真円度測定装置及び円筒研削盤
【課題】 偏心円筒の真円加工を短時間かつ高精度に行う。
【解決手段】 図2は、クランクピン(偏心円筒)の横断面平面上での測定器滑動手段の動作を模式的に表現したもので、関数y(ψ,x)を関数y(θ)に変換するパラメータ変換の方法を示す。測定変数である三点接触式測定器の出力値y、クランクピンの中心点OのC軸回りの回転角ψ、及び、C軸とW軸間の距離xは、各々同時に測定されるため、「θ=f(ψ,x)」なる関数fが定まり、よって、測定器の出力値y(関数値y(ψ,x))を関数y(θ)として扱うことが可能となる。即ち、測定変数y、x、ψを同時に計測することにより、回動軸にて回動可能に支持された工作物を機外に取り外すことなく、θを独立変数とする関数y(θ)を求めることが可能となる。更に、y(θ)より円筒半径r(θ)、X軸補正量δx(ψ)を求めることも同時に自動化可能である。
【解決手段】 図2は、クランクピン(偏心円筒)の横断面平面上での測定器滑動手段の動作を模式的に表現したもので、関数y(ψ,x)を関数y(θ)に変換するパラメータ変換の方法を示す。測定変数である三点接触式測定器の出力値y、クランクピンの中心点OのC軸回りの回転角ψ、及び、C軸とW軸間の距離xは、各々同時に測定されるため、「θ=f(ψ,x)」なる関数fが定まり、よって、測定器の出力値y(関数値y(ψ,x))を関数y(θ)として扱うことが可能となる。即ち、測定変数y、x、ψを同時に計測することにより、回動軸にて回動可能に支持された工作物を機外に取り外すことなく、θを独立変数とする関数y(θ)を求めることが可能となる。更に、y(θ)より円筒半径r(θ)、X軸補正量δx(ψ)を求めることも同時に自動化可能である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転軸にて回転可能に支持された工作物と一体の偏心した円筒の真円度を測定する真円度測定装置、並びに、この円筒を真円加工する円筒研削盤に関し、特に、工作物を回転可能に支持したまま偏心円筒(例:クランクピン等)の真円度測定と真円加工とを行う円筒研削盤に関する。
【背景技術】
【0002】
ガソリンエンジンのクランク軸のクランクピンやカム等の研削加工では、工作物の回転軸(以下、「C軸」と言う場合がある。)周りの回転運動と、砥石台のC軸に対して垂直なX軸方向の平行移動運動とを正しく同期させることにより研削加工を行っている。
これらの従来技術においては、サーボ制御装置や数値制御装置等の技術の進歩により、追従精度、同期精度、或いは、運動精度の向上がみられる。
【0003】
しかしながら、これらの精度の向上だけでは、工作物の剛性や研削抵抗の変化等による形状誤差には十分に対応しきれないのが現状であり、このため、高い研削加工精度が要求される場合には、研削加工中に一旦、工作物を研削盤の機外へ取り外し、工作物形状(クランクピンの真円度やカムの形状等)を精密に測定し直し、C軸又はX軸に対する運動の補正量を求めてから再度研削加工を行っている。
【0004】
また、計測技術の分野では、円筒形工作物の真円度を精密に測定する方法としては、例えば、「日本機械学会誌 第53巻 第376号 技術論文『円筒形工作物の真円度測定法』(昭和25年5月)」に記載されている三点接触法を用いたもの等が一般に広く知られている。本技術論文では、三点接触式(Vブロック式、馬乗りゲージ式、三脚ゲージ式)測定器により円筒形工作物の真円度を測定する場合の理論解析が行われており、例えば、馬乗りゲージ式の場合については、次式(1)〜(6)、及び、図14、図15、図16に示される様に、円筒形工作物の真円誤差を定量的に求める方法が示されている。
【0005】
ただし、ここで、各変数、記号、関数等の定義は以下の通りである。
(図形記号)
K:クランクピン等の円筒形工作物(横断面円周)
O:原点(Kの中心付近の任意の1点:工作物横断面上の固定点)
C:原線OCを規定する工作物横断面平面上の任意の固定点
M:半径am なる標準寸法のゲージ円筒(横断面円周)
a:三点接触式(馬乗りゲージ式)測定器の測定子の端面とKとの接点
b:馬乗りゲージの接触面とKとの接点
c:馬乗りゲージの接触面とKとの接点
d:馬乗りゲージの基準点(挟み角αの中心点)
a′:原点Oから測定器の測定子の端面に下ろした垂線の足
b′:原点Oから馬乗りゲージの接触面に下ろした垂線の足
c′:原点Oから馬乗りゲージの接触面に下ろした垂線の足
(変数)
θ:原線OCからの角度
α:馬乗りゲージの挟み角
n:自然数(フーリエ級数展開の添字)
【0006】
(定数)
a0 :Kの平均半径
cn :r(θ)のフーリエ級数展開時の各項の展開係数
(調和解析により求まる)
φn :r(θ)のフーリエ級数展開時の各項の初期位相
(調和解析により求まる)
am :ゲージ円筒Mの半径
my :y(θ)の平均値
J:nの上限値(実用上は50程度で十分。上記技術論文では
J=12までを中心に考察している。)
N:y(θ)を実測する際の測定回数(測定点サンプル数)。
(関数)
r(θ):θを独立変数とするKの半径
y(θ):θを独立変数とする三点接触式測定器の出力値
μ(α,n):y(θ)に現れる各スペクトル成分の拡大率
【0007】
(数1)
r(θ)=a0 + n=1ΣJ cn cos(nθ+φn ) …(1)
(数2)
am {1/sin(α/2)−1}−y(θ)
={r(θ+π/2−α/2)+r(θ−π/2+α/2)}
/{2sin(α/2)}−r(θ)…(2)
(数3)
y(θ)=(a0 −am )・{1−1/sin(α/2)}
+ n=2ΣJ {μ(α,n)cn cos(nθ+φn )} …(3)
(数4)
μ(α,n)=1−{cos n(π/2−α/2)}/sin(α/2) …(4)
(数5)
my =∫y(θ)dθ/2π (積分範囲:0≦θ≦2π)
=(a0 −am )・{1−1/sin(α/2)}
=( i=0ΣN-1 yi )/N …(5)
(数6)
a0 =am +my /{1−1/sin(α/2)} …(6)
【0008】
即ち、三点接触法において適当なα又は適当なαの組み合わせを用いてy(θ)を測定すれば、全てのnに対してcn 、φn が算出できるので、(1)より真円誤差を「δr=r(θ)−am 」として定量的に求められることが、上記の技術論文より判る。ただし、ここでは、半径am なる標準寸法のゲージ円筒Mを所望の円筒形状とする。
尚、上記の各変数、記号、関数等の定義は、以下においても同様とする。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記の従来技術には、以下の問題点が有り、総括的な改善が期待されている。(問題1)研削加工中に一旦、工作物を研削盤の機外へ取り外し、工作物形状(円筒の真円度等)を精密に測定する際に、研削盤と測定機との間で工作物に対する基準点の設定位置にズレが生じる場合が有る。したがって、この誤差により測定精度が十分に確保できない場合が多い。
(問題2)上記基準点の設定には、調整時間を長く要し、また、本作業は自動化が困難である。このため円筒研削加工等の生産性が向上しない。
(問題3)工作物を回転可能に支持したままクランクピン等の偏心円筒の真円度を三点接触式測定器等を用いて走査する場合には、測定器をリンク機構などにより円筒の円周に沿って接触移動させなければならない。しかしながら、リンク機構には自由度が多く、更に測定系にはC軸やX軸等の自由度もあるため、真円度(前記のy(θ))測定時に、円筒の中心から測った位相角(前記の角θ)を同時に正確に測定することは容易でない。
【0010】
また、例えば、複数の気筒(シリンダー)を有するエンジンのクランクシャフトを製造する場合、クランクジャーナルに対する各クランクピンの位置(偏心量と位相)が正確に工作できなければ、被点火ガスの圧縮比や点火位相等が、各シリンダー毎に正確には実現できなくなる。このため、高速且つ高精度に偏心円筒の軸の位置を測定する測位装置を開発しない限り、燃費や振動、騒音等が十分に抑制された高性能なエンジンを効率よく多数量産することは困難である。
【0011】
また、偏心円筒の軸の位置を極めて正確に求めることは、偏心円筒の真円度を正確に測定する上でも十分有用であり、偏心円筒の軸の位置を高精度且つ高速に測定する手段の開発が期待されている。
【0012】
本発明は、上記の課題を解決するために成されたものであり、その目的は、回転軸にて回転可能に支持された工作物と一体の偏心円筒の真円加工を高精度、かつ、高速に実現するための手段を提供することである。
【0013】
また、本発明の更なる目的は、上記の回転軸に対して中心軸の位置が極めて正確な偏心円筒の加工を高速に実施するための手段を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の課題を解決するためには、以下の手段が有効である。
即ち、第1の発明は、回転軸から偏心して回転する円筒を有する工作物を、研削可能な状態に研削盤に取り付けた状態で、回転軸から偏心した円筒の真円度を測定する真円度測定装置において、砥石台に回動可能に設けられた第1ピボットと、一端において、第1ピボットに支持されて回動可能に設けられた第1アームと、第1アームの他端に回動可能に設けられた第2ピポットと、一端において、第2ピボットに支持されて回動可能に設けられた第2アーム上腕と、第2アーム上腕に設けられた第2アーム下腕と、第2アーム下腕に設けられ、円筒の外周面と当接して外周面を滑動する、円筒の半径を三点接触法により測定する三点接触式測定器とを有することを特徴とする真円度測定装置である。
【0015】
第2の発明は、回転軸から偏心して回転する円筒を有する工作物を、研削可能な状態に研削盤に取り付けた状態で、回転軸から偏心した円筒の真円度を測定する真円度測定装置において、円筒の外周面と当接して円筒を径を測定するための測定器と、円筒の回転軸の回りの回転軌跡に沿って、測定器を円筒の外周面に当接させた状態で移動させる測定器滑動手段と、回転軸を回転させ、測定器の出力値を、一定の時間周期で検出する検出手段と、出力値から円筒の真円度を算出する真円度演算手段とを有することを特徴とする真円度測定装置である。
【0016】
第3の発明は、回転軸から偏心して回転する円筒を有する工作物を、研削可能な状態に研削盤に取り付けた状態で、回転軸から偏心した円筒の真円度を測定する真円度測定装置において、円筒の外周面と当接して円筒を径を測定するための測定器と、円筒の回転軸の回りの回転軌跡に沿って、測定器を円筒の外周面に当接させた状態で移動させる測定器滑動手段と、回転軸を回転させ、測定器の出力値を、回転軸の一定の回転角毎に検出する検出手段と、出力値から円筒の真円度を算出する真円度演算手段とを有することを特徴とする真円度測定装置である。
【0017】
第4の発明は、第2又は第3の発明において、出力値の平均値から円筒の平均半径を演算する平均半径演算手段を有することを特徴とする。
【0018】
また、第5の発明は、第2又は第3の発明において、出力値のフーリエ係数を求め、そのフーリエ係数から円筒の半径の回転角に関する半径分布を求める半径分布演算手段を有することを特徴とする。
【0019】
また、第6の発明は、第2又は第3の発明において、出力値のフーリエ係数を求め、そのフーリエ係数から円筒の半径の回転角に関する半径分布を求め、この半径分布と基準半径との差から真円誤差の回転角に関する真円誤差分布を求める真円誤差分布演算手段を有することを特徴とする。
【0020】
第7の発明は、第5の発明において、半径分布演算手段により求められた半径分布に基づいて、回転軸の回転角に関する砥石の送り量分布を補正する送り量補正手段を有することを特徴とする。
第8の発明は、第6の発明において、真円誤差分布演算手段により求められた真円誤差分布に基づいて、回転軸の回転角に関する砥石の送り量分布を補正する送り量補正手段を有することを特徴とする。
【0021】
第9の発明は、回転軸から偏心して回転する円筒を有する工作物を、研削可能な状態に研削盤に取り付けた状態で、回転軸から偏心した円筒の真円度を測定する真円度測定装置において、円筒の外周面と当接して円筒を径を測定するための測定器と、円筒の回転軸の回りの回転軌跡に沿って、測定器を円筒の外周面に当接させた状態で移動させる測定器滑動手段と、回転軸を回転させ、測定器の出力値を検出する検出手段と、検出手段により検出された出力値のフーリエ係数を求め、そのフーリエ係数から円筒の半径の回転角に関する半径分布を求める半径分布演算手段と、半径分布演算手段により求められた半径分布に基づいて、回転軸の回転角に関する砥石の送り量分布を補正する送り量補正手段とを有することを特徴とする真円度測定装置である。
【0022】
第10の発明は、回転軸から偏心して回転する円筒を有する工作物を、研削可能な状態に研削盤に取り付けた状態で、回転軸から偏心した円筒の真円度を測定する真円度測定装置において、円筒の外周面と当接して円筒を径を測定するための測定器と、円筒の回転軸の回りの回転軌跡に沿って、測定器を円筒の外周面に当接させた状態で移動させる測定器滑動手段と、回転軸を回転させ、測定器の出力値を検出する検出手段と、検出手段により検出された出力値のフーリエ係数を求め、そのフーリエ係数から円筒の半径の回転角に関する半径分布を求め、この半径分布と基準半径との差から真円誤差の回転角に関する真円誤差分布を求める真円誤差分布演算手段と、真円誤差分布演算手段により求められた真円誤差分布に基づいて、回転軸の回転角に関する砥石の送り量分布を補正する送り量補正手段とを有することを特徴とする真円度測定装置である。
【0023】
第11の発明は、第2乃至第10の何れか1の発明において、測定器は、円筒の外周面と当接して円筒の半径を三点接触法により測定する三点接触式測定器であることを特徴とする。
【0024】
第12の発明は、第5乃至第10の何れか1の発明において、測定器は、円筒の外周面と当接して円筒の半径を三点接触法により測定する三点接触式測定器であり、半径分布は、フーリエ係数を三点接触式測定器による拡大率で補正し、補正後のフーリエ係数から求められた円筒の半径の回転角に関する半径分布であることを特徴とする。
【0025】
第13の発明は、第1の発明において、回転軸を回転させ、三点接触式測定器の出力値を、一定の時間周期で検出する検出手段と、出力値から円筒の真円度を算出する真円度演算手段とを有することを特徴とする。
【0026】
第14の発明は、第1の発明において、回転軸を回転させ、三点接触式測定器の出力値を、回転軸の一定の回転角毎に検出する検出手段と、出力値から円筒の真円度を算出する真円度演算手段とを有することを特徴とする。
【0027】
第15の発明は、第13又は第14の発明において、出力値の平均値から円筒の平均半径を演算する平均半径演算手段を有することを特徴とする。
【0028】
第16の発明は、第13又は第14の発明において、出力値のフーリエ係数を求め、そのフーリエ係数から円筒の半径の回転角に関する半径分布を求める半径分布演算手段を有することを特徴とする。
第17の発明は、第13又は第14の発明において、出力値のフーリエ係数を求め、そのフーリエ係数から円筒の半径の回転角に関する半径分布を求め、この半径分布と基準半径との差から真円誤差の回転角に関する真円誤差分布を求める真円誤差分布演算手段を有することを特徴とする。
【0029】
第18の発明は、第16の発明において、半径分布演算手段により求められた半径分布に基づいて、回転軸の回転角に関する砥石の送り量分布を補正する送り量補正手段を有することを特徴とする。
第19の発明は、第17の発明において、真円誤差分布演算手段により求められた真円誤差分布に基づいて、回転軸の回転角に関する砥石の送り量分布を補正する送り量補正手段を有することを特徴とする。
【0030】
第20の発明は、第16乃至第19の何れか1の発明において、半径分布は、フーリエ係数を三点接触式測定器による拡大率で補正し、補正後のフーリエ係数から求められた円筒の半径の回転角に関する半径分布であることを特徴とする。
第21の発明は、第1乃至第20の何れか1の発明に係る真円度測定装置を有する円筒研削盤である。
【0031】
尚、上記の各手段における回転軸は、回動軸で有っても良い。
以上の手段により、前記の課題を解決することができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明の手段によれば、工作物と一体の偏心円筒の真円度を測定する際に、研削盤などの工作機械により回転軸にて回転可能に支持された工作物を機外に取り外すことなく、そ
のまま偏心円筒の真円度を測定することが可能となる。このため、真円度測定時に工作物を工作機械より取り外す必要が無くなる。従って、この取り外しや取り付け作業が無くなると同時に、研削加工時と真円度測定時との間で工作物の設定位置に関するズレが生じなくなる。これにより、真円加工を高精度、かつ、短時間に実現することが可能となる。
【0033】
尚、上記の回転軸は、回動軸であっても上記の作用・効果が得られることは言うまでもない。
【0034】
また、測定器滑動手段の機械的運動に係わる運動パラメータξを検知する運動センサを用いれば、クランクピン等の偏心円筒の中心座標(円筒の軸の位置)をより正確に知る(測る)ことができる。
【0035】
更に、この様な手段を前記の手段と組み合わせることにより、工作物を機外に取り外すことなく、より高精度な真円度の測定や、真円加工をそのまま実施することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下、本発明を具体的な実施例に基づいて説明する。
ただし、本発明は、以下の各実施例に限定して解釈されるものではない。
【実施例1】
【0037】
図1は、本実施例の円筒研削盤100の概観を示す側面図である。砥石台9に装備された円板状の砥石7は回転軸W(図中の点W)にて支持されて回転することができる。Kはクランクピンの横断面円周を表しており、この円周Kの中心点Oは、本円筒研削盤100の図略の支持部により本円筒研削盤100のC軸(図中の点C)を中心とする円軌道S上を回転可能に支持されている。C軸とW軸との距離xは、円筒研削盤100のNCサーボ機構により制御されている。
【0038】
27は三点接触式(馬乗りゲージ式)測定器の測定子である。三点接触式測定器の馬乗りゲージ25は、クランクピン(偏心円筒)の外周面に当接しながら円周Kに沿って滑動可能に第2アーム下腕22より支持されている。第1ピボットPは砥石台9に固定されており、第1ピボットP、第1アーム1、第2ピボットP′、第2アーム上腕21、第2アーム下腕22等より測定器滑動手段が構成されている。これにより三点接触式測定器をクランクピンの円周(側面外周)に沿って円滑に接触移動させることが可能となっている。8は三点接触式測定器の測定値出力線路である。
