説明

発泡性容器詰飲料

【課題】カテキンを高濃度に含有し、苦味の低減化と適度な甘味が両立し、甘味料を含有するにもかかわらず、長期保存を行ってもカテキン含有量の減少が少ない発泡性容器詰飲料の提供。
【解決手段】茶抽出物の精製物を配合し、
(A)非重合体カテキン類を0.08〜0.5質量%、
(B)甘味料を0.0001〜20質量%、及び
(C)炭酸ガスを含有し、ガス容積が0.5容積%から4.0容積%であり、
(D)非重合体カテキン類の非エピ体率が5〜25質量%、
(A)非重合体カテキン類中の(E)ガレート体類の比率([(E)/(A)]×100)が5〜55質量%、
(F)pHが2.5〜5.1である発泡性容器詰飲料

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は非重合体カテキン類を高濃度で含有する容器詰飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
カテキン類の効果としてはコレステロール上昇抑制作用やアミラーゼ活性阻害作用などが報告されている(例えば、特許文献1、2参照)。カテキン類のこのような生理効果を発現させるためには、大量のカテキン類を摂取することが必要であり、飲料にカテキン類を高濃度配合する技術が望まれている。この方法の一つとして、緑茶抽出物の濃縮物(例えば、特許文献3〜5参照)などを利用して、カテキン類を飲料に溶解状態で添加する方法がある。
【0003】
しかしながら、市販の緑茶抽出物の濃縮物をそのまま用いると、緑茶抽出物の濃縮物に含まれる成分の影響によって渋味や苦味が強く、また喉越しが悪かった。このように、カテキンによる生理効果を発現させる上で必要となる長期間の飲用への適性から、いずれの技術においても高濃度カテキン配合飲料特有のカテキン由来の渋味や苦味を低減する飲料が望まれていた。
【0004】
茶系飲料の苦味を低減する方法として、サイクロデキストリンを配合する方法が報告されている(例えば特許文献6〜11)。即ち、特許文献6は、茶抽出物1質量部乾燥質量に対し、サイクロデキストリン2.5質量部以上を含有する茶抽出物含有組成物を、特許文献7は、カテキン類1質量%以下、カフェイン0.1質量%以下及びサイクロデキストリン0.1〜20.0質量%の各量を含む飲食物の製造に際し、茶抽出液に水蒸気賦活炭を作用させカフェインを吸着・除去する方法を、特許文献8、9は、カテキン類及びサイクロデキストリンを各特定量含む容器詰飲料を各々開示している。さらに、特許文献10ではクラスターデキストリンを高濃度茶カテキン類に配合することにより苦味が抑制された容器詰茶飲料を、特許文献11ではさらに高濃度のカテキン類に対しするサイクロデキストリンの苦味抑制効果を開示している。
又、特許文献12では不快臭・不快味をマスキングするためにスクラロースと、良好な甘味質を有する甘味組成物のソーマチン、フルクトース、非還元性二糖類、糖アルコール、ビートオリゴ糖、甘草抽出物、ステビア抽出物、ラムノース及びグリチルリチン等を併用し、風味が改善された食品組成物、味質が改善された保存料及び食品組成物、フレーバー感が改善された香気性組成物を開示している。
【0005】
しかし、非重合体カテキン類を高濃度に含む容器詰飲料に、サイクロデキストリンを配合することによって加熱殺菌処理後の苦味を低減させるには、多量のサイクロデキストリンが必要であった。さらに多量のサイクロデキストリンを配合するとサイクロデキストリン自身の風味によって飲料本来の風味が損なわれてしまう欠点があり、使用量については限界があった。又、スクラロース等の人工甘味量を配合しただけでは、非重合体カテキン類を高濃度に含む容器詰飲料の苦味を抑制する効果は不十分であった。
【特許文献1】特開昭60−156614号公報
【特許文献2】特開平3−133928号公報
【特許文献3】特開2002−142677号公報
【特許文献4】特開平8−298930号公報
【特許文献5】特開平8−109178号公報
【特許文献6】特開平3−168046号公報
【特許文献7】特開平10−4919号公報
【特許文献8】特開2002−238518号公報
【特許文献9】特開2004−129662号公報
【特許文献10】特開2004−159641号公報
【特許文献11】特開2004−254511号公報
