説明

積層フィルム

【課題】十分なガスバリア性を有しており、しかもフィルムを屈曲させた場合においてもガスバリア性の低下を十分に抑制することが可能な積層フィルムを提供する。
【解決手段】本発明の積層フィルムは、基材と、前記基材の少なくとも片方の表面上に形成された少なくとも1層の薄膜層とを備える積層フィルムであって、前記薄膜層のうちの少なくとも1層が珪素、酸素及び炭素を含有しており、且つ、該薄膜層の膜厚方向における該薄膜層の表面からの距離と、珪素原子、酸素原子及び炭素原子の合計量に対する炭素原子の量の比率との関係を示す炭素分布曲線において、(i) 前記炭素分布曲線が極大値と極小値を有すること、(ii) 前記炭素分布曲線の極大値が5at%以下であること、(iii) 前記炭素分布曲線において少なくとも1つの1at%以上の極大値があることを全て満たすことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)を用いたフレキシブル照明、有機薄膜太陽電池、液晶ディスプレイ、医薬品の包装容器等に好適に用いることができる積層フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
ガスバリア性フィルムは、飲食品、化粧品、洗剤といった物品の充填包装に適する包装用容器として好適に用いることができる。近年、プラスチックフィルム等の基材フィルムの一方の表面上に、酸化珪素、窒化珪素、酸窒化珪素、酸化アルミニウムといった無機酸化物の薄膜層を成膜してなるガスバリア性フィルムが提案されている。
【0003】
このように無機酸化物の薄膜層をプラスチック基材の表面上に成膜する方法としては、真空蒸着法、スパッタ法、イオンプレーティング法等の物理気相成長法(PVD)、減圧化学気相成長法、プラズマ化学気相成長法等の化学気相成長法(CVD)が知られている。
また、このような成膜方法を用いたガスバリア性フィルムとして、例えば、特開平4−89236号公報(特許文献1)には、プラスチック基材の表面上に、珪素酸化物の蒸着膜が2層以上積層された積層蒸着膜層が設けられたガスバリア性フィルムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4−89236号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載のようなガスバリア性フィルムは、飲食品、化粧品、洗剤等の比較的にガスバリア性が低くても満足できる物品のガスバリア性フィルムとしては使用することができるが、有機EL素子や有機薄膜太陽電池等の電子デバイス用のガスバリア性フィルムとしてはガスバリア性の点で必ずしも十分なものではなかった。また、上記特許文献1に記載のようなガスバリア性フィルムにおいては、フィルムを屈曲させた場合に酸素ガスや水蒸気に対するガスバリア性が低下するという問題点があり、フレキシブル液晶ディスプレイのように耐屈曲性が要求されるガスバリア性フィルムとしてはフィルムを屈曲させた場合におけるガスバリア性の点で必ずしも十分なものではなかった。
【0006】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、十分なガスバリア性を有しており、しかもフィルムを屈曲させた場合においてもガスバリア性の低下を十分に抑制することが可能な積層フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、基材と、前記基材の少なくとも片面に形成された少なくとも1層の薄膜層とを備える積層フィルムにおいて、前記薄膜層の膜厚方向における前記薄膜層の表面からの距離と、珪素原子、酸素原子及び炭素原子の合計量に対する炭素の原子比との関係を示す炭素分布曲線が特定の条件を満たすことにより、驚くべきことに、十分なガスバリア性を有しており、しかもフィルムを屈曲させた場合においてもガスバリア性の低下を十分に抑制することが可能な積層フィルムが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明の積層フィルムは、基材と、前記基材の少なくとも片方の表面上に形成された少なくとも1層の薄膜層とを備える積層フィルムであって、
前記薄膜層のうちの少なくとも1層が珪素、酸素及び炭素を含有しており、且つ、
該薄膜層の膜厚方向における該薄膜層の表面からの距離と、珪素原子、酸素原子及び炭素原子の合計量に対する炭素原子の量の比率(炭素の原子比)との関係を示す炭素分布曲線において、下記条件(i)〜(iii):
(i) 前記炭素分布曲線が極大値と極小値を有すること、
(ii) 前記炭素分布曲線の極大値が5at%以下であること、
(iii) 前記炭素分布曲線において少なくとも1つの1at%以上の極大値があること、
を全て満たすことを特徴とする。
【0009】
本発明の積層フィルムは、前記炭素分布曲線において、最大値と最小値との差が1at%以上であることが好ましい。
【0010】
本発明の積層フィルムは、前記炭素分布曲線において少なくとも1つの1at%以下の極小値を有することが好ましい。
【0011】
