説明

発光装置

【課題】 LEDの駆動制御が容易で、演色性の高い発光装置を提供することを目的とする。
【解決手段】 第1の発光ピーク波長を青色領域に持ち青色を放出する第1の発光素子108aと、第1の発光素子108aからの光により励起される赤色光を放出する蛍光物質140と、第1の発光ピーク波長よりも長波長側、かつ、蛍光物質140の発光ピーク波長よりも短波長側に第2の発光ピーク波長を持つ第2の発光素子108bと、第1の発光ピーク波長よりも長波長側に第2の発光ピーク波長を持つ緑色光を放出する第2の発光素子108bと、を有し、これらの青色光と赤色光と緑色光との混色光が外部に放出される発光装置に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶バックライト光源、照明器具、ディスプレイのバックライト光源、カメラのフラッシュライト、動画照明補助光源などに用いられる発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、モバイル系家電以外の液晶バックライト光源には冷陰極蛍光管(CCFL)が使用されている。しかし、環境対策として水銀レス光源への移行が強く要望されており、発光素子(以下、「LED」ともいう。)を用いた発光装置が注目されている。
【0003】
発光素子を用いた発光装置は、小型で電力効率が良く鮮やかな色の発光をする。また、該発光素子は半導体素子であるため球切れなどの心配がない。さらに初期駆動特性が優れ、振動やオン・オフ点灯の繰り返しに強いという特徴を有する。このような優れた特性を有するため、発光ダイオード、レーザーダイオード(以下、「LD」という。)などの発光素子を用いる発光装置は、各種の光源として利用されている。
【0004】
従来、LEDを用いた白色発光装置には、以下の3種類の組合せが知られている。
【0005】
1つ目として青色LEDと黄色に発光するいわゆるYAG蛍光体とを組み合わせた発光装置がある。この発光装置は、青色LEDの光によりYAG蛍光体を励起して、青色光と黄色光との混色光により白色光を放出するものである。この発光装置は、消費電力を低減することができ、LEDの駆動制御を容易に行え、混色性も良好であることから、広く一般に使用されている。
【0006】
2つ目として紫外LEDと蛍光体とを組み合わせた発光装置がある。蛍光体は、青色、緑色、赤色に発光するものをそれぞれ用いる。この発光装置は、蛍光体からの青色光、緑色光、赤色光との混色光により白色光を放出するものである。紫外LEDからの光はほとんど視感できないため、蛍光体のみからの光により発光色が決定される。この発光装置は、LEDの制御を容易に行え、混色性も良好である。
【0007】
3つ目として青色LED、緑色LED、赤色LEDを組み合わせた発光装置がある。この発光装置は、いわゆる三波長の発光装置であり、LEDからの光により白色光を放出するものである。この発光装置は、消費電力を低減することができ、液晶透過後の色表示範囲が広い。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、1つ目の発光装置は、青色光と黄色光との組合せであるため、冷陰極蛍光管(CCFL)に比べて赤味成分が少ない。
【0009】
2つ目の発光装置は、紫外LEDを用いるため、紫外線を外部に漏らさない対策を施さなければならない。また、紫外LEDはほとんど視感できないため、漏れた紫外光を可視光として有効に利用することはできず、発光効率が低くなる。
【0010】
3つ目の発光装置は、混色し難く、演色性に乏しいものである。LEDから放出される光は蛍光体から放出される光と異なりシャープな光であるため、各LEDから放出される光は混合され難い。また、一つの光源において少なくとも3つのLEDを要するため、駆動制御が複雑になり、また色調調整も複雑になる。
【0011】
以上のことから、本発明は、LEDの駆動制御が容易で、液晶透過後の色表示範囲が広い高い発光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の問題点を解決すべく、本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、本発明を完成するに到った。
【0013】
本発明は、可視光の短波長領域に第1の発光ピーク波長を持つ第1の発光素子と、該第1の発光素子からの光を波長変換する蛍光物質と、該第1の発光ピーク波長よりも長波長側、かつ、前記蛍光物質の発光ピーク波長よりも短波長側に第2の発光ピーク波長を持つ第2の発光素子と、を少なくとも有し、該第1の発光素子からの光と、該蛍光物質からの光と、該第2の発光素子からの光と、が混合され外部に放出される発光装置に関する。
【0014】
本発明は、紫外領域に第1の発光ピーク波長を持つ第1の発光素子と、該第1の発光素子からの光を波長変換する蛍光物質と、該第1の発光ピーク波長よりも長波長側に第2の発光ピーク波長を持つ第2の発光素子と、を少なくとも有し、該蛍光物質からの光と、該第2の発光素子からの光と、が混合され外部に放出される発光装置に関する。
【0015】
本発明は、第1の発光ピーク波長を持つ第1の発光素子と、該第1の発光素子からの光を波長変換する蛍光物質と、該第1の発光ピーク波長よりも長波長側に第2の発光ピーク波長を持つ第2の発光素子と、を少なくとも有し、該第1の発光素子と該第2の発光素子とは、異なる発光色を有する窒化物系化合物半導体であり、該第1の発光素子からの光と、該蛍光物質からの光と、該第2の発光素子からの光と、の少なくとも2種類が混合され外部に放出される発光装置に関する。「発光色が異なる」とあるのは、紫外線領域に発光するものも含むものとする。つまり紫外線領域に発光するものは、視感し難いだけであり発光しており、無色透明の発光色があるとする。例えば、第1の発光素子に紫外線領域に発光するもの、第2の発光素子に可視光領域の青色に発光するものを使用する場合、無色透明と青色とで発光色が異なっている。
【0016】
前記蛍光物質は、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Luからなる群から選ばれる少なくとも1種以上の希土類元素により賦活される、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Znからなる群から選ばれる少なくとも1種以上の第II族元素と、C、Si、Ge、Sn、Ti、Zr、Hfからなる群から選ばれる少なくとも1種以上の第IV族元素と、Nと、を含む窒化物蛍光体であることが好ましい。
【0017】
前記蛍光物質は、第1の発光素子で励起させた際の発光スペクトルにおいて、第1の発光素子の第1の発光ピーク波長における光強度を100としたとき、第2の発光ピーク波長における光強度が80以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、以上説明したように構成されているので、以下に記載されるような効果を奏する。
【0019】
本発明は、可視光の短波長領域に第1の発光ピーク波長を持つ第1の発光素子と、該第1の発光素子からの光を波長変換する蛍光物質と、該第1の発光ピーク波長よりも長波長側、かつ、前記蛍光物質の発光ピーク波長よりも短波長側に第2の発光ピーク波長を持つ第2の発光素子と、を少なくとも有し、該第1の発光素子からの光と、該蛍光物質からの光と、該第2の発光素子からの光と、が混合され外部に放出される発光装置に関する。2つのLEDにより色調を調節することができるため、駆動制御が容易となる。また、LEDよりもブロードな発光スペクトルを持つ蛍光物質を使用するため、混色されやすく、演色性の高い発光装置を提供することができる。また、第1の発光素子からの可視光を利用できるため、発光効率の高い発光装置を提供することができる。さらに液晶透過後の色表示範囲も広い。
【0020】
本発明は、紫外領域に第1の発光ピーク波長を持つ第1の発光素子と、該第1の発光素子からの光を波長変換する蛍光物質と、該第1の発光ピーク波長よりも長波長側に第2の発光ピーク波長を持つ第2の発光素子と、を少なくとも有し、該蛍光物質からの光と、該第2の発光素子からの光と、が混合され外部に放出される発光装置に関する。2つのLEDにより色調を調節することができるため、駆動制御が容易となる。また、紫外LEDを使用するため、投入電力量の変化に伴う紫外LEDの発光ピーク波長の短波長側へのずれが視感度にほとんど影響を与えず、色ずれの極めて少ない発光装置を提供することができる。また、蛍光物質からの光と、第2の発光素子からの光との2つの光により色調調整を行うため、所望の色調に調整し易い。
【0021】
本発明は、第1の発光ピーク波長を持つ第1の発光素子と、該第1の発光素子からの光を波長変換する蛍光物質と、該第1の発光ピーク波長よりも長波長側に第2の発光ピーク波長を持つ第2の発光素子と、を少なくとも有し、該第1の発光素子と該第2の発光素子とは、異なる発光色を有する窒化物系化合物半導体であり、該第1の発光素子からの光と、該蛍光物質からの光と、該第2の発光素子からの光と、の少なくとも2種類が混合され外部に放出される発光装置に関する。発光色の異なる発光素子を少なくとも2種類使用し、液晶透過後の色表示範囲を拡げることができる。また、窒化物系化合物半導体である発光素子への投入電力量の変化に伴う色ずれが、第1の発光素子と第2の発光素子とで近似するため、色調調整が行いやすい。
