説明

短繊維供給装置

【課題】水分を含む短繊維状物を定量的に安定して供給することができるようにする。
【解決手段】水分を含む短繊維状物を内部に投入するホッパ10と、ホッパ10の内部に回転自在に配置された回転軸18にスクリュー26を設けたスクリューフィーダ部28と、スクリューフィーダ部26内乃至その近傍に位置して回転軸18に取付けたパドル羽根30,32を備え、パドル羽根30,32は、該パドル羽根30,32の回転方向に向けて10〜100°の角度で屈曲乃至湾曲している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水分を含む短繊維状物を定量的に供給する短繊維供給装置に関し、更に詳しくは、例えば汚泥を脱水処理するのに使用される、水分を含む短繊維状の汚泥脱水助剤を汚泥貯水槽や凝集槽等に定量的に連続して供給するのに使用される短繊維供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
出願人は、下水処理施設やし尿処理施設等から発生する汚泥に、例えば、含水率30〜80重量%で、長さ1〜20mmの短繊維状のビスコースレーヨンからなる汚泥用脱水助剤を添加することで、汚泥の脱水処理を安定して行うことを提案している(特許文献1参照)。この場合、水分を含む所定量の短繊維状の汚泥脱水助剤(短繊維状物)を汚泥処理槽等に定量的に連続して供給することが望まれる。
【0003】
短繊維状物の供給あるいは計量手段としては、ベルトコンベア、振動コンベア、或いはスクリューコンベア等が一般に知られている。また、短繊維状物の定量供給装置としては、短繊維状物を収容するホッパと、該ホッパの下端部に設けられたスクリューコンベアとから構成されたものが広く使用されている。しかしながら、これらの供給装置によって短繊維状物を定量的に供給しようとすると、短繊維状物同士が互い絡みつくことで供給量のバラツキが大きくなり易く、特に定量的に供給する短繊維状物の供給量が少ないときに実用的でない。
【0004】
一方、ホッパの内部に短繊維状物を収納し、ホッパ底部の排出口から内部の短繊維状部を定量的に取出すようにした、いわゆるホッパ方式の定量供給装置では、特に水分を含む短繊維状物を定量的に供給しようとする場合に、短繊維状物のいわゆるブリッジ現象(短繊維状物が一体的な塊になって崩れ難くなる現象)によるホッパの内部閉塞が起こって、短繊維状物が円滑に排出されなくなることがある。そして、ホッパの内部に一旦ブリッジが生じると、このブリッジが崩れるタイミングが一定間隔でないので、短繊維状物をホッパから定量的に連続的に搬出して供給することが困難になる。
【0005】
このホッパ内でのブリッジ現象の発生による内部閉塞を防止するため、ホッパの側面にバイブレータ等の振動装置やエアハンマー等の打撃装置を付設してホッパに振動を与えたり、ホッパ内に原料を攪拌する攪拌機を設置して原料を攪拌したりしながら、ホッパから短繊維状物を搬出することが知られている。
【0006】
しかしながら、ホッパに振動を加えるようにしても、ホッパの外板から離れた位置の短繊維状物に振動が充分に伝わらず、ブリッジ崩しに対する効果が薄いばかりでなく、振動力を大きくすると、ホッパの破壊に繋がる問題も有している。また、ブリッジが発生した場合は、ホッパに加えられた振動によって、ブリッジを形成している短繊維状物の密度が高くなり、ブリッジ自体がより強固になって、ホッパの出口部分(スクリューコンベアの入口部分)において一層の閉塞を惹起する恐れがある。そのため、上記の定量供給装置を稼働させる場合には、ホッパを絶えず監視して、内部にブリッジが形成し始めた段階で振動装置や打撃装置を作動させる必要がある。さらに、振動によって短繊維状物が密集することで、ブリッジをむしろ助長することもある。更に、打撃装置を付設すると、ホッパの損壊が考えられ、騒音も激しいという問題もある。
【0007】
ホッパの内部に攪拌機を設置した場合、ブリッジ現象の発生防止にある程度の効果はあるものの、吸水している短繊維状物を供給する場合には、短繊維状物が攪拌翼の表面に付着しやすく、特に開口面積の小さい排出部近郊に短繊維状物が詰まって短繊維状物の排出に支障を生じるという問題がある。
【0008】
