説明

真空蒸着装置および真空蒸着方法

【課題】膜厚分布が良く、膜質が優れた膜を基板に形成することができ、しかも成膜材料の無駄を抑制できる真空蒸着装置および真空蒸着方法を提供する。
【解決手段】本発明の真空蒸着方法は、真空容器内で複数の蒸発源を用いて蒸着により基板の表面に膜を形成するものである。蒸発源は上方に開口部を有し、内部に成膜材料が収納される加熱容器、この底部から所定の高さの位置の温度を測定する温度センサ、加熱容器を加熱する加熱部を備え、成膜材料を蒸発させるものである。基板に膜を形成するに際して、各蒸発源について、所定の温度に達した後からの温度センサにより測定された温度の平均値を求め、温度センサによる温度の測定値が、平均値に所定の温度差値を足した値以上になったとき、温度が達した蒸発源における成膜材料の蒸発を停止させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸着により基板に膜を形成するに真空蒸着装置および真空蒸着方法に関し、特に、膜厚分布が良く、膜質が優れた膜を基板に形成することを、成膜材料の無駄を抑制しつつできる真空蒸着装置および真空蒸着方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、医療用の診断画像の撮影または工業用の非破壊検査などに、被写体を透過した放射線(X線、α線、β線、γ線、電子線、紫外線等)を電気的な信号として取り出すことにより放射線画像を撮影する、放射線画像検出器が利用されている。
この放射線画像検出器としては、放射線を電気的な画像信号として取り出すパネル状の放射線画像検出器(いわゆる「Flat Panel Detector」 以下、FPDという)および放射線像を可視像として取り出すX線イメージ管などがある。
【0003】
また、FPDには、アモルファスセレン(a−Se)などの光導電膜(光電変換膜(層))とTFT(Thin Film Transistor)等を用い、放射線の入射によって光導電膜が発した電子−正孔対(e−hペア)を収集してTFTによって電化信号として読み出す、いわば放射線を直接的に電気信号に変換する直接方式と、放射線の入射によって発光(蛍光)する蛍光体で形成された蛍光体層(シンチレータ層)を有し、この蛍光体層によって放射線を可視光に変換し、この可視光を光電変換素子で読み出す、いわば放射線を可視光として電気信号に変換する間接方式との、2つの方式がある。
【0004】
直接方式のFPDにおいて、アモルファスセレンなどの光導電膜は、例えば、真空蒸着法によって形成される。ここで、FPDの光導電膜は、数百μm以上の膜厚を有するのが通常であり、厚い場合には、1000μm程度の厚さとなる。
また、間接方式のFPDでも、蛍光体層を真空蒸着法で形成することがあり、蛍光体層の厚さは、直接方式のFPDと同程度となる場合もある。
真空蒸着における成膜材料の加熱方法としては、蒸発源の周囲に配置した電熱線などのヒータを用いる方法、蒸発源自身を発熱させる抵抗加熱による方法、および電子線によって成膜材料を加熱(EB加熱)する方法が知られている。
【0005】
上述のように比較的膜厚が厚いものを真空蒸着法で形成する場合、膜厚の均一性が高いもの、および膜質が優れたものを得るために種々の提案がされている(特許文献1、2参照)。
【0006】
特許文献1に開示された真空蒸着方法は、真空チャンバ内を減圧しつつ、成膜材料を収容する抵抗加熱用の蒸発容器に通電して加熱することにより、基板に成膜する真空蒸着を行うに際し、蒸発容器からの成膜材料の蒸発状況を示す値が所定値になるように蒸発容器の加熱条件の制御を所定時間行った後、蒸発容器の加熱を一定加熱条件で行うように切り換えるものである。
この特許文献1における蒸発状況を示す値は、蒸発容器内の成膜材料の温度、蒸発容器の温度、蒸発容器上方における蒸発流の温度、水晶振動子を用いたセンサにより測定される蒸発レート、またはレーザを用いた変位測定器により測定される蒸着膜の膜厚の時間変化量である。
【0007】
特許文献1においては、成膜材料の蒸発量すなわち蒸着レートを高精度に適正に制御して、所定の膜厚を有する適正な膜を安定して形成することができる。このため、特許文献1においては、例えば、蛍光体層を形成する蓄積性蛍光体シートの製造に利用することにより、膜厚が正確な高品質な蛍光体層を形成することができ、膜厚の誤差に起因する画質劣化等の無い、高品質な蓄積性蛍光体シートを安定して製造することができる。
【0008】
また、特許文献2の蛍光体シートの製造方法には、真空蒸着法を用いるものであって、基板上への原料の蒸着により所定の膜厚均一性を有する膜を形成するものである。この特許文献2においては、複数の原料蒸発源を有し、この複数の原料蒸発源のそれぞれに予め必要に応じた量の原料を充填し、蒸発源のそれぞれについて、原料が蒸発し切った時点で、原料蒸発源への加熱エネルギー供給を絶つものである。
特許文献2において、蒸発源において母体構成材料が蒸発し切ったことは、蒸発源の温度が所定の値に到達したことで検知する。
特許文献2においては、蒸発源(容器)の空焚きを防止し、過熱による輻射熱の発生を防止し、基板上に形成される蛍光体層の特性劣化を防止することができ、膜厚均一化と性能劣化の防止を、同時に達成することができる。
【0009】
【特許文献1】特開2006−283086号公報
【特許文献2】特開2006−58214号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述のように、膜厚の均一性が高いもの、および膜質が優れたものを得るためのものがある。しかしながら、特許文献1の真空蒸着方法においては、蒸着の途中で制御方法を切り換えているものの、経時変化を含めた容器特性のばらつきなどを考慮した場合、十分な精度で膜厚の均一性を得ることが難しいという問題点がある。
また、特許文献1では、蒸発状況を示す値に水晶振動子を用いたセンサ(CRTM)により測定される蒸発レートを用いて制御しているものの、水晶振動子を用いたセンサは、比較的膜厚が厚いものに利用すると、そのままでは十分な精度が得られない。このため、水晶振動子を用いたセンサ(CRTM)の到達する成膜材料の蒸気を、スリットなどの狭い開口で一回絞ることがなされる。しかしながら、膜厚が厚い場合には、この開口が詰ることがあり、安定して蒸発レートを測定することができない。
【0011】
特許文献2においては、母体構成材料が蒸発し切った時点で、原料蒸発源への加熱エネルギー供給を絶つものものの、蒸着の終盤、すなわち、母材構成材料が少なくなった状態で発生する突沸は、母材構成材料が蒸発し切る直前で発生することが知られている。このため、母体構成材料が蒸発し切った時点で加熱エネルギー供給を絶っても、突沸抑制の効果が小さい。しかも、引用文献2には、母材構成材料が蒸発し切る直前を検知する手段もない。
このように、特許文献2においては、蒸発終了直前の突沸を抑制の効果が小さいため、突沸によって母材構成材料がしぶきとなって、形成される膜に付着し、成膜中の膜に欠陥を発生させる虞があり、膜質の優れたものが得られない可能性がある。
