説明

発光装飾ガラス、装飾ガラスおよびその製造方法と製造装置

【課題】ガラス自体の強度を損なわず、建築材その他の用途に一般的に用いられている透光性板ガラスの表面を加工して、装飾性に優れた発光装飾ガラスおよび装飾ガラスを提供する。
【解決手段】4〜25mmの厚さの透光性板ガラス1の表面に、0.01〜3.0mmの径の大きさの放射状の亀裂7を打刻により多数設け、この亀裂7のドットにより任意の文字または図柄を構成して装飾ガラスを作製する。発光装飾ガラスは、この装飾ガラスと、透光性板ガラス1の四方側面の何れかの方向から、指向性のある照射光が透光性板ガラス1内部に入射するように配置された光源とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板ガラス表面を鋭利な加工工具で瞬間的に打刻することにより、微小な亀裂をガラス板に生じさせた発光装飾ガラス、装飾ガラスおよびその製造方法と製造装置の技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、ガラス表面に表示を行う技術は広く行われている。例えば、合わせガラスを構成する中間膜内に設けた切り欠き部分に発光ダイオード(LED)などの発光素子を配置し、合わせガラス内部に発光素子に接続されている導線として導電膜を形成することによって発光素子を発光させて表示を行う技術が知られている(例えば、特許文献1を参照。)。かかる技術では、合わせガラスを構成する中間膜内に設けた切り欠き部分に発光ダイオード(LED)などの発光素子を配置するため、特殊なガラス構造となる。また、ガラス自体の強度にも問題がある。さらに、単板のガラス板には発光素子を配置することができないという問題がある。
【0003】
また、導電膜を有する少なくとも1枚のガラスと、発光素子とから構成される機能性ガラスの技術が知られている(例えば、特許文献2を参照。)。この技術の場合、導電膜を有するガラス表面には設置孔又はガラス板の厚みの薄い部分を設けて、発光ダイオード(LED)などの発光素子の設置部を形成し、合わせガラスではなく、単板のガラス板に発光素子を配置するものである。この技術では、ガラスの表面側から見た場合に合わせガラスに比べて光量が増加し、発色も鮮明となり視認性が向上する利点がある。しかしながら、この場合も、ガラス自体に発光素子を内蔵するため、特殊なガラス構造となり、ガラス自体の強度に問題がある。
【0004】
また一方で、従来のガラス表面の加工は、研磨装置を使用したり、薬品による腐食作用により文字や画像を書き込んでいた。そのため、加工から生じる廃棄物廃液などを発生させていた。かかるガラス表面の研磨作業や腐食作業に当たっては、時間と労力を大きく消費し、また制作面に関して非常にコスト及び労力を要し大量生産が困難であるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−034560号公報
【特許文献2】特開2006−323323号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記状況に鑑みて、本発明は、ガラス自体の強度を損なわず、建築材その他の用途に一般的に用いられている透光性板ガラスの表面を加工して、装飾性に優れた発光装飾ガラスおよび装飾ガラスを提供することを目的とする。
また、それらの発光装飾ガラスおよび装飾ガラスの製造方法ならびに製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成すべく、本発明の発光装飾ガラスは、所定厚さの透光性板ガラスの表面に、所定の大きさの放射状の亀裂を少なくとも1つ設け、この亀裂のドットにより任意の文字または図柄を構成した装飾ガラスと、透光性板ガラスの四方側面の何れかの方向から、指向性のある照射光が透光性板ガラス内部に入射するように配置された光源と、を備えた構成とされる。
【0008】
かかる構成によれば、ガラス自体の強度を損なわず、建築材その他の用途に一般的に用いられている透光性板ガラスの表面を加工して、装飾性に優れたガラスを提供できる。