ここに、ホッパ内の排出口近傍に、棒状材を螺旋状に成形したアジテータを、見掛け上、アジテータが上方向に移動するように設定した繊維原料用フィーダ装置(特許文献2参照)や、下部の内壁面が漏斗状に形成され、底部に円筒状の排出部に連通する粉体排出口が設けられたホッパ内壁面に沿って螺旋状の粉体掻上部を設け、螺旋状の粉体掻上部と底部の円筒状排出部のねじ溝により粉体を排出するようにした粉体供給装置(特許文献3参照)が提案されている。
【0009】
また、ホッパと同軸をなすように垂下されたシャフトの周囲に、円錐状をなす螺旋状に配設された攪拌棒を具備したホッパ用攪拌器(特許文献4参照)や、細片状物や粉状物の投入開口を上部に有し且つ平坦底に排出開口を有したサイロ本体と、該サイロ本体の排出開口の下方に設けられたコンベヤと、上記サイロ本体内においてその頂壁または底壁の少なくても一方に回転可能に軸承された下から上へ掻き揚げる螺旋体と、該螺旋体の回転駆動手段とから構成されているサイロ装置(特許文献5参照)が提案されている。
【0010】
また、上端にホッパを下端に吐出口を有するファネルと、拡径スクリュー部を有するオーガスクリューとを備え、ホッパ内周面と拡径スクリューの間に所定の間隔が確保された粉粒体充填装置が提案されている(特許文献6参照)。
【0011】
更に、粉体原料を排出する排出口が下端に設けられたホッパと、ホッパ内の粉体原料を撹拌するアジテータとを備えた粉体原料計量タンクが提案されている(特許文献7参照)。アジテータは、ホッパ中心軸線上に配備された排出口まで伸びる回転軸と、回転軸からホッパ内周壁へ向けて径方向外方へ伸びる少なくとも2本の梁部材と、各梁部材に保持され回転軸によってホッパ内周壁に沿って回転する撹拌翼と、粉体原料を排出口から排出させるべく排出口を貫通して配備されたスクリューを有している。
【0012】
【特許文献1】特開2007−283225号公報
【特許文献2】実開平3−100195号公報
【特許文献3】特開平7−133029号公報
【特許文献4】特開平9−216688号公報
【特許文献5】特開平10−167481号公報
【特許文献6】特開2002−19729号公報
【特許文献7】特開2005−132427号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、特許文献2に記載の繊維原料用フィーダ装置では、螺旋状に成形したアジテータで短繊維状物をホッパの出口方向にしか移送できず、従って、短繊維状物を定量的に切り出すことができず、しかも、円錐状部がホッパ容積の大部分を占めて、ホッパの貯留量が著しく減少してしまうと考えられる。
【0014】
特許文献3に記載の粉体供給装置は、原料として水分を含んだ短繊維状部を使用した場合に、以下のような問題点が生じると考えられる。
【0015】
すなわち、ホッパ直胴部での短繊維状物(原料)の流動化ができないために、ホッパ直胴部に短繊維状部のブリッジが発生するか、または空洞化して、短繊維状部が下部の漏斗状部に移動せず、結果的にホッパから短繊維状物を供給できなくなる。また、ホッパ内壁面に沿って設けられた螺旋状の粉体掻上部は、短繊維状物をホッパ底部の円筒状の排出部に供給できず、漏斗状部で短繊維状部が螺旋状の粉体掻上部と共周りする。更に、螺旋状の粉体掻上部の間隔が狭いと、螺旋状の粉体掻部の間に短繊維状部が挟まり、螺旋状の粉体掻上部の回転とともに短繊維状部も回転するだけで短繊維状部を粉体排出口に移動させられない。短繊維が下部に移動できたとしても、その上部から新たな短繊維状部が補給されず、螺旋状の粉体掻上部の間隙部で空洞化が発生する。逆に、螺旋状の粉体掻上部の間隔が広いと、その間隙に短繊維状部が挟まらないが、螺旋状の粉体掻上部が回転運動しても短繊維状部がその場で撹拌され、短繊維同士が絡まって、綿飴状の大きい塊になる。
【0016】
特許文献4に記載のホッパ用攪拌機に備えられた撹拌棒は、単なるパドル撹拌と同じで、撹拌棒による撹拌では短繊維状部が水平方向だけの撹拌になり、各々の撹拌棒の下部に短繊維状物が移動せず、従って、ホッパの最下部にあるホッパ開口部に短繊維状物を移送できないばかりでなく、ホッパ直胴部に短繊維状物がある場合に直胴部の短繊維状物にブリッジ現象が生じて、短繊維状物が直胴部下方向の円錐状部に移動できず、このために短繊維状物をホッパ開口部から切り出せないと考えられる。
【0017】
特許文献5に記載のサイロ装置では、貯蔵物が水分を含む短繊維状物である場合に、以下のような問題点があると考えられる。
【0018】
