmのPFA(テトラフルオロエチレン−パーフルオロプロピルビニルエーテル共重合体)コートを施し、加圧ローラはPFAチューブを被覆したシリコンゴムローラで構成した。また、通紙域中央に非接触サーミスタ、非通紙域に接触サーミスタを設け、温度制御も行った。クリーニング手段8としては、ブレードクリーニング方式を採用した。
なお、定常状態の現像剤中のトナー重量を250gとし、トナー補給手段9交換時期のトナー重量を100gとした。
【0038】
上記画像形成装置を用い、試験例1として、トナー補給手段9交換時にターゲット電圧を引き下げて、補給かぶりが生じやすい条件である、高温環境(室温28℃)、低濃度パターン(印字率1%)で間欠耐久評価を行った。また、比較例1として、現像手段用センサのターゲット電圧を下げずに、試験例1と同様の高温環境、低濃度パターンで間欠耐久評価を行った。
【0039】
この結果、試験例1では、カートリッジ交換直後の補給かぶりが発生せず、安定した画像濃度で30万枚の耐久性が確認できた。
しかしながら、比較例1では、1回目のトナー補給手段9交換直後50枚程度で新しいトナーの周回に対応して端部から補給かぶりが発生し、最終的に全面かぶりとなった。
【0040】
上記結果からも、本発明に係る画像形成装置は、トナー補給手段9交換後のトナーの劣化を防ぎ、補給かぶりを抑制することができることがわかる。
【0041】
また、図6は本発明に係る試験例1と比較例1の画像形成装置について、トナー補給手段9を交換した直後からの画像形成装置の回転時間と出力電圧の関係について示した図である。なお、実線61が試験例1を示し、破線62が比較例1を示す。また、横軸が回転時間(分)を示し、縦軸が出力電圧(V)を示す。
図6の破線62で示すように、比較例1は、トナー補給手段9交換直後から出力電圧が急激に上がり、20分程度で定常電圧となっている。つまり、交換直後に大量のトナーが補給されていることがわかり、このような場合、補給かぶりが生じる。
一方、図5の実線61で示すように、本発明の試験例1は、100分経過後も出力電圧が0.8V程度に抑えられている。つまり、トナーが短時間で大量に補給されていないことがわかり、このような場合、補給かぶりが発生しない。
つまり、図6からも本発明の画像形成装置が補給かぶりの発生を良好に抑えられることがわかる。
【0042】
また、試験例2として、試験例1と同様の画像形成装置を用いて、トナー補給手段9の装着忘れ、又は誤装着を発生させた状態で、画像形成を行った。また、比較例2として、トナー補給手段9交換時に、現像手段用センサのターゲット電圧を下げるが、交換検知用トナーは供給・検知を行わずに、トナー補給手段9の装着忘れ、又は誤装着を発生させた状態で、画像形成を行った。
【0043】
その結果、試験例2ではトナー補給手段9の装着忘れがあった場合、その後のトナー補給は行われず、画像形成もされなかった。しかしながら、比較例2の場合、トナーが補給されないにもかかわらず、画像が形成されることとなった。そのため、現像手段用センサの出力電圧、つまり、現像剤内のトナー量がより低下し、画像の一部が消える白抜け現象が発生した。
【0044】
これにより、本発明の画像形成装置は、交換検知用トナーを供給することにより、トナー補給手段9の装着忘れ、又は誤装着を効果的に防ぐことができるとわかる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明に係る画像形成装置は、複写機やプリンタ等に好適に利用可能なものである。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の画像形成装置の概略構成図である。
【図2】図1における現像手段及びトナー補給手段周辺を拡大した図である。
【図3】現像手段の内部を示す上面図である。
【図4】ある現像手段用センサにおける、トナー重量(トナー濃度に比例)と出力電圧の関係を示す図である。
【図5】トナー補給手段を交換したときの動作のフローを示す図である。
【図6】トナー補給手段を交換した直後からの画像形成装置の回転時間と出力電圧の関係について示した図である。
【符号の説明】
【0047】
4b 現像手段用センサ
9 トナー補給手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
現像手段にトナーを補給する、交換可能なトナー補給手段と、
前記現像手段中のトナー量を検知し、該トナー量に応じた出力電圧を出力する現像手段用センサを有する画像形成装置であって、
前記トナー補給手段の交換直後に、該トナー補給手段から、該トナー補給手段を交換したことを前記現像手段用センサに検知させるための交換検知用トナーを、前記現像手段に供給することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記現像手段用センサから出力される出力電圧が、基準となるターゲット電圧と同程度となるように、前記トナー補給手段からのトナー補給量を制御する制御手段を有し、
該制御手段が、前記トナー補給手段交換直後に、前記ターゲット電圧を前記トナー補給手段交換直前の前記出力電圧と同程度まで引き下げることを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記交換検知用トナーの供給を前記現像手段用センサが検知した後、前記ターゲット電圧を段階的に定常状態まで引き上げることを特徴とする請求項2記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記ターゲット電圧を定常状態まで引き上げることにより補給されるトナーの補給速度が、トナーの最大消費速度より大きいことを特徴とする請求項3記載の画像形成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2008−209795(P2008−209795A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−48063(P2007−48063)
【出願日】平成19年2月27日(2007.2.27)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】