【特許文献12】特表2000−24273号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、カテキンを高濃度に含有し、苦味の低減と適度な甘味が両立し、甘味料を含有するにも関わらず長期保存を行ってもカテキン含有量の減少が少ない発泡性容器詰飲料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、非重合体カテキン類を高濃度に含む容器詰飲料の風味を低下させることなく、苦味を低減させるべく検討した結果、甘味料を特定の比率で配合し炭酸ガスを含有させたところ優れた苦味抑制効果が得られ、非重合体カテキン類の非エピ体率の制御及びpHを調整することにより長期保存を行ってもカテキン含有量の減少が少なくなり、飲料本来の風味を長期に保持できる発泡性容器詰飲料が得られることを見出した。
【0008】
すなわち、本発明は、茶抽出物の精製物を配合し、
(A)非重合体カテキン類を0.08〜0.5質量%、
(B)甘味料を0.0001〜20質量%、及び
(C)炭酸ガスを含有し、ガス容積が0.5容積%から4.0容積%であり、
(D)非重合体カテキン類の非エピ体率が5〜25質量%、
(A)非重合体カテキン類中の(E)ガレート体類の比率([(E)/(A)]×100)が5〜55質量%、
(F)pHが2.5〜5.1である発泡性容器詰飲料を提供するものである。
また、本発明は、甘味料を0.0001〜20質量%及び(C)炭酸ガスを配合する、非重合体カテキン類含有容器詰飲料の苦味抑制方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、風味が良好で、苦味が抑制され、かつ長期保存を行ってもカテキン含有量の減少が少ない非重合体カテキン類含有発泡性容器詰飲料が提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明における(A)非重合体カテキン類とは、カテキン、ガロカテキン、カテキンガレート、ガロカテキンガレートなどの非エピ体カテキン類及びエピカテキン、エピガロカテキン、エピカテキンガレート、エピガロカテキンガレート等のエピ体カテキン類を合わせての総称であり、非重合体カテキン類の濃度は、上記の合計8種の合計量に基づいて定義される。
【0011】
本発明の発泡性容器詰飲料中には、非重合体カテキン類を、0.08〜0.5質量%、好ましくは0.09〜0.4質量%、さらに好ましくは0.1〜0.3質量%、最も好ましくは0.1〜0.2質量%含有する。非重合体カテキン類がこの範囲内であれば多量の非重合体カテキン類を容易に摂取し易く、非重合体カテキン類の生理効果が期待できる。また、非重合体カテキン類含量が0.08質量%未満である場合、生理効果が十分でなく、0.5質量%を超えると飲料の苦味が増加し、飲料として適しにくい。
【0012】
非エピ体は本来自然界には殆ど存在せず、エピ体の熱異性化により生成する。さらに熱変性により非重合体カテキン類は重合体カテキン類に変化する。本発明の発泡性容器詰飲料に使用できる(A)非重合体カテキン類中の(D)非重合体カテキン類の非エピ体類の割合は5〜25質量%が好ましく、さらに8〜20質量%、特に10〜15質量%であることが風味及び非重合体カテキン類の保存安定性の観点から好ましい。
【0013】
本発明の発泡性容器詰飲料中の非重合体カテキン類にはエピガロカテキンガレート、ガロカテキンガレート、エピカテキンガレート及びカテキンガレートからなるガレート体と、エピガロカテキン、ガロカテキン、エピカテキン及びカテキンからなる非ガレート体がある。エステル型非重合体カテキン類であるガレート体は苦味が強いことから、本発明の発泡性容器詰飲料に使用できる(A)非重合体カテキン類中の(E)非重合体カテキン類のガレート体類の割合([(E)/(A)]×100)は5〜55質量%、さらに8〜46質量%であることが苦味抑制の観点から好ましい。又、本発明における非重合体カテキン類のガレート体類の濃度は、30〜100mg/100mlの範囲であれば後味のキレがよくなるため好ましい。
【0014】
本発明における高濃度の非重合体カテキン類を有する発泡性容器詰飲料は、例えば緑茶抽出物の精製物を配合して非重合体カテキン類濃度を調整して得ることができる。具体的には、緑茶抽出物の精製物の水溶液、あるいは当該緑茶抽出物の精製物に緑茶抽出液を配合したものが挙げられる。ここでいう緑茶抽出物の精製物とは、緑茶葉から熱水もしくは水溶性有機溶媒により抽出した溶液から水分を一部除去したもの、又は精製して非重合体カテキン類濃度を高めたものであり、形態としては、固体、水溶液、スラリー状など種々のものが挙げられる。また、緑茶から得られる茶抽出液とは濃縮や精製操作を行わない抽出液のことをいう。
