真空処理装置
【課題】簡素かつ安価な構成により、放電室と変換器との相互の位置決めを容易かつ正確に行うとともに、放電室の熱膨張による悪影響を排除し、高品質な真空処理を効率良く行う。
【解決手段】減圧容器4の内部に収容されたリッジ導波管からなるプロセス室2と、減圧容器4の外部から、減圧容器4に設けられた真空窓15を介してプロセス室2に接続される変換器3A,3Bとを有する製膜装置1であって、真空窓15の両面に、プロセス室2の容器と変換器3A,3Bの容器を、真空窓15に対して定位置に位置決めするガイド板51,52を設けた。このガイド板51,52は、真空窓15の両面に、プロセス室2と真空窓15との間、および変換器3A,3Bと真空窓15との間におけるインピーダンスの急変を緩和させる、導電性のある反射波低減部材としても共用されている。
【解決手段】減圧容器4の内部に収容されたリッジ導波管からなるプロセス室2と、減圧容器4の外部から、減圧容器4に設けられた真空窓15を介してプロセス室2に接続される変換器3A,3Bとを有する製膜装置1であって、真空窓15の両面に、プロセス室2の容器と変換器3A,3Bの容器を、真空窓15に対して定位置に位置決めするガイド板51,52を設けた。このガイド板51,52は、真空窓15の両面に、プロセス室2と真空窓15との間、および変換器3A,3Bと真空窓15との間におけるインピーダンスの急変を緩和させる、導電性のある反射波低減部材としても共用されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空処理装置に関し、特に真空中でプラズマを用いて基板に処理を行う真空処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、薄膜太陽電池の生産性を向上させるためには、高品質なシリコン薄膜を、高速に、かつ、大面積で製膜することが重要である。このような高速かつ大面積な製膜を行う方法としては、プラズマCVD(化学気相成長)法による製膜方法が知られている。
【0003】
プラズマCVD法による製膜を行うためには、プラズマを発生させるプラズマ生成装置(真空処理装置)が必要であり、効率良く製膜を行うプラズマ生成装置として、例えば特許文献1,2等に開示されているリッジ導波管を利用したプラズマ生成装置が知られている。この種のプラズマ生成装置は、特許文献1の図10に示されるように、高周波電源(RF電源)を強い電界に変換させる左右一対の変換器(分配室)と、これらの変換器の間に接続される放電室(プロセス室)とを備えて構成されている。
【0004】
変換器は、互いに対向する上下一対の平板状のリッジ部を有するリッジ導波管からなる。また、放電室も、互いに対向する上下一対の平坦なリッジ電極板を有するリッジ導波管であり、変換器に連結されている。このように構成されたプラズマ生成装置において、放電室の内部を減圧し、この中に、プラズマの生成と薄膜の形成に必要な母ガスを供給し、電源から高周波電力を供給すると、放電室内にて近接対向するリッジ電極板の間にプラズマを発生させることができる。そして、このプラズマを利用してガラス基板等に製膜処理を施すことができる。製膜処理を施す基板は、放電室におけるリッジ電極板の間に配置されるのが一般的である。具体的には、上下のリッジ電極が水平になるように装置全体を設置し、上下の電極の間または上下の電極の外側に基板を搬入して、この基板を下側のリッジ電極の上面に載置して製膜処理を行う。
【0005】
このようなプラズマ生成装置において、放電室の内部を減圧させるために、従来ではリッジ導波管を利用するプラズマ生成装置全体を減圧容器の内部に収容していたが、こうすると容量の大きな減圧容器が必要になり、プラズマ生成装置と真空排気系が大型化してしまい、その製造や管理、さらには広い設置場所の確保のために多大なコストが掛かるという課題がある。
【0006】
そこで、特許文献2の図11に開示されているように、プラズマ生成装置の放電室のみを減圧容器内に収容し、減圧容器の両側に真空窓を介して変換器を接続して、変換器を大気圧中に配置したものがある。この場合、真空窓の材質としては電磁波を透過させることができる石英ガラスやアルミナセラミックス等の誘電体が用いられ、この真空窓を介して高周波電力伝送と真空シールドが行われる。真空窓には、減圧容器の内外に加わる圧力差および放電時における高い熱負荷が加わるため、特に面積が1平方メートルを超える大きさの基板を処理可能な大型の放電室を収容する減圧容器の真空窓は、破損しない強度を確保できる数十ミリメートルの厚さが付与されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特表平4−504640号公報
【特許文献2】特開2011−35327号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、基板面積が1平方メートルを超えて、基板が大型化するに伴い、プラズマ製膜処理を施すことができる大型のプラズマ生成装置(真空処理装置)になると、上記の真空窓を挟んで変換器と放電室とを接続するにあたり、真空と大気圧の圧力差に伴う変形や、温度差に伴う熱膨張により、変換器と放電室との間に位置ずれが生じ易くなり、その相互位置を維持することが困難になる。両者の位置がずれると高周波電力の伝送ロスや放電室(プロセス室)における電界分布が不均一になり、基板への製膜等の処理品質が低下するといった課題があった。また、大型化した変換器と放電室とを正確に位置決めして接続するには、特殊な冶具や測定器具を用いながら行う必要があり、メンテナンスの度に多大な手間と工数が掛かり、製膜基板の生産性と歩留まりを低下させることになる。
【0009】
また、変換器と放電室とが真空窓に突き当てられる形で固定されるため、各部の熱膨張等によって真空窓との間に押圧変形や隙間が発生する可能性があり、この隙間から電力が漏洩して、前記と同じく高周波電力の伝送ロスが発生したり、電界分布が不均一になることで、基板等のプラズマ処理の品質が低下する懸念があった。なお、放電室(プロセス室)はそのプロセス条件によっては200℃以上の高温になることもあり、大型構成部材の熱変形により上記の課題や懸念が助長される傾向があった(例:1000ミリメートル長のSUS304材とアルミナ材の間に100℃の温度差がある場合には、熱膨張差量=熱膨張率差((16−7)×10−6)×温度差(100℃)×1000=0.9ミリメートルとなり、約1ミリメートルの位置ずれや隙間が生じる)。
【0010】
しかも、前述したように、真空窓には真空と大気圧との圧力差に十分耐えられる板厚が必要となる。しかし、一方では真空窓の板厚増加に伴い、誘電体損失(誘電正接tanδ)による発熱で板厚方向の温度差が増加することで熱応力も加わり、真空窓が破損し易くなるという課題が生じることになる。(例:誘電体損失は誘電体内の分子や極性基などの内部摩擦により熱を発生し、発熱量Q=kfE2εtanδで表される(k:定数、f:周波数、E:電場、ε:誘電率、tanδ:誘電正接)。
【0011】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、放電室が減圧容器に収容され、この減圧容器の外部に設けられた変換器が、減圧容器に設けられた真空窓を介して放電室に接続される構成の真空処理装置において、簡素かつ安価な構成により、放電室と変換器との相互の位置決めを容易かつ正確に行うとともに、放電室の熱膨張による悪影響を排除し、高品質な真空処理を効率良く行うことのできる真空処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を採用する。
即ち、本発明に係る真空処理装置の第1の態様は、互いに平行に対向して配置され、その間で放電が行われる一対の面状のリッジ電極を有したリッジ導波管からなる放電室と、前記放電室を挟んで両側に配置され、互いに平行に対向して配置された一対の平板状のリッジ部を有したリッジ導波管からなり、高周波電力を前記放電室に伝送し、前記一対のリッジ電極の間で放電を起こさせる一対の変換器と、高周波電力を前記変換器の前記リッジ部に供給する電源手段と、を有し、前記放電室は減圧容器の内部に収容され、前記変換器は前記減圧容器の外部に配置され、前記減圧容器に設けられた真空窓を介して前記放電室と前記変換器とが接続された真空処理装置であって、前記真空窓の両面に、前記放電室の一部と前記変換器の一部を、前記真空窓に対して定位置に位置決めする位置決め部材を設けたことを特徴とする。
【0013】
上記構成によれば、真空窓の両面に設けられた位置決め部材により、放電室の一部と真空窓との間、および変換器の一部と真空窓との間を精度高く確実かつ迅速に位置決めし、放電室の容器と変換器の容器を真空窓に正確に取り付けることができる。これにより、変換器と放電室の相互の位置ずれを防止して高周波電力の伝送ロスを回避するとともに、放電室における電界分布を均一化し、基板への製膜等のプラズマ処理の品質を向上させることができる。その上、真空処理装置のメンテナンス時の組立や保守等の作業時間を短縮し、高品質なプラズマ処理の運用を効率良く行うことができる。
【0014】
また、本発明に係る真空処理装置の第2の態様は、互いに平行に対向して配置され、その間で放電が行われる一対の面状のリッジ電極を有したリッジ導波管からなる放電室と、前記放電室を挟んで両側に配置され、互いに平行に対向して配置された一対の平板状のリッジ部を有したリッジ導波管からなり、高周波電力を前記放電室に伝送し、前記一対のリッジ電極の間で放電を起こさせる一対の変換器と、高周波電力を前記変換器の前記リッジ部に供給する電源手段と、を有し、前記放電室は減圧容器の内部に収容され、前記変換器は前記減圧容器の外部に配置され、前記減圧容器に設けられた真空窓を介して前記放電室と前記変換器とが接続された真空処理装置であって、前記真空窓の両面に、前記放電室と前記真空窓との間、および前記変換器と前記真空窓との間におけるインピーダンスの変化を緩和させる、導電性のある反射波低減部材を設けたことを特徴とする。
【0015】
上記構成によれば、真空窓の両面に設けられた導電性のある反射波低減部材により、放電室と真空窓との間、および変換器と真空窓との間においてインピーダンスが急に変化する傾向が緩和され、インピーダンスの急変に起因して発生する高周波電力の反射波の発生が抑制される。したがって、高周波電力の伝送ロスを回避するとともに、放電室における電界分布を均一化し、かつ反射波による高周波電源系統の変調や故障等を有効に防止して、基板への製膜等のプラズマ処理の品質を向上させることができる。
【0016】
また、本発明に係る真空処理装置の第3の態様は、前記第2の態様において、前記反射波低減部材は、請求項1に記載の位置決め部材を兼ねることを特徴とする。
【0017】
上記構成によれば、真空窓に取り付けられる位置決め部材と反射波低減部材とが共通部品となるため、真空処理装置の部品点数の増加を低減させ、簡素かつ安価な構成により、放電室と変換器との相互の位置決めを容易かつ正確に行えるようにするとともに、変換器と真空窓との間、および真空窓と放電室との間における反射波の発生を低減させることができる。
【0018】
また、本発明に係る真空処理装置の第4の態様は、前記第2または第3の態様において、前記反射波低減部材は、前記真空窓の内面および外面から直角に起立して前記放電室および前記変換器の容器の周面に沿う板状であることを特徴とする。
【0019】
上記構成によれば、例えば放電室の昇温時における熱膨張や、降温時における熱収縮により、放電室と真空窓との間、および変換器と真空窓との間において隙間が発生しても、この隙間が反射波低減部材により閉塞されるため、高周波電力の伝送ロスを回避するとともに、放電室における電界分布を均一化し、基板への製膜等のプラズマ処理の品質を向上させることができる。
【0020】
また、本発明に係る真空処理装置の第5の態様は、前記第4の態様において、前記反射波低減部材の厚みは先端に向かって漸減していることを特徴とする。
【0021】
前述のように真空窓は誘電体であり、変換器と真空窓との間、および真空窓と放電室との間に反射波低減部材を設けたことにより、真空窓におけるインピーダンスの急変が緩和される。ここで、反射波低減部材の厚みを先端に向かって漸減させたことにより、反射波低減部材の断面積が徐変するため、真空窓におけるインピーダンスの急変をより有効に緩和させることができ、基板への製膜等のプラズマ処理の品質を一層向上させることができる。
【0022】
また、本発明に係る真空処理装置の第6の態様は、前記第2から第5のいずれかの態様において、前記反射波低減部材の基端部に、前記真空窓と同じ材質でなり、前記反射波低減部材を下方から支持する支持突起を設け、この支持突起の厚みは先端に向かって漸減していることを特徴とする。
【0023】
上記構成によれば、真空窓の材質と同じ材質で形成された支持突起によって反射波低減部材が支持されているため、反射波低減部材の支持強度を高めることができる。しかも、支持突起の厚みが先端に向かって漸減しているため、真空窓においてインピーダンスが急変する傾向を緩和させることができ、基板への製膜等のプラズマ処理の品質を高めることができる。
【0024】
また、本発明に係る真空処理装置の第7の態様は、前記第1から第6のいずれかの態様において、前記位置決め部材もしくは反射波低減部材と、前記放電室の容器もしくは前記変換器の容器との間に隙間を設け、この隙間に導電性のある弾性部材を介装したことを特徴とする。
【0025】
上記構成によれば、例えば放電室が熱膨張することにより、真空窓と放電室との連結方向(水平方向)での相対位置、あるいは真空窓と変換器との連結方向(水平方向)での相対位置が変化しても、真空窓に設けられた反射波低減部材と、放電室および変換器の容器との間が、導電性のある弾性部材を介して電気的に導通した状態に保たれる。これにより、変換器と、位置決め部材(反射波低減部材)と、真空窓と、位置決め部材(反射波低減部材)と、プロセス室との電位的な接触が良好に行なわれるので、伝送ロスの低減や放電室における電界分布の不均一化を抑制し、プラズマ処理の品質を高めることができる。
【0026】
また、本発明に係る真空処理装置の第8の態様は、前記第1から第7のいずれかの態様において、平面視で、前記減圧容器の内部に設置された前記放電室の中心部を熱膨張の起点と定めて前記減圧容器の底面上に中心固定部を介して固定し、平面視で前記中心固定部を取り囲むように、前記減圧容器の底面と前記放電室との間に3点以上のスライド支持部を設け、これらのスライド支持部は、前記減圧容器の底面に対する前記放電室の水平方向への熱膨張を吸収可能であることを特徴とする。
【0027】
