説明

硬化性組成物およびそれを硬化してなる光学材料

【課題】有機溶媒を用いずに液状組成物を形成して光導波路などに有用な硬化物を得ることができ、しかも耐熱性の高い硬化物であっても、その硬化物の透明性を向上させ得る硬化性組成物を提供する。
【解決手段】(I)非フッ素系多官能化合物、(II)含フッ素α−クロロアクリレート化合物、(III)含フッ素アクリレート化合物および(IV)硬化開始剤を含む硬化性組成物、およびその硬化物からなる光学材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶剤を使用しなくても、400〜850nm波長帯域でも透明性が高く、しかも耐熱性の高い光学材料、たとえば光導波路を与え得る硬化性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光導波路用材料として、回路作製における加工性が良く、大量生産が可能な有機系の材料が注目されている。
【0003】
なかでもフッ素系の材料は一般の通信波長帯域である近赤外領域の光(1300〜1550nm)に対して透明性に特に優れるので、この領域で使用する種々のフッ素系の材料が提案されている。これらの材料を用いれば、光信号の損失の低い有機系の光導波路を作製することが可能となる。
【0004】
この一般の通信波長帯域で使用する光導波路用のフッ素系有機材料としては、含フッ素ポリイミド系の材料(特許文献1)や含フッ素アクリル系ポリマー類(特許文献2)が知られている。
【0005】
ところで光導波路に加工するためには、プレポリマーおよび/またはポリマーを有機溶剤に溶解させ、スピンコート、ディップ、キャスト法等の方法により、薄膜(コア層、クラッド層)を形成し、適宜硬化する加工法が一般的にとられている。
【0006】
しかしながら、このような有機溶剤を用いた成形では、コア層を形成する際に、有機溶剤により、先に形成したクラッド層の表面が溶解し、相互に混ざり合うというインターミキシングにより、コア/クラッドの界面が不均一となり光信号の損失が著しく増大するという問題がある。また、各層を形成後、乾燥等により層を形成する膜中の有機溶剤を揮発させる処理が必要であるが、それでも微量に膜中に残留している有機溶媒によって近赤外領域の光が吸収されたり散乱されるため、近赤外領域での透明性が低下するという問題もある。さらに膜中に残る有機溶媒が揮発した跡に起因するマイクロボイドが光散乱の原因となり、近赤外領域での透明性が低下する問題などもある。特に残留有機溶媒およびマイクロボイドは、著しく近赤外領域での透明性を低下させるため、光導波路の損失が大きく増加される。
【0007】
かかる問題を解決するために、アクリル単量体と含フッ素アクリル系ポリマー類とからなる硬化性組成物を用いることが提案されている(特許文献3)。
【0008】
上記特許文献3には、炭素数5以下のフッ素化アルキル基を含有するフッ素系硬化性単量体を必須成分として重合した含フッ素重合体と、フッ素化アルキル基を含有するフッ素系硬化性単量体と分子中に(メタ)アクリロイル基を2個以上含有する多官能単量体とからなる硬化性組成物が開示されており、またフッ素系硬化性単量体として(メタ)アクリレート系単量体が使用され、さらにフッ素含有率を向上させる目的で、そのエステル部にフッ素含有率の高い直鎖状のフルオロアルキル基を含有する単量体が用いられている。
【0009】
しかしこのようなフッ素系単量体は含フッ素重合体の溶解性が低く、液状組成物自体が白濁してしまうことがある。また、均一な液状組成物が形成できたとしても、得られる硬化物が白濁したり、さらにたとえ透明な硬化物が得られたとしても、加温により含フッ素重合体とフッ素含有率の高い直鎖状のフルオロアルキル基との相分離が生じ、白濁化などが発生して透明性が低下したりするといった問題点がある。さらにまた、硬化物中であっても、直鎖状のフルオロアルキル基同士の結晶化が進み、その結果、高温下で再結晶化による白濁を生じて硬化物の近赤外領域での透明性が低下する問題がある。
【0010】
【特許文献1】特開平2−281037号公報
【特許文献2】特開2000−81520号公報
【特許文献3】特開平5−9043号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、有機溶媒を用いずに液状組成物を形成して硬化物を得ることができ、しかも耐熱性の高い硬化物であっても、その硬化物の透明性を向上させ得る硬化性組成物を提供することを目的とする。
【0012】
また、さらに、この組成物を用いた光導波路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
すなわち本発明は、
(I)式(1):
【化1】

(式中、X1は同じかまたは異なり、HまたはCH3;nは2〜7の整数;R1は同じかまたは異なり、結合手または炭素数1〜50の2価の炭化水素系有機基;R2は炭素数1〜50のn価の炭化水素系有機基)で表される非フッ素系多官能化合物、
【0014】
(II)式(2):
【化2】

(式中、Rfは炭素数1〜20の直鎖または分岐鎖状の含フッ素アルキル基;nは1〜6の整数)で表される含フッ素α−クロロアクリレート化合物、
【0015】
(III)式(3):
【化3】

(式中、RはHまたはCH3;Rf1は炭素数1〜20の含フッ素アルキレン基;mは1〜6の整数)で表される含フッ素アクリレート化合物、および
【0016】
(IV)硬化開始剤
を含む硬化性組成物(第1の発明)に関する。
【0017】
前記式(1)で表される非フッ素系多官能化合物(I)の硬化物のガラス転移温度は、−50℃以上であることが、硬化物全体のガラス転移温度を下げすぎない点から好ましい。
【0018】
前記式(1)で表される非フッ素系多官能化合物(I)において、R1およびR2がいずれも芳香族環構造を含んでいないことが、得られる硬化物の屈折率を低くする傾向があることから、低屈折率材料として用いる場合には好ましい。
【0019】
前記式(2)で表される含フッ素α−クロロアクリレート化合物(II)において、Rfがパーフルオロアルキル基であることが、得られる硬化物の屈折率を低くする傾向があることから、低屈折率材料として用いる場合には好ましい。
【0020】
前記式(3)で表される含フッ素アクリレート化合物(III)において、Rf1がパーフルオロアルキレン基であることが、化合物(I)および化合物(II)との相溶性をさらに向上させる点から好ましい。
【0021】
前記式(2)で表される含フッ素α−クロロアクリレート化合物(II)と前記式(3)で表される含フッ素アクリレート化合物(III)との合計フッ素含有率が5質量%以上で65質量%以下であることが、透明性が良好な点から好ましい。
【0022】
第1の発明において、非フッ素系多官能化合物(I)を5〜98質量%、含フッ素α−クロロアクリレート化合物(II)を1〜94質量%および含フッ素アクリレート化合物(III)を1〜94質量%含むことが好ましい。
【0023】
また、硬化開始剤(IV)は0.01質量%以上で10質量%以下配合されていることが好ましい。
【0024】
第1の発明の硬化性組成物は、組成物の調製、取扱い性、加工性などが良好な点から、35℃での粘度が2〜50,000mPa・秒であるように各成分を調整することが望ましい。
【0025】
また組成物全体のフッ素含有率が5質量%以上で60質量%以下であることが、透明性が良好な点から好ましい。
【0026】
本発明の第2の発明は、本発明の硬化性組成物を硬化して得られる硬化物に関する。
【0027】
この硬化物は、フッ素含有率が20質量%以上であることが、透明性が優れている点から好ましく、耐熱性の点からガラス転移温度が50℃以上であることが好ましい。
【0028】
本発明の第3の発明は、第2の発明の硬化物からなる光学材料、およびコア部とクラッド部からなる光導波路であって、コア部およびクラッド部の少なくとも一方が第2の発明の硬化物からなることを特徴とする光導波路に関する。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、溶剤を使用しなくても、400〜850nm波長の可視光帯域でも透明性が高く、しかも比較的フッ素含有率の小さい光学材料、たとえば光導波路を与え得る硬化性組成物を提供できるほか、後述する各種の効果が奏される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
まず、本発明の硬化性組成物に使用する式(1):
【0031】
【化4】

