説明

発光装置

【課題】 発光素子が実装されている基板上の複雑な三次元形状に対応したガラス封止部を、周辺の部材へ与えるダメージが少ない状態で、簡易に量産性良く形成する。
【解決手段】一対の電極を有する発光素子12と、発光素子が搭載される基板11と、基板に設けられ、発光素子の電極に電気的に接続される基板電極と、発光素子を封止したガラス封止部16aと、を有する発光装置30であって、ガラス封止部は、基板上で発光素子の周辺部に供給された粉体ガラスあるいはそれと他の材料との混合物からなる封止材料が融着されてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置に係り、特にガラス材料を用いて半導体発光素子を封止した構造の発光装置に関するもので、例えば白色発光ダイオードの製造に使用されるものである。
【背景技術】
【0002】
従来の発光装置は、リードフレームまたはプリント配線基板などの基板に発光素子が載置され、その発光素子を被覆するように透光性を有する封止体が形成されている。封止体には、通常、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂等の有機材料が用いられており、発光素子から放出される光が封止体を透過して空気中に放出されることになる。有機材料で発光素子を被覆する場合、有機材料が発光素子や外部からの熱や光により劣化することがあり、有機材料中の成分が、発光素子搭載基板や発光素子の電極などを変質させることもある。これにより発光装置の光学特性、電気特性、信頼性特性の低下を招く場合がある。
【0003】
一方、エポキシ樹脂等の有機材料を低融点ガラスに置き換えたチップ型発光装置が知られている(例えば、特許文献1乃至3参照)。このような低融点ガラスを封止材料に用いた発光装置を製造する際、低融点ガラスを融点以上に加熱して液状で供給する方法は、ガラスが液体から冷却されて固体となる場合に、その膨張率や収縮率の大きさで応力が発生し、クラックが発生したり、配線が切断されたり外れたりする問題があった。また、ガラスが液体から冷却されて固体となる場合に、その膨張率や収縮率の大きさで応力が発生し、クラックが発生したり、配線が切断されたり、発光素子が基板から外れたりする問題があった。また、低融点ガラスは、着色されているので、発光素子から出射された光が低融点ガラスの着色部分で一部吸収され、光の取り出し効率が悪い。
【0004】
他方、特許文献4では、板状の低融点ガラスを固体素子搭載基板に平行にセットし、板状のガラスをホットプレス加工することによってガラス封止部を形成し、耐湿性、透明性、耐熱性に優れた固体素子デバイスを実現する点が提案されている。
【0005】
しかし、低融点ガラスを固体バルク状態の板材や仮成形固片状態の塊として供給し、加熱プレスによりガラスを軟化させて成形する方式は、発光素子を含む封止部分にワイヤー配線等の変形し易い部材があると、変形してしまい、必要な機能を果たさなくなる問題があった。特に、複雑な三次元形状にガラスを充填させる場合、例えば深い凹部内にガラスを充填させる場合には、軟化したガラス材の変形率が大きくなるので、周辺の部材に大きな応力がかかり、破損したりする問題があった。また、蛍光体を発光素子周辺に配置する場合、蛍光体を分散させたガラスを作成するか、または、封止前に蛍光体を発光素子周辺に配置する必要があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−177129号公報
【特許文献2】特開2002−203989号公報
【特許文献3】特開2004−200531号公報
【特許文献4】特開2006−80317号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は前記した従来の問題点を解決すべくなされたもので、発光素子が実装されている基板上にガラス封止部を形成する際、複雑な三次元形状に対応したガラス封止部であっても、周辺の部材へ与えるダメージが少ない状態で、簡易に量産性良く形成し得る発光装置の製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
また、本発明は、発光素子封止用のガラス封止部が複雑な三次元形状であっても、あるいは、発光素子が基板上にフェイスアップ実装されて発光素子の上面電極から基板電極にループ状のワイヤ配線が接続されている場合であっても、周辺の部材へ与えるダメージが少ない状態で実現可能であり、耐熱性、耐光性に優れ、信頼性の高い発光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の発光装置の製造方法は、基板上に実装された発光素子がガラスにより封止された発光装置の製造方法であって、前記基板上の発光素子の周辺部に、粉体ガラスあるいはそれと他の材料との混合物からなる封止材料を供給する第1の工程と、前記粉体ガラスのガラス軟化点以上となるように加熱し、プレス成形を行って前記粉体ガラスを融着させて発光素子を封止させる第2の工程と、を具備することを特徴とする。前記加熱は、前記粉体ガラスの融点より低い温度となるように加熱することが好ましい。
【0010】
本発明の発光装置の製造方法は、上面に発光素子が実装された基板を下金型内にセットするとともに、前記基板上に封止対象であるチップ実装部分に対応して窓部が開けられた形状の中子を載置する工程と、前記中子の窓部内に、粉体ガラスあるいはそれと他の材料との混合物からなる封止材料を供給する工程と、前記封止材料を前記粉体ガラスのガラス転移温度以上で、かつ、前記粉体ガラスの融点より低い温度となるように加熱して前記粉体ガラスを融着させ、上金型を用いて前記封止材料を加圧してガラス封止部を形成する工程と、前記封止材料を冷却する工程と、前記中子およびガラス封止済み基板を下金型から取り外した後、所望の切断位置でガラス封止部および基板のダイシングを行い、所望の発光装置に分割する工程と、を具備する。
【0011】
本発明の発光装置の製造方法は、上面に発光素子が実装された基板を下金型内にセットする工程と、前記下金型内に、粉体ガラスあるいはそれと他の材料との混合物からなる封止材料を供給する工程と、前記封止材料を前記粉体ガラスのガラス転移温度以上で、かつ、前記粉体ガラスの融点より低い温度となるように加熱して前記粉体ガラスを融着させ、上金型を用いて前記封止材料を加圧してガラス封止部を形成する工程と、前記ガラス封止部を冷却する工程と、前記ガラス封止済み基板を下金型から取り外した後、所望の切断位置でガラス封止部および基板のダイシングを行い、所望の発光装置に分割する工程と、を具備する。
【0012】
本発明方法で使用する粉体ガラスは、SiO2 、BaO、TiO2 、Al2 3 、P2 5 、PbO、B2 3 、ZnO、Nb2 5 、Na2 O、K2 O、Sb2 5 、CaO、Li2 O、WO3 、Gd2 3 、Bi2 3 、ZrO2 、SrO、MgO、La2 3 、Y2 3 、AgO、LiF、NaF、KF、AlF3 、MgF2 、CaF2 、SrF2 、BaF2 、YF3 、LaF3 、SnF2 、ZnF2 のいずれかを含み、ガラス転移温度Tgが200℃〜600℃、軟化点/屈伏点が250℃〜700℃、かつ、融点が200℃〜800℃であり、線膨張係数が3〜15ppm 、平均粒径が10nm〜200μmである。
【0013】
本発明の発光装置は、一対の電極を有する発光素子と、前記発光素子が搭載される基板と、前記基板に設けられ、前記発光素子の電極に電気的に接続される基板電極と、前記発光素子を封止したガラス封止部と、を有する発光装置であって、前記ガラス封止部は、前記基板上で前記発光素子の周辺部に供給された粉体ガラスあるいはそれと他の材料との混合物からなる封止材料が融着されてなることを特徴とする。
【0014】
本発明で使用する粉体ガラスは、SiO2 、BaO、TiO2 、Al2 3 、P2 5 、PbO、B2 3 、ZnO、Nb2 5 、Na2 O、K2 O、Sb2 5 、CaO、Li2 O、WO3 、Gd2 3 、Bi2 3 、ZrO2 、SrO、MgO、La2 3 、Y2 3 、AgO、LiF、NaF、KF、AlF3 、MgF2 、CaF2 、SrF2 、BaF2 、YF3 、LaF3 、SnF2 、ZnF2 のいずれかを含む。前記粉体ガラスと他の材料との混合物は、粉体ガラスと粉体フィラーの混合物、あるいは、粉体ガラスと粉末状蛍光体の混合物、粉体ガラスと粉末状蛍光体と粉体フィラーの混合物である。
