説明

皮膚脱色素剤としての、プロテイン−キナーゼCベータ−1アイソフォームの発現を調節するヌクレオチド及びその使用

【課題】プロテイン−キナーゼCベータ−1アイソフォームの発現を調節するヌクレオチドを提供する。
【解決手段】プロテイン−キナーゼC(PKC)ベータ−1アイソフォーム(PKC−ベータ−1)をコードする遺伝子又は遺伝子産物とハイブリダイズ可能なオリゴヌクレオチド配列及びそれらの誘導体であり、これらは、化粧品組成物又は局所医薬組成物における皮膚用の脱色素剤又は漂白剤として使用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロテイン−キナーゼC(PKC)ベータ−1アイソフォーム(PKC−ベータ−
1)をコードする遺伝子又は遺伝子産物とハイブリダイズ可能なオリゴヌクレオチド配列及びそれらの誘導体に関する。
【0002】
本発明は、また、化粧品組成物又は皮膚科組成物における皮膚の脱色素剤又は漂白剤としての、これらの新規オリゴヌクレオチド配列の使用に関する。
【背景技術】
【0003】
ヒトにおいて、色素沈着は皮膚、毛嚢又は眼でのメラニン色素合成及び分布の結果として生じる。色素沈着は遺伝的に予め規定されているが、多くの内的又は外的要因によって調節される。ヒトの皮膚の色は、メラニン細胞により産生されるメラニン及びメラニン細胞の数、それらのチロシナーゼ活性及びそれらがメラニンを角化細胞へ輸送する能力、並びにメラニン粒を含有するメラノソームの大きさによって決定される。各個体に関しては、皮膚の色は主に紫外線(UV)照射の程度に依存する。換言すれば、各個体に関して、彼又は彼女が最少量のUV照射に曝された場合における彼又は彼女の最も薄い皮膚の色に対応する基礎的な皮膚色素沈着、及びより強力なUV照射に対応するより強い皮膚色素沈着、山の高高度で遭遇するような強いUV照射に長期間曝された後の彼又は彼女の最も濃い皮膚の色に対応する最大限の色素沈着までが存在する。
【0004】
さらに、周知のように、皮膚色素沈着の観点から世界の人々の集団には非常に多くの遺伝的多様性が存在する。したがって、人々の集団に依存して、上記で定義した基礎的な色素沈着に対応する皮膚の色は、非常に薄いものと非常に濃いものの両極端の間で変化する、より薄い又は濃いものとなり得る。人々の集団に依存して、基礎的な色素沈着と最大限の色素沈着との間の皮膚の色における相違もまた変化する。それ故に、薄い肌(基礎的な色素沈着)を持つある人々の集団に属する人々が、UV照射作用に対して速やかに及び/又は深刻に反応し、したがって、これらの人々が意図的に太陽に長い期間曝されていない場合であっても、容易により濃い日焼けを有し得ることは周知である。以下、本明細書において、そのような人々は「UV照射に非常に敏感な人々」という表現によって言及される。これは特にアジアに起源を有する人々又はある種のいわゆる混血集団に当てはまる。
【0005】
さらにそのうえ、特に顔又は手において、ある人々は皮膚を均一に見せないようにする、より濃い及び/又はより色のついた領域及び/又は斑点を発現する。これらの斑点は、表皮の角化細胞における高いメラニン濃度に起因する。
【0006】
皮膚の色素沈着形成メカニズムはメラニンの合成を伴う。本メカニズムは特に複雑で、図示されるような以下の主要なステップを含む:
チロシン→ドーパ→ドーパキノン→ドーパクロム→メラニン
【0007】
プロテインキナーゼCにより触媒されるリン酸化反応によって活性化されるチロシナー
ゼは、この連続する反応において作用する必須の酵素である。特に、チロシナーゼはチロシンのドーパ(ジヒドロキシフェニルアラニン)への変換反応を触媒し、ドーパのドーパキノンへの変換反応がメラニン色素形成を引き起こす。
【0008】
ある分子が、表皮メラニン細胞の活性を阻害することによって、それらの細胞に直接作用する場合、及び/又は、メラニン生合成における1つのステップをブロックする場合に
、該分子は脱色素剤として認識される。特に、該分子が、メラニン生成に関わる酵素の1
つを阻害する又は該分子がメラニン合成の一連の反応における化合物と反応する場合がこれである。
【0009】
公知の脱色素物質として、特に、ヒドロキノン及びその誘導体、アスコルビン酸及びその誘導体、胎盤抽出物、コジック酸、アルブチン、イミノフェノール(WO 99/22707)、
カルニチンとキノンとの会合(DE 19806947)、アミノフェノールのアミド誘導体(FR 2772607)、及びベンゾチアゾール誘導体(WO 99/24035)があげられる。これらの物質は多少の不都合を有し得る。これらは不安定であり、高濃度での使用を必要とし、作用形態において特異性を欠くかもしれないし、又は、これらは細胞毒性の可能性を有するか、もしくは刺激性であるかもしれない。
【0010】
効果的かつ無害な脱色素物質の局所使用は、化粧品及び皮膚科において特に必要とされる。これらの物質は特に、特発性黒皮症等のメラニン細胞の過剰活性による局所過剰色素沈着、染み(老人性黒子)と呼ばれる色素性斑点等の過剰活性及び軽度メラニン細胞増殖による局部過剰色素沈着、光感作又は損傷後回復等の偶発的過剰色素沈着、及び白斑等のある種の白斑症を治療するのに用いられる。後者の場合、皮膚の再色素沈着のかわりに、皮膚の色がより均一となるように、脱色素領域の周辺の色素沈着が、軽減される。
【0011】
脱色素物質はある人々、特にUV光線に非常に敏感な上記の人々、によって、皮膚の色をできるだけ薄く保つために、又は、少なくともUV光線の色素沈着効果を軽減するために、特に顔及び手の彼らの色を薄くするための皮膚の漂白剤としても用いられる。
【0012】
したがって、専門家に生じる問題は、公知物質の不都合のない(換言すれば、皮膚にとって非刺激性、非毒性及び/又は非アレルギー性の)安定な組成を有し、かつ、非常に低濃度においても細胞毒性なく活性な、ヒトの皮膚もしくは毛髪のための新規脱色素物質又は新規漂白剤の設計、製造又は単離である。
【0013】
メラニン細胞の機能異常により引き起こされる疾患、及び、特に白斑及び他の色素沈着疾患の治療のためのアンチセンスオリゴヌクレオチドの使用はWO99/25819に記載されている。これらの皮膚病理における低色素沈着は、テネイシンの異常に高い量の結果である。本明細書に記載されたオリゴヌクレオチドは、テネイシンの発現を調節することによって低色素沈着に対して作用する。
【0014】
一方、本発明の目的は、第一に、ほぼ均一な色素沈着の場合、皮膚又は毛髪を漂白し(換言すれば、それらの色素沈着を軽減する)、第二に皮膚の色素沈着が不均一な場合に過剰色素沈着を軽減する意図で、メラニン生成過程に作用する脱色素剤を提供することである。
【0015】
特許出願WO01/58918は、メラニン代謝で用いられる酵素であるチロシナーゼ又はチロシナーゼ関連タンパク質1をコードする遺伝子又は遺伝子の産物に特異的にハイブリダイズできるオリゴヌクレオチドを記載する。記載された配列は、皮膚もしくは毛髪のための脱色素剤又は漂白剤として作用する組成物を開発するのに用いることができる。
【0016】
本発明の発明者らは、驚くべきことに、メラニン代謝に特異的に関与する酵素に特異的にハイブリダイズし得るオリゴヌクレオチド配列以外のオリゴヌクレオチド配列が、皮膚もしくは毛髪のための脱色素剤又は漂白剤として、いかなる副作用もなく、有用であり、効果的であることを見出した。
【0017】
本発明の目的は、プロテインキナーゼCベータ−1(PKCベータ−1)をコードする遺伝
子又は遺伝子の産物に特異的にハイブリダイズすることができる7から25ヌクレオチドの間(好ましくは20ヌクレオチド)のオリゴヌクレオチドである。
【0018】
本発明の発明者らは、PKCベータ−1アイソフォームをコードする遺伝子又は該遺伝子
の産物(RNA等)に特異的にハイブリダイズすることができるオリゴヌクレオチドが脱色
素活性を有することを見出した。この活性は非常に低濃度においても存在し、これらのオリゴヌクレオチドの有用性を上昇させている。さらに、本発明によるこれらのオリゴヌクレオチドには細胞毒性がない。
【0019】
本発明によるオリゴヌクレオチドは、PKC−ベータ1の発現ひいてはその活性を調節す
ることによりメラニン生成メカニズムのインプット側に関与する。結果として、PKCベー
タ−1活性の減少が、メラニン細胞におけるチロシナーゼのリン酸化の減少につながる。
【0020】
本発明によるオリゴヌクレオチドは、従来使用されている物質で生じる問題への理想的な解決策を提供する。チロシナーゼ活性を阻害する公知の物質(特に、ヒドロキノン及びその誘導体、アスコルビン酸及びその誘導体、胎盤抽出物、コジック酸、アルブチン)は、その低い特異性のために容認できない多くの副作用を有している。
【0021】
したがって、本発明は過去の研究で遭遇した問題を、脱色素効果を得るために、活性化後に酵素を直接阻害するのではなく、リン酸化による酵素活性化を調節することによって解決する。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明において用いられる用語「オリゴヌクレオチド」は、ネイティブなホスホジエステル結合により互いに結合されるヌクレオシドを形成する天然の核酸塩基及びペンタフラノシル基(糖)から形成されたポリヌクレオチドを意味する。したがって、用語「オリゴヌクレオチド」は、天然のサブユニット又はそれらの密接なホモログから形成された天然種又は合成種をいう。