【0022】
前記蛍光物質は、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Luからなる群から選ばれる少なくとも1種以上の希土類元素により賦活される、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Znからなる群から選ばれる少なくとも1種以上の第II族元素と、C、Si、Ge、Sn、Ti、Zr、Hfからなる群から選ばれる少なくとも1種以上の第IV族元素と、Nと、を含む窒化物蛍光体であることが好ましい。この蛍光物質は、第1の発光素子からの光により極めて効率よく波長変換される。また、ブロードな発光スペクトルを持つため、演色性に優れた発光装置を提供することができる。
【0023】
前記蛍光物質は、第1の発光素子で励起させた際の発光スペクトルにおいて、第1の発光素子の第1の発光ピーク波長における光強度を100としたとき、第2の発光素子の第2の発光ピーク波長における光強度が80以下であることが好ましい。これにより蛍光物質は、主として第1の発光素子からの光により励起され、補完的に第2の発光素子からの光により励起される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明に係る発光装置及びその製造方法を、実施の形態及び実施例を用いて説明する。だたし、本発明は、この実施の形態及び実施例に限定されない。
【0025】
<第1の実施の形態>
図1は、第1の実施の形態に係る発光装置を示す概略平面図である。図2は、第1の実施の形態に係る発光装置を示す概略A−A断面図である。図3は、第1の実施の形態に係る発光装置を示す概略B−B断面図である。図4は、第1の実施の形態に係る発光装置の背面側を示す概略斜視図である。
【0026】
(発光装置)
第1の実施の形態に係る発光装置10は、発光素子2と、発光素子2を載置する底面部1aと、底面部1aから延びる側面部1bと、を持つ凹部1cを2個有するパッケージ1と、を有している。パッケージ1の凹部1cの底面部1aには、電極3を設けており、この電極3のマウント部3aに発光素子2を搭載している。発光素子2は、第1の発光素子2aと第2の発光素子2bとを持ち、2個の凹部1cのうち、一方の凹部1cに第1の発光素子2aを備え、他方の凹部1cに第2の発光素子2bを備える。
【0027】
発光素子2は、例えばGaN系のものであって、絶縁性のサファイア基板の上に、n型の化合物半導体を積層し、その上にp型の化合物半導体を積層する。この発光素子2は、サファイア基板を電極3の上面に搭載している。化合物半導体によるn型層の上面に形成されたn側電極はワイヤ5により電極3に電気的に接続されている。また、化合物半導体によるp型層の上面に形成されたp側電極はワイヤ5により電極3に電気的に接続されている。電極3は、一対の正負の電極である。発光素子2は、GaN系の他、InGaN系のものやGaP、GaAs系のものなども使用することができる。発光素子2は、青色光や緑色光、黄色光、赤色光などの可視光に発光するものを使用することができる他、紫外線、赤外線などを発光するものも使用することができる。第1の発光素子2aは、紫外領域から可視光の短波長領域に第1の発光ピーク波長を持つ。第2の発光素子2bは、第1の発光ピーク波長よりも長波長側に第2の発光ピーク波長を持つ。
【0028】
パッケージ1は、上向きに開口する凹部1cを形成している。凹部1cは、発光素子2を載置する底面部1aと、底面部1aから延びる側面部1bと、を持っている。パッケージ1は、凹部1cの開口部上方から切断した断面形状において、凹部1cの底面部1aの中心点を通る垂線a−aと、凹部1cの側面部1bの一辺から延びる第1の直線b−bと凹部1cの側面部1bの他の一辺から延びる第2の直線c−cとの交点を通る垂線d−dと、が相違する。交点を通る垂線d−dは、中心点を通る垂線a−aよりも外側に配置する場合、発光素子2から放出された光が隣接する凹部1cの中央付近で混合され、所定の均一な混色光を得ることができる。これに対し、交点を通る垂線d−dは、中心点を通る垂線a−aよりも内側に配置する場合、発光素子2から放出された光が隣接する凹部1cの中央付近で混合され、かつ隣接する凹部1cの中央付近で高輝度に発光し、高輝度で均一な混色光を得ることができる。隣接する2個の凹部1cの開口部上方から切断した断面形状が該2個の凹部1cの開口部を挟む垂線e−eに関して対称であることが好ましい。パッケージ1の裏面は、凹部1cの底面部1aに設けるマウント部3aから続く裏面側電極部3bを設けている。裏面側電極部3bの厚みと、パッケージ1の裏面側の凸部1dとは、発光装置10を載置したときに同一の高さとなることが好ましい。同一の高さにすることにより、発光装置10を載置する際の安定感を増加することができるからである。パッケージ1の裏面側には、樹脂注入跡1eが2つある。パッケージ1の成形において型枠に樹脂注入口を複数設けることによりパッケージ1の薄型化を図ることができるからである。パッケージ1の形状は、特に限定されるものではなく、パッケージ1の底部の投影形状が円、楕円、四角形、多角形又は略これらに対応する形状等、種々のものが挙げられる。パッケージ1の大きさは特に限定されず、例えば0.1mm〜100mmのものなどが挙げられる。パッケージ1の厚さは、100μm〜10mm程度が挙げられる。パッケージ1の材質は特に限定されず、公知の材料、通常、耐熱性樹脂である熱可塑性エンジニアリングポリマー、熱硬化性樹脂等の1種又は2種以上を組み合わせて形成することができる。例えば、液晶ポリマー(LCP)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、芳香族ナイロン(PPA)、エポキシ樹脂、硬質シリコーンレジンなどが挙げられる。なかでも、熱可塑性エンジニアリングポリマーがコスト面で適当である。また、これらの樹脂には、酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナ、シリカ、チタン酸バリウム、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、ホワイトカーボン、タルク、炭酸マグネシウム、窒化ホウ素、グラスファイバー等の無機フィラー等の1種又は2種以上が組み合わされて添加されていてもよい。さらに酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤等の添加剤が適宜添加されていてもよい。例えば樹脂100重量部に対して、無機フィラー等が10〜80重量部、好ましくは40〜80重量部添加されていることが適当である。パッケージ1の凹部1cの開口部は、楕円形状を形成している。楕円形状の一の直径が他の一の直径の二倍の長さであることが好ましい。楕円形状を2個並べることにより、略円形若しくは略正方形に近い形状を形成することができる。均一な混色光を得ることができる。また、楕円形状とすることにより透光性樹脂4の硬化に伴う体積収縮が生じた場合であっても、ワイヤ5が透光性樹脂4の上部に露出することがない。これは楕円形状の中央部の凹みが、円形状の中央部の凹みよりも小さいからである。
【0029】
電極3は、発光素子2を載置するためのマウント部3a及びマウント部3aから続く裏面側電極部3bとを有する。裏面側電極部3bは外部電極と接続するために設ける。電極3は無電解メッキを施したものや露光処理、エッチング処理、レジスト除去等の工程を経て、銅箔にニッケル及び金に電解メッキすることにより得られる。電極3は、銅、鉄等の合金による高熱伝導体により形成することができる。また、これら合金の表面に銀、アルミ、金等のメッキが施されていても良い。
【0030】
発光素子2は、マウント部3a上にフェイスアップでダイボンディングして搭載することもできる他、半田バンプ、金バンプ等を介してフェイスダウンで搭載することもできる。そのほか、保護素子上に発光素子2を搭載し、該保護素子を電極3に搭載することもできる。保護素子としては、例えば、ツェナーダイオード、コンデンサ、ダイアック等が挙げられる。
【0031】
ツェナーダイオードは、正電極を有するp型半導体領域と、負電極を有するn型半導体領域とを有し、保護素子の負電極および正電極が発光素子のp側電極とn側電極に対して逆並列となるように接続される。このように、保護素子をツェナーダイオードとすることにより、正負電極間に過大な電圧が印加されても、発光素子の正負両電極間はツェナー電圧に保持されることとなり、過大な電圧から発光素子を保護し、素子破壊や性能劣化の発生を防止することができる。
【0032】