所定の大きさの放射状の亀裂を設けるとは、透光性板ガラスの表面を先の尖った加工用工具で瞬間的に打刻することにより、微小な亀裂をガラス板の表面に生じさせることである。微小な亀裂を複数設けて、これらの亀裂のドットにより任意の文字または図柄を構成する。
【0009】
そして、指向性のある光源を、透光性板ガラスの四方側面の何れかの方向に配置し、指向性のある照射光が透光性板ガラス内部に入射するようにする。
指向性のある光源の光は、ガラス内部を導光路として、一方側面から対向する反対側の側面まで透過する。この際、ガラスの界面に来る光は、ガラスから空気への臨界角は41〜43°程度であることから、全反射することからガラス外部には出射しない。
しかし、微小な亀裂をガラス板の表面に生じさせることで、その亀裂部分に到達した光は亀裂により散乱されてガラス外部に出射することになる。亀裂のドットにより任意の文字または図柄を構成した場合、文字や図柄が周囲のガラスと比較して格段に光り輝くことになる。しかも、亀裂は表面付近だけであり、ガラス自体の強度を損なうことはない。
【0010】
ここで、光源からの光がガラス内部を通過する際に減衰することを回避するためには、透明性が高いガラスであることが必要である。透明性が高いガラスであればあるほど、亀裂のドットにより構成された任意の文字や図柄が光り輝くことになる。
【0011】
また、所定の厚さの板ガラスを用いる理由は、過度に厚さが薄い板ガラスであると、亀裂を設けることによりガラス自体の強度を損なうことになり、過度に厚さが大きい板ガラスであると、側面から照射する光源の光が臨界角より小さい入射角で界面に到達する場合があり、亀裂のドットにより構成された任意の文字や図柄の明るさを低下させるからである。
【0012】
また、放射状の亀裂を設けた際に、亀裂の隙間に空気を封入させたと解釈した場合、板ガラスの内部を透過する光が、封入させた空気により散乱し、亀裂のドットにより構成された任意の文字や図柄から光の色が浮き出してくると理解することも可能である。
【0013】
ここで、本発明の発光装飾ガラスにおける上記の放射状の亀裂は、具体的には、所定厚さの透光性板ガラスの表面を打刻することにより設けられる。板ガラスの表面を打刻することにより、放射状の亀裂を生じさせることができ、ガラスの表面加工作業が簡便に行える。
【0014】
また、上記の放射状の亀裂は、より好ましくは、所定厚さの透光性板ガラスの表面を、表面からの深さが厚さの0.005〜0.2の範囲内になるように打刻することにより設けられる。ここで、表面からの深さが厚さの0.005未満であると、光の散乱が弱くなり、ガラスの表面に散乱して現れる光量が少なくなるためデザインした文字や図柄の視認性や明瞭性が悪くなる。また、表面からの深さが厚さの0.2より大きくなると、板ガラスに対する衝撃強度が高くなり、ガラス表面にひび割れが生じる可能性が高く、ガラス自体の強度が低減する。従って、表面からの深さが厚さの0.005〜0.2の範囲内になるように打刻する必要がある。
ここで、さらに好ましくは、透光性板ガラスの表面を、表面からの深さが厚さの0.005〜0.02の範囲内になるように打刻する。板ガラスに対する衝撃強度を小さくし、ガラス表面にひび割れが生じる可能性を低くでき、ガラス自体の強度の低減を回避できるからである。
【0015】
また、上記の放射状の亀裂の大きさは、0.01〜3.0mmの径であることが好ましい。亀裂は板ガラス表面上に放射状に形成されるが、その大きさは0.01〜3.0mmの径である。0.01mm未満だと、光の散乱エリアがあまりに小さく、文字や図柄の視認性や明瞭性が悪くなるからである。また、3.0mmより大きいと、亀裂自体が見えることになり、意匠性が損なわれるからである。
ここで、さらに好ましくは、放射状の亀裂の大きさは、0.01〜1.0mmの径である。意匠性や装飾性がより高まるからである。
【0016】
また、使用する透光性板ガラスの厚さは、4〜25mmであることが好ましい。厚さ4mm未満の薄い板ガラスであると、亀裂を設けることによりガラス自体の強度を損なうことになる。一方、厚さ25mmより大きい板ガラスであると、側面から照射する光源の光が臨界角より小さい入射角で界面に到達する場合があり、亀裂のドットにより構成された任意の文字や図柄の明るさを低下させることになる。
