説明

移動体位置検出装置、移動体位置検出システム及びプログラム

【課題】データ量の増加を軽減し、検出漏れを防ぐことができる移動体位置検出装置、移動体位置検出システム及びプログラムを提供する。
【解決手段】移動体位置検出装置10は、移動体2に設けられた無線タグ3から固定して配置された複数のセンサ(受信デバイス)4により受信されたタグ識別情報を、受信デバイス識別情報とともに受信履歴情報として順次記憶するセンサ履歴保持手段11と、所定の回数連続していずれかのセンサ4で受信されたタグ識別情報が受信履歴情報に存在するか否かを判定し、存在すると判定したとき、当該タグ識別情報に対応する移動体2の位置を、タグ識別情報を連続して所定の回数受信したセンサ4の位置に基づいて決定する検出判定手段13とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体位置検出装置、移動体位置検出システム及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
電池を内蔵したアクティブ型の無線タグは、数十m程度の長距離での交信が可能なことから、無線タグを保持した人の位置検出に使用されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
信号を発信する無線タグを用いた位置検出においては、信号の干渉や衝突が起きると、信号自体はノイズとなり、存在しないIDを含む信号として認識される可能性があるため、受信側では、一般に、複数回同じIDの信号を受信して信号が安定した時に、そのIDを検出したIDとして確定させる等のノイズ除去の処理が行われている。
【0004】
【特許文献1】特開2007−199967号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、データ量の増加を軽減し、検出漏れを防ぐことができる移動体位置検出装置、移動体位置検出システム及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、上記目的を達成するため、以下の移動体位置検出装置、移動体位置検出システム及びプログラムを提供する。
【0007】
[1]移動体に設けられた無線タグから、固定して配置された複数の受信デバイスにより受信されたタグ識別情報が、受信デバイス識別情報とともに順次記憶されたデータベースに、所定の回数連続していずれかの前記受信デバイスで受信された前記タグ識別情報が存在するか否かを判定し、存在すると判定したとき、当該タグ識別情報に対応する前記移動体の位置を、前記タグ識別情報を連続して前記所定の回数受信した前記受信デバイスの位置に基づいて決定する検出判定手段を備えた移動体位置検出装置。
【0008】
[2]移動体に設けられた無線タグから、固定して配置された複数の受信デバイスにより受信されたタグ識別情報を、受信デバイス識別情報とともにデータベースに順次記憶する記憶手段と、前記データベースに所定の回数連続していずれかの前記受信デバイスで受信された前記タグ識別情報が存在するか否かを判定し、存在すると判定したとき、当該タグ識別情報に対応する前記移動体の位置を、前記タグ識別情報を連続して前記所定の回数受信した前記受信デバイスの位置に基づいて決定する検出判定手段と、を備えた移動体位置検出装置。
【0009】
[3]前記データベースは、前記受信履歴情報の他に、前記複数の受信デバイス間の最短の道のりの距離情報を記憶し、前記検出判定手段は、前記距離情報、及び前記移動体の想定される最大移動速度に基づいて、受信不可能な前記タグ識別情報を除外して前記移動体の位置を決定する前記[1]又は[2]に記載の移動体位置検出装置。
【0010】
[4]固定して配置された複数の受信デバイスと、移動体に設けられ、一定の時間間隔でタグ識別情報を発信する無線タグと、前記複数の受信デバイスが受信したタグ識別情報を、受信デバイス識別情報とともにデータベースに順次記憶する記憶手段と、前記データベースに所定の回数連続していずれかの前記受信デバイスで受信された前記タグ識別情報が存在するか否かを判定し、存在すると判定したとき、当該タグ識別情報に対応する前記移動体の位置を、前記タグ識別情報を連続して前記所定の回数受信した前記受信デバイスの位置に基づいて決定する検出判定手段とを有する移動体位置検出装置と、を備えた移動体位置検出システム。
【0011】
[5]前記無線タグが前記タグ識別情報を発信する前記一定の時間間隔は、前記移動体の想定される最大移動速度で移動するとき、前記複数の受信デバイスのうち連続する所定の数の受信デバイスが前記タグ識別情報をそれぞれ受信するように定められた前記[4]に記載の移動体位置検出システム。