すなわち、サイロ上部が小径で、サイロ下部に向かって径が大きくなる形状の螺旋体では、サイロの下から上に向けて短繊維状物(貯蔵物)を掻き揚げることができず、また、短繊維状物が綿飴状になり、短繊維状物が螺旋体周辺で回転するだけで、短繊維がサイロ下部に向かって移動しない。リボン状の螺旋体ではサイロ内の短繊維を上部にも下部にも移送できない。また、サイロ底部に位置する螺旋体の円板の底に湾曲したパドル羽根によりサイロ底部の排出開口部に短繊維状物(貯蔵物)を排出しようとすると、上記螺旋体で短繊維状物が湾曲したパドル羽根まで移送されたとしても、回転軸から放射状に伸びた湾曲したパドル羽根の間が短繊維状物で閉塞されて、短繊維状物をサイロ底部の排出開口部から排出することができない。
【0019】
特許文献6の装置の粉流体充填装置は、拡径スクリューとホッパ内周面との間、拡径スクリュー部における溝内への粉粒体の侵入を許容する間隙に粉粒体が入り、拡径スクリューによって、粉粒体がその下部に配備されたオーガスクリューへと移動するようにしている。拡径スクリュー部に粉粒体を強制的に送り込む機構がないが、粉粒体は、その流動性や自重によって、粉粒体の侵入を許容する間隙に侵入することができる。しかしながら、短繊維状物には粉粒体のような流動性がなく、粉粒体の侵入を許容する間隙に自然に入ることはできない。また、拡径スクリュー上部に掻込ブレードが配備され、その掻込ブレードにアジテータロットが取付けられているが、これらを短繊維状物中で運転すると、短繊維状物が綿飴状の塊になる。したがって、短繊維状物をホッパ下端の吐出口から排出させることはできないと考えられる。
【0020】
特許文献7に記載の粉体原料計量タンクは、原料として水分を含んだ短繊維状部を使用した場合に、以下のような問題点が生じると考えられる。
【0021】
すなわち、短繊維状物がホッパに充填された状態で回転軸に同調する梁部材と撹拌翼が回転すると、短繊維状物が梁部材に絡まり、ホッパ内周壁に沿って回転する撹拌翼とホッパ内周壁との間隙に挟まることで回転軸に過大な負荷がかかる。また、水平に配備された梁部材が邪魔になり、短繊維状物は下方向に移動できない。特に排出口に近い梁部材は、その部材が短いために短繊維状物の絡みつきや短繊維状物による閉塞が起こる。部材に短繊維が絡みついたり、閉塞したりすると、スクリューが空回りして排出口に短繊維状物を搬出できない。なお、水平に配備された梁部材が片方の1本だけ径方向外方へ伸びる構造によって、短繊維状物の下方向への移動を改善しても、大部分の短繊維部材は、梁部材の回転範囲で留まることになる。また、最上段の梁部材より上に充填された流動性のない短繊維部材を下方向に移動させられない。更に、ホッパ内周壁に沿って回転する撹拌翼で短繊維状物を撹拌すると、短繊維状物が綿飴状の塊に成長し、その大きさが排出口径以上になり、スクリューで移送できないし排出もできなくなる。
【0022】
上述のごとく、従来の定量供給装置を用いて、水分を含む短繊維状物、例えば含水率が30〜80重量%で、長さが1〜20mmの短繊維状のビスコースレーヨンからなる汚泥用脱水助剤を定量的に連続して供給しようとすると、短繊維状物は、水分を含むために流動性がなく自重で下方向に移動しないため、撹拌棒で撹拌すると、短繊維状物が綿飴状の塊に成長し、その大きさが排出口径以上になって、スクリューで移送できないし排出もできなくなる。
【0023】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、水分を含む短繊維状物を、定量的に連続して供給することができるようにした短繊維供給装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0024】
請求項1に記載の発明は、水分を含む短繊維状物を内部に投入するホッパと、前記ホッパの内部に回転自在に配置された回転軸にスクリューを設けたスクリューフィーダ部と、前記スクリューフィーダ部内乃至その近傍に位置して前記回転軸に取付けたパドル羽根を備え、前記パドル羽根は、該パドル羽根の回転方向に向けて10〜100°の角度で屈曲乃至湾曲していることを特徴とする短繊維供給装置である。
【0025】