【0015】
非重合体カテキン類を含有する緑茶抽出物の精製物としては市販の三井農林(株)「ポリフェノン」、伊藤園(株)「テアフラン」、太陽化学(株)「サンフェノン」などが挙げられる。非重合体カテキン類濃度が上記範囲にあれば、これらを精製したものを用いてもよい。精製の方法としては、例えば緑茶抽出物の精製物を水又は水とエタノールなどの有機溶媒の混合物に懸濁して生じた沈殿を除去し、次いで溶媒を留去する方法がある。あるいは茶葉から熱水もしくはエタノールなどの水溶性有機溶媒により抽出した抽出物を濃縮したものをさらに精製したもの、あるいは抽出物を直接精製したものを用いてもよい。
【0016】
本発明に用いる非重合体カテキン類は、緑茶抽出物の精製物をタンナーゼ処理により、ガレート体率を低下することができる。タンナーゼによる処理は、緑茶抽出物の沈殿物又は沈殿物中の非重合体カテキン類に対してタンナーゼを0.5〜10質量%の範囲になるように添加することが好ましい。タンナーゼ処理の温度は、酵素活性が得られる15〜40℃が好ましく、さらに好ましくは20〜30℃である。タンナーゼ処理時のpHは、酵素活性が得られる4〜6が好ましく、さらに好ましくは4.5〜6であり、特に好ましくは5〜6である。
【0017】
本発明の発泡性容器詰飲料における(A)非重合体カテキン類と(G)カフェインとの含有質量比[(G)/(A)]は0.0001〜0.16が好ましく、より好ましくは0.001〜0.15、さらに好ましくは0.01〜0.14、さらに好ましくは0.05〜0.13である。非重合体カテキン類に対するカフェインの比率が低すぎると、風味バランス上好ましくない。また非重合体カテキン類に対するカフェインの比率が高すぎると、飲料本来の外観を害し好ましくない。カフェインは、原料として用いる緑茶抽出物、香料、果汁及び他の成分中に天然で存在するカフェインであっても、新たに加えられたカフェインであってもよい。
【0018】
本発明の発泡性容器詰飲料では、風味及び保存安定性の観点で(F)pHが2.5〜5.1の範囲であり、より好ましくは2.8〜5.0であり、更に好ましくは3.0〜4.5、特に好ましくは3.8〜4.2である。すなわち、pHが2.5未満では酸味が強くなり、長期の保存において非重合体カテキン類が減少する。又、pHが5.1を超えると長期の保存においても併用する炭水化物との反応などにより非重合体カテキン類が減少する。pHの調整は、アスコルビン酸又はその塩やクエン酸などで前記範囲にすることができ、これにより、長期の保存が可能で適度な酸味を有する飲料となる。
【0019】
本発明の発泡性容器詰飲料において(B)甘味料としては、炭水化物類、グリセロール類、糖アルコール、人工甘味料が使用できる。これらの甘味料は、本発明の発泡性容器詰飲料中に0.0001〜20質量%含有され、さらに0.001〜15質量%、特に0.01〜10質量%含有するのが好ましい。本発明の発泡性容器詰飲料は、甘味料が少なすぎると甘みがほとんどなく、酸味、塩味とのバランスがとれないのでショ糖を1としたときの甘味度が2以上であることが好ましい(参考文献:JISZ8144、官能評価分析−用語、番号3011、甘味;JISZ9080、官能評価分析−方法、試験方法;飲料用語辞典4−2甘味度の分類、資料11(ビバレッジジャパン社);特性等級試験mAG試験、ISO 6564−1985(E)、「Sensory Analysis−Methodology−Flavour profile method」等)。一方、甘味度が8以上になると、甘すぎて喉にひっかかる感覚が強く、喉越しが低下する。尚、これらの甘味料は茶抽出物中のものも含む。
【0020】
炭水化物系甘味料としては、単糖、オリゴ糖、複合多糖又はそれらの混合物を含む。このうち、ブドウ糖、ショ糖、果糖及び果糖ブドウ糖液糖から選ばれる1種以上の天然から得られる炭水化物が特に好ましい。
【0021】