コンデンサは、表面実装用のチップ部品を用いることができる。このような構造のコンデンサは、両側に帯状の電極が設けられており、この電極が発光素子の正電極および負電極に並列接続される。正負電極間に過電圧が印加された場合、この過電圧によって充電電流がコンデンサに流れ、コンデンサの端子電圧を瞬時に下げ、発光素子に対する印加電圧が上がらないようにすることにより、発光素子を過電圧から保護することができる。また、高周波成分を含むノイズが印加された場合も、コンデンサがバイパスコンデンサとして機能するので、外来ノイズを排除することができる。
【0033】
透光性樹脂4は、エポキシ樹脂又はシリコーン樹脂、非晶質ポリアミド樹脂、フッ素樹脂などを用いることができる。
【0034】
透光性樹脂4中に蛍光物質6を混入する。ただし第1の発光素子2aが配置されている凹部1cに投入される透光性樹脂4中には蛍光物質6の混入を必須とするが、第2の発光素子2bが配置されている凹部1cに投入される透光性樹脂4中には蛍光物質6の混入は任意である。蛍光物質6を用いることにより、発光素子2が励起光源として働き、発光素子2から放出された光により蛍光物質が励起され、発光素子2の放出する光と異なる波長の光を外部に放出する。これにより種々の色味の発光装置10を提供することができる。第1の発光素子2aが配置されている凹部1cに投入される透光性樹脂4中に混入される蛍光物質6は窒化物蛍光体が特に好ましい。第2の発光素子2bが配置されている凹部1cに投入される透光性樹脂4中に混入される蛍光物質6は特に限定されず、種々の蛍光物質を使用することができる。
【0035】
この発光装置は、3波長LEDと異なり、2つの発光素子しか用いていないため駆動制御が容易となる。
【0036】
例えば、1の凹部1cに青色に発光する第1の発光素子2aと第1の発光素子2a上に赤色に発光する窒化物蛍光体6とを配置して、他の凹部1cに緑色に発光する第2の発光素子2bを配置して発光装置を作製する。これにより青色、緑色、赤色の三原色が揃うことになり所望の色調を持つ発光装置を提供することができる。また、第1の発光素子2aにのみ電流を投入すると青色光と赤色光との混色光、第2の発光素子2bにのみ電流を投入すると緑色光、第1の発光素子2aと第2の発光素子2bの両方に電流を投入すると白色光と、2つの発光素子に投入する電流により3色の発光装置を提供することができる。また投入する電流量によりそれらの中間色も発光可能である。
【0037】
例えば、1の凹部1cに青色に発光する第1の発光素子2aと第1の発光素子2a上に赤色に発光する窒化物蛍光体6とを配置して、他の凹部1cに緑色に発光する第2の発光素子2bと第2の発光素子2b上に赤色に発光する蛍光体とを配置して発光装置を作製する。これにより青色、緑色、赤色の三原色が揃うことになり所定の色調を持つ発光装置を提供することができる。また、第1の発光素子2aにのみ電流を投入すると青色光と赤色光との混色光、第2の発光素子2bにのみ電流を投入すると緑色光と赤色光との混色光、第1の発光素子2aと第2の発光素子2bの両方に電流を投入すると白色光と、2つの発光素子に投入する電流により3色の発光装置を提供することができる。また投入する電流量によりそれらの中間色も発光可能である。
【0038】
例えば、1の凹部1cに紫外光を発光する第1の発光素子2aと第1の発光素子2a上に赤色に発光する窒化物蛍光体6とを配置して、他の凹部1cに緑色に発光する第2の発光素子2bを配置して発光装置を作製する。これにより緑色光と赤色光とにより所定の色調を持つ発光装置を提供することができる。紫外光は視感度に影響を及ぼさないため、第1の発光素子2aの第1の発光ピーク波長がずれた場合でも、赤色光を放出する窒化物蛍光体によってのみ色調が決定されるため、色調ずれが極めて少ない発光装置を提供することができる。
【0039】
<第2の実施の形態>
図5は、第2の実施の形態に係るパッケージ成型体を示す模式的な斜視図であり、図6は、第2の実施の形態に係るパッケージ成型体に発光素子を載置した状態を示す模式的な上面図である。図7は、図6の破線III−IIIにおける模式的な断面図であり、図8は、第2の実施の形態に係るパッケージ成型体の模式的な背面図である。
【0040】
パッケージ成型体100は、互いに対向し成型部材105により絶縁分離された第一の金属基体101、第二の金属基体102および第三の金属基体103を有する。第一の金属基体101、第二の金属基体102および第三の金属基体103は、端部が成型部材105に挿入されており、他端部が成型部材105の外壁面から突出するように成型部材の一体成型により形成されてなる。第一の金属基体101は、第二の金属基体102および第三の金属基体103が突出している外壁面に対向する外壁面から突出している。パッケージ成型体100は、内壁面106aにより形成され発光素子108を収納するための凹部(第一の凹部120)をその主面側に有し、金属基体の主面の一部が凹部の底面にてそれぞれ露出している。第一の凹部120内には、内壁面106bにより第二の凹部130が設けられており、第二の凹部130の底面にて第一の金属基体の主面が露出している。ここで、本明細書中において「主面」とは、パッケージ成型体、金属基体、リード電極のような発光装置の各構成部材の表面について、発光素子108が載置される側の面、例えば、発光素子108の光が取り出される発光面側の面のことをいう。
【0041】
発光素子108は、第1の発光素子108aと第2の発光素子108bとを持つ。第1の発光素子は、紫外領域から可視光の短波長領域に第1の発光ピーク波長を持つ。第2の発光素子108bは、第1の発光ピーク波長よりも長波長側に第2の発光ピーク波長を持つ。第一の凹部120及び第二の凹部130の少なくともいずれかには、蛍光物質140が配置されている。蛍光物質140は、第1の発光素子108aからの光を波長変換する。よって、可視光の短波長領域に発光ピーク波長を持つ第1の発光素子108aからの光と、蛍光物質140からの光と、第2の発光素子108bからの光と、が混合され外部に放出される。または、紫外領域に発光ピーク波長を持つ第1の発光素子108aを用い、蛍光物質140からの光と、第2の発光素子108bからの光と、が混合され外部に放出される。ただし、紫外領域に発光ピーク波長を持つ第1の発光素子108aであっても、ブロードな発光スペクトルを持つ場合は可視光が放出されるため、第2の発光素子108b及び蛍光物質140の光と混合し混色光として外部に放出される。本明細書中における「可視光の短波長領域」は、λp=380nm以上495nm以下の波長領域をいう。また、「紫外領域」は、λp=300nm以上380nm未満までの波長領域をいう。
【0042】
第一の凹部120は、開口部近傍に段差106cを有することが好ましい。このような段差106cを有することにより、柔軟性シリコーン樹脂のような粘着性の高い封止樹脂がパッケージ成型体上面へ這い上がることを防ぐことができる。従って、柔軟性シリコーン樹脂のような粘着性の高い封止樹脂を使用することができる。
【0043】
第一の金属基体101は、主面側に凹部を有することもでき、この凹部の底面に発光素子108を載置することができる。第一の金属基体101の主面に対向する背面は、成型部材105から露出しており、パッケージ成型体100の背面とほぼ同一平面となるように成型されている。このように構成することにより、発光装置の実装性が高まり、実装面との接触面積が増えるため、発光装置の放熱性が向上する。
【0044】
第二の金属基体102および第三の金属基体103は、パッケージ成型体100の主面に設けられた凹部内に収納される発光素子108及び保護素子107に電力を供給するためのリード電極となる。パッケージ成型体100の外壁面より突出する第二の金属基体102および第三の金属基体103の主面に対向する背面の一部は、パッケージ成型体100の背面(第一の金属基体101の背面)とほぼ同一平面となるように折り曲げられており、外部の実装基板に設けられた導電性パターンと接続する接続端子部とされている。第二の金属基体102および第三の金属基体103における主面は、その一部がパッケージ成型体100の第一の凹部120底面にて露出されており、さらに、露出された主面は、第一の凹部120の内壁を形成する成型部材105の一部が壁部104として第二の凹部130の方向へ、壁部104の壁面の一部が内壁面106bとほぼ同一平面となるところまで延在することにより分割されている。この分割された主面は、複数のボンディング領域102a、102b、103a、103bを有する。即ち、発光素子108と接続する導電性ワイヤがワイヤボンディングされる領域、あるいは発光素子108を過電圧による破壊から守るための保護素子がダイボンドされる領域を有する。特に、発光装置は、第二の凹部130の底面に載置される発光素子108と、裏面電極を有する保護素子107とを有し、保護素子107は、裏面電極が導電性部材を介してボンディング領域の一つに対向するように載置されている。発光素子108及び保護素子107に接続する導電性ワイヤ109あるいは保護素子107は、壁部104によって隔てられ異なるボンディング領域102a、102b、103a、103bにそれぞれワイヤボンディングされる。