説明

画像形成装置

【課題】記録材上に有色トナー像を定着する態様で、光沢用の透明トナーの消費量を抑え、かつ、有色トナー像に対する光沢を変化させる。
【解決手段】記録材5上に有色トナー像Tを作製する有色作像手段1と、記録材5上の有色トナー像T上に透明トナー像Tを重ねて作製する光沢作像手段2と、記録材5上に作製された有色トナー像T及び透明トナー像Tを加熱定着させる定着手段3と、定着手段3による定着後の有色トナー像Tの光沢度Gが透明トナー像Tの画像密度Cinに応じて変化する光沢度特性を有し、有色トナー像Tの光沢度Gが、光沢度初期値Gから変化し始めると共に光沢度飽和値Gに達する光沢度可変領域に属する範囲内で透明トナー像Tの画像密度Cinを設定し、設定された画像密度Cinの透明トナー像Tを作製させることで有色トナー像Tの光沢度Gを調整する光沢調整手段4と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来における画像形成装置としては、例えば特許文献1〜7記載のものが既に提供されている。
特許文献1には、写真領域に対応する光沢の透明トナー層と画像全域に半光沢の透明トナー層を重ねて形成し、転写ベルト上の透明トナー層の上にカラーの各トナー像を重ねてカラートナー像とし、これ等の透明トナー層、カラートナー層を一括して記録紙上に転写する技術が開示されている。
特許文献2には、Y信号、M信号、C信号と、K信号の各信号のうちから得られるトナーの濃度を示すカバレッジデータの最大値とにより、透明トナーの重畳量を決定する技術が開示されている。
特許文献3には、光量測定手段により転写材の反射光量を測定する手段と、測定された反射光量に基づき透明トナーの現像量を制御する手段とを設けた技術が開示されている。
特許文献4には、画像に応じて、光沢性レベルを可変とするために、各色トナー像に対応して、透明トナー像を前記色トナー像上に重ね合わせる透明トナー像形成手段と、該透明トナー像の前記色トナー像との重ね合わせ度合いを可変制御する透明トナー像形成手段とを備える技術が開示されている。
特許文献5には、透明トナーには、やや大きめの粒径を持つものを用い、これをフイルム化して着色トナーを覆うことにより定着性を大きく向上させる技術が開示されている。
特許文献6には、定着後の透明トナーによるトナー像の光沢度を、光沢度センサによって検出し、その検出結果に基づいて、目標の光沢度を達成するための現像カートリッジの現像コントラストを決定する技術が開示されている。
特許文献7には、有色トナー像と透明トナー像が重ねて定着された領域の光沢度を検知する光沢度検知手段と、検知手段の検知結果に基づいて、透明トナーの記録材上における単位面積当たりのトナー量を制御する制御手段と、を有する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−207334号公報(発明の実施の形態,図1)
【特許文献2】特開平10−055085号公報(発明の実施の形態,図1)
【特許文献3】特開平11−249375号公報(発明の実施の形態,図1)
【特許文献4】特開2002−082508号公報(発明の実施の形態,図1)
【特許文献5】特開2002−202645号公報(発明の実施の形態及び実施例,図1)
【特許文献6】特開2005−275250号公報(発明を実施するための最良の形態,図1)
【特許文献7】特開2007−183593号公報(発明を実施するための最良の形態,図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする技術的課題は、記録材上に有色トナー像を定着する態様で、光沢用の透明トナーの消費量を抑え、かつ、有色トナー像に対する光沢を変化させることが可能な画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に係る発明は、記録材上に一若しくは複数の熱溶融性の有色トナーによる有色トナー像を作製する有色作像手段と、記録材上の有色トナー像上に光沢用の熱溶融性の透明トナーによる透明トナー像を重ねて作製する光沢作像手段と、記録材上に作製された前記有色トナー像及び前記透明トナー像を加熱定着させる定着手段と、この定着手段による定着後の有色トナー像の光沢度が透明トナー像の画像密度に応じて変化する光沢度特性を有し、この光沢度特性のうち、有色トナー像の光沢度が、透明トナー像の画像密度0%より大きい下限境界値にて光沢度初期値から変化し始めると共に透明トナー像の画像密度100%未満の上限境界値にて光沢度飽和値に達する光沢度可変領域に属する範囲内で透明トナー像の画像密度を設定し、前記光沢作像手段に対し設定された画像密度の透明トナー像を作製させることで有色トナー像の光沢度を調整する光沢調整手段と、を備えたことを特徴とする画像形成装置である。
【0006】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る画像形成装置において、前記光沢調整手段は、有色トナー像に対する目標光沢度が透明トナー像を要するレベルか否かを判別する光沢要否判別部と、この光沢要否判別部の判別結果に基づいて、透明トナー像を要するレベルのときに透明トナー像の画像密度を設定する光沢調整処理を実施し、それ以外では前記光沢調整処理を実施しない調整処理部と、を有することを特徴とする画像形成装置である。
請求項3に係る発明は、請求項1又は2に係る画像形成装置において、前記光沢調整手段は、透明トナー像を重ねた有色トナー像に対する目標光沢度が選択可能な選択部を有し、この選択部にて選択された目標光沢度に合わせて透明トナー像を作製するときの画像密度を設定することを特徴とする画像形成装置である。
請求項4に係る発明は、請求項1ないし3いずれかに係る画像形成装置において、更に、記録材上に有色トナー像及び透明トナー像を重ねた有色トナー像の光沢度が計測可能な光沢計測手段を備え、前記光沢調整手段は、前記光沢計測手段による計測結果が表示可能な表示部を有し、この表示部の表示内容を参照することで、有色トナー像の目標光沢度に合わせて透明トナー像の画像密度を設定することを特徴とする画像形成装置である。
【0007】
請求項5に係る発明は、請求項1ないし4いずれかに係る画像形成装置において、前記透明トナーの粘弾性が前記有色トナーの粘弾性よりも低いことを特徴とする画像形成装置である。
請求項6に係る発明は、請求項5に係る画像形成装置において、前記光沢調整手段は、透明トナー像の画像密度が下限境界値から上限境界値に変化するにつれて有色トナー像の光沢度が光沢度初期値から光沢度飽和値へと増加するように変化する光沢度可変領域を有することを特徴とする画像形成装置である。
請求項7に係る発明は、請求項5又は6に係る画像形成装置において、前記光沢調整手段は、前記光沢作像手段による透明トナー像を作製するときは、透明トナー像の画像密度による第1の光沢調整処理に加えて、前記定着手段による加熱定着処理に伴うエネルギを増加させる第2の光沢調整処理を組み合わせることを特徴とする画像形成装置である。
