説明

積層ポリイミドフィルム

【課題】薄くて耐熱性の優れたポリイミドフィルムの取り扱いを容易とする積層ポリイミドフィルムを提供する。
【解決手段】ポリイミドフィルム、熱可塑性樹脂層、基材フィルムがこの順に積層されてなる積層ポリイミドフィルムにおいて、前記ポリイミドフィルム、熱可塑性樹脂層、および基材フィルムの5%重量減少温度がすべて400℃以上であり、且つポリイミドフィルムと基材フィルム間の剥離強度が0.01N/cm〜1.0N/cmの構成。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銅貼積層板や多層プリント回路基板(以下多層基板)などの加工・製造時に用いられる積層ポリイミドフィルム及びその製造方法に関する。さらに詳しくは、極薄のポリイミドフィルムを取扱うのに好適な、適度な剛性、熱寸法安定性、剥離性を有する裏打ちフィルムが積層されたポリイミドフィルムに銅などの機能性薄膜層が形成された積層ポリイミドフィルムに関する。さらには、太陽電池や半導体回路、センサー、アクチュエーターの形成されたフレキシブルデバイス製造工程で使用するために好適な剛性、熱寸法安定性、剥離性を有する裏打ちフィルムが積層されたポリイミドフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話などの電子機器の技術進歩に伴って、FPC(可撓性印刷回路)、TAB、COF、フィルムを利用した薄型多層基板の需要が急激に伸びており、さらにこうした機器の小型化、軽量化、高密度配線化に対応してFPC等の薄膜化が進んでいる。そのため、FPC等用の銅貼積層板(CCL)の薄膜化も同時に進行しているが、これによってフィルム自体の剛性が低下し、CCLを製造する際の加工が困難になってきている。
FPC等を製造する際の加工性を改良する方法としては、裏打ちフィルムを予め貼り付けることにより全体として剛性を持たせる方法が用いられている。その際、加工時の取扱いを簡便にし、かつ加工終了後には剥離・除去できるような微粘着性の補強フィルムが用いられるようになっている。従来は、この目的で、アクリル系やゴム系の粘着シートが使用されていたが、これらのシートは粘着力が大きく、またその粘着力が温度、圧力により著しく変化するため、FPC等製造工程の加工条件によっては使用できないことがあった。
例えば、片面のみに金属箔を配したフレキシブル積層板において、反りの発生防止と製造効率の低下防止のために、金属箔、熱可塑性ポリイミド層、非熱可塑性ポリイミド層、およびイミド化促進剤の共存下においてポリアミド酸を転化することにより得られるポリイミド樹脂裏打ち層をこの順で積層してなるフレキシブル積層板(特許文献1参照)、フレキシブルプリント回路基板の加工時に用いられる、ポリエステル(A)とポリイミド (B)を含有し、かつ熱収縮率が0.25%以下、熱膨張係数が13×10−6/℃〜50×10−6/℃の補強用ポリエステルフィルム(特許文献2参照)などが提案されている。
また、CCLを作成する工程においては、銅箔上へのキャスティングによる製法以外の製法においては、特に、ロール・ツー・ロールでの薄いフィルムの取り扱いがほとんどであり、スパッタリングによる銅薄膜の堆積、めっき、或いは、接着剤の塗布、銅箔の貼合わせ、熱圧着、プレスなどがそれに該当する。これらの場合、薄い基材フィルムを皺や歪み、こすれなどがなく搬送することが必要である。また、基板作成時においても、フィルムの厚さによっては皺なく切断、搬送、貼り合わせること自体が困難になる場合がある。
さらに従来技術におけるこれらの裏打ちフィルムは、接着剤層や、基材フィルムの耐熱性が不充分であり、機能性薄膜層の形成(積層)時の高温などに耐え得ない場合がほとんどである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−186274号公報
【特許文献2】特開2003−101166号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、FPCなどの加工・製造時に用いられる極薄のポリイミドフィルムの取扱いに好適な、耐熱性、適度な剛性、熱寸法安定性、剥離性を有する裏打ちフィルムが積層されたポリイミドフィルムと、この積層ポリイミドフィルムに機能性薄膜層が形成された機能性薄膜層積層ポリイミドフィルムとその製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち本発明は、以下の構成からなる。
1. 厚さ0.5μm〜12.5μmのポリイミドフィルム、厚さ0.05μm〜10μmの熱可塑性樹脂層、厚さ12.5μm〜200μmの基材フィルム(以下、熱可塑性樹脂層、基材フィルムの2層フィルムを裏打ちフィルムと呼称する。)がこの順に積層されてなる積層ポリイミドフィルムにおいて、前記ポリイミドフィルム、熱可塑性樹脂層、および基材フィルムの5%重量減少温度がすべて400℃以上であり、且つポリイミドフィルムと基材フィルム間の剥離強度が0.01N/cm〜1.0N/cmであることを特徴とする積層ポリイミドフィルム。