【0012】
[6]前記無線タグは、電池を内蔵したアクティブ型である前記[4]に記載の移動体位置検出システム。
【0013】
[7]移動体に設けられた無線タグから、固定して配置された複数の受信デバイスにより受信されたタグ識別情報を、受信デバイス識別情報とともに順次記憶されたデータベースに、所定の回数連続していずれかの前記受信デバイスで受信された前記タグ識別情報が存在するか否かを判定する判定ステップと、前記判定ステップにおいて、存在すると判定したとき、当該タグ識別情報に対応する前記移動体の位置を、前記タグ識別情報を連続して前記所定の回数受信した前記受信デバイスの位置に基づいて決定する決定ステップとをコンピュータに実行させるためのプログラム。
【発明の効果】
【0014】
請求項1、2に係る移動体位置検出装置、請求項4に係る移動体位置検出システム、及び請求項7に係るプログラムによれば、データ量の増加を軽減し、検出漏れを防ぐことができる。
【0015】
請求項3に係る移動体位置検出装置によれば、本構成を採用しない場合と比べて、位置検出精度が高くなる。
【0016】
請求項5に係る移動体位置検出システムによれば、請求項4の効果に加え、個々の受信デバイスにノイズ除去フィルターを内蔵しなくても済む。
【0017】
請求項6に係る移動体位置検出システムによれば、請求項4の効果に加え、電池の消耗を軽減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
[第1の実施の形態]
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る移動体位置検出システムの概略の構成を示す図である。
【0019】
この移動体位置検出システム1は、移動体2に設けられた無線タグ3と、無線タグ3が発信する信号を受信する複数の受信デバイスとしてのセンサ4(4〜4n)と、センサ4の受信履歴に基づいて移動体2の位置を検出する移動体位置検出装置10とを備える。
【0020】
移動体2には、人や、ロボット、車両、携帯端末等が含まれるが、本実施の形態では、人として説明する。移動体2が人の場合は、通常、人が無線タグ3を携帯又は所持する。携帯端末には、電子ペーパ、パーソナルコンピュータ、電話機等が含まれる。
【0021】
無線タグ3は、電池を内蔵するアクティブ型であり、自己の識別情報であるタグID(タグ識別情報)を含む信号を一定の時間間隔で発信する。無線タグ3が発信する信号の時間間隔は、移動体2が想定される最大移動速度で移動するとき、複数のセンサ4のうち連続する所定の数(本実施の形態では3つ)のセンサ4が無線タグ3からの信号をそれぞれ受信するように決定される。無線タグ3が発信する信号の時間間隔の決定方法の詳細は、後述する。なお、無線タグ3は、電池を内蔵していないパッシブ型でもよい。
【0022】
センサ4は、無線タグ3が発信した信号を受信し、受信信号からタグIDを抽出し、タグIDとともに、自己に割り当てられた受信センサ番号(受信デバイス識別情報)、信号を受信した受信時刻を出力する。また、各センサ4は、隣り同士で受信可能エリアが一部重なるように配置されている。受信可能エリアは、例えば、半径7mの円形であるが、円形に限られず、楕円、長円、四角形等の他の形状でもよい。本実施の形態のセンサ4は、個々にはノイズ除去フィルターを内蔵していないが、通常のものと同様に、ノイズ除去フィルターを内蔵してもよい。
【0023】
移動体位置検出装置10は、センサ履歴保持手段(記憶手段)11、検出判定中ID保持手段12、検出判定手段13及び位置検出履歴保持手段14を備える。
【0024】
センサ履歴保持手段11は、半導体メモリ、HDD、サーバ等から構成され、センサ4から出力されたタグID、受信センサ番号、受信時刻とともに、更新済みか否かを示す更新フラグの情報をセンサ履歴情報(受信履歴情報)のデータベースに保持する。更新済みのセンサ履歴情報に対しては、更新フラグに「1」がセットされ、未更新のセンサ履歴情報に対しては、更新フラグに「0」がセットされる。
【0025】
検出判定中ID保持手段12は、半導体メモリ、HDD、サーバ等から構成され、検出判定中のタグIDと、これまでの連続受信回数と、受信センサ番号からなる検出判定中IDリストを保持する。
【0026】
検出判定手段13は、CPUと、後述する図6のフローチャートに示すようなCPUのプログラムやデータを記憶するメモリとを備える。なお、検出判定手段13は、ハードウェアによって構成してもよい。また、検出判定手段13は、センサ履歴保持手段11から新たに受信された未更新のタグIDの情報を取り込み、センサ4間をまたがってノイズ除去処理を行い、タグIDが検出されたとみなせるかどうかを判定する。