【0012】
本発明の目的は、前記従来技術に基づく問題点を解消し、膜厚分布が良く、膜質が優れた膜を基板に形成することができ、しかも成膜材料の無駄を抑制できる真空蒸着装置および真空蒸着方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明の第1の態様は、真空容器内で蒸着により基板の表面に膜を形成する真空蒸着装置であって、前記真空容器内を排気する真空排気手段と、前記真空容器内の上部に設けられ、前記基板を保持する基板保持手段と、上方に開口部を有し、内部に前記成膜材料が収納される加熱容器、前記加熱容器の底部から所定の高さの位置の温度を測定する温度センサ、前記加熱容器を所定の温度に加熱する加熱部を備え、前記成膜材料を加熱し、蒸発させる蒸発源と、前記加熱部により前記加熱容器を所定の温度になるように前記温度センサによる測定温度に基づいて前記加熱部を制御する制御部とを有し、前記蒸発源は、前記基板保持手段に対向して前記真空容器内の下部に複数設けられており、前記制御部は、各蒸発源について、前記所定の温度に達した後からの前記温度センサにより測定された温度の平均値を求め、前記温度センサによる温度の測定値が、前記平均値に所定の温度差値を足した値以上になったとき、前記温度が達した蒸発源における成膜材料の蒸発を停止させることを特徴とする真空蒸着装置を提供するものである。
【0014】
本発明において、前記制御部は、さらに、各蒸発源について、前記所定の温度に達した後からの前記温度センサにより測定された温度の標準偏差σを求めるものであり、前記所定の温度差値は、前記標準偏差σを所定倍した値であることが好ましい。
【0015】
本発明の第2の態様は、真空容器内で蒸着により基板の表面に膜を形成する真空蒸着装置であって、前記真空容器内を排気する真空排気手段と、前記真空容器内の上部に設けられ、前記基板を保持する基板保持手段と、上方に開口部を有し、内部に前記成膜材料が収納される加熱容器、前記加熱容器の底部から所定の高さの位置の温度を測定する温度センサ、前記加熱容器を所定の温度に加熱する加熱部を備え、前記成膜材料を加熱し、蒸発させる蒸発源と、前記加熱部により前記加熱容器を所定の温度になるように前記温度センサによる測定温度に基づいて前記加熱部を制御する制御部とを有し、前記蒸発源は、前記基板保持手段に対向して前記真空容器内の下部に複数設けられており、前記制御部は、各蒸発源について、前記所定の温度に達した後からの前記温度センサにより測定された温度の平均値および標準偏差σを求め、前記温度センサによる温度の測定値が、前記平均値に前記標準偏差σを所定倍した値を足した値以上になったとき、前記温度が達した蒸発源における成膜材料の蒸発を停止させることを特徴とする真空蒸着装置を提供するものである。
【0016】
本発明において、前記制御部による前記蒸発源における成膜材料の蒸発の停止は、前記加熱部による加熱を停止させることであることが好ましい。
また、本発明において、さらに、前記各蒸発源は、それぞれ前記開口部の全域を覆う大きさを有し、前記加熱容器の前記開口部の上方に進退自在に設けられたシャッタ板を備え、前記制御部は、各蒸発源について、基板の表面に膜を形成する際には、前記蒸発源の開口部から前記シャッタ板を退避させ、前記所定の温度に達した後、前記温度センサによる温度の測定値が、前記平均値に前記標準偏差σを所定倍した値を足した値以上になったとき、前記温度が達した蒸発源における前記シャッタ板を前記開口部の上方に進入させて前記開口部を覆うことが好ましい。
さらに、本発明において、前記成膜材料は、セレンを主成分とするものであることが好ましい。
さらにまた、本発明において、前記膜が形成された前記基板は、放射線画像検出器に用いられることが好ましい。
【0017】
本発明の第3の態様は、真空容器内で、複数の蒸発源を用いて蒸着により基板の表面に膜を形成する真空蒸着方法であって、前記蒸発源は、上方に開口部を有し、内部に前記膜の成膜材料が収納される加熱容器、前記加熱容器の底部から所定の高さの位置の温度を測定する温度センサ、前記加熱容器を所定の温度に加熱する加熱部を備え、前記成膜材料を加熱し、蒸発させるものであり、前記基板に膜を蒸着により形成するに際して、前記各蒸発源について、前記所定の温度に達した後からの前記温度センサにより測定された温度の平均値を求め、前記温度センサによる温度の測定値が、前記平均値に所定の温度差値を足した値以上になったとき、前記温度が達した蒸発源における成膜材料の蒸発を停止させることを特徴とする真空蒸着方法を提供するものである。
【0018】
本発明においては、前記基板に膜を蒸着により形成するに際して、さらに、前記各蒸発源について、前記所定の温度に達した後からの前記温度センサにより測定された温度の標準偏差σを求めており、前記所定の温度差値は、前記標準偏差σを所定倍した値であることが好ましい。
【0019】
また、本発明の第4の態様は、真空容器内で、複数の蒸発源を用いて蒸着により基板の表面に膜を形成する真空蒸着方法であって、前記蒸発源は、上方に開口部を有し、内部に前記膜の成膜材料が収納される加熱容器、前記加熱容器の底部から所定の高さの位置の温度を測定する温度センサ、前記加熱容器を所定の温度に加熱する加熱部を備え、前記成膜材料を加熱し、蒸発させるものであり、前記基板に膜を蒸着により形成するに際して、前記各蒸発源について、前記所定の温度に達した後からの前記温度センサにより測定された温度の平均値および標準偏差σを求め、前記温度センサによる温度の測定値が、前記平均値に前記標準偏差σを所定倍した値を足した値以上になったとき、前記温度が達した蒸発源における成膜材料の蒸発を停止させることを特徴とする真空蒸着方法を提供するものである。
【0020】
本発明において、前記制御部による前記蒸発源における成膜材料の蒸発の停止は、前記加熱部による加熱を停止させることであることが好ましい。
また、本発明において、さらに、前記蒸発源は、それぞれ前記加熱容器の前記開口部の上方に進退自在に設けられ、前記開口部の全域を覆うシャッタ板を備え、前記基板の表面に膜を形成する際には、前記各蒸発源の開口部から前記シャッタ板を退避させ、各蒸発源において、前記所定の温度に達した後、前記温度センサによる温度の測定値が、前記平均値に前記標準偏差σを所定倍した値を足した値以上になったとき、前記温度が達した蒸発源における前記シャッタ板を前記開口部の上方に進入させて前記開口部を覆うことが好ましい。
【0021】
さらに、本発明において、前記成膜材料は、セレンを主成分とするものであることが好ましい。
さらにまた、本発明において、前記膜が形成された前記基板は、放射線画像検出器に用いられることが好ましい。
【発明の効果】
【0022】
本発明の真空蒸着装置および真空蒸着方法によれば、加熱容器の底部から所定の高さの位置の温度を温度センサで測定しており、蒸着の際に、液面が低下して温度センサを液面が通過するとき、温度が急激に上昇する。これにより、加熱容器内の液面の位置を検出することができる。このことから、設定温度に対する急激な温度上昇を検出することにより、成膜材料の残量を正確に把握した状態で蒸着を終了させることができる。このため、加熱容器の底部が露出することが抑制され、突沸の発生が抑制されることから、成膜欠陥となる要因の発生が抑制される。よって、膜質が優れた膜を形成することができる。
