説明

移動体検出装置、移動体検出方法及びプログラム

【課題】周囲の明るさに関係なく、移動体像を高精度に検出する。
【解決手段】撮像部10は、1フレームのRGB信号をフレーム周期で画像メモリ20に格納する。輝度変化検出部30は、輝度の時間変化量を検出する。輝度正規化部40は、検出された輝度の時間変化量を正規化する。色差変化検出部50は、RGB信号における色差の時間変化量を検出する。色差正規化部60は、検出色差の時間変化量を正規化する。判定部70は、正規化された輝度の時間変化量と色差の時間変化量との大小を判定する。選択部80は、大きい方の時間変化量を、移動体像を抽出するための情報として選択する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、色情報を含む撮像信号に基づいて、例えば、車両などの移動体像を検出する移動体検出装置、移動体検出方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
カメラを用いた監視システムが、従来から広く一般的に用いられている。近年、カメラからの映像を映し出すモニタを用いた有人監視ではなく、カメラからの撮像信号を画像処理することにより、人間や自動車など移動する物体の検出を自動的に行う監視システムが開示されている(例えば、特許文献1〜4参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平9−270009号公報
【特許文献2】特開平11−66490号公報
【特許文献3】特開平9−73541号公報
【特許文献4】特開平10−289393号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1〜3に記載のシステムでは、撮像データから、時間的に輝度が変化した部分や色が変化した部分を抽出することにより、移動する物体が検出される。しかしながら、このような検出方法では、検出精度は、周囲の明るさの変化などの周囲の環境に左右される。
【0005】
上記特許文献4に記載のシステムでは、周囲の明るさによって検出方法が変わる。このシステムは、周囲の照度を計測し、昼間で周囲の明るさが閾値以上であれば、輝度が変化した部分又は色相が変化した部分の重複部分を、移動体像として検出する。さらに、このシステムは、昼間で周囲の明るさが閾値より小さい場合には、輝度が変化した部分又は色相が変化した部分全体を、移動体像として検出する。このシステムによれば、周囲の明るさに応じて移動体の検出方法を変更するので、周囲の明るさに関わらず、移動体像をより正確に検出できる。
【0006】
しかしながら、上記特許文献4に記載のシステムでは、周囲の照度を計測する必要があり、そのためのセンサが必要となる。また、周囲の照度の閾値が適切に設定されている必要がある。適切な閾値はカメラの設置環境に応じて異なるので、調整される必要があるが、その調整は、煩雑で面倒な作業である。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、周囲の明るさに関係なく、移動体像を高精度に検出することができる移動体検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の第1の観点に係る移動体検出装置は、
色情報を含む撮像信号を取得する信号取得部と、
前記取得された撮像信号における輝度の時間変化量を検出する輝度変化検出部と、
前記取得された撮像信号における色の時間変化量を検出する色変化検出部と、
前記検出された輝度の時間変化量と、前記検出された色の時間変化量とを、比較可能な情報量に変換する変換部と、
前記変換された輝度の時間変化量と色の時間変化量との大小を判定する判定部と、
輝度の時間変化量の方が大きいと判定された場合には、前記撮像信号における輝度の時間変化を、移動体像を抽出するための情報として選択し、色の時間変化量の方が大きいと判定された場合には、前記撮像信号における色の時間変化を、移動体像を抽出するための情報として選択する選択部と、
を備える。
【0009】
前記変換部は、
前記輝度変化検出部によって検出された輝度の時間変化量を、正規化し、