一般に、放電室での基板加熱のための基板設置部分の温度上昇や、プラズマ発生によるリッジ電極部の温度上昇により放電室が熱膨張する場合は、平面視で放電室の中心部から見ると該中心部から放射状に周囲へと寸法が拡大する。したがって、上記構成とすることにより、熱膨張時も放電室の中央位置を移動させずに、放電室全体を熱変形に拘束されることなく相似形状を維持することができる。このように、放電室の中心部を熱膨張の起点と定めているので、例えば放電室の両側に設けられた真空窓の片方のみに不均一な応力が集中することがなく、真空処理装置の健全性を維持することができる。しかも、放電室の中央部が中心固定部を介して減圧容器の中心部に固定されるため、放電室を安定的に減圧容器内に固定することができる。
【0028】
また、本発明に係る真空処理装置の第9の態様は、前記第8の態様において、前記スライド支持部は、前記減圧容器の底面に対する前記放電室の第1の方向への延びを吸収する第1のスライドユニットと、前記第1の方向に直交する第2の方向への延びを吸収する第2のスライドユニットとを、水平な中立プレートを介して重ねた構造であることを特徴とする。
【0029】
上記構成によれば、平面視で放電室の各部が水平方向にどのように膨張しても、この膨張が第1の方向または第2の方向に沿うベクトル成分に分解され、第1の方向に沿うベクトル成分は第1のスライドユニットにより吸収され、第2の方向に沿うベクトル成分は第2のスライドユニットにより吸収される。このため、放電室の各部を水平方向に保ったまま放電室の熱膨張をスムーズに吸収して健全な運転を行うことができる。
【0030】
また、本発明に係る真空処理装置の第10の態様は、前記第9の態様において、前記真空窓は、その周面に設けられたシール部材を介して前記減圧容器に取り付けられており、該真空窓は前記減圧容器に対し前記シール部材により気密を保されながら、前記放電室と前記変換器の連結方向にスライド可能であることを特徴とする。
【0031】
上記構成によれば、放電室の熱膨張による伸びに合わせて真空窓および変換器が固定したままで可動できる。これにより放電室および変換器の端部を常に真空窓に密着せさた状態に保つことができ、電界的に安定した伝送路を確保することができる。
【0032】
また、本発明に係る真空処理装置の第11の態様は、前記第1から第10のいずれかの態様において、前記変換器を、前記減圧容器に対し、前記放電室と前記変換器の連結方向にスライド可能に支持し、該変換器を前記放電室側に押圧する押圧手段を有することを特徴とする。
【0033】
上記構成によれば、放電室が熱膨張して容器の寸法が伸び、真空窓と変換器を連結方向に突き離す方向に押圧した後に熱収縮しても、押圧手段によって連結方向に真空窓と変換器が放電室側に押圧されて元の位置に戻される。このため、放電室と真空窓と変換器との間に隙間が発生せず、互いに所定内圧で押し付けて密着した状態に保つことができる。したがって、連結方向への熱膨張と熱収縮に対して許容が大きくなるとともに、隙間の発生を防止して高周波電力の伝送ロスを回避するとともに、放電室における電界分布を均一化し、基板への製膜等のプラズマ処理の品質を向上させることができる。
【0034】
また、本発明に係る真空処理装置の第12の態様は、前記第11の態様において、前記変換器と前記放電室との間に密着力検知手段が設けられ、前記押圧手段は前記密着力検知手段からの密着力情報に基づき、前記放電室が熱膨張しても前記真空窓に負荷が掛からず、かつ前記放電室と前記真空窓と前記変換器との間に隙間が発生しない密着力となるように、前記変換器を前記放電室に対して離接させる方向に駆動することを特徴とする。
【0035】
上記構成によれば、放電室の熱膨張による容器の寸法変化量に応じて、密着力検知手段が検知する密着力が変化し、この密着力情報に基づいて連結方向への押圧手段が駆動され、真空窓に負荷が掛からず、かつ放電室と真空窓と変換器との間に隙間が発生しない密着力が付与される。即ち、放電室が膨張した時には変換器が放電室から連結方向に離れる方向に駆動され、放電室が収縮した時には連結方向に変換器が放電室に近づく方向に駆動される。このため、放電室および変換器の端部を常に真空窓に密着せさた状態に保ち、電界的に安定した伝送路を確保して高品質なプラズマ処理を行うことができる。
【0036】
また、本発明に係る真空処理装置の第13の態様は、前記第1から第12のいずれかの態様において、前記真空窓は前記減圧容器にシール部材を介して取り付けられるとともに、該真空窓の周囲を、前記シール部材を圧縮する方向に押圧するフランジ部材が設けられ、該フランジ部材には、前記変換器の支持部が一体的に設けられたことを特徴とする。
【0037】
上記構成によれば、フランジ部材によって真空窓が減圧容器に気密的に固定されると同時に、真空窓に接続される変換器がフランジ部材に設けられた支持部によって支持される。このため、変換器の重量が負荷となって真空窓に負担を掛けて損傷させることを低減させることができ、真空処理装置の健全性を維持することができる。
【発明の効果】
【0038】
以上のように、本発明によれば、放電室が減圧容器に収容され、この減圧容器の外部に設けられた変換器が、減圧容器に設けられた真空窓を介して放電室に接続される構成の真空処理装置において、簡素かつ安価な構成により、放電室と変換器との相互の位置決めを容易かつ正確に行うとともに、放電室の熱膨張による悪影響を排除し、高品質な真空処理を効率良く行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明に係るダブルリッジ型の製膜装置の概略構成を説明する縦断面図である。
【図2】図1のII-II線に沿う製膜装置の縦断面図である。
【図3】真空窓とガイド板を示す斜視図である。
【図4】図3のIV-IV線に沿う縦断面図である。
【図5】真空窓に放電室と変換器が取り付けられる前の状態を示す縦断面図である。
【図6】真空窓に放電室と変換器が取り付けられた後の状態を示す縦断面図である。
【図7】ガイド板が放電室と変換器の外周側に接するように設けられた実施例を示す縦断面図である。
【図8】ガイド板を設けたことによる効果をグラフで示した図である。
【図9】図6のIX部拡大図である。
【図10】ガイド板と共に支持突起が設けられた実施例を示す縦断面図である。
【図11】ガイド板と共に導電弾性部材が設けられた実施例を示す縦断面図である。
【図12】図11のXII部拡大図である。
【図13】図15および図16のXIII-XIII線に沿う製膜装置の縦断面図である。
【図14】図15および図16のXIV-XIV線に沿う製膜装置の縦断面図である。
【図15】図13のXV-XV矢視による製膜装置の平面図である。
【図16】図14のXVI-XVI矢視による製膜装置の平面図である。
【図17】減圧容器に対する真空窓のスライド構造を示す縦断面図である。
【図18】減圧容器に対する変換器のスライド構造の第1の実施例を示す側面図である。
【図19】減圧容器に対する変換器のスライド構造の第2の実施例を示す側面図である。
【0040】
〔第1実施形態〕
まず、本発明の第1実施形態を図1〜図10に基づいて説明する。図1は、本発明の第1実施形態における製膜装置の概略構成を説明する模式的な斜視図であり、図2は図1のII-II線に沿う製膜装置の縦断面図である。
【0041】
この製膜装置1は、プロセス室(放電室)2と、このプロセス室2の両端に隣接して配置された変換器3A,3Bと、プロセス室2が収容される減圧容器4と、変換器3A,3Bに一端が接続される電源ラインとしての同軸ケーブル5A,5Bと、これらの同軸ケーブル5A,5Bの他端に接続される高周波電源6A,6B(電源手段)と、同軸ケーブル5A,5Bの中間部に接続された整合器7A,7Bおよびサーキュレータ8A,8Bと、排気手段11と、材料ガスを含む母ガスをプロセス室2内に供給する母ガス供給手段12とを主な構成要素として備えている。
【0042】
なお、本実施形態では、説明の便宜上、プロセス室2が延びる方向(長さ方向)をL方向(図1における左右方向)とし、プロセス室2の幅方向(図2における左右方向)をH方向とし、プロセス室2の高さ方向をE方向とする。
【0043】
プロセス室2が収容される減圧容器4は函状である。この減圧容器4は、その内外の圧力差に耐え得る構造とされている。例えば、ステンレス鋼(JIS規格におけるSUS材)や、一般構造用圧延材(JIS規格におけるSS材)などから形成され、リブ材などで補強された構成を用いることができる。さらに、減圧容器4の両端面(L方向に直交する面)には真空窓15が設置されている。プロセス室2は図示しない1平方メートルを超える大型基板に対してプラズマ処理(製膜処理)を行うことができる。このため減圧容器4も大型基板を設置したプロセス室2を収容できるサイズであり、その両端面に真空窓15が設けてある。真空窓15は、減圧容器4内部を真空状態に保ちながら高周波電力を透過できる材質からなり、H方向長さが1メートルを超え、厚さが数センチとなる大型で板状の石英ガラスやアルミナセラミックス等の誘電体で形成されており、後述するように減圧容器4を構成している金属部に対して気密的に取り付けられている。
【0044】
プロセス室2は、減圧容器4の内部底面上に中心固定部17および複数のスライド支持部18A,18B,18Cを介して設置されている。したがって、プロセス室2の底面は減圧容器4の底面からE方向へ離れており、プロセス室2の天面と側面も減圧容器4の内面からそれぞれ離れている。また、プロセス室2の両端面は、減圧容器4の両端面にある真空窓15の内面に当接して後述するガイド板51を用いて位置決めをされて固定されている。一方、変換器3A,3Bは減圧容器4の外部に配置され、減圧容器4の両端にある真空窓15の外面に当接して後述するガイド板52を用いて位置決めをされてに固定されている。したがって、プロセス室2と変換器3A,3Bは真空窓15を介して連結方向であるL方向に接続されている。
【0045】
排気手段11としては、公知の真空ポンプ等を用いることができ、本発明において特に限定されるものではない。この排気手段11は減圧容器4に接続され、減圧容器4およびプロセス室2の内部圧力を0.01Paから10kPa程度の真空状態とすることができる。この負圧は真空窓15によりプロセス室2に対して隔絶された変換器3A,3Bには及ばないため、変換器3A,3Bの内部は大気圧に保たれる。
【0046】
プロセス室2は、ステンレス合金やアルミニウム合金材料等の、導電性を有し非磁性または弱磁性を有する材料から形成された容器状の部品であって、所謂ダブルリッジ型の導波管状に形成されたものである。プロセス室2の内部は、上述のように真空状態とされるが、減圧容器4の内部に収納されることから、ガス流れなどの微小圧力分布により生じる圧力差と、自己荷重と、温度分布による熱応力に耐え得る構造であり、特に圧力差による応力が小さいことから剛強な構造は不要とされる。圧力差が少ないために剛強な構造は不要となることで、プロセス室2を構成する板厚は薄く軽量化するので、自己荷重は低減し更に剛強な構造が不要となるので、好ましい構成となる。プロセス室2には、E方向に重なる上下一対の放電用のリッジ電極21a,21bが設けられている。これらの一対のリッジ電極21a,21bは、ダブルリッジ導波管であるプロセス室2における主要部分となるリッジ形状を構成するものであり、凡そ3〜30ミリメートル程度の対向間隔(リッジ電極間隔)が付与されて互いに平行に対向配置され、その間で放電が行われる平板状の部分である。
【0047】
リッジ電極21a,21bは、厚さ0.5mm以上、3mm以下の、比較的薄い金属板で形成されている。リッジ電極21a,21bの材質としては、線膨張率が小さく、熱伝達率が高いことが望ましい。具体的にはSUS304等が好適であるが、線膨張率が大きい反面熱伝達率が格段に大きいアルミニウム系金属を用いてもよい。そして、これら一対のリッジ電極21a,21bの、H方向両側に、一対の非リッジ部導波管22a,22bが設けられている。上下のリッジ電極21a,21bと、左右の非リッジ部導波管22a,22bによって、プロセス室2の縦断面形状が略「H」字形状に形成されている。
【0048】
一方、変換器3A,3Bは、プロセス室2(リッジ電極21a,21b)の長さ方向(L方向)に沿ってプロセス室2の両端に隣接し、前記のように真空窓15を介して接続されており、プロセス室2と同様に、アルミニウム合金材料等の導電性を有し非磁性または弱磁性を有する材料から形成された容器状の部品であって、プロセス室2と同じくダブルリッジ導波管状に形成されている。
【0049】
変換器3A,3Bには、それぞれ上下一対の平板状のリッジ部31a,31bが設けられている。これらの一対のリッジ部31a,31bは、ダブルリッジ導波管である変換器3A,3Bにおけるリッジ形状を構成するものであり、凡そ50〜200ミリメートル程度の対向間隔(リッジ間隔)が付与されて互いに平行に対向配置されている。また、これら一対のリッジ部31a,31bの両側に、一対の非リッジ部導波管32a,32bが設けられている。上下のリッジ部31a,31bと、左右の非リッジ部導波管32a,32bによって、変換器3A,3Bの縦断面形状がプロセス室2と同じく略「H」字形状に形成されている。
【0050】
ところで、同軸ケーブル5A,5Bは、外部導体36および内部導体37を有しており、外部導体36が変換器3A,3Bの例えば上側のリッジ部31aに電気的に接続され、内部導体37が上側のリッジ部31aと変換器3A,3Bの内部空間を貫通して下側のリッジ部31bに電気的に接続されている。同軸ケーブル5A,5Bは、それぞれ、高周波電源6A,6Bから供給された高周波電力を変換器3A,3Bに導くものである。なお、高周波電源6A,6Bとしては、公知のものを用いることができ、本発明において特に限定されるものではない。
【0051】
高周波電源6A,6Bは、その周波数が13.56MHz以上、好ましくは30MHzから400MHz(VHF帯からUHF帯)である。これは、13.56MHzよりも周波数が低いとダブルリッジ導波管(リッジ電極21a,21bと非リッジ部導波管22a,22b)のサイズが、製膜処理を行う基板のサイズに対して大型化するために装置設置スペースが増加し、周波数が400MHzより高いとプロセス室2が延びる方向(L方向)に生じる定在波の影響が増大するためである。なお、サーキュレータ8A,8Bは、それぞれ高周波電源6A,6Bから供給された高周波電力を変換器3A,3Bに導くとともに、高周波電源6A,6Bに対して進行方向が違う高周波電力が入力されることを防止するものである。
【0052】
変換器3A,3Bは、リッジ導波管の特性を利用して高周波電力の伝送モードを同軸伝送モードであるTEMモードから方形導波管の基本伝送モードであるTEモードに変換してプロセス室2に伝送する。前述の通り、変換器3A,3Bのリッジ部31a,31bの対向間隔よりも、プロセス室2のリッジ電極21a,21bの対向間隔の方が格段に小さいため、リッジ部31a,31bとリッジ電極21a,21bとの間に段差(リッジ段差)が存在している。このため、リッジ電極21a,21bの間隔を狭く設定することで強い電界を発生し、リッジ電極21a,21bの間に母ガス供給手段12から母ガスを導入することで母ガスが電離されてプラズマが発生する(図1中に示すプラズマ発生領域P参照)。
