説明

発光素子及びその製造方法

【課題】 光取り出し効率の向上が図られ、新規な構成を有する発光素子を提供する。
【解決手段】 発光素子は、第1の導電型を有する下側半導体層と、下側半導体層の上に形成された発光層と、発光層の上に形成され、第1の導電型と反対の第2の導電型を有する上側半導体層と、下側半導体層に電気的に接続される下側電極と、上側半導体層に電気的に接続される上側電極とを有し、上側電極は、上側半導体層の上に形成され、上側半導体層の表面を、各々が上側電極で取り囲まれる複数の区画に分割するような網目形状を有し、さらに、区画の少なくとも1つの内部に、底面が少なくとも前記下側半導体層の上面まで達し、開口の縁が上側電極から離れた窪みを少なくとも1つ有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
図22を参照して、特許文献1が開示する発光素子について説明する。基板1014の上に、低抵抗の半導体層1018を介して半導体層1028が形成されている。半導体層1018に電極が接続される。基板1014の下に、反射層1015が形成されている。半導体層1028の上に発光層1026が形成され、発光層1026の上に半導体層1027が形成されている。半導体層1028と1027とは、互いに反対の導電型を有する。
【0003】
半導体層1027の表面に窪み1030が形成されている。窪み1030の底面に半導体層1028が露出する。半導体層1027の上面を覆うようにNiO/Auからなる半透明電極層1024が形成されている。窪み1030の内面上には、半透明電極層1024が形成されていない。
【0004】
窪み1030は、半導体層1027上に半透明電極層1024を形成した後、反応性イオンエッチング(RIE)により半透明電極層1024、半導体層1027、発光層1026、及び半導体層1028を除去することにより形成される。
【0005】
発光層1026から放出された光が、半透明電極層1024または窪み1030の内面を通過して、発光素子の上方に取り出される。半透明電極層1024を通過する光は、半透明電極層1024により一部が吸収される。窪み1030の内面から取り出される光については、半透明電極層1024による吸収が生じない。このため、窪み1030は、発光素子から取り出される光量を増加させる。
【0006】
次に、図20(A)を参照して、格子状の電極を有する発光素子について説明する。図20(A)は、この発光素子の概略平面図である。
【0007】
この発光素子は、n型窒化物半導体層102と、n型窒化物半導体層の上に形成された発光層と、発光層の上に形成されたp型窒化物半導体層104とを含む。p型窒化物半導体層104の表面に、正方形の1辺の中央部分を切り欠いた形の発光領域950が画定されている。発光領域950を取り囲む領域のp型窒化物半導体層104と、発光層と、n型窒化物半導体層102の上層とが除去されることにより、底面にn型窒化物半導体層102が露出した凹部911が形成されている。
【0008】
発光領域950の上に、p側電極905が形成されている。p側電極905は、格子状部905aとp側パッド部905bとを含んで構成される。格子状部905aは格子状の構造を有する。切り欠かれた辺に対向する辺の中央付近に、格子状部905aを覆ってp側パッド部905bが形成されている。凹部911の底面上に、n側電極907が形成されている。n側電極907は、発光領域950が切り欠かれた部分に配置されている。n側電極907は、パッドとして用いられる。
【0009】
p側電極905とn側電極907との間に所定の電圧を印加することにより、発光層から光が放出される。p側電極905の材料として、発光層から放出される光に対して透明でないものも用いることができる。発光素子の上面で、p側電極905が形成されていない領域から素子外に光を取り出すことができる。
【0010】
【特許文献1】米国特許第6,885,034号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1の発光素子で、半導体層1027の上面のうち、窪み1030が形成されていない領域は半透明電極層1024に覆われている。半透明電極層1024を通過して取り出される光は、半透明電極層1024による吸収に起因して減衰する。このため、光取り出し効率を向上させることが難しい。
【0012】
図20(A)を参照して説明した発光素子では、n側電極907の近傍に強い電界が発生しやすく、高い電流密度で電流が流れやすい。高い電流密度で電流が流れると、発光層が劣化しやすい。
【0013】
本発明の一目的は、光取り出し効率の向上が図られ、新規な構成を有する発光素子及びその製造方法を提供することである。
【0014】
本発明の他の目的は、半導体層中の特定領域に電流が集中することを抑制した発光素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の第1の観点によれば、第1の導電型を有する下側半導体層と、前記下側半導体層の上に形成された発光層と、前記発光層の上に形成され、前記第1の導電型と反対の第2の導電型を有する上側半導体層と、前記下側半導体層に電気的に接続される下側電極と、前記上側半導体層に電気的に接続される上側電極とを有し、前記上側電極は、前記上側半導体層の上に形成され、該上側半導体層の表面を、各々が該上側電極で取り囲まれる複数の区画に分割するような網目形状を有し、さらに、前記区画の少なくとも1つの内部に、底面が少なくとも前記下側半導体層の上面まで達し、開口の縁が前記上側電極から離れた窪みを少なくとも1つ有する発光素子が提供される。
【0016】
本発明の第2の観点によれば、支持層と、前記支持層の上方に形成され、第1の導電型を有し、該支持層よりも抵抗率が低い下側半導体層と、前記下側半導体層の上に形成された発光層と、前記発光層の上に形成され、前記第1の導電型と反対の第2の導電型を有する上側半導体層と、前記上側半導体層上に形成された上側電極とを含む第1の領域と;前記支持層と、該支持層の上方に形成された前記下側半導体層と、該下側半導体層上に形成された下側電極の第1の部分とを含む第2の領域と;前記支持層と、該支持層上に形成された前記下側電極の第2の部分とを含む第3の領域とを有する発光素子が提供される。
【0017】
本発明の第3の観点によれば、(a)第1の導電型を有する下側半導体層と、前記下側半導体層の上に形成された発光層と、前記発光層の上に形成され、前記第1の導電型と反対の第2の導電型を有する上側半導体層とを含むウエハを準備する工程と、(b)少なくとも前記上側半導体層と前記発光層とをエッチングして、該上側半導体層の表面に窪みを形成する工程と、(c)前記工程(b)の後、前記上側半導体層の上に、前記窪みの開口を取り囲むように上側電極を形成する工程と、(d)前記工程(b)の後、前記下側半導体層に接する下側電極を形成する工程とを有する発光素子の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0018】
第1の観点による発光素子では、上側電極が画定する区画の内部に、窪みが形成されている。発光層のうち上側電極の下方に配置された部分で発光が起こりやすく、発光層のうち発光に寄与しない部分は光を吸収する吸収層として働くと考えられる。第1の観点による発光素子では、例えば、発光層のうち窪みに対応する部分が除去されていることにより、光取り出し効率の向上が図られる。
【0019】
第2の観点による発光素子では、下側電極のうちの第1の部分が下側半導体層上に形成され、第2の部分が、下側半導体層よりも高い抵抗率を有する支持層上に形成される。これにより、下側電極の第2の部分の近傍に電流が集中することを抑制できる。
【0020】
第3の観点による発光素子の製造方法では、窪みを形成した後に上側電極及び下側電極が形成される。これにより、窪みの形成工程に伴って電極材料が窪み側面に付着することが防止される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
まず、図19を参照して、本発明の実施例による発光素子の材料となる窒化物半導体ウエハについて説明する。基板100の上に、緩衝層101が形成されている。基板100は、例えば、サファイア、窒化シリコン、シリコン、酸化ガリウム、酸化亜鉛等からなる。
【0022】
緩衝層101の上に、n型窒化物半導体(例えば窒化ガリウム)からなるn型コンタクト層102aが形成され、n型コンタクト層102aの上に、n型窒化物半導体(例えば窒化アルミニウムガリウム)からなるn型クラッド層102bが形成されている。n型コンタクト層102aとn型クラッド層102bとを含んで、n型窒化物半導体層102が構成される。
【0023】
n型クラッド層102bの上に、発光層103が形成されている。発光層103は、例えば窒化インジウムガリウムからなる。発光層103は、公知のいずれの構成としてもよく、例えば、単層厚膜とすることや、薄膜を積層した多重量子井戸(MQW)構造とすることができる。
【0024】
発光層103の上に、p型窒化物半導体(例えば窒化アルミニウムガリウム)からなるp型クラッド層104bが形成され、p型クラッド層104bの上に、p型窒化物半導体(例えば窒化ガリウム)からなるp型コンタクト層104aが形成されている。p型コンタクト層104aとp型クラッド層104bとを含んで、p型窒化物半導体層104が構成される。
【0025】
p型窒化物半導体層104、発光層103、n型窒化物半導体層102、及び緩衝層101をまとめて、窒化物半導体層と呼ぶこととする。窒化物半導体層の厚さは、例えば4.60μmである。p型窒化物半導体層104と発光層103とをまとめた層の厚さは、例えば0.35μmである。基板100の厚さは、例えば300〜500μmである。例えば、厚さ330μmや430μmのサファイア基板が市販されている。
【0026】
一般に、発光素子に用いられる窒化物半導体ウエハの積層構造は多種存在するが、発光素子の作製に最低限必要な機能層は、n型窒化物半導体層、発光層、及びp型窒化物半導体層の3層である。
【0027】
なお、窒化物半導体ウエハに、他の機能層が含まれていても構わない。ここで他の機能層とは、例えば、n型コンタクト層とn型クラッド層との間に挿入される歪緩和層であり、これは例えばInGaN層や、(InGaN/GaN)からなる超格子層や、(AlGaN/InGaN)からなる超格子層からなる。また例えば、n型クラッド層と発光層との間に、欠陥低減層としてundoped−GaN層が挿入される場合もある。
