説明

画像形成装置

【課題】 体積平均粒子径が5μm〜7μmの小粒径トナーを用いる画像形成装置であっても、高転写効率および良好なクリーニング性が得られ、高い画質の画像を形成することができるとともに、中間転写ベルトの耐久性をも良好な画像形成装置を提供する。
【解決手段】 感光ドラム11の表面に現像装置14によってトナー像を形成し、このトナー像を転写ベルト25および転写ローラ28を介して記録媒体に転写した後、未定着トナー像を定着ローラ31および加圧ローラ32によって、記録媒体に定着させる画像形成装置において、転写ベルト25の膜厚を40μm〜70μmとし、クリーニングブレード29の線圧を1.8gf/mm〜3.0gf/mmとし、体積平均粒子径が5μm〜7μmでかつ形状係数SF−2が135以上143未満であるトナーを用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
潜像を顕像化するトナーは、種々の画像形成プロセスに用いられており、その一例として電子写真方式の画像形成プロセスに用いられることが知られている。
【0003】
電子写真法に基づいて画像を形成する電子写真方式の画像形成装置は、良好な画質品位を有する画像を容易に形成できることから、複写機、プリンタ、ファクシミリ装置、複合機などに広く利用されている。
【0004】
電子写真方式の画像形成装置は、たとえば感光体と、帯電手段と、露光手段と、現像手段と、転写手段と、定着手段と、徐電手段と、クリーニング手段とを含む。画像形成装置は、感光体およびこれらの手段を用いて、帯電工程、露光工程、現像工程、転写工程、定着工程、クリーニング工程および徐電工程を行い、記録媒体に画像を形成する装置である。
【0005】
近年、電子写真方式におけるカラー化の技術が急速に発展し、フルカラー画像形成装置が開発され、市場に提供されている。一般に、フルカラー画像形成装置における色の再現には、減法混色の3原色であるイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の3色、あるいは、この3色に黒色(K)を加えた4色のトナーが用いられる。色の再現の手順としては、C、M、YおよびKの各色に対して、画像形成工程のうち、帯電、露光、現像および転写までの工程を繰り返し、記録媒体上に複数色のトナーから成るトナー像を重ねてフルカラー画像を形成する。そして、最後の定着工程において、重ねられたトナー像を溶融して記録媒体上に定着する。このような手順によって、重ねられたトナー像は溶融されることによって混合されるので、減法混色の原理に従って色が再現される。
【0006】
フルカラー画像形成における転写工程では、中間転写ベルト上に各色のトナーを一次転写した後、中間転写ベルトから記録媒体に二次転写する、いわゆる中間転写方式が多用されている。
【0007】
このような中間転写方式の画像形成装置は、高画質を実現するため、感光体に担持されたトナー像を記録媒体に転写するまでの一次転写および二次転写の各工程でトナー像を正確に記録媒体に転写することが望まれる。
【0008】
しかしながら、高画質化を図るために、トナーを小粒径化すると、高精細画像の形成には有用であるが、微粉トナーを多く含むために転写効率が低く、充分な高画質画像が得られないという問題を有する。
【0009】
転写効率を向上するためには、中間転写ベルトの薄膜化が有効であり、中間転写ベルトを薄膜化すると、転写効率が向上し、ベタムラのない画像が形成されるが、薄膜化された中間転写ベルトを破損することなく、小粒径化されたトナーを充分にクリーニングすることが困難であるという問題が生じる。
【0010】
このような問題を解決するために、特許文献1には、トナーの形状係数SF−2の値が100以上140以下であり、中間転写ベルトの肉厚が40μm以上300μm以下であり、中間転写ベルトの表面粗さRzの値Aとトナーの平均粒径Dtとが、A<Dt/2を満たすことによって、繰り返し良好なクリーニングを行うことができ、高転写効率の電子写真装置が開示されている。
【0011】
【特許文献1】特開2003−156949号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、特許文献1に開示の電子写真装置は、中間転写ベルトの膜厚を70μmよりも厚くすると、粒径が5μm〜7μm程度まで小粒径化されたトナー(すなわち、微粉を多く含むようなトナー)を高転写効率で転写させることができず、画像にベタムラが生じる。また、中間転写ベルトのクリーニング手段として、中間転写ベルト上のトナーに一次転写時のトナーの極性と逆の極性の電荷を付与するためのローラ形状の電荷付与手段を採用することが必須であり、これでは粒径が5μm〜7μm程度まで小粒径化されたトナーや粒子表面の凹凸が少ないトナー(すなわち、トナーの形状係数SF−2の値が小さいトナー)を充分にクリーニングすることは難しい。
【0013】
したがって本発明の目的は、体積平均粒子径が5μm〜7μmの小粒径トナーを用いる画像形成装置であっても、高転写効率および良好なクリーニング性が得られ、高い画質の画像を形成することができるとともに、中間転写ベルトの耐久性をも良好な画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、感光体と、感光体表面にトナー像を形成するトナー像形成手段と、感光体表面のトナー像を転写ベルト上に転写する一次転写手段と、転写ベルトをクリーニングするクリーニングブレードと、転写ベルト上のトナー像を記録媒体に転写する二次転写手段と、記録媒体に転写される未定着トナー像を記録媒体に定着させる定着手段とを含む画像形成装置において、
転写ベルトの膜厚が40μm〜70μmであり、
クリーニングブレードの線圧が1.8gf/mm〜3.0gf/mmであり、
体積平均粒子径が5μm〜7μmであり、かつ形状係数SF−2が135以上143未満であるトナーを用いることを特徴とする画像形成装置である。
【0015】
また本発明は、前記転写ベルトは、ポリイミド系樹脂から成ることを特徴とする。
また本発明は、トナー表面の離型剤の露出量が、トナー全量の2.5重量%以下のトナーを用いることを特徴とする。
【0016】
また本発明は、粉砕トナーの全部または一部を球形化処理したトナーを用いることを特徴とする。
【0017】
また本発明は、少なくとも、結着樹脂、着色剤および離型剤を含む樹脂組成物を粉砕した、第1粉砕物と、第1粉砕物より体積平均粒子径の大きい第2粉砕物とを作製する粉砕工程と、
第1粉砕物を分級して第1トナー粒子群を作製する第1分級工程と、
第2粉砕物を球形化処理後に分級して、第1トナー粒子群より体積平均粒子径の大きい第2トナー粒子群を作製する第2球形化・分級工程、もしくは、第2粉砕物を分級して、第1トナー粒子群より体積平均粒子径の大きい第2トナー粒子群を作製後に球形化処理する第2分級・球形化工程と、
第1トナー粒子群と第2トナー粒子群とを混合する混合工程とを経て製造されたトナーを用いることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、体積平均粒子径が5〜7μmの小粒径トナーは、高精細画像の形成には有用である一方で、微粉トナーを多く含むため転写効率が低く、充分な高画質画像が得られないという欠点を有するが転写効率向上のために転写ベルトを40μm〜70μmまで薄膜化すると、ベタムラのない画像が形成される。また、クリーニングブレードによって3.0gf/mmよりも大きい線圧で転写ベルトのクリーニングを行うと、転写ベルトが破れやすくなるため、クリーニングブレードの線圧を1.8gf/mm未満まで小さくし、ベルト破れを防止する。
【0019】
さらに、ベルトを充分にクリーニングするために、トナーの形状係数SF−2を135以上143未満に制御することによって、高画質な画像が形成されるとともに、転写ベルトの耐久性も良好な画像形成装置を実現することができる。トナーの形状係数SF−2が135未満のものを使えば転写性が向上し、ガサツキムラのない画像が形成されるが、ベルトクリーニングブレードの線圧を強くする必要があり、ベルトが破れてしまう。
【0020】
また、トナーの形状係数SF−2が143以上のものを使うと、トナーと転写ベルトとの接触面積が大きくなり、転写性が低下し、ベタムラが発生し易くなる。そこで、本発明では、転写ベルトの膜厚を40μm〜70μmとし、クリーニングブレードの線圧を1.8gf/mm〜3.0gf/mmとし、トナーの形状係数SF−2を135以上143未満とすることによって、高転写効率および良好なクリーニング性が得られ、高画質な画像が形成されるとともに、転写ベルトの耐久性も良好な画像形成装置とすることができる。
【0021】
また本発明によれば、転写ベルトがポリイミド系樹脂から成ることによって、ポリカーボネート樹脂を用いる場合に比べて引張弾性率が高く、伸び難いため、転写ベルトの機械的耐久性を向上することができる。
【0022】
さらに本発明によれば、トナー表面の離型剤露出量が多すぎると、トナーと転写ベルトとの付着力が増大し、転写性が悪くなり、ガサツキ、ムラのある画像となるため、トナー全量の2.5重量%以下にすることで適切化が図られる。
【0023】
さらに本発明によれば、前記トナーを用いることによって、クリーニング性と高画質の両立が可能な画像形成装置を実現することができる。
【0024】
さらに本発明によれば、体積平均粒子径の小さいトナー粒子群を球形化処理すると転写ベルト上に残留したトナーのクリーニングが難しくなるため、比較的表面の凹凸が激しい体積平均粒子径の大きいトナー粒子郡のみを球形化処理することによって、クリーニング性と高画質の両立が可能な画像形成装置を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
図1は、本発明の実施の一形態である画像形成装置100の構成を模式的に示す断面図である。画像形成装置100は、複写機能、プリンタ機能およびファクシミリ機能を併せ持つ複合機であり、伝達される画像情報に応じて、記録媒体にフルカラーまたはモノクロの画像を形成する。すなわち、画像形成装置100においては、コピアモード(複写モード)、プリンタモードおよびファクシミリモードという3種の印刷モードを有しており、図示しない操作部からの操作入力、パーソナルコンピュータ、携帯端末装置、情報記録記憶媒体またはメモリ装置を用いた外部機器からの印刷ジョブの受信などに応じて、図示しない制御部によって、印刷モードが選択される。
【0026】
画像形成装置100は、像担持体である感光体ドラム11と、画像形成部2と、転写手段3と、定着手段4と、記録媒体供給手段5と、排出手段6とを含む。画像形成部2を構成する各部材および転写手段3に含まれる一部の部材は、カラー画像情報に含まれるブラック(b)、シアン(c)、マゼンタ(m)およびイエロー(y)の各色の画像情報に対応するために、それぞれ4つずつ設けられる。ここでは、各色に応じて4つずつ設けられる各部材は、同一の数字に各色を表すアルファベット「b」,「c」,「m」,「y」から成る添え字を付して区別し、総称する場合は添え字「b」,「c」,「m」,「y」は省略して数字のみで表す。
【0027】