請求項8に係る発明は、請求項1ないし4いずれかに係る画像形成装置において、前記透明トナーの粘弾性が前記有色トナーの粘弾性よりも高いものであり、前記光沢調整手段は、透明トナー像の画像密度が下限境界値から上限境界値に変化するにつれて有色トナー像の光沢度が光沢度初期値から光沢度飽和値へと減少するように変化する光沢度可変領域を有することを特徴とする画像形成装置である。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に係る発明によれば、記録材上に有色トナー像を定着する態様で、光沢用の透明トナーの消費量を抑え、かつ、有色トナー像に対する光沢を変化させることができる。
請求項2に係る発明によれば、記録材上に有色トナー像を定着する態様で、光沢用の透明トナーを用いない有色トナー像を作製することができるほか、光沢用の透明トナーを用いて有色トナー像に対する光沢を変化させることができる。
請求項3に係る発明によれば、本構成を有さない態様に比べて、有色トナー像に対する目標光沢度を容易に選択することができる。
請求項4に係る発明によれば、記録材上の有色トナー像に対する光沢度を目視確認しながら、有色トナー像に対する光沢を適切に変化させることができる。
請求項5に係る発明によれば、透明トナー像の画像密度を増加させることで、有色トナー像に対する光沢を増加するように変化させることができる。
請求項6に係る発明によれば、透明トナー像の画像密度を容易に設定でき、透明トナー像の画像密度を増加させることで、有色トナー像に対する光沢を増加するように変化させることができる。
請求項7に係る発明によれば、透明トナー像を重ねた有色トナー像に対する光沢をより増加させることができる。
請求項8に係る発明によれば、透明トナー像の画像密度を容易に設定でき、透明トナー像の画像密度を増加させることで、有色トナー像に対する光沢を低減するように変化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明が適用される画像形成装置の実施の形態の概要を示す説明図である。
【図2】実施の形態1に係る画像形成装置の全体構成を示す説明図である。
【図3】実施の形態1で用いられる画像形成装置の要部を示す説明図である。
【図4】(a)は中間転写体上に形成される画像構成例を示す説明図、(b)は記録材上に形成される画像構成例を示す説明図である。
【図5】図5で用いられるグロス計測パターンの一例を示す説明図である。
【図6】図5のグロス計測装置による計測結果例を示す説明図である。
【図7】実施の形態1で用いられる作像シーケンス制御例を示すフローチャートである。
【図8】図7に示すグロス設定処理例を示すフローチャートである。
【図9】実施の形態1に係る画像形成装置で作製した有色トナー像、透明トナー像に関し、(a)は有色トナー像、透明トナー像に対する表面での光散乱状態を模式的に示す説明図、(b)は有色トナー像上に透明トナー像を重ねたときにおける表面での光散乱状態を模式的に示す説明図、(c)は透明トナー画像密度が低い条件における表面での光散乱状態を模式的に示す説明図、(d)は透明トナー画像密度が高い条件における表面での光散乱状態を模式的に示す説明図である。
【図10】実施の形態2に係る画像形成装置の要部を示す説明図である。
【図11】実施の形態2で用いられるグロス設定処理例を示すフローチャートである。
【図12】(a)は比較の形態(実施の形態1)に係る画像形成装置で記録材上に形成される画像状態を示す説明図、(b)は実施の形態2に係る画像形成装置で記録材上に形成される画像状態を示す説明図である。
【図13】実施の形態3に係る画像形成装置の要部を示す説明図である。
【図14】実施の形態3における有色トナー像上に透明トナー像を重ねたときにおけるグロス特性例を示す説明図である。
【図15】実施の形態3に係る画像形成装置で作製した有色トナー像、透明トナー像に関し、(a)は有色トナー像、透明トナー像に対する表面での光散乱状態を模式的に示す説明図、(b)は有色トナー像上に透明トナー像を重ねたときにおける表面での光散乱状態を模式的に示す説明図、(c)は透明トナー画像密度が低い条件における表面での光散乱状態を模式的に示す説明図、(d)は透明トナー画像密度が高い条件における表面での光散乱状態を模式的に示す説明図である。
【図16】変形の形態1に係る画像形成装置を示す説明図である。
【図17】変形の形態2に係る画像形成装置を示す説明図である。
【図18】実施例1,2で用いられる有色トナー、透明トナーの粘弾性とグロスとの関係を示すグラフ図である。
【図19】実施例1に係る画像形成装置で作製する有色トナー像に透明トナー像を重ねたときのグロス特性例を示す説明図である。
【図20】実施例2に係る画像形成装置で作製する有色トナー像に透明トナー像を重ねたときのグロス特性例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
◎実施の形態の概要
図1は本発明が適用された画像形成装置の実施の形態の概要を示す。
同図において、画像形成装置は、記録材5上に一若しくは複数の熱溶融性の有色トナーによる有色トナー像Tを作製する有色作像手段1と、記録材5上の有色トナー像T上に光沢用の熱溶融性の透明トナーによる透明トナー像Tを重ねて作製する光沢作像手段2と、記録材5上に作製された前記有色トナー像T及び前記透明トナー像Tを加熱定着させる定着手段3と、この定着手段3による定着後の有色トナー像Tの光沢度が透明トナー像Tの画像密度Cinに応じて変化する光沢度特性を有し、この光沢度特性のうち、有色トナー像の光沢度Gが、透明トナー像Tの画像密度0%より大きい下限境界値Cにて光沢度初期値Gから変化し始めると共に透明トナー像Tの画像密度100%未満の上限境界値Cにて光沢度飽和値Gに達する光沢度可変領域に属する範囲内で透明トナー像Tの画像密度Cinを設定し、前記光沢作像手段2に対し設定された画像密度Cinの透明トナー像Tを作製させることで有色トナー像Tの光沢度Gを調整する光沢調整手段4と、を備えたものである。
【0011】
このような技術的手段において、有色作像手段としては、記録材5上に有色トナー(例えばイエロ(Y),マゼンタ(M),シアン(C),ブラック(K))による有色トナー像T(1次色トナー像、2次色トナー像、3次色トナー像を含む)を作製するものを広く含み、各色成分の有色トナー毎の画像形成部を有していてもよいし、一つの画像形成部として共通の像保持体の周囲に各色成分の有色トナーの現像部を配置する等適宜選定して差し支えない。また、記録材5に対しては画像形成部から直接転写する態様でもよいし、中間転写体を介して間接転写するようにしてもよい。
また、光沢作像手段2としては、光沢用の透明トナーによる透明トナー像Tを作製するものであり、記録材5上の有色トナー像Tに対して透明トナー像Tを重ねるように作製すればよい。例えば中間転写体を用いる画像形成装置にあっては、中間転写体の表面に透明トナー像Tを作製し、この透明トナー像T上に有色トナー像Tを作製するようにし、記録材5に一括転写するようにすればよい。ここで、「光沢用」とは通常光沢を増加させることを意味するが、本願では、光沢を低減させることをも含むものとする。