【0023】
用語「オリゴヌクレオチド」は、ヌクレオチド、好ましくはデオキシリボヌクレオチドを含むが、リボヌクレオチドをも含む構造を示す。該用語は、分子の一次構造のみに関わる。したがって、本用語は、二本鎖又は一本鎖DNA及び二本鎖又は一本鎖RNAを包含する。
【0024】
用語「オリゴヌクレオチド」は、天然のオリゴヌクレオチドの機能と同様の機能を果たすが、非天然の部分を有してもよい部分をも言い得る。オリゴヌクレオチドは、糖部分、核酸塩基部分又は修飾されたヌクレオチド間結合を有していてもよい。可能性のある修飾の中で、好ましい修飾は、糖部分の2’−O−アルキル誘導体、特に2’−O−エチルオキシメチルもしくは2’−O−メチル、及び/又は、ヌクレオチド間骨格についてのホスホロチオエートもしくはメチルホスホネートである。
【0025】
キメラオリゴヌクレオチドが、本発明の好ましい修飾に含まれる。オリゴヌクレオチドは、少なくとも2つの化学的に異なる領域を有し、それぞれが少なくとも1つのヌクレオ
チドを含む。特に、それらは、例えば、より優れた生物学的安定性、バイオアべイラビリティの上昇、細胞内在化の上昇又は標的RNAに対する親和性の上昇等の1以上の有益な特性を与える修飾されたヌクレオチドを含む1つ又は複数の領域からなる。
【0026】
好ましくは、該ヌクレオチド間骨格は、全部又は一部において、ホスホジエステル、又はホスホロチオエート、又はメチルホスホネート、あるいは、ホスホジエステル及び/又はホスホロチオエート及び/又はメチルホスホネート結合の組合せからなり得る。
【0027】
用語「オリゴヌクレオチド」は、プラスミドタイプの環状投与ベクター又は核酸もしくはペプチド酸タイプの線形投与ベクターが移植されたオリゴヌクレオチドをも言い得る。
【0028】
本発明において、用語:
−「ハイブリダイズできる」又は「ハイブリダイゼーション」は、二重らせんの二重鎖、又はオリゴヌクレオチドが二本鎖からなる場合には三重鎖を形成する、2本の核酸鎖上の相補的塩基対間のワトソン−クリック対合としても公知の、水素結合の形成を意味するのに用いられる。
【0029】
同一の長さの2つの核酸配列間の相補性の程度は、アラインメントさせた後に第二の配列と相補的な配列と第一の配列とを比較することにより決定される。これら2つの配列間の相補性の程度を得るために、上記比較した2つの配列間のヌクレオチドが同一である同一位置の数を決定し、この同一位置の数を全位置数で割り、得られた結果に100をかけることにより、相補性の程度が計算される。
【0030】
−「PKCをコードする遺伝子」は、この遺伝子のイントロン及びエキソンを含むPKCのゲノム配列を意味する。
【0031】
−「PKCベータ−1」は、PKCのベータ−1アイソフォームを意味する。
【0032】
−「PKCをコードする遺伝子の産物」は、メッセンジャーRNA配列を意味する。
【0033】
本発明のオリゴヌクレオチドは、好ましくは、PKCベータ−1アイソフォームをコードする遺伝子又は遺伝子の産物に特異的にハイブリダイズする。特に、本発明のオリゴヌクレオチドはPKCをコードする遺伝子のDNAと、及び/又は、これらの遺伝子由来のmRNAとハイブリダイズできる。本発明のオリゴヌクレオチドは、特異的にハイブリダイズするのに十分同一なヌクレオチドを含む。この性質は、通常「アンチセンス」と称される。
【0034】
本発明において、用語「特異的ハイブリダイゼーション」は、特に、特異的結合が要求される条件下で、非標的配列へのオリゴヌクレオチドの特異的結合を避けるのに十分な程度の相補性があることを意味する。特異的にハイブリダイズするのに、オリゴヌクレオチドが標的核酸配列と100%の相補性を有する必要はないことが分かる。特に、少なくとも約80%に相当する相補性の程度を有するオリゴヌクレオチドは、標的として選択された核酸と特異的にハイブリダイズできる。
【0035】
PKCによって行われるリン酸化によるチロシナーゼの活性化の役割及びメラニン生成におけるチロシナーゼの重要な役割は公知である。発現を調節するための、酵素又は蛋白質及びベータ−1PKCをさえコードするメッセンジャーRNAに対するオリゴヌクレオチドの使用も公知である。
【0036】
しかしながら、メラニン生成におけるプロテインキナーゼCのベータ−1アイソフォームの役割は明確には知られていなかった。PKCの普遍的な性質は、従来の阻害剤の作用の非特異性が皮膚科又は医薬的使用のためには容認できないことを意味する。さらに、PKCベータの従来の阻害剤は、ベータ−1及びベータ−2アイソフォームを対象とすることから、皮膚に存在する細胞(例えば、ランゲルハンス細胞)がPKCベータ−2活性を有するので、メラニン細胞に特異的ではない。
【0037】
本発明の発明者により実現された技術は、PKCベータ及びPKC一般の他のアイソフ
ォームを維持することによって、ベータ−1アイソフォームへの特異的作用を得るのに用いることができる唯一の技術である。さらに、本技術は脱色素の手段として未だ用いられていない。
【0038】
本発明のオリゴヌクレオチドは、メッセンジャーRNA又は遺伝子に直接ハイブリダイズするように決定される。したがって、それらは遺伝子によって産生されるPKCベータ−1の量の最終的調節を可能にする。
【0039】
好ましい一実施形態において、本発明のオリゴヌクレオチドは、PKCベータ−1をコードする遺伝子をコードする、又は、コードしない任意の1つの5’から3’領域と非特異的にハイブリダイズできる。
【0040】
より好ましい一実施形態において、オリゴヌクレオチド配列は以下の意味を有する配列番号1から配列番号5の配列のうちの1つである。
−配列番号1:ACACCCCAGGCTCAACGATG
−配列番号2:TGG AGT TTG CAT TCA CCT AC
−配列番号3:AAA GGC CTC TAA GAC AAG CT
−配列番号4:GCC AGC ATC TGC ACC GTG AA
−配列番号5:CCG AAG CTT ACT CAC AAT TT
【0041】
さらにより好ましい一実施形態において、この配列は配列番号1及び配列番号4の配列の1つであり、より具体的には配列番号1の配列である。
【0042】
本発明の他の好ましい実施形態において、オリゴヌクレオチドは、その糖部分、その核酸塩基部分又はそのヌクレオチド間骨格において、上記オリゴヌクレオチドに改善された物理化学的特性を与える1つ又は複数の化学的修飾を含む。
【0043】
「改善された物理化学的特性」とは、バイオアベイラビリティの上昇、標的配列に対する親和性の上昇、細胞内在化の上昇、又はより優れた生物学的安定性、又は細胞内ヌクレアーゼの存在下での安定性の上昇等の、本発明のオリゴヌクレオチドの望ましい特性を意味する。
【0044】
例えば、これらの特性を与え得るある修飾は、ヌクレオシドの糖部分における2’−O−アルキル及び2’−O−フルオロ誘導体、及び、ヌクレオチド間骨格におけるホスホロチオエート誘導体もしくはメチルホスホネート誘導体である。
【0045】
本発明の好ましい一実施形態において、オリゴヌクレオチドは以下のように化学的に修飾される:
−そのヌクレオチド間骨格のホスホジエステル基の一部がホスホロチオエート基により置換される。
−そのヌクレオチド間骨格においてホスホジエステル基の一部がメチルホスホネート基により置換される。
−全てのホスホジエステル基がホスホロチオエート基により置換される。
−全てのホスホジエステル基がメチルホスホネート基により置換される。
−ホスホジエステル基が完全にもしくは部分的にホスホロチオエート基により及び/又はメチルホスホネート基により置換される。
−線形の核酸もしくはペプチド酸タイプ投与ベクター又は環状プラスミドタイプ投与ベクターがヌクレオチドに移植されている。
【0046】
本発明の他の目的は、上述したオリゴヌクレオチド及び美容上許容される媒質を含む化
粧品組成物である。
【0047】
そのような組成物は、必要とされる効果を増強する1又は複数の活性な剤をも含み得る。
【0048】