ここで、さらに好ましくは、使用する透光性板ガラスの厚さは、10〜25mmである。側面から光源の光を照射しやすいからである。
【0017】
ここで、上記の指向性のある光源は、具体的には、発光ダイオード(LED)により構成される。なお、発光ダイオード(LED)が今後の照明光源として期待されており、指向性も十分にあるからである。その他、レーザーダイオード(LD)やレーザーも活用できる。LEDやLDの光を光ファイバーで導光させて、光ファイバーの先端部を光源としても構わない。
【0018】
また、上記の指向性のある光源は、より好ましくは、時間が経過すると発光色が変化する発光ダイオード(LED)により構成される。時間の経過とともに発光色が変化すると、意匠性や装飾性が向上するからである。
【0019】
また、透光性板ガラスの四方側面のうち、光源が配置される側と対向する側に、光を遮断する枠体が設けられたことがより好ましい。光源が配置される側と反対側の対向する側は、ガラスの端面のままであると、光源の光が漏れだすことになる。指向性の高く、明るいLEDであればあるほど、漏れ出す光の量は大きくなる。例えば、ガラスの下部に光源を配置した場合、ガラスの上部側面から光が漏れ、ガラス上部の物体や天井に映り込みが発生する。このため、光源が配置される側と対向する側には、光を遮断する枠体を設けるのがよい。
【0020】
ここで、透光性板ガラスは、他の観点によれば、ガラス表面に、錫もしくは銀のめっき或いは蒸着が施されたものであることが好ましい。透光性板ガラスの表面に、錫もしくは銀のめっき或いは蒸着を施して、鏡面加工したものでもよい。鏡面加工の表面に設けた亀裂のドットにより構成された任意の文字や図柄を光り輝かせることができるのである。
【0021】
また、透光性板ガラスの表面に、マジックミラー、ハーフミラー、ミラーグラス、ミラーのいずれかが貼り合わされたものでもよい。マジックミラー、ハーフミラー、ミラーグラス、ミラーの厚みは、亀裂のドットの深さより薄くなるようにすることで、板ガラス内部の散乱光を表面の亀裂から出射することができる。
【0022】
さらに、透光性板ガラスが、カラーガラスであることでもよい。透光性板ガラスは透明でなくとも、カラーガラスでもよい。意匠性や装飾性を向上できるからである。
【0023】
次に、本発明の装飾ガラスについて説明する。
本発明の装飾ガラスは、所定厚さの透光性板ガラスの表面に、所定の大きさの放射状の亀裂を少なくとも1つ設け、亀裂のドットにより任意の文字または図柄を構成したことを特徴とする。
【0024】
かかる構成によれば、ガラス自体の強度を損なわず、建築材その他の用途に一般的に用いられている透光性板ガラスの表面を加工して、装飾性に優れたガラスを提供できる。
所定の大きさの放射状の亀裂を設けるとは、透光性板ガラスの表面を先の尖った加工用工具で瞬間的に打刻することにより、微小な亀裂をガラス板の表面に生じさせることである。微小な亀裂を複数設けて、これらの亀裂のドットにより任意の文字または図柄を構成する。
【0025】
この装飾ガラスの側面から指向性のある光源の光をあてた場合、ガラス内部が導光路として作用し、一方側面から対向する反対側の側面まで光源の光を透過させることになる。この際、ガラスの界面に来る光は、ガラスから空気への臨界角は41〜43°程度であることから、全反射することからガラス外部には出射しない。微小な亀裂をガラス板の表面に生じさせることで、その亀裂部分に到達した光は亀裂により散乱されてガラス外部に出射することになる。亀裂のドットにより任意の文字または図柄を構成した場合、文字や図柄が周囲のガラスと比較して格段に光り輝くことになるのである。
【0026】
また、所定の厚さの板ガラスを用いる理由は、過度に厚さが薄い板ガラスであると、亀裂を設けることによりガラス自体の強度を損なうことになり、過度に厚さが大きい板ガラスであると、側面から照射する光源の光が臨界角より小さい入射角で界面に到達する場合があり、亀裂のドットにより構成された任意の文字や図柄の明るさを低下させるからである。