【0027】
位置検出履歴保持手段14は、検出判定手段13による検出結果の履歴を保持する。位置検出履歴保持手段14は、半導体メモリ、HDD等により構成されるが、ディスプレイやプリンタでもよい。
【0028】
図2(a)は、センサ4単体での受信可能エリアと、センサ4から受信可能エリア内を通過する移動体2の通過ルートまでの距離との関係を示す図である。同図に示すように、受信可能エリア40の半径をr、受信可能エリア40内を移動体2が直線的に移動する場合に、センサ4から移動体2の通過ルート20までの距離をd、受信可能エリア40内の通過ルート20の長さ(通過距離)をlとする。
【0029】
移動体2である人の歩く速度は、通常約4km/hであるが、上限速度として、オフィス内を小走りで急ぐ速度を7.2km/h程度とすると、オフィス内を移動する移動体2の想定される最大移動速度は、2m/sとなる。
【0030】
図2(b)は、発信時間間隔毎の受信可能地点を示す図である。例えば、半径r=7mの受信可能エリア40において、センサ4からの距離d(m)の通過ルート20上を移動体2である人が通過する場合に、受信可能エリア40内で少なくとも1回以上受信されるための距離lを求めると、図2(b)に示す様になる。
【0031】
センサ4から例えば6m離れた位置(d=6m)を移動体が通過してもセンサ4が1回以上受信されるようにするためには、少なくとも発信時間間隔が4秒未満でなければならないので、本実施の形態では、例えば、発信時間間隔を3秒に設定する。
【0032】
なお、センサ4によっては受信可能エリアが広くなり、同じIDを複数のセンサ4が受信する場合もあるが、この場合は、最も強く受信したセンサ4に着目すれば、本実施の形態と全く同じ処理で対応可能である。
【0033】
(第1の実施の形態の動作)
次に、第1の実施の形態の動作を図1〜図5を参照し、図6のフローチャートに従って説明する。
【0034】
図3は、オフィスのフロアにおけるセンサ4のレイアウト図である。本実施の形態では、センサ4を6つ用いた場合を示す。オフィスのフロア5をカバーする全てのセンサ4の出力データを参照し、3回連続して、どれか1つのセンサ4で受信した場合に、そのタグIDを検出したとするようなノイズ除去を行うものとする。
【0035】
図4は、センサ履歴保持手段11に保持されるセンサ履歴情報の一例を示す図、図5は、検出判定処理の流れを説明するための図である。
【0036】
図6は、検出判定手段13による検出判定処理のフローチャートである。センサ4が無線タグ3が発信する信号を受信すると、受信した信号からタグIDを抽出し、タグIDとともに、受信センサ番号、受信時刻をセンサ履歴情報としてセンサ履歴保持手段11に格納する。
【0037】
検出判定処理は、無線タグ3の発信時間間隔以下の時間間隔で一定時間毎に起動する。検出判定処理が起動すると、まず、検出判定手段13は、図5に示す検出判定中IDリスト120を検出判定中ID保持手段12から取り込む(S100)。
【0038】
続いて検出判定手段13は、図4に示すセンサ履歴情報110のうち、新たに追加された更新フラグ「0」の、図5に示すセンサ履歴情報(更新分)111をセンサ履歴保持手段11から取り込む(S110)。取り込んだセンサ履歴情報の更新フラグに「1」をセットする。
【0039】
続いてセンサ履歴情報(更新分)111からタグIDを1つ取り出し(S120)、そのタグIDが検出判定中IDリスト120に含まれているかどうかを調べる(S130)。検出判定中IDリスト120に含まれていれば(S130:Yes)、受信回数を1つ増やす(S140)。図5に示す場合は、センサ履歴情報(更新分)111中のタグID(800000008427)、タグID(800000004E4D)及びタグID(80000000FFFA)は、それぞれ検出判定中IDリスト120に含まれているため、それぞれ受信回数を1つ増やし、タグID(800000008427)の受信回数を2、タグID(800000004E4D)の受信回数を3、タグID(80000000FFFA)の受信回数を2とした検出判定中IDリスト121とする。
【0040】
検出を確定できる回数(3回)以上受信したのであれば(S150:Yes)、位置検出結果として、受信時刻、タグID及び受信センサ番号を出力する(S160)。図5の場合は、受信時刻(2007/9/12 11:00:33)、タグID(800000004E4D)、受信センサ番号(S)からなる位置検出結果130を出力する。