(式中、X1は同じかまたは異なり、HまたはCH3;nは2〜7の整数;R1は同じかまたは異なり、結合手または炭素数1〜50の2価の炭化水素系有機基;R2は炭素数1〜50のn価の炭化水素系有機基)で表される非フッ素系多官能化合物(I)について説明する。
【0032】
式(1)において、X1は同じかまたは異なり、HまたはCH3であり、(メタ)アクリロイル基を構成する。X1としては、光反応性に優れる点からHが好ましい。
【0033】
式(1)で表される非フッ素系多官能化合物(I)はnが2〜7、すなわち(メタ)アクリロイル基を2〜7個有する非フッ素系多官能化合物である。nは、保存安定性が良好な点から2〜4、さらには2または3であることが好ましい。
【0034】
1は同じかまたは異なり、結合手または炭素数1〜50、好ましくは炭素数1〜30の2価のフッ素原子で置換されていない炭化水素系有機基であり、n価の有機基R2とアクリロイル基とを連結するスペーサーとして働く。
【0035】
1としては、芳香族環構造を含んでいないことが得られる硬化物の屈折率を低くする傾向があることから、低屈折率材料として用いる場合には好ましい。特に好ましいR1としては、結合手または炭素数1〜50のアルキレン基、特に、−CH2−、−C24−、−C612−などがあげられる。
【0036】
1はn(=2〜7)個存在し、同じでも異なっていてもよい。しかし、同一である方が合成の点で有利である。
【0037】
n価の有機基であるR2は、フッ素原子で置換されていない炭素数1〜50の炭化水素系有機基である。
【0038】
具体的には、
−(CH2p1− (R2−1−1)
(p1は1〜50の整数)、
【0039】
【化5】

(式中、p2は0または1〜20の整数、Z1、Z2、Z3は同じかまたは異なり、HまたはCH3)などがあげられる。
【0040】
また、n=2以上(3官能以上)のものとしては、式(R2−2):
【0041】
【化6】

(式中、p3は0または1〜5の整数)があげられる。
【0042】
具体的には、
【化7】

などがあげられる。
【0043】
また、式(R2−2)以外のものとして、たとえば
【化8】

などがあげられる。
【0044】
本発明の硬化性組成物で使用する非フッ素系多官能化合物(I)は、さらに化合物(I)の硬化物のガラス転移温度が−50℃以上であることが好ましい。
【0045】
「式(1)で表される化合物(I)の硬化物」とは、式(1)で表される化合物100質量部に対して、完全に硬化させる量の硬化開始剤(IV)を添加し、完全に硬化させて得られた物のことをいう。また「完全に硬化した」とは、硬化前の式(1)で表される多官能化合物のIR測定による炭素−炭素二重結合のピーク強度を100としたとき、硬化後の硬化物のIR測定による炭素−炭素二重結合のピーク強度が5以下になったことをいう。
【0046】
得られる硬化物のガラス転移温度Tgが低いと耐熱性が不充分となり、使用場所によっては変形などの問題が生ずる。
【0047】
好ましいTgは、20℃以上、さらには40℃以上、特に50℃以上であり、上限は300℃程度である。
【0048】
本発明で使用する非フッ素系多官能化合物(I)の具体例としては、たとえばジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、1,6ヘキサンジオールジアクリレート、1,4ブタンジオールジアクリレート、1,3ブタンジオールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレートなどがあげられる。
【0049】
そのほか、特開平5−9043号公報に記載されている非フッ素系の多官能化合物も使用可能である。
【0050】
つぎに、式(2):
【化9】

(式中、Rfは炭素数1〜20の直鎖または分岐鎖状の含フッ素アルキル基;nは1〜6の整数)で表される含フッ素α−クロロアクリレート化合物(II)について説明する。
【0051】
この含フッ素α−クロロアクリレート化合物(II)は、アクリレートのα位に塩素原子が置換している点に特徴があり、硬化物に硬度と高ガラス転移温度を付与するという特性を与えるものである。
【0052】
Rfは、含フッ素アルキル基であり、直鎖状でも分岐鎖状でもよい。好ましいRfは、炭素数1〜20のパーフルオロアルキル基であり、特に炭素数1〜8の直鎖状パーフルオロアルキル基が、合成の容易性の点から好ましい。
【0053】
具体例としては、たとえば−C49、−C25、−C37、−C613、−C817などが例示できる。
【0054】
nとしては、合成が容易な点から1〜4、特に2が好ましい。
【0055】
含フッ素α−クロロアクリレート化合物(II)の好ましい具体例としては、たとえば
【化10】

などがあげられる。
【0056】
つぎに、式(3):
【化11】

(式中、RはHまたはCH3;Rf1は炭素数1〜20の含フッ素アルキレン基;mは1〜6の整数)で表される含フッ素アクリレート化合物(III)について説明する。
【0057】
この含フッ素アクリレート化合物(III)は、非フッ素系のアクリレートのエステル部分が、
【化12】

と、末端(ω位)に水素原子が必ず含まれている点に特徴があり、これにより、非フッ素系多官能化合物(I)と含フッ素α−クロロアクリレート化合物(II)の両者の相溶性を向上させることができる。
【0058】
Rf1は、含フッ素アルキレン基であり、直鎖状でも分岐鎖状でもよい。好ましいRf1は、炭素数1〜20のパーフルオロアルキレン基であり、特に炭素数が2、4、6といった偶数である直鎖状パーフルオロアルキレン基が、合成の容易さの点から好ましい。
【0059】
具体例としては、たとえば−C24−、−C48−、−C612−、−C816−などが例示できる。
【0060】
mとしては、合成が容易な点から1〜6、特に1が好ましい。
【0061】
含フッ素アクリレート化合物(III)の好ましい具体例としては、たとえば
【0062】
【化13】

などがあげられ、特に相溶化作用にすぐれることから、4FA、4FM、8FM、8FAが好ましく、さらに8FMが好ましい。
【0063】
本発明の課題の1つは、400〜850nmの短波長帯域において、透明性が高く、耐熱性のある硬化性組成物を提供することにある。
【0064】
近赤外領域(1300〜1550nm)での透明性が求められる光学材料として使用する場合、硬化物のフッ素含有率が高くなければ、たとえば40質量%以上でなければ近赤外領域での透明性が向上しない。しかし、400〜850nmの短波長帯域においては、比較的フッ素含有率は高くなくても透明性は確保できる。しかしながら、光学材料として低屈折率材料が必要な場合は、フッ素含有率を上げる必要性があり、また、一般にフッ素含有率を上げるとガラス転移温度が低下する傾向にある。その課題を解決するためにα−フルオロアクリレートや特殊なエステル基を用いる方法があるが、いずれの方法も経済的な面で問題がある。そこで、これらの問題を解決するために本発明に至った。この観点から硬化性組成物全体のフッ素含有率は、5質量%以上、さらには20質量%以上で、50質量%以下、さらには40質量%以下とすることが好ましい。
【0065】
また、含フッ素α−クロロアクリレート化合物(II)と含フッ素アクリレート化合物(III)との合計フッ素含有率を5質量%以上、さらには10質量%以上で50質量%以下、さらには40質量%以下とすることが好ましい。
【0066】
第1の発明において、さらにフッ素含有率の調整のために、単官能の含フッ素アクリレート化合物(V)を配合してもよい。
【0067】
単官能含フッ素アクリレート化合物(V)としては、つぎの式(4):
【0068】
【化14】

(式中、X2はH、CH3、FおよびCF3よりなる群から選ばれる少なくとも1種;R3はR4および/またはR5であり、R4は式(4−1):
【0069】
【化15】

(式中、ZはFまたはCF3;m1、m2、m3、m4は0または1〜10の整数である。ただしm1+m2+m3+m4は1〜10の整数)で表わされる含フッ素エーテル部位を含む含フッ素エーテル基、
【0070】
5は式(4−2):
【化16】

