説明

画像形成装置

【課題】セキュリティ管理を安価で確実に行うことができる画像形成装置を提供するようにする。
【解決手段】本体側非接触通信回路11は、給紙部15内の転写紙40に組み込まれたRFIDチップ41から転写紙情報を読み取り、その転写紙情報とユーザからの転写紙の設定内容とが一致している場合は、印刷ジョブ情報を書き込み、画像を形成した後、排紙部16から転写紙40を排紙する。排紙部16の本体側非接触通信回路12は、排紙後の転写紙40のRFIDチップ41から印刷ジョブ情報を読み取る。この印刷ジョブ情報に基づいて、印刷ジョブの発行元の情報処置装置に対して転写紙回収通知を行い、装置内の画像データを消去する。所定時間経過しても回収されない場合は、所定回数の回収通知を繰り返し行い、それでも回収されない場合は、画像形成装置の管理者にその旨を通知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関し、詳細には、複数の情報処理装置からネットワークを介して印刷ジョブ情報を受け取る画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、デジタルコピアやレーザプリンタなどの画像形成装置において、セキュリティ意識が高まってきており、出力文書に対してより一層の管理が求められている。また、近年、物流や在庫管理などを簡素化するため、商品に非接触の不揮発性記憶手段を添付することが増えてきている。例えば、不揮発性メモリが内蔵され電磁誘導により非接触で情報伝達が可能なRFID(Radio Frequency Identification)チップが商品等に添付されている。
【0003】
また、電子写真方式を用いた画像形成装置などでは、ユーザやサービス担当者が消耗品や寿命部品を容易に交換できるようにカートリッジ方式が広く用いられている。近年ではこれらのカートリッジ情報やリサイクルや消耗品の残量を管理するためにRFIDチップを搭載したものが使用されるようになってきた。このRFIDチップは、カートリッジの使用時間やトナー等の消耗品の残量データ等を逐次記憶させておき、これらのデータを読み取ることでカートリッジの交換時期等を判断するのに使用されている。
【0004】
例えば、特許文献1では、転写紙にRFIDチップを組み込み、そのRFIDチップから転写紙の特性情報を取得することにより、印刷条件を最適化する等の処理を行うことが提案されている。
【0005】
また、RFIDチップを用いたセキュリティ管理としては、ほとんどの場合、ユーザ認証等に用いられることが多く、認証の度にユーザが画像形成装置を操作して、ユーザ認証を行うという煩わしさがあった。
【0006】
そこで、これを解決するために転写紙の中にRFIDチップを組み込み、転写紙に対して、情報の読み取りと書き込みを行うことにより出力文書のセキュリティを高めようとするものがあった。例えば、特許文献2では、出力文書に対して複数の出力ビンを持ち、出力ビンに設置された情報読み取り部から転写紙に書き込まれた情報を読み取り、一定時間経過しても回収されない場合には回収催促を通知する提案を行っている。
【0007】
【特許文献1】特開2006−258947号公報
【特許文献2】特開2005−41608号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1にあっては、印刷条件を最適化できても、セキュリティ管理を行うことはできなかった。
【0009】
また、上記特許文献2にあっては、排出される出力ビンごとにRFIDチップの読み取り装置が必要となり、設置される出力ビンが多くなればなるほどRFIDチップの読み取り装置数が増えてしまい、コストアップになるという問題があった。
【0010】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、複数の情報処理装置からネットワークを介して印刷ジョブを送って画像形成装置を共用する際に、セキュリティ管理を安価に行うことのできる画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかる画像形成装置は、複数の情報処理装置からネットワークを介して印刷ジョブ情報を受け取る画像形成装置であって、画像形成用の転写紙を供給する給紙部には、転写紙に組み込まれた不揮発性メモリを有するRFIDチップから非接触で転写紙情報を読み取る第1の情報読取手段と、前記転写紙に組み込まれた不揮発性メモリを有するRFIDチップに印刷ジョブ情報を非