【発明の効果】
【0015】
本発明の発光装置の製造方法によれば、発光素子が実装されている基板上にガラス封止部を形成する際、複雑な三次元形状に対応したガラス封止部であっても、洩れなく封止材料を充填させることが可能となり、ガラス封止部を簡易に量産性良く形成することが可能になる。この際、封止材料を粉体で供給するので、加熱プレス時の成形圧力を低く設定でき、周辺の部材へ与えるダメージを少なくすることができる。また、粉体ガラスの融点より低い温度となるように加熱することにより、粉体ガラスは液状にならず、ガラス封止部の膨張率を問題とすることなくガラス封止部を基板に容易に固定することができる。
【0016】
また、本発明の発光装置の製造方法によれば、一般的に熱膨張率の大きい低融点ガラスの粉体ガラスを用いたとしても、封止材料に粉体フィラーを混入することによってバルクとしての膨張率を低減でき、封止体中、封止体と被封止物界面のクラック抑制と応力を低減することができ、厳しい環境条件下での使用に耐え得る発光装置を実現できる。
【0017】
また、本発明の発光装置の製造方法によれば、封止材料に粉末状態の蛍光体を混合することにより、封止材料中に蛍光体を容易に供給することができ、封止材料中の蛍光体の比率を容易に調整することができる。この際、発光素子として青色発光素子、蛍光体としてYAG蛍光体を用いることにより、白色発光装置を安価に実現することができる。
【0018】
また、本発明の発光装置の製造方法によれば、ガラス封止部に例えばレンズ状の所望の形状を転写させることができる。また、本発明の発光装置の製造方法によれば、二層構造のガラス封止部を実現することができ、さらに、このガラス封止部に所望の形状を転写させることができる。
【0019】
本発明の発光装置によれば、発光素子封止用のガラス封止部が複雑な三次元形状であっても、あるいは、発光素子が基板上にフェイスアップ実装されて発光素子の上面電極から基板電極にループ状のワイヤ配線が接続されている場合であっても、周辺の部材へ与えるダメージが少ない状態で実現可能であり、耐熱性、耐光性、信頼性を高めることができる。
【0020】
また、本発明の発光装置によれば、ガラス封止部にフィラーを混入することによってバルクとしての膨張率を低減させることができる。また、本発明の発光装置によれば、ガラス封止部に蛍光体を混入させることによって、蛍光体を発光素子周辺に配置し、光の取り出し効率を高めることが容易になる。この際、発光素子として青色発光素子、蛍光体としてYAG蛍光体を用いることにより、白色発光装置を安価に実現することができる。
【0021】
また、本発明の発光装置によれば、発光素子を基板上にフェイスダウン実装した構造に適用した場合に、発光素子と前記基板との間の間隙部に封止材料を存在させることができる。また、本発明の発光装置によれば、発光素子を基板上にフェイスアップ実装し、発光素子の上面電極から基板電極にループ状のワイヤ配線を接続した構造にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の発光装置の製造方法の第1の実施形態に係る工程の一部を示す側断面図。
【図2】図1に示した工程に続く工程を示す側断面図。
【図3】図2に示した工程に続く工程を示す側断面図。
【図4】本発明に係る発光装置であって発光素子が基板上にフェイスダウン実装された場合の複数例を示す側断面図。
【図5】本発明に係る発光装置であって発光素子が基板上にフェイスアップ実装された場合の複数例を示す側断面図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して本発明の実施形態および実施例を説明する。この説明に際して、全図にわたり共通する部分には共通する参照符号を付す。但し、本発明は、この実施形態および実施例に限定されない。
【0024】
<第1の実施形態>
図1(a)乃至図3(d)は、本発明の発光装置の製造方法の第1の実施形態について工程順に概要を示す側断面図である。図4(a)乃至(j)あるいは図5(a)乃至(j)は、本発明に係る実施形態の製造工程を経て個々に分割して得られた発光装置の複数例を概略的に示す断面図である。ここで、図4(a)乃至(j)はチップ状の発光素子(LED)が基板上にフェイスダウン実装されたもの、図5(a)乃至(j)はLEDが基板上にフェイスアップ実装されたものを示している。なお、図示の便宜上、基板に形成されている基板電極の一部は図示を省略している。
【0025】
(第1の実施形態に係る製造方法)
まず、図1(a)に示すように、アルミナ(Al2 3 )あるいは窒化アルミ(AlN)等を用いた基板11上にLED12が例えば行列状の配置で複数個実装された実装済み基板10を形成する。この際、各LEDは、例えばチップの同一面側に正負一対の電極を有し、基板上にフェイスダウン実装またはフェイスアップ実装されている。
【0026】
この実装済み基板上の各LEDは一括してガラス封止される対象となるもので、図1(b)に示すように、実装済み基板10を下金型13内の底面上にセットした後、図1(c)に示すように、中子14を下金型13内にセットする。この中子14は、封止対象であるチップ実装部分に対応して窓部15が開けられた形状を有する。
【0027】
一方、所定の性質を有する粉体ガラスを主成分とする封止材料を準備する。この粉体ガラスの熱特性は、ガラス転移温度Tgが200℃〜600℃、軟化点/屈伏点が250℃〜700℃、かつ、融点が200℃〜800℃であり、線膨張係数が3〜15ppm であり、平均粒径が10nm〜200μmである。上記粉体ガラスは、SiO2 、BaO、TiO2 、Al2 3 、P2 5 、PbO、B2 3 、ZnO、Nb2 5 、Na2 O、K2 O、Sb2 5 、CaO、Li2 O、WO3 、Gd2 3 、Bi2 3 、ZrO2 、SrO、MgO、La2 3 、Y2 3 、AgO、LiF、NaF、KF、AlF3 、MgF2 、CaF2 、SrF2 、BaF2 、YF3 、LaF3 、SnF2 、ZnF2 のいずれかを含む。粉体ガラスの組成の具体例は後述する。
【0028】
実際に使用する封止材料として、粉体ガラスのみに限らず、粉末状蛍光体または粉体フィラーまたはその両方を粉体ガラスに混合してもよい。即ち、粉体ガラスに粉体フィラーを混合して分散させた混合物、あるいは、粉体ガラスに粉末状蛍光体を混合して分散させた混合物、あるいは、粉体ガラスに粉末状蛍光体と粉体フィラーを混合して分散させた混合物を用いてもよい。
【0029】
ここで、粉末状蛍光体は、粉体ガラスと同様に平均粒径が10nm〜200μmのものであり、例えばYAGあるいは窒化物蛍光体である。また、粉末フィラーは、SiO2 、TiO2 、Al2 3 、ZnO、ZrO2 、TaO2 のいずれかであり、平均粒径が5nm〜100μmのものである。
【0030】
次に、図1(d)に示すように、中子14の窓部15内に、例えば粉末状蛍光体が混合された封止材料16を供給してLED12の周辺部に十分に充填する。
【0031】
次に、図2(a)に示すように、封止材料に対して加熱とプレス成形を行い、粉体ガラスを融着させてガラス封止部16aを形成する。この際、例えば石英チャンバー内に下金型13および上金型17を配設し、石英チャンバーの周囲に配設したヒーターの温度を調節することによって、粉体ガラスの軟化温度以上となるように加熱し、上金型17により加圧成形(加熱圧縮成形あるいは真空加熱圧縮成形)してガラス封止部16aを形成する。このガラス封止部16aは、軟化状態の時に基板に押圧されており、冷却により固化すると、基板に固定される。
【0032】
このように粉体ガラスをガラス転移温度以上に加熱することで、下金型内の粉体ガラスが軟化状態になり、また、粉体ガラスが融点よりも低い温度に保持されているので液状になっておらず、ガラス封止部の膨張率を問題とすることなくガラス封止部と基板との固定を容易に行うことができる。
【0033】