【0027】
また、放射状の亀裂を設けた際に、亀裂の隙間に空気を封入させたと解釈した場合、板ガラスの内部を透過する光が、封入させた空気により散乱し、亀裂のドットにより構成された任意の文字や図柄から光の色が浮き出してくると理解することも可能である。
【0028】
ここで、本発明の装飾ガラスにおける上記の放射状の亀裂は、具体的には、所定厚さの透光性板ガラスの表面を打刻することにより設けられる。板ガラスの表面を打刻することにより、放射状の亀裂を生じさせることができ、ガラスの表面加工作業が簡便に行える。
【0029】
また、上記の放射状の亀裂は、より好ましくは、所定厚さの透光性板ガラスの表面を、表面からの深さが厚さの0.005〜0.2の範囲内になるように打刻することにより設けられる。ここで、表面からの深さが厚さの0.005未満であると、光の散乱が弱くなり、ガラスの表面に散乱して現れる光量が少なくなるためデザインした文字や図柄の視認性や明瞭性が悪くなる。また、表面からの深さが厚さの0.2より大きくなると、板ガラスに対する衝撃強度が高くなり、ガラス表面にひび割れが生じる可能性が高く、ガラス自体の強度が低減する。従って、表面からの深さが厚さの0.005〜0.2の範囲内になるように打刻する必要がある。
ここで、さらに好ましくは、透光性板ガラスの表面を、表面からの深さが厚さの0.005〜0.02の範囲内になるように打刻する。板ガラスに対する衝撃強度を小さくし、ガラス表面にひび割れが生じる可能性を低くでき、ガラス自体の強度の低減を回避できるからである。
【0030】
また、上記の放射状の亀裂の大きさは、0.01〜3.0mmの径であることが好ましい。亀裂は板ガラス表面上に放射状に形成されるが、その大きさは0.01〜3.0mmの径である。0.01mm未満だと、光の散乱エリアがあまりに小さく、文字や図柄の視認性や明瞭性が悪くなるからである。また、3.0mmより大きいと、亀裂自体が見えることになり、意匠性が損なわれるからである。
ここで、さらに好ましくは、放射状の亀裂の大きさは、0.01〜1.0mmの径である。意匠性や装飾性がより高まるからである。
【0031】
また、使用する透光性板ガラスの厚さは、4〜25mmであることが好ましい。厚さ4mm未満の薄い板ガラスであると、亀裂を設けることによりガラス自体の強度を損なうことになる。一方、厚さ25mmより大きい板ガラスであると、側面から照射する光源の光が臨界角より小さい入射角で界面に到達する場合があり、亀裂のドットにより構成された任意の文字や図柄の明るさを低下させることになる。
ここで、さらに好ましくは、使用する透光性板ガラスの厚さは、10〜25mmである。側面から光源の光を照射しやすいからである。
【0032】
ここで、透光性板ガラスは、他の観点によれば、ガラス表面に、錫もしくは銀のめっき或いは蒸着が施されたものであることが好ましい。
また、透光性板ガラスの表面に、マジックミラー、ハーフミラー、ミラーグラス、ミラーのいずれかが貼り合わされたものでもよい。
さらに、透光性板ガラスが、カラーガラスであることでもよい。
各々の理由については、上述の発光装飾ガラスと同様であり、説明は省略する。
【0033】
次に、本発明の装飾ガラスの製造方法について説明する。
本発明の装飾ガラスの製造方法は、下記1)〜3)の工程を備える。
1)厚み4〜25mmの透光性板ガラスを、緩衝材を敷いた加工台の上に配置する配置工程
2)ガラスより強度がある硬質性の先の尖った工具を用いて透光性板ガラスの表面を瞬間的に打刻し、打刻された透光性板ガラス表面に所定の大きさの放射状の亀裂を設ける打刻工程
3)打刻工程を繰り返し、前記亀裂のドットにより任意の文字または図柄を構成する装飾工程
【0034】
硬質性の先の尖った工具とは、例えば、アルミ製の工具であり、円錐状に先端部が鋭角に尖ったものである。鉄やダイヤモンドでもよい。ガラスより強度がある硬質性のものであれば、金属に限らず、硬質性樹脂でもよい。