【0039】
図2に、関数y(ψ,x)を関数y(θ)に変換する本実施例の変数変換手段の作用を示す。本図は、上記の測定器滑動手段(図1)のクランクピン横断面平面上での動作を模式的に表現したものである。ただし、ここで、θは点O(クランクピンの中心)の回りの角度であり、原線OCから測った三点接触式測定器の中心線(図3)までの角度(クランクピンの円周上の測定点pの角度座標)を表すものとする。また、y、ψ、xは、以下に示す測定変数である。
(測定変数)
y:三点接触式測定器の出力値
x:C軸とW軸間の距離(y計測時の値を記録)
ψ:クランクピンのC軸回りの回転角∠WCO(y計測時の値を記録)
【0040】
この様な変数変換は、「θ=f(ψ,x,Λ)」なる関数fを求めることにより実現される。即ち、この様な関数fが求まれば、三点接触式測定器の出力値y(関数値y(ψ,x))をθを独立変数とする関数値y(θ)として扱うことが可能となる。ただし、ここで、Λは測定器滑動手段の姿勢に係わる構造を表す諸定数の適当な集合(滑動機構パラメータ群)である。尚、これらは定数であるため、以下、「Λ」は省略して記載することがある。
この様な関数fを具体的に決定する方法を以下に示す。
【0041】
前記の記号の他に、図2の説明などにおいて以下、下記の記号(定数)を用いる。上記の関数fは、後で詳述するように、これらの測定器滑動手段の姿勢に係わる構造を表す諸定数(測定器滑動手段や工作機械の各部の長さや角度等の定数)を用いて求めることができる。即ち、本実施例における上記の集合Λは、以下の7つの定数をその要素にもつ。
【0042】
(滑動機構パラメータ群)
D:第1ピボットPのW軸からの水平方向(X軸方向)のズレ
(C軸側を負値とする)
H:第1ピボットPのW軸からの高さ
R:円軌道Sの半径
L1 :第1アーム1の長さ
L21:第2アーム上腕21の長さ
L22:第2アーム下腕22の長さ
ζ:第2アーム上腕21と第2アーム下腕22との間の角
【0043】
図3に、半径a0 の真円の横断面をもつ円筒にVゲージ25が乗った際の両者の位置関係を示す。本図において、点Gは半径a0 の真円の中心であり、このような理論的な真円がVゲージ25の接触面A,Bに垂直に当接した場合、本真円の中心点GとVゲージ25の基準点dの2点間の距離Lは、次式(7)で与えられる。
(数7)
L≡Gd=a0 /sin(α/2) …(7)
この様に、点Gは、半径a0 が一定の時、点d及び接触面A,Bに対する不動点となる。
【0044】
一方、実際の各測定点pをその要素にもつクランクピンの横断面円周Kは、実は真円ではないため、その中心点Oは一意には定まらない。即ち、クランクピン断面上に固定した原点Oは、厳密にはKの中心付近に点Cに対して「OC=R,∠WCO=ψ」となるように定めた1固定点に過ぎず、よって、点Gと点Oとは一般には一致しない。また、この2点の距離OGは、角θによって変化する。即ち、この距離は、角θの関数OG(θ)と考えることができる。
【0045】
しかしながら、次式(8)が成り立つ時、関数fを求める限りにおいては、次式(9)を用いることができる。
(数8)
OG(∀θ)≪ MIN(L2 ,L21,L22+L) …(8)
(数9)
Od≒L …(9)
即ち、通常、少なくとも関数fを決定する限りにおいては、点Oと点Gとを同一視しても、その結果における誤差は十分に小さい。これは、実際の所、L2 ,L21,L22は10cm〜1m程度のオーダーであるのに対し、OGは1μm単位の長さだからである。
【0046】
したがって、図2から判る様に、点Oと点Gとを同一視することにより、次式(10)〜(22)を用いて、上記の関数fを具体的に決定することができる。
(数10)
L22=L212 +(L22+L)2−2L21(L22+L)cosζ …(10)
(数11)
u=Rcosψ …(11)
(数12)
v=Rsinψ …(12)
(数13)
w=x−u …(13)
(数14)
OP2 =(H−v)2 +(w+D)2 …(14)
(数15)
β1 =tan -1{(H−v)/(w+D)} …(15)
(数16)
β2 =cos -1{(−L22+L12+OP2 )/(2L1 ・OP)} …(16)
(数17)
γ1 =β2 −β1 …(17)
(数18)
γ2 =γ1 +γ3 −π/2 …(18)
(数19)
γ3 =cos -1{(−OP2 +L12+L22)/(2L1 ・L2 )} …(19)
(数20)
β3 =β4 −γ2 …(20)
(数21)
β4 =cos -1〔{−L212 +L22+(L22+L)2}
/{2L2(L22+L)}〕 …(21)
(数22)
θ=3π/2−ψ+β3 …(22)
【0047】
以上の様に、「θ=f(ψ,x)」なる関数fを具体的に決定することができる。これにより、関数y(ψ,x)を関数y(θ)に変換する変数変換手段を実現することができる。即ち、測定変数y、x、ψを同時に計測することにより、回転軸にて回転可能に支持された工作物を機外に取り外すことなく、そのまま関数y(θ)を求めることが可能であることが示された。
【0048】
図4に、本実施例の円筒研削盤100の構成図(概念図)を示す。本円筒研削盤100によれば、測定変数y、x、ψを同時に計測することが可能である。C軸とW軸との距離xは、ドライバ12等によるサーボ制御機構により制御されている。また、C軸の回転角ψは、ドライバ13等によるサーボ制御機構により制御されている。CNC装置10は、インターフェイス(IF)11を介して、ドライバ12、13を制御する。尚、14、15は正弦波信号分岐器、16、17は波形成形器である。
【0049】
この様に円筒研削盤100を構成すれば、変換ボード18を介して、測定変数y、x、ψの各計測値を同時にリアルタイムでパソコン(PC)19に転送することができる。従って、前記の関係を用いれば、パソコン19にて、測定変数y、x、ψ等より、関数y(θ)を求めることができる。
【0050】
上記の様に関数y(θ)が具体的に求まれば、式(4)〜(6)及び調和解析により、y(θ)を式(3)の形に展開することができる。ただし、αには都合のよい適当な数値が選択されているものとする。この時、1≦n≦Jなる全てのnに対してcn 、φn が定まるため、式(1)の様にr(θ)をθの関数として具体的に求めることができる(真円度演算手段)。
【0051】
また、パソコン19とCNC装置10とを図示する様に通信線路でつなげば、パソコン19側の真円度演算手段、及び、補正量演算手段により求められたX軸の補正量δxをCNC装置10に自動的かつ迅速に連絡することができる。
以下、補正量δxを求める手段(補正量演算手段)について説明する。
【0052】
上記のr(θ)をθに依らず一定とするための補正量δx(ψ)の求め方を図5に示す。ただし、ここで、この補正量δx(ψ)は、各回転角ψに対応するCW間の距離x(ψ)(図2)に対する補正量、即ち、砥石台9の移動量に対する補正量である。
【0053】
本図より明らかなように、本補正量δx(ψ)は、例えば、次式(23)〜(28)により求めることができる。
(数23)
θ=π−ψ−η (η≡∠CWO) …(23)
(数24)
δr(θ)=r(θ)−λI am (λI ≧1) …(24)
(数25)
δx=δr(θ)/cosη …(25)
(数26)
cosη=w/OW=w/(v2 +w2 )1/2 ≡g(x,ψ)
=(x−R cosψ)
/{(R sinψ)2 +(x−R cosψ)2 }1/2 …(26)
(数27)
η=cos-1{g(x,ψ)} …(27)
(数28)
δx(x,ψ)=〔r(π−ψ−cos-1{g(x,ψ)})
−λI am 〕/g(x,ψ) …(28)
【0054】
ただし、式(24)、(28)のλI は、円筒を削り過ぎない様にするための安全係数であり、クランクピン(偏心円筒)を加工する際の研削→測定→研削→測定の繰り返し回数(サイクル数)Iが増加する度に1に近づけていくべき数である。したがって最終的なIの値が小さい場合には、最初からλI の値は1に固定されていても良い。
【0055】
以上の様にして、補正量δx(ψ)を求めることができる。従って、前回のψに対するX軸の値x(ψ)を用いれば、次回のψに対するX軸の値x′(ψ)は、次式(29)の様に求めることができる。
(数29)
x′(ψ)=x(ψ)−δx(ψ) …(29)
【0056】
以上の様に円筒研削盤100を構成すれば、回転軸にて回転可能に支持された工作物を機外に取り外すことなく、偏心円筒の真円加工を自動的に行うことが可能となる。
【0057】
本円筒研削盤100を上記の様に構成した結果、次の様な効果を得ることができた。
(a)工作機械上にて偏心円筒の真円度を測定することが可能となり、測定データと加工データ間の位相角ズレ誤差が無くなった。
(b)偏心した円筒の中心を測定器の回転中心に合わせることなく測定することが可能となり、その結果、偏心量、偏心円筒半径、或いは偏心位相角等の異なる複数の工作物を研削する場合においても、1回のチャック動作で真円度を測定することが可能となった。
(c)砥石台プロフィール・データを自動的に補正することが可能となった。
(d)Vゲージ法による変位測定を行うため、測定部の測定範囲が小さくなり、測定機を機上に搭載したときに問題となる温度等に対する耐環境性も向上した。
【0058】
尚、図4の円筒研削盤100においてパソコン19は具備しなくとも、本機構を構成することは可能である。そのような場合には、例えば、変換ボード18の出力を直接CNC装置10に入力し、上記の真円度演算手段、及び、補正量演算手段をCNC装置10にて実現する方法も考えられる。
【0059】
また、本実施例の円筒研削盤100の測定器滑動手段は、砥石台9に固定されているが、測定器滑動手段は必ずしも砥石台と連動している必要はない。また、本実施例の円筒研削盤100の測定器滑動手段は、リンク機構により実現されているが、測定器滑動手段は必ずしもリンク機構により構成されている必要はない。
【0060】
これらの場合においても、一般に、測定器滑動手段や工作機械の各部の長さや角度等の定数(個々の装置の滑動機構パラメータ群)を用いて関数fのような変数変換手段を実現することができる。
即ち、これらの場合にも、本発明の手段により、関数y(θ)を測定器滑動手段の姿勢に係わる構造を表す諸定数や測定変数等から求めることが可能となるため、上記と同様に本発明による作用効果を得ることができる。
【0061】
また、本第1実施例では、前記の通り「測定変数y、x、ψを同時に計測することにより、回転軸にて回転可能に支持された工作物を機外に取り外すことなく、そのまま関数y(θ)を求めることが可能であること」を示したが、測定変数y、x、ψを同時に計測する具体的な手法としては、例えば、以下に例示するもの等が考えられる。
【0062】
(手法1)一定時間周期で測定する方法
測定開始信号により、一定の時間周期で測定を行う。このとき、例えば、C軸を等速回転させる場合、測定点の数は、回転速度より求められる工作物の1回転に要する時間と所定の測定時間周期(一定時間間隔)から決定することができる。
【0063】
(手法2)一定回転角周期で測定する方法
C軸(回転角ψ)が一定角度回転した際に、同期信号を発生させ、この信号を同期基準としてy、xの各測定を並列に行う。
また、ψの代わりにxを用いても良い。即ち、例えば、xが所定の各座標(測定点)に位置した際に、同期信号を発生させ、この信号を同期基準としてψ、yの各測定を並列に行っても良い。
【0064】
(手法3)サーボ制御の指令値を利用する方法
また、上記のψやxの代わりに、C軸の回転や砥石台の移動の物理的な制御(サーボ制御)に使用される指令値を利用することも可能である。ただし、この場合には、サーボ制御における追随遅れが十分無視でき、指令値に対して砥石台や工作物(円筒)が十分に高い精度で運動することが条件となる。
【0065】
また、本発明は、砥石等の研削手段を有しない真円度測定装置としても有効に利用できる。即ち、このような装置においても上記のr(θ)を求めることができるので、これを真円度測定装置として利用することができる。
【実施例2】
【0066】
例えば上記の第1実施例に示す様な測定器滑動手段の機械的運動に係わる運動パラメータξを検知し、この運動パラメータξに基づいて真円加工の対象となる偏心円筒の軸の位置(偏心量R,回転角ψ(図2))を正確に求めれば、更に高精度の真円加工を実施することができる。
【0067】
図6は、本第2実施例に係わる回動角センサ(ロータリーエンコーダRE)を有する円筒研削盤200の模式的な断面図である。本円筒研削盤200は、上記の第1実施例の円筒研削盤100(図1,図2)の第1ピボットPの位置にロータリーエンコーダRE(回動角センサ)を設けたものである。このロータリーエンコーダREは、第1アーム1の回動角γ1 を図中の点P(第1ピボット)を含んだ水平面上にある原線PP2より図6に向かって時計回りを正の向きとして計測するものである。
即ち、前記の運動パラメータξは、本実施例においてはこの第1アーム1の回動角γ1 に相当する。尚、本図6において、点P1,P2は、点P′(第2ピボット)から垂らした垂線上にある点である。
【0068】
例えばこの様な装置(円筒研削盤200)によれば、図7〜図9を用いてその詳細を後述する様に、真円加工すべき偏心円筒の軸の位置に関する位相角誤差Δψを求めたり、より正確な偏心量Rを求めたりすることができる。
また、求められた位相角誤差Δψは、例えば同期制御手段による真円加工実行時のC軸の回転角ψの補正に用いることができる。また、より正確な偏心量Rが求まれば、真円加工実行時の砥石台9の移動量xをより高精度に決定することができる。
また、位相角誤差Δψに基づいてC軸の回転角ψを補正する代りに、位相角誤差Δψに相当する時間分だけ移動量xを具現するタイミングを同期制御手段によってずらしても良い。
【0069】
図7は、本円筒研削盤200を制御する測定メインプログラムA0のゼネラルフローチャートである。
本プログラムA0では、まず最初にステップa10にて、測定装置(三点接触式測定器)が挿入できる位置まで砥石台9をC軸に接近させ、偏心円筒(例:クランクピン等)の外側の円周上に馬乗りゲージ(Vブロック)が接触する様に、工作物(例:クランクシャフト等)に測定装置を挿入する。
【0070】
次に、ステップa20では、基準となる所定のプロファイルデータに基づいて、前記の測定器滑動手段により三点接触式測定器(Vブロック)を偏心円筒の側面に対して接触移動させ、円周K(図3)が常に「Vゲージ25(Vブロック)の接触面A,B(図3、図6)と砥石(図6)」に対して合計3点で接触する様に、同期制御を行いながらC軸を回転角ψが増加する方向(図2では反時計回り)に任意の位置(角度)から1回転させる。そして、この同期制御の実行と同時に、原点O(偏心円筒の軸の位置)の回転角ψ、砥石の位置x、及び第1アーム1の回動角γ1 の各値をそれぞれ測定し、記録する。
【0071】
この測定を行う際の原点Oは、図1、図2、図6の円軌道S上を一周するが、この時の各測定点の間隔(測定点密度)は、例えば、円軌道S上一周に渡り均等でも良い。
また、例えば、図6のXY座標平面上における円軌道SのX軸とY軸に対する各切片付近の測定点密度を特に高くしておけば、後述のサブルーチンB0,C0内における計算を高精度に行うのに比較的都合が良い。
【0072】
ステップa30では、ステップa20による測定が所定の必要回数実施されたか否かを判定する。
ステップa40では、C軸の回転運動とx軸の並進運動を停止させる。
ステップa50では、測定装置(三点接触式測定器)を上昇させ、砥石台9を後退させる。
【0073】
ステップa60では、詳細後述の位相角誤差計算サブルーチンB0(図8)を呼び出して、原点Oの位相角誤差Δψを算出する。
ステップa70では、詳細後述の偏心量計算サブルーチンC0(図9)を呼び出して、原点Oの偏心量Rを算出する。
ステップa80では、上記の各サブルーチンB0,C0により算出された原点Oの位相角誤差Δψと偏心量Rに基づいて、偏心円筒の真円加工に用いる同期制御データ(プロファイルデータ)を補正する。
【0074】
この様にして求められた位相角誤差Δψは、例えば、同期制御手段による真円加工実行時のC軸の回転角ψの補正に用いることができる。また、より正確な偏心量Rを用いれば、真円加工実行時の砥石台9の移動量xをより高精度に決定することができる。
【0075】
図8は、上記の測定メインプログラムA0から呼び出される位相角誤差計算サブルーチンB0のフローチャートである。
本サブルーチンB0では、まず最初にステップb20にて、第1アーム1の回動角γ1 の回転角ψによる一次導関数dγ1 /dψに対して、極値(最小値<0,0<最大値)を与える回転角ψ1 ,ψ2 を前記の式(10)〜(17)に基づいてそれぞれ理論的に算出する。ただし、この計算は、理論的なものであり、上記のプログラムA0の測定とは独立しているので、プログラムA0を実行する前に、予め行っておいても良い。
【0076】
次に、ステップb40では、回動角γ1 と回転角ψの測定データを分析して、γ1 のψに対する変化率が最大(>0)及び最小(<0)であった時の回転角ψの値Ψ1 ,Ψ2 を求める。ただし、測定点密度が円軌道S上で均一である場合には、γ1 の変化量が最大(>0)及び最小(<0)であった時の回転角ψの値をそれぞれΨ1 ,Ψ2 としても良い。また、測定点密度が比較的荒い場合には、数値解析の分野で公知の、例えば放物線近似等の各種補間演算等を用いてΨ1 ,Ψ2 を求めても良い。
【0077】
次に、ステップb60では、次式(30),(31),(32)により、原点Oの位相角誤差Δψを算出する。
(数30)
Δψ1 =Ψ1 −ψ1 …(30)
(数31)
Δψ2 =Ψ2 −ψ2 …(31)
(数32)
Δψ=(Δψ1 +Δψ2 )/2 …(32)
【0078】
例えば以上の様に、γ1 のψに対する変化率が最大(>0)又は最小(<0)であった時の回転角ψの測定値を用いることにより、ロータリーエンコーダREが有する一定の測定精度に対して、最も高い精度で位相角誤差Δψの値を求めることができる。
【0079】
また、上記のΔψ1 の値は、次式(33)により求めても良い。
(数33)
Δψ1 =(γ+ −Γ+ )/(dγ1 /dψ)+ …(33)
ただし、ここで、Γ+ は前記の式(10)〜(17)より理論的に求めることができるγ1 のψ=0における理論値であり、γ+ はプログラムA0で実際に測定したγ1 のψ=0の時の実測値である。また、(dγ1 /dψ)+ は式(10)〜(17)に基づいて理論的に求められるγ1 の一次導関数のψ=0における理論値である。