本発明の積層フィルムは、前記薄膜層の膜厚方向における該薄膜層の表面からの距離と、珪素原子、酸素原子及び炭素原子の合計量に対する珪素原子の量の比率(珪素の原子比)との関係を示す珪素分布曲線において、薄膜層内の90%以上の領域において、珪素原子の比率が30.0at%以上37.0at%以下であることが好ましい。
【0012】
本発明の積層フィルムは、前記薄膜層がプラズマ化学気相成長法により形成された層であることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、十分なガスバリア性を有しており、しかもフィルムを屈曲させた場合においてもガスバリア性の低下を十分に抑制することが可能な積層フィルムを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の積層フィルムを製造するのに好適に用いることが可能な製造装置の一実施形態を示す模式図である。
【図2】実施例1で得られた積層フィルムにおける珪素分布曲線、酸素分布曲線及び炭素分布曲線を示すグラフである。
【図3】実施例1で得られた積層フィルムにおける珪素分布曲線、酸素分布曲線及び炭素分布曲線を示すグラフである。
【図4】実施例2で得られた積層フィルムにおける珪素分布曲線、酸素分布曲線及び炭素分布曲線を示すグラフである。
【図5】実施例2で得られた積層フィルムにおける珪素分布曲線、酸素分布曲線及び炭素分布曲線を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
【0016】
本発明の積層フィルムは、基材と、前記基材の少なくとも片方の表面上に形成された少なくとも1層の薄膜層とを備える積層フィルムであって、
前記薄膜層のうちの少なくとも1層が珪素、酸素及び炭素を含有しており、且つ、
該薄膜層の膜厚方向における該薄膜層の表面からの距離と、珪素原子、酸素原子及び炭素原子の合計量に対する炭素原子の量の比率(炭素の原子比)との関係を示す炭素分布曲線において、下記条件(i)〜(iii):
(i) 前記炭素分布曲線が極大値と極小値を有すること、
(ii) 前記炭素分布曲線の極大値が5at%以下であること、
(iii) 前記炭素分布曲線において少なくとも1つの1at%以上の極大値があること、
を全て満たすものである。
【0017】
本発明に用いる基材としては、無色透明な樹脂からなるフィルム又はシートが挙げられる。このような基材に用いる樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル系樹脂;ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、環状ポリオレフィン等のポリオレフィン系樹脂;ポリアミド系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;ポリスチレン系樹脂;ポリビニルアルコール系樹脂;エチレン−酢酸ビニル共重合体のケン化物;ポリアクリロニトリル系樹脂;アセタール系樹脂;ポリイミド系樹脂が挙げられる。これらの樹脂の中でも、耐熱性及び線膨張率が高く、製造コストが低いという観点から、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂が好ましく、PET、PENが特に好ましい。また、これらの樹脂は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0018】
前記基材の厚みは、積層フィルムを製造する際の安定性を考慮して適宜に設定することができる。前記基材の厚みとしては、真空中においてもフィルムの搬送が可能であるという観点から、5〜500μmの範囲であることが好ましく、さらに、CVD法により本発明に係る薄膜層を形成する場合には、前記基材を通して放電しつつ薄膜層を形成することから、前記基材の厚みが50〜200μmの範囲であることがより好ましく、50〜100μmの範囲であることが特に好ましい。
【0019】
また、前記基材には、薄膜層との密着性の観点から、基材の表面を清浄するための表面活性処理を施すことが好ましい。このような表面活性処理としては、例えば、コロナ処理、プラズマ処理、フレーム処理が挙げられる。
【0020】
本発明にかかる薄膜層は、前記基材の少なくとも片面に形成される層である。そして、本発明の積層フィルムにおいては、前記薄膜層のうちの少なくとも1層が珪素、酸素及び炭素を含有する層であることが必要である。また、前記薄膜層のうちの少なくとも1層は窒素、アルミニウムを更に含有していてもよい。
【0021】
また、本発明においては、前記珪素、酸素及び炭素を含有する薄膜層のうちの少なくとも1層が上記条件(i)〜(iii)の全てを満たす。すなわち、このような薄膜層は、先ず、該薄膜層の膜厚方向における該薄膜層の表面からの距離と、珪素原子、酸素原子及び炭素原子の合計量に対する炭素原子の量の比率(炭素の原子比)との関係を示す炭素分布曲線において、(i) 前記炭素分布曲線が極大値と極小値を有することが必要である。つまり、該薄膜層の膜厚方向における炭素の原子比が均一な場合には、得られる積層フィルムのガスバリア性が不十分となる。