また、板ガラスの表面を瞬間的に打刻するとは、板ガラスの表面の上から工具を落下させるイメージである。重力による自然落下でもよい。また、勢いよく速度をつけて落下させてもよい。但し、表面からある程度の深さまでしか亀裂が生じないように、工具の落下を制御する必要がある。具体的には、落下位置を制御するストッパーを設けたりする。
ここで、緩衝材は、好適にはフェルトシートが用いられる。傷防止に優れており、粘着性もあるからである。
【0035】
次に、本発明の装飾ガラスの製造装置について説明する。
本発明の装飾ガラスの製造装置は、下記a)〜c)を備える。
a)緩衝材を敷いた平坦な加工台
b)ガラスより強度がある硬質性の先の尖った工具
c)工具を保持するアームであって、加工台に搭載された対象物に対して、瞬間的に下降し、工具の先端部により対象物の表面を打刻し得るアーム
【0036】
ガラスより強度がある硬質性の先の尖った工具については、上述のとおりで、例えば、アルミ製の工具であり、円錐状に先端部が鋭角に尖ったものである。鉄やダイヤモンドでもよい。ガラスより強度がある硬質性のものであれば、金属に限らず、硬質性樹脂でもよい。
工具を保持するアームは、加工台に搭載された対象物の表面からある程度の深さまでしか亀裂が生じないように、工具の落下を制御する。瞬間的に下降するとは、上述のとおりで、加工台に搭載された対象物の表面の上から工具を落下させるイメージである。重力による自然落下でもよい。また、勢いよく速度をつけて落下させてもよい。
ここで、緩衝材には、傷防止に優れており、粘着性もあるフェルトシートが好適に用いられる。
【0037】
また、本発明の装飾ガラスの製造装置におけるアームは、加工台の平面の任意の位置に移動できることが好ましい。
アームが加工台の平面の任意の位置に移動できるように、X軸方向の移動ヘッド、Y軸方向の移動ヘッドを備える。この移動ヘッドにアームが取り付けられる。移動ヘッドはサーボモータによりX−Y方向に移動できるようになっている。
【0038】
また、本発明の装飾ガラスの製造装置におけるアームは、対象物の表面を打刻する力を調整できることが好ましい。対象物の表面を打刻する力を調整できるように、さらに、Z軸方向の移動ヘッドを備え、この移動ヘッドにアームが取り付けられ、移動ヘッドはサーボモータによりZ方向に所定速度で移動できるようになっている。
このZ軸方向の移動速度を調整することにより、落下による打刻する力を調整する。
【発明の効果】
【0039】
本発明によれば、ガラス自体の強度を損なわず、建築材その他の用途に一般的に用いられている透光性板ガラスの表面を加工して、装飾性に優れた発光装飾ガラスおよび装飾ガラスを提供できるといった効果を有する。
また、板ガラスの表面処理を簡単に施すことができるといった効果もある。これにより製作原価を下げることが可能で、余計な労力及び工場施設を作ることにより天然資源の無駄使いを押さえることに貢献できる。
さらに、板ガラス表面に、亀裂を生じさせる位置を変更するだけで自由な形で製作可能であり、ユーザの様々なオーダーにもフレキシブルに対応できる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】板ガラスを製作用加工台に搭載した状態の模式図
【図2】加工工具を板ガラス表面に当てる直前の状態の模式図
【図3】加工工具を板ガラス表面に当て亀裂を生じさせた後の板ガラスの模式図
【図4】板ガラス表面の亀裂の拡大図
【図5】連続して打刻して文字を作製する様子のイメージ図
【図6】発光装飾ガラスの構成の説明図
【図7】発光装飾ガラスの発光原理の説明図(1)
【図8】発光装飾ガラスの発光原理の説明図(2)
【図9】装飾ガラスの製造方法のフロー図
【図10】装飾ガラスの製造装置の構成図
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明していく。なお、本発明の範囲は、以下の実施例や図示例に限定されるものではなく、幾多の変更及び変形が可能である。
【実施例1】
【0042】
図1は板ガラスを製作用加工台に搭載した状態の模式図である。1は透光性板ガラス、2は加工台、3はフェルトシートである。透光性板ガラス1は、厚さが4〜25mmのもの、例えば20mmの厚さの板ガラスを用意する。市場に流通する板ガラスでよい。できるだけ透明度の高い透明ガラスを選択する。