なお、ガラス封止部16aの表面は、図4(a)あるいは図5(a)に示すような平面に限らず、球面レンズ、非球面レンズ、フレネルレンズ、凸レンズ、凹レンズ、ナローレンズ、ワイドレンズ等の任意の形状を持たせることができる。そのためには、上金型17の内面に、所望の三次元または二次元形状の型枠を持たせておき、例えば図4(b)あるいは図5(b)に示すように、上金型内面の型枠の形状をガラス封止部16aに転写させることができる。
【0034】
次に、図2(b)に示すように、中子14を取り外した後、ガラス封止部16aの外側を再び封止(アウターモールド)して二層構造のガラス封止部を形成するために、図2(c)に示すように、引き続き、粉体ガラスからなる封止材料18を下金型13内に供給する。そして、図3(a)に示すように、上金型19を用い、下金型13内の封止材料18に対して前述したような加熱プレスを行って外側のガラス封止部18aを形成する。この際、上金型19の内面に任意の三次元または二次元形状を持たせ、例えば図4(b)あるいは図5(b)に示すように、外側のガラス封止部18aに上金型内面の形状を転写させることができる。
【0035】
前記したように加熱プレスを行った後、ガラス封止部18aを冷却する。この際、上金型と下金型とにより封止材料および基板を押圧した状態で冷却を行っても良いが、封止材料が半固化された状態で下金型若しくは上金型を取り外し、冷却を行うことも可能である。また、加熱と冷却を1段階で行うことも可能であるが、数段階に分けて加熱を行い、数段階に分けて冷却を行うことが好ましい。これにより、封止材料を冷却する際の割れを防止することができるからである。
【0036】
次に、図3(b)に示すように下金型13からガラス封止済み基板20を取り出した後、必要に応じて、図3(c)に示すように所望の切断位置でガラス封止部および基板11のダイシングを行い、複数の発光装置に分割する。この際、LEDを避けたダイシングライン部でガラス封止済み基板20をダイシング・ブレード21により切断し、例えば図3(d)に示すように、LEDを1個単位の固片に分割した発光装置30、あるいは、実装済み基板上のLED配列の各列間で基板を切断し、LEDを複数個単位のモジュールに分割した発光装置を得るようにしてもよい。この際、ダイシング・ブレード21を用いることなく、基板に予めスナップラインを形成しておき、応力を加えてスナップラインのブレーキングにより分割してもよい。あるいは、ダイシング・ブレード21を用いて部分的に切断した後、スナップラインのブレーキングにより分割してもよい。この後、必要に応じて、ガラス封止部18aの側面および/または上面を研磨し、凹凸のない平坦面に形成することもできる。
【0037】
上記した第1実施形態による発光装置の製造方法によれば、発光素子が実装されている基板上に複雑な三次元形状に対応したガラス封止部を形成する場合であっても、粉体ガラスを主成分とする封止材料を粉体状態で供給し、洩れなく封止材料を充填させることが可能となる。そして、加熱プレスを行うことにより、複雑な形状に対応したガラス封止部を簡易に、かつ、量産性良く形成することが可能になる。
【0038】
この際、発光素子が基板上にフェイスダウン実装されている場合には、発光素子と基板との間の間隙部に封止材料が入り込んだ状態になる。このように間隙部に存在している封止材料により、発光素子から基板への放熱効果が向上し、また、封止材料と基板との接着効果も向上し、また、間隙部に空気層が存在している場合よりも発光素子から基板方向への光の取り出し効率も向上する。特に、ガラス基板を用いた場合に基板方向への光の取り出し効率は大きく向上する。
【0039】
また、封止材料を粉体で供給して加熱プレスを行うので、成形圧力を低く設定でき、周辺の部材(例えば発光素子と基板電極とを接続するボンディングワイヤーなど)へ与えるダメージを少なくすることができる。また、一般的に熱膨張率の大きい低融点ガラスの粉体ガラスを用いたとしても、封止材料に粉体フィラーを混入することによってバルクとしての膨張率を低減でき、封止体中、封止体と被封止物界面のクラック抑制と応力を低減することができ、厳しい環境条件下での使用に耐え得る発光装置を実現できる。
【0040】
また、封止材料に粉末状態の蛍光体を混合することにより、封止材料中に蛍光体を容易に供給することができ、封止材料中の蛍光体の比率を容易に調整することができる。この際、発光素子として青色発光素子を用い、粉体ガラスに例えば粉末状のYAG(YAl12:Ce系(Yの一部をGd等、Alの一部をGa等で置換してもよい。))蛍光体を混合することで、白色系に発光する発光装置を安価に量産性よく実現することができる。
【0041】
封止材料は、粉体ガラスのほか、粉末状蛍光体、粉体フィラーに限らず、顔料、光拡散部材、セラミックス粉の少なくともいずれか1つを含有することにより、用途に応じた発光装置を提供することができる。即ち、光拡散部材を粉体ガラスに混合することにより色むらの少ない均一に発光する発光装置を提供することができる。また、発光素子の近傍に蛍光物質等を配置することができるので、蛍光物質が少量で済み、経済的である。また、封止材料を溶融して固着するので、蛍光物質等の分散性を高めることができる。
【0042】
なお、前記した最初のガラス封止工程によって形成したガラス封止部の外側を再び封止する際、封止材料として、粉体ガラスのみに限らず、粉体ガラスと粉末フィラーとの混合物などを用いてもよい。また、再び封止する際、例えば封止部分が浅い場合には、板状のガラスを用いてもよい。また、最初のガラス封止工程によって従来の樹脂封止部よりも高い信頼性を有する封止部が得られるので、外側のガラス封止部を形成する際、場合によっては、エポキシ樹脂やシリコ−ン樹脂などの有機材料を用い、それを硬化させて外側の封止部を形成することも可能である。
【0043】
さらに、LEDをガラス封止部により直接に被覆することに代えて、LEDを被覆部材(図示せず)で被覆した後にガラス封止部により被覆することにより、LEDを熱や埃等から保護することができる。この場合、被覆部材は粉末状の蛍光物質、セラミックス粉などを用いることができる。また、所定の液体、ゾル、ゲルなどに蛍光物質等を混合しておくこともできる。例えば被覆部材に粉末状の蛍光物質を用いる場合、水や有機溶剤に混合した蛍光物質をLEDの周囲に固着させることができる。粉体ガラスを軟化させるために温度を上げると、水や有機溶剤が揮発する。このようにすれば、LEDは、直接的にガラス封止部に被覆されておらず、被覆部材を介してガラス封止部に被覆されているので、蛍光物質の使用量を少なくすることができ、配向特性を向上することができる。なお、被覆部材は、LEDを被覆するだけでなく、基板電極も被覆することができ、発光素子の周囲に容易に配置することができる。
【0044】
さらに、ガラス封止部の外表面に被膜が固着されていることが好ましい。これによりガラス封止部の変色を低減し、また、被膜に所定の機能を持たせることもできる。例えば、所定の波長の光を吸収し、特定の波長の光を外部に放出するフィルター作用を有する被膜などである。また、ガラス封止部の表面にガラスレンズあるいは樹脂レンズを貼り付けることによって形成してもよい。
【0045】
(第1の実施形態に係る発光装置)
図4(a)、(b)あるいは図5(a)、(b)に示す発光装置は、主として、LED12、基板11、基板電極11a、二層構造のガラス封止部16a,18aから構成される。即ち、例えば同一面側に正負一対の電極(p側電極、n側電極)を有するLED12と、このLED12が上面に搭載された基板11と、この基板11に設けられ、LED12の電極に電気的に接続される基板電極11aと、LED12を直接に封止したガラス封止部16aとを有する。
【0046】
図4(a)、(b)に示すようにフェイスダウン実装された発光装置は、所定の形状を有する基板11の上面に所定の基板電極が設けられており、LED12の一対の電極がそれぞれAuバンプ41または半田ボールを介して基板電極11aに接合(フリップチップ接続)するように実装される。なお、フェイスダウン実装に際して、上記例に限らず、配線基板上のパターン配線部とLEDのパッド電極との間が半田を用いて超音波接合された構造、金、銀、パラジウム、ロジウム等の導電性ペースト、異方性導電ペースト等を用いて接合された構造など、種々の形態を採用できる。
【0047】