更に、定着手段3としては、記録材5上の有色トナー像T及び透明トナー像Tを加熱定着するものであれば、加熱源を含む加熱定着部材とこれに圧接して追従回転する加圧定着部材とを有する態様、電磁誘導を利用した加熱部材を有する態様、非接触な加熱用光源(例えばハロゲン光源、レーザ光源)を用いた態様など適宜選定して差し支えない。
更にまた、光沢調整手段4としては、有色トナー像Tの光沢度Gが透明トナー像Tの画像密度Cinに応じて変化する光沢度特性を有する態様を前提とする。
ここで、光沢度特性は、透明トナー像Tの画像密度Cinが下限境界値Cから上限境界値Cに変化する間、光沢度Gが光沢度初期値Gから光沢度飽和値Gに変化する光沢度可変領域を有している。本例の光沢調整手段4は、この光沢度特性に着目し、光沢度可変領域内で透明トナー像Tの画像密度Cinを設定し、この設定した画像密度Cinの透明トナー像Tを作製することで、有色トナー像Tの光沢度Gを調整する。
また、透明トナー像Tの画像密度Cinの設定については、有色トナー像Tの目標光沢度に応じて対応する透明トナー像Tの画像密度Cinを予め一義的に設定していてもよいし、有色トナー像Tの目標光沢度が変化する毎に、夫々に応じて透明トナー像Tの画像密度Cinを設定し直すようにしてもよい。
【0012】
次に、光沢調整手段4の代表的態様又は好ましい態様について説明する。
先ず、光沢調整手段4の好ましい態様としては、有色トナー像Tに対する目標光沢度が透明トナー像Tを要するレベルか否かを判別する光沢要否判別部4aと、この光沢要否判別部4aの判別結果に基づいて、透明トナー像Tを要するレベルのときに透明トナー像Tの画像密度Cinを設定する光沢調整処理を実施し、それ以外では前記光沢調整処理を実施しない調整処理部4bと、を有する態様が挙げられる。
本態様は、作像態様として、光沢用の透明トナー像Tを作製する態様に加えて、透明トナー像Tを作製しない態様をも考慮した。
ここで、光沢要否判別部4aとしては、ユーザにより光沢要否を選択する手段からの選択信号に基づいて光沢要否を判別するようにしたり、あるいは、目標光沢度のレベルに基づいて光沢要否を判別する等適宜選定して差し支えない。
また、光沢調整手段4の他の好ましい態様としては、透明トナー像Tを重ねた有色トナー像Tに対する目標光沢度が選択可能な選択部4cを有し、この選択部4cにて選択された目標光沢度に合わせて透明トナー像Tを作製するときの画像密度Cinを設定する態様が挙げられる。選択部4cは目標光沢度を選択するものであり、光沢調整手段4は選択した目標光沢度に合致するように透明トナー像Tの画像密度Cinを設定するようにすればよい。
【0013】
更に、光沢調整手段4による光沢調整をより行い易く実現する態様としては、更に、記録材5上に有色トナー像T及び透明トナー像Tを重ねた有色トナー像Tの光沢度Gが計測可能な光沢計測手段6を備え、前記光沢調整手段4は、前記光沢計測手段6による計測結果が表示可能な表示部4dを有し、この表示部4dの表示内容を参照することで、有色トナー像Tの目標光沢度に合わせて透明トナー像Tの画像密度Cinを設定する態様が挙げられる。
本態様において、光沢計測手段6は、記録材5上の有色トナー像T、あるいは、透明トナー像Tを重ねた有色トナー像Tの光沢度Gを計測するものであればよく、例えば予め決められたテストパターン画像(光沢度Gを連続的又は段階的に変化させた画像)を読み取り、その光沢度Gを計測するようにすれば、多段階に変化する光沢度情報を取得することが可能である。
また、光沢調整手段4は、光沢計測手段6の計測結果を表示部4dに表示することから、ユーザは表示部4dの表示内容を参照しながら、有色トナー像Tの目標光沢度に合わせて透明トナー像Tの画像密度Cinを設定することが可能である。
【0014】
また、光沢調整手段4の代表的態様として、有色トナー像Tの光沢度Gを増加させるには、透明トナーの粘弾性が有色トナーの粘弾性よりも低いことが必要である。
つまり、有色トナー、透明トナーの物性として粘弾性に着目し、n(透明トナーの粘弾性)>n(有色トナーの粘弾性)を満たすように設定すればよい。ここで、n>nを満たすということは、透明トナーによる透明トナー像Tの方が有色トナーによる有色トナー像Tよりも平滑性が良好で光沢度Gが高いことを意味する。そして、粘弾性の差が大きい程、光沢度初期値Gと光沢度飽和値Gとの間の光沢度Gの差分を大きくすることが可能である。
本態様において、光沢度特性の代表的態様としては、透明トナー像Tの画像密度Cinが下限境界値Cから上限境界値Cに変化するにつれて有色トナー像Tの光沢度Gが光沢度初期値Gから光沢度飽和値Gへと増加するように変化する光沢度可変領域を有するものが挙げられる。
本例は、透明トナーが有色トナーよりも光沢度Gが高い態様を前提とし、有色トナー像Tに透明トナー像Tを重ねることで、当該部位の有色トナー像Tの光沢を増加させるために必要な特性である。
【0015】
更に、有色トナー像Tの光沢をより増加させる上で光沢調整手段4の好ましい態様としては、光沢作像手段2による透明トナー像Tを作製するときは、透明トナー像Tの画像密度Cinによる第1の光沢調整処理に加えて、定着手段3による加熱定着処理に伴うエネルギを増加させる第2の光沢調整処理を組み合わせる態様が挙げられる。
ここで、定着手段3による加熱定着処理に伴うエネルギを増加させるとは、定着速度を低減させたり、定着温度を上昇させたり、両者を組み合わせる等適宜選定して差し支えない。また、定着手段3による加熱定着処理に伴うエネルギを増加させると、透明トナー像Tがより溶融することになり、表面が更に平滑になるため、その分、透明トナー像Tの光沢度Gが高くなる。
また、光沢度特性の他の態様としては、透明トナー像Tの画像密度Cinが下限境界値Cから上限境界値Cに変化するにつれて有色トナー像Tの光沢度Gが光沢度初期値Gから光沢度飽和値Gへと減少するように変化する光沢度可変領域を有するものが挙げられる。
本例は、透明トナーの粘弾性が有色トナーの粘弾性よりも高いものであることを前提とし、有色トナー像Tに透明トナー像Tを重ねることで、当該部位の有色トナー像Tの光沢を低減させるための態様である。
【0016】
以下、添付図面に示す実施の形態に基づいて本発明をより詳細に説明する。
◎実施の形態1
<画像形成装置の全体構成>
図2は実施の形態1に係る画像形成装置の全体構成を示す説明図である。
同図において、画像形成装置100は、装置筐体101の上部に配置されて原稿台111上の原稿112を読み取る原稿読取装置110と、装置筐体101内に組み込まれて記録材90に対して画像を形成する作像装置120と、を備えている。
