説明

移動検出装置

【課題】 伝達軸の移動動作に追従して移動部材が移動し、移動部材の位置が検知部で検知される移動検出装置において、移動部材ががたつくことなくスムースに移動できるようにする。
【解決手段】 伝達軸12で移動させられる移動部材13がばね部材14で前方へ付勢されている。移動部材13の下には検知基板21が設けられ、移動部材13の下部に弾性摺動子28aが設けられている。板ばね30は一対の付勢機能部32,32を有し、それぞれの付勢機能部32に、押圧板部33、摺動板部34、中間板部35および第1の湾曲部36と第2の湾曲部37が一体に形成されている。この付勢機能部32,32により、移動部材13が下向きに均一に押圧され、安定した姿勢で移動できるようになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の排ガス再循環装置に設けられるバルブの開閉量や燃料と空気とを混合するバルブの開閉量など、各種装置の機構の移動量を検知するのに使用される移動検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
以下の特許文献1には、自動車に搭載される直線操作型の移動検出装置が開示されている。この移動検出装置は、ケースの外部に突出する操作軸が、ケースに設けられた軸受部に直線的に往復自在に支持されている。ケースの内部には、操作軸によって押されて直線的に移動する可動部材と、前記可動部材に対して操作軸を突出させる向きの付勢力を与えるコイルバネが収納されている。ケースの内部には、表面に抵抗体を有する絶縁基板が設けられ、可動部材に、抵抗体を摺動する摺動子が設けられている。
【0003】
自動車のペダル操作などの力が操作軸に作用すると、ケースの内部の可動部材が操作軸によって押され、可動部材の移動量が摺動子と抵抗体との接触位置に応じて検知される。
【0004】
この種の移動検出装置は、ケースの内部で、可動部材ががたつきを生じると、操作軸と可動部材の位置を正確に検知できなくなり検知誤差が生じやすくなる。また、外部からの加速度を受けて可動部材がケース内でがたつくと、位置の検出に支障を来たすのみならず、誤ったフィードバック情報が自動車の制御部に伝達されるおそれもある。
【0005】
特許文献1に記載の発明では、ケースと可動部材との間にV字型に折り曲げた板ばねを介在させて可動部材のがたつきを防止する構造、および、ケース内に設けられたコイルバネで可動部材にモーメントを与えて可動部材のがたつきを防止する構造が開示されている。
【0006】
しかし、単純に折り曲げた板ばねでは、可動部材に均一な押圧力を作用させるのが難しく、可動部材が移動する際の抵抗力が大きくなる欠点がある。また、可動部材にモーメントを与える構造では、可動部材のがたつきを有効に抑制することが難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−115567号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記従来の課題を解決するものであり、ハウジング内で直線移動する移動部材のがたつきの防止効果を高めることができ、しかも移動部材をハウジング内でスムースに直線的に移動させることができる移動検出装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、ハウジングの内部に、直線的に往復移動する移動部材と、前記移動部材の移動を検知する検知部とが設けられた移動検出装置において、
前記ハウジングに、前記移動部材が摺動する第1の案内部と、前記移動部材に設けられた板ばねが摺動する第2の案内部とが形成されており、
前記板ばねは、前記移動部材を前記第1の案内部に押圧する押圧板部と、前記第2の案内部を摺動する摺動板部と、前記押圧板部と前記摺動板部との間に位置する中間板部と、前記押圧板部と前記中間板部とを連結する第1の湾曲部と、前記摺動板部と前記中間板部とを連結する第2の湾曲部とが一体に形成されており、前記第1の湾曲部と前記第2の湾曲部が、前記移動部材の移動方向の前後に離れて位置していることを特徴とするものである。
【0010】
本発明の移動検出装置は、第1の案内部と移動部材との間に位置する板ばねが2つの湾曲部で曲げられ、2つの湾曲部が移動部材の移動方向に間隔を空けて位置している。そのため、移動部材に対して、移動方向に間隔を空けた領域で均一な押圧力が作用し、移動部がハウジング内でがたつくことなく、スムースに移動できる。
【0011】