純粋で使用されるか、これらの分子を含む抽出物に由来する、本発明のオリゴヌクレオチドに関連して使用され得る上記活性な剤は、特に以下の化合物である:チロシナーゼ遺伝子発現産物に対するアンチセンスオリゴヌクレオチド、チロシナーゼ関連蛋白質1(TRP−1)遺伝子発現産物に対するアンチセンスオリゴヌクレオチド、エラグ酸及びその誘導体;ヒドロキノン;アルブチン;レゾルシノール及びその誘導体;ビタミンC及びその誘導体;パントテン酸スルホン酸塩及びその誘導体;コジック酸;胎盤抽出物(les extraits placentaires);アルファ−メラニン細胞刺激ホルモン(α−MSH)もしくはその受容体又は副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)を直接的に又は間接的に妨害する分子;グリセリン、グリコール又はプロピレングリコール等のポリオール;ビタミン;サリチル酸及びその誘導体等の角質溶解及び/又は落屑剤;乳酸又はリンゴ酸等のアルファ−ヒドロキシ酸、単独又はグラフト;アスコルビン酸及びその誘導体;リポソーム製剤又はリポソーム製剤ではないレチンアルデヒド等のレチノイド及びカロテノイド;レチノール及びパルミチン酸エステル、プロピオン酸エステル又は酢酸エステルのようなその誘導体、ベータ−カロテン、単独で又は組み合せて服用する抗糖化剤及び/又は抗酸化剤、例えば、トコフェロール及びその誘導体、エルゴチオネイン、チオタウリン、ヒポタウリン、アミノグアニジン、チアミンピロリン酸、ピリドキサミン、リジン、ヒスチジン、アルギニン、フェニルアラニン、ピリドキシン、アデノシン三リン酸;グリチルレチン酸ステアリル等の抗炎症剤;無痛化剤及びそれらの混合物;並びに、メトキシケイ皮酸オクチル、ブチルメトキシジベンゾイルメタン、酸化チタニウム及び酸化亜鉛等の化学的又は物理的太陽光フィルター;並びに、デオキシリボ核酸及び/又は核酸。
【0049】
配合禁忌の場合、これらの活性な剤及び/又はこれらのオリゴヌクレオチドは、小球体、特に、フランス特許FR2534487に記載されるようなイオン性又は非イオン性両親媒性脂質から形成される小胞及び/又はナノパーティクル及び/又はナノスフェアに組み込まれてもよい。
【0050】
本発明の化粧品組成物は、局所使用に適切であり、それ故に美容上許容される媒質(換言すれば、皮膚に適合する)を含む。
【0051】
本発明のオリゴヌクレオチド配列は、好ましくは、化粧品組成物の全重量の0.00001%から10%まで、より好ましくは0.0003%から3%まで変化する量で存在し得る。
【0052】
本発明の組成物は、局所適用のための任意の通常用いられる生薬の形態、特に、水性、水性アルコール又は油性溶液、水中油型又は油中水型又は多重エマルション、水性又は油性ゲル、液剤、ペースト又は固形無水生成物、ナノスフェア及びナノカプセル等の高分子相中の油性分散系、又はさらにとりわけフランス特許FR2534487に記載されるようなイ
オン及び/又は非イオン型脂質小胞の形態であり得る。
【0053】
本組成物は、多かれ少なかれ流体であり得、白色又は有色のクリーム、ポマード、乳液、ローション、セラム、ペースト又は発泡体の形態であり得る。それはエアロゾルの形態で皮膚に適用してもよい。それは、パウダー又はスティック形態等の他の固形形態でもあり得る。それは、顔面又は手の斑点に対する局所適用に用いられるパッチ、ペンシル、ブラシ又は塗布具の形態でもあり得る。それは、ケア製品及び/又は化粧品として用いられ得る。
【0054】
公知の様式において、本発明の組成物は、親水性又は親油性ゲル、親水性又は親油性活性成分、保存剤、抗酸化剤、溶媒、着臭剤、充填剤、フィルター、顔料、臭気吸収剤及び着色物質等の化粧品分野で通常用いられる添加物を含んでいてもよい。これらの異なる添加剤の量は、考慮される分野において通常用いられる通りである。性質に依存して、これらの添加物は、脂肪相、水相、脂質小胞及び/又はナノパーティクル中に添加され得る。
【0055】
本発明の好ましい一実施形態において、化粧品学的組成物は、油と、ステアリン酸PEG
−20等の脂肪酸とポリエチレングリコールとのエステル及びステアリン酸グリセリン等の脂肪酸とグリセリンとのエステルの中から選択される乳化剤と、共乳化剤とを含むエマルションの形態である。
【0056】
本発明の化粧品組成物がエマルションの場合、脂肪相の比率は組成物の全重量に準拠して5から80重量%まで、好ましくは5から50重量%まで変化し得る。エマルション形態の組成物において用いられる油、乳化剤、共乳化剤は、考慮される分野において通常用いられるものの中から選択される。乳化剤及び共乳化剤は、組成物の全重量に比して0.3重量%から30重量%まで、好ましくは0.5重量%から20重量%まで変化する比率で組成物中に存在する。
【0057】
本発明のオリゴヌクレオチドと共に用いられ得る油としては、鉱物油(ワセリン油)、植物由来油(アボカド油、大豆油)、動物由来油(ラノリン)、合成油(ペルヒドロスクアレン)、シリコーン油(シクロメチコン)及びフッ素油(ペルフルオロポリエーテル)があげられる。脂肪アルコール(セチルアルコール)、脂肪酸、ワックス(カルナバワックス、オゾケライト)も脂肪材料として用いられ得る。
【0058】
例えば、本発明のオリゴヌクレオチドと共に用いられ得る乳化剤又は共乳化剤としては、ステアリン酸PEG20等の脂肪酸とポリエチレングリコールとのエステル、及び、ステアリン酸グリセリン等の脂肪酸とグリセリンとのエステルがあげられる。
【0059】
本発明のオリゴヌクレオチドと共に用いられ得る親水性ゲル化剤としては、特に、カルボキシビニルポリマー(カルボマー)、アクリル酸/アルキルアクリル酸コポリマー等のアクリル系コポリマー、ポリアクリルアミド、ポリサッカライド、天然ゴム及び粘土があげられる。親油性ゲル化剤としては、ベントンのような修飾された粘土、脂肪酸の金属塩、疎水性シリカ及びポリエチレンがあげられる。
【0060】
本発明の別の目的は、化粧品組成物の製造のための、PKCベータ−1をコードする遺伝子の転写産物に対するオリゴヌクレオチド配列の使用である。
【0061】
本化粧品組成物は、ヒトの皮膚及び/又は毛髪を脱色素及び/又は漂白するのに有用である。
【0062】
本発明の別の目的は、特発性黒皮症等のメラニン細胞の過剰活性による局所過剰色素沈着、色素性の染み(光線性の黒子)等の過剰活性及び良性のメラニン細胞増殖による局部過剰色素沈着、光感作又は損傷後回復等の偶発的過剰色素沈着の治療又は予防のための、並びに、白斑等のある種の白斑症の治療のために設計された局所医薬組成物の製造のための、メラニン合成を阻害する活性成分としての、少なくとも1つのオリゴヌクレオチドの使用である。
【0063】
本発明の好ましい一実施形態において、使用は、本発明のオリゴヌクレオチドが上記局所医薬組成物の全重量の0.00001%から10%、好ましくは0.0003%から3%を占めること
を特徴とする。
【0064】
該医薬組成物は、1又は数種の活性成分とともに同時に、別々で又はある期間にわたって投与される。
【0065】
以下の実施例は、本発明を示すが、これらは限定的なものではない。
【0066】
in vitro培地における安定性の理由及び標準的技法に従うために、実施例2から4はホスホロチオエート誘導体を用いて行い、実施例5から12は無差別にホスホロチオエート又はホスホジエステル誘導体を用いて行った。
【0067】
以下の実施例における全てのパーセンテージは、特に他に述べない限り、重量で与えられる。
【実施例】
【0068】
実施例1:オリゴヌクレオチドの合成
オリゴヌクレオチドは、ホスホラミダイト誘導体の標準的な化学を用いて、製造者のプロトコルを用いて自動合成機(Perseptive Biosystems Expedite modele 8909)により合成した。β−シアノエチルジイソプロピルホスホラミダイトは、Perseptive Biosystems
社により供給された。ホスホジエステルオリゴヌクレオチドについては、亜リン酸エステルの酸化工程をヨウ素溶液を用いて行った。ホスホロチオエートオリゴヌクレオチドに関しては、亜リン酸エステルの酸化工程は3H-1,2-ベンゾジチオール-3-オン 1,1-ジオキシ
ドの0.05M溶液を用いて無水アセトニトリル中で行った。カラム(Controlled Pore Glass,
Perseptive Biosystems)の切断及び33%アンモニア溶液で55℃で18時間処理することにより配列全体を脱保護した後、オリゴヌクレオチドを酢酸ナトリウムの存在下エタノール中で沈殿させることにより精製した。次いで、塩化ナトリウム勾配による溶出を用いたイオン交換クロマトグラフィーによって、及び、酢酸トリエチルアンモニウムの存在下でアセトニトリル勾配による溶出を用いたC18逆相クロマトグラフィーによって、高圧液体ク
ロマトグラフィーの検討を行った。
【0069】
例えば、以下のオリゴヌクレオチドを合成した。それらを表1に記載する。本表には、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4及び配列番号5とナンバリングされた5つの配列がある。以下の実施例で報告されるように、より具体的には配列番号1の配列について、それらの脱色素活性に関する研究を行った。
【0070】
表1において配列の各末端の下に記載された数字は、元の配列におけるオリゴヌクレオチドの位置を示す。
【0071】
配列は、ベータ1型プロテインキナーゼCをコードするメッセンジャーRNAのいわゆる「HSPB1A」(Genbank accession number X06318)配列に由来する。
【0072】
比較目的及びPKCベータ1をコードする遺伝子又は遺伝子の産物に関する本発明のオリ
ゴヌクレオチドの特異的な性質を確認するために、本発明の配列番号1に基づくオリゴヌクレオチド、すなわち表1において配列番号6として言及される「センスコントロール」配列(配列番号1の配列における塩基の順序を逆にしたものからなる)もまた合成した。
【0073】
【表1】