例えば、第三の金属基体103のボンディング領域103aに保護素子107がダイボンディングされ、第二の金属基体102のボンディング領域102aに保護素子107に接続する導電性ワイヤ109がワイヤボンディングされる。この場合、発光素子108に接続する導電性ワイヤ109のうち保護素子107がダイボンディングされたボンディング領域103aと同一極性に接続する導電性ワイヤ109は、保護素子107がダイボンドされたボンディング領域103aに隣接し壁部104によって隔てられて設けられるボンディング領域103bにワイヤボンディングされる。一方、発光素子108に接続する導電性ワイヤ109のうち、保護素子107に接続する導電性ワイヤ109がワイヤボンディングされたボンディング領域102aと同一極性に接続する導電性ワイヤ109は、ワイヤボンディング領域に隣接し壁部104によって隔てられて設けられるボンディング領域102bにワイヤボンディングされる。ここで、導電性ワイヤ109の本数は、同じボンディング領域にワイヤボンディングされるのであれば、複数本でも構わない。このように構成することにより、ワイヤの断線が生じても他のワイヤが断線していなければ、電気的導通が取れていることとなるため、信頼性の高い発光装置とすることができる。また、壁部104は、導電性ワイヤ109や保護素子107のボンディングに必要な面積だけ残して第二の金属基体102および第三の金属基体103の主面を被覆している。従って、凹部底面にて露出している第一の部材101及び第二の部材102、第三の部材103の領域を従来技術と比較して小さくすることができるため、第一の封止部材111及び第二の封止樹脂112はパッケージ成型体から剥離し難い。また、壁部104は、互いに比較的密着性の高い封止部材と成型部材との接触面積を増やすことができるため、封止部材はパッケージ成型体から剥離し難い。また、封止部材の応力は、壁部104の方向に集中する。従って、導電性ワイヤ109が封止部材の応力の影響を受けることが少ないため、導電性ワイヤ109がボンディング領域から剥離し難い。
【0045】
以下、主に第2の実施の形態に用いられる部材について詳述していくが、第1の実施の形態に用いられる部材についても同様な構成を有する。
【0046】
(発光素子)
発光素子は、特に限定されないが、一対のリード電極と金属基体とが成型樹脂にてインサート成型されている場合、同一面側に正負一対の電極を有する発光素子が用いられる。また、蛍光物質を励起可能な発光波長を発光できる発光層を有する発光素子が好ましい。このような半導体発光素子としてZnSeやGaNなど種々の半導体を挙げることができるが、蛍光物質を効率良く励起できる短波長が発光可能な窒化物半導体(InAlGa1−X−YN、0≦X、0≦Y、X+Y≦1)が好適に挙げられる。また所望に応じて、窒化物半導体にボロンやリンを含有させることも可能である。半導体の構造としては、MIS接合、PIN接合やpn接合などを有するホモ構造、ヘテロ構造あるいはダブルへテロ構成のものが挙げられる。半導体層の材料やその混晶度によって発光波長を種々選択することができる。また、半導体活性層を量子効果が生ずる薄膜に形成させた単一量子井戸構造や多重量子井戸構造とすることもできる。窒化物半導体を使用した場合、半導体用基板にはサファイヤ、スピネル、SiC、Si、ZnO、およびGaN等の材料が好適に用いられる。結晶性の良い窒化物半導体を量産性よく形成させるためにはサファイヤ基板を用いることが好ましい。このサファイヤ基板上にMOCVD法などを用いて窒化物半導体を形成させることができる。サファイヤ基板上にGaN、AlN、GaAIN等のバッファ層を形成しその上にpn接合を有する窒化物半導体を形成させる。窒化物半導体を使用したpn接合を有する発光素子として、バッファ層上に、n型窒化ガリウムで形成した第1のコンタクト層、n型窒化アルミニウム・ガリウムで形成させた第1のクラッド層、窒化インジウム・ガリウムで形成した活性層、p型窒化アルミニウム・ガリウムで形成した第2のクラッド層、p型窒化ガリウムで形成した第2のコンタクト層を順に積層させたダブルへテロ構成などが挙げられる。窒化物半導体は、不純物をドープしない状態でn型導電性を示す。発光効率を向上させるなど所望のn型窒化物半導体を形成させる場合は、n型ドーパントとしてSi、Ge、Se、Te、C等を適宜導入することが好ましい。一方、p型窒化物半導体を形成させる場合は、p型ドーパントであるZn、Mg、Be、Ca、Sr、Ba等をドープさせる。窒化物半導体は、p型ドーパントをドープしただけではp型化しにくいためp型ドーパント導入後に、炉による加熱やプラズマ照射等により低抵抗化させることが好ましい。また、p型層上に金属層を積層した後、半導体用基板を除去してもよい。このように構成された発光素子を前記金属層が実装面側となるように実装すると、放熱性の高い発光装置が得られる。それぞれ露出されたp型層及びn型層上に各電極を形成後、半導体ウエハーからチップ状にカットさせることで窒化物半導体からなる発光素子を形成させることができる。
【0047】
可視光の短波長領域に第1の発光ピーク波長を持つ第1の発光素子108aは、380nm以上495nm以下に発光ピーク波長を持ち、特に、380nmから420nm若しくは440nmから485nmに発光ピーク波長を持つものが好ましい。例えば、400nm、440nmから445nm、455nmから465nmに第1の発光ピーク波長を持つ第1の発光素子108aを使用する。紫外領域に第1の発光ピーク波長を持つ第1の発光素子108aは、300nm以上380nm未満に発光ピーク波長を持ち、特に、350nm以上380nm未満に発光ピーク波長を持つものが好ましい。
【0048】
第2の発光素子108bは、第1の発光ピーク波長よりも長波長側に第2の発光ピーク波長を持つものであればよいが、蛍光物質140の発光ピーク波長よりも短波長側に第2の発光ピーク波長を持つものが好ましい。これにより種々の発光色を実現できるからである。特に、可視光の短波長領域に第1の発光ピーク波長を持つ第1の発光素子108aを用いる場合は、第2の発光素子108bは、495nmから573nmに第2の発光ピーク波長を持つものが好ましい。一方、紫外領域に第1の発光ピーク波長を持つ第1の発光素子108aを用いる場合は、第2の発光素子108bは、400nmから573nmに第2の発光ピーク波長を持つものが好ましい。
【0049】
(保護素子)
保護素子とは、発光素子等の半導体素子と共にパッケージ成型体の第一の凹部120内に収納される素子であり、他の半導体素子を過電圧による破壊から保護するためのものである。保護素子は、半導体構造を有するものの他、半導体構造を有しないものも含む。
【0050】
本実施の形態で用いることができる保護素子には、規定電圧以上の電圧が印加されると通電状態になるツェナーダイオード(zener diode)、パルス性の電圧を吸収するコンデンサ等を用いることができる。
【0051】
ツェナーダイオードとして機能する保護素子は、正電極を有するp型半導体領域と、負電極を有するn型半導体領域とを有し、保護素子の負電極および正電極が発光素子のp側電極とn側電極に対して逆並列となるように接続される。このように、保護素子をツェナーダイオードとすることにより、正負リード電極間に過大な電圧が印加された場合、その電圧がツェナーダイオードのツェナー電圧を超えると、発光素子の正負両電極間はツェナー電圧に保持され、このツェナー電圧以上になることはない。従って、発光素子間に過大な電圧が印加されるのを防止でき、過大な電圧から発光素子を保護し、素子破壊や性能劣化の発生を防止することができる。
【0052】
保護素子としてのコンデンサは、表面実装用のチップ部品を用いることができる。このような構造のコンデンサは、両側に帯状の電極が設けられており、この電極が発光素子の正電極および負電極に並列接続される。正負一対のリード電極間に過電圧が印加された場合、この過電圧によって充電電流がコンデンサに流れ、コンデンサの端子電圧を瞬時に下げ、発光素子に対する印加電圧が上がらないようにするため、発光素子を過電圧から保護することができる。また、高周波成分を含むノイズが印加された場合も、コンデンサがバイパスコンデンサとして機能するので、外来ノイズを排除することができる。
【0053】
(封止部材)
本実施の形態における封止部材とは、パッケージ成型体に収納される発光素子を被覆する部材である。例えば、軟質シリコーン樹脂またはエポキシ樹脂等の透光性樹脂を単独で封止部材とすることができる。また、封止部材は、発光素子108を被覆する第一の封止部材111と、第一の封止部材111を被覆する第二の封止部材112を設けることができる。さらに、第一の封止部材111を柔軟性部材とし、第二の封止部材112を硬質性部材とすることにより、信頼性の高い半導体装置とすることができる。封止部材に蛍光物質140を含有させる他、拡散剤、フィラーなども含有させることもできる。
【0054】
さらに、サブマウントを第二の凹部130底面から露出している第一の基体上にAgペーストを接着剤として固定し、導電性ワイヤ109にて凹部内に露出させたリード電極とサブマウントの正負両電極とを接続して半導体装置とする。