画像形成部2は、帯電手段12と、露光ユニット13と、現像装置14と、クリーニングユニット15とを含む。帯電手段12および露光ユニット13は、潜像形成手段として機能する。帯電手段12、現像装置14およびクリーニングユニット15は、感光体ドラム11まわりに、この順序で配置される。帯電手段12は、現像装置14およびクリーニングユニット15よりも鉛直方向下方に配置される。
【0028】
感光体ドラム11は、図示しない回転駆動手段によって、軸線まわりに回転駆動可能に設けられ、その表面部に静電潜像が形成されるローラ状部材から成る。感光体ドラム11の回転駆動手段は、中央演算処理装置(Central Processing Unit;略称CPU)によって実現される制御手段によって制御される。感光体ドラム11は、図示しない導電性基体と、導電性基体の表面に形成される図示しない感光層とを含んで構成される。前記導電性基体は、種々の形状を採ることができ、たとえば、円筒状、円柱状、薄膜シート状などが挙げられる。これらの中でも円筒状が好ましい。導電性基体は導電性材料によって形成される。
【0029】
前記導電性材料としては、この分野で常用されるものを使用することができ、たとえば、アルミニウム、銅、真鍮、亜鉛、ニッケル、ステンレス鋼、クロム、モリブデン、バナジウム、インジウム、チタン、金、白金などの金属、これらの2種以上の合金、合成樹脂フィルム、金属フィルムまたは紙などのフィルム状基体にアルミニウム、アルミニウム合金、酸化錫、金および酸化インジウムなどの1種または2種以上から成る導電性層が形成された導電性フィルム、ならびに導電性粒子および/または導電性ポリマーを含有する樹脂組成物などが挙げられる。導電性フィルムに用いられるフィルム状基体としては、合成樹脂フィルムが好ましく、ポリエステルフィルムが特に好ましい。また、導電性フィルムにおける導電性層の形成方法としては、蒸着、塗布などが好ましい。
【0030】
前記感光層は、たとえば、電荷発生物質を含む電荷発生層と、電荷輸送物質を含む電荷輸送層とを積層することによって形成される。その際、導電性基体と電荷発生層との間または導電性基体と電荷輸送層との間には、下引き層を設けることが好ましい。下引き層を設けることによって、導電性基体の表面に存在する傷および凹凸を被覆して、感光層表面を平滑化することができ、また、繰り返し使用時における感光層の帯電性の劣化を防止し、低温および/または低湿環境下において感光層の帯電特性を向上させるといった利点が得られる。また最上層に感光体表面保護層を設けた耐久性の大きい3層構造の積層感光体であってもよい。
【0031】
前記電荷発生層は、光照射によって電荷を発生する電荷発生物質を主成分とし、必要に応じて公知の結着樹脂、可塑剤、増感剤などを含有する。電荷発生物質としては、この分野で常用されるものを使用でき、たとえば、ペリレンイミド、ペリレン酸無水物などのペリレン系顔料、キナクリドン、アントラキノンなどの多環キノン系顔料、金属および無金属フタロシアニン、ハロゲン化無金属フタロシアニンなどのフタロシアニン系顔料、スクエアリウム色素、アズレニウム色素、チアピリリウム色素、ならびにカルバゾール骨格、スチリルスチルベン骨格、トリフェニルアミン骨格、ジベンゾチオフェン骨格、オキサジアゾール骨格、フルオレノン骨格、ビススチルベン骨格、ジスチリルオキサジアゾール骨格またはジスチリルカルバゾール骨格を有するアゾ顔料などが挙げられる。
【0032】
これらの中でも、無金属フタロシアニン顔料、オキソチタニルフタロシアニン顔料、フローレン環および/またはフルオレノン環を含有するビスアゾ顔料、芳香族アミンからなるビスアゾ顔料、トリスアゾ顔料などは高い電荷発生能を有し、高感度の感光層を得るのに適する。電荷発生物質は1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。
【0033】
電荷発生物質の含有量は特に制限はないけれども、電荷発生層中の結着樹脂100重量部に対して好ましくは5重量部以上500重量部以下、さらに好ましくは10重量部以上200重量部以下に選ばれる。電荷発生層用の結着樹脂としては、この分野で常用されるものを使用でき、たとえば、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、シリコン樹脂、ポリウレタン、アクリル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、ポリカーボネート、フェノキシ樹脂、ポリビニルブチラール、ポリアリレート、ポリアミドおよびポリエステルなどが挙げられる。結着樹脂は1種を単独で使用することができ、または必要に応じて2種以上を併用することができる。
【0034】
前記電荷発生層は、電荷発生物質、結着樹脂および必要に応じて可塑剤、増感剤などのそれぞれ適量を、これらの成分を溶解または分散し得る適切な有機溶媒に溶解または分散させて電荷発生層塗液を調製し、この電荷発生層塗液を導電性基体表面に塗布し、導電性基体表面を乾燥させることによって形成できる。このようにして得られる電荷発生層の膜厚は特に制限されないが、好ましくは0.05μm以上5μm以下、さらに好ましくは0.1μm以上2.5μm以下に選ばれる。
【0035】
電荷発生層の上に積層される電荷輸送層は、電荷発生物質から発生する電荷を受け入れて輸送する能力を有する電荷輸送物質および電荷輸送層用の結着樹脂を必須成分とし、必要に応じて公知の酸化防止剤、可塑剤、増感剤、潤滑剤などを含有する。
【0036】
電荷輸送物質としては、この分野で常用されるものを使用でき、たとえば、ポリ−N−ビニルカルバゾールおよびその誘導体、ポリ−γ−カルバゾリルエチルグルタメートおよびその誘導体、ピレン−ホルムアルデヒド縮合物およびその誘導体、ポリビニルピレン、ポリビニルフェナントレン、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、9−(p−ジエチルアミノスチリル)アントラセン、1,1−ビス(4−ジベンジルアミノフェニル)プロパン、スチリルアントラセン、スチリルピラゾリン、ピラゾリン誘導体、フェニルヒドラゾン類、ヒドラゾン誘導体、トリフェニルアミン系化合物、テトラフェニルジアミン系化合物、トリフェニルメタン系化合物、スチルベン系化合物、3−メチル−2−ベンゾチアゾリン環を有するアジン化合物などの電子供与性物質、フルオレノン誘導体、ジベンゾチオフェン誘導体、インデノチオフェン誘導体、フェナンスレンキノン誘導体、インデノピリジン誘導体、チオキサントン誘導体、ベンゾ[c]シンノリン誘導体、フェナジンオキサイド誘導体、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、プロマニル、クロラニル、ならびにベンゾキノンなどの電子受容性物質などが挙げられる。
【0037】
電荷輸送物質は、1種を単独で使用することができ、または2種以上を併用することができる。電荷輸送物質の含有量は特に制限されないけれども、好ましくは電荷輸送物質中の結着樹脂100重量部に対して10重量部以上300重量部以下、さらに好ましくは30重量部以上150重量部以下に選ばれる。
【0038】
電荷輸送層用の結着樹脂としては、この分野で常用されかつ電荷輸送物質を均一に分散できるものを使用することができ、たとえば、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリビニルブチラール、ポリアミド、ポリエステル、ポリケトン、エポキシ樹脂、ポリウレタン、ポリビニルケトン、ポリスチレン、ポリアクリルアミド、フェノール樹脂、フェノキシ樹脂、ポリスルホン樹脂、およびこれらの共重合樹脂などが挙げられる。これらの中でも、成膜性、得られる電荷輸送層の耐摩耗性、電気特性などを考慮すると、ビスフェノールZをモノマー成分として含有するポリカーボネート(以後「ビスフェノールZ型ポリカーボネート」と称す)、ビスフェノールZ型ポリカーボネートと他のポリカーボネートとの混合物が好ましい。結着樹脂は1種を単独で使用することができ、または2種以上を併用することができる。
【0039】
電荷輸送層には、電荷輸送物質および電荷輸送層用の結着樹脂とともに、酸化防止剤が含まれるのが好ましい。酸化防止剤としては、この分野で常用されるものを使用でき、たとえば、ビタミンE、ハイドロキノン、ヒンダードアミン、ヒンダードフェノール、パラフェニレンジアミン、アリールアルカンおよびその誘導体、有機硫黄化合物、ならびに有機燐化合物などが挙げられる。酸化防止剤は、1種を単独で使用することができ、または2種以上を併用することができる。酸化防止剤の含有量は、特に制限されないけれども、電荷輸送層を構成する成分の合計量の0.01重量%以上10重量%以下、好ましくは0.05重量%以上5重量%以下に選ばれる。
【0040】
電荷輸送層は、電荷輸送物質、結着樹脂および必要に応じて酸化防止剤、可塑剤、増感剤などのそれぞれ適量を、これらの成分を溶解または分散し得る適切な有機溶媒に溶解または分散して電荷輸送層用塗液を調製し、この電荷輸送層用塗液を電荷発生層表面に塗布し、電荷発生層表面を乾燥させることによって形成することができる。このようにして得られる電荷輸送層の膜厚は特に制限されないが、好ましくは10μm以上50μm以下、さらに好ましくは15μm以上40μm以下に選ばれる。
【0041】
1つの層に、電荷発生物質と電荷輸送物質とが存在する感光層を形成することもできる。その場合、電荷発生物質および電荷輸送物質の種類、含有量、結着樹脂の種類、その他の添加剤などは、電荷発生層および電荷輸送層を別々に形成する場合と同様でよい。
【0042】
本実施の形態では、前述のような、電荷発生物質および電荷輸送物質を用いる有機感光層が形成される感光体ドラムを用いるけれども、それに代えて、シリコンなどを用いる無機感光層を形成してなる感光体ドラムを使用することもできる。
【0043】
帯電手段12は、感光体ドラム11に臨み、感光体ドラム11の長手方向に沿って感光体ドラム11表面から半径方向外方に間隙を有して離隔するように配置され、感光体ドラム11表面を所定の極性および電位に帯電させることができる。帯電手段12には、帯電ブラシ型帯電器、チャージャ型帯電器、鋸歯型帯電器またはイオン発生装置などを使用することができる。本実施の形態では、帯電手段12は感光体ドラム11表面から離隔するように設けられるけれども、それに限定されない。たとえば、帯電手段12として帯電ローラを用い、帯電ローラと感光体ドラムとが圧接するように帯電ローラを配置してもよく、帯電ブラシ、磁気ブラシなどの接触帯電方式の帯電器を用いてもよい。
【0044】
露光ユニット13は、露光ユニット13から出射される各色情報の光が、帯電手段12と現像装置14との間を通過して、感光体ドラム11の表面に照射されるように配置される。露光ユニット13は、画像情報を該ユニット内でブラック、シアン、マゼンタおよびイエローの各色情報の光に分岐し、帯電手段12によって一様な電位に帯電された感光体ドラム11表面を各色情報の光で露光し、その表面に静電潜像を形成する。露光ユニット13には、たとえば、レーザ照射部および複数の反射ミラーを備えるレーザスキャニングユニットを使用することができる。他にもLEDアレイ、または液晶シャッタと光源とを適宜組み合わせたユニットを用いてもよい。