【0028】
n型クラッド層102b及びp型クラッド層104bは、発光層103からのキャリアの漏れを抑制するために形成されているが、これらは機能的に必ずしも必要ではなく、n型窒化物半導体層からn型クラッド層102bを省くことが可能であり、p型窒化物半導体層からp型クラッド層104bを省くことが可能である。なお、緩衝層を設けない窒化物半導体ウエハについても研究されている。
【0029】
基板100上の各層は、例えば、有機金属化学気相堆積(MOCVD)、分子線エピタキシ(MBE)、有機金属分子線エピタキシ(MOMBE)、気相エピタキシ(VPE)等により形成される。
【0030】
次に、図1(A)及び図1(B)を参照して、本発明の第1の実施例による発光素子について説明する。図1(A)は、第1の実施例による発光素子の概略平面図を示し、図1(B)は、第1の実施例による発光素子の図1(A)中のA−A´線に沿った概略断面図を示す。
【0031】
本実施例の発光素子は、図19を参照して説明した窒化物半導体ウエハを材料としている。p型窒化物半導体層104の表面に、正方形の1つの隅を切り欠いた形の発光領域150が画定されている。発光領域150を取り囲む領域のp型窒化物半導体層104と、発光層103と、n型窒化物半導体層102の上層とが除去されることにより、底面にn型窒化物半導体層102が露出した凹部111(輪郭溝111)が形成されている。
【0032】
発光領域150の上に、p側電極105が形成されている。p側電極105は、格子状部105aとp側パッド部105bとを含んで構成される。格子状部105aは格子状の構造を有し、格子状部105aの各格子に取り囲まれた区画の形状は正方形である。発光領域150上の切り欠かれた隅に隣接する隅に、格子状部105aを覆ってp側パッド部105bが形成されている。p側電極105は、p型窒化物半導体層104とオーミック接触している。
【0033】
格子状部105aの各格子の内部に、窪み106が1つずつ形成されている。ただし、p側パッド部105bが形成された領域には、格子状部105aの各格子の内部に窪み106が形成されていない。
【0034】
各窪み106は、開口の縁が円周状であり、底面がn型窒化物半導体層102に達する。各窪み106の側面は、窪みが下方から上方に向かって広くなるようなテーパを有する。
【0035】
輪郭溝111の底面上に、n側電極107が形成されている。n側電極107は、線状部107aとn側パッド部107bとを含んで構成される。n側パッド部107bは、発光領域150が切り欠かれた部分に配置されており、線状部107aは、n側パッド部107bに接続し、発光領域150の1辺に平行な方向に細長い形状を有する。n側電極107は、n型窒化物半導体層102とオーミック接触している。
【0036】
p側電極105とn側電極107との間に所定の電圧を印加することにより、発光層103から光が放出される。発光層103から放出される光の波長は、例えば480nm程度である。p側電極105の材料として、発光層103から放出される光に対して透明でないものも用いることができる。発光素子の上面で、p側電極105が形成されていない領域から素子外に光を取り出すことができる。
【0037】
例えば酸化シリコンからなる保護膜110が、p側パッド部105bの上面及びn側パッド部107bの上面の一部を除いて、発光素子の上面全面を覆っている。保護膜110は、絶縁性でかつ発光層103から放出される光に対して透明である。
【0038】
次に、図2(A)〜図2(C)及び図3(A)〜図3(C)を参照して、第1の実施例による発光素子の作製方法について説明する。図19を参照して説明した窒化物半導体ウエハが準備されている。
【0039】
まず、図2(A)に示すように、輪郭溝111に対応する開口を有するレジストマスクR111を、フォトリソグラフィーにより形成する。次に、ドライエッチングを用いて、レジストマスクR111の開口内のp型窒化物半導体層104と、発光層103と、n型窒化物半導体層102の上層とを除去することにより、底面にn型窒化物半導体層102が露出した輪郭溝111を形成する。次いで、レジストマスクR111を洗浄除去する。
【0040】
輪郭溝111の深さは、例えば0.65μmである。窒化物半導体ウエハに多数の発光素子が形成される。窒化物半導体ウエハに形成される発光素子同士の境界を、輪郭溝111が定める。
【0041】
次に、図2(B)に示すように、窪み106に対応する開口を有するレジストマスクR106を、フォトリソグラフィーにより形成する。次に、ドライエッチングを用いて、レジストマスクR106の開口内のp型窒化物半導体層104と、発光層103と、n型窒化物半導体層102の上層とを除去することにより、底面にn型窒化物半導体層102が露出した窪み106を形成する。ドライエッチングとして、例えば、塩素ガスプラズマを用いた反応性イオンエッチング(RIE)が用いられる。ドライエッチングの後、レジストマスクR106を洗浄除去する。
【0042】
レジストマスクR106の開口の側面に、当該開口が下方から上方に向かって広くなるようなテーパを付けてドライエッチングを実施することにより、レジストマスクR106のテーパ形状を反映したテーパ形状を有する窪み106を形成できる。窪み106のテーパの傾斜角度は、レジストマスクR106と窒化物半導体層との選択率を変えることにより調整できる。レジストマスクR106と窒化物半導体層との選択率は、ドライエッチングの圧力条件、ガス種、RFパワー等により変えることができる。
【0043】
ドライエッチングで形成した窪み106の表面には、レジスト残渣、結晶残渣等が付着している。そこで、次に、硫酸・過酸化水素の水溶液または(及び)塩酸・過酸化水素の水溶液により、ドライエッチング後の窒化物半導体ウエハをウェットエッチングする。これにより、レジストの変質有機物残渣及び結晶残渣が窪み106の表面から取り除かれる。
【0044】
なお、窪み106を形成したドライエッチングに伴い、窪み106の内壁表面に、結晶配列が乱れた層や、ドライエッチングで用いたガス原子または分子が結晶内に侵入したダメージ層が形成され得る。これに起因して、発光素子の信頼性が低下する可能性がある。上述のウェットエッチングに加え、さらに、窪み106の内壁表層を取り除くウェットエッチングを行うことにより、発光素子の信頼性向上を図ることができる。このウェットエッチングは、エッチャントとして例えば燐酸、硫酸、または燐酸と硫酸との混合液を用い、室温〜120℃(例えば100℃)で3分〜30分間行う。
【0045】
次に、図2(C)に示すように、p側電極105の格子状部105aに対応する開口を有するレジストマスクR105aを、フォトリソグラフィーにより形成する。電子ビーム(EB)蒸着により、Pt、Au層を、Pt層を下層として順に、それぞれ100nm、1000nmの厚みで堆積する。次いで、リフトオフ法を用いて、レジストマスクR105aの開口以外の部分に堆積した蒸着材料を除去することにより、格子状部105aを形成する。
【0046】
次に、図3(A)に示すように、n側電極107の線状部107a及びn側パッド部107bに対応する開口を有するレジストマスクR107を、フォトリソグラフィーにより形成する。
【0047】
EB蒸着により、Al、Rh、Ti、Pt、Au、Pt、Au層を、Al層を最下層として順に、それぞれ10〜90nm、100nm、100nm、100nm、200nm、100nm、200nmの厚みで堆積する。次いで、リフトオフ法を用いて、レジストマスクR107の開口部以外の部分に堆積した蒸着材料を除去することにより、n側電極107の線状部107a及びn側パッド部107bを同時に形成する。このようにしてn側電極107が形成される。
【0048】
次に、図3(B)に示すように、p側電極105のp側パッド部105bに対応する開口を有するレジストマスクR105bを、フォトリソグラフィーにより形成する。p側パッド部105bに対応する開口内に、格子状部105aの一部が露出する。
【0049】
EB蒸着により、Ni、Au層を、Ni層を下層として順に、それぞれ100nm、1000nmの厚みで堆積する。次いで、リフトオフ法を用いて、レジストマスクR105bの開口部以外の部分に堆積した蒸着材料を除去することにより、p側パッド部105bを形成する。p側パッド部105bは、格子状部105aの一部を覆って、格子状部105aに接続されるように形成される。
【0050】
次に、図3(C)に示すように、発光素子の上面の全面に、スパッタリングにより、厚さ100nm〜500nmの酸化シリコン膜(SiO膜)Mを成膜する。
【0051】
例えば、厚さ100nmの酸化シリコン膜を3層堆積することにより、厚さ300nmの酸化シリコン膜Mを成膜する。窪み106の内面上に堆積された酸化シリコン膜には複雑な応力が掛かるため、一度に300nmの厚さの膜を成膜すると、成膜後の冷却期間中に酸化シリコン膜が窪み106から剥離したり、クラックが発生したりする懸念がある。複数回に分けて成膜することにより、このような不具合が抑制される。
【0052】
酸化シリコン膜Mの上に、フォトリソグラフィーにより、p側パッド部105b及びn側パッド部107bの上面に開口を有するレジストマスクR110を形成する。次に、ウェットエッチングを用いて、レジストマスクR110の開口内の酸化シリコン膜Mを除去することにより、p側パッド部105b及びn側パッド部107bの上面を露出させる。次いで、レジストマスクR110を洗浄除去する。このようにして、酸化シリコンからなる保護膜110が形成される。
【0053】
保護膜110を形成した後、窒化物半導体ウエハを保持基板(例えばセラミックス基板やシリコン基板)にワックス等で固定する。保持基板に固定した窒化物半導体ウエハを研削・研磨して薄くし、厚みを100μm〜200μm程度とする。保持基板に保持したまま研磨面を洗浄した後、基板100の下面に、EB蒸着により例えばTi層及びAl層をそれぞれ厚さ3nm及び200nm蒸着する。この金属層は、発光層103から放出された光を反射する反射層として機能する。
【0054】
次いで、基板100の下面にスクライブ溝を形成する。スクライブ溝の形成後、ブレーキング装置のナイフエッジを輪郭溝111の表面に押し当て、発光素子同士を分離する。以上説明した工程により、図1(A)及び図1(B)に示す発光素子が作製される。