図5(a)、(b)に示すようにフェイスアップ実装された発光装置は、所定の形状を有する基板11の上面に所定のパターン配線部11bが設けられており、LED12の底面がAuSn、AgSn等の金属ロウ材51を用いて基板にダイボンディングされ、LED上面の一対の電極と基板のパターン配線部11bとがAu、Ag、Al、W、Pt等からなるループ状のボンディングワイヤー52を介して接続されている。なお、フェイスアップ実装における配線基板とLEDとの接続手段は上記例に限らず、無機接着剤、金属接合など種々の形態を採用できる。
【0048】
内側のガラス封止部16aは、基板上でLED12の周辺部に供給された所定の性質を有する粉体ガラスを主成分とする封止材料が加熱・加圧によって融着されてなり、LED12を直接に被覆している。また、二層構造のガラス封止部16a,18aは、押圧により基板11に固定されている。これは、ガラスと金属との固定力よりもガラスとセラミックスとの固定力の方が強いからである。
【0049】
二層構造のガラス封止部16a,18aは、例えば図4(b)、あるいは図5(b)に示すように所望の形状を有し、LED12からの光を透過するとともに、LED12を外部からの水や埃等から保護する。基板11および外側のガラス封止部18aは、封止後にそれぞれ切断あるいは分割された端面を有し、外側のガラス封止部18aは、必要に応じて端面、上面の少なくとも一方が研磨される場合がある。
【0050】
上記した構造の発光装置によれば、ガラス封止部16a,18aが複雑な三次元形状であったとしても、周辺の部材へ与えるダメージが少ない状態で形成することが容易になるので、耐熱性、耐光性、信頼性を高めることができる。また、ガラス封止部16aに蛍光体を混入させる場合には、蛍光体を発光素子周辺に配置することが容易になる。また、フェイスアップ実装の場合には、封止材料中の粉体ガラスの材質を変更することにより、ガラスを押圧してもワイヤー52が切断されることなくガラスを基板に固定することが可能である。
【0051】
以下、前記した各構成要素について詳述する。
【0052】
<発光素子>
発光素子12は、基板上にGaAlN、ZnS、ZnSe、SiC、GaP、GaAlAs、AlN、InN、AlInGaP、InGaN、GaN、AlInGaN等の半導体を発光層として形成させたものが用いられる。半導体の構造としては、MIS接合、PIN接合やPN接合を有したホモ構造、ヘテロ構造あるいはダブルへテロ構成のものが挙げられる。半導体層の材料やその混晶度によって発光波長を紫外光から赤外光まで種々選択することができる。発光層は、量子効果が生ずる薄膜とした単一量子井戸構造や多重量子井戸構造としても良い。
【0053】
屋外などの使用を考慮する場合、高輝度な発光素子を形成可能な半導体材料として窒化ガリウム系化合物半導体を用いることが好ましく、また、赤色ではガリウム・アルミニウム・砒素系の半導体やアルミニウム・インジュウム・ガリウム・燐系の半導体を用いることが好ましいが、用途によって種々利用することもできる。
【0054】
窒化ガリウム系化合物半導体を使用した場合、基板にはサファイヤ、スピネル、SiC、Si、ZnOやGaN等の材料が用いられる。結晶性の良い窒化ガリウムを量産性良く形成させるためにはサファイヤ基板を用いることが好ましい。発光素子はフェイスダウンで用いるため、基板は透光性であることを要する。窒化物系化合物半導体を用いた発光素子を示す。サファイヤ基板上にGaN、AlN等のバッファー層を形成する。その上にN或いはP型のGaNである第1のコンタクト層、量子効果を有するInGaN薄膜である活性層、P或いはN型のAlGaNであるクラッド層、P或いはN型のGaNである第2のコンタクト層を順に形成した構成とすることができる。窒化ガリウム系化合物半導体は、不純物をドープしない状態でN型導電性を示す。なお、発光効率を向上させる等所望のN型窒化ガリウム半導体を形成させる場合は、N型ドーパントとしてSi、Ge、Se、Te、C等を適宜導入することが好ましい。
【0055】
一方、P型窒化ガリウム半導体を形成させる場合は、P型ドーパンドであるZn、Mg、Be、Ca、Sr、Ba等をドープさせる。窒化ガリウム系半導体は、P型ドーパントをドープしただけではP型化しにくいためP型ドーパント導入後に、炉による加熱、低電子線照射やプラズマ照射等によりアニールすることでP型化させる必要がある。こうして形成された半導体ウエハーを部分的にエッチングなどさせ正負の各電極を形成させる。その後、半導体ウエハーを所望の大きさに切断することによって発光素子を形成することができる。
【0056】
発光素子は、不純物濃度1017〜1020/cm3 で形成されるn型コンタクト層のシート抵抗RnΩ/□と、透光性p電極のシート抵抗RpΩ/□とが、Rp≧Rnの関係となるように調節されていることが好ましい。発光素子として形成した後にRnを測定するのは難しく、RpとRnとの関係を知るのは実質上不可能であるが、発光時の光強度分布の状態からどのようなRpとRnとの関係になっているのかを知ることは可能である。
【0057】
n型コンタクト層は、例えば膜厚3〜10μm、より好ましくは4〜6μmに形成されると好ましく、そのシート抵抗は10〜15Ω/□と見積もられることから、このときのRpは前記シート抵抗値以上のシート抵抗値を有するように薄膜に形成するとよい。また、透光性p電極は、膜厚が150μm以下の薄膜で形成されていてもよい。また、p電極は金属以外のITO、ZnOも使用することができる。ここで透光性p電極の代わりに、メッシュ状電極などの複数の光取り出し用開口部を備えた電極形態としてもよい。
【0058】
透光性p側電極とn型コンタクト層とがRp≧Rnの関係である場合、前記透光性p電極上に接して延長伝導部を有するp側台座電極を設けると、さらなる外部量子効率の向上を図ることができる。延長伝導部の形状および方向に制限はなく、延長伝導部が衛線上である場合、光を遮る面積が減るので好ましいが、メッシュ状でもよい。また、形状は、直線状以外に、曲線状、格子状、枝状、鉤状でもよい。この場合、p側台座電極の総面積に比例して遮光効果が増大するので、遮光効果が発光増強効果を上回らないように延長導電部の線幅および長さを設計することが好ましい。
【0059】
透光性p電極が、金および白金族元素の群から選択された1種と、少なくとも1種の他の元素とから成る多層膜または合金で形成される場合には、含有されている金または白金族元素の含有量により透光性p電極のシート抵抗の調整をすると安定性および再現性が向上される。金または金属元素は、半導体発光素子の波長領域における吸収係数が高いので、透光性p電極に含まれる金または白金族元素の量は少ないほど透過性がよくなる。
【0060】
発光素子は、適宜に複数個用いることができ、その組み合わせによって種々の色調を実現することができる。例えば、三原色となるように青色系、緑色系、赤色系が発光可能な発光素子を用いる。なお、表示装置用のフルカラー発光装置として利用するためには赤色系の発光波長が610nmから700nm、緑色系の発光波長が495nmから565nm、青色系の発光波長が430nmから490nmであることが好ましい。また、白色系の発光装置は、青色の発光素子と、黄色に発光する蛍光物質とを用いる。蛍光物質は、発光素子からの光を吸収して波長変換を行い黄色に発光する。この蛍光物質からの光と、発光素子からの光とが混合され、混色光となり白色系に発光する。また、複数個の発光素子の配列は用途、製造工程等により適宜変更する。
【0061】
発光素子のp側電極は、直線状、曲線状、ひげ状、櫛状、網目状等の形状を成す。p側電極はAu、Au―Sn等の金属や、金属以外のITO、ZnOも使用することができる。また透光性p側電極の代わりに、メッシュ状電極などの複数の光取り出し用開口部を備えた電極形態としてもよい。発光素子の大きさは□1mmサイズが実装可能で、□600μm、□320μmサイズ等のものも実装可能である。
【0062】
<基板>
基板11は、所定の配線パターンを有する基板電極を設けており、発光素子の電極と基板電極とを電気的に接続して発光素子を載置している。基板は、粉体ガラスを加熱して軟化状態にする温度で変質しない物質であればよい。例えば、アルミナ(Al2 3 )、窒化アルミ(AlN)等の金属酸化物、金属窒化物からなる基板、ガラスエポキシ基板、ガラス基板、Ni,Cr,Mo,Fe等を含む低膨脹金属基板等である。そのうち、耐熱性、耐光性に優れたセラミックス基板が好ましい。
