癌および血管新生の治療のための、化学療法剤と組み合わせたベンゾキノン誘導体E3330
癌および血管新生の治療的処置のための新規な方法が開示される。酵素Ape1/Ref−1は、その酸化還元機能を介して、癌の進行に関連する転写因子のDNA結合活性を高める。本発明は、Ape1/Ref−1の酸化還元機能を選択的に阻害するため、およびこれにより腫瘍細胞の成長、生存、遊走および転移を減少させるための薬剤の使用を記載する。加えて、Ape1/Ref−1阻害活性は、他の治療剤の治療効果を増大させ、かつ毒性から正常細胞を保護することが示される。さらに、Ape1/Ref−1阻害は、癌および血管新生の変性が構成要素である他の病態の治療における使用のために、血管新生を減少させることが示される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、2007年11月21日出願の米国仮特許出願第60/989,566号、および2007年9月26日出願の同第60/975,396号に基づく優先権を主張する。これらの開示全体を、参照により本願明細書に援用したものとする。
【0002】
本発明は、大きくは分子生物学、生化学、および病理学の分野に関する。より具体的には、特定の態様では、本発明は、癌の治療のための、および血管新生の阻害のためのApe1/Ref−1酸化還元阻害剤の使用に関する。
【0003】
脱プリン脱ピリミジン部位エンドヌクレアーゼ(Ape1)は酸化還元エフェクター因子(Ref−1)(以降、Ape1/Ref−1)としても知られ、これは二重の役割を備えた酵素である。そのDNA塩基除去修復(BER)活性に加えて、Ape1/Ref−1は、転写因子を活性な還元された状態に維持する酸化還元エフェクターとしても機能する(図1を参照)。
【0004】
Ape1/Ref−1は、HIF−1α、NFκβ、AP−1およびp53、および既知および未知の他のものなどの、腫瘍の生存および進行に関連するいくつかの転写因子のDNA結合活性を刺激することが示されている(非特許文献1)。Ape1/Ref−1の発現は、乳癌、子宮頚癌、胚細胞腫瘍、成人および小児の神経膠腫、骨肉腫、横紋筋肉腫、非小細胞性肺癌、および多発性骨髄腫を含めた様々な癌において変性されていることが示されている(非特許文献2;非特許文献3;非特許文献4;非特許文献5;非特許文献6;非特許文献7;非特許文献8)。高いApe1/Ref−1の発現は、放射線化学療法に対する成果の低さ、著効速度の低さ、局所的な再発のない間隔の短さ、低い生存、および高い血管新生とも関連付けられている(非特許文献6;非特許文献7;非特許文献8)。
【0005】
血管新生は癌の成長、生存、遊走、および転移の重要な構成要素である。癌性腫瘍の部位での新しい血管の形成によって、加速された腫瘍増殖および膨張のための栄養素の供給源、ならびに腫瘍細胞が血流に侵入して身体の他の部分に広がるための経路が提供される。従って、血管新生の効果的な阻害は、癌の増殖および広がりを遅らせるまたは防ぐための有用な機序である。Ape1/Ref−1活性の増大は、血管新生と関連付けられている。血管内皮増殖因子(VEGF)は、脈管形成および血管新生の両方に関与する重要なシグナル伝達タンパク質である。Ape1/Ref−1は、血管内皮増殖因子(VEGF)遺伝子の低酸素応答エレメント(hypoxic response element)上に形成される低酸素症誘導性の転写複合体の構成要素である(非特許文献9)。
【0006】
癌に加えて、血管新生の変性は、とりわけ、心血管疾患、慢性炎症性疾患、関節リウマチ、糖尿病性網膜症、黄斑変性症(degenerative maculopathy)、後水晶体線維増殖症、特発性肺線維症、急性成人呼吸促迫症候群、喘息、子宮内膜症、乾癬、ケロイド、および全身性硬化症に関連する病態に寄与する。血管新生の阻害は、過剰な血管新生を伴う疾患の寛解または予防のための望ましい臨床成績である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Evansら Mutat Res 2000年、第461巻、83頁
【非特許文献2】Puglisiら Oncol Rep 2002年、第9巻、11頁
【非特許文献3】Thomsonら、Am J Pediatr Hematol Oncol 2001年、第23巻、234頁
【非特許文献4】Roberstonら Cancer Res 2001年、第61巻、2220頁
【非特許文献5】Puglisiら Anticancer Res 2001年、第21巻、4041頁
【非特許文献6】Koukourakisら Int J Radiat Oncol Biol Phys 2001年、第50巻、27頁
【非特許文献7】Kakolyrisら Br J Cancer 1998年、第77巻、1169頁
【非特許文献8】Bobolaら Clin Cancer Res 2001年、第7巻、3510頁
【非特許文献9】Zielら Faseb J 2004年、第18巻、986頁
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
Ape1/Ref−1の酸化還元機能の標的化された阻害は、癌および血管新生の治療に対する新規なアプローチである。1つの実施形態では、本発明は、Ape1/Ref−1の酸化還元機能を阻害する抗癌用治療薬の使用に関する。別の実施形態では、本発明は、Ape1/Ref−1の酸化還元機能を阻害する抗血管新生薬に関する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】腫瘍の生存において重要な転写因子の制御におけるApe1/Ref−1の酸化還元の役割。
【図2】VEGF酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)。
【図3A】VEGF ELISAアッセイ。
【図3B】VEGF ELISAアッセイ。
【図4A】VEGF ELISAアッセイ。
【図4B】VEGF ELISAアッセイ。
【図5】VEGF ELISAアッセイ。
【図6】VEGF ELISAアッセイ。
【図7】VEGF ELISAアッセイ。
【図8】マトリゲル上に蒔かれたCB−ECFC細胞を使用する毛細血管形成アッセイ。
【図9】限界希釈アッセイ(LDA)。
【図10】塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)を用いてまたは用いずに処理された細胞における、網膜内皮細胞増殖を用いたMTS増殖アッセイ。
【図11】網膜血管内皮細胞(RVEC)−野生型/sv40細胞の増殖に対するE3330(RN3−3)の効果。
【図12】ヒトの乳腺癌由来のMCF−7腫瘍細胞を使用するMTSアッセイ。細胞生存/成長分析のために使用された3−(4−5−ジメチルチアゾール−2−イル)−5−(3−カルボキシメトキシフェニル)−2−(4−スルホフェニル)−2H−テトラゾリウム塩(MTS)アッセイ。
【図13】ヒトの卵巣腺癌由来のOVCAR−3腫瘍細胞を使用するMTSアッセイ。
【図14A】化学療法薬メルファランと組み合わせたE3330(RN3−3)の、多発性骨髄腫細胞に対する効果。
【図14B】化学療法薬メルファランと組み合わせたE3330(RN3−3)の、多発性骨髄腫細胞に対する効果。
【図14C】化学療法薬メルファランと組み合わせたE3330(RN3−3)の、多発性骨髄腫細胞に対する効果。
【図14D】化学療法薬メルファランと組み合わせたE3330(RN3−3)の、多発性骨髄腫細胞に対する効果。
【図15】MTSアッセイにおける72時間後の、化学療法薬メルファランと組み合わせたE3330(RN3−3)の、多発性骨髄腫細胞に対する効果。
【図16】24時間および48時間における、膵腫瘍細胞に対するE3330(RN3−3)およびゲムシタビン(0.25μM)の効果。
【図17】MTS細胞生存アッセイ。
【図18】MTS細胞生存アッセイ。
【図19】E3330(RN3−3)(0〜50mg/kg)が投与された雄のマウスにおける体重。
【図20】種々の量でRN3−3(E3330)を用いて処置され、そして処置後2日目、3日目、4日目または5日目において観察されたマウスの生存データ。
【図21A】24時間の時間的経過の実験にわたるE3330(RN3−3)の薬物動態データ。
【図21B】24時間の時間的経過の実験にわたるE3330(RN3−3)の薬物動態データ。
【図22】E3330(RN3−3)についての薬物動態データ。
【図23】細胞分化を促進することに対する、E3330(RN3−3)およびレチノイン酸の効果。
【図24】アネキシン/PIアッセイを使用する、図23に記載されたようにして処置されたHL−60細胞のアポトーシス分析。
【図25】RN3−3(E3330)および種々の用量のRAの効果。
【図26】アポトーシスを受けるHL−60細胞に対するE3330(RN3−3)およびRAの効果(アネキシン/PIアッセイ)。
【図27A】多発性骨髄腫細胞に対する、低分子メトキシアミンと組み合わせたE3330(RN3−3)の効果。
【図27B】多発性骨髄腫細胞に対する、低分子メトキシアミンと組み合わせたE3330(RN3−3)の効果。
【図27C】多発性骨髄腫細胞に対する、低分子メトキシアミンと組み合わせたE3330(RN3−3)の効果。
【図27D】多発性骨髄腫細胞に対する、低分子メトキシアミンと組み合わせたE3330(RN3−3)の効果。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、Ape1/Ref−1の酸化還元機能を選択的に阻害する抗癌剤および抗血管新生薬の使用に関する。このような選択的な阻害には、特異的阻害、すなわち換言すれば、Ape1/Ref−1のBER機能に対する効果はまったくないかまたは認められる程度の効果はない場合、および主たる効果がこのBER機能と比べてその酸化還元機能に対してのものである場合が含まれる。さらなる化学療法薬/治療薬と組み合わせたこのような薬剤の使用もまた、本発明によって包含される。この他の薬剤はApe1/Ref−1の酸化還元機能を選択的に阻害する薬剤とは異なる方法で被験体に対して作用することが望ましい。
【0011】
血管新生の変性に関連する生理学的障害は、直接または間接的にその被験体に有害である不適切な血管新生に関連する障害を包含する。血管新生の変性は、とりわけ、癌(増殖、生存、遊走、微小環境効果、および転移を含む)、および心血管疾患、慢性炎症性疾患、関節リウマチ、糖尿病性網膜症、黄斑変性症、後水晶体線維増殖症、特発性肺線維症、急性成人呼吸促迫症候群、喘息、子宮内膜症、乾癬、ケロイド、および全身性硬化症に関連する病態に寄与する。
【0012】
用語「被験体」は、脊椎動物を含み、好ましくはヒト被験体である。用語「阻害する」およびその派生語は、その一般に受け入れられた意味を含み、それは、進行もしくは重症度を防止すること、予防すること、抑制すること、および緩慢化すること、停止すること、または逆転させることを包含する。従って、本発明の方法は、必要に応じて、医学的な治療のための投与および予防的投与の両方を含む。従って、それを必要とする被験体は、本発明の治療用途に関連する場合、医学的介入を必要とするかまたはそれを望むと特定される被験体である。有効量は、本願明細書に記載される病理学的な疾患および障害を阻害するのに必要な薬剤の量である。少なくとも1つのさらなる治療薬が被験体に投与される場合、このような薬剤の恩恵を得るために、これらの薬剤は、逐次的に、同時発生的に、または同時に投与されてもよい。
【0013】
Ape1/Ref−1の酸化還元機能は、下記の3−[(5−(2,3−ジメトキシ−6−メチル 1,4−ベンゾキノイル)]−2−ノニル−2−プロペン酸(proprionic acid)(以降、「E3330」。本願明細書では「RN3−3」とも呼ばれる)によって選択的に阻害されることが見出された。
【化1】
【0014】
E33300に関するさらなる情報は、Abeら、米国特許第5,210,239号(全体を、参照により本願明細書に援用したものとする)に見出すことができる。特に、調製のためのプロセス、処方物、および薬学的に許容できる塩が記載されている。
【0015】
