説明

発光素子およびその製造方法

【課題】発光効率が向上可能な発光素子を提供する。
【解決手段】発光素子10は、ドット部材3,4を備える。ドット部材3は、ドット部材4に接して形成される。ドット部材3は、量子ドット層31〜33からなる。量子ドット層31〜33の各々は、複数の量子ドット311と、シリコン酸化膜312とからなる。量子ドット311は、n型シリコンドットからなる。ドット部材4は、量子ドット層41〜43からなる。量子ドット層41〜43の各々は、複数の量子ドット411と、シリコン酸化膜412とからなる。量子ドット411は、p型シリコンドットからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、発光素子およびその製造方法に関し、特に、量子ドットを用いた発光素子およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体島構造(量子ドット)を用いた半導体発光素子が知られている(特許文献1)。この半導体発光素子は、n型AlGaAs/n型GaAs/InGaAs島構造/窒素を含む化合物半導体/p型GaAs/p型AlGaAsからなる。
【0003】
そして、InGaAs島構造は、圧縮応力からなる内部応力を有する。また、窒素を含む化合物半導体は、引っ張り応力を有する。従って、窒素を含む化合物半導体をInGaAs島構造に接するように配置し、InGaAs島構造が有する内部応力を窒素を含む化合物半導体によって減少させる。
【0004】
その結果、発光層であるInGaAs島構造における内部応力が減少し、1.55μmの発光スペクトルが室温で得られている。
【特許文献1】特開2003−332695号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の半導体発光素子は、発光層である量子ドット自体がp型またはn型に制御されていないため、発光層へのキャリア(電子および正孔)の注入量が少なく、発光効率が低いという問題がある。
【0006】
そこで、この発明は、かかる問題を解決するためになされたものであり、その目的は、発光効率が向上可能な発光素子を提供することである。
【0007】
また、この発明の別の目的は、発光効率が向上可能な発光素子の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明によれば、発光素子は、第1および第2のドット部材を備える。第1のドット部材は、第1の導電型を有する第1の量子ドットを含む。第2のドット部材は、第1のドット部材に接して配置され、第1の導電型と異なる第2の導電型を有する第2の量子ドットを含む。
【0009】
好ましくは、第1のドット部材は、第1の量子ドットと、第1の絶縁層とを含む。第1の絶縁層は、第1の量子ドットを覆う。第2のドット部材は、第2の量子ドットと、第2の絶縁層とを含む。第2の絶縁層は、第2の量子ドットを覆う。
【0010】
好ましくは、発光素子は、基板を更に備える。基板は、第1のドット部材に接し、第1の導電型を有する。そして、第2のドット部材は、第1のドット部材上に配置される。
【0011】
好ましくは、第1の導電型は、p型であり、第2の導電型は、n型である。
【0012】
好ましくは、第1の導電型は、n型であり、第2の導電型は、p型である。
【0013】
好ましくは、第1および第2の量子ドットは、シリコンドットからなる。
【0014】
好ましくは、第1および第2の量子ドットは、金属シリサイドドットからなる。
【0015】
また、この発明によれば、発光素子の製造方法は、第1の導電型を有する第1の量子ドットを含む第1のドット部材を第1の導電型を有する半導体基板の一主面に堆積する第1の工程と、第1の導電型と異なる第2の導電型を有する第2の量子ドットを含む第2のドット部材を第1のドット部材上に堆積する第2の工程とを備える。
【0016】
好ましくは、第1の工程は、真性型の第3の量子ドットを堆積するための第1の材料ガスを反応室に供給する第1のサブ工程と、第1の不純物ガスを第1の材料ガスに追加して反応室に供給する第2のサブ工程とを含み、第2の工程は、真性型の第4の量子ドットを堆積するための第2の材料ガスを反応室に供給する第3のサブ工程と、第2の不純物ガスを第2の材料ガスに追加して反応室に供給する第4のサブ工程とを含む。
【0017】
好ましくは、第1の材料ガスは、第1のサブ工程において、第1のタイミングから第2のタイミングまで反応室に供給され、第1の不純物ガスは、第2のサブ工程において、第1のタイミングと第2のタイミングとの間の第3のタイミングから第2のタイミングまで第1の材料ガスに追加して反応室に供給され、第2の材料ガスは、第3のサブ工程において、第4のタイミングから第5のタイミングまで第2の材料ガスに追加して反応室に供給され、第2の不純物ガスは、第4のサブ工程において、第4のタイミングと第5のタイミングとの間の第6のタイミングから第4のタイミングまで反応室に供給される。
【0018】
好ましくは、第3のタイミングは、第1のタイミングと第2のタイミングとの中間時点よりも後であり、第6のタイミングは、第4のタイミングと第5のタイミングとの中間時点よりも後である。
【0019】
好ましくは、第1の材料ガスは、第2の材料ガスと同じである。
【0020】
好ましくは、第1のサブ工程において、シランガスが反応室に供給され、第2のサブ工程において、フォスフィンガスがシランガスに追加して反応室に供給され、第3のサブ工程において、シランガスが反応室に供給され、第4のサブ工程において、ジボランガスがシランガスに追加して反応室に供給される。
【0021】
好ましくは、第1のサブ工程において、シランガスが反応室に供給され、第2のサブ工程において、ジボランガスがシランガスに追加して反応室に供給され、第3のサブ工程において、シランガスが反応室に供給され、第4のサブ工程において、フォスフィンガスがシランガスに追加して反応室に供給される。
【0022】
好ましくは、第1のタイミングから第2のタイミングまでの時間長は、第4のタイミングから第5のタイミングまでの時間長に略等しい。
【発明の効果】