【0055】
個々に分離された発光素子は、フレーム、ステム、配線基板、ヒートシンク等に接着される。接着方法として、銀ペーストや樹脂による接着や、半田溶着、バンプを用いた超音波接合、共晶接続部材を用いた熱圧着等が用いられる。その後、p側パッド部105b及びn側パッド部107bそれぞれについて、極性に対応するリード電極とパッド部とが金ワイア等で接続される。最後に樹脂封止または缶パッケージを施し、発光ダイオード(LED)ランプが完成する。
【0056】
格子状部105aの各格子の内部に、窪み106が配置されている。エレクトロマイグレーションや、水分を介在した電気化学的マイグレーションにより、格子状部105aを構成する電極材料が、窪み106の側面に露出した発光層103上やn型窒化物半導体層102上に移動すれば、短絡が発生する。
【0057】
本願発明者らの研究によれば、格子状部105aの材料としてPt、Pd、Ir、Rhの少なくとも1つを用いることにより、マイグレーションが抑制されることがわかった。また、これらの電極材料を用いれば、良好な接触抵抗率(例えば5×10−3Ωcm−2以下)が得られる。
【0058】
上述の例では、格子状部105aの、p型窒化物半導体層104に接する層(Au層の下側の層)をPt層としたが、この層をPd層、Rh層またはIr層としてもよい。Pt層、Pd層、Ir層、またはRh層を形成することにより、接触抵抗率を低くでき、かつ反射率を高くできる。ここで反射率は、発光層103から放出された光の波長について、p型窒化物半導体層104との界面における反射率である。
【0059】
実施例の発光素子を用いたLEDランプでは、格子状部105aの下面で反射された光を、基板100の下面上に形成された反射層で反射させることにより、発光素子の上面等から取り出すことができる。このため、格子状部105aの下面の反射率は高い方が好ましい。
【0060】
なお、さらに他の構成例として、格子状部105aに、Pt、Pd、Ir、Rhよりも反射率は高いがエレクトロマイグレーション及び電気化学的マイグレーションが生じやすい金属であるAgを用いることもできる。Agを用いる場合には、例えば、設計電極幅の6〜8割の幅を有するように、Pt、Ag層を、Pt層を下層として順に積層する。さらに、これを覆うように、設計電極幅で、Pt、Pd、IrまたはRhからなる層を積層すればよい。Ag層の代わりに、Agを含む合金からなる層を用いることもできる。
【0061】
なお、上述のn側電極107からTi層を省略して、Al、Rh、Pt、Au、Pt、Au層を積層した構成とすることや、Ti及びPt層を省略して、Al、Rh、Au、Pt、Au層を積層した構成とすることや、Ti、Pt、Au及びPt層を省略して、Al、Rh、Au層を積層した構成とすることもできる。Ti層を省略する場合には最上層のAu層の厚さを300nmとし、Ti、Pt層を省略する場合には最上層のAu層の厚さを400nmとし、Ti、Pt、Au、Pt層を省略する場合には最上層のAu層の厚さを700nmとすることにより、省略した層の厚みを補完することが望ましい。
【0062】
なお、p側パッド部105bは、Ni、Rh、Au層を、Ni層を最下層として順に積層した構造や、Ti、Auを、Ti層を下層として順に積層した構造や、Ti、Rh、Auを、Ti層を最下層として順に積層した構造とすることもできる。また、p側パッド部105bの最下層を構成する金属材料として、Al、Sn、Pbを用いることもできる。
【0063】
上述の方法で形成されるp側電極105及びn側電極107は、合金化しなくても接触抵抗率が低く、p側電極105の接触抵抗率は1×10−3Ωcm〜5×10−3Ωcm程度であり、n側電極107の接触抵抗率は5×10−6Ωcm〜3×10−5Ωcm程度である。合金化を行わないことにより、合金化に起因する電極材料の拡散が起こらないので、窪み106の側面に電極材料が移動することが抑制される。なお、500℃までであれば、合金化処理をしても問題は生じにくい。
【0064】
なお、窪み106の形成前にp側電極105またはn側電極107を形成すれば、窪み106の形成時のドライエッチングやその後のウェットエッチングに伴って、電極材料が窪み106の側面に付着しやすくなる。また、電極材料を既に半導体層表面に形成している場合は、エッチング液に強酸・強アルカリ・強酸化性液体を使用できないため、レジストの変質有機物残渣や結晶残渣を充分には取り除くことができず、不具合の原因となる。しかし、上述の方法では、窪み106を形成した後にp側電極105及びn側電極107を形成するので、このような不具合が防止される。
【0065】
なお、保護膜110の材料として、酸化シリコンの他にも、酸化チタン(TiO、TiO、Ti)、酸化アルミニウム(Al)、酸化ジルコニア(ZrO)、酸化ハフニウム(HfO)、酸化ネオジウム(Nd)、酸化エルビウム(Er)、酸化セリウム(Ce)等、発光素子の発光波長に対して透明でかつ絶縁性のある材料を用いることができる。
【0066】
保護膜110は、汚染物質が窪み106の側面に付着して短絡が生じるのを抑制する。汚染物質として、例えば、発光素子を封止する樹脂中に含まれる導電性物質(アルケンやアルキン基を持つ重合残渣や重合触媒等)や水分等が考えられる。
【0067】
なお、例えば以下のような原因により保護膜110が剥離すれば、水分等が保護膜110の下に浸入して窪み側面に達し、短絡を引き起こす可能性がある。p側パッド部105b及びn側パッド部107bにワイヤボンディングを施す際の熱と超音波振動で、保護膜110がパッド部から剥離する可能性が考えられる。さらに、LEDランプ発光時の熱により、p側電極の格子状部105a近傍で保護膜110が剥離する可能性が考えられる。
【0068】
保護膜110の形成に先立ち、格子状部105a、p側パッド部105b、n側電極の線状部107a、及びn側パッド部107bの最表面に、例えば厚さ3nm〜100nmのTi層(より好ましくは厚さ30nm〜50nmのTi層)を蒸着しておくことにより、p側及びn側電極105及び107と保護膜110との密着性を高めることができる。特に、格子状部105aと保護膜110とが密着することにより、格子状部105aの各格子(各区画)の内部が密閉された構造となり、格子内の窪み側面への水分等の侵入が防止される。このようにして、保護膜110の下面上で汚染物質が拡散するのを抑制することができる。また、クラックの発生等も抑制される。
【0069】
なお、p側パッド部105b及びn側パッド部107b上に保護膜110の開口を形成するウェットエッチングの際に、Ti層がエッチングされるので、保護膜110の開口の底部にAu層が露出する。なお、Ti層を蒸着する例について説明したが、酸化しやすい他の金属(例えばAlやNi)を用いても密着性の向上が図られる。
【0070】
さらに、保護膜110の形成に先立ち、輪郭溝111の外周に沿って、最上層にTi、Al、またはNi層を形成した輪状金属堰を設ければ、輪状金属堰と密着するように保護膜110が形成される。これにより、輪状金属堰と保護膜110との界面からの汚染物質の侵入が抑制される。
【0071】
次に、図4(A)及び図4(B)を参照して、窪み106の大きさ等について説明する。図4(A)は、窪み106の近傍の概略断面図であり、図4(B)は、窪み106の近傍の概略平面図である。図4(A)に示すように、保護膜110が、p型窒化物半導体層104の上面と格子状部105aとを覆うとともに、窪み106の側面及び底面を覆っている。
【0072】
格子状部105aの線幅Vが例えば3μmであり、各格子の互いに対向する1対の辺の中心同士の間隔が例えば15μmであり、各格子の互いに対向する1対の辺に挟まれた部分の間隔W(これを配線間隔Wと呼ぶこととする)が例えば12μmである。
【0073】
格子状部105aの線幅Vは、1〜5μmの範囲内に設定される。線幅Vが5μm以下であれば、発光素子上面からの光取り出し効率の、格子状部105aによる遮光に起因する低下が少ない。また、p型窒化物半導体層104上の広い範囲に電流を流し、かつ生産性を確保するために、線幅Vは1μm以上であることが好ましい。
【0074】
配線間隔Wを、線幅Vを単位として、W=V×Nという式で表すこととし、Nを配線間隔係数と呼ぶこととする。配線間隔係数Nの適切な値は、p型窒化物半導体層104の比抵抗に応じて変わる。p型窒化物半導体層104の比抵抗が0.5Ωcm〜3Ωcmのとき、配線間隔係数Nは3〜5が適切であり、p型窒化物半導体層104の比抵抗が1×10−3Ωcm〜1×10−1Ωcmのとき、配線間隔係数Nは5〜10が適切である。
【0075】
格子状部105aの各格子の中心に、窪み106が配置されている。窪み106の開口の縁の直径Hは例えば1μm以上(例えば5.5μm)であり、窪み106の深さは例えば2.36μmである。
【0076】
p型窒化物半導体層104上面の法線に対する窪み106側面の傾斜角度γは、例えば8.1°である。なお、窪み106の側面にテーパを付けないこともできる。傾斜角度γは、0°〜12°の範囲内とすることが好ましい。なお、テーパの傾斜角度が側面で一様でない場合には、傾斜全体のフィッティングラインに対して傾斜角度が規定される。
【0077】
格子状部105aから窪み106の開口の縁までの最短距離(格子の一辺から開口の縁までの距離)は、配線材料の窪み106内へのマイグレーションの抑制及び製造歩留の向上の観点から2μm以上とすることが好ましい。開口の直径Hを、配線間隔Wを単位として、H=W×Mという式で表すことを考える。Mを窪み幅係数と呼ぶこととする。窪み幅係数Mは、0.3〜0.7の範囲内とすることが好ましい。
【0078】
格子状部105aの1つの格子の内部面積(格子状部105aに取り囲まれた部分の面積)に対する窪み106の開口面積の比(これを開口率と呼ぶこととする)は、7%〜50%の範囲とすることが好ましい。開口率は10%〜40%の範囲とすることがより好ましく、12%〜35%の範囲とすることがさらに好ましい。
【0079】
窪みの深さは、開口の直径Hの0.3〜0.7倍程度とするのが好ましい。また、窪み106の底から基板100までの距離tが1μm以上であることが好ましい。なお、窪み106は、底面が基板100の上面に達する深さとすることもできる。窪み106の底面の形状は、平面、下方に凹んだ凹面、上方に盛り上がった凸面のいずれでもよいが、凸面とすることが好ましい。