【0080】
図6からも判る様に、実際にはψの微小角変動に対するロータリーエンコーダREの感度は、ψ=0,πの近傍において最も或いは十分に高くなるものと考えられるので、この感度が必ずしも極大(最大)となる位置でのγ1 の測定値に限ることなく、例えば、上記の様なγ1 の実測値を利用することもできる。
尚、式(33)は一次近似によるものであるため、ψの変化量に対する(dγ1 /dψ)+ の変化量が十分無視できる程度に、Δψ1 が十分小さい時に有効なものである。
【0081】
また、上記と同様に、Δψ2 の値は、次式(34)により求めても良い。
(数34)
Δψ2 =(γ- −Γ- )/(dγ1 /dψ)- …(34)
ただし、ここで、Γ- は前記の式(10)〜(17)より理論的に求めることができるγ1 のψ=πにおける理論値であり、γ- はプログラムA0で実際に測定したγ1 のψ=πの時の実測値である。また、(dγ1 /dψ)- は式(10)〜(17)に基づいて理論的に求められるγ1 の一次導関数のψ=πにおける理論値である。
【0082】
また、式(33)を使用する場合、より望ましくは、まず最初に(dγ1 /dψ)に対して最大値を与える角度ψ+ を前記の式(10)〜(17)より予め理論的に求めておき、そして、Γ+ は前記の式(10)〜(17)より理論的に求めることができるγ1 のψ=ψ+ における理論値とし、γ+ はプログラムA0で実際に測定したγ1 のψ=ψ+ の時の実測値とすると良い。また、同時に(dγ1 /dψ)+ は式(10)〜(17)に基づいて理論的に求められるγ1 の一次導関数のψ=ψ+ における理論値とする。
【0083】
これらの条件がより望ましい理由は、上記のγ1 が回転角ψに関する比較的性質の良い周期関数(3回以上微分可能)なので、この様な方法によれば、γ1 の二次導関数がψ=ψ+ の近傍においてd2 γ1 /dψ2 ≒0をよく満たし、よって、Δψ1 の幅が1°前後と若干大きめでも、十分高い精度で式(33)が成立するからである。これらの事情は、式(34)を使用する場合についても同様である。
【0084】
図9は、測定メインプログラムA0から呼び出される偏心量計算サブルーチンC0のフローチャートである。
本サブルーチンC0では、まず最初に、ステップc20により、測定メインプログラムA0で測定したデータを検索する。即ち、上記のΔψを用いて補正された回転角(ψ+Δψ)の値が±π/2であった位置(図6のOa ,Ob )に偏心円筒の軸(原点O)があった時の第1アーム1の回動角γ1 と砥石台9の位置xの各測定値を測定データの中から検索する。ただし、測定点密度が比較的荒い場合には、数値解析の分野で公知の、例えば放物線近似等の各種補間演算等を用いて、各点(図6のOa ,Ob )での回動角γ1 の値を求めても良い。また、この場合には、各位置(図6のOa ,Ob )での砥石台9の位置xの値についても同様に、所定の補間演算により算出すれば良い。
【0085】
次に、ステップc40では、原点Oa ,Ob の各Y座標Ya ,Yb を次式(35),(36),(37)により算出する。
(数35)
Y=Y1−Y2 …(35)
(数36)
Y1=H+L1sinγ1 …(36)
(数37)
Y2={L22−(x+D−L1cosγ1 )2 }1/2 …(37)
【0086】
ただし、ここで、Y1は第2ピポットP′のY座標である。また、Y2は原点O(Oa ,Ob )と第2ピポットP′を結ぶ線分OP′をY軸に投影した時の幅(高さ)であり、言い換えれば、L2cosγ2 (図2、図6参照)に一致する長さである。従って、例えば、偏心円筒の軸が点Oa に位置する場合には、この長さY2は、図6中の線分P′P1の長さに一致する。
【0087】
例えば、原点Oa のY座標Ya をこれらの式から求めるには、式(36),(37)のγ1 に、補正後の回転角ψ(補正前の回転角ψ+Δψ)の値が+π/2であった時のγ1 の測定値(図6のγ13)を代入し、式(37)のxには、その時の位置xの測定値を代入して、最後に式(35)からYa を算出すれば良い。
原点Ob の位置についても全く同様に、γ1 =γ14等を各式に代入して、そのY座標Yb を求める。
【0088】
次に、ステップc60では、偏心円筒の偏心量Rを次式(38),(39),(40)により算出する。
(数38)
R3 =Ya …(38)
(数39)
R4 =−Yb …(39)
(数40)
R=(R3 +R4 )/2 …(40)
【0089】
以上の様に円筒研削盤200を構成し、制御することにより、例えばクランクシャフト等の回転軸にて回転可能に支持された工作物を機外に取り外すことなく、クランクピン等の偏心円筒の真円加工を自動的かつより高精度に行うことが可能となる。
【0090】
本円筒研削盤200を上記の様に構成し、制御した結果、次の様な効果を得ることができた。
(a)工作機械上にて偏心円筒の真円度を高精度に測定することが可能となり、測定データと加工データ間の位相角ズレ誤差が無くなった。
例えば、複数のシリンダーを有するガソリンエンジンのクランクシャフトのクランクピンを真円加工した場合には、クランクジャーナルに対して所望の正確な角度に各クランクピンを形成することが可能となったため、各シリンダー内での点火のタイミングがそれぞれ極めて正確となり、エンジンの出力を向上させることができる様になったと共に、エンジンの振動、騒音、燃費が大きく低減できた。
【0091】
(b)偏心した円筒の中心を測定器の回転中心に合わせることなく測定することが可能となり、その結果、偏心量、偏心円筒半径、或いは偏心位相角等の異なる複数の工作物を研削する場合においても、1回のチャック動作で真円度を高精度に測定することが可能となった。
例えば、複数のシリンダーを有するガソリンエンジンのクランクシャフトのクランクピンを真円加工した場合には、クランクジャーナルに対して所望の正確な偏心量で各クランクピンを形成することが可能となった。このため、各ピストンのストローク(偏心量×2)がそれぞれ極めて正確になり、各シリンダーの被点火ガスの圧縮比を極めて正確に実現することができる様になった。これにより、各シリンダー毎の圧縮比にバラツキが生じなくなり、各シリンダーの出力を設計通りにバランスさせることができる様になったため、エンジンの振動、騒音、燃費が大きく低減できた。
【0092】
(滑動機構パラメータ自動修正手段)
三点接触式測定器又はVブロックの交換、修繕又は調整に伴って、測定器滑動手段(又はVブロック滑動手段)の姿勢に係わる、例えば前記の滑動機構パラメータ群(D,H,R,L1 ,L21,L22,ζ)等の少なくとも1つの値の修正が必要となる場合がある。
例えば、磨耗や破損、或いは、挟み角αの変更等のためVブロックを交換する場合等がそれにあたる。
【0093】
例えば、本第2実施例の回動角センサを有する円筒研削盤200(図2、図6)の場合、挟み角αの変更のためにVブロックを交換すると、図2のL22、及びLの値が変化してしまう。しかしながら、円筒研削盤200は、回動角センサ(ロータリーエンコーダRE)を有するため、以下の手順に従えば、Vブロックの交換により、一旦値が不定となった上記のL22、及びLの値を自動的に再設定することができる。
【0094】
(1)C軸に対して偏心していない半径am が正確に既知のゲージ円筒を用意する。ただし、このゲージ円筒は、はじめから工作機械の一部分として構成されているものであっても良いし、C軸を軸として高精度に真円加工された円筒半径が既知の工作中の工作物で有っても良い。
(2)円筒研削盤200の一部を構成するコンピュータに対して、Vブロックの挟み角αとゲージ円筒の半径am を入力又は指定する。
【0095】
(3)円筒研削盤200は、以下の手順で、L22、及びLの値を自動的に再設定する。
(a)次式(41)により、Lの値を再設定する。
(数41)
L=am / sin(α/2) …(41)
(b)Vブロック(馬乗りゲージ)を上記のゲージ円筒に2点接触させ、測定器の測定子の端面をゲージ円筒に接触させる。
【0096】
(c)この接触状態を維持し、三点接触式測定器の基準点d(Vゲージ25の基準点d)をゼロ点とする測定用パラメータsに、現在の測定子の端面の位置として、「L−am 」の値を代入することにより、基準点dのゼロ点調整を行う。ただし、ここで、sは測定子がゲージ円筒の軸に向かって伸びようとする向きを正の向きとする。これにより、この測定用パラメータsの基準点dにおける値を0に再設定することができる。
【0097】
(d)ロータリーエンコーダREの出力値γ1 を検知する。
(e)式(10)〜(17)に基づいて、予めL22について解かれた式に既知の変数(滑動機構パラメータ)の値を代入し、L22の値を求める。(ただし、この時、上記の設定により、ゲージ円筒は偏心していないので、R=0であり、ψは任意である。)
【0098】
例えば、以上の様な方法に従えば、前記の滑動機構パラメータの一部(L22、及びL)の値の修正又は調整を運動パラメータξ(γ1 )の計測値に基づいて、自動的に実行することが可能となり、三点接触式測定器又はVブロックの交換、修繕又は調整に伴う作業の作業効率が大きく向上する。
【0099】
(逐次漸近的真円加工)
本第2実施例における円筒研削盤200を用いれば、「円筒の軸の位相角誤差Δψの測定(プログラムA0(サブルーチンB0))→円筒の軸の偏心量Rの測定(サブルーチンC0)→軸の位置の補正→真円度の測定→真円研削加工」の各工程から構成される真円加工のサイクルを繰り返して、精度を上げながら真円加工を段階的に進めることにより、逐次漸近的に高精度な真円加工を行うことができる。
【0100】
特に、この様に多段階に渡って逐次漸近的に高精度な真円加工を行う場合には、式(32)〜(34)を用いて位相角誤差Δψを求めた方が、必要十分な精度が得られる上、計算が簡単になるため、プログラミング時間、及び演算処理時間が共に短くなり便利である。
【0101】
(測定工程のスキップ(工程の省略))
この様な場合、例えば、偏心円筒の真円加工における偏心円筒の中心軸の位置の測定は、要求される加工精度等に鑑み、必要に応じてそれぞれ必要回数だけ実行すれば良い。
従って、「円筒の軸の位相角誤差Δψの測定(プログラムA0(サブルーチンB0))→円筒の軸の偏心量Rの測定(サブルーチンC0)→軸の位置の補正→真円度の測定→真円研削加工」の各工程から構成される真円加工のサイクルを繰り返して、真円加工を段階的に何度も(即ち、逐次漸近的に)繰り返す場合、例えば、偏心円筒の軸の位相角誤差Δψの測定工程などは、そのm回目(所定回数m≧2)及びそれ以降は、再測定を省略しても良い場合があり得る。
【0102】
このため、例えば、加工される偏心円筒の中心軸の、C軸(回転軸)から見た位相角ψ、或いは偏心量Rの少なくとも一方が、殆ど収束したと判断される条件下においては、所定の収束条件判定処理を行った上で、これらの各測位処理の少なくとも一方は省略しても良い。
【0103】
したがって、例えば、所定の収束条件が成立したm回目以降は、上記の真円加工のサイクルを「円筒の軸の偏心量Rの測定(プログラムA0(サブルーチンC0))→軸の位置の補正→真円度の測定→真円研削加工」或いは、「真円度の測定→真円研削加工」等の様に適当に変更(簡略化)すれば、その後の真円加工のサイクルの実行効率を更に向上させることも可能である。
【0104】
また、上記の自然数mは、最初から決定されている固定値でも良いし、所定の収束条件が満たされたか否か等の判定結果に従って、動的に決定されるもので有っても良い。
【実施例3】
【0105】
図10は、本第3実施例に係わる三点接触式測定器700の模式的な側面図(a)及び正面図(b)である。この三点接触式測定器700は、第1実施例の円筒研削盤100の三点接触式測定器(図1の8,22,25,27)の一部を改良したものであり、挟み角αの相異なるVブロックを同時に2つ装着できる点が大きな特徴となっている。
【0106】
このため、本三点接触式測定器700を用いれば、Vブロック上下移動用アクチュエータ29を動作させることにより、式(22)或いは式(23)(図2或いは図5)の角度θがm周(m≧1)する度毎に、2種類のVブロックを交互に入れ換えて真円度の測定に使用することができる。
図11は、三点接触式測定器700の真円誤差の各スペクトル成分(次数)に対する拡大率を示す表である。ただし、本表の「α=60°」の行の内容は、図16の「α=60°」の列の内容と同じものである。
【0107】
例えば、この様な、2値(45°、60°)の組み合せを適用すれば、実用上必要又は十分とされる最大次数n(10≦n≦50程度)までの範囲内において、真円誤差の各スペクトル成分(次数)に対する各拡大率の絶対値を各々1.00以上の好適な値に確保することができる。このため、本三点接触式測定器700を用いれば、人手を介したVブロックの交換作業を行うこと無く、十分に精度の高い真円度の測定を実施することが可能となる。
【0108】
また、Vブロックの挟み角を例えば、α=80°(≒1.40〔rad 〕)に固定することにより、実用上必要又は十分とされる各次数に対して、各拡大率の絶対値を各々実用に耐え得る所定の下限値(>0)以上の値に確保することが可能となる。従って、要求される真円度の測定精度によっては、この様に適当な1つの挟み角αの選択により、必ずしもVブロックを2種類以上用意しなくとも良い場合もある。
【実施例4】
【0109】
図12は、本第4実施例に係わる三点接触式測定器800の模式的な正面図(a)、及び、更にその一部分を代替的に改造した代替構成図(b)である。この三点接触式測定器800(a)は、第1実施例の円筒研削盤100の三点接触式測定器(図1の8,22,25,27)の一部を改良したものであり、挟み角αの二等分面、即ちVブロックの中心線(Θ=0)からの角度Θ(原点Oから見た位相)の相異なる位置(Θ=Θ1,Θ2)にそれぞれ1つづつ、合計2つの計量センサ(センサI、センサII)を装備している点が大きな特徴となっている。
【0110】
この様な構成により、「0≦Θ2<Θ0」成る範囲に設けた計量センサ(センサII)を前記の「日本機械学会誌 第53巻 第376号 技術論文『円筒形工作物の真円度測定法』(昭和25年5月)」に記載されているVブロック式測定法における計量センサとして用いることができる。また、「Θ0<Θ1<Θ0′」成る範囲に設けた計量センサ(センサI)を同論文に記載されている馬乗ゲージ式測定法における計量センサとして用いることができる。
ただし、本三点接触式測定器800(a)では「0≦Θ<Θ2、及び、Θ0′<Θ<2π」成る範囲は、偏心円筒挿入用のスペースとして挿入口が空けてある。
【0111】
また、本三点接触式測定器800(a)は、Vブロック25の中心線(Θ=0)からの角度Θ2を一定値に維持したまま、センサIIを本図12中のx2軸の方向に位置調整(平行移動)することが可能な並進調整機構を有する。また、本三点接触式測定器800(a)の台座24に内蔵の測位機構により、この並進量x2は随時読み取りや再設定が可能となっている。したがって、この並進調整機構により、測定対象のワーク(偏心円筒)の半径に大きな自由度を持たせることが可能となっている。
【0112】
更に、各計量センサ(センサI、センサII)には、その計量方向に対して位置調整(平行移動)することが可能な並進調整機構を備えても良い。これにより、計量センサの測位可能な範囲(又は、高精度に測位可能な範囲)が比較的狭い場合にも、測定対象となるワーク(偏心円筒)の半径に大きな自由度を持たせることが可能となる。
【0113】
また、センサIを用いて第1実施例(式(5),式(6))に従って偏心円筒の平均半径a0 を予め求めておけば、上記の並進調整機構を用いることにより、偏心円筒の半径(平均半径a0 )の変更に伴うセンサIIの位置(並進量x2)の再設定(最適化)をも自動化することが可能となる。
【0114】
また、偏心円筒の平均半径a0 が予め既知であり、これに基づいてセンサIIの位置(x2の値)が予め固定(最適化)されている場合には、センサIとセンサIIとを同時に使用して真円度の測定を行うことができるため、本三点接触式測定器800(a)によれば、この様な場合、第3実施例の三点接触式測定器700を使用した際の約半分の測定時間で真円度を測定することが可能である。
【0115】
図13は、三点接触式測定器800(a)の真円誤差の各スペクトル成分(次数)に対する各拡大率を示す表である。ただし、センサI(Θ1=180°)については、馬乗ゲージ式測定法の理論に従って各次数に対する拡大率を求め、センサII(Θ2=45°)については、Vブロック式測定法の理論に従って各次数に対する拡大率を求めた。
この様な設定により、真円度の測定に必要となる各次数に対して、それぞれ拡大率の絶対値を1.00以上にすることができると同時に、「0≦Θ<45°、及び、Θ0′<Θ<360°」成る範囲の全てを偏心円筒挿入用のスペース(挿入口)として空けておくことができる。
【0116】
例えばこの様に、三点接触式測定器を構成すれば、高精度の真円度測定を実現することができると同時に、測定器の挿入、上昇等の機械的な操作を容易に自動化することができる様になる。
即ち、これらの作用により、本三点接触式測定器800(a)においては、効率よく、高精度な真円加工を行うことができる。
【0117】
また、図12の代替構成図(b)は、上記の三点接触式測定器800(a)の台座24上で平行移動することができたセンサIIの並進調整機構を改造した代替構成を示すものである。
代替構成図(b)の台座24には、点C2を回動中心としてセンサIIを回動させることができる回動調整機構が内蔵されており、前述の並進調整機構と同様に、測定対象の円筒の平均半径a0 に応じて、センサIとセンサIIの各計量方向線の交点(原点O)の位置を移動(調整)することができる様になっている。
【0118】
ただし、上記の回動調整機構における点C2を回動中心とする回動角Θ2は、図12の正面図(a)に示したセンサIIの計量方向の位相Θ2と常に一致するため、本回動調整機構を用いる場合には、この位相Θ2の変更に伴って、図13の拡大率の表のΘ2の行を回動調整実施後毎回計算し直す必要がある。
例えば、この様な円筒中心調整手段を用いても、上記の三点接触式測定器800(a)と全く同様の作用効果を得ることができる。
【0119】
尚、本発明を用いた真円加工における工作物(偏心円筒)のプロファイルデータの補正は、例えば、最終的に偏心量Rが0と成る様に実施しても良い。
言い換えれば、本発明は、例えばC軸(回転軸)で回転可能に支持されたジャーナルの軸の位置の精密な測定や真円加工にも適用することができる。
