種結晶から鋳造シリコンを製造するための方法および装置
光起電力電池および他の用途のシリコンを鋳造するための方法および装置が提供される。これらの方法により、鋳造時に種結晶材料の断面積を増やすように結晶成長が制御される炭素分が低いインゴットを成長させることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光起電力技術の分野、ならびに光起電力途用に鋳造シリコンを製造するための方法および装置に一般的に関する。さらに、本発明は、光起電力電池および他の半導体デバイスなど、デバイスを製造するために使用できる新しい形態の鋳造シリコンに関する。新しいシリコンは、単結晶構造、準単結晶構造、双晶構造、または幾何学的多結晶構造を有し、種結晶を使用する鋳造法によって製造できる。
【0002】
本出願は、2007年7月20日に出願した米国仮出願第60/951,155号の利益を主張するものである。米国仮出願第60/951,155号は開示全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
光起電力電池は、光を電流に変換する。光起電力電池の最も重要な特徴の1つは、光エネルギーを電気エネルギーに変換する際のその効率である。光起電力電池は、様々な半導体材料から製造できるが、シリコンは、手ごろな価格で容易に入手でき、また光起電力電池を製造する際に使用するのに電気的特性、物理的特性、および化学的特性のバランスがとれているため、シリコンが一般的に使用されている。
【0004】
光起電力電池の知られている製造手順では、シリコン原料に正または負の導電型を有するドーパントをドープし、溶融し、次いで、個々のケイ素粒子の粒径に応じて、結晶化したシリコンを溶融帯から単結晶シリコンのインゴットの形に引き出すか(チョクラルスキ(CZ)または浮遊帯(FZ)法を介して)、あるいは多結晶シリコン(multi−crystalline silicon)またはポリ結晶シリコン(polycrystalline silicon)のブロックまたは「ブリック」に鋳造することによって結晶化する。本明細書で使用されているような「単結晶シリコン」という用語は、全体を通して1つの一貫した結晶方位を有する、単一の結晶シリコンの本体を指す。さらに、従来の多結晶シリコンは、複数のランダム配向結晶が多結晶シリコンの本体内に配置されているセンチメートルスケールの粒径分布を有する結晶シリコンを指す。しかし、本明細書で使用されているように、「幾何学的に秩序化された多結晶シリコン」(以下、「幾何学的多結晶シリコン」と略す)は、複数の秩序結晶が多結晶シリコンの本体内に配置されている、幾何学的に秩序化されたセンチメートルスケールの粒径分布を有する、本発明の実施形態による、結晶シリコンを指す。例えば、幾何学的多結晶シリコンでは、結晶粒は、典型的には、平均粒径約0.5cmから約5cmであり、幾何学的多結晶シリコンの本体内の粒子配向は、所定の配向に従って制御される。さらに、本明細書で使用されているように、「ポリ結晶シリコン」という用語は、マイクロメートルスケールの粒径および結晶シリコンの与えられた本体内に配置される複数の粒子配向を持つ結晶シリコンを指す。例えば、結晶粒は、典型的には、平均粒径がサブミクロン程度からミクロン程度までであり(例えば、個別の結晶粒は、肉眼には見えない)、粒子配向は全体にわたってランダムに分布する。上述の手順では、インゴットまたはブロックは、知られているスライシングまたはソーイング法によって切断され、ウェハとも呼ばれる複数の薄い基板に分けられる。次いで、これらのウェハを光起電力電池に加工できる。
【0005】
光起電力電池の製造に使用する単結晶シリコンは、一般に、CZまたはFZ法によって生産され、これらの方法は両方とも結晶シリコンの円筒形状のブールが生産されるプロセスである。CZプロセスでは、種結晶が溶融シリコンのプールに触れると、ブールの固体部分を通して熱が抽出される間にブールがゆっくりとプールから引き出される。本明細書で使用されているように、「種結晶」という用語は、固化時に液体シリコンが種の結晶化度に適応するように液体シリコンと接触させられる1片の結晶材料を指す。FZプロセスでは、固体材料が溶融帯に通されて、一般的に種結晶と接触させることによって、溶融帯の一方の側に入った後溶融され、溶融帯の他方の側で再固化される。
【0006】
近年、鋳造ステーション内で単結晶または幾何学的多結晶材料を生産するための新しい技術が発明されており、これは、米国特許出願第11/624,365号および11/624,411号で開示され、2007年1月18日に出願された米国特許出願公開第20070169684A1号および第20070169685A1号として公開されている。多結晶シリコンインゴットを加工する鋳造プロセスは、光起電力技術の分野において知られている。簡単に言うと、このようなプロセスでは、溶融シリコンは、石英るつぼなどのるつぼに入れられ、その中に入っているシリコンの結晶化が可能なように制御しつつ冷却される。結果として得られる鋳造結晶シリコンのブロックは、一般的に、光起電力電池を製造するために使用されるウェハのサイズと同じか、またはそれに近いサイズの断面を有する複数のブリックに切り分けられ、これらのブリックは、ソーイングされるか、または他の方法で切断され、そのようなウェハが形成される。そのような方法で生産される多結晶シリコンは、そこから作製されるウェハ内で結晶粒の互いに対する配向が効果的にランダムである結晶粒の集塊である。単結晶または幾何学的多結晶シリコンは、特に選択された粒子配向および(後者の場合に)結晶粒境界を有し、上述の特許出願において開示されている新しい鋳造技術によって、液体シリコンを、プロセス中に部分的に固体のままであり固化時に熱が抽出される大きなシード層と接触させることにより形成されうる。本明細書で使用されているように、「シード層」という用語は、連続層を形成する所望の結晶配向を持つ結晶または結晶群を指す。これらは、鋳造を目的としてるつぼの片側に適合するように作製することが可能である。
【0007】
最高品質の鋳造インゴットを生産するためには、いくつかの条件が満たされなければならない。第1に、そのインゴットのできる限り大きな部分が所望の結晶化度を有する。インゴットが単結晶であることが意図されている場合、インゴットの使用可能な部分全体が単結晶であるべきであり、また幾何学的多結晶材料についても同様である。第2に、シリコンに含まれる欠陥ができる限り少なくなければならない。欠陥は、個別の不純物、不純物の集塊、固有の格子欠陥、ならびに転位および積層欠陥などのシリコン格子中の構造欠陥を含みうる。これらの欠陥のうちの多くが、結晶シリコンから作製された機能性光起電力電池内の電荷担体の高速な再結合を引き起こす可能性がある。これは、電池セルの効率の低下をもたらしうる。
【0008】
長年の開発努力の結果、十分に成長したCZおよびFZシリコン中の欠陥の量を最小限度に抑えることができた。転位を含まない単結晶は、種において混入されるすべての転位が成長することを許される細いネック部を最初に成長させることによって得られる。介在物および二次相(例えば、窒化ケイ素、酸化ケイ素、または炭化ケイ素の粒子)の混入は、溶融物に対する種結晶の逆方向回転を維持することによって回避される。酸素混入は、工業において知られているようにFZまたは磁気CZ技術を使用して最小限度に抑えることができる。金属不純物は、一般的に、ブールを終わらせた後にポットスクラップまたはタング端に残すことによって最小限度に抑えられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
いくつかの実施形態によれば、本発明は、シリコンなどの、太陽電池用の材料の改善された鋳造を行うための方法および装置に関する。本発明は、望ましくは、炭素濃度が非常に低いシリコンなど、鋳造シリコンの純度を改善するために不活性ガスの蓋および/または流れを利用する。不純物が少なければ、インゴットに含まれる異物粒子(介在物と呼ばれる)の数は少なくなり、ウェハおよび/または太陽電池の歩留まりが改善する。純度を高めたシリコンのさらなる利点として、同じインゴットから得られる単結晶材料が多くなる、および/または大きくなることが挙げられる。シリコン中の不純物が少ないと、結晶成長速度も高速化される。さらに、炭素含有量が少ないと、ウェハを太陽電池にするために様々な熱プロセスを使用することができる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
従来のシリコン鋳造プロセスでは、炭素が過飽和する。対照的に、本発明のいくつかの実施形態では、炭素レベルは飽和限界より低く、望ましくは、飽和限界より十分に低い。不活性ガスがSiO分子を排出するため炉の炭素成分および/または炉内の炭素成分に対する動作寿命を延ばすことができ、また排出経路を制御することで、SiOガスの炭素成分の曝露を減少させることができる。
【0011】
本明細書で使用されているように、「準単結晶シリコン」という用語は、本体の50体積%超について全体を通して1つの一貫した結晶配向を有する、結晶シリコンの本体を指し、例えば、このような準多結晶シリコンは、多結晶領域の隣の単一結晶シリコンの本体を含むか、または他の結晶配向のシリコンのより小さな結晶を一部または全部含むシリコンの大きな、切れ目なく一貫している結晶を含むことができ、より小さな結晶は、全体積の50%超を構成しない。好ましくは、準単結晶シリコンは、全体積の25%超を構成しない小さな結晶を含むことができる。より好ましくは、準単結晶シリコンは、全体積の10%超を構成しない小さな結晶を含むことができる。さらに好ましくは、準単結晶シリコンは、全体積の5%超を構成しない小さな結晶を含むことができる。
【0012】
本明細書で使用されているように、「双晶シリコン」という用語は、本体の50体積%以上について全体を通して1つの一貫している結晶配向を有し、また本体の体積の残り部分についてもう1つの一貫している結晶配向を有する、シリコンの本体を指す。例えば、このような双晶シリコンは、ある1つの結晶配向を有する単一結晶シリコンの本体を、結晶シリコンの体積の残部を構成する異なる結晶配向を有する単一結晶シリコンの他の本体に隣接して含むことができる。好ましくは、双晶シリコンは、シリコンの同じ本体内に2つの離散領域を含み、それらの領域は結晶配向のみが異なるものとすることができる。
【0013】
実施された、また広い意味で説明されている本発明によれば、鋳造シリコンを製造する方法が提供され、この方法は、シリコンで満たされているるつぼを層の上に置くステップであって、この層はヒートシンクと接触する熱伝導性材料と断熱領域とを含み、層の熱伝導性部分は、るつぼの底面の約5%から約99%までと接触している、ステップと、熱伝導層を通して熱を抽出することによってシリコンを固化させるステップとを含む。鋳造シリコンを第1の温度にし、次いで第2の温度まで冷却することによって種結晶成長を導くために、熱抽出はシリコンの一部または全部が溶融された後に行われてもよい。
【0014】
本発明によれば、鋳造シリコンを製造する方法であって、るつぼの中心に向かって内向きにテーパが付けられている壁を有するるつぼ内にシリコンを入れるステップと、シリコンを溶融するステップと、るつぼの底部を通して熱を抽出することによってシリコンを固化するステップと、鋳造シリコンを第1の温度にするステップと、シリコンを第1の温度と異なる第2の温度まで冷却するステップと、るつぼから鋳造シリコンを引き出すステップと、次いで鋳造シリコンから複数のセクションを切り出すステップとを含む方法も提供される。
【0015】
本発明によれば、鋳造シリコンを製造する方法であって、るつぼの中心から外向きにテーパが付けられている壁を有するるつぼ内にシリコンを入れるステップと、シリコンを溶融するステップと、るつぼの底部を通して熱を抽出することによってシリコンを固化するステップと、鋳造シリコンを第1の温度にするステップと、シリコンを第1の温度と異なる第2の温度まで冷却するステップと、るつぼから鋳造シリコンを引き出すステップと、次いで鋳造シリコンから複数のセクションを切り出すステップとを含む方法も提供される。
【0016】
本発明の方法によれば、底面と複数の側壁を有するシリコンを鋳造するためのるつぼであって、この複数の側壁のうちの少なくとも1つは、るつぼの底面に垂直である、底面から上方に延びる方向で見た平面に関して約1°から約25°の角度でるつぼの中心に向かって内向きにテーパが付けられている、るつぼも形成される。テーパが付けられている1つまたは複数の壁で、底面から離れる方向で切り取られた容器断面の面積が縮小することがある。
【0017】
本発明の方法によれば、底面と複数の側壁を有するシリコンを鋳造するためのるつぼであって、この複数の側壁のうちの少なくとも1つは、るつぼの底面に垂直である、底面から上方に延びる方向で見た平面に関して約2°より大きい角度でるつぼの中心から外向きにテーパが付けられている、るつぼも形成される。テーパが付けられている1つまたは複数の壁で、底面から離れる方向で切り取られた容器断面の面積が増大することがある。
【0018】
本発明によれば、鋳造シリコンを製造する方法であって、るつぼの内側側壁を剥離コーティングによってコーティングし、底壁を未コーティングのまま残すステップと、シリコン種結晶を未コーティング壁と接触させ、シリコン原料をるつぼの中に入れ、種結晶を少なくとも部分的固体状態に維持しながら原料を溶融し、種結晶を通じて熱を抽出することによってシリコンを固化し、シリコンを第1の温度にし、シリコンを第2の温度に冷却するステップとを含む方法も提供される。
【0019】
本発明によれば、鋳造シリコンを製造する方法であって、すでに鋳造されているインゴットを複数のスラブにスライスするステップと、スラブを化学処理して不純物を除去するステップと、種結晶層として使用するためにスラブをるつぼに入れるステップと、次いで鋳造のためるつぼに原料を充填するステップとを含む方法も提供される。
【0020】
本発明によれば、鋳造シリコンを製造する方法であって、層の中心領域内の種結晶が表面に垂直な1つの結晶極方向を有し、層領域の約50%から約99%までを覆い、その一方で、層の縁に残っている種結晶が表面に垂直な少なくとも1つの異なる結晶極方向を有し、残りの層領域を覆うように、単結晶シリコン種結晶の層をるつぼの少なくとも1つの表面上に配置するステップと、原料シリコンを加えて、原料および種結晶層の一部を溶融状態にするステップと、種結晶層を通して熱を抽出することによってシリコンを固化させるステップと、シリコンを所定の、例えば均一な第1の温度にし、次いで好ましくは、シリコンを均一な第2の温度まで均一に冷却するステップとを含む方法も提供される。
【0021】
本発明によれば、鋳造シリコンを製造する方法であって、少なくとも約10cm×約10cmの面積を有する少なくとも1つの単結晶種結晶を、部分的に断熱性のベースプレート上に載るるつぼの底面上に配置するステップと、固体または液体シリコン原料を導入して種結晶を部分的に溶融し、凸状固体境界が単結晶成長の断面積を増やすように種結晶を通じて熱を抽出するステップと、シリコンを第1の温度にし、シリコンを第2の温度まで好ましくは均一に冷却するステップと、種結晶に対向する鋳造シリコンの側面からスラブを切断するステップと、化学プロセスを使用してスラブを洗浄するステップと、その後の鋳造プロセスに新しい種結晶層として大きなスラブを使用するステップとを含む方法も提供される。
【0022】
本発明によれば、鋳造シリコンを製造する方法であって、結晶シリコンの種結晶層を固体シリコン原料とともに蓋またはカバーを有するるつぼ内に装填するステップと、種結晶層の一部を固体に維持しつつ、またアルゴンおよび窒素ガスの少なくとも一方を蓋またはカバー内の少なくとも1つの孔を通して流し、少なくとも他方の孔からガスが出るようにしつつ、シリコンを溶融し、固化するステップと、シリコンを好ましくは均一に冷却するステップとを含む方法も提供される。
【0023】
本発明によれば、鋳造シリコンを製造する方法であって、結晶シリコンの種結晶層をるつぼに装填し、蓋を有するるつぼを覆うステップと、液体シリコンをるつぼ内に導入し、液体シリコンは好ましくは過熱されるステップと、種結晶層の一部を溶融させるステップと、アルゴンおよび窒素ガスの少なくとも一方を蓋の少なくとも1つの孔に通して流し、少なくとも1つの他の孔からガスが出るようにしつつシリコンを固化するステップと、シリコンを冷却するステップとを含む方法も提供される。
【0024】
本発明によれば、鋳造シリコンを製造するプロセスであって、固体原料とともに結晶シリコンの種結晶層を装填するステップと、種結晶層の中心部分の一面にわたって本質的に平坦であり、種結晶層の縁では凸状である固体/液体界面を維持しつつ原料および種結晶層の一部を溶融するステップと、同じ固体/液体界面形状を少なくとも最初には維持しつつ種結晶層を通して熱を抽出することによってシリコンを固化するステップと、シリコンを第1の温度にし、シリコンを第2の温度に冷却し、加熱と冷却は好ましくは均一である、ステップとを含むプロセスも提供される。
【0025】
本発明によれば、鋳造シリコンを製造するプロセスであって、固体原料とともに結晶シリコンの種結晶層を装填するステップと、種結晶層全体にわたって実質的に平坦である固体/液体界面を維持しつつ原料および種結晶層の一部を溶融するステップと、種結晶層の縁を含む領域内で少なくとも最初は余分な熱を加えつつ種結晶層を通して熱を抽出することによってシリコンを固化するステップと、シリコンを第1の温度にし、シリコンを第2の温度になるまで好ましくは均一冷却し、加熱と冷却は好ましくは均一である、ステップとを含むプロセスも提供される。
【0026】
本発明によれば、シリコンを鋳造するための装置であって、ヒートシンク上に載せられたるつぼを囲んで並ぶ、シリコンを溶融するために備えられている加熱装置と、ヒートシンクを通じて熱の制御された抽出を行うための手段と、ガスを導入するためのポートと、一次加熱装置と一緒に配置され、るつぼを取り囲み、電流が流されるとるつぼ内の異なる領域で誘導加熱を行うことができる、断熱された水冷管の少なくとも1つのループとを備える装置も提供される。
【0027】
本明細書に組み込まれ、本明細書の一部をなす、付属の図面は、本発明の実施形態を例示しており、また説明と併せて、本発明の特徴、利点、および原理を説明するのに役立つ。図面の説明を以下に示す。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1A】本発明の一実施形態による、鋳造ステーション内のるつぼの下で断熱層が熱伝導層と組み合わされている例示的なシステムを示す図である。
【図1B】本発明の一実施形態による、鋳造ステーション内のるつぼの下で断熱層が熱伝導層と組み合わされている例示的なシステムを示す図である。
【図2A】本発明の実施形態による、中にある鋳造シリコンに対する所望の効果の例示とともにテーパを付けられたるつぼの実施例を示す図である。
【図2B】本発明の実施形態による、中にある鋳造シリコンに対する所望の効果の例示とともにテーパを付けられたるつぼの実施例を示す図である。
【図2C】本発明の実施形態による、中にある鋳造シリコンに対する所望の効果の例示とともにテーパを付けられたるつぼの実施例を示す図である。
【図2D】本発明の実施形態による、中にある鋳造シリコンに対する所望の効果の例示とともにテーパを付けられたるつぼの実施例を示す図である。
【図3】本発明の一実施形態による、部分的にコーディングされているるつぼ内に装填されるシリコン原料の一実施例を示す図である。
【図4】本発明の一実施形態による、種結晶層材料をリサイクルするための方法の一実施例を示す図である。
【図5】本発明の一実施形態による、種結晶層を形成する単一結晶シリコンの例示的な構成を示す図である。
【図6】本発明の一実施形態による、大きな単一結晶種結晶層を形成するための例示的な方法を示す図である。
【図7A】本発明の一実施形態による、低炭素単結晶または多結晶シリコンを鋳造するための例示的な装置を示す図である。
【図7B】本発明の一実施形態による、低炭素単結晶または多結晶シリコンを鋳造するための例示的な装置を示す図である。
【図8】本発明の実施形態による、単結晶または多結晶シリコンを鋳造するための例示的な装置を示す図である。
【図9】本発明の実施形態による、単結晶または多結晶シリコンを鋳造するための例示的な装置を示す図である。
【図10】本発明の実施形態による、シリコンの例示的な鋳造インゴットを示す図である。
【図11】本発明の実施形態による、シリコン単結晶または多結晶シリコンを鋳造するための例示的な蓋を示す図である。
【図11A】本発明の実施形態による、シリコン単結晶または多結晶シリコンを鋳造するための例示的な蓋を示す図である。