接触で書き込む情報書込手段と、が共用して設けられ、画像形成後の転写紙を排紙する排紙部には、前記情報書込手段が前記転写紙の不揮発性メモリを有するRFIDチップに書き込まれた印刷ジョブ情報を非接触で読み取る第2の情報読取手段が設けられ、前記第1の情報読取手段が読み取った転写紙情報と、前記第2の情報読取手段が読み取った印刷ジョブ情報とを管理する情報管理手段と、前記情報管理手段が管理する前記印刷ジョブ情報に基づいて、前記ネットワークを介して印刷ジョブの発行元の情報処理装置に対し、画像形成された転写紙を回収するように通知する通知手段と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、給紙部には、転写紙に組み込まれたRFIDチップから転写紙情報を読み取る第1の情報読取手段と、転写紙に組み込まれたRFIDチップに印刷ジョブ情報を書き込む情報書込手段とが共用して設けられ、排紙部には、情報書込手段がRFIDチップに書き込んだ印刷ジョブ情報を読み取る第2の情報読取手段が設けられている。このように、RFIDチップに対して情報の読み取りと書き込みを行う手段を、2ヶ所に設置するだけで良いことから、安価に構成することができる。また、通知手段は、情報管理手段が管理する印刷ジョブ情報に基づいて、印刷ジョブの発行元の情報処理装置に対し、画像形成された転写紙を回収するように通知する。このように、画像形成された転写紙の排紙後、印刷ジョブの発行元の情報処理装置に対して回収通知がなされることから、転写紙のセキュリティ管理を行うことができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる画像形成装置の最良な実施の形態を詳細に説明する。
【0014】
図1は、本発明にかかる画像形成装置と複数の情報処理装置とがネットワークを介して接続されたシステム構成図である。図1に示すように、例えばフルカラーデジタル複写機などの画像形成装置10に対して、社内LAN(Local Area Network)などのネットワーク20を介してPC(パーソナルコンピュータ)などの複数の情報処理装置30a、30b、30cが接続されている。各情報処理装置30a、30b、30cは、個別に画像形成装置10に対して印刷ジョブ情報を送信し、印刷ジョブを依頼することにより、1台の画像形成装置10を複数の情報処理装置30a、30b、30cによって共用することができる。
【0015】
図2は、図1の画像形成装置の概略構成図である。図2に示すように、画像形成装置10は、第1の情報読取手段と情報書込手段とが共用設置された本体側非接触通信回路11、第2の情報読取手段としての本体側非接触通信回路12、廃棄スペース13、操作表示パネル14、給紙部15、排紙部16、画像形成部17、ADF18などを備えている。
【0016】
本体側非接触通信回路11は、画像形成用の転写紙40を供給可能に格納する給紙部15に設けられ、転写紙40に組み込まれたRFIDチップ41から非接触で転写紙情報を読み取ると共に、そのRFIDチップ41に対して印刷ジョブ情報を非接触で書き込むものである。このように、本体側非接触通信回路11は、RFIDチップ41に対して情報の読み取りと書き込みの両方の機能を1つにまとめて、共用している。
【0017】
本体側非接触通信回路12は、画像形成後の転写紙40を排紙する排紙部16に設けられ、本体側非接触通信回路11が転写紙40のRFIDチップ41に書き込まれている印刷ジョブ情報を非接触で読み取るものである。
【0018】
廃棄スペース13は、画像形成部17の一部に設けられ、ユーザが転写紙40の回収後に転写紙40に組み込まれたRFIDチップ41を取り外して廃棄するスペースである。この廃棄スペース13は、RFIDチップ41に書き込まれた印刷ジョブ情報などの漏洩を防止するためであり、RFIDチップ41を回収できるようにすることで、使用後のRFIDチップ41のセキュリティ管理を向上させることができる。
【0019】
操作表示パネル14は、画像形成装置10のユーザが各種設定や操作をタッチパネルやテンキーなどを使って行ったり、各種設定情報や操作情報を表示部に表示したりするものである。
【0020】
画像形成部17は、電子写真プロセスなどを使って依頼された印刷ジョブを実行することで、転写紙40に所望の画像を形成するものである。画像形成後の転写紙40は、排紙部16に排紙される。
【0021】
ADF18は、複数の紙原稿をコピーするような印刷ジョブがあった場合に、紙原稿をまとめてセットするだけで、紙原稿を1枚ずつオートフィードしながら原稿画像を読み取ることができる。