【0053】
さらに、リッジ導波管の特性により、リッジ電極21a,21bの間ではH方向に沿う方向の電界強度分布がほぼ均一になる。リッジ導波管を用いることにより、リッジ電極21a,21bの間ではプラズマを生成可能な程度の強い電界強度を得ることができる。なお、プロセス室2、変換器3A,3Bは、図1、図2に示すようにダブルリッジ導波管により構成されていてもよいし、シングルリッジ導波管により構成されていてもよい。
【0054】
その一方で、プロセス室2には、高周波電源6A,6Bから供給された高周波電力により定在波が形成される。この時、高周波電源6A,6Bから供給される高周波電力の位相が固定されていると、定在波の位置(位相)が固定され、リッジ電極21a,21bにおけるプロセス室2が延びる方向であるL方向の電界強度の分布に偏りが生じる。そこで、高周波電源6A,6Bの少なくとも一方から供給される高周波電力の位相を時間に対して調節することにより、プロセス室2に形成される定在波の位置を調節する位相変調が行われる。これにより、リッジ電極21a,21bにおけるL方向の電界強度の分布が時間平均的に均一化される。
【0055】
具体的には、定在波の位置が、時間の経過に伴いL方向に、sin波状や、三角波状や、階段(ステップ)状に移動するように高周波電源6A,6Bから供給される高周波電力の位相が調節される。定在波が移動する範囲や、定在波を移動させる方式(sin波状、三角波状、階段状等)や、位相調整の周期の適正化は、電力の分布や、プラズマからの発光の分布や、プラズマ密度の分布や、製膜された膜に係る特性の分布等に基づいて行われる。膜に係る特性としては、膜厚や、膜質や、太陽電池等の半導体としての特性などを挙げることができる。
【0056】
このように、リッジ部を形成したリッジ導波管の特性と、高周波電源6A,6Bから供給された高周波電力の位相変調により、図示しない基板に対してH方向とL方向のいずれの方向にも均一なプラズマを広い範囲に生成することができ、大面積基板へ製膜するにあたり、高品質な膜を均一に製膜することができる。
【0057】
製膜処理を行う基板としては、透光性ガラス基板を例示することができる。例えば、太陽電池パネルに用いられるものでは、縦横の大きさが1.4m×1.1m、厚さが3.0mmから4.5mmのものが挙げられる。なお、基板は、プロセス室2および減圧容器4のH方向に直交する側面に設けられた開閉可能な搬入口(非図示)からプロセス室2の内部に搬入、もしくは搬出される。なお、図1、図2に示す製膜装置1は基板を水平状態で製膜処理するように構成されているが、基板を鉛直、もしくは鉛直方向から7°〜15°傾斜させた角度に保持して製膜処理を施す縦型に構成されたものであってもよい。
母ガス供給手段12は、例えばSiH4ガス等の基板にプラズマ処理を施すのに必要な母ガスを、リッジ電極21a,21b間に供給できるようプロセス室2に接続されている。
【0058】
次に、製膜装置1を用いたプラズマ処理方法について説明する。
まず、排気手段11により減圧容器4とその内部に収容されるプロセス室2から空気が排出され、図示しない基板搬送機構により基板が製膜処理位置に載置される。基板は対向するリッジ電極21a,21bの外側に設置されるが、リッジ電極21a,21bの間に設置してもよい。
【0059】
次に、母ガス供給手段12からリッジ電極21a,21b間に、例えばSiH4ガス等の母ガスが供給される。この時、排気手段11の排気量が制御されて、プロセス室2等の内部、即ちリッジ電極21a,21bの間の圧力が0.01Paから10kPa程度の真空状態に保たれる。具体的には、複数の貫通孔を設けた一対のリッジ電極21a,21bの間にはSiH4等の母ガスが供給されるとともに、製膜に寄与しなかったガスは真空排気される。
【0060】
そして、高周波電源6A,6Bからの高周波電力が、変換器3A,3Bから真空窓15を経由してプロセス室2のリッジ電極21a,21bに伝送され、リッジ電極21a,21b間に電界を発生させる。リッジ電極21a,21bの間には上記のように母ガス供給手段12により母ガスが導入され、プラズマが生成される。このとき、母ガスの材料ガスが分解または活性化して製膜種が生成される。生成された製膜種のうち基板に向かって拡散で移動したものは、基板にて膜が形成され、製膜処理が施される。
【0061】
ところで、図1に示すように、真空窓15は、減圧容器にOリング(シール部材)を介して取り付けられている。詳しくは、減圧容器の真空窓15を取り付ける開口部42の内周部に内フランジ43が一体に形成されており、開口部42に嵌め込まれた真空窓15と内フランジ43との間にOリング41が介在して両部材15,43間をシーリングするようになっている。
【0062】
そして、真空窓15の周囲を、Oリング41を圧縮する方向に押圧するフランジ部材45が設けられている。このフランジ部材45は、複数のボルト46で減圧容器4の開口部42に締結される。さらに、フランジ部材45には、変換器3A,3Bの容器の外周を支持する支持部47が一体的に設けられている。この支持部47は、変換器3A,3Bの外周の4面に接する外枠状に形成されている。
【0063】
上記構成によれば、フランジ部材45によって真空窓15がOリング41を介して減圧容器4の開口部42に気密的に固定されると同時に、真空窓15に接続される変換器3A,3Bがフランジ部材45に設けられた支持部47によって支持される。このため、変換器3A,3Bの重量が負荷となって真空窓15に負担を掛けて破損させることを低減させることができ、製膜装置1の健全性を維持することができる。特に、この製膜装置1の構造上、変換器3A,3Bは自己自重を図示しない支持架台で支える場合でも、真空窓15に密接させるためにある程度の付加荷重で真空窓15に片持ち支持される形で固定され、その変換器3A,3Bからの負荷荷重により真空窓15に負荷を掛け易いものである。このため、フランジ部材45の支持部47によって負荷荷重の多くが支持されることにより、真空窓15の負担を大幅に軽減させることができる。
【0064】
一方、図3〜図6にも示すように、真空窓15の両面には、導電性のある金属で形成されたガイド板51,52が設けられている。これらのガイド板51,52は、プロセス室2の端部分の一部と変換器3A,3Bの端部分の一部を、真空窓15に対して定位置に位置決めするための位置決め部材であるとともに、プロセス室2と真空窓15との間、および変換器3A,3Bと真空窓15との間におけるインピーダンスの急な変化を緩和させる反射波低減部材でもある。
【0065】
ガイド板51,52は、真空窓15の外面および内面から直角に起立する平板が、プロセス室2および変換器3A,3Bの容器の端面部分の周面に沿って形成され、L方向視で略H字形状(図3参照)をなしている。ガイド板51,52は連続していることが好ましいが、熱変形を抑制するとともにプロセス室2および変換器3A,3Bの容器の端面部分と差し込みが容易なように、一部に途切れやスリットを設けても良い。真空窓15に対して真空側(プロセス室2側)に設けられているガイド板51は、例えばNi系ロウ付や拡散溶接等によって真空窓15に固着し、真空窓15に対して大気側(変換器3A,3B側)に設けられているガイド板52は接着等によって真空窓15に固着することができる。またガイド板51,52の一部を真空窓15の内部に埋め込むようにして固定してもよい。
【0066】
図5、図6に示すように、プロセス室2はガイド板51の内側に、変換器3A,3Bはガイド板52の内側に、それぞれ差し込まれて、各々が図示しないボルト等により着脱可能に固定される。なお、図7に示すように、と変換器3A,3Bの外周側に接するようにガイド板51,52を設けてもよい。
【0067】
本実施形態では、高周波電源6A,6Bからの高周波電力が、変換器3A,3Bから真空窓15を経由してプロセス室2のリッジ電極21a,21bに伝送される伝送構造となっているので、プロセス室2と変換器3A,3Bの相互位置関係を精度高く維持する必要がある。このため、このようなガイド板51,52を位置決め部材として設ければ、特殊な冶具や測定器具等を必要とすることなく、プロセス室2の容器と変換器3A,3Bの容器の一部をそれぞれガイド板51,52に差し込むだけで、プロセス室2と変換器3A,3Bを迅速かつ確実に真空窓15に取着し、プロセス室2と変換器3A,3Bを真空窓15に対して正確に位置決めすることができる。これにより、プロセス室2と変換器3A,3Bの位置ずれを防止して高周波電力の伝送ロスを回避するとともに、プロセス室2における電界分布を均一化し、基板への製膜処理の品質を向上させることができる。その上、製膜装置1のメンテナンス時における組立や保守等の作業時間を短縮し、高品質なプラズマ処理を高い稼働率で行うことができる。
【0068】
図8は、ガイド板51,52を設けたことによる効果をグラフで示した図である。縦軸はメンテナンスにおける組立作業と調整作業に発生する時間を表している。従来は、真空窓15にガイド板51,52が無かったため、プロセス室2と真空窓15と変換器3A,3Bとを組み立てて固定した後に、装置を立ち上げて、インピーダンスを整合する電源調整や製膜確認を実施した際に、反射波異常や製膜分布不良等の不具合が発見されることがあり、装置を再度降温させて、プロセス室2と変換器3A,3Bの位置関係を再調整する必要が生じる場合があった。
これに対し、本実施形態では、ガイド板51,52を設けたことにより、プロセス室2はガイド板51に、変換器3A,3Bはガイド板52に、それぞれ差し込まれて、簡易に位置精度を確保して固定されるために、上記のような後戻りの再調整作業は発生しなくなり、組立・調整時間は従来の約60%程度に削減されるという大きな効果を得ることができる。
【0069】
ところで、ガイド板51,52を設けない従来構造では、プロセス室2と真空窓15との間、および変換器3A,3Bと真空窓15との間において誘電率が変化するとともに、その変化位置が不安定なために、インピーダンスが急変する傾向があり、伝播される高周波に反射波が発生しやすいという課題がある。一方、本実施形態では、ガイド板51,52は導電性があり真空窓15に確実に密着した構造であることから、真空窓15へのインピーダンス変化位置が固定されて不安定さによるインピーダンス急変要因を除くことができる。このため、ガイド板51,52は反射波低減部材として機能することができる。
【0070】
このように、プロセス室2と真空窓15との間、および変換器3A,3Bと真空窓15との間において本来より懸念されていたインピーダンスが急変する傾向が緩和され、インピーダンスの急変に起因して発生する反射波が抑制されるため、高周波電力の伝送ロスを回避するとともに、プロセス室2における電界分布を均一化し、かつ高周波電源系統の消耗や故障等を有効に防止して、基板への製膜などプラズマ処理の品質を向上させることができる。
【0071】
また、ガイド板51,52により、真空窓15に取り付けられる位置決め部材と反射波低減部材とが共通部品となるため、製膜装置1の部品点数の増加を低減させ、簡素かつ安価な構成により、プロセス室2と変換器3A,3Bとの相互の位置決めを容易かつ正確に行えるようにするとともに、反射波の発生を低減させて高品質な真空処理を行うことができる。
【0072】
さらに、ガイド板51,52を、真空窓15の内面および外面から直角に起立させてプロセス室2および変換器3A,3Bの容器の周面に沿う板状に形成したため、例えばプロセス室2の昇温時に伴う熱膨張や、降温時における熱収縮により、プロセス室2と真空窓15との間、および変換器3A,3Bと真空窓15との間において隙間が発生しても、この隙間がガイド板51,52により閉塞(遮蔽)され、ここからの高周波電力の漏れが抑制される。このため、簡素かつ安価な構造によって高周波電力の伝送ロスを回避するとともに、プロセス室2における電界分布を均一化して基板への製膜処理品質を向上させることができる。
【0073】
一方、図9に示すように、ガイド板51(52)の厚みは先端に向かって漸減するように形成するのが好ましい。具体的には、ガイド板51(52)の先端部にC5面取り以上の面取りCを施したり、R5以上の丸みを持たせる。また、想像線51aで示すように、ガイド板51(52)の厚みを基端部から先端部にかけてテーパー状に漸減させるようにしてもよい。
【0074】
こうした場合、前述のように真空窓15は誘電体であり、プロセス室2と真空窓15との間、および変換器3A,3Bと真空窓15との間に反射波低減部材であるガイド板51,52を設けたことにより、真空窓15におけるインピーダンスの急変が緩和される。ここで、ガイド板51,52の厚みを先端に向かって漸減させたことにより、ガイド板51,52の断面積が急変せずに徐変するため、真空窓15におけるインピーダンスの急変をより有効に緩和させることができ、基板への製膜処理品質を一層向上させることができる。
【0075】
さらに、図10に示すように、ガイド板51,52の基端部に、真空窓15と同じ材質(石英ガラス、アルミナセラミックス等)でなり、ガイド板51,52を下方から支持する支持突起15aを設け、この支持突起15aの厚みを先端に向かって漸減させた形状にするのも好ましい。
【0076】
このように、真空窓15の材質と同じ材質で形成された支持突起15aを設けてガイド板51,52を下方から支持することにより、ガイド板51,52の支持強度を高めることができ、しかも支持突起15aの厚みが先端に向かって漸減しているため、真空窓15においてインピーダンスが急変する傾向をさらに緩和させることができ、これによって基板への製膜処理品質をなお一層向上させることができる。
【0077】
図11、図12に示すように、ガイド板51,52と、プロセス室2もしくは変換器3A,3Bの容器との間に隙間Sを設け、この隙間Sに導電性のある弾性部材57を介装してもよい。本実施形態では、導電性のある弾性部材57として、例えばベリリウム銅合金等からなる板金材料を湾曲させたソリ状のバネ接触子を用い、その弾性を利用して弾性部材57をプロセス室2もしくは変換器3A,3Bの容器とガイド板51,52とに接触させている。弾性部材57は、そのソリ形状の長手方向が、ガイド板51,52に対するプロセス室2と変換器3A,3Bの差し込み方向(L方向)に沿わされている。隙間Sと弾性部材57は、ガイド板51,52の内周部における上部に設けるのが好ましい。これにより、ガイド板51,52の下部面によってプロセス室2と変換器3A,3Bの支持荷重を保持することができる。
【0078】