また、蒸着に利用される成膜材料の量が同じであるため、基板に形成される膜についても、常に同量の成膜材料で形成されることになる。このため、均一な膜厚が得られ、膜厚分布が良好な膜を得ることができる。
以上のように、膜厚分布が良く、膜質が優れた膜を基板に形成することができ、しかも突沸を抑制するに必要な量の成膜材料を残しているだけであり、成膜材料を有効に利用して無駄を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下に、添付の図面に示す好適実施形態に基づいて、本発明の真空蒸着装置および真空蒸着方法を詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る真空蒸着装置を示す模式図である。図2は、本発明の実施形態に係る真空蒸着装置における蒸発源の配置位置を示す模式図である。
【0024】
図1に示すように、真空蒸着装置10は、基板Zの表面(被成膜面)Zfに真空蒸着法によって成膜するものである。
この真空蒸着装置10は、真空チャンバ(真空容器)12と、真空排気部(真空排気手段)14と、基板保持手段16と、4つの蒸発源18a〜18d(図2参照)と、制御部20とを有するものである。
制御部20は、真空排気部14および各蒸発源18a〜18dに接続されており、これらを制御するものである。
【0025】
本発明において、使用する基板Zには、特に限定はなく、ガラス板、プラスチック(樹脂)製のフィルムや板、金属板等、製造する製品に応じたものを用いればよい。
また、基板Zに成膜(形成)する膜にも、特に限定はなく、真空蒸着法によって成膜可能なものが全て利用可能である。
【0026】
真空チャンバ12は、鉄、ステンレス、アルミニウム合金等で形成される気密性が高い容器である。この真空チャンバ12は、一般的に真空蒸着装置で利用される公知の真空チャンバ(ベルジャー、真空槽)である。
真空チャンバ12には、真空排気部14が配管14aを介して接続されている。
【0027】
真空排気部14は、特に限定はなく、必要な到達真空度を達成できるものであれば、真空蒸着装置で利用されている各種のものが利用可能である。例えば、油拡散ポンプ、クライオポンプ、またはターボモレキュラポンプ等を利用すればよい。また、補助として、クライオコイル等を併用してもよい。なお、本実施形態の真空蒸着装置10においては、真空チャンバ12内の到達真空度は、3×10−3Pa以下であることが好ましい。
また、真空チャンバ12には、真空度調整用のアルゴンガスの導入などを行うための、ガス導入手段が設けられてもよい。ガス導入手段は、ボンベ等との接続手段またはガス流量の調整手段等を有するか、またはこれらに接続されるものである。ガス導入手段は、真空蒸着装置で用いられる公知のものが用いられる。
【0028】
基板保持手段16は、基板Zを保持するものである。この基板保持手段16は、支持部22と、基板装着部24と、基板ホルダ26とを有する。支持部22が真空チャンバ12の上壁12bに固定されており、基板装着部24は、支持部22を介して真空チャンバ12の内部12aの上部に設けられている。
【0029】
基板装着部24は、その表面24aに基板Zが載置され、基板ホルダ26により基板Zが保持されるものである。
基板ホルダ26は、基板Zにおける成膜領域、例えば、表面Zfを各蒸発源18a〜18dに向けて開放した状態で、基板Zを保持するものである。基板ホルダ26としては、基板Zの周縁を保持する枠体、成膜領域に対応する部分が開放する基板Zを収容する筐体等、および真空蒸着装置等の真空成膜装置で利用されている各種の基板ホルダが全て利用可能である。また、基板ホルダ26が、基板Zの成膜面における成膜領域を規制するマスクを兼ねてもよいし、また、基板Zの成膜面における成膜領域を規制するマスクを別途設けてもよい。
基板ホルダ26は、嵌合部材または係合部材を用いる方法等、公知の手段で、基板装着部24の所定の位置に、基板Zを着脱可能にする。
【0030】
本実施形態の真空蒸着装置10において、基板装着部24には、基板ホルダ26により取り付けた基板Zを加熱するための加熱手段、および加熱手段による熱をムラなく均一に基板Zに伝えるための熱伝導性シート等が設けられていてもよい。
さらに、基板ホルダ26の内面にも、基板Zの裏面(成膜面の逆面)に密着して、基板装着部24が有する加熱手段による熱をムラなく均一に基板Zに伝えるための熱伝導性シート等が設けられていてもよい。
【0031】
なお、本実施形態の真空蒸着装置10は、基板Zを固定した状態で成膜を行うものに限定されるものではなく、基板Zを回転しつつ成膜を行うもの、または基板Zを直線状に往復搬送しつつ成膜を行するものであってもよい。
【0032】
各蒸発源18a〜18dは、膜となる成膜材料Mを加熱し、蒸発させるものであり、基板保持手段16に対向して真空チャンバ12内の下壁12cに設置されている。このように、各蒸発源18a〜18dは、真空チャンバ12の下部に設けられている。
図2に示すように、4つの各蒸発源18a〜18dは、それぞれ中心Csを、基板Zの角Zeに一致させて配置されている。
【0033】
各蒸発源18a〜18dは、全て同じ構成であり、このため、図3を参照して、各蒸発源18a〜18dを蒸発源18として、蒸発源18について詳細に説明する。
図3は、本発明の実施形態に係る真空蒸着装置における蒸発源を示す模式図である。
蒸発源18は、加熱容器30と、ヒータ32a、32bと、温度調節部34と、温度センサ36a、36bと、シャッタ部40とを有する。
【0034】
加熱容器30は、上面が開放する中空の容器であり、例えば、矩形状の筐体を有するものである。
加熱容器30は、内部30aに成膜材料Mが、例えば、ペレットの形態で充填される。
本実施形態において、成膜材料Mとしては、例えば、Se、またはSeを主成分とするものが用いられる。このSeを主成分とするものとしては、例えば、NaドープSeである。このNaの量は、Seに対して0.2〜300モルppmである。
本実施形態においては、上記Se、またはSeを主成分とするもの以外にも、金属または合金をペレットの形態で加熱容器30の内部30aに充填し、溶融させて成膜することもできる。さらには、複数種類の金属または合金を、それぞれ単体で加熱容器30の内部30aにペレットの形態で充填し、溶融させて成膜することもできる。
【0035】
加熱容器30は、電熱線等の外部からの加熱手段を用いる真空蒸着用のルツボと同様に、成膜材料Mと反応せず、かつ十分な耐熱性を有し、かつ熱伝導性の良好な材料で形成すればよく、例えば、各種の金属もしくは合金または各種のセラミックスで形成される。なお、加熱容器30は、成膜材料Mの融点などに応じて適宜材質が選択されるものであり、例えば、融点が220℃のセレンでは、SUS304などのステンレス鋼を用いることができる。