【0022】
また、このような薄膜層は、次に、(ii)前記炭素分布曲線の極大値が5at%以下であることが必要である。薄膜層の炭素原子比が小さいほどガスバリア性が高く、前記炭素分布曲線の極大値が5at%以下の場合、充分なガスバリア性の積層フィルムが得られる。
ここで、本発明において極大値とは、薄膜層の表面からの距離を変化させた場合に元素の原子比の値が増加から減少に変わる点をいう。さらに、本発明において極小値とは、薄膜層の表面からの距離を変化させた場合に元素の原子比の値が減少から増加に変わる点をいう。
【0023】
また、このような薄膜層は、更に、(iii)前記炭素分布曲線において少なくとも1つの1at%以上の極大値があることが必要である。前記極大値が1at%以上の場合、得られる積層フィルムに発生するクラックを防止することができる。
【0024】
本発明においては、下記式(1)で示されるように、前記炭素分布曲線において、最大値と最小値との差が1at%以上であることが好ましい。
(炭素原子比の最大値)−(炭素原子比の最小値)≧1at%・・・(1)
積層フィルムに付与されるバリア性とクラックの発生防止の兼ね合いから、該薄膜層の膜厚方向における炭素原子比にかかる分布の波がある方が好ましい。
【0025】
また、本発明においては、前記炭素分布曲線において少なくとも1つの1at%以下の極小値を有することが好ましい。前記極小値が1at%以下の場合、得られる積層フィルムのバリア性を高めることができる。
【0026】
本発明においては、下記式(2)で示されるように、前記薄膜層の膜厚方向における該薄膜層の表面からの距離と、珪素原子、酸素原子及び炭素原子の合計量に対する珪素原子の量の比率(珪素の原子比)との関係を示す珪素分布曲線において、薄膜層内の90%以上の領域において、珪素原子の比率が30.0at%以上37.0at%以下であることが好ましい。
(30%at≦((珪素原子の量)/((酸素原子の量)+(炭素原子の量)+(珪素原子の量))≦37at%)・・・(2)
珪素原子の比率が上記範囲内にある場合、前記積層フィルムのバリア性が維持される
【0027】
前記炭素分布曲線及び前記珪素分布曲線は、X線光電子分光法(XPS:Xray Photoelectron Spectroscopy)の測定とアルゴン等の希ガスイオンスパッタとを併用することにより、試料内部を露出させつつ順次表面組成分析を行う、いわゆるXPSデプスプロファイル測定により作成することができる。このようなXPSデプスプロファイル測定により得られる分布曲線は、例えば、縦軸を各元素の原子比(単位:at%)とし、横軸をエッチング時間(スパッタ時間)として作成することができる。なお、このように横軸をエッチング時間とする元素の分布曲線においては、エッチング時間は膜厚方向における前記薄膜層の膜厚方向における前記薄膜層の表面からの距離に概ね相関することから、「薄膜層の膜厚方向における薄膜層の表面からの距離」として、XPSデプスプロファイル測定の際に採用したエッチング速度とエッチング時間との関係から算出される薄膜層の表面からの距離を採用することができる。また、このようなXPSデプスプロファイル測定に際して採用するスパッタ法としては、エッチングイオン種としてアルゴン(Ar)を用いた希ガスイオンスパッタ法を採用し、そのエッチング速度(エッチングレート)を0.05nm/sec(SiO熱酸化膜基準値)とすることが好ましい。
【0028】
また、本発明においては、膜面全体において均一で且つ優れたガスバリア性を有する薄膜層を形成するという観点から、前記薄膜層が膜面方向(薄膜層の表面に平行な方向)において実質的に一様であることが好ましい。本明細書において、薄膜層が膜面方向において実質的に一様とは、XPSデプスプロファイル測定により薄膜層の膜面の任意の2箇所の測定箇所について前記炭素分布曲線を作成した場合に、その任意の2箇所の測定箇所において得られる炭素分布曲線が持つ極値の数が同じであり、それぞれの炭素分布曲線における炭素の原子比の最大値及び最小値の差の絶対値が、互いに同じであることをいう。
【0029】
後述する成膜プロセス上、前記炭素分布曲線は実質的に連続なものとなる。本明細書において、炭素分布曲線が実質的に連続とは、炭素分布曲線における炭素の原子比が不連続に変化する部分を含まないことを意味し、具体的には、エッチング速度とエッチング時間とから算出される前記薄膜層のうちの少なくとも1層の膜厚方向における該層の表面からの距離(x、単位:nm)と、炭素の原子比(C、単位:at%)との関係において、下記数式(F1):
|dC/dx|≦1 ・・・(F1)
で表される条件を満たすことをいう。
【0030】
本発明の積層フィルムは、上記条件(i)〜(iii)を全て満たす薄膜層を少なくとも1層備えることが必要であるが、そのような条件を満たす層を2層以上備えていてもよい。さらに、このような薄膜層を2層以上備える場合には、複数の薄膜層の材質は、同一であってもよく、異なっていてもよい。また、このような薄膜層を2層以上備える場合には、このような薄膜層は前記基材の一方の表面上に形成されていてもよく、前記基材の両方の表面上に形成されていてもよい。また、このような複数の薄膜層としては、ガスバリア性を必ずしも有しない薄膜層を含んでいてもよい。