透光性板ガラス1を加工台2に載せる。ガラス表面に傷が生じるのを防止する目的と加工台表面の滑りを防止する目的から、加工台2と透光性板ガラス1の間には衝撃を和らげるフェルトシート3をはさむ。
【0043】
図2は加工工具を板ガラス表面に当てる直前の状態の模式図を示している。透光性板ガラス1の上面に、円錐状に先端部4の尖ったアルミ製の加工工具5を近づける。加工工具5はアーム(図示せず)によって保持されており、アームの上下移動動作によって、先端部4が板ガラス表面を瞬間的に打刻する。
【0044】
図3は加工工具を板ガラス表面に当て亀裂を生じさせた後の板ガラスの模式図である。打刻された透光性板ガラス1は、微小な放射状の亀裂7を生じる。放射状の亀裂は、透光性板ガラスの表面を、表面からの深さが厚さの0.005〜0.2の範囲内になるように打刻する。実施例では20mmの厚さの透光性板ガラスを用いており、亀裂の深さは0.1とした。放射状の亀裂の大きさは1.0mmであった。
【0045】
図4は板ガラス表面の亀裂の拡大図を示している。板ガラス表面には亀裂のドットを用いてアルファベット2文字(“H”と“B”)が施されている。この文字“B”を拡大(Zoom)したものが図の右側の円の部分に示している。3つの亀裂(7a,7b,7c)が現れている。この亀裂は図示するように、放射状に亀裂が生じていた。
図5は連続して打刻して文字を作製する様子のイメージ図である。透光性板ガラスの表面上を加工工具5の先端部4が移動し、亀裂を連続して形成した。
【0046】
図6は発光装飾ガラスの構成の説明図である。発光装飾ガラスは、20mmの厚さの透光性板ガラス1の表面に、0.1mmの径の放射状の亀裂を多数設けて、この亀裂のドットにより、“Welcome”の文字とハート型の図形を形成した。また、透光性板ガラス1の下部の側面に、6個のLED(11a〜11f)を配置した。これらのLEDにより、透光性板ガラス1の下部の側面から、指向性のある照射光が透光性板ガラス内部に入射するようにした。
【0047】
図7と図8は発光装飾ガラスの発光原理の説明図である。図7と図8は、透光性板ガラスの側面を示している。
図7と図8において、1aは透光性板ガラスの内部、1bは透光性板ガラスの表面、1cは表面と反対側の裏面とする。
図7に示すように、透光性板ガラスの表面1bに2つの亀裂(7a,7b)を作製したとする。また、透光性板ガラスの下部からLED11により指向性の高い照射光12が出射されているとする。この場合、透光性板ガラスの表面1bの2つの亀裂(7a,7b)からガラスの外側に光が放射する(8a,8b)。従って、透光性板ガラスの表面側から見ると、亀裂のドット部分が光り輝くように見えることになる。
図7では示していないが、透光性板ガラスの表面1b側からだけでなく、透光性板ガラスの裏面1c側からにも外側に光が放射する(図示せず)。
【0048】
図8に示すように、LED(図示せず)により出射された指向性の高い照射光12a〜12cが透光性板ガラスの内部1aを進むうちに、ガラスの界面に近づいた光12a,12bは、それぞれ界面1b、1cで反射することになる。角度Aがガラスから空気中へ出る場合の臨界角とすると、ガラスの界面に近づいた光12a,12bの入射角Bは共に臨界角より大きいことから、全反射することになり、ガラスの外部に光が漏れることはない。
透光性板ガラスの内部1aを進むうちに、放射状の亀裂7aを通る光は、亀裂によって散乱され、全周囲にランダムに進むようになり、透光性板ガラスの表面側や裏面側から見ると、亀裂のドット部分が光り輝くように見えることになる。
【0049】
図9は装飾ガラスの製造方法のフロー図である。
装飾ガラスの製造方法のフローは、配置工程(ステップS11)、打刻工程(ステップS12)、装飾工程(ステップS13)、繰り返し工程(ステップS14)から成る。
配置工程(ステップS11)では、厚み4〜25mmの透光性板ガラスを、緩衝材を敷いた加工台の上に配置する。