上記構成によれば、例えばプロセス室2が熱膨張することにより、真空窓15とプロセス室2との相対位置、あるいは真空窓15と変換器3A,3Bとの相対位置がL方向に変化しても、真空窓15に設けられた導電性のあるガイド板51,52と、プロセス室2および変換器3A,3Bの容器との間の隙間Sが弾性部材57を介して電気的に導通した状態に保たれる。これにより、プロセス室2と、変換器3A,3Bと、真空窓15と、ガイド板51,52との間の電位的な接触が良好に行なわれるので、伝送ロスの低減やプロセス室2における電界分布の不均一化を抑制し、プラズマ処理の品質を高めることができる。なお、弾性部材57としては、ソリ状のバネ接触子に限らず、例えばウール状の金属片を用いてもよい。しかし、ソリ状のバネ接触子を用いて、その長手方向をL方向に沿わせる構成とした方が、ガイド板51,52に対してプロセス室2と変換器3A,3Bをスムーズに嵌合させることができるという利点がある。
【0079】
図13〜図16に示すように、減圧容器4の底面上にプロセス室2の中心部が中心固定部17を介して固定され、プロセス室2と減圧容器4は相互に熱変形に拘束されることなく相対固定されている。中心固定部17は単なる円柱状であり、平面視でプロセス室2の底面の中心部に配置されている。この位置はプロセス室2の熱膨張の起点と定められている。そして、平面視でこの中心固定部17を囲むように、減圧容器4の底面とプロセス室2の底面との間に合計8つのスライド支持部18A,18B,18Cが配置されている。このうち、2つのスライド支持部18Aは、中心固定部17を挟んでL方向に離間して配置され、4つのスライド支持部18Bはプロセス室2の四隅付近に配置され、2つのスライド支持部18Cは中心固定部17を挟んでH方向に離間して配置されている。
【0080】
各スライド支持部18A,18B,18Cは、減圧容器4の底面に対するプロセス室2のL方向(第1の方向)の熱膨張を吸収するスライドユニット61(第1のスライドユニット)と、減圧容器4の底面に対するプロセス室2のH方向(第2の方向)の熱膨張を吸収するスライドユニット62(第2のスライドユニット)と、長い連結柱63と、短い連結柱64と、平坦な中立プレート65とが組み合わされて構成されている。各スライドユニット61,62は、それぞれガイドレール67とリニアベアリング68とを具備して構成され、リニアベアリング68はガイドレール67を跨ぎながらL方向またはH方向に自在に摺動することができる。
【0081】
スライド支持部18Aにおいては、減圧容器4の底面上に固定された長い連結柱63の上にスライドユニット61が設置され、このスライドユニット61のリニアベアリング68がプロセス室2の底面に固定されている。
スライド支持部18Bにおいては、中立プレート65とプロセス室2との間にスライドユニット61が設置され、中立プレート65と減圧容器4との間にスライドユニット62が設置されている。
スライド支持部18Cにおいては、中立プレート65とプロセス室2との間が短い連結柱64で連結され、中立プレート65と減圧容器4との間にスライドユニット62が設置されている。
【0082】
一般に、プロセス室2が熱膨張する場合は、平面視でプロセス室2の中心部(中心固定部17)から放射状に寸法が拡大する。したがって、上記構成のスライド支持部18A,18B,18Cを設けることにより、熱膨張したプロセス室2の中央位置を移動させることなく、減圧容器4の底面に対するプロセス室2の水平方向への熱膨張を完全に吸収することができる。これにより、プロセス室2と減圧容器4の底面は相互に熱変形に拘束されることなくプロセス室2の相似形状を維持できる。このため、例えばプロセス室2の両側に設けられた真空窓15の片方のみに不均一な熱膨張応力が集中して真空窓15を破損させるといった懸念を無くし、製膜装置1の健全性を維持することができる。同様にプロセス室2も熱変形に対する剛強な構造を必要とせずに、薄く軽量な板材で構成することが可能となる。しかも、プロセス室2の中央部が中心固定部17を介して減圧容器4の中心部に固定されるため、プロセス室2を安定的に減圧容器4内に固定することができ、図示しない減圧容器に設けた基板搬送機構や製膜時の基板支持部分との相互位置関係を維持することができる。
【0083】
さらに、プロセス室2の熱膨張の起点である中心固定部17から最も遠い位置に設けられた4つのスライド支持部18Bが、プロセス室2のL方向の熱膨張を吸収するスライドユニット61と、プロセス室2のH方向の熱膨張を吸収するスライドユニット62とを、平坦な中立プレート65を介して重ね合わせた構成であるため、平面視でプロセス室2の各部が水平方向にどのように膨張しても、この膨張がL方向に沿うベクトル成分VL(図16参照)、またはH方向に沿うベクトル成分VH(図15参照)に分解され、ベクトル成分VLはスライドユニット61により吸収され、ベクトル成分VHはスライドユニット62により吸収される。このため、プロセス室2の熱膨張をスムーズに吸収して製膜装置1を健全に運転することができる。
【0084】
図17は、減圧容器4に対して真空窓15をL方向へスライド可能にした構造例を示す縦断面図である。真空窓15は、その周面に設けられたO−リング71(シール部材)を介して減圧容器4の開口部42に嵌合されており、真空窓15は減圧容器4に対してO−リング71により気密を保されながら、プロセス室2と変換器3A,3Bの連結方向、即ちL方向にスライド可能となっている。
【0085】
上記構成によれば、プロセス室2の熱膨張によるL方向への伸びに合わせて真空窓15および変換器3A,3Bがスライドすることができる。これにより、プロセス室2および変換器3A,3Bの端部を常に真空窓15に密着せさた状態に保つことができ、電界的により安定した伝送路を確保することができる。
【0086】
図18は、減圧容器4に対する変換器3A,3Bのスライド構造の第1の実施例を示す側面図である。ここでは、変換器3A,3Bを、減圧容器4に対して、L方向にスライド可能に支持し、変換器3A,3Bをプロセス室2側に押圧する押圧装置75(押圧手段)が設けられている。押圧装置75は、バネ76もしくはエアシリンダ77等の押圧手段を備えている。バネ76とエアシリンダ77を両方とも設けることで押圧力を制御してもよい。
【0087】
上記構成によれば、プロセス室2が熱膨張して容器の寸法が伸び、真空窓15と変換器3A,3Bを突き離す方向に押圧した後に熱収縮しても、押圧装置75によって真空窓15と変換器3A,3Bがプロセス室2側に押圧されて元の位置に戻される。このため、プロセス室2と真空窓15と変換器3A,3Bとの間に隙間が発生せず、互いに密着した状態に保つことができる。したがって、隙間が発生することによる高周波電力の伝送ロスを回避するとともに、プロセス室2における電界分布を均一化し、基板への製膜処理の品質を向上させることができる。
【0088】
図19は、減圧容器4に対する変換器3A,3Bのスライド構造の第2の実施例を示す側面図である。ここでは、プロセス室2と前記変換器3A,3Bとの間に面圧力センサ82(密着力検知手段)が設けられている。また、押圧装置81は、上記の面圧力センサ82と、変換器3A,3BをL方向に移動可能に支持するリニアベアリング83と、サーボモータ84と、ボールねじ機構85と図示しない制御手段とを備えて構成されている。
【0089】
押圧装置81の制御手段は、面圧力センサ82からの密着力情報(押圧力による圧力情報)に基づき、プロセス室2が熱膨張しても真空窓15に過剰な負荷が掛からず、かつプロセス室2と真空窓15と変換器3A,3Bとの間に隙間が発生しない密着力となるようにサーボモータ84を制御する。サーボモータ84の回転はボールねじ機構85によってL方向に沿うリニア運動に変換されて変換器3A,3Bに伝えられ、変換器3A,3Bがリニアベアリング83の上をL方向に移動する。このため、変換器3A,3Bがプロセス室2に対して離接させる方向に駆動される。
【0090】
本構成によれば、プロセス室2の熱膨張による寸法変化量に応じて、面圧力センサ82が検知する密着力が変化し、この密着力情報に基づいてサーボモータ84が駆動され、真空窓15に過剰な負荷が掛からず、かつプロセス室2と真空窓15と変換器3A,3Bとの間に隙間が発生しない程度の密着力が付与される。即ち、プロセス室2が膨張した時には変換器3A,3Bがプロセス室2から離れる方向に駆動され、プロセス室2が収縮した時には変換器3A,3Bがプロセス室2に近づく方向に駆動される。このため、プロセス室2および変換器3A,3Bの端部を常に真空窓15に適切に密着させた状態に保ち、電界的に安定した伝送路を確保して高品質な製膜処理を行うことができる。
【0091】
なお、本発明の実施形態は、上述の態様のみに限定されることはなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更や改良を加えることが可能であり、このように変更や改良を加えた実施形態も本発明の権利範囲に含まれるものとする。例えば、図1から図19に示したような構成を、1台の製膜装置に全て適用しても、部分的に適用してもよい。
【符号の説明】
【0092】
1 製膜装置(真空処理装置)
2 プロセス室(放電室)
3A,3B 変換器
4 減圧容器
5A,5B 同軸ケーブル
6A,6B 高周波電源(電源手段)
15 真空窓
15a 支持突起
17 中心固定部
18A,18B,18C スライド支持部
21a,21b リッジ電極
31a,31b リッジ部
41,71 O−リング(シール部材)
51,52 ガイド板(位置決め部材、反射波低減部材)
57 弾性部材
61 スライドユニット(第1のスライドユニット)
62 スライドユニット(第2のスライドユニット)
63 長い連結棒
64 短い連結棒
65 中立プレート
75,81 押圧装置(押圧フランジ部材手段)
82 面圧力センサ(密着力検知手段)
83 リニアベアリング
84 サーボモータ
85 ボールねじ機構
C 面取り
S 隙間
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空処理装置に関し、特に真空中でプラズマを用いて基板に処理を行う真空処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、薄膜太陽電池の生産性を向上させるためには、高品質なシリコン薄膜を、高速に、かつ、大面積で製膜することが重要である。このような高速かつ大面積な製膜を行う方法としては、プラズマCVD(化学気相成長)法による製膜方法が知られている。
【0003】
プラズマCVD法による製膜を行うためには、プラズマを発生させるプラズマ生成装置(真空処理装置)が必要であり、効率良く製膜を行うプラズマ生成装置として、例えば特許文献1,2等に開示されているリッジ導波管を利用したプラズマ生成装置が知られている。この種のプラズマ生成装置は、特許文献1の図10に示されるように、高周波電源(RF電源)を強い電界に変換させる左右一対の変換器(分配室)と、これらの変換器の間に接続される放電室(プロセス室)とを備えて構成されている。
【0004】
変換器は、互いに対向する上下一対の平板状のリッジ部を有するリッジ導波管からなる。また、放電室も、互いに対向する上下一対の平坦なリッジ電極板を有するリッジ導波管であり、変換器に連結されている。このように構成されたプラズマ生成装置において、放電室の内部を減圧し、この中に、プラズマの生成と薄膜の形成に必要な母ガスを供給し、電源から高周波電力を供給すると、放電室内にて近接対向するリッジ電極板の間にプラズマを発生させることができる。そして、このプラズマを利用してガラス基板等に製膜処理を施すことができる。製膜処理を施す基板は、放電室におけるリッジ電極板の間に配置されるのが一般的である。具体的には、上下のリッジ電極が水平になるように装置全体を設置し、上下の電極の間または上下の電極の外側に基板を搬入して、この基板を下側のリッジ電極の上面に載置して製膜処理を行う。
【0005】
このようなプラズマ生成装置において、放電室の内部を減圧させるために、従来ではリッジ導波管を利用するプラズマ生成装置全体を減圧容器の内部に収容していたが、こうすると容量の大きな減圧容器が必要になり、プラズマ生成装置と真空排気系が大型化してしまい、その製造や管理、さらには広い設置場所の確保のために多大なコストが掛かるという課題がある。
【0006】
そこで、特許文献2の図11に開示されているように、プラズマ生成装置の放電室のみを減圧容器内に収容し、減圧容器の両側に真空窓を介して変換器を接続して、変換器を大気圧中に配置したものがある。この場合、真空窓の材質としては電磁波を透過させることができる石英ガラスやアルミナセラミックス等の誘電体が用いられ、この真空窓を介して高周波電力伝送と真空シールドが行われる。真空窓には、減圧容器の内外に加わる圧力差および放電時における高い熱負荷が加わるため、特に面積が1平方メートルを超える大きさの基板を処理可能な大型の放電室を収容する減圧容器の真空窓は、破損しない強度を確保できる数十ミリメートルの厚さが付与されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特表平4−504640号公報
【特許文献2】特開2011−35327号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、基板面積が1平方メートルを超えて、基板が大型化するに伴い、プラズマ製膜処理を施すことができる大型のプラズマ生成装置(真空処理装置)になると、上記の真空窓を挟んで変換器と放電室とを接続するにあたり、真空と大気圧の圧力差に伴う変形や、温度差に伴う熱膨張により、変換器と放電室との間に位置ずれが生じ易くなり、その相互位置を維持することが困難になる。両者の位置がずれると高周波電力の伝送ロスや放電室(プロセス室)における電界分布が不均一になり、基板への製膜等の処理品質が低下するといった課題があった。また、大型化した変換器と放電室とを正確に位置決めして接続するには、特殊な冶具や測定器具を用いながら行う必要があり、メンテナンスの度に多大な手間と工数が掛かり、製膜基板の生産性と歩留まりを低下させることになる。
【0009】
また、変換器と放電室とが真空窓に突き当てられる形で固定されるため、各部の熱膨張等によって真空窓との間に押圧変形や隙間が発生する可能性があり、この隙間から電力が漏洩して、前記と同じく高周波電力の伝送ロスが発生したり、電界分布が不均一になることで、基板等のプラズマ処理の品質が低下する懸念があった。なお、放電室(プロセス室)はそのプロセス条件によっては200℃以上の高温になることもあり、大型構成部材の熱変形により上記の課題や懸念が助長される傾向があった(例:1000ミリメートル長のSUS304材とアルミナ材の間に100℃の温度差がある場合には、熱膨張差量=熱膨張率差((16−7)×10−6)×温度差(100℃)×1000=0.9ミリメートルとなり、約1ミリメートルの位置ずれや隙間が生じる)。