(式中、Rf2およびRf3は同じかまたは異なり、炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基;R6は水素原子の一部または全てがフッ素原子で置換されていてもよい炭素数1〜5の炭化水素基;qは0〜6の整数;rは0〜6の整数)で表わされる部位を含む含フッ素アルキル基)
で表される1種または2種以上の単官能含フッ素アクリレート化合物(V)があげられる。
【0071】
この単官能含フッ素アクリレート化合物(V)は、フッ素含有率の向上および/またはガラス転移温度の向上という働きをし、硬化性組成物の透明性を向上させ、また硬化物に耐熱性を与える点から好ましい。
【0072】
かかる単官能含フッ素アクリレート化合物(V)は、フッ素含有率が10質量%以上であり、該単官能含フッ素アクリレート(V)の硬化物のガラス転移温度が−50℃以上である化合物が好ましく、0〜50質量%配合してもよい。
【0073】
これらのうち、R3が式(4−1)で表されるR4(含フッ素エーテル基)である単官能含フッ素アクリレート化合物(V1)の特徴は、式(4)においてR3が含フッ素アルキレンエーテル構造R4を含む特定のエステル部位を有するものであり、これらのエステル部位を用いることで、本発明の硬化性組成物に優れた溶解性、均一性をさらに与え、硬化後の良好な相溶性と透明性をさらに向上させることができるものである。
【0074】
また、単官能含フッ素アクリレート(V1)は直鎖状のフルオロアルキル基をエステル部にもつアクリレートに比べて低粘度であり、組成物を低粘度化することができるため、加工性にも優れる。また、これらの単官能含フッ素アクリレート(V1)は揮発性も低いため、成形加工の操作時にアクリレート(V1)成分の揮発により液状組成物の組成が変化し、硬化物の屈折率等の物性が変化するといった問題がない。また、硬化後も非フッ素系多官能化合物(I)、含フッ素α−クロロアクリレート化合物(II)および含フッ素アクリレート化合物(III)との相溶性が高いため、白濁を生じたり、加温により相分離するといった問題もない。また得られる硬化物は非晶性を示すという特徴をもつ。
【0075】
式(4−1)の含フッ素エーテル基を含むエステル部位を構成するR3としては、つぎに示すものが非限定的に例示できる。
【0076】
(V1−1):
【化17】

【0077】
(V1−2):
【化18】

【0078】
(V1−3):
【化19】

【0079】
(V1−4):
【化20】

【0080】
(V1−5):
【化21】

【0081】
(V1−6):
【化22】

【0082】
これらの中でも相溶性が良好であるとの観点から、特に好ましい構造は式(V1−1):
【化23】

(式中、m5は1〜5の整数)である。
【0083】
なかでも硬化物の耐熱性(高ガラス転移温度)、機械的強度の観点からm5は1〜3が、さらにm5は1がもっとも好ましい。
【0084】
式(4)におけるX2は単官能含フッ素アクリレート(V)の重合反応性、硬化物の近赤外領域での透明性、耐熱性(高ガラス転移温度)が良好であるとの観点からフッ素原子がもっとも好ましい。
【0085】
単官能含フッ素アクリレート(V1)としては、つぎに示すものが例示できる。
(V1a):
【化24】

【0086】
(V1b):
【化25】

【0087】
(V1c):
【化26】

【0088】
(V1d):
【化27】

【0089】
(V1e):
【化28】

【0090】
(V1f):
【化29】

【0091】
これらのうち、式(V1a−1):
【化30】

が、フッ素含有率の高さと硬化後のガラス転移温度の高さが良好な点でもっとも好ましい。
【0092】
式(4)において、R3が式(4−2)で表されるR5(分岐構造を含む水素原子の一部または全てがフッ素置換されていてもよい飽和炭化水素基)である単官能含フッ素アクリレート化合物(V2)の特徴は、分岐構造を含むことにより、非フッ素系多官能化合物(I)に対する溶解性が向上し、均一な液状組成物を得やすく、また硬化物の耐熱性(高ガラス転移温度)を高めることができる点で好ましい。
【0093】
5の具体例としてはつぎのものが例示できる。
【0094】
(V2−1):
【化31】

(式中、Rf2およびRf3は同じかまたは異なり、炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基;R6は水素原子の一部または全部がフッ素原子で置換されていてもよい炭素数1〜5の炭化水素基)で表される含フッ素第3級アルキル構造:
【0095】
エステル部位に分岐構造を含むことにより、相溶性の向上という効果に加え、特に硬化物に耐熱性(高ガラス転移温度)と適度な機械的強度や硬度を付与する。
【0096】
Rf2およびRf3は同じかまたは異なる炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基であり、具体的にはCF3、CF2CF3、CF2CF2CF3、CF2CF2CF2CF3、CF2CF2CF2CF2CF3であり、特に相溶性および硬化物の耐熱性(ガラス転移温度)が良好であるとの観点からCF3が好ましい。
【0097】
6はフッ素原子で置換されていてもよい炭素数1〜5の炭化水素基であり、具体的にはCH3、CH2CH3、CH2CH2CH3、CH2CH2CH2CH3、CH2CH2CH2CH2CH3、CH2CF3、CH2CH2CF3、CH2CF2CF3であり、特に相溶性および硬化物の耐熱性(ガラス転移温度)が良好であるとの観点からCH3であるのが好ましい。Rf2、Rf3およびR6の各々の炭素数が6以上になると分岐鎖が結晶化しやすく、硬化物の透明性を低下させるため好ましくない。
【0098】
含フッ素第3級アルキル構造を有する含フッ素アクリレート(V2a)の具体例としては、たとえばヘキサフルオロネオペンチルメタクリレート(6FNPM:X2=CH3、Rf2=Rf3=CF3、R6=CH3)、ヘキサフルオロネオペンチルα−フルオロアクリレート(6FNPF:X2=F、Rf2=Rf3=CF3、R6=CH3)、2,2−ビストリフルオロメチルブチルメタクリレート(X2=CH3、Rf2=Rf3=CF3、R6=CH2CH3)、2,2−ビストリフルオロメチルブチルα−フルオロアクリレート(X2=F、Rf2=Rf3=CF3、R6=CH2CH3)、
【0099】
【化32】

などが例示できる。
【0100】
これらのうち、硬化物の耐熱性に優れ、合成が容易な点からヘキサフルオロネオペンチルメタクリレート(6FNPM)
【化33】

【0101】
ヘキサフルオロネオペンチルα−フルオロアクリレート(6FNPF)
【化34】

が好ましく、特に光導波路を用いた光デバイスを加工する際に耐熱性が必要な場合や、光導波路を用いた光デバイスが車内や、FA用途等で高温下で使用される場合においては、硬化物の耐熱性(高ガラス転移温度)、近赤外領域での透明性の高い6FNPFが好ましい。
【0102】
(V2−2)
【化35】

(式中、Rf2、Rf3およびR6は式(4−2)と同じ;q1は1〜6の整数;r1は1〜6の整数)で表される含フッ素第3級アルキル構造:
【0103】
より具体的には、
【化36】

である。
【0104】
具体的な含フッ素アクリレート(V2b)としてはつぎのものが例示できる。
【0105】
【化37】

(式中、X3はH、CH3、F、ClまたはCF3;Rf2、Rf3およびR6は式(4−2)と同じ;q1およびr1は式(V2−2)と同じ)で表される含フッ素アクリレート。
【0106】
具体的には、
【化38】

である。
【0107】
(V2−3)
【化39】

(式中、Rf2、Rf3およびR6は式(4−2)と同じ)で表される含フッ素第3級アルキル構造:
【0108】
より具体的には、
【化40】

である。
【0109】
具体的な含フッ素アクリレート(V2c)としてはつぎのものが例示できる。
【0110】
【化41】

(式中、X3、Rf2、Rf3、R6は前記と同じ)
【0111】
具体的には、
ヘキサフルオロイソプロピルα−フルオロアクリレート(HFIPF)
【0112】
【化42】