【0031】
また、前記薄膜層の厚みは、5〜3000nmの範囲であることが好ましく、10〜2000nmの範囲であることより好ましく、100〜1000nmの範囲であることが特に好ましい。薄膜層の厚みが前記下限未満では、酸素ガスバリア性、水蒸気バリア性等のガスバリア性が劣る傾向にあり、他方、前記上限を超えると、屈曲によりガスバリア性が低下しやすくなる傾向にある。
【0032】
本発明の積層フィルムは、前記基材及び前記薄膜層を備えるものであるが、必要に応じて、更にプライマーコート層、ヒートシール性樹脂層、接着剤層等を備えていてもよい。このようなプライマーコート層は、前記基材及び前記薄膜層との接着性を向上させることが可能な公知のプライマーコート剤を用いて形成することができる。また、このようなヒートシール性樹脂層は、適宜公知のヒートシール性樹脂を用いて形成することができる。さらに、このような接着剤層は、適宜公知の接着剤を用いて形成することができ、このような接着剤層により複数の積層フィルム同士を接着させてもよい。
【0033】
また、本発明の積層フィルムにおいては、前記薄膜層がプラズマ化学気相成長法により形成される層であることが好ましい。このようなプラズマ化学気相成長法により形成される薄膜層としては、前記基材を一対の成膜ロール上に配置し、前記一対の成膜ロール間に放電してプラズマを発生させるプラズマ化学気相成長法により形成される層であることがより好ましい。また、このようにして一対の成膜ロール間に放電する際には、前記一対の成膜ロールの極性を交互に反転させることが好ましい。更に、このようなプラズマ化学気相成長法に用いる成膜ガスとしては有機珪素化合物と酸素とを含むものが好ましく、その成膜ガス中の酸素の含有量は、前記成膜ガス中の前記有機珪素化合物の全量を完全酸化するのに必要な理論酸素量以下であることが好ましい。また、本発明の積層フィルムにおいては、前記薄膜層が連続的な成膜プロセスにより形成された層であることが好ましい。
【0034】
次に、本発明の積層フィルムを製造する方法について説明する。本発明の積層フィルムは、前記基材の表面上に前記薄膜層を形成させることにより製造することができる。このような本発明にかかる薄膜層を前記基材の表面上に形成させる方法としては、ガスバリア性の観点から、プラズマ化学気相成長法(プラズマCVD)を採用することが好ましい。
【0035】
また、前記プラズマ化学気相成長法においてプラズマを発生させる際には、複数の成膜ロールの間の空間にプラズマ放電を発生させることが好ましく、一対の成膜ロールを用い、その一対の成膜ロールのそれぞれに前記基材を配置して、一対の成膜ロール間に放電してプラズマを発生させることがより好ましい。このようにして、一対の成膜ロールを用い、その一対の成膜ロール上に基材を配置して、かかる一対の成膜ロール間に放電することにより、成膜時に一方の成膜ロール上に存在する基材の表面部分を成膜しつつ、もう一方の成膜ロール上に存在する基材の表面部分も同時に成膜することが可能となって効率よく薄膜を製造できるばかりか、成膜レートを倍にでき、なおかつ、同じ構造の膜を成膜できるので前記炭素分布曲線における極値を少なくとも倍増させることが可能となり、効率よく上記条件(i)〜(iii)を全て満たす層を形成することが可能となる。また、本発明の積層フィルムは、生産性の観点から、ロールツーロール方式で前記基材の表面上に前記薄膜層を形成させることが好ましい。また、このようなプラズマ化学気相成長法により積層フィルムを製造する際に用いることが可能な装置としては、特に制限されないが、少なくとも一対の成膜ロールと、プラスマ電源とを備え且つ前記一対の成膜ロール間において放電することが可能な構成となっている装置であることが好ましく、例えば、図1に示す製造装置を用いた場合には、プラズマ化学気相成長法を利用しながらロールツーロール方式で製造することも可能となる。
【0036】
以下、図1を参照しながら、本発明の積層フィルムを製造する方法についてより詳細に説明する。なお、図1は、本発明の積層フィルムを製造するのに好適に利用することが可能な製造装置の一例を示す模式図である。また、以下の説明及び図面中、同一又は相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0037】
図1に示す製造装置は、送り出しロール11と、搬送ロール21、22、23、24と、成膜ロール31、32と、ガス供給管41と、プラズマ発生用電源51と、成膜ロール31及び32の内部に設置された磁場発生装置61、62と、巻取りロール71とを備えている。また、このような製造装置においては、少なくとも成膜ロール31、32と、ガス供給管41と、プラズマ発生用電源51と、磁場発生装置61、62とが図示を省略した真空チャンバー内に配置されている。更に、このような製造装置において前記真空チャンバーは図示を省略した真空ポンプに接続されており、かかる真空ポンプにより真空チャンバー内の圧力を適宜調整することが可能となっている。
【0038】