【図11B】本発明の実施形態による、シリコン単結晶または多結晶シリコンを鋳造するための例示的な蓋を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
次に、本発明の実施形態を詳細に参照するが、その実施例は、付属の図面に例示されている。可能な限り、同じまたは類似の参照番号は、同じまたは類似の部分を指し示すために図面全体を通して使用される。
【0030】
本発明による実施形態において、溶融シリコンの結晶化は、種結晶を使用する鋳造プロセスによって行われる。本明細書で開示されているように、このような鋳造プロセスは、結晶化されたシリコンの鋳造された本体中の結晶粒の粒径、形状、および配向が制御されるように実装されうる。本明細書で使用されているように、「鋳造」という用語は、溶融シリコンを保持するために使用される鋳型または容器内で溶融シリコンを冷却することによってシリコンが形成されることを意味する。例えば、シリコンは、るつぼ内での固化によって形成されうるが、そこでは固化はるつぼの少なくとも1つの壁から始まり、るつぼからシリコンを引き出す冷却された異物を介さない。したがって、溶融シリコンの結晶化は、種結晶を移動したり、または鋳型、容器、もしくはるつぼを移動したりしてブールを「引く」ことでは制御されない。さらに、本発明の一実施形態に従い、鋳型、容器、またはるつぼは、溶融シリコンを固化するため少なくとも1つの高温側壁表面を備える。本明細書で使用されているように、「高温壁」という用語は、溶融シリコンと等温であるか、またはそれよりも高い温度である表面を指す。好ましくは、高温壁表面は、シリコンの加工中に固定されたままである。
【0031】
本発明の実施形態に従い、結晶化されたシリコンは、連続的単結晶、または制御された結晶粒配向を有する連続的多結晶のいずれかとすることができる。本明細書で使用されているように、「連続的単結晶シリコン」という用語は、シリコンの本体が単結晶シリコンの1つの均質な本体であり、一緒に結合されてより大きなシリコン片を形成することになる小さなシリコン片ではない、単結晶シリコンを指す。さらに、本明細書で使用されているように、「連続的多結晶シリコン」という用語は、シリコンの本体が多結晶シリコンの1つの均質な本体であり、一緒に結合されてより大きなシリコン片を形成することになる小さなシリコン片ではない、多結晶シリコンを指す。
【0032】
本発明の実施形態による、シリコンの鋳造は、結晶シリコンの「種結晶」の所望の集合体を、例えば、溶融シリコンを保持することができる石英るつぼなどの容器の底部内に配置することによって行うことができる。種結晶は、るつぼの底部のすべて、または大半、または実質的にすべてを覆うことができる。本明細書で使用されているように、「種結晶」という用語は、所望の結晶構造を持ち、シリコン片を入れる容器の表面に適合する側面を有する、幾何学的に成形されたシリコン片を指す。このような種結晶は、単結晶シリコン片または幾何学的に秩序化された1片の多結晶シリコンのいずれかとすることができる。本発明に従い、種結晶は、底面に平行な上面を有することができるが、そうでなくてもよい。例えば、種結晶は、差し渡し約2mmから約10mmまで、差し渡し約100mmから約1000mmまでと様々なサイズのシリコン片とすることができる。シリコン片は、約1mmから約1000mmまで、好ましくは約10mmから50mmまでの厚さを有することができる。種結晶の好適さサイズおよび形状は、使いやすさとタイリングに応じて選択できる。以下でさらに詳しく説明するタイリングは、シリコン種結晶がるつぼの底部または側部および底面上に所定の幾何学的配向またはパターンで配列される場所である。
【0033】
次いで、シリコン原料がるつぼ内に導入され、種結晶上に置かれ、次いで原料が溶融される。代替として、るつぼ内に直接、また種結晶上に溶融シリコンが注ぎ込まれうる。溶融シリコンが注ぎ込まれる、るつぼは、好ましくは最初に、シリコンの溶融温度に非常に近い温度またはシリコンの溶融温度にされ、次いで、溶融シリコンが注ぎ込まれる。本発明の実施形態に従って、固化が始まる前に種結晶の薄層が溶融されうる。
【0034】
次いで、溶融シリコンは、好ましくは溶融シリコンの結晶化が固体種結晶の元の頂部のレベルでまたはそれよりも低い位置から開始し、種結晶から遠ざかる、好ましくは上方へ遠ざかる形で進行するように溶融シリコンの冷却が行われる方法で、種結晶の存在下で冷却し、結晶化するようにできる。これは、種結晶を通りヒートシンクへ向かう融解熱を抽出することによって行うことができる。明細書で使用されているように、「ヒートシンク」という用語は、材料の他の本体から熱を抽出するために使用される材料の本体を指す。ヒートシンクは、高温領域から低温領域への熱伝導手段、低温流体による対流、または低温物体へのエネルギーの直接輻射によって熱を抽出することができる。温度勾配は、一般的に、一方の側が冷却される物体と平衡状態にある間に他方の側が冷たい領域とエネルギーを交換するようにヒートシンク上で維持される。
【0035】
約1410℃から約1300℃までの範囲内の温度などの第1の温度は、通常、固形物上のおよび/または固形物を通る温度勾配を含む。平均して約1250℃から約1380℃までの範囲内の温度などの第2の温度は、通常、固形物上のおよび/または固形物を通る低下した温度勾配および/または均一な温度プロフィールを含む。代替として、第1の温度は、約1410℃から約1450℃までの範囲の温度を含み、第2の温度は、約1200℃から約1400℃までの範囲の温度を含む。温度勾配を下げるステップは、ときには、この開示の文脈においてアニーリングと称されることもある。アニーリングは、例えば、断熱材を閉鎖することを含みうる。
【0036】
本発明の実施形態によれば、溶融シリコンと結晶化されたシリコンとの間の液体固体界面は、溶融または固化時に、鋳造プロセス全体を通して実質的に平坦に維持される必要はない。つまり、溶融シリコンの縁のところの固体液体界面は、冷却時に、溶融シリコンとシリコン種結晶との間の距離を増加する方向に移動するように制御される。溶融シリコンの固化が開始すると、固化前線は最初は実質的に平坦であり、好ましくはシリコンの成長する固体塊の水平縁において強い曲率を示す。したがって、固体液体界面の形状は、鋳造プロセス全体を通して制御された外形を有することができる。
【0037】
溶融シリコンの結晶化を本発明の実施形態による方法で行うことにより、ランダムではなく特定の結晶粒境界および特定の粒径を有する鋳造シリコンを作製することができる。それに加えて、すべての種結晶が互いに同じ相対的方向、例えばるつぼの底部に対し垂直である(100)極方向および矩形または正方形の断面を持つるつぼの側面に対し45°の角度をなす(110)極方向に配向されるように種結晶を配向することにより、そのような鋳造シリコンの極方向が種結晶の極方向と同じである単結晶シリコンである、または本質的に単結晶シリコンである鋳造シリコンの大きな本体が得られる。同様に、他の極方向は、るつぼの底部に対し垂直であるものとしてよい。さらに、共通極方向がるつぼの底部に対して垂直になるように1つまたは複数の種結晶が配列されうる。さらに、本発明の一実施形態に従って、結晶成長の有効性を最大化し、所望の結晶方位を持つできる限り大きな体積のシリコンを形成するために、2つ以上の異なる極方向を持つ種結晶が一緒に使用されうる。
【0038】
本発明の実施形態による、鋳造プロセスに使用される種結晶は、所望のどのようなサイズおよび形状のものでもよいが、正方形、矩形、六角形、菱形、八角形のシリコン片などの、適切に幾何学的に成形された単結晶シリコン片、または幾何学的に秩序化された多結晶シリコン片である。これらは、タイリングを促すように成形され、したがって、これらは、縁と縁が接するように配置され、つまり「タイル状に配置」され、所望のパターンでるつぼの底部に適合するようにできる。また、本発明の実施形態に従って、種結晶は、るつぼの1つまたは複数の側部に配置されうる。このような種結晶は、例えば、単結晶シリコンのブールなどの結晶シリコン源をソーで切断して所望の形状を持つ複数の断片に分けることによって得られる。種結晶は、本発明の実施形態によるプロセスによって作製されるシリコンの試料から切り出すことによって形成することも可能であり、その後の鋳造プロセスで使用する種結晶は、初期鋳造プロセスから作製することができる。例えば、転位のない種結晶材料のより小さな断片を使用して、新しい種結晶層として使用するるつぼの底部全体を覆うのに十分な、転位のない大きな単一結晶を成長させることができる。
【0039】
次に、本発明の実施形態によりシリコンを調製するためのプロセスおよび装置について説明する。しかし、これらは、本発明の実施形態によるシリコンを形成するための唯一の方法でないことは理解されるであろう。
【0040】
図1Aおよび1Bを参照すると、図1Aには鋳造ステーション高温帯の断面が示されており、これは、種結晶鋳造プロセスの溶融段階の終わりの液体シリコン100と固体シリコン101を示している。シリコンは、例えば溶融石英またはシリカのるつぼであってもよい、底と壁を有するるつぼ110内に配置される。この時点で、るつぼ110内の固体シリコン101は、るつぼの底部にすでに配置されているシリコンの種結晶層から全体が構成される。原料シリコン(図示せず)が、種結晶層の頂部に導入される。原料シリコンは、固体として装填されてるつぼ内で溶融されるか、または別の容器内で溶融され、種結晶の頂部に液体として導入されうる。いずれかの場合に、元のシリコン種結晶層は、部分的に溶融され、固体シリコン101は、全体がシリコン種結晶層の残りから構成される。好ましくは、るつぼ110は、るつぼ110から結晶化シリコンの除去を補助するためにシリカ、窒化ケイ素、または液体カプセル材から作製されたものなどの剥離コーティングを有する。
【0041】
図1Aをさらに参照すると、炉高温帯のこの図において、抵抗加熱装置120が、シリコンを溶融するのに必要な温度を維持するためのエネルギーを供給し、その際に、断熱材130が外側室(図示せず)への熱漏れを防ぐ。本発明の一実施形態に従って、るつぼ110は、制御された方法でシリコンから熱を奪うのにも役立つ多数の層によって支持される。例えば、熱伝導ブロック140は、水冷室(図示せず)に熱を放射し、これにより、その上にある高温帯構成要素を冷却する。図1Aには断面が示され、図1Bには三次元で示されている、グラファイト支持板142は、熱伝導層141から熱を伝導し、次に、るつぼ110およびシリコン100、101から熱を奪う。断熱層150は、例示的な構成で熱伝導層141を囲み、熱除去経路を変更して、その結果、固化前線の形状を変更することができる。固体グラファイト側板143は、るつぼ110を囲み、るつぼの構造を支持する。本発明の実施形態に従って、鋳造ステーションは、グラファイト支持板142を有していてもよいが、伝導層141および断熱層150によって制御される調整された熱伝導経路は不要である。
【0042】
さらに図1Aおよび1Bを参照すると、グラファイト側板143は、グラファイト支持板142上に載り、熱を直接板142に伝えることができ、これにより、るつぼの底部縁のところに冷点を発生させることができる。しかし、層141および150に対する調整された熱伝導の効果は、冷却パラメータを変更することができ、したがって、液体/固体界面の形状は、例えば、るつぼ110の温度を高くして維持することにより、側方溶融が少量のみ得られる。例えば、図1Aに示されているように、固体シリコン101については、るつぼ110の下にある材料で熱交換が行われるため左右の縁のところの曲率が大きくなる。このような曲率の結果、固体が横方向に膨張し、種結晶構造が外側に成長する可能性がある。図1Aでは、固体シリコン101の結晶成長方向は、黒色の矢印で示されている。
【0043】
図2A〜2Dを参照すると、シリコンの結晶成長は、るつぼの形状を変更することによって変更されうる。例えば、結晶成長は、図2Aおよび2Bに示されているように、外向きにテーパが付けられているるつぼ200内で行うことができ、その場合、固体シリコン221に対する液体シリコン220の曲率は、種結晶(図示せず)の横方向膨張を促進し、その成長方向は図2Bにおいて矢印によって示されている。他の実施例では、結晶成長は、図2Cおよび2Dに示されているように、内向きにテーパが付けられているるつぼ210内で行うことができ、これは、図2Aのるつぼ200と同様に、使用可能な鋳造シリコン222の量を最大にし、鋳造シリコンインゴット(222+223)を切断して複数のブリック(破線で示されている)に分けるときに除去されるべき使用可能でないまたは望ましくないシリコン223の量を最小にするという利点も有する。鋳造シリコンの側壁上の望ましくないシリコン223のテーパ形状は(図2Dにおける断面で見て)、るつぼの底部のところのシリコンが、それより速く冷却されるインゴットの頂部のところのシリコンと比べて、固化および結晶成長時に高温状態で費やす余分な時間に理由がある。
【0044】
図3は、鋳造のためるつぼ310内に装填されたシリコン(原料300および結晶種301)の断面を例示している。窒化ケイ素または炭化ケイ素などの剥離コーティング320が、原料300が接触するるつぼ310の領域に施すことができるが、これは鋳造時に完全に溶融されることになるシリコン300の領域に対応する。結晶種301よりも下には、コーティングは施されていない。種結晶301は、完全には溶融されず、したがって、るつぼ110に付着しない。
【0045】
図4は、結晶シリコン種結晶層の再利用のためのプロセスを例示している。図4に示されているように、種結晶層401から成長させた鋳造インゴット400は、最初に、種結晶層401を含む材料のスラブを除去するために点線にそってスライスされる。次いで、材料のスラブは、点線縁のところで切り取られ、他のるつぼ内での配置に邪魔になるおそれのある過剰な材料を除去する。切り取られたスラブ402は、元の種結晶層401のサイズおよび形状に合わせて切り取られており、その後、好適な液体または他の材料を収納しているタンクもしくはタブ型容器などの容器401内で、潜在的に他の類似のシリコン片で処理され、これにより層401から汚染物質および破片を(および場合によっては他のシリコン片も)除去してから、スラブはその後の鋳造プロセスにおける種結晶層として使用するため新しいるつぼ420内に置かれる。
【0046】
図5は、種結晶層を形成するように配列されている単一結晶シリコン片の例示的な構成を示している。(001)結晶方位は、シリコン太陽電池の製造に関して有利な特性を有することが示されている。(001)シリコンは、表面全体を覆うピラミッドのパターンを形成するように化学エッチングが施され、これにより、反射を小さくし、材料内の光の経路長を延長することによってシリコンの光トラップ機能を改善することができる。化学エッチングは、知られている方法によって実行できる。しかし、(001)シリコンの鋳造は、シリコンの多結晶領域に隣接する位置に配置されたときにその(001)極方向に対し鋭角の角度で結晶粒境界を成長させる傾向があるため困難である。多結晶シリコンの成長に対抗するため、複数の単結晶シリコン種結晶の幾何学的構成がるつぼ(図示せず)内の少なくとも1つの表面、例えば、るつぼの底面に配置されるようにでき、この幾何学的構成は、最密充填多角形を含む。図5に示されているように、1片の(001)シリコン500は、(111)シリコン501の矩形の周によって囲まれる。周囲シリコン501の極方位は、(111)として示されているが、これは、多結晶領域に隣接して成長したときに競争的に有利である結晶方位である可能性がある。このようにして、結果として得られる鋳造インゴット(図示せず)の大部分は、(001)シリコンからなり、シリコン501から成長させた競争的に有利な(111)結晶粒は、シリコン500上で(001)シリコンによって占有される領域内の多結晶シリコンの成長を制限する。同様に、本発明の実施形態に従って、多結晶シリコンの本体を鋳造することによって形成されるシリコン結晶粒は、柱状に成長させることができる。さらに、このような結晶粒は、固化が進行するときに収縮する(001)断面領域を有するのではなく、結晶粒を形成する種結晶の形状であるか、または結晶粒を形成する種結晶の形状に近い断面を有することができる。このような特に選択された結晶粒境界を有するシリコンを作製する場合、好ましくは、結晶粒境界接合部は、1つの隅部で交わる3つの結晶粒境界のみを有し、これは図5に示されている構成において満たされる条件である。
【0047】
図6は、種結晶層として使用する面積の大きな、転位を含まない単一結晶を製造するためのプロセスを例示している。断面で示されている、このプロセスでは、ポリ結晶原料600は、面積が約25cm2から約10,000cm2まで、厚さが約3mmから1000mmまでの横方向寸法を有するものとしてよい単一結晶の種結晶601と一緒に装填される。原料600は、るつぼ610内に置かれ、次いで、熱伝導部分(620)と断熱部分(630)からなる、層620、621、および630の上にある場(図示せず)に置かれる。熱伝導部分620の領域は、好ましくは、種結晶601の約50%から約150%の側面積を有する、るつぼ610の底部のほぼ同じ形状であるべきである。溶融時に、熱伝導領域620を通して熱が抽出され支持板621に送られるが、熱が断熱層630を通過するのは妨げられる。鋳造の溶融段階であっても熱伝導領域620を通して熱が外へ伝導され、これにより、種結晶601の完全な溶融が妨げられる。すべての原料600および種結晶601のごく一部が溶融されて液体シリコン602にされた後、残っている固体シリコン603は、固化プロセスの核形成層として働く。断熱層630が存在することで、核形成および成長時に固体シリコン603の形状、さらには図6の矢印で示されている方向を制御することができる。固化表面の曲率が強いため、固体シリコン603の外向きの成長が生じ、その一方で、多結晶領域605は最小にされる。インゴット604が鋳造された後、新しい種結晶スラブ606として使用されるインゴットの上側部分から水平層を切り出すことができる(破線)。スラブ606は、新しいるつぼ610内の新しいインゴットとして、またはなおいっそう大きい単一結晶の出発点として、洗浄され、切り取られ、使用されうるが、ここでもまた、説明したばかりのプロセスを使用する。
【0048】
図7Aおよび7Bは、種結晶インゴット内の低炭素単結晶または多結晶シリコンの鋳造のための装置の断面を示している。図7Aに示されているように、種結晶700は、炉高温帯(ラベルは付けられていない)内に配置されているるつぼ710内に原料701と一緒に装填される。るつぼ710は、セラミック製蓋711(図7Bにも示されている)で覆われているように例示されているが、覆いを取って、周囲の外気に対して完全に開放されるようにできる。鋳造では、るつぼ710内に落ち込む場合があるグラファイト断熱材720の脱離した断片からインゴット内に混入されるか、またはるつぼ710からの酸素が溶融したシリコン中に溶解する気相反応によってインゴットに内に混入される可能性があり、その後、SiO分子(図示せず)として蒸発する。これらの分子は、炉のグラファイト部分720、750、760に付着し、反応SiO+2C→SiC+COを介して反応することができる。
【0049】
COガス分子が液体の中に入り、そこでSiCが形成され、Oが再び遊離してサイクルを繰り返す。セラミック製蓋711(図7Bに示されている)をるつぼ710に導入し、プロセスガス730(例えば、アルゴンとすることができる)を慎重に制御することによって、炭素混入の両方の機構が効果的に停止または厳しく制限できる。セラミック製蓋711は、例えば、溶融シリカ、石英、炭化ケイ素、窒化ケイ素、および同様の物質を含む、多数の材料で作製することができる。アルゴンなどの不活性ガスの新規供給が流路740内を通過し、他の流路(図示せず)を通って出て、上述の炭素ガス反応を妨げることが設計では望ましい。
【0050】
さらに図7Aおよび7Bを参照すると、鋳造プロセスは、炉内にるつぼ710を設置する前に1つまたは複数の種結晶700および原料701を装填することによって、または1つまたは複数の種結晶700のみを装填し、その後液体シリコン770を別の溶融室からるつぼ内に導入することによって実行することができる。
【0051】
図8は、鋳造時に固体液体界面の形状を修正するための本発明の実施形態による装置を示している。図8に示されているように、ターゲットとする加熱を材料800、801に加えるために、一次加熱装置820および追加加熱装置840が鋳造ステーションの高温帯(断熱材831によって囲まれているように示されている)内に置かれる。固体種結晶材料801の上にある液体材料800は、るつぼ810の側壁の近くの縁のところで湾曲している界面を有する。一次加熱装置820は、一次ヒートシンク860と一緒に、通常は、実質的に平坦な固体液体界面(図示せず)を形成する働きをする。しかし、追加加熱装置840は、電流を直接材料800、801に流して、るつぼ810の壁の近くの材料800、801の縁に誘導加熱を及ぼし、これによりその付近の固体材料801を溶融する。