そして、作像装置120は、例えば複数の色成分画像(本例ではシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロ(Y)、ブラック(K)の有色トナー像)を形成する有色画像形成部としての有色作像エンジン20(20a〜20d)と、この有色トナー像に対して光沢を付与するために有色トナー像に重ねて光沢用の透明トナー像を形成する光沢画像形成部としての光沢作像エンジン30と、有色作像エンジン20及び光沢作像エンジン30にて形成されたトナー像を順次転写(1次転写)して保持する中間転写体40と、この中間転写体40上に形成された有色トナー像及び透明トナー像を含む重ね画像を記録材90に一括転写(2次転写)する一括転写装置50と、一括転写された重ね画像を記録材90上に加熱定着させる定着装置70と、一括転写部位に記録材90を搬送する記録材搬送系80と、を備えたものである。
また、本実施の形態では、中間転写体40の搬送方向の上流側に光沢作像エンジン30が配設され、その下流側に有色作像エンジン20が、例えばシアンの有色作像エンジン20a、マゼンタの有色作像エンジン20b、イエロの有色作像エンジン20c、ブラックの有色作像エンジン20dの順に配設されている。
【0017】
本実施の形態において、原稿読取装置110は、例えば原稿台111の下方に原稿112面に光を照射する光源113と、原稿112面からの反射光を電気信号に変換するCCD等の光電変換素子114と、原稿112面からの反射光を光電変換素子114に導く光路を形成する適宜数のミラー115と、原稿112面からの反射光を光電変換素子114の結像面上で結像させる結像レンズ116と、を備えている。
また、有色作像エンジン20は、電子写真方式を採用したもので、夫々ドラム状の感光体21を有し、各感光体21の周囲には、感光体21が帯電されるコロトロン等の帯電装置22、帯電された感光体21上に静電潜像(主として光電変換素子114で読み込んだ画像データ又は他の記録媒体から読み込まれた画像データに基づく静電潜像)が書き込まれるレーザ走査装置などの潜像書込装置23、感光体21上に書き込まれた静電潜像が各色成分トナー(本例では、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロ(Y)、ブラック(K)のトナー)にて現像される現像装置24、感光体21上の各色成分の有色トナー像が中間転写体40に一次転写される例えば転写ロール等の一次転写装置25、及び、感光体21上の残留トナーが除去される清掃装置26を夫々配設したものである。
一方、光沢作像エンジン30は、有色作像エンジン20と同様に電子写真方式を採用したもので、有色作像エンジン20の各要素に対応する要素(感光体31、帯電装置32、潜像書込装置33、現像装置34、一次転写装置35及び清掃装置36)を具備している。但し、本例では、現像装置34は、有色作像エンジン20の現像装置24で用いられる有色トナーの粘弾性に比べて、粘弾性の低い特性の透明トナーにて感光体31上の静電潜像を現像することで透明トナー像を形成するものである。
【0018】
更に、中間転写体40は、複数(本例では4つ)の張架ロール41〜44に掛け渡されており、張架ロール41が図示外の駆動モータにて駆動される駆動ロールとして用いられ、張架ロール42〜44がいずれも従動ロールとして用いられ、更に、張架ロール43が中間転写体40に張力を付与する張力付与ロールとして用いられると共に張架ロール44が一括転写装置50の一要素として用いられる。
そしてまた、張架ロール41に対向する中間転写体40の表面側には、二次転写後の中間転写体40上の残留トナーを除去する清掃装置45が配設されている。
また、一次転写装置25,35にはトナーの帯電極性に対して逆極性の一次転写電圧が印加されるようになっており、これにより、感光体21上の各トナー像が中間転写体40に夫々静電転写され、中間転写体40上に重ね画像が形成されるようになっている。
更にまた、一括転写装置50は、中間転写体40の画像保持面側に圧接配置される二次転写ロール51と、中間転写体40の裏面側に配置されて二次転写ロール51の対向電極をなす対向電極ロール52(本例では張架ロール44を兼用)と、を備えている。本例では、対向電極ロール52には、トナーの帯電極性と同極性の二次転写電圧が印加されており、この対向電極ロール52と二次転写ロール51との間に形成される転写電界にて、中間転写体40上に保持された重ね画像が二次転写部位にて記録材90に静電転写されるようになっている。
【0019】
また、定着装置70は、例えば記録材90の画像保持面に接触して回転し且つ例えば内部に加熱源を有する加熱定着ロール71と、この加熱定着ロール71との間に記録材90を挟持して記録材90を加圧し且つ加熱定着ロール71と共に回転する加圧定着ロール72と、を備えている。
更に、記録材搬送系80は、記録材収容装置81に予め記録材90を収容しておき、この記録材収容装置81から記録材供給部材82にて記録材90を供給した後、二次転写部位の手前で位置合わせロール83にて記録材90を一旦位置合わせした後に二次転写部位に導き、搬送ベルト84を通じて定着装置70へと搬送し、図示外の記録材排出装置に記録材90を排出するようにしたものである。
【0020】
<画像制御系>
本実施の形態では、画像形成装置を制御する画像制御系が設けられている。この画像制御系は、図2及び図3に示すように、各種操作を行う操作パネル130からの操作信号、画像形成装置の各部に設置される各種センサ(動作センサ、記録材の位置センサなど)の出力信号又は外部機器からの信号を画像コントローラ140に入力し、この画像コントローラ140にて図7に示す一連の作像シーケンス制御を実行し、有色作像エンジン20、光沢作像エンジン30、中間転写体40,一括転写装置50、定着装置70及び記録材搬送系80に対して夫々制御信号を送出するようになっている。
本例では、操作パネル130には、グロス調整モードを選択するグロス調整ボタン(図示せず)が設置されており、このグロス調整ボタンを選択すると、後述するグロス調整を伴う作像シーケンスが実行されるようになっている。
更に、本実施の形態では、外部機器として、プリント画像編集用装置200が設けられている。
このプリント画像編集用装置200は、例えば専用のパーソナルコンピュータにて構成され、有色トナー像に透明トナー像を重ねることで有色トナー像にグロス(光沢度に相当)を付与するに当たり、透明トナー像の画像密度を適宜可変設定することにより有色トナー像のグロスを調整するものである。
また、本実施の形態では、画像形成装置にて作製された記録材90上の画像のグロスを計測するグロス計測装置210が設けられている。
このグロス計測装置210は、例えば図3に示すように、画像形成装置100にて記録材90上に予めグロス計測パターン画像220(詳細は後述する)を作製し、作製されたグロス計測パターン画像220のグロスを計測すると共に、その計測結果をプリント画像編集用装置200に通知するようになっている。
そして、プリント画像編集用装置200は、グロス計測装置210から通知された計測結果がグロス特性(詳細は後述する)として表示可能な表示部201を有すると共に、この表示部201には、更に、透明トナー画像密度Cinを設定するためのCin設定メニュー202、及び、Cinを入力するためのCin入力部203が選択操作可能に表示されるようになっている。