【0080】
なお、窪みの開口形状を、円形以外の種々の形状にすることもできる。例えば、図4(C)に示すように、窪みの開口形状をほぼ矩形とすることもできる。
【0081】
次に、図20を参照して、比較例による発光素子について説明する。これは従来技術による発光素子である。図20(A)は、比較例による発光素子の概略平面図を示し、図20(B)は、比較例による発光素子の図20(A)中のA−A´線に沿った概略断面図を示す。
【0082】
比較例の発光素子も、図19を参照して説明した窒化物半導体ウエハを材料とする。比較例の発光素子では、p型窒化物半導体層104に窪みが形成されていない。また、発光領域の形状と、p側及びn側パッド部の配置とが第1の実施例と異なる。以下詳しく説明する。
【0083】
比較例の発光素子では、p型窒化物半導体層104の表面に、正方形の1辺の中央部分を切り欠いた形の発光領域950が画定されている。発光領域950を取り囲む領域のp型窒化物半導体層104と、発光層103と、n型窒化物半導体層102の上層とが除去されることにより、底面にn型窒化物半導体層102が露出した凹部911(輪郭溝911)が形成されている。
【0084】
発光領域950の上に、p側電極905が形成されている。p側電極905は、格子状部905aとp側パッド部905bとを含んで構成される。格子状部905aは格子状の構造を有し、各格子は正方形である。切り欠かれた辺に対向する辺の中央付近に、格子状部905aを覆ってp側パッド部905bが形成されている。
【0085】
輪郭溝911の底面上に、n側電極907が形成されている。n側電極907は、実施例のn側電極107と異なり、線状部を有さず、n側パッド部907bのみから構成される。n側パッド部907bは、発光領域950が切り欠かれた部分に配置されている。
【0086】
次に、第1の実施例及び比較例による発光素子の発光出力を測定した実験について説明する。第1の実施例及び比較例の発光素子を、それぞれTO−46ステムに実装し、積分球で全光束測定をした。第1の実施例の発光素子の発光出力を、比較例のそれと比較した。mW単位で測定した発光出力を比較した。
【0087】
第1の実施例の発光素子の発光波長は478nmであり、比較例の発光素子の発光波長は480nmであった。比較例の発光素子の発光出力を100%とするとき、第1の実施例の発光素子の発光出力は140%であった。このように、第1の実施例の発光素子は比較例の発光素子よりも高い発光出力を示す。なお、図16に、第1〜第6の実施例及び比較例の発光素子の発光波長と発光出力とをまとめる。
【0088】
次に、第1の実施例の発光素子に形成した窪み106が有する作用及び効果について考察する。まず、比較例の発光素子の問題点について考察する。
【0089】
図21(A)は、比較例の発光素子のp側電極の格子状部905a近傍の概略断面図を示す。一般に、p型窒化物半導体層104の比抵抗が高い(例えば1×10−2Ωcm〜3Ωcm程度)ので、直列抵抗を抑制するため、p型窒化物半導体層104は薄く(例えば1μm以下)形成される。これにより、図21(A)中の矢印で示すように、p側電極905aを起点とする電流は、p型窒化物半導体層104内で充分には拡散されないままn型窒化物半導体層102へ流れる。
【0090】
これに起因して、発光層103のうち発光に寄与するのは、格子状部905aの真下に配置された部分の近傍(これを発光部と呼ぶこととする)に留まる。図中、発光部を破線で囲んでいる。発光層103のうち発光部以外は、発光部から放出された光を吸収する吸収層として働くであろう。
【0091】
図21(B)は、比較例の発光素子を用いたLEDランプにおいて、発光部Xから放出された光が発光素子の外に取り出されるまでの光路を概略的に示す断面図である。なお、図示した光路は例示である。
【0092】
基板100の下面に、発光層103から放出された光を反射する反射層120が形成されている。発光素子は、透光性樹脂130中に封止されている。発光部Xから放出された光は、多様な光路を経て素子外に(透光性樹脂130中に)取り出される。窒化物半導体層の屈折率が透光性樹脂130の屈折率よりも高く、また、窒化物半導体層の屈折率が基板100の屈折率よりも高い。
【0093】
発光部Xから素子外に至るまでの光路を、以下のような3種に分類することができよう。第1種の光路は、窒化物半導体層の上面から素子外に取り出される光の光路である(図中の光路L1、L2、L3)。
【0094】
第2種の光路は、窒化物半導体層と透光性樹脂130との界面で全反射されて発光素子の端面から素子外に取り出される光のうち、窒化物半導体層と基板100との界面では全反射されないような光の光路である(図中の光路L4、L5)。すなわち、第2種の光路を通る光は、窒化物半導体層と透光性樹脂130との界面、及び、反射層120で反射されて、発光素子の端面から取り出される。このような光路を通る光を、素子内伝搬光と呼ぶこととする。
【0095】
なお、図21(B)に示す例では、窒化物半導体層の面内方向に関する発光素子の長さが短いため、光路L4を通る光は、反射層120で反射された後、窒化物半導体層と素子外の樹脂との界面で反射される前に素子の端面から取り出され、光路L5を通る光は、窒化物半導体層と透光性樹脂130との界面で反射された後、反射層120で反射される前に素子の端面から取り出されている。
【0096】
第3種の光路は、窒化物半導体層と透光性樹脂130との界面で全反射されて発光素子の端面から素子外に取り出される光のうち、窒化物半導体層と基板100との界面でも全反射されるような光の光路である(図中の光路L6、L7)。すなわち、第3種の光路を通る光は、窒化物半導体層と透光性樹脂130との界面、及び、窒化物半導体層と基板100との界面で反射されて、窒化物半導体層の端面から取り出される。このような光路を通る光を、窒化物半導体層内伝搬光と呼ぶこととする。
【0097】
上記のいずれの光路を通る場合であっても、発光層103から放出された光は、発光層103のうち発光に寄与しない部分による吸収や、また、窒化物半導体層の欠陥に起因する吸収等により減衰する。
【0098】
発光素子全体の厚みに比べて、窒化物半導体層が薄いため、素子内伝搬光よりも窒化物半導体層内伝搬光の方が、素子の端面に到達するまでの反射回数が多くなると考えられる。これに起因して、素子内伝搬光よりも窒化物半導体層内伝搬光の方が減衰しやすいと考えられる。
【0099】
図5は、第1の実施例の発光素子において、窪み106の底面から素子外に取り出される光の光路を概略的に示す断面図である。なお、図示した光路は例示である。第1の実施例の発光素子では、p型窒化物半導体層104の格子状部105aが形成されていない領域に、窪み106が形成されている。つまり、発光層103のうち、p側電極の格子状部105aの下方に配置されず、発光に寄与しないと考えられる部分の少なくとも一部が除去されている。
【0100】
例えば窪み106の底面から取り出される光は、窪み106の形成に伴って除去されたn型窒化物半導体層102、発光層103、及びp型窒化物半導体層104を通過しない。このため、第1の実施例の発光素子では、窪みが形成されていない場合に比べ、窒化物半導体層での吸収に起因する減衰を抑制して、光を素子外に取り出すことができる。
【0101】
図6(A)は、第1の実施例の発光素子において、窪み106の側面から素子外に取り出される光の光路を概略的に示す断面図である。例えば、窒化物半導体層内伝搬光について考える。図6(A)に示すように、窒化物半導体層内伝搬光を、窒化物半導体層の端面に到達する前に、窪み106の側面から素子外に取り出すことができる。このように、第1の実施例の発光素子を用いれば、窪み106が形成されていない場合には素子の端面から取り出される光を、窪み106の側面から取り出すこともできる。発光素子の端面に到達するまでに生じる減衰を抑制して、光を素子外に取り出すことができる。
【0102】
なお、窪み106の側面で光が屈折して上方側に進路を変えることにより、発光素子から上面側に放出される光量(p型窒化物半導体層104の上面の法線方向の光量)を増加させることができる。
【0103】
なお、図6(B)に示すように、ある窪み106の側面から素子外に出て、その窪み106の底面から再び素子内に入射した後、それに隣接する窪み106の側面から素子外に取り出されるような光の光路も考えられる。なお、図6(A)及び図6(B)に示した光路は例示である。
【0104】
次に、図7(A)及び図7(B)を参照して、窪み106の側面に付けたテーパが有する作用及び効果について考察する。
【0105】
図7(A)は、テーパを付けない場合の窪み(これを窪み106Aとする)近傍の概略断面図を示す。窪み106Aの側面は、p型窒化物半導体層104の上面に垂直である。窪み106Aの開口の縁及び底面の縁は円周状であり、窪み106の内面に囲まれた空間の形状は円柱状である。窪み106Aの開口の縁の中心を通り、p型窒化物半導体層104の上面に垂直な断面が示されている。ここで、切断面と窪み106Aの側面との交線を、単に側面と呼ぶこととする。
【0106】
窪み106Aの直径がLであり、深さがDである。窒化物半導体層の屈折率をn1とし、素子外の媒質の屈折率をn2とする。屈折率n2はn1より小さい。n型窒化物半導体層102を通って、一方の側面S1の最も下の部分に位置する入射点Pに入射する光について考える。
【0107】
入射点Pに入射する光の入射角が、側面S1の法線とのなす角度で定義される。また、入射点Pに入射した後窪み106A側に出射した光の屈折角が、側面S1の法線とのなす角度で定義される。
【0108】
入射点Pから他方の側面S2の開口の縁上の点Qに向かって出射する光の屈折角をβdiaとする。屈折角βdiaで出射する光に対応する入射光の入射角をαdiaとする。入射点Pで全反射が生じる臨界角をαcrtとする。入射角αcrtで入射する光に対応する出射光の屈折角をβcrtとする。屈折角βcrtは90°である。
【0109】
入射点Pに入射した後に窪み106A側へ出射して、そのまま素子外に取り出される光の屈折角度範囲は、βdiaからβcrtまでである。これに対応し、入射点Pに入射した後に窪み106A側へ出射して、そのまま素子外に取り出される光の入射角度範囲は、αdiaからαcrtまでである。屈折角βcrt及びβdiaの差を出射有効角量Δβeffと定義し、入射角αcrt及びαdiaの差を入射有効角量Δαeffと定義する。
