説明

異常状態検出方法およびシート状圧電センサ

【課題】シート状圧電センサを使用することによって、検出対象物の異常状態を低コストで高感度かつ高精度に検出できるようにした異常状態検出方法およびその方法に使用するシート状圧電センサを提供する。
【解決手段】検出対象物に可撓性を有するシート状の圧電センサ1を密着させて固定する手順と、前記検出対象物からの音響振動を前記圧電センサによって検出する手順と、前記音響振動の検出信号により前記検出対象物の異常状態を判別する手順とを有する異常状態検出方法である。そして、前記圧電センサは、可撓性を有するシート状の基板3上に圧電層4として、窒化アルミニウム、窒化ガリウム、窒化インジウム、酸化亜鉛およびニオブ酸リチウムから選択された一つの圧電性金属化合物を主成分とする薄膜を形成したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えばプラズマ処理装置の内部で発生する異常放電等の異常状態を媒質中を伝わる音響振動によって検出する異常状態検出方法およびその方法に使用するシート状圧電センサに関するものであり、さらに詳しくは、シート状圧電センサによってアコースティック・エミッション等を検出し、検出対象物の異常状態を高感度かつ高精度に検出するようにした異常状態検出方法およびその方法に使用するシート状圧電センサに関するものである。
【0002】
なお、本発明において、音響振動とは媒質中を伝わる音響的な波動または振動を指し、機械的振動、亜音波、音波、超音波、アコースティック・エミッション等を含むものである。
【背景技術】
【0003】
半導体製造の技術分野では、半導体ウェハの表面処理等を行うためにプラズマ処理装置が使用されている。このプラズマ処理装置は、チャンバー内でプラズマを発生して放電により半導体ウェハの表面処理等を行うものである。このようなプラズマ処理装置では、チャンバー内の雰囲気条件や異物の付着等によって異常放電が発生する場合がある。このような異常放電の発生が続くと、処理中の半導体ウェハやウェハ上に形成された電子素子に損傷や汚染を与える可能性があり、不良品発生の原因となる。このため、異常放電の発生を迅速に検出して対策を行う必要がある。
【0004】
プラズマ処理装置の異常放電を検出するものとしては、下記の特許文献1に記載されたような技術が公知である。特許文献1には、プラズマ処理装置のチャンバーの外壁に複数のAEセンサを配置して、異常放電に付随して発生するアコースティック・エミッションを検出することにより異常放電を検出するものが記載されている。なお、ここでAEセンサとは、アコースティック・エミッションを検出するセンサであり、通常、圧電センサが使用される。
【0005】
また、プラズマ処理装置以外でも、アコースティック・エミッションを検出することにより、対象物の破壊の進行等の異常状態を検出することが行われている。すなわち、種々の装置や機械等において、応力による変形や振動等により部品の内部に微小なクラック等が発生して部品の破壊が進行していくが、部品が完全に破壊してしまう以前の破壊進行時にアコースティック・エミッションが発生することが知られている。このアコースティック・エミッションを検出して、部品の破壊を事前に(完全に破壊する前に)検出しようというものである。このような検出にも圧電センサが使用される。
【0006】
アコースティック・エミッションでは、通常は超音波領域の周波数の音響振動を検出対象とすることが多いが、アコースティック・エミッション以外の周波数域の音響振動を検出することにより異常状態を検出することもできる。例えば、異常な機械的振動や異常音を検出して部品の変形や摩耗等を検出したりする場合である。このような検出にも圧電センサが使用できる。
【0007】
また、上記以外にも、対象物に対して超音波等の音響振動を照射し、対象物の内部の構造上の欠陥や、応力変形や振動等によって生じた亀裂等の欠陥によって反射された音響信号により、これらの欠陥を検出することが行われている。このような反射信号による構造欠陥の検出にも圧電センサが使用できる。
【特許文献1】特開2003−173896号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