興味深いことに、本発明者らの研究により、Ape1/Ref−1の酸化還元機能の選択的な遮断は、正常細胞においてアポトーシスをまったく引き起こさないか、またははっきりと認識できるアポトーシスをまったく引き起こさないことが示された。癌性細胞におけるアポトーシスの増加をもたらす選択的な遮断は正常細胞も損なうであろうと予想されるのも、非常にもっともである。しかしながら、本発明者らは本発明の場合はこれが当てはまらないことを見出した。
【0016】
被験体へ施用、特にヒトでの施用が企図される場合には、意図された施用に適した形態で医薬組成物を調製することが必要となるであろう。一般に、これは、被験体にとって有害である可能性がある不純物を実質的に含まない組成物を調製することを必要とするであろう。
【0017】
これらの薬剤は、その被験体の体重および疾患の進行の程度に基づく用量で、経口投与、静脈内投与、筋肉内投与、胸膜内投与または腹腔内投与することができ、そして1日に1回、2回またはさらには4回の投与で与えられてもよい。
【0018】
薬剤を安定にして標的細胞による吸収を可能にするために、一般に、適切な塩および緩衝液を用いることが望まれるであろう。本発明の水系組成物は、薬学的に許容できる担体または水系媒体の中に溶解または分散された有効量の当該薬剤を含む。このような組成物は無害であるとも呼ばれる。語句「薬学的にまたは薬理学的に許容できる」は、被験体に投与されたときに、有害反応、アレルギー反応、または他の副作用をもたらさない分子実体および組成物を指す。本願明細書で使用する場合、薬学的に許容できる担体には、いずれかのおよびすべての溶媒、分散媒体、コーティング、抗菌薬および抗真菌薬、等張剤および吸収遅延剤などが含まれる。薬学的活性物質のためのこのような媒体および薬剤の使用は、当該技術分野で周知である。補完的な活性成分もその組成物の中に組み込むことができる。
【0019】
本発明で使用するための組成物は、古くから使用されている医薬調剤を含んでいてもよい。本発明に係るこれらの組成物の投与は、標的組織がいずれかの一般的な経路を介して利用可能である限り、そのいずれかの一般的な経路を介してとなろう。これには、経口経路、鼻内経路、口腔経路、直腸経路、膣内経路または局所経路が含まれる。あるいは、投与は同所性注射、皮内注射、皮下注射、筋肉注射、腹腔内注射または静脈注射によってもよい。このような組成物は、通常、上記の薬学的に許容できる組成物として投与されることになろう。
【0020】
例えば、この化合物は、一般的な賦形剤、希釈剤、または担体とともに処方することができ、錠剤、カプセル剤、懸濁剤、散剤などへと成形することができる。このような処方物に適した賦形剤、希釈剤、および担体の例としては、以下のものが挙げられる:デンプン、糖類、マンニトール、およびケイ酸誘導体などの充填剤および増量剤;カルボキシメチルセルロースおよび他のセルロース誘導体、アルギネート、ゼラチン、およびポリビニルピロリドンなどの結合剤;グリセロールなどの保湿剤;炭酸カルシウムおよび炭酸水素ナトリウムなどの崩壊剤;パラフィンなどの、溶解を遅延させるための薬剤;第四級アンモニウム化合物などの再吸収促進剤;セチルアルコール、モノステアリン酸グリセロールなどの表面活性剤;カオリンおよびベントナイトなどの吸着性担体;ならびにタルク、ステアリン酸カルシウムおよびステアリン酸マグネシウム、および固体ポリエチルグリコールなどの滑沢剤。
【0021】
当該活性化合物は、非経口投与または腹腔内投与されてもよい。遊離塩基または薬理学的に許容できる塩としての当該活性化合物の溶液は、ヒドロキシプロピルセルロースなどの界面活性剤と適切に混合された水の中で調製することができる。分散液は、グリセロール、液体ポリエチレングリコール、およびこれらの混合物の中、および油の中でも調製することができる。保存および使用の通常の条件下で、これらの調剤は、微生物の増殖を防止するための防腐剤を含有する。
【0022】
注射用途に適した医薬品形態には、滅菌された水溶液または分散液、および滅菌された注射可能な溶液または分散液の即座の調製のための滅菌された粉末が含まれる。すべての場合において、その形態は、滅菌されていなければならず、容易な注射可能性が存在する程度までは流動性を持たなければならない。それは、製造および保存の条件下で安定でなければならず、そして細菌および真菌などの微生物の汚染作用に対して保護されていなければならない。この担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコールなど)、適切なこれらの混合物、および植物油を含有する溶媒または分散媒体であってよい。適正な流動性は、例えば、コーティング(レシチンなど)の使用によって、分散液の場合の必要とされる粒径の維持によって、および界面活性剤の使用によって維持することができる。微生物の作用の防止は、種々の抗菌薬および抗真菌薬、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサルなどによってもたらされうる。多くの場合、等張剤、例えば、糖類または塩化ナトリウムを含むことが好ましいであろう。注射可能な組成物の長期の吸収は、当該組成物において吸収を遅延させる薬剤、例えば、アルミニウムモノステアレートおよびゼラチンを使用することによってもたらされうる。
【0023】
滅菌された注射可能な溶液は、必要とされる量の当該活性化合物を必要に応じて種々の上に列挙された他の成分とともに適切な溶媒の中に組み込み、次いで濾過滅菌することによって、調製される。一般に、分散液は、基礎となる分散媒体および上に列挙された成分からの必要とされる他の成分を含有する滅菌された溶媒の中へと、種々の滅菌された活性成分を組み込むことによって調製される。滅菌された注射可能な溶液の調製のための滅菌された粉末の場合には、好ましい調製方法は、いずれかのさらなる所望の成分を加えた当該活性成分のそれまでに滅菌濾過された溶液から、それらの粉末を与える真空乾燥および凍結乾燥技術である。
【0024】
経口投与のために、本発明の薬剤は、賦形剤とともに組み込まれて、摂取されないうがい薬および歯磨剤の形態で使用されてもよい。うがい薬は、必要とされる量の活性成分をホウ酸ナトリウム溶液(ドーベル液)などの適切な溶媒の中で組み込むことによって調製されてもよい。あるいは、この活性成分は、ホウ酸ナトリウム、グリセリンおよび炭酸水素カリウムを含有する殺菌洗浄液に組み込まれてもよい。この活性成分は、ゲル、ペースト、粉末およびスラリーを含めた歯磨剤の中に分散されてもよい。この活性成分は、水、結合剤、研磨剤、矯味矯臭剤、発泡剤、および湿潤剤を含んでいてもよいペースト状歯磨剤に、治療上有効量で加えられてもよい。
【0025】
本発明で使用するための組成物は、中性または塩の形態で処方されてもよい。薬学的に許容できる塩としては、(タンパク質の遊離のアミノ基とともに形成される)酸付加塩が挙げられ、これは、例えば塩化水素酸またはリン酸などの無機酸、または酢酸、シュウ酸、酒石酸、マンデル酸などの有機酸を用いて形成される。遊離のカルボキシル基とともに形成される塩も、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウム、または水酸化第二鉄などの無機塩基、およびイソプロピルアミン、トリメチルアミン、ヒスチジン、プロカインなどの有機塩基から誘導することができる。
【0026】
処方の後に、溶液は、投薬量処方物と適合した様式でかつ治療上有効な量で投与されるであろう。この処方物は、注射可能な溶液、薬物放出カプセルなどの様々な剤形で容易に投与される。水溶液における非経口投与については、例えば、その溶液は必要に応じて適切に緩衝化されているべきであり、その液体希釈剤は最初に十分な生理食塩水またはブドウ糖を用いて等張性にされているべきである。これらの特定の水溶液は、とりわけ静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与および腹腔内投与に適している。これに関連して、用いることができる滅菌された水系媒体は、本開示を参酌すれば当業者には分かるであろう。例えば、一投薬量は、1mlの等張性NaCl溶液に溶解することができ、そして1000mlの皮下注入液に加えることができるし、または提案された注入部位で注入することができる(例えば、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」、第15版、1035−1038頁および1570−1580頁を参照)。治療しようとする被験体の状態に応じて、いくらかの投薬量の変更が必然的に起こるであろう。いずれにしても、投与に関与する者は、個々の被験体についての適切な用量を決定するであろう。さらに、ヒトへの投与については、調剤はFDAおよび外国の対応する部局によって要求されるような無菌状態、一般的な安全性および純度の標準を満たすべきである。
【実施例】
【0027】
Ape1/Ref−1の酸化還元機能の阻害は、VEGFの放出を減少させ、毛細血管形成(capillary tube formation)を弱め、そして大きな細胞数のコロニーの成長を阻害することが示された。このことは抗血管新生活性を表す。以下の実施例は、例示目的のためだけのものであり、本発明の範囲を限定することは意図されていない。
【0028】
VEGFの放出の阻害
VEGF酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)。種々の癌細胞株を24穴プレートに蒔き、正常酸素圧(約21%酸素)または低酸素(約2%酸素)の条件において、約24時間、二重に処置した。細胞の上清を集め、製造業者(アール・アンド・ディー・システムズ(R&D Systems)、ミネソタ州、ミネアポリス)に従って、ヒトのVEGFに特異的なキットを用いてELISAアッセイ供した。VEGF ELISAアッセイの結果を、540nmにおける補正を加えて450nmでの吸光度を測定することにより、96穴形式のプレートリーダーの中で、読み取った。低酸素は、VEGFの放出の増加を誘導した(図2)。(図2〜7については、黒い棒=酸素正常状態;灰色の棒=低酸素)。
【0029】
VEGF ELISAアッセイ
Hey−C2(卵嚢癌)、SKOV−3X(卵嚢癌)、Panc1(膵臓癌)、PaCa−2(膵臓癌)、およびIgrov(卵嚢癌)細胞を24穴プレートの中に蒔き、正常酸素圧(約21%酸素)または低酸素(約2%酸素)の条件において、異なる濃度で約24時間、E3330(RN3−3e)で二重に処置した。細胞の上清を集め、製造業者(アール・アンド・ディー・システムズ(R&D Systems)、ミネソタ州、ミネアポリス)に従って、ヒトのVEGFに特異的なキットを用いてELISAアッセイ供した。VEGF ELISAアッセイの結果を、540nmにおける補正を加えて450nmでの吸光度を測定することにより、96穴形式のプレートリーダーの中で、読み取った。E3330(RN3−3e)は、酸素正常状態および低酸素の条件下ともに、Ape1/Ref−1酸化還元機能の阻害を通して、これらの細胞からのVEGF放出の量を減少させた(図2〜7)。
【0030】
毛細血管形成の阻害
毛細血管形成アッセイを、マトリゲル上に蒔いたCB−ECFC細胞を使用して実施し、E3330または対照培地で処置した。ECFCは、以前に記載されたようにして培養した(Blood、2004年11月1日、第104巻、第9号、2752−2760頁)。ECFCコロニーは、培養の5〜22日間の間に現れた。コロニーを、40倍の倍率の下で倒立顕微鏡(オリンパス(Olympus)、ニューヨーク州、レークサクセス)を使用して目視検査によって数えた。細胞は、以前に記載されたようにして継代させた(Blood、2004年11月1日、第104巻、第9号、2752−2760頁)。
【0031】
この管形成アッセイは、以前に記載されたようにして実施した(J.Biol.Chem. 274(1999)、35562−35570頁)。播種の前にCB−ECFCに室温で約30分間種々の濃度のE3330を与え、そして約1×104細胞/ウェルの密度でマトリゲルの層の上へと蒔いた。約8時間後、無作為に選んだ領域からの完全な管の閉じたネットワークを数え、顕微鏡の下で写真撮影した。E3330およびその類似体は管形成を阻害した。これは、抗血管新生および増殖阻害の指標である(図8)。
【0032】
限界希釈アッセイ