【0120】
例えば、より具体的には、クランクシャフトのクランクジャーナル等の様に、C軸(回転軸)で支持された工作物が、その剛性や研削抵抗の変化等に起因する若干の加工誤差のために、偏心してしまっている場合等があり得るが、本発明に基づいた円筒の中心軸の測位や、真円度の測定等に基づいたプロファイルデータの補正(フィードフォワード)を実施すれば、この様なC軸(回転軸)で支持されたジャーナル等の高精度な真円加工をも実現することが可能となる。
【0121】
本明細書において、以下の発明も認識されている。
即ち、第1の手段は、回転軸にて回転可能に支持された工作物と一体成形され回転軸から偏心した円筒の真円度を測定する真円度測定装置において、円筒の半径を三点接触法により測定する三点接触式測定器と、円筒の回転軸に垂直な断面上の円周に沿って三点接触式測定器を接触移動させる測定器滑動手段と、本真円度測定装置に対する上記の回転軸の相対位置xを測定する位置測定手段と、円筒の回転軸周りの回転角ψを測定する回転角測定手段と、回転軸の周りを回転する円筒の真円度を相対位置x、回転角ψ、及び、三点接触式測定器の出力値yより算出する真円度演算手段とを備えることである。
【0122】
また、第2の手段は、上記の第1の手段において、円周の中心又は中心付近に位置する原点Oとこの原点Oを始点とする所定の原線OCとを持ち円周が座標平面上に固定された2次元極座標を用いて、円周上における出力値yの測定点pの位置座標(r,θ)を表現し、測定点pにおける出力値yの測定時の相対位置x、回転角ψ、及び、測定器滑動手段の姿勢に係わる構造を表す諸定数の集合Λより角度座標θを求める変数変換「θ=f(ψ,x,Λ)」を用いて、円周上の各測定点pにおける出力値yを角度座標θの関数y(θ)として求める変数変換手段を備えることである。
【0123】
また、第3の手段は、上記の第2の手段において、調和解析等の解析技法を用いて、関数y(θ)より円周上の各測定点pの原点Oからの距離rを角度座標θの関数r(θ)として求める半径演算手段と、角度座標θと回転角ψに関して逆向きの変数変換fに対する変数逆変換「ψ=f-1(θ,x,Λ)」により、関数r(θ)を回転角ψの関数r(ψ)に変数変換する変数逆変換手段と、円筒の研削加工時の相対位置xに対する補正量δxを回転角ψの関数δx(ψ)として求める補正量演算手段とを備えることである。
【0124】
また、第4の手段は、上記の第1乃至第3のいずれか1項の手段において、三点接触式測定器に、2つの接触面が成す挟み角αが互いに異なる複数のVブロックを備えるか、或いは、円周の中心又は中心付近に位置する原点Oから見た位相Θが互いに異なる複数の位置にそれぞれ計量センサを備えることである。
【0125】
また、第5の手段は、上記の第4の手段において、上記の複数のVブロックについて、互いに異なる挟み角αの各二等分面を互いに一致させ、複数のVブロックに共有される1台の計量センサの計量方向線をこの二等分面上に配置することである。
【0126】
また、第6の手段は、上記の第4の手段において、複数の計量センサの内の少なくとも1つに、円筒の平均半径a0 に応じて自計量センサの位置又は計量方向を修正することにより各計量センサから各計量方向へ伸びた直線の交点の位置を調整する円筒中心調整手段を設けることである。
【0127】
また、第7の手段は、上記の第1乃至第6のいずれか1項の手段において、測定器滑動手段の機械的運動に係わる運動パラメータξを検知する運動センサと、三点接触式測定器の交換、修繕又は調整に伴って必要となる、前記の集合Λに属する少なくとも1つの定数の値の修正を、半径am 及び中心座標が既知であるゲージ円筒の中心軸測位時の運動パラメータξの計測値に基づいて自動的に実行する滑動機構パラメータ自動修正手段とを備えることである。
【0128】
また、第8の手段は、上記の第1乃至第7のいずれか1項の手段において、測定器滑動手段の機械的運動に係わる運動パラメータξを検知する運動センサと、偏心円筒の円周の中心又は中心付近に固定された原点Oの回転軸から見た位置座標を、相対位置x、回転角ψ、及び運動パラメータξ、或いは、これらの変数の関連値に基づいて測定する原点測位手段とを備えることである。
【0129】
また、第9の手段は、上記の第7又は第8の手段において、運動センサを機械的運動を実現するアームの角度を計測する回動角センサか、或いは、アームの長さを計測するアーム長センサにすることである。
【0130】
また、第10の手段は、回転軸にて回転可能に支持された工作物と一体成形され、この回転軸から偏心した円筒の中心軸の位置を測定する円筒軸測位装置において、この円筒の回転軸に垂直な断面上の円周に沿ってVブロックを接触移動させるVブロック滑動手段と、測位装置に対する回転軸の相対位置xを測定する位置測定手段と、円筒の回転軸周りの回転角ψを測定する回転角測定手段と、Vブロック滑動手段の機械的運動に係わる運動パラメータξを検知する運動センサと、上記の円周の中心又は中心付近に固定された原点Oの回転軸から見た位置座標を相対位置x、回転角ψ、及び運動パラメータξ、或いは、これらの変数の関連値に基づいて測定する原点測位手段とを設けることである。
【0131】
また、第11の手段は、上記の第10の手段の運動センサを、上記の機械的運動を実現するアームの角度を計測する回動角センサか、或いは、アームの長さを計測するアーム長センサにすることである。
【0132】
また、第12の手段は、上記の第10又は第11の手段の原点測位手段において、先ず、原点Oの所定の標準位置からの位相角誤差Δψを求め、次に、回転角ψに対して位相角誤差Δψによる補正を行い、その後、原点Oの回転軸からの偏心量Rを測定又は計算することにより、回転軸から見た前記原点Oの位置座標を測定又は補正することである。
【0133】
また、第13の手段は、上記の第10乃至第12のいずれか1つの手段において、Vブロックの交換、修繕又は調整に伴って必要となる、Vブロック滑動手段の姿勢に係わる滑動機構パラメータの少なくとも1つの値の修正を、半径am 及び中心座標が既知であるゲージ円筒の中心軸測位時の運動パラメータξの計測値に基づいて自動的に実行する滑動機構パラメータ自動修正手段を設けることである。
【0134】
また、第14の手段は、上記の第1乃至第9のいずれか1つの手段の真円度測定装置において、上記の第10乃至第13のいずれか1つの手段の円筒軸測位装置を備えることである。
【0135】
また、第15の手段は、回転軸から偏心した円筒を同期制御手段を用いて研削加工する円筒研削盤において、上記の第1乃至第9のいずれか1つの手段の真円度測定装置、又は、上記の第10乃至第13のいずれか1つの手段の円筒軸測位装置の内の少なくともいずれか一方を備え、かつ、相対位置x及び回転角ψを関数x(ψ)により同期制御することである。
【0136】
更に、第16の手段は、上記の第15の手段において、上記の第1乃至第9のいずれか1つの手段の真円度測定装置と、上記の第10乃至第13のいずれか1つの手段の円筒軸測位装置とを備え、原点測位手段による原点Oの位置座標の測定又は補正と、真円度演算手段による円筒の真円度の算出と、同期制御手段を用いた研削加工とを組み合わせて順次必要回数実行することにより、偏心円筒を逐次漸近的に真円加工することである。
【0137】
原点測位手段又は円筒軸測位装置を用いれば、Vブロック滑動手段等の機械的な運動の運動パラメータξを検知することにより、偏心円筒の軸の位置を正確に測位することができるため、真円度の測定や極めて高精度の真円加工を実施するか否かに係わらず、回転軸に対する偏心量や、回転軸に対する位相の正確な偏心円筒を製造することが可能となる。
【0138】
従って、原点測位手段又は円筒軸測位装置を用いれば、例えば、複数気筒のエンジンのクランクシャフトのクランクピンを加工する場合、クランクジャーナルに対する各クランクピンの位置が極めて正確に形成できる様になる。このため、例えば、被点火ガスの圧縮比の各シリンダー毎の均一化や、各シリンダー毎の点火位相の最適化等が極めて高精度に実施でき、よって、燃費、騒音、振動等が十分に抑制された高性能のエンジンを製造することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0139】
クランクシャフトなどの偏心円筒などの工作物の加工に応用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0140】
【図1】本発明の実施例に係わる円筒研削盤100の概観を示す側面図。
【図2】本発明の実施例に係わる変数変換手段の作用を示す図。
【図3】半径a0 の真円断面をもつ円筒にVゲージが乗った際の両者の位置関係を示す断面図。
【図4】本発明の実施例に係わる円筒研削盤100の構成図。
【図5】本発明の実施例に係わる補正量δx(x,ψ)の求め方を示す図。
【図6】本発明の第2実施例に係わる回動角センサ(ロータリーエンコーダRE)を有する円筒研削盤200の模式的な断面図。
【図7】円筒研削盤200を制御する測定メインプログラムA0のゼネラルフローチャート。
【図8】測定メインプログラムA0から呼び出される位相角誤差計算サブルーチンB0のフローチャート。
【図9】測定メインプログラムA0から呼び出される偏心量計算サブルーチンC0のフローチャート。
【図10】本発明の第3実施例に係わる三点接触式測定器700の模式的な側面図(a)及び正面図(b)。
【図11】三点接触式測定器700の真円誤差の各スペクトル成分に対する拡大率を示す表。
【図12】本発明の第4実施例に係わる三点接触式測定器800の模式的な正面図(a)、及び、その一部分の代替構成図(b)。
【図13】三点接触式測定器800の真円誤差の各スペクトル成分に対する拡大率を示す表。
【図14】馬乗りゲージ式三点接触法を用いた真円度測定方法を示す図。
【図15】馬乗りゲージ式三点接触法を用いた真円度測定方法を示す図。
【図16】馬乗りゲージを用いた際の真円誤差の各スペクトル成分に対する拡大率を示す表。
【符号の説明】
【0141】
C … C軸(工作物の回転軸)
K … 円筒形工作物(横断面円周)
P … 第1ピボット
P′… 第2ピボット
W … 砥石回転軸
1 … 第1アーム
21… 第2アーム上腕
22… 第2アーム下腕
7 … 砥石
8 … 三点接触式測定器の出力線路
9 … 砥石台
10 … 数値制御装置
14,
15 … 正弦波信号分岐器
16,
17 … 波形成形器
25 … 三点接触式測定器のVゲージ又は馬乗りゲージ
27 … 三点接触式測定器の測定子
100 … 円筒研削盤(第1実施例)
200 … 円筒研削盤(第2実施例)
RE … ロータリーエンコーダ
A0 … 測定メインプログラム
B0 … 位相角誤差計算サブルーチン
C0 … 偏心量計算サブルーチン
700 … 三点接触式測定器(第3実施例)
29 … Vブロック上下移動用アクチュエータ
800 … 三点接触式測定器(第4実施例)
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転軸にて回転可能に支持された工作物と一体の偏心した円筒の真円度を測定する真円度測定装置、並びに、この円筒を真円加工する円筒研削盤に関し、特に、工作物を回転可能に支持したまま偏心円筒(例:クランクピン等)の真円度測定と真円加工とを行う円筒研削盤に関する。
【背景技術】
【0002】
ガソリンエンジンのクランク軸のクランクピンやカム等の研削加工では、工作物の回転軸(以下、「C軸」と言う場合がある。)周りの回転運動と、砥石台のC軸に対して垂直なX軸方向の平行移動運動とを正しく同期させることにより研削加工を行っている。
これらの従来技術においては、サーボ制御装置や数値制御装置等の技術の進歩により、追従精度、同期精度、或いは、運動精度の向上がみられる。
【0003】
しかしながら、これらの精度の向上だけでは、工作物の剛性や研削抵抗の変化等による形状誤差には十分に対応しきれないのが現状であり、このため、高い研削加工精度が要求される場合には、研削加工中に一旦、工作物を研削盤の機外へ取り外し、工作物形状(クランクピンの真円度やカムの形状等)を精密に測定し直し、C軸又はX軸に対する運動の補正量を求めてから再度研削加工を行っている。
【0004】
また、計測技術の分野では、円筒形工作物の真円度を精密に測定する方法としては、例えば、「日本機械学会誌 第53巻 第376号 技術論文『円筒形工作物の真円度測定法』(昭和25年5月)」に記載されている三点接触法を用いたもの等が一般に広く知られている。本技術論文では、三点接触式(Vブロック式、馬乗りゲージ式、三脚ゲージ式)測定器により円筒形工作物の真円度を測定する場合の理論解析が行われており、例えば、馬乗りゲージ式の場合については、次式(1)〜(6)、及び、図14、図15、図16に示される様に、円筒形工作物の真円誤差を定量的に求める方法が示されている。
【0005】
ただし、ここで、各変数、記号、関数等の定義は以下の通りである。
(図形記号)
K:クランクピン等の円筒形工作物(横断面円周)
O:原点(Kの中心付近の任意の1点:工作物横断面上の固定点)
C:原線OCを規定する工作物横断面平面上の任意の固定点
M:半径am なる標準寸法のゲージ円筒(横断面円周)
a:三点接触式(馬乗りゲージ式)測定器の測定子の端面とKとの接点
b:馬乗りゲージの接触面とKとの接点
c:馬乗りゲージの接触面とKとの接点
d:馬乗りゲージの基準点(挟み角αの中心点)
a′:原点Oから測定器の測定子の端面に下ろした垂線の足
b′:原点Oから馬乗りゲージの接触面に下ろした垂線の足
c′:原点Oから馬乗りゲージの接触面に下ろした垂線の足
(変数)
θ:原線OCからの角度
α:馬乗りゲージの挟み角
n:自然数(フーリエ級数展開の添字)
【0006】
(定数)
a0 :Kの平均半径
cn :r(θ)のフーリエ級数展開時の各項の展開係数
(調和解析により求まる)
φn :r(θ)のフーリエ級数展開時の各項の初期位相
(調和解析により求まる)
am :ゲージ円筒Mの半径
my :y(θ)の平均値
J:nの上限値(実用上は50程度で十分。上記技術論文では
J=12までを中心に考察している。)
N:y(θ)を実測する際の測定回数(測定点サンプル数)。
(関数)
r(θ):θを独立変数とするKの半径
y(θ):θを独立変数とする三点接触式測定器の出力値
μ(α,n):y(θ)に現れる各スペクトル成分の拡大率
【0007】
(数1)
r(θ)=a0 + n=1ΣJ cn cos(nθ+φn ) …(1)
(数2)
am {1/sin(α/2)−1}−y(θ)
={r(θ+π/2−α/2)+r(θ−π/2+α/2)}
/{2sin(α/2)}−r(θ)…(2)
(数3)
y(θ)=(a0 −am )・{1−1/sin(α/2)}
+ n=2ΣJ {μ(α,n)cn cos(nθ+φn )} …(3)
(数4)
μ(α,n)=1−{cos n(π/2−α/2)}/sin(α/2) …(4)
(数5)
my =∫y(θ)dθ/2π (積分範囲:0≦θ≦2π)
=(a0 −am )・{1−1/sin(α/2)}
=( i=0ΣN-1 yi )/N …(5)
(数6)
a0 =am +my /{1−1/sin(α/2)} …(6)
【0008】
即ち、三点接触法において適当なα又は適当なαの組み合わせを用いてy(θ)を測定すれば、全てのnに対してcn 、φn が算出できるので、(1)より真円誤差を「δr=r(θ)−am 」として定量的に求められることが、上記の技術論文より判る。ただし、ここでは、半径am なる標準寸法のゲージ円筒Mを所望の円筒形状とする。
尚、上記の各変数、記号、関数等の定義は、以下においても同様とする。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記の従来技術には、以下の問題点が有り、総括的な改善が期待されている。(問題1)研削加工中に一旦、工作物を研削盤の機外へ取り外し、工作物形状(円筒の真円度等)を精密に測定する際に、研削盤と測定機との間で工作物に対する基準点の設定位置にズレが生じる場合が有る。したがって、この誤差により測定精度が十分に確保できない場合が多い。
(問題2)上記基準点の設定には、調整時間を長く要し、また、本作業は自動化が困難である。このため円筒研削加工等の生産性が向上しない。
(問題3)工作物を回転可能に支持したままクランクピン等の偏心円筒の真円度を三点接触式測定器等を用いて走査する場合には、測定器をリンク機構などにより円筒の円周に沿って接触移動させなければならない。しかしながら、リンク機構には自由度が多く、更に測定系にはC軸やX軸等の自由度もあるため、真円度(前記のy(θ))測定時に、円筒の中心から測った位相角(前記の角θ)を同時に正確に測定することは容易でない。
【0010】
また、例えば、複数の気筒(シリンダー)を有するエンジンのクランクシャフトを製造する場合、クランクジャーナルに対する各クランクピンの位置(偏心量と位相)が正確に工作できなければ、被点火ガスの圧縮比や点火位相等が、各シリンダー毎に正確には実現できなくなる。このため、高速且つ高精度に偏心円筒の軸の位置を測定する測位装置を開発しない限り、燃費や振動、騒音等が十分に抑制された高性能なエンジンを効率よく多数量産することは困難である。
【0011】
また、偏心円筒の軸の位置を極めて正確に求めることは、偏心円筒の真円度を正確に測定する上でも十分有用であり、偏心円筒の軸の位置を高精度且つ高速に測定する手段の開発が期待されている。
【0012】
本発明は、上記の課題を解決するために成されたものであり、その目的は、回転軸にて回転可能に支持された工作物と一体の偏心円筒の真円加工を高精度、かつ、高速に実現するための手段を提供することである。
【0013】
また、本発明の更なる目的は、上記の回転軸に対して中心軸の位置が極めて正確な偏心円筒の加工を高速に実施するための手段を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の課題を解決するためには、以下の手段が有効である。
即ち、第1の発明は、回転軸から偏心して回転する円筒を有する工作物を、研削可能な状態に研削盤に取り付けた状態で、回転軸から偏心した円筒の真円度を測定する真円度測定装置において、砥石台に回動可能に設けられた第1ピボットと、一端において、第1ピボットに支持されて回動可能に設けられた第1アームと、第1アームの他端に回動可能に設けられた第2ピポットと、一端において、第2ピボットに支持されて回動可能に設けられた第2アーム上腕と、第2アーム上腕に設けられた第2アーム下腕と、第2アーム下腕に設けられ、円筒の外周面と当接して外周面を滑動する、円筒の半径を三点接触法により測定する三点接触式測定器とを有することを特徴とする真円度測定装置である。