プラズマ処理装置のチャンバーは、例えば円筒形のような曲面で形成されることが多く、AEセンサを取り付けるには専用の取付治具等が必要になり、取り付け作業が複雑になるとともに、そのためのコストも大きくなっていた。また、AEセンサの取付位置を自由に変更したり、AEセンサの数を任意に増加させたりすることも困難であった。さらに、チャンバーの曲面部分に対して、AEセンサの平面状検出面を接触させるため、AEセンサの検出面とチャンバーとの接触面積が小さくなってしまい、十分な検出感度が得られない場合もあった。
【0009】
また、その他の対象物の異常状態を検出する場合においても、従来の圧電センサでは、圧電センサを対象物に取り付けるために、それぞれの対象物の形状に応じた専用の取付治具や取付方法が必要になり、また、圧電センサ自体の構造も対象物の形状に適合した専用の構造とする必要があった。このため、検出のためのコストが必要以上に上昇してしまったり、センサの取付位置や個数を任意に設定することもできなかった。
【0010】
そこで、本発明は、シート状圧電センサを使用することによって、検出対象物の異常状態を低コストで高感度かつ高精度に検出できるようにした異常状態検出方法およびその方法に使用するシート状圧電センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の異常状態検出方法は、検出対象物に可撓性を有するシート状の圧電センサを密着させて固定する手順と、前記検出対象物からの音響振動を前記圧電センサによって検出する手順と、前記音響振動の検出信号により前記検出対象物の異常状態を判別する手順とを有する異常状態検出方法であって、前記圧電センサは、可撓性を有するシート状の基板上に圧電層として、窒化アルミニウム、窒化ガリウム、窒化インジウム、酸化亜鉛およびニオブ酸リチウムから選択された一つの圧電性金属化合物を主成分とする薄膜を形成したものである。
【0012】
また、上記の異常状態検出方法において、前記音響振動が前記検出対象物で発生するアコースティック・エミッションであれば、それを有効に検出することができる。
【0013】
また、上記の異常状態検出方法において、前記検出対象物が、プラズマを発生させ放電により半導体の処理を行うプラズマ処理装置である場合は、前記異常状態としての異常放電を有効に検出することができる。
【0014】
また、上記の異常状態検出方法において、前記基板は、高分子材料からなるものであることが好ましい。
【0015】
また、上記の異常状態検出方法において、前記圧電センサは、第1の電極層、前記基板、窒化アルミニウム薄膜、および、第2の電極層からなる積層体であることが好ましい。
【0016】
また、上記の異常状態検出方法において、前記固定する手順としては、柔軟性を有する緩衝部材を介して前記圧電センサを前記検出対象物に対して押圧して固定することができる。
【0017】
また、上記の異常状態検出方法において、前記緩衝部材は、発泡体であることが好ましい。
【0018】
また、上記の異常状態検出方法において、前記固定する手順としては、前記圧電センサを接着剤により前記検出対象物に貼り付けて固定することができる。
【0019】
また、本発明のシート状圧電センサは、第1の電極層と、前記第1の電極層の上面に配置された可撓性を有するシート状の基板と、前記基板上に形成された窒化アルミニウム薄膜と、前記窒化アルミニウム薄膜の上面に配置された第2の電極層と、前記第2の電極層の上面に配置された柔軟性を有する緩衝材よりなる緩衝層とを有するものである。
【0020】
また、上記のシート状圧電センサにおいて、前記基板は、高分子材料からなるものであることが好ましい。
【0021】
また、上記のシート状圧電センサにおいて、前記緩衝層は発泡体からなるものであることが好ましい。
【0022】
また、上記のシート状圧電センサにおいて、前記第1の電極層の下面に設けられた粘着剤層を有することが好ましい。
【0023】
また、本発明のシート状圧電センサは、第1の電極層と、前記第1の電極層の上面に配置された可撓性を有するシート状の基板と、前記基板上に形成された窒化アルミニウム薄膜と、前記窒化アルミニウム薄膜の上面に配置された第2の電極層と、前記第1の電極層の下面に設けられた粘着剤層とを有するものである。
【0024】
また、上記のシート状圧電センサにおいて、前記第2の電極層は、互いに分離され格子状に配列された複数の電極とすることもできる。
【発明の効果】
【0025】
本発明は、以上のように構成されているので、以下のような効果を奏する。
【0026】