【0055】
(柔軟性部材)
パッケージ成型体に載置された上述の半導体素子を覆うように、パッケージ成型体の第一の凹部120内から上方の硬質性部材下端部にかけて柔軟性部材が設けることができる。柔軟性部材は水分等から半導体素子を保護することができる他、透光性を有しており発光素子からの光を効率よく外部に取り出すことができる。また、熱に対して高い安定性を有しているため、発光装置の作動時に生じる熱応力を緩和させることができる。また、近紫外領域または紫外領域の発光素子を用いた場合、これらの光に対して耐光性に優れた柔軟性部材を用いることが好ましい。これら柔軟性を有する部材として、ゴム状弾性樹脂、ゲル状シリコーン樹脂のようなゲル状樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、架橋密度が低い又は架橋構造を有さないことから、良好な柔軟性を有することができる。また、発光素子チップからの光に対して特定のフィルター効果等を持たす為に着色染料や着色顔料を添加することもできる。
【0056】
(硬質性部材)
発光装置において、発光素子108周囲に設けられた柔軟性部材は硬質性部材にて封止されている。硬質性部材は、機械的強度を有し且つ透光性であれば特に限定されない。
【0057】
本実施の形態において、光取り出し窓部である硬質性部材は、パッケージ成型体の第一の凹部120に配置された発光素子108の上方に位置しており、第一の凹部120の内壁面の延長と硬質性部材の上面との交線の内側が半導体装置の発光に関与する発光面となる。発光素子の端部から発光される光は、柔軟性部材中にて反射散乱されて、硬質性部材を透過し正面方向に取り出される。これらの反射散乱光の存在範囲は、ほぼ第一の凹部120の内壁面の延長線内であると考えられる。そこで、上記交線の内側の形状をあらゆる形状に調整することにより、所望とする輝度を発光することが可能な発光装置が得られる。また、硬質性部材の材料は、パッケージ本体を形成する成型樹脂、および下部に設けられる柔軟性部材と熱膨張係数が近似していることが好ましい。例えば、柔軟性部材をゲル状シリコーン樹脂とした場合、硬質性部材の材料は、硬質シリコーン樹脂とすることが好ましい。このように構成することにより、粘着性の高いゲル状シリコーン樹脂に塵が付着し半導体装置の光学特性に悪影響を及ぼすことを防止することができる。
【0058】
硬質性部材の形状は、連続した一背面を有することが好ましい。これにより、柔軟性部材との界面に気泡が混入されることなく信頼性高く設置することが可能となる。一方、主面側は、凹部側面の延長線内部において中央部が突出した曲面を有することもできる。これにより背面側にて拡散された光を正面方向に効率良く収束することができ、正面方向の光度を高めることができる。硬質性部材は、第二の主面の外郭内に内接され、柔軟性部材と構造的に一体化されている。このような硬質性部材は、内部、主面側表面、背面側表面において、発光素子チップからの光に対して特定のフィルター効果等を持たす為に着色染料や着色顔料を添加することもできる。
【0059】
(蛍光物質)
(窒化物蛍光体)
第1の発光素子により励起される蛍光物質140は窒化物蛍光体を用いる。窒化物蛍光体は、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Luからなる群から選ばれる少なくとも1種以上の希土類元素により賦活される、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Znからなる群から選ばれる少なくとも1種以上の第II族元素と、C、Si、Ge、Sn、Ti、Zr、Hfからなる群から選ばれる少なくとも1種以上の第IV族元素と、Nと、を含む窒化物蛍光体である。この窒化物蛍光体は、Bが1ppm以上10000ppm以下含まれていることが好ましい。または窒化物蛍光体は、組成中にOが含まれているものも使用できる。上記窒化物蛍光体の組合せのうち、Euにより賦活される、Ca及びSrの少なくともいずれか1元素と、Siと、Nと、からなる窒化物蛍光体であって、Bが1ppm以上10000ppm以下含まれていることが好ましい。Euの一部は、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Luからなる群から選ばれる少なくとも1種以上の希土類元素により置換可能である。Ca及びSrの少なくともいずれか一方の元素の一部は、Be、Mg、Ba、Znからなる群から選ばれる少なくとも1種以上の第II族元素により置換可能である。Siの一部は、C、Ge、Sn、Ti、Zr、Hfからなる群から選ばれる少なくとも1種以上の第IV族元素により置換可能である。
【0060】
窒化物蛍光体は、一般式、L((2/3)X+(4/3)Y):R若しくはL((2/3)X+(4/3)Y−(2/3)Z):R(Lは、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Znからなる群から選ばれる少なくとも1種以上の第II族元素である。Mは、C、Si、Ge、Sn、Ti、Zr、Hfからなる群から選ばれる少なくとも1種以上の第IV族元素である。Rは、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Luからなる群から選ばれる少なくとも1種以上の希土類元素である。X、Y、Zは、0.5≦X≦3、1.5≦Y≦8、0<Z≦3である。)で表される。または、窒化物蛍光体は、一般式、L((2/3)X+(4/3)Y+U−(2/3)Z):R(Lは、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Znからなる群から選ばれる少なくとも1種以上の第II族元素である。Mは、C、Si、Ge、Sn、Ti、Zr、Hfからなる群から選ばれる少なくとも1種以上の第IV族元素である。Tは、B、Al、Ga、In、Scの少なくとも1種以上である。Rは、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Luからなる群から選ばれる少なくとも1種以上の希土類元素である。X、Y、Zは、0.5≦X≦3、1.5≦Y≦8、0<U<0.5、0<Z≦3である。)で表される。この窒化物蛍光体は、TとRのモル比がT/R=0.001〜1.0であることが好ましいが、T/R=0.01〜5.0のものも使用することができる。一般式の具体例としては(SrCa1−TSi:Eu、CaSi:Eu、SrCa1−TSi10:Eu、SrSi10:Eu、CaSi10:Eu、SrSi:Eu、BaSi:Eu、MgSi:Eu、ZnSi:Eu、SrSi10:Eu、BaSi10:Eu、MgSi10:Eu、ZnSi10:Eu、SrGe:Eu、BaGe:Eu、MgGe:Eu、ZnGe:Eu、SrGe10:Eu、BaGe10:Eu、MgGe10:Eu、ZnGe10:Eu、Sr1.8Ca0.2Si:Eu、Ba1.8Ca0.2Si:Eu、Mg1.8Ca0.2Si:Eu、Zn1.8Ca0.2Si:Eu、Sr0.8Ca0.2Si10:Eu、Ba0.8Ca0.2Si10:Eu、Mg0.8Ca0.2Si10:Eu、Zn0.8Ca0.2Si10:Eu、Sr0.8Ca0.2Ge10:Eu、Ba0.8Ca0.2Ge10:Eu、Mg0.8Ca0.2Ge10:Eu、Zn0.8Ca0.2Ge10:Eu、Sr0.8Ca0.2SiGeN10:Eu、Ba0.8Ca0.2SiGeN10:Eu、Mg0.8Ca0.2SiGeN10:Eu、Zn0.8Ca0.2SiGeN10:Eu、SrSi:Pr、BaSi:Pr、SrSi:Tb、BaGe10:Ce(0<T<1である。)等で表される窒化物蛍光体を使用することが好ましい。
【0061】
この窒化物蛍光体は、一般式、L((2/3)X+(4/3)Y):R若しくはL((2/3)X+(4/3)Y−(2/3)Z):Rに対して、Bを1ppm以上10000ppm以下含めることができる。Bの混合方法は、湿式、乾式で、各種原料にホウ素化合物を添加するほか、Ca、Siなどの原料組成に、予め含有させておくこともできる。ホウ素は、製造工程における焼成段階で、一部が飛散するため、焼成後のホウ素の含有量は、原料への添加時よりも少なくなる。
【0062】
Lは、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Znからなる群から選ばれる少なくとも1種以上の第II族元素である。そのため、Mg、Ca、Srなどを単独で使用することもできるが、CaとSr、CaとMg、CaとBa、CaとSrとBaなどの組合せも可能である。特に、窒化物蛍光体の組成にCaとSrの少なくともいずれか一方を用いることにより、発光輝度、量子効率等にすぐれた蛍光体を提供することができる。このCaとSrの少なくともいずれか一方の元素を有しており、CaとSrの一部を、Be、Mg、Ba、Znで置換してもよい。2種以上の混合物を使用する場合、所望により配合比を変えることができる。ここで、Srのみ、若しくは、Caのみのときより、SrとCaとを混合した方が、より長波長側にピーク波長がシフトする。SrとCaのモル比が、7:3若しくは3:7のとき、Ca、Srのみを用いた場合と比べて、長波長側にピーク波長がシフトしている。さらに、SrとCaのモル比が、ほぼ5:5のとき、最も長波長側にピーク波長がシフトする。