単糖にはテトロース、ペントース、ヘキソース及びケトヘキソースがある。ヘキソースの例は、ブドウ糖として知られるグルコースのようなアルドヘキソースである。本発明の発泡性容器詰飲料中のブドウ糖含有量は、0.0001〜20質量%、さらに好ましくは0.001〜15質量%、特に好ましくは0.01〜10質量%である。果糖として知られるフルクトースはケトヘキソースである。本発明の発泡性容器詰飲料中の果糖含有量は0.0001〜20質量%、さらに好ましくは0.001〜15質量%、特に好ましくは0.01〜10質量%である。果糖ブドウ糖液糖はこれらの混合液糖であり、含有量は好ましくは0.01〜7質量%、さらに好ましくは0.1〜6質量%、特に好ましくは1.0〜5質量%である。これらの甘味料は、合計20質量%以上配合すると飲料の保存中に褐変による着色が生じやすい。
【0022】
オリゴ糖としては、例えば、スクロース、マルトデキストリン、コーンシロップ、高フルクトースコーンシロップ、アガペエキス、メイプルシロップ、シュガーケーン、蜂蜜等が挙げられる。このオリゴ糖は二糖が好ましい。二糖の例は、ショ糖又はテンサイ糖として知られるスクロースである。また、ショ糖の形態としては、グラニュー糖、液糖、上白糖等があり、これらをいずれも使用できる。本発明の発泡性容器詰飲料中のショ糖含有量は、好ましくは0.001〜20質量%、更に好ましくは0.01〜15質量%、特に好ましくは0.1〜10質量%である。
【0023】
複合多糖の好ましい例はマルトデキストリンである。また、炭水化物誘導体、多価アルコール、例えばグリセロール類も本発明で用いることができる。グリセロール類は、例えば、0.1〜15質量%、好ましくは0.2〜10質量%、本発明の発泡性容器詰飲料に使用できる。
【0024】
本発明の発泡性容器詰飲料に用いられる甘味料のうち、糖アルコールとしてはエリスリトール、ソルビトール、キシリトール、トレハロース、マルチトール、ラクチトール、パラチノース、マンニトール、タガトース等があげられる。これらのうち、カロリーがないエリスリトールが好ましい。
【0025】
本発明の発泡性容器詰飲料に用いられる甘味料のうち、人工甘味料としてはアスパルテーム、スクラロース、サッカリン、シクラメート、アセスルフェーム−K、L−アスパルチル−L−フェニルアラニン低級アルキルエステル、L−アスパルチル−D−アラニンアミド、L−アスパルチル−D−セリンアミド、L−アスパルチル−ヒドロキシメチルアルカンアミド、L−アスパルチル−1−ヒドロキシエチルアルカンアミド、スクラロースなどの高甘度甘味料、グリチルリチン、合成アルコキシ芳香族化合物等がある。また、ソーマチン、ステビノシド及び他の天然源の甘味料も使用できる。
【0026】
本発明の発泡性容器詰飲料は、(C)炭酸ガスを含有し、適度な起泡性を有することにより、非重合体カテキン類の苦味を抑制させることができ、さらにソフト感および清涼感を継続して付与することを特徴とする。圧入する炭酸ガスは、香味の観点からそのガス容積が0.5〜4.0容積%の範囲で用いるのが好ましく、飲用した際により爽快感が得られることができる。ガス容積を0.5容積%以上にすることでと炭酸ガスの効果により、非重合体カテキン類の苦味を抑制させることができ、ガス容積が4.0容積%以下とすることで刺激が強すぎなく、香料のフレッシュ感が維持できる。
【0027】
本発明で定義するガス容積は、1気圧、15.6℃における飲料中に溶解している炭酸ガスの容積と飲料の容積の比率を表す。炭酸ガスを調合液に圧入する操作をカーボネーション(炭酸ガス圧入)というが、このカーボネーションは、通常カーボネーターと呼ぶ装置の中で、調合液に炭酸ガスを接触させることによって圧入を行う。液体への炭酸ガスの吸収は低温ほど大きいので、カーボネーションを効率よく行うためには、10℃以下に冷却して圧入するのが好ましい。また、一定の温度では、カーボネーター内の炭酸ガス圧力が高いほど吸収効率がよくなる。通常カーボネーションは0.1〜4kg/cm2の圧力下で行われ、コーラ飲料やソーダ飲料ではガス圧3.0kg/cm2以上、無果汁でフルーツ系の香料を添加した飲料では0.7kg/cm2以上、果汁や乳製品を添加した飲料では0.2kg/cm2以上で充填する。
【0028】
本発明の発泡性容器詰飲料には、電解質であるナトリウムを0.001〜0.5質量%及び/又はカリウム0.001〜0.2質量%を含有することができる。ここで、ナトリウム及びカリウムの合計濃度は、0.001〜0.5質量%が好ましく、この合計が0.001質量%未満であると、飲む場面によっては味的に物足りなく感じる傾向があり、好ましくない。一方、0.5質量%を超えると塩類自体の味が強く、長期間の飲用に好ましくない傾向がある。