【0023】
この発明による発光素子においては、第1および第2のドット部材のいずれか一方に含まれる量子ドットを介して電子および正孔の一方が第1のドット部材中に供給され、量子ドット中に閉じ込められる。また、第1および第2のドット部材のいずれか他方に含まれる量子ドットを介して電子および正孔の他方が第2のドット部材中に供給され、量子ドット中に閉じ込められる。そして、量子ドット中に閉じ込められた電子および正孔は、発光再結合するまで量子ドット中に保持され、再結合すると、発光する。
【0024】
したがって、この発明によれば、発光効率を高くできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0026】
図1は、この発明の実施の形態による発光素子の斜視図である。また、図2は、図1に示す線II−II間における発光素子の断面図である。図1および図2を参照して、この発明の実施の形態による発光素子10は、基板1と、シリコン酸化膜2と、ドット部材3,4と、電極5,6とを備える。
【0027】
基板1は、(100)面および約0.1Ω・cmの比抵抗を有するn型シリコン(n−Si)からなる。シリコン酸化膜2は、基板1の一主面に形成される。そして、シリコン酸化膜2は、約3.5nmの膜厚を有する。
【0028】
ドット部材3は、シリコン酸化膜2に接してシリコン酸化膜2上に形成される。ドット部材4は、ドット部材3に接してドット部材3上に形成される。電極5は、ドット部材4に接してドット部材4上に形成される。そして、電極5は、例えば、金(Au)からなる。電極6は、例えば、アルミニウム(Al)からなり、基板1の裏面に形成される。
【0029】
ドット部材3は、量子ドット層31〜33からなる。量子ドット層31は、複数の量子ドット311と、複数の量子ドット311を覆うシリコン酸化膜312とからなる。複数の量子ドット311の各々は、n型シリコンドットからなる。そして、量子ドット311は、約10nm以下の直径および約5nmの高さを有する。また、量子ドット311に含まれるリン(P)濃度は、1017〜1018cm−3である。シリコン酸化膜312は、2nmの膜厚を有する。
【0030】
なお、量子ドット層32,33の各々は、量子ドット層31と同じ構成からなる。
【0031】
ドット部材4は、量子ドット層41〜43からなる。量子ドット層41は、複数の量子ドット411と、複数の量子ドット411を覆うシリコン酸化膜412とからなる。複数の量子ドット411の各々は、p型シリコンドットからなる。そして、量子ドット411は、約10nm以下の直径および約5nmの高さを有する。また、量子ドット411に含まれるボロン(B)濃度は、1017〜1018cm−3である。シリコン酸化膜412は、2nmの膜厚を有する。
【0032】
なお、量子ドット層42,43の各々は、量子ドット層41と同じ構成からなる。
【0033】
量子ドット層31は、シリコン酸化膜2に接してシリコン酸化膜2上に形成される。量子ドット層32は、量子ドット層31に接して量子ドット層31上に形成される。量子ドット層33は、量子ドット層32に接して量子ドット層32上に形成される。
【0034】
このように、ドット部材3は、n型シリコンドットからなる複数の量子ドット311を含む量子ドット31〜33を3層積層した構造からなる。
【0035】
量子ドット層41は、量子ドット層33に接して量子ドット層33上に形成される。量子ドット層42は、量子ドット層41に接して量子ドット層41上に形成される。量子ドット層43は、量子ドット層42に接して量子ドット層42上に形成される。
【0036】
このように、ドット部材4は、p型シリコンドットからなる複数の量子ドット411を含む量子ドット41〜43を3層積層した構造からなる。
【0037】
図3は、図1に示す発光素子10のゼロバイアス時のエネルギーバンド図である。図3を参照して、基板1を構成するnSi中には、伝導帯Ec1および価電子帯Ev1が存在し、nSiは、1.12eVのエネルギーバンドギャップEg1を有する。
【0038】
シリコン酸化膜2,312,412は、約9eVのエネルギーバンドギャップEg2を有する。また、量子ドット311は、2つのシリコン酸化膜312によって挟み込まれているので、量子サイズ効果によって、nSiの伝導帯Ec1側にサブ準位Lsub1を有し、nSiの価電子帯Ev1側にサブ準位Lsub2を有する。
【0039】
サブ準位Lsub1は、nSiの伝導帯Ec1よりもエネルギー的に高く、サブ準位Lsub2は、nSiの価電子帯Ev1の端よりもエネルギー的に高い。その結果、サブ準位Lsub1とサブ準位Lsub2とのエネルギー差は、nSiのエネルギーギャップEg1よりも大きい。
【0040】
量子ドット411は、2つのシリコン酸化膜412によって挟み込まれているので、量子サイズ効果によって、nSiの伝導帯Ec1側にサブ準位Lsub3を有し、nSiの価電子帯Ev1側にサブ準位Lsub4を有する。
【0041】
量子ドット411は、p型シリコンドットからなり、量子ドット311は、n型シリコンドットからなるので、サブ準位Lsub3は、サブ準位Lsub1よりもエネルギー的に高く、サブ準位Lsub2は、サブ準位Lsub4よりもエネルギー的に高い。
【0042】
図4は、図1に示す発光素子10の電流通電時のエネルギーバンド図である。電極5側をプラス、電極6側をマイナスとして電極5,6間に電圧を印加すると、図4に示すように、基板1を構成するnSiのエネルギーバンドが持ち上がり、nSi中の電子11は、複数の量子ドット311を介して量子ドット層31,32中を伝導し、量子ドット層33,41,42中へ注入される。そして、注入された電子は、量子ドット層33,41,42中の量子ドット311,411によって保持される。
【0043】
一方、電極5中の正孔12は、複数の量子ドット411を介して量子ドット層43,42中を伝導し、量子ドット層41,33,32中へ注入される。そして、注入された正孔は、量子ドット層41,33,32中の量子ドット411,311によって保持される。
【0044】