【0074】
実施例2:ウエスタンブロットによるメラニン細胞に対する配列番号1の配列の抗PKCベ
ータ1活性
M4Beuメラニン細胞は、ヒトメラノーマの単離された細胞である(R Jacubovich and
J.F. Dore Cancer Immunol. Immunother., 7 (1979), 59-64)。
【0075】
これらの細胞のために用いる培地は、10%ウシ胎児血清(Gibco, Paisley, GB)及び4μg/ml濃度のゲンタマイシンを添加したダルベッコ改変イーグル培地である。
【0076】
M4Beu細胞を、培地中1μMで配列番号1又は配列番号6を用いて、ボックスあたり500000細胞で播種し、配列番号1又は配列番号6を用いて3日間に一度、細胞がコンフルエ
ンスになるまで、培地を交換し、最終処理後24時間で細胞を回収した。
【0077】
細胞がコンフルエントになったら、培地を除去し、細胞をPBSで2回洗浄した。次いで、細胞を剥離により回収し、200μlの完全溶解緩衝液に加えた。ライセートは−80℃
で凍結した。細胞ライセートを7μmの振幅で2×10秒間のソニケーションにより得た。
【0078】
細胞ライセート蛋白質を、ブラッドフォード比色法を用いて、及び、Biorad kit micro
methodを用いて解析した(参考: Bio-Rad protein assay 500-0002, Hercules CA, USA)。
【0079】
蛋白質の電気泳動は、Laemmli法(1970)に従った不連続緩衝液中で、変性及び還元的
条件下で7.5%の1mm厚のポリアクリルアミドミニゲルにて行った。7.5%T、2.7%Cのゲルを分子量30〜200kDaの蛋白質を分離するのに用い、PKCβをゲルの中間に移動させた。
【0080】
15μgの細胞ライセート蛋白質を、一定容量を沈着させるために15又は20μlの溶解緩衝液で沈着させた。4又は5μlの4xマイグレーションブルーをライセートに加え、次いで
蛋白質を変性させるために5分間95%に加熱した。
【0081】
電気泳動は冷却下、一定の電流及び限定されない電圧で行った。
【0082】
電気泳動後、蛋白質を再生するために、ゲルをトランスファー緩衝液で洗浄した。良好な機械的強度及び高い蛋白質固定化能力を有するPVDF(ポリビニリデンジフルオライド)膜もまた、同じトランスファー緩衝液中で平衡化した。
【0083】
トランスファーは、PVDF膜上でのゲルの外側にある蛋白質の電気溶出により行った。装置、Trans-blot SD (semi-dry cell)、はトランスファーを水平配置にする。特定の部位
を中和するために、膜をTBS-T緩衝液に溶解させた半脱脂粉乳(Regilait(登録商標))中
に置いた。
【0084】
膜を洗浄し、次いで一次抗体(換言すれば、ベータI又はベータII抗PKC)とともに室温で一時間撹拌しながらインキュベートした。
【0085】
一次抗体はベータI抗PKCウサギ又はベータIIヒトポリクローナル抗体であり、0.02μg/mlで用いた(Santacruz Biotechnology, Santa Cruz, CA, USA)。過剰な一次抗体を除去するために、膜をTBS-Tで洗浄し、次いで二次抗体とともに室温で一時間インキュベートした。二次抗体はセイヨウワサビペルオキシダーゼを結合させたサル由来の抗ウサギ(Amersham, Buckinghamshire, GB)である。TBS-T中で連続的に洗浄操作することにより、過剰な二次抗体を除去した。
【0086】
蛋白質を、ペルオキシダーゼの基質としてルミノールを用いた化学発光により検出した(ECL kit, Amersham, Buckinghamshire, GB)。ルミノール及び増幅子とともに膜をインキュベートした後、膜をオートラジオグラフィーフィルム(Hyperfilm ECL, Amersham, Buckinghamshire, GB)で覆った。膜についてのフィルム曝露時間は30分である。得られたスポットを「Biolise 3.02V」ソフトウェア(BMG LABTECH GmbH, Hanns-Martin-Schleyer-Str. 10, D-77656 Offenburg/Germany)を用いて定量した。本ソフトウェアはスポットの量を計算する。
【0087】
これらの量は、次のように、実験コントロールに対する阻害パーセントを計算するのに用いる:[1−(サンプル量/コントロール量)]x100。結果を下の表2に示す。
【0088】
【表2】