【0052】
図8に示されているような追加加熱装置840は、循環する液体850で冷却され、周囲層830によって一次加熱装置820から断熱された、例えば、銅を使用した、導電性材料のコイルである。追加加熱装置840は、図8に例示されているように、ループでるつぼ810を囲む一巻コイルであるか、またはらせんを構成するループ間に所望の間隔を有するらせんを形成する複数のループを有するものとすることができる。追加加熱装置840は、さらに、固体液体界面(図示せず)に影響を及ぼすためにるつぼ810の壁に相対的に移動できるように構成することもできる。追加加熱装置840は、水が冷却する銅製パイプを流れる電流によって動作し、これによりパイプを流れる電流が液体シリコンと結合しシリコン内に対応する電流を誘起する強磁場を形成する。シリコン内の、および/またはシリコンを通る電流から生じる抵抗熱は、局部的な方法で、および/または局部的な形で加熱作用を引き起こす。
【0053】
代替として、抵抗加熱装置は、追加加熱装置840として使用することも可能であるが、抵抗加熱装置は、材料800、801などの材料の比体積に熱を加えることを目的とするときにはそれほど効率的でない場合がある。図8に示されている装置で鋳造を行うときには、追加加熱装置840は、種結晶材料801を過度に溶融しないように、溶融サイクルの終わり近くでのみ作動させる。追加加熱装置840は、固化プロセスの少なくとも最初の20%のあたりまで熱をるつぼ810に加え続ける。追加加熱装置840は、冷却段が実行されるまで固化プロセス全体を通してるつぼ810に熱を加え続けてもよい。
【0054】
図9に示されているように、一実施形態によれば、単結晶および/または双晶シリコンの体積は、種結晶側板および/またはスラブを使用してさらに増やすこともできる。種結晶900は、るつぼ910の1つまたは複数の側壁930、940上に置くこともできる。種結晶900は、るつぼ910の四方の壁すべてに配置することができるが、例示のみのために、種結晶900は、壁930、940上にのみ示されている。好ましくは、るつぼ910の四方の壁のどれかに置かれる種結晶900は、結晶成長が促進されるように柱状および/またはモノリシックである。好ましくは、るつぼ910の四方の壁のどれかに置かれている柱状種結晶はそれぞれ、るつぼ910の底面上で真下に置かれている種結晶と同じ粒子配向を有する。幾何学的多結晶シリコン成長の場合、このようにして柱状種結晶を配置することで、幾何学的多結晶シリコン粒の成長はるつぼ910の高さほどに促される。代替として、側面では単結晶スラブが使用され、その結果、単結晶材料が増える。
【0055】
さらに図9を参照すると、種結晶900のこのような構成の利点は、結晶度が高く、また成長速度が速いシリコンを鋳造する高速で単純な自己伝播プロセスである点である。例えば、るつぼ910内にキャビティ、例えば、底部と4つの壁を形成するように積み重ねられた多数の種結晶からなるシリコン「カップ」内で、シリコンを溶融することができる。代替として、るつぼ910内にキャビティ、例えば、底部と4つの壁を形成するように積み重ねられた多数の種結晶からなるシリコン「カップ」内に、溶融シリコンを注ぎ込んでもよい。代替の実施例では、収容「カップ」は、最初に、シリコンの溶融温度まで高められるが、固体状態に維持され、次いで、溶融シリコンが、注ぎ込まれ、熱平衡に至らせる。次いで、上記の実施例において、るつぼ910が冷却され、これにより、熱がるつぼ910の開いている上部にそのまま加えられている間に、例えば、熱を周囲に放射する固体ヒートシンク材料(図示せず)によってるつぼ910の底部および側部から熱が除去される。このようにして、結果として得られるシリコンの鋳造インゴットは、単結晶であるか、または幾何学的多結晶(使用される種結晶900の種類およびその配向に応じて)であるものとしてよく、結晶化は、独自の多結晶鋳造プロセスよりも高速に進行する。このプロセスを繰り返すために、知られている技術を使用して、結晶化したシリコンインゴットの側部および底部の一部が除去され、その後の鋳造プロセスで再利用できる。好ましくは、複数の種結晶、例えば、種結晶900は、種結晶900の間の共通極方向がるつぼ910の底部および側部のそれぞれに対し垂直となるように配列され、したがって、るつぼ910の底部と側部との間に結晶粒境界は形成されない。
【0056】
一実施形態によれば、図11、11A、および11Bに示されているように、シリコンを鋳造するための蓋1111は、中央注入孔1113に関して配置されている複数の成形孔1112を備えている。望ましくは、ただし必ずというわけではないが、成形孔1112は、中心に一般的にスロット状の部分を備え、一般的に円形の部分がスロット部分の端部に、および/またはその近くに配置されている。成形孔1112の形状は、ときには、「犬用の骨」および/または「亜鈴」とも呼ばれることがある。スロットおよび/または円は、好適な任意のサイズおよび/または配置であってよい。望ましくは、1つの成形孔1112は、蓋1111のそれぞれの側部および蓋1111のそれぞれの隅部に対応し、例えば、成形孔1112は合計で8つである。隅部成形孔は、長さのほぼ半分など、側部成形孔よりも短いものとすることができる。望ましくは、成形孔1112は、テーパが付けられ、例えば、蓋1111の内側では狭く、蓋1111の外側では広くなっている。成形孔は、シリコン中への破片および/または汚染物質の逆混合および/または混入を低減することができる。
【0057】
本明細書で開示されているように、本発明の実施形態は、単結晶シリコン、準単結晶シリコン、双晶シリコン、または幾何学的多結晶シリコンの大きな本体を、単純で費用効果の高い鋳造プロセスによって生産するために使用されうる。本発明の実施形態によるプロセスで使用されるシリコン原料、および生産されるシリコンは、ホウ素、アルミニウム、リチウム、ガリウム、リン、アンチモン、ヒ素、およびビスマスを含むリストから選択される1つまたは複数のドーパントを含有することが可能である。このような1つまたは複数のドーパントの総量は、約0.01ppma(原子数%での100万分率)から約2ppmaとすることができる。好ましくは、シリコン中の1つまたは複数のドーパントの量は、約0.1から約50Ω−cm、好ましくは約0.5から約5.0Ω−cmの抵抗率を有する。代替として、本明細書で開示されているプロセスおよび装置を使用して、好適な液相を有する他の材料を鋳造することもできる。例えば、ゲルマニウム、ガリウムヒ素、シリコンゲルマニウム、サファイア、および多数の他のIII−VまたはII−VI族材料、さらには金属および合金は、本発明の実施形態により鋳造可能である。
【0058】
さらに、シリコンの鋳造が、本明細書において説明されているが、他の半導体材料および非金属結晶材料も、本発明の範囲および精神から逸脱することなく鋳造することが可能である。例えば、本発明の発明者は、ゲルマニウム、ガリウムヒ素、シリコンゲルマニウム、酸化アルミニウム(その単一結晶形態のサファイアを含む)、窒化ガリウム、酸化亜鉛、硫化亜鉛、ガリウムインジウムヒ素、アンチモン化インジウム、ゲルマニウム、イットリウムバリウム酸化物、ランタニド酸化物、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、および液相を持つ他の半導体、酸化物、および金属間化合物などの本発明の実施形態による他の材料の鋳造も考察している。それに加えて、多数の他のIII−V族またはII−VI族材料、さらには金属および合金も、本発明の実施形態により鋳造可能である。
【0059】
いくつかの実施形態では、鋳造シリコンを製造する方法は、結晶シリコンの種結晶層を、るつぼの底面など、るつぼ内に装填するステップを含みうる。この方法は、固体シリコン原料を、種結晶層の上などの、るつぼ内に装填するステップを含みうる。この方法は、蓋を、容器の口など、るつぼの開口部にかぶせるステップを含みうる。この方法は、不活性ガスを中央ポートなど蓋の少なくとも1つの孔を通してるつぼ内に流入させるステップを含むことができ、その場合、不活性ガスは、アルゴンおよび/または窒素とすることができる。シリコンに関して不活性である他のガス、例えば、ヘリウム、キセノン、および/または他の好適な蒸気なども使用できる。
【0060】
この方法は、さらに、不活性ガスを蓋の少なくとも1つの他の孔、例えば、複数の放射状に配置されている開口を通してるつぼから抜くステップをさらに含むことができる。望ましくは、ガス抜きで、るつぼ内への逆流、混入、および/または逆混合を防止する。この方法は、種結晶層の一部を固体状態に維持しつつ、またシリコンの固形物を形成しつつ、シリコン原料を溶融するステップを含みうる。この方法は、固形物を冷却するステップも含みうる。望ましくは、この方法は、るつぼの少なくとも底面を通して熱を抽出することによって固形物を形成するステップを含む。
【0061】
いくつかの実施形態では、不活性ガスの流れは、少なくともシリコン原料の溶融時および固形物の形成時に生じる。代替として、最初の乾燥および/またはガス除去の段階を除いて、不活性ガスが常時送られる。好ましくは、不活性ガスを流すことで、るつぼに対し、2〜3ミリメートル程度の液圧などの周囲環境よりも高い圧力を加える。この方法は、水蒸気を除去し、および/または低減するなどのために、種結晶層およびシリコン原料を装填した後、また不活性ガスの流入が開始する前に、るつぼに真空を印加するステップをさらに含むことができる。
【0062】
いくつかの実施形態では、不活性ガスを流したり、抜いたりすることで、グラファイト断熱材からシリコン中に落下する炭粉からなど、鋳造シリコン中への炭素混入を少なくとも部分的に低減もしくは防止する。不活性ガスを流し込んだり、抜いたりすることで、溶融シリコンからなど、るつぼ内のSiOが少なくとも部分的に低減されうる。
【0063】
いくつかの実施形態では、固形物は、約1×1016から約4×1017などの炭素濃度および/またはほぼ溶解限界を有する低炭素シリコンを含む。上述のように、一般的に低い炭素濃度は、太陽電池用途に望ましい。本発明によるシリコンの低い炭素濃度は、他の鋳造シリコン法およびさらにはCZシリコンの高い炭素濃度とは対照的である。
【0064】
いくつかの実施形態では、本発明は、平均炭素濃度が約4×1017原子数/cm3の溶解度限界より低く、平均酸素濃度が約8×1017原子数/cm3より低い鋳造シリコンの本体を含む。酸素濃度の範囲は、例えば、約1.2×1018から約1×1017とすることができる。
【0065】
代替として、鋳造シリコンを製造する方法は、結晶シリコンの種結晶層をるつぼ内に任意選択で装填するステップと、るつぼを蓋で任意選択で覆うステップと、液体シリコンをるつぼ内に導入するステップと、存在するならば種結晶層の一部を溶融させるステップと、シリコンの固形物を形成するステップと、不活性ガスをるつぼ内に任意選択で流し込むステップと、不活性ガスをるつぼから任意選択で抜き出すステップと、固形物を冷却するステップとを含む。不活性ガスは、蓋および/またはるつぼ内の、および/または蓋および/またはるつぼを貫通する1つまたは複数の孔および/または開口に入るか、または供給されうる。不活性ガスは、蓋および/またはるつぼ内の、および/または蓋および/またはるつぼを貫通する1つまたは複数の孔および/または開口から出るか、および/または排出されうる。望ましくは、ただし必ずというわけではないが、供給ポートおよび排出ポートは異なるオリフィスである。代替として、同心円状構成および/または形状の場合と同様に、単一の貫通部が供給と排出の両方の働きをする。
【0066】
本明細書で開示されているこの方法およびすべての方法において提示されているステップの順序は、明示されていない限り、ステップのリストされている並びおよび/または数に限定されるとみなされるべきでない。
【0067】
液体シリコンは、るつぼに過熱された液体を導入した後に種結晶の薄層を溶融するため一定量の過熱がなされるなどする過熱液体シリコンを含みうる。代替として、この一定量の過熱は、溶融シリコンの温度より約1℃から約100℃ほど高い過熱を含む。他の範囲の過熱も可能である。
【0068】
いくつかの実施形態では、鋳造シリコンを製造する方法は、結晶シリコンの底部種結晶層をるつぼの底部に装填するステップと、結晶シリコンの少なくとも1つの側板種結晶層をるつぼの少なくとも1つの側壁の隣に装填するステップと、るつぼを蓋で覆うステップと、液体シリコンをるつぼ内に導入するステップと、底部種結晶層または少なくとも1つの側板種結晶層の一部を溶融するステップと、シリコンの固形物を形成するステップと、蓋の少なくとも1つの孔を通して不活性ガスを流し込むステップと、少なくとも1つの他の孔を通して不活性ガスを抜き出すステップと、固形物を冷却するステップとを含む。種結晶側板および/または結晶は、望ましくは、るつぼの底面上の種結晶層に対応する配向を有する。種結晶側板は、側壁に一時的に貼り付けられ、および/または例えば、底部種結晶層と結合され、および/または底部種結晶層と組み合わされうる。
【0069】
「Methods and Apparatuses for Manufacturing Monocrystalline Cast Silicon and Monocrystalline Cast Silicon Bodies for Photovoltaics」という表題の米国特許出願公開第2007/0169684A1号では、種結晶側板の使用を開示している。「Methods and Apparatuses for Manufacturing Geometric Multicrystalline Cast Silicon and Geometric Multicrystalline Cast Silicon Bodies for Photovoltaics」という表題の米国特許出願公開第2007/0169685A1号でも、種結晶側板の使用を開示している。同一出願人による出願公開第2007/0169684号および第2007/0169685号は内容全体が参照により本明細書に組み込まれている。
【0070】
いくつかの実施形態では、固形物を形成するステップは、るつぼの底面を通して熱を抽出するステップを含む。代替として、固形物を形成するステップは、るつぼの底面および少なくとも1つの側壁を通して熱を抽出するステップを含むことができる。代替として、熱は、上面および/または蓋を通して抽出されうる。好適な冷却方法として、対流機構、伝導機構、および/または輻射機構が挙げられる。
【0071】
いくつかの実施形態では、鋳造シリコンを製造する方法は、結晶シリコンの種結晶層を固体シリコン原料とともに蓋を有するるつぼ内に任意選択で装填するステップと、シリコン原料を溶融し、種結晶層の一部を固体状態が存在する場合に固体状態に維持しつつ、また蓋もしくはカバー内の少なくとも1つの孔を通して不活性ガスを流すとともに蓋またはカバー内の少なくとも1つの他の孔を通して不活性ガスを抜き出しつつシリコンの固形物を形成するステップと、固形物を冷却するステップとを含む。
【0072】
いくつかの実施形態では、鋳造シリコンを製造する方法は、結晶シリコンの種結晶層をるつぼ内に装填するステップと、るつぼを蓋で覆うステップと、液体シリコンをるつぼ内に導入するステップと、種結晶層の一部を溶融させるステップと、不活性ガスを蓋の少なくとも1つの孔に通して流す一方で少なくとも1つの他の孔から不活性ガスが抜けるようにしつつシリコンの固形物を形成するステップと、固形物を冷却するステップとを含む。
【0073】
いくつかの実施形態では、鋳造シリコンを製造する方法は、結晶シリコンの種結晶層をるつぼ内に装填するステップと、るつぼを蓋で覆うステップと、過熱液体シリコンをるつぼ内に導入するステップと、種結晶層の一部を溶融させるステップと、シリコンの固形物を形成するステップと、固形物を冷却するステップとを含む。この方法は、るつぼに過熱された液体を導入した後に種結晶の薄層を溶融するのに十分な一定量の過熱も含みうる。代替として、るつぼは、種結晶材料の導入とその後の液体および/または溶融シリコンの急速導入に先立ってシリコンの融点の温度に、および/または融点より高い温度に加熱できる。過熱は、シリコンの融点より約1℃から約100℃ほど高い温度など、好適な量の過熱を含みうる。
【0074】
いくつかの実施形態によれば、鋳造シリコンを製造する方法は、液体シリコンをるつぼ内に導入し、および/または固体シリコン原料をるつぼに入れてシリコン原料を溶融するステップと、シリコンの固形物を形成するステップと、不活性ガスをるつぼ内に流し込むステップと、不活性ガスをるつぼから抜き出すステップと、固形物を冷却するステップとを含む。この方法は、るつぼおよび/またはるつぼの少なくとも一部またはるつぼの開口部を蓋で覆うステップをさらに含みうる。不活性ガスを流すステップは、不活性ガスを蓋またはるつぼ内の1つまたは複数の孔に通すステップを含むことができる。不活性ガスを抜き出すステップは、不活性ガスを蓋またはるつぼ内の1つまたは複数の孔に通すステップを含むことができる。不活性ガスを流す、および/または抜き出すための孔は、丸形、正方形、矩形、三角形、スロット、成形孔、および/または同様の形状などの好適な形状とすることができる。不活性ガスを流し、抜き出すステップは、同じおよび/または異なる孔を通じて行うことができる。
【0075】
以下の実施例は、本発明の実施形態による実験結果である。これらの実施例は、本発明の実施形態の例を示し、図解することのみのために提示されており、いかなる形でも本発明の範囲を制限するものと解釈されるべきではない。
【実施例】
【0076】
[実施例1]
るつぼの準備:るつぼを2つの層からなる支持構造物上に配置した。支持構造物の底部層は、大きさが80cm×80cm×2.5cmである固体同質成形グラファイト板であり、これが複合層を支持した。上側複合層は、大きさが60cm×60cm×1.2cmの熱伝導性同質成形グラファイト板である内部領域を有し、厚さ1.2cmの断熱グラファイト繊維板の10cmの周で四方の側面すべてにおいて囲まれていた。このようにして、複合層は、底部層を完全に覆った。
【0077】
種結晶の準備:1辺140mmからの正方形の断面を有するようにダイヤモンドコーティングされたバンドソーを使用して、MEMC,Inc.社から入手した、0.3ppmaのホウ素を有する純粋なチョクラルスキ(CZ)シリコン(単結晶)のブールをその長さにそって切り落とした。その結果得られた単結晶シリコンのブロックにおいて同じソーを使用してその断面を切り開き、厚さが約2cmから約2cmまでの複数のスラブを形成した。これらのスラブを、単結晶シリコン種結晶、つまり「種結晶」として使用した。シリコンブールの(100)結晶極方位を維持した。次いで、その結果得られた単一結晶シリコンスラブを、スラブの(100)方向が上を向くように石英るつぼの底部に配列し、(110)方向をるつぼの一方の側部に対し平行に保った。石英るつぼは、側面が68cm、深さが約40cmの正方形の断面を有していた。スラブの長い寸法部分がるつぼの底部に対し平行で、その側部が接触して、るつぼの底部に単一の完全な層を形成するように、スラブをるつぼの底部に配列した。
【0078】
鋳造:るつぼに、種結晶板を装填し、次いで、室温で最大総質量265kgの固体シリコン原料を充填した。約0.3ppmaの全インゴットドーピングに対し十分なホウ素を供給するために、高濃度ホウ素ドープシリコンの数枚のウェハを加えた。充填されたるつぼを、支持構造物の断熱部分に配置されたグラファイト支持板で最初に囲み、次いで、多結晶シリコンを鋳造するために使用される現場溶融/方向性凝固鋳造ステーション内に装填した。抵抗加熱装置を約1550℃まで加熱することによって溶融プロセスを実行し、断熱材を全部で6cm開くことによって底部から熱が放射できるようにしつつ頂部から加熱されるように加熱装置を構成した。この構成により、溶融はトップダウン方向でるつぼの底部に向かって進行した。底部を通る受動的冷却によって、種結晶が溶融温度で固体状態に保持されたが、これは熱電対で監視された。10分おきに溶融物内に石英ディップロッドを降ろして溶融の程度を測定した。残りの固体材料の高さを決定するために、ディップロッドの高さを場の中の空のるつぼで得た測定結果と比較した。ディップロッド測定により、最初に原料が溶融し、次いで、溶融段階が、種結晶の約1.5cmの高さ部分のみが残るまで続けることができた。この時点で、加熱力は、1500℃の温度設定まで下がり、底部からの輻射は、断熱材を12cmまで開くことによって増大した。種結晶のさらに1または2ミリメートル分が溶融し、その後、固化が開始したが、これはディップロッド測定によって観察された。次いで、種結晶の単結晶成長が、固化ステップの終わりまで進行した。上から下への熱勾配が安定する通常パラメータを使用して成長段階および鋳造サイクルの残り段階を実行し、次いで、インゴット全体を、ゆっくりと室温まで冷却した。鋳造シリコン生成物は、66cm×66cm×24cmのインゴットであった。種結晶と一致する結晶度の領域は、底部から始まり、溶融していない材料の縁と一致し、成長が始まるとそこから横方向外向きにるつぼ壁に向かって成長し、結晶化の終わりに向かって一定のサイズに安定化した。単結晶シリコン構造は、インゴットから切り取ったブリックを目視検査することから明らかであった。