そうすると、量子ドット層41,33中の量子ドット311,411に蓄積された電子13は、量子ドット層41,33中の量子ドット311,411に蓄積された正孔14と再結合して発光する。
【0045】
発光素子10においては、量子ドット層31〜33の複数の量子ドット311は、n型にドーピングされ、量子ドット層41〜43の複数の量子ドット411は、p型にドーピングされているため、複数の量子ドット311は、n型にドーピングされていない場合よりもサブ準位Lsub1が低くなり、複数の量子ドット411は、p型にドーピングされていない場合よりもサブ準位Lsub4が低くなる。その結果、nSi中の電子は、複数の量子ドット311がn型にドーピングされていない場合よりも量子ドット層31,32を伝導し易くなり、より多くの電子が量子ドット層33,41に蓄積される。また、電極5中の正孔は、複数の量子ドット411がp型にドーピングされていない場合よりも量子ドット層43,42中を伝導し易くなり、より多くの正孔が量子ドット層41,33に蓄積される。
【0046】
したがって、この発明によれば、発光効率を高くできる。
【0047】
図5は、リモート水素プラズマ処理を行なうためのプラズマ処理装置の概略図である。図5を参照して、プラズマ処理装置600は、石英管610と、反応室620と、基板ホルダー630と、ヒーター640と、配管650と、バルブ660と、アンテナ670と、マッチング回路580と、高周波電源590とを備える。
【0048】
石英管610は、10cmφの直径を有し、その一方端が反応室620内に挿入されるように固定される。反応室620は、中空の円筒形状からなり、上面620Aに石英管610の一方端を挿入するための開口部621を有し、側面620Bに排気口620Bを有する。そして、反応室620は、開口部621から石英管610の一方端が挿入されることによって、内部空間が石英管610の内部空間と連通する。従って、ポンプ(図示せず)によって反応室620および石英管610の内部の気体を排気口622を介して排気できる。
【0049】
基板ホルダー630は、反応室620の下面620B上に配置される。ヒーター640は、シリコンカーバイド(SiC)からなり、基板ホルダー630内に配置される。
【0050】
配管650は、バルブ660を介して石英管610の他方端に連結される。バルブ660は、配管650に装着される。アンテナ670は、基板ホルダー630上に設置された基板700Aから32cmの位置で石英管610の周囲を取り巻くように配置される。そして、アンテナ670は、その一方端がマッチング回路680に接続され、他方端が接地される。
【0051】
マッチング回路680は、アンテナ670の一方端と高周波電源690との間に接続される。高周波電源690は、マッチング回路680と、接地ノードとの間に接続される。
【0052】
ヒーター640は、基板ホルダー630を介して基板700Aを所定の温度に加熱する。配管650は、水素(H)ガスをボンベ(図示せず)から石英管610内に導く。バルブ660は、Hガスを石英管610内へ供給し、またはHガスの石英管610内への供給を遮断する。
【0053】
マッチング回路680は、高周波電源690から供給された高周波電力の高周波電源690側への反射を低くして高周波電力をアンテナ670へ供給する。高周波電源690は、60MHzの高周波電力をマッチング回路680を介してアンテナ670へ供給する。
【0054】
プラズマ処理装置600における処理動作について説明する。基板700が基板ホルダー630上に配置され、排気口622から反応室620および石英管610の真空引きが行なわれる。
【0055】
その後、バルブ660が開けられ、ボンベ(図示せず)から所定量のHガスが配管650を介して石英管610内へ導入される。そして、石英管610内の圧力が所定の圧力に達すると、高周波電源690は、60MHzの高周波電力をマッチング回路680を介してアンテナ670に供給する。この場合、マッチング回路680は、高周波電源690から供給された高周波電力の高周波電源690側への反射が最も低くなるように調整される。
【0056】
そうすると、石英管610内でプラズマ710が発生し、主に原子状水素がプラズマ710の発生領域から基板700の方向へ石英管610内を拡散し、基板700表面に到達する。そして、原子状水素は、基板700表面を処理する。
【0057】
所定の処理時間が経過すると、高周波電源690がオフされ、バルブ660が閉じられて処理動作が終了する。
【0058】
図6から図8は、それぞれ、図1に示す発光素子10の製造方法を説明するための第1から第3の工程図である。図6を参照して、発光素子10の製造が開始されると、nSiからなる基板1が準備され、基板1をRCA洗浄した後、基板1を酸化装置にセットする。
【0059】
そして、基板1の一主面を2%の酸素雰囲気中において約1000℃で酸化することにより基板1の一主面の全面にシリコン酸化膜2を形成する(図6の工程(a)参照)。
【0060】
その後、シリコン酸化膜2/基板1をプラズマ処理装置600の基板ホルダー630にセットする。そして、プラズマ処理装置600において、アルゴン(Ar)ガスを石英管610内に流し、リモートアルゴンプラズマによってシリコン酸化膜2の表面を処理し、引き続いて、Hガスを石英管610内に流し、リモート水素プラズマによってシリコン酸化膜2の表面を処理する。これによって、シリコン酸化膜2の表面がOH7によって終端される(図6の工程(b)参照)。なお、この場合、Arガスの流量は、50sccmであり、Hガスの流量は、60sccmである。
【0061】
その後、プラズマ処理装置600において、シラン(SiH)ガスおよびヘリウム希釈の10%フォスフィン(PH/He)ガスを原料として、減圧化学気相堆積法(LPCVD:Low Pressure Chemical Vapour Deposition)によって量子ドット311を自己組織的にシリコン酸化膜2上に形成する(図6の工程(c)参照)。
【0062】
この場合、基板温度は、560℃であり、反応圧力は、26.7Paであり、SiHガスの流量は、30sccmであり、PHガスの流量は、10sccmであり、反応時間は、3分である。