これにより、ホッパの内部に投入された水分を含む短繊維状物は、パドル羽根の回転に伴って、ホッパの中央部に掻き集められてスクリューフィーダ部の近傍に運ばれ、スクリューフィーダ部の回転に伴って、ホッパの排出部から定量的に順次排出される。このパドル羽根は、パドル羽根の回転方向に向けて10〜100°の角度で屈曲乃至湾曲しており、この角度は、30〜90°であることが好ましい。これにより、パドル羽根がその回転時に絡まった短繊維状物による抵抗に耐え切れずに回転方向と逆方向に捻れてしまうことを防止しつつ、ホッパ内の短繊維状物を効果的に掻き集めて、定量的に排出するのに十分な量の短繊維状物をスクリューフィーダ部に供給することができる。
【0026】
請求項2に記載の発明は、前記パドル羽根の全長lと該パドル羽根の基端から曲部中心までの距離aとの比:a/lが、0.1〜0.8であることを特徴とする請求項1に記載の短繊維供給装置である。
【0027】
パドル羽根の全長lと該パドル羽根の曲部中心から自由端までの距離aとの比:a/lが0.1より小さいと、パドル羽根の短繊維状物に対するスクリューフィーダ部の近傍への掻き寄せ効果が十分でなく、定量供給が困難になる。一方、この比:a/lが0.8を超えると、パドル羽根がその回転時にパドル羽根に絡まった短繊維状物による抵抗に耐え切れずに回転方向と逆方向に捻れてしまうことがある。
【0028】
請求項3に記載の発明は、前記パドル羽根は、前記回転軸の長さ方向に沿って所定間隔離間した位置に複数備えられていることを特徴とする請求項1または2に記載の短繊維供給装置である。
パドル羽根の設置個数は、1個であっても、複数であってもよい。また、スクリューフィーダ部内乃至その近傍であれば、その設置位置も任意に設定できる。
【0029】
回転軸に、該回転軸の直径方向外方に延びるように、閉塞防止部を取付けてもよい。このように、閉塞防止部を取付けてホッパ内の短繊維状物を閉塞防止部で攪拌することで、短繊維状物同士が互いに絡み合って流れなくなる、いわゆるブリッジ現象がホッパ内に発生することを防止し、短繊維状物の排出を円滑にして、短繊維状物の定量供給に大きく貢献できる。閉塞防止部の設置位置は、パドル羽根の上流側とすることが好ましい。
【0030】
請求項4に記載の発明は、前記ホッパは、ホッパ排出口に繋がる円錐状部を有し、前記スクリューフィーダ部は該円錐状部内に位置していることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の短繊維供給装置である。
【0031】
請求項5に記載の発明は、前記ホッパ排出口の内径と前記スクリューフィーダ部の外径との差が10〜100mmであることを特徴とする請求項4に記載の短繊維供給装置である。
【0032】
ホッパ排出口の内径とスクリューフィーダ部の外径との差が10mmより小さいと、短繊維状物のホッパ排出口からの排出が困難になるので好ましくなく、また、この差が100mmを超えると、供給量の精度が低下してくる。この差は、20〜40mmであることが好ましい。
【0033】
請求項6に記載の発明は、前記短繊維状物は、含水率20〜70重量%で、長さ1〜50mmの汚泥用脱水助剤であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の短繊維供給装置である。
短繊維状物の形状は特に限定されないが、含水率が20〜70重量%、繊維長が1〜50mmの汚泥用脱水助剤であれば、本発明の装置によって確実に定量供給が可能である。
【発明の効果】
【0034】
この発明の短繊維供給装置によれば、水分を含む短繊維状物、例えば含水率が20〜70重量%で、長さ1〜50mmの短繊維状のビスコースレーヨンからなる汚泥用脱水助剤を定量的に連続して汚泥貯留槽等に供給することができる。しかも、比較的簡単な構成で、ホッパの内周面等に短繊維状物が付着しても簡単に掃除ができるので、ランニングコストを低減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。なお、以下の各実施の形態において、同一または相当する部材には同一符号を付して重複した説明を省略する。
【0036】
図1は、本発明の実施の形態の短繊維供給装置の縦断正面図を示し、図2は図1のA−A線断面図を示す。図1及び図2に示すように、この短繊維供給装置は、上下方向に延びる円筒状部10aと該円筒状部10aの下端に一体に連接された円錐状部10bとを上下に有するホッパ10を備えている。このホッパ10の円筒状部10aの上端開口部は、水分を含む短繊維状物Aを内部に投入する投入口を有する天井板12で閉塞され、この天井板12には、投入口を開閉する蓋体14が取付けられている。そして、ホッパ10の円錐状部10bの下端には、ホッパ排出口16となる開口が設けられている。ホッパ10の円筒状部10aの高さ及び内径は、特に限定されないが、通常、高さは200〜1000mm程度で、内径は100〜2000mm程度である。