2. 熱可塑性樹脂層が、ポリアミドイミド、およびポリイミドのいずれかから選ばれた少なくとも一種以上の樹脂から成り、且つ有機溶媒可溶性である1.の積層ポリイミドフィルム。
3. ポリイミドフィルムが、ポリイミドベンゾオキサゾール成分を有するポリイミドフィルムで、かつ線膨張係数が−10ppm/℃〜10ppm/℃である1.又は2.の積層ポリイミドフィルム。
4. 基材フィルムが、ポリイミドフィルムである1.〜3.いずれかの積層ポリイミドフィルム。
5. 基材フィルムが、ポリイミドベンゾオキサゾール成分を有するポリイミドフィルムで、かつ線膨張係数が−10ppm/℃〜10ppm/℃である1.〜4.いずれかの積層ポリイミドフィルム。
6. 1.〜5.いずれかの積層ポリイミドフィルムの、裏打ちフィルムが貼られている面とは反対の面に、厚さ0.01μm〜10μmの機能性薄膜層が積層されている機能性薄膜層積層ポリイミドフィルム。
7. 機能性薄膜層が銅、ニッケル、およびクロムから選ばれた一種以上からなる、6.の機能性薄膜層積層ポリイミドフィルム。
【発明の効果】
【0006】
本発明の積層ポリイミドフィルムは、厚さ0.5μm〜12.5μmのポリイミドフィルム、厚さ0.05μm〜10μmの熱可塑性樹脂層、厚さ12.5μm〜200μmの基材フィルム(以下、熱可塑性樹脂層、基材フィルムの2層フィルムを裏打ちフィルムと呼称する。)がこの順に積層されてなる積層ポリイミドフィルムにおいて、前記ポリイミドフィルム、熱可塑性樹脂層、および基材フィルムの5%重量減少温度がすべて400℃以上であり、且つポリイミドフィルムと基材フィルム間の剥離強度が0.01N/cm〜1.0N/cmの構成であるため、種々工程で取扱う際に、特に高温での取り扱い時に、剥がれ、皺や歪み、こすれなどの問題発生を低減することが可能である。
さらに裏打ちフィルムを積層ポリイミドフィルムから剥がす時や別の基材と積層する場合には、裏打ちフィルムのついている側とは反対側のポリイミドフィルム面に粘着層又は接着層を形成させて他の裏打ちフィルムや基板と積層すれば、裏打ちフィルムの剥離が容易であり、ポリイミドフィルムの皺や歪みの発生が低減可能になるので、耐熱性、フレキシブル性、機械的強度をより高いレベルで具備する極薄の厚さのポリイミドフィルムを使用した製品の製造が容易に、かつ安定してなすことができる。
このため、薄いFPCなどの細密かつ軽小短薄が要求される電気電子部品に対応し得る機能性薄膜層積層ポリイミドフィルムとして工業的に極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明で用いるポリイミドフィルム製造時に用いた、ピンテンター式フィルム処理機におけるフィルムと接するピンの幅方向外側に台を設けたピンシートの概略図であり、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【図2】本発明で用いるポリイミドフィルム製造時に用いたピンテンター式フィルム処理機におけるフィルムのピン差し部の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を詳述する。
本発明における前記ポリイミドフィルムを構成するポリイミド、及び前記基材フィルムとしてポリイミドフィルムを用いる場合にフィルムを構成するポリイミドは、例えば芳香族テトラカルボン酸類(無水物、酸、およびアミド結合性誘導体を総称して類という、以下同)と芳香族ジアミン類(アミン、およびアミド結合性誘導体を総称して類という、以下同)とを反応させて得られるポリアミド酸溶液を、成形した後イミド化して得られるものであり、例えば層であるフィルムとなす場合には、流延、乾燥、熱処理(イミド化)してフィルムとなす方法で得られる。
前記のポリイミドフィルムは、5%重量減少温度が400℃以上であるものであれば、特に限定されるものではないが、下記の芳香族ジアミン類と芳香族テトラカルボン酸(無水物)類との組み合わせが好ましい例として挙げられる。
A.ピロメリット酸残基を有する芳香族テトラカルボン酸類、ベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミン類との組み合わせ。
B.フェニレンジアミン骨格を有する芳香族ジアミン類とビフェニルテトラカルボン酸骨格を有する芳香族テトラカルボン酸類との組み合わせ。
C.ジフェニルエーテル骨格を有する芳香族ジアミン類とピロメリット酸残基を有する芳香族テトラカルボン酸類との組み合わせ。
中でも特にA.のベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミン残基を有するポリイミドフィルムが好ましい。
【0009】
前記のベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミン類としては、具体的には以下のものが挙げられる。これらの芳香族ジアミン類は全芳香族ジアミン類の70モル%以上することが好ましく、より好ましくは80モル%以上である。
【0010】
【化1】