【0110】
入射角α及び屈折角βを有する光について、スネルの法則



【0111】
・・・(1)
が成り立つ。スネルの法則(1)に基づき、入射角αctr及びαdiaはそれぞれ、



【0112】
・・・(2)



【0113】
・・・(3)
という式より求められる。
【0114】
式(2)におけるβcrtは90°である。式(3)におけるβdiaは、



【0115】
・・・(4)
という式より求められる。ここで、窪みの直径Lに対する深さDの比D/Lをdと表している。
【0116】
例えば、比dを0.5とし、窒化物半導体層の屈折率n1を2.4とし、素子外の媒質の屈折率n2を1.0とする。この場合、式(2)及び式(3)からそれぞれ、αcrtは24.6°となり、αdiaは10.7°となる。これらより入射有効角量Δαeffは13.9°となる。
【0117】
なお、同様な条件のもと、素子外の媒質の屈折率n2を1.5とした場合には、αdiaは16.2°となり、αcrtは38.7°となる。これらより入射有効角量Δαeffは22.5°となる。素子外の媒質の屈折率が大きい方が、入射有効角量が大きくなることがわかる。
【0118】
図7(B)は、テーパの付いた窪み106近傍の概略断面図を示す。窪み106は、下方から上方に向かって広くなる形状を有する。窪み106の開口の縁及び底面の縁は円周状であり、窪み106の内面に囲まれた空間の形状は円錐台状である。窪み106の開口の縁の中心を通り、p型窒化物半導体層104の上面に垂直な断面が示されている。窪み106側面の傾斜角度がγである。ここで、切断面と窪み106の側面との交線を、単に側面と呼ぶこととする。
【0119】
窪み106の、底面の縁の直径がLであり、深さがDである。n型窒化物半導体層102を通って、一方の側面St1の最も下の部分に位置する入射点Ptに入射する光について考える。
【0120】
入射点Ptに入射する光の入射角が、側面St1の法線とのなす角度で定義される。また、入射点Ptに入射した後窪み106側に出射した光の屈折角が、側面St1の法線とのなす角度で定義される。
【0121】
入射点Ptから他方の側面St2の開口の縁上の点Qtに向かって出射する光の屈折角をβtdiaとする。屈折角βtdiaで出射する光に対応する入射光の入射角をαtdiaとする。入射点Ptで全反射が生じる臨界角をαtcrtとする。入射角αtcrtで入射する光に対応する出射光の屈折角をβtcrtとする。屈折角βtcrtは90°である。
【0122】
入射点Ptに入射した後窪み106側に出射して、そのまま素子外に取り出される光の屈折角度範囲は、βtdiaからβtcrtまでである。これに対応し、入射点Ptに入射した後窪み106側に出射して、そのまま素子外に取り出される光の入射角度範囲は、αtdiaからαtcrtまでである。屈折角βtcrt及びβtdiaの差を出射有効角量Δβteffと定義し、入射角αtcrt及びαtdiaの差を入射有効角量Δαteffと定義する。
【0123】
スネルの法則(1)に基づき、入射角αtctr及びαtdiaはそれぞれ、



【0124】
・・・(5)



【0125】
・・・(6)
という式より求められる。ここで窒化物半導体層の屈折率がn1であり、素子外の媒質の屈折率がn2である。
【0126】
式(5)におけるβtcrtは90°である。式(6)におけるβtdiaは、



【0127】
・・・(7)
という式で求められる。ここでdは比D/Lである。
【0128】
テーパの傾斜角度γを、例えば8.0°とする。その他の条件については、図7(A)を参照して説明した例と同様に、比dを0.5とし、窒化物半導体層の屈折率n1を2.4とし、素子外の媒質の屈折率n2を1.0とする。この場合、式(5)からαtcrtは24.6°となる。これは図7(A)を参照して説明した例のαcrtと一致する。また、式(6)からαtdiaは7.0°となる。これらより入射有効角量Δαteffは17.6°となる。
【0129】
テーパが付けられていない場合の入射有効角量Δαeff(13.9°)よりも、テーパが付いた場合の入射有効角量Δαteff(17.6°)の方が大きくなる。このように、窪み側面にテーパを付けることにより、窪み側面から出射してそのまま素子外に取り出される光について、窪み側面への入射角の範囲が広がる。つまり、テーパにより窪み側面から光を取り出しやすくなる。
【0130】
定性的には、テーパが付いている場合は、窪みの上方が下方よりも広がっており、窪み側面から出射した光が窪み側面の上方部分から素子内に入射しにくくなるので、光を取り出しやすくなるといえる。なおこれは、窪みの底面から取り出される光についても同様である。
【0131】
なお、図8に示すように、テーパの付いた窪み側面で反射された光(図中の光路L11〜L13で示す光)が、発光素子内を下方に伝搬することにより、この光が反射層120で反射されて、p型窒化物半導体層104の上面や、窪み106の底面から素子外に取り出されやすくなる効果も期待される。また、窪み側面から素子外に出射する光(図中の光路L14で示す光)の、窪み側面に入射する入射角が、テーパにより小さくなって、窪み側面における反射損失が減少する効果も期待される。
【0132】
ここで、特に、窒化物半導体層内伝搬光について考察する。窒化物半導体層の屈折率が2.4であり、基板100がサファイアからなりその屈折率が1.77であるとする。窒化物半導体層側から入射し、窒化物半導体層と基板100との界面で全反射される光の臨界角は、スネルの法則(1)より47.5°となる。窒化物半導体層内伝搬光は、基板100への入射角が47.5°以上である。
【0133】
窪み側面が垂直である(テーパが付いていない)場合について考える。窪みの側面に入射する窒化物半導体層内伝搬光の最大の入射角は、47.5°の余角である42.5°となる。
【0134】
入射臨界角αcrtが42.5°を超える場合、42.5°〜入射臨界角αcrtまでの範囲の入射角で窪みの側面に入射する窒化物半導体層内伝搬光が存在しないので、窪み側面に入射してそのまま素子外に取り出される光の入射角の範囲が狭くなる。この場合、窪み側面に入射してそのまま素子外に取り出される光の入射角の上限が42.5°となる。
【0135】
図7(A)を参照して説明した例では、素子外の媒質の屈折率が1.0及び1.5であるとき、入射臨界角αcrtはそれぞれ24.6°及び38.7°であった。これらの入射臨界角αcrtは42.5°より小さいので、窒化物半導体層内伝搬光の窪み側面への入射可能な角度範囲内に含まれる。
【0136】
次に、窪み側面にテーパが付いている場合について考える。テーパの傾斜角度をγとする。窪み側面に入射する窒化物半導体層内伝搬光の最大の入射角は、47.5°の余角である42.5°からγを引いた42.5°−γとなる。
【0137】
42.5°−γが入射臨界角αcrtより小さい場合、42.5°−γ〜入射臨界角αcrtまでの範囲の入射角で窪みの側面に入射する窒化物半導体層内伝搬光が存在しないので、窪み側面に入射してそのまま素子外に取り出される光の入射角の範囲が狭くなる。入射角の範囲が狭くなることが起こらない最大の傾斜角度γは、42.5°−γが入射臨界角αcrtと等しくなるような角度である。つまり、このような傾斜角度γは、42.5°−αcrtという式から求められる。
【0138】
図7(B)を参照して説明した例では、素子外の媒質の屈折率が1.0及び1.5であるとき、入射臨界角αcrtはそれぞれ24.6°及び38.7°であった。素子外の媒質の屈折率が1.0のとき、最大の傾斜角度は42.5°−24.6°より17.9°となり、素子外の媒質の屈折率が1.5のとき、最大の傾斜角度は42.5°−38.7°より3.8°となる。
【0139】
以上、特に窒化物半導体層内伝搬光について考察したが、発光層から放出されて窪みから素子外に取り出される光は、様々な光路を通り得る。
【0140】
本願発明者らの経験によると、概して、テーパの傾斜角度は0°〜12°の範囲とするのが好ましい。なお、特に窒化物半導体層内伝搬光についての考察を踏まえると、素子外の媒質の屈折率が高くなるほど、テーパの傾斜角度を小さくすることも有効である。
【0141】
素子外の媒質の屈折率が1.0〜1.3の範囲である場合、窪みのテーパの傾斜角度は3°〜18°が好ましく、5°〜12°がより好ましい。また、素子外の媒質の屈折率が1.3〜1.6の範囲である場合、テーパの傾斜角度は0°〜12°が好ましく、0°〜7°がより好ましい。さらに、素子外の媒質の屈折率が1.6〜2.0の範囲である場合、テーパの傾斜角度は0°〜7°が好ましく、0°〜3°がより好ましい。
【0142】
次に、窪みの開口の直径と、窪みの深さとの関係について考察する。窪みの開口の直径に対する窪みの深さの比を、窪み深さ比と定義する。窪み深さ比が大きくなるほど、窪みの底付近から素子外に出射した光が、窪み側面から再び素子内に入射しやすくなる。窪み深さ比が小さくなるほど、窪みの側面積が狭くなり、窪み側面からの取り出し光量が減少する。本願発明者らの経験によると、窪み深さ比の好ましい範囲は、0.3〜0.7であり、さらに好ましい範囲は、0.35〜0.55である。
【0143】
次に、窪みの底から基板100までの距離について説明する。窪みの底から基板100までの距離は1μm以上とすることが好ましい。これにより、例えば、窒化物半導体層側から窒化物半導体層と基板100との界面に入射して上方に反射された光を、窪み106の底面から取り出しやすくなると考えられる。
【0144】
なお、窪みの底面の形状は、平面、下方に凹んだ凹面、上方に盛り上がった凸面のいずれでもよいが、凸面とすることが好ましい。凸面とすると、例えば、窒化物半導体層側から窒化物半導体層と基板100との界面に入射して反射された光について、窪み底面への入射角が、窪み底面が平面である場合よりも小さくなる。これにより、光取り出し効率の向上が期待される。
【0145】
次に、図9(A)を参照して、第2の実施例による発光素子について説明する。図9(A)は、第2の実施例による発光素子の概略平面図を示す。p側電極の格子状部の形状と、それに対応して、窪みの配置とが、第1の実施例と異なる。他の構成は、第1の実施例と同様である。
【0146】
