発熱ガラスを用いた加熱調理器具
【課題】加熱調理される被加熱物の裏面にあたる被加熱面を表示させることができる加熱調理器具を供すること。
【解決手段】基材となる板ガラス110aの下面に、通電により発熱する発熱層112が設けられ、その発熱層112の発熱によって当該板ガラス110aを介してその上面に載置される被加熱物を加熱する、可視光透過性を有した加熱ガラス板110と、前記加熱ガラス板110の上面に載置された被加熱物の被加熱面の状態を視認可能に表示する、例えば反射鏡装置160とを備えて構成されている。
【解決手段】基材となる板ガラス110aの下面に、通電により発熱する発熱層112が設けられ、その発熱層112の発熱によって当該板ガラス110aを介してその上面に載置される被加熱物を加熱する、可視光透過性を有した加熱ガラス板110と、前記加熱ガラス板110の上面に載置された被加熱物の被加熱面の状態を視認可能に表示する、例えば反射鏡装置160とを備えて構成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は発熱ガラスを用いた加熱調理器具に係わり、特に加熱されている被加熱物の裏面を外部から観察するのに好適な加熱調理器具に関する。
【背景技術】
【0002】
食品を加熱調理するための加熱調理器具としては、いわゆるガスレンジ、オーブン、電子レンジ、金属調理器具の電磁誘導発熱を利用したいわゆるIH調理器など、種々のものが考案され、従来利用されてきている。このような調理器具を用いて食品の調理を行う際、火の通り具合を確かめるためには、普通フライ返しなどで調理されている食品を一部めくったり裏返したりして目視で被加熱面の状態を確認するか、のぞき窓などから食品の外観の変化を観察して加熱具合を推測する、あるいは串や温度計を食品に刺して確かめる、といったことが行われる。例えば特許文献1には、加熱中の調理物品を目視可能とするために、強化ガラス板の表面にヒータパターンを焼き付け形成したヒータ板を組み合わせて構成した、扉付き箱体10を備えた加熱調理器具が提案されている。
【特許文献1】特開平7−302677
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、前記従来の方法や特許文献1の構成によっても、食品の加熱調理中に器具の加熱調理面と接して加熱されている被加熱面の状態を直接観察したり表示させたりすることはできなかった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は上記の、及び他の課題を解決するためになされたもので、本発明の一態様は、食品を調理するための加熱調理器具であって、基材となる板ガラスの下面に、通電により発熱する発熱層が設けられ、その発熱層の発熱によって当該板ガラスを介してその上面に載置される被加熱物を加熱する、可視光透過性を有した加熱ガラス板と、前記加熱ガラス板の上面に載置された被加熱物の被加熱面の状態を視認可能に表示する被加熱面表示手段とを備えて構成されていることを特徴とする加熱調理器具である。
【0005】
前記加熱ガラス板を、前記板ガラスと隙間を隔てて固接されて前記発熱層との間に空気層を形成する下側板ガラスを備えた複層ガラスとして構成することができる。
【0006】
前記被加熱面表示手段は、前記被加熱面の像を反射させて当該被加熱面の像を前記加熱ガラス板の面外側方で受光することを可能とする反射鏡を有するものとすることができる。その反射鏡は、その反射面の被加熱面に対する角度が変えられるように構成してもよい。また、前記反射鏡によって反射された被加熱面の像を所望の場所から視認できるようにさらに反射させる第2の反射鏡を設けることができる。
【0007】
また、前記被加熱面表示手段は、前記被加熱面の像を撮影して映像信号として出力することができる撮像手段を有するものとすることができる。
【0008】
さらに、前記加熱ガラス板の発熱層に供給される電流の電流値又は通電時間、あるいはその両方を調整することができる制御部をさらに有するものとすることができる。また、前記加熱調理面の温度を測定する測温手段を有し、その測温手段での測定結果を前記制御部に入力してその制御部での電流値又は通電時間を制御するように構成してもよい。
【0009】
また、前記加熱ガラス板の加熱調理面に特定の食品の調理に適した被覆層を施工しておいてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の加熱調理器具によれば、加熱調理される食品等の被加熱物の裏側にあたる被加熱面を被加熱面表示手段によって表示させて外部から観察することができる。被加熱面表示手段に撮像手段を設ければ、外部のモニタ装置等に被加熱面を表示させて多人数で見ることができる。
【0011】
加熱ガラス板に空気層を有する複層ガラス構造を適用すれば、空気層の断熱効果によって加熱ガラス板下方への熱伝達が抑制され、被加熱物を効率よく加熱することができると共に、加熱ガラス板の下方が不必要に昇温することもない。
【0012】
加熱ガラス板の発熱層への電力供給を制御するための制御部を設ければ、被加熱面の状態を観察しながら適切に加熱の加減を調整することができる。
【0013】
加熱ガラス板の加熱調理面に適宜の被覆層を施工しておけば、食品等の被加熱物の焦げ付きを防ぎ、又加熱調理面の損傷を軽減したりすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明をその実施形態に即して添付図面を参照しつつ説明する。
【0015】
《第1実施形態》
本発明の第1実施形態に係る加熱調理器具を図1〜図7に示す。図1はその上方から見た平面図、図2は図1のII−II矢視断面図、図3は、図2のIII−III矢視断面図である。
【0016】
図1〜図3に図示するように、この実施形態の加熱調理器具100は、ほぼ水平に配置されるようになっている加熱ガラス板110と、その加熱ガラス板110を支持している正面支持板150a、背面支持板150b、及び側方支持板150cと、これらの支持板の外面に密接してその周囲を取り囲むように配設されている正面板130、背面板140、及び側板120と、反射鏡装置160(被加熱面表示手段)と、制御部190とを主に備えて構成されている。
【0017】
加熱ガラス板110は、基材として板ガラス110aを有する単板構成であり、この実施形態では矩形形状に形成されているが、その形状は矩形に限らず意匠的な効果等も考慮した任意の形状を採用してよい。板ガラス110aの上面はそのまま加熱調理面として直接食品等の被加熱物やフライ返し等の調理器具と接触するため、適宜の厚さを有する強化ガラスを使用する。加熱ガラス板110の一方の面(下面)のほぼ全体には、通電することにより発熱する発熱層112が形成されている。発熱層112は、典型的には光透過性を有する金属薄膜であり、スズ、金、銀、インジウム、亜鉛、チタン等の金属酸化物を用いて形成することができる。
【0018】