E3330は、限界希釈アッセイ(LDA)において大きい細胞数のコロニーの成長を阻害する。これも抗血管新生の指標である(図9)。ECFCは以前に記載されたようにして培養した(Blood、2004年11月1日、第104巻、第9号、2752−2760頁)。ECFCコロニーは、培養の5〜22日間の間に現れた。コロニーおよび1コロニーあたりの細胞の数は、倒立顕微鏡を使用して目視検査により数えた。E3330は、この限界希釈アッセイ(LDA)において大きい細胞数のコロニーの成長を阻害した。これも抗血管新生の指標である。E3330(RN3−3)の量を増加させると、大きい細胞数を有するコロニーの数の減少、および少ない細胞数しか有しないコロニーの増加につながる(これは、細胞成長の阻害を表す)(図9)。(図9では、棒は、左から右へ、EtOH、および25μM、37.5μM、および50μMで投与されたE330である)。
【0033】
内皮細胞増殖の阻害
約10〜100μMのE3330は、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)を用いてまたは用いずに処理した細胞において、網膜内皮細胞増殖を減少させた。若齢成熟マウスの網膜組織を剥離し、消化した。細胞を24穴プレートに蒔き、コンフルエンスまで成長させ、次いでアッセイのために96穴プレートへと播種した。播種から3日後、MTS測定(プロメガ(Promega))によって全細胞数をアッセイした。増殖速度は、製造業者の説明書に従って算出した。異なる群からのRECの増殖を、統計的有意性について比較した。E3330(RN3−3)はREC増殖を遮断し、これは抗血管形成効果を示す(図10)。
【0034】
10〜100μMのE3330は、網膜血管内皮細胞(RVEC)の細胞増殖を減少させた(図11)。基礎培地では、E3330は、試験したすべての4つの濃度でREVC細胞増殖を阻害した;10μM−57%、25μM−93%(p<0.01)。REC増殖は、bFGFがこの培地の中に添加された場合には、有意に高められた。類似の阻害効果は、10μM、25μM、およびより高い濃度のE3330において、bFGF培地でも見られた。
【0035】
インビトロ管形成アッセイ
加えて、インビトロ管形成を観察するアッセイにおいて、アバスチンのようなE3330は、内皮細胞における血管のような細管の形成を用量依存的な様式で防止するということが観察された。そのアッセイでは、アバスチンおよびE3330の併用はいずれのもの単独よりも相乗的に効果的であることも観察された。
【0036】
vldlr−/− ノックアウトマウスアッセイにおけるSNV
E3330 硝子体内処置はvldlr−/− 網膜における網膜下の血管化(SNV)の数を有意に減少させることが観察されている。vldlr−/− 変異体におけるSNV発生の阻害に対するE3330の効果を明らかにするために、非常に低密度のリポタンパク質受容体(vldr)ノックアウトマウスにおいて実験を行った。各動物に溶媒対照としての1μlの体積のBSSの1回の硝子体内注射を与え、他眼に1μlの200μmのE3330を与えた。E3330の最終濃度は、網膜においておよそ20μMと等価であった。SNVの定量的測定は、処置の一週間後に、レクチン−FITC染色(staning)の後の全載網膜において実施した。その結果は、17/20個体がE3330で処置された眼において、約30%の減少で、SNVの数を減少させたことを示した。対照的に、アバスチン(VEGF抗体)処置もbFGF抗体処置も、いずれもSNVの数の阻害の徴候をまったく示さなかった。抗体注入後のSNVの見かけの増加は、以前に報告されている(Tatorら、2008)外来のタンパク質によって誘発された免疫応答に起因する可能性が高かった。E3330は、統計的に有意な水準で(対応のあるt−検定においてp<0.01)、SNVの数を減少させた。網膜内血管腫状増殖(RAP)のこのモデルは、ヒトと同様に、治療することが難しく、そして抗VEGF薬および抗bFGF薬を含めた現在の利用可能な治療に対しては良好に反応しないため、これらのデータは非常に期待を抱かせる。このApe1/Ref−1阻害剤は、加齢黄斑変性症(advanced macular degeneration)(AMD)治療のために血管新生を調節するための新しいアプローチを提供する。
【0037】
本発明はまた、抗癌療法としてApe1/Ref−1の酸化還元機能を阻害する薬剤の使用を包含する。このような癌としては、乳癌、前立腺癌、膵臓癌、結腸癌、子宮頚癌、胚細胞性腫瘍、成人および小児の神経膠腫、骨肉腫、横紋筋肉腫、非小細胞性肺癌、白血病、および多発性骨髄腫が挙げられる。Ape1/Ref−1は、HIF−1α、NFκβ、AP−1およびp53などの、腫瘍の生存および進行に関連するいくつかの転写因子のDNA結合活性を刺激することが示されている。E3330によるApe1/Ref−1の酸化還元機能の選択的な阻害は、DNAへの転写因子の結合を減少させ、癌細胞が成育する能力を弱める。以下の実施例は、例示目的のためだけのものであり、本発明の範囲を限定することは意図されていない。
【0038】
癌細胞生存の減少
MCF−7またはOVCAR−3細胞(約2〜4,000)を96穴プレートの各ウェルに三重に小分けし、一晩接着させた。E3330(RN3−3)をこの培養物に加えた。約24時間後または72時間後、約0.05mg/mLの3−(4−5−ジメチルチアゾール−2−イル)−5−(3−カルボキシメトキシフェニル)−2−(4−スルホフェニル)−2H−テトラゾリウム塩(MTS)試薬を各ウェルに加え、約37℃で約4時間インキュベーションした後に、490nmで吸光度測定を行った。値は、培地だけを含むウェルに対して標準化した。独立に、E3330は、ヒトの乳腺癌由来のMCF−7腫瘍細胞(図12)およびヒトの卵巣腺癌由来のOVCAR−3腫瘍細胞(図13)を用量依存的に死滅させた。類似の効果は、多発性骨髄腫、前立腺癌、非小細胞性肺癌、結腸癌、および神経膠腫由来の細胞でも見ることができる。対照的に、造血胚細胞などの正常細胞を用いた本発明者らの研究における、またはヒトのCD34+前駆細胞における有意な増殖阻害は観察されなかった。これらのデータは、それらが癌におけるApe1/REF−1の酸化還元の役割の関与を示唆するという点で新規であるが、「正常」細胞生存を示唆するという点では新規ではない。
【0039】
神経膠腫細胞遊走アッセイ
E3330がSF767神経膠腫細胞の遊走能力を阻害するかどうかを明らかにするために、E3330を試験した。これを行うために、本発明者らは、1.5×106個のSF767細胞を60mmの組織培養皿に蒔き、それらを一晩付着させ、コンフルエントな単層を形成させた。以前に記載されたようにして(Liang 2007)、200μLピペットの先を使用してひっかきまたは創傷をそのプレートにわたって作製した。次いでこれらの細胞を洗い流して浮遊細胞を除去し、培地は25、50、75もしくは100μMのE3330または適切な溶媒対照、DMSOを含んでいる。24時間後にこの薬物含有培地を除去し、新しい培地を加えた。薬物を加えてから0、24、36および48時間後に、3つの印をつけた場所でひっかきに沿って画像を撮影した。Spot Software(ディアグノスティック・インスツルメンツ(Diagnostic Instruments)、ミシガン州、スターリングハイツ)を使用して、そのひっかきの先端の端縁間のミクロン(10−6m)単位での距離を測定することにより、撮影された各画像について10個の均一な場所で遊走を定量した。各データの組、各データポイントについて全部で30、を0時間における溶媒対照の遊走に対して正規化し、標準偏差を決定するために使用した。この結果は、E3330はSF767細胞が遊走する能力を阻害し、48時間において、100μMのE3330で処置した細胞では溶媒対照と比べて4.0倍も大きい阻害を呈したことを示す。
【0040】
本発明者らの結果は、微小環境、または間質に対する効果を支持する。この微小環境は癌細胞それ自体とは別個のものであるが、それは転移を含めた腫瘍の進行において一定の役割を果たす。それは、その腫瘍に対する治療剤のアクセスを制限し、薬物代謝を変え、そして薬物耐性に寄与する可能性がある。明らかに、この微小環境に影響を及ぼすことができるということは、腫瘍に対して成し遂げられる最終的な治療の結果を支援することができる。
【0041】
別の実施形態では、本発明は、他の治療剤と組み合わせたApe1/Ref−1の酸化還元機能を阻害する薬剤の使用に関する。このような治療剤としては、メルファラン、ゲムシタビン、シスプラチン、メトキシアミン、サリドマイドおよびその誘導体、ならびにレチノイン酸(RA)が挙げられるが、これらに限定されない。選択的なApe1/Ref−1阻害は、他の治療剤と相乗的に作用して抗癌有効性を高めることができる。従って、より高用量では病気を引き起こしかつ正常細胞にとって毒性である治療剤を、抗癌有効性の減少なしに、より少ない用量で投与することができる。Ape1/Ref−1の酸化還元機能を選択的に阻害する薬剤の使用は、シスプラチンおよび他の化学毒性のある化合物の効果からの正常細胞にとっての保護をもたらすことができる。以下の実施例は、例示目的のためだけのものであり、本発明の範囲を限定することは意図されていない。
【0042】
化学療法薬メルファランと組み合わせたE3330
化学療法薬メルファランと組み合わせたE3330は、多発性骨髄腫細胞の死滅を相乗的に高めた(図14)。相乗的なプロットを、CalcuSynソフトウェアを使用して作製した。E3330を単独でまたはメルファランと組み合わせて与えた。二本鎖DNA切断(DSB)の指標として、Ser139におけるヒストンH2AXのリン酸化を、アップステート・セル・シグナリング・ソリューションズ(Upstate Cell Signaling Solutions)(メリーランド州、ウォルサム)から入手したリン酸化特異的H2AX抗体を用いて測定した。細胞は、メルファラン単独またはE3330を加えたメルファランで処置した。薬物処置後、指数関数的に成長する細胞を採取し、冷PBSの中で洗浄し、約100μLの上記のRIPAアッセイ緩衝液に溶解した。タンパク質を定量し、SDSゲル添加液の中で12% SDS−ポリアクリルアミドゲル上で電気泳動にかけた。マウスモノクローナル抗リン酸化ヒストンH2AX(約1:1000)または抗アクチン抗体(約1:1000;添加対照として。ラブビジョン社(LabVision Corp.)、NeoMarkers、カリフォルニア州、フレモント)を使用して、以前に記載されたようにしてタンパク質のレベルについて調べた。ロッシュ・アプライド・バイオサイエンシーズ(Roche Applied Biosciences)(インディアナ州、インディアナポリス)から入手した化学発光キットを使用してバンドを検出した。このバンドを、バイオラド(Bio−Rad) Chemidoc XRS(カリフォルニア州、ハーキュリーズ)を使用して可視化し、Chemidocソフトウェア、Quantity One 4.6.1を使用して定量化した。E3330(RN3−3)を加えたメルファランの中では、メルファラン単独と比べてDSBの増加がある。
【0043】
化学療法薬メルファランと組み合わせてE3330(RN3−3)を加え、これが、MTSアッセイにおいて72時間後には、多発性骨髄腫細胞の死滅を相乗的に高めることを見出した(図15)。E3330(RN3−3)を単独でまたはメルファランと組み合わせてのいずれかとして与え、そしてChou−Talalayアルゴリズム(Chou−Talalay;Advances in Enzyme Regulation 22、27−55)に基づくCalcuSynソフトウェアにより、%対照に対してED50をプロットした。E3330(RN3−3)を加えたメルファランは、いずれの薬剤単独よりも有効であった。
【0044】
化学療法薬ゲムシタビンと組み合わせたE3330