【0037】
投入口からホッパ10の内部に投入される水分を含む短繊維状物Aは、特に限定されないが、例えば含水率が30〜80重量%で長さ1〜20mm、または含水率が20〜70重量%で長さが1〜500mmの短繊維状のビスコースレーヨンからなる汚泥用脱水助剤である。このように、水分を含む短繊維状物Aとして汚泥用脱水助剤を使用した場合、ホッパ10は、例えば汚水貯留槽の上方に配置されて、汚泥用脱水助剤がホッパ10から汚水処理槽内に定量的に供給される。
【0038】
ホッパ10の内部には、その中心部に位置して、ホッパ10のほぼ全長に亘って上下に延びる回転軸18が配置され、この回転軸18の上端は、天井板12の中心部に配置したモータ20の出力軸に連結されている。このモータ20は、例えばホッパ10の円筒状部10aの外周面に取付けた制御盤(図示せず)によって、その回転速度が制御される。
【0039】
ホッパ10の円筒状部10aの内部に位置して、回転軸18には、この回転軸18の直径方向外方に直線状に延びる棒状の閉塞防止部材22の基端が連結され、この閉塞防止部材22の自由端は、ホッパ10の円筒状部10aの内周面に近接するようになっている。このように、閉塞防止部材22を取付けて、ホッパ10内の短繊維状物Aを攪拌することで、ホッパ10内で短繊維状物A同士が絡み合って流れなくなる、いわゆるブリッジ現象の発生を防止し、短繊維状物Aの排出を円滑にして、短繊維状物Aの定量供給に大きく貢献できる。閉塞防止部材22の設置位置は、下記のパドル羽根30,32の上流側とすることが好ましい。この例では、閉塞防止部材22によって、閉塞防止部24が構成されている。
【0040】
更に、ホッパ10の円錐状部10bのほぼ全高に亘る位置に位置して、回転軸18にはスクリュー26が設けられ、この回転軸18とスクリュー26によって、短繊維状物Aを定量的にホッパ排出口16から排出するスクリューフィーダ部28が構成されている。スクリュー種としては、二軸同方向回転スクリュー、完全噛合い式一条スクリュー、短軸スクリューのいずれも使用できる。
【0041】
このスクリューフィーダ部28の直上方位置に第1パドル羽根30が、スクリューフィーダ部28の長さ方向に沿ったほぼ中間位置に第2パドル羽根32がその基端を回転軸18に連結して配置されている。この第1パドル羽根30の基端部側30aは、回転軸18と直交する方向に延び、自由端部側30bは、図2に矢印で示す第1パドル羽根30の回転方向に向けて、基端部側30aの延長線に対して角度θで屈曲している。第2パドル羽根32も同様に、その基端部側32aは、回転軸18と直交する方向に延び、自由端部側32bは、図2に矢印で示す第2パドル羽根32の回転方向に向けて、基端部側32aの延長線に対して角度θで屈曲している。この角度θは、この例ではいずれも90°である。
【0042】
この第1パドル羽根30及び第2パドル羽根32は、この回転に伴って、ホッパ10内に投入された水分を含む短繊維状物Aをホッパ10の中央部に掻き集めてスクリューフィーダ部28の近傍に運ぶとともに、ホッパ10内の水分を含む短繊維状物Aに接触することで該短繊維状物Aをほぐして落ちやすくするためのものである。パドル羽根30,32は、丸棒状であってもよいが、板状体を使用することで、ホッパ10内の短繊維状物Aを絶えず持ち上ながら攪拌させて安定して供給することができる。
【0043】
第1パドル羽根30における基端部側30aの延長線と自由端部側30bとのなす角度θは、10〜100°で、30〜90°であることが好ましい。この角度θが10°より小さいと、短繊維状部Aのスクリューフィーダ部28近傍への掻き寄せ効果が十分でなく、定量供給が困難になるばかりでなく、第1パドル羽根30がその回転時に絡まった短繊維状物Aによる抵抗に耐え切れず回転方向と逆方向に捻れてしまうことがあり、一方、角度θが100°より大きいと、スクリューフィーダ部28近傍への掻き寄せられる短繊維状物Aの量が減り、定量供給できなくなるか、全く供給できなくなることが確かめられている。このことは、第2パドル羽根32にあっても同様である。