p側電極205が、格子状部205aとパッド部205bとを含んで構成される。格子状部205aは、行列状に配置された複数の正方形の周状の部分(これを四角形部と呼ぶこととする)と、行または列方向に関して互いに隣り合う四角形部同士を繋ぐ直線状の部分(これを結合部と呼ぶこととする)とからなる。四角形部の各辺が、行列の行方向または列方向と平行である。互いに隣り合う四角形部の対向する一対の辺の中心付近が、結合部で繋がれている。
【0147】
行列の1つの格子の4つの頂点上にそれぞれ配置された4つの四角形部について考える。これら4つの四角形部が結合部で繋がれることにより、これら4つの四角形部及びそれらの結合部に取り囲まれる十字形の区画(12角形の区画)が画定される。
【0148】
各四角形部の内部に1つずつ窪み206が形成されており、各十字形の区画の内部にも1つずつ窪み206が形成されている。各四角形部の内部の窪み206は、各四角形部に接続している結合部の延長線長に配置されている。
【0149】
四角形部の線幅は、例えば3μmである。四角形部の1辺の長さ(四角形部の互いに対向する1対の辺の中心同士の距離)は、例えば15μmである。四角形部の配置間隔(隣接する四角形部同士の中心間隔)は、例えば26.6μmである。結合部の線幅は、例えば3μmである。
【0150】
第2の実施例の発光素子の作製方法は、第1の実施例の発光素子の作製方法と同様である。ただし、窪み206を形成するためのレジストマスクの開口パタン、及び格子状部205aを形成するためのレジストマスクの開口パタンが、第2の実施例に対応したものとなる。
【0151】
次に、第2の実施例の発光素子の発光出力を測定した実験について説明する。第1の実施例の発光素子の発光出力を測定した実験と同様な方法を用いた。発光出力を、第1の実施例と同様に、比較例のそれと比較した。第2の実施例の発光素子の発光波長は481nmであり、発光出力は比較例の発光素子のそれの145%であった。
【0152】
次に、図9(B)を参照して、第2の実施例の発光素子の格子状部205aが有する作用及び効果について考察する。
【0153】
発光層103のうち、格子状部205aの結合部の下方に配置された領域から放出される光について考える。この領域を、結合部の長さ方向に関していくつかの部分に分割して考える。分割された各部分から結合部の長さ方向に放出された光が加算されることにより、結合部の長さ方向に放出される光は、他の方向に放出される光よりも強くなると考えられる。p側電極の直線部分の下方に配置された領域から、その直線部分の長さ方向に放出される光を、電極並走光と呼ぶこととする。
【0154】
結合部が接続している四角形部の内部に配置された窪み206は、結合部の延長線上に配置されている。これにより、結合部に対応する電極並走光が、この窪み206の側面から取り出されやすくなると考えられる。
【0155】
結合部は、互いに隣接する2つの十字形の区画が共有する辺を画定する。この2つの十字形の区画の双方に隣接する四角形部に取り囲まれた区画内の窪み206から、当該結合部に対応する電極並走光を取り出すことができる。
【0156】
なお、四角形部の配線間隔Wは、第1の実施例の正方格子状のp側電極と同様に定義される(図4参照)。十字形の領域については、十字形の領域を囲む4つの四角形部のうち、対角上に配置された2つの四角形部の頂点同士の間隔を、配線間隔Wとする。
【0157】
なお、窪みの開口形状を、円形以外の種々の形状にすることもできる。例えば、図9(C)に示すように、窪みの開口形状をほぼ矩形とすることもできる。十字形の領域内に配置され、ほぼ矩形の開口形状を有する窪みについて考える。窪みは、十字形の領域を囲む四角形部と重ならないように配置する必要がある。
【0158】
窪みの開口の辺が、四角形部の並ぶ行方向または列方向と平行である場合、十字が交差している部分の内部に開口が収まるようにする必要がある。この場合、窪みの開口の角の部分が、四角形部と干渉しやすく、窪みの開口を大きくし難い。窪みの開口の辺を、四角形部の並ぶ行方向または列方向に対して斜めにすると(例えば45°の角度をなすようにすると)、窪みの開口を大きくしやすい。
【0159】
次に、図10(A)を参照して、第2の実施例の変形例について説明する。図10(A)は、本変形例の発光素子の概略平面図を示す。本変形例では、p側電極205Aの格子状部205aAの形状を六角格子とし、各格子内に窪み206Aが形成されている。
【0160】
図10(B)に示すように、ある六角格子LATに隣接する6つの六角格子の、六角格子LATの各頂点に接続している辺の延長線上に、六角格子LAT内の窪み206Aが配置されている。これにより、六角格子LATの各頂点に接続している辺に対応する電極並走光が、六角格子LAT内の窪み206Aの側面から取り出されやすくなると考えられる。
【0161】
互いに隣接する2つの六角形の区画が共有する辺に対応する電極並走光を、この2つの六角形の区画の双方に隣接する六角形の区画内の窪み206Aから取り出すことができる。
【0162】
次に、図11(A)〜図11(C)を参照して、第3の実施例による発光素子について説明する。図11(A)は、第3の実施例による発光素子の概略平面図を示し、図11(B)及び図11(C)は、それぞれ、図11(A)中のA−A´線及びB−B´線に沿った概略断面図を示す。
【0163】
本実施例の発光素子では、第1、第2の実施例及び比較例の発光素子とは異なる窒化物半導体ウエハを用いる。この窒化物半導体ウエハは、緩衝層101とn型窒化物半導体層102との間に、高抵抗窒化物半導体層312を有する。高抵抗窒化物半導体層312は、n型窒化物半導体層102より高い抵抗率を有し、n側電極とオーミック接触しない。高抵抗窒化物半導体層312は、n型窒化物半導体層102等を形成するのと同様の成膜方法により形成される。
【0164】
輪郭溝311のうちn側電極307のパッド部307bが配置される領域313(n側パッド配置領域313)が、高抵抗窒化物半導体層312が露出する深さまで掘られており、n側パッド部307bが、高抵抗窒化物半導体層312上に形成されている。
【0165】
p型窒化物半導体層104の表面に、第1及び第2の実施例の発光素子と同様に、正方形の1つの隅を切り欠いた形の発光領域350が画定されている。図11(A)に示すように、発光領域350の切り欠かれた部分が、n側パッド配置領域313と重なりを持つ。n側パッド部307bは、発光領域350が切り欠かれた部分に配置されている。
【0166】
n側電極307の線状部307aは、n型窒化物半導体層102上に形成されている。なお、線状部307aのうちパッド部307bに接続する部分は、高抵抗窒化物半導体層312上に形成されている。他の構成は、第1の実施例の発光素子と同様である。
【0167】
次に、第3の実施例による発光素子の作製方法について説明する。第1の実施例において図2(A)を参照して説明した方法と同様にして、輪郭溝311を形成する。ただし、この段階では、n側パッド配置領域313も、輪郭溝311の他の領域と等しい深さ(底面にn型窒化物半導体層102が露出する深さ)である。次に図2(B)を参照して説明した方法と同様にして、窪み306を形成する。
【0168】
次に、図13(A)に示すように、n側パッド配置領域313に対応する開口を有するレジストマスクR313を、フォトリソグラフィーにより形成する。次に、ドライエッチングを用いて、レジストマスクR313の開口内のn型窒化物半導体層102を除去することにより、高抵抗窒化物半導体層312を露出させる。次いで、レジストマスクR313を洗浄除去する。
【0169】
次に図2(C)を参照して説明した方法と同様にして、p側電極305の格子状部305aを形成する。
【0170】
次に、図3(A)を参照して説明した方法と同様に、電極材料を蒸着して、n側電極307の線状部307a及びn側パッド部307bを形成する。n側パッド部307bが高抵抗窒化物半導体層312の上に形成され、線状部307aがn型窒化物半導体層102上に形成される。
【0171】
その後、図3(B)及び図3(C)を参照して説明した方法と同様にして、p側パッド部305b及び保護膜310を形成する。
【0172】
次に、第3の実施例の発光素子の発光出力を測定した実験について説明する。第1の実施例の発光素子の発光出力を測定した実験と同様な方法を用いた。発光出力を、第1の実施例と同様に、比較例のそれと比較した。第3の実施例の発光素子の発光波長は479nmであり、発光出力は比較例の発光素子のそれの170%であった。
【0173】
第3の実施例の発光素子では、n側パッド部が、高抵抗窒化物半導体層の上に形成されている。このため、第1及び第2の実施例の発光素子に比べて、n側パッド部の近傍に電流が集中しなくなり、n側電極の線状部とp側電極との間に流れる電流が増加すると考えられる。
【0174】
これにより、n側パッド部の近傍に電流が集中していた場合よりも、発光層の面内方向に関して、発光に寄与する領域が広がるので、発光出力が増加すると考えられる。また、発光層の面内方向に関して電流の均一化が図られることにより、発光状態が均一化され、発光ムラの低減が図られる。
【0175】
発光層内で、電流密度が高い領域は劣化しやすい傾向がある。第3の実施例の発光素子は、発光層内の電流を分散させることができるので、発光素子の劣化の抑制も図られる。
【0176】
次に、図12(A)〜図12(C)を参照して、第4の実施例による発光素子について説明する。図12(A)は、第4の実施例による発光素子の概略平面図を示し、図12(B)及び図12(C)は、それぞれ、図12(A)中のA−A´線及びB−B´線に沿った概略断面図を示す。本実施例の発光素子では、第1、第2の実施例及び比較例の発光素子と同様な窒化物半導体ウエハが用いられる。
【0177】
本実施例の発光素子では、輪郭溝411のうち、n側電極407のパッド部407bが配置される領域413(n側パッド配置領域413)が、基板100の露出する深さまで掘られており、n側パッド部407bが、基板100上に形成されている。基板100は、例えばサファイアからなり絶縁性である。n側電極407の線状部407aは、n型窒化物半導体層102上に形成されている。なお、線状部407aのうちパッド部407bに接続する部分は、基板100上に形成されている。他の構成は、第1の実施例の発光素子と同様である。
【0178】
次に、第4の実施例による発光素子の作製方法について説明する。第3の実施例の発光素子と同様の手順で、窪み406までを形成する。