E3330は、膵腫瘍細胞においてゲムシタビン(約0.25μM)のアポトーシス誘導効果を高めた(図16)。アポトーシスについて細胞を分析するために、細胞を蒔き、一晩付着させた。細胞をE3330単独で、またはゲムシタビンを加えたE3330で処置した。処置後約24時間および48時間でアポトーシスをアッセイした。細胞をトリプシン処理し、ペレット化し、氷冷したPBSの中で洗浄し、1×結合緩衝液[約10mmol/L HEPES/NaOH(pH 7.4)、140mmol/L NaCl、2.5mmol/L CaCl2]中に再懸濁した。以前に記載されたようにして(Clinical Cancer Research 13、260−267、2007年1月1日)、ヨウ化プロピジウムと組み合わせたVybrant アポトーシスアッセイキット(モレキュラー・プローブ(Molecular Probes)、オレゴン州、ユージーン)からAlexa Fluor 488 アネキシンVを使用してアポトーシスを分析した。非常にアネキシン陽性である細胞を、アポトーシスについて陽性であると考えた。試料は、インディアナ大学癌センター(Indiana University Cancer Center)のフローサイトメトリ施設でフローサイトメトリによって分析した。
【0045】
化学療法薬シスプラチンと組み合わせたE3330
MTS細胞生存アッセイによって測定したところ、約120μMもの高いE3330の濃度でも、最高約72時間まで、培養液中で成長するラットの後根神経節細胞の生存を弱めなかった(図17)。有糸分裂後のDRG細胞に対するE3330(RN3−3)の効果はなかった。これは、非分裂細胞に対するE3330(RN3−3)の無毒な効果を示す。
【0046】
DRG細胞培養および処置は、E3330だけを単独で使用する以前に公開された手順(DNA Repair 第4巻、第3号、2005年3月2日、367−379頁)と同様にして実施した。さらに、E3330は、ラットの後根神経節細胞に投与されたとき、化学療法薬シスプラチンの神経毒性効果に対する保護をもたらした(図18)。このことは、E3330(RN3−3)はいくつかの化学療法剤を高めつつも、それは、分裂していない分裂終了細胞(例えばDRG細胞)に対する保護効果を、化学療法剤の存在下でさえも有するということを実証する。
【0047】
レチノイン酸と組み合わせたE3330
E3330は、細胞分化を促進することに対するレチノイン酸の効果を高めた(図23)。示した濃度での溶媒(EtOH;対照)、E3330、レチノイン酸(RA)、またはE3330およびRA、のいずれかでHL−60細胞を処置し、6日目に形態を測定した。形態の分析から、E3330(RN3−3)で処置したHL−60細胞の分化の増加が示された。6日目のHL−60細胞のアポトーシス分析から、E3330およびRAの組み合わせは、E3330単独で処置した細胞に比べてアポトーシスを受ける細胞の数の増加を示し、そして25μMの用量のE3330において、RA単独と比べて約1.5倍の増加を示すということが明らかになった(図24)。
【0048】
E3330は、1000倍低いRAの用量でRAの効果を高めたが、より高いRAの用量を用いた場合と同様のレベルの分化をもたらした。HL−60分化についてのマーカーであるCD11は、E3330をRAに加えると、より高いRAの用量の場合と同じレベルの分化を有するために約1000倍(3桁)少ないRAしか必要とはされなくなるということを実証した(図25)。
【0049】
E3330は、分化のレベルは約1000倍も大きく高められたとしても、より低いRAの用量では、アポトーシスを受けるHL−60細胞のレベル(アネキシン/PIアッセイ)を有意には高めなかった(図26)。
【0050】
これらの結果は、RAを加えたE3330は細胞分化につながるが、減少されたRAの用量ではこれらの細胞およびモデル系におけるアポトーシスの増加にはつながらないということを示す。
【0051】
メトキシアミンと組み合わせたE3330 −多発性骨髄腫細胞
MTSによってアッセイされた場合、低分子メトキシアミンと組み合わせたE3330は、多発性骨髄腫細胞の死滅を高めた(図27)。データは、Chou−Talalayアルゴリズム(Chou−Talalay;Advances in Enzyme Regulation 22、27−55)に基づくCalcuSynソフトウェアを使用して算出した。E3330は、単独で、またはメトキシアミンと組み合わせて与えた。
【0052】
二本鎖DNA切断(DSB)の指標として、Ser139におけるヒストンH2AXのリン酸化を、アップステート・セル・シグナリング・ソリューションズ(Upstate Cell Signaling Solutions)(メリーランド州、ウォルサム)から入手したリン酸化特異的H2AX抗体を用いて測定した。細胞は、E3330単独またはメトキシアミンを加えたE3330で処置した。薬物処置後、指数関数的に成長する細胞を採取し、冷PBSの中で洗浄し、約100μLの上記のRIPAアッセイ緩衝液に溶解した。タンパク質を定量し、SDSゲル添加液の中で12% SDS−ポリアクリルアミドゲル上で電気泳動にかけた。マウスモノクローナル抗リン酸化ヒストンH2AX(約1:1000)または抗アクチン抗体(約1:1000;添加対照として、ラブビジョン社(LabVision Corp.)、NeoMarkers、カリフォルニア州、フレモント)を使用して、以前に記載されたようにしてタンパク質のレベルについて調べた。ロッシュ・アプライド・バイオサイエンシーズ(Roche Applied Biosciences)(インディアナ州、インディアナポリス)から入手した化学発光キットを使用してバンドを検出した。このバンドを、バイオラド(Bio−Rad) Chemidoc XRS(カリフォルニア州、ハーキュリーズ)を使用して可視化し、Chemidoc ソフトウェア、Quantity One 4.6.1を使用して定量化した。
【0053】
メトキシアミンと組み合わせたE3330 −膵臓細胞
E3330は、膵腫瘍においてメトキシアミンのアポトーシス誘導効果を高めた。アポトーシスについて細胞を分析するために、細胞を蒔き、一晩付着させた。細胞をE3330単独で、またはメトキシアミンを加えたE3330で処置した。処置後約24時間および96時間でアポトーシスをアッセイした。細胞をトリプシン処理し、ペレット化し、氷冷したPBSの中で洗浄し、1×結合緩衝液[約10mmol/L HEPES/NaOH(pH 7.4)、140mmol/L NaCl、2.5mmol/L CaCl2]中に再懸濁した。以前に記載されたようにして(Clinical Cancer Research 13、260−267、2007年1月1日)、ヨウ化プロピジウムと組み合わせたVybrant アポトーシスアッセイキット(モレキュラー・プローブ(Molecular Probes)、オレゴン州、ユージーン)からAlexa Fluor 488 アネキシンVを使用してアポトーシスを分析した。非常にアネキシン陽性である細胞を、アポトーシスについて陽性であると考えた。試料は、インディアナ大学癌センター(Indiana University Cancer Center)のフローサイトメトリ施設でフローサイトメトリによって分析した。
【0054】
予備的なインビボ実験
安全性プロファイルを調べるため、およびE3330の薬物動態特性を明らかにするために、マウスにおける予備的なインビボ実験を実施した(図19〜22)。
【0055】
図19。E3330(RN3−3)(0〜50mg/kg)を投与した雄のマウスにおける体重。50mg/kgの下でE3330(RN3−3)を用いた場合にはマウス毒性は観察されなかった。マウスをRN3−3(E3330)で処置し、処置の2日前または化合物の3つの用量での処置後のいずれかに体重測定した。
【0056】
図20。種々の量でRN3−3(E3330)を用いて処置し、そして処置後2日目、3日目、4日目または5日目において観察したマウスの生存データ。全数に対する生存するマウスの数を、生存/全数として提示する。
【0057】
図21。24時間の時間的経過の実験にわたるE3330(RN3−3)の薬物動態データ。マウスをE3330(RN3−3)で処置し、次いで血中濃度を臨床病理・分析コア(Clinical Pharmacology and Analytical Core、CPAC)において検出した。時間 対 E3330(RN3−3)の濃度をプロットし、見積もった濃度を表に示す。各時間点において3匹のマウスを使用し、データは、各時間についてプロットされた標準偏差(図示せず)を伴う平均を表す。
【0058】
図22。E3330(RN3−3)についての薬物動態データ。生存、体重およびPK研究からのデータを集めて、この表に示す。RN3−3(E3330)の半減期を、雄、雌および合わせたマウスについて、それらの体重および濃度とともに測定した。
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、2007年11月21日出願の米国仮特許出願第60/989,566号、および2007年9月26日出願の同第60/975,396号に基づく優先権を主張する。これらの開示全体を、参照により本願明細書に援用したものとする。
【0002】
本発明は、大きくは分子生物学、生化学、および病理学の分野に関する。より具体的には、特定の態様では、本発明は、癌の治療のための、および血管新生の阻害のためのApe1/Ref−1酸化還元阻害剤の使用に関する。
【0003】
脱プリン脱ピリミジン部位エンドヌクレアーゼ(Ape1)は酸化還元エフェクター因子(Ref−1)(以降、Ape1/Ref−1)としても知られ、これは二重の役割を備えた酵素である。そのDNA塩基除去修復(BER)活性に加えて、Ape1/Ref−1は、転写因子を活性な還元された状態に維持する酸化還元エフェクターとしても機能する(図1を参照)。
【0004】
Ape1/Ref−1は、HIF−1α、NFκβ、AP−1およびp53、および既知および未知の他のものなどの、腫瘍の生存および進行に関連するいくつかの転写因子のDNA結合活性を刺激することが示されている(非特許文献1)。Ape1/Ref−1の発現は、乳癌、子宮頚癌、胚細胞腫瘍、成人および小児の神経膠腫、骨肉腫、横紋筋肉腫、非小細胞性肺癌、および多発性骨髄腫を含めた様々な癌において変性されていることが示されている(非特許文献2;非特許文献3;非特許文献4;非特許文献5;非特許文献6;非特許文献7;非特許文献8)。高いApe1/Ref−1の発現は、放射線化学療法に対する成果の低さ、著効速度の低さ、局所的な再発のない間隔の短さ、低い生存、および高い血管新生とも関連付けられている(非特許文献6;非特許文献7;非特許文献8)。
【0005】
血管新生は癌の成長、生存、遊走、および転移の重要な構成要素である。癌性腫瘍の部位での新しい血管の形成によって、加速された腫瘍増殖および膨張のための栄養素の供給源、ならびに腫瘍細胞が血流に侵入して身体の他の部分に広がるための経路が提供される。従って、血管新生の効果的な阻害は、癌の増殖および広がりを遅らせるまたは防ぐための有用な機序である。Ape1/Ref−1活性の増大は、血管新生と関連付けられている。血管内皮増殖因子(VEGF)は、脈管形成および血管新生の両方に関与する重要なシグナル伝達タンパク質である。Ape1/Ref−1は、血管内皮増殖因子(VEGF)遺伝子の低酸素応答エレメント(hypoxic response element)上に形成される低酸素症誘導性の転写複合体の構成要素である(非特許文献9)。
【0006】
癌に加えて、血管新生の変性は、とりわけ、心血管疾患、慢性炎症性疾患、関節リウマチ、糖尿病性網膜症、黄斑変性症(degenerative maculopathy)、後水晶体線維増殖症、特発性肺線維症、急性成人呼吸促迫症候群、喘息、子宮内膜症、乾癬、ケロイド、および全身性硬化症に関連する病態に寄与する。血管新生の阻害は、過剰な血管新生を伴う疾患の寛解または予防のための望ましい臨床成績である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Evansら Mutat Res 2000年、第461巻、83頁
【非特許文献2】Puglisiら Oncol Rep 2002年、第9巻、11頁
【非特許文献3】Thomsonら、Am J Pediatr Hematol Oncol 2001年、第23巻、234頁
【非特許文献4】Roberstonら Cancer Res 2001年、第61巻、2220頁
【非特許文献5】Puglisiら Anticancer Res 2001年、第21巻、4041頁
【非特許文献6】Koukourakisら Int J Radiat Oncol Biol Phys 2001年、第50巻、27頁
