説明

移動局車載装置

【課題】 基地局のオペレータの負担を軽減できるようにするとともに、狭小な地域に、待機車両が集中するのを防止して、運営効率の向上を計れる移動局車載装置を提供することを目的とする。
【解決手段】 移動局に、送受信手段13と、車載ディスプレイ端末12とを備えた移動局車載装置11を設置し、同移動局車載装置11に、実車、空車状態入力手段14と、GPS装置16とを設けるとともに、実車情報処理部17と、空車状態の車両を表示する空車情報処理部18とを備え、これらを選択的に前記車載ディスプレイ端末12に表示することができる表示項目選択部15を設けることにより、営業エリア内を走行中の車両は基地局から情報を受信すると前記表示項目選択部15により、個別の情報を任意に選択して、前記車載ディスプレイ端末12に表示することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動局としてのタクシに係わり、より詳細には、タクシに搭載される移動局車載装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のタクシ事業用AVMシステム(車両位置等自動表示システム)は、例えば、図8で示すように構成されている。タクシ会社としての基地局30には、通信制御装置32と、各種のデータを地図データ上に表示する地図表示装置33、34と、前記通信制御装置32に対して操作を行う操作卓35と、無線装置36とが設けられ、同無線装置36により直接、あるいは無線タワーを備えた中継局を介して移動局としてのタクシ31との間で相互に通信を行うようになっている。移動局としてのタクシ31には、基地局30と無線交信を行う無線装置38と、自車両位置を検出するGPS受信機39と、実車状態の場合、行先地区を設定する行先地区設定器40と、これら無線装置38、GPS受信機39、行先地区設定器40から信号を受け処理する信号処理装置37とが設けられている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
前記タクシ31は、ポーリング信号を前記基地局30から受信すると、自車両位置と、実車状態か空車状態かの情報と、実車状態の場合は行先地区とを前記無線装置38を介して前記基地局30に随時送信するようになっている。基地局30は、多数の移動局から、ポーリング信号を前記無線装置36を介して受信し、受信した信号は前記通信制御装置32により処理されるようになっている。また、処理された各種の情報は、前記地図表示装置33、34の地図データ上に表示されるようになっている。
【0004】
前記基地局30では、前記地図表示装置33、34の地図データ上に表示される夫々のタクシの車両位置情報、実車あるいは空車の情報等を確認しながら、顧客から配車要求があった際は、地図データ上から空車状態の車両を選定し、前記無線装置36を介して指示を送出するようになっている。また、実車状態の車両でも行先地区が配車要求の地区近傍の際は、これに配車の指示を行うようになっている。更に、空車状態の車両は営業エリア内に、なるべく均一に分散するよう、移動局に対し指示するようになっている。
【0005】
しかしながら、前記基地局1が管理するタクシの台数が、例えば百台以上となったような場合、前記地図表示装置33、34の地図データ上に表示される夫々のタクシの車両位置情報、実車あるいは空車の情報等を確認しながら、これに指示を送るオペレータの負担が重くなり、的確に指示を送ることが困難になるという問題があった。また、待機車両、所謂流し状態の車両が、狭小な地域に集中する場合があり、運営効率の低下を招いてしまうというような現象があり、対応が求められていた。
【特許文献1】特開平7−65291号(3頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑み、営業エリア内で活動する移動局としての多数のタクシに指示を送る基地局のオペレータの負担を軽減できるようにするとともに、狭小な地域に、待機車両、所謂流し状態の車両が集中するのを防止して、運営効率の向上を計れる移動局車載装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するため、車載ディスプレイ端末と、基地局との間で送受信を行う送受信手段と、GPS装置とを備えるともに、自車両の実車、空車状態入力手段を備え、前記GPS装置により検出された自車両位置と、前記実車、空車状態入力手段により入力された自車両情報とを基地局に送信する一方、同基地局から、少なくとも自車両以外の位置情報及び空車情報を受信する移動局車載装置であって、同移動局車載装置に、前記車載ディスプレイ端末に対し各種情報を出力し、表示させる表示項目選択部を設