可撓性を有するシート状圧電センサを検出対象物に密着させて簡単に固定できるので、検出対象物の異常状態を低コストで高感度かつ高精度に検出できる。また、曲面形状の検出対象物に対しても容易に形状適合させて取り付けることができる。また、透明度が良好なセンサとすることができ、ガラス窓のような透光性の部分に取り付けても、透光性を保ったまま音響振動を検出することができる。さらに、このシート状圧電センサは、耐熱性に優れているため、高温環境においても圧電性能を損なうことなく高感度かつ高精度の音響振動の検出が可能である。
【0027】
圧電センサがシート状に形成されて厚さが薄いことにより、共振周波数が高くなり高周波の音響振動の検出が可能となる。これにより、検出対象物で発生するアコースティック・エミッションも有効に検出することができる。
【0028】
検出対象物がプラズマ処理装置であれば、耐熱性に優れ、アコースティック・エミッションも有効に検出可能なシート状圧電センサによる検出方法によって、異常放電を低コストで高感度かつ高精度に検出することができる。
【0029】
基板が高分子材料からなるものであれば、圧電センサの可撓性が向上するとともに、圧電センサのコストを低減することができる。
【0030】
シート状圧電センサが、第1の電極層、可撓性を有するシート状の基板、窒化アルミニウム薄膜、第2の電極層および第2の電極層の上面に配置された柔軟性を有する緩衝材よりなる緩衝層を有するので、シート状圧電センサを検出対象物に貼り付けて緩衝層の上から押圧することにより、シート状圧電センサを均一に接触させて取り付けることができる。
【0031】
緩衝層を発泡体とすることにより、緩衝層の柔軟性を増大させることができ、また、シート状圧電センサを軽量化することができる。
【0032】
第1の電極層の下面に粘着剤層を設けた場合には、検出対象物へのシート状圧電センサの取り付けを極めて簡単に行うことができる。
【0033】
第2の電極層を互いに分離され格子状に配列された複数の電極からなるものとした場合には、1枚のシート状圧電センサを多数の圧電センサとして使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は、本発明のシート状圧電センサ1の積層構造を示す断面図である。シート状圧電センサ1は、アコースティック・エミッション等の音響振動を検出するのに適している。なお、本発明において、音響振動とは媒質中を伝わる音響的な波動または振動を指し、機械的振動、亜音波、音波、超音波、アコースティック・エミッション等を含むものである。
【0035】
基板3は可撓性を有する高分子材料からなるフィルムであり、この基板3の上面側に圧電層4が形成されている。基板3は、例えばポリイミドのフィルムが使用できる。圧電層4は窒化アルミニウム(AlN)の薄膜である。圧電体としての窒化アルミニウムは、ポリイミドのフィルム上でもc軸配向を示し、十分な圧電性を持つことが確認されている。また、ポリイミドのフィルムは耐熱性の点でも優れている。
【0036】
なお、圧電層4は窒化アルミニウムの薄膜が好ましいが、その他の圧電性を有する金属化合物を使用することもできる。圧電性金属化合物としては、窒化アルミニウム以外には、窒化ガリウム、窒化インジウム、酸化亜鉛、ニオブ酸リチウムが使用できる。すなわち、圧電層4としては、窒化アルミニウム、窒化ガリウム、窒化インジウム、酸化亜鉛およびニオブ酸リチウムから選択された一つの圧電性金属化合物を主成分とする薄膜が使用できる。
【0037】
また、基板3は、可撓性を有するものであれば、高分子材料以外のものも使用できる。例えば、アルミニウム等の金属フィルムを使用することもできる。金属フィルムを使用した場合は、シート状圧電センサ1の耐熱性をさらに向上させることができる。
【0038】
さらに、基板3の下面側と圧電層4の上面側には、それぞれ下部電極層2および上部電極層5が形成されている。圧電層4、下部電極層2および上部電極層5は、例えば高周波マグネトロンスパッタリング法によって形成できるが、その他の薄膜形成方法を使用してもよい。実際に作成した例では、膜厚25μmのポリイミドのフィルムからなる基板3に、圧電層4として膜厚1μmの窒化アルミニウム薄膜を形成した。また、下部電極層2および上部電極層5として、膜厚0.1μm(100nm)の白金(Pt)の薄膜を形成した。これらの薄膜形成は高周波マグネトロンスパッタリング法によって行った。なお、下部電極層2および上部電極層5は他の金属を使用してもよい。
【0039】
このように作成したシート状圧電センサ1は柔軟で可撓性が大きく、曲面形状の検出対象物に対しても容易に形状適合させて取り付けることができる。また、透明度が良好であり、ガラス窓のような透光性の部分に取り付けても、透光性を保ったまま音響振動を検出することができる。