【0010】
しかも、前述したように、真空窓には真空と大気圧との圧力差に十分耐えられる板厚が必要となる。しかし、一方では真空窓の板厚増加に伴い、誘電体損失(誘電正接tanδ)による発熱で板厚方向の温度差が増加することで熱応力も加わり、真空窓が破損し易くなるという課題が生じることになる。(例:誘電体損失は誘電体内の分子や極性基などの内部摩擦により熱を発生し、発熱量Q=kfE2εtanδで表される(k:定数、f:周波数、E:電場、ε:誘電率、tanδ:誘電正接)。
【0011】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、放電室が減圧容器に収容され、この減圧容器の外部に設けられた変換器が、減圧容器に設けられた真空窓を介して放電室に接続される構成の真空処理装置において、簡素かつ安価な構成により、放電室と変換器との相互の位置決めを容易かつ正確に行うとともに、放電室の熱膨張による悪影響を排除し、高品質な真空処理を効率良く行うことのできる真空処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を採用する。
即ち、本発明に係る真空処理装置の第1の態様は、互いに平行に対向して配置され、その間で放電が行われる一対の面状のリッジ電極を有したリッジ導波管からなる放電室と、前記放電室を挟んで両側に配置され、互いに平行に対向して配置された一対の平板状のリッジ部を有したリッジ導波管からなり、高周波電力を前記放電室に伝送し、前記一対のリッジ電極の間で放電を起こさせる一対の変換器と、高周波電力を前記変換器の前記リッジ部に供給する電源手段と、を有し、前記放電室は減圧容器の内部に収容され、前記変換器は前記減圧容器の外部に配置され、前記減圧容器に設けられた真空窓を介して前記放電室と前記変換器とが接続された真空処理装置であって、前記真空窓の両面に、前記放電室の一部と前記変換器の一部を、前記真空窓に対して定位置に位置決めする位置決め部材を設けたことを特徴とする。
【0013】
上記構成によれば、真空窓の両面に設けられた位置決め部材により、放電室の一部と真空窓との間、および変換器の一部と真空窓との間を精度高く確実かつ迅速に位置決めし、放電室の容器と変換器の容器を真空窓に正確に取り付けることができる。これにより、変換器と放電室の相互の位置ずれを防止して高周波電力の伝送ロスを回避するとともに、放電室における電界分布を均一化し、基板への製膜等のプラズマ処理の品質を向上させることができる。その上、真空処理装置のメンテナンス時の組立や保守等の作業時間を短縮し、高品質なプラズマ処理の運用を効率良く行うことができる。
【0014】
また、本発明に係る真空処理装置の第2の態様は、互いに平行に対向して配置され、その間で放電が行われる一対の面状のリッジ電極を有したリッジ導波管からなる放電室と、前記放電室を挟んで両側に配置され、互いに平行に対向して配置された一対の平板状のリッジ部を有したリッジ導波管からなり、高周波電力を前記放電室に伝送し、前記一対のリッジ電極の間で放電を起こさせる一対の変換器と、高周波電力を前記変換器の前記リッジ部に供給する電源手段と、を有し、前記放電室は減圧容器の内部に収容され、前記変換器は前記減圧容器の外部に配置され、前記減圧容器に設けられた真空窓を介して前記放電室と前記変換器とが接続された真空処理装置であって、前記真空窓の両面に、前記放電室と前記真空窓との間、および前記変換器と前記真空窓との間におけるインピーダンスの変化を緩和させる、導電性のある反射波低減部材を設けたことを特徴とする。
【0015】
上記構成によれば、真空窓の両面に設けられた導電性のある反射波低減部材により、放電室と真空窓との間、および変換器と真空窓との間においてインピーダンスが急に変化する傾向が緩和され、インピーダンスの急変に起因して発生する高周波電力の反射波の発生が抑制される。したがって、高周波電力の伝送ロスを回避するとともに、放電室における電界分布を均一化し、かつ反射波による高周波電源系統の変調や故障等を有効に防止して、基板への製膜等のプラズマ処理の品質を向上させることができる。
【0016】
また、本発明に係る真空処理装置の第3の態様は、前記第2の態様において、前記反射波低減部材は、請求項1に記載の位置決め部材を兼ねることを特徴とする。
【0017】
上記構成によれば、真空窓に取り付けられる位置決め部材と反射波低減部材とが共通部品となるため、真空処理装置の部品点数の増加を低減させ、簡素かつ安価な構成により、放電室と変換器との相互の位置決めを容易かつ正確に行えるようにするとともに、変換器と真空窓との間、および真空窓と放電室との間における反射波の発生を低減させることができる。
【0018】
また、本発明に係る真空処理装置の第4の態様は、前記第2または第3の態様において、前記反射波低減部材は、前記真空窓の内面および外面から直角に起立して前記放電室および前記変換器の容器の周面に沿う板状であることを特徴とする。
【0019】
上記構成によれば、例えば放電室の昇温時における熱膨張や、降温時における熱収縮により、放電室と真空窓との間、および変換器と真空窓との間において隙間が発生しても、この隙間が反射波低減部材により閉塞されるため、高周波電力の伝送ロスを回避するとともに、放電室における電界分布を均一化し、基板への製膜等のプラズマ処理の品質を向上させることができる。
【0020】
また、本発明に係る真空処理装置の第5の態様は、前記第4の態様において、前記反射波低減部材の厚みは先端に向かって漸減していることを特徴とする。
【0021】
前述のように真空窓は誘電体であり、変換器と真空窓との間、および真空窓と放電室との間に反射波低減部材を設けたことにより、真空窓におけるインピーダンスの急変が緩和される。ここで、反射波低減部材の厚みを先端に向かって漸減させたことにより、反射波低減部材の断面積が徐変するため、真空窓におけるインピーダンスの急変をより有効に緩和させることができ、基板への製膜等のプラズマ処理の品質を一層向上させることができる。
【0022】
また、本発明に係る真空処理装置の第6の態様は、前記第2から第5のいずれかの態様において、前記反射波低減部材の基端部に、前記真空窓と同じ材質でなり、前記反射波低減部材を下方から支持する支持突起を設け、この支持突起の厚みは先端に向かって漸減していることを特徴とする。
【0023】
上記構成によれば、真空窓の材質と同じ材質で形成された支持突起によって反射波低減部材が支持されているため、反射波低減部材の支持強度を高めることができる。しかも、支持突起の厚みが先端に向かって漸減しているため、真空窓においてインピーダンスが急変する傾向を緩和させることができ、基板への製膜等のプラズマ処理の品質を高めることができる。
【0024】
また、本発明に係る真空処理装置の第7の態様は、前記第1から第6のいずれかの態様において、前記位置決め部材もしくは反射波低減部材と、前記放電室の容器もしくは前記変換器の容器との間に隙間を設け、この隙間に導電性のある弾性部材を介装したことを特徴とする。
【0025】
上記構成によれば、例えば放電室が熱膨張することにより、真空窓と放電室との連結方向(水平方向)での相対位置、あるいは真空窓と変換器との連結方向(水平方向)での相対位置が変化しても、真空窓に設けられた反射波低減部材と、放電室および変換器の容器との間が、導電性のある弾性部材を介して電気的に導通した状態に保たれる。これにより、変換器と、位置決め部材(反射波低減部材)と、真空窓と、位置決め部材(反射波低減部材)と、プロセス室との電位的な接触が良好に行なわれるので、伝送ロスの低減や放電室における電界分布の不均一化を抑制し、プラズマ処理の品質を高めることができる。
【0026】
また、本発明に係る真空処理装置の第8の態様は、前記第1から第7のいずれかの態様において、平面視で、前記減圧容器の内部に設置された前記放電室の中心部を熱膨張の起点と定めて前記減圧容器の底面上に中心固定部を介して固定し、平面視で前記中心固定部を取り囲むように、前記減圧容器の底面と前記放電室との間に3点以上のスライド支持部を設け、これらのスライド支持部は、前記減圧容器の底面に対する前記放電室の水平方向への熱膨張を吸収可能であることを特徴とする。
【0027】
一般に、放電室での基板加熱のための基板設置部分の温度上昇や、プラズマ発生によるリッジ電極部の温度上昇により放電室が熱膨張する場合は、平面視で放電室の中心部から見ると該中心部から放射状に周囲へと寸法が拡大する。したがって、上記構成とすることにより、熱膨張時も放電室の中央位置を移動させずに、放電室全体を熱変形に拘束されることなく相似形状を維持することができる。このように、放電室の中心部を熱膨張の起点と定めているので、例えば放電室の両側に設けられた真空窓の片方のみに不均一な応力が集中することがなく、真空処理装置の健全性を維持することができる。しかも、放電室の中央部が中心固定部を介して減圧容器の中心部に固定されるため、放電室を安定的に減圧容器内に固定することができる。
【0028】
また、本発明に係る真空処理装置の第9の態様は、前記第8の態様において、前記スライド支持部は、前記減圧容器の底面に対する前記放電室の第1の方向への延びを吸収する第1のスライドユニットと、前記第1の方向に直交する第2の方向への延びを吸収する第2のスライドユニットとを、水平な中立プレートを介して重ねた構造であることを特徴とする。
【0029】
上記構成によれば、平面視で放電室の各部が水平方向にどのように膨張しても、この膨張が第1の方向または第2の方向に沿うベクトル成分に分解され、第1の方向に沿うベクトル成分は第1のスライドユニットにより吸収され、第2の方向に沿うベクトル成分は第2のスライドユニットにより吸収される。このため、放電室の各部を水平方向に保ったまま放電室の熱膨張をスムーズに吸収して健全な運転を行うことができる。
【0030】
また、本発明に係る真空処理装置の第10の態様は、前記第9の態様において、前記真空窓は、その周面に設けられたシール部材を介して前記減圧容器に取り付けられており、該真空窓は前記減圧容器に対し前記シール部材により気密を保されながら、前記放電室と前記変換器の連結方向にスライド可能であることを特徴とする。
【0031】
上記構成によれば、放電室の熱膨張による伸びに合わせて真空窓および変換器が固定したままで可動できる。これにより放電室および変換器の端部を常に真空窓に密着せさた状態に保つことができ、電界的に安定した伝送路を確保することができる。
【0032】
また、本発明に係る真空処理装置の第11の態様は、前記第1から第10のいずれかの態様において、前記変換器を、前記減圧容器に対し、前記放電室と前記変換器の連結方向にスライド可能に支持し、該変換器を前記放電室側に押圧する押圧手段を有することを特徴とする。
【0033】
上記構成によれば、放電室が熱膨張して容器の寸法が伸び、真空窓と変換器を連結方向に突き離す方向に押圧した後に熱収縮しても、押圧手段によって連結方向に真空窓と変換器が放電室側に押圧されて元の位置に戻される。このため、放電室と真空窓と変換器との間に隙間が発生せず、互いに所定内圧で押し付けて密着した状態に保つことができる。したがって、連結方向への熱膨張と熱収縮に対して許容が大きくなるとともに、隙間の発生を防止して高周波電力の伝送ロスを回避するとともに、放電室における電界分布を均一化し、基板への製膜等のプラズマ処理の品質を向上させることができる。
【0034】
また、本発明に係る真空処理装置の第12の態様は、前記第11の態様において、前記変換器と前記放電室との間に密着力検知手段が設けられ、前記押圧手段は前記密着力検知手段からの密着力情報に基づき、前記放電室が熱膨張しても前記真空窓に負荷が掛からず、かつ前記放電室と前記真空窓と前記変換器との間に隙間が発生しない密着力となるように、前記変換器を前記放電室に対して離接させる方向に駆動することを特徴とする。
【0035】
上記構成によれば、放電室の熱膨張による容器の寸法変化量に応じて、密着力検知手段が検知する密着力が変化し、この密着力情報に基づいて連結方向への押圧手段が駆動され、真空窓に負荷が掛からず、かつ放電室と真空窓と変換器との間に隙間が発生しない密着力が付与される。即ち、放電室が膨張した時には変換器が放電室から連結方向に離れる方向に駆動され、放電室が収縮した時には連結方向に変換器が放電室に近づく方向に駆動される。このため、放電室および変換器の端部を常に真空窓に密着せさた状態に保ち、電界的に安定した伝送路を確保して高品質なプラズマ処理を行うことができる。
【0036】
また、本発明に係る真空処理装置の第13の態様は、前記第1から第12のいずれかの態様において、前記真空窓は前記減圧容器にシール部材を介して取り付けられるとともに、該真空窓の周囲を、前記シール部材を圧縮する方向に押圧するフランジ部材が設けられ、該フランジ部材には、前記変換器の支持部が一体的に設けられたことを特徴とする。
【0037】
上記構成によれば、フランジ部材によって真空窓が減圧容器に気密的に固定されると同時に、真空窓に接続される変換器がフランジ部材に設けられた支持部によって支持される。このため、変換器の重量が負荷となって真空窓に負担を掛けて損傷させることを低減させることができ、真空処理装置の健全性を維持することができる。
【発明の効果】
【0038】
以上のように、本発明によれば、放電室が減圧容器に収容され、この減圧容器の外部に設けられた変換器が、減圧容器に設けられた真空窓を介して放電室に接続される構成の真空処理装置において、簡素かつ安価な構成により、放電室と変換器との相互の位置決めを容易かつ正確に行うとともに、放電室の熱膨張による悪影響を排除し、高品質な真空処理を効率良く行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明に係るダブルリッジ型の製膜装置の概略構成を説明する縦断面図である。
【図2】図1のII-II線に沿う製膜装置の縦断面図である。
【図3】真空窓とガイド板を示す斜視図である。
【図4】図3のIV-IV線に沿う縦断面図である。
【図5】真空窓に放電室と変換器が取り付けられる前の状態を示す縦断面図である。
【図6】真空窓に放電室と変換器が取り付けられた後の状態を示す縦断面図である。
【図7】ガイド板が放電室と変換器の外周側に接するように設けられた実施例を示す縦断面図である。
【図8】ガイド板を設けたことによる効果をグラフで示した図である。
【図9】図6のIX部拡大図である。
【図10】ガイド板と共に支持突起が設けられた実施例を示す縦断面図である。
【図11】ガイド板と共に導電弾性部材が設けられた実施例を示す縦断面図である。
【図12】図11のXII部拡大図である。
【図13】図15および図16のXIII-XIII線に沿う製膜装置の縦断面図である。
【図14】図15および図16のXIV-XIV線に沿う製膜装置の縦断面図である。
【図15】図13のXV-XV矢視による製膜装置の平面図である。