け、同表示項目選択部からの選択により、前記基地局からの自車両以外の位置情報及び動態情報を基にして、前記表示項目選択部に対し、自車両以外の空車情報及び位置情報を送出する空車情報処理部を設けた構成となっている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によると、移動局としてのタクシに、基地局との送受信手段と、車載ディスプレイ端末とを接続した移動局車載装置を設置し、同移動局車載装置に、実車、空車状態入力手段と、GPS装置とを設けるとともに、営業エリア内での実車状態の車両を表示する実車情報処理部と、空車状態の車両を表示する空車情報処理部とを備え、これらを選択的に前記車載ディスプレイ端末に表示することができる表示項目選択部を設けることにより、営業エリア内を走行中の車両は前記基地局から情報を受信すると前記表示項目選択部により、個別の情報を任意に選択して、前記車載ディスプレイ端末に表示することができるようになっている。進行先に待機状態の車両が集中しているような場合、乗務員は、独自の判断により他の地域に向かうことができるようになっており、これにより、営業エリア内で移動局としてのタクシが均一に分散することにより、より効率的な営業活動を行うことができるようになっている。また、前記基地局で、各車両に指示を行うオペレータの負担を軽減して営業効率を向上させることができるようになっている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を、添付図面に基づいた実施例として詳細に説明する。
【実施例1】
【0010】
図1は、基地局と移動局としてのタクシとを示す概要図であり、図2は移動局車載装置を示す図である。図3は基地局の構成を示すブロック図であり、図4は移動局車載装置の構成を示すブロック図である。図5は一連の操作を示すフローチャートであり、図6は移動局車載装置のディスプレイに表示される映像を示す図である。
【0011】
本発明による移動局車載装置を搭載した移動局としてのタクシ2と、基地局1とは、図1で示すように、中継局を介した無線通信網3により相互に無線通信を行えるようになっている。前記基地局1には、後述する中央処理装置5が設けられ、同中央処理装置5には、営業エリア内の各地に点在する、複数のタクシ2の位置情報及び実車状態か空車状態かの動態情報とをポーリング方式あるいは任意発呼方式により常時取得する機能と、多数のタクシ2から受信した車両位置情報と、動態情報とを分析し、分析した結果としての実車状態の車両位置情報、及び空車状態の車両位置情報等を、ディスプレイ端末8に出力する機能とを有している。同ディスプレイ端末8は、営業エリアのマップ及び各種情報を表示するとともに、営業エリアのマップ上に、実車状態及び空車状態の車両位置情報等を特定記号により表示するようになっている。また、同基地局1には、顧客からの配車要求を受け付ける受付用端末と、サーバー等が設けられている。
【0012】
前記タクシ2は、図2で示すように、キャビネット上にGPS(グローバルポジショニングシステム)装置を備えた移動局車載装置11が搭載されており、その上方には、地図データ上に、GPS装置により得られた自車両位置を表示する機能を備えた車載ディスプレイ端末12が設けられている。GPS機能は、サテライト4から送られてくる電波を基に自車両の緯度、経度を検出し、地図データ上に表示するようになっている。
【0013】
次に、前記基地局1の構成について図3のブロック図により説明する。前記基地局1の中央処理装置5には、図3で示すように、営業エリア内の多数のタクシ2に順次ポーリング信号を送信し、また、これらから動態情報、車両位置情報を受信する送受信手段6と、処理された情報を、地図データ上に表示するディスプレイ端末8とが接続されている。同中央処理装置5内には、前記送受信手段6から得られた情報を基に、実車情報を収集する実車情報検出手段9aと、空車情報を収集する空車情報検出手段9bとからなる動態情報検出手段9が設けられている。また、営業エリア内の地図データを記憶した地図データベース7と接続され、走行状態の車両位置情報と、停止状態で待機している車両位置情報とを検出する車両位置検出手段10が設けられており、検出された車両位置情報は、前記ディスプレイ端末8等に送出され、地図データ上に、特定の記号により表示されるようになっている。また、前記動態情報検出手段9、車両位置検出手段10の動作をコントロールする処理部5aが設けられている。
【0014】