【0036】
また、加熱容器30の形状に、特に限定はなく、各種の形状の容器が利用可能である。
加熱容器30は、円筒状、四角筒状などの角筒状のように、筒の上下方向と直交する方向の断面の変動が無い形状であることが好ましい。加熱容器30を、このような筒状とすることにより、充填する成膜材料が蒸発して液面(蒸発面)が下降しても、蒸発面の面積が変化しないので、成膜材料の蒸発量すなわち成膜レートの安定化、および成膜材料蒸気の指向性の安定化等の点で好ましい。
【0037】
ヒータ32a、32bは、加熱容器30を所定の温度に加熱し、加熱容器30の内部30aの成膜材料Mを溶融させるものである。加熱容器30の壁面30bの周囲を囲むようにしてヒータ32a、32bが設けられている。
【0038】
本実施形態においては、例えば、加熱容器30の高さ方向に領域を上部31aおよび下部31bに2分割し、上部31aにヒータ32aが設けられ、下部31bに32bが設けられている。各ヒータ32a、32bは、温度調節部34に接続されている。
【0039】
なお、各ヒータ32a、32bは、その構成は、特に限定されるものではない。電熱線、導体などの抵抗体ヒータ、シースヒータなど各種のものが利用可能であり、成膜材料Mの融点などに応じて適宜選択されるものである。
【0040】
温度調節部34は、加熱容器30を加熱する温度、すなわち、設定温度に応じて、各ヒータ32a、32bに印加する電圧、電流または電力などを調節するものである。この温度調節部34は、制御部20に接続されている。
【0041】
各温度センサ36a、36bは、制御部20に接続されており、各温度センサ36a、36bは、例えば、熱電対である。
ここで、制御部20により、設定温度と、温度センサ36a、36bによる測定温度とに応じて、例えば、フィードバック制御により加熱容器30内の温度を設定温度となるように、各ヒータ32a、32bに供給する電圧、電流または電力が制御される。
【0042】
温度センサ36aは、加熱容器30の上部31aの温度を測定するものであり、例えば、加熱容器30の内部30aにおいて開口部d近傍の内壁面に取り付けられている。
温度センサ36bは、加熱容器30の底部30cの僅か上方の位置の温度を測定するものである。
【0043】
温度センサ36bは、例えば、図4(a)および(b)に示す保持部材50を用いて、加熱容器30の底部30cの僅か上方の位置に保持される。
保持部材50は、例えば、略立方体形状を呈するものであり、その底面50aが加熱容器30の底部30cに設置される。保持部材50の側面50bに貫通孔52aが形成されており、この貫通孔52aと連通する雌ネジ部52bが上面50cから形成されている。貫通孔52aと雌ネジ部52bとの連通部に開口52cが形成される。
【0044】
保持部材50においては、貫通孔52aに熱電対(温度センサ36b)が挿入され、この熱電対(温度センサ36b)は、雌ネジ部52bに螺合されたネジ54により、保持部材50の底面50a側に押し付けられて固定される。このようにして、保持部材50を用いて熱電対(温度センサ36b)は、加熱容器30の所定の高さmの位置に固定される。
この熱電対(温度センサ36b)の加熱容器30の底部30cからの高さmは、保持部材50の貫通孔52aが形成される位置により決定されるものである。この高さmは、例えば、1〜5mmである。
【0045】
温度センサ36bを加熱容器30の底部30cの僅か上方の位置に保持する保持部材50は、図4(a)および(b)に示されるものに限定されるものではない。
例えば、図5に示すように、例えば、単なる立方体の保持部材56を用いてもよい。この場合、保持部材56の底面56aを加熱容器30の底部30cに設置し、上面56bに熱電対(温度センサ36b)を溶接などにより固定する。このようにして、熱電対(温度センサ36b)を加熱容器30の底部30cから所定の高さmの位置に保持してもよい。
【0046】
図3に示すように、本実施形態の真空蒸着装置10においては、加熱容器30の開口部30dからの成膜材料Mの蒸気を遮るシャッタ部40(シャッタ板42)が設けられている。
シャッタ部40は、シャッタ板42と、回転支持軸44と、モータ46とを有する。
シャッタ板42は、加熱容器30の開口部30dを通過する成膜材料Mの蒸気を遮る板状部材であり、開口部30dの全域を覆う大きさを有する。
回転支持軸44は、シャッタ板42を加熱容器30の開口部30dの上方に保持するとともに、シャッタ板42を水平面において回転可能に回転支持するものであり、軸方向を真空チャンバ12の下壁12cに対して垂直にして配置されている。
【0047】
モータ46は、回転支持軸44を回転させるものであり、このモータ46により、シャッタ板42が回転されて、加熱容器30の開口部30dの上方に進入または退避され、加熱容器30の開口部30dの上方に配置されると開口部30dの全域を覆って加熱容器30の開口部30dからの成膜材料Mの蒸気を遮ることができる。このようにして、シャッタ板42は、加熱容器30の開口部30dの上方に進退自在に設けられる。
モータ46は、制御部20に接続されており、このシャッタ板42による成膜材料Mの蒸気の遮断、すなわち、シャッタ板42の移動は、制御部20により制御される。
モータ46以外にも、回転支持軸44を回転させることができれば、各種の駆動源を用いることができる。
【0048】
本実施形態の真空蒸着装置10は、4つの蒸発源18a〜18d(加熱容器30)を有するものであるが、本発明は、この数は、4に限定はされるものではない。さらには、各蒸発源18は、1箇所に集中して配置してもよく、分散して配置してもよい。また、各蒸発源18に異なる成膜材料を充填する、多元の真空蒸着を行ってもよい。
本発明において、加熱容器30の数は、1回の成膜で使用する成膜材料の量、基板Zの大きさ、要求される成膜材料溶融の均一性または溶融速度、使用する電源等に応じて、適宜、設定すればよい。
【0049】
また、加熱容器30の開口部30dには、成膜時に発生する成膜材料Mの蒸気を通過させるとともに、外部から加熱容器30の内部30aに異物が進入することを防ぐフィルタ部材を設けてもよい。
なお、本発明の蒸発源18において、成膜材料Mの加熱手段は、ヒータ32a、32bを利用するものに限定はされるものではなく、カーボンなどの誘導加熱体からなる加熱容器と誘導加熱用コイルと高周波電源等を用いる誘導加熱を利用するものでもよい。
また、加熱容器30として、通電によって自身が発熱する抵抗加熱体を用いる、いわゆる抵抗加熱によるものであってもよい。
【0050】
本願発明者は、成膜材料MにSeを用いて、蒸発源18の加熱容器30の上部31aの設定温度を270℃、下部31bの設定温度を265℃として、温度センサ36a、36bにより温度をモニタしてフィードバック制御した。この場合、成膜材料Mが加熱容器30内にある場合には、図6に示す加熱容器30の上部31aの温度測定値を示す曲線60、および下部31bの温度測定値を示す曲線62に表わされるように、いずれも、設定温度に対するずれを1℃未満と小さく、安定して制御することができる。