【0045】
現像手段14は、現像槽20とトナーホッパ21とを含む。現像槽20は感光体ドラム11表面を臨むように配置され、感光体ドラム11の表面に形成された静電潜像にトナーを供給して現像し、可視像であるトナー像を形成する容器状部材である。現像槽20は、その内部空間にトナーを収容しかつ現像ローラ、供給ローラ、撹拌ローラなどのローラ部材またはスクリュー部材を収容して回転自在に支持する。現像槽20の感光体ドラム11を臨む側面には開口部が形成され、この開口部を介して感光体ドラム11に対向する位置に現像ローラが回転駆動可能に設けられる。
【0046】
現像ローラは、感光体ドラム11との圧接部または最近接部において感光体11表面の静電潜像にトナーを供給するローラ状部材から成る。トナーの供給に際しては、現像ローラ表面にトナーの帯電電位とは逆極性の電位が現像バイアス電圧(以下、単に「現像バイアス」とする。)として印加される。これによって、現像ローラ表面のトナーが静電潜像に円滑に供給される。さらに、現像バイアス値を変更することによって、静電潜像に供給されるトナー量(トナー付着量)を制御することができる。
【0047】
供給ローラは、現像ローラを臨んで回転駆動可能に設けられるローラ状部材から成り、現像ローラ周辺にトナーを供給する。攪拌ローラは、供給ローラを臨んで回転駆動可能に設けられるローラ状部材から成り、トナーホッパ21から現像槽20内に新たに供給されるトナーを供給ローラ周辺に送給する。トナーホッパ21は、その鉛直方向下部に設けられるトナー補給口(図示せず)と、現像槽20の鉛直方向上部に設けられるトナー受入口(図示せず)とが連通するように設けられ、現像槽20のトナー消費状況に応じてトナーを補給する。またトナーホッパ21を用いず、各色トナーカートリッジから直接トナーを補給するよう構成しても構わない。
【0048】
クリーニングユニット15は、現像装置14によって、感光体ドラム11表面に形成させたトナー像を記録媒体に転写した後に、感光体ドラム11の表面に残留するトナーを除去し、感光体ドラム11の表面を清浄化するために設けられる。クリーニングユニット15には、たとえば、クリーニングブレードなどの板状部材が用いられる。本実施形態の画像形成装置においては、感光体ドラム11として、有機感光体ドラムが用いられ、有機感光体ドラムの表面は樹脂成分を主体とするものであるので、帯電装置によるコロナ放電によって発生するオゾンの化学的作用によって、有機感光体ドラムの表面の劣化が進行しやすい。ところが、劣化した表面部分は、クリーニングユニット15よる擦過作用を受けて摩耗し、徐々にではあるが劣化した表面部分が確実に除去される。したがって、オゾンなどによる表面の劣化の問題が実際上解消され、長期間にわたって、帯電動作による帯電電位を安定に維持することができる。本実施の形態では、クリーニングユニット15を設けるけれども、それに限定されず、クリーニングユニット15を設けなくてもよい。
【0049】
画像形成部2によれば、帯電手段12によって均一な帯電状態にある感光体ドラム11の表面に、露光ユニット13から画像情報に応じた信号光を照射して静電潜像を形成し、これに現像装置14からトナーを供給してトナー像を形成し、このトナー像を中間転写ベルト25に転写した後に、感光体ドラム11表面に残留するトナーをクリーニングユニット15で除去する。この一連のトナー像形成動作が画像を形成するために繰り返し実行される。
【0050】
転写手段3は、感光体ドラム11の上方に配置され、膜厚が40μm〜70μmの中間転写ベルト25と、駆動ローラ26と、従動ローラ27と、ブラック(b)、シアン(c)、マゼンタ(m)およびイエロー(y)の各色の画像情報にそれぞれ対応する4つの中間転写ローラ28と、転写ベルトクリーニングユニット29、転写ローラ30とを含む。
【0051】
前記中間転写ベルト25の膜厚が40μm〜70μmとされる理由は、後述の実施例1〜17および比較例1〜8からも明らかなように、膜厚が40μm未満であれば、中間転写ベルト25の耐久性が低下し(比較例2)、膜厚が70μmを超えると、転写効率の低下およびベタムラが生じてしまう(比較例1)ためである。したがって、中間転写ベルト25の膜厚は、40μm〜70μmに選ばれ、40μm〜60μmとすることがより好ましい。
【0052】
中間転写ベルト25は、駆動ローラ26と従動ローラ27とに張架され、ループ状の移動経路を形成する無端ベルト状部材から成り、矢符Bの方向に回転駆動される。駆動ローラ26は、図示しない駆動手段によってその軸線まわりに回転駆動可能に設けられ、その回転駆動によって、中間転写ベルト25を矢符B方向へ回転駆動させる。従動ローラ27は、駆動ローラ26の回転駆動に従動回転可能に設けられ、中間転写ベルト25が弛まないように一定の張力を中間転写ベルト25に付与する。中間転写ローラ28は、中間転写ベルト25を介して感光体ドラム11に圧接し、かつ図示しない駆動手段によってその軸線まわりに回転駆動可能に設けられる。中間転写ローラ28は、前述のように転写バイアスを印加する図示しない電源が接続され、感光体ドラム11表面のトナー像を中間転写ベルト25に転写する機能を有する。
【0053】
中間転写ベルト25が、感光体ドラム11に接しながら感光体ドラム11を通過する際、中間転写ベルト25を介して感光体ドラム11に対向配置される中間転写ローラ28から、感光体ドラム11表面のトナーの帯電極性とは逆極性の転写バイアスが印加され、感光体ドラム11の表面に形成されたトナー像が中間転写ベルト25へ転写される。フルカラー画像の場合、各感光体ドラム11に形成される各色のトナー画像が、中間転写ベルト25に順次重ねて転写されることによって、フルカラートナー像が形成される。
【0054】
転写ベルトクリーニングユニット29は、中間転写ベルト25を介して従動ローラ27に対向し、中間転写ベルト25の外周面にクリーニングブレードが線圧1.8gf/mm〜3.0gf/mmで接触するように設けられる。感光体ドラム11との接触によって中間転写ベルト25に付着するトナーは、記録媒体を汚染する原因となるので、転写ベルトクリーニングユニット29が中間転写ベルト25表面のトナーを除去し回収する。
【0055】
前記転写ベルトクリーニングユニット29において、クリーニングブレードの中間転写ベルト25の外周面への線圧を1.8gf/mm〜3.0gf/mmとする理由は、後述の実施例1〜17および比較例1〜8からも明らかなように、線圧が1.8gf/mm未満であれば、中間転写ベルト25のクリーニング性が低下し(比較例3)、線圧が3.0gf/mmを超えると、中間転写ベルト25の耐久性が低下してしまう(比較例4)からである。したがって、クリーニングブレードの線圧は、1.8gf/mm〜3.0gf/mmに選ばれ、2.0gf/mm〜2.8gf/mmとすることがより好ましい。
【0056】
転写ローラ30は、中間転写ベルト25を介して駆動ローラ26に圧接し、図示しない駆動手段によって軸線まわりに回転駆動可能に設けられる。転写ローラ30と駆動ローラ26との圧接部、すなわち転写ニップ部において、中間転写ベルト25に担持され、搬送されるトナー像が、後述する記録媒体供給手段5から送給される記録媒体に転写される。トナー像を担持する記録媒体は、定着手段4に送給される。
【0057】
転写手段3によれば、感光体ドラム11と中間転写ローラ28との圧接部において、感光体ドラム11から中間転写ベルト25に転写されるトナー像が、中間転写ベルト25の矢符B方向への回転駆動によって転写ニップ部に搬送され、そこで記録媒体に転写される。
【0058】
本実施の形態では、中間転写ベルト25はポリイミド系樹脂からなることが好ましく、ポリイミド系樹脂からなる中間転写ベルト25を用いることによって、通常よく使われるポリカーボネート樹脂を用いる場合に比べて、引張弾性率が高く伸び難いため、中間転写ベルト25の機械的耐久性を向上させることができる。
【0059】
定着手段4は、転写手段3よりも記録媒体の搬送方向下流側に設けられ、定着ローラ31と加圧ローラ32とを含む。定着ローラ31は図示しない駆動手段によって回転駆動可能に設けられ、記録媒体に担持される未定着トナー像を、構成するトナーを加熱して溶融させることによって記録媒体に定着させる。定着ローラ31の内部には図示しない加熱手段が設けられる。加熱手段は、定着ローラ31表面が所定の温度(以後「加熱温度」ともいう)になるように定着ローラ31を加熱する。加熱手段には、たとえば、ヒータまたはハロゲンランプなどを使用することができる。加熱手段は、後記する定着条件制御手段によって制御される。定着条件制御手段による加熱温度の制御については、後に詳述する。
【0060】
定着ローラ31表面近傍には、図示しない温度検知センサが設けられ、温度検知センサは定着ローラ31の表面温度を検出する。温度検知センサによる検出結果は、後記する制御手段の記憶部に書き込まれる。加圧ローラ32は定着ローラ31に圧接するように設けられ、加圧ローラ32の回転駆動に従動回転可能に支持される。定着ローラ31からの熱によってトナーが溶融し、トナー像が記録媒体に定着する際に、加圧ローラ32はトナーと記録媒体とを押圧することによって、トナー像の記録媒体への定着を補助する。定着ローラ31と加圧ローラ32との圧接部は、定着ニップ部を構成する。
【0061】
定着手段4によれば、転写手段3においてトナー像が転写された記録媒体が、定着ローラ31と加圧ローラ32とによって挟持され、定着ニップ部を通過する際に、トナー像が加熱下で記録媒体に押し付けられることによって、トナー像が記録媒体に定着され、画像が形成される。
【0062】
記録媒体供給手段5は、自動給紙トレイ35と、ピックアップローラ36と、搬送ローラ37と、レジストローラ38と、手差給紙トレイ39とを含む。自動給紙トレイ35は、画像形成装置100の鉛直方向下部に設けられ、記録媒体を貯留する容器状部材である。記録媒体には、たとえば普通紙、カラーコピー用紙、オーバーヘッドプロジェクタ用シート、葉書などがある。
【0063】
ピックアップローラ36は、自動給紙トレイ35に貯留される記録媒体を1枚ずつ取り出し、用紙搬送路S1に送給する。搬送ローラ37は、互いに圧接するように設けられる一対のローラ部材から成り、記録媒体をレジストローラ38に向けて搬送する。レジストローラ38は互いに圧接するように設けられる一対のローラ部材から成り、搬送ローラ37から送給される記録媒体を、中間転写ベルト25に担持されるトナー像が転写ニップ部に搬送されるタイミングに同期して、転写ニップ部に送給する。
【0064】
手差給紙トレイ39は、手動動作によって記録媒体を画像形成装置100内に取り込む装置であり、手差給紙トレイ39から取り込まれる記録媒体は、搬送ローラ37によって用紙搬送路S2内を通過し、レジストローラ38に送給される。記録媒体供給手段5によれば、自動給紙トレイ35または手差給紙トレイ39から1枚ずつ供給される記録媒体を、中間転写ベルト25に担持されるトナー像が転写ニップ部に搬送されるタイミングに同期して、転写ニップ部に送給する。
【0065】