【図16】図14のXVI-XVI矢視による製膜装置の平面図である。
【図17】減圧容器に対する真空窓のスライド構造を示す縦断面図である。
【図18】減圧容器に対する変換器のスライド構造の第1の実施例を示す側面図である。
【図19】減圧容器に対する変換器のスライド構造の第2の実施例を示す側面図である。
【0040】
〔第1実施形態〕
まず、本発明の第1実施形態を図1〜図10に基づいて説明する。図1は、本発明の第1実施形態における製膜装置の概略構成を説明する模式的な斜視図であり、図2は図1のII-II線に沿う製膜装置の縦断面図である。
【0041】
この製膜装置1は、プロセス室(放電室)2と、このプロセス室2の両端に隣接して配置された変換器3A,3Bと、プロセス室2が収容される減圧容器4と、変換器3A,3Bに一端が接続される電源ラインとしての同軸ケーブル5A,5Bと、これらの同軸ケーブル5A,5Bの他端に接続される高周波電源6A,6B(電源手段)と、同軸ケーブル5A,5Bの中間部に接続された整合器7A,7Bおよびサーキュレータ8A,8Bと、排気手段11と、材料ガスを含む母ガスをプロセス室2内に供給する母ガス供給手段12とを主な構成要素として備えている。
【0042】
なお、本実施形態では、説明の便宜上、プロセス室2が延びる方向(長さ方向)をL方向(図1における左右方向)とし、プロセス室2の幅方向(図2における左右方向)をH方向とし、プロセス室2の高さ方向をE方向とする。
【0043】
プロセス室2が収容される減圧容器4は函状である。この減圧容器4は、その内外の圧力差に耐え得る構造とされている。例えば、ステンレス鋼(JIS規格におけるSUS材)や、一般構造用圧延材(JIS規格におけるSS材)などから形成され、リブ材などで補強された構成を用いることができる。さらに、減圧容器4の両端面(L方向に直交する面)には真空窓15が設置されている。プロセス室2は図示しない1平方メートルを超える大型基板に対してプラズマ処理(製膜処理)を行うことができる。このため減圧容器4も大型基板を設置したプロセス室2を収容できるサイズであり、その両端面に真空窓15が設けてある。真空窓15は、減圧容器4内部を真空状態に保ちながら高周波電力を透過できる材質からなり、H方向長さが1メートルを超え、厚さが数センチとなる大型で板状の石英ガラスやアルミナセラミックス等の誘電体で形成されており、後述するように減圧容器4を構成している金属部に対して気密的に取り付けられている。
【0044】
プロセス室2は、減圧容器4の内部底面上に中心固定部17および複数のスライド支持部18A,18B,18Cを介して設置されている。したがって、プロセス室2の底面は減圧容器4の底面からE方向へ離れており、プロセス室2の天面と側面も減圧容器4の内面からそれぞれ離れている。また、プロセス室2の両端面は、減圧容器4の両端面にある真空窓15の内面に当接して後述するガイド板51を用いて位置決めをされて固定されている。一方、変換器3A,3Bは減圧容器4の外部に配置され、減圧容器4の両端にある真空窓15の外面に当接して後述するガイド板52を用いて位置決めをされてに固定されている。したがって、プロセス室2と変換器3A,3Bは真空窓15を介して連結方向であるL方向に接続されている。
【0045】
排気手段11としては、公知の真空ポンプ等を用いることができ、本発明において特に限定されるものではない。この排気手段11は減圧容器4に接続され、減圧容器4およびプロセス室2の内部圧力を0.01Paから10kPa程度の真空状態とすることができる。この負圧は真空窓15によりプロセス室2に対して隔絶された変換器3A,3Bには及ばないため、変換器3A,3Bの内部は大気圧に保たれる。
【0046】
プロセス室2は、ステンレス合金やアルミニウム合金材料等の、導電性を有し非磁性または弱磁性を有する材料から形成された容器状の部品であって、所謂ダブルリッジ型の導波管状に形成されたものである。プロセス室2の内部は、上述のように真空状態とされるが、減圧容器4の内部に収納されることから、ガス流れなどの微小圧力分布により生じる圧力差と、自己荷重と、温度分布による熱応力に耐え得る構造であり、特に圧力差による応力が小さいことから剛強な構造は不要とされる。圧力差が少ないために剛強な構造は不要となることで、プロセス室2を構成する板厚は薄く軽量化するので、自己荷重は低減し更に剛強な構造が不要となるので、好ましい構成となる。プロセス室2には、E方向に重なる上下一対の放電用のリッジ電極21a,21bが設けられている。これらの一対のリッジ電極21a,21bは、ダブルリッジ導波管であるプロセス室2における主要部分となるリッジ形状を構成するものであり、凡そ3〜30ミリメートル程度の対向間隔(リッジ電極間隔)が付与されて互いに平行に対向配置され、その間で放電が行われる平板状の部分である。
【0047】
リッジ電極21a,21bは、厚さ0.5mm以上、3mm以下の、比較的薄い金属板で形成されている。リッジ電極21a,21bの材質としては、線膨張率が小さく、熱伝達率が高いことが望ましい。具体的にはSUS304等が好適であるが、線膨張率が大きい反面熱伝達率が格段に大きいアルミニウム系金属を用いてもよい。そして、これら一対のリッジ電極21a,21bの、H方向両側に、一対の非リッジ部導波管22a,22bが設けられている。上下のリッジ電極21a,21bと、左右の非リッジ部導波管22a,22bによって、プロセス室2の縦断面形状が略「H」字形状に形成されている。
【0048】
一方、変換器3A,3Bは、プロセス室2(リッジ電極21a,21b)の長さ方向(L方向)に沿ってプロセス室2の両端に隣接し、前記のように真空窓15を介して接続されており、プロセス室2と同様に、アルミニウム合金材料等の導電性を有し非磁性または弱磁性を有する材料から形成された容器状の部品であって、プロセス室2と同じくダブルリッジ導波管状に形成されている。
【0049】
変換器3A,3Bには、それぞれ上下一対の平板状のリッジ部31a,31bが設けられている。これらの一対のリッジ部31a,31bは、ダブルリッジ導波管である変換器3A,3Bにおけるリッジ形状を構成するものであり、凡そ50〜200ミリメートル程度の対向間隔(リッジ間隔)が付与されて互いに平行に対向配置されている。また、これら一対のリッジ部31a,31bの両側に、一対の非リッジ部導波管32a,32bが設けられている。上下のリッジ部31a,31bと、左右の非リッジ部導波管32a,32bによって、変換器3A,3Bの縦断面形状がプロセス室2と同じく略「H」字形状に形成されている。
【0050】
ところで、同軸ケーブル5A,5Bは、外部導体36および内部導体37を有しており、外部導体36が変換器3A,3Bの例えば上側のリッジ部31aに電気的に接続され、内部導体37が上側のリッジ部31aと変換器3A,3Bの内部空間を貫通して下側のリッジ部31bに電気的に接続されている。同軸ケーブル5A,5Bは、それぞれ、高周波電源6A,6Bから供給された高周波電力を変換器3A,3Bに導くものである。なお、高周波電源6A,6Bとしては、公知のものを用いることができ、本発明において特に限定されるものではない。
【0051】
高周波電源6A,6Bは、その周波数が13.56MHz以上、好ましくは30MHzから400MHz(VHF帯からUHF帯)である。これは、13.56MHzよりも周波数が低いとダブルリッジ導波管(リッジ電極21a,21bと非リッジ部導波管22a,22b)のサイズが、製膜処理を行う基板のサイズに対して大型化するために装置設置スペースが増加し、周波数が400MHzより高いとプロセス室2が延びる方向(L方向)に生じる定在波の影響が増大するためである。なお、サーキュレータ8A,8Bは、それぞれ高周波電源6A,6Bから供給された高周波電力を変換器3A,3Bに導くとともに、高周波電源6A,6Bに対して進行方向が違う高周波電力が入力されることを防止するものである。
【0052】
変換器3A,3Bは、リッジ導波管の特性を利用して高周波電力の伝送モードを同軸伝送モードであるTEMモードから方形導波管の基本伝送モードであるTEモードに変換してプロセス室2に伝送する。前述の通り、変換器3A,3Bのリッジ部31a,31bの対向間隔よりも、プロセス室2のリッジ電極21a,21bの対向間隔の方が格段に小さいため、リッジ部31a,31bとリッジ電極21a,21bとの間に段差(リッジ段差)が存在している。このため、リッジ電極21a,21bの間隔を狭く設定することで強い電界を発生し、リッジ電極21a,21bの間に母ガス供給手段12から母ガスを導入することで母ガスが電離されてプラズマが発生する(図1中に示すプラズマ発生領域P参照)。
【0053】
さらに、リッジ導波管の特性により、リッジ電極21a,21bの間ではH方向に沿う方向の電界強度分布がほぼ均一になる。リッジ導波管を用いることにより、リッジ電極21a,21bの間ではプラズマを生成可能な程度の強い電界強度を得ることができる。なお、プロセス室2、変換器3A,3Bは、図1、図2に示すようにダブルリッジ導波管により構成されていてもよいし、シングルリッジ導波管により構成されていてもよい。
【0054】
その一方で、プロセス室2には、高周波電源6A,6Bから供給された高周波電力により定在波が形成される。この時、高周波電源6A,6Bから供給される高周波電力の位相が固定されていると、定在波の位置(位相)が固定され、リッジ電極21a,21bにおけるプロセス室2が延びる方向であるL方向の電界強度の分布に偏りが生じる。そこで、高周波電源6A,6Bの少なくとも一方から供給される高周波電力の位相を時間に対して調節することにより、プロセス室2に形成される定在波の位置を調節する位相変調が行われる。これにより、リッジ電極21a,21bにおけるL方向の電界強度の分布が時間平均的に均一化される。
【0055】
具体的には、定在波の位置が、時間の経過に伴いL方向に、sin波状や、三角波状や、階段(ステップ)状に移動するように高周波電源6A,6Bから供給される高周波電力の位相が調節される。定在波が移動する範囲や、定在波を移動させる方式(sin波状、三角波状、階段状等)や、位相調整の周期の適正化は、電力の分布や、プラズマからの発光の分布や、プラズマ密度の分布や、製膜された膜に係る特性の分布等に基づいて行われる。膜に係る特性としては、膜厚や、膜質や、太陽電池等の半導体としての特性などを挙げることができる。
【0056】
このように、リッジ部を形成したリッジ導波管の特性と、高周波電源6A,6Bから供給された高周波電力の位相変調により、図示しない基板に対してH方向とL方向のいずれの方向にも均一なプラズマを広い範囲に生成することができ、大面積基板へ製膜するにあたり、高品質な膜を均一に製膜することができる。
【0057】
製膜処理を行う基板としては、透光性ガラス基板を例示することができる。例えば、太陽電池パネルに用いられるものでは、縦横の大きさが1.4m×1.1m、厚さが3.0mmから4.5mmのものが挙げられる。なお、基板は、プロセス室2および減圧容器4のH方向に直交する側面に設けられた開閉可能な搬入口(非図示)からプロセス室2の内部に搬入、もしくは搬出される。なお、図1、図2に示す製膜装置1は基板を水平状態で製膜処理するように構成されているが、基板を鉛直、もしくは鉛直方向から7°〜15°傾斜させた角度に保持して製膜処理を施す縦型に構成されたものであってもよい。
母ガス供給手段12は、例えばSiH4ガス等の基板にプラズマ処理を施すのに必要な母ガスを、リッジ電極21a,21b間に供給できるようプロセス室2に接続されている。
【0058】
次に、製膜装置1を用いたプラズマ処理方法について説明する。
まず、排気手段11により減圧容器4とその内部に収容されるプロセス室2から空気が排出され、図示しない基板搬送機構により基板が製膜処理位置に載置される。基板は対向するリッジ電極21a,21bの外側に設置されるが、リッジ電極21a,21bの間に設置してもよい。
【0059】
次に、母ガス供給手段12からリッジ電極21a,21b間に、例えばSiH4ガス等の母ガスが供給される。この時、排気手段11の排気量が制御されて、プロセス室2等の内部、即ちリッジ電極21a,21bの間の圧力が0.01Paから10kPa程度の真空状態に保たれる。具体的には、複数の貫通孔を設けた一対のリッジ電極21a,21bの間にはSiH4等の母ガスが供給されるとともに、製膜に寄与しなかったガスは真空排気される。
【0060】
そして、高周波電源6A,6Bからの高周波電力が、変換器3A,3Bから真空窓15を経由してプロセス室2のリッジ電極21a,21bに伝送され、リッジ電極21a,21b間に電界を発生させる。リッジ電極21a,21bの間には上記のように母ガス供給手段12により母ガスが導入され、プラズマが生成される。このとき、母ガスの材料ガスが分解または活性化して製膜種が生成される。生成された製膜種のうち基板に向かって拡散で移動したものは、基板にて膜が形成され、製膜処理が施される。
【0061】
ところで、図1に示すように、真空窓15は、減圧容器にOリング(シール部材)を介して取り付けられている。詳しくは、減圧容器の真空窓15を取り付ける開口部42の内周部に内フランジ43が一体に形成されており、開口部42に嵌め込まれた真空窓15と内フランジ43との間にOリング41が介在して両部材15,43間をシーリングするようになっている。
【0062】
そして、真空窓15の周囲を、Oリング41を圧縮する方向に押圧するフランジ部材45が設けられている。このフランジ部材45は、複数のボルト46で減圧容器4の開口部42に締結される。さらに、フランジ部材45には、変換器3A,3Bの容器の外周を支持する支持部47が一体的に設けられている。この支持部47は、変換器3A,3Bの外周の4面に接する外枠状に形成されている。
【0063】
上記構成によれば、フランジ部材45によって真空窓15がOリング41を介して減圧容器4の開口部42に気密的に固定されると同時に、真空窓15に接続される変換器3A,3Bがフランジ部材45に設けられた支持部47によって支持される。このため、変換器3A,3Bの重量が負荷となって真空窓15に負担を掛けて破損させることを低減させることができ、製膜装置1の健全性を維持することができる。特に、この製膜装置1の構造上、変換器3A,3Bは自己自重を図示しない支持架台で支える場合でも、真空窓15に密接させるためにある程度の付加荷重で真空窓15に片持ち支持される形で固定され、その変換器3A,3Bからの負荷荷重により真空窓15に負荷を掛け易いものである。このため、フランジ部材45の支持部47によって負荷荷重の多くが支持されることにより、真空窓15の負担を大幅に軽減させることができる。
【0064】