【0051】
しかしながら、溶融した成膜材料Mの液面が蒸発とともに下がり、液面が下部31bに設けられた温度センサ36bに到達すると、図7に示す下部31bの温度測定値を示す曲線62の領域αのように温度が急激に上昇し、液面が温度センサ36bを通過すると、また設定温度の値に戻ることを見出した。
加熱の際に、加熱容器30内を温度センサで計測すると、容器内の空間的、時間的な温度変動の影響を受ける。この影響による温度変動は、一般に5〜10℃程度ある。このため、単に温度を測定しただけでは液面の検出は難しい。そこで、温度変化の立ち上がりに注目し、この立ち上がりに基づいて、液面を検出できることを見出し、本発明は、この知見を利用した。
【0052】
本発明においては、後述するように、各蒸発源18a〜18dについて、例えば、フィードバック制御をかけながら、この温度上昇を検出することにより、成膜材料Mの残量を正確に把握した状態で、蒸着を終了させることができる。これにより、加熱容器30の底部30cが露出することが抑制されるため、突沸の発生が抑制され、成膜欠陥となる要因の発生が抑制される。このため、膜質の高い膜を形成することができる。
なお、各蒸発源18a〜18dにおいて、それぞれ機差などにより、検出される温度上昇のタイミングが異なっても、成膜材料Mの残量は、同じであるため、基板に形成される膜についても、常に同量の成膜材料Mで形成されることになる。このため、温度上昇の検出タイミングが、各蒸発源18a〜18dで異なり、蒸発を停止するタイミングが異なっていても、均一な膜厚を得ることができ、膜厚分布の良い膜を形成することができる。
【0053】
例えば、本実施形態においては、各蒸発源18a〜18dについて、成膜時の設定温度に達した後、この設定温度となるように制御している状態において、設定温度に達した後からの温度センサ36bにより測定された温度の平均値Cおよび標準偏差σを求める。
そして、平均値Cに対して、標準偏差σの所定倍以上に、温度センサ36bによる温度の測定値が上昇したとき、各蒸発源18a〜18dのうち、上述のように温度センサ36bによる温度が達した蒸発源からの成膜材料Mの蒸発を制御部20により停止させる。
すなわち、温度センサ36bの温度の値Tmとするとき、Tm≧C(平均値)+n(所定倍の数値)×σ(標準偏差)のとき、各蒸発源18a〜18dのうち、上述のように、温度が所定の値に達した蒸発源からの成膜材料Mの蒸発を制御部20により停止させる。
なお、標準偏差σの所定倍以上とは、例えば、3倍以上(3σ以上)であり、好ましくは、5倍以上(5σ以上)であり、いずれも上限値は10倍(10σ)である。
また、標準偏差σに変えて、温度計測値の変動値の平均値を用いてもよい。
さらには、標準偏差σの所定倍の値に変えて、予め温度差値を設定しておき、温度センサ36bにより測定された温度の測定値が、平均値Cと、この温度差値とを足した値以上であるとき、蒸発源からの成膜材料Mの蒸発を制御部20により停止させてもよい。
【0054】
本実施形態においては、蒸発源からの成膜材料Mの蒸発を制御部20により停止させるに際して、成膜する毎に、各蒸発源18a〜18dについて、成膜時の設定温度に達した後、この設定温度となるように制御している状態において、設定温度に達した後からの温度センサ36bにより測定された温度の平均値Cおよび標準偏差σを、実時間で求め、平均値Cに対して、標準偏差σの所定倍以上に、温度センサ36bによる温度の測定値が上昇したとき、各蒸発源18a〜18dのうち、上述のように温度センサ36bによる温度が達した蒸発源からの成膜材料Mの蒸発を制御部20により停止させることにより、より高い精度で膜質の高い膜を形成することができるため、好ましい。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。
【0055】
例えば、蒸発源からの成膜材料Mの蒸発を制御部20により停止させるに際して、真空蒸着装置10により、その日の最初に成膜するとき、各蒸発源18a〜18dについて、成膜時の設定温度に達した後、この設定温度となるように制御している状態において、設定温度に達した後からの温度センサ36bにより測定された温度の平均値Cおよび標準偏差σを求める。次回以降の成膜については、その日の最初の成膜で求めた各蒸発源18a〜18dの平均値Cおよび標準偏差σを用いてもよい。
さらには、蒸発源からの成膜材料Mの蒸発を制御部20により停止させるに際して、各蒸発源18a〜18dについて、その日の最初の成膜時に平均値Cおよび標準偏差σを求める。次回以降の成膜については、その日の最初の成膜で求めた各蒸発源18a〜18dのうちの1つの蒸発源における平均値Cおよび標準偏差σを用いてもよい。
【0056】
本実施形態においては、蒸発源からの成膜材料Mの蒸発を制御部20により停止させるに際して、平均値Cを設定温度とし、標準偏差σについては、各蒸発源18a〜18d毎に予め求めて設定された標準偏差、または各蒸発源18a〜18dのうちの1つについて予め求めて設定された標準偏差を用いてもよい。
この場合、温度センサ36bにより測定された温度の測定値が、設定温度の値と、この設定された標準偏差の所定の倍の値とを足した値以上であるとき、蒸発源からの成膜材料Mの蒸発を制御部20により停止させる。
さらには、蒸発源からの成膜材料Mの蒸発を制御部20により停止させるに際して、平均値Cを設定温度とし、予め温度差値を設定しておき、温度センサ36bにより測定された温度の測定値が、設定温度の値と、この設定された標準偏差の所定の倍の値とを足した値以上であるとき、蒸発源からの成膜材料Mの蒸発を制御部20により停止させてもよい。
【0057】
本実施形態の制御部20においては、成膜時において、下部31bの温度センサ36bの測定温度の値が、標準偏差σの所定倍以上になったとき、制御部20は、温度調節部34からのヒータ32a、32bへの電流、電圧または電力の供給を停止させ、蒸発源18からの成膜材料Mの蒸発を停止させる。
これ以外にも、制御部20は、さらに、上述のように温度センサ36bの測定温度の値が、標準偏差σの所定倍以上になったとき、モータ46を駆動させてシャッタ板42を回転させ、加熱容器30の開口部30dを塞ぎ、成膜材料Mの蒸気をシャッタ板42により遮断してもよい。
【0058】
なお、制御部20においては、上述のように成膜時に、下部31bの温度センサ36bの測定温度の値が、標準偏差σの所定倍以上になったときにするシャッタ板42による成膜材料Mの蒸気の遮断は、温度調節部34からのヒータ32a、32bへの電流、電圧または電力の供給の停止とともにしてもよい。
さらに、制御部20においては、各蒸発源18a〜18dにおいて、温度上昇を検知した後、すなわち、成膜材料Mの残量を所定値以下になったことを検知した後、所定時間経過後に、蒸着を停止するようにしてもよい。これにより、より成膜材料を成膜に有効利用することができる。
【0059】
次に、本実施形態の真空蒸着装置10による真空蒸着方法について説明する。