本発明は、前記摺動板部は、前記第2の湾曲部と逆の側に向く端辺を有しており、前記端辺が、前記第2の案内部から離れる向きに曲げられているものが好ましい。
上記構造では、板ばねの摺動板部の端辺と第2の案内部との摺動抵抗を低減できる。
【0012】
本発明は、前記板ばねには、前記押圧板部と前記摺動板部ならびに前記第1の湾曲部と前記第2の湾曲部が一体に形成された付勢機能部が2組形成されており、2組の前記付勢機能部が、前記移動部材の移動方向と直交する向きに離れて配置されているものとして構成できる。
【0013】
上記構造では、2組の付勢機能部によって、移動部材がその移動方向に交叉する方向に間隔を空けた2箇所で押圧されるため、移動部材が安定した姿勢で移動できるようになる。
【0014】
そのために、本発明は、2つの前記第1の案内部と2つの前記第2の案内部が、前記移動部材の移動方向と直交する向きに離れて配置されていることが好ましい。
【0015】
本発明は、さらに2つの前記第1の案内部が、左右方向に向けて互いに対称に傾いて形成されているものが好ましい。
【0016】
左右両側に配置される第1の案内部を傾斜させることで、移動部材を左右にがたつくことなくハウジング内に保持できる。
【0017】
本発明は、前記検知部は、前記板ばねによって前記移動部材が押し付けられる側に配置されているものである。
【0018】
例えば、前記検知部は、前記移動部材の移動方向に沿って延びる検知基板と、前記移動部材に固定されて前記検知基板の表面を摺動する弾性摺動子とを有しており、前記移動部材が、前記板ばねによって、弾性摺動子の弾性反力と逆向きに付勢されているものである。
【0019】
この場合に、前記弾性摺動子の弾性反力が、前記板ばねの前記第1の湾曲部と前記第2の湾曲部の中間において、前記移動部材に作用していることが好ましい。
【0020】
弾性摺動子の弾性反力が2つの湾曲部の中間で移動部材に作用すると、弾性案内部の反発力によって、移動部材に不要な傾き力が与えられるのを防止しやすくなる。
【0021】
本発明は、前記ハウジング内には、前記移動部材を一方向へ付勢するばね部材が設けられ、前記ばね部材から前記移動部材に対し、前記弾性摺動子を前記検知基板に押圧する向きのモーメントが作用しているものとして構成できる。
【0022】
上記構造では、板ばねの均一な押圧力と、ばね部材のモーメントとで、移動部材を第1の案内部に押し付けることができ、移動部材のがたつきがさらに生じにくくなる。
【0023】
例えば、本発明は、前記ハウジングには、外部機構によって移動させられる伝達軸が摺動自在に設けられ、この伝達軸によって、前記移動部材が前記ばね部材の付勢力と対抗する向きへ移動させられるものである。
【発明の効果】
【0024】
本発明の移動検出装置は、ハウジング内で移動部材のがたつきを防止しやすく、しかも移動部材がハウジング内で直線的に移動するときの抵抗力を低減できる。そのため、ハウジング内で、移動部材が安定した姿勢で直線移動できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施の形態の移動検出装置を示す縦断面図、
【図2】移動検出装置を、図1のII−II線で切断した断面図、
【図3】移動検出装置のハウジングの内部構造を示す分解斜視図、
【図4】移動部材と板ばねとを拡大して示す側面図、
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
図1ないし図4に示す移動検出装置1は、X1方向が前方、X2方向が後方、Z1方向が上方向、Z2方向が下方向、Y1−Y2方向が左右方向である。
【0027】
移動検出装置1はハウジング10を有している。ハウジング10は、アルミニウムなどの軽金属で形成され、または合成樹脂材料で形成されている。ハウジング10の前部には、金属製または合成樹脂製の軸受11が固定されており、その軸受穴11aに伝達軸12が挿入されている。伝達軸12は金属軸または合成樹脂材料で形成された軸であり、ハウジング10の内部から外部に延びており、X1−X2方向へ直線的に移動自在に支持されている。
【0028】
伝達軸12は、内燃機関の制御弁2の開度を検知するものであり、制御弁2の開度に応じてX1−X2方向へ移動させられる。制御弁2は、内燃機関の排気ガス再循環装置(EGR)において、排気ガスの循環量を制御するためのものである。または、燃料と空気とを混合する混合バルブである。制御弁2は、自動車に設けられた制御部からの指令によりモータの動力などによって開閉動作し、その開閉動作の力が伝達軸12に伝達されて、伝達軸12がX1−X2方向へ移動させられる。