【0063】
基板は、所定の厚さを有する平板に所定の位置にスルーホールを設け、そのスルーホールに導電性の部材を配置することもできる。例えば略直方体の形状をなすセラミックスの基板の上面から裏面にかけて四隅にスルーホールを設ける。さらに、向かい合う二辺にスルーホールを設け、基板の上面から裏面にかけて導電性部材を設ける。基板の上面は、所定の配線パターンを形成し、スルーホールの導電性の部材と電気的に接続している。また、基板の裏面は、短絡しない程度に広面積の導電性の部材を配置し、スルーホールの導電性の部材と電気的に接続しており、これらの導電性の部材を基板電極とする。これにより、セラミックスの基板の裏面側と導通をとることができる。基板に設けられる基板電極は、発光素子のn側電極とp側電極とを電気的に接続する少なくとも一対の導電性の部材である。基板電極の配線パターンは、金、銀、銅、ニッケル、アルミニウムなどの金属またはITOのように電気伝導率が高く、反射効率の高い部材を使用することが好ましい。発光素子からの光を基板電極で反射させ、正面への発光効率を高めるためである。基板電極の材質は発光素子の発光波長との関係で選択することが好ましい。ある波長域では反射率が高いが、異なる波長域では反射率が低い場合もあるからである。基板電極は基板の上面の大部分を占めることもできるが、基板へのガラスの固定力を高めるためおよび配線パターンの絶縁性を取るため、基板の上面積の半分以下とすることが好ましい。
【0064】
例えば、セラミックスを用いた基板は、所定の形状を形成した後、焼成を行い、基板を形成する。基板はセラミックスグリーンシートを1枚若しくは複数枚使用する。焼成前のグリーンシート段階においてセラミックスの基板は種々の形状をとることができる。セラミックスの基板内の配線パターンは、タングステンやモリブデンなど高融点金属を樹脂バインダーに含有させたペースト状の材料から形成される。スクリーン印刷などの方法により、ペースト状の材料グリーンシートに設けたスルーホールを介して所望の形状とし、セラミックスの焼成によって導体の配線パターンとなる。このようなグリーンシートを積層させた後、焼結させることによってセラミックスの基板とすることができる。
【0065】
基板に用いるセラミックス材料は、Al2 3 、AlN、SiC、SiO2 、ZrO2 、SiNなどが好ましい。特に、原料粉末の90重量%〜96重量%がアルミナであり、焼結助剤として粘度、タルク、マグネシア、カルシアおよびシリカ等が4重量%〜10重量%添加され1500℃から1700℃の温度範囲で焼結させたセラミックスや原料粉末の40重量%〜60重量%がアルミナで焼結助剤として60重量%〜40重量%の硼珪酸ガラス、コージュライト、フォルステライト、ムライトなどが添加され800℃〜1200℃の温度範囲で焼結させたセラミックス等が挙げられる。これらのセラミックス材料にTiO2 、TiNなどを添加しておくこともできる。また、Cr2 3 、MnO2 、Fe2 3 などをグリーンシート自体に含有させることによって暗色系にさせることもできる。
【0066】
基板の厚さは0.3mmから3mmが好ましいが、任意のものを使用することができる。基板は、略長方形の平面を持つものや、略正方形の平面を持つもの、略多角形の平面を持つものなどを使用することができる。個片化された基板は、長辺が2mmから5mm、短辺が1mmから3mmの平面を持つものを製造できるほか、所定の大きさのものも製造できる。
【0067】
(基板電極)
セラミックスパッケージの外側の底面および側面に電極を設ける。この電極は外部電極と電気的接続をとるためのものである。また電極は、セラミックスパッケージの凹部内の配線パターンと電気的に接続されている。この接続は、グリーンシートを積層、焼成した後、載置部に貫通孔を設け、該貫通孔を導電性部材で埋めるなどして載置部の上面とセラミックスパッケージの底面との電気的接続をとっている。
【0068】
セラミックスパッケージに一対のカソード電極とアノード電極とを設ける。カソード電極は、セラミックスパッケージの外側の底面側およびセラミックスパッケージの外側の側面側、セラミックスパッケージの外側の平面側まで設けられている。以下、カソード電極で説明するが、アノード電極も同様の形状を成している。
【0069】
載置部に対して平行方向の断面形状において、セラミックスパッケージの外側の側面側のカソード電極の断面形状は、カソード電極と導通をとる外部電極部分の形状に略符合する形状を成していることが好ましい。例えば、セラミックスパッケージの外側の側面側の電極の断面形状は平坦部分を持つC型を成していることが好ましい。
【0070】
カソード電極は発光正面側まで電極部分が延びている形状とすることもできる。カソード電極の底面は、対向する側面部を連結するように設けている。このカソード電極の面積を広くすることで、セラミックスパッケージから漏れる光を反射等させ、発光正面側に放出させることができる。特にカソード電極の底面およびアノード電極の底面の面積は、セラミックスパッケージの全底面積の55%被覆していることが好ましい。より好ましくは65%以上である。カソード電極とアノード電極とを絶縁するだけで良いからである。また、電極を広面積にすることにより放熱性を高めることができる。
【0071】
金属部材である電極は、鉄入り銅等の高熱伝導体を用いて構成することができる。また、電極の表面に銀やアルミニウム、ニッケル、銅、金等の金属メッキを施すこともできる。電極の表面は反射率を向上させるために平滑にすることが好ましい。
【0072】
<バンプ>
発光素子のn側電極とp側電極とは、バンプを介して基板電極と電気的に接合する。バンプの材質は導電性である。また、粉体ガラスを加熱して軟化状態にする際にバンプ等の金属が軟化して短絡しないものを用いる。例えば、Au−Sn、Ag、Cu、Pb等の金属および合金を用いることができる場合もあるが、好ましくはAuである。Auの融点は1064℃である。金バンプは粉体ガラスを加熱して軟化状態にする温度では軟化せず、発光素子の電極と基板電極との短絡は生じない。バンプは、通常100から300μm径のボールのものである。
【0073】
(粉体ガラス) 粉体ガラスの一例は、P2 5 を56〜63wt%、Al2 3 を5〜13wt%、ZnOを21〜41wt%含み、さらに、B2 3 、Na2 O、K2 O、Li2 O、MgO、WO3 、Gd2 3 、ZrO2 をそれぞれ0〜6wt%、CaO、SrOをそれぞれ0〜12wt%、BaO、TiO2 、Nb2 5 、Bi2 3 をそれぞれ0〜22wt%含む。
【0074】
粉体ガラスの他の例は、B2 3 を20〜31wt%、SiO2 を0.3〜14.5wt%、Na2 Oを1〜9wt%、ZnOを40〜58wt%、Nb2 5 を10〜20wt%含み、さらに、BaO、TiO2 、Al2 3 、K2 O、CaO、Li2 O、ZrO2 、SrO、MgOをそれぞれ0〜6wt%含む。
【0075】
粉体ガラスのさらに他の例は、B2 3 を15〜30wt%、SiO2 を1〜9wt%、ZnOを25〜59wt%、Bi2 3 を10〜49wt%含み、さらに、BaO、TiO2 、Nb2 5 、CaO、Gd2 3 、SrO、La2 3 、Y2 3 をそれぞれ0〜19wt%、Al2 3 を0〜9wt%、Na2 O、K2 O、Li2 O、ZrO2 をそれぞれ0〜4wt%含む。
【0076】
粉体ガラスのさらに他の例は、PbO、B2 3 、SiO2 を含み、その中でPbOを29〜69wt%、B2 3 を20〜50wt%含む。
【0077】
<粉末状の蛍光物質>
粉体ガラスには、粉末状の蛍光物質を含有することもできる。蛍光物質を含有することにより、発光素子から射出された光が蛍光物質に吸収され、波長変換を行い発光素子と異なる色を発光することができる。よって、蛍光物質は発光素子からの光を吸収し異なる波長の光に波長変換するものであればよい。例えば、Eu、Ce等のランタノイド系元素で主に賦活される窒化物系蛍光体・酸窒化物系蛍光体、Eu等のランタノイド系、Mn等の遷移金属系の元素により主に付活されるアルカリ土類ハロゲンアパタイト蛍光体、アルカリ土類金属ホウ酸ハロゲン蛍光体、アルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体、アルカリ土類ケイ酸塩、アルカリ土類硫化物、アルカリ土類チオガレート、アルカリ土類窒化ケイ素、ゲルマン酸塩、または、Ce等のランタノイド系元素で主に付活される希土類アルミン酸塩、希土類ケイ酸塩またはEu等のランタノイド系元素で主に賦活される有機および有機錯体等から選ばれる少なくともいずれか1以上であることが好ましい。具体例として、下記の蛍光体を使用することができるが、これに限定されない。