本実施形態の真空蒸着方法においては、例えば、成膜材料MにNaドープSeを用い、各蒸発源18a〜18dの上部31の設定温度を270℃、下部31bの設定温度を265℃とする。蒸着を停止する目安となる上記所定倍は、例えば、3倍(3σ)である。
【0060】
本実施形態の真空蒸着装置10によって、基板Zの表面Zfに膜を形成する際には、先ず、真空チャンバ12を開放して、蒸発源18の加熱容器30に所定量の成膜材料M、例えば、NaドープSeを充填する。なお、Naの量は、例えば、Seに対して0.2〜300モルppmである。
そして、基板Zを基板ホルダ26により基板装着部24の所定の位置に基板Zを固定し、真空チャンバ12を閉塞する。
その後、真空排気部14を駆動して真空チャンバ12の減圧を開始する。真空チャンバ12内が所定の真空度となった時点で、各蒸発源18a〜18dの各ヒータ32a、32bに各温度調節部34により電流、電圧または電力を供給して成膜材料Mの加熱を開始する。
【0061】
各蒸発源18a〜18dの各加熱容器30(成膜材料M)の温度は、上部31aおよび下部31bともに、フィードバック制御により、上記設定温度となるように各ヒータ36a、36bにより加熱されている。
各蒸発源18a〜18dの各加熱容器30において、上部31aおよび下部31bにおける上記設定温度になった時点で、各モータ46により各回転支持軸44を回転させて各シャッタ板42を回転させて、各蒸発源18a〜18dの各加熱容器30の開口部30dの上方を開放する。これにより、各蒸発源18a〜18dからの成膜材料Mの蒸気が基板装着部24に取り付けられた基板Zに到達し、基板Zヘの表面Zfへの成膜が開始される。
【0062】
このとき、温度センサ36a、36bにより測定された温度の値は、逐次制御部20に出力されて蓄積されている。そして、制御部20においては、下部31bの温度センサ36bによる測定温度の値が設定温度を達した時点から、温度センサ36bの測定値の平均値Cを求めるとともに、標準偏差σを算出する。
成膜が進むにつれて、各蒸発源18a〜18dの加熱容器30において成膜材料Mが減り、液面の高さが順次低くなる。
【0063】
加熱時間が経過するにつれて、下部31bにおける温度センサ32bにおける温度が、例えば、図8に示す蒸発源18aにおける下部31bの温度を表す曲線62a(実線)のように急激に上昇する。このとき、温度センサ36bによる測定温度の値が、蒸発源18aにおける平均値Cに対して標準偏差σの3倍以上に達していれば、液面が温度センサ36bの位置にあることになり、制御部20は、例えば、温度調節部34からのヒータ32a、32bへの電流、電圧または電力の供給を停止させて、蒸発源18aからの成膜材料Mの蒸発を停止させる。このようにして、温度センサ36bによる測定温度の値が、標準偏差σの3倍以上に達した蒸発源18aによる成膜を停止する。
他の蒸発源18b〜18dについても、図8に示す蒸発源18bにおける下部31bの温度を表わす曲線62b(一点鎖線)、蒸発源18cにおける下部31bの温度を表わす曲線62c(破線)、および蒸発源18dにおける下部31bの温度を表わす曲線62d(二点鎖線)に基づいて、適宜温度センサ36bによる測定温度の値が、各蒸発源18b〜18dおける平均値Cに対して、例えば、標準偏差σの3倍以上に達した蒸発源18b〜18dによる成膜を、上述のようにして停止させる。
【0064】
以上のようにして、基板Zの表面Zfに所定の膜厚のアモルファスセレン膜を形成する。その後、真空チャンバ12を大気開放し、成膜を終了した基板Zの基板ホルダ26による固定を解除し、基板装着部24から基板Zを取り外し、次の工程に供給する。
【0065】
また、真空蒸着方法において、成膜時に突沸が発生すると、成膜した膜の品質劣化、成膜材料の利用効率の低下、または装置内部の汚染が生じることがある。このため、本実施形態においては、加熱容器30の上部31aの設定温度を下部31bの設定温度よりも高くして、突沸を抑制している。これは、以下のような理由によるものである。
突沸の原因は、溶融した成膜材料Mの中(中心部または下部)において優先的に蒸発が生じて気泡が発生し、それが溶融液内または溶融液表面で弾けることによる場合が多い。
このことから、加熱容器30の上部の温度が下部(底部)の温度よりも高温になるような加熱条件とすることにより、溶融液面における蒸発が、溶融液内部における蒸発よりも優先する状態を好適に生成できる。このため、加熱容器30の上部31aの温度を下部31b(底部)の温度よりも高くすることにより突沸を防止できる。
【0066】
本実施形態の真空蒸着装置10およびこの装置を用いた真空蒸着方法においては、各蒸発源18a〜18dについて、加熱容器30の底部30cの僅か上方の温度を測定しつつ、例えば、フィードバック制御をかけながら、設定温度に対する急激な温度上昇を検出することにより、成膜材料Mの残量を正確に把握した状態で、蒸着を終了させることができる。これにより、加熱容器30の底部30cが露出することが抑制されるため、突沸の発生が抑制され、成膜欠陥となる要因の発生が抑制される。このため、膜質が優れた膜を形成することができる。
【0067】
なお、各蒸発源18a〜18dにおいて、それぞれ機差などにより、検出される温度上昇のタイミングが異なっても、成膜材料Mの残量は、同じであるため、基板に形成される膜についても、常に同量の成膜材料Mで形成されることになる。このため、均一な膜厚を得ることができる。
以上のように、本実施形態の真空蒸着装置10およびこの装置を用いた真空蒸着方法においては、膜厚分布が良く、膜質が優れた膜を基板に形成することができ、しかも突沸を抑制するに必要な量の成膜材料を残しているだけであり、成膜材料を有効に利用して無駄を抑制することができる。
【0068】
本実施形態の真空蒸着装置10は、厚膜の成膜に好適であり、100〜1100μm程度の膜厚が必要な、アモルファスセレンによる光導電層(光電変換膜)など、直接方式の放射線画像検出器(フラットパネル検出器(FPD(Flat Panel Detector))の光導電層の形成(成膜)に用いることができる。
ここで、FPDにおいては、アモルファスセレン等の光導電膜とTFT(Thin Film Transistor)等を用い、放射線の入射によって光導電膜が発した電子−正孔対(e−hペア)を収集して、TFTのスイッチングを行った個所から電流として感知することで放射線画像を得ている。このことから、本実施形態の真空蒸着装置10をFPDの製造に利用する場合には、電気読取方式のFPDの製造工程における、光導電膜の形成に利用することができる。
【0069】
また、上記以外にも、記録用光導電層および読取用光導電層と、両導電層の間に形成されるAs2Se3等から形成される電荷蓄積層とを有し、放射線の照射によって潜像電荷を蓄積し、読取光の照射によって潜像電荷を流して電流として感知することで放射線画像を得る光読取方式のFPDの製造に本実施形態の真空蒸着装置10を利用することができる。