【0029】
図1と図2に示すように、ハウジング10の内部に移動空間10aが形成されており、伝達軸12の後方部分は移動空間10aの内部で移動する。移動空間10aには移動部材13がX1−X2方向へ往復移動自在に設けられている。移動部材13は、軽金属材料または合成樹脂材料で形成されている。
【0030】
移動空間10aのZ1側の上部に、ばね部材14が設けられている。ばね部材14は圧縮コイルばねである。ハウジング10には、移動空間10aの内部に向けてX1方向へ突出する支持突起10bが一体に形成されており、ばね部材14が支持突起10bの外周に装着されている。移動部材13の先部には上向きに延びる被押圧部13aが一体に設けられている。
【0031】
図1に示すように、ばね部材14は、移動空間10aの後方の内壁部10cと被押圧部13aとの間に圧縮されて装着されている。ばね部材14の弾性力により、移動部材13が前方(X1方向)へ付勢されている。ばね部材14の弾性力が、移動部材13の先部において上方に延びる被押圧部13aに与えられるため、ばね部材14から移動部材13に対し、図1において反時計方向のモーメントMが与えられる。
【0032】
図1に示すように、移動部材13の前端部には凹部13bが形成され、伝達軸12の後端部が前記凹部13b内に挿入されている。凹部13bによって伝達軸12の後端部が拘束されておらず、凹部13bのX2側の内壁部13cが、伝達軸12の後端面12aに突き当てられている。移動部材13がばね部材14によってX1方向へ付勢され、その付勢力で内壁部13cが後端面12aに突き当てられている。伝達軸12がX1―X2方向へ移動すると、移動部材13もこれに追従してX1−X2方向へ移動させられる。
【0033】
図2に示すように、ハウジング10に形成されている移動空間10aは、左右方向(Y1−Y2方向)を二分する中心面O−Oを挟んで左右に対称形状である。
【0034】
図2に示すように、移動空間10aの下部には、左右両側に第1の案内部16,16が形成されている。第1の案内部16,16は、中心面O−Oから左右に等じ距離だけ離れた位置に形成され、上下方向(Z1−Z2方向)においても同じ高さ位置に形成されている。第1の案内部16,16は、移動部材13のX1−X2方向の移動範囲内において、同じ高さで且つ前後方向に連続して形成されている。ただし、図2に示すように、2つの第1の案内部16,16の断面形状は、共に中心面O−Oに向かうにしたがって下向きとなる傾斜面となっている。
【0035】
図2に示すように、移動部材13には、中心面O−Oを挟んで左右に離れた位置に、下向きの摺動部13d,13dが形成されている。摺動部13d,13dの断面形状は、それぞれ中心面O−Oに向かうにしたがって下向きとなる傾斜面である。移動部材13は、摺動部13d,13dが第1の案内部16,16と当接することで、左右方向(Y1−Y2方向)へ動きにくいように規制され、また、摺動部13d,13dが第1の案内部16,16を摺動することで、移動部材13が前後方向(X1−X2)方向へ往復移動する。
【0036】
図2に示すように、ハウジング10の内部には、移動空間10aのさらに下に検知空間10dが形成されている。検知空間10dは、2つの第1の案内部16,16の間に位置し、2つの第1の案内部16,16よりもさらに下側に形成されている。
【0037】
検知空間10dに検知部20が設けられている。検知部20は、検知基板21を有している。図2に示すように、検知基板21は、前記検知空間10dの内部において上下方向(Z1−Z2方向)へ少しだけ動くことができる。検知空間10dの底面10eと検知基板21の下面との間にクッション材22として板ばねが介在している。検知基板21は、クッション材22により上方向に付勢され、検知基板21の上面が、ハウジング10に形成された位置決め部10fに突き当てられている。
【0038】
図3に示すように、検知基板21の上面21aに、抵抗体パターン23とリード電極パターン24が互いに接続されて形成されている。両パターン23,24はX1−X2方向に連続して形成されている。抵抗体パターン23の側方には検知リードパターン25が、抵抗体パターン23と平行にX1−X2方向に連続して形成されている。抵抗体パターン23のX1側の端部に、電圧印加用のランド部23aが形成され、リード電極パターン24のX1側の端部に、接地用のランド部24aが形成され、検知リードパターン25のX1側の端部に、検知用のランド部25aが形成されている。
【0039】