【0089】
実施例3:RT−PCRによるメラニン細胞に対する配列番号1の配列の抗PKCベータ1活性
M4Beuメラニン細胞は、ヒトメラノーマの単離された細胞である(R Jacubovich and J.F. Dore Cancer Immunol. Immunother., 7 (1979), 59-64)。
【0090】
これらの細胞のために用いる培地は、10%ウシ胎児血清(Gibco, Paisley, GB)及び4μg/ml濃度のゲンタマイシンを添加したダルベッコ改変イーグル培地である。
【0091】
M4Beu細胞を、培地中1μMで配列番号1又は配列番号6を用いて、ボックスあたり500000細胞で播種し、配列番号1又は配列番号6を用いて3日間に一度、細胞がコンフルエンスになるまで、培地を交換し、最終処理後24時間で細胞を回収した。
【0092】
次いで、培地を除去した。細胞叢をPBSで洗浄した。細胞をトリプシン−EDTA溶液で1
分インキュベートし、10%SVFを添加した培地を加えることにより反応を停止させた。
得られた細胞ライセートを15mlチューブに移し、細胞残渣を得るために遠心分離した。次いで、残渣をPBSで2回洗浄した。これを−80℃で凍結乾燥してもよい。
【0093】
全RNAをこれらの残渣から単離した。β−メルカプトエタノールがSV RNA溶解緩衝液に
加えられたことを確認した後、175μlの該緩衝液を細胞残渣に加えた。細胞抽出物を、RNAに結合した核蛋白質複合体を破壊するために、高濃度のグアニジンチオシアネート(SV RNA lyse buffer)を含むSDS(ドデシル硫酸ナトリウム)溶液で希釈し、このように、溶液中にRNAが残存したままで、細胞蛋白質の選択的沈殿を与えた。ライセートから沈殿した蛋白質及び細胞破片を除去するために遠心分離した後、RNAをこの残渣より精製した。清澄なライセート溶液は、このように透明なチューブに回収された。
【0094】
RNAをエタノール溶液により選択的に沈殿させた。該沈殿を、RNAがガラス繊維に結合するカラムに移した。SV RNA洗浄溶液でカラムを洗浄した後、RNAはカラムに固定されたま
まであった。
【0095】
混入したゲノムDNAを消化するために、RNaseフリーDNaseをカラムに直接加えた。15
分間DNaseを撹拌し、カラムに200μlのストップSV DNase溶液を加えることにより反応を
停止させた。
【0096】
次いで、RNA SV 洗浄溶液で洗浄した後、100μlのヌクレアーゼフリー水を加えること
により、全RNAを最終的にカラムから溶出させた。
【0097】
RNAを260nmで測定した。1光学濃度単位は40μg/mlのRNAに対応する。260m及び280nmにおける吸収の比率(OD 260/OD 280)は、調製されたRNAの純度に関する情報を
提供し、1.8から2の間でなければならず、蛋白質の存在がこの比率を減少させる。
【0098】
濃度(μg/ml)=260nmでのOD×40×読み取り希釈倍率(facteur de dilution de lecture)
【0099】
RNAが未分解であることを、0.8%のアガロースミニゲルの2μgアリコートの電気泳動により確認した。RNAはTBEを用いて可視化した。
【0100】
ゲルを0.4gのアガロースを50mlのトリスホウ酸塩緩衝液(TBE 1×)に溶解させ、加熱することにより調製した。10mg/mlのBET2.5μlを、ゲルを注ぐ時に加えた。
【0101】
移動は、80Vで30分間行った。
【0102】
18s、28s及び4s RNAをBETで着色し、UV下で可視化した(Table Bioblock Scientific, Illkirch, France, 波長 312nm)。
【0103】
未分解検体は、28s及び18s RNAの2つの強いバンド並びに4s RNAのより弱いバンドを示した。
【0104】
2つのチューブを、それぞれの抽出したRNAについて調製した。1つのチューブには酵素(逆転写(RT) M-MLV, Gibco, Paisley, GB)を加え(RT+)、1つのチューブには酵素
を加えなかった(RT−)。該酵素は、種の存在のもと一本鎖のRNAから開始して相補鎖を
合成することができる。
【0105】
結果を表3に示す。
【0106】
【表3】