【0022】
図3は、不揮発性メモリを有するRFIDチップに対して非接触にて情報を読み取ったり書き込んだりする非接触通信回路の構成図である。図3に示すように、RFIDチップ41は、不揮発性メモリ42、RFID側非接触通信回路43、送信用アンテナ44、受信用アンテナ45などで構成されている。このRFID側非接触通信回路43は、さらに受信回路430、復調回路431、制御回路432、変調回路433、送信ドライバ434、電源回路435などで構成されている。
【0023】
また、本体側非接触通信回路11と本体側非接触通信回路12は、本体側の共通のCPU403に接続されて構成されている。なお、電源回路435は、受信用アンテナ45の電磁波を整流することにより電源を供給するものである。
【0024】
図3のRFID側非接触通信回路43と本体側非接触通信回路11,12とは、同じ回路構成になっている。本体側のCPU403から出力された信号は、本体側非接触通信回路11で伝送用の所定信号に変調され、不図示の送信用アンテナから送られると、RFIDチップ41の受信用アンテナ45で受けた受信信号を受信回路430で増幅して復調回路431に送る。復調回路431は、伝送用の所定信号に復調した後、制御回路432に送る。制御回路432は、不揮発性メモリ42に記憶する信号であれば、不揮発性メモリ42に送信する。制御回路432は、本体側から受信した信号が不揮発性メモリ42に記憶された情報を送信する指令であれば、不揮発性メモリ42の情報を変調回路433に送信する。変調回路433では、伝送用の所定信号に変調し、送信用アンテナ44に送る。
【0025】
本体側非接触通信回路11では、不図示の受信用アンテナで受けた受信信号を受信回路(430に相当)で増幅し、復調回路(431に相当)に送る。復調回路は、伝送用の所定信号に復調した後、制御回路(432に相当)に送られ、本体側のCPU403に送られる。
【0026】
図4は、給紙部に設けられた本体側非接触通信回路の設置例を示す図である。図4に示すように、給紙部15にセットされた転写紙40に組み込まれたRFIDチップ41に対して、本体側非接触通信回路11との間で転写紙情報の読み取りと、印刷ジョブ情報の書き込みとを行うことができる。給紙部15にセットされた転写紙40は、繰り出しローラ19によって1枚ずつ繰り出され、給紙される。
【0027】
また、図2に示す排紙部16に設けられた第2の情報読取手段としての本体側非接触通信回路12は、読み取り機能のみを使うものであるが、構成自体は本体側非接触通信回路11と同じであるため、構成説明を省略する。
【0028】
図5は、本実施の形態にかかる画像形成装置の構成ブロック図である。図5に示す画像形成装置としてのフルカラーデジタル複写機は、装置全体を制御するシステムコントローラボード500、操作パネルを制御する操作部制御ボード510、各種プログラムデータや画像データなどを記憶する大容量記憶部のHHD520、原稿画像の読み取りを行うスキャナ550、画像データを用紙に印字出力するプリンタ590などの各ユニットで構成されている。
【0029】
システムコントローラボード500には、スキャナ550とプリンタ590と操作部制御ボード510とが接続されると共に、PC(パーソナルコンピュータ)などが接続された社内LAN(Local Area Network)とLANインターフェースボード530を介して接続されている。本実施の形態における複数の情報処理装置30a、30b、30cとの通信は、このLANインターフェースボード530を経由して実施される。例えば、印刷ジョブの発行元の情報処理装置に対して画像形成された転写紙を回収するように通知したり、情報処理装置からの設定情報を受信したりする。さらに、システムコントローラボード500には、PCIバスを介してプリンタ590に接続されると共に、電話回線(ファクシミリ通信回線)に接続されたFCU(ファクシミリコントロールユニット)540がPCIバスを介して接続されている。
【0030】
プリンタ590は、エンジン制御ボード560と、画像データが表わす画像光を感光体ドラム上に投射して光書込みを行うLDB(レーザダイオードボード)570などで構成されている。また、PSU(電源装置)580は、画像形成装置を制御する電源を供給するユニットであり、メインSW582がオン(閉)されると、商用電源が供給され、その商用電源からAC制御回路581に商用ACが供給される。
【0031】