【0063】
引き続いて、酸素(O)ガスを石英管610内に流し、リモート酸素プラズマによってシリコン酸化膜312を量子ドット311を覆うように形成する(図6の工程(d)参照)。この場合、Oガスの流量は、50sccmである。
【0064】
その後、上述した工程(b)〜工程(d)を2回繰り返し実行し、ドット部材3をシリコン酸化膜2上に形成する(図6の工程(e)参照)。
【0065】
引き続いて、プラズマ処理装置600において、Arガスを石英管610内に流し、リモートアルゴンプラズマによってドット部材3の最上層のシリコン酸化膜312の表面を処理し、引き続いて、Hガスを石英管610内に流し、リモート水素プラズマによってドット部材3の最上層のシリコン酸化膜312の表面を処理する。これによって、ドット部材3の最上層のシリコン酸化膜312の表面がOH8によって終端される(図7の工程(f)参照)。この場合、Arガスの流量およびHガスの流量は、上述した流量と同じである。
【0066】
その後、プラズマ処理装置600において、SiHガスおよびヘリウム希釈の10%ジボラン(B/He)ガスを原料として、LPCVD法によって量子ドット411を自己組織的にシリコン酸化膜312上に形成する(図7の工程(g)参照)。
【0067】
この場合、基板温度は、560℃であり、反応圧力は、26.7Paであり、SiHガスの流量は、30sccmであり、Bガスの流量は、10sccmであり、反応時間は、3分である。
【0068】
引き続いて、Oガスを石英管610内に流し、リモート酸素プラズマによってシリコン酸化膜412を量子ドット411を覆うように形成する(図7の工程(h)参照)。この場合、Oガスの流量は、上述した流量と同じである。
【0069】
その後、上述した工程(f)〜工程(h)を2回繰り返し実行し、ドット部材4をドット部材3上に形成する(図7の工程(i)参照)。
【0070】
そして、ドット部材4/ドット部材3/シリコン酸化膜2/基板1をNアニールする。この場合、Nガスの流量は、1リッター/分であり、温度は、1000℃であり、時間は、30分である。
【0071】
引き続いて、ドット部材4上に電極5を蒸着によって形成し(図8の工程(j)参照)、電極6を蒸着によって基板1の裏面に形成する(図8の工程(k)参照)。これによって、発光素子10が完成する。
【0072】
図9は、図6に示す工程(c)および図7に示す工程(g)の詳細な動作を説明するための図である。
【0073】
図9を参照して、図6に示す工程(c)においては、SiHガスがタイミングt1からタイミングt3までの間、反応室620に供給され、タイミングt2からタイミングt3までの間、PHガスがSiHガスに追加して反応室620に供給され、n型シリコンドットからなる量子ドット311が形成される。
【0074】
また、図7に示す工程(g)においては、SiHガスがタイミングt1からタイミングt3までの間、反応室620に供給され、タイミングt2からタイミングt3までの間、BガスがSiHガスに追加して反応室620に供給され、p型シリコンドットからなる量子ドット411が形成される。
【0075】
そして、タイミングt1からタイミングt3までの時間は、3分であり、タイミングt2からタイミングt3までの時間は、1秒である。
【0076】
従って、この発明においては、Pのδドーピングによって量子ドット311が形成され、Bのδドーピングによって量子ドット411が形成される。
【0077】
このように、この発明においては、PのソースガスであるPHガスをSiHガスを反応室620に供給するタイミングt1とタイミングt3との中間時点であるタイミングt4よりも後のタイミングt2からタイミングt3までの間、反応室620に供給することによってPをδドーピングし、量子ドット311を形成する。
【0078】
また、BのソースガスであるBガスをSiHガスを反応室620に供給するタイミングt1とタイミングt3との中間時点であるタイミングt4よりも後のタイミングt2からタイミングt3までの間、反応室620に供給することによってBをδドーピングし、量子ドット411を形成する。
【0079】
さらに、PHガスを反応室620に供給する時間長は、Bガスを反応室620に供給する時間長と等しい。
【0080】
PHガスおよびBガスをSiHガスの供給時間であるタイミングt1−タイミングt3間の最後に反応室620に供給するのは、量子ドットがSiHガスの供給し始めから直ぐに成長するのではなく、量子ドットが成長し始めるまでに、ある程度の潜伏時間があるので、量子ドットが成長し始めた後に、PまたはBをドーピングして品質の良いn型シリコンドットからなる量子ドット311およびp型シリコンドットからなる量子ドット411を形成するためである。
【0081】
そして、タイミングt2からタイミングt3までの時間長は、量子ドット311,411中に含まれるP濃度およびB濃度を決定する要因になるので、相対的に高いP濃度またはB濃度をドーピングする場合、タイミングt2からタイミングt3までの時間長は、相対的に長く設定され、相対的に低いP濃度またはB濃度をドーピングする場合、タイミングt2からタイミングt3までの時間長は、相対的に短く設定される。この場合、タイミングt3は、タイミングt4よりもタイミングt1側に設定されてもよい。
【0082】
また、PHガスを反応室620に供給する時間長は、Bガスを反応室620に供給する時間長と一致していなくてもよく、量子ドット311中のP濃度と量子ドット411中のB濃度との関係に依存に決定される。すなわち、量子ドット311中のP濃度が量子ドット411中のB濃度よりも高い場合、PHガスを反応室620に供給する時間長は、Bガスを反応室620に供給する時間長よりも長く設定され、量子ドット311中のP濃度が量子ドット411中のB濃度よりも低い場合、PHガスを反応室620に供給する時間長は、Bガスを反応室620に供給する時間長よりも短く設定され、量子ドット311中のP濃度が量子ドット411中のB濃度に略一致する場合、PHガスを反応室620に供給する時間長は、Bガスを反応室620に供給する時間長に略等しい。
【0083】