[実施例2]
図1のように種結晶形成を行い、大きな単結晶体積を含むインゴットを鋳造した。冷却した後、インゴットをその側部を下にして立て、切断用の固定ダイヤモンド研磨剤を入れたバンドソー内に装填した。インゴットの底部を厚さ2cmの単一層として切断した。次いで、この層を切断テーブル上に水平方向で固定した。同じバンドソーで、それぞれの側部から1.5cmほど除去されるように層の縁を切り取った。次いで、スラブにサンドブラストを掛け、これにより、接着剤および異物を除去し、その後、金属を除去するために高温の水酸化ナトリウム槽内でエッチングし、すすぎ、HCl槽内に浸漬した。次いで、前のインゴットと同じサイズの標準的なるつぼの底部に、スラブを置いた。シリコン原料を、総質量265kgとなるように装填し、鋳造プロセスを繰り返し、第2の種結晶インゴットを形成した。
[実施例3]
種結晶の準備:種結晶層の準備は、58×58cmの被覆面積および2〜3cmの範囲の厚さとなるように、るつぼの底部を裏打ちするために使用される正方形の(100)板18kgから始まった。これらの板をまとめて1つの大きな正方形にし、るつぼの中心に置いた。次に、この正方形を(111)結晶方位の種結晶の厚さ2cmの層で囲み、全種結晶層を63cm×63cmの正方形にした。
【0079】
鋳造:種結晶を入れたるつぼに、総質量265kgになるまでシリコンを充填し、鋳造ステーション内に置いた。鋳造は、実施例1のように実施されたが、その際に、種結晶層が溶融の終わりおよび固化の開始までの間損なわれることのないようにプロセスを監視した。その結果得られたインゴットを12.5cmのブリックの5×5格子に切断した。ブリックの結晶構造を光学検査すると、(111)結晶は緩衝層として働き、ランダムに核形成された結晶粒が(100)体積中に侵入するのを防ぐことがわかった。
[実施例4]
るつぼの準備:標準的な69cm2のるつぼを2つの層からなる支持構造物上に配置した。これらの層を、複合層の寸法が異なることを除き、実施例1のように構成した。底部固体グラファイト層は、前のように80×80×2.5cm3の寸法を有するが、複合層の熱伝導部分は、わずか20×20×1.2cm3のサイズであり、底部層の上の中心に置かれた。底部層の残り部分を、断熱グラファイト繊維板で覆った。
【0080】
種結晶の準備:21cm×21cm×2cmのサイズの(100)結晶方位の単一結晶シリコンの単一片をるつぼの底部の中心に置いた。次いで、るつぼに、総質量265kgとなるようにシリコン原料の残部を充填した。
【0081】
鋳造:るつぼおよび支持板を鋳造ステーション内に置き、実施例1のように循環させたが、ただし、小さな熱抽出領域が与えられた場合に、シリコンの固化のための時間の余裕をみた。冷却した後、インゴットを複数の片に分けた。片に分けられたインゴットを目視検査することで、制御された熱抽出からの、結晶の強い外向きの成長が確認された。
[実施例5]
るつぼの準備:標準的な69cm2のるつぼをグラファイト支持板上に置き、実施例1のように種結晶層、原料、およびドーパントを装填したが、ただし、原料には前のインゴットからリサイクルされたシリコンは含まれていなかった。次いで、寸法69×69×12cm3の溶融シリカ蓋をるつぼ内に置いた。プロセスガスが導入される上部断熱材の孔に伸縮管(telescoping tube)が取り付けられるように鋳造ステーションを修正した。次いで鋳造ステーションに一定分量を充填し、上昇させてテレスコープ(telescope)と係合させた。変更されたレシピを用いて鋳造ステーションを稼動させ、ガス制御を高め、固化処理設定を変更してるつぼの蓋の効果を補正するようにした。その結果得られたインゴットを測定したところ、典型的なインゴットに見られる炭素濃度の1/10であることがわかり、さらに、鏡状の上面を有し、典型的なインゴットに比べて含まれる異物は少なかった。
[実施例6]
るつぼの準備:剥離コーティングを使用しない標準的な69cm2のるつぼを準備した。
【0082】
種結晶の準備:(100)結晶方位の単一結晶シリコンの単一片をるつぼの底部の中心に置いた。次いで、追加の種結晶スラブをるつぼの四方の側壁に追加した。次いで、るつぼに、シリコン原料の残部を充填した。
【0083】
鋳造:るつぼおよび種結晶材料を鋳造ステーション内に置き、側壁を通しての熱の抽出を含む溶融プロセスと固化プロセスを繰り返した。断片に分けたインゴット1025を目視検査したところ、側部種結晶スラブの望ましい効果により図10に示されているように側面にそって単結晶材料1022が得られることが確認された。底部種結晶層1100は溶融時に酸化され、その結果、インゴットの中心部に多結晶材料1023が得られた。
【0084】
したがって、本発明の実施形態および上述の実施例によれば、本発明の実施形態に従ってシリコンから作製されたウェハは、適切に薄いものであり、光起電力電池で使用することができる。例えば、ウェハは、厚さ約10ミクロンから厚さ約300ミクロンまでとすることができる。さらに、光起電力電池で使用されるウェハは、好ましくは、ウェハ厚さ(t)より大きい拡散長(Lp)を有する。例えば、Lp対tの比は、少なくとも0.5であるのが適している。これは、例えば、少なくとも約1.1、または少なくとも2とすることができる。拡散長は、少数キャリア(p型材料中の電子など)が多数キャリア(p型材料中の正孔)と再結合する前に拡散できる平均距離である。Lpは、関係式Lp=(Dτ)1/2で少数キャリア寿命τに関係付けられ、ただし、Dは、拡散定数である。拡散長は、光子線誘導電流技術または表面光起電力技術などの、多くの技術によって測定できる。例えば、拡散長の測定方法の説明については、参照により本明細書に組み込まれている、A.FahrenbruchおよびR.Bube著「Fundamentals of Solar Cells」、Academic Press、1983年、90〜102頁を参照されたい。
【0085】
ウェハは、約100ミリメートルから約600ミリメートルまでの幅を有するものとしてよい。好ましくは、ウェハの少なくとも1つの寸法は少なくとも約50mmである。本発明のシリコンから作製されたウェハ、したがって本発明によって作製された光起電力電池は、例えば、約100から約3600平方センチメートルの表面積を有するものとすることができる。ウェハのおもて面は、好ましくはテクスチャ加工される。例えば、ウェハは、化学エッチング、プラズマエッチング、またはレーザもしくは機械式スクライブを使用して適切にテクスチャ加工することができる。単結晶ウェハが使用される場合、ウェハをエッチングして、高温で、例えば、約70℃から約90℃の温度で、約10から約120分間、水酸化ナトリウムなどの塩基の水溶液中でウェハを処理することによって異方性テクスチャ加工面を形成することができる。この水溶液は、イソプロパノールなどのアルコールを含んでいてもよい。
【0086】
したがって、太陽電池は、本発明の実施形態により鋳造シリコンインゴットから形成されたウェハを使用して製造することができるが、この作業は、鋳造シリコンの固形物をスライスして少なくとも1枚のウェハを形成するステップと、ウェハの表面上で洗浄手順を任意選択で実行するステップと、この表面上でテクスチャ加工ステップを任意選択で実行するステップと、表面をドープすることによってpn接合を形成するステップと、この表面上に反射防止コーティングを任意選択で堆積するステップと、例えばアルミニウム焼結ステップを用いて、裏面電界を任意選択で形成するステップと、ウェハの少なくとも1つの表面上に導電性接点を形成するステップとを含む。
【0087】
例えばp型シリコンウェハを使用して光起電力電池を作成するための典型的な、また一般的なプロセスにおいて、ウェハは、一方の側面を好適なn型ドーパントに曝され、これにより、エミッタ層およびpn接合をウェハのおもて側、つまり受光側に形成する。典型的には、n型層またはエミッタ層は、化学的または物理的堆積法などの当技術分野で一般に使用されている技術を使用してn型ドーパントをp型ウェハのおもて面上に最初に堆積し、そのような堆積の後に、n型ドーパント、例えば、リンをシリコンウェハのおもて面内にドライブインし、n型ドーパントをウェハ表面内にさらに拡散させることによって形成される。この「ドライブイン」ステップは、一般的にウェハを高温に曝すことによって実行される。こうして、pn接合は、n型層とp型シリコンウェハ基板との間の境界領域に形成される。ウェハ表面は、エミッタ層を形成するリンまたは他のドーピングの前に、テクスチャ加工することができる。光吸収をさらに改善するために、窒化シリコンなどの反射防止コーティングが、典型的には、ウェハのおもて側に施され、ときには表面および/またはバルクの同時不動態化を行う。
【0088】
pn接合を光エネルギーに曝すことによって発生した電位を利用するために、光起電力電池は、典型的には、ウェハのおもて面に導電性おもて面電気接触部を、またウェハの後面に導電性後面電気接触部を備えるが、接触部は両方とも、ウェハの後ろにあってもよい。このような接触部は、典型的には、1つまたは複数の導電性の高い金属で作製され、したがって、典型的には、不透明である。
【0089】
そこで、上述の実施形態による太陽電池は、放射状に分布する欠陥を実質的に含まない連続単結晶シリコンの、それぞれ少なくとも約35cmである少なくとも2つの寸法を有する本体からスライスされたウェハ、ウェハ内のpn接合、ウェハの表面上の反射防止コーティング、およびウェハの少なくとも1つの表面上の複数の導電性接触部を備えることができ、本体は、スワール欠陥を実質的に含まず、また酸素に由来する積層欠陥を実質的に含まない。
【0090】
また、上述の実施形態による太陽電池は、放射状に分布する欠陥を実質的に含まない連続多結晶シリコンの、共通極方向が本体の表面に垂直である粒子配向の所定の構成を有し、それぞれ少なくとも約10cmである少なくとも2つの寸法をさらに有する本体からスライスされたウェハ、ウェハ内のpn接合、ウェハの表面上の反射防止コーティング、およびウェハの少なくとも1つの表面上の複数の導電性接触部を備えることができ、多結晶シリコンは、約0.5cmから約30cmまでの平均結晶粒境界長を有する結晶粒を含み、本体は、スワール欠陥を実質的に含まず、また酸素に由来する積層欠陥を実質的に含まない。
【0091】
当業者には、本発明の範囲または精神から逸脱することなく、開示されている構造および方法に様々な修正および変更を加えることが可能であることは明らかであろう。本発明の他の実施形態は、当業者には、本明細書および本明細書に開示されている本発明の実施を検討すれば明らかになるであろう。本明細書および実施例は、例示にすぎないものと考えるものとし、本発明の真の範囲および精神は請求項により示される。
【技術分野】
【0001】
本発明は、光起電力技術の分野、ならびに光起電力途用に鋳造シリコンを製造するための方法および装置に一般的に関する。さらに、本発明は、光起電力電池および他の半導体デバイスなど、デバイスを製造するために使用できる新しい形態の鋳造シリコンに関する。新しいシリコンは、単結晶構造、準単結晶構造、双晶構造、または幾何学的多結晶構造を有し、種結晶を使用する鋳造法によって製造できる。
【0002】
本出願は、2007年7月20日に出願した米国仮出願第60/951,155号の利益を主張するものである。米国仮出願第60/951,155号は開示全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
光起電力電池は、光を電流に変換する。光起電力電池の最も重要な特徴の1つは、光エネルギーを電気エネルギーに変換する際のその効率である。光起電力電池は、様々な半導体材料から製造できるが、シリコンは、手ごろな価格で容易に入手でき、また光起電力電池を製造する際に使用するのに電気的特性、物理的特性、および化学的特性のバランスがとれているため、シリコンが一般的に使用されている。
【0004】
光起電力電池の知られている製造手順では、シリコン原料に正または負の導電型を有するドーパントをドープし、溶融し、次いで、個々のケイ素粒子の粒径に応じて、結晶化したシリコンを溶融帯から単結晶シリコンのインゴットの形に引き出すか(チョクラルスキ(CZ)または浮遊帯(FZ)法を介して)、あるいは多結晶シリコン(multi−crystalline silicon)またはポリ結晶シリコン(polycrystalline silicon)のブロックまたは「ブリック」に鋳造することによって結晶化する。本明細書で使用されているような「単結晶シリコン」という用語は、全体を通して1つの一貫した結晶方位を有する、単一の結晶シリコンの本体を指す。さらに、従来の多結晶シリコンは、複数のランダム配向結晶が多結晶シリコンの本体内に配置されているセンチメートルスケールの粒径分布を有する結晶シリコンを指す。しかし、本明細書で使用されているように、「幾何学的に秩序化された多結晶シリコン」(以下、「幾何学的多結晶シリコン」と略す)は、複数の秩序結晶が多結晶シリコンの本体内に配置されている、幾何学的に秩序化されたセンチメートルスケールの粒径分布を有する、本発明の実施形態による、結晶シリコンを指す。例えば、幾何学的多結晶シリコンでは、結晶粒は、典型的には、平均粒径約0.5cmから約5cmであり、幾何学的多結晶シリコンの本体内の粒子配向は、所定の配向に従って制御される。さらに、本明細書で使用されているように、「ポリ結晶シリコン」という用語は、マイクロメートルスケールの粒径および結晶シリコンの与えられた本体内に配置される複数の粒子配向を持つ結晶シリコンを指す。例えば、結晶粒は、典型的には、平均粒径がサブミクロン程度からミクロン程度までであり(例えば、個別の結晶粒は、肉眼には見えない)、粒子配向は全体にわたってランダムに分布する。上述の手順では、インゴットまたはブロックは、知られているスライシングまたはソーイング法によって切断され、ウェハとも呼ばれる複数の薄い基板に分けられる。次いで、これらのウェハを光起電力電池に加工できる。
【0005】
光起電力電池の製造に使用する単結晶シリコンは、一般に、CZまたはFZ法によって生産され、これらの方法は両方とも結晶シリコンの円筒形状のブールが生産されるプロセスである。CZプロセスでは、種結晶が溶融シリコンのプールに触れると、ブールの固体部分を通して熱が抽出される間にブールがゆっくりとプールから引き出される。本明細書で使用されているように、「種結晶」という用語は、固化時に液体シリコンが種の結晶化度に適応するように液体シリコンと接触させられる1片の結晶材料を指す。FZプロセスでは、固体材料が溶融帯に通されて、一般的に種結晶と接触させることによって、溶融帯の一方の側に入った後溶融され、溶融帯の他方の側で再固化される。
【0006】
近年、鋳造ステーション内で単結晶または幾何学的多結晶材料を生産するための新しい技術が発明されており、これは、米国特許出願第11/624,365号および11/624,411号で開示され、2007年1月18日に出願された米国特許出願公開第20070169684A1号および第20070169685A1号として公開されている。多結晶シリコンインゴットを加工する鋳造プロセスは、光起電力技術の分野において知られている。簡単に言うと、このようなプロセスでは、溶融シリコンは、石英るつぼなどのるつぼに入れられ、その中に入っているシリコンの結晶化が可能なように制御しつつ冷却される。結果として得られる鋳造結晶シリコンのブロックは、一般的に、光起電力電池を製造するために使用されるウェハのサイズと同じか、またはそれに近いサイズの断面を有する複数のブリックに切り分けられ、これらのブリックは、ソーイングされるか、または他の方法で切断され、そのようなウェハが形成される。そのような方法で生産される多結晶シリコンは、そこから作製されるウェハ内で結晶粒の互いに対する配向が効果的にランダムである結晶粒の集塊である。単結晶または幾何学的多結晶シリコンは、特に選択された粒子配向および(後者の場合に)結晶粒境界を有し、上述の特許出願において開示されている新しい鋳造技術によって、液体シリコンを、プロセス中に部分的に固体のままであり固化時に熱が抽出される大きなシード層と接触させることにより形成されうる。本明細書で使用されているように、「シード層」という用語は、連続層を形成する所望の結晶配向を持つ結晶または結晶群を指す。これらは、鋳造を目的としてるつぼの片側に適合するように作製することが可能である。
【0007】
最高品質の鋳造インゴットを生産するためには、いくつかの条件が満たされなければならない。第1に、そのインゴットのできる限り大きな部分が所望の結晶化度を有する。インゴットが単結晶であることが意図されている場合、インゴットの使用可能な部分全体が単結晶であるべきであり、また幾何学的多結晶材料についても同様である。第2に、シリコンに含まれる欠陥ができる限り少なくなければならない。欠陥は、個別の不純物、不純物の集塊、固有の格子欠陥、ならびに転位および積層欠陥などのシリコン格子中の構造欠陥を含みうる。これらの欠陥のうちの多くが、結晶シリコンから作製された機能性光起電力電池内の電荷担体の高速な再結合を引き起こす可能性がある。これは、電池セルの効率の低下をもたらしうる。
【0008】
長年の開発努力の結果、十分に成長したCZおよびFZシリコン中の欠陥の量を最小限度に抑えることができた。転位を含まない単結晶は、種において混入されるすべての転位が成長することを許される細いネック部を最初に成長させることによって得られる。介在物および二次相(例えば、窒化ケイ素、酸化ケイ素、または炭化ケイ素の粒子)の混入は、溶融物に対する種結晶の逆方向回転を維持することによって回避される。酸素混入は、工業において知られているようにFZまたは磁気CZ技術を使用して最小限度に抑えることができる。金属不純物は、一般的に、ブールを終わらせた後にポットスクラップまたはタング端に残すことによって最小限度に抑えられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
いくつかの実施形態によれば、本発明は、シリコンなどの、太陽電池用の材料の改善された鋳造を行うための方法および装置に関する。本発明は、望ましくは、炭素濃度が非常に低いシリコンなど、鋳造シリコンの純度を改善するために不活性ガスの蓋および/または流れを利用する。不純物が少なければ、インゴットに含まれる異物粒子(介在物と呼ばれる)の数は少なくなり、ウェハおよび/または太陽電池の歩留まりが改善する。純度を高めたシリコンのさらなる利点として、同じインゴットから得られる単結晶材料が多くなる、および/または大きくなることが挙げられる。シリコン中の不純物が少ないと、結晶成長速度も高速化される。さらに、炭素含有量が少ないと、ウェハを太陽電池にするために様々な熱プロセスを使用することができる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
従来のシリコン鋳造プロセスでは、炭素が過飽和する。対照的に、本発明のいくつかの実施形態では、炭素レベルは飽和限界より低く、望ましくは、飽和限界より十分に低い。不活性ガスがSiO分子を排出するため炉の炭素成分および/または炉内の炭素成分に対する動作寿命を延ばすことができ、また排出経路を制御することで、SiOガスの炭素成分の曝露を減少させることができる。
【0011】
本明細書で使用されているように、「準単結晶シリコン」という用語は、本体の50体積%超について全体を通して1つの一貫した結晶配向を有する、結晶シリコンの本体を指し、例えば、このような準多結晶シリコンは、多結晶領域の隣の単一結晶シリコンの本体を含むか、または他の結晶配向のシリコンのより小さな結晶を一部または全部含むシリコンの大きな、切れ目なく一貫している結晶を含むことができ、より小さな結晶は、全体積の50%超を構成しない。好ましくは、準単結晶シリコンは、全体積の25%超を構成しない小さな結晶を含むことができる。より好ましくは、準単結晶シリコンは、全体積の10%超を構成しない小さな結晶を含むことができる。さらに好ましくは、準単結晶シリコンは、全体積の5%超を構成しない小さな結晶を含むことができる。