この場合、光読取方式のFPDの製造において、記録用光導電層および/または読取用光導電層の形成にも、好適に利用可能である。記録用光導電層は、電磁波を吸収して電荷を発生する光導電性物質で形成されるものである。読取用光導電層は、電磁波、特に可視光を吸収して電荷を発生する光導電性物質で形成されるものである。記録用光導電層および読取用光導電層は、いずれもアモルファスセレンやアモルファスセレン化合物等で形成される。
上述の電気読取方式のFPDの製造工程または光読取方式のFPDの製造工程においては、光導電膜を形成するもの(光導電膜が形成される基材)が基板Zとなる。
【0070】
以上、本発明の真空蒸着装置および真空蒸着方法について詳細に説明したが、本発明は、上記実施形態に限定はされず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良および変更を行ってもよいのは、もちろんである。
【実施例】
【0071】
以下、本発明の具体的実施例を挙げ、本発明について、より詳細に説明する。
【0072】
[実施例1]
図1に示す真空蒸着装置10を用いて、400mm×400mmの基板Zの表面Zfに、設定厚さが200μmのアモルファスセレン膜を形成した。なお、基板Zには、TFTガラス基板を用いた。
【0073】
形成されたアモルファスセレン膜について、デジタルマイクロスコープを用いて、欠陥サイズが100μm以上の欠陥の個数を測定し、欠陥数を求めた。
【0074】
形成されたアモルファスセレン膜に対して、80mmピッチで合計25点について、渦電流式変位計を用いて膜厚を測定し、膜厚の最大値と最小値を求めた。
さらに、成膜終了後の各蒸発源18a〜18dにおける各加熱容器30内の成膜材料Mの残量を測定した。
【0075】
真空蒸着装置10において、蒸発源18の加熱容器30には、1辺が116mmの正方形の開口部30dを有するステンレス製の容器を用いた。
基板Zは、加熱容器30の開口部30dから400mm上方の位置に配置した。
各蒸発源18a〜18dは、図2に示すように、それぞれ各中心Csを基板Zの角Zeに一致させて配置した。蒸発源18aの中心Csと蒸発源18bの中心Csの距離L、蒸発源18bの中心Csと蒸発源18cの中心Csの距離L、蒸発源18cの中心Csと蒸発源18dの中心Csの距離L、蒸発源18aの中心Csと蒸発源18dの中心Csの距離Lは、いずれも400mmである。
【0076】
成膜材料MにはNaドープSeを用いた。これらのNaドープSeの質量は600gである。なお、Naの量は、セレンに対して10モルppmとした。
【0077】
成膜条件は、真空チャンバ12内を8×10−4Paとした。また、各蒸発源18a〜18dにおいて、加熱容器30内の下部31b(温度センサ36bの位置)の温度を265℃に設定し、加熱容器30内の上部31a(温度センサ36aの位置)の温度を270℃に設定した。なお、温度センサ36a、36bには、T型熱電対を用いた。
【0078】
成膜に際しては、加熱開始後、120分経過した後、各蒸発源18a〜18dのシャッタ板42を回転させて、加熱容器30の開口部30dを開口させて、基板Zへの蒸着を開始する。
蒸着開始から、各温度センサ36a、36bにより温度測定しつつ、各設定温度になるようにフィードバック制御により各ヒータ32a、32bを制御した。
加熱開始から下部31bの温度センサ36bの測定温度が設定温度に達した後、測定温度の平均値C(図7参照)および標準偏差σを求めた。各蒸発源18a〜18dについて、この平均値Cに対して、加熱容器30の下部31bの温度センサ36bによる測定温度が、標準偏差σの5倍(5σ)以上になったとき、なったものから順に各蒸発源18a〜18dについて、シャッタ板42を回転させて、加熱容器30の開口部30dからのNaドープSeの蒸気を遮断するとともに、制御部20により各温度調節部34のヒータ32a、32bに対する電流、電圧または電力の供給を停止した。
【0079】
[比較例1]
比較例1は、上記実施例1に比して、成膜の際、成膜材料M(NaドープSe)を全て蒸着した点が異なるだけで、それ以外については、上記実施例1と全く同様にして基板Zにアモルファスセレン膜を形成した。
【0080】
[比較例2]
比較例2は、上記実施例1に比して、成膜の際、各蒸発源18a〜18dのシャッタ板42を回転させて、加熱容器30の開口部30dを開口させて、基板Zへの蒸着を開始した後、450分経過後に各蒸発源18a〜18dについて、シャッタ板42を回転させて、加熱容器30の開口部30dからのNaドープSeの蒸気を遮断するとともに、制御部20により各温度調節部34のヒータ32a、32bに対する電流、電圧または電力の供給を停止した点が異なるだけで、それ以外については、上記実施例1と全く同様にして基板Zにアモルファスセレン膜を形成した。
【0081】
上記実施例1、比較例1および比較例2の膜厚分布、欠陥数および蒸着後の成膜材料(NaドープSe)の残量の結果を下記表1に示す。
なお、下記表1に示す「膜厚分布」は、最小値と最大値を示している。
また、下記表1に示す「蒸着後の成膜材料の残量」は、1個の蒸発源当りの量を示すものであって、各蒸発源の残量が下記表1に示される範囲にあることを表わしている。
【0082】
【表1】

【0083】
上記表1に示すように、実施例1は、膜厚分布、および欠陥数がいずれも優れていた。また、蒸着後の成膜材料の残量も、比較例2に比して少なく、膜厚分布に優れ、欠陥数が少なく膜質が優れた膜を、成膜材料を有効利用して形成することができた。
一方、比較例1は、蒸着後の成膜材料を全て利用しているものの、突沸による欠陥数が多く、膜質が悪いものであった。
比較例2は、膜質は優れているものの、膜厚分布が劣っており、良好な膜を形成することができなかった。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明の実施形態に係る真空蒸着装置を示す模式図である。
【図2】本発明の実施形態に係る真空蒸着装置における蒸発源の配置位置を示す模式図である。
【図3】本発明の実施形態に係る真空蒸着装置における蒸発源を示す模式図である。
【図4】(a)は、本実施形態の真空蒸着装置の蒸発源の加熱容器の下部の温度センサを保持する保持部材を示す模式的斜視図であり、(b)は、図4(a)の模式的断面図である。
【図5】本実施形態の真空蒸着装置の蒸発源の加熱容器の下部の温度センサを保持する保持部材の他の例を示す模式的斜視図である。
【図6】縦軸に温度をとり、横軸に加熱時間をとって、真空蒸着装置の蒸発源の加熱容器の上部および下部の温度制御状態を示すグラフである。
【図7】縦軸に温度をとり、横軸に時間をとって、真空蒸着装置の蒸発源の加熱容器の下部の温度変化を示すグラフである。
【図8】縦軸に温度をとり、横軸に加熱時間をとって、真空蒸着装置の各蒸発源の加熱容器の上部および下部の温度制御状態を示すグラフである。
【符号の説明】
【0085】
10 真空蒸着装置
12 真空チャンバ
14 真空排気部
16 基板保持手段
18 蒸発源
20 制御部
30 加熱容器
32a、32b ヒータ
34 温度調節部
36a、36b 温度センサ