前記タクシ2に搭載された移動局車載装置11には、図4で示すように、前記基地局1からポーリング信号を受信し、また、動態情報、車両位置情報を基地局1に送信するとともに、随時、基地局1からの情報を受信する送受信手段13と、前記車載ディスプレイ端末12とが設けられるとともに、自車両が実車状態か、空車状態かを入力する実車、空車状態入力手段14と、乗務員の操作により表示される項目を選択可能とする表示項目選択部15と、自車両位置を検出するGPS装置16とが設けられており、また、これらの動作を一括してコントロールする処理部11aが設けられている。
【0015】
前記表示項目選択部15は、乗務員の操作に応じて、前記基地局1から前記送受信手段13を介して送出されてきた種々の情報から特定の情報を選択して前記車載ディスプレイ端末12に出力し、表示させる機能を有している。同表示項目選択部15には、営業エリア内での実車状態の車両のみを地図データ上で、車両NO.を表示するとともに、走行方向を示す矢印記号のような特定の記号により表示する走行状態表示手段17aが接続され、前記表示項目選択部15に、実車状態で、且つ走行状態の情報を送出する実車情報処理部17と、営業エリア内での空車状態の車両のみを地図データ上で特定の記号により前記車載ディスプレイ端末12に表示するよう、前記表示項目選択部15に情報送出する空車情報処理部18とが接続されている。更に、同空車情報処理部18は、例えば、空車状態で走行中の車両は、やや大きめの星印記号で表示するよう情報送出する一方、空車状態でタクシ乗場等に停止状態の車両は、やや小さめの星印記号で前記車載ディスプレイ端末12上に表示するよう情報送出するようになっている。また、これら記号は、黄色表示、赤色表示等に色分して表示でき、また、認識し易いように点滅表示を行うこともできるようになっている。更に、同空車情報処理部18には、営業エリア内で、所謂流し状態で走行する車両を表示するよう情報送出する走行状態表示手段18aと、タクシ乗場等で、停止状態で待機する車両を表示するよう情報送出する待機状態表示手段18bとを備えている。
【0016】
次に、一連の操作について説明する。図5のフローチャートで示すように、移動局である車両側は、前記GPS装置16により、随時自車両位置を検出するようになっている(STEP1)。また、前記実車、空車状態入力手段14に、現在、車両が実車状態か、あるいは空車状態かを入力するようになっている(STEP2)。前記基地局1からポーリング信号を受信すると、前記移動局車載装置11は、これら車両位置情報と、実車状態か空車状態かの動態情報を前記基地局1に送信するようになっている(STEP3)。
【0017】
前記基地局1では、営業エリア内に存在する全車両の情報をポーリング方式により常時取得するようになっている(STEP4)。前記中央処理装置5に備えられた前記動態情報検出手段9は、全車両の実車状態及び空車状態を検出し(STEP5)、また、前記車両位置検出手段10は全車両の車両位置を検出して(STEP6)、前記ディスプレイ端末8に、実車状態の車両位置及び空車状態の車両位置を、予め設定された特定の記号により、夫々表示するよう出力するようになっている。更に、空車状態で走行中の車両と、空車状態でタクシ乗場等で停止している車両とも、夫々、区別できるように、色分け等により前記ディスプレイ端末8に表示されるよう出力するようになっている。そして、これら多数の車両位置情報及び動態情報が、前記送受信手段6により、適時、全車両、又は一部車両に送信されるようになっている(STEP7)。また、この際、顧客から配車要求の連絡があった際は、要求された場所近傍に存在する空車状態の車両に指示を送信して配車を行うようになっている。
【0018】
空車状態で、営業エリア内を走行中の車両は前記基地局1から情報を受信すると(STEP8)、前記表示項目選択部15により、前記実車情報処理部17と前記空車情報処理部18との中から、個別の情報を任意に選択して(STEP9)、前記車載ディスプレイ端末12に表示することができるようになっている(STEP10)。表示モードを任意に選択すると、例えば、前記空車情報処理部18による出力により、前記基地局1と同様に、図6で示すように、前記車載ディスプレイ端末12上に地図データとともに、タクシ乗場で空車状態で待機する複数の車両と、空車状態で走行中の車両とが、特定の記号、あるいは色分けされて表示されるようになっている。
【0019】
仮に、現在、進行先のタクシ乗場に、空車状態で客待の車両が集中して停車しているような場合、乗務員は、前記ディスプレイ端末8上に、営業エリア内に存在する他のタクシ乗場を順次表示させ、上記したように、星印等の記号により表示される空車状態の車両数を確認することにより、他の比較的空いているタクシ乗場を検索し、そちらに向かうことができるようになっている。また、空車状態で営業エリア内を所謂流し状態の車両は、同様な車両が狭小な範囲に集中していると判断される場合は、他の地域に向かうことができるようになっている。これにより、タクシ2は営業エリア内で、均一に、且つ効率的に分散することができるようになっている。