【0021】
<画像形成装置の作動>
次に、本実施の形態に係る画像形成装置の作動について説明する。
−作像シーケンス制御−
本実施の形態において、画像コントローラ140は、図7に示すように、操作パネル130のグロス調整ボタンによりグロス調整モードが選択されているか否かをチェックし、グロス調整モードが選択されていない場合には、光沢作像エンジン30を作動させずに、有色作像エンジン20(20a〜20d)のみを作動させ、グロス調整を伴わない作像シーケンスを実行する。
一方、画像コントローラ140は、グロス調整モードが選択されている場合には、有色作像エンジン20(20a〜20d)及び光沢作像エンジン30を作動させ、グロス設定が完了しているか否かをチェックし、グロス設定が完了している場合にはそのまま、グロス設定が完了していない場合にはグロス設定処理を実行した後に、グロス調整を伴う作像シーケンスを実行する。
ここで、グロス調整を伴う作像シーケンスは、図4(a)(b)に示すように、先ず、光沢作像エンジン30によってグロス調整された透明トナー像Tを作製すると共に、有色作像エンジン20(20a〜20d)にて各色成分(CMYK)の有色トナーによる有色トナー像Tを作製し、中間転写体40上では先に一次転写された透明トナー像T上に有色トナー像Tを一次転写するようにし、記録材90に対しては有色トナー像T上にグロス調整された透明トナー像Tを重ねるように一括転写し、定着装置70への定着処理を実施するようにしたものである。
尚、グロス調整を伴わない作像シーケンスは、グロス調整を伴う作像シーケンスから光沢作像エンジン30による透明トナー像Tの作像処理を除外したものである。
【0022】
−グロス設定処理−
次に、グロス設定処理について説明する。
本例では、グロス設定処理は、図8に示すように、グロス計測を実施するか否かを判別する。例えばプリント画像編集用装置200の表示部201において、グロス計測実施メニューを表示させ、このグロス計測実施メニューにてグロス計測の要否を選択するようにすればよい。
ここで、グロス計測を実施することを選択したと仮定すると、画像コントローラ140は、図8に示すように、有色作像エンジン20(20a〜20d)及び光沢作像エンジン30にてグロス計測パターン画像220を作製する。
○グロス計測パターン画像
図5はグロス計測パターン画像220の一例を示す。
同図において、グロス計測パターン画像220は、記録材90上に各色成分の画像密度100%の帯状の有色トナーバンド221を形成し、各有色トナーバンド221上に透明トナーの画像密度Cinが0%〜100%までの間で10%毎に変化させた矩形状の透明トナーパッチ225を有色トナーバンド221の長手方向に沿って段階的に形成したものである。
本例では、有色トナーバンド221は、必要な各色成分の有色トナーを1種類又は複数
種類を用いて形成すればよく、図5では、符号221Y〜221Kで示すように、イエロ(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)のものが例示されているが、本例では、更に、図示外のレッド(R)、グリーン(G)、ブルー(B)のものも形成されている。
【0023】
この後、グロス計測装置210は、図8に示すように、画像形成装置100にて作製された記録材90上のグロス計測パターン画像220のグロスを計測する。
このグロス計測装置210にて計測された計測結果は、プリント画像編集用装置200に通知され、その表示部201に計測結果に基づくグロス特性(光沢度特性に相当)230(図3参照)が表示される。
○グロス特性
図6に本実施の形態で計測されたグロス特性の一例を示す。
同図において、本例のグロス特性230は、各有色トナーの粘弾性に比べて透明トナーの粘弾性が低い態様を前提として得られるものであり、各色成分の有色トナーバンド221上に画像密度Cinが変化する透明トナーパッチ225を段階的に形成した部位におけるグロスG(本例では60°の反射光を計測)をプロットし、各プロット点を近似直線で接続したものである。
このグロス特性230は、透明トナーパッチ225の画像密度Cinが下限境界値Cから上限境界値Cに変化するにつれて有色トナーバンド221のグロスGがグロス初期値Gからグロス飽和値Gへと増加するように変化するグロスGが変化可能なグロス制御領域Mを有している。尚、グロス特性230のうち、透明トナーパッチ225の画像密度Cinが上限境界値Cを超えた領域はグロス飽和値Gが続くグロス飽和領域Xを示す。
ここで、各色成分の有色トナーバンド221のグロスGの変化は透明トナーパッチ225の画像密度Cinに応じて異なるが、いずれも、透明トナーパッチ225の画像密度Cinの下限境界値C付近で夫々のグロス初期値Gから増加し始め、上限境界値C付近で夫々のグロス飽和値Gに到達するようになっている。
【0024】
そして、オペレータは、図3及び図6に示すように、プリント画像編集用装置200の表示部201に表示されているグロス特性230のIの領域から、透明トナーなしの各色成分の有色トナーバンド221のグロス現在値を把握し、また、グロス特性230のIIの領域(グロス制御領域Mに相当)から透明トナーパッチ225の画像密度Cinに対するグロス現在値を把握することが可能である。
よって、オペレータは、プリント画像編集用装置200の表示部201に表示されたグロス特性230を参照し、有色トナーバンド221に対する目標グロスを決め、この目標グロスに対応する透明トナー画像密度Cinを容易に選定することが可能である。
そして、プリント画像編集用装置200には、透明トナー画像密度Cinに関するCin設定メニュー202のアプリケーションが予めインストールされており、オペレータは、プリント画像編集用装置200の表示部201に透明トナー画像密度Cinに関するCin設定メニュー202を読み出した後、Cin入力部203に選定したCin設定値(例えばグロス飽和点に相当する上限境界値C)を入力するようにすればよい。
このように、プリント画像編集用装置200にてCin入力部203にCin設定値を入力すると、画像コントローラ140は入力されたCin設定値を光沢作像エンジン30にセットする。
この段階において、グロス設定処理が完了する。
【0025】
−有色トナー像に対するグロス調整−
次に、有色トナー像Tに対するグロス調整について説明しておく。
本実施の形態では、透明トナーの粘弾性が有色トナーの粘弾性より低いため、図9(a)に示すように、定着装置70にて加熱定着された記録材90上の透明トナー像Tは有色トナー像Tに比べて熱溶融し易く、透明トナー像Tの表面平滑度が有色トナー像Tのそれよりも高い。このため、透明トナー像Tからの反射光は有色トナー像Tに比べて不必要に散乱することはなくなり、その分、透明トナー像Tの方が有色トナー像Tに比べて高グロスになる。