【0044】
なお、この例では、第1パドル羽根30として、基端部側30aと自由端部側30bとを互いに直角に曲がるように連結したものを使用しているが、円弧状の曲部を介して基端部側30aと自由端部側30bとを互いに接線状に緩やかに繋がるように連結してもよく、また自由端部側30bとして、円弧状に湾曲するようにしたものを使用しても良い。このことは、第2パドル羽根32にあっても同様である。
【0045】
また、第1パドル羽根30の基端部側30aの距離aと自由端部側30bの距離bの合計である第1パドル羽根30の全長l(l=a+b)と第1パドル羽根30の基端部側30aの距離aと比:a/lは、0.1〜0.8であることが好ましく、0.2〜0.8がより好ましい。この比:a/lが0.1より小さいと、第1パドル羽根30の短繊維状物Aに対するスクリューフィーダ部28の近傍への掻き寄せ効果が十分でなく、定量供給が困難になり、一方、この比:a/lが0.8を超えると、第1パドル羽根30の回転時に第1パドル羽根30に短繊維状物A絡まり、第1パドル羽根30が短繊維状物Aによる抵抗に耐え切れずに回転方向と逆方向に捻れてしまうことがあることが確かめられている。
【0046】
また、ホッパ排出口16の内径Dとスクリューフィーダ部28の外径dとの差(D−d)は、10〜100mmであることが好ましい。ホッパ排出口16の内径Dとスクリューフィーダ部28の外径dとの差が10mmより小さいと、短繊維状物Aのホッパ排出口16からの排出が困難になるので好ましくなく、また、この差が100mmを超えると、定量供給の精度が低下してくる。この差は、20〜40mmであることが好ましい。
【0047】
なお、この例では、第1パドル羽根30として、その全長が長いものを使用しており、このため、第1パドル羽根30の基端部と自由端との間に斜状に延びる補強材34を取付けて、第1パドル羽根30を補強するようにしている。この補強材34としては、第1パドル羽根30の高さ方向の幅よりも小さな幅又は外径を持つ、例えばパイプを用いることができる。このような補強は、必要に応じて行われる。
【0048】
次に、この実施の形態の短繊維供給装置の運転例について説明する。
先ず、蓋体14を開いて、水分を含んだ短繊維状物Aを投入口からホッパ10の内部に投入する。この短繊維状物Aの投入量は、ホッパ10の容積の、例えば80%程度である。そして、モータ20を駆動して回転軸18を回転させる。すると、閉塞防止部材22(閉塞防止部24)が回転し、この回転によって、ホッパ10の内部における閉塞防止部材22の配置位置乃至その近傍に短繊維状物Aのブリッジ現象が生じることが防止される。
【0049】
同時に、スクリューフィーダ部28、第1パドル羽根30及び第2パドル羽根32が回転し、このスクリューフィーダ部28の回転に伴って、ホッパ10内のスクリューフィーダ部28の近傍に位置する短繊維状物Aが定量ずつ排出されて、ここに空洞ができる現象と、第1パドル羽根30及び第2パドル羽根32の回転に伴って、ホッパ10内のスクリューフィーダ部28から離れた位置に位置する短繊維状物Aがホッパ10の中央部に掻き集められてスクリューフィーダ部28の近傍に運ばれる現象が起こる。これによって、スクリューフィーダ部28の近傍に短繊維状物Aが連続的に補給されて、ホッパ10から水分を含む短繊維状物Aが定量的に連続して排出(供給)される。この短繊維状物Aの供給量は、モータ20の回転速度を調整することによって制御される。
【0050】
図3に示すように、ホッパ排出口16に、カップリング44を介してスクリューコンベア42を連通させ、これによって、水分を含む短繊維状物Aをホッパ10からスクリューコンベア42に連続的に供給するようにしてもよい。
【0051】
図4は、本発明の他の実施の形態の短繊維供給装置を示す。この例の図1及び図2に示す例と異なる点は、図1及び図2に示す例における第1パドル羽根30を省略した点にある。このように、パドル羽根の設置数は、1個であっても、複数であってもよい。また、スクリューフィーダ部28内乃至その近傍であれば、その設置位置も任意に設定できる。
【0052】