前記色変化検出部によって検出された色の時間変化量を、正規化することとしてもよい。
【0010】
前記色変化検出部は、
前記撮像信号に含まれる色情報の所定の色空間における色度座標の変化に基づいて、色の時間変化量を検出することとしてもよい。
【0011】
前記選択された情報に基づいて移動体像を抽出する抽出部と、
前記抽出部によって抽出された移動体像の位置に基づいて、前記移動体像の軌跡を生成する軌跡生成部と、
をさらに備えることとしてもよい。
【0012】
本発明の第2の観点に係る移動体検出方法は、
色情報を含む撮像信号における輝度の時間変化量を検出する第1の工程と、
前記撮像信号における色の時間変化量を検出する第2の工程と、
前記第1の工程で検出された輝度の時間変化量と、前記第2の工程で検出された色の時間変化量とを、比較可能な情報量に変換する第3の工程と、
前記変換された輝度の時間変化量と色の時間変化量との大小を判定する第4の工程と、
輝度の時間変化量の方が大きいと判定された場合には、前記撮像信号における輝度の時間変化を、移動体像を抽出するための情報として選択し、色の時間変化量の方が大きいと判定された場合には、前記撮像信号における色の時間変化を、移動体像を抽出するための情報として選択する第5の工程と、
を含む。
【0013】
本発明の第3の観点に係るプログラムは、
色情報を含む撮像信号における輝度の時間変化量を検出する第1の手順と、
前記撮像信号における色の時間変化量を検出する第2の手順と、
前記第1の手順で検出された輝度の時間変化量と、前記第2の手順で検出された色の時間変化量とを、比較可能な情報量に変換する第3の手順と、
前記変換された輝度の時間変化量と色の時間変化量との大小を判定する第4の手順と、
輝度の時間変化量の方が大きいと判定された場合には、前記撮像信号における輝度の時間変化を、移動体像を抽出するための情報として選択し、色の時間変化量の方が大きいと判定された場合には、前記撮像信号における色の時間変化を、移動体像を抽出するための情報として選択する第5の手順と、
をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、周囲の明るさに関係なく、移動体像を高精度に検出することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
次に、本発明の一実施形態について図面を参照して詳細に説明する。本実施形態に係る移動体検出装置は、例えば駐車場における車両の駐退車を管理するために設けられている。
【0016】
図1には、本実施形態に係る移動体検出装置100の概略的な構成が示されている。図1に示されるように、移動体検出装置100は、撮像部10と、画像メモリ20と、輝度変化検出部30と、輝度正規化部40と、色差変化検出部50と、色差正規化部60と、判定部70と、選択部80と、移動体追跡部90と、を備える。
【0017】
信号取得部としての撮像部10は、例えば駐車場内の映像を撮像できる位置に設定された監視カメラを有している。監視カメラは、その駐車場内において監視対象となっている領域を撮像し、カラーの撮像信号を出力する。撮像部10は、A/D変換器をさらに有している。A/D変換器は、監視カメラから出力されたアナログのカラー撮像信号をデジタルのカラー撮像信号に変換する。
【0018】
このカラー撮像信号は、RGB信号である。RGB信号は、赤(R成分)、緑(G成分)、青(B成分)の3成分から成る映像信号である。RGB信号では、1色1ドット、計3ドットで1画素が構成される。
【0019】
1画素におけるRGB信号の赤成分をR成分とし、緑成分をG成分とし、青成分をB成分とする。R成分、G成分、B成分は、それぞれ8ビットデータであり、それぞれの色が、256階調で表現されている。言い換えると、8ビットのR成分、G成分、B成分で一画素分のRGB信号が構成され、各画素の撮像データが集まって、1画像分(すなわち1フレーム)のRGB信号が構成されている。
【0020】
撮像部10は、1フレームのRGB信号を、所定のフレーム周期で、繰り返し出力する。ここで、m(m=1、2、・・・)フレーム目の画素n(n=1、2、3、・・・)のRGB信号について、そのR成分をR(m、n)とし、G成分をG(m、n)とし、B成分をB(m、n)とする。この場合、1つの画素における輝度Y(m、n)は、以下の式(1)で表される。