【0113】
または
ヘキサフルオロイソプロピルメタクリレート(HFIPM)
【化43】

である。
【0114】
これらの中で6FNPM、6FNPF、ヘキサフルオロイソプロピルメタクリレート(HFIPM)、ヘキサフルオロイソプロピルα−フルオロアクリレート(HFIPF)が、含フッ素α−クロロアクリレート化合物に対して相溶性が良好な点で好ましい。中でも6FNPFとHFIPFは、非フッ素系多官能化合物(I)に対する溶解性が良好なため均一な液状組成物を得やすくなる点、硬化物の耐熱性(高ガラス転移温度)、透明性が良好であるとの観点で最も好ましい。
【0115】
単官能含フッ素アクリレート化合物(V)としては、フッ素含有率が10質量%以上であり、該単官能含フッ素アクリレート化合物(V)の硬化物のガラス転移温度が−50℃以上であるものが、透明性を低下させない点、硬化物の耐熱性を低下させない点で優れており、好ましい。
【0116】
第1の発明の硬化性組成物における各成分の含有量は、非フッ素系多官能化合物(I)が5〜98質量%、含フッ素α−クロロアクリレート化合物(II)が1〜94質量%および含フッ素アクリレート化合物(III)が1〜94質量%、さらに要すれば単官能含フッ素アクリレート化合物(V)が0〜50質量%であることが好ましい。
【0117】
非フッ素系多官能化合物(I)が5質量%より少ないと強度不足になる傾向にあり、また98質量%よりも多いと透明性が不足する傾向にある。好ましい下限は強度がさらに良好な点から30質量%、さらには40質量%であり、上限は透明性がさらに良好な点から60質量%、さらには70質量%である。
【0118】
含フッ素α−クロロアクリレート化合物(II)が1質量%より少ないと透明性が不足する傾向にあり、また94質量%よりも多いと強度不足になる傾向にある。好ましい下限はさらに透明性が良好な点から5質量%、さらには10質量%であり、上限はさらに強度が良好な点から20質量%、さらには40質量%である。
【0119】
含フッ素アクリレート化合物(III)が1質量%より少ないと透明性が不足する傾向にあり、また94質量%よりも多いと強度不足になる傾向にある。好ましい下限はさらに透明性が良好な点から5質量%、さらには10質量%であり、上限はさらに強度が良好な点から20質量%、さらには40質量%である。
【0120】
任意成分である単官能含フッ素アクリレート化合物(V)が50質量%よりも多いと透明性が低下する傾向にある。
【0121】
第1の発明の硬化性組成物には重合性化合物として、上記(I)〜(V)以外の単官能の重合性化合物(VI)を適宜配合してもよい。
【0122】
他の単官能重合性化合物(VI)としては、上記(II)、(III)および(V)以外の他の単官能含フッ素アクリレート化合物(VI−1)のほか単官能非フッ素系アクリレート化合物(VI−2)などがあげられる。
【0123】
配合する場合、その配合量は、含フッ素系と非フッ素系を問わず、透明性を確保する点から20質量%以下、さらには10質量%以下とする量が好ましい。
【0124】
他の単官能含フッ素アクリレート化合物(VI−1)としては、式(5):
【0125】
【化44】

(式中、X4はH、F、Cl、CH3またはCF3;R7は炭素数1〜30の水素原子の一部または全てがフッ素置換されてもよく、エーテル結合を含んでいてもよい飽和炭化水素基。ただし、X4およびR7の少なくとも一方はフッ素原子を含む)で表される単官能アクリレート(ただし、上記(II)、(III)および(V)のアクリレート化合物は除く)があげられる。
【0126】
好ましいR7としては、−CH2CF3、−CH225、−C2449、−C24817などがあげられる。
【0127】
単官能の非フッ素系アクリレート(VI−2)としては、式(5)においてX4およびR7がいずれもフッ素原子を含まない化合物があげられる。
【0128】
単官能非フッ素系アクリレート(VI−2)の非限定的な具体例としては、たとえばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレ−ト、イソプロピル(メタ)アクリレ−ト、n−ブチル(メタ)アクリレ−ト、イソブチル(メタ)アクリレ−ト、t−ブチル(メタ)アクリレ−ト、などの脂肪族エステル(メタ)アクリレ−ト類;そのほかフェニル(メタ)アクリレ−ト、アダマンチル(メタ)アクリレ−ト、ジメチルアダマンチル(メタ)アクリレ−トなどがあげられる。
【0129】
第1の発明の硬化性組成物には前記非フッ素系多官能化合物(I)に加えて、他の多官能化合物(VII)として、含フッ素系多官能化合物(VII−1)、および/または非フッ素系多官能化合物(I)以外の非フッ素系多官能化合物(VII−2)を配合してもよい。
【0130】
他の多官能化合物(VII)のうち含フッ素多官能化合物(VII−1)としては、たとえば式(6):
【0131】
【化45】

(式中、X5は同じかまたは異なり、H、CH3、F、ClおよびCF3よりなる群から選ばれる少なくとも1種;nは2〜7の整数;R8は同じかまたは異なり、結合手または炭素数1〜50の水素原子の一部または全てがフッ素原子に置換されていてもよい2価の有機基;R9は炭素数1〜50の水素原子の一部または全てがフッ素原子に置換されていてもよいn価の有機基;ただし、X5、R8およびR9の少なくとも1つがフッ素原子を含む)で表され、かつ
(1)フッ素含有率が40質量%以上、
(2)35℃での粘度が100,000mPa・秒以下、および
(3)式(1)で表される化合物の硬化物のガラス転移温度が70℃以上
である多官能含フッ素化合物(VII−1a)、または
【0132】
式(7):
【化46】

(式中、X6およびX7は同じかまたは異なり、H、CH3、F、ClおよびCF3よりなる群から選ばれる少なくとも1種。nは1〜6、たとえば1〜3の整数;R10は炭素数1〜50、たとえば3〜50の水素原子の一部または全てがフッ素原子に置換されていてもよい(n+1)価の有機基)で表される多官能含フッ素化合物(VII−1b)があげられる。
【0133】
式(6)、(7)において、X5、X6およびX7がフッ素原子であることが、多官能含フッ素化合物の反応性が良好である点、得られる硬化物の耐熱性が向上する点から好ましい(高ガラス転移温度化)。
【0134】
多官能含フッ素化合物(VII-1a)の具体例としては、たとえば
【化47】