【0029】
本発明に用いられるナトリウムとしては、アスコルビン酸ナトリウム、塩化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、クエン酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、リン酸水素ナトリウム、酒石酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム等及びそれらの混合物のナトリウム塩を配合することができる。又、ナトリウムは加えられた果汁又は茶の成分由来のものも含まれる。ナトリウム濃度が高くなるほど、飲料の変色する度合いが高くなる。製品の安定性の観点から、本発明の発泡性容器詰飲料中のナトリウム含有量は、好ましくは0.001〜0.5質量%、より好ましくは0.002〜0.4質量%、さらに好ましくは0.003〜0.2質量%である。
【0030】
本発明に用いられるカリウムとしては、茶抽出液に含有するカリウム以外の化合物を添加してその濃度を高めることができる。例えば、塩化カリウム、炭酸カリウム、硫酸カリウム、酢酸カリウム、炭酸水素カリウム、クエン酸カリウム、リン酸カリウム、リン酸水素カリウム、酒石酸カリウム、ソルビン酸カリウム等又はそれらの混合物のようなカリウム塩を配合してもよいし、加えられた果汁または香料由来のものも含まれる。カリウム濃度は、ナトリウム濃度に比べて、長期間高温保存時での色調への影響が大きい。このように安定性の観点から、本発明の発泡性容器詰飲料中のカリウム含有量は、好ましくは0.001〜0.2質量%、より好ましくは0.002〜0.15質量%、さらに好ましくは0.003〜0.12質量%である。
【0031】
本発明の発泡性容器詰飲料には、酸味料が使用できる。酸味料の濃度が少ない場合には、苦味、渋味は抑制できるが酸味が弱すぎる。一方、酸味料の濃度が多い場合には、酸味が強くなるが苦みや渋みも強くなる。本発明における酸味料はアスコルビン酸、クエン酸、グルコン酸、コハク酸、酒石酸、乳酸、フマル酸、リン酸、リンゴ酸及びそれらの塩類から選ばれる1種以上である。具体的にはクエン酸3ナトリウム、クエン酸1カリウム、クエン酸3カリウム、グルコン酸ナトリウム、グルコン酸カリウム、酒石酸ナトリウム、酒石酸3ナトリウム、酒石酸水素カリウム、乳酸ナトリウム、乳酸カリウム、フマル酸ナトリウム等が挙げられる。
【0032】
その他の酸味料としては、アジピン酸及びその塩、天然成分から抽出した果汁類が挙げられる。酸味料は全体として本発明の発泡性容器詰飲料中に0.01〜0.7質量%、特に0.02〜0.6質量%含有するのが好ましい。また無機酸類、無機酸塩類も使用できる。無機酸類、無機酸塩類としてはリン酸水素2アンモニウム、リン酸2水素アンモニウム、リン酸水素2カリウム、リン酸水素2ナトリウム、リン酸2水素ナトリウム、メタリン酸3ナトリウム、リン酸3カリウム等が挙げられる。これらの無機酸類、無機酸塩類は、本発明の発泡性容器詰飲料中0.01〜0.5質量%、特に0.02〜0.3質量%が好ましい。
【0033】
香料(フレーバー)や果汁(フルーツジュース)は嗜好性を高めるために本発明の発泡性容器詰飲料に配合できる。天然又は合成香料や果汁が本発明で使用できる。これらはフルーツジュース、フルーツフレーバー、植物フレーバー又はそれらの混合物から選択できる。特に、フルーツジュースと一緒に茶フレーバー、好ましくは緑茶又は黒茶フレーバーの組合せが好ましい。特に好ましいフルーツジュースはリンゴ、ナシ、レモン、ライム、マンダリン、グレープフルーツ、クランベリー、オレンジ、ストロベリー、ブドウ、キゥイ、パイナップル、パッションフルーツ、マンゴ、グァバ、ラズベリー及びチェリーを使用できる。特に好ましくはシトラスジュース、グレープフルーツ、オレンジ、レモン、ライム、マンダリンと、マンゴ、パッションフルーツ及びグァバのジュース、又はそれらの混合物が最も好ましい。好ましい天然フレーバーはジャスミン、カミツレ、バラ、ペパーミント、サンザシ、キク、ヒシ、サトウキビ、レイシ、タケノコ等である。果汁は本発明の発泡性容器詰飲料中に0.001〜20重量%、更に0.002〜10重量%含有するのが好ましい。特に好ましい香料はオレンジフレーバー、レモンフレーバー、ライムフレーバー及びグレープフルーツフレーバーを含めたシトラスフレーバーである。シトラスフレーバーに替えて、リンゴフレーバー、ブドウフレーバー、ラズベリーフレーバー、クランベリーフレーバー、チェリーフレーバー、パイナップルフレーバー等のような様々な他のフルーツフレーバーが使用できる。これらのフレーバーはフルーツジュース及び香油のような天然源から誘導しても、又は合成してもよい。