【0011】
【化2】

【0012】
【化3】

【0013】
【化4】

【0014】
【化5】

【0015】
【化6】

【0016】
【化7】

【0017】
【化8】

【0018】
【化9】

【0019】
【化10】

【0020】
【化11】

【0021】
【化12】

【0022】
【化13】

【0023】
これらの中でも、合成のし易さの観点から、アミノ(アミノフェニル)ベンゾオキサゾールの各異性体が好ましく、5−アミノ−2−(p−アミノフェニル)ベンゾオキサゾールがより好ましい。ここで、「各異性体」とは、アミノ(アミノフェニル)ベンゾオキサゾールが有する2つアミノ基が配位位置に応じて定められる各異性体である(例;上記「化1」〜「化4」に記載の各化合物)。これらのジアミンは、単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0024】
さらに、全芳香族ジアミン類の30モル%以下であれば下記に例示されるジアミン類を一種または二種以上を併用しても構わない。そのようなジアミン類としては、例えば、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、m−フェニレンジアミン、o−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、m−アミノベンジルアミン、p−アミノベンジルアミン、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルホキシド、3,4’−ジアミノジフェニルスルホキシド、4,4’−ジアミノジフェニルスルホキシド、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、3,4’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、1,1−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,1−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,1−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、1,4−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、2,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、2−[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−2−[4−(4−アミノフェノキシ)−3−メチルフェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−3−メチルフェニル]プロパン、2−[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−2−[4−(4−アミノフェノキシ)−3,5−ジメチルフェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−3,5−ジメチルフェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホキシド、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、4,4’−ビス[(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,1−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,3−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、3,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、2,2−ビス[3−(3−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、1,1−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホキシド、4,4’−ビス[3−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4,4’−ビス[3−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ベンゾフェノン、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ジフェニルスルホン、ビス[4−{4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ}フェニル]スルホン、1,4−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノ−6−トリフルオロメチルフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノ−6−フルオロフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノ−6−メチルフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノ−6−シアノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジフェノキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノ−5,5’−ジフェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−4,5’−ジフェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4−フェノキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノ−5−フェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−4−フェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−5’−フェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジビフェノキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノ−5,5’−ジビフェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−4,5’−ジビフェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4−ビフェノキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノ−5−ビフェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−4−ビフェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−5’−ビフェノキシベンゾフェノン、1,3−ビス(3−アミノ−4−フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノ−4−フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−5−フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノ−5−フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノ−4−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノ−4−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−5−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノ−5−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、2,6−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ベンゾニトリルおよび上記芳香族ジアミンの芳香環上の水素原子の一部もしくは全てがハロゲン原子、炭素数1〜3のアルキル基またはアルコキシル基、シアノ基、またはアルキル基またはアルコキシル基の水素原子の一部もしくは全部がハロゲン原子で置換された炭素数1〜3のハロゲン化アルキル基またはアルコキシル基で置換された芳香族ジアミン等が挙げられる。
【0025】
前記の芳香族テトラカルボン酸類の分子構造は特に限定されるものではなく、具体的には、以下のものが挙げられる。これらの芳香族テトラカルボン酸類は全芳香族テトラカルボン酸類の70モル%以上することが好ましく、より好ましくは80モル%以上である。
【0026】
【化14】