【0040】
シート状圧電センサ1の下面側はシート状圧電センサ1の取付面にあたり、シート状圧電センサ1の上面側は検出対象物に対して背面側にあたる。シート状圧電センサ1の下面側には、必要に応じて粘着剤が塗布されて粘着層7が形成される。粘着層7が形成された場合には、粘着層7の下側に離型紙を設けることが好ましい。粘着層7を設けておけば、検出対象物へのシート状圧電センサ1の取り付けが極めて簡単に行える。シート状圧電センサ1の粘着層7から離型紙を剥がして、シート状圧電センサ1を検出対象物に貼り付けるだけで取り付けることができる。
【0041】
シート状圧電センサ1の上面側には、柔軟性の大きな材料からなる緩衝層6が設けられている。緩衝層6は接着等の適宜の方法によってシート状圧電センサ1の上面に固定されている。緩衝層6としては、柔軟性および軽量性の点から発泡体が好ましい。例えば、発泡ポリウレタン等が使用できる。耐熱性が必要な場合には、ポリイミド発泡体等の耐熱性樹脂の発泡体が好ましい。
【0042】
検出対象物にシート状圧電センサ1を取り付け、緩衝層6の上からシート状圧電センサ1を検出対象物に向けて押圧することにより、検出対象物とシート状圧電センサ1との均一な接触を実現することができる。検出対象物が曲面であっても、シート状圧電センサ1を検出対象物に貼り付けて緩衝層6の上から押圧することにより、シート状圧電センサ1を均一に接触させて取り付けることができる。
【0043】
なお、シート状圧電センサ1としては、緩衝層6と粘着層7の両者は必ずしも必要ではない。緩衝層6のみを有するものでもよいし、粘着層7のみを有するものでもよい。シート状圧電センサを検出対象物に取り付ける方法は、粘着層7によるものに限定されず、他の種々の取付方法が使用できる。例えば、シアノアクリレート、エポキシ樹脂等の接着剤により、シート状圧電センサを検出対象物に貼り付けてもよい。
【0044】
また、両面粘着シートや粘着テープ等により固定してもよい。背面から押圧する部材によってシート状圧電センサを検出対象物に圧接させてもよい。この際、シート状圧電センサと検出対象物の接触面はグリース塗布などによって隙間なく接触させることが望ましい。シート状圧電センサを背面から押圧する部材は、ネジやマグネット等の適宜の固定手段により検出対象物に固定する。
【0045】
図2は、検出対象物としてのプラズマ処理装置のチャンバー9にシート状圧電センサを取り付けた状態を示す図である。この場合は、チャンバー9がほぼ円筒状に形成されており、内部の空洞部でプラズマが発生され、放電により半導体ウェハ等の表面処理等を行うものである。前述のように、このようなプラズマ処理装置では、チャンバー9内で異常放電が発生する場合があり、このような異常放電の発生を迅速に検出して対策を行う必要がある。また、異常放電が発生した場合に、異常放電の発生位置を正確に検出できれば、それが有用な情報となる。その情報により迅速な対策を行うことが可能となるとともに、半導体製品に対する影響等を判断することができる。
【0046】
本発明のシート状圧電センサは、大きな柔軟性を有し、曲面形状に対しても容易に適合させることができるので、図2に示すように、チャンバー9の円筒状の側面外壁部分に多数のシート状圧電センサ1aを簡単に取り付けることができる。また、チャンバー9の平面状の上面にも複数のシート状圧電センサ1bを簡単に取り付けることができる。このようにして、多数のシート状圧電センサ1a,1bを取り付けることにより、チャンバー9内での異常放電に付随するアコースティック・エミッションを正確かつ確実に検出することができる。
【0047】
多数のシート状圧電センサ1a,1bによって検出を行うので、どのような位置で異常放電が発生しても確実に検出でき、異常放電の検出漏れがない。また、それぞれのセンサ位置での検出信号を統合処理することにより、異常放電の発生位置を3次元的に高精度に計算することができる。これは、各センサでのアコースティック・エミッション検出信号の時間差等から計算することができ、センサ数が多いので誤差が平均化されて高精度の位置情報を得ることができる。
【0048】