このような製造装置においては、一対の成膜ロール(成膜ロール31と成膜ロール32)を一対の対向電極として機能させることが可能となるように、各成膜ロールがそれぞれプラズマ発生用電源51に接続されている。そのため、このような製造装置においては、プラズマ発生用電源51により電力を供給することにより、成膜ロール31と成膜ロール32との間の空間に放電することが可能であり、これにより成膜ロール31と成膜ロール32との間の空間にプラズマを発生させることができる。なお、このように、成膜ロール31と成膜ロール32を電極としても利用する場合には、電極としても利用可能なようにその材質や設計を適宜変更すればよい。また、このような製造装置においては、一対の成膜ロール(成膜ロール31及び32)は、その中心軸が同一平面上において略平行となるようにして配置することが好ましい。このような製造装置によれば、CVD法によりフィルム100の表面上に薄膜層を形成することが可能であり、成膜ロール31上においてフィルム100の表面上に膜成分を堆積させつつ、更に成膜ロール32上においてもフィルム100の表面上に膜成分を堆積させることもできるため、フィルム100の表面上に前記薄膜層を効率よく形成することができる。
【0039】
また、成膜ロール31及び成膜ロール32の内部には、成膜ロールが回転しても、連動して回転しないように固定された磁場発生装置61及び62がそれぞれ設けられている。
【0040】
成膜ロール31及び成膜ロール32としては適宜公知のロールを用いることができる。このような成膜ロール31及び32としては、より効率よく薄膜層を形成せしめるという観点から、直径が同一のものを使うことが好ましい。また、このような成膜ロール31及び32の直径としては、放電条件、チャンバーのスペース等の観点から、5〜100cmの範囲とすることが好ましい。
【0041】
また、このような製造装置においては、フィルム100の表面がそれぞれ対向するように、一対の成膜ロール(成膜ロール31と成膜ロール32)上に、フィルム100が配置されている。このようにしてフィルム100を配置することにより、成膜ロール31と成膜ロール32との間に放電を行ってプラズマを発生させる際に、一対の成膜ロール間に存在するフィルム100のそれぞれの表面を同時に成膜することが可能となる。すなわち、このような製造装置によれば、上述したように、CVD法により、成膜ロール31上にてフィルム100の表面上に膜成分を堆積させ、更に成膜ロール32上にて膜成分を堆積させることができるため、フィルム100の表面上に前記薄膜層を効率よく形成することが可能となる。
【0042】
また、このような製造装置に用いる送り出しロール11及び搬送ロール21、22、23、24としては適宜公知のロールを用いることができる。また、巻取りロール71としても、薄膜層を形成したフィルム100を巻き取ることが可能なものであればよく、特に制限されず、適宜公知のロールを用いることができる。
【0043】
また、ガス供給管41としては原料ガス等を所定の速度で供給又は排出することが可能なものを適宜用いることができる。さらに、プラズマ発生用電源51としては、適宜公知のプラズマ発生装置の電源を用いることができる。このようなプラズマ発生用電源51は、これに接続された成膜ロール31と成膜ロール32に電力を供給して、これらを放電のための対向電極として利用することを可能とする。このようなプラズマ発生用電源51としては、より効率よくプラズマCVDを実施することが可能となることから、前記一対の成膜ロールの極性を交互に反転させることが可能なもの(交流電源など)を利用することが好ましい。また、このようなプラズマ発生用電源51としては、より効率よくプラズマCVDを実施することが可能となることから、印加電力を100W〜10kWとすることができ、且つ、交流の周波数を50Hz〜500kHzとすることが可能なものであることがより好ましい。また、磁場発生装置61、62としては適宜公知の磁場発生装置を用いることができる。さらに、フィルム100としては、薄膜層を予め形成させたものを用いることができる。このように、フィルム100として薄膜層を予め形成させたものを用いることにより、前記薄膜層の厚みを厚くすることも可能である。
【0044】
このような図1に示す製造装置を用いて、例えば、原料ガスの種類、プラズマ発生装置の電極ドラムの電力、真空チャンバー内の圧力、成膜ロールの直径、並びに、フィルムの搬送速度を適宜調整することにより、本発明の積層フィルムを製造することができる。すなわち、図1に示す製造装置を用いて、成膜ガス(原料ガス等)を真空チャンバー内に供給しつつ、一対の成膜ロール(成膜ロール31及び32)間に放電を発生させることにより、前記成膜ガス(原料ガス等)がプラズマによって分解され、成膜ロール31上のフィルム100の表面上並びに成膜ロール32上のフィルム100の表面上に、前記薄膜層がプラズマCVD法により形成される。なお、このような成膜に際しては、フィルム100が送り出しロール11や成膜ロール31等により、それぞれ搬送されることにより、ロールツーロール方式の連続的な成膜プロセスによりフィルム100の表面上に前記薄膜層が形成される。
【0045】