Y(m、n)=0.299×R(m、n)+0.587×G(m、n)+0.114×B(m、n) …(1)
【0021】
また、mフレーム目の画素nにおける色差は、R(m、n)−Y(m、n)、B(m、n)−Y(m、n)で表される。
【0022】
撮像部10は、1フレームのRGB信号を、周期的に、画像メモリ20に出力している。画像メモリ20は、撮像部10から出力されたRGB信号に対応する撮像データを記憶する。
【0023】
以下では、現在のフレーム周期でのフレームを、「今回フレーム」とし、mで表す。そして、画像メモリ20に格納された今回フレームmの画素nの撮像データを(R(m、n)、G(m、n)、B(m、n))と表現し、1つ前のフレームm−1での画素nの撮像データを(R(m−1、n)、G(m−1、n)、B(m−1、n))とも表現する。
【0024】
輝度変化検出部30は、今回フレームの撮像データ(R(m、n)、G(m、n)、B(m、n))を、画像メモリ20から読み出す。
【0025】
そして、輝度変化検出部30は、上記式(1)を用いて、今回フレームの撮像データ(R(m、n)、G(m、n)、B(m、n))に基づいて、各画素nの輝度Y(m、n)を、全ての画素について算出する。この輝度Y(m、n)は、次のフレームで用いるために記憶される。
【0026】
輝度変化検出部30は、1つ前のフレーム周期のフレーム、すなわちフレームm−1についても、各画素nの輝度Y(m−1、n)を全ての画素について算出し、これらを記憶している。輝度変化検出部30は、それらを読み出し、画素nでのフレーム間の輝度の差、すなわち、Y(m、n)とY(m−1、n)との差分d1(m、n)を、全ての画素について算出する。
【0027】
次に、輝度変化検出部30は、差分d1(m、n)が、閾値以上となる画素nを抽出する。なお、抽出された画素nに関する情報は、選択部80に出力される。
【0028】
さらに、輝度変化検出部30は、抽出された画素nについての差分d1(m、n)の平均値a1(m)を算出する。この平均値a1(m)を、輝度変化平均値とする。この輝度変化平均値a1(m)が、輝度の時間変化量に対応する。輝度変化検出部30は、輝度変化平均値a1(m)を、輝度正規化部40に出力する。
【0029】
変換部としての輝度正規化部40は、輝度変化平均値a1(m)を、最大輝度と最小輝度との差、すなわち輝度変化平均値の変動可能範囲で除算することにより、これを正規化する。これにより、フレーム間での輝度の時間変化量が無次元化され、百分率で表されるようになる。正規化された輝度変化平均値を、an1(m)とする。正規化された輝度変化平均値an1(m)は、判定部70に出力される。
【0030】
一方、輝度変化検出部30は、今回フレームの輝度Y(m、n)を、色差変化検出部50に出力している。
【0031】
色差変化検出部50は、今回フレームの撮像データ(R(m、n)、G(m、n)、B(m、n))を、画像メモリ20から読み出す。
【0032】
次に、色差変化検出部50は、今回フレームの撮像データ(R(m、n)、G(m、n)、B(m、n))と、今回フレームの輝度Y(m、n)とに基づいて、色差R(m、n)−Y(m、n)、B(m、n)−Y(m、n)を算出する。そして、色差変化検出部50は、R−Y平面、B−Y平面への射影により、Y(R−Y)(B−Y)色空間における今回フレームmの画素nでの六角形の色度座標C1(m、n)を、全ての画素について算出する。この色度座標C1(m、n)は、次のフレーム周期で用いるために記憶される。
【0033】
色差変化検出部50は、1つ前のフレーム周期で、フレームm−1についても、各画素nの色度座標C1(m−1、n)を全ての画素について算出し、これらを記憶している。色差変化検出部50は、それらを読み出し、画素nでのY(R−Y)(B−Y)色空間の色度座標C1(m、n)と、色度座標C1(m−1、n)との距離d2(m、n)を、全ての画素について算出する。
【0034】
次に、色差変化検出部50は、距離d2(m、n)が、閾値以上となる画素nを抽出する。なお、抽出された画素nに関する情報は、選択部80に出力される。