【0107】
表3において、各pdN(6)はランダムの6ヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチドであり、逆転写酵素の種として用いる。
【0108】
これらのチューブをRNAを変性させるために5分間65℃に加熱した。
【0109】
この時間の間、下の表4に記載された混合物をRT+及びRT−チューブそれぞれに対して調製した。
【0110】
【表4−1】

【0111】
7.5μlの混合物をRT+及びRT−チューブのそれぞれに加えた。
【0112】
1μlのRT酵素(試験中200U)をその後RT+チューブに加え、一方1μlの水をRT−チューブに加えた。次いで、全てのチューブを、最も効率が良くなるよう酵素にとって最適な温度である42℃で1分間インキュベートした。反応は、その後、95℃で5分間チューブをインキュベートすることにより停止させた。
【0113】
このように、RTが全てのRNAの相補鎖を合成しているので、RT+チューブの中にはDNAが存在する。しかしながら、酵素がないので、RT−チューブの中にはDNAは存在しない。RT
−チューブは、ゲノムDNAの混入の有無を判断するために、PCR反応におけるコントロールとして用いた。
【0114】
PCR、換言すればDNAの酵素的増幅は、RT+及びRT−チューブそれぞれで行った。
【0115】
プライマーの2つのペアが酵素(Eurobiotaq(登録商標) DNA polymerase, Eurobio)の種として作用する:ペア1=プライマーPKCβI/Act1、ペア2=プライマーPKCβ/Act2
。したがって、PKCβ又はβI及びアクチンの増幅が同じチューブ内で起こるであろう。この場合、アクチンは内部コントロールとして用いられる。
【0116】
以下の溶液を、逆転写酵素(RT+)反応又は逆転写酵素なし(RT−)反応のいずれかに由来する各DNAに対して調製した。
【0117】
【表4−2】

【0118】
表5に示される次の混合物を、全てのチューブに対して調製した。
【0119】
最終反応容量は50μlである。
【0120】
反応はPCR装置(Crocodile II, Appligene, Illkirch, France)中で行った。
【0121】
ペア1についての反応条件は以下のとおりである。
DNA変性サイクル(2つの鎖の開裂)1回:95℃5分
DNA増幅サイクル40回:95℃30秒(鎖の開裂)
56℃30秒(種の特異的固定)
72℃30秒(新たな鎖の伸長)
新たに形成されたDNAの伸長サイクル1回:72℃7分
【0122】
【表5】