システムコントローラボード500は、通知手段を構成するCPU501、CPU501が使用する作業用メモリであるSRAM503、リチウム電池などを内蔵し、SRAM503のバックアップと時計を内蔵した時計手段としてのNV−RAM502、システムコントローラボード500の制御を行うプログラムが格納されたROM504、システムコントローラボード500のシステムバス制御、フレームメモリ制御、FIFO等のCPU周辺を制御するASIC505、ワークメモリ506、およびフレームメモリ507などで構成されている。
【0032】
このシステムコントローラボード500は、スキャナアプリケーション、ファクシミリアプリケーション、プリンタアプリケーション、およびコピーアプリケーション等の複数アプリケーション機能を有しており、システム全体の制御を行う。さらに、このシステムコントローラボード500は、操作部制御ボード510からの入力を解読して、本システムの設定とその状態内容を操作部制御ボード510の表示部に表示する。
【0033】
操作部制御ボード510には、LCDおよびキー入力を制御するASIC(LCDC)511、操作部制御ボード510を制御するCPU512、CPU512で使用する作業用メモリとしてのRAM513、および操作部制御ボード510の入力読込み、および表示出力を制御する操作部制御ボード510の制御プログラムが書き込まれたROM514などが搭載されている。この操作部制御ボード510には、図示していないが、システムコントローラボード500との通信によりパネルを操作して使用者がシステム設定の入力を行う入力部と、使用者にシステムの設定内容および状態を表示する表示部とを備え、入力の制御などを行っている。
【0034】
HDD520は、システムのアプリケーションプログラム、並びにプリンタや作像プロセス機器の機器付勢情報を格納するアプリケーションデータベース、あるいは、読取り画像や書込み画像のイメージデータとしての画像データ、並びにドキュメントデータを蓄える画像データベースとして用いられる。物理インターフェース、電気的インターフェースと共に、ATA/ATAPI−4に準拠したインターフェースによりシステムコントローラボード500に接続されている。
【0035】
スキャナ550は、カラーCCD551とSBU(Sensor Board Unit)552で構成されている。カラーCCD551は、3ラインカラーCCDであり、EVENch(偶数画素チャンネル)/ODDch(奇数画素チャンネル)のR、G、B画像信号を生成し、SBU552のアナログASIC(Application Specific IC)553〜555に入力される。SBU552は、アナログASIC553〜555、アナログASICの駆動タイミングを発生するタイミング発生回路/制御回路556、および出力I/F557を備えている。カラーCCD551の出力は、アナログASIC553〜555内部のサンプルホールド回路によりサンプルホールドされ、A/D変換されてR、G、Bの画像データに変換されると共に、シェーディング補正され、出力I/F(インターフェース)557から画像データバスを介して、後述するエンジン制御ボード560の画像データ処理器(IPP:Image Processing Processor;以下では単にIPPと記述)561へ送出される。
【0036】
エンジン制御ボード560は、画像形成の作像制御を主として行い、情報管理手段としてのCPU403、画像処理を行うIPP561、NV−RAM562、複写およびプリントアウトを制御するため必要なプログラムを内蔵したROM566、その制御に必要なSRAM563、I/O ASIC564,565およびインターフェース回路567を備えている。
【0037】
そして、NV−RAM562には、SRAMと、電源OFFを検知してSRAMの内容をEEPROMにストアするメモリが搭載されている。また、他の制御を行うCPU403との間で信号を送受信するシリアルインターフェースを備えたI/OASIC564,565は、エンジン制御ボード560が実装された近くのI/O(ソレノイド、クラッチ、モータ等)を制御するASICである。
【0038】
IPP561は、画像処理をおこなうプログラマブルな演算処理手段であり、階調処理等を行う。SBU552からIPP561に転送された画像データは、IPP561にて光学系およびデジタル信号への量子化に伴う信号劣化(スキャナ系の信号劣化)が補正されて、フレームメモリ507に書き込まれる。
【0039】