【0027】
【化15】

【0028】
【化16】

【0029】
【化17】

【0030】
【化18】

【0031】
【化19】

【0032】
これらの芳香族テトラカルボン酸類は単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0033】
さらに、全芳香族テトラカルボン酸類の30モル%以下であれば下記に例示される非芳香族のテトラカルボン酸二無水物類を一種または二種以上を併用しても構わない。そのようなテトラカルボン酸無水物としては、例えば、ブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、ペンタン−1,2,4,5−テトラカルボン酸二無水物、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、シクロヘキサン−1,2,4,5−テトラカルボン酸二無水物、シクロヘキサ−1−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、3−エチルシクロヘキサ−1−エン−3−(1,2),5,6−テトラカルボン酸二無水物、1−メチル−3−エチルシクロヘキサン−3−(1,2),5,6−テトラカルボン酸二無水物、1−メチル−3−エチルシクロヘキサ−1−エン−3−(1,2),5,6−テトラカルボン酸二無水物、1−エチルシクロヘキサン−1−(1,2),3,4−テトラカルボン酸二無水物、1−プロピルシクロヘキサン−1−(2,3),3,4−テトラカルボン酸二無水物、1,3−ジプロピルシクロヘキサン−1−(2,3),3−(2,3)−テトラカルボン酸二無水物、ジシクロヘキシル−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、1−プロピルシクロヘキサン−1−(2,3),3,4−テトラカルボン酸二無水物、1,3−ジプロピルシクロヘキサン−1−(2,3),3−(2,3)−テトラカルボン酸二無水物、ジシクロヘキシル−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
【0034】
前記芳香族ジアミン類と、芳香族テトラカルボン酸類とを重縮合(重合)してポリアミド酸を得るときに用いる溶媒は、原料となるモノマーおよび生成するポリアミド酸のいずれをも溶解するものであれば特に限定されないが、極性有機溶媒が好ましく、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N−アセチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホリックアミド、エチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、スルホラン、ハロゲン化フェノール類等があげられる。これらの溶媒は、単独あるいは混合して使用することができる。溶媒の使用量は、原料となるモノマーを溶解するのに十分な量であればよく、具体的な使用量としては、モノマーを溶解した溶液に占めるモノマーの質量が、通常5〜40質量%、好ましくは10〜30質量%となるような量が挙げられる。
【0035】
ポリアミド酸を得るための重合反応(以下、単に「重合反応」ともいう)の条件は従来公知の条件を適用すればよく、具体例として、有機溶媒中、0〜80℃の温度範囲で、10分〜30時間連続して撹拌および/又は混合することが挙げられる。必要により重合反応を分割したり、温度を上下させてもかまわない。この場合に、両モノマーの添加順序には特に制限はないが、芳香族ジアミン類の溶液中に芳香族テトラカルボン酸類を添加するのが好ましい。重合反応によって得られるポリアミド酸溶液の粘度はブルックフィールド粘度計による測定(25℃)で、送液の安定性の点から、好ましくは10〜2000Pa・sであり、より好ましくは100〜1000Pa・sである。また、前記ポリアミド酸溶液の還元粘度(ηsp/C)は、特に限定するものではないが3.0dl/g以上が好ましく、4.0dl/g以上がさらに好ましい。
【0036】
重合反応中に真空脱泡することは、良質なポリアミド酸溶液を製造するのに有効である。また、重合反応の前に芳香族ジアミン類に少量の末端封止剤を添加して重合を制御することを行ってもよい。末端封止剤としては、無水マレイン酸等といった炭素−炭素二重結合を有する化合物が挙げられる。無水マレイン酸を使用する場合の使用量は、芳香族ジアミン類1モル当たり好ましくは0.001〜1.0モルである。