【0015】
第2の発明は、回転軸から偏心して回転する円筒を有する工作物を、研削可能な状態に研削盤に取り付けた状態で、回転軸から偏心した円筒の真円度を測定する真円度測定装置において、円筒の外周面と当接して円筒を径を測定するための測定器と、円筒の回転軸の回りの回転軌跡に沿って、測定器を円筒の外周面に当接させた状態で移動させる測定器滑動手段と、回転軸を回転させ、測定器の出力値を、一定の時間周期で検出する検出手段と、出力値から円筒の真円度を算出する真円度演算手段とを有することを特徴とする真円度測定装置である。
【0016】
第3の発明は、回転軸から偏心して回転する円筒を有する工作物を、研削可能な状態に研削盤に取り付けた状態で、回転軸から偏心した円筒の真円度を測定する真円度測定装置において、円筒の外周面と当接して円筒を径を測定するための測定器と、円筒の回転軸の回りの回転軌跡に沿って、測定器を円筒の外周面に当接させた状態で移動させる測定器滑動手段と、回転軸を回転させ、測定器の出力値を、回転軸の一定の回転角毎に検出する検出手段と、出力値から円筒の真円度を算出する真円度演算手段とを有することを特徴とする真円度測定装置である。
【0017】
第4の発明は、第2又は第3の発明において、出力値の平均値から円筒の平均半径を演算する平均半径演算手段を有することを特徴とする。
【0018】
また、第5の発明は、第2又は第3の発明において、出力値のフーリエ係数を求め、そのフーリエ係数から円筒の半径の回転角に関する半径分布を求める半径分布演算手段を有することを特徴とする。
【0019】
また、第6の発明は、第2又は第3の発明において、出力値のフーリエ係数を求め、そのフーリエ係数から円筒の半径の回転角に関する半径分布を求め、この半径分布と基準半径との差から真円誤差の回転角に関する真円誤差分布を求める真円誤差分布演算手段を有することを特徴とする。
【0020】
第7の発明は、第5の発明において、半径分布演算手段により求められた半径分布に基づいて、回転軸の回転角に関する砥石の送り量分布を補正する送り量補正手段を有することを特徴とする。
第8の発明は、第6の発明において、真円誤差分布演算手段により求められた真円誤差分布に基づいて、回転軸の回転角に関する砥石の送り量分布を補正する送り量補正手段を有することを特徴とする。
【0021】
第9の発明は、回転軸から偏心して回転する円筒を有する工作物を、研削可能な状態に研削盤に取り付けた状態で、回転軸から偏心した円筒の真円度を測定する真円度測定装置において、円筒の外周面と当接して円筒を径を測定するための測定器と、円筒の回転軸の回りの回転軌跡に沿って、測定器を円筒の外周面に当接させた状態で移動させる測定器滑動手段と、回転軸を回転させ、測定器の出力値を検出する検出手段と、検出手段により検出された出力値のフーリエ係数を求め、そのフーリエ係数から円筒の半径の回転角に関する半径分布を求める半径分布演算手段と、半径分布演算手段により求められた半径分布に基づいて、回転軸の回転角に関する砥石の送り量分布を補正する送り量補正手段とを有することを特徴とする真円度測定装置である。
【0022】
第10の発明は、回転軸から偏心して回転する円筒を有する工作物を、研削可能な状態に研削盤に取り付けた状態で、回転軸から偏心した円筒の真円度を測定する真円度測定装置において、円筒の外周面と当接して円筒を径を測定するための測定器と、円筒の回転軸の回りの回転軌跡に沿って、測定器を円筒の外周面に当接させた状態で移動させる測定器滑動手段と、回転軸を回転させ、測定器の出力値を検出する検出手段と、検出手段により検出された出力値のフーリエ係数を求め、そのフーリエ係数から円筒の半径の回転角に関する半径分布を求め、この半径分布と基準半径との差から真円誤差の回転角に関する真円誤差分布を求める真円誤差分布演算手段と、真円誤差分布演算手段により求められた真円誤差分布に基づいて、回転軸の回転角に関する砥石の送り量分布を補正する送り量補正手段とを有することを特徴とする真円度測定装置である。
【0023】
第11の発明は、第2乃至第10の何れか1の発明において、測定器は、円筒の外周面と当接して円筒の半径を三点接触法により測定する三点接触式測定器であることを特徴とする。
【0024】
第12の発明は、第5乃至第10の何れか1の発明において、測定器は、円筒の外周面と当接して円筒の半径を三点接触法により測定する三点接触式測定器であり、半径分布は、フーリエ係数を三点接触式測定器による拡大率で補正し、補正後のフーリエ係数から求められた円筒の半径の回転角に関する半径分布であることを特徴とする。
【0025】
第13の発明は、第1の発明において、回転軸を回転させ、三点接触式測定器の出力値を、一定の時間周期で検出する検出手段と、出力値から円筒の真円度を算出する真円度演算手段とを有することを特徴とする。
【0026】
第14の発明は、第1の発明において、回転軸を回転させ、三点接触式測定器の出力値を、回転軸の一定の回転角毎に検出する検出手段と、出力値から円筒の真円度を算出する真円度演算手段とを有することを特徴とする。
【0027】
第15の発明は、第13又は第14の発明において、出力値の平均値から円筒の平均半径を演算する平均半径演算手段を有することを特徴とする。
【0028】
第16の発明は、第13又は第14の発明において、出力値のフーリエ係数を求め、そのフーリエ係数から円筒の半径の回転角に関する半径分布を求める半径分布演算手段を有することを特徴とする。
第17の発明は、第13又は第14の発明において、出力値のフーリエ係数を求め、そのフーリエ係数から円筒の半径の回転角に関する半径分布を求め、この半径分布と基準半径との差から真円誤差の回転角に関する真円誤差分布を求める真円誤差分布演算手段を有することを特徴とする。
【0029】
第18の発明は、第16の発明において、半径分布演算手段により求められた半径分布に基づいて、回転軸の回転角に関する砥石の送り量分布を補正する送り量補正手段を有することを特徴とする。
第19の発明は、第17の発明において、真円誤差分布演算手段により求められた真円誤差分布に基づいて、回転軸の回転角に関する砥石の送り量分布を補正する送り量補正手段を有することを特徴とする。
【0030】
第20の発明は、第16乃至第19の何れか1の発明において、半径分布は、フーリエ係数を三点接触式測定器による拡大率で補正し、補正後のフーリエ係数から求められた円筒の半径の回転角に関する半径分布であることを特徴とする。
第21の発明は、第1乃至第20の何れか1の発明に係る真円度測定装置を有する円筒研削盤である。
【0031】
尚、上記の各手段における回転軸は、回動軸で有っても良い。
以上の手段により、前記の課題を解決することができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明の手段によれば、工作物と一体の偏心円筒の真円度を測定する際に、研削盤などの工作機械により回転軸にて回転可能に支持された工作物を機外に取り外すことなく、そ
のまま偏心円筒の真円度を測定することが可能となる。このため、真円度測定時に工作物を工作機械より取り外す必要が無くなる。従って、この取り外しや取り付け作業が無くなると同時に、研削加工時と真円度測定時との間で工作物の設定位置に関するズレが生じなくなる。これにより、真円加工を高精度、かつ、短時間に実現することが可能となる。
【0033】
尚、上記の回転軸は、回動軸であっても上記の作用・効果が得られることは言うまでもない。
【0034】
また、測定器滑動手段の機械的運動に係わる運動パラメータξを検知する運動センサを用いれば、クランクピン等の偏心円筒の中心座標(円筒の軸の位置)をより正確に知る(測る)ことができる。
【0035】
更に、この様な手段を前記の手段と組み合わせることにより、工作物を機外に取り外すことなく、より高精度な真円度の測定や、真円加工をそのまま実施することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下、本発明を具体的な実施例に基づいて説明する。
ただし、本発明は、以下の各実施例に限定して解釈されるものではない。
【実施例1】
【0037】
図1は、本実施例の円筒研削盤100の概観を示す側面図である。砥石台9に装備された円板状の砥石7は回転軸W(図中の点W)にて支持されて回転することができる。Kはクランクピンの横断面円周を表しており、この円周Kの中心点Oは、本円筒研削盤100の図略の支持部により本円筒研削盤100のC軸(図中の点C)を中心とする円軌道S上を回転可能に支持されている。C軸とW軸との距離xは、円筒研削盤100のNCサーボ機構により制御されている。
【0038】
27は三点接触式(馬乗りゲージ式)測定器の測定子である。三点接触式測定器の馬乗りゲージ25は、クランクピン(偏心円筒)の外周面に当接しながら円周Kに沿って滑動可能に第2アーム下腕22より支持されている。第1ピボットPは砥石台9に固定されており、第1ピボットP、第1アーム1、第2ピボットP′、第2アーム上腕21、第2アーム下腕22等より測定器滑動手段が構成されている。これにより三点接触式測定器をクランクピンの円周(側面外周)に沿って円滑に接触移動させることが可能となっている。8は三点接触式測定器の測定値出力線路である。
【0039】
図2に、関数y(ψ,x)を関数y(θ)に変換する本実施例の変数変換手段の作用を示す。本図は、上記の測定器滑動手段(図1)のクランクピン横断面平面上での動作を模式的に表現したものである。ただし、ここで、θは点O(クランクピンの中心)の回りの角度であり、原線OCから測った三点接触式測定器の中心線(図3)までの角度(クランクピンの円周上の測定点pの角度座標)を表すものとする。また、y、ψ、xは、以下に示す測定変数である。
(測定変数)
y:三点接触式測定器の出力値
x:C軸とW軸間の距離(y計測時の値を記録)
ψ:クランクピンのC軸回りの回転角∠WCO(y計測時の値を記録)
【0040】
この様な変数変換は、「θ=f(ψ,x,Λ)」なる関数fを求めることにより実現される。即ち、この様な関数fが求まれば、三点接触式測定器の出力値y(関数値y(ψ,x))をθを独立変数とする関数値y(θ)として扱うことが可能となる。ただし、ここで、Λは測定器滑動手段の姿勢に係わる構造を表す諸定数の適当な集合(滑動機構パラメータ群)である。尚、これらは定数であるため、以下、「Λ」は省略して記載することがある。
この様な関数fを具体的に決定する方法を以下に示す。
【0041】
前記の記号の他に、図2の説明などにおいて以下、下記の記号(定数)を用いる。上記の関数fは、後で詳述するように、これらの測定器滑動手段の姿勢に係わる構造を表す諸定数(測定器滑動手段や工作機械の各部の長さや角度等の定数)を用いて求めることができる。即ち、本実施例における上記の集合Λは、以下の7つの定数をその要素にもつ。
【0042】
(滑動機構パラメータ群)
D:第1ピボットPのW軸からの水平方向(X軸方向)のズレ
(C軸側を負値とする)
H:第1ピボットPのW軸からの高さ
R:円軌道Sの半径
L1 :第1アーム1の長さ
L21:第2アーム上腕21の長さ
L22:第2アーム下腕22の長さ
ζ:第2アーム上腕21と第2アーム下腕22との間の角
【0043】
図3に、半径a0 の真円の横断面をもつ円筒にVゲージ25が乗った際の両者の位置関係を示す。本図において、点Gは半径a0 の真円の中心であり、このような理論的な真円がVゲージ25の接触面A,Bに垂直に当接した場合、本真円の中心点GとVゲージ25の基準点dの2点間の距離Lは、次式(7)で与えられる。
(数7)
L≡Gd=a0 /sin(α/2) …(7)
この様に、点Gは、半径a0 が一定の時、点d及び接触面A,Bに対する不動点となる。
【0044】
一方、実際の各測定点pをその要素にもつクランクピンの横断面円周Kは、実は真円ではないため、その中心点Oは一意には定まらない。即ち、クランクピン断面上に固定した原点Oは、厳密にはKの中心付近に点Cに対して「OC=R,∠WCO=ψ」となるように定めた1固定点に過ぎず、よって、点Gと点Oとは一般には一致しない。また、この2点の距離OGは、角θによって変化する。即ち、この距離は、角θの関数OG(θ)と考えることができる。
【0045】
しかしながら、次式(8)が成り立つ時、関数fを求める限りにおいては、次式(9)を用いることができる。
(数8)
OG(∀θ)≪ MIN(L2 ,L21,L22+L) …(8)
(数9)
Od≒L …(9)
即ち、通常、少なくとも関数fを決定する限りにおいては、点Oと点Gとを同一視しても、その結果における誤差は十分に小さい。これは、実際の所、L2 ,L21,L22は10cm〜1m程度のオーダーであるのに対し、OGは1μm単位の長さだからである。
【0046】
したがって、図2から判る様に、点Oと点Gとを同一視することにより、次式(10)〜(22)を用いて、上記の関数fを具体的に決定することができる。
(数10)
L22=L212 +(L22+L)2−2L21(L22+L)cosζ …(10)
(数11)
u=Rcosψ …(11)
(数12)
v=Rsinψ …(12)
(数13)
w=x−u …(13)
(数14)
OP2 =(H−v)2 +(w+D)2 …(14)
(数15)
β1 =tan -1{(H−v)/(w+D)} …(15)
(数16)
β2 =cos -1{(−L22+L12+OP2 )/(2L1 ・OP)} …(16)
(数17)
γ1 =β2 −β1 …(17)
(数18)
γ2 =γ1 +γ3 −π/2 …(18)
(数19)
γ3 =cos -1{(−OP2 +L12+L22)/(2L1 ・L2 )} …(19)
(数20)
β3 =β4 −γ2 …(20)
(数21)
β4 =cos -1〔{−L212 +L22+(L22+L)2}
/{2L2(L22+L)}〕 …(21)
(数22)
θ=3π/2−ψ+β3 …(22)
【0047】
以上の様に、「θ=f(ψ,x)」なる関数fを具体的に決定することができる。これにより、関数y(ψ,x)を関数y(θ)に変換する変数変換手段を実現することができる。即ち、測定変数y、x、ψを同時に計測することにより、回転軸にて回転可能に支持された工作物を機外に取り外すことなく、そのまま関数y(θ)を求めることが可能であることが示された。
【0048】
図4に、本実施例の円筒研削盤100の構成図(概念図)を示す。本円筒研削盤100によれば、測定変数y、x、ψを同時に計測することが可能である。C軸とW軸との距離xは、ドライバ12等によるサーボ制御機構により制御されている。また、C軸の回転角ψは、ドライバ13等によるサーボ制御機構により制御されている。CNC装置10は、インターフェイス(IF)11を介して、ドライバ12、13を制御する。尚、14、15は正弦波信号分岐器、16、17は波形成形器である。
【0049】
この様に円筒研削盤100を構成すれば、変換ボード18を介して、測定変数y、x、ψの各計測値を同時にリアルタイムでパソコン(PC)19に転送することができる。従って、前記の関係を用いれば、パソコン19にて、測定変数y、x、ψ等より、関数y(θ)を求めることができる。
【0050】
上記の様に関数y(θ)が具体的に求まれば、式(4)〜(6)及び調和解析により、y(θ)を式(3)の形に展開することができる。ただし、αには都合のよい適当な数値が選択されているものとする。この時、1≦n≦Jなる全てのnに対してcn 、φn が定まるため、式(1)の様にr(θ)をθの関数として具体的に求めることができる(真円度演算手段)。
【0051】
また、パソコン19とCNC装置10とを図示する様に通信線路でつなげば、パソコン19側の真円度演算手段、及び、補正量演算手段により求められたX軸の補正量δxをCNC装置10に自動的かつ迅速に連絡することができる。
以下、補正量δxを求める手段(補正量演算手段)について説明する。
【0052】
上記のr(θ)をθに依らず一定とするための補正量δx(ψ)の求め方を図5に示す。ただし、ここで、この補正量δx(ψ)は、各回転角ψに対応するCW間の距離x(ψ)(図2)に対する補正量、即ち、砥石台9の移動量に対する補正量である。
【0053】
本図より明らかなように、本補正量δx(ψ)は、例えば、次式(23)〜(28)により求めることができる。
(数23)
θ=π−ψ−η (η≡∠CWO) …(23)
(数24)
δr(θ)=r(θ)−λI am (λI ≧1) …(24)
(数25)
δx=δr(θ)/cosη …(25)
(数26)
cosη=w/OW=w/(v2 +w2 )1/2 ≡g(x,ψ)
=(x−R cosψ)
/{(R sinψ)2 +(x−R cosψ)2 }1/2 …(26)
(数27)
η=cos-1{g(x,ψ)} …(27)
(数28)
δx(x,ψ)=〔r(π−ψ−cos-1{g(x,ψ)})
−λI am 〕/g(x,ψ) …(28)
【0054】
ただし、式(24)、(28)のλI は、円筒を削り過ぎない様にするための安全係数であり、クランクピン(偏心円筒)を加工する際の研削→測定→研削→測定の繰り返し回数(サイクル数)Iが増加する度に1に近づけていくべき数である。したがって最終的なIの値が小さい場合には、最初からλI の値は1に固定されていても良い。
【0055】
以上の様にして、補正量δx(ψ)を求めることができる。従って、前回のψに対するX軸の値x(ψ)を用いれば、次回のψに対するX軸の値x′(ψ)は、次式(29)の様に求めることができる。
(数29)
x′(ψ)=x(ψ)−δx(ψ) …(29)
【0056】
以上の様に円筒研削盤100を構成すれば、回転軸にて回転可能に支持された工作物を機外に取り外すことなく、偏心円筒の真円加工を自動的に行うことが可能となる。
【0057】
本円筒研削盤100を上記の様に構成した結果、次の様な効果を得ることができた。
(a)工作機械上にて偏心円筒の真円度を測定することが可能となり、測定データと加工データ間の位相角ズレ誤差が無くなった。
(b)偏心した円筒の中心を測定器の回転中心に合わせることなく測定することが可能となり、その結果、偏心量、偏心円筒半径、或いは偏心位相角等の異なる複数の工作物を研削する場合においても、1回のチャック動作で真円度を測定することが可能となった。
(c)砥石台プロフィール・データを自動的に補正することが可能となった。
(d)Vゲージ法による変位測定を行うため、測定部の測定範囲が小さくなり、測定機を機上に搭載したときに問題となる温度等に対する耐環境性も向上した。
【0058】