香料には、様々なフレーバーのブレンド、例えばレモン及びライムフレーバー、シトラスフレーバーと選択されたスパイス(典型的なコーラソフトドリンクフレーバー)等を含めることができる。このような香料は本発明の発泡性容器詰飲料に好ましくは0.0001〜5重量%、より好ましくは0.001〜3重量%配合できる。
【0034】
本発明の発泡性容器詰飲料には、ビタミンを更に含有させることができる。好ましくは、ビタミンA、ビタミンB及びビタミンEが加えられる。またビタミンDのような他のビタミンを加えてもよい。ビタミンBとしてはイノシトール、チアミン塩酸塩、チアミン硝酸塩、リボフラビン、リボフラビン5’−リン酸エステルナトリウム、ナイアシン、ニコチン酸アミド、パントテン酸カルシウム、ピリドキシ塩酸塩、シアノコバラミンから選ばれるビタミンB群があげられ、葉酸、ビオチンも本発明の飲料に用いることができる。これらのビタミンは飲料一本当たり1日所要量(米国RDI基準:US2005/0003068記載:U.S.Reference Daily Intake)の少なくとも10質量%以上であることが好ましい。
【0035】
本発明の発泡性容器詰飲料には、ミネラルを更に含有させることができる。好ましいミネラルはカルシウム、クロム、銅、フッ素、ヨウ素、鉄、マグネシウム、マンガン、リン、セレン、ケイ素、モリブデン及び亜鉛である。特に好ましいミネラルはマグネシウム、リン及び鉄である。
【0036】
本発明の発泡性容器詰飲料には、非重合体カテキン類の苦味を抑制させるためにサイクロデキストリンを併用することができる。サイクロデキストリンは、α−サイクロデキストリン、β−サイクロデキストリン、γ−サイクロデキストリンが挙げられる。これらのサイクロデキストリンは、本発明の容器詰飲料中に好ましくは、0.005〜0.5質量%、さらに好ましくは0.02〜0.3質量%、特に好ましくは0.05〜0.25質量%となるように添加する。
【0037】
このように本発明の発泡性容器詰飲料には、茶由来の成分にあわせて、酸化防止剤、各種エステル類、色素類、乳化剤、保存料、調味料、野菜エキス類、花蜜エキス類、品質安定剤などの添加剤を単独、あるいは併用して配合しても良い。
【0038】
また、本発明の容器の発泡性容器詰飲料は、茶系飲料とすることも、非茶系飲料とすることもできる。茶系飲料としては、緑茶飲料等の不発酵茶飲料、烏龍茶飲料等の半発酵茶飲料、紅茶飲料等の発酵茶飲料が挙げられる。また、本発明の発泡性容器詰飲料は、機能性飲料とすることもでき、例えばエンハンスドウォーター、ボトルドウォーター、スポーツドリンク、ニアウォーター等の非茶系飲料とすることもできる。
【0039】
本発明の発泡性容器詰飲料のカロリーは、飲料100ml中に含まれるブドウ糖、果糖及びショ糖は1gにつき4kcalで算出し、エリスリトールは1gにつき0Kcalで算出する。ここで本発明の容器詰茶系飲料は、低カロリーである40kcal/240ml以下が好ましく、さらに好ましくは2〜35kcal/240ml以下、特に好ましくは3〜30kcal/240ml以下である。
【0040】
本発明の発泡性容器詰飲料に使用できる容器は、ポリエチレンテレフタレートを主成分とする成形容器(いわゆるPETボトル)、金属缶、金属箔やプラスチックフィルムと複合された紙容器、瓶などの通常の形態で提供することができる。ここでいう発泡性容器詰飲料とは希釈せずに飲用できるものをいう。
【0041】
本発明の発泡性容器詰飲料の製造は、従来の炭酸飲料製造法を用いればよく、例えば、非重合体カテキン類、甘味料および水を混合した溶液を作り、さらに果汁、香料、酸味料等を加えた調合液とし、この一定量をPETボトル等の容器に注入し、次いで炭酸水を充填するポストミックス方式と、非重合体カテキン類、甘味料、果汁と水を定量混合機で一定の比率で連続的に混合したものを冷却しながら炭酸ガスを圧入し、この調合液をPETボトル等の容器に充填するプレミックス方法が挙げられる。このようにして容器に充填された後、食品衛生法に定められた殺菌条件で、好ましくは59〜62℃の温度で10〜15分間程度加熱殺菌し、内容物の飲料液を殺菌処理する。