このため、本実施の形態では、図9(b)に示すように、有色トナー像Tのグロスを調整するに当たり、有色トナー像T上に透明トナー像Tを重ねると、有色トナー像Tの表面が露呈している場合に比べて、高グロスになる。
ここで、本例では、透明トナーは、その粘弾性が有色トナーの粘弾性に比べて低いものが使用されているが、粘弾性の差が大きいものを選定する程、グロス飽和値Gとグロス初期値Gとの差分ΔGを大きく確保することが可能である。
【0026】
更に、透明トナー画像密度Cinを低く設定すると、図9(c)に示すように、単位面積当たりの有色トナー像Tに対して透明トナー像Tが重なる割合をA、重ならない割合をBとすれば、Aに対するBの比率が大きくなることから、単位面積当たりの透明トナー像Tからの散乱の少ない反射光量が少なくなる。このため、このように、有色トナー像Tに対して透明トナー画像密度Cinの低い透明トナー像Tを重ねると、有色トナー像Tのグロスは低く調整される。
一方、透明トナー画像密度Cinを高く設定すると、図9(d)に示すように、Bに対するAの比率が大きくなることから、単位面積当たりの透明トナー像Tからの散乱の少ない反射光量が増加する。このため、このように、有色トナー像Tに対して透明トナー画像密度Cinの高い透明トナー像Tを重ねると、有色トナー像Tのグロスは高く調整される。
このとき、透明トナー画像密度Cinを上限境界値Cに設定すると、有色トナー像Tのグロスはグロス飽和値Gに調整されることになるが、上限境界値CはCin=100%未満であるため、透明トナーの消費量は少なく抑えられる。
【0027】
尚、本実施の形態では、プリント画像編集用装置200及びグロス計測装置210が外部機器として、画像形成装置の構成要素を構成しているが、必ずしもこれに限定されるものではなく、例えばプリント画像編集用装置200及びグロス計測装置210の全部若しくはいずれか一方を画像形成装置内に予め組み込むようにしてもよい。
【0028】
◎実施の形態2
図10は実施の形態2に係る画像形成装置の要部を示す説明図である。
同図において、画像形成装置100の基本的構成は、実施の形態1と略同様であるが、実施の形態1と異なるグロス設定処理を実行するものである。尚、実施の形態1と同様な構成要素については実施の形態1と同様な符号を付してここではその詳細な説明を省略する。
本実施の形態において、プリント画像編集用装置200は、実施の形態1と同様に、グロス計測装置210から通知された計測結果がグロス特性230として表示可能な表示部201を有すると共に、この表示部201には、透明トナー画像密度Cinを設定するためのCin設定メニュー202、及び、Cinを入力するためのCin入力部203が選択操作可能に表示されるようになっているが、実施の形態1と異なり、更に、表示部201には、有色トナー像TのグロスGを増加させるためのグロス増加メニュー205、及び、定着条件として定着エネルギを増加させるか否かを設定するための定着条件設定部206が選択操作可能に表示されるようになっている。これらのグロス増加メニュー205及び定着条件設定部206に関するアプリケーションは予めインストールされている。
【0029】
本実施の形態では、実施の形態1と略同様な作像シーケンス制御(図7参照)が行われる。
但し、本実施の形態におけるグロス設定処理は、図11に示すように、グロス計測を実施するか否かを判別し、グロス計測を実施することを選択した場合には、有色作像エンジン20(20a〜20d)及び光沢作像エンジン30にてグロス計測パターン画像220を作製した後、グロス計測装置210にてグロス計測パターン画像220のグロスGを計測し、プリント画像編集用装置200にグロス計測装置210による計測結果を通知し、表示部201に計測結果であるグロス特性230を表示する。
この後、オペレータは、透明トナー画像密度Cinに関するCin設定メニュー202を実行し、グロス特性230を参照しながら、Cin入力部203に選定したCin設定値を入力するようにすれば、画像コントローラ140にて光沢作像エンジン30にCin設定値がセットされる。
本実施の形態では、更に、表示部201にグロス増加メニュー205を選択するか否かが表示され、グロス増加メニュー205を選択すると、定着条件設定部206が表示される。
本例では、定着条件設定部206は、定着条件を変更するか否かを確認し、有色トナー像TのグロスGを更に増加させるために定着エネルギを増加するように定着条件を変更する。例えば「グロスをより増加させる定着条件に変更しますか?」という選択肢が表示され、YESを選択すれば、定着条件を変更する制御信号が画像コントローラ140に送出されるようになっている。
尚、定着エネルギを増加させるには、定着装置70の定着速度を遅く設定したり、定着温度を高く設定する等適宜選定することが可能である。
従って、例えば図12(a)に示す比較の形態(実施の形態1に相当)では、定着装置70は予め決められた定着条件に従って定着エネルギQaを記録材90上の有色トナー像T及び透明トナー像Tに供給することから、有色トナー像TのグロスGaは、グロス特性230に従って透明トナー画像密度Cinに関するCin設定値に応じたものに調整される。
これに対して、本実施の形態では、例えば図12(b)に示すように、グロス増加メニュー205を実行することで定着装置70の定着条件として定着エネルギを増加させるように変更したので、定着装置70からの定着エネルギQbは、比較の形態に比べて、ΔQaだけ増加することになるため、透明トナー画像密度Cinに関するCin設定値が同じであるとしても、定着エネルギQbの増加分だけ透明トナー像Tがより溶融することになり、透明トナー像Tの表面平滑度Sbが比較の形態の場合における透明トナー像Tの表面平滑度Saに比べて高くなる。このため、有色トナー像TのグロスGbは比較の形態に比べて高く調整される。
【0030】
◎実施の形態3
図13は実施の形態3に係る画像形成装置の要部を示す。
同図において、画像形成装置の基本的構成は、実施の形態1と略同様であるが、有色トナー、透明トナーの物性、及び、グロス特性が実施の形態1とは異なるものになっている。尚、実施の形態1と同様な構成要素については実施の形態1と同様な符号を付してここではその詳細な説明を省略する。
本実施の形態では、透明トナーの粘弾性が有色トナーの粘弾性よりも高いものが用いられている。
そして、本例におけるグロス特性230は、図14に示すように、各有色トナーの粘弾性に比べて透明トナーの粘弾性が高い態様を前提として得られるものであり、例えば特定の色成分の有色トナーバンド上に画像密度Cinが変化する透明トナーパッチを段階的に形成した部位におけるグロスG(本例では60°の反射光を計測)をプロットし、各プロット点を近似直線で結んだものである。尚、図14では、特定の色成分の有色トナーバンド上に画像密度Cinが変化する透明トナーパッチを段階的に形成した部位におけるグロスGをプロットしているが、他の色成分についても同様にしてグロスGの変化をプロットするようにすれば、各色成分の有色トナーバンドに対するグロス特性を求めることは可能である。