【0041】
ステップS130において、センサ履歴情報(更新分)111のタグIDが検出判定中IDリスト120に含まれていなければ(S130:No)、受信回数を1にし(S170)、次回検出判定中となる検出判定中IDリスト121に追加する(S180)。図5に示す場合は、センサ履歴情報(更新分)111のタグID(80000000AB8E)は、検出判定中IDリスト120に含まれていないため、受信回数を1とし、タグID(80000000AB8E)を検出判定中IDリスト121に追加する。なお、検出判定中IDリスト120中の受信センサ番号は、最後に受信したセンサ番号とする。
【0042】
センサ履歴情報(更新分)111の中の全タグIDに関して処理が終了したかどうかを判断し(S190)、終了していなければ(S190:No)、センサ履歴情報(更新分)111からタグIDを1つ取り出す処理に戻る(S120)。全タグIDの処理が終了したら(S190:Yes)、検出判定中IDリスト121で検出判定中ID保持手段12が保持している検出判定中IDリストを更新する(S200)。リストを更新するとき、前回受信されたタグID(800000001C9F)は、今回受信されていないため、受信回数を0とする。
【0043】
(第1の実施の形態の効果)
図7は、第1の実施の形態の効果を説明するための図であり、(a)〜(c)は、比較例、(d)は、本実施の形態を示す図である。同図中、矢印は移動体2である人の動き、星印は無線タグ3の発信タイミングを示す。
【0044】
図7(a)は、移動体の移動速度に対し、無線タグ3の発信時間間隔が長い場合を示す。この場合は、無線タグ3で発信された信号はセンサ4で受信されず、取りこぼされることになる。
【0045】
図7(b)は、受信可能エリア40内で1回以上発信するように、無線タグ3の発信時間間隔を短くした場合を示す。人の移動であれば、どんなに走っても時速100kmでは移動できないことは自明である。そこで、移動速度には上限があり、想定する上限移動速度(最大移動速度)内で通過する間に必ず1回以上発信するように設定すれば良い。
【0046】
図7(c)は、受信可能エリア40内で3回以上発信するように、無線タグ3の発信時間間隔を短くした場合を示す。実際には別の無線タグ3との干渉や衝突により、1回では正しく検出されない可能性があり、複数回安定して受信して初めてその受信可能エリア40を通過(エリア40に滞在)したと判定する必要がある。図7(c)は、必要受信回数が3回以上の場合の設定例であり、この例では、上限移動速度内で3回発信するような発信時間間隔の設定が必要である。しかし、発信時間間隔を短くすると、処理の必要なセンサデータ量が増加したり、信号を多く発生させるために電池の消耗が早くなるという問題がある。
【0047】
図7(d)は、連続する3つの受信可能エリア40でそれぞれ少なくとも1回発信するようにした場合を示す。図7(d)に示すように、複数のセンサ4にまたがって、連続して受信されたタグIDを有する無線タグ(移動体)を、それらの受信可能エリア40を通過(エリア40に滞在)したと判定することによって、発信時間間隔を短くすることなく、取りこぼしが無くなる。
【0048】
以上、説明したように、第1の実施の形態によれば、複数のセンサにまたがってノイズ除去の処理が行われ、電池消耗とデータ量増加を軽減し、検出漏れを防ぐことができる。
【0049】
[第2の実施の形態]
図8は、本発明の第2の実施の形態に係る移動体位置検出システムの概略の構成を示す図である。
【0050】
本実施の形態は、第1の実施の形態に対し、センサ隣接情報保持手段15を付加したものである。
【0051】
検出判定中ID保持手段12は、センサ4で受信され、検出判定中のタグIDを、これまでの連続受信回数と、受信センサ番号の他に、次回の受信タイミングまでに移動可能な移動可能エリアの情報を保持する。移動可能エリアの情報は、予め保持する代わりに、センサ履歴保持手段11が保持するセンサ履歴情報から算出してもよい。
【0052】
検出判定手段13は、CPUと、後述する図14のフローチャートに示すようなCPUのプログラムやデータを記憶するメモリとを備える。なお、検出判定手段13は、ハードウェアによって構成してもよい。また、検出判定手段13は、センサ履歴保持手段11から新たに受信された未更新のタグIDの情報を受け取り、後述するセンサ隣接情報と検出判定中IDリストから、センサ4間をまたがってノイズ除去処理を行い、タグIDが検出されたとみなせるかどうかを判定する。
【0053】