などがあげられる。
【0135】
多官能含フッ素化合物(VII-1b)としては、たとえば
【化48】

【0136】
【化49】

【0137】
【化50】

などがあげられる。
【0138】
他の多官能化合物(VII)の添加量としては、0〜50質量%まで、好ましくは25質量%までである。
【0139】
第1の発明の硬化性組成物は、硬化開始剤(IV)を必須として含む。
【0140】
硬化開始剤(IV)は、0.01質量%以上で10質量%以下配合されていることが好ましい。
【0141】
硬化開始剤(IV)としては、活性エネルギー線を照射する硬化方法に使用する活性エネルギー線硬化開始剤(IV−1)、ラジカル重合による硬化法に使用するラジカル重合開始剤(IV−2)があげられる。
【0142】
活性エネルギー線硬化開始剤(IV−1)は、活性エネルギー線に曝されることによって初めてラジカルやカチオンなどを発生し、単量体の重合性炭素−炭素二重結合の重合(硬化反応)を開始させる触媒として働くものであり、通常、紫外光線でラジカルやカチオンを発生させるもの、特にラジカルを発生するものが汎用される。
【0143】
活性エネルギー線としては、350nm以下の波長領域の電磁波、つまり紫外光線、X線、γ線などのほか電子線があげられ、好ましくは紫外光線が用いられる。活性エネルギー線の照射のみでも硬化反応は生起するが、効率よく非フッ素系多官能化合物を硬化させるために、通常、活性エネルギー線硬化開始剤を用いる。
【0144】
本発明における活性エネルギー線硬化開始剤(IV−1)は、該化合物の炭素−炭素二重結合の種類(ラジカル反応性か、カチオン反応性か)、使用する活性エネルギー線の種類(波長領域など)、照射強度などによって適宜選択されるが、一般に紫外線領域の活性エネルギー線を用いてラジカル反応性の炭素−炭素二重結合を有する該化合物を硬化させる開始剤としては、たとえばつぎのものが例示できる。
【0145】
(アセトフェノン系)
アセトフェノン、クロロアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、ヒドロキシアセトフェノン、α−アミノアセトフェノンなど
【0146】
(ベンゾイン系)
ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンジルジメチルケタールなど
【0147】
(ベンゾフェノン系)
ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、ヒドロキシ−プロピルベンゾフェノン、アクリル化ベンゾフェノン、ミヒラーケトンなど
【0148】
(チオキサンソン類)
チオキサンソン、クロロチオキサンソン、メチルチオキサンソン、ジエチルチオキサンソン、ジメチルチオキサンソンなど
【0149】
(その他)
ベンジル、α−アシルオキシムエステル、アシルホスフィンオキサイド、グリオキシエステル、3−ケトクマリン、2−エチルアンスラキノン、カンファーキノン、アンスラキノンなど
【0150】
また、必要に応じてアミン類、スルホン類、スルフィン類などの公知の光開始助剤を添加してもよい。
【0151】
また、カチオン反応性の炭素−炭素二重結合を有する該化合物を硬化させる開始剤としては、つぎのものが例示できる。
【0152】
(オニウム塩)
ヨードニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、ジアゾニウム塩、アンモニウム塩、ピリジニウム塩など
【0153】
(スルホン化合物)
β−ケトエステル、β−スルホニルスルホンとこれらのα−ジアゾ化合物など
【0154】
(スルホン酸エステル類)
アルキルスルホン酸エステル、ハロアルキルスルホン酸エステル、アリールスルホン酸エステル、イミノスルホネートなど
【0155】
(その他)
スルホンイミド化合物類、ジアゾメタン化合物類など
【0156】
活性エネルギー線硬化開始剤(IV−1)の量は、官能基を有する化合物の全量に対して通常、下限は0.1質量%、好ましくは0.2質量%、より好ましくは0.3質量%、特に好ましくは0.5質量%であり、上限は15質量%、好ましくは10質量%、より好ましくは8質量%、特に好ましくは7質量%である。
【0157】
つぎに、ラジカル重合開始剤(IV−2)について説明する。
【0158】
ラジカル重合を開始させる方法としては、たとえば公知のラジカル重合開始剤を使用して、加熱によってラジカルを発生させる方法が好ましい。
【0159】
ラジカル重合開始剤(IV−2)としては、公知のパーオキサイド類、アゾ系開始剤などが利用できる。
【0160】
ラジカル重合開始剤(IV−2)の量は、官能基を有する化合物の全量に対して通常、下限は0.01質量%、好ましくは0.05質量%、より好ましくは0.1質量%、特に好ましくは0.5質量%であり、上限は10質量%、好ましくは7質量%、より好ましくは5質量%、特に好ましくは3質量%である。
【0161】
第1の発明の硬化性組成物には、さらに硬化収縮防止剤(VIII)を配合することが好ましい。硬化収縮防止剤(VIII)は、重合硬化にともなって硬化物が体積収縮する現象を低下させる(体積収縮を抑制する)という役割を果たす配合剤である。
【0162】
硬化収縮防止剤(VIII)としては、たとえばオリゴマー、ポリマーなどの有機物(VIII−1)や炭素繊維、酸化ケイ素や酸化チタンといった無機フィラー(VIII−2)などが例示できる。
【0163】
オリゴマー、ポリマーなどの有機物(VIII−1)としては、たとえばアクリル系オリゴマー、アクリル系ポリマー、エポキシ系オリゴマー、ウレタン系ポリマー、ウレタン系オリゴマー、シリコーン系ポリマー、シリコーン系オリゴマーなどが具体的にあげられ、特に前記化合物(I)、(II)、(III)との相溶性が良好な点からアクリル系オリゴマーが好ましい。また、(メタ)アクリロイル基、グリシジル基、イソシアネート基などの官能基を有するものが好ましく、なかでも(メタ)アクリロイル基が反応性、相容性の観点から好ましい。官能基数としては1〜6、なかでも1〜4、特に2が、反応性、安定性の点から好ましい。また、このような官能基含有オリゴマーの例としては、Ebecryl 230、Ebecryl 270、Ebecryl 8402 (以上、ダイセル・サイテック(株)製)、紫光UV−6300B(日本合成化学(株)製)、ビームセット550、ビームセット577(以上、荒川化学(株)製)、アロニックスM−8030、アロニックスM−8060、アロニックスM−8530、アロニックスM−8560(以上、東亞合成(株)製)などが例示できる。また、「光硬化技術データブック 材料編」、テクノネット社編、2000年発行に例示されているものもあげられる。
【0164】
無機フィラー(VIII−2)としては、たとえば炭素繊維、酸化ケイ素や酸化チタン、二酸化ケイ素ナノ微粒子などが具体的にあげられ、特に透明性が良好な点から二酸化ケイ素ナノ微粒子が好ましい。
【0165】
硬化収縮防止剤(VIII)の配合量は、非フッ素系多官能化合物(I)100質量部に対して、0〜80質量部、さらには10〜50質量部でよい。
【0166】
第1の発明の硬化性組成物は、前記のように、光導波路などの光学材料に加工するためには、スピンコート、ディップ、キャスト法等の方法により、薄膜(コア層、クラッド層)を形成し、適宜硬化する加工法が一般的にとられている。有機溶剤を使用しない本発明の硬化性組成物においては、こうした作業性の点から室温近辺(35℃)で液状である必要がある。
【0167】
第1の発明の硬化性組成物の好ましい粘度(35℃)範囲は、作業性の観点から、2mPa・秒以上、さらには5mPa・秒以上、特に10mPa・秒以上であり、10,000mPa・s以下、さらには8,000mPa・s以下の範囲が好ましい。
【0168】
有機溶媒を実質的に含まないものが好ましいが、粘度を調整する目的などで硬化物の物性に悪影響を与えない範囲で溶剤などを添加してもよい。また、他の化合物を単なる粘度調整剤として別途加えてもよい。ただしその添加量は、本発明が目的としている効果を損なわない範囲である。
【0169】
また、第1の発明の組成物から得られる硬化物の屈折率は、非フッ素系多官能化合物(I)、含フッ素α−クロロアクリレート化合物(II)、含フッ素アクリレート化合物(III)、さらには単官能含フッ素アクリレート化合物(V)、他の単官能重合性化合物(VI)、他の多官能化合物(VII)の種類や量を適宜選定することにより調整できる。
【0170】
そのほかに屈折率調整成分として、必要に応じて低分子量化合物を添加してもかまわない。屈折率調整剤の具体例としては、フタル酸ベンジル−n−ブチル(屈折率:1.575)、1−メトキシフェニル−1−フェニルエタン(屈折率:1.571)、安息香酸ベンジル(屈折率:1.568)、ブロモベンゼン(屈折率:1.557)、o−ジクロロベンゼン(屈折率:1.551)、m−ジクロロベンゼン(屈折率:1.543)、1,2’−ジブロモエタン(屈折率:1.538)、3−フェニル−1−プロパノール(屈折率:1.532)、ジフェニルフタル酸(C64(COOC652)、トリフェニルフォスフィン((C653P)、ジベンジルフォスフェート((C65CH2O)2PHO2)、4,4’−ジブロモベンジル、4,4’−ジブロモビフェニル、2,4’−ジブロモアセトフェノン、3’,4’−ジクロロアセトフェノン、3,4−ジクロロアニリン、2,4−ジブロモアニリン、2,6−ジブロモアニリン1,4−ジブロモベンゼンなどの化合物などがあげられる。
【0171】
第1の発明の硬化性組成物には用途や要求特性に応じて適宜公知の添加剤を使用してもよい。添加剤の代表例としては、たとえばレベリング剤、酸化防止剤などがあげられる。
【0172】
本発明の第2の発明は、第1の発明の硬化性組成物を硬化して得られる硬化物に関する。
【0173】
硬化物は、硬化性組成物に硬化開始剤(IV)や適宜の各種添加剤を加えた後、たとえば成形または基材に塗布し、活性エネルギー線を照射したりまたは加熱して硬化させることにより製造することができる。
【0174】
活性エネルギー線の照射線量は使用する活性エネルギー線硬化剤の種類、硬化膜の膜厚などによって適宜選定すればよい。加熱温度も使用するラジカル重合開始剤の種類などによって適宜選定すればよい。
【0175】
第2の発明の硬化物は、非フッ素系多官能化合物を含んでいるにもかかわらず、耐熱性および透明性、さらには低屈折率性に優れている。さらには溶剤を使用せずに調製した硬化性組成物を用いて得られる硬化物は、残留溶媒の影響がなく、またマクロボイドの発生が大きく低減化でき、光学材料として使用する場合、光損失を少なくすることができる。
【0176】
以下、第2の発明の硬化物の物性および特性を説明する。
【0177】
分子量は、非フッ素系多官能化合物(I)を用いるので、単独でも架橋構造であり、他の重合性成分を配合するときは、複雑に反応(架橋、グラフト、IPN構造)しているため、特定できない。
【0178】
ガラス転移温度Tgは、その組成により幅広い範囲で選択できるが、50℃以上にすることが好ましい。さらに、各成分を選択することにより、Tgを100℃以上、さらには130℃以上、またさらに150℃以上にすることも可能である。Tgを高くするには、非フッ素系多官能化合物(I)成分を増やしたり、単官能含フッ素アクリレート(V)成分の配合量を増やしたりすればよい。
【0179】
熱分解温度Tdは180℃以上であり優れた耐熱性を有している。さらに、各成分を選択することにより、Tdを200℃以上、さらには230℃以上にすることも可能である。
【0180】
第2の発明の硬化物は、非フッ素系多官能化合物(I)を使用しているため、全体として非晶性となる。硬化物が非晶性の場合は、透明性に優れ、光導波路、光ファイバーなどの光伝送媒体における伝送損失を低減できる点で有利である。
【0181】