図5は、本発明の更に他の実施の形態の短繊維供給装置を示す。この例の図1及び図2に示す例と異なる点は、2本の棒状の閉塞防止部材22a,22bを、上下方向に所定間隔離間させ基端を回転軸18に連結して配置し、これらの閉塞防止部材22a,22bの外周部を連結棒50で連結して閉塞防止部24aを構成している点にある。この例にあっては、閉塞防止部24aに幅を持たせることで、閉塞防止部24aの回転に伴ってホッパ10内の短繊維状物Aを攪拌してホッパ10内に短繊維状物Aによるブリッジ現象が生ずるのを防止する領域を拡げることができる。
【0053】
図6は、本発明の更に他の実施の形態の短繊維供給装置を示す。この例の図1及び図2に示す例と異なる点は、閉塞防止部材22の外周部に板状の攪拌部52を垂設して、閉塞防止部24bを構成している点にある。
【0054】
図7は、本発明の更に他の実施の形態の短繊維供給装置を示す。この例の図1及び図2に示す例と異なる点は、閉塞防止部材22の周縁部に膨状の攪拌部54を垂設して、閉塞防止部24cを構成している点にある。
【0055】
図8は、本発明の更に他の実施の形態の短繊維供給装置を示す。この例の図7に示す例と異なる点は、第2パドル羽根32の下方に位置して、スクリューコンベア部28に第3パドル羽根56を設けているにある。
【実施例】
【0056】
次に、具体的に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。
【0057】
(実施例1)
図1及び図2に示す短繊維供給装置において、内径800mmで高さ500mmの円筒状部10aと、高さ300mmでホッパ排出口16aの内径が60mmの円錐状部10bを有するホッパ10の内部に、スクリュー直径30mm、スクリュー長800mm、ピッチ幅30mmのスクリューフィーダ部26を配した短繊維供給装置を使用した。そして、ホッパ10の上端から下200mmの地点に閉塞防止部材22を取付けた。また、円錐状部10bの上端から下に50mmの地点に第1パドル羽根30を取付けた。第1パドル羽根30として、長さ150mm、幅20mmの板体で、回転軸18との接合点から30mmの所から回転方向に向かって90°に折り曲げた形状にしたものを使用した。
【0058】
上記構成の短繊維供給装置を用いてセルロース繊維の供給試験を行った。供給試験に用いたセルロース繊維は以下の通りであり、短繊維が混在して絡み易く、一般的な流動物に比べてスクリューフィーダによる位相が極めて困難な性状を備えている。なお、スクリューコンベア部26の回転数は5rpm及び10rpmとした。
繊維長:3mmまたは10mm
含水率:55%
比重 :1.5
【0059】
(実施例2)
実施例1において、第1パドル羽根30の曲げ角を30°とした以外は実施例1と同様にして供給試験を行った。
【0060】
(実施例3)
実施例1において、第1パドル羽根30の更に下100mmの位置に、第2のパドル羽根32を設けて供給試験を実施した。第2パドル羽根32として、長さ100mm、幅15mmの板体で、スクリューとの接合点から50mmの所から回転方向に向かって90°に折り曲げた形状のものを使用した。
【0061】
(実施例4)
実施例3おいて、閉塞防止部材22を取外した以外は実施例3と同様にして供給試験を実施した。
【0062】
(実施例5)
実施例3において、第1パドル羽根30及び第2パドル羽根32を表1に示す形状のものに取替え、それ以外は実施例3と同様にして供給試験を実施した。また、図5に示す、直径15mmで長さ100mmの棒状物の閉塞防止部材22a,22bを有する閉塞防止部24aを使用した。
【0063】
(実施例6)
実施例5において、第1パドル羽根30及び第2パドル羽根32を表1に示す形状のものに取替え、それ以外は実施例5と同様にして供給試験を実施した。
【0064】
(実施例7)
実施例5において、第1パドル羽根30及び第2パドル羽根32を表1に示す形状のものに取替え、更に第1パドル羽根30の位置を円錐状部10bの上端から下に100mmの地点に変更し、それ以外は実施例5と同様にして供給試験を実施した。
【0065】
(比較例1)
実施例1で使用した装置において、第1パドル羽根30の曲げ角を150°に変更して供給試験を実施した。
【0066】
(比較例2)
実施例3で使用した装置において、第1パドル羽根30及び第2パドル羽根32として、表1に示すものを使用して供給試験を実施した。
【0067】
(比較例3)
実施例1で使用した装置から第1パドル羽根30を取外して供給試験を実施した。この試験の結果、供給できないことが判明したので、始動後3分経過時に装置を停止させた。