【0035】
さらに、色差変化検出部50は、抽出された画素nについての距離d2(m、n)の平均値a2(m)を算出する。この平均値を、色差変化平均値a2(m)とする。この色差変化平均値a2(m)が、色差の時間変化量に対応する。色差変化検出部50は、この色差変化平均値a2(m)を、色差正規化部60に出力する。
【0036】
変換部としての色差正規化部60は、色差変化平均値a2(m)を、色差変化平均値a2(m)が色空間で取りうる最大距離で除算することにより、これを正規化する。これにより、フレーム間での色差の時間変化量は、無次元化され、百分率で表されるようになる。正規化された色差変化平均値を、an2(m)とする。色差変化平均値an2(m)は、判定部70に出力される。
【0037】
判定部70は、正規化された輝度変化平均値an1(m)と、正規化された色差変化平均値an2(m)との大小を判定する。判定部70は、この判定結果を、選択部80に出力する。
【0038】
選択部80は、前述のように、輝度変化検出部30から、抽出された画素nに関する情報を入力するとともに、色差変化検出部50から、抽出された画素nに関する情報を入力している。選択部80は、これらの抽出された画素nによって構成される画素部分のいずれかを、移動体像のエッジ部分として選択する。
【0039】
より具体的には、判定部70によって、正規化された輝度変化平均値an1(m)の方が大きいと判定された場合には、選択部80は、輝度変化検出部30によって抽出された画素nの部分を、移動体像のエッジ部分として選択する。
【0040】
一方、判定部70によって、正規化された色差変化平均値an2(m)の方が大きいと判定された場合には、選択部80は、色差変化検出部50によって抽出された画素nの部分を、移動体像のエッジ部分として選択する。
【0041】
選択部80は、選択された画素nの部分に関する情報を、移動体追跡部90に出力する。
【0042】
抽出された移動体像のエッジは、そのフレームの撮像データに含まれる移動体像の輪郭に対応する。移動体追跡部90は、抽出された部分全体の重心位置を、移動体像の中心位置として検出する。そして、移動体追跡部90は、検出された移動体像の位置に基づいて、撮像視野内における移動体像の軌跡データを生成する。
【0043】
次に、本実施形態に係る移動体検出装置100の動作について説明する。図2には、本実施形態に係る移動体検出装置100の動作を示すフローチャートが示されている。このフローチャートで示される動作は、フレーム周期で繰り返される。
【0044】
撮像部10により撮像データが画像メモリ20に格納され、1フレームの撮像データが取得されると(ステップS1でYes)、輝度変化検出部30は、上述のようにして輝度変化平均値a1(m)を検出し、色差変化検出部50は、上述のようにして色差変化平均値a2(m)を検出する(ステップS3)。なお、このステップS3では、輝度変化が閾値以上の画素nと、色差変化が閾値以上の画素nとが抽出され、それらの情報が選択部80に送られている。
【0045】
次に、輝度正規化部40は、輝度変化平均値a1(m)を正規化し、色差正規化部60は、色差変化平均値a2(m)を正規化する(ステップS5)。
【0046】
次に、判定部70が、正規化された輝度変化平均値an1(m)と、正規化された色差変化平均値an2(m)とを比較し、その大小関係を判定する(ステップS7)。
【0047】
正規化された輝度変化平均値an1(m)の方が大きい場合(ステップS7でYes)には、選択部80は、輝度変化検出部30で抽出された画素nに関する情報(すなわち輝度変化)を、移動体像を抽出するための情報として選択する(ステップS9)。一方、正規化された色差変化平均値an2(m)の方が大きい場合(ステップS7でNo)には、選択部80は、色差変化検出部50で抽出された画素nに関する情報(すなわち色差変化)を、移動体像を抽出するための情報として選択する(ステップS11)。
【0048】
ステップS9又はS11実行後、移動体追跡部90は、選択された画素nに関する情報に基づいて、移動体像のエッジを抽出し、抽出されたエッジに基づいて、移動体像を抽出し、移動体像の位置を検出する(ステップS13)。さらに、移動体追跡部90は、過去のフレームで検出された移動体像の位置と、今回検出された移動体像の位置とに基づいて、移動体像の軌跡を生成する(ステップS15)。ステップS15終了後は、処理を終了する。