尚、図4の円筒研削盤100においてパソコン19は具備しなくとも、本機構を構成することは可能である。そのような場合には、例えば、変換ボード18の出力を直接CNC装置10に入力し、上記の真円度演算手段、及び、補正量演算手段をCNC装置10にて実現する方法も考えられる。
【0059】
また、本実施例の円筒研削盤100の測定器滑動手段は、砥石台9に固定されているが、測定器滑動手段は必ずしも砥石台と連動している必要はない。また、本実施例の円筒研削盤100の測定器滑動手段は、リンク機構により実現されているが、測定器滑動手段は必ずしもリンク機構により構成されている必要はない。
【0060】
これらの場合においても、一般に、測定器滑動手段や工作機械の各部の長さや角度等の定数(個々の装置の滑動機構パラメータ群)を用いて関数fのような変数変換手段を実現することができる。
即ち、これらの場合にも、本発明の手段により、関数y(θ)を測定器滑動手段の姿勢に係わる構造を表す諸定数や測定変数等から求めることが可能となるため、上記と同様に本発明による作用効果を得ることができる。
【0061】
また、本第1実施例では、前記の通り「測定変数y、x、ψを同時に計測することにより、回転軸にて回転可能に支持された工作物を機外に取り外すことなく、そのまま関数y(θ)を求めることが可能であること」を示したが、測定変数y、x、ψを同時に計測する具体的な手法としては、例えば、以下に例示するもの等が考えられる。
【0062】
(手法1)一定時間周期で測定する方法
測定開始信号により、一定の時間周期で測定を行う。このとき、例えば、C軸を等速回転させる場合、測定点の数は、回転速度より求められる工作物の1回転に要する時間と所定の測定時間周期(一定時間間隔)から決定することができる。
【0063】
(手法2)一定回転角周期で測定する方法
C軸(回転角ψ)が一定角度回転した際に、同期信号を発生させ、この信号を同期基準としてy、xの各測定を並列に行う。
また、ψの代わりにxを用いても良い。即ち、例えば、xが所定の各座標(測定点)に位置した際に、同期信号を発生させ、この信号を同期基準としてψ、yの各測定を並列に行っても良い。
【0064】
(手法3)サーボ制御の指令値を利用する方法
また、上記のψやxの代わりに、C軸の回転や砥石台の移動の物理的な制御(サーボ制御)に使用される指令値を利用することも可能である。ただし、この場合には、サーボ制御における追随遅れが十分無視でき、指令値に対して砥石台や工作物(円筒)が十分に高い精度で運動することが条件となる。
【0065】
また、本発明は、砥石等の研削手段を有しない真円度測定装置としても有効に利用できる。即ち、このような装置においても上記のr(θ)を求めることができるので、これを真円度測定装置として利用することができる。
【実施例2】
【0066】
例えば上記の第1実施例に示す様な測定器滑動手段の機械的運動に係わる運動パラメータξを検知し、この運動パラメータξに基づいて真円加工の対象となる偏心円筒の軸の位置(偏心量R,回転角ψ(図2))を正確に求めれば、更に高精度の真円加工を実施することができる。
【0067】
図6は、本第2実施例に係わる回動角センサ(ロータリーエンコーダRE)を有する円筒研削盤200の模式的な断面図である。本円筒研削盤200は、上記の第1実施例の円筒研削盤100(図1,図2)の第1ピボットPの位置にロータリーエンコーダRE(回動角センサ)を設けたものである。このロータリーエンコーダREは、第1アーム1の回動角γ1 を図中の点P(第1ピボット)を含んだ水平面上にある原線PP2より図6に向かって時計回りを正の向きとして計測するものである。
即ち、前記の運動パラメータξは、本実施例においてはこの第1アーム1の回動角γ1 に相当する。尚、本図6において、点P1,P2は、点P′(第2ピボット)から垂らした垂線上にある点である。
【0068】
例えばこの様な装置(円筒研削盤200)によれば、図7〜図9を用いてその詳細を後述する様に、真円加工すべき偏心円筒の軸の位置に関する位相角誤差Δψを求めたり、より正確な偏心量Rを求めたりすることができる。
また、求められた位相角誤差Δψは、例えば同期制御手段による真円加工実行時のC軸の回転角ψの補正に用いることができる。また、より正確な偏心量Rが求まれば、真円加工実行時の砥石台9の移動量xをより高精度に決定することができる。
また、位相角誤差Δψに基づいてC軸の回転角ψを補正する代りに、位相角誤差Δψに相当する時間分だけ移動量xを具現するタイミングを同期制御手段によってずらしても良い。
【0069】
図7は、本円筒研削盤200を制御する測定メインプログラムA0のゼネラルフローチャートである。
本プログラムA0では、まず最初にステップa10にて、測定装置(三点接触式測定器)が挿入できる位置まで砥石台9をC軸に接近させ、偏心円筒(例:クランクピン等)の外側の円周上に馬乗りゲージ(Vブロック)が接触する様に、工作物(例:クランクシャフト等)に測定装置を挿入する。
【0070】
次に、ステップa20では、基準となる所定のプロファイルデータに基づいて、前記の測定器滑動手段により三点接触式測定器(Vブロック)を偏心円筒の側面に対して接触移動させ、円周K(図3)が常に「Vゲージ25(Vブロック)の接触面A,B(図3、図6)と砥石(図6)」に対して合計3点で接触する様に、同期制御を行いながらC軸を回転角ψが増加する方向(図2では反時計回り)に任意の位置(角度)から1回転させる。そして、この同期制御の実行と同時に、原点O(偏心円筒の軸の位置)の回転角ψ、砥石の位置x、及び第1アーム1の回動角γ1 の各値をそれぞれ測定し、記録する。
【0071】
この測定を行う際の原点Oは、図1、図2、図6の円軌道S上を一周するが、この時の各測定点の間隔(測定点密度)は、例えば、円軌道S上一周に渡り均等でも良い。
また、例えば、図6のXY座標平面上における円軌道SのX軸とY軸に対する各切片付近の測定点密度を特に高くしておけば、後述のサブルーチンB0,C0内における計算を高精度に行うのに比較的都合が良い。
【0072】
ステップa30では、ステップa20による測定が所定の必要回数実施されたか否かを判定する。
ステップa40では、C軸の回転運動とx軸の並進運動を停止させる。
ステップa50では、測定装置(三点接触式測定器)を上昇させ、砥石台9を後退させる。
【0073】
ステップa60では、詳細後述の位相角誤差計算サブルーチンB0(図8)を呼び出して、原点Oの位相角誤差Δψを算出する。
ステップa70では、詳細後述の偏心量計算サブルーチンC0(図9)を呼び出して、原点Oの偏心量Rを算出する。
ステップa80では、上記の各サブルーチンB0,C0により算出された原点Oの位相角誤差Δψと偏心量Rに基づいて、偏心円筒の真円加工に用いる同期制御データ(プロファイルデータ)を補正する。
【0074】
この様にして求められた位相角誤差Δψは、例えば、同期制御手段による真円加工実行時のC軸の回転角ψの補正に用いることができる。また、より正確な偏心量Rを用いれば、真円加工実行時の砥石台9の移動量xをより高精度に決定することができる。
【0075】
図8は、上記の測定メインプログラムA0から呼び出される位相角誤差計算サブルーチンB0のフローチャートである。
本サブルーチンB0では、まず最初にステップb20にて、第1アーム1の回動角γ1 の回転角ψによる一次導関数dγ1 /dψに対して、極値(最小値<0,0<最大値)を与える回転角ψ1 ,ψ2 を前記の式(10)〜(17)に基づいてそれぞれ理論的に算出する。ただし、この計算は、理論的なものであり、上記のプログラムA0の測定とは独立しているので、プログラムA0を実行する前に、予め行っておいても良い。
【0076】
次に、ステップb40では、回動角γ1 と回転角ψの測定データを分析して、γ1 のψに対する変化率が最大(>0)及び最小(<0)であった時の回転角ψの値Ψ1 ,Ψ2 を求める。ただし、測定点密度が円軌道S上で均一である場合には、γ1 の変化量が最大(>0)及び最小(<0)であった時の回転角ψの値をそれぞれΨ1 ,Ψ2 としても良い。また、測定点密度が比較的荒い場合には、数値解析の分野で公知の、例えば放物線近似等の各種補間演算等を用いてΨ1 ,Ψ2 を求めても良い。
【0077】
次に、ステップb60では、次式(30),(31),(32)により、原点Oの位相角誤差Δψを算出する。
(数30)
Δψ1 =Ψ1 −ψ1 …(30)
(数31)
Δψ2 =Ψ2 −ψ2 …(31)
(数32)
Δψ=(Δψ1 +Δψ2 )/2 …(32)
【0078】
例えば以上の様に、γ1 のψに対する変化率が最大(>0)又は最小(<0)であった時の回転角ψの測定値を用いることにより、ロータリーエンコーダREが有する一定の測定精度に対して、最も高い精度で位相角誤差Δψの値を求めることができる。
【0079】
また、上記のΔψ1 の値は、次式(33)により求めても良い。
(数33)
Δψ1 =(γ+ −Γ+ )/(dγ1 /dψ)+ …(33)
ただし、ここで、Γ+ は前記の式(10)〜(17)より理論的に求めることができるγ1 のψ=0における理論値であり、γ+ はプログラムA0で実際に測定したγ1 のψ=0の時の実測値である。また、(dγ1 /dψ)+ は式(10)〜(17)に基づいて理論的に求められるγ1 の一次導関数のψ=0における理論値である。
【0080】
図6からも判る様に、実際にはψの微小角変動に対するロータリーエンコーダREの感度は、ψ=0,πの近傍において最も或いは十分に高くなるものと考えられるので、この感度が必ずしも極大(最大)となる位置でのγ1 の測定値に限ることなく、例えば、上記の様なγ1 の実測値を利用することもできる。
尚、式(33)は一次近似によるものであるため、ψの変化量に対する(dγ1 /dψ)+ の変化量が十分無視できる程度に、Δψ1 が十分小さい時に有効なものである。
【0081】
また、上記と同様に、Δψ2 の値は、次式(34)により求めても良い。
(数34)
Δψ2 =(γ- −Γ- )/(dγ1 /dψ)- …(34)
ただし、ここで、Γ- は前記の式(10)〜(17)より理論的に求めることができるγ1 のψ=πにおける理論値であり、γ- はプログラムA0で実際に測定したγ1 のψ=πの時の実測値である。また、(dγ1 /dψ)- は式(10)〜(17)に基づいて理論的に求められるγ1 の一次導関数のψ=πにおける理論値である。
【0082】
また、式(33)を使用する場合、より望ましくは、まず最初に(dγ1 /dψ)に対して最大値を与える角度ψ+ を前記の式(10)〜(17)より予め理論的に求めておき、そして、Γ+ は前記の式(10)〜(17)より理論的に求めることができるγ1 のψ=ψ+ における理論値とし、γ+ はプログラムA0で実際に測定したγ1 のψ=ψ+ の時の実測値とすると良い。また、同時に(dγ1 /dψ)+ は式(10)〜(17)に基づいて理論的に求められるγ1 の一次導関数のψ=ψ+ における理論値とする。
【0083】
これらの条件がより望ましい理由は、上記のγ1 が回転角ψに関する比較的性質の良い周期関数(3回以上微分可能)なので、この様な方法によれば、γ1 の二次導関数がψ=ψ+ の近傍においてd2 γ1 /dψ2 ≒0をよく満たし、よって、Δψ1 の幅が1°前後と若干大きめでも、十分高い精度で式(33)が成立するからである。これらの事情は、式(34)を使用する場合についても同様である。
【0084】
図9は、測定メインプログラムA0から呼び出される偏心量計算サブルーチンC0のフローチャートである。
本サブルーチンC0では、まず最初に、ステップc20により、測定メインプログラムA0で測定したデータを検索する。即ち、上記のΔψを用いて補正された回転角(ψ+Δψ)の値が±π/2であった位置(図6のOa ,Ob )に偏心円筒の軸(原点O)があった時の第1アーム1の回動角γ1 と砥石台9の位置xの各測定値を測定データの中から検索する。ただし、測定点密度が比較的荒い場合には、数値解析の分野で公知の、例えば放物線近似等の各種補間演算等を用いて、各点(図6のOa ,Ob )での回動角γ1 の値を求めても良い。また、この場合には、各位置(図6のOa ,Ob )での砥石台9の位置xの値についても同様に、所定の補間演算により算出すれば良い。
【0085】
次に、ステップc40では、原点Oa ,Ob の各Y座標Ya ,Yb を次式(35),(36),(37)により算出する。
(数35)
Y=Y1−Y2 …(35)
(数36)
Y1=H+L1sinγ1 …(36)
(数37)
Y2={L22−(x+D−L1cosγ1 )2 }1/2 …(37)
【0086】
ただし、ここで、Y1は第2ピポットP′のY座標である。また、Y2は原点O(Oa ,Ob )と第2ピポットP′を結ぶ線分OP′をY軸に投影した時の幅(高さ)であり、言い換えれば、L2cosγ2 (図2、図6参照)に一致する長さである。従って、例えば、偏心円筒の軸が点Oa に位置する場合には、この長さY2は、図6中の線分P′P1の長さに一致する。
【0087】
例えば、原点Oa のY座標Ya をこれらの式から求めるには、式(36),(37)のγ1 に、補正後の回転角ψ(補正前の回転角ψ+Δψ)の値が+π/2であった時のγ1 の測定値(図6のγ13)を代入し、式(37)のxには、その時の位置xの測定値を代入して、最後に式(35)からYa を算出すれば良い。
原点Ob の位置についても全く同様に、γ1 =γ14等を各式に代入して、そのY座標Yb を求める。
【0088】
次に、ステップc60では、偏心円筒の偏心量Rを次式(38),(39),(40)により算出する。
(数38)
R3 =Ya …(38)
(数39)
R4 =−Yb …(39)
(数40)
R=(R3 +R4 )/2 …(40)
【0089】
以上の様に円筒研削盤200を構成し、制御することにより、例えばクランクシャフト等の回転軸にて回転可能に支持された工作物を機外に取り外すことなく、クランクピン等の偏心円筒の真円加工を自動的かつより高精度に行うことが可能となる。
【0090】
本円筒研削盤200を上記の様に構成し、制御した結果、次の様な効果を得ることができた。
(a)工作機械上にて偏心円筒の真円度を高精度に測定することが可能となり、測定データと加工データ間の位相角ズレ誤差が無くなった。
例えば、複数のシリンダーを有するガソリンエンジンのクランクシャフトのクランクピンを真円加工した場合には、クランクジャーナルに対して所望の正確な角度に各クランクピンを形成することが可能となったため、各シリンダー内での点火のタイミングがそれぞれ極めて正確となり、エンジンの出力を向上させることができる様になったと共に、エンジンの振動、騒音、燃費が大きく低減できた。
【0091】
(b)偏心した円筒の中心を測定器の回転中心に合わせることなく測定することが可能となり、その結果、偏心量、偏心円筒半径、或いは偏心位相角等の異なる複数の工作物を研削する場合においても、1回のチャック動作で真円度を高精度に測定することが可能となった。
例えば、複数のシリンダーを有するガソリンエンジンのクランクシャフトのクランクピンを真円加工した場合には、クランクジャーナルに対して所望の正確な偏心量で各クランクピンを形成することが可能となった。このため、各ピストンのストローク(偏心量×2)がそれぞれ極めて正確になり、各シリンダーの被点火ガスの圧縮比を極めて正確に実現することができる様になった。これにより、各シリンダー毎の圧縮比にバラツキが生じなくなり、各シリンダーの出力を設計通りにバランスさせることができる様になったため、エンジンの振動、騒音、燃費が大きく低減できた。
【0092】
(滑動機構パラメータ自動修正手段)
三点接触式測定器又はVブロックの交換、修繕又は調整に伴って、測定器滑動手段(又はVブロック滑動手段)の姿勢に係わる、例えば前記の滑動機構パラメータ群(D,H,R,L1 ,L21,L22,ζ)等の少なくとも1つの値の修正が必要となる場合がある。
例えば、磨耗や破損、或いは、挟み角αの変更等のためVブロックを交換する場合等がそれにあたる。
【0093】
例えば、本第2実施例の回動角センサを有する円筒研削盤200(図2、図6)の場合、挟み角αの変更のためにVブロックを交換すると、図2のL22、及びLの値が変化してしまう。しかしながら、円筒研削盤200は、回動角センサ(ロータリーエンコーダRE)を有するため、以下の手順に従えば、Vブロックの交換により、一旦値が不定となった上記のL22、及びLの値を自動的に再設定することができる。
【0094】
(1)C軸に対して偏心していない半径am が正確に既知のゲージ円筒を用意する。ただし、このゲージ円筒は、はじめから工作機械の一部分として構成されているものであっても良いし、C軸を軸として高精度に真円加工された円筒半径が既知の工作中の工作物で有っても良い。
(2)円筒研削盤200の一部を構成するコンピュータに対して、Vブロックの挟み角αとゲージ円筒の半径am を入力又は指定する。
【0095】
(3)円筒研削盤200は、以下の手順で、L22、及びLの値を自動的に再設定する。
(a)次式(41)により、Lの値を再設定する。
(数41)
L=am / sin(α/2) …(41)
(b)Vブロック(馬乗りゲージ)を上記のゲージ円筒に2点接触させ、測定器の測定子の端面をゲージ円筒に接触させる。
【0096】
(c)この接触状態を維持し、三点接触式測定器の基準点d(Vゲージ25の基準点d)をゼロ点とする測定用パラメータsに、現在の測定子の端面の位置として、「L−am 」の値を代入することにより、基準点dのゼロ点調整を行う。ただし、ここで、sは測定子がゲージ円筒の軸に向かって伸びようとする向きを正の向きとする。これにより、この測定用パラメータsの基準点dにおける値を0に再設定することができる。
【0097】
(d)ロータリーエンコーダREの出力値γ1 を検知する。
(e)式(10)〜(17)に基づいて、予めL22について解かれた式に既知の変数(滑動機構パラメータ)の値を代入し、L22の値を求める。(ただし、この時、上記の設定により、ゲージ円筒は偏心していないので、R=0であり、ψは任意である。)
【0098】
例えば、以上の様な方法に従えば、前記の滑動機構パラメータの一部(L22、及びL)の値の修正又は調整を運動パラメータξ(γ1 )の計測値に基づいて、自動的に実行することが可能となり、三点接触式測定器又はVブロックの交換、修繕又は調整に伴う作業の作業効率が大きく向上する。
【0099】
(逐次漸近的真円加工)