【0020】
他の実施例として、例えば図7(A)で示すように、前記車載ディスプレイ端末12の画面を左右に分割し、分割された画面に、営業エリア内での異なる地区の車両情報を夫々表示することもできるようになっている。前記車載ディスプレイ端末12は、車両に搭載する関係上、画面サイズが10インチ以下と小さいため、営業エリア内全域を表示しようとすると、空車情報、実車情報等の個々の表示が非常に小さくなり、また、重なりを生じて正確な認識を行うことが困難となる。この場合、前記車載ディスプレイ端末12の画面を左右に分割し、分割された画面に、営業エリア内での異なる地区の車両情報を、認識が容易な所定の縮尺で夫々表示することにより、迅速に待機車両情報あるいは空車状態走行車両の情報を得ることができるようになっている。更に、図7(B)で示すように、前記車載ディスプレイ端末12の画面を上下左右に分割して、待機車両あるいは空車状態走行車両を表示することにより多地域の情報を容易に得られるようにして営業効率を向上させることができるようになっている。
【0021】
以上、説明したように、基地局1から送信されてくる情報を基にして、乗務員が独自の判断により営業エリア内で均一に分散することにより、より効率的な営業活動を行うことができるようになっている。また、前記基地局1で、各車両に指示を行うオペレータの負担を軽減して営業効率を向上させることができるようになっている。
【0022】
尚、上記したような説明では、前記基地局1にて多数の移動局2の実車情報、空車情報及び車両位置情報等を収集し、前記中央処理装置5にて各種情報の情報処理を行った後、各移動局に処理した情報を配信するようになっているが、本願はこれに限定されるものではなく、例えば、前記移動局車載装置11に、情報処理機能を設け、基地局あるいは中継局を介して送信されてきた情報を移動局側で任意に情報処理し車載ディスプレイ端末に表示させるようにしてもよい。また、前記基地局1と前記移動局2で情報処理を割り当てて行ってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】基地局と、移動局としてのタクシとを示す概要図である。
【図2】移動局車載装置を示す図である。
【図3】基地局の構成を示すブロック図である。
【図4】移動局車載装置の構成を示すブロック図である。
【図5】一連の処理を示すフローチャートである。
【図6】車載ディスプレイ端末に表示される地図データを示す図である。
【図7】他の実施例を示す図である。
【図8】従来のAVMシステムを示すブロック図である。
【符号の説明】
【0024】
1 基地局
2 タクシ
3 無線通信網
4 サテライト
5 中央処理装置
5a 処理部
6 送受信手段
7 地図データベース
8 ディスプレイ端末
9 動態情報検出手段
9a 実車情報検出手段
9b 空車情報検出手段
10 車両位置検出手段
11 移動局車載装置
11a 処理部
112 車載ディスプレイ端末
13 送受信手段
14 空車状態入力手段
15 表示項目選択部
16 GPS装置
17 実車情報処理部
17a 走行状態表示手段
18 空車情報処理部
18a 走行状態表示手段
18b 待機状態表示手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車載ディスプレイ端末と、基地局との間で送受信を行う送受信手段と、GPS装置とを備えるともに、自車両の実車、空車状態入力手段を備え、前記GPS装置により検出された自車両位置と、前記実車、空車状態入力手段により入力された自車両情報とを基地局に送信する一方、同基地局から、少なくとも自車両以外の位置情報及び空車情報を受信する移動局車載装置であって、
同移動局車載装置に、前記車載ディスプレイ端末に対し各種情報を出力し、表示させる表示項目選択部を設け、同表示項目選択部からの選択により、前記基地局からの自車両以外の位置情報及び動態情報を基にして、前記表示項目選択部に対し、自車両以外の空車情報及び位置情報を送出する空車情報処理部を設けたことを特徴とする移動局車載装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2007−328629(P2007−328629A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−160134(P2006−160134)
【出願日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【出願人】(000006611)株式会社富士通ゼネラル (1,266)
【Fターム(参考)】