【0179】
次に、図13(B)に示すように、n側パッド配置領域413に対応する開口を有するレジストマスクR413を、フォトリソグラフィーにより形成する。次に、ドライエッチングを用いて、レジストマスクR413の開口内のn型窒化物半導体層102及び緩衝層101を除去することにより、基板100を露出させる。次いで、レジストマスクR413を洗浄除去する。
【0180】
次に図2(C)を参照して説明した方法と同様にして、p側電極405の格子状部405aを形成する。次に、図3(A)を参照して説明した方法と同様に、電極材料を蒸着して、n側電極407の線状部407a及びn側パッド部407bを形成する。n側パッド部407bが基板100の上に形成され、線状部407aがn型窒化物半導体層102上に形成される。
【0181】
その後、図3(B)及び図3(C)を参照して説明した方法と同様にして、p側パッド部405b及び保護膜410を形成する。
【0182】
次に、第4の実施例の発光素子の発光出力を測定した実験について説明する。第1の実施例の発光素子の発光出力を測定した実験と同様な方法を用いた。発光出力を、第1の実施例と同様に、比較例のそれと比較した。第4の実施例の発光素子の発光波長は480nmであり、発光出力は比較例の発光素子のそれの240%であった。
【0183】
第4の実施例の発光素子も、第3の実施例の発光素子と同様に、n側電極の線状部とp側電極との間に流れる電流が増加すると考えられる。これにより、発光層の面内方向に関して発光に寄与する領域が広がるので、発光出力が増加すると考えられる。また、第3の実施例と同様に、発光ムラの低減、及び発光層の劣化の抑制が図られる。第4の実施例の発光素子では、窒化物半導体ウエハに高抵抗窒化物半導体層を形成しておく必要がない。
【0184】
次に、図14(A)〜図14(C)を参照して、第5の実施例による発光素子について説明する。図14(A)は、第5の実施例による発光素子の概略平面図を示し、図14(B)及び図14(C)は、それぞれ、図14(A)中のA−A´線及びB−B´線に沿った概略断面図を示す。第5の実施例の発光素子は、発光領域の形状とp側及びn側パッド部の配置とが第4の実施例と異なる。以下詳しく説明する。
【0185】
第5の実施例の発光素子では、p型窒化物半導体層104の表面に、正方形の1辺の中央部分を切り欠いた形の発光領域550が画定されている。発光領域550が切り欠かれた部分に、n側パッド部507bが配置されている。n側パッド部507bが配置される領域513(n側パッド配置領域513)が、第4の実施例と同様に、基板100が露出する深さまで掘られている。n側電極507の線状部507aがn側パッド部507bに接続し、発光領域550の1辺に平行な方向に細長い形状を有する。n側パッド部507bが基板100上に形成され、線状部507aがn型窒化物半導体層102の上に形成されている。
【0186】
p側パッド部505bが、発光領域550上の、切り欠かれた辺に対向する辺の中央付近に配置されている。p側電極505の格子状部505aは、発光領域550に対応する形状となっている。格子状部505aの各格子の内部に、窪み506が形成されている。
【0187】
第5の実施例の発光素子は、第4の実施例の発光素子と同様な方法で作製される。ただし、発光領域550を画定する輪郭溝511、窪み506、p側電極505の格子状部505a及びp側パッド部505b、n側パッド配置領域513、n側電極507の線状部507a及びパッド部507bを形成するためのレジストマスクの開口パタンが、それぞれ、第5の実施例に対応したものとなる。
【0188】
次に、第5の実施例の発光素子の発光出力を測定した実験について説明する。第1の実施例の発光素子の発光出力を測定した実験と同様な方法を用いた。発光出力を、第1の実施例と同様に、比較例のそれと比較した。第5の実施例の発光素子の発光波長は482nmであり、発光出力は比較例の発光素子のそれの210%であった。第5の実施例の発光素子は、第4の実施例の発光素子よりも発光出力がやや低い。
【0189】
第5の実施例の発光素子も、第3及び第4の実施例の発光素子と同様に、n側電極の線状部とp側電極との間に流れる電流が増加すると考えられる。これにより、発光層の面内方向に関して、発光に寄与する領域が広がるので、発光出力が増加すると考えられる。また、第3及び第4の実施例と同様に、発光ムラの低減、及び発光層の劣化の抑制が図られる。
【0190】
次に、図15(A)及び図15(B)を参照して、第6の実施例による発光素子について説明する。図15(A)は、第6の実施例の発光素子の概略平面図を示し、図15(B)は、図15(A)中のA−A´線に沿った概略断面図を示す。第6の実施例の発光素子は、第4の実施例の発光素子から窪み106を除いた構成である。第6の実施例の発光素子の作製工程では、第4の実施例の発光素子の作製工程から、窪み406の形成工程が省かれる。
【0191】
次に、第6の実施例の発光素子の発光出力を測定した実験について説明する。第1の実施例の発光素子の発光出力を測定した実験と同様な方法を用いた。発光出力を、第1の実施例と同様に、比較例のそれと比較した。第6の実施例の発光素子の発光波長は480nmであり、発光出力は比較例の発光素子のそれの120%であった。
【0192】
第6の実施例の発光素子は、第4の実施例の発光素子と同様に、n側電極の線状部とp側電極との間に流れる電流が増加すると考えられる。これにより、発光層の面内方向に関して、発光に寄与する領域が広がるので、発光出力が増加すると考えられる。また、発光ムラの低減、及び発光層の劣化の抑制が図られる。
【0193】
図17(A)は、第4の実施例による発光素子の発光状態を示す写真であり、図17(A)の下側の写真は、図17(A)の上側の写真に示す発光素子の窪み近傍の拡大写真である。図17(B)は、第6の実施例による発光素子の発光状態を示す写真である。第6の実施例の発光素子は、第4の実施例の発光素子から窪みを除いたものである。第4の実施例による発光素子の上面方向の輝度が、第6の実施例による発光素子のそれよりも強い。図17(A)の下側に示す拡大写真からわかるように、第4の実施例による発光素子の窪み側面から、上方に光が出射されている。
【0194】
次に、図18を参照し、保護膜の効果に関して調べた実験について説明する。第4の実施例の発光素子と、第4の実施例の発光素子から保護膜を除いた構成の発光素子とについて、発光出力の経時変化を調べた。
【0195】
図18に示すグラフの横軸が時間を示し、縦軸が発光出力を示す。曲線C1が保護膜ありの場合の結果を示し、曲線C2が保護膜なしの場合の結果を示す。保護膜なしの場合は、400時間程度で発光出力が初期の70%程度に低下した。保護膜ありの場合は、1000時間経過しても発光出力が初期の95%以上であった。このように、保護膜により発光出力の経時劣化が抑制される。
【0196】
なお、発光素子の、p型窒化物半導体層104、発光層103及びn型窒化物半導体層102が露出する端面を、発光素子が下方から上方に向かうにつれ細くなるように、p型窒化物半導体層104の上面の法線方向に対して3°〜13°傾斜させることにより、効果的に光が取り出される。
【0197】
上述の実施例では、p側電極の格子状部に取り囲まれる各区画の形状が、正方形等の多角形であったが、各区画を多角形以外の形状とすることも可能である。格子状部は、p型窒化物半導体層の表面を複数の区画に分割するような網目形状を有していればよい。格子状部により画定される区画の内部に、開口の縁が格子状部から離れるように、窪みを形成する。なお、1つの区画の内部に配置される窪みの個数を複数とすることも可能である。
【0198】
なお、上述の第1〜第4、第6の実施例で、上方から見た発光領域の形状は、正方形の1つの隅を切り欠いた形であったが、発光領域の形状は正方形に限らず、長方形や平行四辺形等を含む四角形とすることが可能である。
【0199】
以上実施例に沿って本発明を説明したが、本発明はこれらに制限されるものではない。例えば、種々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者に自明であろう。
【図面の簡単な説明】
【0200】
【図1】図1(A)は、第1の実施例による発光素子の概略平面図であり、図1(B)は、図1(A)中のA−A´線に沿った概略断面図である。
【図2】図2(A)〜図2(C)は、第1の実施例による発光素子の製造方法を説明するための概略断面図(その1)である。
【図3】図3(A)〜図3(C)は、第1の実施例による発光素子の製造方法を説明するための概略断面図(その2)である。
【図4】図4(A)は、窪みの近傍の概略断面図であり、図4(B)及び図4(C)は、窪みの近傍の概略平面図であり、
【図5】図5は、第1の実施例の発光素子において、窪みの底面から素子外に取り出される光の光路を概略的に示す断面図である。
【図6】図6(A)及び図6(B)は、第1の実施例の発光素子において、窪みの側面から素子外に取り出される光の光路を概略的に示す断面図である。
【図7】図7(A)は、テーパを付けない場合の窪み近傍の概略断面図であり、図7(B)は、テーパの付いた窪み近傍の概略断面図である。
【図8】図8は、テーパの付いた窪みの内面から素子外に取り出される光の光路を概略的に示す断面図である。
【図9】図9(A)は、第2の実施例による発光素子の概略平面図であり、図9(B)及び図9(C)は、第2の実施例の発光素子の格子状部が有する作用及び効果について説明するための概略平面図である。
【図10】図10(A)は、第2の実施例の変形例による発光素子の概略平面図であり、図10(B)は、第2の実施例の変形例による発光素子の格子状部が有する作用及び効果について説明するための概略平面図である。
【図11】図11(A)は、第3の実施例による発光素子の概略平面図であり、図11(B)及び図11(C)は、それぞれ、図11(A)中のA−A´線及びB−B´線に沿った概略断面図である。
【図12】図12(A)は、第4の実施例による発光素子の概略平面図であり、図12(B)及び図12(C)は、それぞれ、図12(A)中のA−A´線及びB−B´線に沿った概略断面図である。
【図13】図13(A)は、第3の実施例による発光素子の製造方法を説明するための概略断面図であり、図13(B)は、第4の実施例による発光素子の製造方法を説明するための概略断面図である。