図10は、この発明の実施の形態による他の発光素子の斜視図である。また、図11は、図10に示す線XI−XI間における発光素子の断面図である。図10および図11を参照して、発光素子10Aは、図1および図2に示す発光素子10の基板1を基板1Aに代え、電極5を電極5Aに代えたものであり、その他は、発光素子10と同じである。
【0084】
なお、発光素子10Aにおいては、ドット部材4は、シリコン酸化膜2に接してシリコン酸化膜2上に形成され、ドット部材3は、ドット部材4に接してドット部材4上に形成される。
【0085】
基板1Aは、(100)面および約8〜12Ω・cmの比抵抗を有するp型シリコン(p−Si)からなる。
【0086】
電極5Aは、Alからなり、ドット部材3に接してドット部材3上に形成される。
【0087】
このように、発光素子10Aは、発光素子10のドット部材3とドット部材4とを基板上に積層する順番を入れ替えた発光素子である。
【0088】
そして、発光素子10Aのゼロバイアス時のエネルギーバンド図は、図3に示すエネルギーバンド図と同じであり、発光素子10Aの電流通電時のエネルギーバンド図は、図4に示すエネルギーバンド図と同じである。したがって、発光素子10Aは、発光素子10と同じ機構によって発光する。
【0089】
また、発光素子10Aは、上述した図6から図8に示す工程(a)〜工程(k)に従って製造される。この場合、図6に示す工程(b)〜工程(d)において、PHガスの代わりにBガスが用いられて、量子ドット411を含む量子ドット層41〜43がシリコン酸化膜2上に順次形成され、図7に示す工程(f)〜工程(h)において、Bガスの代わりにPHガスが用いられて、量子ドット311を含む量子ドット層31〜33がドット部材4上に順次形成される。
【0090】
図12は、発光素子10,10Aの電流−電圧特性を示す図である。図12において、縦軸は、電流密度を表し、横軸は、ゲート電圧(すなわち、電極5,6の電圧または電極5A,6間の電圧)を表す。また、曲線k1,k2は、図1および図2に示す発光素子10の電流−電圧特性を示し、曲線k3,k4は、図10および図11に示す発光素子10Aの電流−電圧特性を示す。
【0091】
発光素子10は、整流特性を示し(曲線k1,k2参照)、発光素子10Aは、整流特性を示す(曲線k3,k4参照)。
【0092】
したがって、上述した方法によって作成した発光素子10,10Aは、p−n接合から構成されていることが解った。
【0093】
図13は、発光素子10,10Aの発光特性を示す図である。図13において、縦軸は、EL(Electro−Luminescence)の強度を表し、横軸は、波長を表す。
【0094】
また、図13の右側の図は、発光素子10の発光特性を示し、図13の左側の図は、発光素子10Aの発光特性を示す。
【0095】
図13から明らかなように、ゲート電圧(すなわち、電極5,6の電圧または電極5A,6間の電圧)を大きくすることによって、発光強度は、強くなる。これは、ゲート電圧(すなわち、電極5,6の電圧または電極5A,6間の電圧)が大きくなることによって、ドット部材3,4中へ注入される電子および正孔が増加するからである。
【0096】
このように、n型シリコンドットを含むドット部材3とp型シリコンドットを含むドット部材4とを接して形成することによって、量子ドット311中へ注入された電子が量子ドット411中へ注入された正孔と再結合して発光することが実験的に実証された。
【0097】
図14は、図1および図2に示す発光素子10のEL発光の積分強度とゲート電圧との関係を示す図である。また、図15は、図1および図2に示す発光素子10の順方向における電流−電圧特性を示す図である。
【0098】
図14において、縦軸は、EL発光の積分強度を表し、横軸は、ゲート電圧を表す。また、曲線k5は、発光素子10のEL発光の積分強度とゲート電圧との関係を示し、曲線k6は、基板1上に形成されたノンドープの量子ドットのEL発光の積分強度とゲート電圧との関係を示し、曲線k7は、基板1上に形成されたBドープの量子ドットのEL発光の積分強度とゲート電圧との関係を示し、曲線k8は、基板1上に形成されたPドープの量子ドットのEL発光の積分強度とゲート電圧との関係を示す。
【0099】
図15において、縦軸は、電流密度を表し、横軸は、ゲート電圧を表す。また、曲線k9は、発光素子10の電流−電圧特性を示し、曲線k10は、ノンドープの量子ドット/基板1の電流−電圧特性を示し、曲線k11は、Bドープの量子ドット/基板1の電流−電圧特性を示し、曲線k12は、Pドープの量子ドット/基板1の電流−電圧特性を示す。
【0100】
発光素子10の電流密度は、ゲート電圧が0.7Vよりも低い領域においては、ノンドープの量子ドット/基板1、Bドープの量子ドット/基板1およびPドープの量子ドット/基板1よりも高く、ゲート電圧が0.7V以上の領域においては、ノンドープの量子ドット/基板1、Bドープの量子ドット/基板1およびPドープの量子ドット/基板1よりも低い(曲線k9〜k12参照)。
【0101】
一方、発光素子10の発光強度は、ノンドープの量子ドット/基板1、Bドープの量子ドット/基板1およびPドープの量子ドット/基板1よりも強い。より具体的には、発光素子10の発光強度は、ノンドープの量子ドット/基板1およびBドープの量子ドット/基板1よりも約1桁強く、Pドープの量子ドット/基板1よりも約2桁強い(曲線k5〜k8参照)。
【0102】
このように、n型シリコンドットを含むドット部材3とp型シリコンドットを含むドット部材4とを接して形成することによって、発光素子10は、ノンドープのシリコンドットを含むサンプル、またはn型シリコンドットおよびp型シリコンドットのいずれか一方を含むサンプルよりも発光強度が1桁以上強くなる。
【0103】
図16は、図1および図2に示す発光素子10におけるEL発光の積分強度と電流密度との関係を示す図である。図16において、縦軸は、EL発光の積分強度を表し、横軸は、電流密度を表す。また、曲線k13は、発光素子10におけるEL発光の積分強度と電流密度との関係を示し、曲線k14は、ノンドープの量子ドット/基板1におけるEL発光の積分強度と電流密度との関係を示し、曲線k15は、Bドープの量子ドット/基板1におけるEL発光の積分強度と電流密度との関係を示し、曲線k16は、Pドープの量子ドット/基板1におけるEL発光の積分強度と電流密度との関係を示す。