【0049】
図3(A)には、あるフレーム周期で、撮像部10によって撮像された1フレームの撮像データに基づく画像93の一例が示されている。この画像93には、移動中の車両像91が写り込んでいる。図3(B)には、その後のタイミングでの1フレームの撮像データに基づく画像93が示されている。図3(A)、図3(B)からわかるように、車両像91は、画像93内の通行路像92上を、右側に移動している。
【0050】
これらの画像は、昼間で周囲が明るいときに撮像されたものである。したがって、反射率の高い車両像91に対応する画素における輝度は、反射率の低い通行路像92に対応する画素における輝度に対して、著しく高くなっている。
【0051】
一方、図4(A)及び図4(B)には、周囲が暗いとき(夜間や、昼間であっても曇っているとき)において、撮像部10によって撮像された1フレームの撮像データに基づく画像93の一例が示されている。このような場合には、車両像91に対応する画素における輝度と、通行路像92に対応する画素における輝度との差は小さくなっている。
【0052】
そこで、本実施形態に係る移動体検出装置100では、輝度の時間変化量と、色の時間変化量とを、それぞれ正規化して比較する。そして、正規化された変化量が大きい方の情報を用いて、移動体像を抽出する。これにより、図3(A)、図3(B)に示されるように周囲が明るい場合でも、図4(A)、図4(B)に示されるように周囲が暗い場合でも、変化が大きい情報を用いて移動体像を抽出するので、そのような周囲の明るさに関係なく、車両像91を高精度に抽出することができる。
【0053】
上述した動作は、フレーム周期で繰り返される。すなわち、撮像部10から図5に示される1フレームの撮像データに基づいて、輝度の時間変化量と、色の時間変化量とが、フレーム周期で随時解析される。そして、変化が大きい方の情報に基づいて移動体像が抽出され、抽出された移動体像に基づいて、移動体の軌跡が生成される。
【0054】
例えば、図5に示されるように、車両像91が、画像93内を移動しているような撮像データが得られたとする。この移動体検出装置100では、フレーム毎に、輝度の変化又は色差の変化(変化の大きい方)に基づいて、各フレームの車両像91が抽出される。各フレームの画像から抽出された車両像91を重ね合わせると、図6に示されるようになる。このような車両像91の移動にしたがって、移動体の軌跡が生成される。
【0055】
以上詳細に説明したように、本実施形態によれば、輝度の時間変化量と、色差の時間変化量とを比較し、変化の大きい方の情報を用いて、画像内における移動体像を抽出する。このようにすれば、変化が顕著な画像情報を用いて移動体像を検出することができるようになるので、周囲の明るさによらず、より正確に移動体像を抽出することができる。
【0056】
また、本実施形態によれば、輝度の時間変化と色差の時間変化とを比較し、変化が大きい方の情報に基づいて移動体像が抽出される。このようにすれば、周囲の明るさを計測する必要がなくなる。また、周囲の明るさを判定するための閾値などを調整する必要がなくなるので、ユーザの負担が軽減される。
【0057】
また、本実施形態では、輝度正規化部40は、輝度変化検出部30によって検出された輝度変化平均値a1(m)を、最大輝度と最小輝度との差で除算することにより正規化する。そして、色差正規化部60は、色差変化検出部50によって検出された色差変化平均値a2(m)を、その最大距離で除算することにより正規化する。このような正規化により、輝度の時間変化量と、色の時間変化量とを無次元化することができるので、両者の比較が可能となる。
【0058】
なお、上記実施形態では、輝度の時間変化量と、色差の時間変化量とを比較するために、両者を正規化したが、要は、輝度の時間変化量と色差の時間変化量とを比較可能な量に変換できればよいのであって、輝度の時間変化量及び色差の時間変化量のいずれか一方を、他方の変化量や同一の単位系の量に換算できるのであれば、そのような換算を行った後、両者を比較するようにしてもよい。