具体的な異常放電の検出手順は以下のようになる。まず、図2のように多数のシート状圧電センサ1a,1bが取り付けられたプラズマ処理装置のチャンバー9内において異常放電が発生すると、その異常放電に付随してアコースティック・エミッションが発生する。アコースティック・エミッションは、超音波領域に達する高周波の振動であり、特徴的な周波数成分と振幅変化を伴うものである。このようなアコースティック・エミッションをシート状圧電センサ1a,1bによって電圧信号として検出することができる。
【0049】
そして、検出信号の周波数成分および振幅変化を判別して異常放電の発生を検知することができる。異常放電以外の周囲の環境からの振動や雑音等は周波数成分および振幅変化の特徴により異常放電とは区別することができる。また、異常放電によるアコースティック・エミッションは、インパルス状の振幅変化を示すため、振幅の立ち上がり位置が明瞭である。このため、複数のシート状圧電センサ1a,1bにおける検出信号の立ち上がり部の時間差を求めることにより、異常放電の発生位置を特定することができる。
【0050】
このように、本発明のシート状圧電センサは、柔軟性が大きく曲面形状にも容易に追従させることができるため、容易に検出対象物に取り付けることができる。これにより、多数のシート状圧電センサを取り付けて、検出精度を向上させたり、位置の計算精度を向上させることができる。また、検出対象物の形状に追従して均一に接触するため、接触面積が増大して高感度の測定が可能となる。また、シート状に形成され厚さが薄いことにより、共振周波数が高くなり高周波の音響振動の検出が可能となる。
【0051】
また、本発明のシート状圧電センサは、耐熱性に優れているため、高温環境においても圧電性能を損なうことなく高感度かつ高精度の音響振動の検出が可能である。具体的には300℃程度の高温環境においても十分使用可能である。さらに、シート状で平面的な形状であるため、センサを取り付けても突起部分が少なく、検出対象物の操作や運転の妨げとなることがない。
【0052】
また、シート状圧電センサの上部電極を格子状に配列して設けるようにすることで、1枚のシート状圧電センサを多数の圧電センサとして使用することができる。この例を図3に示す。図3はシート状圧電センサ11における上部電極51の配置を示す平面図(シート状圧電センサ11を上面側から見た図)である。図3のシート状圧電センサ11は、上部電極51以外は図1のシート状圧電センサ1と同様の構造である。
【0053】
上部電極51(シート状圧電センサ1における上部電極層5に対応する。)は、多数に分割されて格子状に配列されている。下部電極は図1のような1枚の平面状電極でよい。これらの上部電極51の1つを逐次選択して、下部電極との間の電圧を測定すれば、多数の圧電センサによる測定を行っているのと同等の結果を得ることができる。すなわち、異常発生位置の情報を高精度に求めたり、統計処理によって誤差を平均化する等により測定結果の精度を向上させることができる。
【0054】
なお、以上の実施の形態における検出対象物のプラズマ処理装置は、スパッタリング、プラズマCVD、イオンプレーティング、アーク放電等による薄膜形成装置や表面処理装置等の種々の装置を含むものである。また、プラズマ処理装置以外では、イオン注入による表面改質・微細加工装置や、超電導コイルを使用した機器に適用することもできる。
【0055】
さらに、幅広い検出対象物において、破壊前兆現象としてのアコースティック・エミッションを検出して、部品等の破壊を事前に検知したりすることもできる。例えば、自動車におけるタイヤやホイール取り付けボルトの損傷・破壊を事前に検知することなどにも応用できる。また、アコースティック・エミッションだけでなく、機械的振動、亜音波、音波、超音波を検出するものでもよく、さらには対象物に対して超音波等の音響振動を照射してその反射波を検出するものにも応用できる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明によれば、シート状圧電センサを使用することによって、検出対象物の異常状態を低コストで高感度かつ高精度に検出できるようになり、産業の発達に大いに寄与するものである。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明のシート状圧電センサ1の積層構造を示す断面図である。
【図2】プラズマ処理装置のチャンバー9にシート状圧電センサを取り付けた状態を示す図である。
【図3】シート状圧電センサ11における上部電極51の配置を示す平面図である。
【符号の説明】
【0058】
1,1a,1b,11 シート状圧電センサ
2 下部電極層
3 基板
4 圧電層
5 上部電極層