【0104】
発光素子10の発光強度は、ノンドープの量子ドット/基板1、Bドープの量子ドット/基板1およびPドープの量子ドット/基板1よりも強い。より具体的には、発光素子10の発光強度は、同じ電流密度において、ノンドープの量子ドット/基板1およびBドープの量子ドット/基板1よりも約1桁強く、Pドープの量子ドット/基板1よりも約2桁強い(曲線k13〜k16参照)。
【0105】
このように、n型シリコンドットを含むドット部材3とp型シリコンドットを含むドット部材4とを接して形成することによって、発光効率が1桁以上向上する。
【0106】
これは、量子ドット311へ注入された電子および量子ドット411へ注入された正孔は、それぞれ、サブ準位Lsub1,Lsub4に閉じ込められ、発光再結合する割合が高いからである。
【0107】
図17は、図10および図11に示す発光素子10AのEL発光の積分強度とゲート電圧との関係を示す図である。また、図18は、図10および図11に示す発光素子10Aの逆方向における電流−電圧特性を示す図である。
【0108】
図17において、縦軸は、EL発光の積分強度を表し、横軸は、ゲート電圧を表す。また、曲線k17は、発光素子10AのEL発光の積分強度とゲート電圧との関係を示し、曲線k18は、基板1A上に形成されたノンドープの量子ドットのEL発光の積分強度とゲート電圧との関係を示し、曲線k19は、基板1A上に形成されたBドープの量子ドットのEL発光の積分強度とゲート電圧との関係を示し、曲線k20は、基板1A上に形成されたPドープの量子ドットのEL発光の積分強度とゲート電圧との関係を示す。
【0109】
図18において、縦軸は、電流密度を表し、横軸は、ゲート電圧を表す。また、曲線k21は、発光素子10Aの電流−電圧特性を示し、曲線k22は、ノンドープの量子ドット/基板1Aの電流−電圧特性を示し、曲線k23は、Bドープの量子ドット/基板1Aの電流−電圧特性を示し、曲線k24は、Pドープの量子ドット/基板1Aの電流−電圧特性を示す。
【0110】
発光素子10Aの電流密度は、ゲート電圧が約−7Vよりも高い領域においては、ノンドープの量子ドット/基板1A、およびPドープの量子ドット/基板1Aよりも高く、Bドープの量子ドット/基板1Aよりも低い。また、発光素子10Aの電流密度は、ゲート電圧が約−7V以下の領域においては、ノンドープの量子ドット/基板1A、Bドープの量子ドット/基板1AおよびPドープの量子ドット/基板1Aよりも低い(曲線k21〜k24参照)。
【0111】
一方、発光素子10Aの発光強度は、ゲート電圧が約−10Vよりも高い領域においては、ノンドープの量子ドット/基板1A、およびPドープの量子ドット/基板1Aよりも強く、Bドープの量子ドット/基板1Aよりも弱い。また、発光素子10Aの発光強度は、ゲート電圧が約−10V〜−18Vの領域においては、ノンドープの量子ドット/基板1Aよりも強く、Bドープの量子ドット/基板1A、およびPドープの量子ドット/基板1Aよりも弱い(曲線k17〜曲線k20参照)。
【0112】
図19は、図10および図11に示す発光素子10AにおけるEL発光の積分強度と電流密度との関係を示す図である。図19において、縦軸は、EL発光の積分強度を表し、横軸は、電流密度を表す。また、曲線k25は、発光素子10におけるEL発光の積分強度と電流密度との関係を示し、曲線k26は、ノンドープの量子ドット/基板1AにおけるEL発光の積分強度と電流密度との関係を示し、曲線k27は、Bドープの量子ドット/基板1AにおけるEL発光の積分強度と電流密度との関係を示し、曲線k28は、Pドープの量子ドット/基板1AにおけるEL発光の積分強度と電流密度との関係を示す。
【0113】
発光素子10Aの発光強度は、1A/cmよりも低い電流密度において、ノンドープの量子ドット/基板1A、Bドープの量子ドット/基板1AおよびPドープの量子ドット/基板1Aよりも強い。
【0114】
発光素子10Aの発光強度は、特に、ノンドープの量子ドット/基板1AおよびBドープの量子ドット/基板1Aよりも約1桁以上強い(曲線k25〜k28参照)。
【0115】
p型シリコンからなる基板1Aを用いた場合、発光素子10Aの発光強度は、同じゲート電圧において、Bドープの量子ドット/基板1Aからなるサンプルよりも弱いが(図17の曲線k17,k19参照)、同じ電流密度においては、Bドープの量子ドット/基板1Aからなるサンプルよりも1桁以上強くなる(図19の曲線k25,k27参照)。
【0116】
したがって、p型基板1Aを用いた場合においても、n型シリコンドットを含むドット部材3とp型シリコンドットを含むドット部材4とを接して形成することによって、発光効率が1桁以上向上することが実験的に実証された。
【0117】
上述したように、n型シリコンドットを含むドット部材3とp型シリコンドットを含むドット部材4とを接して形成することによって、n型基板1およびp型基板1Aのいずれの基板を用いても、発光素子10,10Aの発光強度を向上できることが実験的に実証された。
【0118】
図20は、この発明の実施の形態によるさらに他の発光素子の断面図である。図20を参照して、この発明の実施の形態による発光素子10Bは、図1および図2に示す発光素子10のドット部材3,4をそれぞれドット部材30,40に代えたものであり、その他は、発光素子10と同じである。
【0119】
ドット部材30は、シリコン酸化膜2に接してシリコン酸化膜2上に形成される。ドット部材40は、ドット部材30に接してドット部材30上に形成される。そして、電極5は、ドット部材40に接してドット部材40上に形成される。
【0120】
ドット部材30は、量子ドット層301〜303を含む。量子ドット層301は、量子ドット層31の量子ドット311を量子ドット310に代えたものであり、その他は、量子ドット層31と同じである。
【0121】