【0078】
Eu、Ce等のランタノイド系元素で主に賦活される窒化物系蛍光体は、M2 Si5 8 :Eu(Mは、Sr、Ca、Ba、Mg、Znから選ばれる少なくとも1種以上である。)などがある。また、M2 Si5 8 :EuのほかMSi7 10:Eu、M1.8 Si5 0.2 8 :Eu、M0.9 Si7 0.1 10:Eu(Mは、Sr、Ca、Ba、Mg、Znから選ばれる少なくとも1種以上である。)などもある。
【0079】
Eu、Ce等のランタノイド系元素で主に賦活される酸窒化物系蛍光体は、MSi2 2 2 :Eu(Mは、Sr、Ca、Ba、Mg、Znから選ばれる少なくとも1種以上である。)などがある。
【0080】
Eu等のランタノイド系、Mn等の遷移金属系の元素により主に付活されるアルカリ土類ハロゲンアパタイト蛍光体には、M5 (PO4 3 X:R(Mは、Sr、Ca、Ba、Mg、Znから選ばれる少なくとも1種以上である。Xは、F、Cl、Br、Iから選ばれる少なくとも1種以上である。Rは、Eu、Mn、EuとMn、のいずれか1以上である。)などがある。
【0081】
アルカリ土類金属ホウ酸ハロゲン蛍光体には、M2 5 9 X:R(Mは、Sr、Ca、Ba、Mg、Znから選ばれる少なくとも1種以上である。Xは、F、Cl、Br、Iから選ばれる少なくとも1種以上である。Rは、Eu、Mn、EuとMn、のいずれか1以上である。)などがある。
【0082】
アルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体には、SrAl2 4 :R、Sr4 Al1425:R、CaAl2 4 :R、BaMg2 Al1627:R、BaMg2 Al1612:R、BaMgAl1017:R(Rは、Eu、Mn、EuとMn、のいずれか1以上である。)などがある。
【0083】
アルカリ土類硫化物蛍光体には、La2 2 S:Eu、Y2 2 S:Eu、Gd2 2 S:Euなどがある。
【0084】
Ce等のランタノイド系元素で主に賦活される希土類アルミン酸塩蛍光体には、Y3 Al5 12:Ce、(Y0.8 Gd0.2 3 Al5 12:Ce、Y3 (Al0.8 Ga0.2 5 12:Ce、(Y,Gd)3 (Al,Ga)5 12の組成式で表されるYAG系蛍光体などがある。また、Yの一部若しくは全部をTb、Lu等で置換したTb3 Al5 12:Ce、Lu3 Al5 12:Ceなどもある。
【0085】
その他の蛍光体には、ZnS:Eu、Zn2 GeO4 :Mn、MGa2 4 :Eu(Mは、Sr、Ca、Ba、Mg、Znから選ばれる少なくとも1種以上である。Xは、F、Cl、Br、Iから選ばれる少なくとも1種以上である。)などがある。
【0086】
上述の蛍光体は、所望に応じてEuに代えて、または、Euに加えてTb、Cu、Ag、Au、Cr、Nd、Dy、Co、Ni、Tiから選択される1種以上を含有させることもできる。また、上記蛍光体以外の蛍光体であって、同様の性能、効果を有する蛍光体も使用することができる。
【0087】
これらの蛍光体は、発光素子の励起光により、黄色、赤色、緑色、青色に発光スペクトルを有する蛍光体を使用することができるほか、これらの中間色である黄色、青緑色、橙色などに発光スペクトルを有する蛍光体も使用することができる。これらの蛍光体を種々組み合わせて使用することにより、種々の発光色を有する発光装置を製造することができる。
【0088】
例えば、青色に発光するGaN系化合物半導体を用いて、Y3 Al5 12:Ce若しくは(Y0.8 Gd0.2 3 Al5 12:Ceの蛍光物質に照射し、波長変換を行う。発光素子からの光と、蛍光体からの光との混合色により白色に発光する発光装置を提供することができる。
【0089】
例えば、緑色から黄色に発光するCaSi2 2 2 :Eu、またはSrSi2 2 2 :Euと、青色に発光する(Sr,Ca)5 (PO4 3 Cl:Eu、赤色に発光する(Ca,Sr)2 Si5 8 :Euと、からなる蛍光体を使用することによって、演色性の良好な白色に発光する発光装置を提供することができる。これは、色の三源色である赤・青・緑を使用しているので、第1の蛍光体および第2の蛍光体の配合比を変えることのみで、所望の白色光を実現することができる。
【0090】
<光拡散部材>
前述の粉末状の蛍光物質に代えて、若しくは蛍光物質とともに光拡散部材を粉体ガラスに含有させてもよい。具体的な光拡散部材としては、チタン酸バリウム、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化珪素等が好適に用いられる。
【0091】
本明細書において、蛍光物質、光拡散部材、フィラー、セラミックス粉の厳密な区別は特になく、蛍光物質のうち反射率の高い物質は光拡散部材として作用する。光拡散部材は、中心粒径が1nm以上5μm未満のものをいう。1nm以上5μm未満の光拡散部材は、発光素子および蛍光物質からの光を良好に乱反射させ、大きな粒径の蛍光物質を用いることにより生じやすい色むらを抑制することができる。また、発光スペクトルの半値幅を狭めることができ、色純度の高い発光装置を得ることができる。一方、1nm以上1μm未満の光拡散部材は、透明度が高く、光度を低下させることなくガラスの粘度を高めることができる。
【0092】
<粉体フィラー>
前述の粉末状の蛍光物質に代えて、若しくは蛍光物質、光拡散部材とともに粉体フィラーを粉体ガラスに含有させてもよい。具体的な材料は、光拡散部材と同様であるが、光拡散部材と中心粒径が異なる。ここで、粉体フィラ−は、SiO2 、TiO2 、Al2 3 、ZnO、ZrO2 、TaO2 、SnO、SnO2 、ITO、In2 3 、Ga2 3 のいずれかであり、中心粒径(平均粒径)が5nm〜100μmのものをいう。このような粒径のフィラーを粉体ガラス中に含有させると、光拡散作用により発光装置の色度バラツキを改善することができる。ガラスの流動性を一定に調整することが可能となり、歩留まり高く発光装置を量産することができる。また、ガラスの流動性を一定に調整することができる。
【0093】
粉体フィラーは、蛍光物質と同一若しくは類似の粒径および/または形状を有することが好ましい。類似の粒径は、各粒子の真円との近似程度を表す円形度(円経度=粒子の投影面積に等しい真円の周囲長さ/粒子の投影の周囲長さ)の値の差が20%未満の場合をいう。このような粉体フィラーを用いることにより、蛍光物質とフィラーが互いに作用しあい、ガラス中にて蛍光物質を良好に分散させることができ色むらを抑制することができる。
【0094】
<セラミックス粉>
前述の粉末状の蛍光物質に代えて、若しくは蛍光物質、光拡散部材、フィラーと共にセラミックス粉を粉体ガラスに含有させてもよい。セラミックス粉の材質はSiO2 、Al2 3 、AlN、SiC、ZrO2 、TiO2 、TiN、Si3 4 、SnO2 などであり、蛍光物質、光拡散部材、フィラーと材質が重複する場合がある。セラミックス粉の大きさは数μmから数十μmの大きさがあり、略球形、略楕円形、多角形などである。
【0095】
<被膜>
ガラス封止部の表面に被膜を形成することが好ましい。被膜はガラス封止部の白濁を抑制することができる。ガラス封止部の白濁はガラスが結晶化することに起因する。また水分の透過を抑制することができる。被膜はフィラーなどを入れたものを使用することができる。例えば所定の波長の光(350nm以下の波長および550nm以上の波長の光)を吸収する被膜を用いることにより、特定の波長の光(350nmから550nmまでの波長の光)を取り出すことができる発光装置を提供することができる。被膜は一層だけでなく、多層構造とすることもできる。多層構造とすることにより透過率を上げることもできる。
【0096】
以下、図4(c)乃至(j)あるいは図5(c)乃至(j)を参照して他の実施形態を説明する。