【実施例】
【0042】
非重合体カテキン類の測定
メンブランフィルター(0.8μm)でろ過し、次いで蒸留水で希釈した試料を、島津製作所製、高速液体クロマトグラフ(型式SCL−10AVP)を用い、オクタデシル基導入液体クロマトグラフ用パックドカラム L−カラムTM ODS(4.6mmφ×250mm:財団法人 化学物質評価研究機構製)を装着し、カラム温度35℃でグラジエント法により測定した。移動相A液は酢酸を0.1mol/L含有の蒸留水溶液、B液は酢酸を0.1mol/L含有のアセトニトリル溶液とし、試料注入量は20μL、UV検出器波長は280nmの条件で行った(通常カテキン類及びカフェインの濃度は、質量/容積%(%[w/v])で表すが、実施例中の含有量は液量を掛けて質量で示した)。
【0043】
ガス容積の測定
Gas Volume/Air Meter Model GVA−500(京都電子(株))を使用して測定した。
【0044】
風味の評価
パネラー5名により飲用試験を行った。評価基準は表1および表2の下欄に示した。
【0045】
保存試験
調製した飲料を37℃で4週間保存し、保存前後での飲料の色調変化を、5名のパネラーに目視で、表1及び表2の下欄記載の基準で評点をつけた。さらに、非重合体カテキン類を測定した。
【0046】
実施例1
市販の緑茶抽出物の精製物(三井農林(株)「ポリフェノンHG」)100gを90.0質量%エタノール900gに分散させ、30分熟成し、2号濾紙及び孔径0.2μmの濾紙で濾過し、水200mLを加えて減圧濃縮することによって精製物を得た。得られた精製物中の(A)非重合体カテキン類は15.2質量%、(C)非重合体カテキンガレート体類の割合は58.1質量%であった。得られた非重合体カテキン類組成物のうち75.0gをステンレス容器に投入し、イオン交換水で全量を1,000gとし、5質量%重炭酸ナトリウム水溶液3.0gを添加してpH5.5に調整した。次いで、22℃、150r/minの攪拌条件下で、イオン交換水1.07g中にキッコーマンタンナーゼKTFH(Industrial Grade、500U/g以上)0.27g(非重合体カテキン類に対して2.4%)を溶解した液を添加し、55分後にpHが4.24に低下した時点で酵素反応を終了した。次いで95℃の温浴にステンレス容器を浸漬し、90℃、10分間保持して酵素活性を完全に失活した後、25℃まで冷却した後に濃縮処理を行った。タンナーゼ処理後に得られた緑茶抽出物の精製物の非重合体カテキン類は15.0質量%、非重合体ガレート体率は45.2質量%であった。この緑茶抽出物の精製物のうち8.5gと、無水結晶果糖36.6g、エリスリトール7.5g、無水クエン酸1.0g、クエン酸3ナトリウム1.2g、L−アスコルビン酸0.5g、レモンライム香料1.0gを添加後2℃に冷却した炭酸水で全量1、000g(炭酸ガス2.2容積%)とし、このうち500gを耐圧性PETボトルに充填した。次に、60℃、12分間加熱殺菌処理を行った。この発泡性容器詰飲料の組成、風味評価結果及び保存試験結果を表1に示す。
【0047】
実施例2〜5
レモンライムの代わりに実施例1と同様にしてグレープフルーツ飲料、オレンジ飲料を製造した。コーラ飲料及びルートビア飲料では炭酸ガス3.5容積%で製造した。
【0048】
実施例6
レモンライム果汁1.0gを添加し、無水結晶果糖の代わりに無水結晶ブドウ糖36.6gを使用した以外は、実施例1と同様の飲料を製造した。
【0049】
比較例1
クエン酸3ナトリウムを15.0gに増量した以外は実施例1と同様の方法で飲料を製造した。
【0050】
比較例2
無水結晶果糖及びエリスリトールを使用しなかった以外は実施例1と同様の方法で飲料を製造した。
【0051】
比較例3
実施例1において、炭酸ガスを使用せずに飲料を製造した。
【0052】
比較例4
実施例1において、炭酸ガス5.0容積%で飲料を製造した。
【0053】
実施例7
実施例1で得られた緑茶抽出物の精製物5.3g、中国産緑茶抽出物粉末2.2g、無水結晶果糖36.6g、エリスリトール7.5g、L−アスコルビン酸0.5g、緑茶香料1.0gを添加後、2℃に冷却した炭酸水で全量1、000g(炭酸ガス2.2容積%)とした後、実施例1と同様の方法で飲料を製造した。この発泡性容器詰飲料の組成、風味評価結果及び保存試験結果を表2に示す。
【0054】
実施例8