このような薄膜層の形成に用いる前記成膜ガス中の原料ガスとしては、形成する薄膜層の材質に応じて適宜選択して使用することができる。このような原料ガスとしては、例えば珪素を含有する有機珪素化合物を用いることができる。このような有機珪素化合物としては、例えば、ヘキサメチルジシロキサン、1.1.3.3−テトラメチルジシロキサン、ビニルトリメチルシラン、メチルトリメチルシラン、ヘキサメチルジシラン、メチルシラン、ジメチルシラン、トリメチルシラン、ジエチルシラン、プロピルシラン、フェニルシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、オクタメチルシクロテトラシロキサンが挙げられる。これらの有機珪素化合物の中でも、化合物の取り扱い性及び得られる薄膜層のガスバリア性等の特性の観点から、ヘキサメチルジシロキサン、1.1.3.3−テトラメチルジシロキサンが好ましい。また、これらの有機珪素化合物は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
さらに、原料ガスとして、上述の有機珪素化合物のほかにモノシランを含有させ、形成するバリア膜の珪素源として使用してもよい。
【0046】
また、前記成膜ガスとしては、前記原料ガスの他に反応ガスを用いてもよい。このような反応ガスとしては、前記原料ガスと反応して酸化物、窒化物等の無機化合物となるガスを適宜選択して使用することができる。酸化物を形成するための反応ガスとしては、例えば、酸素、オゾンを用いることができる。また、窒化物を形成するための反応ガスとしては、例えば、窒素、アンモニアを用いることができる。これらの反応ガスは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができ、例えば酸窒化物を形成する場合には、酸化物を形成するための反応ガスと窒化物を形成するための反応ガスとを組み合わせて使用することができる。
【0047】
前記成膜ガスとしては、前記原料ガスを真空チャンバー内に供給するために、必要に応じて、キャリアガスを用いてもよい。さらに、前記成膜ガスとしては、プラズマ放電を発生させるために、必要に応じて、放電用ガスを用いてもよい。このようなキャリアガス及び放電用ガスとしては、適宜公知のものを使用することができ、例えば、ヘリウム、アルゴン、ネオン、キセノン等の希ガス;水素を用いることができる。
【0048】
このような成膜ガスが原料ガスと反応ガスを含有する場合には、原料ガスと反応ガスの比率としては、原料ガスと反応ガスとを完全に反応させるために理論上必要となる反応ガスの量の比率よりも、反応ガスの比率を過剰にし過ぎないことが好ましい。反応ガスの比率を過剰にし過ぎてしまうと、上記条件(i)〜(iii)を全て満たす薄膜が得られなくなってしまう。この場合には、形成される薄膜層によって、優れたバリア性や耐屈曲性を得ることができなくなる。また、前記成膜ガスが前記有機珪素化合物と酸素とを含有するものである場合には、前記成膜ガス中の前記有機珪素化合物の全量を完全酸化するのに必要な理論酸素量以下であることが好ましい。
【0049】
以下、前記成膜ガスとして、原料ガスとしてのヘキサメチルジシロキサン(有機珪素化合物:HMDSO:(CHSiO:)と反応ガスとしての酸素(O)を含有するものを用い、珪素−酸素系の薄膜を製造する場合を例に挙げて、成膜ガス中の原料ガスと反応ガスの好適な比率等についてより詳細に説明する。
【0050】
原料ガスとしてのヘキサメチルジシロキサン(HMDSO、(CHSiO)と、反応ガスとしての酸素(O)とを含有する成膜ガスをプラズマCVDにより反応させて珪素−酸素系の薄膜を作製する場合、その成膜ガスにより下記反応式(3):
(CHSiO+12O→6CO+9HO+2SiO (3)
に記載のような反応が起こり、二酸化珪素が製造される。このような反応においては、ヘキサメチルジシロキサン1モルを完全酸化するのに必要な酸素量は12モルである。そのため、成膜ガス中に、ヘキサメチルジシロキサン1モルに対して酸素を12モル以上含有させて完全に反応させた場合には、均一な二酸化珪素膜が形成されてしまうため、上記条件(i)〜(iii)を全て満たす薄膜層を形成することができなくなってしまう。そのため、本発明において、薄膜層を形成する際には、上記(3)式の反応が完全に進行してしまわないように、ヘキサメチルジシロキサン1モルに対して酸素量を化学量論比の12モルより少なくする必要がある。なお、実際のプラズマCVDチャンバー内の反応では、原料のヘキサメチルジシロキサンと反応ガスの酸素は、ガス供給部から成膜領域へ供給されて成膜されるので、反応ガスの酸素のモル量(流量)が原料のヘキサメチルジシロキサンのモル量(流量)の12倍のモル量(流量)であったとしても、現実には完全に反応を進行させることはできず、酸素の含有量を化学量論比に比して大過剰に供給して初めて反応が完結すると考えられる(例えば、CVDにより完全酸化させて酸化珪素を得るために、酸素のモル量(流量)を原料のヘキサメチルジシロキサンのモル量(流量)の20倍以上程度とする場合もある。)。