図4に加熱ガラス板110の上方から見た平面図を、図5に長手方向から見た同側面図を示す。基材である板ガラス110aの上面は加熱調理面118であり、その上に加熱調理すべき食品等の被加熱物が載置される。前記のように加熱調理面118は板ガラス110aの表面そのままでもよいが、食品や調理器具と接触するので、ガラス面の損傷を防いだり、食品とのなじみをよくしたりするためのコーティングを適宜施工することができる。発熱層112には、電極114が設けられる。この電極114は細長い帯状の導電性部材114aとその導電性部材114aの大部分を覆い不慮の短絡事故等を防止するための被覆材114bとを有し、図4、図5に示すように、板ガラス110aに設けられた発熱層112の両端部に沿って板ガラス110aの短辺のほぼ全幅にわたって付設され、これら2つの電極114の間にある発熱層112が電流路となるように構成される。電極114にはそれぞれ電極端子(図示せず)が設けられ、ここに後述するリード線116が接続される。なお、電極114としては、板ガラス110aとの間の熱膨張率の差異に起因する剥離や損傷を防ぐために、例えば日本国特許第3376544号に開示されているような波状構造のものを採用することができる。
【0019】
リード線116は、発熱層112の電極114を制御部190に接続する。制御部190は、電源PSからの電源電流を受けて、これを制御された電流として加熱ガラス板110の発熱層112に供給する機能を有する。制御部190は、もっとも簡単には電源電流を入り切りすることができる電源スイッチとして構成することができる。あるいは図示を省略するが、可変抵抗器等の電流可変手段、加熱ガラス板110の加熱調理面118表面の温度を測定してその測定結果に応じて供給電流を可変制御する制御器、過電流保護回路等の保安周辺回路などを必要に応じて設けることができる。電源PSとしては、商用交流電源(AC100V、50/60Hz)を用いるのが一般的であるが、使用条件に応じてそれ以外の電源を使用してもよい。本実施形態では、図1〜図3に示すように、電極114に接続されているリード線116は、後述する背面板140及び背面支持板150bの下方に設けられている通線穴142から外部へ引き出される。
【0020】
加熱ガラス板110は、正面支持板150a、背面支持板150b、側方支持板150c、計4枚を上方から見て矩形断面を呈するように筒形に配置固定してなる台座の上面にほぼ水平に載置される。図6、図7を参照されたい。各支持板150a〜150cは、それぞれほぼ矩形の可視光透過性板ガラスである。後述するように加熱ガラス板110の加熱調理面118表面温度は250℃程度に達するので、各支持板150a〜150cには耐熱強化ガラスを用いている。また、加熱ガラス板110の電極114が直接各支持板150a〜150cに接触するのを避け、また加熱ガラス板110に加えられた衝撃を吸収するため、加熱ガラス板110と各支持板150a〜150cとの間には略円座状のパッキン150eを介装している。本実施形態では、各支持板150a〜150cを組み合わせた台座の外形寸法は、加熱ガラス板110が外周縁からはみ出さないように、加熱ガラス板110の板ガラス110aよりもやや大となるように構成されている。このように筒形に組み合わされた支持板150a〜150cによって、加熱ガラス板110の下方には外気から隔離された閉鎖空間が形成され、外気に対する断熱性がもたらされるので、加熱ガラス板110の発熱層112が発生する熱量は下方には伝達されにくく、板ガラス110aを通じて加熱調理面118へ効率的に伝達される。
【0021】
前記正面支持板150a、背面支持板150b、側方支持板150cの外方にはそれぞれ密接して、正面板130、背面板140、側板120がそれぞれ設けられている。すなわち、正面板130、背面板140、側板120の計4枚はそれぞれ可視光透過性を有し、前記各支持板150a〜150cを取り囲むように筒形に組み合わされて加熱調理器具100の外側面を構成する。したがって、本実施形態の加熱調理器具100の側面から、前記支持板150a〜150cに囲まれた内部を視認することができる。特に図2、図7に明らかに図示されているが、正面板130、背面板140、側板120は、それぞれ前記各支持板150a〜150cよりも、概ね加熱ガラス板110の板ガラス110aの厚さとパッキン150eの厚さとの和の分だけ高くなるように設定されている。これにより、加熱ガラス板110の加熱調理面118の表面と正面板130、背面板140、側板120それぞれの上面とがほぼ面一となっている。加熱ガラス板110の板ガラス110a側面と正面板130、背面板140、側板120の各内側面との間の間隙は、シリコン樹脂系充填剤等の弾力性と耐熱性とを併せ持つ材料で充填される。なお、図示を省略するが、加熱ガラス板110の外周縁、あるいは前記加熱調理器具100の外側面上縁に沿って、加熱調理している食品や調味料が器具の外部へこぼれるのを防ぐための壁状枠体等を適宜設置することができる。
【0022】
各支持板150a〜150cの内方であって、加熱ガラス板110下方の空間には、反射鏡装置160が設置されている。反射鏡装置160は、平面鏡160aとこれを支持する支持台160bとを備えてなる。本実施例では支持台160bの側面が略三角形とされていて、正面板130側から見て平面鏡160aが奥から手前側にかけて所定の角度で下方に傾斜して設けられるようになっている。この傾斜角度は、正面板130の手前にいる観察者が、加熱ガラス板110の加熱調理面118上にある被加熱物の被加熱面がよく見えるように決定し設定すればよい。支持台160bを前記傾斜角度の調整が可能となるように傾動自在に構成することは適宜必要に応じて実施しうることである。
【0023】
前記反射鏡装置160に代えて、CCDカメラ等の撮像手段(図示せず)を加熱ガラス板110の下方に被加熱物の被加熱面が写るように設置して、外部のモニタ装置などへ映像信号を送出することができる構成としてもよい。
【0024】
また、図示は省略するが、平面鏡160aやCCDカメラに写る被加熱面の像がより明瞭となるように、この被加熱面を照明する器具を本調理器具の内部に設けてもよい。
【0025】
上記の構成を有する本実施形態の加熱調理器具によれば、食品等の被加熱物を加熱ガラス板110の上でその被加熱物の裏側である被加熱面を見ながら加熱調理することができる。
【0026】
《第2実施形態》
本発明の第2実施形態に係る加熱調理器具を図8〜図10に示す。図8は加熱調理器具200の上方から見た平面図、図9は図8のIX−IX矢視断面図、図10は図8のX−X矢視断面図である。本実施形態は前述した第1実施形態とその基本構成は同様であるので、構成が異なる部分について主に説明する。なお、同一あるいは対応する構成部分については、下二桁が同一の符号をもって示している。
【0027】
図8〜図10に図示するように、この実施形態の加熱調理器具200は、ほぼ水平に配置されるようになっている加熱ガラス板210と、その加熱ガラス板210を支持している正面支持板250a、背面支持板250b、及び側方支持板250cと、これらの支持板の外面に密接してその周囲を取り囲むように配設されている正面板230、背面板240、及び側板220と、反射鏡装置260とを主に備えて構成されている。供給電流の制御部は、第1実施形態の場合と同じであるので図示を省略している。
【0028】