センサ隣接情報保持手段15は、センサ4同士の距離情報(センサ隣接情報)を保持する。ここでは単なる距離ではなく、移動する際の経路上での最短の道のりとする。
【0054】
図9は、複数のセンサ4をまたがって連続的に受信されたかどうかを判定する原理を示す図である。星印は無線タグ3の発信タイミングを示す。Siはm回目に受信したセンサ4を示し、太線の円はセンサSiの受信可能エリア40を表わすものとする。極端な例として、Tmのタイミングで受信可能エリア40の最も端の位置で発信し、その後、受信可能エリア40から遠ざかる方向に、上限速度で移動し、Tm+1(=Tm+t)のタイミングで信号を発信したとすると、m+1回目には、移動体が点線で示す移動可能エリア41の位置まで到達可能である。実際には、移動の始点と速度(0を含む)と方向には自由度があるので、点線の移動可能エリア41の内側全体に移動可能である。タイミングTm+1で発信した位置をカバーするセンサSjが分かれば、連続して受信されたかどうかが判定できる。
【0055】
m回目に受信したセンサSiとm+1回目に受信したセンサSjの間の距離をdij、センサSiの受信可能エリア40の半径をri、タグID=kの移動可能な上限速度をvk、タグID=kの発信時間間隔をtkとするとき、
ri+vk×tk>dij−rj
を満たすようなセンサSjの集合が、m+1回目に受信する可能性がある移動可能エリア41である。なお、通常はri=rj,vk=v,tk=tであるので、
2r+v×t>dij
と単純化することができる。
【0056】
(第2の実施の形態の動作)
次に、第2の実施の形態の動作を図8〜図13を参照し、図14のフローチャートに従って説明する。
【0057】
図10は、オフィスのフロアにおけるセンサ4のレイアウト図である。ここでは、フロア5の大きさが30m×50mで、センサ4の受信可能エリア40が半径7m、最も近いセンサ4同士の距離が10mで、エレベータホール6を除くフロア5全体を12基のセンサ4でカバーするものとし、フロア5とエレベータホール6の壁を一点鎖線で示す。また、S〜S12はセンサ4を表わし、センサ4を囲む円は個々のセンサ4のカバーする受信可能エリア40を示す。なお、エレベータホール6は、非常階段等の他のスペースでもよい。
【0058】
センサ隣接情報保持手段15が保持するセンサ隣接情報には、少なくともセンサ4間の距離情報が必要である。オフィス5内の人の移動を検出する場合、壁などを通り抜けることはできないので、例えば、センサ4間の最短の道のりを情報として保持している。これにより、より高い精度で検出が可能になる。例えば、センサSからセンサSへは10m、センサSからセンサSへは壁を避けて32.6m、センサSからセンサSへはエレベータホール6を抜けて32.4mというように算出する。なお、フロア5内には机やテーブル等があるので、それらの配置がわかっている場合には、それらを避ける通路を通る最短の道のりを算出してもよい。これにより、更に精度が高くなる。
【0059】
図11は、センサ隣接情報保持手段15に保持されるセンサ隣接情報の一例を示す図である。同図は、フロア5のセンサ4間の最短の道のりを全て算出したものである。本実施の形態では、r=7m,v=2m/s,t=3sであるから、センサ間の距離dijが20m未満(20m>dij)となるセンサ集合を求めればよい。図11中では、20m>dijとなる数値に斜線を施して示す。
【0060】
図12は、センサ隣接情報の変形例を示す。センサ4によっては、受信可能エリア40が広く、同じタグIDを複数のセンサ4が受信する場合もある。この場合、センサ隣接情報150の距離情報のみを利用するだけで、最も近いセンサ4を推定でき、同様の処理が可能である。具体的には、受信したセンサ4の全てから近い位置に無線タグ3が存在すると考えられる。例えば、センサ隣接情報150で数値に斜線を施したセンサ4の近くに無線タグ3が存在している確率が高いので、図12(a)に示すように、受信した全センサ4に関して、隣接範囲のセンサ数を受信件数情報151として集計し、最も件数が多いセンサ4で受信したものとして扱うことができる。最も件数が多いセンサ4が複数ある場合には、その間に無線タグ3が存在するものとしてもよい。図12(a)に示すように、S,S,S,Sの4つのセンサで受信した場合を考えると、SとSが最も件数が多いので、SとSの間(S,Sと表記するものとする)に無線タグ3が存在すると推定することができる。
【0061】