一方、図3〜図6にも示すように、真空窓15の両面には、導電性のある金属で形成されたガイド板51,52が設けられている。これらのガイド板51,52は、プロセス室2の端部分の一部と変換器3A,3Bの端部分の一部を、真空窓15に対して定位置に位置決めするための位置決め部材であるとともに、プロセス室2と真空窓15との間、および変換器3A,3Bと真空窓15との間におけるインピーダンスの急な変化を緩和させる反射波低減部材でもある。
【0065】
ガイド板51,52は、真空窓15の外面および内面から直角に起立する平板が、プロセス室2および変換器3A,3Bの容器の端面部分の周面に沿って形成され、L方向視で略H字形状(図3参照)をなしている。ガイド板51,52は連続していることが好ましいが、熱変形を抑制するとともにプロセス室2および変換器3A,3Bの容器の端面部分と差し込みが容易なように、一部に途切れやスリットを設けても良い。真空窓15に対して真空側(プロセス室2側)に設けられているガイド板51は、例えばNi系ロウ付や拡散溶接等によって真空窓15に固着し、真空窓15に対して大気側(変換器3A,3B側)に設けられているガイド板52は接着等によって真空窓15に固着することができる。またガイド板51,52の一部を真空窓15の内部に埋め込むようにして固定してもよい。
【0066】
図5、図6に示すように、プロセス室2はガイド板51の内側に、変換器3A,3Bはガイド板52の内側に、それぞれ差し込まれて、各々が図示しないボルト等により着脱可能に固定される。なお、図7に示すように、と変換器3A,3Bの外周側に接するようにガイド板51,52を設けてもよい。
【0067】
本実施形態では、高周波電源6A,6Bからの高周波電力が、変換器3A,3Bから真空窓15を経由してプロセス室2のリッジ電極21a,21bに伝送される伝送構造となっているので、プロセス室2と変換器3A,3Bの相互位置関係を精度高く維持する必要がある。このため、このようなガイド板51,52を位置決め部材として設ければ、特殊な冶具や測定器具等を必要とすることなく、プロセス室2の容器と変換器3A,3Bの容器の一部をそれぞれガイド板51,52に差し込むだけで、プロセス室2と変換器3A,3Bを迅速かつ確実に真空窓15に取着し、プロセス室2と変換器3A,3Bを真空窓15に対して正確に位置決めすることができる。これにより、プロセス室2と変換器3A,3Bの位置ずれを防止して高周波電力の伝送ロスを回避するとともに、プロセス室2における電界分布を均一化し、基板への製膜処理の品質を向上させることができる。その上、製膜装置1のメンテナンス時における組立や保守等の作業時間を短縮し、高品質なプラズマ処理を高い稼働率で行うことができる。
【0068】
図8は、ガイド板51,52を設けたことによる効果をグラフで示した図である。縦軸はメンテナンスにおける組立作業と調整作業に発生する時間を表している。従来は、真空窓15にガイド板51,52が無かったため、プロセス室2と真空窓15と変換器3A,3Bとを組み立てて固定した後に、装置を立ち上げて、インピーダンスを整合する電源調整や製膜確認を実施した際に、反射波異常や製膜分布不良等の不具合が発見されることがあり、装置を再度降温させて、プロセス室2と変換器3A,3Bの位置関係を再調整する必要が生じる場合があった。
これに対し、本実施形態では、ガイド板51,52を設けたことにより、プロセス室2はガイド板51に、変換器3A,3Bはガイド板52に、それぞれ差し込まれて、簡易に位置精度を確保して固定されるために、上記のような後戻りの再調整作業は発生しなくなり、組立・調整時間は従来の約60%程度に削減されるという大きな効果を得ることができる。
【0069】
ところで、ガイド板51,52を設けない従来構造では、プロセス室2と真空窓15との間、および変換器3A,3Bと真空窓15との間において誘電率が変化するとともに、その変化位置が不安定なために、インピーダンスが急変する傾向があり、伝播される高周波に反射波が発生しやすいという課題がある。一方、本実施形態では、ガイド板51,52は導電性があり真空窓15に確実に密着した構造であることから、真空窓15へのインピーダンス変化位置が固定されて不安定さによるインピーダンス急変要因を除くことができる。このため、ガイド板51,52は反射波低減部材として機能することができる。
【0070】
このように、プロセス室2と真空窓15との間、および変換器3A,3Bと真空窓15との間において本来より懸念されていたインピーダンスが急変する傾向が緩和され、インピーダンスの急変に起因して発生する反射波が抑制されるため、高周波電力の伝送ロスを回避するとともに、プロセス室2における電界分布を均一化し、かつ高周波電源系統の消耗や故障等を有効に防止して、基板への製膜などプラズマ処理の品質を向上させることができる。
【0071】
また、ガイド板51,52により、真空窓15に取り付けられる位置決め部材と反射波低減部材とが共通部品となるため、製膜装置1の部品点数の増加を低減させ、簡素かつ安価な構成により、プロセス室2と変換器3A,3Bとの相互の位置決めを容易かつ正確に行えるようにするとともに、反射波の発生を低減させて高品質な真空処理を行うことができる。
【0072】
さらに、ガイド板51,52を、真空窓15の内面および外面から直角に起立させてプロセス室2および変換器3A,3Bの容器の周面に沿う板状に形成したため、例えばプロセス室2の昇温時に伴う熱膨張や、降温時における熱収縮により、プロセス室2と真空窓15との間、および変換器3A,3Bと真空窓15との間において隙間が発生しても、この隙間がガイド板51,52により閉塞(遮蔽)され、ここからの高周波電力の漏れが抑制される。このため、簡素かつ安価な構造によって高周波電力の伝送ロスを回避するとともに、プロセス室2における電界分布を均一化して基板への製膜処理品質を向上させることができる。
【0073】
一方、図9に示すように、ガイド板51(52)の厚みは先端に向かって漸減するように形成するのが好ましい。具体的には、ガイド板51(52)の先端部にC5面取り以上の面取りCを施したり、R5以上の丸みを持たせる。また、想像線51aで示すように、ガイド板51(52)の厚みを基端部から先端部にかけてテーパー状に漸減させるようにしてもよい。
【0074】
こうした場合、前述のように真空窓15は誘電体であり、プロセス室2と真空窓15との間、および変換器3A,3Bと真空窓15との間に反射波低減部材であるガイド板51,52を設けたことにより、真空窓15におけるインピーダンスの急変が緩和される。ここで、ガイド板51,52の厚みを先端に向かって漸減させたことにより、ガイド板51,52の断面積が急変せずに徐変するため、真空窓15におけるインピーダンスの急変をより有効に緩和させることができ、基板への製膜処理品質を一層向上させることができる。
【0075】
さらに、図10に示すように、ガイド板51,52の基端部に、真空窓15と同じ材質(石英ガラス、アルミナセラミックス等)でなり、ガイド板51,52を下方から支持する支持突起15aを設け、この支持突起15aの厚みを先端に向かって漸減させた形状にするのも好ましい。
【0076】
このように、真空窓15の材質と同じ材質で形成された支持突起15aを設けてガイド板51,52を下方から支持することにより、ガイド板51,52の支持強度を高めることができ、しかも支持突起15aの厚みが先端に向かって漸減しているため、真空窓15においてインピーダンスが急変する傾向をさらに緩和させることができ、これによって基板への製膜処理品質をなお一層向上させることができる。
【0077】
図11、図12に示すように、ガイド板51,52と、プロセス室2もしくは変換器3A,3Bの容器との間に隙間Sを設け、この隙間Sに導電性のある弾性部材57を介装してもよい。本実施形態では、導電性のある弾性部材57として、例えばベリリウム銅合金等からなる板金材料を湾曲させたソリ状のバネ接触子を用い、その弾性を利用して弾性部材57をプロセス室2もしくは変換器3A,3Bの容器とガイド板51,52とに接触させている。弾性部材57は、そのソリ形状の長手方向が、ガイド板51,52に対するプロセス室2と変換器3A,3Bの差し込み方向(L方向)に沿わされている。隙間Sと弾性部材57は、ガイド板51,52の内周部における上部に設けるのが好ましい。これにより、ガイド板51,52の下部面によってプロセス室2と変換器3A,3Bの支持荷重を保持することができる。
【0078】
上記構成によれば、例えばプロセス室2が熱膨張することにより、真空窓15とプロセス室2との相対位置、あるいは真空窓15と変換器3A,3Bとの相対位置がL方向に変化しても、真空窓15に設けられた導電性のあるガイド板51,52と、プロセス室2および変換器3A,3Bの容器との間の隙間Sが弾性部材57を介して電気的に導通した状態に保たれる。これにより、プロセス室2と、変換器3A,3Bと、真空窓15と、ガイド板51,52との間の電位的な接触が良好に行なわれるので、伝送ロスの低減やプロセス室2における電界分布の不均一化を抑制し、プラズマ処理の品質を高めることができる。なお、弾性部材57としては、ソリ状のバネ接触子に限らず、例えばウール状の金属片を用いてもよい。しかし、ソリ状のバネ接触子を用いて、その長手方向をL方向に沿わせる構成とした方が、ガイド板51,52に対してプロセス室2と変換器3A,3Bをスムーズに嵌合させることができるという利点がある。
【0079】
図13〜図16に示すように、減圧容器4の底面上にプロセス室2の中心部が中心固定部17を介して固定され、プロセス室2と減圧容器4は相互に熱変形に拘束されることなく相対固定されている。中心固定部17は単なる円柱状であり、平面視でプロセス室2の底面の中心部に配置されている。この位置はプロセス室2の熱膨張の起点と定められている。そして、平面視でこの中心固定部17を囲むように、減圧容器4の底面とプロセス室2の底面との間に合計8つのスライド支持部18A,18B,18Cが配置されている。このうち、2つのスライド支持部18Aは、中心固定部17を挟んでL方向に離間して配置され、4つのスライド支持部18Bはプロセス室2の四隅付近に配置され、2つのスライド支持部18Cは中心固定部17を挟んでH方向に離間して配置されている。
【0080】
各スライド支持部18A,18B,18Cは、減圧容器4の底面に対するプロセス室2のL方向(第1の方向)の熱膨張を吸収するスライドユニット61(第1のスライドユニット)と、減圧容器4の底面に対するプロセス室2のH方向(第2の方向)の熱膨張を吸収するスライドユニット62(第2のスライドユニット)と、長い連結柱63と、短い連結柱64と、平坦な中立プレート65とが組み合わされて構成されている。各スライドユニット61,62は、それぞれガイドレール67とリニアベアリング68とを具備して構成され、リニアベアリング68はガイドレール67を跨ぎながらL方向またはH方向に自在に摺動することができる。
【0081】
スライド支持部18Aにおいては、減圧容器4の底面上に固定された長い連結柱63の上にスライドユニット61が設置され、このスライドユニット61のリニアベアリング68がプロセス室2の底面に固定されている。
スライド支持部18Bにおいては、中立プレート65とプロセス室2との間にスライドユニット61が設置され、中立プレート65と減圧容器4との間にスライドユニット62が設置されている。
スライド支持部18Cにおいては、中立プレート65とプロセス室2との間が短い連結柱64で連結され、中立プレート65と減圧容器4との間にスライドユニット62が設置されている。
【0082】
一般に、プロセス室2が熱膨張する場合は、平面視でプロセス室2の中心部(中心固定部17)から放射状に寸法が拡大する。したがって、上記構成のスライド支持部18A,18B,18Cを設けることにより、熱膨張したプロセス室2の中央位置を移動させることなく、減圧容器4の底面に対するプロセス室2の水平方向への熱膨張を完全に吸収することができる。これにより、プロセス室2と減圧容器4の底面は相互に熱変形に拘束されることなくプロセス室2の相似形状を維持できる。このため、例えばプロセス室2の両側に設けられた真空窓15の片方のみに不均一な熱膨張応力が集中して真空窓15を破損させるといった懸念を無くし、製膜装置1の健全性を維持することができる。同様にプロセス室2も熱変形に対する剛強な構造を必要とせずに、薄く軽量な板材で構成することが可能となる。しかも、プロセス室2の中央部が中心固定部17を介して減圧容器4の中心部に固定されるため、プロセス室2を安定的に減圧容器4内に固定することができ、図示しない減圧容器に設けた基板搬送機構や製膜時の基板支持部分との相互位置関係を維持することができる。
【0083】
さらに、プロセス室2の熱膨張の起点である中心固定部17から最も遠い位置に設けられた4つのスライド支持部18Bが、プロセス室2のL方向の熱膨張を吸収するスライドユニット61と、プロセス室2のH方向の熱膨張を吸収するスライドユニット62とを、平坦な中立プレート65を介して重ね合わせた構成であるため、平面視でプロセス室2の各部が水平方向にどのように膨張しても、この膨張がL方向に沿うベクトル成分VL(図16参照)、またはH方向に沿うベクトル成分VH(図15参照)に分解され、ベクトル成分VLはスライドユニット61により吸収され、ベクトル成分VHはスライドユニット62により吸収される。このため、プロセス室2の熱膨張をスムーズに吸収して製膜装置1を健全に運転することができる。
【0084】
図17は、減圧容器4に対して真空窓15をL方向へスライド可能にした構造例を示す縦断面図である。真空窓15は、その周面に設けられたO−リング71(シール部材)を介して減圧容器4の開口部42に嵌合されており、真空窓15は減圧容器4に対してO−リング71により気密を保されながら、プロセス室2と変換器3A,3Bの連結方向、即ちL方向にスライド可能となっている。
【0085】
上記構成によれば、プロセス室2の熱膨張によるL方向への伸びに合わせて真空窓15および変換器3A,3Bがスライドすることができる。これにより、プロセス室2および変換器3A,3Bの端部を常に真空窓15に密着せさた状態に保つことができ、電界的により安定した伝送路を確保することができる。
【0086】
図18は、減圧容器4に対する変換器3A,3Bのスライド構造の第1の実施例を示す側面図である。ここでは、変換器3A,3Bを、減圧容器4に対して、L方向にスライド可能に支持し、変換器3A,3Bをプロセス室2側に押圧する押圧装置75(押圧手段)が設けられている。押圧装置75は、バネ76もしくはエアシリンダ77等の押圧手段を備えている。バネ76とエアシリンダ77を両方とも設けることで押圧力を制御してもよい。
【0087】
上記構成によれば、プロセス室2が熱膨張して容器の寸法が伸び、真空窓15と変換器3A,3Bを突き離す方向に押圧した後に熱収縮しても、押圧装置75によって真空窓15と変換器3A,3Bがプロセス室2側に押圧されて元の位置に戻される。このため、プロセス室2と真空窓15と変換器3A,3Bとの間に隙間が発生せず、互いに密着した状態に保つことができる。したがって、隙間が発生することによる高周波電力の伝送ロスを回避するとともに、プロセス室2における電界分布を均一化し、基板への製膜処理の品質を向上させることができる。