本実施形態の加熱ガラス板210は、基材としての上板ガラス210a及び下板ガラス210bの間に発熱層212を狭持させてなる構成を有する。より詳しくは、上板ガラス210aと下板ガラス210bとの間に発熱層212と中間膜を介して接着してなる合わせガラス構造とすることができ、また発熱層212を挟むように上板ガラス210aと下板ガラス210bを重ね合わせ、それら両板ガラス210a、210bの周囲を被覆材で封着して固定させてもよい。加熱ガラス板210の平面形状は図示の矩形に限らず意匠的な効果等も考慮した任意の形状を採用してよい。板ガラス210a、210bとしては、それぞれ適宜の厚さを有する強化ガラスを使用する。前記のように、板ガラス210aと210bとの間には、ほぼその全面にわたって通電することにより発熱する発熱層212が形成されている。
【0029】
図13に加熱ガラス板210の上方から見た平面図を、図14に長手方向から見た同側面図を示す。上板ガラス210aの上面は加熱調理面218となっている。図9、図10から明らかなように、下板ガラス210bの外形寸法は上板ガラス210aよりも一回り小さく形成されていて、上板ガラス210a下面の長手方向両側部であって下板ガラス210bの外縁部から飛び出た小幅部に、帯状の電極214がそれぞれ発熱層212と導通するように設けられている。電極214の設置部分を含めて、上板ガラス210aと下板ガラス210bの外周縁で段差となっている部分は、非導電性の被覆材214aによって充填され封止されている。電極214にはそれぞれ電極端子(図示せず)が設けられ、ここにリード線216が接続されていて、発熱層212を図示しない制御部や電源へ接続するようになっている。
【0030】
加熱ガラス板210は、正面支持板250a、背面支持板250b、側方支持板250c、計4枚を上方から見て矩形断面を呈するように筒形に配置固定してなる台座の上面にほぼ水平に載置される。図11、図12を参照されたい。各支持板150a〜150cは、それぞれほぼ矩形の可視光透過性を有する耐熱強化ガラス板である。加熱ガラス板210と各支持板250a〜250cとの間には略ブロック状のパッキン250eを介装している。本実施形態では、各支持板250a〜250cを組み合わせた台座の外形寸法は、加熱ガラス板210が外周縁からはみ出さないように、加熱ガラス板210の上板ガラス210aよりもやや大となるように構成されている。第1実施形態の場合と同様に、このように筒形に組み合わされた支持板250a〜250cによって、加熱ガラス板210の発熱層212が発生する熱量は下方には伝達されにくく、板ガラス210aを通じて加熱調理面218へ効率的に伝達される。
【0031】
前記正面支持板250a、背面支持板250b、側方支持板250cの外方には、正面板230、背面板240、側板220がそれぞれ設けられ、それぞれが可視光透過性であって、本実施形態の加熱調理器具200の側面からその内部を視認することができる。第1実施形態と同様に、加熱ガラス板210の加熱調理面218の表面と正面板230、背面板240、側板220それぞれの上面とがほぼ面一となっている。加熱ガラス板210の上板ガラス210a側面と正面板230、背面板240、側板220の各内側面との間の間隙は、シリコン樹脂等の弾力性と耐熱性とを併せ持つシール材で封止されている。
【0032】
各支持板250a〜250cの内方であって、加熱ガラス板210下方の空間には、反射鏡装置260が設置されている。反射鏡装置260は、平面鏡260aとこれを支持する支持台260bとを備え、平面鏡260aと支持台260bとの間には球状ジョイントを備えた自在継ぎ手260cが介設されている。したがって、平面鏡260aは、自在継ぎ手260cの周りに自在に角度を変化させることができる。例えば、平面鏡260aを正面板230の方に向けて傾斜させれば、加熱調理器具200の正面にいる人が被加熱物の被加熱面を観察することができる。また平面鏡260aを左右側方、あるいは後方へ向けて傾斜させれば、それぞれ本加熱調理器具200の左右側面あるいは背面側にいる人が被加熱面を観察することができる。
【0033】
このように、上記の構成を有する本実施形態の加熱調理器具によれば、食品等の被加熱物を加熱ガラス板210の上でその被加熱物の裏側である被加熱面を見ながら加熱調理することができ、また反射鏡装置260の傾斜方向を種々変化させることにより、加熱調理器具200の周りのいろいろな方向から被加熱面を観察することができる。
【0034】
《第3実施形態》
本発明の第3実施形態に係る加熱調理器具を図15〜図18に示す。図15は加熱調理器具300の正面断面図、図16は図15の部分拡大断面図、図17は加熱調理器具300の側面図、図17は加熱調理器具300を上方から見た平面図である。前記第2実施形態の場合と同様に、第1及び第2実施形態の構成と異なる構成部分について主に説明する。なお、同一あるいは対応する構成部分について下二桁が同一の符号をもって示しているのも同様である。
【0035】
図15〜図17に図示するように、この実施形態の加熱調理器具300は、ほぼ水平に配置されるようになっている加熱ガラス板310と、その加熱ガラス板310を支持している4本の支持脚320と、反射鏡装置360とを主に備えて構成されている。供給電流の制御部は、第1、第2実施形態の場合と同じであるので図示を省略している。
【0036】
本実施形態の加熱ガラス板310は、基材としての上板ガラス310a及び下板ガラス310bの間に空気層310cが設けられている複層ガラスの構成を有する。その平面形状は図示の矩形に限らず意匠的な効果等も考慮した任意の形状を採用してよい。板ガラス310a、310bとしては、それぞれ適宜の厚さを有する強化ガラスを使用する。板ガラス310aの下面には、ほぼその全面にわたって通電することにより発熱する発熱層312が形成されている。
【0037】
上板ガラス310aの上面は加熱調理面318となっている。上板ガラス310aの下面の長手方向両側部に、帯状の電極314がそれぞれ発熱層312と導通するように設けられている。電極314の設置部分については、適宜の材質の封着材315によって上板ガラス310aと下板ガラス310bとの間が封止されるように充填されて電極314を被覆している。電極314の内方にはそれぞれ略中空角棒状のスペーサ319が介設されており、上板ガラス310aと下板ガラス310bとの間の間隔を保持して空気層310cを確保すると共に、スペーサ319内には乾燥剤が収装されて、空気層310cの湿度を抑制するようにしている。電極314にはそれぞれ電極端子(図示せず)が設けられ、ここにリード線(図示を略す)が接続されていて、発熱層312を図示しない制御部や電源へ接続するようになっている。なお、本実施形態の複層ガラス構成の加熱ガラス板310は、前記した第1及び第2実施形態において説明したような、筒形に組み合わせた支持板150a〜150cあるいは250a〜250cとともに用いることもできる。この場合、前記したような筒形支持板による断熱効果に加えて、加熱ガラス板310の空気層310cによる断熱効果も加えて得られるので、発熱層312が発生する熱量がよりいっそう効率的に加熱調理面318へ伝達されるようになる。
【0038】
本実施形態の説明に戻ると、加熱ガラス板310は、その四隅が略角柱状の支持脚320によってテーブルの天板のような形態で支持されている。図15、図17から明らかであるが、各支持脚320はその頂部正面で、断面L字型で略矩形平面の受け枠370cを備えており、受けクッション370bと横クッション370aとによって加熱ガラス板310の四辺部を支持している。前記の図示を省略したリード線は、電極314の電極端子部から引き出した後いずれかの支持脚320の内部を通して支持脚320の基部から取り出すように配線すれば、じゃまにならず外観上も好ましい。