また、移動可能エリア41は、図12(b)に示すように、平均をとる方法で補正が可能である。図12(a)に示す場合は、SとSが最も件数が多いので、無線タグ3は、SとSの間に居ると判定する。図12(b)のセンサ隣接情報150を用いて、始点S、Sと終点Sとの間の距離の平均をとり、無線タグ3は、終点SからS方向へ15mの地点に居ると判定する。なお、センサ4の座標情報をデータとして保持していたり、GPS等の手段を用いてシステムが取得できるようになっていれば、受信したセンサ4の位置の重心などを求めるようにしてもよい。
【0062】
図13は、検出判定処理の流れを説明するための図である。図14は、検出判定手段13による検出判定処理のフローチャートである。
【0063】
センサ4が無線タグ3が発信する信号を受信すると、受信した信号からタグIDを抽出し、タグIDとともに、受信センサ番号、受信時刻をセンサ履歴情報としてセンサ履歴保持手段11に格納する。
【0064】
検出判定処理は、無線タグ3の発信時間間隔以下の時間間隔で一定時間毎に起動する。検出判定処理が起動すると、まず、検出判定手段13は、図13に示す検出判定中IDリスト120を検出判定中ID保持手段12から取り込む(S100)。
【0065】
続いて検出判定手段13は、センサ履歴情報110のうち、新たに追加された図13に示すセンサ履歴情報(更新分)111をセンサ履歴保持手段11から取り込む(S110)。取り込んだセンサ履歴情報の更新フラグに「1」を書き込む。
【0066】
続いてセンサ履歴情報(更新分)111からタグIDを1つ取り出し(S120)、そのタグIDが検出判定中IDリスト120に含まれているかどうかを調べる(S130)。検出判定中IDリスト120に含まれていれば(S130:Yes)、無線タグ3が前回の受信から移動可能エリア41の中にあるかどうかを判定し(S131)、移動可能エリア41になければ(S131:No)、それまでのデータがノイズである可能性があるため、そのタグIDは初めて受信したものとして処理する。
【0067】
移動可能エリア内であれば(S131:Yes)、受信回数を1つ増やす(S140)。図13に示す場合は、センサ履歴情報(更新分)111中のタグID(800000008427)、タグID(800000004E4D)及びタグID(800000001C9F)は、それぞれ検出判定中IDリスト120に含まれているため、それぞれ受信回数を1つ増やし、タグID(800000008427)の受信回数を2、タグID(800000004E4D)の受信回数を3、タグID(800000001C9F)の受信回数を5とした検出判定中IDリスト121とする。
【0068】
検出を確定できる回数(3回)以上受信したのであれば(S150:Yes)、位置検出結果として、受信時刻、タグID及び受信センサ番号を出力する(S160)。図13の場合は、受信時刻(2007/9/12 11:00:33)、タグID(800000004E4D)、受信センサ番号(S)と、受信時刻(2007/9/12 11:00:33)、タグID(800000001C9F)、受信センサ番号(S)とからなる位置検出結果130を出力する。位置検出結果130は、移動履歴(図13中斜線を施した部分)を残す必要がなければ、斜線を施したセンサ番号を除く最新のセンサ番号について出力してもよい。
【0069】
そして、次回移動可能なエリアを算出し(S171)、次回検出判定中となるIDリスト120に追加する(S180)。図5に示す場合は、タグID(800000008427)は、最後にセンサS10で受信しているので、IDリスト120の受信履歴にS10を追加し、移動可能センサとして、S10から20m以内に存在するS〜S12に変更する。また、タグID(800000004E4D)は、最後にセンサSで受信しているので、IDリスト120の受信履歴にSを追加し、移動可能センサとして、Sから20m以内に存在するS〜S10に変更する。また、タグID(800000001C9F)は、最後にセンサSで受信しているので、IDリスト120の受信履歴にSを追加し、移動可能センサとして、Sから20m以内に存在するS〜Sに変更する。
【0070】
タグID(80000000FFFA)を最後に受信したセンサは、S11であるが、前回受信したセンサは、Sであり、SからS11への移動は不可能と判断し、前回受信した信号は、エラーと認定して、受信履歴からSを削除し、受信回数は1回のままとする。移動可能センサとして、S11から20m以内に存在するS、S〜S12に変更する。
【0071】
タグID(80000000AB8E)は、IDリスト120に含まれていないため、受信回数を1回、受信履歴S9、移動可能センサとしてSから20m以内のS、S〜S11を追加する。
【0072】