【0059】
なお、輝度の時間変化量及び色差の時間変化量は、撮像部10におけるカメラの特性などに従って補正されるようにしてもよい。例えば、ガンマ特性を考慮して、輝度や色差の時間変化量を補正するようにしてもよい。
【0060】
なお、上記実施形態では、輝度の差分の平均値を、輝度の時間変化量として算出したが、輝度の差分の合計値を、輝度の時間変化量とするようにしてもよい。これは、色差の時間変化量についても同様である。このように、輝度や色差の時間変化を示す指標値であれば、様々なものを採用することができる。
【0061】
また、上記実施形態では、輝度や色差の変化が閾値よりも高い画素部分での輝度変化や色差変化の平均値を用いたが、1画像全体の輝度変化や色差変化の指標値を、輝度や色差の時間変化量として算出するようにしてもよい。
【0062】
また、上記実施形態では、輝度Yを用いて輝度の時間変化量を算出したが、単純に、R成分、G成分、B成分の差分の和を、輝度の時間変化量とするようにしてもよい。
【0063】
また、上記実施形態では、Y(R−Y)(B−Y)の色空間の色度座標上の距離に基づいて、色差の時間変化を検出したが、色差の時間変化を検出するために用いられる色空間としては、様々なものを採用することができる。例えば、HSV表色系、HSL表色系、マンセル表色系、パントン表色系を採用することができる。さらには、mRGB、mCMY、YPbPr、YCbCr、YUV、YIQなどの色空間も採用することができる。
【0064】
また、本実施形態では、色差の時間変化に基づいて、色の時間変化量を算出したが、HSV表色系における色因子の1つ、すなわち色相(Hue)に基づいて、色の時間変化量を算出するようにしてもよい。すなわち、本発明では、色差の時間変化量に限らず、色の時間変化量が算出されるようにすればよい。
【0065】
なお、上記実施形態に係る移動体検出装置は、駐車場の通行路や道路を通行する車両等の検出に用いられるものであったが、本発明はこれには限られない。例えば、民家、博物館、美術館等の屋内に設置され、侵入者を検知するための防犯システムに組み込まれるものであってもよい。すなわち、このような移動体検出装置は、動く物体の像を映像から自動的に抽出し、その動きを追跡する必要がある場合に好適に用いることができる。
【0066】
また、上記実施形態では、輝度変化検出部30、輝度正規化部40、色差変化検出部50、色差正規化部60、判定部70、選択部80、移動体追跡部90などは、ソフトウエアプログラムとハードウエアとの協調動作で実現するようにしても、ハードウエアのみで実現するようにしてもよい。ソフトウエアプログラムとハードウエアとの協調動作の場合には、移動体検出装置100に設けられたCPUが、同装置内のROM等の記憶装置に格納されたソフトウエアプログラムを実行することにより、各部の機能を実現する。
【0067】
この場合、移動体検出装置100としては、汎用のコンピュータを用いることが可能である。この場合、コンピュータの記憶装置に格納されるソフトウエアプログラムは、CD−ROM(Compact Disc Read Only Memory)、DVD(Digital Versatile Disc)、MO(Magneto Optical disc)、フレキシブルディスクなどのコンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納して配布され、移動体検出装置100にインストールされるようになっていてもよい。また、インターネット等の通信ネットワーク上のサーバ装置に格納された当該プログラムを、当該コンピュータにダウンロードして、移動体検出装置100にインストールされるようになっていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の一実施形態に係る移動体検出装置の構成を示すブロック図である。
【図2】図1の移動体検出装置の動作を示すフローチャートである。
【図3】図3(A)及び図3(B)は、撮像部10によって撮像された1フレームの画像の一例(その1)である。
【図4】図4(A)及び図4(B)は、撮像部10によって撮像された1フレームの画像の一例(その2)である。