第2の発明の硬化物は、その屈折率を1.46以下にすることが可能である。屈折率をさらに下げる、たとえば1.45以下にすることは全体のフッ素含有率を増加させることで実現できる。こういった低屈折率性は光導波路、光ファイバー用のクラッド材、反射防止材として有利である。
【0182】
また第2の発明の硬化物は可視領域の光に対して透明性が高いものであり、特に400〜850nmの波長の光に対して透明性が高い。この観点から、本発明の硬化物を光学材料として用いる場合、400〜850nm波長光の光透過率が90%以上、さらには92%以上、特に94%以上のものを提供できる。
【0183】
またさらに、第2の発明の硬化物は近赤外領域の光に対しても透明性が高いものであり、特に850nm、1310nm(さらには1550nm)の波長の光に対して透明性が高い。この観点から、第2の発明の硬化物を光学材料として用いる場合は、850nm、1310nm(または1550nm)波長光の光透過率が90%以上、さらには92%以上、特に94%以上のものを提供できる。
【0184】
こうした光学的な透明性を高めるため、本発明においてはフッ素含有率が20質量%以上、さらには40質量%以上において、透明性に優れ、屈折率の小さい硬化物が得られる。フッ素含有率の下限は、10質量%、さらには5質量%である。
【0185】
本発明の第3の発明は、硬化性組成物の硬化物からなる光学材料に関する。また、コア部とクラッド部からなる光導波路であって、コア部およびクラッド部の少なくとも一方が、本発明の硬化性組成物の硬化物からなることを特徴とする光導波路にも関する。
【0186】
まず、光学材料に関して説明する。
【0187】
第2の発明の硬化物は上記のとおり透明で耐熱性が高く、また低屈折率の光学材料を与えるのに充分なフッ素含有率を有しており、たとえば光伝送用媒体として有用である。特にコア材が石英、もしくは光学ガラスであるプラスチッククラッド光学ファイバーのクラッド材料、コア材がプラスチックである全プラスチック光学ファイバーのクラッド材料、反射防止コーテイング材料、レンズ材料、光導波路材料、プリズム材料、光学窓材料、光記憶ディスク材料、非線形型光素子、ホログラム材料、フォトリフラクティブ材料などといった光学材料、また、封止部材用材料、さらにはそれらの材料を硬化して得られる硬化物を含む光デバイスなどに使用可能である。
【0188】
封止部材用材料としては、たとえば発光ダイオード(LED)、EL素子、非線形光学素子、フォトリフラクティブ素子、フォトニクス結晶などの発光素子や受光素子や波長変換素子、光分岐挿入素子、光クロスコネクト素子、モジュレーターなどの光機能素子のパッケージ(封入)、表面実装などに用いられる材料などがあげられる。
【0189】
第3の発明の光学材料で封止された光デバイスは、封止部分が含フッ素ポリマーに由来する優れた耐湿性に加え、ポリマー成分を有するため重合硬化に基づく硬化収縮が少なく、極めて優れた耐湿信頼性を有している。また、使用される波長帯域での優れた透明性と耐熱性を兼ね備えた材料でもある。
【0190】
これらの封止された光素子は種々の場所に使用されるが、非限定的な例示としては、ハイマウントストップランプやメーターパネル、携帯電話のバックライト、各種電気製品のリモートコントロール装置の光源などといった発光素子;カメラのオートフォーカス、CD/DVD用光ピックアップ用受光素子などがあげられる。
【0191】
第3の発明の材料を用いた封止部材用材料には、必要に応じて光酸化剤、さらに硬化促進剤、染料、変性剤、劣化防止剤、離型剤などの添加剤を配合し、ドライブレンド法、さらに溶融ブレンド法などを組み合わせて常法により混合・混練したのち粉砕し、必要に応じて打錠することにより製造することができる。
【0192】
封止部材用材料による封止は常法により行なうことができ、トランスファー成形法などの公知の成形法により封止すべき箇所に充填し成形することにより実施できる。
【0193】
つぎに光導波路に関して説明する。光導波路用部材は、光導波路型素子を構成する部材であり、基板上に形成される。ここで、光導波路型素子とは、光機能素子間を光導波路で接続したもので、光導波路部はコア部とクラッド部から構成される。一方、光機能素子とは光通信信号に対し、増幅、波長変換、光合分波、波長選択等の作用を示す素子で、形態も様々ではあるが、光合分波や光増幅のように導波路型の機能素子がある。その場合は、機能素子もコア部とクラッド部より形成されている。第3の発明の光学材料はいずれのコア部、クラッド部にも用いることが可能で、コア部のみ、またはクラッド部のみに本発明の光学材料を用いてもよい。また、種々の機能性化合物、たとえば非線形光学材料や蛍光発光性の機能性有機色素、フォトリフラクティブ材料などを第3の発明の光学材料に含有させて、導波路型の機能素子のコア材として用いることも可能である。さらに、コア部とクラッド部の両者が硬化性含フッ素樹脂組成物を硬化させたものであることがより好ましい。
【0194】
本発明によれば、硬化性組成物の硬化物を含む光導波路型素子をも提供できる。
【0195】
光導波路型素子がコア部とクラッド部とを有する場合、コア部の屈折率はクラッド部のそれより高くなければならないが、コア部とクラッド部との屈折率の差は、0.003以上であることが好ましく、0.01以上であることがさらに好ましい。本発明の材料は幅広く屈折率の制御が可能なため、材料の選択範囲は広い。
【0196】
光導波路素子において、コア部の幅は1〜200μmが好ましく、さらに好ましくは5〜50μmである。またコア部の高さは、5〜50μmが好ましい。コア部の幅および高さの精度は、平均値の5%以下が好ましく、さらに好ましくは1%以下である。
【0197】
図1に、典型的な光導波路型素子の構造を概略断面図で例示する。1は基板、2はコア部、4および5はクラッド部である。かかる光導波路型素子は、光機能素子間を接続するために使用され、一方の光機能素子の端末から送出された光は、光導波路型素子のコア部2内を、たとえばコア部2とクラッド部4、5との界面で全反射を繰り返しながら、他方の光機能素子端末へと伝播される。光導波路型素子の形式は、平面型、ストリップ型、リッジ型、埋込み型等の適宜の形式をとることができる。
【0198】
光導波路型素子の基板材料は、特に限定されるものではなく、金属、半導体材料、セラミック、ガラス、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等の適宜の材料を使用することができる。
【0199】
本発明の材料を用いる光導波路型素子の製造工程の一例を図2に示す。光導波路型素子は、フォトリソグラフィー技術を利用して製造される。まず図2(a)に示すように、予め基板1上にクラッド部4を形成し、コア部を形成する本発明の光学材料の膜3を形成する。これらのクラッド部4、コア部を形成する光導波路用材料の膜の形成に際しては、それらの均一な液状組成物を回転塗布、流延塗布等の塗布手段で塗布する方法、金型を用いる方法がある。前記の組成物は、好ましくは、たとえば孔径0.2μm程度のフィルターで濾過して調製される。
【0200】
前記硬化性組成物の好ましい粘度は、一般に2〜50,000mPa・s、特に好ましくは5〜10,000mPa・sであり、さらに好ましくは10〜8,000mPa・sである。
【0201】
ついで、図2(b)に示すように、硬化性組成物に対して、所定パターン形状のマスク6を介して活性エネルギー線7を照射する。その後、必要に応じて予備焼成を行う。光硬化すると硬化性組成物が分子間で重合する。その結果、樹脂硬度が高くなり、機械的強度が向上したり、耐熱性が向上する。多官能含フッ素化合物を用いるので、硬化前には溶解していた溶剤に対して不溶となるだけでなく、他の数多くの種類の溶剤に対して不溶となる。すなわち、フォトレジスト材料として機能する。ついで、未硬化の硬化性組成物を適当な溶剤で溶解、留去することで、図2(c)に示すように、所定パターン形状のコア部2を形成する。光導波路型素子は、以上のようにして形成されたコア部2のみを有する形態でそのまま使用することもできるが、コア部2の形成後、図2(d)に示すように、さらにクラッド部5を形成することが好ましい。このクラッド部5は、その材料溶液を回転塗布、流延塗布、ロール塗布等により塗布することにより形成することが好ましく、特に回転塗布が好ましい。またクラッド部5の均一な液状組成物も、好ましくは、たとえば孔径0.2μm程度のフィルターで濾過して調製される。
【0202】
硬化方法は適宜公知の方法を採用すればよい。また前記のように光硬化する場合はプロセスが簡単になり、有利である。また、導波路の形成方法としては、上記の方法以外にも、最近、硬化性組成物を用いる新しい成形方法が提案されている。たとえば、微細金型を用いて光導波路を作成するスタンパ成形方法、エンボス加工、シリコーンゴムの鋳型を介するナノインプリント方法である。これらのいずれの成形においても、第1の本発明の硬化性組成物は適用できる。
【0203】
第2の発明の硬化物は、光学用途に特に好適であるが、そのほか硬化して得られる有機ポリマーの特性を活用して、光学用途以外の用途、たとえば接着剤、塗料、各種成形材料、歯科用材料などを製造する材料としても有用である。
【0204】
なお、本明細書における各種の物性および特性は、以下の方法で測定したものである。
【0205】
(1)フッ素含有率(F)
酸素フラスコ燃焼法により試料10mgを燃焼し、分解ガスを脱イオン水20mlに吸収させ、吸収液中のフッ素イオン濃度をフッ素選択電極法(フッ素イオンメータ。オリオン社製の901型)で測定することによって求めた値を採用する(質量%)。
【0206】
(2)粘度(35℃)
JIS K7117−2に準拠している東機産業(株)製のE型粘度計を用い、35℃にて粘度を測定する(mPa・秒)。
【0207】
(3)ガラス転移温度(Tg)
DSC(示差走査熱量計)を用いて、以下の製法で製造した硬化物を1st runを昇温速度10℃/分で200℃まで上げ、200℃で1分間維持したのち降温速度10℃/分で25℃まで冷却し、ついで昇温速度10℃/分で得られる2nd runの吸熱曲線の中間点を採用する。
【0208】
(硬化物の製造)
非フッ素系多官能化合物に硬化開始剤として2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノンを0.5質量%加えて硬化性組成物を調製する。ついでアルミ箔上にアプリケーターを用いて膜厚が約100μmとなるように塗布し、被膜に高圧水銀灯を用い、1500mJ/cm2Uの強度で紫外線を照射したのち、アルミ箔を希塩酸で溶かし、硬化フィルムとする。この硬化フィルムをさらに70℃の電気炉内で6時間ポストキュアさせた後、完全に硬化させて完全硬化物を得る(完全硬化は、IR分析によるC=Cピーク強度が5以下となることで確認する)。
【0209】
(4)屈折率(n)
ナトリウムD線を光源として25℃においてアッベ屈折率計を用いて測定した値を採用する。
【0210】
(5)透明性(可視光領域での光透過率)
自記分光光度計((株)日立製作所製のU−3310(商品名))を用いて波長300〜800nmにおける約100μm厚のサンプル(硬化フィルム)の分光透過率曲線を測定した値を採用する。
【0211】
(6)硬化収縮
硬化収縮は硬化前後の密度を測定することにより、以下の式で算出した。
ΔV(硬化収縮)=(1/d1−1/d2)/(1/d1)×100
ここで、d1は硬化前の密度、d2は硬化後の密度である。
【0212】
硬化前の密度(d1)は京都電子(株)製の自動密度計(DA−101B)により25℃において測定し、硬化後の密度(d2)は(株)東洋精機製作所製の自動比重計D−1により25℃において測定した値を採用する。
【実施例】
【0213】
つぎに本発明を実施例にしたがって具体的に説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
【0214】
なお、実施例および比較例に用いた化合物の一覧をつぎに示す。
【0215】
【化51】