【0097】
<第2の実施形態>
第2の実施形態は、前述した第1の実施形態の一部を変更したものである。最初のガラス封止工程により例えばレンズ形状のガラス封止部16aを形成した後、再封止を行うことなく、中子14およびガラス封止済み基板20を下金型13から取り外し、ガラス封止済み基板20を所望の発光装置に分割する。これにより、例えば図4(c)あるいは図5(c)に示すように単層構造のレンズ形状のガラス封止部16aを有する発光装置が得られる。
【0098】
<第3の実施形態>
第3の実施形態は、前述した第1の実施形態の一部を変更したものである。中子の使用を省略し、最初のガラス封止工程の後に再封止を行わずに、例えば図4(d)あるいは図5(d)に示すように外形が立方体の単層構造のガラス封止部16aを形成する。この場合の工程は、実装済み基板を下金型内にセットし、下金型内に全体的に前記したような封止材料を供給する。そして、封止材料を加熱・加圧してガラス封止部を形成し、封止材料を冷却し、ガラス封止済み基板を下金型から取り外した後、所望の切断位置でガラス封止部および基板のダイシングを行い、所望の発光装置に分割する。
【0099】
<第4の実施形態>
第4の実施形態は、前述した第1の実施形態の一部を変更したものである。実装基板として、例えば図4(e)あるいは図5(e)に示すように、上方が開口した凹部と、その底面に基板電極を有する例えばセラミックスのパッケージ40を使用する。この場合の工程は、前述した第1の実施形態の工程と比べて、凹部を有するパッケージ40の凹部底面(基板面)上にLED12を実装した実装済みパッケージ基板を準備し、パッケージの凹部内に中子をセットする点が異なり、その他はほぼ同様である。これにより、パッケージ40の凹部内に二層構造のガラス封止部16a,18aが形成された発光装置が得られる。このような構造によれば、パッケージの凹部側壁が存在するので、LED実装部への水の侵入を阻止することができる。また、パッケージの凹部側壁の内面に基板面に平行な方向の凹凸が存在するような場合には、この凹凸部で側壁とガラス封止部とが係合状態になり、ガラス封止部の抜け止め効果を呈する効果も期待できる。
【0100】
<第5の実施形態>
第5の実施形態は、前述した第4の実施形態の一部を変更したものである。中子の使用を省略し、例えば図4(f)あるいは図5(f)に示すように、パッケージ40の凹部内に全体的に封止材料を供給する。これにより、図4(f)あるいは図5(f)に示すように、単層構造のガラス封止部16aがパッケージ40の凹部内に形成された発光装置が得られる。
【0101】
<第6の実施形態>
第6の実施形態は、前述した第4の実施形態の一部を変更したものである。中子の使用を省略し、例えば図4(g)あるいは図5(g)に示すように、パッケージ40の凹部内の中間付近まで第1の封止材料(粉体ガラスと粉末状蛍光体の混合物)を供給して第1のガラス封止部16aを形成した後、さらに、その上側でパッケージの凹部内に全体的に第2の封止材料(粉体ガラス)を供給して第2のガラス封止部18aを形成する。これにより、図4(g)あるいは図5(g)に示すように、二層構造のガラス封止部16a,18aがパッケージ40の凹部内に形成された発光装置が得られる。
【0102】
<第7の実施形態>
第7の実施形態は、前述した第6の実施形態の一部を変更したものである。二層構造のガラス封止部16a,18aを形成する際、例えば図4(i)あるいは図5(i)に示すように、外側のガラス封止部18aの上面に上金型内面の形状を転写することによって、外側のガラス封止部18aを配光調整用の凸レンズ形状に形成する。
【0103】
<第8の実施形態>
第8の実施形態は、前述した第1の実施形態の一部を変更したものである。中子の使用を省略し、例えば図4(h)あるいは図5(h)に示すように、下金型内の中間付近まで第1の封止材料(粉体ガラスと粉末状蛍光体の混合物)を供給してガラス封止部16aを形成した後、さらに、その上側で下金型内に全体的に第2の封止材料(粉体ガラス)を供給して第2のガラス封止部18aを形成する。これにより、図4(h)あるいは図5(h)に示すように二層構造のガラス封止部16a,18aが形成された発光装置が得られる。
【0104】
<第9の実施形態>
第9の実施形態は、前述した第8の実施形態の一部を変更したものである。二層構造のガラス封止部16a,18aを形成する際、外側のガラス封止部18aの上面に上金型内面の形状を転写することによって、例えば図4(j)あるいは図5(j)に示すように、外側のガラス封止部18aに配光調整用の凸レンズ部を形成する。
【0105】
<第10の実施形態>
第10の実施形態は、前述した各実施形態において、基板のLED搭載面側あるいはその裏側に、保護素子(図示せず)が実装されたものである。保護素子として例えばツェナーダイオードがLEDに対して電気的に逆並列接続されている。この場合、ツェナーダイオードは、一対の電極が素子の上下面に分離して形成された構造を有し、一方の電極から基板電極にループ状のワイヤ配線が接続され、前述したフェイスアップ実装状態のLEDと同様にガラス封止がなされている。この際、特にダメージを受けることなくガラス封止が可能である。
【0106】
なお、赤色発光LED、赤外線発光LEDなどのように、一対の電極が素子の上下面に分離形成されている構造を有する発光素子を基板上に実装する場合にも、一方の電極から基板電極にループ状のワイヤ配線を接続するが、前述したフェイスアップ実装状態のLEDと同様にガラス封止が可能である。
【実施例1】
【0107】
第1の実施形態で前述した図1(a)乃至図3(d)および図4(b)を参照しながら一実施例を説明する。
【0108】
Al2 3 を用いた基板11にスクリーン印刷やメッキ等により基板電極を形成し、基板電極上にAu等のバンプを球状若しくは卵状に形成する。この際、基板電極をn側の基板電極とp側の基板電極に分け、基板の上面から側面、下面にかけて導電パターンを形成する。LED12は、ピーク波長が460nm近傍にある青色に発光する素子であって、同一面側にn側電極とp側電極とを有し、その反対側に透光性の基板を持つ素子を使用するものとする。このLEDを基板上に載置する際、透光性の基板をコレット等で吸引して、n側電極とp側電極とをフェイスダウンする。バンプに熱を加え、LEDをコレット等で超音波振動を加え、n側電極およびp側電極をバンプと接合することによって基板電極に電気的に接続する。この後、コレット等の吸引を止め、コレット等を引き上げる。
【0109】
上記したようにLEDを実装した基板を所定の加熱成形装置内に配置する。この装置は上金型17と下金型13とを持ち、装置内を所定の温度に保持できるように構成されている。下金型13の内部に前記LEDを実装した基板をセットし、さらに、中子14をセットする。基板電極等の金属に酸化膜を形成させないために、装置内は、窒素雰囲気、アルゴン雰囲気等の不活性ガス雰囲気中に保持しておくほか、真空にすることも可能である。
【0110】
そして、中子14の窓15内に封止材料16を供給する。この封止材料16を準備する際、粉体ガラス、粉末状蛍光体および粉体フィラーを例えば100:40:30(重量%)の割合で混合し、十分に撹拌することにより、粉体ガラス中に粉末状蛍光体および粉体フィラーをほぼ均一に分散させる。粉体ガラスは、ガラス転移温度Tgが200℃〜600℃、軟化点/屈伏点が250℃〜700℃、かつ、融点が200℃〜800℃、線膨張係数が3〜15ppm 、平均粒径が10nm〜200μmのものを使用する。この粉体ガラスは、P2 5 を56〜63wt%、Al2 3 を5〜13wt%、ZnOを21〜41wt%含み、さらに、B2 3 、Na2 O、K2 O、Li2 O、MgO、WO3 、Gd2 3 、ZrO2 をそれぞれ0〜6wt%、CaO、SrOをそれぞれ0〜12wt%、BaO、TiO2 、Nb2 5 、Bi2 3 をそれぞれ0〜22wt%含む。
【0111】
加熱成形装置内に窒素を充填して、封止材料16を、粉体ガラスのガラス転移温度以上の温度で、かつ、粉体ガラスの融点より低い温度になるまで加熱し、約560℃までゆっくりと昇温する。これにより、粉体ガラスが軟化状態となる。但し、粉体ガラスは融点よりも低い温度であるので、液状となっていない。粉体ガラスを加熱する温度は200℃以上800℃以下の温度が好ましい。特に500℃以上600℃以下の温度に加熱を行い、粉体ガラスを軟化状態にすることも可能である。