【0063】
Mは、C、Si、Ge、Sn、Ti、Zr、Hfからなる群から選ばれる少なくとも1種以上の第IV族元素である。そのため、C、Si、Geなどを単独で使用することもできるが、CとSi、GeとSi、TiとSi、ZrとSi、GeとTiとSiなどの組合せも可能である。特に、窒化物蛍光体の組成にSiを用いることにより安価で結晶性の良好な窒化物蛍光体を提供することができる。Siの一部を、C、Ge、Sn、Ti、Zr、Hfで置換してもよい。Siを必須とする混合物を使用する場合、所望により配合比を変えることができる。例えば、Siを95重量%用いて、Geを5重量%用いることができる。
【0064】
Rは、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Luからなる群から選ばれる少なくとも1種以上の希土類元素である。Eu、Pr、Ceなどを単独で使用することもできるが、CeとEu、PrとEu、LaとEuなどの組合せも可能である。特に、賦活剤として、Euを用いることにより、黄色から赤色領域にピーク波長を有する発光特性に優れた窒化物蛍光体を提供することができる。Euの一部を、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Luで置換してもよい。Euの一部を他の元素で置換することにより、他の元素は、共賦活として作用する。共賦活とすることにより色調を変化することができ、発光特性の調整を行うことができる。Euを必須とする混合物を使用する場合、所望により配合比を変えることができる。以下の実施例は、発光中心に希土類元素であるユウロピウムEuを用いる。ユウロピウムは、主に2価と3価のエネルギー準位を持つ。本発明の蛍光体は、母体のアルカリ土類金属系窒化ケイ素に対して、Eu2+を賦活剤として用いる。Eu2+は、酸化されやすく、3価のEuの組成で市販されている。しかし、市販のEuでは、Oの関与が大きく、良好な蛍光体が得られにくい。そのため、EuからOを、系外へ除去したものを使用することが好ましい。たとえば、ユウロピウム単体、窒化ユウロピウムを用いることが好ましい。さらに、Euの量を変更することでより長波長の蛍光体とすることができる。
【0065】
ホウ素を添加した場合の効果は、Eu2+の拡散を促進し、発光輝度、エネルギー効率、量子効率等の発光特性の向上を図ることができる。また、粒径を大きくし、発光特性の向上を図ることができる。
【0066】
窒化物蛍光体の組成中には、Al、Ga、In、Scの一部を含むものも使用できる。これらは残光を調節したり、粒径を大きくしたりするなどの効果がある。
【0067】
窒化物蛍光体の組成中に酸素が含有されている。酸素は、原料となる各種酸化物から導入されるか、焼成中に酸素が混入してくることが考えられる。この酸素は、Eu拡散、粒成長、結晶性向上の効果を促進すると考えられる。すなわち、原料に使用される一の化合物をメタル、窒化物、酸化物と変えても同様の効果が得られるが、むしろ酸化物を用いた場合の効果が大きい場合もある。窒化物蛍光体の結晶構造は、単斜晶又は斜方晶があるが、非単結晶、六方晶系などもある。
【0068】
(窒化物蛍光体の製造方法)
次に、CaSi:Euで表される窒化物蛍光体の製造方法を説明するが、本製造方法に限定されない。
【0069】
原料のCaを粉砕する(P1)。原料のCaは、単体を使用することが好ましいが、イミド化合物、アミド化合物などの化合物を使用することもできる。
【0070】
原料のCaを、窒素雰囲気中で窒化する(P2)。この反応式を、[化1]に示す。
【0071】
[化1]
3Ca + N → Ca
Caを、窒素雰囲気中、600〜900℃、約5時間、窒化して、Caの窒化物を得ることができる。
【0072】
Caの窒化物を粉砕する(P3)。
【0073】
原料のSiを粉砕する(P4)。
【0074】
原料のSiを、窒素雰囲気中で窒化する(P5)。この反応式を、[化2]に示す。
【0075】
[化2]
3Si + 2N → Si
ケイ素Siも、窒素雰囲気中、800〜1200℃、約5時間、窒化して、窒化ケイ素を得る。
【0076】
同様に、Siの窒化物を粉砕する(P6)。
【0077】
次に、Euの化合物Euを混合する(P7)。
【0078】
Euの化合物Euを焼成する(P8)。
【0079】
Euを粉砕する(P9)。
【0080】
上記粉砕を行った後、Caの窒化物、Siの窒化物、Euを混合する(P10)。
【0081】
Caの窒化物、Siの窒化物、Euを焼成する(P11)。焼成は、1200℃から2000℃の範囲で焼成を行うことができるが、1400から1800℃の焼成温度が好ましい。焼成は、徐々に昇温を行い1200℃から1500℃で数時間焼成を行う一段階焼成を使用することが好ましいが、800℃から1000℃で一段階目の焼成を行い、徐々に加熱して1200℃から1500℃で二段階目の焼成を行う二段階焼成(多段階焼成)を使用することもできる。この焼成により、CaSi:Euで表される窒化物蛍光体が得られる。この焼成による窒化物蛍光体の反応式を、[化3]に示す。
【0082】
[化3]
(1.985/3)Ca+(5/3)Si+(0.015/2)Eu
→Ca1.985Eu0.015Si87.9900.0225
以上のようにして窒化物蛍光体は製造される。
【0083】
(その他の蛍光体)
発光装置における蛍光物質140として、窒化物蛍光体の他に、補色として青色に発光する蛍光体、緑色に発光する蛍光体、黄色に発光する蛍光体の少なくともいずれか1以上の蛍光体を混合して使用することもできる。これにより微妙な色調調整ができる。蛍光体としては、Eu等のランタノイド系、Mn等の遷移金属系の元素により主に付活されるアルカリ土類ハロゲンアパタイト蛍光体、アルカリ土類金属ホウ酸ハロゲン蛍光体、アルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体、アルカリ土類ケイ酸塩、アルカリ土類硫化物、アルカリ土類チオガレート、アルカリ土類窒化ケイ素、ゲルマン酸塩、又は、Ce等のランタノイド系元素で主に付活される希土類アルミン酸塩、希土類ケイ酸塩、又は、Eu等のランタノイド系元素で主に賦活される有機及び有機錯体等から選ばれる少なくともいずれか1以上であることが好ましい。具体例として、下記の蛍光体を使用することができるが、これに限定されない。
【0084】
Eu等のランタノイド系、Mn等の遷移金属系の元素により主に付活されるアルカリ土類ハロゲンアパタイト蛍光体には、M(POX:R(Mは、Sr、Ca、Ba、Mg、Znから選ばれる少なくとも1種以上である。Xは、F、Cl、Br、Iから選ばれる少なくとも1種以上である。Rは、Eu、Mn、EuとMn、のいずれか1以上である。)などがある。
【0085】
アルカリ土類金属ホウ酸ハロゲン蛍光体には、MX:R(Mは、Sr、Ca、Ba、Mg、Znから選ばれる少なくとも1種以上である。Xは、F、Cl、Br、Iから選ばれる少なくとも1種以上である。Rは、Eu、Mn、EuとMn、のいずれか1以上である。)などがある。
【0086】
アルカリ土類硫化物蛍光体には、LaS:Eu、YS:Eu、GdS:Euなどがある。
【0087】
Ce等のランタノイド系元素で主に賦活される希土類アルミン酸塩蛍光体には、YAl12:Ce、(Y0.8Gd0.2Al12:Ce、Y(Al0.8Ga0.212:Ce、(Y,Gd)(Al,Ga)12の組成式で表されるYAG系蛍光体などがある。
【0088】
アルカリ土類金属珪酸塩は、以下のような一般式で表されるアルカリ土類金属オルト珪酸塩が好ましい。
(2−x−y)SrO・x(Ba,Ca)O・(1−a−b−c−d)SiO・aPbAlcBdGeO:yEu2+(式中、0<x<1.6、0.005<y<0.5、0<a、b、c、d<0.5である。)
(2−x−y)BaO・x(Sr,Ca)O・(1−a−b−c−d)SiO・aPbAlcBdGeO:yEu2+(式中、0.01<x<1.6、0.005<y<0.5、0<a、b、c、d<0.5である。)
ここで、好ましくは、a、b、cおよびdの値のうち、少なくとも一つが0.01より大きい。
【0089】
アルカリ土類金属塩からなる蛍光体として、上述したアルカリ土類金属珪酸塩の他、ユウロピウムおよび/またはマンガンで付活されたアルカリ土類金属アルミン酸塩やY(V,P,Si)O:Eu、または次式で示されるアルカリ土類金属−マグネシウム−二珪酸塩を有することもできる。
【0090】
Me(3−x−y)MgSi:xEu,yMn(式中、0.005<x<0.5、0.005<y<0.5、Meは、Baおよび/またはSrおよび/またはCaを示す。)
アルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体には、SrAl:R、SrAl1425:R、CaAl:R、BaMgAl1627:R、BaMgAl1612:R、BaMgAl1017:R(Rは、Eu、Mn、EuとMn、のいずれか1以上である。)などがある。