排出手段6は、搬送ローラ37と、排出ローラ40と、排出トレイ41とを含む。搬送ローラ37は、用紙搬送方向において定着ニップ部よりも搬送方向下流側に設けられ、定着手段4によって画像が定着された記録媒体を、排出ローラ40に向けて搬送する。排出ローラ40は、画像が定着された記録媒体を、画像形成装置100の鉛直上方に臨んで設けられる排出トレイ41上に排出する。排出トレイ41は、画像が定着された記録媒体を貯留する。
【0066】
画像形成装置100は、図示しない制御手段を含む。制御手段は、たとえば、画像形成装置100の内部空間における上部に設けられ、記憶部と演算部と制御部とを含む。制御手段の記憶部には、画像形成装置100の上面に配置される図示しない操作パネルを介する各種設定値、画像形成装置100内部の各所に配置される図示しないセンサなどからの検出結果、および外部機器からの画像情報などが入力される。この記憶部にはまた、各種手段を動作させるためのプログラムが書き込まれる。各種手段とは、たとえば、記録媒体判定手段、付着量制御手段、定着条件制御手段などである。
【0067】
記憶部には、この分野で常用されるものを使用することができ、たとえば、リードオンリーメモリ(Read Only Memory;略称ROM)、ランダムアクセスメモリ(Random
Access Memory;略称RAM)およびハードディスクドライブ(Hard Disk Drive;略称HDD)などが挙げられる。外部機器には、画像情報の形成または取得が可能であり、かつ画像形成装置100に電気的に接続可能な電気・電子機器を使用することができ、たとえば、コンピュータ、デジタルカメラ、テレビ、ビデオレコーダ、DVDレコーダ、HD DVD、ブルーレイディスクレコーダ、ファクシミリ装置、携帯端末装置などが挙げられる。
【0068】
演算部は、記憶部に書き込まれる各種データ(画像形成命令、検知結果、画像情報など)および各種手段のプログラムを取り出し、各種判定を行う。制御部は、演算部の判定結果に応じて該当装置に制御信号を送付し、動作制御を行う。制御部および演算部は中央演算処理装置(Central Processing Unit;略称CPU)を備えるマイクロコンピュータ、マイクロプロセッサなどによって実現される処理回路を含む。制御手段は、前述の処理回路とともに主電源を含み、電源は制御手段だけでなく、画像形成装置100内部における各装置にも電力を供給する。
【0069】
<トナー>
(1)トナー構成材料
本発明の画像形成装置に用いられるトナーは、必須成分である結着樹脂、着色剤、離型剤の他に、帯電制御剤など含むトナー粒子と、必要に応じて添加される外添剤を含む。
【0070】
結着樹脂としては、トナー用結着樹脂として常用され、かつ溶融状態で造粒可能であれば、特に制限されず、公知のものを使用することができ、たとえば、ポリエステル系樹脂、ポリスチレンおよびスチレン−アクリル酸エステル共重合樹脂などのスチレン系樹脂、ポリメチルメタクリレートなどのアクリル系樹脂、ポリエチレンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリウレタン、ならびにエポキシ樹脂などが挙げられる。
【0071】
また、結着樹脂として、原料モノマー混合物に離型剤を混合し、重合反応させて得られる樹脂を用いてもよく、この場合、ポリエステル樹脂を含有することが好ましい。結着樹脂にポリエステル樹脂を含有させることによって、離型剤の分散状態制御性を向上させ、より一層優れた定着性を有するトナーを得ることができる。またトナーに優れた耐久性と透明性とを付与することができる。結着樹脂は1種を単独で使用でき、または2種以上を併用できる。
【0072】
ポリエステル樹脂としては、特に制限されず公知のものを使用することができ、たとえば、多塩基酸類と多価アルコール類との縮重合物が挙げられる。多塩基酸類とは、多塩基酸、および多塩基酸の誘導体、たとえば多塩基酸の酸無水物またはエステル化物などのことである。多価アルコール類とは、ヒドロキシル基を2個以上含有する化合物のことであり、アルコール類およびフェノール類のいずれをも含む。
【0073】
多塩基酸類としては、ポリエステル樹脂のモノマーとして常用されるものを使用することができ、たとえば、テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸およびナフタレンジカルボン酸などの芳香族カルボン酸類、無水マレイン酸、フマル酸、コハク酸およびアジピン酸などの脂肪族カルボン酸類が挙げられる。多塩基酸類は、1種を単独で使用してもよく、また2種以上を併用して使用してもよい。
【0074】
多価アルコール類としては、ポリエステル樹脂のモノマーとして常用されるものを使用することができ、たとえば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールおよびグリセリンなどの脂肪族多価アルコール類、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノールおよび水添ビスフェノールAなどの脂環式多価アルコール類、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物およびビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物などの芳香族系ジオール類が挙げられる。
【0075】
「ビスフェノールA」とは、2,2−ビス(p−ヒドロキシフェニル)プロパンのことである。ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物としては、たとえばポリオキシエチレン−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンが挙げられる。ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物としては、たとえばポリオキシプロピレン−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンが挙げられる。多価アルコール類は、1種を単独で使用してもよく、また2種以上を併用して使用してもよい。
【0076】
ポリエステル樹脂は、縮重合反応によって合成することができる。たとえば、有機溶媒中または無溶媒下で、触媒の存在下に多塩基酸類と多価アルコール類とを重縮合反応、具体的には脱水縮合反応させることによって合成することができる。このとき、多塩基酸類の一部に、多塩基酸のメチルエステル化物を用い、脱メタノール重縮合反応を行なってもよい。
【0077】
多塩基酸類と多価アルコール類との重縮合反応は、生成するポリエステル樹脂の酸価および軟化点が、合成しようとするポリエステル樹脂における値となったところで終了させればよい。この重縮合反応において、多塩基酸類と多価アルコール類との配合比および反応率などの反応条件を適宜変更することによって、たとえば、得られるポリエステル樹脂の末端に結合するカルボキシル基の含有量、ひいては得られるポリエステル樹脂の酸価、軟化点、その他の物性値を調整することもできる。
【0078】
着色剤としては、たとえば、イエロートナー用着色剤、マゼンタトナー用着色剤、シアントナー用着色剤およびブラックトナー用着色剤などが挙げられる。
【0079】
イエロートナー用着色剤としては、たとえば、カラーインデックスによって分類されるC.I.ピグメントイエロー1、C.I.ピグメントイエロー5、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー15、およびC.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー185などの有機系顔料、黄色酸化鉄および黄土などの無機系顔料、C.I.アシッドイエロー1などのニトロ系染料、C.I.ソルベントイエロー2、C.I.ソルベントイエロー6、C.I.ソルベントイエロー14、C.I.ソルベントイエロー15、C.I.ソルベントイエロー19、およびC.I.ソルベントイエロー21などの油溶性染料などが挙げられる。
【0080】
マゼンタトナー用着色剤としては、たとえば、カラーインデックスによって分類されるC.I.ピグメントレッド49、C.I.ピグメントレッド57、C.I.ピグメントレッド81、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ソルベントレッド19、C.I.ソルベントレッド49、C.I.ソルベントレッド52、C.I.ベーシックレッド10、およびC.I.ディスパーズレッド15などが挙げられる。
【0081】
シアントナー用着色剤としては、たとえば、カラーインデックスによって分類されるC.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー16、C.I.ソルベントブルー55、C.I.ソルベントブルー70、C.I.ダイレクトブルー25、およびC.I.ダイレクトブルー86などが挙げられる。
【0082】
ブラックトナー用着色剤としては、たとえば、チャンネルブラック、ローラーブラック、ディスクブラック、ガスファーネスブラック、オイルファーネスブラック、サーマルブラック、およびアセチレンブラックなどのカーボンブラックが挙げられる。
【0083】
これらの顔料以外にも、紅色顔料、緑色顔料などを使用することができる。着色剤は1種を単独で使用してもよく、または2種以上を併用してもよい。また、同色系のものを2種以上用いることができ、異色系のものをそれぞれ1種または2種以上用いることもできる。
【0084】
着色剤は、マスターバッチとして使用されることが好ましい。着色剤のマスターバッチは、たとえば、樹脂の溶融物と着色剤とを混練することによって製造することができる。樹脂としては、トナーの結着樹脂と同種の樹脂またはトナーの結着樹脂に対して良好な相溶性を有する樹脂が使用される。樹脂と着色剤との使用割合は、特に制限されないけれども、好ましくは合成樹脂100重量部に対して30重量部以上100重量部以下に選ばれる。マスターバッチは、たとえば粒径2mm〜3mm程度に造粒されて用いられる。
【0085】
着色剤の含有量は、特に制限されないけれども、好ましくは結着樹脂100重量部に対して4重量部以上20重量部以下に選ばれる。マスターバッチを用いる場合、トナーにおける着色剤の含有量が前記範囲になるように、マスターバッチの使用量を調整することが好ましい。着色剤を前記範囲で用いることによって、充分な画像濃度を有し、発色性が高く画像品位に優れる良好な画像を形成することができる。
【0086】
離型剤としては、特に限定されるものではなく、公知のものを使用することができ、たとえば、パラフィンワックスおよびその誘導体、ならびにマイクロクリスタリンワックスおよびその誘導体などの石油系ワックス、フィッシャートロプシュワックスおよびその誘導体、ポリオレフィンワックスおよびその誘導体、低分子ポリプロピレンワックスおよびその誘導体、ならびにポリオレフィン系重合体ワックスおよびその誘導体などの炭化水素系合成ワックス、カルナバワックスおよびその誘導体、エステル系ワックスなどが挙げられる。
【0087】