本第2実施例における円筒研削盤200を用いれば、「円筒の軸の位相角誤差Δψの測定(プログラムA0(サブルーチンB0))→円筒の軸の偏心量Rの測定(サブルーチンC0)→軸の位置の補正→真円度の測定→真円研削加工」の各工程から構成される真円加工のサイクルを繰り返して、精度を上げながら真円加工を段階的に進めることにより、逐次漸近的に高精度な真円加工を行うことができる。
【0100】
特に、この様に多段階に渡って逐次漸近的に高精度な真円加工を行う場合には、式(32)〜(34)を用いて位相角誤差Δψを求めた方が、必要十分な精度が得られる上、計算が簡単になるため、プログラミング時間、及び演算処理時間が共に短くなり便利である。
【0101】
(測定工程のスキップ(工程の省略))
この様な場合、例えば、偏心円筒の真円加工における偏心円筒の中心軸の位置の測定は、要求される加工精度等に鑑み、必要に応じてそれぞれ必要回数だけ実行すれば良い。
従って、「円筒の軸の位相角誤差Δψの測定(プログラムA0(サブルーチンB0))→円筒の軸の偏心量Rの測定(サブルーチンC0)→軸の位置の補正→真円度の測定→真円研削加工」の各工程から構成される真円加工のサイクルを繰り返して、真円加工を段階的に何度も(即ち、逐次漸近的に)繰り返す場合、例えば、偏心円筒の軸の位相角誤差Δψの測定工程などは、そのm回目(所定回数m≧2)及びそれ以降は、再測定を省略しても良い場合があり得る。
【0102】
このため、例えば、加工される偏心円筒の中心軸の、C軸(回転軸)から見た位相角ψ、或いは偏心量Rの少なくとも一方が、殆ど収束したと判断される条件下においては、所定の収束条件判定処理を行った上で、これらの各測位処理の少なくとも一方は省略しても良い。
【0103】
したがって、例えば、所定の収束条件が成立したm回目以降は、上記の真円加工のサイクルを「円筒の軸の偏心量Rの測定(プログラムA0(サブルーチンC0))→軸の位置の補正→真円度の測定→真円研削加工」或いは、「真円度の測定→真円研削加工」等の様に適当に変更(簡略化)すれば、その後の真円加工のサイクルの実行効率を更に向上させることも可能である。
【0104】
また、上記の自然数mは、最初から決定されている固定値でも良いし、所定の収束条件が満たされたか否か等の判定結果に従って、動的に決定されるもので有っても良い。
【実施例3】
【0105】
図10は、本第3実施例に係わる三点接触式測定器700の模式的な側面図(a)及び正面図(b)である。この三点接触式測定器700は、第1実施例の円筒研削盤100の三点接触式測定器(図1の8,22,25,27)の一部を改良したものであり、挟み角αの相異なるVブロックを同時に2つ装着できる点が大きな特徴となっている。
【0106】
このため、本三点接触式測定器700を用いれば、Vブロック上下移動用アクチュエータ29を動作させることにより、式(22)或いは式(23)(図2或いは図5)の角度θがm周(m≧1)する度毎に、2種類のVブロックを交互に入れ換えて真円度の測定に使用することができる。
図11は、三点接触式測定器700の真円誤差の各スペクトル成分(次数)に対する拡大率を示す表である。ただし、本表の「α=60°」の行の内容は、図16の「α=60°」の列の内容と同じものである。
【0107】
例えば、この様な、2値(45°、60°)の組み合せを適用すれば、実用上必要又は十分とされる最大次数n(10≦n≦50程度)までの範囲内において、真円誤差の各スペクトル成分(次数)に対する各拡大率の絶対値を各々1.00以上の好適な値に確保することができる。このため、本三点接触式測定器700を用いれば、人手を介したVブロックの交換作業を行うこと無く、十分に精度の高い真円度の測定を実施することが可能となる。
【0108】
また、Vブロックの挟み角を例えば、α=80°(≒1.40〔rad 〕)に固定することにより、実用上必要又は十分とされる各次数に対して、各拡大率の絶対値を各々実用に耐え得る所定の下限値(>0)以上の値に確保することが可能となる。従って、要求される真円度の測定精度によっては、この様に適当な1つの挟み角αの選択により、必ずしもVブロックを2種類以上用意しなくとも良い場合もある。
【実施例4】
【0109】
図12は、本第4実施例に係わる三点接触式測定器800の模式的な正面図(a)、及び、更にその一部分を代替的に改造した代替構成図(b)である。この三点接触式測定器800(a)は、第1実施例の円筒研削盤100の三点接触式測定器(図1の8,22,25,27)の一部を改良したものであり、挟み角αの二等分面、即ちVブロックの中心線(Θ=0)からの角度Θ(原点Oから見た位相)の相異なる位置(Θ=Θ1,Θ2)にそれぞれ1つづつ、合計2つの計量センサ(センサI、センサII)を装備している点が大きな特徴となっている。
【0110】
この様な構成により、「0≦Θ2<Θ0」成る範囲に設けた計量センサ(センサII)を前記の「日本機械学会誌 第53巻 第376号 技術論文『円筒形工作物の真円度測定法』(昭和25年5月)」に記載されているVブロック式測定法における計量センサとして用いることができる。また、「Θ0<Θ1<Θ0′」成る範囲に設けた計量センサ(センサI)を同論文に記載されている馬乗ゲージ式測定法における計量センサとして用いることができる。
ただし、本三点接触式測定器800(a)では「0≦Θ<Θ2、及び、Θ0′<Θ<2π」成る範囲は、偏心円筒挿入用のスペースとして挿入口が空けてある。
【0111】
また、本三点接触式測定器800(a)は、Vブロック25の中心線(Θ=0)からの角度Θ2を一定値に維持したまま、センサIIを本図12中のx2軸の方向に位置調整(平行移動)することが可能な並進調整機構を有する。また、本三点接触式測定器800(a)の台座24に内蔵の測位機構により、この並進量x2は随時読み取りや再設定が可能となっている。したがって、この並進調整機構により、測定対象のワーク(偏心円筒)の半径に大きな自由度を持たせることが可能となっている。
【0112】
更に、各計量センサ(センサI、センサII)には、その計量方向に対して位置調整(平行移動)することが可能な並進調整機構を備えても良い。これにより、計量センサの測位可能な範囲(又は、高精度に測位可能な範囲)が比較的狭い場合にも、測定対象となるワーク(偏心円筒)の半径に大きな自由度を持たせることが可能となる。
【0113】
また、センサIを用いて第1実施例(式(5),式(6))に従って偏心円筒の平均半径a0 を予め求めておけば、上記の並進調整機構を用いることにより、偏心円筒の半径(平均半径a0 )の変更に伴うセンサIIの位置(並進量x2)の再設定(最適化)をも自動化することが可能となる。
【0114】
また、偏心円筒の平均半径a0 が予め既知であり、これに基づいてセンサIIの位置(x2の値)が予め固定(最適化)されている場合には、センサIとセンサIIとを同時に使用して真円度の測定を行うことができるため、本三点接触式測定器800(a)によれば、この様な場合、第3実施例の三点接触式測定器700を使用した際の約半分の測定時間で真円度を測定することが可能である。
【0115】
図13は、三点接触式測定器800(a)の真円誤差の各スペクトル成分(次数)に対する各拡大率を示す表である。ただし、センサI(Θ1=180°)については、馬乗ゲージ式測定法の理論に従って各次数に対する拡大率を求め、センサII(Θ2=45°)については、Vブロック式測定法の理論に従って各次数に対する拡大率を求めた。
この様な設定により、真円度の測定に必要となる各次数に対して、それぞれ拡大率の絶対値を1.00以上にすることができると同時に、「0≦Θ<45°、及び、Θ0′<Θ<360°」成る範囲の全てを偏心円筒挿入用のスペース(挿入口)として空けておくことができる。
【0116】
例えばこの様に、三点接触式測定器を構成すれば、高精度の真円度測定を実現することができると同時に、測定器の挿入、上昇等の機械的な操作を容易に自動化することができる様になる。
即ち、これらの作用により、本三点接触式測定器800(a)においては、効率よく、高精度な真円加工を行うことができる。
【0117】
また、図12の代替構成図(b)は、上記の三点接触式測定器800(a)の台座24上で平行移動することができたセンサIIの並進調整機構を改造した代替構成を示すものである。
代替構成図(b)の台座24には、点C2を回動中心としてセンサIIを回動させることができる回動調整機構が内蔵されており、前述の並進調整機構と同様に、測定対象の円筒の平均半径a0 に応じて、センサIとセンサIIの各計量方向線の交点(原点O)の位置を移動(調整)することができる様になっている。
【0118】
ただし、上記の回動調整機構における点C2を回動中心とする回動角Θ2は、図12の正面図(a)に示したセンサIIの計量方向の位相Θ2と常に一致するため、本回動調整機構を用いる場合には、この位相Θ2の変更に伴って、図13の拡大率の表のΘ2の行を回動調整実施後毎回計算し直す必要がある。
例えば、この様な円筒中心調整手段を用いても、上記の三点接触式測定器800(a)と全く同様の作用効果を得ることができる。
【0119】
尚、本発明を用いた真円加工における工作物(偏心円筒)のプロファイルデータの補正は、例えば、最終的に偏心量Rが0と成る様に実施しても良い。
言い換えれば、本発明は、例えばC軸(回転軸)で回転可能に支持されたジャーナルの軸の位置の精密な測定や真円加工にも適用することができる。
【0120】
例えば、より具体的には、クランクシャフトのクランクジャーナル等の様に、C軸(回転軸)で支持された工作物が、その剛性や研削抵抗の変化等に起因する若干の加工誤差のために、偏心してしまっている場合等があり得るが、本発明に基づいた円筒の中心軸の測位や、真円度の測定等に基づいたプロファイルデータの補正(フィードフォワード)を実施すれば、この様なC軸(回転軸)で支持されたジャーナル等の高精度な真円加工をも実現することが可能となる。
【0121】
本明細書において、以下の発明も認識されている。
即ち、第1の手段は、回転軸にて回転可能に支持された工作物と一体成形され回転軸から偏心した円筒の真円度を測定する真円度測定装置において、円筒の半径を三点接触法により測定する三点接触式測定器と、円筒の回転軸に垂直な断面上の円周に沿って三点接触式測定器を接触移動させる測定器滑動手段と、本真円度測定装置に対する上記の回転軸の相対位置xを測定する位置測定手段と、円筒の回転軸周りの回転角ψを測定する回転角測定手段と、回転軸の周りを回転する円筒の真円度を相対位置x、回転角ψ、及び、三点接触式測定器の出力値yより算出する真円度演算手段とを備えることである。
【0122】
また、第2の手段は、上記の第1の手段において、円周の中心又は中心付近に位置する原点Oとこの原点Oを始点とする所定の原線OCとを持ち円周が座標平面上に固定された2次元極座標を用いて、円周上における出力値yの測定点pの位置座標(r,θ)を表現し、測定点pにおける出力値yの測定時の相対位置x、回転角ψ、及び、測定器滑動手段の姿勢に係わる構造を表す諸定数の集合Λより角度座標θを求める変数変換「θ=f(ψ,x,Λ)」を用いて、円周上の各測定点pにおける出力値yを角度座標θの関数y(θ)として求める変数変換手段を備えることである。
【0123】
また、第3の手段は、上記の第2の手段において、調和解析等の解析技法を用いて、関数y(θ)より円周上の各測定点pの原点Oからの距離rを角度座標θの関数r(θ)として求める半径演算手段と、角度座標θと回転角ψに関して逆向きの変数変換fに対する変数逆変換「ψ=f-1(θ,x,Λ)」により、関数r(θ)を回転角ψの関数r(ψ)に変数変換する変数逆変換手段と、円筒の研削加工時の相対位置xに対する補正量δxを回転角ψの関数δx(ψ)として求める補正量演算手段とを備えることである。
【0124】
また、第4の手段は、上記の第1乃至第3のいずれか1項の手段において、三点接触式測定器に、2つの接触面が成す挟み角αが互いに異なる複数のVブロックを備えるか、或いは、円周の中心又は中心付近に位置する原点Oから見た位相Θが互いに異なる複数の位置にそれぞれ計量センサを備えることである。
【0125】
また、第5の手段は、上記の第4の手段において、上記の複数のVブロックについて、互いに異なる挟み角αの各二等分面を互いに一致させ、複数のVブロックに共有される1台の計量センサの計量方向線をこの二等分面上に配置することである。
【0126】
また、第6の手段は、上記の第4の手段において、複数の計量センサの内の少なくとも1つに、円筒の平均半径a0 に応じて自計量センサの位置又は計量方向を修正することにより各計量センサから各計量方向へ伸びた直線の交点の位置を調整する円筒中心調整手段を設けることである。
【0127】
また、第7の手段は、上記の第1乃至第6のいずれか1項の手段において、測定器滑動手段の機械的運動に係わる運動パラメータξを検知する運動センサと、三点接触式測定器の交換、修繕又は調整に伴って必要となる、前記の集合Λに属する少なくとも1つの定数の値の修正を、半径am 及び中心座標が既知であるゲージ円筒の中心軸測位時の運動パラメータξの計測値に基づいて自動的に実行する滑動機構パラメータ自動修正手段とを備えることである。
【0128】
また、第8の手段は、上記の第1乃至第7のいずれか1項の手段において、測定器滑動手段の機械的運動に係わる運動パラメータξを検知する運動センサと、偏心円筒の円周の中心又は中心付近に固定された原点Oの回転軸から見た位置座標を、相対位置x、回転角ψ、及び運動パラメータξ、或いは、これらの変数の関連値に基づいて測定する原点測位手段とを備えることである。
【0129】
また、第9の手段は、上記の第7又は第8の手段において、運動センサを機械的運動を実現するアームの角度を計測する回動角センサか、或いは、アームの長さを計測するアーム長センサにすることである。
【0130】
また、第10の手段は、回転軸にて回転可能に支持された工作物と一体成形され、この回転軸から偏心した円筒の中心軸の位置を測定する円筒軸測位装置において、この円筒の回転軸に垂直な断面上の円周に沿ってVブロックを接触移動させるVブロック滑動手段と、測位装置に対する回転軸の相対位置xを測定する位置測定手段と、円筒の回転軸周りの回転角ψを測定する回転角測定手段と、Vブロック滑動手段の機械的運動に係わる運動パラメータξを検知する運動センサと、上記の円周の中心又は中心付近に固定された原点Oの回転軸から見た位置座標を相対位置x、回転角ψ、及び運動パラメータξ、或いは、これらの変数の関連値に基づいて測定する原点測位手段とを設けることである。
【0131】
また、第11の手段は、上記の第10の手段の運動センサを、上記の機械的運動を実現するアームの角度を計測する回動角センサか、或いは、アームの長さを計測するアーム長センサにすることである。
【0132】
また、第12の手段は、上記の第10又は第11の手段の原点測位手段において、先ず、原点Oの所定の標準位置からの位相角誤差Δψを求め、次に、回転角ψに対して位相角誤差Δψによる補正を行い、その後、原点Oの回転軸からの偏心量Rを測定又は計算することにより、回転軸から見た前記原点Oの位置座標を測定又は補正することである。
【0133】
また、第13の手段は、上記の第10乃至第12のいずれか1つの手段において、Vブロックの交換、修繕又は調整に伴って必要となる、Vブロック滑動手段の姿勢に係わる滑動機構パラメータの少なくとも1つの値の修正を、半径am 及び中心座標が既知であるゲージ円筒の中心軸測位時の運動パラメータξの計測値に基づいて自動的に実行する滑動機構パラメータ自動修正手段を設けることである。
【0134】
また、第14の手段は、上記の第1乃至第9のいずれか1つの手段の真円度測定装置において、上記の第10乃至第13のいずれか1つの手段の円筒軸測位装置を備えることである。
【0135】
また、第15の手段は、回転軸から偏心した円筒を同期制御手段を用いて研削加工する円筒研削盤において、上記の第1乃至第9のいずれか1つの手段の真円度測定装置、又は、上記の第10乃至第13のいずれか1つの手段の円筒軸測位装置の内の少なくともいずれか一方を備え、かつ、相対位置x及び回転角ψを関数x(ψ)により同期制御することである。
【0136】
更に、第16の手段は、上記の第15の手段において、上記の第1乃至第9のいずれか1つの手段の真円度測定装置と、上記の第10乃至第13のいずれか1つの手段の円筒軸測位装置とを備え、原点測位手段による原点Oの位置座標の測定又は補正と、真円度演算手段による円筒の真円度の算出と、同期制御手段を用いた研削加工とを組み合わせて順次必要回数実行することにより、偏心円筒を逐次漸近的に真円加工することである。
【0137】
原点測位手段又は円筒軸測位装置を用いれば、Vブロック滑動手段等の機械的な運動の運動パラメータξを検知することにより、偏心円筒の軸の位置を正確に測位することができるため、真円度の測定や極めて高精度の真円加工を実施するか否かに係わらず、回転軸に対する偏心量や、回転軸に対する位相の正確な偏心円筒を製造することが可能となる。
【0138】
従って、原点測位手段又は円筒軸測位装置を用いれば、例えば、複数気筒のエンジンのクランクシャフトのクランクピンを加工する場合、クランクジャーナルに対する各クランクピンの位置が極めて正確に形成できる様になる。このため、例えば、被点火ガスの圧縮比の各シリンダー毎の均一化や、各シリンダー毎の点火位相の最適化等が極めて高精度に実施でき、よって、燃費、騒音、振動等が十分に抑制された高性能のエンジンを製造することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0139】
クランクシャフトなどの偏心円筒などの工作物の加工に応用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0140】
【図1】本発明の実施例に係わる円筒研削盤100の概観を示す側面図。
【図2】本発明の実施例に係わる変数変換手段の作用を示す図。
【図3】半径a0 の真円断面をもつ円筒にVゲージが乗った際の両者の位置関係を示す断面図。
【図4】本発明の実施例に係わる円筒研削盤100の構成図。
【図5】本発明の実施例に係わる補正量δx(x,ψ)の求め方を示す図。
【図6】本発明の第2実施例に係わる回動角センサ(ロータリーエンコーダRE)を有する円筒研削盤200の模式的な断面図。
【図7】円筒研削盤200を制御する測定メインプログラムA0のゼネラルフローチャート。
【図8】測定メインプログラムA0から呼び出される位相角誤差計算サブルーチンB0のフローチャート。
【図9】測定メインプログラムA0から呼び出される偏心量計算サブルーチンC0のフローチャート。
【図10】本発明の第3実施例に係わる三点接触式測定器700の模式的な側面図(a)及び正面図(b)。
【図11】三点接触式測定器700の真円誤差の各スペクトル成分に対する拡大率を示す表。