【0112】
封止材料が軟化状態となったら、この状態で、下金型と上金型とを押圧して、軟化状態の封止材料を基板に押圧する。この際、封止材料は軟化状態となっているので、LEDを破壊することなく基板に接触する。また、フリップチップ実装の場合には、バンプを介して接合されている基板の基板電極とLEDとの隙間には気体層が形成される。軟化したガラスは、LEDと基板との隙間に侵入することがあるので、これにより放熱性、ダイスの密着性の向上に寄与する。また、LED電極と基板とを接続するためのワイヤーを用いていない場合には、ワイヤーの断線を考慮する必要がない。さらに、LEDが持つ電極によりLEDから出射される光が遮断されることもない。
【0113】
なお、バンプを介して接合されるLEDと基板電極との隙間に、エポキシ樹脂等の絶縁部材を予め配置しておくこともできる。これにより、LEDから発生する熱を基板電極側に伝達し易くし、放熱性を向上させることが可能になる。また、フリップチップ実装の場合には、封止工程における封止材料による押圧に耐えることができる。
【0114】
所定の温度以下に下金型および上金型が冷えたら、上金型と下金型とを離し、封止材料が固着された基板11を装置から取り出す。取り出された基板のガラス封止部16aの上面は、そのままでも使用できるが、透光性を向上させるため研磨して平坦面にしておくことが好ましい。ガラス封止部16aおよび基板11を上方から切断機を用いて切断し、個別化された発光装置30を得る。この切断により、ガラス封止部16aの側面が形成される。
【0115】
ガラス封止部16aおよび基板11を切断機を用いて切断する際、ガラス封止部と基板との接触部分に達するまで、あるいは、接触部分に侵入しない程度まで入刃した後、所定の応力を加え、基板と共にガラス封止部16aを分割するようにしてもよい。基板を割るためには、基板の発光素子搭載面(ガラス封止部が固定されている側)とは反対の裏面側に、基板の厚さの(2/5)〜(3/5)程度まで切り込みを設けておき、この切り込み部分に沿って分割する。この場合には、ガラス封止部16aの側面は、切断された部分と分割された部分とを有する。ガラス封止部16aの側面は研磨しておくこともできる。これにより製品毎のバラツキを抑制できるからである。
【0116】
個片化された発光装置30の大きさは縦3.0mm、横2.0mm、高さ1.5mmである。基板の大きさは縦3.0mm、横2.0mm、高さ1.0mmである。ガラス封止部は、切断機で入刃する分だけ基板よりも小さく、その大きさは縦2.9mm、横1.9mm、高さ0.5mmである。
【0117】
さらに、ガラス封止部16aの表面に被膜を形成してもよい。この被膜の形成は、ガラス封止部を切断する前に行ってもよい。被膜は所定のシートを貼り付ける他、被膜を付けたい部分にスプレーする方法、ガラス封止部を所定の液中に浸積する方法、所定の物質をスクリーン印刷する方法などがある。
【産業上の利用可能性】
【0118】
本発明の発光装置は、携帯電話のバックライト用照明、自動車前照灯、室内照明、屋外照明、各種デ−タを表示するディスプレイ装置、ラインセンサ−など各種センサー、各種インジケータなどの光源、各種計測機器、屋外の案内板、車載機器などの表示に利用される。特に、太陽光、深海、電気炉など、高圧、高温の環境下で使用される機器への適用が可能になる。
【符号の説明】
【0119】
10…実装済み基板、11…基板、11a…基板電極、12…LED、13…下金型、14…中子、15…窓部、16,18…封止材料、16a,18a…ガラス封止部、17,19…上金型、20…ガラス封止済み基板、21…ダイシング・ブレード、30…発光装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の電極を有する発光素子と、
前記発光素子が搭載される基板と、
前記基板に設けられ、前記発光素子の電極に電気的に接続される基板電極と、
前記発光素子を封止したガラス封止部と、
を有する発光装置であって、前記ガラス封止部は、前記基板上で前記発光素子の周辺部に供給された粉体ガラスあるいはそれと他の材料との混合物からなる封止材料が融着されてなることを特徴とする発光装置。
【請求項2】
前記ガラス封止部は、SiO2 、BaO、TiO2 、Al2 3 、P2 5 、PbO、B2 3 、ZnO、Nb2 5 、Na2 O、K2 O、Sb2 5 、CaO、Li2 O、WO3 、Gd2 3 、Bi2 3 、ZrO2 、SrO、MgO、La2 3 、Y2 3 、AgO、LiF、NaF、KF、AlF3 、MgF2 、CaF2 、SrF2 、BaF2 、YF3 、LaF3 、SnF2 、ZnF2 のいずれかを含むことを特徴とする請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
前記ガラス封止部は、P2 5 を56〜63wt%、Al2 3 を5〜13wt%、ZnOを21〜41wt%含み、
さらに、B2 3 、Na2 O、K2 O、Li2 O、MgO、WO3 、Gd2 3 、ZrO2 をそれぞれ0〜6wt%、CaO、SrOをそれぞれ0〜12wt%、BaO、TiO2 、Nb2 5 、Bi2 3 をそれぞれ0〜22wt%含むことを特徴とする請求項1に記載の発光装置。
【請求項4】
前記ガラス封止部は、B2 3 を20〜31wt%、SiO2 を0.3〜14.5wt%、Na2 Oを1〜9wt%、ZnOを40〜58wt%、Nb2 5 を10〜20wt%含み、
さらに、BaO、TiO2 、Al2 3 、K2 O、CaO、Li2 O、ZrO2 、SrO、MgOをそれぞれ0〜6wt%含むことを特徴とする請求項1に記載の発光装置。
【請求項5】
前記ガラス封止部は、B2 3 を15〜30wt%、SiO2 を1〜9wt%、ZnOを25〜59wt%、Nb2 5 を10〜49wt%含み、
さらに、BaO、TiO2 、Nb2 5 、CaO、Gd2 3 、SrO、La2 3 、Y2 3 をそれぞれ0〜19wt%、Al2 3 を0〜9wt%、Bi2 3 を0〜9wt%、Na2 O、K2 O、Li2 O、ZrO2 をそれぞれ0〜4wt%含むことを特徴とする請求項1に記載の発光装置。
【請求項6】
前記ガラス封止部は、PbO、B2 3 、SiO2 を含み、前記PbOを29〜69wt%、前記B2 3 を20〜50wt%含むことを特徴とする請求項1に記載の発光装置。
【請求項7】
前記粉体ガラスと他の材料との混合物は、粉体ガラスと粉体フィラーの混合物、あるいは、粉体ガラスと粉末状蛍光体の混合物、あるいは、粉体ガラスと粉末状蛍光体と粉体フィラーの混合物が融着されてなることを特徴とする請求項1に記載の発光装置。
【請求項8】
前記蛍光体は、YAGあるいは窒化物蛍光体であり、平均粒径が10nm〜200μmであることを特徴とする請求項7に記載の発光装置。
【請求項9】
前記粉体フィラ−は、SiO2 、TiO2 、Al2 3 、ZnO、ZrO2 、TaO2 のいずれかであり、平均粒径が5nm〜100μmであることを特徴とする請求項7に記載の発光装置。
【請求項10】
前記発光素子は前記基板上にフェイスダウン実装されており、当該発光素子と前記基板との間の間隙部に前記封止材料が存在していることを特徴とする請求項1に記載の発光装置。
【請求項11】
前記発光素子は前記基板上にフェイスアップ実装されており、当該発光素子の上面電極から前記基板電極にループ状のワイヤー配線が接続されていることを特徴とする請求項1に記載の発光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−268013(P2010−268013A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−195717(P2010−195717)
【出願日】平成22年9月1日(2010.9.1)
【分割の表示】特願2006−229507(P2006−229507)の分割
【原出願日】平成18年8月25日(2006.8.25)
【出願人】(000226057)日亜化学工業株式会社 (993)
【Fターム(参考)】