図1に示すように、ハウジング10の下部には、3個の端子板26が埋設されており、それぞれの端子板26と、ランド部23a,24a,25aのそれぞれが、個別に金属クリップ27で連結されて導通されている。
【0040】
図1と図3に示すように、移動部材13の下面に接点板28が固定されている。接点板28は導電性金属の板ばね材料で形成されている。接点板28には、X1方向に延びる2つの弾性摺動子28a,28aが一体に形成されている。一方の弾性摺動子28aが、検知基板21に形成された抵抗体パターン23の上を摺動し、他方の弾性摺動子28aが、検知リードパターン25の上を摺動する。
【0041】
図2に示すように、ハウジング10の移動空間10aの天井面には、2箇所に下向きの第2の案内部17,17が形成されている。第2の案内部17,17は、中心面O−Oを挟んで左右方向(Y1−Y2方向)へ同じ距離を空けて形成されている。2つの第2の案内部17,17は、上下方向(Z1−Z2方向)の同じ高さ位置にあり、中心面O−Oと垂直で且つX−Y平面と平行に形成されている。第2の案内部17,17は、前後方向に直線的に延びている。それぞれの第2の案内部17は、第1の案内部16の上方に対向している。
【0042】
図3に示すように、移動部材13の上部に板ばね30が固定されている。板ばね30は、ステンレスばね鋼板やリン青銅板などのばね性の金属板材で形成されている。
【0043】
板ばね30には、固定板部31と2つの付勢機能部32,32とが一体に形成されている。固定板部31はX−Y平面と平行な平板形状であり、一対の固定穴31aが開口している。移動部材13の上面13gに、固定突起13e,13eが上向きに形成されている。固定板部31が、移動部材13の上面13gに設置され、それぞれの固定穴31aが固定突起13eに挿通され、固定突起13eを変形させることで、図1と図2および図4に示すかしめ部13fが形成される。このかしめ部13fにより、固定板部31が移動部材13の上面13gに固定される。
【0044】
図2に示すように、板ばね30に設けられた付勢機能部32,32は、中心面O−Oから左右方向(Y1−Y2方向)に等距離を空けて配置される。
【0045】
2つの付勢機能部32,32は構造が全く同じである。2つの付勢機能部32,32は、それぞれ、下部に位置する押圧板部33と上部に位置する摺動板部34と、押圧板部33と摺動板部34との間に位置する中間板部35を有している。押圧板部33の前端と中間板部35の前端は第1の湾曲部36で連結され、摺動板部34の後端と中間板部35の後端は第2の湾曲部37で連結されている。
【0046】
図2と図4に示すように、それぞれの付勢機能部32の押圧板部33,33は、移動部材13の上面13gの左右両側部分に設置され、摺動板部34,34は、ハウジング10に形成された第2の案内部17,17に当接する。付勢機能部32は、上下に圧縮された状態で、移動部材13の上面13gと第2の案内部17との間に挟まれ、押圧板部33で、移動部材13が下向きに押圧され、摺動板部34が第2の案内部17に押し付けられる。
【0047】
押圧板部33と摺動板部34および中間板部35は、前後方向(X1−X2方向)の長さ寸法が、左右方向(Y1−Y2方向)の幅寸法よりも長い細長形状である。第1の湾曲部36と第2の湾曲部37は、前後に距離を空け形成されており、その曲率が同じであり、発揮できる弾性力も同じである。図4に示すように、付勢機能部32が、移動部材13の上面13gと第2の案内部17との間に挟まれると、第1の湾曲部36と第2の湾曲部37が変形して、押圧板部33と摺動板部34および中間板部35が互いに平行になる。付勢機能部32が、移動部材13と第2の案内部17との間に装着されていない自由状態で、押圧板部33と摺動板部34および中間板部35が互いに平行ではなく、押圧板部33の後端辺33aと摺動板部34の前端辺34aが、図4よりも上下に互いに離れている。
【0048】
図3と図4に示すように、摺動板部34の前端部38は湾曲しており、摺動板部34の前端辺34aが、第2の案内部17から下方へ離れる向きに変形させられている。
【0049】
なお、図の実施の形態とは逆に、第1の湾曲部36が後方(X2方向)に向けられ、第2の湾曲部37が前方(X1方向)に向けられていてもよい。
【0050】
次に、前記移動検出装置1の動作を説明する。
図1に示す制御弁2の開閉に伴って、伝達軸12がX1方向またはX2方向へ移動する。ハウジング10内の移動部材13は、ばね部材14によって伝達軸12の後端面12aに押し付けられているため、伝達軸12の移動に追従して、移動部材13がX1−X2方向へ移動する。