そのため、原料のヘキサメチルジシロキサンのモル量(流量)に対する酸素のモル量(流量)は、化学量論比である12倍量以下(より好ましくは、10倍以下)の量であることが好ましい。このような比でヘキサメチルジシロキサン及び酸素を含有させることにより、完全に酸化されなかったヘキサメチルジシロキサン中の炭素原子や水素原子が薄膜層中に取り込まれ、上記条件(i)〜(iii)を全て満たす薄膜層を形成することが可能となって、得られる積層フィルムに優れたバリア性及び耐屈曲性を発揮させることが可能となる。なお、成膜ガス中のヘキサメチルジシロキサンのモル量(流量)に対する酸素のモル量(流量)が少なすぎると、酸化されなかった炭素原子や水素原子が薄膜層中に過剰に取り込まれるため、この場合はバリア膜の透明性が低下して、バリアフィルムは有機ELデバイスや有機薄膜太陽電池などのような透明性を必要とするデバイス用のフレキシブル基板には利用できなくなってしまう。このような観点から、成膜ガス中のヘキサメチルジシロキサンのモル量(流量)に対する酸素のモル量(流量)の下限は、ヘキサメチルジシロキサンのモル量(流量)の0.1倍より多い量とすることが好ましく、0.5倍より多い量とすることがより好ましい。
【0051】
また、真空チャンバー内の圧力(真空度)は、原料ガスの種類等に応じて適宜調整することができるが、0.1Pa〜10Paの範囲とすることが好ましく、0.1Pa〜5Paの範囲とすることがより好ましく、0.1Pa〜2.5Paの範囲とすることが特に好ましい。
【0052】
真空チャンバー内の圧力が0.1Pa程度未満であると、磁場の存在する領域における放電の発生が困難になり、圧力が10Pa程度を超えると磁場領域(成膜ゾーン)以外でのプラズマ放電の発生が顕著になって、成膜ロールに巻き付けられた基材のみならずそれ以外の部分にも成膜されてしまうおそれがある。圧力を5Pa以下とすれば成膜ゾーン22内での原料ガスの反応によるパーティクルの発生を効果的に抑制でき、パーティクルの堆積による膜のバリア性の低下を効果的に防止することができる。さらに、圧力を2.5Pa以下とすれば、パーティクルの発生をさらに抑制することができる。
【0053】
また、このようなプラズマCVD法において、成膜ロール31及び32間に放電するために、プラズマ発生用電源51に接続された電極ドラム(本実施形態においては成膜ロール31及び32に設置されている。)に印加する電力は、原料ガスの種類や真空チャンバー内の圧力等に応じて適宜調整することができるものであり、一概に言えるものでないが、0.1〜10kWの範囲とすることが好ましい。このような印加電力が前記下限未満ではパーティクルが発生し易くなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると成膜時に発生する熱量が多くなり、成膜時の基材表面の温度が上昇してしまい、基材が熱負けして成膜時に皺が発生してしまう可能性や、ひどい場合には熱でフィルムが溶けて、裸の成膜ロール間に大電流の放電が発生して成膜ロール自体を傷めてしまう可能性が生じる。
【0054】
フィルム100の搬送速度(ライン速度)は、原料ガスの種類や真空チャンバー内の圧力等に応じて適宜調整することができるが、0.1〜100m/minの範囲とすることが好ましく、0.5〜20m/minの範囲とすることがより好ましい。ライン速度が前記下限未満では、フィルムに熱に起因する皺の発生しやすくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、形成される薄膜層の厚みが薄くなる傾向にある。
【実施例】
【0055】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、積層フィルムの水蒸気透過度は以下の方法により測定した。
【0056】
[水蒸気透過度の測定]
温度40℃、湿度90%RHの条件において、Ca腐食法(特開2005−283561号公報に記載される方法)を用いて、積層フィルムの水蒸気透過度を測定した。
【0057】
(実施例1)
前述の図1に示す製造装置を用いて積層フィルムを製造した。すなわち、2軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルム(PENフィルム、厚み:100μm、幅:350mm、帝人デュポンフィルム(株)製、商品名「テオネックスQ65FA」)を基材(フィルム100)として用い、これを送り出しロ−ル11に装着した。そして、成膜ロール31と成膜ロール32との間に磁場を印加すると共に、成膜ロール31と成膜ロール32にそれぞれ電力を供給して成膜ロール31と成膜ロール32との間に放電してプラズマを発生させ、このような放電領域に成膜ガス(原料ガスとしてのヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)と反応ガスとしての酸素ガス(放電ガスとしても機能する)の混合ガス)を供給して、下記条件にてプラズマCVD法による薄膜形成を行い、積層フィルムを得た。
【0058】
〈成膜条件〉
成膜ガスの混合比(ヘキサメチルジシロキサン/酸素):25/250[単位:sccm(Standard Cubic Centimeter per Minute)、0℃、1気圧基準]