【0012】
本明細書で使用されているように、「双晶シリコン」という用語は、本体の50体積%以上について全体を通して1つの一貫している結晶配向を有し、また本体の体積の残り部分についてもう1つの一貫している結晶配向を有する、シリコンの本体を指す。例えば、このような双晶シリコンは、ある1つの結晶配向を有する単一結晶シリコンの本体を、結晶シリコンの体積の残部を構成する異なる結晶配向を有する単一結晶シリコンの他の本体に隣接して含むことができる。好ましくは、双晶シリコンは、シリコンの同じ本体内に2つの離散領域を含み、それらの領域は結晶配向のみが異なるものとすることができる。
【0013】
実施された、また広い意味で説明されている本発明によれば、鋳造シリコンを製造する方法が提供され、この方法は、シリコンで満たされているるつぼを層の上に置くステップであって、この層はヒートシンクと接触する熱伝導性材料と断熱領域とを含み、層の熱伝導性部分は、るつぼの底面の約5%から約99%までと接触している、ステップと、熱伝導層を通して熱を抽出することによってシリコンを固化させるステップとを含む。鋳造シリコンを第1の温度にし、次いで第2の温度まで冷却することによって種結晶成長を導くために、熱抽出はシリコンの一部または全部が溶融された後に行われてもよい。
【0014】
本発明によれば、鋳造シリコンを製造する方法であって、るつぼの中心に向かって内向きにテーパが付けられている壁を有するるつぼ内にシリコンを入れるステップと、シリコンを溶融するステップと、るつぼの底部を通して熱を抽出することによってシリコンを固化するステップと、鋳造シリコンを第1の温度にするステップと、シリコンを第1の温度と異なる第2の温度まで冷却するステップと、るつぼから鋳造シリコンを引き出すステップと、次いで鋳造シリコンから複数のセクションを切り出すステップとを含む方法も提供される。
【0015】
本発明によれば、鋳造シリコンを製造する方法であって、るつぼの中心から外向きにテーパが付けられている壁を有するるつぼ内にシリコンを入れるステップと、シリコンを溶融するステップと、るつぼの底部を通して熱を抽出することによってシリコンを固化するステップと、鋳造シリコンを第1の温度にするステップと、シリコンを第1の温度と異なる第2の温度まで冷却するステップと、るつぼから鋳造シリコンを引き出すステップと、次いで鋳造シリコンから複数のセクションを切り出すステップとを含む方法も提供される。
【0016】
本発明の方法によれば、底面と複数の側壁を有するシリコンを鋳造するためのるつぼであって、この複数の側壁のうちの少なくとも1つは、るつぼの底面に垂直である、底面から上方に延びる方向で見た平面に関して約1°から約25°の角度でるつぼの中心に向かって内向きにテーパが付けられている、るつぼも形成される。テーパが付けられている1つまたは複数の壁で、底面から離れる方向で切り取られた容器断面の面積が縮小することがある。
【0017】
本発明の方法によれば、底面と複数の側壁を有するシリコンを鋳造するためのるつぼであって、この複数の側壁のうちの少なくとも1つは、るつぼの底面に垂直である、底面から上方に延びる方向で見た平面に関して約2°より大きい角度でるつぼの中心から外向きにテーパが付けられている、るつぼも形成される。テーパが付けられている1つまたは複数の壁で、底面から離れる方向で切り取られた容器断面の面積が増大することがある。
【0018】
本発明によれば、鋳造シリコンを製造する方法であって、るつぼの内側側壁を剥離コーティングによってコーティングし、底壁を未コーティングのまま残すステップと、シリコン種結晶を未コーティング壁と接触させ、シリコン原料をるつぼの中に入れ、種結晶を少なくとも部分的固体状態に維持しながら原料を溶融し、種結晶を通じて熱を抽出することによってシリコンを固化し、シリコンを第1の温度にし、シリコンを第2の温度に冷却するステップとを含む方法も提供される。
【0019】
本発明によれば、鋳造シリコンを製造する方法であって、すでに鋳造されているインゴットを複数のスラブにスライスするステップと、スラブを化学処理して不純物を除去するステップと、種結晶層として使用するためにスラブをるつぼに入れるステップと、次いで鋳造のためるつぼに原料を充填するステップとを含む方法も提供される。
【0020】
本発明によれば、鋳造シリコンを製造する方法であって、層の中心領域内の種結晶が表面に垂直な1つの結晶極方向を有し、層領域の約50%から約99%までを覆い、その一方で、層の縁に残っている種結晶が表面に垂直な少なくとも1つの異なる結晶極方向を有し、残りの層領域を覆うように、単結晶シリコン種結晶の層をるつぼの少なくとも1つの表面上に配置するステップと、原料シリコンを加えて、原料および種結晶層の一部を溶融状態にするステップと、種結晶層を通して熱を抽出することによってシリコンを固化させるステップと、シリコンを所定の、例えば均一な第1の温度にし、次いで好ましくは、シリコンを均一な第2の温度まで均一に冷却するステップとを含む方法も提供される。
【0021】
本発明によれば、鋳造シリコンを製造する方法であって、少なくとも約10cm×約10cmの面積を有する少なくとも1つの単結晶種結晶を、部分的に断熱性のベースプレート上に載るるつぼの底面上に配置するステップと、固体または液体シリコン原料を導入して種結晶を部分的に溶融し、凸状固体境界が単結晶成長の断面積を増やすように種結晶を通じて熱を抽出するステップと、シリコンを第1の温度にし、シリコンを第2の温度まで好ましくは均一に冷却するステップと、種結晶に対向する鋳造シリコンの側面からスラブを切断するステップと、化学プロセスを使用してスラブを洗浄するステップと、その後の鋳造プロセスに新しい種結晶層として大きなスラブを使用するステップとを含む方法も提供される。
【0022】
本発明によれば、鋳造シリコンを製造する方法であって、結晶シリコンの種結晶層を固体シリコン原料とともに蓋またはカバーを有するるつぼ内に装填するステップと、種結晶層の一部を固体に維持しつつ、またアルゴンおよび窒素ガスの少なくとも一方を蓋またはカバー内の少なくとも1つの孔を通して流し、少なくとも他方の孔からガスが出るようにしつつ、シリコンを溶融し、固化するステップと、シリコンを好ましくは均一に冷却するステップとを含む方法も提供される。
【0023】
本発明によれば、鋳造シリコンを製造する方法であって、結晶シリコンの種結晶層をるつぼに装填し、蓋を有するるつぼを覆うステップと、液体シリコンをるつぼ内に導入し、液体シリコンは好ましくは過熱されるステップと、種結晶層の一部を溶融させるステップと、アルゴンおよび窒素ガスの少なくとも一方を蓋の少なくとも1つの孔に通して流し、少なくとも1つの他の孔からガスが出るようにしつつシリコンを固化するステップと、シリコンを冷却するステップとを含む方法も提供される。
【0024】
本発明によれば、鋳造シリコンを製造するプロセスであって、固体原料とともに結晶シリコンの種結晶層を装填するステップと、種結晶層の中心部分の一面にわたって本質的に平坦であり、種結晶層の縁では凸状である固体/液体界面を維持しつつ原料および種結晶層の一部を溶融するステップと、同じ固体/液体界面形状を少なくとも最初には維持しつつ種結晶層を通して熱を抽出することによってシリコンを固化するステップと、シリコンを第1の温度にし、シリコンを第2の温度に冷却し、加熱と冷却は好ましくは均一である、ステップとを含むプロセスも提供される。
【0025】
本発明によれば、鋳造シリコンを製造するプロセスであって、固体原料とともに結晶シリコンの種結晶層を装填するステップと、種結晶層全体にわたって実質的に平坦である固体/液体界面を維持しつつ原料および種結晶層の一部を溶融するステップと、種結晶層の縁を含む領域内で少なくとも最初は余分な熱を加えつつ種結晶層を通して熱を抽出することによってシリコンを固化するステップと、シリコンを第1の温度にし、シリコンを第2の温度になるまで好ましくは均一冷却し、加熱と冷却は好ましくは均一である、ステップとを含むプロセスも提供される。
【0026】
本発明によれば、シリコンを鋳造するための装置であって、ヒートシンク上に載せられたるつぼを囲んで並ぶ、シリコンを溶融するために備えられている加熱装置と、ヒートシンクを通じて熱の制御された抽出を行うための手段と、ガスを導入するためのポートと、一次加熱装置と一緒に配置され、るつぼを取り囲み、電流が流されるとるつぼ内の異なる領域で誘導加熱を行うことができる、断熱された水冷管の少なくとも1つのループとを備える装置も提供される。
【0027】
本明細書に組み込まれ、本明細書の一部をなす、付属の図面は、本発明の実施形態を例示しており、また説明と併せて、本発明の特徴、利点、および原理を説明するのに役立つ。図面の説明を以下に示す。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1A】本発明の一実施形態による、鋳造ステーション内のるつぼの下で断熱層が熱伝導層と組み合わされている例示的なシステムを示す図である。
【図1B】本発明の一実施形態による、鋳造ステーション内のるつぼの下で断熱層が熱伝導層と組み合わされている例示的なシステムを示す図である。
【図2A】本発明の実施形態による、中にある鋳造シリコンに対する所望の効果の例示とともにテーパを付けられたるつぼの実施例を示す図である。
【図2B】本発明の実施形態による、中にある鋳造シリコンに対する所望の効果の例示とともにテーパを付けられたるつぼの実施例を示す図である。
【図2C】本発明の実施形態による、中にある鋳造シリコンに対する所望の効果の例示とともにテーパを付けられたるつぼの実施例を示す図である。
【図2D】本発明の実施形態による、中にある鋳造シリコンに対する所望の効果の例示とともにテーパを付けられたるつぼの実施例を示す図である。
【図3】本発明の一実施形態による、部分的にコーディングされているるつぼ内に装填されるシリコン原料の一実施例を示す図である。
【図4】本発明の一実施形態による、種結晶層材料をリサイクルするための方法の一実施例を示す図である。
【図5】本発明の一実施形態による、種結晶層を形成する単一結晶シリコンの例示的な構成を示す図である。
【図6】本発明の一実施形態による、大きな単一結晶種結晶層を形成するための例示的な方法を示す図である。
【図7A】本発明の一実施形態による、低炭素単結晶または多結晶シリコンを鋳造するための例示的な装置を示す図である。
【図7B】本発明の一実施形態による、低炭素単結晶または多結晶シリコンを鋳造するための例示的な装置を示す図である。
【図8】本発明の実施形態による、単結晶または多結晶シリコンを鋳造するための例示的な装置を示す図である。
【図9】本発明の実施形態による、単結晶または多結晶シリコンを鋳造するための例示的な装置を示す図である。
【図10】本発明の実施形態による、シリコンの例示的な鋳造インゴットを示す図である。
【図11】本発明の実施形態による、シリコン単結晶または多結晶シリコンを鋳造するための例示的な蓋を示す図である。
【図11A】本発明の実施形態による、シリコン単結晶または多結晶シリコンを鋳造するための例示的な蓋を示す図である。
【図11B】本発明の実施形態による、シリコン単結晶または多結晶シリコンを鋳造するための例示的な蓋を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
次に、本発明の実施形態を詳細に参照するが、その実施例は、付属の図面に例示されている。可能な限り、同じまたは類似の参照番号は、同じまたは類似の部分を指し示すために図面全体を通して使用される。
【0030】
本発明による実施形態において、溶融シリコンの結晶化は、種結晶を使用する鋳造プロセスによって行われる。本明細書で開示されているように、このような鋳造プロセスは、結晶化されたシリコンの鋳造された本体中の結晶粒の粒径、形状、および配向が制御されるように実装されうる。本明細書で使用されているように、「鋳造」という用語は、溶融シリコンを保持するために使用される鋳型または容器内で溶融シリコンを冷却することによってシリコンが形成されることを意味する。例えば、シリコンは、るつぼ内での固化によって形成されうるが、そこでは固化はるつぼの少なくとも1つの壁から始まり、るつぼからシリコンを引き出す冷却された異物を介さない。したがって、溶融シリコンの結晶化は、種結晶を移動したり、または鋳型、容器、もしくはるつぼを移動したりしてブールを「引く」ことでは制御されない。さらに、本発明の一実施形態に従い、鋳型、容器、またはるつぼは、溶融シリコンを固化するため少なくとも1つの高温側壁表面を備える。本明細書で使用されているように、「高温壁」という用語は、溶融シリコンと等温であるか、またはそれよりも高い温度である表面を指す。好ましくは、高温壁表面は、シリコンの加工中に固定されたままである。
【0031】
本発明の実施形態に従い、結晶化されたシリコンは、連続的単結晶、または制御された結晶粒配向を有する連続的多結晶のいずれかとすることができる。本明細書で使用されているように、「連続的単結晶シリコン」という用語は、シリコンの本体が単結晶シリコンの1つの均質な本体であり、一緒に結合されてより大きなシリコン片を形成することになる小さなシリコン片ではない、単結晶シリコンを指す。さらに、本明細書で使用されているように、「連続的多結晶シリコン」という用語は、シリコンの本体が多結晶シリコンの1つの均質な本体であり、一緒に結合されてより大きなシリコン片を形成することになる小さなシリコン片ではない、多結晶シリコンを指す。
【0032】
本発明の実施形態による、シリコンの鋳造は、結晶シリコンの「種結晶」の所望の集合体を、例えば、溶融シリコンを保持することができる石英るつぼなどの容器の底部内に配置することによって行うことができる。種結晶は、るつぼの底部のすべて、または大半、または実質的にすべてを覆うことができる。本明細書で使用されているように、「種結晶」という用語は、所望の結晶構造を持ち、シリコン片を入れる容器の表面に適合する側面を有する、幾何学的に成形されたシリコン片を指す。このような種結晶は、単結晶シリコン片または幾何学的に秩序化された1片の多結晶シリコンのいずれかとすることができる。本発明に従い、種結晶は、底面に平行な上面を有することができるが、そうでなくてもよい。例えば、種結晶は、差し渡し約2mmから約10mmまで、差し渡し約100mmから約1000mmまでと様々なサイズのシリコン片とすることができる。シリコン片は、約1mmから約1000mmまで、好ましくは約10mmから50mmまでの厚さを有することができる。種結晶の好適さサイズおよび形状は、使いやすさとタイリングに応じて選択できる。以下でさらに詳しく説明するタイリングは、シリコン種結晶がるつぼの底部または側部および底面上に所定の幾何学的配向またはパターンで配列される場所である。
【0033】
次いで、シリコン原料がるつぼ内に導入され、種結晶上に置かれ、次いで原料が溶融される。代替として、るつぼ内に直接、また種結晶上に溶融シリコンが注ぎ込まれうる。溶融シリコンが注ぎ込まれる、るつぼは、好ましくは最初に、シリコンの溶融温度に非常に近い温度またはシリコンの溶融温度にされ、次いで、溶融シリコンが注ぎ込まれる。本発明の実施形態に従って、固化が始まる前に種結晶の薄層が溶融されうる。
【0034】
次いで、溶融シリコンは、好ましくは溶融シリコンの結晶化が固体種結晶の元の頂部のレベルでまたはそれよりも低い位置から開始し、種結晶から遠ざかる、好ましくは上方へ遠ざかる形で進行するように溶融シリコンの冷却が行われる方法で、種結晶の存在下で冷却し、結晶化するようにできる。これは、種結晶を通りヒートシンクへ向かう融解熱を抽出することによって行うことができる。明細書で使用されているように、「ヒートシンク」という用語は、材料の他の本体から熱を抽出するために使用される材料の本体を指す。ヒートシンクは、高温領域から低温領域への熱伝導手段、低温流体による対流、または低温物体へのエネルギーの直接輻射によって熱を抽出することができる。温度勾配は、一般的に、一方の側が冷却される物体と平衡状態にある間に他方の側が冷たい領域とエネルギーを交換するようにヒートシンク上で維持される。
【0035】
約1410℃から約1300℃までの範囲内の温度などの第1の温度は、通常、固形物上のおよび/または固形物を通る温度勾配を含む。平均して約1250℃から約1380℃までの範囲内の温度などの第2の温度は、通常、固形物上のおよび/または固形物を通る低下した温度勾配および/または均一な温度プロフィールを含む。代替として、第1の温度は、約1410℃から約1450℃までの範囲の温度を含み、第2の温度は、約1200℃から約1400℃までの範囲の温度を含む。温度勾配を下げるステップは、ときには、この開示の文脈においてアニーリングと称されることもある。アニーリングは、例えば、断熱材を閉鎖することを含みうる。
【0036】
本発明の実施形態によれば、溶融シリコンと結晶化されたシリコンとの間の液体固体界面は、溶融または固化時に、鋳造プロセス全体を通して実質的に平坦に維持される必要はない。つまり、溶融シリコンの縁のところの固体液体界面は、冷却時に、溶融シリコンとシリコン種結晶との間の距離を増加する方向に移動するように制御される。溶融シリコンの固化が開始すると、固化前線は最初は実質的に平坦であり、好ましくはシリコンの成長する固体塊の水平縁において強い曲率を示す。したがって、固体液体界面の形状は、鋳造プロセス全体を通して制御された外形を有することができる。
【0037】
溶融シリコンの結晶化を本発明の実施形態による方法で行うことにより、ランダムではなく特定の結晶粒境界および特定の粒径を有する鋳造シリコンを作製することができる。それに加えて、すべての種結晶が互いに同じ相対的方向、例えばるつぼの底部に対し垂直である(100)極方向および矩形または正方形の断面を持つるつぼの側面に対し45°の角度をなす(110)極方向に配向されるように種結晶を配向することにより、そのような鋳造シリコンの極方向が種結晶の極方向と同じである単結晶シリコンである、または本質的に単結晶シリコンである鋳造シリコンの大きな本体が得られる。同様に、他の極方向は、るつぼの底部に対し垂直であるものとしてよい。さらに、共通極方向がるつぼの底部に対して垂直になるように1つまたは複数の種結晶が配列されうる。さらに、本発明の一実施形態に従って、結晶成長の有効性を最大化し、所望の結晶方位を持つできる限り大きな体積のシリコンを形成するために、2つ以上の異なる極方向を持つ種結晶が一緒に使用されうる。
【0038】
本発明の実施形態による、鋳造プロセスに使用される種結晶は、所望のどのようなサイズおよび形状のものでもよいが、正方形、矩形、六角形、菱形、八角形のシリコン片などの、適切に幾何学的に成形された単結晶シリコン片、または幾何学的に秩序化された多結晶シリコン片である。これらは、タイリングを促すように成形され、したがって、これらは、縁と縁が接するように配置され、つまり「タイル状に配置」され、所望のパターンでるつぼの底部に適合するようにできる。また、本発明の実施形態に従って、種結晶は、るつぼの1つまたは複数の側部に配置されうる。このような種結晶は、例えば、単結晶シリコンのブールなどの結晶シリコン源をソーで切断して所望の形状を持つ複数の断片に分けることによって得られる。種結晶は、本発明の実施形態によるプロセスによって作製されるシリコンの試料から切り出すことによって形成することも可能であり、その後の鋳造プロセスで使用する種結晶は、初期鋳造プロセスから作製することができる。例えば、転位のない種結晶材料のより小さな断片を使用して、新しい種結晶層として使用するるつぼの底部全体を覆うのに十分な、転位のない大きな単一結晶を成長させることができる。
【0039】
次に、本発明の実施形態によりシリコンを調製するためのプロセスおよび装置について説明する。しかし、これらは、本発明の実施形態によるシリコンを形成するための唯一の方法でないことは理解されるであろう。
【0040】
図1Aおよび1Bを参照すると、図1Aには鋳造ステーション高温帯の断面が示されており、これは、種結晶鋳造プロセスの溶融段階の終わりの液体シリコン100と固体シリコン101を示している。シリコンは、例えば溶融石英またはシリカのるつぼであってもよい、底と壁を有するるつぼ110内に配置される。この時点で、るつぼ110内の固体シリコン101は、るつぼの底部にすでに配置されているシリコンの種結晶層から全体が構成される。原料シリコン(図示せず)が、種結晶層の頂部に導入される。原料シリコンは、固体として装填されてるつぼ内で溶融されるか、または別の容器内で溶融され、種結晶の頂部に液体として導入されうる。いずれかの場合に、元のシリコン種結晶層は、部分的に溶融され、固体シリコン101は、全体がシリコン種結晶層の残りから構成される。好ましくは、るつぼ110は、るつぼ110から結晶化シリコンの除去を補助するためにシリカ、窒化ケイ素、または液体カプセル材から作製されたものなどの剥離コーティングを有する。