【0037】
重合反応により得られるポリアミド酸溶液から、本発明の層の一であるポリイミドフィルムを形成するためには、ポリアミド酸溶液を支持体上に塗布して乾燥することによりグリーンフィルム(自己支持性の前駆体フィルム)を得て、次いで、グリーンフィルムを熱処理に供することでイミド化反応させる方法が挙げられる。支持体へのポリアミド酸溶液の塗布は、スリット付き口金からの流延、押出機による押出し、等を含むが、これらに限られず、従来公知の溶液の塗布手段を適宜用いることができる。
【0038】
支持体上に塗布したポリアミド酸を乾燥してグリーンシートを得る条件は特に限定はなく、温度としては70〜150℃が例示され、乾燥時間としては、5〜180分間が例示される。そのような条件を達する乾燥装置も従来公知のものを適用でき、熱風、熱窒素、遠赤外線、高周波誘導加熱などを挙げることができる。次いで、得られたグリーンシートから目的のポリイミドフィルムを得るために、イミド化反応を行わせる。その具体的な方法としては、従来公知のイミド化反応を適宜用いることが可能である。例えば、閉環触媒や脱水剤を含まないポリアミド酸溶液を用いて、必要により延伸処理を施した後に、加熱処理に供することでイミド化反応を進行させる方法(熱閉環法)が挙げられる。この場合の加熱温度は100〜500℃が例示され、フィルム物性の点から、より好ましくは、150〜250℃で3〜20分間処理した後に350〜500℃で3〜20分間処理する2段階熱処理が挙げられる。
【0039】
別のイミド化反応の例として、ポリアミド酸溶液に閉環触媒および脱水剤を含有させておいて、上記閉環触媒および脱水剤の作用によってイミド化反応を行わせる、化学閉環法を挙げることもできる。この方法では、ポリアミド酸溶液を支持体に塗布した後、イミド化反応を一部進行させて自己支持性を有するフィルムを形成した後に、加熱によってイミド化を完全に行わせることができる。この場合、イミド化反応を一部進行させる条件としては、好ましくは100〜200℃による3〜20分間の熱処理であり、イミド化反応を完全に行わせるための条件は、好ましくは200〜400℃による3〜20分間の熱処理である。
【0040】
本発明で用いるポリイミドフィルムは、厚さ0.5μm〜12.5μmであることが好ましく、より好ましくは1μm〜10μm、さらに好ましくは2μm〜7.5μmである。膜厚が0.5μmより薄いポリイミドフィルムを製膜するのは非常に困難である。一方、膜厚が12.5μmより厚い場合は、従来からある一般的な装置でハンドリングが可能であり、裏打ちフィルムを用いる効果は少ない。
【0041】
本発明で用いるポリイミドフィルムは、面方向での線膨張係数が−10ppm/℃〜30ppm/℃であることが好ましく、より好ましくは−10ppm/℃〜20ppm/℃、さらに好ましくは−10ppm/℃〜10ppm/℃である。線膨張係数がこの範囲を超えると、半田付けなどの高温暴露において歪みや皺が発生し、かつ薄膜の線膨張係数との乖離が大きいことで薄膜の剥がれなどが発生する恐れがある。また、例えばSiウェハーにこの多層ポリイミドフィルムを接着積層した場合、Siウェハーの線膨張係数との乖離が大きくなり、反りや剥離などの問題が発生し易くなる。
【0042】
本発明で用いるポリイミドフィルムの引張破断強度は特に限定されないが、250MPa以上が好ましく、より好ましくは300MPa以上である。引張破断強度が250MPaより低いと、搬送中にフィルム破断が起こりやすくなり、歩留まりが低下する恐れがある。
本発明で用いるポリイミドフィルムの引張破断伸度も特に限定されないが、10%〜90%が好ましく、より好ましくは20%〜80%である。引張破断伸度がこれらの範囲を超えると、搬送中にフィルム破断が起こりやすくなり、歩留まりが低下する恐れがある。
また、本発明で用いるポリイミドフィルムの引張弾性率も特に限定されないが、4.0GPa以上が好ましく、より好ましくは5.0GPa以上である。
【0043】
本発明で用いる裏打ちフィルムを構成する基材フィルムとしては、5%重量減少温度が400℃以上のフィルムであれば、ポリイミドフィルム、ポリアミドイミドフィルム、ポリフェニレンサルファイドフィルム、ポリエーテルエーテルケトンフィルム、ポリエーテルケトンケトンフィルム、アラミドフィルム、液晶ポリマーフィルム、フッ素樹脂フィルムなど特に限定されるものではないが、ポリイミドフィルムが好ましく、より好ましくは前記ポリイミドフィルムの項で開示したベンゾオキサゾール成分を有するポリイミドフィルムで、かつ線膨張係数が−10ppm/℃〜10ppm/℃であるポリイミドフィルムである。