【図14】図14(A)は、第5の実施例による発光素子の概略平面図であり、図14(B)及び図14(C)は、それぞれ、図14(A)中のA−A´線及びB−B´線に沿った概略断面図である。
【図15】図15(A)は、第6の実施例による発光素子の概略平面図であり、図15(B)及び図15(C)は、それぞれ、図15(A)中のA−A´線及びB−B´線に沿った概略断面図である。
【図16】図16は、第1〜第6の実施例及び比較例の発光素子の発光波長と発光出力とをまとめた表である。
【図17】図17(A)は、第4の実施例による発光素子の発光状態を示す写真であり、図17(B)は、第6の実施例による発光素子の発光状態を示す写真である。
【図18】図18は、保護膜の効果に関して調べた実験結果を示すグラフである。
【図19】図19は、窒化物半導体ウエハの概略断面図である。
【図20】図20(A)は、比較例による発光素子の概略平面図を示し、図20(B)は、図20(A)中のA−A´線に沿った概略断面図を示す。
【図21】図21(A)は、比較例の発光素子のp側電極の格子状部近傍の概略断面図を示し、図21(B)は、比較例の発光素子を用いたLEDランプにおいて、発光部から放出された光が発光素子の外に取り出されるまでの光路を概略的に示す断面図である。
【図22】図22は、特許文献1が開示する発光素子を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0201】
100 基板
101 緩衝層
102 n型窒化物半導体層
103 発光層
104 p型窒化物半導体層
105 p側電極
105a 格子状部
105b p側パッド部
106 窪み
107 n側電極
107a 線状部
107b n側パッド部
111 輪郭溝
150 発光領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の導電型を有する下側半導体層と、
前記下側半導体層の上に形成された発光層と、
前記発光層の上に形成され、前記第1の導電型と反対の第2の導電型を有する上側半導体層と、
前記下側半導体層に電気的に接続される下側電極と、
前記上側半導体層に電気的に接続される上側電極と
を有し、
前記上側電極は、前記上側半導体層の上に形成され、該上側半導体層の表面を、各々が該上側電極で取り囲まれる複数の区画に分割するような網目形状を有し、
さらに、前記区画の少なくとも1つの内部に、底面が少なくとも前記下側半導体層の上面まで達し、開口の縁が前記上側電極から離れた窪みを少なくとも1つ有する発光素子。
【請求項2】
前記窪みの底面が、前記下側半導体層の上面から下面までの間に配置されている請求項1に記載の発光素子。
【請求項3】
前記窪みは、下方から上方に向かって広くなる形状を有する請求項1または2に記載の発光素子。
【請求項4】
前記窪みの側面の、前記上側半導体層の上面の法線に対する傾斜角が、12°以下である請求項3に記載の発光素子。
【請求項5】
さらに、前記下側半導体層の下に基板を有し、前記窪みの底から該基板までの距離が1μm以上である請求項1〜4のいずれかに記載の発光素子。
【請求項6】
前記窪みの底面は、上方に向かって盛り上がった凸形状を有する請求項1〜5のいずれかに記載の発光素子。
【請求項7】
前記窪みの開口の縁から前記上側電極までの最短距離が2μm以上である請求項1〜6のいずれかに記載の発光素子。
【請求項8】
ある前記区画内に形成された前記窪みの開口の面積が、当該区画の面積の7%〜50%の範囲である請求項1〜7のいずれかに記載の発光素子。
【請求項9】
前記上側電極の網目形状の部分の線幅が5μm以下である請求項1〜8のいずれかに記載の発光素子。
【請求項10】
前記区画の各々の形状は多角形であり、前記上側電極のうち互いに隣接する第1及び第2の区画が共有する辺を画定する部分の延長線上に、該第1及び第2の双方に隣接する第3の区画に対応する窪みが配置されている請求項1〜9のいずれかに記載の発光素子。
【請求項11】
前記上側電極の材料として、白金、パラジウム、イリジウム、ロジウムのうち少なくとも1つが含まれる請求項1〜10のいずれかに記載の発光素子。
【請求項12】
前記上側電極は、前記上側半導体層上に形成された第1の金属層と、前記第1の金属層を覆うように前記上側半導体層上に形成された第2の金属層とを含み、前記発光層から放出された光の波長に対し、前記上側半導体層と前記第1の金属層との界面における反射率が、前記上側半導体層と前記第2の金属層との界面における反射率よりも高く、前記第1の金属層は、Agからなる層またはAgを含む合金からなる層を含む請求項1〜11のいずれかに記載の発光素子。
【請求項13】
前記第2の金属層が白金、パラジウム、イリジウム、ロジウムのうち少なくとも1つを含む請求項12に記載の発光素子。
【請求項14】
さらに、少なくとも前記窪みの側面上に、前記下側半導体層、発光層、及び上側半導体層を覆うように形成され、前記発光層から放出される光に対して透明である絶縁膜を有する請求項1〜13のいずれかに記載の発光素子。
【請求項15】
前記絶縁膜の厚さは100nm〜500nmである請求項14に記載の発光素子。
【請求項16】
前記絶縁膜は、酸化シリコン、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニア、酸化ハフニウム、酸化ネオジウム、酸化エルビウム、及び酸化セリウムのうち少なくとも1つを含む請求項14または15に記載の発光素子。
【請求項17】
前記絶縁膜は前記上側電極の少なくとも一部を覆うように形成され、該上側電極の、該絶縁膜に覆われている部分の最表層が、チタン、ニッケル、アルミニウムのうち少なくとも1つを含む請求項16に記載の発光素子。
【請求項18】
前記下側半導体層、発光層、及び上側半導体層が窒化物半導体からなり、前記下側半導体層及び上側半導体層がそれぞれn型及びp型の導電型を有する請求項1〜17のいずれかに記載の発光素子。
【請求項19】
支持層と、前記支持層の上方に形成され、第1の導電型を有し、該支持層よりも抵抗率が低い下側半導体層と、前記下側半導体層の上に形成された発光層と、前記発光層の上に形成され、前記第1の導電型と反対の第2の導電型を有する上側半導体層と、前記上側半導体層上に形成された上側電極とを含む第1の領域と;
前記支持層と、該支持層の上方に形成された前記下側半導体層と、該下側半導体層上に形成された下側電極の第1の部分とを含む第2の領域と;
前記支持層と、該支持層上に形成された前記下側電極の第2の部分とを含む第3の領域と
を有する発光素子。
【請求項20】
前記第1〜第3の領域を上方から見たとき、前記第1の領域は四角形の1つの隅を切り欠いた形状を有し、前記第1の領域の切り欠かれた部分が、前記第3の領域と重なりを持ち、該第3の領域に形成された前記下側電極の第2の部分がパッドとして用いられ、前記第1の領域の切り欠かれた隅に隣接する隅に、前記上側電極のうちパッドとして用いられる部分が配置されている請求項19に記載の発光素子。
【請求項21】
前記上側電極は、前記上側半導体層の表面を、各々が該上側電極で取り囲まれる複数の区画に分割するような網目形状の部分を含み、
さらに、前記区画の少なくとも1つの内部に、底面が少なくとも前記下側半導体層の上面まで達する窪みを有する請求項19または20に記載の発光素子。
【請求項22】
さらに、少なくとも前記窪みの側面上に、前記下側半導体層、発光層、及び上側半導体層を覆うように形成され、前記発光層から放出される光に対して透明である絶縁膜を有する請求項21に記載の発光素子。
【請求項23】
前記絶縁膜の厚さは100nm〜500nmである請求項22に記載の発光素子。
【請求項24】
前記絶縁膜は、酸化シリコン、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニア、酸化ハフニウム、酸化ネオジウム、酸化エルビウム、及び酸化セリウムのうち少なくとも1つを含む請求項22または23に記載の発光素子。
【請求項25】
前記絶縁膜は、前記下側パッド部の上面の一部を除いて前記下側電極を覆い、かつ前記上側パッド部の上面の一部を除いて前記上側電極を覆うように形成され、該下側電極及び上側電極の、該絶縁膜に覆われている部分の最表層が、チタン、ニッケル、アルミニウムのうち少なくとも1つを含む請求項24に記載の発光素子。
【請求項26】
前記下側半導体層、発光層、及び上側半導体層が窒化物半導体からなり、前記下側半導体層及び上側半導体層がそれぞれn型及びp型の導電型を有する請求項19〜25のいずれかに記載の発光素子。
【請求項27】
(a)第1の導電型を有する下側半導体層と、前記下側半導体層の上に形成された発光層と、前記発光層の上に形成され、前記第1の導電型と反対の第2の導電型を有する上側半導体層とを含むウエハを準備する工程と、
(b)少なくとも前記上側半導体層と前記発光層とをエッチングして、該上側半導体層の表面に窪みを形成する工程と、
(c)前記工程(b)の後、前記上側半導体層の上に、前記窪みの開口を取り囲む上側電極を形成する工程と、
(d)前記工程(b)の後、前記下側半導体層に電気的に接続される下側電極を形成する工程と
を有する発光素子の製造方法。
【請求項28】
前記工程(b)でドライエッチングが用いられ、さらに、前記工程(b)と(c)との間に、(e)前記工程(b)で形成された窪みの内壁の表層をウェットエッチングにより除去する工程を有する請求項27に記載の発光素子の製造方法。
【請求項29】
前記工程(e)は、エッチャントとして燐酸、硫酸、または燐酸と硫酸との混合液を用いる請求項28に記載の発光素子の製造方法。
【請求項30】
さらに、(f)少なくとも前記窪みの側面上に、前記下側半導体層、発光層、及び上側半導体層を覆うように、前記発光層から放出される光に対して透明である絶縁膜を形成する工程を有する請求項27〜29のいずれかに記載の発光素子の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図17】
image rotate


【公開番号】特開2007−123764(P2007−123764A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−317308(P2005−317308)
【出願日】平成17年10月31日(2005.10.31)
【出願人】(000002303)スタンレー電気株式会社 (2,684)
【Fターム(参考)】