そして、本例では、グロス特性230は、透明トナーパッチの画像密度Cinが下限境界値Cから上限境界値Cに変化するにつれて有色トナーバンドのグロスGがグロス初期値Gからグロス飽和値Gへと減少するように変化するグロスGが変化可能なグロス制御領域Mを有している。尚、グロス特性のうち、透明トナーパッチ225の画像密度Cinが上限境界値Cを超えた領域はグロス飽和値Gが続くグロス飽和領域Xを示す。
【0031】
−有色トナー像に対するグロス調整−
本実施の形態における有色トナー像Tに対するグロス調整について説明しておく。
本実施の形態では、透明トナーの粘弾性が有色トナーの粘弾性より高いため、図15(a)に示すように、定着装置70にて加熱定着された記録材90上の透明トナー像Tは有色トナー像Tに比べて熱溶融し難く、透明トナー像Tの表面平滑度が有色トナー像Tのそれよりも低い。このため、透明トナー像Tからの反射光は有色トナー像Tに比べて散乱し易くなり、その分、透明トナー像Tの方が有色トナー像Tに比べて低グロスになる。
このため、本実施の形態では、図15(b)に示すように、有色トナー像TのグロスGを調整するに当たり、有色トナー像T上に透明トナー像Tを重ねると、有色トナー像Tの表面が露呈している場合に比べて、低グロスになる。
更に、透明トナー画像密度Cinを低く設定すると、図15(c)に示すように、単位面積当たりの有色トナー像Tに対して透明トナー像Tが重なる割合をA、重ならない割合をBとすれば、Aに対するBの比率が大きくなることから、単位面積当たりの透明トナー像Tからの散乱の多い反射光が少なく、有色トナー像Tからの散乱の少ない反射光が多くなる。このため、このように、有色トナー像Tに対して透明トナー画像密度Cinの低い透明トナー像Tを重ねると、有色トナー像TのグロスGは高く調整される。
一方、透明トナー画像密度Cinを高く設定すると、図15(d)に示すように、Bに対するAの比率が大きくなることから、単位面積当たりの透明トナー像Tからの散乱の多い反射光が増加し、有色トナー像Tからの散乱の少ない反射光が減少する。このため、このように、有色トナー像Tに対して透明トナー画像密度Cinの高い透明トナー像Tを重ねると、有色トナー像TのグロスGは低く調整される。
このとき、透明トナー画像密度Cinを上限境界値Cに設定すると、有色トナー像TのグロスGはグロス飽和値Gに調整されることになるが、上限境界値CはCin=100%未満であるため、透明トナーの消費量は少なく抑えられる。
尚、本実施の形態では、透明トナー画像密度Cinを適宜設定することで有色トナー像Tのグロス調整を行っているが、これに限られるものではなく、実施の形態2と同様に、更に定着装置70の定着条件を変更することで有色トナー像Tのグロス調整を行ってもよいことは勿論である。
【0032】
実施の形態1〜3では、画像形成装置100は、複数の有色作像エンジン20(20a〜20d)を用い、これとは別に光沢作像エンジン30を用いた態様であるが、必ずしもこれに限定されるものではなく、例えば以下に示すような変形の形態1,2に係る画像形成装置に本発明を適用してもよいことは勿論である。
◎変形の形態1
図16は変形の形態1に係る画像形成装置を示す。
同図において、画像形成装置100は、感光体310の周囲に、図示外の帯電装置(例えば帯電ロール)と、原稿320を露光走査して感光体310上に静電潜像を形成する露光装置330と、例えばイエロ、マゼンタ、シアン、ブラックの各有色トナー及び光沢用の透明トナーが収容された現像器341〜345を搭載した回転式現像装置340と、感光体310上の画像を一時的に保持する中間転写体350と、感光体310上の残留トナーを清掃する図示外の清掃装置とを配設し、中間転写体350のうち感光体310の対向部位には一次転写装置360を配設すると共に、中間転写体350の画像転写体のうち記録材90の通過部位には二次転写装置370を配設したものである。
【0033】
ここで、露光装置330は、原稿320に光源331からの光を照射し、原稿320からの反射光を画像読取部としてのスキャナ332にて色分解し、これを画像処理装置333にて画像処理した後、例えばレーザ光源334及び光学系335を通じて感光体310の露光部位に静電潜像書込光を照射するものである。
また、二次転写装置370の二次転写部位を通過した記録材90は例えば搬送ベルトからなる搬送装置380を通じて定着装置400に搬送される。
本例では、定着装置400は、適宜数の張架ロール411〜414に掛け渡される定着ベルト410と、この定着ベルト410の入口側に位置する張架ロールを加熱可能に構成
した加熱ロール411と、この定着ベルト410の出口側に位置する張架ロールを記録材90が剥離可能となるように構成する剥離ロール414と、加熱ロール411に対向して定着ベルト410を挟んで圧接配置される加圧ロール415と、定着ベルト410の内側に設けられ且つ加熱ロール411から剥離ロール414に至る途中で定着ベルト410を冷却する冷却部材としてのヒートシンク416と、を備えている。
特に、この変形の形態1では、感光体310上に透明トナーによる透明トナー像を形成するときに、この透明トナー画像密度Cinに応じた静電潜像を形成するようにすればよく、プリント画像編集用装置200やグロス計測装置210を用いることで、透明トナー画像密度Cinの設定処理を行うようにすればよい。
【0034】
◎変形の形態2
図17は変形の形態2に係る画像形成装置を示す。
同図において、画像形成装置100は、変形の形態1と略同様であるが、変形の形態1と異なり、回転式現像装置340の透明トナー現像器345に代えて、定着装置400の定着ベルト410上に光沢用の透明トナー像が形成せしめられる光沢作像装置460を具備したものである。
ここで、光沢作像装置460としては例えば電子写真方式を採用するようにすればよく、透明トナー像保持体として感光体461を用い、この感光体461に対向配置される帯電装置462、感光体461を露光する露光装置463、有色トナー像上に透明トナー像の形成領域を制御するための透明領域信号生成装置464、感光体461に対向配置される透明トナー現像装置465、感光体461上の透明トナー像を定着ベルト410に転写する転写装置466と、を備えたものが挙げられる。
本例においても、感光体461上に透明トナーによる透明トナー像を形成するときに、この透明トナー画像密度Cinに応じた静電潜像を形成するようにすればよく、プリント画像編集用装置200やグロス計測装置210を用いることで、透明トナー画像密度Cinの設定処理を行うようにすればよい。
【実施例】
【0035】
−トナー物性−
図18は有色トナー及び透明トナーの粘弾性とグロス(光沢度)との関係を示す。