基材の面積速度1m/分あたりのヘキサメチルジシロキサンの流量:143sccm
真空チャンバー内の真空度:0.55Pa
プラズマ発生用電源からの印加電力:0.8kW
プラズマ発生用電源の周波数:70kHz
フィルムの搬送速度;0.5m/min。
繰り返し数:5パス
【0059】
このようにして得られた積層フィルムにおける薄膜層の厚みは430nmであった。また、得られた積層フィルムについて、Ca腐食法による温度40℃、湿度90%RHの条件における水蒸気透過度は7×10−5g/m/dayだった。
【0060】
(実施例2)
前述の図1に示す製造装置を用いて成膜条件だけを変えて実施例1と同様に成膜を行った。
【0061】
〈成膜条件〉
成膜ガスの混合比(ヘキサメチルジシロキサン/酸素):25/500[単位:sccm(Standard Cubic Centimeter per Minute)、0℃、1気圧基準]
基材の面積速度1m/分あたりのヘキサメチルジシロキサンの流量:143sccm
真空チャンバー内の真空度:1.0Pa
プラズマ発生用電源からの印加電力:0.8kW
プラズマ発生用電源の周波数:70kHz
フィルムの搬送速度;0.5m/min。
繰り返し数:5パス
【0062】
このようにして得られた積層フィルムにおける薄膜層の厚みは522nmであった。また、得られた積層フィルムについて、Ca腐食法により温度40℃、湿度90%RHの条件における水蒸気透過度は2.0×10−4g/m/dayだった。
【0063】
得られた積層フィルムについて、下記条件にてXPSデプスプロファイル測定を行い、珪素分布曲線、酸素分布曲線、炭素分布曲線を得た。

エッチングイオン種:アルゴン(Ar
エッチングレート(SiO熱酸化膜換算値):0.05nm/sec
エッチング間隔(SiO換算値):10nm
X線光電子分光装置:Thermo Fisher Scientific社製、機種名「VG Theta Probe」
照射X線:単結晶分光AlKα
X線のスポット及びそのサイズ:800×400μmの楕円形
【0064】
得られた珪素分布曲線、酸素分布曲線、炭素分布曲線を図2〜5に示した。図2〜5は、原子比と薄膜層の表面からの距離(nm)との関係を示すグラフである。図2〜5に示す結果からも明らかなように、ガスバリア性に優れた実施例1及び2の炭素濃度プロファイルは、条件(i)〜(iii)で示される条件を満たしていることが確認された。
【符号の説明】
【0065】
11…送り出しロール、21、22、23、24…搬送ロール、31、32…成膜ロール、41…ガス供給管、51…プラズマ発生用電源、61、62…磁場発生装置、71…巻取りロール、100…フィルム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、前記基材の少なくとも片方の表面上に形成された少なくとも1層の薄膜層とを備える積層フィルムであって、
前記薄膜層のうちの少なくとも1層が珪素、酸素及び炭素を含有しており、且つ、
該薄膜層の膜厚方向における該薄膜層の表面からの距離と、珪素原子、酸素原子及び炭素原子の合計量に対する炭素原子の量の比率(炭素の原子比)との関係を示す炭素分布曲線において、下記条件(i)〜(iii):
(i) 前記炭素分布曲線が極大値と極小値を有すること、
(ii) 前記炭素分布曲線の極大値が5at%以下であること、
(iii) 前記炭素分布曲線において少なくとも1つの1at%以上の極大値があること、
を全て満たすことを特徴とする積層フィルム。
【請求項2】
前記炭素分布曲線において、最大値と最小値との差が1at%以上であることを特徴とする請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項3】
前記炭素分布曲線において少なくとも1つの1at%以下の極小値を有することを特徴とする請求項1または2に記載の積層フィルム。
【請求項4】
前記薄膜層の膜厚方向における該薄膜層の表面からの距離と、珪素原子、酸素原子及び炭素原子の合計量に対する珪素原子の量の比率(珪素の原子比)との関係を示す珪素分布曲線において、薄膜層内の90%以上の領域において、珪素原子の比率が30.0at%以上37.0at%以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の積層フィルム。
【請求項5】
前記薄膜層がプラズマ化学気相成長法により形成された層であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の積層フィルム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−81631(P2012−81631A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−228915(P2010−228915)
【出願日】平成22年10月8日(2010.10.8)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】