【0123】
ペア2についての反応条件は以下の通りである。反応サイクルは同様であるが、特異的な種の固定化温度は50℃である。
【0124】
PKCβ又はβIのRNAの発現の定量をアクチンの発現との対比で行った。
【0125】
DNA断片をTBE中で着色された2%アガロースゲルに沈着させた。電気泳動の移動は80Vで45分間行った。RNAに対応するバンドをUV下で可視化した(312nm UV Table, Bioblock scientific, Illkirch, France)。RT+チューブではDNAを含む2つのバンドが出現し、RT−チューブでは何も出現しなかった。得られたバンドのサイズを決定するために、分子量スケールを同時に沈着させた。
【0126】
ペア1については、PKCβI RNAに対応する断片は547bpであるが、アクチンに対応するRNA断片は308bpである。
【0127】
ペア2については、PKCβ RNAに対応する断片は380bpであるが、アクチンに対応するRNA断片は514bpである。
【0128】
得られたバンドを「Biolise 3.02V」ソフトウェアを用いて定量化した。本ソフトウェ
アはバンドの量を計算することができる。
【0129】
本発明者らは、PKCβ/アクチン又はPKCβI/アクチンバンド量比を比較した。
【0130】
表6は、結果を含む。
【0131】
【表6】

【0132】
実施例4:メラニン細胞における配列番号1の抗チロシナーゼ活性
M4Beuメラニン細胞は、ヒトメラノーマの単離された細胞である(R Jacubovich and J.F. Dore Cancer Immunol. Immunother., 7 (1979), 59-64)。
【0133】
これらの細胞のために用いる培地は、10%ウシ胎児血清(Gibco, Paisley, GB)及び4μg/ml濃度のゲンタマイシンを添加したダルベッコ改変イーグル培地である。
【0134】
M4Beu細胞を、培地中1μMで配列番号1又は配列番号6を用いて、ボックスあたり100000細胞で播種し、配列番号1又は配列番号6を用いて3日間に一度、細胞がコンフルエンスになるまで、培地を交換し、最終処理後24時間で細胞を回収した。
【0135】
ボックスを生理食塩水で3回洗浄した後、10μlの緩衝液(0.0625M Tris HCl pH6, SDS
3%, グリセロール10%)中の細胞をプラスチックスクレーパーを用いて回収した。1ウェルあたり30μgの蛋白質量で細胞ライセートを沈着させて、電気泳動(レディゲル(Ready
gel) Tris−グリシン7.5%(Biorad, Hercules, CA, USA, ref 161-09000)1x SDS Tris−グリシン移動緩衝液(Biorad, Hercules, CA, USA, ref 161-0732)を一回行った。
【0136】
15mAにて移動後、ゲルを型から外し、pHが7.5(チロシナーゼ活性に最適なpH)になるように緩やかに攪拌しながら20分間PBSで3回洗浄した。
【0137】
チロシナーゼ活性は、10mlの溶液(MBTH Sigma M8006の1g/l PBS、DOPA Sigma D9628の1g/l PBS )中で37℃で3時間ゲルをインキュベーションすることで明らかとなる。その
基質に対するチロシン反応を停止させるため、ゲルをPBSで3回洗浄した。写真を撮影し
た後、「Biolise 3.02V」ソフトウェアを用いて定量化した。
【0138】
表7は、結果を含む。
【0139】
【表7】

【0140】
実施例5:顔の色を薄くするパウダー
表8に表される組成を用いてパウダーを調製した。
【0141】
【表8】

【0142】
本パウダーは2つの作用を行う。皮膚を清潔にし、また定期的に数日間使用した場合、
皮膚の色を薄くする。1日に1回又は2回、顔の皮膚に対して適用することができる。
【0143】
実施例6:デイフェイスエマルションゲル(emulsion-gel visage de jour)脱色素剤
表8に表される組成を用いてエマルションゲルを調製した。
【0144】
【表9】

【0145】
日光、あるいはさらに直接的な太陽光による多かれ少なかれ強い照射に曝された人は、薄い色の皮膚を保ち、色素沈着の染みの出現を回避したがる。
【0146】
上に定義されたエマルションゲルの使用は、本目的を達成する手段を提供する。本組成物は、通常、朝に顔に対して適用される。組成物は、通常又は変則的な顔の色素沈着に対する予防及び治療作用について、同等に効果的である。
【0147】
実施例7:色素沈着の染みを防止するSPF30保護液
表10に表される組成を用いて保護液を調製した。
【0148】
本保護液は、本現象に曝された人々における色素沈着の染みの出現を防止するために、強い太陽光照射に曝露する前に用いられる。メラニン内容物の低下による天然の保護の減少を補償するため、太陽光フィルターが高濃度で存在することに留意せよ。
【0149】
【表10】

【0150】
実施例8:脱色素顔用クリーム
表11に表される組成を用いてクリームを調製した。
【0151】
本クリームは、染み又は光線性の色素沈着の斑点を減衰又は排除することによって、変則的な皮膚の色素沈着を治療するのに用いることができる。本クリームは、皮膚の色を均一に薄くする。
【0152】
【表11】

【0153】
実施例9:皮膚の色を薄くする化粧水
表12で与えられる組成を用いてローションを調製した。
【0154】
【表12】

【0155】
皮膚の色を薄くする本ローションは、化粧を除去した後及び皮膚を綺麗にした後に用いられる。
【0156】
実施例10:ライトニングフェイスセラム(serum visage eclaircissant)
表13に表される組成を用いてセラムを調製した。
【0157】
【表13】

【0158】
セラムの非常に濃縮された本組成物の一滴が、通常フェイスクリームを適用する前に、顔に適用される。薄い色を得る又は維持するために、1又は2週間の養生で、本セラムは使用される。
【0159】
実施例11:毛髪の色を薄くするための毛髪ローション
表14に表される組成を用いて、毛髪ローションを調製した。
【0160】
【表14】

【0161】
本ローションは、徐々に毛髪の色を薄くするために、朝及び夕に必要とする限り毛髪に適用される。本期間は通常数週間である。
【0162】
実施例12:手のための抗斑点クリームゲル
表15に表される組成を用いて、ゲルクリームを調製した。
【0163】
本ゲルクリームは、斑点の着色を減衰させるために、手の染み(老人性黒子)に対して直接適用されなければならない。
【0164】
【表15】