【0041】
図1Aをさらに参照すると、炉高温帯のこの図において、抵抗加熱装置120が、シリコンを溶融するのに必要な温度を維持するためのエネルギーを供給し、その際に、断熱材130が外側室(図示せず)への熱漏れを防ぐ。本発明の一実施形態に従って、るつぼ110は、制御された方法でシリコンから熱を奪うのにも役立つ多数の層によって支持される。例えば、熱伝導ブロック140は、水冷室(図示せず)に熱を放射し、これにより、その上にある高温帯構成要素を冷却する。図1Aには断面が示され、図1Bには三次元で示されている、グラファイト支持板142は、熱伝導層141から熱を伝導し、次に、るつぼ110およびシリコン100、101から熱を奪う。断熱層150は、例示的な構成で熱伝導層141を囲み、熱除去経路を変更して、その結果、固化前線の形状を変更することができる。固体グラファイト側板143は、るつぼ110を囲み、るつぼの構造を支持する。本発明の実施形態に従って、鋳造ステーションは、グラファイト支持板142を有していてもよいが、伝導層141および断熱層150によって制御される調整された熱伝導経路は不要である。
【0042】
さらに図1Aおよび1Bを参照すると、グラファイト側板143は、グラファイト支持板142上に載り、熱を直接板142に伝えることができ、これにより、るつぼの底部縁のところに冷点を発生させることができる。しかし、層141および150に対する調整された熱伝導の効果は、冷却パラメータを変更することができ、したがって、液体/固体界面の形状は、例えば、るつぼ110の温度を高くして維持することにより、側方溶融が少量のみ得られる。例えば、図1Aに示されているように、固体シリコン101については、るつぼ110の下にある材料で熱交換が行われるため左右の縁のところの曲率が大きくなる。このような曲率の結果、固体が横方向に膨張し、種結晶構造が外側に成長する可能性がある。図1Aでは、固体シリコン101の結晶成長方向は、黒色の矢印で示されている。
【0043】
図2A〜2Dを参照すると、シリコンの結晶成長は、るつぼの形状を変更することによって変更されうる。例えば、結晶成長は、図2Aおよび2Bに示されているように、外向きにテーパが付けられているるつぼ200内で行うことができ、その場合、固体シリコン221に対する液体シリコン220の曲率は、種結晶(図示せず)の横方向膨張を促進し、その成長方向は図2Bにおいて矢印によって示されている。他の実施例では、結晶成長は、図2Cおよび2Dに示されているように、内向きにテーパが付けられているるつぼ210内で行うことができ、これは、図2Aのるつぼ200と同様に、使用可能な鋳造シリコン222の量を最大にし、鋳造シリコンインゴット(222+223)を切断して複数のブリック(破線で示されている)に分けるときに除去されるべき使用可能でないまたは望ましくないシリコン223の量を最小にするという利点も有する。鋳造シリコンの側壁上の望ましくないシリコン223のテーパ形状は(図2Dにおける断面で見て)、るつぼの底部のところのシリコンが、それより速く冷却されるインゴットの頂部のところのシリコンと比べて、固化および結晶成長時に高温状態で費やす余分な時間に理由がある。
【0044】
図3は、鋳造のためるつぼ310内に装填されたシリコン(原料300および結晶種301)の断面を例示している。窒化ケイ素または炭化ケイ素などの剥離コーティング320が、原料300が接触するるつぼ310の領域に施すことができるが、これは鋳造時に完全に溶融されることになるシリコン300の領域に対応する。結晶種301よりも下には、コーティングは施されていない。種結晶301は、完全には溶融されず、したがって、るつぼ110に付着しない。
【0045】
図4は、結晶シリコン種結晶層の再利用のためのプロセスを例示している。図4に示されているように、種結晶層401から成長させた鋳造インゴット400は、最初に、種結晶層401を含む材料のスラブを除去するために点線にそってスライスされる。次いで、材料のスラブは、点線縁のところで切り取られ、他のるつぼ内での配置に邪魔になるおそれのある過剰な材料を除去する。切り取られたスラブ402は、元の種結晶層401のサイズおよび形状に合わせて切り取られており、その後、好適な液体または他の材料を収納しているタンクもしくはタブ型容器などの容器401内で、潜在的に他の類似のシリコン片で処理され、これにより層401から汚染物質および破片を(および場合によっては他のシリコン片も)除去してから、スラブはその後の鋳造プロセスにおける種結晶層として使用するため新しいるつぼ420内に置かれる。
【0046】
図5は、種結晶層を形成するように配列されている単一結晶シリコン片の例示的な構成を示している。(001)結晶方位は、シリコン太陽電池の製造に関して有利な特性を有することが示されている。(001)シリコンは、表面全体を覆うピラミッドのパターンを形成するように化学エッチングが施され、これにより、反射を小さくし、材料内の光の経路長を延長することによってシリコンの光トラップ機能を改善することができる。化学エッチングは、知られている方法によって実行できる。しかし、(001)シリコンの鋳造は、シリコンの多結晶領域に隣接する位置に配置されたときにその(001)極方向に対し鋭角の角度で結晶粒境界を成長させる傾向があるため困難である。多結晶シリコンの成長に対抗するため、複数の単結晶シリコン種結晶の幾何学的構成がるつぼ(図示せず)内の少なくとも1つの表面、例えば、るつぼの底面に配置されるようにでき、この幾何学的構成は、最密充填多角形を含む。図5に示されているように、1片の(001)シリコン500は、(111)シリコン501の矩形の周によって囲まれる。周囲シリコン501の極方位は、(111)として示されているが、これは、多結晶領域に隣接して成長したときに競争的に有利である結晶方位である可能性がある。このようにして、結果として得られる鋳造インゴット(図示せず)の大部分は、(001)シリコンからなり、シリコン501から成長させた競争的に有利な(111)結晶粒は、シリコン500上で(001)シリコンによって占有される領域内の多結晶シリコンの成長を制限する。同様に、本発明の実施形態に従って、多結晶シリコンの本体を鋳造することによって形成されるシリコン結晶粒は、柱状に成長させることができる。さらに、このような結晶粒は、固化が進行するときに収縮する(001)断面領域を有するのではなく、結晶粒を形成する種結晶の形状であるか、または結晶粒を形成する種結晶の形状に近い断面を有することができる。このような特に選択された結晶粒境界を有するシリコンを作製する場合、好ましくは、結晶粒境界接合部は、1つの隅部で交わる3つの結晶粒境界のみを有し、これは図5に示されている構成において満たされる条件である。
【0047】
図6は、種結晶層として使用する面積の大きな、転位を含まない単一結晶を製造するためのプロセスを例示している。断面で示されている、このプロセスでは、ポリ結晶原料600は、面積が約25cm2から約10,000cm2まで、厚さが約3mmから1000mmまでの横方向寸法を有するものとしてよい単一結晶の種結晶601と一緒に装填される。原料600は、るつぼ610内に置かれ、次いで、熱伝導部分(620)と断熱部分(630)からなる、層620、621、および630の上にある場(図示せず)に置かれる。熱伝導部分620の領域は、好ましくは、種結晶601の約50%から約150%の側面積を有する、るつぼ610の底部のほぼ同じ形状であるべきである。溶融時に、熱伝導領域620を通して熱が抽出され支持板621に送られるが、熱が断熱層630を通過するのは妨げられる。鋳造の溶融段階であっても熱伝導領域620を通して熱が外へ伝導され、これにより、種結晶601の完全な溶融が妨げられる。すべての原料600および種結晶601のごく一部が溶融されて液体シリコン602にされた後、残っている固体シリコン603は、固化プロセスの核形成層として働く。断熱層630が存在することで、核形成および成長時に固体シリコン603の形状、さらには図6の矢印で示されている方向を制御することができる。固化表面の曲率が強いため、固体シリコン603の外向きの成長が生じ、その一方で、多結晶領域605は最小にされる。インゴット604が鋳造された後、新しい種結晶スラブ606として使用されるインゴットの上側部分から水平層を切り出すことができる(破線)。スラブ606は、新しいるつぼ610内の新しいインゴットとして、またはなおいっそう大きい単一結晶の出発点として、洗浄され、切り取られ、使用されうるが、ここでもまた、説明したばかりのプロセスを使用する。
【0048】
図7Aおよび7Bは、種結晶インゴット内の低炭素単結晶または多結晶シリコンの鋳造のための装置の断面を示している。図7Aに示されているように、種結晶700は、炉高温帯(ラベルは付けられていない)内に配置されているるつぼ710内に原料701と一緒に装填される。るつぼ710は、セラミック製蓋711(図7Bにも示されている)で覆われているように例示されているが、覆いを取って、周囲の外気に対して完全に開放されるようにできる。鋳造では、るつぼ710内に落ち込む場合があるグラファイト断熱材720の脱離した断片からインゴット内に混入されるか、またはるつぼ710からの酸素が溶融したシリコン中に溶解する気相反応によってインゴットに内に混入される可能性があり、その後、SiO分子(図示せず)として蒸発する。これらの分子は、炉のグラファイト部分720、750、760に付着し、反応SiO+2C→SiC+COを介して反応することができる。
【0049】
COガス分子が液体の中に入り、そこでSiCが形成され、Oが再び遊離してサイクルを繰り返す。セラミック製蓋711(図7Bに示されている)をるつぼ710に導入し、プロセスガス730(例えば、アルゴンとすることができる)を慎重に制御することによって、炭素混入の両方の機構が効果的に停止または厳しく制限できる。セラミック製蓋711は、例えば、溶融シリカ、石英、炭化ケイ素、窒化ケイ素、および同様の物質を含む、多数の材料で作製することができる。アルゴンなどの不活性ガスの新規供給が流路740内を通過し、他の流路(図示せず)を通って出て、上述の炭素ガス反応を妨げることが設計では望ましい。
【0050】
さらに図7Aおよび7Bを参照すると、鋳造プロセスは、炉内にるつぼ710を設置する前に1つまたは複数の種結晶700および原料701を装填することによって、または1つまたは複数の種結晶700のみを装填し、その後液体シリコン770を別の溶融室からるつぼ内に導入することによって実行することができる。
【0051】
図8は、鋳造時に固体液体界面の形状を修正するための本発明の実施形態による装置を示している。図8に示されているように、ターゲットとする加熱を材料800、801に加えるために、一次加熱装置820および追加加熱装置840が鋳造ステーションの高温帯(断熱材831によって囲まれているように示されている)内に置かれる。固体種結晶材料801の上にある液体材料800は、るつぼ810の側壁の近くの縁のところで湾曲している界面を有する。一次加熱装置820は、一次ヒートシンク860と一緒に、通常は、実質的に平坦な固体液体界面(図示せず)を形成する働きをする。しかし、追加加熱装置840は、電流を直接材料800、801に流して、るつぼ810の壁の近くの材料800、801の縁に誘導加熱を及ぼし、これによりその付近の固体材料801を溶融する。
【0052】
図8に示されているような追加加熱装置840は、循環する液体850で冷却され、周囲層830によって一次加熱装置820から断熱された、例えば、銅を使用した、導電性材料のコイルである。追加加熱装置840は、図8に例示されているように、ループでるつぼ810を囲む一巻コイルであるか、またはらせんを構成するループ間に所望の間隔を有するらせんを形成する複数のループを有するものとすることができる。追加加熱装置840は、さらに、固体液体界面(図示せず)に影響を及ぼすためにるつぼ810の壁に相対的に移動できるように構成することもできる。追加加熱装置840は、水が冷却する銅製パイプを流れる電流によって動作し、これによりパイプを流れる電流が液体シリコンと結合しシリコン内に対応する電流を誘起する強磁場を形成する。シリコン内の、および/またはシリコンを通る電流から生じる抵抗熱は、局部的な方法で、および/または局部的な形で加熱作用を引き起こす。
【0053】
代替として、抵抗加熱装置は、追加加熱装置840として使用することも可能であるが、抵抗加熱装置は、材料800、801などの材料の比体積に熱を加えることを目的とするときにはそれほど効率的でない場合がある。図8に示されている装置で鋳造を行うときには、追加加熱装置840は、種結晶材料801を過度に溶融しないように、溶融サイクルの終わり近くでのみ作動させる。追加加熱装置840は、固化プロセスの少なくとも最初の20%のあたりまで熱をるつぼ810に加え続ける。追加加熱装置840は、冷却段が実行されるまで固化プロセス全体を通してるつぼ810に熱を加え続けてもよい。
【0054】
図9に示されているように、一実施形態によれば、単結晶および/または双晶シリコンの体積は、種結晶側板および/またはスラブを使用してさらに増やすこともできる。種結晶900は、るつぼ910の1つまたは複数の側壁930、940上に置くこともできる。種結晶900は、るつぼ910の四方の壁すべてに配置することができるが、例示のみのために、種結晶900は、壁930、940上にのみ示されている。好ましくは、るつぼ910の四方の壁のどれかに置かれる種結晶900は、結晶成長が促進されるように柱状および/またはモノリシックである。好ましくは、るつぼ910の四方の壁のどれかに置かれている柱状種結晶はそれぞれ、るつぼ910の底面上で真下に置かれている種結晶と同じ粒子配向を有する。幾何学的多結晶シリコン成長の場合、このようにして柱状種結晶を配置することで、幾何学的多結晶シリコン粒の成長はるつぼ910の高さほどに促される。代替として、側面では単結晶スラブが使用され、その結果、単結晶材料が増える。
【0055】
さらに図9を参照すると、種結晶900のこのような構成の利点は、結晶度が高く、また成長速度が速いシリコンを鋳造する高速で単純な自己伝播プロセスである点である。例えば、るつぼ910内にキャビティ、例えば、底部と4つの壁を形成するように積み重ねられた多数の種結晶からなるシリコン「カップ」内で、シリコンを溶融することができる。代替として、るつぼ910内にキャビティ、例えば、底部と4つの壁を形成するように積み重ねられた多数の種結晶からなるシリコン「カップ」内に、溶融シリコンを注ぎ込んでもよい。代替の実施例では、収容「カップ」は、最初に、シリコンの溶融温度まで高められるが、固体状態に維持され、次いで、溶融シリコンが、注ぎ込まれ、熱平衡に至らせる。次いで、上記の実施例において、るつぼ910が冷却され、これにより、熱がるつぼ910の開いている上部にそのまま加えられている間に、例えば、熱を周囲に放射する固体ヒートシンク材料(図示せず)によってるつぼ910の底部および側部から熱が除去される。このようにして、結果として得られるシリコンの鋳造インゴットは、単結晶であるか、または幾何学的多結晶(使用される種結晶900の種類およびその配向に応じて)であるものとしてよく、結晶化は、独自の多結晶鋳造プロセスよりも高速に進行する。このプロセスを繰り返すために、知られている技術を使用して、結晶化したシリコンインゴットの側部および底部の一部が除去され、その後の鋳造プロセスで再利用できる。好ましくは、複数の種結晶、例えば、種結晶900は、種結晶900の間の共通極方向がるつぼ910の底部および側部のそれぞれに対し垂直となるように配列され、したがって、るつぼ910の底部と側部との間に結晶粒境界は形成されない。
【0056】
一実施形態によれば、図11、11A、および11Bに示されているように、シリコンを鋳造するための蓋1111は、中央注入孔1113に関して配置されている複数の成形孔1112を備えている。望ましくは、ただし必ずというわけではないが、成形孔1112は、中心に一般的にスロット状の部分を備え、一般的に円形の部分がスロット部分の端部に、および/またはその近くに配置されている。成形孔1112の形状は、ときには、「犬用の骨」および/または「亜鈴」とも呼ばれることがある。スロットおよび/または円は、好適な任意のサイズおよび/または配置であってよい。望ましくは、1つの成形孔1112は、蓋1111のそれぞれの側部および蓋1111のそれぞれの隅部に対応し、例えば、成形孔1112は合計で8つである。隅部成形孔は、長さのほぼ半分など、側部成形孔よりも短いものとすることができる。望ましくは、成形孔1112は、テーパが付けられ、例えば、蓋1111の内側では狭く、蓋1111の外側では広くなっている。成形孔は、シリコン中への破片および/または汚染物質の逆混合および/または混入を低減することができる。
【0057】
本明細書で開示されているように、本発明の実施形態は、単結晶シリコン、準単結晶シリコン、双晶シリコン、または幾何学的多結晶シリコンの大きな本体を、単純で費用効果の高い鋳造プロセスによって生産するために使用されうる。本発明の実施形態によるプロセスで使用されるシリコン原料、および生産されるシリコンは、ホウ素、アルミニウム、リチウム、ガリウム、リン、アンチモン、ヒ素、およびビスマスを含むリストから選択される1つまたは複数のドーパントを含有することが可能である。このような1つまたは複数のドーパントの総量は、約0.01ppma(原子数%での100万分率)から約2ppmaとすることができる。好ましくは、シリコン中の1つまたは複数のドーパントの量は、約0.1から約50Ω−cm、好ましくは約0.5から約5.0Ω−cmの抵抗率を有する。代替として、本明細書で開示されているプロセスおよび装置を使用して、好適な液相を有する他の材料を鋳造することもできる。例えば、ゲルマニウム、ガリウムヒ素、シリコンゲルマニウム、サファイア、および多数の他のIII−VまたはII−VI族材料、さらには金属および合金は、本発明の実施形態により鋳造可能である。
【0058】
さらに、シリコンの鋳造が、本明細書において説明されているが、他の半導体材料および非金属結晶材料も、本発明の範囲および精神から逸脱することなく鋳造することが可能である。例えば、本発明の発明者は、ゲルマニウム、ガリウムヒ素、シリコンゲルマニウム、酸化アルミニウム(その単一結晶形態のサファイアを含む)、窒化ガリウム、酸化亜鉛、硫化亜鉛、ガリウムインジウムヒ素、アンチモン化インジウム、ゲルマニウム、イットリウムバリウム酸化物、ランタニド酸化物、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、および液相を持つ他の半導体、酸化物、および金属間化合物などの本発明の実施形態による他の材料の鋳造も考察している。それに加えて、多数の他のIII−V族またはII−VI族材料、さらには金属および合金も、本発明の実施形態により鋳造可能である。
【0059】
いくつかの実施形態では、鋳造シリコンを製造する方法は、結晶シリコンの種結晶層を、るつぼの底面など、るつぼ内に装填するステップを含みうる。この方法は、固体シリコン原料を、種結晶層の上などの、るつぼ内に装填するステップを含みうる。この方法は、蓋を、容器の口など、るつぼの開口部にかぶせるステップを含みうる。この方法は、不活性ガスを中央ポートなど蓋の少なくとも1つの孔を通してるつぼ内に流入させるステップを含むことができ、その場合、不活性ガスは、アルゴンおよび/または窒素とすることができる。シリコンに関して不活性である他のガス、例えば、ヘリウム、キセノン、および/または他の好適な蒸気なども使用できる。
【0060】
この方法は、さらに、不活性ガスを蓋の少なくとも1つの他の孔、例えば、複数の放射状に配置されている開口を通してるつぼから抜くステップをさらに含むことができる。望ましくは、ガス抜きで、るつぼ内への逆流、混入、および/または逆混合を防止する。この方法は、種結晶層の一部を固体状態に維持しつつ、またシリコンの固形物を形成しつつ、シリコン原料を溶融するステップを含みうる。この方法は、固形物を冷却するステップも含みうる。望ましくは、この方法は、るつぼの少なくとも底面を通して熱を抽出することによって固形物を形成するステップを含む。
【0061】
いくつかの実施形態では、不活性ガスの流れは、少なくともシリコン原料の溶融時および固形物の形成時に生じる。代替として、最初の乾燥および/またはガス除去の段階を除いて、不活性ガスが常時送られる。好ましくは、不活性ガスを流すことで、るつぼに対し、2〜3ミリメートル程度の液圧などの周囲環境よりも高い圧力を加える。この方法は、水蒸気を除去し、および/または低減するなどのために、種結晶層およびシリコン原料を装填した後、また不活性ガスの流入が開始する前に、るつぼに真空を印加するステップをさらに含むことができる。