【非特許文献7】Kakolyrisら Br J Cancer 1998年、第77巻、1169頁
【非特許文献8】Bobolaら Clin Cancer Res 2001年、第7巻、3510頁
【非特許文献9】Zielら Faseb J 2004年、第18巻、986頁
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
Ape1/Ref−1の酸化還元機能の標的化された阻害は、癌および血管新生の治療に対する新規なアプローチである。1つの実施形態では、本発明は、Ape1/Ref−1の酸化還元機能を阻害する抗癌用治療薬の使用に関する。別の実施形態では、本発明は、Ape1/Ref−1の酸化還元機能を阻害する抗血管新生薬に関する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】腫瘍の生存において重要な転写因子の制御におけるApe1/Ref−1の酸化還元の役割。
【図2】VEGF酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)。
【図3A】VEGF ELISAアッセイ。
【図3B】VEGF ELISAアッセイ。
【図4A】VEGF ELISAアッセイ。
【図4B】VEGF ELISAアッセイ。
【図5】VEGF ELISAアッセイ。
【図6】VEGF ELISAアッセイ。
【図7】VEGF ELISAアッセイ。
【図8】マトリゲル上に蒔かれたCB−ECFC細胞を使用する毛細血管形成アッセイ。
【図9】限界希釈アッセイ(LDA)。
【図10】塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)を用いてまたは用いずに処理された細胞における、網膜内皮細胞増殖を用いたMTS増殖アッセイ。
【図11】網膜血管内皮細胞(RVEC)−野生型/sv40細胞の増殖に対するE3330(RN3−3)の効果。
【図12】ヒトの乳腺癌由来のMCF−7腫瘍細胞を使用するMTSアッセイ。細胞生存/成長分析のために使用された3−(4−5−ジメチルチアゾール−2−イル)−5−(3−カルボキシメトキシフェニル)−2−(4−スルホフェニル)−2H−テトラゾリウム塩(MTS)アッセイ。
【図13】ヒトの卵巣腺癌由来のOVCAR−3腫瘍細胞を使用するMTSアッセイ。
【図14A】化学療法薬メルファランと組み合わせたE3330(RN3−3)の、多発性骨髄腫細胞に対する効果。
【図14B】化学療法薬メルファランと組み合わせたE3330(RN3−3)の、多発性骨髄腫細胞に対する効果。
【図14C】化学療法薬メルファランと組み合わせたE3330(RN3−3)の、多発性骨髄腫細胞に対する効果。
【図14D】化学療法薬メルファランと組み合わせたE3330(RN3−3)の、多発性骨髄腫細胞に対する効果。
【図15】MTSアッセイにおける72時間後の、化学療法薬メルファランと組み合わせたE3330(RN3−3)の、多発性骨髄腫細胞に対する効果。
【図16】24時間および48時間における、膵腫瘍細胞に対するE3330(RN3−3)およびゲムシタビン(0.25μM)の効果。
【図17】MTS細胞生存アッセイ。
【図18】MTS細胞生存アッセイ。
【図19】E3330(RN3−3)(0〜50mg/kg)が投与された雄のマウスにおける体重。
【図20】種々の量でRN3−3(E3330)を用いて処置され、そして処置後2日目、3日目、4日目または5日目において観察されたマウスの生存データ。
【図21A】24時間の時間的経過の実験にわたるE3330(RN3−3)の薬物動態データ。
【図21B】24時間の時間的経過の実験にわたるE3330(RN3−3)の薬物動態データ。
【図22】E3330(RN3−3)についての薬物動態データ。
【図23】細胞分化を促進することに対する、E3330(RN3−3)およびレチノイン酸の効果。
【図24】アネキシン/PIアッセイを使用する、図23に記載されたようにして処置されたHL−60細胞のアポトーシス分析。
【図25】RN3−3(E3330)および種々の用量のRAの効果。
【図26】アポトーシスを受けるHL−60細胞に対するE3330(RN3−3)およびRAの効果(アネキシン/PIアッセイ)。
【図27A】多発性骨髄腫細胞に対する、低分子メトキシアミンと組み合わせたE3330(RN3−3)の効果。
【図27B】多発性骨髄腫細胞に対する、低分子メトキシアミンと組み合わせたE3330(RN3−3)の効果。
【図27C】多発性骨髄腫細胞に対する、低分子メトキシアミンと組み合わせたE3330(RN3−3)の効果。
【図27D】多発性骨髄腫細胞に対する、低分子メトキシアミンと組み合わせたE3330(RN3−3)の効果。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、Ape1/Ref−1の酸化還元機能を選択的に阻害する抗癌剤および抗血管新生薬の使用に関する。このような選択的な阻害には、特異的阻害、すなわち換言すれば、Ape1/Ref−1のBER機能に対する効果はまったくないかまたは認められる程度の効果はない場合、および主たる効果がこのBER機能と比べてその酸化還元機能に対してのものである場合が含まれる。さらなる化学療法薬/治療薬と組み合わせたこのような薬剤の使用もまた、本発明によって包含される。この他の薬剤はApe1/Ref−1の酸化還元機能を選択的に阻害する薬剤とは異なる方法で被験体に対して作用することが望ましい。
【0011】
血管新生の変性に関連する生理学的障害は、直接または間接的にその被験体に有害である不適切な血管新生に関連する障害を包含する。血管新生の変性は、とりわけ、癌(増殖、生存、遊走、微小環境効果、および転移を含む)、および心血管疾患、慢性炎症性疾患、関節リウマチ、糖尿病性網膜症、黄斑変性症、後水晶体線維増殖症、特発性肺線維症、急性成人呼吸促迫症候群、喘息、子宮内膜症、乾癬、ケロイド、および全身性硬化症に関連する病態に寄与する。
【0012】
用語「被験体」は、脊椎動物を含み、好ましくはヒト被験体である。用語「阻害する」およびその派生語は、その一般に受け入れられた意味を含み、それは、進行もしくは重症度を防止すること、予防すること、抑制すること、および緩慢化すること、停止すること、または逆転させることを包含する。従って、本発明の方法は、必要に応じて、医学的な治療のための投与および予防的投与の両方を含む。従って、それを必要とする被験体は、本発明の治療用途に関連する場合、医学的介入を必要とするかまたはそれを望むと特定される被験体である。有効量は、本願明細書に記載される病理学的な疾患および障害を阻害するのに必要な薬剤の量である。少なくとも1つのさらなる治療薬が被験体に投与される場合、このような薬剤の恩恵を得るために、これらの薬剤は、逐次的に、同時発生的に、または同時に投与されてもよい。
【0013】
Ape1/Ref−1の酸化還元機能は、下記の3−[(5−(2,3−ジメトキシ−6−メチル 1,4−ベンゾキノイル)]−2−ノニル−2−プロペン酸(proprionic acid)(以降、「E3330」。本願明細書では「RN3−3」とも呼ばれる)によって選択的に阻害されることが見出された。
【化1】
【0014】
E33300に関するさらなる情報は、Abeら、米国特許第5,210,239号(全体を、参照により本願明細書に援用したものとする)に見出すことができる。特に、調製のためのプロセス、処方物、および薬学的に許容できる塩が記載されている。
【0015】
興味深いことに、本発明者らの研究により、Ape1/Ref−1の酸化還元機能の選択的な遮断は、正常細胞においてアポトーシスをまったく引き起こさないか、またははっきりと認識できるアポトーシスをまったく引き起こさないことが示された。癌性細胞におけるアポトーシスの増加をもたらす選択的な遮断は正常細胞も損なうであろうと予想されるのも、非常にもっともである。しかしながら、本発明者らは本発明の場合はこれが当てはまらないことを見出した。
【0016】
被験体へ施用、特にヒトでの施用が企図される場合には、意図された施用に適した形態で医薬組成物を調製することが必要となるであろう。一般に、これは、被験体にとって有害である可能性がある不純物を実質的に含まない組成物を調製することを必要とするであろう。
【0017】
これらの薬剤は、その被験体の体重および疾患の進行の程度に基づく用量で、経口投与、静脈内投与、筋肉内投与、胸膜内投与または腹腔内投与することができ、そして1日に1回、2回またはさらには4回の投与で与えられてもよい。
【0018】
薬剤を安定にして標的細胞による吸収を可能にするために、一般に、適切な塩および緩衝液を用いることが望まれるであろう。本発明の水系組成物は、薬学的に許容できる担体または水系媒体の中に溶解または分散された有効量の当該薬剤を含む。このような組成物は無害であるとも呼ばれる。語句「薬学的にまたは薬理学的に許容できる」は、被験体に投与されたときに、有害反応、アレルギー反応、または他の副作用をもたらさない分子実体および組成物を指す。本願明細書で使用する場合、薬学的に許容できる担体には、いずれかのおよびすべての溶媒、分散媒体、コーティング、抗菌薬および抗真菌薬、等張剤および吸収遅延剤などが含まれる。薬学的活性物質のためのこのような媒体および薬剤の使用は、当該技術分野で周知である。補完的な活性成分もその組成物の中に組み込むことができる。
【0019】
本発明で使用するための組成物は、古くから使用されている医薬調剤を含んでいてもよい。本発明に係るこれらの組成物の投与は、標的組織がいずれかの一般的な経路を介して利用可能である限り、そのいずれかの一般的な経路を介してとなろう。これには、経口経路、鼻内経路、口腔経路、直腸経路、膣内経路または局所経路が含まれる。あるいは、投与は同所性注射、皮内注射、皮下注射、筋肉注射、腹腔内注射または静脈注射によってもよい。このような組成物は、通常、上記の薬学的に許容できる組成物として投与されることになろう。
【0020】
例えば、この化合物は、一般的な賦形剤、希釈剤、または担体とともに処方することができ、錠剤、カプセル剤、懸濁剤、散剤などへと成形することができる。このような処方物に適した賦形剤、希釈剤、および担体の例としては、以下のものが挙げられる:デンプン、糖類、マンニトール、およびケイ酸誘導体などの充填剤および増量剤;カルボキシメチルセルロースおよび他のセルロース誘導体、アルギネート、ゼラチン、およびポリビニルピロリドンなどの結合剤;グリセロールなどの保湿剤;炭酸カルシウムおよび炭酸水素ナトリウムなどの崩壊剤;パラフィンなどの、溶解を遅延させるための薬剤;第四級アンモニウム化合物などの再吸収促進剤;セチルアルコール、モノステアリン酸グリセロールなどの表面活性剤;カオリンおよびベントナイトなどの吸着性担体;ならびにタルク、ステアリン酸カルシウムおよびステアリン酸マグネシウム、および固体ポリエチルグリコールなどの滑沢剤。
【0021】
当該活性化合物は、非経口投与または腹腔内投与されてもよい。遊離塩基または薬理学的に許容できる塩としての当該活性化合物の溶液は、ヒドロキシプロピルセルロースなどの界面活性剤と適切に混合された水の中で調製することができる。分散液は、グリセロール、液体ポリエチレングリコール、およびこれらの混合物の中、および油の中でも調製することができる。保存および使用の通常の条件下で、これらの調剤は、微生物の増殖を防止するための防腐剤を含有する。
【0022】
注射用途に適した医薬品形態には、滅菌された水溶液または分散液、および滅菌された注射可能な溶液または分散液の即座の調製のための滅菌された粉末が含まれる。すべての場合において、その形態は、滅菌されていなければならず、容易な注射可能性が存在する程度までは流動性を持たなければならない。それは、製造および保存の条件下で安定でなければならず、そして細菌および真菌などの微生物の汚染作用に対して保護されていなければならない。この担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコールなど)、適切なこれらの混合物、および植物油を含有する溶媒または分散媒体であってよい。適正な流動性は、例えば、コーティング(レシチンなど)の使用によって、分散液の場合の必要とされる粒径の維持によって、および界面活性剤の使用によって維持することができる。微生物の作用の防止は、種々の抗菌薬および抗真菌薬、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサルなどによってもたらされうる。多くの場合、等張剤、例えば、糖類または塩化ナトリウムを含むことが好ましいであろう。注射可能な組成物の長期の吸収は、当該組成物において吸収を遅延させる薬剤、例えば、アルミニウムモノステアレートおよびゼラチンを使用することによってもたらされうる。