インターフェース回路567は、給紙部15や排紙部16などにセット、あるいは排紙された非接触式のRFIDチップ41に対してアクセスを行う場合のインターフェース回路である。また、接触式のメモリタグを使用する場合は、このインターフェース回路567を介してプロセスカートリッジなどのメモリタグに対してアクセスを行うようにしても良い。
【0040】
本体側非接触通信回路11は、給紙部15にセットされた転写紙40に組み込まれた非接触式のRFIDチップ41との間で情報の読み取りと書き込みを行う場合のインターフェースである。また、本体側非接触通信回路12は、排紙部16に排紙された転写紙40に組み込まれた非接触式のRFIDチップ41から情報を読み取る場合のインターフェースである。
【0041】
図6は、図2の操作表示パネルの一例を示す図である。図6に示す操作表示パネル14には、操作状態や処理状況などの情報を表示する操作表示部140、入力用のテンキー141、コピー動作を開始させるスタートキー142、コピー処理の中止や設定を解除するクリア/ストップキー143などが設けられている。
【0042】
図7−1は、画像形成した転写紙を回収するよう印刷ジョブの発行元に通知するメッセージ例を示す図であり、図7−2は、ユーザが設定した転写紙と給紙部内の転写紙とが異なる場合のエラーメッセージ例を示す図であり、図7−3は、給紙部内の転写紙に以前の印刷ジョブ情報が書き込まれている場合の使用不可メッセージ例を示す図であり、図8は、本実施の形態にかかる動作を説明するフローチャートである。以下、図7および図8に基づいて、本実施の形態にかかる画像形成装置の動作について説明する。
【0043】
まず、図8に示すように、本実施の形態のかかる画像形成装置では、セキュリティ設定の有無を判断する(ステップS100)。ここでいうセキュリティ設定とは、セキュリティが必要な文書(人に見られたくない文書)に給料明細や出荷伝票といった転写紙のフォーマットがある程度決まっている物が多く、セキュリティをかける文書がそのようにフォーマットの決まった転写紙であることから、ユーザが転写紙の設定を行っている場合はセキュリティ設定有りと判断する。このように、セキュリティ設定の有無を判断するのは、全ての転写紙にセキュリティをかける必要がなく、セキュリティ設定が不要な転写紙にはこれらの処理が省略できるからである。また、セキュリティ設定を行う転写紙をユーザが選択することができるが、これによってユーザの使い易さをより一層向上させることができる。
【0044】
続いて、図2の給紙部15に設置されている本体側非接触通信回路11は、転写紙40に組み込まれているRFIDチップ41の不揮発性メモリに記憶された転写紙情報を読み取る(ステップS101)。そこで、CPU403およびCPU501は、ユーザからの転写紙の設定内容と、給紙部15にある転写紙40のRFIDチップ41から読み取った転写紙情報とを比較して、両者が一致しているか否かを判断する(ステップS102)。
【0045】
ステップS102において、設定された転写紙と読み取った転写紙情報とが一致していれば、給紙部15の本体側非接触通信回路11は、給紙部15にセットされている転写紙40のRFIDチップ41に対して、印刷ジョブ情報を書き込む(ステップS103)。この時書き込まれる印刷ジョブ情報としては、ジョブ発行元情報、画像形成装置識別情報、印刷枚数情報、印刷堆積順情報、印刷実行時刻情報、ジョブ完了情報などがある。このように、印刷ジョブ情報の中には、これらの情報が含まれているため、排紙後の転写紙から読み取ることによって種々の制御を行うことが可能となる。
【0046】
そして、図2の給紙部15から当該転写紙を繰り出して、画像形成部17に搬送し、印刷ジョブに基づく画像形成を行って、排紙部16に画像形成後の転写紙40が排紙される(ステップS104)。排紙部16には、本体側非接触通信回路12が設置されているため、排紙後の転写紙40のRFIDチップ41から印刷ジョブ情報を読み取る(ステップS105)。
【0047】
図5に示すシステムコントローラボード500のCPU501は、本体側非接触通信回路12によって読み取った印刷ジョブ情報に基づいて、印刷ジョブの発行元を特定し、ジョブ発行元である情報処置装置(30a、30b、30cのいずれか)の表示部に、出力を行った画像形成装置の識別情報、印刷枚数情報、印刷堆積順情報、および印刷ジョブの完了情報等を通知して表示させ、転写紙40を迅速に回収するように促す(ステップS106)。このように、排紙後の転写紙から読み取った印刷ジョブ情報に基づいて、ジョブ発行元である情報処理装置のユーザに回収通知を行うため、回収に必要な情報を正確かつ確実に通知することができる。印刷ジョブの発行元に回収通知を行うメッセージ例としては、例えば、図7−1に示すようなメッセージを表示させることができる。