【0062】
いくつかの実施形態では、不活性ガスを流したり、抜いたりすることで、グラファイト断熱材からシリコン中に落下する炭粉からなど、鋳造シリコン中への炭素混入を少なくとも部分的に低減もしくは防止する。不活性ガスを流し込んだり、抜いたりすることで、溶融シリコンからなど、るつぼ内のSiOが少なくとも部分的に低減されうる。
【0063】
いくつかの実施形態では、固形物は、約1×1016から約4×1017などの炭素濃度および/またはほぼ溶解限界を有する低炭素シリコンを含む。上述のように、一般的に低い炭素濃度は、太陽電池用途に望ましい。本発明によるシリコンの低い炭素濃度は、他の鋳造シリコン法およびさらにはCZシリコンの高い炭素濃度とは対照的である。
【0064】
いくつかの実施形態では、本発明は、平均炭素濃度が約4×1017原子数/cm3の溶解度限界より低く、平均酸素濃度が約8×1017原子数/cm3より低い鋳造シリコンの本体を含む。酸素濃度の範囲は、例えば、約1.2×1018から約1×1017とすることができる。
【0065】
代替として、鋳造シリコンを製造する方法は、結晶シリコンの種結晶層をるつぼ内に任意選択で装填するステップと、るつぼを蓋で任意選択で覆うステップと、液体シリコンをるつぼ内に導入するステップと、存在するならば種結晶層の一部を溶融させるステップと、シリコンの固形物を形成するステップと、不活性ガスをるつぼ内に任意選択で流し込むステップと、不活性ガスをるつぼから任意選択で抜き出すステップと、固形物を冷却するステップとを含む。不活性ガスは、蓋および/またはるつぼ内の、および/または蓋および/またはるつぼを貫通する1つまたは複数の孔および/または開口に入るか、または供給されうる。不活性ガスは、蓋および/またはるつぼ内の、および/または蓋および/またはるつぼを貫通する1つまたは複数の孔および/または開口から出るか、および/または排出されうる。望ましくは、ただし必ずというわけではないが、供給ポートおよび排出ポートは異なるオリフィスである。代替として、同心円状構成および/または形状の場合と同様に、単一の貫通部が供給と排出の両方の働きをする。
【0066】
本明細書で開示されているこの方法およびすべての方法において提示されているステップの順序は、明示されていない限り、ステップのリストされている並びおよび/または数に限定されるとみなされるべきでない。
【0067】
液体シリコンは、るつぼに過熱された液体を導入した後に種結晶の薄層を溶融するため一定量の過熱がなされるなどする過熱液体シリコンを含みうる。代替として、この一定量の過熱は、溶融シリコンの温度より約1℃から約100℃ほど高い過熱を含む。他の範囲の過熱も可能である。
【0068】
いくつかの実施形態では、鋳造シリコンを製造する方法は、結晶シリコンの底部種結晶層をるつぼの底部に装填するステップと、結晶シリコンの少なくとも1つの側板種結晶層をるつぼの少なくとも1つの側壁の隣に装填するステップと、るつぼを蓋で覆うステップと、液体シリコンをるつぼ内に導入するステップと、底部種結晶層または少なくとも1つの側板種結晶層の一部を溶融するステップと、シリコンの固形物を形成するステップと、蓋の少なくとも1つの孔を通して不活性ガスを流し込むステップと、少なくとも1つの他の孔を通して不活性ガスを抜き出すステップと、固形物を冷却するステップとを含む。種結晶側板および/または結晶は、望ましくは、るつぼの底面上の種結晶層に対応する配向を有する。種結晶側板は、側壁に一時的に貼り付けられ、および/または例えば、底部種結晶層と結合され、および/または底部種結晶層と組み合わされうる。
【0069】
「Methods and Apparatuses for Manufacturing Monocrystalline Cast Silicon and Monocrystalline Cast Silicon Bodies for Photovoltaics」という表題の米国特許出願公開第2007/0169684A1号では、種結晶側板の使用を開示している。「Methods and Apparatuses for Manufacturing Geometric Multicrystalline Cast Silicon and Geometric Multicrystalline Cast Silicon Bodies for Photovoltaics」という表題の米国特許出願公開第2007/0169685A1号でも、種結晶側板の使用を開示している。同一出願人による出願公開第2007/0169684号および第2007/0169685号は内容全体が参照により本明細書に組み込まれている。
【0070】
いくつかの実施形態では、固形物を形成するステップは、るつぼの底面を通して熱を抽出するステップを含む。代替として、固形物を形成するステップは、るつぼの底面および少なくとも1つの側壁を通して熱を抽出するステップを含むことができる。代替として、熱は、上面および/または蓋を通して抽出されうる。好適な冷却方法として、対流機構、伝導機構、および/または輻射機構が挙げられる。
【0071】
いくつかの実施形態では、鋳造シリコンを製造する方法は、結晶シリコンの種結晶層を固体シリコン原料とともに蓋を有するるつぼ内に任意選択で装填するステップと、シリコン原料を溶融し、種結晶層の一部を固体状態が存在する場合に固体状態に維持しつつ、また蓋もしくはカバー内の少なくとも1つの孔を通して不活性ガスを流すとともに蓋またはカバー内の少なくとも1つの他の孔を通して不活性ガスを抜き出しつつシリコンの固形物を形成するステップと、固形物を冷却するステップとを含む。
【0072】
いくつかの実施形態では、鋳造シリコンを製造する方法は、結晶シリコンの種結晶層をるつぼ内に装填するステップと、るつぼを蓋で覆うステップと、液体シリコンをるつぼ内に導入するステップと、種結晶層の一部を溶融させるステップと、不活性ガスを蓋の少なくとも1つの孔に通して流す一方で少なくとも1つの他の孔から不活性ガスが抜けるようにしつつシリコンの固形物を形成するステップと、固形物を冷却するステップとを含む。
【0073】
いくつかの実施形態では、鋳造シリコンを製造する方法は、結晶シリコンの種結晶層をるつぼ内に装填するステップと、るつぼを蓋で覆うステップと、過熱液体シリコンをるつぼ内に導入するステップと、種結晶層の一部を溶融させるステップと、シリコンの固形物を形成するステップと、固形物を冷却するステップとを含む。この方法は、るつぼに過熱された液体を導入した後に種結晶の薄層を溶融するのに十分な一定量の過熱も含みうる。代替として、るつぼは、種結晶材料の導入とその後の液体および/または溶融シリコンの急速導入に先立ってシリコンの融点の温度に、および/または融点より高い温度に加熱できる。過熱は、シリコンの融点より約1℃から約100℃ほど高い温度など、好適な量の過熱を含みうる。
【0074】
いくつかの実施形態によれば、鋳造シリコンを製造する方法は、液体シリコンをるつぼ内に導入し、および/または固体シリコン原料をるつぼに入れてシリコン原料を溶融するステップと、シリコンの固形物を形成するステップと、不活性ガスをるつぼ内に流し込むステップと、不活性ガスをるつぼから抜き出すステップと、固形物を冷却するステップとを含む。この方法は、るつぼおよび/またはるつぼの少なくとも一部またはるつぼの開口部を蓋で覆うステップをさらに含みうる。不活性ガスを流すステップは、不活性ガスを蓋またはるつぼ内の1つまたは複数の孔に通すステップを含むことができる。不活性ガスを抜き出すステップは、不活性ガスを蓋またはるつぼ内の1つまたは複数の孔に通すステップを含むことができる。不活性ガスを流す、および/または抜き出すための孔は、丸形、正方形、矩形、三角形、スロット、成形孔、および/または同様の形状などの好適な形状とすることができる。不活性ガスを流し、抜き出すステップは、同じおよび/または異なる孔を通じて行うことができる。
【0075】
以下の実施例は、本発明の実施形態による実験結果である。これらの実施例は、本発明の実施形態の例を示し、図解することのみのために提示されており、いかなる形でも本発明の範囲を制限するものと解釈されるべきではない。
【実施例】
【0076】
[実施例1]
るつぼの準備:るつぼを2つの層からなる支持構造物上に配置した。支持構造物の底部層は、大きさが80cm×80cm×2.5cmである固体同質成形グラファイト板であり、これが複合層を支持した。上側複合層は、大きさが60cm×60cm×1.2cmの熱伝導性同質成形グラファイト板である内部領域を有し、厚さ1.2cmの断熱グラファイト繊維板の10cmの周で四方の側面すべてにおいて囲まれていた。このようにして、複合層は、底部層を完全に覆った。
【0077】
種結晶の準備:1辺140mmからの正方形の断面を有するようにダイヤモンドコーティングされたバンドソーを使用して、MEMC,Inc.社から入手した、0.3ppmaのホウ素を有する純粋なチョクラルスキ(CZ)シリコン(単結晶)のブールをその長さにそって切り落とした。その結果得られた単結晶シリコンのブロックにおいて同じソーを使用してその断面を切り開き、厚さが約2cmから約2cmまでの複数のスラブを形成した。これらのスラブを、単結晶シリコン種結晶、つまり「種結晶」として使用した。シリコンブールの(100)結晶極方位を維持した。次いで、その結果得られた単一結晶シリコンスラブを、スラブの(100)方向が上を向くように石英るつぼの底部に配列し、(110)方向をるつぼの一方の側部に対し平行に保った。石英るつぼは、側面が68cm、深さが約40cmの正方形の断面を有していた。スラブの長い寸法部分がるつぼの底部に対し平行で、その側部が接触して、るつぼの底部に単一の完全な層を形成するように、スラブをるつぼの底部に配列した。
【0078】
鋳造:るつぼに、種結晶板を装填し、次いで、室温で最大総質量265kgの固体シリコン原料を充填した。約0.3ppmaの全インゴットドーピングに対し十分なホウ素を供給するために、高濃度ホウ素ドープシリコンの数枚のウェハを加えた。充填されたるつぼを、支持構造物の断熱部分に配置されたグラファイト支持板で最初に囲み、次いで、多結晶シリコンを鋳造するために使用される現場溶融/方向性凝固鋳造ステーション内に装填した。抵抗加熱装置を約1550℃まで加熱することによって溶融プロセスを実行し、断熱材を全部で6cm開くことによって底部から熱が放射できるようにしつつ頂部から加熱されるように加熱装置を構成した。この構成により、溶融はトップダウン方向でるつぼの底部に向かって進行した。底部を通る受動的冷却によって、種結晶が溶融温度で固体状態に保持されたが、これは熱電対で監視された。10分おきに溶融物内に石英ディップロッドを降ろして溶融の程度を測定した。残りの固体材料の高さを決定するために、ディップロッドの高さを場の中の空のるつぼで得た測定結果と比較した。ディップロッド測定により、最初に原料が溶融し、次いで、溶融段階が、種結晶の約1.5cmの高さ部分のみが残るまで続けることができた。この時点で、加熱力は、1500℃の温度設定まで下がり、底部からの輻射は、断熱材を12cmまで開くことによって増大した。種結晶のさらに1または2ミリメートル分が溶融し、その後、固化が開始したが、これはディップロッド測定によって観察された。次いで、種結晶の単結晶成長が、固化ステップの終わりまで進行した。上から下への熱勾配が安定する通常パラメータを使用して成長段階および鋳造サイクルの残り段階を実行し、次いで、インゴット全体を、ゆっくりと室温まで冷却した。鋳造シリコン生成物は、66cm×66cm×24cmのインゴットであった。種結晶と一致する結晶度の領域は、底部から始まり、溶融していない材料の縁と一致し、成長が始まるとそこから横方向外向きにるつぼ壁に向かって成長し、結晶化の終わりに向かって一定のサイズに安定化した。単結晶シリコン構造は、インゴットから切り取ったブリックを目視検査することから明らかであった。
[実施例2]
図1のように種結晶形成を行い、大きな単結晶体積を含むインゴットを鋳造した。冷却した後、インゴットをその側部を下にして立て、切断用の固定ダイヤモンド研磨剤を入れたバンドソー内に装填した。インゴットの底部を厚さ2cmの単一層として切断した。次いで、この層を切断テーブル上に水平方向で固定した。同じバンドソーで、それぞれの側部から1.5cmほど除去されるように層の縁を切り取った。次いで、スラブにサンドブラストを掛け、これにより、接着剤および異物を除去し、その後、金属を除去するために高温の水酸化ナトリウム槽内でエッチングし、すすぎ、HCl槽内に浸漬した。次いで、前のインゴットと同じサイズの標準的なるつぼの底部に、スラブを置いた。シリコン原料を、総質量265kgとなるように装填し、鋳造プロセスを繰り返し、第2の種結晶インゴットを形成した。
[実施例3]
種結晶の準備:種結晶層の準備は、58×58cmの被覆面積および2〜3cmの範囲の厚さとなるように、るつぼの底部を裏打ちするために使用される正方形の(100)板18kgから始まった。これらの板をまとめて1つの大きな正方形にし、るつぼの中心に置いた。次に、この正方形を(111)結晶方位の種結晶の厚さ2cmの層で囲み、全種結晶層を63cm×63cmの正方形にした。
【0079】
鋳造:種結晶を入れたるつぼに、総質量265kgになるまでシリコンを充填し、鋳造ステーション内に置いた。鋳造は、実施例1のように実施されたが、その際に、種結晶層が溶融の終わりおよび固化の開始までの間損なわれることのないようにプロセスを監視した。その結果得られたインゴットを12.5cmのブリックの5×5格子に切断した。ブリックの結晶構造を光学検査すると、(111)結晶は緩衝層として働き、ランダムに核形成された結晶粒が(100)体積中に侵入するのを防ぐことがわかった。
[実施例4]
るつぼの準備:標準的な69cm2のるつぼを2つの層からなる支持構造物上に配置した。これらの層を、複合層の寸法が異なることを除き、実施例1のように構成した。底部固体グラファイト層は、前のように80×80×2.5cm3の寸法を有するが、複合層の熱伝導部分は、わずか20×20×1.2cm3のサイズであり、底部層の上の中心に置かれた。底部層の残り部分を、断熱グラファイト繊維板で覆った。
【0080】
種結晶の準備:21cm×21cm×2cmのサイズの(100)結晶方位の単一結晶シリコンの単一片をるつぼの底部の中心に置いた。次いで、るつぼに、総質量265kgとなるようにシリコン原料の残部を充填した。
【0081】
鋳造:るつぼおよび支持板を鋳造ステーション内に置き、実施例1のように循環させたが、ただし、小さな熱抽出領域が与えられた場合に、シリコンの固化のための時間の余裕をみた。冷却した後、インゴットを複数の片に分けた。片に分けられたインゴットを目視検査することで、制御された熱抽出からの、結晶の強い外向きの成長が確認された。
[実施例5]
るつぼの準備:標準的な69cm2のるつぼをグラファイト支持板上に置き、実施例1のように種結晶層、原料、およびドーパントを装填したが、ただし、原料には前のインゴットからリサイクルされたシリコンは含まれていなかった。次いで、寸法69×69×12cm3の溶融シリカ蓋をるつぼ内に置いた。プロセスガスが導入される上部断熱材の孔に伸縮管(telescoping tube)が取り付けられるように鋳造ステーションを修正した。次いで鋳造ステーションに一定分量を充填し、上昇させてテレスコープ(telescope)と係合させた。変更されたレシピを用いて鋳造ステーションを稼動させ、ガス制御を高め、固化処理設定を変更してるつぼの蓋の効果を補正するようにした。その結果得られたインゴットを測定したところ、典型的なインゴットに見られる炭素濃度の1/10であることがわかり、さらに、鏡状の上面を有し、典型的なインゴットに比べて含まれる異物は少なかった。
[実施例6]
るつぼの準備:剥離コーティングを使用しない標準的な69cm2のるつぼを準備した。
【0082】
種結晶の準備:(100)結晶方位の単一結晶シリコンの単一片をるつぼの底部の中心に置いた。次いで、追加の種結晶スラブをるつぼの四方の側壁に追加した。次いで、るつぼに、シリコン原料の残部を充填した。
【0083】
鋳造:るつぼおよび種結晶材料を鋳造ステーション内に置き、側壁を通しての熱の抽出を含む溶融プロセスと固化プロセスを繰り返した。断片に分けたインゴット1025を目視検査したところ、側部種結晶スラブの望ましい効果により図10に示されているように側面にそって単結晶材料1022が得られることが確認された。底部種結晶層1100は溶融時に酸化され、その結果、インゴットの中心部に多結晶材料1023が得られた。
【0084】
したがって、本発明の実施形態および上述の実施例によれば、本発明の実施形態に従ってシリコンから作製されたウェハは、適切に薄いものであり、光起電力電池で使用することができる。例えば、ウェハは、厚さ約10ミクロンから厚さ約300ミクロンまでとすることができる。さらに、光起電力電池で使用されるウェハは、好ましくは、ウェハ厚さ(t)より大きい拡散長(Lp)を有する。例えば、Lp対tの比は、少なくとも0.5であるのが適している。これは、例えば、少なくとも約1.1、または少なくとも2とすることができる。拡散長は、少数キャリア(p型材料中の電子など)が多数キャリア(p型材料中の正孔)と再結合する前に拡散できる平均距離である。Lpは、関係式Lp=(Dτ)1/2で少数キャリア寿命τに関係付けられ、ただし、Dは、拡散定数である。拡散長は、光子線誘導電流技術または表面光起電力技術などの、多くの技術によって測定できる。例えば、拡散長の測定方法の説明については、参照により本明細書に組み込まれている、A.FahrenbruchおよびR.Bube著「Fundamentals of Solar Cells」、Academic Press、1983年、90〜102頁を参照されたい。
【0085】
ウェハは、約100ミリメートルから約600ミリメートルまでの幅を有するものとしてよい。好ましくは、ウェハの少なくとも1つの寸法は少なくとも約50mmである。本発明のシリコンから作製されたウェハ、したがって本発明によって作製された光起電力電池は、例えば、約100から約3600平方センチメートルの表面積を有するものとすることができる。ウェハのおもて面は、好ましくはテクスチャ加工される。例えば、ウェハは、化学エッチング、プラズマエッチング、またはレーザもしくは機械式スクライブを使用して適切にテクスチャ加工することができる。単結晶ウェハが使用される場合、ウェハをエッチングして、高温で、例えば、約70℃から約90℃の温度で、約10から約120分間、水酸化ナトリウムなどの塩基の水溶液中でウェハを処理することによって異方性テクスチャ加工面を形成することができる。この水溶液は、イソプロパノールなどのアルコールを含んでいてもよい。
【0086】
したがって、太陽電池は、本発明の実施形態により鋳造シリコンインゴットから形成されたウェハを使用して製造することができるが、この作業は、鋳造シリコンの固形物をスライスして少なくとも1枚のウェハを形成するステップと、ウェハの表面上で洗浄手順を任意選択で実行するステップと、この表面上でテクスチャ加工ステップを任意選択で実行するステップと、表面をドープすることによってpn接合を形成するステップと、この表面上に反射防止コーティングを任意選択で堆積するステップと、例えばアルミニウム焼結ステップを用いて、裏面電界を任意選択で形成するステップと、ウェハの少なくとも1つの表面上に導電性接点を形成するステップとを含む。
【0087】
例えばp型シリコンウェハを使用して光起電力電池を作成するための典型的な、また一般的なプロセスにおいて、ウェハは、一方の側面を好適なn型ドーパントに曝され、これにより、エミッタ層およびpn接合をウェハのおもて側、つまり受光側に形成する。典型的には、n型層またはエミッタ層は、化学的または物理的堆積法などの当技術分野で一般に使用されている技術を使用してn型ドーパントをp型ウェハのおもて面上に最初に堆積し、そのような堆積の後に、n型ドーパント、例えば、リンをシリコンウェハのおもて面内にドライブインし、n型ドーパントをウェハ表面内にさらに拡散させることによって形成される。この「ドライブイン」ステップは、一般的にウェハを高温に曝すことによって実行される。こうして、pn接合は、n型層とp型シリコンウェハ基板との間の境界領域に形成される。ウェハ表面は、エミッタ層を形成するリンまたは他のドーピングの前に、テクスチャ加工することができる。光吸収をさらに改善するために、窒化シリコンなどの反射防止コーティングが、典型的には、ウェハのおもて側に施され、ときには表面および/またはバルクの同時不動態化を行う。
【0088】