打刻工程(ステップS12)では、アルミ製の先の尖った加工工具を用いて透光性板ガラスの表面を瞬間的に打刻し、打刻された透光性板ガラス表面に放射状の亀裂を設ける。
装飾工程(ステップS13)では、打刻位置をシフト移動して、亀裂のドットにより任意の文字または図柄を構成する。
繰り返し工程(ステップS14)では、目的とする文字や図柄が完成したか否かを判断する。完成していなければ、打刻位置をシフト移動して再び打刻工程(ステップS12)と装飾工程(ステップS13)を行う。これらのステップを繰り返す。
【0050】
図10は装飾ガラスの製造装置の構成図である。
装飾ガラスの製造装置は、緩衝材としてのフェルトシート3を敷いた平坦な加工台2と、アルミ製の先端部4が尖った加工工具5と、加工工具5を保持するアーム20から構成される。アーム20は、加工台2に搭載された透光性板ガラス1に対して、瞬間的に下降し、加工工具5の尖った先端部4により透光性板ガラス1の表面を打刻する。
【0051】
また、アーム20は、X軸方向の移動およびY軸方向の移動が行える駆動ヘッド21に取り付けられている。駆動ヘッドはサーボモータ(図示せず)により、加工台の上のスライドレール(22a,22b)に沿って移動できるようになっている。
また、アーム20は、透光性板ガラス1の表面を打刻する力を調整できるように、Z軸方向の移動が行える駆動ヘッド(図示せず)に取り付けられる。駆動ヘッドはサーボモータによりZ方向に所定速度で移動し加工工具5の先端部4を落下できるようになっている。このZ軸方向の移動速度を調整することにより、落下による打刻する力を調整する。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明の発光装飾ガラスや装飾ガラスは、装飾品、置物、時計の文字盤、看板、表示装置、照明器具に有用である。
【符号の説明】
【0053】
1 透光性板ガラス
2 加工台
3 フェルトシート
4 先端部
5 加工工具
7,7a〜7c 亀裂
8a,8b 散乱光
11,11a〜11f 発光ダイオード(LED)
12,12a〜12c 出射光
20 アーム


【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定厚さの透光性板ガラスの表面に、所定の大きさの放射状の亀裂を少なくとも1つ設け、前記亀裂のドットにより任意の文字または図柄を構成した装飾ガラスと、
前記透光性板ガラスの四方側面の何れかの方向から、指向性のある照射光が前記透光性板ガラス内部に入射するように配置された光源と、
を備えたことを特徴とする発光装飾ガラス。
【請求項2】
所定厚さの透光性板ガラスの表面を打刻することにより放射状の亀裂を設けたことを特徴とする請求項1に記載の発光装飾ガラス。
【請求項3】
所定厚さの透光性板ガラスの表面を、表面からの深さが厚さの0.005〜0.2の範囲内になるように打刻することにより放射状の亀裂を設けたことを特徴とする請求項1に記載の発光装飾ガラス。
【請求項4】
上記の放射状の亀裂の大きさは、0.01〜3.0mmの径であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の発光装飾ガラス。
【請求項5】
前記所定厚さは4〜25mmであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の発光装飾ガラス。
【請求項6】
上記の指向性のある光源は、発光ダイオード(LED)により構成されることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の発光装飾ガラス。
【請求項7】
上記の指向性のある光源は、時間が経過すると発光色が変化する発光ダイオード(LED)により構成されることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の発光装飾ガラス。
【請求項8】
前記透光性板ガラスの四方側面のうち、前記光源が配置される側と対向する側に、光を遮断する枠体が設けられたことを特徴とする請求項6又は7に記載の発光装飾ガラス。
【請求項9】