【0048】
また、上記本体側非接触通信回路12は、ここではアンチコリジョン機能に対応している。アンチコリジョン機能とは、RFIDチップのリーダ/ライタが検出範囲内にある複数のRFIDチップから同時に返信を受けることができる衝突防止機能のことであり、複数のRFIDチップが組み込まれた転写紙が排紙されていても、これらを一括処理することができる。このため、ジョブ発行元に対するジョブ完了/転写紙回収通知は、複数のジョブ発行元である情報処理装置に対して行うことができる。
【0049】
さらに、排紙部16の本体側非接触通信回路12で排紙された転写紙40から印刷ジョブ情報を読み取り、画像形成後の転写紙40が排紙されたことを確認すると、画像形成装置内に蓄積されている画像データを消去する(ステップS107)。このため、セキュリティ設定された転写紙の情報が他に漏洩する恐れがなくなる。なお、後述するように、セキュリティ設定を行わない通常プリント動作時には、上記画像データの消去は行わない。
【0050】
転写紙40が排紙部16に排紙され、上記転写紙回収通知後にユーザが転写紙を回収しに来たかどうかは、排紙部16の本体側非接触通信回路12によって当該転写紙40の印刷ジョブ情報が読み取れるか否かで判断することができる(ステップS108)。回収が完了するとリターンとなる。
【0051】
ステップS108において、転写紙40の排紙後、時計機能を有するシステムコントローラボード500のNV−RAM502により所定の時間が経過したか否かを判断し(ステップS109)、所定時間の経過後に再度転写紙40の回収が完了したか否かを判断する(ステップS110)。
【0052】
ステップS110において、転写紙40の回収がまだ完了していなければ、ジョブ発行者に対して再度回収通知を行った後(ステップS111)、転写紙40の回収が完了したか否かが判断され(ステップS112)、回収が完了していなければ所定回数回収通知を行ったか否かを判断する(ステップS113)。回収通知が所定回数に達していなければ、上記ステップS111に戻り、転写紙の回収通知が所定回数に達するまで繰り返し行われる。なお、この時の通知間隔時間やジョブ発行元に対して行う回収通知回数の設定については、画像形成装置10の操作表示パネル14、あるいは情報処理装置30a、30b、30cから設定することが可能である。このように、通知間隔時間や通知回数の設定をユーザ側で自由に設定することができるため、ユーザの状況に応じた使いやすい状況を作り出すことができる。また、転写紙の回収通知を行わないように設定することも可能である。
【0053】
ステップS113において、所定回数回収通知を行っても転写紙40が回収されない場合は、ジョブ発行者(情報処理装置側)ではなく、画像形成装置の管理者に対して転写紙が回収されない旨の通知を行う(ステップS114)。その通知方法としては、例えば、画像形成装置10の操作表示パネル14の操作表示部140にセキュリティ文書が回収されていない旨を通知するか、電子メールを用いて通知するようにしても良い。
【0054】
また、上記ステップS102において、ユーザが設定した転写紙とRFIDチップ41に書き込まれている転写紙情報とが一致せず、読み取った転写紙情報の中に以前の印刷ジョブ情報が含まれている場合(ステップS115)、システムコントローラボード500のCPU501は、セキュリティ設定された転写紙の裏紙と判断し、プリント動作を中止して、ジョブ発行元のユーザに対して当該転写紙を破棄するように通知する(ステップS117)。このように、一度セキュリティ設定された転写紙を裏紙として使用している場合は、容易に検出可能であって、その場合には、印刷動作を中止してセキュリティ設定された転写紙を破棄するように通知することで、セキュリティを向上させることができる。その通知方法としては、例えば、情報処理装置の表示部に図7−3に示すようなメッセージを表示する。
【0055】