【図5】フレーム周期で取得されるフレーム画像を時系列に並べた模式図である。
【図6】抽出された移動体像を重ね合わせた図である。
【符号の説明】
【0069】
10 撮像部
20 画像メモリ
30 輝度変化検出部
40 輝度正規化部
50 色差変化検出部
60 色差正規化部
70 判定部
80 選択部
90 移動体追跡部
91 車両像
92 通行路像
93 画像
100 移動体検出装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
色情報を含む撮像信号を取得する信号取得部と、
前記取得された撮像信号における輝度の時間変化量を検出する輝度変化検出部と、
前記取得された撮像信号における色の時間変化量を検出する色変化検出部と、
前記検出された輝度の時間変化量と、前記検出された色の時間変化量とを、比較可能な情報量に変換する変換部と、
前記変換された輝度の時間変化量と色の時間変化量との大小を判定する判定部と、
輝度の時間変化量の方が大きいと判定された場合には、前記撮像信号における輝度の時間変化を、移動体像を抽出するための情報として選択し、色の時間変化量の方が大きいと判定された場合には、前記撮像信号における色の時間変化を、移動体像を抽出するための情報として選択する選択部と、
を備える、移動体検出装置。
【請求項2】
前記変換部は、
前記輝度変化検出部によって検出された輝度の時間変化量を、正規化し、
前記色変化検出部によって検出された色の時間変化量を、正規化する、
ことを特徴とする請求項1に記載の移動体検出装置。
【請求項3】
前記色変化検出部は、
前記撮像信号に含まれる色情報の所定の色空間における色度座標の変化に基づいて、色の時間変化量を検出する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の移動体検出装置。
【請求項4】
前記選択された情報に基づいて移動体像を抽出する抽出部と、
前記抽出部によって抽出された移動体像の位置に基づいて、前記移動体像の軌跡を生成する軌跡生成部と、
をさらに備える、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の移動体検出装置。
【請求項5】
色情報を含む撮像信号における輝度の時間変化量を検出する第1の工程と、
前記撮像信号における色の時間変化量を検出する第2の工程と、
前記第1の工程で検出された輝度の時間変化量と、前記第2の工程で検出された色の時間変化量とを、比較可能な情報量に変換する第3の工程と、
前記変換された輝度の時間変化量と色の時間変化量との大小を判定する第4の工程と、
輝度の時間変化量の方が大きいと判定された場合には、前記撮像信号における輝度の時間変化を、移動体像を抽出するための情報として選択し、色の時間変化量の方が大きいと判定された場合には、前記撮像信号における色の時間変化を、移動体像を抽出するための情報として選択する第5の工程と、
を含む、移動体検出方法。
【請求項6】
色情報を含む撮像信号における輝度の時間変化量を検出する第1の手順と、
前記撮像信号における色の時間変化量を検出する第2の手順と、
前記第1の手順で検出された輝度の時間変化量と、前記第2の手順で検出された色の時間変化量とを、比較可能な情報量に変換する第3の手順と、
前記変換された輝度の時間変化量と色の時間変化量との大小を判定する第4の手順と、
輝度の時間変化量の方が大きいと判定された場合には、前記撮像信号における輝度の時間変化を、移動体像を抽出するための情報として選択し、色の時間変化量の方が大きいと判定された場合には、前記撮像信号における色の時間変化を、移動体像を抽出するための情報として選択する第5の手順と、
をコンピュータに実行させるプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−73000(P2010−73000A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−240828(P2008−240828)
【出願日】平成20年9月19日(2008.9.19)
【出願人】(396004981)セイコープレシジョン株式会社 (481)
【Fターム(参考)】