【0088】
図19は、減圧容器4に対する変換器3A,3Bのスライド構造の第2の実施例を示す側面図である。ここでは、プロセス室2と前記変換器3A,3Bとの間に面圧力センサ82(密着力検知手段)が設けられている。また、押圧装置81は、上記の面圧力センサ82と、変換器3A,3BをL方向に移動可能に支持するリニアベアリング83と、サーボモータ84と、ボールねじ機構85と図示しない制御手段とを備えて構成されている。
【0089】
押圧装置81の制御手段は、面圧力センサ82からの密着力情報(押圧力による圧力情報)に基づき、プロセス室2が熱膨張しても真空窓15に過剰な負荷が掛からず、かつプロセス室2と真空窓15と変換器3A,3Bとの間に隙間が発生しない密着力となるようにサーボモータ84を制御する。サーボモータ84の回転はボールねじ機構85によってL方向に沿うリニア運動に変換されて変換器3A,3Bに伝えられ、変換器3A,3Bがリニアベアリング83の上をL方向に移動する。このため、変換器3A,3Bがプロセス室2に対して離接させる方向に駆動される。
【0090】
本構成によれば、プロセス室2の熱膨張による寸法変化量に応じて、面圧力センサ82が検知する密着力が変化し、この密着力情報に基づいてサーボモータ84が駆動され、真空窓15に過剰な負荷が掛からず、かつプロセス室2と真空窓15と変換器3A,3Bとの間に隙間が発生しない程度の密着力が付与される。即ち、プロセス室2が膨張した時には変換器3A,3Bがプロセス室2から離れる方向に駆動され、プロセス室2が収縮した時には変換器3A,3Bがプロセス室2に近づく方向に駆動される。このため、プロセス室2および変換器3A,3Bの端部を常に真空窓15に適切に密着させた状態に保ち、電界的に安定した伝送路を確保して高品質な製膜処理を行うことができる。
【0091】
なお、本発明の実施形態は、上述の態様のみに限定されることはなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更や改良を加えることが可能であり、このように変更や改良を加えた実施形態も本発明の権利範囲に含まれるものとする。例えば、図1から図19に示したような構成を、1台の製膜装置に全て適用しても、部分的に適用してもよい。
【符号の説明】
【0092】
1 製膜装置(真空処理装置)
2 プロセス室(放電室)
3A,3B 変換器
4 減圧容器
5A,5B 同軸ケーブル
6A,6B 高周波電源(電源手段)
15 真空窓
15a 支持突起
17 中心固定部
18A,18B,18C スライド支持部
21a,21b リッジ電極
31a,31b リッジ部
41,71 O−リング(シール部材)
51,52 ガイド板(位置決め部材、反射波低減部材)
57 弾性部材
61 スライドユニット(第1のスライドユニット)
62 スライドユニット(第2のスライドユニット)
63 長い連結棒
64 短い連結棒
65 中立プレート
75,81 押圧装置(押圧フランジ部材手段)
82 面圧力センサ(密着力検知手段)
83 リニアベアリング
84 サーボモータ
85 ボールねじ機構
C 面取り
S 隙間
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに平行に対向して配置され、その間で放電が行われる一対の面状のリッジ電極を有したリッジ導波管からなる放電室と、
前記放電室を挟んで両側に配置され、互いに平行に対向して配置された一対の平板状のリッジ部を有したリッジ導波管からなり、高周波電力を前記放電室に伝送し、前記一対のリッジ電極の間で放電を起こさせる一対の変換器と、
高周波電力を前記変換器の前記リッジ部に供給する電源手段と、を有し、
前記放電室は減圧容器の内部に収容され、前記変換器は前記減圧容器の外部に配置され、前記減圧容器に設けられた真空窓を介して前記放電室と前記変換器とが接続された真空処理装置であって、
前記真空窓の両面に、前記放電室の一部と前記変換器の一部を、前記真空窓に対して定位置に位置決めする位置決め部材を設けたことを特徴とする真空処理装置。
【請求項2】
互いに平行に対向して配置され、その間で放電が行われる一対の面状のリッジ電極を有したリッジ導波管からなる放電室と、
前記放電室を挟んで両側に配置され、互いに平行に対向して配置された一対の平板状のリッジ部を有したリッジ導波管からなり、高周波電力を前記放電室に伝送し、前記一対のリッジ電極の間で放電を起こさせる一対の変換器と、
高周波電力を前記変換器の前記リッジ部に供給する電源手段と、を有し、
前記放電室は減圧容器の内部に収容され、前記変換器は前記減圧容器の外部に配置され、前記減圧容器に設けられた真空窓を介して前記放電室と前記変換器とが接続された真空処理装置であって、
前記真空窓の両面に、前記放電室と前記真空窓との間、および前記変換器と前記真空窓との間におけるインピーダンスの変化を緩和させる、導電性のある反射波低減部材を設けたことを特徴とする真空処理装置。
【請求項3】
前記反射波低減部材は、請求項1に記載の位置決め部材を兼ねることを特徴とする請求項2に記載の真空処理装置。
【請求項4】
前記反射波低減部材は、前記真空窓の内面および外面から直角に起立して前記放電室および前記変換器の容器の周面に沿う板状であることを特徴とする請求項2または3に記載の真空処理装置。
【請求項5】
前記反射波低減部材の厚みは先端に向かって漸減していることを特徴とする請求項4に記載の真空処理装置。
【請求項6】
前記反射波低減部材の基端部に、前記真空窓と同じ材質でなり、前記反射波低減部材を下方から支持する支持突起を設け、この支持突起の厚みは先端に向かって漸減していることを特徴とする請求項2から5のいずれかに記載の真空処理装置。
【請求項7】
前記位置決め部材もしくは反射波低減部材と、前記放電室の容器もしくは前記変換器の容器との間に隙間を設け、この隙間に導電性のある弾性部材を介装したことを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の真空処理装置。
【請求項8】
平面視で、前記減圧容器の内部に設置された前記放電室の中心部を熱膨張の起点と定めて前記減圧容器の底面上に中心固定部を介して固定し、平面視で前記中心固定部を取り囲むように、前記減圧容器の底面と前記放電室との間に3点以上のスライド支持部を設け、これらのスライド支持部は、前記減圧容器の底面に対する前記放電室の水平方向への熱膨張を吸収可能であることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の真空処理装置。
【請求項9】
前記スライド支持部は、前記減圧容器の底面に対する前記放電室の第1の方向への延びを吸収する第1のスライドユニットと、前記第1の方向に直交する第2の方向への延びを吸収する第2のスライドユニットとを、水平な中立プレートを介して重ねた構造であることを特徴とする請求項8に記載の真空処理装置。
【請求項10】
前記真空窓は、その周面に設けられたシール部材を介して前記減圧容器に取り付けられており、該真空窓は前記減圧容器に対し前記シール部材により気密を保されながら、前記放電室と前記変換器の連結方向にスライド可能であることを特徴とする請求項9に記載の真空処理装置。
【請求項11】
前記変換器を、前記減圧容器に対し、前記放電室と前記変換器の連結方向にスライド可能に支持し、該変換器を前記放電室側に押圧する押圧手段を有することを特徴とする請求項1から10のいずれかに記載の真空処理装置。
【請求項12】
前記変換器と前記放電室との間に密着力検知手段が設けられ、前記押圧手段は前記密着力検知手段からの密着力情報に基づき、前記放電室が熱膨張しても前記真空窓に負荷が掛からず、かつ前記放電室と前記真空窓と前記変換器との間に隙間が発生しない密着力となるように、前記変換器を前記放電室に対して離接させる方向に駆動することを特徴とする請求項11に記載の真空処理装置。
【請求項13】
前記真空窓は前記減圧容器にシール部材を介して取り付けられるとともに、該真空窓の周囲を、前記シール部材を圧縮する方向に押圧するフランジ部材が設けられ、該フランジ部材には、前記変換器の支持部が一体的に設けられたことを特徴とする請求項1から12のいずれかに記載の真空処理装置。
【請求項1】
互いに平行に対向して配置され、その間で放電が行われる一対の面状のリッジ電極を有したリッジ導波管からなる放電室と、
前記放電室を挟んで両側に配置され、互いに平行に対向して配置された一対の平板状のリッジ部を有したリッジ導波管からなり、高周波電力を前記放電室に伝送し、前記一対のリッジ電極の間で放電を起こさせる一対の変換器と、
高周波電力を前記変換器の前記リッジ部に供給する電源手段と、を有し、
前記放電室は減圧容器の内部に収容され、前記変換器は前記減圧容器の外部に配置され、前記減圧容器に設けられた真空窓を介して前記放電室と前記変換器とが接続された真空処理装置であって、
前記真空窓の両面に、前記放電室の一部と前記変換器の一部を、前記真空窓に対して定位置に位置決めする位置決め部材を設けたことを特徴とする真空処理装置。
【請求項2】
互いに平行に対向して配置され、その間で放電が行われる一対の面状のリッジ電極を有したリッジ導波管からなる放電室と、
前記放電室を挟んで両側に配置され、互いに平行に対向して配置された一対の平板状のリッジ部を有したリッジ導波管からなり、高周波電力を前記放電室に伝送し、前記一対のリッジ電極の間で放電を起こさせる一対の変換器と、
高周波電力を前記変換器の前記リッジ部に供給する電源手段と、を有し、
前記放電室は減圧容器の内部に収容され、前記変換器は前記減圧容器の外部に配置され、前記減圧容器に設けられた真空窓を介して前記放電室と前記変換器とが接続された真空処理装置であって、
前記真空窓の両面に、前記放電室と前記真空窓との間、および前記変換器と前記真空窓との間におけるインピーダンスの変化を緩和させる、導電性のある反射波低減部材を設けたことを特徴とする真空処理装置。
【請求項3】
前記反射波低減部材は、請求項1に記載の位置決め部材を兼ねることを特徴とする請求項2に記載の真空処理装置。
【請求項4】
前記反射波低減部材は、前記真空窓の内面および外面から直角に起立して前記放電室および前記変換器の容器の周面に沿う板状であることを特徴とする請求項2または3に記載の真空処理装置。
【請求項5】
前記反射波低減部材の厚みは先端に向かって漸減していることを特徴とする請求項4に記載の真空処理装置。
【請求項6】
前記反射波低減部材の基端部に、前記真空窓と同じ材質でなり、前記反射波低減部材を下方から支持する支持突起を設け、この支持突起の厚みは先端に向かって漸減していることを特徴とする請求項2から5のいずれかに記載の真空処理装置。
【請求項7】
前記位置決め部材もしくは反射波低減部材と、前記放電室の容器もしくは前記変換器の容器との間に隙間を設け、この隙間に導電性のある弾性部材を介装したことを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の真空処理装置。
【請求項8】
平面視で、前記減圧容器の内部に設置された前記放電室の中心部を熱膨張の起点と定めて前記減圧容器の底面上に中心固定部を介して固定し、平面視で前記中心固定部を取り囲むように、前記減圧容器の底面と前記放電室との間に3点以上のスライド支持部を設け、これらのスライド支持部は、前記減圧容器の底面に対する前記放電室の水平方向への熱膨張を吸収可能であることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の真空処理装置。
【請求項9】
前記スライド支持部は、前記減圧容器の底面に対する前記放電室の第1の方向への延びを吸収する第1のスライドユニットと、前記第1の方向に直交する第2の方向への延びを吸収する第2のスライドユニットとを、水平な中立プレートを介して重ねた構造であることを特徴とする請求項8に記載の真空処理装置。
【請求項10】
前記真空窓は、その周面に設けられたシール部材を介して前記減圧容器に取り付けられており、該真空窓は前記減圧容器に対し前記シール部材により気密を保されながら、前記放電室と前記変換器の連結方向にスライド可能であることを特徴とする請求項9に記載の真空処理装置。
【請求項11】
前記変換器を、前記減圧容器に対し、前記放電室と前記変換器の連結方向にスライド可能に支持し、該変換器を前記放電室側に押圧する押圧手段を有することを特徴とする請求項1から10のいずれかに記載の真空処理装置。
【請求項12】
前記変換器と前記放電室との間に密着力検知手段が設けられ、前記押圧手段は前記密着力検知手段からの密着力情報に基づき、前記放電室が熱膨張しても前記真空窓に負荷が掛からず、かつ前記放電室と前記真空窓と前記変換器との間に隙間が発生しない密着力となるように、前記変換器を前記放電室に対して離接させる方向に駆動することを特徴とする請求項11に記載の真空処理装置。
【請求項13】
前記真空窓は前記減圧容器にシール部材を介して取り付けられるとともに、該真空窓の周囲を、前記シール部材を圧縮する方向に押圧するフランジ部材が設けられ、該フランジ部材には、前記変換器の支持部が一体的に設けられたことを特徴とする請求項1から12のいずれかに記載の真空処理装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2013−98004(P2013−98004A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−239623(P2011−239623)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成22年度 独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 太陽エネルギー技術研究開発 太陽光発電システム次世代高性能技術の開発 次世代多接合薄膜シリコン太陽電池の産学官協力体制による研究開発委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成22年度 独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 太陽エネルギー技術研究開発 太陽光発電システム次世代高性能技術の開発 次世代多接合薄膜シリコン太陽電池の産学官協力体制による研究開発委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】
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