実施例1で得られた緑茶抽出物の精製物8.5g、インド産紅茶抽出物粉末0.5g、無水結晶果糖36.6g、エリスリトール7.5g、L−アスコルビン酸0.5g、5%重曹水溶液2.0g、紅茶香料1.0gを添加後、2℃に冷却した炭酸水で全量1、000g(炭酸ガス2.2容積%)とした後、実施例1と同様の方法で飲料を製造した。この発泡性容器詰飲料の組成、風味評価結果及び保存試験結果を表2に示す。
【0055】
比較例5
L−アスコルビン酸の代わりにL−アスコルビン酸ナトリウム0.3gと5%重曹水溶液1.5gを配合した以外は実施例7と同様の方法で飲料を製造した。
【0056】
比較例6
実施例7において無水結晶果糖、エリスリトールを使用せずに実施例7と同様の方法で飲料を製造した。
【0057】
表1及び表2から明らかなように、高濃度の非重合体カテキン類、甘味料および炭酸ガスを含有する発泡性容器詰飲料は顕著に苦味が抑制され、長期の保存が可能であった。
【0058】
【表1】

【0059】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
茶抽出物の精製物を配合し、
(A)非重合体カテキン類を0.08〜0.5質量%、
(B)甘味料を0.0001〜20質量%、及び
(C)炭酸ガスを含有し、ガス容積が0.5容積%から4.0容積%であり、
(D)非重合体カテキン類の非エピ体率が5〜25質量%、
(A)非重合体カテキン類中の(E)ガレート体類の比率([(E)/(A)]×100)が5〜55質量%、
(F)pHが2.5〜5.1である発泡性容器詰飲料。
【請求項2】
(G)カフェインと(A)非重合体カテキン類との含有質量比[(G)/(A)]が0.0001〜0.16である請求項1記載の発泡性容器詰飲料。
【請求項3】
甘味料が果糖、ブドウ糖、ショ糖及び果糖ブドウ糖液糖から選ばれる1種以上を含有する請求項1又は2記載の発泡性容器詰飲料。
【請求項4】
甘味料が、糖アルコールを含有する請求項1〜3のいずれか1項記載の発泡性容器詰飲料。
【請求項5】
甘味料が、人工甘味料を含有する請求項1〜4のいずれか1項記載の発泡性容器詰飲料。
【請求項6】
さらに、アスコルビン酸、クエン酸、グルコン酸、コハク酸、酒石酸、乳酸、フマル酸、リン酸、リンゴ酸及びそれらの塩類から選ばれる1種以上を含有する請求項1〜5のいずれか1項記載の発泡性容器詰飲料。
【請求項7】
さらに、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、亜鉛及び鉄から選ばれる少なくとも1種以上のミネラルを含有する請求項1〜6のいずれか1項記載の発泡性容器詰飲料。
【請求項8】
さらに、イノシトール、チアミン塩酸塩、チアミン硝酸塩、リボフラビン、リボフラビン5’−リン酸エステルナトリウム、ナイアシン、ニコチン酸アミド、パントテン酸カルシウム、ピリドキシ塩酸塩及びシアノコバラミンから選ばれるビタミンB群、葉酸並びにビオチンから選ばれる1種以上を飲料1本当たり、1日所要量の10質量%以上含有する請求項1〜7のいずれか1項記載の発泡性容器詰飲料。
【請求項9】
ショ糖を1としたときの甘味度が2以上である請求項1〜8のいずれか1項記載の発泡性容器詰飲料。
【請求項10】
茶系飲料である請求項1〜9のいずれか1項記載の発泡性容器詰飲料。
【請求項11】
非茶系飲料である請求項1〜9いずれか1項記載の発泡性容器詰飲料。
【請求項12】
果汁、野菜汁及び香料から選ばれる1種以上を含有する請求項1〜11のいずれか1項記載の発泡性容器詰飲料。
【請求項13】
乳成分を含有する請求項1〜12のいずれか1項記載の発泡性容器詰飲料。
【請求項14】
エンハンスドウオーターである請求項11〜13のいずれか1項記載の発泡性容器詰飲料。
【請求項15】
カロリーが40Kcal/240ml未満である請求項1〜14のいずれか1項記載の発泡性容器詰飲料。
【請求項16】
(B)甘味料を0.0001〜20質量%及び(C)炭酸ガスを配合する、非重合体カテキン類含有容器詰飲料の苦味抑制方法。

【公開番号】特開2008−29321(P2008−29321A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−71802(P2007−71802)
【出願日】平成19年3月20日(2007.3.20)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】