前記透光性板ガラスは、ガラス表面に、錫もしくは銀のめっき或いは蒸着が施されたものであることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の発光装飾ガラス。
【請求項10】
前記透光性板ガラスの表面に、マジックミラー、ハーフミラー、ミラーグラス、ミラーのいずれかが貼り合わされたものであることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の発光装飾ガラス。
【請求項11】
前記透光性板ガラスが、カラーガラスであることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の発光装飾ガラス。
【請求項12】
所定厚さの透光性板ガラスの表面に、所定の大きさの放射状の亀裂を少なくとも1つ設け、前記亀裂のドットにより任意の文字または図柄を構成したことを特徴とする装飾ガラス。
【請求項13】
所定厚さの透光性板ガラスの表面を打刻することにより放射状の亀裂を設けたことを特徴とする請求項12に記載の装飾ガラス。
【請求項14】
所定厚さの透光性板ガラスの表面を、表面からの深さが厚さの0.005〜0.2の範囲内になるように打刻することにより放射状の亀裂を設けたことを特徴とする請求項12に記載の装飾ガラス。
【請求項15】
上記の放射状の亀裂の大きさは、0.01〜3.0mmの径であることを特徴とする請求項12〜14のいずれかに記載の装飾ガラス。
【請求項16】
前記所定厚さは4〜25mmであることを特徴とする請求項12〜15のいずれかに記載の装飾ガラス。
【請求項17】
前記透光性板ガラスは、ガラス表面に、錫もしくは銀のめっき或いは蒸着が施されたものであることを特徴とする請求項12〜16のいずれかに記載の装飾ガラス。
【請求項18】
前記透光性板ガラスの表面に、マジックミラー、ハーフミラー、ミラーグラス、ミラーのいずれかが貼り合わされたものであることを特徴とする請求項12〜16のいずれかに記載の装飾ガラス。
【請求項19】
前記透光性板ガラスが、カラーガラスであることを特徴とする請求項12〜16のいずれかに記載の装飾ガラス。
【請求項20】
厚み4〜25mmの透光性板ガラスを、緩衝材を敷いた加工台の上に配置する配置工程と、
ガラスより強度がある硬質性の先の尖った工具を用いて前記透光性板ガラスの表面を瞬間的に打刻し、打刻された前記透光性板ガラス表面に所定の大きさの放射状の亀裂を設ける打刻工程と、
前記打刻工程を繰り返し、前記亀裂のドットにより任意の文字または図柄を構成する装飾工程と、
を備えたことを特徴とする装飾ガラスの製造方法。
【請求項21】
前記緩衝材は、フェルトシートであることを特徴とする請求項20に記載の装飾ガラスの製造方法。
【請求項22】
緩衝材を敷いた平坦な加工台と、
ガラスより強度がある硬質性の先の尖った工具と、
前記工具を保持するアームであって、
前記加工台に搭載された対象物に対して、瞬間的に下降し、前記工具の先端部により前記対象物の表面を打刻し得るアームと、
を備えたことを特徴とする装飾ガラスの製造装置。
【請求項23】
前記緩衝材は、フェルトシートであることを特徴とする請求項22に記載の装飾ガラスの製造装置。
【請求項24】
前記アームは、前記加工台の平面の任意の位置に移動できることを特徴とする請求項22に記載の装飾ガラスの製造装置。
【請求項25】
前記アームは、前記対象物の表面を打刻する力を調整できることを特徴とする請求項22に記載の装飾ガラスの製造装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−56837(P2012−56837A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−196598(P2011−196598)
【出願日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【基礎とした実用新案登録】実用新案登録第3166321号
【原出願日】平成22年9月8日(2010.9.8)
【出願人】(506248786)
【Fターム(参考)】