【0091】
その他の蛍光体には、ZnS:Eu、ZnGeO:Mn、MGa:Eu(Mは、Sr、Ca、Ba、Mg、Znから選ばれる少なくとも1種以上である。Xは、F、Cl、Br、Iから選ばれる少なくとも1種以上である。)などがある。また、MSi:Eu、MSi10:Eu、M1.8Si0.2:Eu、M0.9Si0.110:Eu(Mは、Sr、Ca、Ba、Mg、Znから選ばれる少なくとも1種以上である。)などもある。
【0092】
上述の蛍光体は、所望に応じてEuに代えて、又は、Euに加えてTb、Cu、Ag、Au、Cr、Nd、Dy、Co、Ni、Tiから選択される1種以上を含有させることもできる。
【0093】
また、上記蛍光体以外の蛍光体であって、同様の性能、効果を有する蛍光体も使用することができる。
【0094】
発光装置IIにおける蛍光体108の配置場所は発光素子101との位置関係において種々の場所に配置することができる。例えば、発光素子101を被覆するモールド材料中に、蛍光体108を含有させることができる。また、発光素子101と蛍光体108とを、間隙をおいて配置しても良いし、発光素子101の上部に蛍光体108を、直接載置しても良い。
【実施例】
【0095】
<実施例1及び2>
実施例1及び2の発光装置は、第2の実施の形態に係る発光装置を用いる。図5は、第2の実施の形態に係るパッケージ成型体の模式的な斜視図である。図6は、第2の実施の形態に係る半導体装置の模式的な上面図である。図7は、第2の実施の形態に係るパッケージ成型体の模式的な断面図である。図8は、第2の実施の形態に係るパッケージ成型体の模式的な背面図である。図9は、窒化物蛍光体の励起スペクトルを示す図である。図10は、実施例1に係る発光装置の青紫色LEDで窒化物蛍光体を励起させたときの発光スペクトルを示す図である。図11は、実施例2に係る発光装置の青紫色LEDで窒化物蛍光体を励起させたときの発光スペクトルを示す図である。図12は、緑色LEDを発光させたときの発光スペクトルを示す図である。
【0096】
第1の発光素子108aは、□600μmのITOダイスであり、約444nmに第1の発光ピーク波長を持つものを使用する。この第1の発光素子108aは青紫色に発光する。
【0097】
第2の発光素子108bは、約533nmに第2の発光ピーク波長を持つものを使用する。この第2の発光素子108bは緑色に発光する。
【0098】
実施例1に用いる蛍光物質140は、CaSi:Euの組成の窒化物蛍光体を使用する。この窒化物蛍光体は、約609nmに発光ピーク波長を持つ。実施例2に用いる蛍光物質140は、(Ca,Sr)Si:Euの組成の窒化物蛍光体を使用する。この窒化物蛍光体は、約650nmに発光ピーク波長を持つ。図より、第1の発光素子108aの第1の発光ピーク波長約444nmにおける実施例1及び実施例2で使用する窒化物蛍光体の光強度を100とする。第2の発光素子108bの第2の発光ピーク波長約533nmにおける実施例1で使用する窒化物蛍光体の光強度は約65、実施例2の光強度は約74である。これより窒化物蛍光体は、第1の発光素子108aと比べて、第2の発光素子108bによる励起効率は低い。
【0099】
実施例1及び実施例2における青紫色LEDと窒化物蛍光体とを発光させたものは、青紫色の約444nmと赤色の約609nmに発光ピーク波長を持つが、480nmから560nmの領域ではほとんど発光していない。このようにほとんど発光していない部分を三原色と異なる中間色に持たせることにより、以下に説明するように液晶透過後の色表示範囲を拡げることができる。
【0100】
表1に実施例1及び実施例2における青紫色LEDと窒化物蛍光体とを発光させたときを所定の積分球で測定した結果を示す。これは実施例1及び実施例2の発光装置(青紫色LEDと窒化物蛍光体とを発光させたもの)を各10個作製してその平均値をとったものである。併せて同一条件の下、第2の発光素子を測定した結果を示す。これは第2の発光素子(緑色発光の発光素子)のみを用い上記と同様の発光装置に実装したものである。これも10個作製してその平均値をとったものである。
【0101】
【表1】

【0102】

これにより所定の色調を有する発光装置を提供することができる。この色調は投入電流量により適宜変更することができるほか、蛍光物質140の使用量によっても変更することができる。
【0103】
次に、実施例1及び実施例2の発光装置(青紫色LEDと窒化物蛍光体とを発光させたもの)に所定の電流量を投入する。表2は、実施例1の発光装置(青紫色LEDと窒化物蛍光体とを発光させたもの)を上記と同様、所定の積分球で測定した結果を示す。表3は、実施例2の発光装置(青紫色LEDと窒化物蛍光体とを発光させたもの)を上記と同様、所定の積分球で測定した結果を示す。表4は、第2の発光素子を上記と同様、所定の積分球で測定した結果を示す。
【0104】
【表2】

【0105】
【表3】

【0106】
【表4】

【0107】
これにより所定の色調を有する液晶透過後の色表示範囲が広い発光装置を提供することができる。特に実施例1及び実施例2の発光装置(青紫色LEDと窒化物蛍光体とを発光させたもの)は、投入する電流量を変化させた場合でも色ずれがなく、所定の発光色を保持することができる。この点、3波長の発光素子を用いた場合、投入する電流量及び周囲温度等によって色ずれが発生するため、本発明は極めて有用である。
【0108】
ただし、この色調は第1の発光素子及び第2の発光素子に投入する電流量を変えることにより異なる発光色とすることができる。また、蛍光物質の使用量によっても異なる発光色とすることができる。
【0109】
液晶バックライト光源は、所定のフィルターを使用して、必要な波長の光のみ取り出すものである。図14は、一般的な液晶透過率を示す図である。これは青色、緑色、赤色、白色の各フィルターの液晶透過率を示す。所定の光を青色フィルターに透過させたとき、赤色領域の光等(約580nmより長波長側の光)はほとんど透過されず、460nm近傍の青色光が主として放出される。また、所定の光を緑色フィルターに透過させたとき、青紫色や赤色の光等(約460nmより短波長側及び約600nmより長波長側の光)はほとんど透過されず、530nm近傍の緑色光が主として放出される。青色フィルターの液晶透過率と緑色フィルターの液晶透過率とにおいて重なり合う部分(約470nmから約560nm)がある。例えば、青色LED(λp=460nm)とYAG蛍光体とを使用した場合、YAG蛍光体がブロードな発光スペクトルを有しており約500nmにも色を有する光を出す。この青色LEDとYAG蛍光体とに各色のフィルターを設けた液晶バックライト光源においては、青色、緑色、赤色の三原色の発光ピークは出力されないので、液晶透過後の色表示範囲が狭くなる。つまり、青色LEDとYAG蛍光体は、液晶透過率における各色のフィルターの重なり合い部分(「中間色」と呼ぶ、例えば、500nm付近)に発光色を持っているため、その重なり合い部分の光がフィルターを透過してしまい色表示範囲が狭くなる。これに対し、例えば本願発明の青色LEDと緑色LEDと赤色蛍光体は、液晶透過率における各色のフィルターの重なり合い部分(例えば、500nm付近)に発光色をほとんど持っていないため、青色LEDとYAG蛍光体を用いたときよりも、液晶透過後の色表示範囲を広くすることができる。液晶バックライト光源には、三原色の3つの発光素子を用いたものが液晶透過後の色表示範囲を拡げられるので使用されるが、赤色に発光する発光素子の温度特性は良好なものとは言えないため、色ずれが生じることがある。また、三原色の3つの発光素子を使用する場合は、発光素子の駆動制御が複雑となる。さらに演色性も悪い。これに対し、本発明は色ずれの極めて少ない、発光素子の駆動制御が容易な発光装置を提供することができる。
【0110】
<実施例3>
実施例3の発光装置は、第2の実施の形態に係る発光装置を用いる。
【0111】
第1の発光素子108aは、約460nmに第1の発光ピーク波長を持つGaN系の半導体発光素子を使用する。この第1の発光素子108aは青色に発光する。
【0112】
第2の発光素子108bは、約533nmに第2の発光ピーク波長を持つものを使用する。この第2の発光素子108bは緑色に発光する。
【0113】
蛍光物質140は、約650nmに発光ピーク波長を持つ(Ca,Sr)Si:Euの組成の窒化物蛍光体を使用する。さらに、黄色に発光する(Y,Gd)Al12:Ceの組成の希土類アルミン酸塩蛍光体を使用する。この希土類アルミン酸塩蛍光体は、第1の発光素子2aからの光により励起される。この窒化物蛍光体と希土類アルミン酸塩蛍光体とは、透光性樹脂4中にほぼ均一に混合して配置される。蛍光物質の分散度合いや比重により沈降する場合もある。
【0114】
実施例3の発光装置は、第1の発光素子108aからの青色光、第2の発光素子108bからの緑色光、窒化物蛍光体からの赤色光、希土類アルミン酸塩蛍光体からの黄色光のこれらの混合により所望の発光色を有する。この発光装置は赤味成分を有しているため高い演色性を有する。また、色ずれのほとんどない発光装置を提供することができる。