【0023】
滅菌された注射可能な溶液は、必要とされる量の当該活性化合物を必要に応じて種々の上に列挙された他の成分とともに適切な溶媒の中に組み込み、次いで濾過滅菌することによって、調製される。一般に、分散液は、基礎となる分散媒体および上に列挙された成分からの必要とされる他の成分を含有する滅菌された溶媒の中へと、種々の滅菌された活性成分を組み込むことによって調製される。滅菌された注射可能な溶液の調製のための滅菌された粉末の場合には、好ましい調製方法は、いずれかのさらなる所望の成分を加えた当該活性成分のそれまでに滅菌濾過された溶液から、それらの粉末を与える真空乾燥および凍結乾燥技術である。
【0024】
経口投与のために、本発明の薬剤は、賦形剤とともに組み込まれて、摂取されないうがい薬および歯磨剤の形態で使用されてもよい。うがい薬は、必要とされる量の活性成分をホウ酸ナトリウム溶液(ドーベル液)などの適切な溶媒の中で組み込むことによって調製されてもよい。あるいは、この活性成分は、ホウ酸ナトリウム、グリセリンおよび炭酸水素カリウムを含有する殺菌洗浄液に組み込まれてもよい。この活性成分は、ゲル、ペースト、粉末およびスラリーを含めた歯磨剤の中に分散されてもよい。この活性成分は、水、結合剤、研磨剤、矯味矯臭剤、発泡剤、および湿潤剤を含んでいてもよいペースト状歯磨剤に、治療上有効量で加えられてもよい。
【0025】
本発明で使用するための組成物は、中性または塩の形態で処方されてもよい。薬学的に許容できる塩としては、(タンパク質の遊離のアミノ基とともに形成される)酸付加塩が挙げられ、これは、例えば塩化水素酸またはリン酸などの無機酸、または酢酸、シュウ酸、酒石酸、マンデル酸などの有機酸を用いて形成される。遊離のカルボキシル基とともに形成される塩も、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウム、または水酸化第二鉄などの無機塩基、およびイソプロピルアミン、トリメチルアミン、ヒスチジン、プロカインなどの有機塩基から誘導することができる。
【0026】
処方の後に、溶液は、投薬量処方物と適合した様式でかつ治療上有効な量で投与されるであろう。この処方物は、注射可能な溶液、薬物放出カプセルなどの様々な剤形で容易に投与される。水溶液における非経口投与については、例えば、その溶液は必要に応じて適切に緩衝化されているべきであり、その液体希釈剤は最初に十分な生理食塩水またはブドウ糖を用いて等張性にされているべきである。これらの特定の水溶液は、とりわけ静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与および腹腔内投与に適している。これに関連して、用いることができる滅菌された水系媒体は、本開示を参酌すれば当業者には分かるであろう。例えば、一投薬量は、1mlの等張性NaCl溶液に溶解することができ、そして1000mlの皮下注入液に加えることができるし、または提案された注入部位で注入することができる(例えば、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」、第15版、1035−1038頁および1570−1580頁を参照)。治療しようとする被験体の状態に応じて、いくらかの投薬量の変更が必然的に起こるであろう。いずれにしても、投与に関与する者は、個々の被験体についての適切な用量を決定するであろう。さらに、ヒトへの投与については、調剤はFDAおよび外国の対応する部局によって要求されるような無菌状態、一般的な安全性および純度の標準を満たすべきである。
【実施例】
【0027】
Ape1/Ref−1の酸化還元機能の阻害は、VEGFの放出を減少させ、毛細血管形成(capillary tube formation)を弱め、そして大きな細胞数のコロニーの成長を阻害することが示された。このことは抗血管新生活性を表す。以下の実施例は、例示目的のためだけのものであり、本発明の範囲を限定することは意図されていない。
【0028】
VEGFの放出の阻害
VEGF酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)。種々の癌細胞株を24穴プレートに蒔き、正常酸素圧(約21%酸素)または低酸素(約2%酸素)の条件において、約24時間、二重に処置した。細胞の上清を集め、製造業者(アール・アンド・ディー・システムズ(R&D Systems)、ミネソタ州、ミネアポリス)に従って、ヒトのVEGFに特異的なキットを用いてELISAアッセイ供した。VEGF ELISAアッセイの結果を、540nmにおける補正を加えて450nmでの吸光度を測定することにより、96穴形式のプレートリーダーの中で、読み取った。低酸素は、VEGFの放出の増加を誘導した(図2)。(図2〜7については、黒い棒=酸素正常状態;灰色の棒=低酸素)。
【0029】
VEGF ELISAアッセイ
Hey−C2(卵嚢癌)、SKOV−3X(卵嚢癌)、Panc1(膵臓癌)、PaCa−2(膵臓癌)、およびIgrov(卵嚢癌)細胞を24穴プレートの中に蒔き、正常酸素圧(約21%酸素)または低酸素(約2%酸素)の条件において、異なる濃度で約24時間、E3330(RN3−3e)で二重に処置した。細胞の上清を集め、製造業者(アール・アンド・ディー・システムズ(R&D Systems)、ミネソタ州、ミネアポリス)に従って、ヒトのVEGFに特異的なキットを用いてELISAアッセイ供した。VEGF ELISAアッセイの結果を、540nmにおける補正を加えて450nmでの吸光度を測定することにより、96穴形式のプレートリーダーの中で、読み取った。E3330(RN3−3e)は、酸素正常状態および低酸素の条件下ともに、Ape1/Ref−1酸化還元機能の阻害を通して、これらの細胞からのVEGF放出の量を減少させた(図2〜7)。
【0030】
毛細血管形成の阻害
毛細血管形成アッセイを、マトリゲル上に蒔いたCB−ECFC細胞を使用して実施し、E3330または対照培地で処置した。ECFCは、以前に記載されたようにして培養した(Blood、2004年11月1日、第104巻、第9号、2752−2760頁)。ECFCコロニーは、培養の5〜22日間の間に現れた。コロニーを、40倍の倍率の下で倒立顕微鏡(オリンパス(Olympus)、ニューヨーク州、レークサクセス)を使用して目視検査によって数えた。細胞は、以前に記載されたようにして継代させた(Blood、2004年11月1日、第104巻、第9号、2752−2760頁)。
【0031】
この管形成アッセイは、以前に記載されたようにして実施した(J.Biol.Chem. 274(1999)、35562−35570頁)。播種の前にCB−ECFCに室温で約30分間種々の濃度のE3330を与え、そして約1×104細胞/ウェルの密度でマトリゲルの層の上へと蒔いた。約8時間後、無作為に選んだ領域からの完全な管の閉じたネットワークを数え、顕微鏡の下で写真撮影した。E3330およびその類似体は管形成を阻害した。これは、抗血管新生および増殖阻害の指標である(図8)。
【0032】
限界希釈アッセイ
E3330は、限界希釈アッセイ(LDA)において大きい細胞数のコロニーの成長を阻害する。これも抗血管新生の指標である(図9)。ECFCは以前に記載されたようにして培養した(Blood、2004年11月1日、第104巻、第9号、2752−2760頁)。ECFCコロニーは、培養の5〜22日間の間に現れた。コロニーおよび1コロニーあたりの細胞の数は、倒立顕微鏡を使用して目視検査により数えた。E3330は、この限界希釈アッセイ(LDA)において大きい細胞数のコロニーの成長を阻害した。これも抗血管新生の指標である。E3330(RN3−3)の量を増加させると、大きい細胞数を有するコロニーの数の減少、および少ない細胞数しか有しないコロニーの増加につながる(これは、細胞成長の阻害を表す)(図9)。(図9では、棒は、左から右へ、EtOH、および25μM、37.5μM、および50μMで投与されたE330である)。
【0033】
内皮細胞増殖の阻害
約10〜100μMのE3330は、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)を用いてまたは用いずに処理した細胞において、網膜内皮細胞増殖を減少させた。若齢成熟マウスの網膜組織を剥離し、消化した。細胞を24穴プレートに蒔き、コンフルエンスまで成長させ、次いでアッセイのために96穴プレートへと播種した。播種から3日後、MTS測定(プロメガ(Promega))によって全細胞数をアッセイした。増殖速度は、製造業者の説明書に従って算出した。異なる群からのRECの増殖を、統計的有意性について比較した。E3330(RN3−3)はREC増殖を遮断し、これは抗血管形成効果を示す(図10)。
【0034】
10〜100μMのE3330は、網膜血管内皮細胞(RVEC)の細胞増殖を減少させた(図11)。基礎培地では、E3330は、試験したすべての4つの濃度でREVC細胞増殖を阻害した;10μM−57%、25μM−93%(p<0.01)。REC増殖は、bFGFがこの培地の中に添加された場合には、有意に高められた。類似の阻害効果は、10μM、25μM、およびより高い濃度のE3330において、bFGF培地でも見られた。
【0035】
インビトロ管形成アッセイ
加えて、インビトロ管形成を観察するアッセイにおいて、アバスチンのようなE3330は、内皮細胞における血管のような細管の形成を用量依存的な様式で防止するということが観察された。そのアッセイでは、アバスチンおよびE3330の併用はいずれのもの単独よりも相乗的に効果的であることも観察された。
【0036】
vldlr−/− ノックアウトマウスアッセイにおけるSNV
E3330 硝子体内処置はvldlr−/− 網膜における網膜下の血管化(SNV)の数を有意に減少させることが観察されている。vldlr−/− 変異体におけるSNV発生の阻害に対するE3330の効果を明らかにするために、非常に低密度のリポタンパク質受容体(vldr)ノックアウトマウスにおいて実験を行った。各動物に溶媒対照としての1μlの体積のBSSの1回の硝子体内注射を与え、他眼に1μlの200μmのE3330を与えた。E3330の最終濃度は、網膜においておよそ20μMと等価であった。SNVの定量的測定は、処置の一週間後に、レクチン−FITC染色(staning)の後の全載網膜において実施した。その結果は、17/20個体がE3330で処置された眼において、約30%の減少で、SNVの数を減少させたことを示した。対照的に、アバスチン(VEGF抗体)処置もbFGF抗体処置も、いずれもSNVの数の阻害の徴候をまったく示さなかった。抗体注入後のSNVの見かけの増加は、以前に報告されている(Tatorら、2008)外来のタンパク質によって誘発された免疫応答に起因する可能性が高かった。E3330は、統計的に有意な水準で(対応のあるt−検定においてp<0.01)、SNVの数を減少させた。網膜内血管腫状増殖(RAP)のこのモデルは、ヒトと同様に、治療することが難しく、そして抗VEGF薬および抗bFGF薬を含めた現在の利用可能な治療に対しては良好に反応しないため、これらのデータは非常に期待を抱かせる。このApe1/Ref−1阻害剤は、加齢黄斑変性症(advanced macular degeneration)(AMD)治療のために血管新生を調節するための新しいアプローチを提供する。
【0037】
本発明はまた、抗癌療法としてApe1/Ref−1の酸化還元機能を阻害する薬剤の使用を包含する。このような癌としては、乳癌、前立腺癌、膵臓癌、結腸癌、子宮頚癌、胚細胞性腫瘍、成人および小児の神経膠腫、骨肉腫、横紋筋肉腫、非小細胞性肺癌、白血病、および多発性骨髄腫が挙げられる。Ape1/Ref−1は、HIF−1α、NFκβ、AP−1およびp53などの、腫瘍の生存および進行に関連するいくつかの転写因子のDNA結合活性を刺激することが示されている。E3330によるApe1/Ref−1の酸化還元機能の選択的な阻害は、DNAへの転写因子の結合を減少させ、癌細胞が成育する能力を弱める。以下の実施例は、例示目的のためだけのものであり、本発明の範囲を限定することは意図されていない。