【0039】
加熱ガラス板310下方の空間には、反射鏡装置360が設置されている。反射鏡装置360は、2枚の平面鏡360a1、360a2とこれらをそれぞれ支持する支持台360b1、360b2とを備えている。図16に示すように、2枚の平面鏡360a1、360a2は上方に向かって所定の角度をもって開いた略V字状の側断面を形成するように組み合わせられ、その位置に前記支持台360b1、360b2及びこれらを一定的に固接する台板380によってそれぞれ固定されている。本実施形態では2枚の平面鏡360a1、360a2がなす角度が略90度程度とされ、その突き合わせ部(V字の頂点)がほぼ加熱ガラス板310の一外側縁と一致する位置に設定されている。したがって、被加熱面の像を写す加熱ガラス板310直下の平面鏡360a1からの反射像は、これとV字に向かい合う平面鏡360a2によって略上方にさらに反射されることとなり、加熱ガラス板310の上方から2枚の平面鏡360a1、360a2を介して被加熱面を観察することができる。なお、支持台360b1、360b2を前記角度の調整が可能となるように傾動自在に構成することは適宜必要に応じて実施しうることである。
【0040】
このように、上記の構成を有する本実施形態の加熱調理器具によれば、食品等の被加熱物を加熱ガラス板310の上でその被加熱物の裏側である被加熱面を見ながら加熱調理することができ、特に加熱ガラス板310の上方から観察することができるため、被加熱面の状態を見ながら加熱調理を行う用途に好適である。
【0041】
《実験結果》
上述した第1実施形態の構成に略相当する構成を有する実験用加熱調理器具を製作して、通常の食品の加熱調理に要する実用温度まで加熱する性能が得られるかどうかを確認した。実験用加熱調理器具の概略構成と実験結果を図18に模式的に示す。
【0042】
(1)実験用加熱調理器具の構成
本願第1実施形態と同様の単板構成を有する加熱ガラス板(基材の強化板ガラスは、縦横214mm×358mm、厚さ5mm)を採用し、これを支持する台座は、厚さ5mmの板ガラス3枚で加熱ガラス板の三辺を支持するように耐熱テープで固接して構成した。そして、台座の開いている一側面を塞ぐようにやはり3枚の耐熱強化ガラスで前記台座を囲むように構成した側面板を設置した。加熱ガラス板の加熱調理面までの高さは約155mmとした。
【0043】
(2)実験結果
加熱ガラス板の発熱層にDC130Vの電圧を印加し、通電開始から1時間後の各部の温度を測定した。温度測定位置は×印で示している。
(a)加熱ガラス板の加熱調理面
加熱ガラス板の中央部は約250℃となり、周縁部でも220〜230℃となっていることから、一般の食品調理に必要とされる180℃以上の温度が十分に得られ、実用的な性能を有することが確認された。
(b)加熱ガラス板の下方
加熱ガラス板の下面においては70〜120℃程度になるものの、それより下方に10cm程度離れれば40〜60℃程度の温度に留まるため、安全に使用しうることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の第1実施形態を示す図であり、加熱ガラス板の上方から見た平面図である。
【図2】図1のII−II矢視断面図である。
【図3】図1のIII−III矢視断面図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係る加熱ガラス板の平面図である。
【図5】本発明の第1実施形態に係る加熱ガラス板の側面図である。
【図6】本発明の第1実施形態に係る支持板の構成を示す平面図である。
【図7】本発明の第1実施形態に係る支持板の構成を示す側面図である。
【図8】本発明の第2実施形態を示す図であり、加熱ガラス板の上方から見た平面図である。
【図9】図8のIX−IX矢視断面図である。
【図10】図8のX−X矢視断面図である。
【図11】本発明の第2実施形態に係る支持板の構成を示す平面図である。
【図12】本発明の第2実施形態に係る支持板の構成を示す側面図である。
【図13】本発明の第2実施形態に係る加熱ガラス板の平面図である。
【図14】本発明の第2実施形態に係る加熱ガラス板の側面図である。
【図15】本発明の第3実施形態を示す正面断面図である。
【図16】図15の部分拡大断面図である。
【図17】本発明の第3実施形態を示す側面図である。
【図18】本発明の第3実施形態を示す図であり、加熱ガラス板の上方から見た平面図である。
【図19】実験用加熱調理器具による実験結果を示す模式図である。
【符号の説明】
【0045】
100、200、300 加熱調理器具
110、210、310 加熱ガラス板
110a、210a、310a、210b、310b 板ガラス
112、212、312 発熱層
310c 空気層(加熱ガラス板310の)
160、260、360 反射鏡装置(被加熱面表示手段)
150a、150b、150c、250a、250b、250c 支持板
190 制御部
【技術分野】
【0001】
この発明は発熱ガラスを用いた加熱調理器具に係わり、特に加熱されている被加熱物の裏面を外部から観察するのに好適な加熱調理器具に関する。
【背景技術】
【0002】
食品を加熱調理するための加熱調理器具としては、いわゆるガスレンジ、オーブン、電子レンジ、金属調理器具の電磁誘導発熱を利用したいわゆるIH調理器など、種々のものが考案され、従来利用されてきている。このような調理器具を用いて食品の調理を行う際、火の通り具合を確かめるためには、普通フライ返しなどで調理されている食品を一部めくったり裏返したりして目視で被加熱面の状態を確認するか、のぞき窓などから食品の外観の変化を観察して加熱具合を推測する、あるいは串や温度計を食品に刺して確かめる、といったことが行われる。例えば特許文献1には、加熱中の調理物品を目視可能とするために、強化ガラス板の表面にヒータパターンを焼き付け形成したヒータ板を組み合わせて構成した、扉付き箱体10を備えた加熱調理器具が提案されている。
【特許文献1】特開平7−302677
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、前記従来の方法や特許文献1の構成によっても、食品の加熱調理中に器具の加熱調理面と接して加熱されている被加熱面の状態を直接観察したり表示させたりすることはできなかった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は上記の、及び他の課題を解決するためになされたもので、本発明の一態様は、食品を調理するための加熱調理器具であって、基材となる板ガラスの下面に、通電により発熱する発熱層が設けられ、その発熱層の発熱によって当該板ガラスを介してその上面に載置される被加熱物を加熱する、可視光透過性を有した加熱ガラス板と、前記加熱ガラス板の上面に載置された被加熱物の被加熱面の状態を視認可能に表示する被加熱面表示手段とを備えて構成されていることを特徴とする加熱調理器具である。
【0005】
前記加熱ガラス板を、前記板ガラスと隙間を隔てて固接されて前記発熱層との間に空気層を形成する下側板ガラスを備えた複層ガラスとして構成することができる。