上記ステップS130において、センサ履歴情報(更新分)111のタグIDが検出判定中IDリスト120に含まれていなければ(S130:No)、受信回数を1にし(S170)、次回移動可能なエリアを算出し(S171)、次回検出判定中となるIDリスト120に追加する(S180)。
【0073】
センサ履歴情報(更新分)111の中の全タグIDに関しての処理が終了したかどうかを判断し(S190)、終了していなければ(S190:No)、センサ履歴情報(更新分)111からタグIDを1つ取り出す処理に戻る(S120)。全タグIDの処理が終了したら(S190:Yes)、検出判定中IDリスト121で検出判定中ID保持手段12が保持している検出判定中IDリストを更新する(S200)。
【0074】
[第3の実施の形態]
図15、図16は、本発明の第3の実施の形態に係るフローチャートであり、図15は、検出判定処理を示すフローチャート、図16は、消失判定処理を示すフローチャートである。移動体位置検出システムのブロック図は、図8と同様であるので、図示を省略する。
【0075】
本実施の形態の検出判定手段13は、CPUと、図15、図16のフローチャートに示すようなCPUのプログラムやデータを記憶するメモリとを備える。なお、検出判定手段13は、ハードウェアによって構成してもよい。
【0076】
この検出判定手段13は、複数回(例えば3回)連続で受信した場合に検出と判定し、複数回(例えば3回)連続で移動可能エリア内で受信しなかった場合に消失と判定する。
【0077】
図14に示す第2の実施の形態に対し、本実施の形態で追加された処理は、移動エリア外で受信(S131:No)、もしくは検出判定中に受信しなかった場合、消失判定処理(S191)を行う点である。
【0078】
消失判定処理は、図16に示すように、連続した非受信回数をカウントし(S201)、連続して受信しなかったIDについては(S202:Yes)、検出判定中のIDリストから削除する(S206)。また、その際、削除されるまでは、受信回数が確定回数以上である場合には(S203:Yes)、位置検出結果として出力し(S204)、移動可能エリアは、時間間隔分の移動可能エリア(例えば1回非受信であれば、2r+2vt>dij)として算出する(S205)。
【0079】
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されず、その発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々変形実施が可能である。また、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で各実施の形態の構成要素を任意に組み合わせることは可能である。
【0080】
上記各実施の形態で使用されるプログラムは、CD−ROM等の記録媒体から移動体位置検出装置の記憶部に読み込んでもよく、インターネット等のネットワークに接続されているサーバ等から移動体位置検出装置の記憶部にダウンロードしてもよい。
【0081】
上記各実施の形態で使用されるプログラムの一部又は全部を特定用途向け集積回路(ASIC)等のハードウェアによって実現してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】図1は、本発明の第1の実施の形態に係る移動体位置検出システムの概略の構成を示す図である。
【図2】図2(a)は、センサ単体での受信可能エリアと、センサから受信可能エリア内を通過する移動体の通過ルートまでの距離との関係を示す図、図2(b)は、発信時間間隔毎の受信可能地点を示す図である。
【図3】図3は、オフィスのフロアにおけるセンサのレイアウト図である。
【図4】図4は、センサ履歴保持手段に保持されるセンサ履歴情報の一例を示す図
【図5】図5は、検出判定処理の流れを説明するための図である。
【図6】図6は、検出判定処理のフローチャートである。
【図7】図7は、第1の実施の形態の効果を説明するための図であり、(a)〜(c)は比較例、(d)は本実施の形態を示す図である。
【図8】図8は、本発明の第2の実施の形態に係る移動体位置検出システムの概略の構成を示す図である。
【図9】図9は、複数のセンサをまたがって連続的に受信されたかどうかを判定する原理を示す図である。
【図10】図10は、オフィスのフロアへのセンサの配置例を示す図である。
【図11】図11は、センサ隣接情報の一例を示す図である。
【図12】図12(a)、(b)は、センサ隣接情報の変形例を示す図である。
【図13】図13は、検出判定処理の流れを説明するための図である。
【図14】図14は、本発明の第2の実施の形態に係る検出判定処理のフローチャートである。