本発明のトナーには、結着樹脂、着色剤、離型剤の他に、帯電制御剤などのその他のトナー添加成分を含有することが好ましい。帯電制御剤は、トナーに好ましい帯電性を付与するために添加される。帯電制御剤としては、たとえば、ニグロシン染料、塩基性染料、四級アンモニウム塩、四級ホスホニウム塩、アミノピリン、ピリミジン化合物、多核ポリアミノ化合物、アミノシラン、ニグロシン染料およびその誘導体、トリフェニルメタン誘導体、グアニジン塩、およびアミジン塩などの正電荷制御用の帯電制御剤と、たとえば、オイルブラックおよびスピロンブラックなどの油溶性染料、含金属アゾ化合物、アゾ錯体染料、ナフテン酸金属塩、サリチル酸およびその誘導体の金属錯体および金属塩(金属はクロム、亜鉛、ジルコニウムなど)、ホウ素化合物、脂肪酸石鹸、長鎖アルキルカルボン酸塩、ならびに樹脂酸石鹸などの負電荷制御用の帯電制御剤が挙げられる。帯電制御剤は1種を単独で使用することができ、または2種以上を併用することができる。
【0088】
帯電制御剤の使用量は、好ましくは結着樹脂100重量部に対して0.5重量部以上5重量部以下に選ばれ、より好ましくは結着樹脂100重量部に対して0.5重量部以上3重量部以下に選ばれる。帯電制御剤が5重量部よりも多く含まれると、キャリアが汚染されてしまい、トナー飛散が発生するおそれがある。帯電制御剤の含有量が0.5重量部未満であると、トナーに十分な帯電特性を付与することができない。したがって帯電制御剤の使用量は、上記のように結着樹脂100重量部に対して0.5重量部以上5重量部以下、好ましくは結着樹脂100重量部に対して0.5重量部以上3重量部以下に選ばれる。
【0089】
本発明のトナーには、たとえば、粉体流動性向上、摩擦帯電性向上、耐熱性、長期保存性改善、クリーニング特性改善および感光体表面磨耗特性制御などの機能を担う外添剤を混合してもよい。外添剤としては、この分野で常用されるものを使用することができ、たとえば、シリカ微粉末、酸化チタン微粉末およびアルミナ微粉末などが挙げられる。
【0090】
これらの無機微粉末は、疎水化、帯電性コントロールなどの目的でシリコーンワニス、各種変性シリコーンワニス、シリコーンオイル、各種変性シリコーンオイル、シランカップリング剤、官能基を有するシランカップリング剤、その他の有機ケイ素化合物などの処理剤で処理されていることが好ましく、1種を単独で使用することができ、または2種以上を併用することができる。外添剤の添加量としては、トナーに必要な帯電量、外添剤を添加することによる感光体の摩耗に対する影響、トナーの環境特性などを考慮して、トナー粒子100重量部に対し1重量部以上10重量部以下に選ばれ、より好ましくは1重量部以上5重量部以下に選ばれる。
【0091】
外添剤は、一次粒子の個数平均粒子径が10nm〜500nmであることが好ましい。このような粒径の外添剤を用いることによって、トナーの流動性向上効果が一層発揮され易くなる。
【0092】
(2)トナーの製造方法
本発明の画像形成装置に用いられるトナーは、結着樹脂、着色剤、離型剤の他に、帯電制御剤など含むトナー粒子と、必要に応じて添加される有機微粒子、無機微粒子などを含む。
【0093】
本発明の画像形成装置に用いられるトナーに含まれるトナー粒子は、少なくとも、結着樹脂、着色剤および離型剤を含む樹脂組成物を粉砕して、第1粉砕物と、第1粉砕物より体積平均粒子径の大きい第2粉砕物とを作製する粉砕工程と、第1粉砕物を分級して第1トナー粒子群を作製する第1分級工程と、第2粉砕物を球形化処理後に分級して、第1トナー粒子群より体積平均粒子径の大きい第2トナー粒子群を作製する第2球形化・分級工程、もしくは、第2粉砕物を分級して、第1トナー粒子群より体積平均粒子径の大きい第2トナー粒子群を作製後に球形化処理する第2分級・球形化工程と、第1トナー粒子群と第2トナー粒子群とを混合する混合工程とを経て製造される。
【0094】
図2は、本発明の画像形成装置に用いられるトナーに含まれるトナー粒子の製造方法の一例を示すフローチャートである。本実施の形態のトナー粒子の製造方法は、少なくとも結着樹脂、着色剤、離型剤を混合して混合物を作製する前混合工程(ステップS1)と、混合物を溶融混練して、樹脂組成物である溶融混練物を作製する溶融混練工程(ステップS2)と、溶融混練物を粉砕して、第1粉砕物および第1粉砕物より体積平均粒子径の大きい第2粉砕物を作製する粉砕工程(ステップS3)と、第1粉砕物を分級して第1トナー粒子群を作製する第1分級工程(ステップS4)と、第2粉砕物を球形化する球形化工程(ステップS5)と、第2粉砕物の球形化物を分級して第1トナー粒子群よりも体積平均粒子径の大きい第2トナー粒子群を作製する第2分級工程(ステップS6)と、第1トナー粒子群と第2トナー粒子群とを混合する混合工程(ステップS7)とを含む。
【0095】
以下に、ステップS1〜ステップS7の各製造工程について詳細に説明する。なお、第1トナー粒子群を作製するためのステップS4の製造工程と、第2トナー粒子群を作製するためのステップS5からS6の製造工程とは同時進行で行われてもよく、どちらかの製造工程が先に行われてもよい。ステップS0からステップS1に移行することによって、本実施形態のトナーの製造が開始される。
【0096】
(前混合工程)
ステップS1の前混合工程では、少なくとも結着樹脂、着色剤および離型剤を混合機により乾式混合して混合物を作製する。トナー粒子には、結着樹脂、着色剤および離型剤の他に、その他のトナー添加成分が含有されていてもよい。その他のトナー添加成分としては、帯電制御剤などが挙げられる。これらの各原料およびその使用量においては、特に制限されるものではなく、公知のものを一般的な使用量で用いることができる。
【0097】
乾式混合に用いられる混合機としては、公知のものを使用でき、たとえば、ヘンシェルミキサ(商品名:FMミキサ、三井鉱山株式会社製)、スーパーミキサ(商品名、株式会社カワタ製)およびメカノミル(商品名、岡田精工株式会社製)などのヘンシェルタイプの混合装置、オングミル(商品名、ホソカワミクロン株式会社製)、ハイブリダイゼーションシステム(商品名、株式会社奈良機械製作所製)、ならびにコスモシステム(商品名、川崎重工業株式会社製)などが挙げられる。
【0098】
本発明では、トナー粒子表面の離型剤の露出量は、トナー全量の2.5重量%以下であることが好ましい。ここで、トナー粒子表面とは、トナー粒子表面からの深さが700nm以下の領域をいう。トナー粒子表面の離型剤の露出量を適切な範囲に調整するためには、前混合工程における離型剤の添加量を制御する必要がある。具体的には、トナー粒子表面の離型剤量を2.5重量%以下とするために、前混合工程における離型剤の添加量を結着樹脂100重量部に対して6.0重量部以下とする。
【0099】
(溶融混練工程)
ステップS2の溶融混練工程では、前混合工程で作製された混合物を溶融混練して溶融混練物を作製する。混合物の溶融混練は、結着樹脂の軟化点以上、熱分解温度未満の温度に加熱して行われ、結着樹脂を溶融または軟化させて結着樹脂中に結着樹脂以外のトナー原料を分散させる。
【0100】
混練機としては公知のものを使用でき、たとえば、二軸押出し機、三本ロールおよびラボブラストミルなどの一般的な混練機を使用することができる。さらに具体的には、たとえば、TEM−100B(商品名、東芝機械株式会社製)、PCM−65/87、PCM−30(以上いずれも商品名、株式会社池貝製)などの1軸または2軸のエクストルーダ、ニーデックス(商品名、三井鉱山株式会社製)などのオープンロール方式の混練機が挙げられる。これらの中でも、オープンロール方式の混練機が好ましい。トナー原料混合物は、複数の混練機を用いて溶融混練されても構わない。
【0101】
(粉砕工程)
ステップS3の粉砕工程では、溶融混練工程で得られた溶融混練物を冷却して固化させた後、冷却固化させた溶融混練物を粉砕することによって、第1粉砕物、および第1粉砕物よりも体積平均粒子径の大きい第2粉砕物を作製する。
【0102】
冷却固化された溶融混練物は、まずハンマーミルまたはカッターミルなどによって、たとえば体積平均粒子径が100μm以上5mm以下程度である粗粉砕物にそれぞれ粉砕される。その後、得られた粗粉砕物は、所望の体積平均粒子径を有する第1粉砕物、および所望の体積平均粒子径を有する第2粉砕物にまでそれぞれ微粉砕される。
【0103】
粗粉砕物の微粉砕には、たとえば、超音速ジェット気流を利用して粉砕するジェット式粉砕機、高速で回転する回転子であるロータと固定子であるライナとの間に形成される空間に、粗粉砕物を導入して粉砕する衝撃式粉砕機などを用いることができる。
【0104】
冷却固化された溶融混練物は、ハンマーミルまたはカッティングミルなどによる粗粉砕を経ることなく、直接ジェット式粉砕機または衝撃式粉砕機などにより粉砕されてもよい。
【0105】
(第1分級工程)
ステップS4の第1分級工程では、粉砕工程にて得られた第1粉砕物から、分級機で過粉砕トナー粒子および粗大トナー粒子を除去することによって、第1トナー粒子群を作製する。過粉砕トナー粒子および粗大トナー粒子は、回収し、他のトナー粒子の製造に再利用するために使用することができる。
【0106】
分級には、遠心力による分級または風力による分級によって過粉砕トナー粒子および粗大トナー粒子を除去できる公知の分級機を使用することができ、たとえば、旋回式風力分級機(ロータリー式風力分級機)などを使用することができる。
【0107】
第1分級工程では、分級条件を適宜調整することによって、分級後に得られるトナー粒子の体積平均粒子径が5.5μm以上6.5μm以下となるように分級を行うことが好ましい。トナー粒子の体積平均粒子径が5.5μm未満であると、トナー中の小粒径粒子の含有量が多くなりすぎるので、クリーニング性が低下するおそれがある。トナー粒子の体積平均粒子径が6.5μmを超えると、トナーの体積平均粒子径が大きくなりすぎるので、高精細な画像を得ることができないおそれがある。またトナー粒子の比表面積が減少し、トナーの帯電量が小さくなることによって、トナーが像担持体に安定して供給されず、トナー飛散による機内汚染が発生するおそれがある。したがって上記のように、分級後に得られるトナー粒子の体積平均粒子径が5.5μm以上6.5μm以下に選ばれる。
【0108】
上述の適宜調整する分級条件とは、たとえば、旋回式風力分級機(ロータリー式風力分級機)における分級ロータの回転速度などである。
【0109】
(球形化工程)
ステップS5の球形化工程では、粉砕工程にて得られた第2粉砕物を機械的衝撃力や熱風によって球形化処理することによって、第2粉砕物の球形化物を作製する。本実施形態において、第1粉砕物および第1トナー粒子群は球形化処理されず、第2粉砕物および第2トナー粒子群の少なくとも一方は球形化処理されることが好ましい。
【0110】
一般的に、トナーの粒子径が小さくなるほど、像担持体の転写残留トナーがクリーニングブレードで除去されにくくなるので、クリーニング性が低下する。トナーの粒子径が小さくなるほどクリーニング性が低下する傾向は、トナーの粒子形状が球形化されて粒子表面の凹凸が少なくなるほど顕著となる。また、トナーの粒子径が大きくなるほど、トナー粒子表面の凹凸が多くなるので、像担持体に対するトナー粒子間での物理的付着力のバランスが崩れやすくなる。
【0111】