【0006】
前記被加熱面表示手段は、前記被加熱面の像を反射させて当該被加熱面の像を前記加熱ガラス板の面外側方で受光することを可能とする反射鏡を有するものとすることができる。その反射鏡は、その反射面の被加熱面に対する角度が変えられるように構成してもよい。また、前記反射鏡によって反射された被加熱面の像を所望の場所から視認できるようにさらに反射させる第2の反射鏡を設けることができる。
【0007】
また、前記被加熱面表示手段は、前記被加熱面の像を撮影して映像信号として出力することができる撮像手段を有するものとすることができる。
【0008】
さらに、前記加熱ガラス板の発熱層に供給される電流の電流値又は通電時間、あるいはその両方を調整することができる制御部をさらに有するものとすることができる。また、前記加熱調理面の温度を測定する測温手段を有し、その測温手段での測定結果を前記制御部に入力してその制御部での電流値又は通電時間を制御するように構成してもよい。
【0009】
また、前記加熱ガラス板の加熱調理面に特定の食品の調理に適した被覆層を施工しておいてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の加熱調理器具によれば、加熱調理される食品等の被加熱物の裏側にあたる被加熱面を被加熱面表示手段によって表示させて外部から観察することができる。被加熱面表示手段に撮像手段を設ければ、外部のモニタ装置等に被加熱面を表示させて多人数で見ることができる。
【0011】
加熱ガラス板に空気層を有する複層ガラス構造を適用すれば、空気層の断熱効果によって加熱ガラス板下方への熱伝達が抑制され、被加熱物を効率よく加熱することができると共に、加熱ガラス板の下方が不必要に昇温することもない。
【0012】
加熱ガラス板の発熱層への電力供給を制御するための制御部を設ければ、被加熱面の状態を観察しながら適切に加熱の加減を調整することができる。
【0013】
加熱ガラス板の加熱調理面に適宜の被覆層を施工しておけば、食品等の被加熱物の焦げ付きを防ぎ、又加熱調理面の損傷を軽減したりすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明をその実施形態に即して添付図面を参照しつつ説明する。
【0015】
《第1実施形態》
本発明の第1実施形態に係る加熱調理器具を図1〜図7に示す。図1はその上方から見た平面図、図2は図1のII−II矢視断面図、図3は、図2のIII−III矢視断面図である。
【0016】
図1〜図3に図示するように、この実施形態の加熱調理器具100は、ほぼ水平に配置されるようになっている加熱ガラス板110と、その加熱ガラス板110を支持している正面支持板150a、背面支持板150b、及び側方支持板150cと、これらの支持板の外面に密接してその周囲を取り囲むように配設されている正面板130、背面板140、及び側板120と、反射鏡装置160(被加熱面表示手段)と、制御部190とを主に備えて構成されている。
【0017】
加熱ガラス板110は、基材として板ガラス110aを有する単板構成であり、この実施形態では矩形形状に形成されているが、その形状は矩形に限らず意匠的な効果等も考慮した任意の形状を採用してよい。板ガラス110aの上面はそのまま加熱調理面として直接食品等の被加熱物やフライ返し等の調理器具と接触するため、適宜の厚さを有する強化ガラスを使用する。加熱ガラス板110の一方の面(下面)のほぼ全体には、通電することにより発熱する発熱層112が形成されている。発熱層112は、典型的には光透過性を有する金属薄膜であり、スズ、金、銀、インジウム、亜鉛、チタン等の金属酸化物を用いて形成することができる。
【0018】
図4に加熱ガラス板110の上方から見た平面図を、図5に長手方向から見た同側面図を示す。基材である板ガラス110aの上面は加熱調理面118であり、その上に加熱調理すべき食品等の被加熱物が載置される。前記のように加熱調理面118は板ガラス110aの表面そのままでもよいが、食品や調理器具と接触するので、ガラス面の損傷を防いだり、食品とのなじみをよくしたりするためのコーティングを適宜施工することができる。発熱層112には、電極114が設けられる。この電極114は細長い帯状の導電性部材114aとその導電性部材114aの大部分を覆い不慮の短絡事故等を防止するための被覆材114bとを有し、図4、図5に示すように、板ガラス110aに設けられた発熱層112の両端部に沿って板ガラス110aの短辺のほぼ全幅にわたって付設され、これら2つの電極114の間にある発熱層112が電流路となるように構成される。電極114にはそれぞれ電極端子(図示せず)が設けられ、ここに後述するリード線116が接続される。なお、電極114としては、板ガラス110aとの間の熱膨張率の差異に起因する剥離や損傷を防ぐために、例えば日本国特許第3376544号に開示されているような波状構造のものを採用することができる。
【0019】
リード線116は、発熱層112の電極114を制御部190に接続する。制御部190は、電源PSからの電源電流を受けて、これを制御された電流として加熱ガラス板110の発熱層112に供給する機能を有する。制御部190は、もっとも簡単には電源電流を入り切りすることができる電源スイッチとして構成することができる。あるいは図示を省略するが、可変抵抗器等の電流可変手段、加熱ガラス板110の加熱調理面118表面の温度を測定してその測定結果に応じて供給電流を可変制御する制御器、過電流保護回路等の保安周辺回路などを必要に応じて設けることができる。電源PSとしては、商用交流電源(AC100V、50/60Hz)を用いるのが一般的であるが、使用条件に応じてそれ以外の電源を使用してもよい。本実施形態では、図1〜図3に示すように、電極114に接続されているリード線116は、後述する背面板140及び背面支持板150bの下方に設けられている通線穴142から外部へ引き出される。
【0020】
加熱ガラス板110は、正面支持板150a、背面支持板150b、側方支持板150c、計4枚を上方から見て矩形断面を呈するように筒形に配置固定してなる台座の上面にほぼ水平に載置される。図6、図7を参照されたい。各支持板150a〜150cは、それぞれほぼ矩形の可視光透過性板ガラスである。後述するように加熱ガラス板110の加熱調理面118表面温度は250℃程度に達するので、各支持板150a〜150cには耐熱強化ガラスを用いている。また、加熱ガラス板110の電極114が直接各支持板150a〜150cに接触するのを避け、また加熱ガラス板110に加えられた衝撃を吸収するため、加熱ガラス板110と各支持板150a〜150cとの間には略円座状のパッキン150eを介装している。本実施形態では、各支持板150a〜150cを組み合わせた台座の外形寸法は、加熱ガラス板110が外周縁からはみ出さないように、加熱ガラス板110の板ガラス110aよりもやや大となるように構成されている。このように筒形に組み合わされた支持板150a〜150cによって、加熱ガラス板110の下方には外気から隔離された閉鎖空間が形成され、外気に対する断熱性がもたらされるので、加熱ガラス板110の発熱層112が発生する熱量は下方には伝達されにくく、板ガラス110aを通じて加熱調理面118へ効率的に伝達される。
【0021】