また、上記ステップS102において、ユーザが設定した転写紙とRFIDチップ41に書き込まれている転写紙情報とが一致せず、読み取った転写紙情報の中に以前の印刷ジョブ情報が含まれていない場合(ステップS115)は、セキュリティ設定に基づいて画像形成を行うことができないため、システムコントローラボード500のCPU501からジョブ発行元のユーザに対してエラー情報を表示して(ステップS116)、転写紙の再設定をユーザに促すようにする。このように、ユーザが設定した転写紙と実際の転写紙とが異なる場合は、ユーザにエラーを通知して転写紙の設定変更、あるいは転写紙の交換を促すことにより、セキュリティの向上を図ることが可能となる。その通知方法としては、例えば、情報処理装置の表示部に図7−2に示すようなメッセージを表示する。
【0056】
さらに、上記ステップS100において、セキュリティ設定を行う必要がない場合は、転写紙の設定は行われない。その際、転写紙40に組み込まれたRFIDチップ41の不揮発性メモリに対して、印刷ジョブ情報の書き込み、あるいは転写紙排紙後の転写紙回収通知などは行われず、通常のプリント動作となる(ステップS118)。このため、セキュリティ設定不要な場合の操作性を向上させることができる。
【0057】
なお、本実施の形態にかかる画像形成装置には、図2に示すように、使用済みのRFIDチップ41を回収するための廃棄スペース13が設けられている。このため、セキュリティ設定された使用後の転写紙40からRFIDチップ41を取り外して、廃棄スペース13へ回収することにより、RFIDチップ41に書き込まれている情報の漏洩を防止することができる。
【0058】
以上説明したように、本実施の形態にかかる画像形成装置によれば、転写紙にRFIDチップを組み込み、これを用いて転写紙のセキュリティ設定を行うか否かを選択することができ、セキュリティ設定を行う場合であっても、RFIDチップとの間で情報をやり取りする本体側非接触通信回路は、給紙部と排紙部の2ヶ所に設置するだけで足りるため、非常に低コストで構成することができる。
【0059】
また、本実施の形態にかかる画像形成装置によれば、給紙部に設けられた本体側非接触通信回路11は、転写紙のRFIDチップから転写紙情報を読み取る情報読取機能と、そのRFIDチップに印刷ジョブ情報を書き込む情報書込機能とを共用するように構成したため、一層低コストに構成することができる。
【0060】
さらに、本実施の形態にかかる画像形成装置によれば、転写紙に組み込まれたRFIDチップを使って、セキュリティ設定を行うことができるため、転写紙のセキュリティを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明にかかる画像形成装置と複数の情報処理装置とがネットワークを介して接続されたシステム構成図である。
【図2】図1の画像形成装置の概略構成図である。
【図3】不揮発性メモリを有するRFIDチップに対して非接触にて情報を読み取ったり書き込んだりする非接触通信回路の構成図である。
【図4】給紙部に設けられた本体側非接触通信回路の設置例を示す図である。
【図5】本実施の形態にかかる画像形成装置の構成ブロック図である。
【図6】図2の操作表示パネルの一例を示す図である。
【図7−1】画像形成した転写紙を回収するよう印刷ジョブの発行元に通知するメッセージ例を示す図である。
【図7−2】ユーザが設定した転写紙と給紙部内の転写紙とが異なる場合のエラーメッセージ例を示す図である。
【図7−3】給紙部内の転写紙に以前の印刷ジョブ情報が書き込まれている場合の使用不可メッセージ例を示す図である。
【図8】本実施の形態にかかる動作を説明するフローチャートである。
【符号の説明】
【0062】
10 画像形成装置
11 本体側非接触通信回路
12 本体側非接触通信回路
13 廃棄スペース
14 操作表示パネル
15 給紙部
16 排紙部
17 画像形成部
40 転写紙
41 RFIDチップ
403 CPU
500 システムコントローラボード
501 CPU
502 NV−RAM
510 操作部制御ボード
520 HDD
550 スキャナ
560 エンジン制御ボード
590 プリンタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の情報処理装置からネットワークを介して印刷ジョブ情報を受け取る画像形成装置であって、
画像形成用の転写紙を供給する給紙部には、
転写紙に組み込まれた不揮発性メモリを有するRFIDチップから非接触で転写紙情報を読み取る第1の情報読取手段と、
前記転写紙に組み込まれた不揮発性メモリを有するRFIDチップに印刷ジョブ情報を非接触で書き込む情報書込手段と、
が共用して設けられ、
画像形成後の転写紙を排紙する排紙部には、
前記情報書込手段が前記転写紙の不揮発性メモリを有するRFIDチップに書き込まれた印刷ジョブ情報を非接触で読み取る第2の情報読取手段が設けられ、