【0038】
癌細胞生存の減少
MCF−7またはOVCAR−3細胞(約2〜4,000)を96穴プレートの各ウェルに三重に小分けし、一晩接着させた。E3330(RN3−3)をこの培養物に加えた。約24時間後または72時間後、約0.05mg/mLの3−(4−5−ジメチルチアゾール−2−イル)−5−(3−カルボキシメトキシフェニル)−2−(4−スルホフェニル)−2H−テトラゾリウム塩(MTS)試薬を各ウェルに加え、約37℃で約4時間インキュベーションした後に、490nmで吸光度測定を行った。値は、培地だけを含むウェルに対して標準化した。独立に、E3330は、ヒトの乳腺癌由来のMCF−7腫瘍細胞(図12)およびヒトの卵巣腺癌由来のOVCAR−3腫瘍細胞(図13)を用量依存的に死滅させた。類似の効果は、多発性骨髄腫、前立腺癌、非小細胞性肺癌、結腸癌、および神経膠腫由来の細胞でも見ることができる。対照的に、造血胚細胞などの正常細胞を用いた本発明者らの研究における、またはヒトのCD34+前駆細胞における有意な増殖阻害は観察されなかった。これらのデータは、それらが癌におけるApe1/REF−1の酸化還元の役割の関与を示唆するという点で新規であるが、「正常」細胞生存を示唆するという点では新規ではない。
【0039】
神経膠腫細胞遊走アッセイ
E3330がSF767神経膠腫細胞の遊走能力を阻害するかどうかを明らかにするために、E3330を試験した。これを行うために、本発明者らは、1.5×106個のSF767細胞を60mmの組織培養皿に蒔き、それらを一晩付着させ、コンフルエントな単層を形成させた。以前に記載されたようにして(Liang 2007)、200μLピペットの先を使用してひっかきまたは創傷をそのプレートにわたって作製した。次いでこれらの細胞を洗い流して浮遊細胞を除去し、培地は25、50、75もしくは100μMのE3330または適切な溶媒対照、DMSOを含んでいる。24時間後にこの薬物含有培地を除去し、新しい培地を加えた。薬物を加えてから0、24、36および48時間後に、3つの印をつけた場所でひっかきに沿って画像を撮影した。Spot Software(ディアグノスティック・インスツルメンツ(Diagnostic Instruments)、ミシガン州、スターリングハイツ)を使用して、そのひっかきの先端の端縁間のミクロン(10−6m)単位での距離を測定することにより、撮影された各画像について10個の均一な場所で遊走を定量した。各データの組、各データポイントについて全部で30、を0時間における溶媒対照の遊走に対して正規化し、標準偏差を決定するために使用した。この結果は、E3330はSF767細胞が遊走する能力を阻害し、48時間において、100μMのE3330で処置した細胞では溶媒対照と比べて4.0倍も大きい阻害を呈したことを示す。
【0040】
本発明者らの結果は、微小環境、または間質に対する効果を支持する。この微小環境は癌細胞それ自体とは別個のものであるが、それは転移を含めた腫瘍の進行において一定の役割を果たす。それは、その腫瘍に対する治療剤のアクセスを制限し、薬物代謝を変え、そして薬物耐性に寄与する可能性がある。明らかに、この微小環境に影響を及ぼすことができるということは、腫瘍に対して成し遂げられる最終的な治療の結果を支援することができる。
【0041】
別の実施形態では、本発明は、他の治療剤と組み合わせたApe1/Ref−1の酸化還元機能を阻害する薬剤の使用に関する。このような治療剤としては、メルファラン、ゲムシタビン、シスプラチン、メトキシアミン、サリドマイドおよびその誘導体、ならびにレチノイン酸(RA)が挙げられるが、これらに限定されない。選択的なApe1/Ref−1阻害は、他の治療剤と相乗的に作用して抗癌有効性を高めることができる。従って、より高用量では病気を引き起こしかつ正常細胞にとって毒性である治療剤を、抗癌有効性の減少なしに、より少ない用量で投与することができる。Ape1/Ref−1の酸化還元機能を選択的に阻害する薬剤の使用は、シスプラチンおよび他の化学毒性のある化合物の効果からの正常細胞にとっての保護をもたらすことができる。以下の実施例は、例示目的のためだけのものであり、本発明の範囲を限定することは意図されていない。
【0042】
化学療法薬メルファランと組み合わせたE3330
化学療法薬メルファランと組み合わせたE3330は、多発性骨髄腫細胞の死滅を相乗的に高めた(図14)。相乗的なプロットを、CalcuSynソフトウェアを使用して作製した。E3330を単独でまたはメルファランと組み合わせて与えた。二本鎖DNA切断(DSB)の指標として、Ser139におけるヒストンH2AXのリン酸化を、アップステート・セル・シグナリング・ソリューションズ(Upstate Cell Signaling Solutions)(メリーランド州、ウォルサム)から入手したリン酸化特異的H2AX抗体を用いて測定した。細胞は、メルファラン単独またはE3330を加えたメルファランで処置した。薬物処置後、指数関数的に成長する細胞を採取し、冷PBSの中で洗浄し、約100μLの上記のRIPAアッセイ緩衝液に溶解した。タンパク質を定量し、SDSゲル添加液の中で12% SDS−ポリアクリルアミドゲル上で電気泳動にかけた。マウスモノクローナル抗リン酸化ヒストンH2AX(約1:1000)または抗アクチン抗体(約1:1000;添加対照として。ラブビジョン社(LabVision Corp.)、NeoMarkers、カリフォルニア州、フレモント)を使用して、以前に記載されたようにしてタンパク質のレベルについて調べた。ロッシュ・アプライド・バイオサイエンシーズ(Roche Applied Biosciences)(インディアナ州、インディアナポリス)から入手した化学発光キットを使用してバンドを検出した。このバンドを、バイオラド(Bio−Rad) Chemidoc XRS(カリフォルニア州、ハーキュリーズ)を使用して可視化し、Chemidocソフトウェア、Quantity One 4.6.1を使用して定量化した。E3330(RN3−3)を加えたメルファランの中では、メルファラン単独と比べてDSBの増加がある。
【0043】
化学療法薬メルファランと組み合わせてE3330(RN3−3)を加え、これが、MTSアッセイにおいて72時間後には、多発性骨髄腫細胞の死滅を相乗的に高めることを見出した(図15)。E3330(RN3−3)を単独でまたはメルファランと組み合わせてのいずれかとして与え、そしてChou−Talalayアルゴリズム(Chou−Talalay;Advances in Enzyme Regulation 22、27−55)に基づくCalcuSynソフトウェアにより、%対照に対してED50をプロットした。E3330(RN3−3)を加えたメルファランは、いずれの薬剤単独よりも有効であった。
【0044】
化学療法薬ゲムシタビンと組み合わせたE3330
E3330は、膵腫瘍細胞においてゲムシタビン(約0.25μM)のアポトーシス誘導効果を高めた(図16)。アポトーシスについて細胞を分析するために、細胞を蒔き、一晩付着させた。細胞をE3330単独で、またはゲムシタビンを加えたE3330で処置した。処置後約24時間および48時間でアポトーシスをアッセイした。細胞をトリプシン処理し、ペレット化し、氷冷したPBSの中で洗浄し、1×結合緩衝液[約10mmol/L HEPES/NaOH(pH 7.4)、140mmol/L NaCl、2.5mmol/L CaCl2]中に再懸濁した。以前に記載されたようにして(Clinical Cancer Research 13、260−267、2007年1月1日)、ヨウ化プロピジウムと組み合わせたVybrant アポトーシスアッセイキット(モレキュラー・プローブ(Molecular Probes)、オレゴン州、ユージーン)からAlexa Fluor 488 アネキシンVを使用してアポトーシスを分析した。非常にアネキシン陽性である細胞を、アポトーシスについて陽性であると考えた。試料は、インディアナ大学癌センター(Indiana University Cancer Center)のフローサイトメトリ施設でフローサイトメトリによって分析した。
【0045】
化学療法薬シスプラチンと組み合わせたE3330
MTS細胞生存アッセイによって測定したところ、約120μMもの高いE3330の濃度でも、最高約72時間まで、培養液中で成長するラットの後根神経節細胞の生存を弱めなかった(図17)。有糸分裂後のDRG細胞に対するE3330(RN3−3)の効果はなかった。これは、非分裂細胞に対するE3330(RN3−3)の無毒な効果を示す。
【0046】
DRG細胞培養および処置は、E3330だけを単独で使用する以前に公開された手順(DNA Repair 第4巻、第3号、2005年3月2日、367−379頁)と同様にして実施した。さらに、E3330は、ラットの後根神経節細胞に投与されたとき、化学療法薬シスプラチンの神経毒性効果に対する保護をもたらした(図18)。このことは、E3330(RN3−3)はいくつかの化学療法剤を高めつつも、それは、分裂していない分裂終了細胞(例えばDRG細胞)に対する保護効果を、化学療法剤の存在下でさえも有するということを実証する。
【0047】
レチノイン酸と組み合わせたE3330
E3330は、細胞分化を促進することに対するレチノイン酸の効果を高めた(図23)。示した濃度での溶媒(EtOH;対照)、E3330、レチノイン酸(RA)、またはE3330およびRA、のいずれかでHL−60細胞を処置し、6日目に形態を測定した。形態の分析から、E3330(RN3−3)で処置したHL−60細胞の分化の増加が示された。6日目のHL−60細胞のアポトーシス分析から、E3330およびRAの組み合わせは、E3330単独で処置した細胞に比べてアポトーシスを受ける細胞の数の増加を示し、そして25μMの用量のE3330において、RA単独と比べて約1.5倍の増加を示すということが明らかになった(図24)。
【0048】
E3330は、1000倍低いRAの用量でRAの効果を高めたが、より高いRAの用量を用いた場合と同様のレベルの分化をもたらした。HL−60分化についてのマーカーであるCD11は、E3330をRAに加えると、より高いRAの用量の場合と同じレベルの分化を有するために約1000倍(3桁)少ないRAしか必要とはされなくなるということを実証した(図25)。
【0049】
E3330は、分化のレベルは約1000倍も大きく高められたとしても、より低いRAの用量では、アポトーシスを受けるHL−60細胞のレベル(アネキシン/PIアッセイ)を有意には高めなかった(図26)。
【0050】
これらの結果は、RAを加えたE3330は細胞分化につながるが、減少されたRAの用量ではこれらの細胞およびモデル系におけるアポトーシスの増加にはつながらないということを示す。
【0051】
メトキシアミンと組み合わせたE3330 −多発性骨髄腫細胞
MTSによってアッセイされた場合、低分子メトキシアミンと組み合わせたE3330は、多発性骨髄腫細胞の死滅を高めた(図27)。データは、Chou−Talalayアルゴリズム(Chou−Talalay;Advances in Enzyme Regulation 22、27−55)に基づくCalcuSynソフトウェアを使用して算出した。E3330は、単独で、またはメトキシアミンと組み合わせて与えた。
【0052】