前記正面支持板150a、背面支持板150b、側方支持板150cの外方にはそれぞれ密接して、正面板130、背面板140、側板120がそれぞれ設けられている。すなわち、正面板130、背面板140、側板120の計4枚はそれぞれ可視光透過性を有し、前記各支持板150a〜150cを取り囲むように筒形に組み合わされて加熱調理器具100の外側面を構成する。したがって、本実施形態の加熱調理器具100の側面から、前記支持板150a〜150cに囲まれた内部を視認することができる。特に図2、図7に明らかに図示されているが、正面板130、背面板140、側板120は、それぞれ前記各支持板150a〜150cよりも、概ね加熱ガラス板110の板ガラス110aの厚さとパッキン150eの厚さとの和の分だけ高くなるように設定されている。これにより、加熱ガラス板110の加熱調理面118の表面と正面板130、背面板140、側板120それぞれの上面とがほぼ面一となっている。加熱ガラス板110の板ガラス110a側面と正面板130、背面板140、側板120の各内側面との間の間隙は、シリコン樹脂系充填剤等の弾力性と耐熱性とを併せ持つ材料で充填される。なお、図示を省略するが、加熱ガラス板110の外周縁、あるいは前記加熱調理器具100の外側面上縁に沿って、加熱調理している食品や調味料が器具の外部へこぼれるのを防ぐための壁状枠体等を適宜設置することができる。
【0022】
各支持板150a〜150cの内方であって、加熱ガラス板110下方の空間には、反射鏡装置160が設置されている。反射鏡装置160は、平面鏡160aとこれを支持する支持台160bとを備えてなる。本実施例では支持台160bの側面が略三角形とされていて、正面板130側から見て平面鏡160aが奥から手前側にかけて所定の角度で下方に傾斜して設けられるようになっている。この傾斜角度は、正面板130の手前にいる観察者が、加熱ガラス板110の加熱調理面118上にある被加熱物の被加熱面がよく見えるように決定し設定すればよい。支持台160bを前記傾斜角度の調整が可能となるように傾動自在に構成することは適宜必要に応じて実施しうることである。
【0023】
前記反射鏡装置160に代えて、CCDカメラ等の撮像手段(図示せず)を加熱ガラス板110の下方に被加熱物の被加熱面が写るように設置して、外部のモニタ装置などへ映像信号を送出することができる構成としてもよい。
【0024】
また、図示は省略するが、平面鏡160aやCCDカメラに写る被加熱面の像がより明瞭となるように、この被加熱面を照明する器具を本調理器具の内部に設けてもよい。
【0025】
上記の構成を有する本実施形態の加熱調理器具によれば、食品等の被加熱物を加熱ガラス板110の上でその被加熱物の裏側である被加熱面を見ながら加熱調理することができる。
【0026】
《第2実施形態》
本発明の第2実施形態に係る加熱調理器具を図8〜図10に示す。図8は加熱調理器具200の上方から見た平面図、図9は図8のIX−IX矢視断面図、図10は図8のX−X矢視断面図である。本実施形態は前述した第1実施形態とその基本構成は同様であるので、構成が異なる部分について主に説明する。なお、同一あるいは対応する構成部分については、下二桁が同一の符号をもって示している。
【0027】
図8〜図10に図示するように、この実施形態の加熱調理器具200は、ほぼ水平に配置されるようになっている加熱ガラス板210と、その加熱ガラス板210を支持している正面支持板250a、背面支持板250b、及び側方支持板250cと、これらの支持板の外面に密接してその周囲を取り囲むように配設されている正面板230、背面板240、及び側板220と、反射鏡装置260とを主に備えて構成されている。供給電流の制御部は、第1実施形態の場合と同じであるので図示を省略している。
【0028】
本実施形態の加熱ガラス板210は、基材としての上板ガラス210a及び下板ガラス210bの間に発熱層212を狭持させてなる構成を有する。より詳しくは、上板ガラス210aと下板ガラス210bとの間に発熱層212と中間膜を介して接着してなる合わせガラス構造とすることができ、また発熱層212を挟むように上板ガラス210aと下板ガラス210bを重ね合わせ、それら両板ガラス210a、210bの周囲を被覆材で封着して固定させてもよい。加熱ガラス板210の平面形状は図示の矩形に限らず意匠的な効果等も考慮した任意の形状を採用してよい。板ガラス210a、210bとしては、それぞれ適宜の厚さを有する強化ガラスを使用する。前記のように、板ガラス210aと210bとの間には、ほぼその全面にわたって通電することにより発熱する発熱層212が形成されている。
【0029】
図13に加熱ガラス板210の上方から見た平面図を、図14に長手方向から見た同側面図を示す。上板ガラス210aの上面は加熱調理面218となっている。図9、図10から明らかなように、下板ガラス210bの外形寸法は上板ガラス210aよりも一回り小さく形成されていて、上板ガラス210a下面の長手方向両側部であって下板ガラス210bの外縁部から飛び出た小幅部に、帯状の電極214がそれぞれ発熱層212と導通するように設けられている。電極214の設置部分を含めて、上板ガラス210aと下板ガラス210bの外周縁で段差となっている部分は、非導電性の被覆材214aによって充填され封止されている。電極214にはそれぞれ電極端子(図示せず)が設けられ、ここにリード線216が接続されていて、発熱層212を図示しない制御部や電源へ接続するようになっている。
【0030】
加熱ガラス板210は、正面支持板250a、背面支持板250b、側方支持板250c、計4枚を上方から見て矩形断面を呈するように筒形に配置固定してなる台座の上面にほぼ水平に載置される。図11、図12を参照されたい。各支持板150a〜150cは、それぞれほぼ矩形の可視光透過性を有する耐熱強化ガラス板である。加熱ガラス板210と各支持板250a〜250cとの間には略ブロック状のパッキン250eを介装している。本実施形態では、各支持板250a〜250cを組み合わせた台座の外形寸法は、加熱ガラス板210が外周縁からはみ出さないように、加熱ガラス板210の上板ガラス210aよりもやや大となるように構成されている。第1実施形態の場合と同様に、このように筒形に組み合わされた支持板250a〜250cによって、加熱ガラス板210の発熱層212が発生する熱量は下方には伝達されにくく、板ガラス210aを通じて加熱調理面218へ効率的に伝達される。
【0031】
前記正面支持板250a、背面支持板250b、側方支持板250cの外方には、正面板230、背面板240、側板220がそれぞれ設けられ、それぞれが可視光透過性であって、本実施形態の加熱調理器具200の側面からその内部を視認することができる。第1実施形態と同様に、加熱ガラス板210の加熱調理面218の表面と正面板230、背面板240、側板220それぞれの上面とがほぼ面一となっている。加熱ガラス板210の上板ガラス210a側面と正面板230、背面板240、側板220の各内側面との間の間隙は、シリコン樹脂等の弾力性と耐熱性とを併せ持つシール材で封止されている。
【0032】