前記第1の情報読取手段が読み取った転写紙情報と、前記第2の情報読取手段が読み取った印刷ジョブ情報とを管理する情報管理手段と、
前記情報管理手段が管理する前記印刷ジョブ情報に基づいて、前記ネットワークを介して印刷ジョブの発行元の情報処理装置に対し、画像形成された転写紙を回収するように通知する通知手段と、
を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記印刷ジョブ情報は、ジョブ発行元情報、画像形成装置識別情報、印刷枚数情報、印刷堆積順情報、印刷実行時刻情報、およびジョブ完了情報が含まれていることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記通知手段は、前記印刷ジョブの発行元である情報処理装置に、画像形成装置識別情報、印刷枚数情報、印刷堆積順情報、およびジョブ完了情報を通知することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記印刷ジョブ情報を書き込む転写紙、前記印刷ジョブ情報を読み取る転写紙、および読み取った印刷ジョブ情報に基づいて回収通知を行う転写紙を装置本体の操作パネル、あるいは前記情報処理装置上からの設定により選択可能としたことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記情報管理手段は、管理する情報に基づいて、装置本体の操作パネル、あるいは前記情報処理装置上から設定した転写紙と、前記給紙部内の転写紙とが異なると判断すると、
前記通知手段は、前記印刷ジョブの発行元である情報処理装置に対してエラーを通知することを特徴とする請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
時間を計る時計手段を備え、
前記排紙部に転写紙が排紙され、前記時計手段によって所定時間が経過しても前記第2の情報読取手段により回収が確認できない場合、
前記通知手段は、当該転写紙の印刷ジョブの発行元に対して所定回数だけ再度回収通知を行うことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記通知手段が印刷ジョブの発行元に対して所定回数だけ再度回収通知を行っても転写紙が回収されない場合は、装置本体の操作パネルの表示部に転写紙が回収されない旨を表示して、装置本体の管理者に通知することを特徴とする請求項6に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記通知手段が印刷ジョブの発行元に対して再度回収通知を行う通知回数の設定は、装置本体の操作パネルあるいは前記情報処理装置上から設定可能としたことを特徴とする請求項6に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記転写紙に組み込まれた不揮発性メモリを有するRFIDチップを破棄するスペースを、装置本体内に設けたことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記第1の情報読取手段は、前記給紙部の転写紙に組み込まれた不揮発性メモリを有するRFIDチップから非接触で転写紙情報を読み取り、
前記情報管理手段は、前記第1の情報読取手段が読み取った転写紙情報に以前の印刷ジョブ情報が書き込まれている場合、
前記通知手段は、セキュリティ文書が裏紙として使用されていると判断して、印刷ジョブの発行元の情報処理装置に対して当該転写紙が使用不可であることを通知することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7−1】
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【図7−2】
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【図7−3】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−46996(P2010−46996A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−215779(P2008−215779)
【出願日】平成20年8月25日(2008.8.25)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】