量子ドット310は、pドープのNiシリサイドドットからなる。そして、量子ドット310は、約10nm以下の直径および約5nmの高さを有する。また、量子ドット310中のP濃度は、1017〜1018cm−3である。
【0122】
なお、量子ドット層302,303の各々は、量子ドット層301と同じ構成からなる。
【0123】
ドット部材40は、量子ドット層401〜403を含む。量子ドット層401は、量子ドット層41の量子ドット411を量子ドット410に代えたものであり、その他は、量子ドット層41と同じである。
【0124】
量子ドット410は、Bドープのニッケル(Ni)シリサイドドットからなる。そして、量子ドット410は、約10nm以下の直径および約5nmの高さを有する。また、量子ドット410中のB濃度は、1017〜1018cm−3である。
【0125】
なお、量子ドット層402,403の各々は、量子ドット層401と同じ構成からなる。
【0126】
量子ドット層301〜303は、シリコン酸化膜2上に順次積層され、量子ドット層401〜403は、ドット部材30上に順次積層される。
【0127】
図21から図23は、それぞれ、図20に示す発光素子10Bの製造工程を示す第1から第3の工程図である。
【0128】
図21を参照して、発光素子10Bの製造が開始されると、上述した工程(a)〜工程(c)が順次実行された後、Ni薄膜9を量子ドット311上に形成し(工程(d1)参照)、その後、量子ドット311およびNi薄膜9を熱処理して量子ドット310を形成する(工程(d2)参照)。
【0129】
その後、シリコン酸化膜312が上述した方法によって量子ドット310上に形成される(工程(d3)参照)。そして、工程(b)〜工程8d3)が2回繰り返し実行され、ドット部材30がシリコン酸化膜2上に形成される(工程(e1)参照)。
【0130】
引き続いて、上述した工程(f),(g)が順次実行された後、Ni薄膜11を量子ドット410上に形成し(工程(h1)参照)、その後、量子ドット410およびNi薄膜11を熱処理して量子ドット410を形成する(工程(h2)参照)。
【0131】
そして、シリコン酸化膜412が上述した方法によって量子ドット410上に形成される(工程(h3)参照)。
【0132】
その後、工程(f)〜工程(h3)を2回繰り返し実行し、ドット部材40をドット部材30上に形成する(工程(i1)参照)。
【0133】
そして、電極5を蒸着によってドット部材40上に形成し(工程(j1)参照)、電極6を蒸着によって基板1の裏面に形成する(工程(k1)参照)。これによって、発光素子10Bが完成する。
【0134】
発光素子10Bは、上述したように、PドープされたNiシリサイドドットからなる量子ドット310と、BドープされたNiシリサイドドットからなる量子ドット410とを含むので、発光素子10,10Aと同様に高い発光効率を有する。
【0135】
なお、発光素子10Bにおいては、ドット部材40をシリコン酸化膜2に接してシリコン酸化膜2上に形成し、ドット部材30をドット部材40に接してドット部材40上に形成してもよい。
【0136】
また、発光素子10Bにおいては、量子ドット310,410は、タングステン(W)シリサイドからなっていてもよい。
【0137】
さらに、上記においては、発光素子10のドット部材3は、3層の量子ドット層31〜33を含み、ドット部材4は、3層の量子ドット41〜43を含むと説明したが、この発明においては、これに限らず、発光素子10のドット部材3は、Pドープされた量子ドットを含む2層以上の量子ドット層を備えていればよく、ドット部材4は、Bドープされた量子ドットを含む2層以上の量子ドット層を備えていればよい。
【0138】
発光素子10A,10Bについても同様である。
【0139】
この発明においては、ドット部材3は、「第1のドット部材」を構成し、ドット部材4は、「第2のドット部材」を構成する。
【0140】
また、この発明においては、ドット部材30は、「第1のドット部材」を構成し、ドット部材40は、「第2のドット部材」を構成する。
【0141】
さらに、この発明においては、量子ドット311は、「第1の量子ドット」を構成し、シリコン酸化膜312は、「第1の絶縁層」を構成する。
【0142】
さらに、この発明においては、量子ドット411は、「第2の量子ドット」を構成し、シリコン酸化膜412は、「第2の絶縁層」を構成する。
【0143】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0144】
この発明は、発光効率が向上可能な発光素子に適用される。また、この発明的は、発光効率が向上可能な発光素子の製造方法に適用される。
【図面の簡単な説明】
【0145】
【図1】この発明の実施の形態による発光素子の斜視図である。
【図2】図1に示す線II−II間における発光素子の断面図である。
【図3】図1に示す発光素子のゼロバイアス時のエネルギーバンド図である。
【図4】図1に示す発光素子の電流通電時のエネルギーバンド図である。
【図5】リモート水素プラズマ処理を行なうためのプラズマ処理装置の概略図である。
【図6】図1に示す発光素子の製造方法を説明するための第1の工程図である。
【図7】図1に示す発光素子の製造方法を説明するための第2の工程図である。
【図8】図1に示す発光素子の製造方法を説明するための第3の工程図である。
【図9】図6に示す工程(c)および図7に示す工程(g)の詳細な動作を説明するための図である。
【図10】この発明の実施の形態による他の発光素子の斜視図である。
【図11】図10に示す線XI−XI間における発光素子の断面図である。
【図12】発光素子の電流−電圧特性を示す図である。
【図13】発光素子の発光特性を示す図である。
【図14】図1および図2に示す発光素子のEL発光の積分強度とゲート電圧との関係を示す図である。
【図15】図1および図2に示す発光素子の順方向における電流−電圧特性を示す図である。
【図16】図1および図2に示す発光素子におけるEL発光の積分強度と電流密度との関係を示す図である。
【図17】図10および図11に示す発光素子のEL発光の積分強度とゲート電圧との関係を示す図である。