各支持板250a〜250cの内方であって、加熱ガラス板210下方の空間には、反射鏡装置260が設置されている。反射鏡装置260は、平面鏡260aとこれを支持する支持台260bとを備え、平面鏡260aと支持台260bとの間には球状ジョイントを備えた自在継ぎ手260cが介設されている。したがって、平面鏡260aは、自在継ぎ手260cの周りに自在に角度を変化させることができる。例えば、平面鏡260aを正面板230の方に向けて傾斜させれば、加熱調理器具200の正面にいる人が被加熱物の被加熱面を観察することができる。また平面鏡260aを左右側方、あるいは後方へ向けて傾斜させれば、それぞれ本加熱調理器具200の左右側面あるいは背面側にいる人が被加熱面を観察することができる。
【0033】
このように、上記の構成を有する本実施形態の加熱調理器具によれば、食品等の被加熱物を加熱ガラス板210の上でその被加熱物の裏側である被加熱面を見ながら加熱調理することができ、また反射鏡装置260の傾斜方向を種々変化させることにより、加熱調理器具200の周りのいろいろな方向から被加熱面を観察することができる。
【0034】
《第3実施形態》
本発明の第3実施形態に係る加熱調理器具を図15〜図18に示す。図15は加熱調理器具300の正面断面図、図16は図15の部分拡大断面図、図17は加熱調理器具300の側面図、図17は加熱調理器具300を上方から見た平面図である。前記第2実施形態の場合と同様に、第1及び第2実施形態の構成と異なる構成部分について主に説明する。なお、同一あるいは対応する構成部分について下二桁が同一の符号をもって示しているのも同様である。
【0035】
図15〜図17に図示するように、この実施形態の加熱調理器具300は、ほぼ水平に配置されるようになっている加熱ガラス板310と、その加熱ガラス板310を支持している4本の支持脚320と、反射鏡装置360とを主に備えて構成されている。供給電流の制御部は、第1、第2実施形態の場合と同じであるので図示を省略している。
【0036】
本実施形態の加熱ガラス板310は、基材としての上板ガラス310a及び下板ガラス310bの間に空気層310cが設けられている複層ガラスの構成を有する。その平面形状は図示の矩形に限らず意匠的な効果等も考慮した任意の形状を採用してよい。板ガラス310a、310bとしては、それぞれ適宜の厚さを有する強化ガラスを使用する。板ガラス310aの下面には、ほぼその全面にわたって通電することにより発熱する発熱層312が形成されている。
【0037】
上板ガラス310aの上面は加熱調理面318となっている。上板ガラス310aの下面の長手方向両側部に、帯状の電極314がそれぞれ発熱層312と導通するように設けられている。電極314の設置部分については、適宜の材質の封着材315によって上板ガラス310aと下板ガラス310bとの間が封止されるように充填されて電極314を被覆している。電極314の内方にはそれぞれ略中空角棒状のスペーサ319が介設されており、上板ガラス310aと下板ガラス310bとの間の間隔を保持して空気層310cを確保すると共に、スペーサ319内には乾燥剤が収装されて、空気層310cの湿度を抑制するようにしている。電極314にはそれぞれ電極端子(図示せず)が設けられ、ここにリード線(図示を略す)が接続されていて、発熱層312を図示しない制御部や電源へ接続するようになっている。なお、本実施形態の複層ガラス構成の加熱ガラス板310は、前記した第1及び第2実施形態において説明したような、筒形に組み合わせた支持板150a〜150cあるいは250a〜250cとともに用いることもできる。この場合、前記したような筒形支持板による断熱効果に加えて、加熱ガラス板310の空気層310cによる断熱効果も加えて得られるので、発熱層312が発生する熱量がよりいっそう効率的に加熱調理面318へ伝達されるようになる。
【0038】
本実施形態の説明に戻ると、加熱ガラス板310は、その四隅が略角柱状の支持脚320によってテーブルの天板のような形態で支持されている。図15、図17から明らかであるが、各支持脚320はその頂部正面で、断面L字型で略矩形平面の受け枠370cを備えており、受けクッション370bと横クッション370aとによって加熱ガラス板310の四辺部を支持している。前記の図示を省略したリード線は、電極314の電極端子部から引き出した後いずれかの支持脚320の内部を通して支持脚320の基部から取り出すように配線すれば、じゃまにならず外観上も好ましい。
【0039】
加熱ガラス板310下方の空間には、反射鏡装置360が設置されている。反射鏡装置360は、2枚の平面鏡360a1、360a2とこれらをそれぞれ支持する支持台360b1、360b2とを備えている。図16に示すように、2枚の平面鏡360a1、360a2は上方に向かって所定の角度をもって開いた略V字状の側断面を形成するように組み合わせられ、その位置に前記支持台360b1、360b2及びこれらを一定的に固接する台板380によってそれぞれ固定されている。本実施形態では2枚の平面鏡360a1、360a2がなす角度が略90度程度とされ、その突き合わせ部(V字の頂点)がほぼ加熱ガラス板310の一外側縁と一致する位置に設定されている。したがって、被加熱面の像を写す加熱ガラス板310直下の平面鏡360a1からの反射像は、これとV字に向かい合う平面鏡360a2によって略上方にさらに反射されることとなり、加熱ガラス板310の上方から2枚の平面鏡360a1、360a2を介して被加熱面を観察することができる。なお、支持台360b1、360b2を前記角度の調整が可能となるように傾動自在に構成することは適宜必要に応じて実施しうることである。
【0040】
このように、上記の構成を有する本実施形態の加熱調理器具によれば、食品等の被加熱物を加熱ガラス板310の上でその被加熱物の裏側である被加熱面を見ながら加熱調理することができ、特に加熱ガラス板310の上方から観察することができるため、被加熱面の状態を見ながら加熱調理を行う用途に好適である。
【0041】
《実験結果》
上述した第1実施形態の構成に略相当する構成を有する実験用加熱調理器具を製作して、通常の食品の加熱調理に要する実用温度まで加熱する性能が得られるかどうかを確認した。実験用加熱調理器具の概略構成と実験結果を図18に模式的に示す。
【0042】
(1)実験用加熱調理器具の構成
本願第1実施形態と同様の単板構成を有する加熱ガラス板(基材の強化板ガラスは、縦横214mm×358mm、厚さ5mm)を採用し、これを支持する台座は、厚さ5mmの板ガラス3枚で加熱ガラス板の三辺を支持するように耐熱テープで固接して構成した。そして、台座の開いている一側面を塞ぐようにやはり3枚の耐熱強化ガラスで前記台座を囲むように構成した側面板を設置した。加熱ガラス板の加熱調理面までの高さは約155mmとした。
【0043】
(2)実験結果
加熱ガラス板の発熱層にDC130Vの電圧を印加し、通電開始から1時間後の各部の温度を測定した。温度測定位置は×印で示している。
(a)加熱ガラス板の加熱調理面
加熱ガラス板の中央部は約250℃となり、周縁部でも220〜230℃となっていることから、一般の食品調理に必要とされる180℃以上の温度が十分に得られ、実用的な性能を有することが確認された。
(b)加熱ガラス板の下方
加熱ガラス板の下面においては70〜120℃程度になるものの、それより下方に10cm程度離れれば40〜60℃程度の温度に留まるため、安全に使用しうることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の第1実施形態を示す図であり、加熱ガラス板の上方から見た平面図である。