二本鎖DNA切断(DSB)の指標として、Ser139におけるヒストンH2AXのリン酸化を、アップステート・セル・シグナリング・ソリューションズ(Upstate Cell Signaling Solutions)(メリーランド州、ウォルサム)から入手したリン酸化特異的H2AX抗体を用いて測定した。細胞は、E3330単独またはメトキシアミンを加えたE3330で処置した。薬物処置後、指数関数的に成長する細胞を採取し、冷PBSの中で洗浄し、約100μLの上記のRIPAアッセイ緩衝液に溶解した。タンパク質を定量し、SDSゲル添加液の中で12% SDS−ポリアクリルアミドゲル上で電気泳動にかけた。マウスモノクローナル抗リン酸化ヒストンH2AX(約1:1000)または抗アクチン抗体(約1:1000;添加対照として、ラブビジョン社(LabVision Corp.)、NeoMarkers、カリフォルニア州、フレモント)を使用して、以前に記載されたようにしてタンパク質のレベルについて調べた。ロッシュ・アプライド・バイオサイエンシーズ(Roche Applied Biosciences)(インディアナ州、インディアナポリス)から入手した化学発光キットを使用してバンドを検出した。このバンドを、バイオラド(Bio−Rad) Chemidoc XRS(カリフォルニア州、ハーキュリーズ)を使用して可視化し、Chemidoc ソフトウェア、Quantity One 4.6.1を使用して定量化した。
【0053】
メトキシアミンと組み合わせたE3330 −膵臓細胞
E3330は、膵腫瘍においてメトキシアミンのアポトーシス誘導効果を高めた。アポトーシスについて細胞を分析するために、細胞を蒔き、一晩付着させた。細胞をE3330単独で、またはメトキシアミンを加えたE3330で処置した。処置後約24時間および96時間でアポトーシスをアッセイした。細胞をトリプシン処理し、ペレット化し、氷冷したPBSの中で洗浄し、1×結合緩衝液[約10mmol/L HEPES/NaOH(pH 7.4)、140mmol/L NaCl、2.5mmol/L CaCl2]中に再懸濁した。以前に記載されたようにして(Clinical Cancer Research 13、260−267、2007年1月1日)、ヨウ化プロピジウムと組み合わせたVybrant アポトーシスアッセイキット(モレキュラー・プローブ(Molecular Probes)、オレゴン州、ユージーン)からAlexa Fluor 488 アネキシンVを使用してアポトーシスを分析した。非常にアネキシン陽性である細胞を、アポトーシスについて陽性であると考えた。試料は、インディアナ大学癌センター(Indiana University Cancer Center)のフローサイトメトリ施設でフローサイトメトリによって分析した。
【0054】
予備的なインビボ実験
安全性プロファイルを調べるため、およびE3330の薬物動態特性を明らかにするために、マウスにおける予備的なインビボ実験を実施した(図19〜22)。
【0055】
図19。E3330(RN3−3)(0〜50mg/kg)を投与した雄のマウスにおける体重。50mg/kgの下でE3330(RN3−3)を用いた場合にはマウス毒性は観察されなかった。マウスをRN3−3(E3330)で処置し、処置の2日前または化合物の3つの用量での処置後のいずれかに体重測定した。
【0056】
図20。種々の量でRN3−3(E3330)を用いて処置し、そして処置後2日目、3日目、4日目または5日目において観察したマウスの生存データ。全数に対する生存するマウスの数を、生存/全数として提示する。
【0057】
図21。24時間の時間的経過の実験にわたるE3330(RN3−3)の薬物動態データ。マウスをE3330(RN3−3)で処置し、次いで血中濃度を臨床病理・分析コア(Clinical Pharmacology and Analytical Core、CPAC)において検出した。時間 対 E3330(RN3−3)の濃度をプロットし、見積もった濃度を表に示す。各時間点において3匹のマウスを使用し、データは、各時間についてプロットされた標準偏差(図示せず)を伴う平均を表す。
【0058】
図22。E3330(RN3−3)についての薬物動態データ。生存、体重およびPK研究からのデータを集めて、この表に示す。RN3−3(E3330)の半減期を、雄、雌および合わせたマウスについて、それらの体重および濃度とともに測定した。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血管新生の変性に関連する生理学的障害を阻害するための方法であって、それを必要とする被検体に、有効量の、Ape1/Ref−1の酸化還元機能を選択的に阻害する薬剤を投与することを含む、方法。
【請求項2】
前記薬剤がE3330、またはその薬理学的に許容できる塩である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記障害が、癌、心血管疾患、慢性炎症性疾患、関節リウマチ、糖尿病性網膜症、黄斑変性症、後水晶体線維増殖症、特発性肺線維症、急性成人呼吸促迫症候群、喘息、子宮内膜症、乾癬、ケロイド、および全身性硬化症から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記障害が癌である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記薬剤がE3330、またはその薬理学的に許容できる塩もしくは溶媒和物である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
少なくとも1つのさらなる治療薬が前記被検体に投与される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記さらなる治療薬が、メルファラン、ゲムシタビン、シスプラチン、メトキシアミン、サリドマイドおよびその誘導体、ならびにレチノイン酸から選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
癌を阻害するための方法であって、それを必要とする被検体に、有効量の、Ape1/Ref−1の酸化還元機能を選択的に阻害する薬剤を投与することを含む、方法。
【請求項9】
前記薬剤がE3330、またはその薬理学的に許容できる塩である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記癌が、乳癌、前立腺癌、膵臓癌、結腸癌、子宮頚癌、胚細胞性腫瘍、成人および小児の神経膠腫、骨肉腫、横紋筋肉腫、非小細胞性肺癌、白血病、および多発性骨髄腫から選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記薬剤がE3330、またはその薬理学的に許容できる塩もしくは溶媒和物である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
少なくとも1つのさらなる治療薬が前記被検体に投与される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記さらなる治療薬が、メルファラン、ゲムシタビン、シスプラチン、サリドマイドおよびその誘導体、ならびにレチノイン酸から選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
少なくとも1つのさらなる治療薬が前記被検体に投与される、請求項2に記載の方法。
【請求項15】
前記さらなる治療薬がアバスチンである、請求項14に記載の方法。
【請求項1】
血管新生の変性に関連する生理学的障害を阻害するための方法であって、それを必要とする被検体に、有効量の、Ape1/Ref−1の酸化還元機能を選択的に阻害する薬剤を投与することを含む、方法。
【請求項2】
前記薬剤がE3330、またはその薬理学的に許容できる塩である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記障害が、癌、心血管疾患、慢性炎症性疾患、関節リウマチ、糖尿病性網膜症、黄斑変性症、後水晶体線維増殖症、特発性肺線維症、急性成人呼吸促迫症候群、喘息、子宮内膜症、乾癬、ケロイド、および全身性硬化症から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記障害が癌である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記薬剤がE3330、またはその薬理学的に許容できる塩もしくは溶媒和物である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
少なくとも1つのさらなる治療薬が前記被検体に投与される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記さらなる治療薬が、メルファラン、ゲムシタビン、シスプラチン、メトキシアミン、サリドマイドおよびその誘導体、ならびにレチノイン酸から選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
癌を阻害するための方法であって、それを必要とする被検体に、有効量の、Ape1/Ref−1の酸化還元機能を選択的に阻害する薬剤を投与することを含む、方法。
【請求項9】
前記薬剤がE3330、またはその薬理学的に許容できる塩である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記癌が、乳癌、前立腺癌、膵臓癌、結腸癌、子宮頚癌、胚細胞性腫瘍、成人および小児の神経膠腫、骨肉腫、横紋筋肉腫、非小細胞性肺癌、白血病、および多発性骨髄腫から選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記薬剤がE3330、またはその薬理学的に許容できる塩もしくは溶媒和物である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
少なくとも1つのさらなる治療薬が前記被検体に投与される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記さらなる治療薬が、メルファラン、ゲムシタビン、シスプラチン、サリドマイドおよびその誘導体、ならびにレチノイン酸から選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
少なくとも1つのさらなる治療薬が前記被検体に投与される、請求項2に記載の方法。
【請求項15】
前記さらなる治療薬がアバスチンである、請求項14に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14A】
【図14B】
【図14C】
【図14D】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21A】
【図21B】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27A】
【図27B】
【図27C】
【図27D】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14A】
【図14B】
【図14C】
【図14D】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21A】
【図21B】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27A】
【図27B】
【図27C】
【図27D】
【公表番号】特表2010−540544(P2010−540544A)
【公表日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−527064(P2010−527064)
【出願日】平成20年9月22日(2008.9.22)
【国際出願番号】PCT/US2008/077210
【国際公開番号】WO2009/042542
【国際公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【出願人】(301046787)インディアナ・ユニバーシティ・リサーチ・アンド・テクノロジー・コーポレーション (24)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年9月22日(2008.9.22)
【国際出願番号】PCT/US2008/077210
【国際公開番号】WO2009/042542
【国際公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【出願人】(301046787)インディアナ・ユニバーシティ・リサーチ・アンド・テクノロジー・コーポレーション (24)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]