6 緩衝層
7 粘着層
9 チャンバー
51 上部電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出対象物(9)に可撓性を有するシート状の圧電センサ(1)を密着させて固定する手順と、
前記検出対象物(9)からの音響振動を前記圧電センサ(1)によって検出する手順と、
前記音響振動の検出信号により前記検出対象物(9)の異常状態を判別する手順とを有する異常状態検出方法であって、
前記圧電センサ(1)は、可撓性を有するシート状の基板(3)上に圧電層(4)として、窒化アルミニウム、窒化ガリウム、窒化インジウム、酸化亜鉛およびニオブ酸リチウムから選択された一つの圧電性金属化合物を主成分とする薄膜を形成したものである異常状態検出方法。
【請求項2】
請求項1に記載した異常状態検出方法であって、
前記音響振動は、前記検出対象物(9)で発生するアコースティック・エミッションである異常状態検出方法。
【請求項3】
請求項1,2のいずれか1項に記載した異常状態検出方法であって、
前記検出対象物(9)は、プラズマを発生させ放電により半導体の処理を行うプラズマ処理装置であり、
前記異常状態は異常放電である異常状態検出方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載した異常状態検出方法であって、
前記基板(3)は、高分子材料からなるものである異常状態検出方法。
【請求項5】
請求項4に記載した異常状態検出方法であって、
前記圧電センサ(1)は、第1の電極層(2)、前記基板(3)、窒化アルミニウム薄膜(4)、および、第2の電極層(5)からなる積層体である異常状態検出方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載した異常状態検出方法であって、
前記固定する手順は、柔軟性を有する緩衝部材(6)を介して前記圧電センサ(1)を前記検出対象物(9)に対して押圧して固定するものである異常状態検出方法。
【請求項7】
請求項6に記載した異常状態検出方法であって、
前記緩衝部材(6)は、発泡体である異常状態検出方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載した異常状態検出方法であって、
前記固定する手順は、前記圧電センサ(1)を接着剤により前記検出対象物(9)に貼り付けて固定するものである異常状態検出方法。
【請求項9】
第1の電極層(2)と、
前記第1の電極層(2)の上面に配置された可撓性を有するシート状の基板(3)と、
前記基板(3)上に形成された窒化アルミニウム薄膜(4)と、
前記窒化アルミニウム薄膜(4)の上面に配置された第2の電極層(5)と、
前記第2の電極層(5)の上面に配置された柔軟性を有する緩衝材よりなる緩衝層(6)とを有するシート状圧電センサ。
【請求項10】
請求項9に記載したシート状圧電センサであって、
前記基板(3)は、高分子材料からなるものであるシート状圧電センサ。
【請求項11】
請求項9,10のいずれか1項に記載したシート状圧電センサであって、
前記緩衝層(6)は発泡体からなるものであるシート状圧電センサ。
【請求項12】
請求項9〜11のいずれか1項に記載したシート状圧電センサであって、
前記第1の電極層(2)の下面に設けられた粘着剤層(7)を有するシート状圧電センサ。
【請求項13】
第1の電極層(2)と、
前記第1の電極層(2)の上面に配置された可撓性を有するシート状の基板(3)と、
前記基板(3)上に形成された窒化アルミニウム薄膜(4)と、
前記窒化アルミニウム薄膜(4)の上面に配置された第2の電極層(5)と、
前記第1の電極層(2)の下面に設けられた粘着剤層(7)とを有するシート状圧電センサ。
【請求項14】
請求項9〜13のいずれか1項に記載したシート状圧電センサであって、
前記第2の電極層(5)は、互いに分離され格子状に配列された複数の電極(51)からなるものであるシート状圧電センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−3443(P2007−3443A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−186208(P2005−186208)
【出願日】平成17年6月27日(2005.6.27)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】