【0165】
実施例13:病的な過剰色素沈着を治療するための皮膚用溶液
表16に与えられる組成物を用いて、セラムを調製する。
【0166】
【表16】

【0167】
本セラムは、局所過剰色素沈着に罹患している人々の治療のために、毎日皮膚に適用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロテインキナーゼCベータ−1(PKCベータ−1)をコードする遺伝子又は遺伝子の産物に特異的にハイブリダイズできる、7から25の間のヌクレオチド、好ましくは20ヌクレオチド、を有するオリゴヌクレオチド。
【請求項2】
PKCベータ−1をコードする遺伝子をコードする、又は、コードしない領域5’から3’のいずれか1つと特異的にハイブリダイズできる、請求項1記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項3】
オリゴヌクレオチド配列が次の意味の配列番号1から配列番号5の配列のうちの1つである、請求項1又は2のいずれかに記載のオリゴヌクレオチド。
−配列番号1:ACACCCCAGGCTCAACGATG
−配列番号2:TGG AGT TTG CAT TCA CCT AC
−配列番号3:AAA GGC CTC TAA GAC AAG CT
−配列番号4:GCC AGC ATC TGC ACC GTG AA
−配列番号5:CCG AAG CTT ACT CAC AAT TT
【請求項4】
配列が配列番号1及び配列番号4の配列のうちの1つである、請求項3記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項5】
配列が配列番号1である、請求項3記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項6】
その糖部分、その核酸塩基部分又はそのヌクレオチド間骨格において、該オリゴヌクレオチドに改善された物理化学的特性を与える、1つ又は複数の化学的修飾を含む、前記請求項のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項7】
その糖部分が、2’−O−フルオロ又は2’−O−アルキル置換基、好ましくは2’−O−エチルオキシメチル又は2’−O−メチル置換基を含むことを特徴とする、請求項6記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項8】
そのヌクレオチド間骨格において、ホスホジエステル基の一部が、ホスホロチオエート基により置換されることを特徴とする、請求項6又は7記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項9】
そのヌクレオチド間骨格において、ホスホジエステル基の一部が、メチルホスホネート基により置換されることを特徴とする、請求項6又は7記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項10】
全てのホスホジエステル基が、ホスホロチオエート基により置換されることを特徴とする、請求項6又は7記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項11】
全てのホスホジエステル基が、メチルホスホネート基により置換されることを特徴とする、請求項6又は7記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項12】
ホスホジエステル基が、完全にもしくは部分的に、ホスホロチオエート基により及び/又はメチルホスホネート基により置換されることを特徴とする、請求項6又は7記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項13】
線形の核酸もしくはペプチド酸タイプ投与ベクター又は環状プラスミドタイプ投与ベクターが移植されている、請求項1〜12のいずれかに記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項14】
少なくとも1つの請求項1〜13のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチド、及び、美容上許容される媒質を含む化粧品組成物。
【請求項15】
チロシナーゼ遺伝子発現産物に対するアンチセンスオリゴヌクレオチド、チロシナーゼ関連蛋白質1(TRP−1)遺伝子発現産物に対するアンチセンスオリゴヌクレオチド;エラグ酸及びその誘導体、レゾルシノール及びその誘導体;ビタミンC及びその誘導体;パントテン酸スルホン酸塩及びその誘導体;アルファ−メラニン細胞刺激ホルモン(α−MSH)もしくはその受容体又は副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)を直接的に又は間接的に妨害する分子;グリセリン、グリコール又はプロピレングリコール等のポリオール;ビタミン;サリチル酸及びその誘導体等の角質溶解及び/又は落屑剤;乳酸又はリンゴ酸等のアルファ−ヒドロキシ酸、単独又はグラフト;アスコルビン酸及びその誘導体;リポソーム製剤又はリポソーム製剤ではないレチンアルデヒド等のレチノイド及びカロテノイド;レチノール及びパルミチン酸エステル、プロピオン酸エステル又は酢酸エステルのようなその誘導体、ベータ−カロテン、単独で又は組み合せて服用する抗糖化剤及び/又は抗酸化剤もしくは酸化防止剤、例えば、トコフェロール及びその誘導体、エルゴチオネイン、チオタウリン、ヒポタウリン、アミノグアニジン、チアミンピロリン酸、ピリドキサミン、リジン、ヒスチジン、アルギニン、フェニルアラニン、ピリドキシン、アデノシン三リン酸;グリチルレチン酸ステアリル等の抗炎症剤;鎮静剤及びそれらの混合、メトキシケイ皮酸オクチル、ブチルメトキシジベンゾイルメタン、酸化チタニウム及び酸化亜鉛等の化学的又は物理的太陽光フィルター;並びに、デオキシリボ核酸及び/又は核酸の中から選択される1つ又は複数の活性な剤を含む、請求項14記載の化粧品組成物。
【請求項16】
本発明のオリゴヌクレオチドが、化粧品組成物の全重量の0.00001%から10%まで、好ましくは0.0003%から3%まで変化する量であることを特徴とする、請求項14又は15記載の化粧品組成物。
【請求項17】
油と、ステアリン酸PEG−20等の脂肪酸とポリエチレングリコールとのエステル及びステアリン酸グリセリン等の脂肪酸とグリセリンとのエステルの中から選択される乳化剤と、共乳化剤とを含むエマルションの形態である、請求項14〜16のいずれか一項に記載の化粧品組成物。
【請求項18】
皮膚及び/又はヒトの毛髪を脱色素又は漂白するための、請求項14〜17記載の組成物の使用。
【請求項19】
請求項14〜17記載の化粧品組成物の製造のための、メラニン合成を抑制する活性成分としての、請求項1〜13記載のオリゴヌクレオチドの使用。
【請求項20】
特発性黒皮症等のメラニン細胞の過剰活性による局所過剰色素沈着、色素性の染み(光線性の黒子)等の過剰活性及び良性のメラニン細胞増殖による局部過剰色素沈着、光感作又は損傷後回復等の偶発的過剰色素沈着の治療又は予防のための、並びに、白斑等のある種の白斑症の治療のために設計された局所医薬組成物の製造のための、メラニン合成を阻害する活性成分としての、請求項1〜13記載の少なくとも1つのオリゴヌクレオチドの使用。
【請求項21】
本発明のオリゴヌクレオチドが、前記局所医薬組成物の全重量の0.00001%から10%、好ましくは0.0003%から3%を占めることを特徴とする、請求項20記載の使用。

【公開番号】特開2011−254826(P2011−254826A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−161341(P2011−161341)
【出願日】平成23年7月22日(2011.7.22)
【分割の表示】特願2006−546262(P2006−546262)の分割
【原出願日】平成16年12月28日(2004.12.28)
【出願人】(504296655)
【Fターム(参考)】