第1粉砕物および第1トナー粒子群は、球形化処理されず、第2粉砕物および第2トナー粒子群の少なくともどちらか一方が球形化処理されることによって、体積平均粒子径の小さいトナー粒子には凹凸を多くすることができ、体積平均粒子径の大きいトナー粒子には凹凸を少なくすることができるので、トナー粒子全体として良好なクリーニング性を得ることができる。したがって、かぶりがなく、長期間にわたって高精細で高解像度の高画質画像をより安定して形成することができるトナーを得ることができる。
【0112】
球形化処理の方法としては、たとえば、機械的衝撃力によって球形化する方法や熱風によって球形化する方法などが挙げられるが、適度に凹凸を持たせながら球形化することが可能な、機械的衝撃力によるものが好ましい。熱による球形化処理ではトナー粒子同士が融着し、トナー粒子中に含有される離型剤がトナー粒子表面にブリードすることでトナーの流動性が悪化するおそれがある。
【0113】
機械的衝撃力による球形化処理に用いられる衝撃式球形化装置としては、市販されているものを使用することができ、たとえば、ファカルティ(商品名、ホソカワミクロン株式会社製)などを用いることができる。熱風による球形化処理に用いられる熱風式球形化装置としては、市販されているものを使用することができ、たとえば、表面改質機メテオレインボー(商品名、日本ニューマチック工業株式会社製)などを用いることができる。
【0114】
本発明においては、ステップS6の第2分級工程の後、第2トナー粒子群に球形化処理を行ってもよい。
【0115】
(第2分級工程)
ステップS6の第2分級工程では、球形化工程にて得られた第2粉砕物の球形化物から、分級機によって、過粉砕トナー粒子や粗大トナー粒子を除去することによって、第2トナー粒子群を作製する。過粉砕トナー粒子や粗大トナー粒子は、他のトナー粒子の製造に再利用するために回収して使用することができる。
【0116】
分級には、遠心力による分級や風力による分級によって過粉砕トナー粒子や粗大トナー粒子を除去できる公知の分級機を使用することができ、たとえば、旋回式風力分級機(ロータリー式風力分級機)などを使用することができる。
【0117】
分級工程では、分級条件を適宜調整して、分級後に得られるトナー粒子の体積平均粒子径が7.3μm以上8.3μm以下となるように行われることが好ましい。トナー粒子の体積平均粒子径が7.3μm未満であると、トナー中の小粒径粒子の含有量が多くなりすぎるため、クリーニング性が低下するおそれがある。8.3μmを超えると、トナーの体積平均粒子径が大きくなりすぎるため、高精細な画像を得ることができないおそれがある。またトナー粒子の比表面積が減少し、トナーの帯電量が小さくなることにより、トナーが潜像担持体に安定して供給されず、トナー飛散による機内汚染が発生するおそれがある。
【0118】
上述の調整すべき分級条件とは、たとえば、旋回式風力分級機(ロータリー式風力分級機)における分級ロータの回転速度などである。
【0119】
球形化工程において使用する装置の種類によっては、ステップS5の球形化工程とステップS6の第2分級工程とは同時に行われてもよいし、順番が入れ替わってもよい。
【0120】
(混合工程)
ステップS7の混合工程では、ステップS4の第1分級工程を経て作製された第1トナー粒子群とステップS5の球形化工程およびS6の第2分級工程を経て作製された第2トナー粒子群とを混合することによって、本発明の画像形成装置に用いられるトナーに含まれるトナー粒子を製造する。
【0121】
混合工程で用いられる混合機としては、たとえば、ヘンシェルミキサ(商品名:FMミキサ、三井鉱山株式会社製)、スーパーミキサ(商品名、株式会社カワタ製)、メカノミル(商品名、岡田精工株式会社製)などのヘンシェルタイプの混合装置、オングミル(商品名、ホソカワミクロン株式会社製)、ハイブリダイゼーションシステム(商品名、株式会社奈良機械製作所製)、コスモシステム(商品名、川崎重工業株式会社製)などが挙げられる。
【0122】
本実施形態において、第2トナー粒子群は、第1トナー粒子群100重量部に対して5重量部以上120重量部以下の重量比の範囲で混合されることが好ましい。第2トナー粒子群が第1トナー粒子群100重量部に対して5重量部未満の重量比で混合されると、第2トナー粒子群が5重量部以上の重量比で混合される場合と比較して、像担持体および中間転写媒体とトナーとの接触面積が増加し、トナーの記録媒体への転写効率が低下するので、表面の粗い記録媒体を用いて画像を形成すると、形成された画像に抜けなどが発生し、画像再現性が低下する。また定着工程において、トナー粒子間の空隙が大きくなるので、トナー像の熱伝導性が低下し、良好な低温定着性を有することができないおそれがある。またトナー粒子表面の凹凸が制御されず、トナー表面の帯電分布を均一にしにくい第2トナー粒子群が多くなるので、トナー飛散が発生しやすくなる。また体積平均粒子径の小さいトナー粒子が多くなるので、流動性が低下するおそれがある。
【0123】
第2トナー粒子群が第1粉砕物100重量部に対して120重量部を超える重量比で混合されると、第2トナー粒子群が120重量部以下の重量比で混合する場合と比較して、体積平均粒子径が大きいトナー粒子の含有量が多くなるので、高精細な画像を形成し難くなり、画像再現性が低下する。
【0124】
第2トナー粒子群が、第1トナー粒子群100重量部に対して5重量部以上120重量部以下の重量比の範囲で混合されることによって、体積平均粒子径の小さいトナーで高精細な画像を形成することができ、トナー飛散を抑制して画像劣化を少なくすることができ、良好な低温定着性を有し、優れた流動性を有することができるので、長期間にわたって高精細で高解像度の高画質画像をより安定して形成することができるトナーを得ることができる。
【0125】
また、本実施形態において、第2トナー粒子群は、第1トナー粒子群100重量部に対して5重量部以上70重量部以下の重量比の範囲で混合されることがより好ましい。第2トナー粒子群が第1粉砕物100重量部に対して70重量部以下の重量比で混合されることによって、体積平均粒子径の大きいトナー粒子の含有量がより最適化されるので、再現性よく高精細な画像を形成する効果を顕著に発現させることができる。
【0126】
第2トナー粒子群が、第1トナー粒子群100重量部に対して5重量部以上70重量部以下の重量比の範囲で混合されることによって、より一層長期間にわたって高精細で高解像度の高画質画像をより安定して形成することができるトナーを得ることができる。
【0127】
混合工程が終了すると、本発明の画像形成装置に用いられるトナーに含まれるトナー粒子の製造が終了する。
【0128】
このようにして得られるトナー粒子には、粉体流動性向上、摩擦帯電性向上、耐熱性、長期保存性改善、クリーニング特性改善および感光体表面磨耗特性制御などの機能を担う外添剤を混合してもよい。外添剤としては、この分野で常用されるものを使用でき、たとえば、シリカ微粉末、酸化チタン微粉末およびアルミナ微粉末などが挙げられる。これらの無機微粉末は、疎水化、帯電性コントロールなどの目的でシリコーンワニス、各種変性シリコーンワニス、シリコーンオイル、各種変性シリコーンオイル、シランカップリング剤、官能基を有するシランカップリング剤、その他の有機ケイ素化合物などの処理剤で処理されていることが好ましく、1種を単独で使用することができ、または2種以上を併用することができる。
【0129】
外添剤の添加量としては、トナーに必要な帯電量、外添剤を添加することによる感光体の摩耗に対する影響、トナーの環境特性などを考慮して、トナー粒子100重量部に対し1〜10重量部であることが好ましく、5重量部以下がより好適である。外添剤は、一次粒子の個数平均粒子径が10nm〜500nmであることが好ましい。このような粒径の外添剤を用いることによって、トナーの流動性向上効果が一層発揮され易くなる。
【0130】
上記のようにして製造される本発明の画像形成装置に用いられるトナーの体積平均粒子径は、5.0μm以上7.0μm以下に選ばれる。また、個数平均粒子径が5.0μm以下であるトナー粒子の含有率は、全トナー粒子の40個数%未満であることが好ましい。トナーの粒径分布および個数分布がこの範囲を満足することによって、トナー飛散を抑え、高精細で高解像度の高画質画像を形成することができる。体積平均粒子径が5.0μm未満では、転写ベルトクリーニングが不十分になるおそれがあり、7.0μmを超えると、充分に高精細でベタ画像のガサツキ、むらのない画像を形成することができない。個数平均粒子径が5.0μm以下であるトナー粒子の含有率が、全トナー粒子の40個数%以上では、流動性低下によるトナー飛散および転写効率の悪化によるかぶりを生じる。
【0131】
本発明の画像形成装置に用いられるトナーの形状係数SF−2は、135以上143未満である。トナー粒子の表面の凹凸度合を表す形状係数SF−2がこの範囲を満足することによって、高画質な画像が形成されるとともに転写ベルトの耐久性も良好な画像形成装置とすることができる。トナーの形状係数SF−2が135未満のものを使えば転写性が向上し、ガサツキムラのない画像が形成されるが、ベルトクリーニングブレードの線圧を強くする必要があり、ベルトが破れてしまう。また、トナーの形状係数SF−2が143以上のものを使うと、トナーと中間転写ベルトとの接触面積が大きくなり、転写性が低下し、ベタムラが発生し易くなる。
【0132】
ここで、トナーの体積平均粒子径は、ベックマン・コールター株式会社製粒度分布測定装置「MultisizerIII」によって測定する。測定条件を以下に示す。
アパーチャ径:100μm
測定粒子数:50000カウント
解析ソフト:コールターマルチサイザーアキュコンプ バージョン1.19(ベックマン・コールター株式会社製)
電解液:ISOTON−II(ベックマン・コールター株式会社製)
分散剤:アルキルエーテル硫酸エステルナトリウム
【0133】
測定手順は、ビーカーに電解液50ml、試料であるトナー20mgおよび分散剤1mlを加え、超音波分散器にて3分間分散処理して測定用試料を調製し、粒径の測定を行う。得られた測定結果から試料粒子の体積粒度分布を求め、体積粒度分布からトナーの体積平均粒子径を求める。また、トナーの形状係数SF−2は、次の方法に従って測定した値である。
【0134】
トナー粒子の表面に、スパッタ蒸着により金属膜(Au膜、膜厚0.5μm)を形成する。この金属膜被覆トナーから、走査型電子顕微鏡(商品名:S−570、株式会社日立製作所製)によって、加速電圧5kVで、また1000倍の倍率で、無作為に200〜300個を抽出して写真撮影を行う。この電子顕微鏡写真データを、画像解析ソフト(商品名:A像くん、旭化成エンジニアリング株式会社製)によって画像解析する。画像解析ソフト「A像くん」の粒子解析パラメータは、小図形除去面積:100画素、収縮分離:回数1;小図形:1;回数:10、雑音除去フィルタ:無、シェーディング:無、結果表示単位:μmとする。これより得られた粒子の周囲長PERI、図形面積AREAから、下記の式(1)によって形状係数SF−2を得る。
SF−2={(PERI)2/AREA}×(100/4π) …(1)
【0135】
形状係数SF−2は、上記式(1)で表される値とされ、トナー粒子の表面形状の凹凸の度合いを示すものである。SF−2の値が100の場合にトナー粒子表面に凹凸が存在しなくなり、SF−2の値が大きいほど凹凸が顕著になる。