【0044】
本発明で用いる裏打ちフィルムを構成する基材フィルムの厚さは、12.5μm〜200μmが好ましく、より好ましくは15μm〜200μm、さらに好ましくは25μm〜200μmである。膜厚が12.5μmより薄いと、裏打ちフィルムとして補強効果が乏しく、ハンドリング性が改善しない。一方、膜厚が200μmより厚く、かつ5%重量減少温度が400℃以上の耐熱フィルムを製膜するのは、製膜・乾燥工程において、フィルム表面と内部の残存溶媒量にバラツキが生じ、品位、および物性が低下するため、非常に困難である。また、膜厚が厚くなると原料コストも上がるため、膜厚が200μm以上の基材フィルムを用いるのは現実的ではない。
【0045】
本発明で用いる裏打ちフィルムを構成する熱可塑性樹脂層は、5%重量減少温度が400℃以上のものであれば、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、アラミド、液晶ポリマー、フッ素樹脂など特に限定されるものではないが、ポリアミドイミド、およびポリイミドのいずれかから選ばれた少なくとも一種以上の樹脂から成るものが、基材フィルムとの接着性、ポリイミドフィルムとの易剥離性を両立しやすいため好ましい。
【0046】
本発明で用いる裏打ちフィルムを構成する熱可塑性樹脂層の厚さは、0.05μm〜10μmが好ましく、より好ましくは0.05μm〜7.5μm、さらに好ましくは0.05μm〜5μmである。膜厚が0.05μmより薄いと、塗工ぬけなどの問題で均一な裏打ちフィルムを作成できない恐れがある。また、接着性が弱くなり、搬送中にポリイミドフィルムと裏打ちフィルムが剥離してしまう恐れもある。一方、膜厚が10μmより厚いと、裏打ちフィルム自身に反りが生じてしまい、ハンドリング性が悪くなる恐れがある。
【0047】
本発明で用いるポリイミドフィルム、裏打ちフィルムを構成する熱可塑性樹脂層、基材フィルムの5%重量減少温度は、400℃以上が好ましく、より好ましくは425℃以上、さらに好ましくは450℃以上である。5%重量減少温度が400℃より低いと、本発明の目標とする高温プロセスを通過することができない。
【0048】
本発明で用いるポリイミドフィルムと裏打ちフィルムとの間における剥離強度は、0.01N/cm〜1.0N/cmが好ましく、より好ましくは0.01N/cm〜0.75N/cm、さらに好ましくは0.02N/cm〜0.75N/cmである。剥離強度が、0.01N/cmより小さいと、搬送中にポリイミドフィルムと裏打ちフィルムが剥離してしまう恐れがある。一方、剥離強度が1.0N/cmより大きいと、プロセス通過後に裏打ちフィルムを剥離する際にポリイミドフィルムに熱可塑性樹脂が転写したり、皺、歪などの異常が発生する恐れがある。
また、めっき等の加工プロセス通過後の、ポリイミドフィルムと裏打ちフィルムとの間における剥離強度も、前記と同等の理由より、0.01N/cm〜1.0N/cmが好ましく、より好ましくは0.01N/cm〜0.75N/cm、さらに好ましくは0.02N/cm〜0.75N/cmである。
【0049】
本発明で用いる裏打ちフィルムを構成する熱可塑性樹脂層は、各種プロセス中に、圧力、熱が加わるなどにより、ポリイミドフィルム上に糊移りが生じる事が考えられる。この糊移りは少ない事が望ましいが、裏打ちフィルムを剥離した後に、大気圧プラズマ、真空プラズマ、反応性プラズマ、マイクロ波プラズマ等のプラズマ処理や、研磨、研削等の機械的加工、光洗浄により、若干の糊移りが除去可能であれば、ESCAによる観察で全く無いレベルは必要とされない。
【0050】
本発明でポリイミドフィルム面に形成される機能性薄膜層としては、ITO(インジウム・錫系酸化物)などの酸化物薄膜、銅、ニッケル、モリブデン、タングステン、金、銀、クロム、チタニウム、アルミニウムなどの金属薄膜、珪素、ゲルマニウムなどの半導体薄膜や、これらの複合膜や積層膜などが挙げられるが、中でも銅、ニッケル、およびクロムから選ばれた一種以上からなる金属層が好ましく適用できる。