40 シャッタ部
42 シャッタ板
50、56 保持部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空容器内で蒸着により基板の表面に膜を形成する真空蒸着装置であって、
前記真空容器内を排気する真空排気手段と、
前記真空容器内の上部に設けられ、前記基板を保持する基板保持手段と、
上方に開口部を有し、内部に前記成膜材料が収納される加熱容器、前記加熱容器の底部から所定の高さの位置の温度を測定する温度センサ、前記加熱容器を所定の温度に加熱する加熱部を備え、前記成膜材料を加熱し、蒸発させる蒸発源と、
前記加熱部により前記加熱容器を所定の温度になるように前記温度センサによる測定温度に基づいて前記加熱部を制御する制御部とを有し、
前記蒸発源は、前記基板保持手段に対向して前記真空容器内の下部に複数設けられており、
前記制御部は、各蒸発源について、前記所定の温度に達した後からの前記温度センサにより測定された温度の平均値を求め、前記温度センサによる温度の測定値が、前記平均値に所定の温度差値を足した値以上になったとき、前記温度が達した蒸発源における成膜材料の蒸発を停止させることを特徴とする真空蒸着装置。
【請求項2】
前記制御部は、さらに、各蒸発源について、前記所定の温度に達した後からの前記温度センサにより測定された温度の標準偏差σを求めるものであり、
前記所定の温度差値は、前記標準偏差σを所定倍した値である請求項1に記載の真空蒸着装置。
【請求項3】
真空容器内で蒸着により基板の表面に膜を形成する真空蒸着装置であって、
前記真空容器内を排気する真空排気手段と、
前記真空容器内の上部に設けられ、前記基板を保持する基板保持手段と、
上方に開口部を有し、内部に前記成膜材料が収納される加熱容器、前記加熱容器の底部から所定の高さの位置の温度を測定する温度センサ、前記加熱容器を所定の温度に加熱する加熱部を備え、前記成膜材料を加熱し、蒸発させる蒸発源と、
前記加熱部により前記加熱容器を所定の温度になるように前記温度センサによる測定温度に基づいて前記加熱部を制御する制御部とを有し、
前記蒸発源は、前記基板保持手段に対向して前記真空容器内の下部に複数設けられており、
前記制御部は、各蒸発源について、前記所定の温度に達した後からの前記温度センサにより測定された温度の平均値および標準偏差σを求め、前記温度センサによる温度の測定値が、前記平均値に前記標準偏差σを所定倍した値を足した値以上になったとき、前記温度が達した蒸発源における成膜材料の蒸発を停止させることを特徴とする真空蒸着装置。
【請求項4】
前記制御部による前記蒸発源における成膜材料の蒸発の停止は、前記加熱部による加熱を停止させることである請求項1〜3のいずれか1項に記載の真空蒸着装置。
【請求項5】
さらに、前記各蒸発源は、それぞれ前記開口部の全域を覆う大きさを有し、前記加熱容器の前記開口部の上方に進退自在に設けられたシャッタ板を備え、
前記制御部は、各蒸発源について、基板の表面に膜を形成する際には、前記蒸発源の開口部から前記シャッタ板を退避させ、
前記所定の温度に達した後、前記温度センサによる温度の測定値が、前記平均値に前記標準偏差σを所定倍した値を足した値以上になったとき、前記温度が達した蒸発源における前記シャッタ板を前記開口部の上方に進入させて前記開口部を覆う請求項2〜4のいずれか1項に記載の真空蒸着装置。
【請求項6】
前記成膜材料は、セレンを主成分とするものである請求項1〜5のいずれか1項に記載の真空蒸着装置。
【請求項7】
前記膜が形成された前記基板は、放射線画像検出器に用いられる請求項1〜6のいずれか1項に記載の真空蒸着装置。
【請求項8】
真空容器内で、複数の蒸発源を用いて蒸着により基板の表面に膜を形成する真空蒸着方法であって、
前記蒸発源は、上方に開口部を有し、内部に前記膜の成膜材料が収納される加熱容器、前記加熱容器の底部から所定の高さの位置の温度を測定する温度センサ、前記加熱容器を所定の温度に加熱する加熱部を備え、前記成膜材料を加熱し、蒸発させるものであり、
前記基板に膜を蒸着により形成するに際して、
前記各蒸発源について、前記所定の温度に達した後からの前記温度センサにより測定された温度の平均値を求め、前記温度センサによる温度の測定値が、前記平均値に所定の温度差値を足した値以上になったとき、前記温度が達した蒸発源における成膜材料の蒸発を停止させることを特徴とする真空蒸着方法。
【請求項9】
前記基板に膜を蒸着により形成するに際して、さらに、前記各蒸発源について、前記所定の温度に達した後からの前記温度センサにより測定された温度の標準偏差σを求めており、
前記所定の温度差値は、前記標準偏差σを所定倍した値である請求項8に記載の真空蒸着方法。
【請求項10】
真空容器内で、複数の蒸発源を用いて蒸着により基板の表面に膜を形成する真空蒸着方法であって、
前記蒸発源は、上方に開口部を有し、内部に前記膜の成膜材料が収納される加熱容器、前記加熱容器の底部から所定の高さの位置の温度を測定する温度センサ、前記加熱容器を所定の温度に加熱する加熱部を備え、前記成膜材料を加熱し、蒸発させるものであり、
前記基板に膜を蒸着により形成するに際して、
前記各蒸発源について、前記所定の温度に達した後からの前記温度センサにより測定された温度の平均値および標準偏差σを求め、前記温度センサによる温度の測定値が、前記平均値に前記標準偏差σを所定倍した値を足した値以上になったとき、前記温度が達した蒸発源における成膜材料の蒸発を停止させることを特徴とする真空蒸着方法。
【請求項11】
前記制御部による前記蒸発源における成膜材料の蒸発の停止は、前記加熱部による加熱を停止させることである請求項8〜10のいずれか1項に記載の真空蒸着方法。
【請求項12】
さらに、前記蒸発源は、それぞれ前記加熱容器の前記開口部の上方に進退自在に設けられ、前記開口部の全域を覆うシャッタ板を備え、
前記基板の表面に膜を形成する際には、前記各蒸発源の開口部から前記シャッタ板を退避させ、
各蒸発源において、前記所定の温度に達した後、前記温度センサによる温度の測定値が、前記平均値に前記標準偏差σを所定倍した値を足した値以上になったとき、前記温度が達した蒸発源における前記シャッタ板を前記開口部の上方に進入させて前記開口部を覆う請求項9〜11のいずれか1項に記載の真空蒸着方法。
【請求項13】
前記成膜材料は、セレンを主成分とするものである請求項8〜12のいずれか1項に記載の真空蒸着方法。
【請求項14】
前記膜が形成された前記基板は、放射線画像検出器に用いられる請求項8〜13のいずれか1項に記載の真空蒸着方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−197301(P2009−197301A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−42610(P2008−42610)
【出願日】平成20年2月25日(2008.2.25)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】