同図において、実施の形態1に係る画像形成装置を実施例1として用い、中程度の粘弾性を有する有色トナー(イエロ(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K))、同じく中程度の粘弾性を有する透明トナー、高程度の粘弾性を有する有色トナーについて、記録材としてコート紙を使用して予め決められた定着条件で有色トナー像、透明トナー像を作製し、そのグロス(本例では60°)を測定したところ、中程度の粘弾性の有色トナー、透明トナーについてはグロスは60前後であり、高程度の粘弾性の有色トナーについてはグロスは40前後であった。尚、低程度の有色トナー、透明トナーについて同様にグロスを計測すると、80前後であった。
尚、トナーの粘弾性は、トナーの材料物性及び製造条件により適宜決まるものであり、低程度から高程度に亘って任意に製造可能である。
【0036】
◎実施例1
実施例1は、図18に示すように、有色トナーとして高程度の粘弾性トナーを、透明トナーとして中程度の粘弾性トナーを用い、実施の形態1におけるグロス計測パターン画像のグロスを計測することで得られるグロス特性を求めたものである。
計測結果を図19に示す。
同図によれば、グロス特性は透明トナー画像密度Cinに応じてグロスが変化するグロス制御領域Mを有していることが理解され、このグロス制御領域Mにおけるグロス初期値とグロス飽和値との差分を比較的大きく確保することが可能である。
◎実施例2
実施例2は、図18に示すように、有色トナー、透明トナーとして中程度の粘弾性トナー(本例では透明トナーの粘弾性が有色トナーの粘弾性より少し低い)を用い、実施の形態1におけるグロス計測パターン画像のグロスを計測することで得られるグロス特性を求めたものである。
計測結果を図20に示す。
同図によれば、グロス特性は透明トナー画像密度Cinに応じてグロスが変化するグロス制御領域Mを有していることが理解されるが、グロス制御領域Mにおけるグロス初期値とグロス飽和値との差分が狭いことが確認される。
このように、実施例1,2によれば、透明トナー、有色トナーの物性として粘弾性が異なり、しかも、有色トナーに比べて透明トナーの粘弾性が十分に低いものを選定するようにすれば、グロス特性としてグロス制御領域Mでグロス差分の大きい特性が得られることが理解される。
現に、有色トナーとして高程度の粘弾性トナーを用い、透明トナーとして低程度の粘弾性トナーを使用し、実施例1と同様にグロス特性を求めたところ、グロス特性としてグロス制御領域Mでグロス差分が実施例1よりも大きい特性を得ることが確認された。
【符号の説明】
【0037】
1…有色作像手段,2…光沢作像手段,3…定着手段,4…光沢調整手段,4a…光沢要否判別部,4b…調整処理部,4c…選択部,4d…表示部,5…記録材,6…光沢計測手段,G…光沢度,Cin…透明トナー画像密度,T…有色トナー像,T…透明トナー像

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録材上に一若しくは複数の熱溶融性の有色トナーによる有色トナー像を作製する有色作像手段と、
記録材上の有色トナー像上に光沢用の熱溶融性の透明トナーによる透明トナー像を重ねて作製する光沢作像手段と、
記録材上に作製された前記有色トナー像及び前記透明トナー像を加熱定着させる定着手段と、
この定着手段による定着後の有色トナー像の光沢度が透明トナー像の画像密度に応じて変化する光沢度特性を有し、この光沢度特性のうち、有色トナー像の光沢度が、透明トナー像の画像密度0%より大きい下限境界値にて光沢度初期値から変化し始めると共に透明トナー像の画像密度100%未満の上限境界値にて光沢度飽和値に達する光沢度可変領域に属する範囲内で透明トナー像の画像密度を設定し、前記光沢作像手段に対し設定された画像密度の透明トナー像を作製させることで有色トナー像の光沢度を調整する光沢調整手段と、
を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1記載の画像形成装置において、
前記光沢調整手段は、有色トナー像に対する目標光沢度が透明トナー像を要するレベルか否かを判別する光沢要否判別部と、この光沢要否判別部の判別結果に基づいて、透明トナー像を要するレベルのときに透明トナー像の画像密度を設定する光沢調整処理を実施し、それ以外では前記光沢調整処理を実施しない調整処理部と、を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の画像形成装置において、
前記光沢調整手段は、透明トナー像を重ねた有色トナー像に対する目標光沢度が選択可能な選択部を有し、この選択部にて選択された目標光沢度に合わせて透明トナー像を作製するときの画像密度を設定することを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項1ないし3いずれかに記載の画像形成装置において、
更に、記録材上に有色トナー像及び透明トナー像を重ねた有色トナー像の光沢度が計測可能な光沢計測手段を備え、
前記光沢調整手段は、前記光沢計測手段による計測結果が表示可能な表示部を有し、この表示部の表示内容を参照することで、有色トナー像の目標光沢度に合わせて透明トナー像の画像密度を設定することを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項1ないし4いずれかに記載の画像形成装置において、
前記透明トナーの粘弾性が前記有色トナーの粘弾性よりも低いことを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
請求項5記載の画像形成装置において、
前記光沢調整手段は、透明トナー像の画像密度が下限境界値から上限境界値に変化するにつれて有色トナー像の光沢度が光沢度初期値から光沢度飽和値へと増加するように変化する光沢度可変領域を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
請求項5又は6記載の画像形成装置において、
前記光沢調整手段は、前記光沢作像手段による透明トナー像を作製するときは、透明トナー像の画像密度による第1の光沢調整処理に加えて、前記定着手段による加熱定着処理に伴うエネルギを増加させる第2の光沢調整処理を組み合わせることを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
請求項1ないし4いずれかに記載の画像形成装置において、
前記透明トナーの粘弾性が前記有色トナーの粘弾性よりも高いものであり、
前記光沢調整手段は、透明トナー像の画像密度が下限境界値から上限境界値に変化するにつれて有色トナー像の光沢度が光沢度初期値から光沢度飽和値へと減少するように変化する光沢度可変領域を有することを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2013−68723(P2013−68723A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−206006(P2011−206006)
【出願日】平成23年9月21日(2011.9.21)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】