【0115】
<実施例4>
実施例4の発光装置は、第2の実施の形態に係る発光装置を用いる。
【0116】
第1の発光素子108aは、約380nmに第1の発光ピーク波長を持つGaN系の半導体発光素子を使用する。この第1の発光素子108aは紫外領域で発光するためほとんど視感できない。
【0117】
第2の発光素子108bは、約630nmに第2の発光ピーク波長を持つものを使用する。この第2の発光素子108bは赤色に発光する。
【0118】
蛍光物質140は、青色に発光する(Sr,Ca)(POCl:Euの組成のアルカリ土類ハロゲンアパタイト蛍光体、及び黄緑色に発光する(Y,Gd)(Al,Ga)12:Ceの組成の希土類アルミン酸塩蛍光体を使用する。このアルカリ土類ハロゲンアパタイト蛍光体は、第1の発光素子108aにより励起され青色に発光する。このアルカリ土類ハロゲンアパタイト蛍光体から放出される青色光は、希土類アルミン酸塩蛍光体を励起して黄緑色光が放出される。
【0119】
これによりアルカリ土類ハロゲンアパタイト蛍光体の青色光、アルミン酸塩蛍光物質の黄緑色光、第2の発光素子108bからの赤色光により白色に発光する発光装置を提供することができる。この発光装置は、第1の発光素子108aのピーク波長がずれた場合でも発光装置から放出される発光色はほとんど変化しないため、色ずれの少ない発光装置を提供することができる。
【0120】
<実施例5>
実施例5の発光装置は、第2の実施の形態に係る発光装置を用いる。
【0121】
第1の発光素子108aは、約380nmに第1の発光ピーク波長を持つGaN系の半導体発光素子を使用する。この第1の発光素子108aは紫外領域で発光するためほとんど視感できない。
【0122】
第2の発光素子108bは、約533nmに第2の発光ピーク波長を持つGaN系の半導体発光素子を使用する。この第2の発光素子108bは緑色に発光する。
【0123】
蛍光物質140は、青色に発光する(Sr,Ca)(POCl:Euの組成のアルカリ土類ハロゲンアパタイト蛍光体、及び赤色に発光するCaSi:Euの組成の窒化物蛍光体を使用する。窒化物蛍光体は、第1の発光素子108aからの光及びアルカリ土類ハロゲンアパタイト蛍光体からの光により励起され赤色光が放出される。
【0124】
これにより色ずれの少ない、演色性に優れた所定の発光装置を提供することができる。
【0125】
<実施例6>
実施例6の発光装置は、第1の実施の形態に係る発光装置を用いる。
【0126】
一方の凹部内に、第1の発光素子2aと、第1の蛍光物質6aを配置する。他方の凹部内に、第2の発光素子2bと、第2の蛍光物質6bを配置する。
【0127】
第1の発光素子2aは、約400nmに第1の発光ピーク波長を持つGaN系の半導体発光素子を使用する。この第1の発光素子2aは可視光の短波長領域で発光するためほとんど視感できない。第1の蛍光物質6aは、赤色に発光するCaSi:Euの組成の窒化物蛍光体を使用する。この窒化物蛍光体は、第1の発光素子2aからの光により励起され、効率よく赤色に発光する。
【0128】
第2の発光素子2bは、約460nmに第2の発光ピーク波長を持つGaN系の半導体発光素子を使用する。この第2の発光素子2bは青色に発光する。第2の蛍光物質6bは、黄緑色に発光する(Y,Gd)(Al,Ga)12:Ceの組成の希土類アルミン酸塩蛍光体を使用する。この希土類アルミン酸塩蛍光体は、第2の発光素子2bからの光により励起され、効率よく黄緑色に発光する。
【0129】
これにより色ずれの少ない、演色性に優れた所定の発光装置を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0130】
本発明の発光装置は、液晶のバックライト光源、照明器具、ディスプレイのバックライト光源、カメラのフラッシュライト、動画照明補助光源などに利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0131】
【図1】第1の実施の形態に係る発光装置を示す概略平面図である。
【図2】第1の実施の形態に係る発光装置を示す概略A−A断面図である。
【図3】第1の実施の形態に係る発光装置を示す概略B−B断面図である。
【図4】第1の実施の形態に係る発光装置の背面側を示す概略斜視図である。
【図5】第2の実施の形態に係るパッケージ成型体の模式的な斜視図である。
【図6】第2の実施の形態に係る半導体装置の模式的な上面図である。
【図7】第2の実施の形態に係るパッケージ成型体の模式的な断面図である。
【図8】第2の実施の形態に係るパッケージ成型体の模式的な背面図である。
【図9】窒化物蛍光体の励起スペクトルを示す図である。
【図10】実施例1に係る発光装置の青色LEDで窒化物蛍光体を励起させたときの発光スペクトルを示す図である。
【図11】実施例2に係る発光装置の青色LEDで窒化物蛍光体を励起させたときの発光スペクトルを示す図である。
【図12】緑色LEDを発光させたときの発光スペクトルを示す図である。
【図13】実施例1及び実施例2に係る発光装置の色調座標を示す図である。
【図14】一般的な液晶透過率を示す図である。
【符号の説明】
【0132】
1 パッケージ
1a 底面部
1b 側面部
1c 凹部
1d 凸部
1e 樹脂注入跡
2 発光素子
2a 第1の発光素子
2b 第2の発光素子
3 電極
3a マウント部
3b 裏面側電極部
4 透光性樹脂
5 ワイヤ
6 蛍光物質
10 発光装置
100 パッケージ成型体
101 第一の金属基体
102 第二の金属基体
103 第三の金属基体
104 壁部
105 成型部材
106a、106b 凹部を形成する内壁面
107 保護素子
108 発光素子
109 導電性ワイヤ
102a、102b、103a、103b、103c、102c ボンディング領域
111 第一の封止部材
112 第二の封止部材
113 成型樹脂の注入痕
120 第一の凹部
130 第二の凹部
140 蛍光物質
114、115 孔
200 半導体装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可視光の短波長領域に第1の発光ピーク波長を持つ第1の発光素子と、
該第1の発光素子からの光を波長変換する蛍光物質と、
該第1の発光ピーク波長よりも長波長側、かつ、前記蛍光物質の発光ピーク波長よりも短波長側に第2の発光ピーク波長を持つ第2の発光素子と、
を少なくとも有し、
該第1の発光素子からの光と、該蛍光物質からの光と、該第2の発光素子からの光と、が混合され外部に放出されることを特徴とする発光装置。
【請求項2】
紫外領域に第1の発光ピーク波長を持つ第1の発光素子と、
該第1の発光素子からの光を波長変換する蛍光物質と、
該第1の発光ピーク波長よりも長波長側に第2の発光ピーク波長を持つ第2の発光素子と、
を少なくとも有し、
該蛍光物質からの光と、該第2の発光素子からの光と、が混合され外部に放出されることを特徴とする発光装置。
【請求項3】
第1の発光ピーク波長を持つ第1の発光素子と、
該第1の発光素子からの光を波長変換する蛍光物質と、
該第1の発光ピーク波長よりも長波長側に第2の発光ピーク波長を持つ第2の発光素子と、
を少なくとも有し、
該第1の発光素子と該第2の発光素子とは、異なる発光色を有する窒化物系化合物半導体であり、
該第1の発光素子からの光と、該蛍光物質からの光と、該第2の発光素子からの光と、の少なくとも2種類が混合され外部に放出されることを特徴とする発光装置。
【請求項4】
前記蛍光物質は、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Luからなる群から選ばれる少なくとも1種以上の希土類元素により賦活される、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Znからなる群から選ばれる少なくとも1種以上の第II族元素と、C、Si、Ge、Sn、Ti、Zr、Hfからなる群から選ばれる少なくとも1種以上の第IV族元素と、Nと、を含む窒化物蛍光体であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の発光装置。
【請求項5】
前記蛍光物質は、第1の発光ピーク波長における光強度を100としたとき、第2の発光ピーク波長における光強度が80以下であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の発光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2006−73656(P2006−73656A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−253142(P2004−253142)
【出願日】平成16年8月31日(2004.8.31)
【出願人】(000226057)日亜化学工業株式会社 (993)
【Fターム(参考)】