【図15】図15は、本発明の第3の実施の形態に係る検出判定処理を示すフローチャートである。
【図16】図16は、図15の消失判定処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0083】
1 移動体位置検出システム、2 移動体、3 無線タグ、4 センサ、
5 オフィスのフロア、10 移動体位置検出装置、11 センサ履歴保持手段、
12 検出判定中ID保持手段、13 検出判定手段、14 位置検出履歴保持手段、
15 センサ隣接情報保持手段、20 通過ルート、40 受信可能エリア、
41 移動可能エリア、110,111 センサ履歴情報、
120 検出判定中IDリスト、121 更新した検出判定中IDリスト、
130 位置検出結果、150 センサ隣接情報、151 受信件数情報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体に設けられた無線タグから、固定して配置された複数の受信デバイスにより受信されたタグ識別情報が、受信デバイス識別情報とともに順次記憶されたデータベースに、所定の回数連続していずれかの前記受信デバイスで受信された前記タグ識別情報が存在するか否かを判定し、存在すると判定したとき、当該タグ識別情報に対応する前記移動体の位置を、前記タグ識別情報を連続して前記所定の回数受信した前記受信デバイスの位置に基づいて決定する検出判定手段を備えた移動体位置検出装置。
【請求項2】
移動体に設けられた無線タグから、固定して配置された複数の受信デバイスにより受信されたタグ識別情報を、受信デバイス識別情報とともにデータベースに順次記憶する記憶手段と、
前記データベースに所定の回数連続していずれかの前記受信デバイスで受信された前記タグ識別情報が存在するか否かを判定し、存在すると判定したとき、当該タグ識別情報に対応する前記移動体の位置を、前記タグ識別情報を連続して前記所定の回数受信した前記受信デバイスの位置に基づいて決定する検出判定手段と、
を備えた移動体位置検出装置。
【請求項3】
前記データベースは、前記受信履歴情報の他に、前記複数の受信デバイス間の最短の道のりの距離情報を記憶し、
前記検出判定手段は、前記距離情報、及び前記移動体の想定される最大移動速度に基づいて、受信不可能な前記タグ識別情報を除外して前記移動体の位置を決定する請求項1又は2に記載の移動体位置検出装置。
【請求項4】
固定して配置された複数の受信デバイスと、
移動体に設けられ、一定の時間間隔でタグ識別情報を発信する無線タグと、
前記複数の受信デバイスが受信したタグ識別情報を、受信デバイス識別情報とともにデータベースに順次記憶する記憶手段と、前記データベースに所定の回数連続していずれかの前記受信デバイスで受信された前記タグ識別情報が存在するか否かを判定し、存在すると判定したとき、当該タグ識別情報に対応する前記移動体の位置を、前記タグ識別情報を連続して前記所定の回数受信した前記受信デバイスの位置に基づいて決定する検出判定手段とを有する移動体位置検出装置と、
を備えた移動体位置検出システム。
【請求項5】
前記無線タグが前記タグ識別情報を発信する前記一定の時間間隔は、前記移動体の想定される最大移動速度で移動するとき、前記複数の受信デバイスのうち連続する所定の数の受信デバイスが前記タグ識別情報をそれぞれ受信するように定められた請求項4に記載の移動体位置検出システム。
【請求項6】
前記無線タグは、電池を内蔵したアクティブ型である請求項4に記載の移動体位置検出システム。
【請求項7】
移動体に設けられた無線タグから、固定して配置された複数の受信デバイスにより受信されたタグ識別情報を、受信デバイス識別情報とともに順次記憶されたデータベースに、所定の回数連続していずれかの前記受信デバイスで受信された前記タグ識別情報が存在するか否かを判定する判定ステップと、
前記判定ステップにおいて、存在すると判定したとき、当該タグ識別情報に対応する前記移動体の位置を、前記タグ識別情報を連続して前記所定の回数受信した前記受信デバイスの位置に基づいて決定する決定ステップとをコンピュータに実行させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2009−210516(P2009−210516A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−56343(P2008−56343)
【出願日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】