【図2】図1のII−II矢視断面図である。
【図3】図1のIII−III矢視断面図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係る加熱ガラス板の平面図である。
【図5】本発明の第1実施形態に係る加熱ガラス板の側面図である。
【図6】本発明の第1実施形態に係る支持板の構成を示す平面図である。
【図7】本発明の第1実施形態に係る支持板の構成を示す側面図である。
【図8】本発明の第2実施形態を示す図であり、加熱ガラス板の上方から見た平面図である。
【図9】図8のIX−IX矢視断面図である。
【図10】図8のX−X矢視断面図である。
【図11】本発明の第2実施形態に係る支持板の構成を示す平面図である。
【図12】本発明の第2実施形態に係る支持板の構成を示す側面図である。
【図13】本発明の第2実施形態に係る加熱ガラス板の平面図である。
【図14】本発明の第2実施形態に係る加熱ガラス板の側面図である。
【図15】本発明の第3実施形態を示す正面断面図である。
【図16】図15の部分拡大断面図である。
【図17】本発明の第3実施形態を示す側面図である。
【図18】本発明の第3実施形態を示す図であり、加熱ガラス板の上方から見た平面図である。
【図19】実験用加熱調理器具による実験結果を示す模式図である。
【符号の説明】
【0045】
100、200、300 加熱調理器具
110、210、310 加熱ガラス板
110a、210a、310a、210b、310b 板ガラス
112、212、312 発熱層
310c 空気層(加熱ガラス板310の)
160、260、360 反射鏡装置(被加熱面表示手段)
150a、150b、150c、250a、250b、250c 支持板
190 制御部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品を調理するための加熱調理器具であって、
基材となる板ガラスの下面に、通電により発熱する発熱層が設けられ、その発熱層の発熱によって当該板ガラスを介してその上面に載置される被加熱物を加熱する、可視光透過性を有した加熱ガラス板と、
前記加熱ガラス板の上面に載置された被加熱物の被加熱面の状態を視認可能に表示する被加熱面表示手段と、
を備えて構成されていることを特徴とする加熱調理器具。
【請求項2】
前記加熱ガラス板が、前記板ガラスと隙間を隔てて固接されて前記発熱層との間に空気層を形成する下側板ガラスを備えた複層ガラスとして構成されていることを特徴とする請求項1に記載の加熱調理器具。
【請求項3】
前記被加熱面表示手段は、前記被加熱面の像を反射させて当該被加熱面の像を前記加熱ガラス板の面外側方で受光することを可能とする反射鏡を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の加熱調理器具。
【請求項4】
前記反射鏡は、その反射面の被加熱面に対する角度が変えられるように構成されていることを特徴とする請求項3に記載の加熱調理器具。
【請求項5】
前記反射鏡によって反射された被加熱面の像を所望の場所から視認できるようにさらに反射させる第2の反射鏡を備えていることを特徴とする請求項3に記載の加熱調理器具。
【請求項6】
前記被加熱面表示手段は、前記被加熱面の像を撮影して映像信号として出力することができる撮像手段を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の加熱調理器具。
【請求項7】
前記加熱ガラス板の発熱層に供給される電流の電流値又は通電時間、あるいはその両方を調整することができる制御部をさらに有することを特徴とする請求項1から6までのいずれかに記載の加熱調理器具。
【請求項8】
前記加熱調理面の温度を測定する測温手段を有し、その測温手段での測定結果を前記制御部に入力してその制御部での電流値又は通電時間を制御することを特徴とする請求項7に記載の加熱調理器具。
【請求項9】
前記加熱ガラス板の加熱調理面に特定の食品の調理に適した被覆層が施工されていることを特徴とする請求項1から8までのいずれかに記載の加熱調理器具。
【請求項1】
食品を調理するための加熱調理器具であって、
基材となる板ガラスの下面に、通電により発熱する発熱層が設けられ、その発熱層の発熱によって当該板ガラスを介してその上面に載置される被加熱物を加熱する、可視光透過性を有した加熱ガラス板と、
前記加熱ガラス板の上面に載置された被加熱物の被加熱面の状態を視認可能に表示する被加熱面表示手段と、
を備えて構成されていることを特徴とする加熱調理器具。
【請求項2】
前記加熱ガラス板が、前記板ガラスと隙間を隔てて固接されて前記発熱層との間に空気層を形成する下側板ガラスを備えた複層ガラスとして構成されていることを特徴とする請求項1に記載の加熱調理器具。
【請求項3】
前記被加熱面表示手段は、前記被加熱面の像を反射させて当該被加熱面の像を前記加熱ガラス板の面外側方で受光することを可能とする反射鏡を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の加熱調理器具。
【請求項4】
前記反射鏡は、その反射面の被加熱面に対する角度が変えられるように構成されていることを特徴とする請求項3に記載の加熱調理器具。
【請求項5】
前記反射鏡によって反射された被加熱面の像を所望の場所から視認できるようにさらに反射させる第2の反射鏡を備えていることを特徴とする請求項3に記載の加熱調理器具。
【請求項6】
前記被加熱面表示手段は、前記被加熱面の像を撮影して映像信号として出力することができる撮像手段を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の加熱調理器具。
【請求項7】
前記加熱ガラス板の発熱層に供給される電流の電流値又は通電時間、あるいはその両方を調整することができる制御部をさらに有することを特徴とする請求項1から6までのいずれかに記載の加熱調理器具。
【請求項8】
前記加熱調理面の温度を測定する測温手段を有し、その測温手段での測定結果を前記制御部に入力してその制御部での電流値又は通電時間を制御することを特徴とする請求項7に記載の加熱調理器具。
【請求項9】
前記加熱ガラス板の加熱調理面に特定の食品の調理に適した被覆層が施工されていることを特徴とする請求項1から8までのいずれかに記載の加熱調理器具。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2008−272249(P2008−272249A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−119904(P2007−119904)
【出願日】平成19年4月27日(2007.4.27)
【出願人】(000223986)フィグラ株式会社 (68)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年4月27日(2007.4.27)
【出願人】(000223986)フィグラ株式会社 (68)
【Fターム(参考)】
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