【図12】本発明の第4実施例に係わる三点接触式測定器800の模式的な正面図(a)、及び、その一部分の代替構成図(b)。
【図13】三点接触式測定器800の真円誤差の各スペクトル成分に対する拡大率を示す表。
【図14】馬乗りゲージ式三点接触法を用いた真円度測定方法を示す図。
【図15】馬乗りゲージ式三点接触法を用いた真円度測定方法を示す図。
【図16】馬乗りゲージを用いた際の真円誤差の各スペクトル成分に対する拡大率を示す表。
【符号の説明】
【0141】
C … C軸(工作物の回転軸)
K … 円筒形工作物(横断面円周)
P … 第1ピボット
P′… 第2ピボット
W … 砥石回転軸
1 … 第1アーム
21… 第2アーム上腕
22… 第2アーム下腕
7 … 砥石
8 … 三点接触式測定器の出力線路
9 … 砥石台
10 … 数値制御装置
14,
15 … 正弦波信号分岐器
16,
17 … 波形成形器
25 … 三点接触式測定器のVゲージ又は馬乗りゲージ
27 … 三点接触式測定器の測定子
100 … 円筒研削盤(第1実施例)
200 … 円筒研削盤(第2実施例)
RE … ロータリーエンコーダ
A0 … 測定メインプログラム
B0 … 位相角誤差計算サブルーチン
C0 … 偏心量計算サブルーチン
700 … 三点接触式測定器(第3実施例)
29 … Vブロック上下移動用アクチュエータ
800 … 三点接触式測定器(第4実施例)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸から偏心して回転する円筒を有する工作物を、研削可能な状態に研削盤に取り付けた状態で、前記回転軸から偏心した前記円筒の真円度を測定する真円度測定装置において、
砥石台に回動可能に設けられた第1ピボットと、
一端において、前記第1ピボットに支持されて回動可能に設けられた第1アームと、
前記第1アームの他端に回動可能に設けられた第2ピポットと、
一端において、前記第2ピボットに支持されて回動可能に設けられた第2アーム上腕と、
前記第2アーム上腕に設けられた第2アーム下腕と、
前記第2アーム下腕に設けられ、前記円筒の外周面と当接して外周面を滑動する、前記円筒の半径を三点接触法により測定する三点接触式測定器と
を有することを特徴とする真円度測定装置。
【請求項2】
回転軸から偏心して回転する円筒を有する工作物を、研削可能な状態に研削盤に取り付けた状態で、前記回転軸から偏心した前記円筒の真円度を測定する真円度測定装置において、
前記円筒の外周面と当接して前記円筒を径を測定するための測定器と、
前記円筒の前記回転軸の回りの回転軌跡に沿って、前記測定器を前記円筒の外周面に当接させた状態で移動させる測定器滑動手段と、
前記回転軸を回転させ、前記測定器の出力値を、一定の時間周期で検出する検出手段と、
前記出力値から前記円筒の真円度を算出する真円度演算手段と
を有することを特徴とする真円度測定装置。
【請求項3】
回転軸から偏心して回転する円筒を有する工作物を、研削可能な状態に研削盤に取り付けた状態で、前記回転軸から偏心した前記円筒の真円度を測定する真円度測定装置において、
前記円筒の外周面と当接して前記円筒を径を測定するための測定器と、
前記円筒の前記回転軸の回りの回転軌跡に沿って、前記測定器を前記円筒の外周面に当接させた状態で移動させる測定器滑動手段と、
前記回転軸を回転させ、前記測定器の出力値を、前記回転軸の一定の回転角毎に検出する検出手段と、
前記出力値から前記円筒の真円度を算出する真円度演算手段と
を有することを特徴とする真円度測定装置。
【請求項4】
前記出力値の平均値から前記円筒の平均半径を演算する平均半径演算手段を有することを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の真円度測定装置。
【請求項5】
前記出力値のフーリエ係数を求め、そのフーリエ係数から前記円筒の半径の回転角に関する半径分布を求める半径分布演算手段を有することを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の真円度測定装置。
【請求項6】
前記出力値のフーリエ係数を求め、そのフーリエ係数から前記円筒の半径の回転角に関する半径分布を求め、この半径分布と基準半径との差から真円誤差の回転角に関する真円誤差分布を求める真円誤差分布演算手段を有することを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の真円度測定装置。
【請求項7】
前記半径分布演算手段により求められた前記半径分布に基づいて、前記回転軸の回転角に関する砥石の送り量分布を補正する送り量補正手段を有することを特徴とする請求項5に記載の真円度測定装置。
【請求項8】
前記真円誤差分布演算手段により求められた前記真円誤差分布に基づいて、前記回転軸の回転角に関する砥石の送り量分布を補正する送り量補正手段を有することを特徴とする請求項6に記載の真円度測定装置。
【請求項9】
回転軸から偏心して回転する円筒を有する工作物を、研削可能な状態に研削盤に取り付けた状態で、前記回転軸から偏心した前記円筒の真円度を測定する真円度測定装置において、
前記円筒の外周面と当接して前記円筒を径を測定するための測定器と、
前記円筒の前記回転軸の回りの回転軌跡に沿って、前記測定器を前記円筒の外周面に当接させた状態で移動させる測定器滑動手段と、
前記回転軸を回転させ、前記測定器の出力値を検出する検出手段と、
前記検出手段により検出された前記出力値のフーリエ係数を求め、そのフーリエ係数から前記円筒の半径の回転角に関する半径分布を求める半径分布演算手段と、
前記半径分布演算手段により求められた前記半径分布に基づいて、前記回転軸の回転角に関する砥石の送り量分布を補正する送り量補正手段と
を有することを特徴とする真円度測定装置。
【請求項10】
回転軸から偏心して回転する円筒を有する工作物を、研削可能な状態に研削盤に取り付けた状態で、前記回転軸から偏心した前記円筒の真円度を測定する真円度測定装置において、
前記円筒の外周面と当接して前記円筒を径を測定するための測定器と、
前記円筒の前記回転軸の回りの回転軌跡に沿って、前記測定器を前記円筒の外周面に当接させた状態で移動させる測定器滑動手段と、
前記回転軸を回転させ、前記測定器の出力値を検出する検出手段と、
前記検出手段により検出された前記出力値のフーリエ係数を求め、そのフーリエ係数から前記円筒の半径の回転角に関する半径分布を求め、この半径分布と基準半径との差から真円誤差の回転角に関する真円誤差分布を求める真円誤差分布演算手段と、
前記真円誤差分布演算手段により求められた前記真円誤差分布に基づいて、前記回転軸の回転角に関する砥石の送り量分布を補正する送り量補正手段と
を有することを特徴とする真円度測定装置。
【請求項11】
前記測定器は、前記円筒の外周面と当接して前記円筒の半径を三点接触法により測定する三点接触式測定器であることを特徴とする請求項2乃至請求項10の何れか1項に記載の真円度測定装置。
【請求項12】
前記測定器は、前記円筒の外周面と当接して前記円筒の半径を三点接触法により測定する三点接触式測定器であり、前記半径分布は、前記フーリエ係数を前記三点接触式測定器による拡大率で補正し、補正後のフーリエ係数から求められた前記円筒の半径の回転角に関する半径分布であることを特徴とする請求項5乃至請求項10の何れか1項に記載の真円度測定装置。
【請求項13】
前記回転軸を回転させ、前記三点接触式測定器の出力値を、一定の時間周期で検出する検出手段と、
前記出力値から前記円筒の真円度を算出する真円度演算手段と
を有することを特徴とする請求項1に記載の真円度測定装置。
【請求項14】
前記回転軸を回転させ、前記三点接触式測定器の出力値を、前記回転軸の一定の回転角毎に検出する検出手段と、
前記出力値から前記円筒の真円度を算出する真円度演算手段と
を有することを特徴とする請求項1に記載の真円度測定装置。
【請求項15】
前記出力値の平均値から前記円筒の平均半径を演算する平均半径演算手段を有することを特徴とする請求項13又は請求項14に記載の真円度測定装置。
【請求項16】
前記出力値のフーリエ係数を求め、そのフーリエ係数から前記円筒の半径の回転角に関する半径分布を求める半径分布演算手段を有することを特徴とする請求項13又は請求項14に記載の真円度測定装置。
【請求項17】
前記出力値のフーリエ係数を求め、そのフーリエ係数から前記円筒の半径の回転角に関する半径分布を求め、この半径分布と基準半径との差から真円誤差の回転角に関する真円誤差分布を求める真円誤差分布演算手段を有することを特徴とする請求項13又は請求項14に記載の真円度測定装置。
【請求項18】
前記半径分布演算手段により求められた前記前記半径分布に基づいて、前記回転軸の回転角に関する砥石の送り量分布を補正する送り量補正手段を有することを特徴とする請求項16に記載の真円度測定装置。
【請求項19】
前記真円誤差分布演算手段により求められた前記真円誤差分布に基づいて、前記回転軸の回転角に関する砥石の送り量分布を補正する送り量補正手段を有することを特徴とする請求項17に記載の真円度測定装置。
【請求項20】
前記半径分布は、前記フーリエ係数を前記三点接触式測定器による拡大率で補正し、補正後のフーリエ係数から求められた前記円筒の半径の回転角に関する半径分布であることを特徴とする請求項16乃至請求項19の何れか1項に記載の真円度測定装置。
【請求項21】
前記請求項1乃至請求項20の何れか1項に記載の真円度測定装置を有する円筒研削盤。
【請求項1】
回転軸から偏心して回転する円筒を有する工作物を、研削可能な状態に研削盤に取り付けた状態で、前記回転軸から偏心した前記円筒の真円度を測定する真円度測定装置において、
砥石台に回動可能に設けられた第1ピボットと、
一端において、前記第1ピボットに支持されて回動可能に設けられた第1アームと、
前記第1アームの他端に回動可能に設けられた第2ピポットと、
一端において、前記第2ピボットに支持されて回動可能に設けられた第2アーム上腕と、
前記第2アーム上腕に設けられた第2アーム下腕と、
前記第2アーム下腕に設けられ、前記円筒の外周面と当接して外周面を滑動する、前記円筒の半径を三点接触法により測定する三点接触式測定器と
を有することを特徴とする真円度測定装置。
【請求項2】
回転軸から偏心して回転する円筒を有する工作物を、研削可能な状態に研削盤に取り付けた状態で、前記回転軸から偏心した前記円筒の真円度を測定する真円度測定装置において、
前記円筒の外周面と当接して前記円筒を径を測定するための測定器と、
前記円筒の前記回転軸の回りの回転軌跡に沿って、前記測定器を前記円筒の外周面に当接させた状態で移動させる測定器滑動手段と、
前記回転軸を回転させ、前記測定器の出力値を、一定の時間周期で検出する検出手段と、
前記出力値から前記円筒の真円度を算出する真円度演算手段と
を有することを特徴とする真円度測定装置。
【請求項3】
回転軸から偏心して回転する円筒を有する工作物を、研削可能な状態に研削盤に取り付けた状態で、前記回転軸から偏心した前記円筒の真円度を測定する真円度測定装置において、
前記円筒の外周面と当接して前記円筒を径を測定するための測定器と、
前記円筒の前記回転軸の回りの回転軌跡に沿って、前記測定器を前記円筒の外周面に当接させた状態で移動させる測定器滑動手段と、
前記回転軸を回転させ、前記測定器の出力値を、前記回転軸の一定の回転角毎に検出する検出手段と、
前記出力値から前記円筒の真円度を算出する真円度演算手段と
を有することを特徴とする真円度測定装置。
【請求項4】
前記出力値の平均値から前記円筒の平均半径を演算する平均半径演算手段を有することを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の真円度測定装置。
【請求項5】
前記出力値のフーリエ係数を求め、そのフーリエ係数から前記円筒の半径の回転角に関する半径分布を求める半径分布演算手段を有することを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の真円度測定装置。
【請求項6】
前記出力値のフーリエ係数を求め、そのフーリエ係数から前記円筒の半径の回転角に関する半径分布を求め、この半径分布と基準半径との差から真円誤差の回転角に関する真円誤差分布を求める真円誤差分布演算手段を有することを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の真円度測定装置。
【請求項7】
前記半径分布演算手段により求められた前記半径分布に基づいて、前記回転軸の回転角に関する砥石の送り量分布を補正する送り量補正手段を有することを特徴とする請求項5に記載の真円度測定装置。
【請求項8】
前記真円誤差分布演算手段により求められた前記真円誤差分布に基づいて、前記回転軸の回転角に関する砥石の送り量分布を補正する送り量補正手段を有することを特徴とする請求項6に記載の真円度測定装置。
【請求項9】
回転軸から偏心して回転する円筒を有する工作物を、研削可能な状態に研削盤に取り付けた状態で、前記回転軸から偏心した前記円筒の真円度を測定する真円度測定装置において、
前記円筒の外周面と当接して前記円筒を径を測定するための測定器と、
前記円筒の前記回転軸の回りの回転軌跡に沿って、前記測定器を前記円筒の外周面に当接させた状態で移動させる測定器滑動手段と、
前記回転軸を回転させ、前記測定器の出力値を検出する検出手段と、
前記検出手段により検出された前記出力値のフーリエ係数を求め、そのフーリエ係数から前記円筒の半径の回転角に関する半径分布を求める半径分布演算手段と、
前記半径分布演算手段により求められた前記半径分布に基づいて、前記回転軸の回転角に関する砥石の送り量分布を補正する送り量補正手段と
を有することを特徴とする真円度測定装置。
【請求項10】
回転軸から偏心して回転する円筒を有する工作物を、研削可能な状態に研削盤に取り付けた状態で、前記回転軸から偏心した前記円筒の真円度を測定する真円度測定装置において、
前記円筒の外周面と当接して前記円筒を径を測定するための測定器と、
前記円筒の前記回転軸の回りの回転軌跡に沿って、前記測定器を前記円筒の外周面に当接させた状態で移動させる測定器滑動手段と、
前記回転軸を回転させ、前記測定器の出力値を検出する検出手段と、
前記検出手段により検出された前記出力値のフーリエ係数を求め、そのフーリエ係数から前記円筒の半径の回転角に関する半径分布を求め、この半径分布と基準半径との差から真円誤差の回転角に関する真円誤差分布を求める真円誤差分布演算手段と、
前記真円誤差分布演算手段により求められた前記真円誤差分布に基づいて、前記回転軸の回転角に関する砥石の送り量分布を補正する送り量補正手段と
を有することを特徴とする真円度測定装置。
【請求項11】
前記測定器は、前記円筒の外周面と当接して前記円筒の半径を三点接触法により測定する三点接触式測定器であることを特徴とする請求項2乃至請求項10の何れか1項に記載の真円度測定装置。
【請求項12】
前記測定器は、前記円筒の外周面と当接して前記円筒の半径を三点接触法により測定する三点接触式測定器であり、前記半径分布は、前記フーリエ係数を前記三点接触式測定器による拡大率で補正し、補正後のフーリエ係数から求められた前記円筒の半径の回転角に関する半径分布であることを特徴とする請求項5乃至請求項10の何れか1項に記載の真円度測定装置。
【請求項13】
前記回転軸を回転させ、前記三点接触式測定器の出力値を、一定の時間周期で検出する検出手段と、
前記出力値から前記円筒の真円度を算出する真円度演算手段と
を有することを特徴とする請求項1に記載の真円度測定装置。
【請求項14】
前記回転軸を回転させ、前記三点接触式測定器の出力値を、前記回転軸の一定の回転角毎に検出する検出手段と、
前記出力値から前記円筒の真円度を算出する真円度演算手段と
を有することを特徴とする請求項1に記載の真円度測定装置。
【請求項15】
前記出力値の平均値から前記円筒の平均半径を演算する平均半径演算手段を有することを特徴とする請求項13又は請求項14に記載の真円度測定装置。
【請求項16】
前記出力値のフーリエ係数を求め、そのフーリエ係数から前記円筒の半径の回転角に関する半径分布を求める半径分布演算手段を有することを特徴とする請求項13又は請求項14に記載の真円度測定装置。
【請求項17】
前記出力値のフーリエ係数を求め、そのフーリエ係数から前記円筒の半径の回転角に関する半径分布を求め、この半径分布と基準半径との差から真円誤差の回転角に関する真円誤差分布を求める真円誤差分布演算手段を有することを特徴とする請求項13又は請求項14に記載の真円度測定装置。
【請求項18】
前記半径分布演算手段により求められた前記前記半径分布に基づいて、前記回転軸の回転角に関する砥石の送り量分布を補正する送り量補正手段を有することを特徴とする請求項16に記載の真円度測定装置。
【請求項19】
前記真円誤差分布演算手段により求められた前記真円誤差分布に基づいて、前記回転軸の回転角に関する砥石の送り量分布を補正する送り量補正手段を有することを特徴とする請求項17に記載の真円度測定装置。
【請求項20】
前記半径分布は、前記フーリエ係数を前記三点接触式測定器による拡大率で補正し、補正後のフーリエ係数から求められた前記円筒の半径の回転角に関する半径分布であることを特徴とする請求項16乃至請求項19の何れか1項に記載の真円度測定装置。
【請求項21】
前記請求項1乃至請求項20の何れか1項に記載の真円度測定装置を有する円筒研削盤。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2007−206086(P2007−206086A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−107339(P2007−107339)
【出願日】平成19年4月16日(2007.4.16)
【分割の表示】特願2000−174747(P2000−174747)の分割
【原出願日】平成12年6月12日(2000.6.12)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年4月16日(2007.4.16)
【分割の表示】特願2000−174747(P2000−174747)の分割
【原出願日】平成12年6月12日(2000.6.12)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】
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