UP−1010:東亜合成(株)製の無溶剤型アクリルポリマー ARUFON UP−1010
【0216】
実施例1(組成物の物性評価)
つぎの組成の硬化性組成物を調製した。
TMP−A:50質量部
9FCA:25質量部
4FMを25質量部
2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン:0.5質量部
【0217】
この硬化性組成物の硬化前の35℃における粘度を測定し、液状組成物の外観を目視で評価した。評価の基準はつぎのとおりである。結果を表1に示す。
○:透明でかつ均一であり、550nmの光の透過率が80%以上である。
△:一部に白濁(ゲル状物)が認められる。
×:不透明で白濁。
【0218】
ついでアルミ箔上にアプリケーターを用いて膜厚が約100μmとなるように硬化性組成物を塗布し、被膜に高圧水銀灯を用い、1500mJ/cm2Uの強度で紫外線を照射したのち、アルミ箔を希塩酸で溶かしてサンプルフィルムとした。
【0219】
サンプルフィルム(硬化後)の屈折率(n)、ガラス転移温度(Tg)、フッ素含有率(F)、透明性(可視633nmでの光透過率)(T(633))を調べた。
【0220】
また、外観をつぎの基準により目視で評価した。
○:透明でかつ均一である。
△:一部に白濁(にごり)が認められる。
×:不透明で白濁。
【0221】
以上の結果を表1に示す。
【0222】
実施例2〜10
表1に示す組成の硬化性組成物を調製し、実施例1と同様に硬化前後の各種物性を測定した。結果を表1に示す。
【0223】
【表1】