【0068】
(比較例4)
実施例3で使用した装置において、ホッパ排出口16の内径dとスクリューフィーダ部28の外径Dの差が6mmのホッパを使用して供給試験を実施した。この試験の結果、トルクがオーバーして、始動後3分経過時に装置を停止させた。
【0069】
表1に、実施例1〜7及び比較例1,2の特定回転数における一定時間の供給量を示す。
【0070】
【表1】

【0071】
表1に示すように、実施例1〜7にあっては、常に一定に近い供給量が得られており、時間が経過しても供給量が安定していることがわかる。また、回転速度と供給量とは比例関係にあり再現性も良好であった。これに対して、比較例1,2では、吐出量の変動が激しく、安定した定量供給ができなかった。特に、比較例1では、供給し得ていないことが判明したので、始動後10分経過時に装置を停止させた。また、比較例2では、装置を5分後に停止し、スクリューフィーダ部に形成されたブリッジを手作業で破壊する必要が生じた。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の実施の形態の短繊維供給装置を示す縦断正面図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】図1及び図2に示す短繊維供給装置をスクリューコンベアに連結した状態を示す縦断正面図である。
【図4】本発明の他の実施の形態の短繊維供給装置を示す縦断正面図である。
【図5】本発明の更に他の実施の形態の短繊維供給装置を示す縦断正面図である。
【図6】本発明の更に他の実施の形態の短繊維供給装置を示す縦断正面図である。
【図7】本発明の更に他の実施の形態の短繊維供給装置を示す縦断正面図である。
【図8】本発明の更に他の実施の形態の短繊維供給装置を示す縦断正面図である。
【符号の説明】
【0073】
10 ホッパ
10a 円筒状部
10b 円錐状部
14 蓋体
16 ホッパ排出口
18 回転軸
20 モータ
22,22a,22b 閉塞防止部材
24,24a,24b,24c 閉塞防止部
26 スクリュー
28 スクリューフィーダ部
30,32,56 パドル羽根
42 スクリューコンベア
44 カップリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水分を含む短繊維状物を内部に投入するホッパと、
前記ホッパの内部に回転自在に配置された回転軸にスクリューを設けたスクリューフィーダ部と、
前記スクリューフィーダ部内乃至その近傍に位置して前記回転軸に取付けたパドル羽根を備え、
前記パドル羽根は、該パドル羽根の回転方向に向けて10〜100°の角度で屈曲乃至湾曲していることを特徴とする短繊維供給装置。
【請求項2】
前記パドル羽根の全長lと該パドル羽根の基端から曲部中心までの距離aとの比:a/lが、0.1〜0.8であることを特徴とする請求項1に記載の短繊維供給装置。
【請求項3】
前記パドル羽根は、前記回転軸の長さ方向に沿って所定間隔離間した位置に複数備えられていることを特徴とする請求項1または2に記載の短繊維供給装置。
【請求項4】
前記ホッパは、ホッパ排出口に繋がる円錐状部を有し、前記スクリューフィーダ部は該円錐状部内に位置していることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の短繊維供給装置。
【請求項5】
前記ホッパ排出口の内径と前記スクリューフィーダ部の外径との差が10〜100mmであることを特徴とする請求項4に記載の短繊維供給装置。
【請求項6】
前記短繊維状物は、含水率20〜70重量%で、長さ1〜50mmの汚泥用脱水助剤であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の短繊維供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−255000(P2009−255000A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−109236(P2008−109236)
【出願日】平成20年4月18日(2008.4.18)
【出願人】(591030651)荏原エンジニアリングサービス株式会社 (94)
【Fターム(参考)】