【図18】図10および図11に示す発光素子の逆方向における電流−電圧特性を示す図である。
【図19】図10および図11に示す発光素子におけるEL発光の積分強度と電流密度との関係を示す図である。
【図20】この発明の実施の形態によるさらに他の発光素子の断面図である。
【図21】図20に示す発光素子の製造工程を示す第1の工程図である。
【図22】図20に示す発光素子の製造工程を示す第2の工程図である。
【図23】図20に示す発光素子の製造工程を示す第3の工程図である。
【符号の説明】
【0146】
3,4 ドット部材、10 発光素子、31〜33,41〜43 量子ドット層、311,411 量子ドット、312,412 シリコン酸化膜。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の導電型を有する第1の量子ドットを含む第1のドット部材と、
前記第1のドット部材に接して配置され、前記第1の導電型と異なる第2の導電型を有する第2の量子ドットを含む第2のドット部材とを備える発光素子。
【請求項2】
前記第1のドット部材は、
前記第1の量子ドットと、
前記第1の量子ドットを覆う第1の絶縁層とを含み、
前記第2のドット部材は、
前記第2の量子ドットと、
前記第2の量子ドットを覆う第2の絶縁層とを含む、請求項1に記載の発光素子。
【請求項3】
前記第1のドット部材に接し、前記第1の導電型を有する基板を更に備え、
前記第2のドット部材は、前記第1のドット部材上に配置される、請求項1に記載の発光素子。
【請求項4】
前記第1の導電型は、p型であり、
前記第2の導電型は、n型である、請求項3に記載の発光素子。
【請求項5】
前記第1の導電型は、n型であり、
前記第2の導電型は、p型である、請求項3に記載の発光素子。
【請求項6】
前記第1および第2の量子ドットは、シリコンドットからなる、請求項5に記載の発光素子。
【請求項7】
前記第1および第2の量子ドットは、金属シリサイドドットからなる、請求項5に記載の発光素子。
【請求項8】
第1の導電型を有する第1の量子ドットを含む第1のドット部材を前記第1の導電型を有する半導体基板の一主面に堆積する第1の工程と、
前記第1の導電型と異なる第2の導電型を有する第2の量子ドットを含む第2のドット部材を前記第1のドット部材上に堆積する第2の工程とを備える発光素子の製造方法。
【請求項9】
前記第1の工程は、
真性型の第3の量子ドットを堆積するための第1の材料ガスを反応室に供給する第1のサブ工程と、
第1の不純物ガスを前記第1の材料ガスに追加して前記反応室に供給する第2のサブ工程とを含み、
前記第2の工程は、
真性型の第4の量子ドットを堆積するための第2の材料ガスを前記反応室に供給する第3のサブ工程と、
第2の不純物ガスを前記第2の材料ガスに追加して前記反応室に供給する第4のサブ工程とを含む、請求項8に記載の発光素子の製造方法。
【請求項10】
前記第1の材料ガスは、前記第1のサブ工程において、第1のタイミングから第2のタイミングまで前記反応室に供給され、
前記第1の不純物ガスは、前記第2のサブ工程において、前記第1のタイミングと前記第2のタイミングとの間の第3のタイミングから前記第2のタイミングまで前記第1の材料ガスに追加して前記反応室に供給され、
前記第2の材料ガスは、前記第3のサブ工程において、第4のタイミングから第5のタイミングまで前記第2の材料ガスに追加して前記反応室に供給され、
前記第2の不純物ガスは、前記第4のサブ工程において、前記第4のタイミングと前記第5のタイミングとの間の第6のタイミングから前記第4のタイミングまで前記反応室に供給される、請求項9に記載の発光素子の製造方法。
【請求項11】
前記第3のタイミングは、前記第1のタイミングと前記第2のタイミングとの中間時点よりも後であり、
前記第6のタイミングは、前記第4のタイミングと前記第5のタイミングとの中間時点よりも後である、請求項10に記載の発光素子の製造方法。
【請求項12】
前記第1の材料ガスは、前記第2の材料ガスと同じである、請求項11に記載の発光素子の製造方法。
【請求項13】
前記第1のサブ工程において、シランガスが前記反応室に供給され、
前記第2のサブ工程において、フォスフィンガスが前記シランガスに追加して前記反応室に供給され、
前記第3のサブ工程において、シランガスが前記反応室に供給され、
前記第4のサブ工程において、ジボランガスが前記シランガスに追加して前記反応室に供給される、請求項12に記載の発光素子の製造方法。
【請求項14】
前記第1のサブ工程において、シランガスが前記反応室に供給され、
前記第2のサブ工程において、ジボランガスが前記シランガスに追加して前記反応室に供給され、
前記第3のサブ工程において、シランガスが前記反応室に供給され、
前記第4のサブ工程において、フォスフィンガスが前記シランガスに追加して前記反応室に供給される、請求項12に記載の発光素子の製造方法。
【請求項15】
前記第1のタイミングから前記第2のタイミングまでの時間長は、前記第4のタイミングから前記第5のタイミングまでの時間長に略等しい、請求項11に記載の発光素子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2009−224736(P2009−224736A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−70602(P2008−70602)
【出願日】平成20年3月19日(2008.3.19)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 1.発行者名 THE JAPAN SOCIETY OF APPLIED PHYSICS 2.刊行物名、巻数、号数 Extended Abstracts of the 2007 International Conference on SOLID STATE DEVICES AND MATERIALS,TSUKUBA,2007 3.発行日 平成19年 9月19日
【出願人】(504136568)国立大学法人広島大学 (924)
【Fターム(参考)】