【0051】
図1に示すように、移動部材13に形成された被押圧部13aとばね部材14との当接部は、移動部材13の前方で且つ上方に設けられている。その結果、ばね部材14によって移動部材13に反時計方向のモーメントMが作用し、このモーメントMによって、移動部材13が下向きに押されている。
【0052】
また、板ばね30の2つの付勢機能部32,32によって、移動部材13の左右方向(Y1−Y2方向)の両側部分が、下向きに押されている。図4に示すように、それぞれの付勢機能部32では、前後に離れている第1の湾曲部36と第2の湾曲部37で、板ばねの幅寸法と板厚および曲率が同じである。したがって、装着状態において第1の湾曲部36の復元力で発揮される弾性モーメントMaと、第2の湾曲部37の復元力で発揮される弾性モーメントMbは、互いに向きが逆で絶対値がほぼ同じである。よって、付勢機能部32の前端部が移動部材13を下向きに押す押圧力Faと、後端部が移動部材13を下向きに押す押圧力Fbとがほぼ同じになる。
【0053】
付勢機能部32の前後の長さ寸法L、すなわち、図4に示す第1の湾曲部36の前端と第2の湾曲部37の後端との長さ寸法Lは、移動部材13の前後の長さ寸法の80%以上であり、好ましくは、両者の長さがほぼ等しい。また、長さLが、移動部材13の前後の長さよりも十分に大きいことがさらに好ましい。そのため、移動部材13の摺動部13dはその前後の長さ範囲において、ハウジング10の第1の案内部16に対してほぼ均一な力で押し付けられる。
【0054】
図1に示すように、ばね部材14と被押圧部13aとの当接部は、付勢機能部32の長さLの範囲内にある。そのため、前記モーメントMが作用しても、移動部材13がモーメントMの向きに傾きにくくなり、移動部材13は安定した姿勢で前後に移動しやすい。また、弾性摺動子28aと検知基板21との接触反力も、付勢機能部32の長さLの範囲内で作用する。よって、弾性摺動子28aの接触反力によって、移動部材13の姿勢に傾きが生じにくい。
【0055】
前記モーメントMの作用部であるばね部材14と被押圧部13aとの当接部と、弾性摺動子28aの接触反力の作用部とが、共に付勢機能部32の長さLの範囲内に位置し、前記長さLの範囲内において、モーメントMと弾性摺動子28aの接触反力とが互いに相殺方向に作用している。したがって、移動部材13は、主に付勢機能部32の弾性力により第1の案内部16に押し付けられ、前記モーメントMと弾性摺動子28aの接触反力が移動部材13に与える影響はきわめて小さい。
【0056】
図2に示すように、板ばね30の付勢機能部32は、左右方向(Y1−Y2方向)に離れて位置しているため、移動部材13の左右両側に形成された摺動部13d,13dが、共に同じ力で第1の案内部16,16に押し付けられる。第1の案内部16,16は、中心面O−Oに向けて下向きに傾斜する傾斜面であるため、付勢機能部32の押圧力によって、移動部材13が左右方向(Y1−Y2方向)へ動きにくくなり、安定した姿勢で前後に移動する。
【0057】
図2に示すように、移動部材13に対して、中心面O−O上でばね部材14の押圧力が作用し、中心面O−Oを挟んで左右両側に同じ距離を開けた位置で、付勢機能部32,32から押圧力が作用する。また付勢機能部32,32の押圧力が作用する場所と対向する位置に、テーパ面形状の第1の案内部16,16が形成されている。そのため、移動部材13がハウジング10の内部で、左右方向(Y1−Y2方向)でバランスよく支持されて、移動できるようになる。よって、外部から加速度が作用したときに、移動部材13が左右方向へがたつきのを防止しやすくなり、安定した検知出力を得ることができる。
【0058】
移動部材13がハウジング10の移動空間10a内で前後に移動するときに、それぞれの付勢機能部32の摺動板部34が第2の案内部17,17を摺動する。図4に示すように、摺動板部34が前後に長く且つ摺動板部34が第2の案内部17に対して均一な圧力で接触するため、摺動板部34と第2の案内部17との摩擦抵抗が小さくなる。また、摺動板部34の後部に第2の湾曲部37が形成され、前端部38も湾曲しているので、摺動板部34と第2の案内部17との摩擦抵抗も小さい。
【0059】
伝達軸12の移動に追従して、移動部材13が安定した姿勢で前後に移動すると、弾性摺動子28a,28aが、検知基板21の抵抗体パターン23と検知リードパターン25を摺動し、伝達軸12と移動部材13の移動位置に応じて抵抗値が正確に変化し、抵抗値の変化に比例する電圧変化が検知出力として精度良く得られる。