【0136】
(現像剤)
本発明の画像形成装置に用いられるトナーは、そのまま一成分現像剤として使用することができ、またキャリアと混合して二成分現像剤として使用することができる。一成分現像剤として使用する場合、キャリアを用いることなくトナーのみで使用する。また一成分現像剤として使用する場合、ブレードおよびファーブラシを用い、現像スリーブで摩擦帯電させてスリーブ上にトナーを付着させることによってトナーを搬送し、画像形成を行う。二成分現像剤として使用する場合、本発明のトナーをキャリアとともに用いる。
【0137】
キャリアとしては、公知のものを使用でき、たとえば、鉄、銅、亜鉛、ニッケル、コバルト、マンガン、クロムなどからなる単独または複合フェライトおよびキャリアコア粒子を被覆物質で表面被覆した樹脂被覆キャリア、または樹脂に磁性を有する粒子を分散させた樹脂分散型キャリアなどが挙げられる。被覆物質としては公知のものを使用することができ、たとえば、ポリテトラフルオロエチレン、モノクロロトリフルオロエチレン重合体、ポリフッ化ビニリデン、シリコン樹脂、ポリエステル樹脂、ジターシャーリーブチルサリチル酸の金属化合物、スチレン系樹脂、アクリル樹脂、ポリアシド、ポリビニルラール、ニグロシン、アミノアクリレート樹脂、塩基性染料、塩基性染料のレーキ物、シリカ微粉末、アルミナ微粉末などが挙げられる。
【0138】
また樹脂分散型キャリアに用いられる樹脂としては、特に制限されないけれども、たとえば、スチレンアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素系樹脂、およびフェノール樹脂などが挙げられる。いずれも、トナー成分に応じて選択するのが好ましく、1種を単独で使用することができ、または2種以上を併用することができる。
【0139】
キャリアの形状は、球形または扁平形状が好ましい。またキャリアの粒径は特に制限されないけれども、高画質化を考慮すると、好ましくは10μm〜100μmに選ばれ、さらに好ましくは20μm〜50μmに選ばれる。さらにキャリアの抵抗率は、好ましくは10Ω・cm以上に選ばれ、さらに好ましくは1012Ω・cm以上に選ばれる。キャリアの抵抗率は、キャリアを0.50cmの断面積を有する容器に入れてタッピングした後、容器内に詰められた粒子に1kg/cmの荷重を掛け、荷重と底面電極との間に1000V/cmの電界が生ずる電圧を印加したときの電流値を読取ることから得られる値である。抵抗率が低いと、現像スリーブにバイアス電圧を印加した場合にキャリアに電荷が注入され、感光体にキャリア粒子が付着し易くなる。またバイアス電圧のブレークダウンが起こり易くなる。
【0140】
キャリアの磁化強さ(最大磁化)は、好ましくは10emu/g〜60emu/gに選ばれ、さらに好ましくは15emu/g〜40emu/gに選ばれる。磁化強さは、現像ローラの磁束密度にもよるけれども、現像ローラの一般的な磁束密度の条件下においては、10emu/g未満であると、磁気的な束縛力が働かず、キャリア飛散の原因となるおそれがある。また磁化強さが60emu/gを超えると、キャリアの穂立ちが高くなり過ぎる非接触現像では、像担持体と非接触状態を保つことが困難になる。また接触現像ではトナー像に掃き目が現れ易くなるおそれがある。したがって、キャリアの磁化強さ(最大磁化)は、10emu/g〜60emu/gに選ばれ、さらに好ましくは15emu/g〜40emu/gに選ばれる。
【0141】
二成分現像剤におけるトナーとキャリアとの使用割合は特に制限されず、トナーおよびキャリアの種類に応じて適宜選択できるけれども、樹脂被覆キャリア(密度5g/cm〜8g/cm)に例をとれば、現像剤中に、トナーが現像剤全量の2重量%〜30重量%、好ましくは2重量%〜20重量%含まれるように、トナーを用いればよい。また二成分現像剤において、トナーによるキャリアの被覆率は、40%〜80%であることが好ましい。
【実施例】
【0142】
以下に実施例および比較例を挙げ、本発明を具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、特に限定されるものではない。
【0143】
(離型剤の融点)
商品名:DSC220、セイコー電子工業株式会社製)を用い、離型剤1gを温度20℃から昇温速度毎分10℃で200℃まで昇温させ、次いで200℃から20℃に急冷させる操作を2回繰返し、DSC(Differential Scanning Calorimeter)曲線を測定した。2回目の操作で測定されるDSC曲線の融解に相当する吸熱ピークの頂点の温度を離型剤の融点として求めた。
【0144】
(トナー粒子群およびトナーの体積平均粒子径)
電解液(商品名:ISOTON−II、ベックマン・コールター社製)50mlに、トナー20mgおよびアルキルエーテル硫酸エステルナトリウム1mlを加え、超音波分散器(商品名:UH−50、STM社製)により超音波周波数20kzで3分間分散処理して測定用試料を調製した。この測定用試料について、粒度分布測定装置(商品名:MultisizerIII、ベックマン・コールター社製)を用い、アパーチャ径:100μm、測定粒子数:50000カウントの条件下に測定を行い、トナーの体積粒度分布からトナーの体積平均粒子径を求めた。
【0145】
(トナーの形状係数SF−2)
100mlビーカーに、トナー2.0g、アルキルエーテル硫酸エステルナトリウム1mlおよび純水50mlを加えて良く撹拌し、トナー分散液を調製した。このトナー分散液を、超音波ホモジナイザー(株式会社日本精機製作所製)により出力50μAにて5分間処理し、さらに分散させた。6時間静置して上澄み液を取り除いた後、純水50mlを加え、マグネチックスターラにて5分間撹拌した後、メンブランフィルター(口径1μm)を用いて吸引ろ過を行った。メンブランフィルター上の洗浄物をシリカゲル入りデシケーターにて約一晩、真空乾燥した。
【0146】
このようにして表面を洗浄したトナー粒子の表面に、スパッタ蒸着により金属膜(Au膜、膜厚0.5μm)を形成した。この金属膜被覆トナーから、走査型電子顕微鏡(商品名:S−570、株式会社日立製作所製)により、加速電圧5kVで、また1000倍の倍率で、無作為に200〜300個を抽出して写真撮影を行った。この電子顕微鏡写真データを、画像解析ソフト(商品名:A像くん、旭化成エンジニアリング株式会社製)で画像解析し、そこから形状係数を算出して得た。
【0147】
(トナー表面の離型剤の露出量)
トナー1gをヘキサン20mlに分散させ、スターラーを入れて10分間攪拌してヘキサンでトナー表層の離型剤を溶出させた後に、ろ過して40℃設定の乾燥機に一晩入れて乾燥させた。ヘキサンにより溶出処理したトナー1gを温度20℃から昇温速度毎分10℃で150℃まで昇温させ、次いで150℃から20℃までトナーを急冷させる操作を2回繰返し、DSC曲線を測定した。2回目の操作で測定されるDSC曲線の融解熱量によって、トナー中の離型剤の熱容量を計算した。処理していないトナーについても、同様の方法で熱容量を計算した。これらの熱容量の差からトナー表層の離型剤の露出量を見積もった。
【0148】
(実施例1)
[前混合工程]
ポリエステル樹脂A、81.8重量部、マスターバッチ(C.I.Pigment Red57:1を40重量%含有)12重量部、パラフィンワックス(離型剤、商品名:HNP10、日本精鑞株式会社製、酸価=0mgKOH/g、融点75℃)4.5重量部、アルキルサリチル酸金属塩(帯電制御剤、商品名:BONTRON E−84、オリエント化学株式会社製)1.5重量部を、ヘンシェルミキサで10分間混合することによって、混合物を作製した。
【0149】
[溶融混練工程]
前記混合物を、オープンロール型連続混練機(商品名:MOS320−1800、三井鉱山株式会社製)で溶融混練し、溶融混練物を作製した。
【0150】
[粉砕工程]
前記溶融混練物をカッティングミル(商品名:VM−16、菱興産業株式会社製)で粗粉砕して粗粉砕物を作製した後、粗粉砕物をカウンタジェットミルで微粉砕することで、第1粉砕物および第2粉砕物をそれぞれ作製した。
【0151】
[第1分級工程]
前記第1粉砕物において、ロータリー式分級機で過粉砕トナーを分級除去することによって、体積平均粒子径が約5.5μmである第1トナー粒子群を作製した。
【0152】
[球形化工程]
衝撃式球形化装置(商品名:ファカルティF−600型、ホソカワミクロン株式会社製)を用いて前記第2粉砕物を球形化処理し、第2粉砕物の球形化物を作製した。
【0153】
[第2分級工程]
前記第2粉砕物の球形化物において、ロータリー式分級機で過粉砕トナーを分級除去することによって、体積平均粒子径が約7.5μmである第2トナー粒子群を作製した。
【0154】
[混合工程]
前記第1トナー粒子群100重量部に対して、前記第2トナー粒子群を50重量部混合することによって、トナーを作製した。
【0155】
[外添工程]
トナー100重量部、および外添剤として疎水性シリカ(商品名:R−974、日本アエロジル株式会社製)2.2重量部と、疎水性チタン(商品名:T−805、日本アエロジル株式会社製)1.6重量部との合計3.8重量部をヘンシェルミキサ(商品名:FMミキサ、三井鉱山株式会社製)で混合することによってトナーに外添剤を外添し、実施例1のトナー(外添剤によるトナーの被覆率:80%)を作製した。この時の体積平均粒子径は、6.2μm、トナー形状係数SF−2は141であった。また、トナー表面の離型剤の露出量は1.8wt%であった。
【0156】
[二成分現像剤の作製]
キャリアとして、体積平均粒子径が45μmであるフェライトコアキャリアを用いて、キャリアに対するトナーの被覆率が60%となるようにV型混合器混合機(商品名:V−5、株式会社特寿工作所製)で20分間混合することによって、実施例1のトナーを含む二成分現像剤を作製した。
【0157】
[画像出力]
上記二成分現像剤をカラー複合機(商品名:MX−2700、シャープ株式会社製を用いて、厚さ約90μmで表面粗さRaが2.1μmの米国中質紙であるイゲバ紙上に出力した。この時の中間転写ベルト25の膜厚は55μm、クリーニングブレード圧は2.4gf/mmとした。
【0158】
(実施例2)
中間転写ベルトの膜厚を40μmにしたこと以外は実施例1と同様にして、実施例2のトナーおよびそれを含む画像形成装置を得た。
【0159】
(実施例3)
中間転写ベルトの膜厚を60μmにしたこと以外は実施例1と同様にして、実施例3のトナーおよびそれを含む画像形成装置を得た。
【0160】
(実施例4)
中間転写ベルトの膜厚を70μmにしたこと以外は実施例1と同様にして、実施例4のトナーおよびそれを含む画像形成装置を得た。
【0161】
(実施例5)
クリーニングブレード圧を1.8gf/mmにしたこと以外は実施例1と同様にして実施例5のトナーおよびそれを含む画像形成装置を得た。
【0162】
(実施例6)
クリーニングブレード圧を2.0gf/mmにしたこと以外は実施例1と同様にして実施例6のトナーおよびそれを含む画像形成装置を得た。
【0163】
(実施例7)
クリーニングブレード圧を2.8gf/mmにしたこと以外は実施例1と同様にして、実施例7のトナーおよびそれを含む画像形成装置を得た。
【0164】
(実施例8)