pn接合を光エネルギーに曝すことによって発生した電位を利用するために、光起電力電池は、典型的には、ウェハのおもて面に導電性おもて面電気接触部を、またウェハの後面に導電性後面電気接触部を備えるが、接触部は両方とも、ウェハの後ろにあってもよい。このような接触部は、典型的には、1つまたは複数の導電性の高い金属で作製され、したがって、典型的には、不透明である。
【0089】
そこで、上述の実施形態による太陽電池は、放射状に分布する欠陥を実質的に含まない連続単結晶シリコンの、それぞれ少なくとも約35cmである少なくとも2つの寸法を有する本体からスライスされたウェハ、ウェハ内のpn接合、ウェハの表面上の反射防止コーティング、およびウェハの少なくとも1つの表面上の複数の導電性接触部を備えることができ、本体は、スワール欠陥を実質的に含まず、また酸素に由来する積層欠陥を実質的に含まない。
【0090】
また、上述の実施形態による太陽電池は、放射状に分布する欠陥を実質的に含まない連続多結晶シリコンの、共通極方向が本体の表面に垂直である粒子配向の所定の構成を有し、それぞれ少なくとも約10cmである少なくとも2つの寸法をさらに有する本体からスライスされたウェハ、ウェハ内のpn接合、ウェハの表面上の反射防止コーティング、およびウェハの少なくとも1つの表面上の複数の導電性接触部を備えることができ、多結晶シリコンは、約0.5cmから約30cmまでの平均結晶粒境界長を有する結晶粒を含み、本体は、スワール欠陥を実質的に含まず、また酸素に由来する積層欠陥を実質的に含まない。
【0091】
当業者には、本発明の範囲または精神から逸脱することなく、開示されている構造および方法に様々な修正および変更を加えることが可能であることは明らかであろう。本発明の他の実施形態は、当業者には、本明細書および本明細書に開示されている本発明の実施を検討すれば明らかになるであろう。本明細書および実施例は、例示にすぎないものと考えるものとし、本発明の真の範囲および精神は請求項により示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋳造シリコンを製造する方法であって、
結晶のシリコンの種結晶層をるつぼ内に装填するステップと、
固体のシリコン原料を前記るつぼ内に装填するステップと、
蓋を前記るつぼの開口部にかぶせるステップと、
前記蓋の少なくとも1つの孔を通して、前記るつぼ内に不活性ガスを流し込むステップと、
前記蓋の少なくとも1つの他の孔を通して、前記るつぼから前記不活性ガスを抜き出すステップと、
前記種結晶層の一部を固体状態に維持しつつ前記シリコン原料を溶融するステップと、
シリコンの固形物を形成するステップと、
前記固形物を冷却するステップとを含む、方法。
【請求項2】
前記種結晶層の前記装填ステップで、前記種結晶層が前記るつぼの底面上に置かれる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記不活性ガスは、アルゴンまたは窒素を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記不活性ガスの前記抜き出すステップは、前記るつぼ内への逆流を防止する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記不活性ガスを流し込むステップは、少なくとも前記シリコン原料の溶融時および固形物の前記形成時に生じる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記不活性ガスを流し込むステップは、周囲環境より高い圧力に前記るつぼを加圧する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記方法は、前記種結晶層および前記シリコン原料を装填した後、また前記不活性ガスの流入が開始する前に、前記るつぼに真空を印加するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記固形物を形成するステップは、前記るつぼの少なくとも底面を通して熱を抽出するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記不活性ガスを流し込むステップおよび前記抜き出すステップは、前記鋳造シリコン中への炭素混入を少なくとも部分的に低減するか、または防止する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記不活性ガスを流し込むステップおよび前記抜き出すステップは、前記るつぼ内のSiOを少なくとも部分的に低減する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記固形物は、低炭素シリコンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
請求項1に記載の方法によって形成されるシリコンの本体であって、前記本体は、約4×1017原子数/cm3の溶解度限界より低い平均炭素濃度、および約8×1017原子数/cm3より低い平均酸素濃度を有する、本体。
【請求項13】
鋳造シリコンを製造する方法であって、
結晶のシリコンの種結晶層をるつぼ内に装填するステップと、
前記るつぼを蓋で覆うステップと、
液体シリコンを前記るつぼ内に導入するステップと、
前記種結晶層の一部を溶融するステップと、
シリコンの固形物を形成するステップと、
前記るつぼ内に不活性ガスを流し込むステップと、
前記るつぼから前記不活性ガスを抜き出すステップと、
前記固形物を冷却するステップとを含む、方法。
【請求項14】
前記液体シリコンは、過熱された液体シリコンを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記るつぼに前記過熱された液体を導入した後に、一定量の過熱で前記種結晶の薄層を溶融する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記一定量の過熱は、約1℃から約100℃までの範囲である、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記不活性ガスは、アルゴンまたは窒素を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記不活性ガスを抜き出す前記ステップは、前記るつぼ内への逆流を防止する、請求項13に記載の方法。
【請求項19】
鋳造シリコンを製造する方法であって、
結晶のシリコンの底部種結晶層をるつぼの底部に装填するステップと、
結晶のシリコンの少なくとも1つの側板種結晶層を前記るつぼの少なくとも1つの側壁の隣に装填するステップと、
前記るつぼを蓋で覆うステップと、
液体のシリコンを前記るつぼ内に導入するステップと、
前記底部種結晶層および/または前記少なくとも1つの側板種結晶層の一部を溶融するステップと、
シリコンの固形物を形成するステップと、
前記蓋の少なくとも1つの孔を通して不活性ガスを流し込むステップと、
少なくとも1つの他の孔を通して前記不活性ガスを抜き出すステップと、
前記固形物を冷却するステップとを含む、方法。
【請求項20】
前記固形物を形成するステップは、前記るつぼの底面を通して熱を抽出するステップを含む請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記固形物を形成するステップは、前記るつぼの底面および少なくとも1つの側壁を通して熱を抽出するステップを含む請求項19に記載の方法。
【請求項22】
鋳造シリコンを製造する方法であって、
結晶のシリコンの種結晶層を固体のシリコン原料とともに蓋を有するるつぼ内に装填するステップと、
前記シリコン原料を溶融し、前記種結晶層の一部を固体状態に維持しつつ、また前記蓋もしくは前記カバー内の少なくとも1つの孔を通して不活性ガスを流すとともに前記蓋もしくは前記カバー内の少なくとも1つの他の孔を通して前記不活性ガスを抜き出しつつシリコンの固形物を形成するステップと、
前記固形物を冷却するステップとを含む、方法。
【請求項23】
鋳造シリコンを製造する方法であって、
結晶のシリコンの種結晶層をるつぼ内に装填するステップと、
前記るつぼを蓋で覆うステップと、
液体のシリコンを前記るつぼ内に導入するステップと、
前記種結晶層の一部を溶融させるステップと、
不活性ガスを前記蓋の少なくとも1つの孔に通して流す一方で少なくとも1つの他の孔から前記不活性ガスを抜き出しつつシリコンの固形物を形成するステップと、
前記固形物を冷却するステップとを含む、方法。
【請求項24】
鋳造シリコンを製造する方法であって、
結晶のシリコンの種結晶層をるつぼ内に装填するステップと、
前記るつぼを蓋で覆うステップと、
過熱液体シリコンを前記るつぼ内に導入するステップと、
前記種結晶層の一部を溶融するステップと、
シリコンの固形物を形成するステップと、
前記固形物を冷却するステップとを含む、方法。
【請求項25】
前記るつぼに前記過熱された液体を導入した後に、一定量の過熱で前記種結晶の薄層を溶融する、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記一定量の過熱は、約1℃から約100℃までの範囲である、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
鋳造シリコンを製造する方法であって、
液体シリコンを前記るつぼ内に導入するステップと、
シリコンの固形物を形成するステップと、
不活性ガスを前記るつぼ内に流し込むステップと、
前記るつぼから前記不活性ガスを抜き出すステップと、
前記固形物を冷却するステップとを含む、方法。
【請求項28】
前記方法は、前記るつぼを蓋で覆うステップをさらに含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記不活性ガスを流し込むステップは、前記不活性ガスを前記蓋または前記るつぼ内の1つまたは複数の孔に通すステップを含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記不活性ガスを抜き出すステップは、前記不活性ガスを前記蓋または前記るつぼ内の1つまたは複数の孔に通すステップを含む、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
前記不活性ガスを抜き出すための前記孔は、成形孔を含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記流し込むステップおよび前記抜き出すステップは、異なる孔を通して実行される、請求項28に記載の方法。
【請求項1】
鋳造シリコンを製造する方法であって、
結晶のシリコンの種結晶層をるつぼ内に装填するステップと、
固体のシリコン原料を前記るつぼ内に装填するステップと、
蓋を前記るつぼの開口部にかぶせるステップと、
前記蓋の少なくとも1つの孔を通して、前記るつぼ内に不活性ガスを流し込むステップと、
前記蓋の少なくとも1つの他の孔を通して、前記るつぼから前記不活性ガスを抜き出すステップと、
前記種結晶層の一部を固体状態に維持しつつ前記シリコン原料を溶融するステップと、
シリコンの固形物を形成するステップと、
前記固形物を冷却するステップとを含む、方法。
【請求項2】
前記種結晶層の前記装填ステップで、前記種結晶層が前記るつぼの底面上に置かれる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記不活性ガスは、アルゴンまたは窒素を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記不活性ガスの前記抜き出すステップは、前記るつぼ内への逆流を防止する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記不活性ガスを流し込むステップは、少なくとも前記シリコン原料の溶融時および固形物の前記形成時に生じる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記不活性ガスを流し込むステップは、周囲環境より高い圧力に前記るつぼを加圧する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記方法は、前記種結晶層および前記シリコン原料を装填した後、また前記不活性ガスの流入が開始する前に、前記るつぼに真空を印加するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記固形物を形成するステップは、前記るつぼの少なくとも底面を通して熱を抽出するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記不活性ガスを流し込むステップおよび前記抜き出すステップは、前記鋳造シリコン中への炭素混入を少なくとも部分的に低減するか、または防止する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記不活性ガスを流し込むステップおよび前記抜き出すステップは、前記るつぼ内のSiOを少なくとも部分的に低減する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記固形物は、低炭素シリコンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
請求項1に記載の方法によって形成されるシリコンの本体であって、前記本体は、約4×1017原子数/cm3の溶解度限界より低い平均炭素濃度、および約8×1017原子数/cm3より低い平均酸素濃度を有する、本体。
【請求項13】
鋳造シリコンを製造する方法であって、
結晶のシリコンの種結晶層をるつぼ内に装填するステップと、
前記るつぼを蓋で覆うステップと、
液体シリコンを前記るつぼ内に導入するステップと、
前記種結晶層の一部を溶融するステップと、
シリコンの固形物を形成するステップと、
前記るつぼ内に不活性ガスを流し込むステップと、
前記るつぼから前記不活性ガスを抜き出すステップと、
前記固形物を冷却するステップとを含む、方法。
【請求項14】
前記液体シリコンは、過熱された液体シリコンを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記るつぼに前記過熱された液体を導入した後に、一定量の過熱で前記種結晶の薄層を溶融する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記一定量の過熱は、約1℃から約100℃までの範囲である、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記不活性ガスは、アルゴンまたは窒素を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記不活性ガスを抜き出す前記ステップは、前記るつぼ内への逆流を防止する、請求項13に記載の方法。
【請求項19】
鋳造シリコンを製造する方法であって、
結晶のシリコンの底部種結晶層をるつぼの底部に装填するステップと、
結晶のシリコンの少なくとも1つの側板種結晶層を前記るつぼの少なくとも1つの側壁の隣に装填するステップと、
前記るつぼを蓋で覆うステップと、
液体のシリコンを前記るつぼ内に導入するステップと、
前記底部種結晶層および/または前記少なくとも1つの側板種結晶層の一部を溶融するステップと、
シリコンの固形物を形成するステップと、
前記蓋の少なくとも1つの孔を通して不活性ガスを流し込むステップと、
少なくとも1つの他の孔を通して前記不活性ガスを抜き出すステップと、
前記固形物を冷却するステップとを含む、方法。
【請求項20】
前記固形物を形成するステップは、前記るつぼの底面を通して熱を抽出するステップを含む請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記固形物を形成するステップは、前記るつぼの底面および少なくとも1つの側壁を通して熱を抽出するステップを含む請求項19に記載の方法。
【請求項22】
鋳造シリコンを製造する方法であって、
結晶のシリコンの種結晶層を固体のシリコン原料とともに蓋を有するるつぼ内に装填するステップと、
前記シリコン原料を溶融し、前記種結晶層の一部を固体状態に維持しつつ、また前記蓋もしくは前記カバー内の少なくとも1つの孔を通して不活性ガスを流すとともに前記蓋もしくは前記カバー内の少なくとも1つの他の孔を通して前記不活性ガスを抜き出しつつシリコンの固形物を形成するステップと、
前記固形物を冷却するステップとを含む、方法。
【請求項23】
鋳造シリコンを製造する方法であって、
結晶のシリコンの種結晶層をるつぼ内に装填するステップと、
前記るつぼを蓋で覆うステップと、
液体のシリコンを前記るつぼ内に導入するステップと、
前記種結晶層の一部を溶融させるステップと、
不活性ガスを前記蓋の少なくとも1つの孔に通して流す一方で少なくとも1つの他の孔から前記不活性ガスを抜き出しつつシリコンの固形物を形成するステップと、
前記固形物を冷却するステップとを含む、方法。
【請求項24】
鋳造シリコンを製造する方法であって、
結晶のシリコンの種結晶層をるつぼ内に装填するステップと、
前記るつぼを蓋で覆うステップと、
過熱液体シリコンを前記るつぼ内に導入するステップと、
前記種結晶層の一部を溶融するステップと、
シリコンの固形物を形成するステップと、
前記固形物を冷却するステップとを含む、方法。
【請求項25】
前記るつぼに前記過熱された液体を導入した後に、一定量の過熱で前記種結晶の薄層を溶融する、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記一定量の過熱は、約1℃から約100℃までの範囲である、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
鋳造シリコンを製造する方法であって、
液体シリコンを前記るつぼ内に導入するステップと、
シリコンの固形物を形成するステップと、
不活性ガスを前記るつぼ内に流し込むステップと、
前記るつぼから前記不活性ガスを抜き出すステップと、
前記固形物を冷却するステップとを含む、方法。
【請求項28】
前記方法は、前記るつぼを蓋で覆うステップをさらに含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記不活性ガスを流し込むステップは、前記不活性ガスを前記蓋または前記るつぼ内の1つまたは複数の孔に通すステップを含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記不活性ガスを抜き出すステップは、前記不活性ガスを前記蓋または前記るつぼ内の1つまたは複数の孔に通すステップを含む、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
前記不活性ガスを抜き出すための前記孔は、成形孔を含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記流し込むステップおよび前記抜き出すステップは、異なる孔を通して実行される、請求項28に記載の方法。
【図1A】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図11A】
【図11B】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図11A】
【図11B】
【公表番号】特表2010−534179(P2010−534179A)
【公表日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−517140(P2010−517140)
【出願日】平成20年7月16日(2008.7.16)
【国際出願番号】PCT/US2008/070206
【国際公開番号】WO2009/014963
【国際公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【出願人】(503259381)ビーピー・コーポレーション・ノース・アメリカ・インコーポレーテッド (84)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年7月16日(2008.7.16)
【国際出願番号】PCT/US2008/070206
【国際公開番号】WO2009/014963
【国際公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【出願人】(503259381)ビーピー・コーポレーション・ノース・アメリカ・インコーポレーテッド (84)
【Fターム(参考)】
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