【0060】
図1に示すように、検知基板21の下面はクッション材22で支持されている。弾性摺動子28a,28aから検知基板21に一時的に大きな押圧力が作用したときに、検知基板21がクッション材22で弾性支持されることで、抵抗体パターン23に過大な力が作用するのを防止できる。また、弾性摺動子28a,28aから検知基板21に一時的に大きな押圧力が作用したときに、その反力によって移動部材13の移動姿勢が影響を受けにくい。
【0061】
なお、本発明の移動検出装置は、検知部20が抵抗体パターンを有するものに限られず、移動部材とハウジングの一方に磁石が設けられ、他方に磁気センサーが設けられたものであってもよい。または光学式の検知装置を備えたものであってもよい。
【符号の説明】
【0062】
1 移動検出装置
2 制御弁
10 ハウジング
10a 移動空間
10d 検知空間
12 伝達軸
13 移動部材
13a 被押圧部
13d 摺動部
14 ばね部材
16 第1の案内部
17 第2の案内部
20 検知部
21 検知基板
28a 弾性摺動子
30 板ばね
31 固定板部
32 付勢機能部
33 押圧板部
34 摺動板部
34a 前端辺
35 中間板部
36 第1の湾曲部
37 第2の湾曲部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングの内部に、直線的に往復移動する移動部材と、前記移動部材の移動を検知する検知部とが設けられた移動検出装置において、
前記ハウジングに、前記移動部材が摺動する第1の案内部と、前記移動部材に設けられた板ばねが摺動する第2の案内部とが形成されており、
前記板ばねは、前記移動部材を前記第1の案内部に押圧する押圧板部と、前記第2の案内部を摺動する摺動板部と、前記押圧板部と前記摺動板部との間に位置する中間板部と、前記押圧板部と前記中間板部とを連結する第1の湾曲部と、前記摺動板部と前記中間板部とを連結する第2の湾曲部とが一体に形成されており、前記第1の湾曲部と前記第2の湾曲部が、前記移動部材の移動方向の前後に離れて位置していることを特徴とする移動検出装置。
【請求項2】
前記摺動板部は、前記第2の湾曲部と逆の側に向く端辺を有しており、前記端辺が、前記第2の案内部から離れる向きに曲げられている請求項1記載の移動検出装置。
【請求項3】
前記板ばねには、前記押圧板部と前記摺動板部ならびに前記第1の湾曲部と前記第2の湾曲部が一体に形成された付勢機能部が2組形成されており、2組の前記付勢機能部が、前記移動部材の移動方向と直交する向きに離れて配置されている請求項1または2記載の移動検出装置。
【請求項4】
2つの前記第1の案内部と2つの前記第2の案内部が、前記移動部材の移動方向と直交する向きに離れて配置されている請求項3記載の移動検出装置。
【請求項5】
2つの前記第1の案内部が、左右方向に向けて互いに対称に傾いて形成されている請求項4記載の移動検出装置。
【請求項6】
前記検知部は、前記板ばねによって前記移動部材が押し付けられる側に配置されている請求項1ないし5のいずれかに記載の移動検出装置。
【請求項7】
前記検知部は、前記移動部材の移動方向に沿って延びる検知基板と、前記移動部材に固定されて前記検知基板の表面を摺動する弾性摺動子とを有しており、前記移動部材が、前記板ばねによって、弾性摺動子の弾性反力と逆向きに付勢されている請求項6記載の移動検出装置。
【請求項8】
前記弾性摺動子の弾性反力が、前記板ばねの前記第1の湾曲部と前記第2の湾曲部の中間において、前記移動部材に作用している請求項7記載の移動検出装置。
【請求項9】
前記ハウジング内には、前記移動部材を一方向へ付勢するばね部材が設けられ、前記ばね部材から前記移動部材に対し、前記弾性摺動子を前記検知基板に押圧する向きのモーメントが作用している請求項7または8記載の移動検出装置。
【請求項10】
前記ハウジングには、外部機構によって移動させられる伝達軸が摺動自在に設けられ、この伝達軸によって、前記移動部材が前記ばね部材の付勢力と対抗する向きへ移動させられる請求項9記載の移動検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−174885(P2011−174885A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−40769(P2010−40769)
【出願日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】