クリーニングブレード圧を3.0gf/mmにしたこと以外は実施例1と同様にして、実施例8のトナーおよびそれを含む画像形成装置を得た。
【0165】
(実施例9)
粉砕工程の条件を変更してトナーの粒子径を5.2μmにしたこと以外は実施例1と同様にして、実施例9のトナーおよびそれを含む画像形成装置を得た。
【0166】
(実施例10)
粉砕工程の条件を変更してトナーの粒子径を6.8μmにしたこと以外は実施例1と同様にして、実施例10のトナーおよびそれを含む画像形成装置を得た。
【0167】
(実施例11)
球形化工程での処理条件を変更して、トナーの形状係数SF−2を137にしたこと以外は実施例1と同様にして、実施例11のトナーおよびそれを含む画像形成装置を得た。
【0168】
(実施例12)
球形化工程での処理条件を変更して、トナーの形状係数SF−2を142にしたこと以外は実施例1と同様にして、実施例12のトナーおよびそれを含む画像形成装置を得た。
【0169】
(実施例13)
中間転写ベルトの材質をポリカーネートにしたこと以外は実施例1と同様にして、実施例13のトナーおよびそれを含む画像形成装置を得た。
【0170】
(実施例14)
離型剤の含有量を5.3重量部にしたこと以外は実施例1と同様にして、実施例14のトナーおよびそれを含む画像形成装置を得た。トナー表面の離型剤の露出量は2.4wt%であった。
【0171】
(実施例15)
離型剤の含有量を6.0重量部にしたこと以外は実施例1と同様にして、実施例15のトナーおよびそれを含む画像形成装置を得た。トナー表面の離型剤の露出量は2.7wt%であった。
【0172】
(実施例16)
第1粉砕物を第2粉砕物と同様に球形化処理したこと以外は実施例1と同様にして、実施例16のトナーおよびそれを含む画像形成装置を得た。トナー形状係数SF−2は136であった。
【0173】
(実施例17)
第2粉砕物を第1粉砕物と同様に球形化処理しない、すなわち球形化工程を行わなかったこと以外は実施例1と同様にして、実施例17のトナーおよびそれを含む画像形成装置を得た。トナー形状係数SF−2は142であった。
【0174】
(比較例1)
中間転写ベルトの膜厚を75μmにしたこと以外は実施例1と同様にして、比較例1のトナーおよびそれを含む画像形成装置を得た。
【0175】
(比較例2)
中間転写ベルトの膜厚を35μmにしたこと以外は実施例1と同様にして、比較例2のトナーおよびそれを含む画像形成装置を得た。
【0176】
(比較例3)
クリーニングブレード圧を1.6gf/mmにしたこと以外は実施例1と同様にして、比較例3のトナーおよびそれを含む画像形成装置を得た。
【0177】
(比較例4)
クリーニングブレード圧を3.2gf/mmにしたこと以外は実施例1と同様にして、比較例4のトナーおよびそれを含む画像形成装置を得た。
【0178】
(比較例5)
粉砕工程の条件を変更してトナーの粒子径を4.8μmにしたこと以外は実施例1と同様にして、比較例5のトナーおよびそれを含む画像形成装置を得た。
【0179】
(比較例6)
粉砕工程の条件を変更してトナーの粒子径を7.2μmにしたこと以外は実施例1と同様にして、比較例6のトナーおよびそれを含む画像形成装置を得た。
【0180】
(比較例7)
第1粉砕物を第2粉砕物と同様に球形化処理したこと以外は実施例1と同様にかつ、実施例12よりも球形化処理条件を強くして、比較例7のトナーおよびそれを含む画像形成装置を得た。トナー形状係数SF−2は134であった。
【0181】
(比較例8)
第2粉砕物を第1粉砕物と同様に球形化処理しない、すなわち球形化工程を行わず、粉砕条件を変更してトナーの粒子径を7.3μmにしたこと以外は実施例1と同様にして、比較例8のトナーおよびそれを含む画像形成装置を得た。トナー形状係数SF−2は143であった。
【0182】
実施例1〜17および比較例1〜8で得られたトナーおよびそれを含む画像形成装置の物性を表1にまとめた。
【0183】
【表1】

【0184】
実施例1〜17および比較例1〜8で得られたトナーおよびそれを含む二成分現像剤を用いて、中間転写ベルト耐久性、ベタガサツキ、むら、クリーニング性を下記の方法によって評価した。
【0185】
(中間転写ベルト耐久性)
中間転写ベルトの耐久性は以下のような加速テストを行った。
回転速度は300mm/secで空転させ、中間転写ベルト25にクラックが入るまでの時間を測定した。なお、後述の表2における評価基準は、次のとおりである。
◎:クラックが入るまでの時間が280時間以上
○:クラックが入るまでの時間が250時間以上280時間未満
△:クラックが入るまでの時間が220時間以上250時間未満
×:クラックが入るまでの時間が220時間未満
【0186】
(ベタガサツキ、むら)
定着用加熱ローラの表面温度が190℃のときに形成される画像について、分光光度計(商品名:X−Rite938、X−Rite社製)を用いてベタ画像部の光学反射濃度を測定してこれを画像濃度とし、画像濃度の10点平均が1.5になるように現像バイアスなどを調整して全面ベタ画像を印字した。画像濃度の10点測定でのばらつきをベタガサツキ、むら評価の指標とした。
◎:画像濃度の最大値と最小値の差が0.08未満
○:画像濃度の最大値と最小値の差が0.08以上0.10未満
△:画像濃度の最大値と最小値の差が0.10以上0.15未満
×:画像濃度の最大値と最小値の差が0.15以上
【0187】
(クリーニング性)
トナー5部を体積平均粒子径45μmのフェライトコアキャリア95部とそれぞれ混合した二成分現像剤をカラー複合機(商品名:MX−2700、シャープ株式会社製)に充填し、評価用紙として、厚さ約60μmで表面粗さRaが1.0μmの国内中質紙(シャープ株式会社推奨紙)MI紙を用いて、印字率が5%のチャートを連続印字し、3万枚印字後にテストチャートを形成した。テストチャートとして、全面べた画像、細線チャートおよび白紙(印字率0%)の3種類を形成した。この3種類のテストチャートの画像欠陥、すじ等を目視で確認し、3万枚で画像評価を行った。また、3万枚で画像欠損、すじ等が発生しなかったものは、さらに2万枚印字して画像評価を行った。評価基準は次のとおりである。
◎:非常に良好。5万枚印字でも、3種類のテストチャートすべてに画像欠損、すじ等が発生していない。
○:良好。3万枚印字3種類のテストチャートすべてに画像欠損、すじ等が発生していないが、5万枚では画像欠損、すじ等が発生している。
△:やや良好。1種類のテストチャートのみ、若干の画像欠損、すじ等が発生している。
×:実使用不可。1種類以上のテストチャートに画像欠損、すじ等が発生している。
【0188】
(総合評価)
以下の総合評価基準に基づいて評価した。
◎:非常に良好。評価結果すべて◎で○、△および×がない。
○:良好。評価結果に1つ○があり、△、×はない。
△:実使用上問題なし。評価結果に1つ△があり、×はない。
×:不良。評価結果に1つ以上×がある。
【0189】
実施例1〜17および比較例1〜8で得られたトナーおよびそれを含む二成分現像剤の評価結果および総合評価結果を、表2に示す。
【0190】
【表2】

【0191】
以上の結果から、実施例1〜17から明らかなように、転写ベルトの膜厚を40μm〜70μmとし、クリーニングブレードの線圧を1.8gf/mm〜3.0gf/mmとし、トナーの形状係数SF−2を135以上143未満とすることによって、表面の粗い用紙を使っても、ベタガサツキ、むらのない画像を形成し、かつ転写ベルトの耐久性も良好な画像形成装置とすることができることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0192】
【図1】本発明の実施の一形態である画像形成装置100の構成を模式的に示す断面図である。
【図2】本発明の画像形成装置に用いられるトナーに含まれるトナー粒子の製造方法の一例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0193】
2 画像形成部
3 転写手段
4 定着手段
5 記録媒体供給手段
6 排出手段
11 感光体ドラム
12 帯電手段
13 露光ユニット
14 現像装置
15 クリーニングユニット
20 現像槽
21 トナーホッパ
25 中間転写ベルト
26 駆動ローラ
27 従動ローラ
28 中間転写ローラ
29 転写ベルトクリーニングユニット
30 転写ローラ
31 定着ローラ
32 加圧ローラ
35 自動給紙トレイ
36 ピックアップローラ
37 搬送ローラ
38 レジストローラ
39 手差給紙トレイ
40 排出ローラ
41 排出トレイ
100 画像形成装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
感光体と、感光体表面にトナー像を形成するトナー像形成手段と、感光体表面のトナー像を転写ベルト上に転写する一次転写手段と、転写ベルトをクリーニングするクリーニングブレードと、転写ベルト上のトナー像を記録媒体に転写する二次転写手段と、記録媒体に転写される未定着トナー像を記録媒体に定着させる定着手段とを含む画像形成装置において、
転写ベルトの膜厚が40μm〜70μmであり、
クリーニングブレードの線圧が1.8gf/mm〜3.0gf/mmであり、
体積平均粒子径が5μm〜7μmであり、かつ形状係数SF−2が135以上143未満であるトナーを用いることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記転写ベルトは、ポリイミド系樹脂から成ることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
トナー表面の離型剤の露出量が、トナー全量の2.5重量%以下のトナーを用いることを特徴とする請求項1または2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
粉砕トナーの全部または一部を球形化処理したトナーを用いることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の画像形成装置。
【請求項5】
少なくとも、結着樹脂、着色剤および離型剤を含む樹脂組成物を粉砕した、第1粉砕物と、第1粉砕物より体積平均粒子径の大きい第2粉砕物とを作製する粉砕工程と、
第1粉砕物を分級して第1トナー粒子群を作製する第1分級工程と、
第2粉砕物を球形化処理後に分級して、第1トナー粒子群より体積平均粒子径の大きい第2トナー粒子群を作製する第2球形化・分級工程、もしくは、第2粉砕物を分級して、第1トナー粒子群より体積平均粒子径の大きい第2トナー粒子群を作製後に球形化処理する第2分級・球形化工程と、
第1トナー粒子群と第2トナー粒子群とを混合する混合工程とを経て製造されたトナーを用いることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−300699(P2009−300699A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−154602(P2008−154602)
【出願日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】