【0224】
実施例11〜12
表2に示す組成の硬化性組成物を調製し、実施例1と同様に硬化前後の各種物性を測定した。結果を表2に示す。
【0225】
【表2】

【0226】
実施例13〜14
表3に示す組成の硬化性組成物を調製し、実施例1と同様に硬化前後の各種物性を測定した。結果を表3に示す。
【0227】
【表3】

【0228】
実施例15〜17
表4に示す組成の硬化性組成物を調製し、実施例1と同様に硬化前後の各種物性を測定した。結果を表4に示す。
【0229】
【表4】

【0230】
比較例1〜7
表5に示す組成の比較用の硬化性組成物を調製し、実施例1と同様に硬化前後の各種物性を測定した。結果を表5に示す。
【0231】
【表5】

【0232】
実施例18
つぎの組成の硬化性組成物を調製した。
TMP−A:50質量部
9FCA:25質量部
8FM:25質量部
2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン:0.5質量部
【0233】
実施例1と同様に硬化前の物性を測定するとともに密度を測定した。結果を表6に示す。また、実施例1と同様に硬化後の物性を測定するとともに密度も測定した。硬化前後の密度変化より硬化収縮(%)を算出した。結果を表6に示す。
【0234】
実施例19
つぎの組成の硬化性組成物を用いた以外は実施例18と同様に硬化前後の各種物性を測定した。結果を表6に示す。
TMP−A:45質量部
9FCA:22.5質量部
8FM:22.5質量部
UP−1010:10質量部
2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン:0.5質量部
【0235】
実施例20
つぎの組成の硬化性組成物を用いた以外は実施例18と同様に硬化前後の各種物性を測定した。結果を表6に示す。
TMP−A:40質量部
9FCA:20質量部
8FM:20質量部
UP−1010:20質量部
2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン:0.5質量部
【0236】
実施例21
つぎの組成の硬化性組成物を用いた以外は実施例18と同様に硬化前後の各種物性を測定した。結果を表6に示す。
TMP−A:35質量部
9FCA:17.5質量部
8FM:17.5質量部
UP−1010:30質量部
2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン:0.5質量部
【0237】
【表6】

【0238】
実施例22(光導波路の作製)
以上の実施例の結果から、実施例10の硬化性含フッ素樹脂組成物(硬化後の屈折率:1.445)をクラッドに、実施例8の硬化性含フッ素樹脂組成物(硬化後の屈折率:1.470)をコアに用いればコア/クラッド型の光導波路を形成できることがわかった。
【0239】
そこで実施例10で得られた硬化性含フッ素樹脂組成物を0.5μmのフィルターでろ過後、シリコンウェハ上に回転数200rpmで10秒間、ついで回転数500rpmで30秒間スピンコートさせた。高圧水銀灯を用い、1500mJ/cm2Uの強度で紫外線を照射してシリコン基板上に約15μmの厚さのクラッド層を得た。つぎに実施例8の硬化性含フッ素樹脂組成物を0.5μmのフィルターでろ過後、先のクラッド層の上に回転数500rpmで10秒間、ついで回転数1000rpmで30秒間スピンコートさせた。
【0240】
つぎに、ホトマスクを介して光照射を行ない、コア部用の膜を硬化させた。その後、コア部用膜の未硬化の部分を溶剤で洗い流し、コア部として長さ50mm、幅8μm、高さ8μmの直線矩形パターンに加工した。加工後、クラッド部を図2にしたがって説明した工程でコア部上に塗布して光導波路を作製した。
【0241】
つぎに、得られたこの光導波路の伝送損失をカットバック法により測定したところ、波長633nmで0.95dB/cm以下、波長850nmで0.63dB/cm、となり、可視光から近赤外光までの通信波長帯域の光を良好に伝達できた。
【0242】
また、併せて85℃、湿度85%の恒温槽内で168時間保持するという耐久テスト後の伝送損失(dB/cm)の変化を表7に示す。
【0243】
【表7】

【図面の簡単な説明】
【0244】
【図1】光導波路型素子の構造の概略断面図である。
【図2】光導波路型素子の製造工程のブロック図である。
【符号の説明】
【0245】
1 基板
2 コア部
3 膜
4 クラッド部
5 クラッド部
6 マスク
7 活性エネルギー線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(I)式(1):
【化1】

(式中、X1は同じかまたは異なり、HまたはCH3;nは2〜7の整数;R1は同じかまたは異なり、結合手または炭素数1〜50の2価の炭化水素系有機基;R2は炭素数1〜50のn価の炭化水素系有機基)で表される非フッ素系多官能化合物、
(II)式(2):
【化2】

(式中、Rfは炭素数1〜20の直鎖または分岐鎖状の含フッ素アルキル基;nは1〜6の整数)で表される含フッ素α−クロロアクリレート化合物、
(III)式(3):
【化3】

(式中、RはHまたはCH3;Rf1は炭素数1〜20の含フッ素アルキレン基;mは1〜6の整数)で表される含フッ素アクリレート化合物、および
(IV)硬化開始剤
を含む硬化性組成物。
【請求項2】
前記式(1)で表される非フッ素系多官能化合物(I)の硬化物のガラス転移温度が−50℃以上である請求項1記載の硬化性組成物。
【請求項3】
前記式(1)で表される非フッ素系多官能化合物(I)において、R1およびR2がいずれも芳香族環構造を含んでいない請求項1または2記載の硬化性組成物。
【請求項4】
前記式(2)で表される含フッ素α−クロロアクリレート化合物(II)において、Rfがパーフルオロアルキル基である請求項1〜3のいずれかに記載の硬化性組成物。
【請求項5】
前記式(3)で表される含フッ素アクリレート化合物(III)において、Rf1がパーフルオロアルキレン基である請求項1〜4のいずれかに記載の硬化性組成物。
【請求項6】
前記式(2)で表される含フッ素α−クロロアクリレート化合物(II)と前記式(3)で表される含フッ素アクリレート化合物(III)との合計フッ素含有率が5質量%以上で65質量%以下である請求項1〜5のいずれかに記載の硬化性組成物。
【請求項7】
非フッ素系多官能化合物(I)を5〜98質量%、含フッ素α−クロロアクリレート化合物(II)を1〜94質量%および含フッ素アクリレート化合物(III)を1〜94質量%含む請求項1〜6のいずれかに記載の硬化性組成物。
【請求項8】
前記硬化開始剤(IV)が0.01質量%以上で10質量%以下配合されている請求項1〜7のいずれかに記載の硬化性組成物。
【請求項9】
硬化性組成物の35℃での粘度が2〜50,000mPa・秒である請求項1〜8のいずれかに記載の硬化性組成物。
【請求項10】
組成物全体のフッ素含有率が5質量%以上で60質量%以下である請求項1〜9のいずれかに記載の硬化性組成物。
【請求項11】
請求項1〜10いずれかに記載の硬化性組成物を硬化してなる硬化物。
【請求項12】
フッ素含有率が20質量%以上である請求項11記載の硬化物。
【請求項13】
ガラス転移温度が50℃以上である請求項11または12記載の硬化物。
【請求項14】
請求項11〜13のいずれかに記載の硬化物からなる光学材料。
【請求項15】
コア部とクラッド部からなる光導波路であって、コア部およびクラッド部の少なくとも一方が、請求項11〜13のいずれかに記載の硬化物からなる光導波路。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−137998(P2007−137998A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−332811(P2005−332811)
【出願日】平成17年11月17日(2005.11.17)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】