ここで銅を主成分とするとは、銅薄膜中に微量の他元素を含むものや、フィルムと銅薄膜の間にCr、Ta、Ti、Hf、Mo、W、Re、Ni−Cr、SiCr、TiCr、Cu−Mn−NiPd−Ag、Pd−Au−Fe、Cr−SiO、Cr−MgF、Au−SiO、窒化タンタルあるいは部分窒化タンタル、窒化チタンあるいは部分窒化チタンなどを含むものを示す。これらの中で好ましくはNi−Cr、Ni−Co−Cr、より好ましくは純度99.9%以上のスパッタリング用NiCrターゲットを用いたものである。これらの金属やITO、Si、Alなどの酸化物及びこれらの複合酸化物薄膜を下地層として挟んでいるものを含む。中でも、前記NiCr層を下地層(中間層)として、銅層を積層したものが特に好ましい。
【0051】
このようなNiCr中間層の厚さは、大気中、150℃で24時間の加熱処理により銅粒子がポリイミド層内へ実質的に侵入しない(拡散抑制効果)程度の膜厚が最低必要で、5nm〜50nm程度がよい。膜厚が5nmより薄いと、このような条件下で銅粒子がポリイミド層内へ侵入してしまい拡散抑制層としての効果を有さない。一方、膜厚が50nmより厚いと、NiCr中間層の形成に時間を要し、生産効率の面で好ましくない.
【0052】
薄膜形成方法は特に限定されるものではないが、蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング、MBE、プラズマCVD、MOCVDなどの乾式薄膜形成法、エアロゾルデポジッション法、インクジェット印刷によるナノインキ薄膜の形成、めっき、ゾルゲル法、コーティングなどが好ましく適用できる。薄膜の接着性や薄膜の制御性に優れたスパッタリング法が特に用いるに好ましい方法である。スパッタリングの方法において、特に限定される条件はなく、DCマグネトロンスパッタリング、高周波マグネトロンスパッタリング、イオンビームスパッタリング等の方法が有効に用いられる。工業的には直流スパッタリングをすることが簡便であり、十分な膜質を得られる。
【0053】
本発明における薄膜の形態として、ポリイミドフィルムの全面に均一な厚さで積層していることの他に、表面に適度の凹凸がある場合や、機能を発現するためのパターンが形成されている場合も含まれる。
【実施例】
【0054】
以下、実施例および比較例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例によって限定されるものではない。なお、以下の実施例における物性の評価方法は以下の通りである。
【0055】
1.ポリアミド酸の還元粘度(ηsp/C)
ポリマー濃度が0.2g/dlとなるようにN−メチル−2−ピロリドン(又は、N,N−ジメチルアセトアミド)に溶解した溶液をウベローデ型の粘度管により30℃で測定した。
【0056】
2.ポリイミドフィルムの厚さ
測定対象のポリイミドフィルムについて、マイクロメーター(ファインリューフ社製、ミリトロン1245D)を用いて測定した。
【0057】
3.ポリイミドフィルムの引張弾性率、引張破断強度、および引張破断伸度
測定対象のポリイミドフィルムについて、下記条件で引張破壊試験を行い、MD方向について、引張弾性率、引張破断強度、および引張破断伸度を測定した。
装置名 : 島津製作所社製 オートグラフ
サンプル長さ : 100mm
サンプル幅 : 10mm
引貼り速度 : 50mm/min
チャック間距離 : 40mm
【0058】
4.ポリイミドフィルムの線膨張係数(CTE)
測定対象のポリイミドフィルムについて、下記条件にてMD方向およびTD方向の伸縮率を測定し、90〜100℃、100〜110℃、…と10℃の間隔での伸縮率/温度を測定し、この測定を400℃まで行い、100℃から350℃までの全測定値の平均値をCTE(平均値)として算出した。
装置名 : MACサイエンス社製 TMA4000S
サンプル長さ : 10mm
サンプル幅 : 2mm
初荷重 : 34.5g/mm
昇温開始温度 : 25℃
昇温終了温度 : 400℃
昇温速度 : 5℃/min
雰囲気 : アルゴン
【0059】
5.ガラス転移温度
測定対象の熱可塑性樹脂、およびポリイミドフィルムについて、下記条件で粘弾性測定(DMA)を行い、tanδピークの最大値よりガラス転移点を求めた。
装置名 : ユービーエム社製 Rheogel−E4000
冶具 : 伸張冶具
試料長さ : 14mm
試料幅 : 5mm
周波数 : 10Hz
昇温開始温度 : 30℃
昇温速度 : 5℃/min
雰囲気 : 窒素
【0060】
6.5%重量減少温度
測定対象の熱可塑性樹脂、およびポリイミドフィルムについて、下記条件で熱天秤測定(TGA)を行い、150℃における試料の重量を100%とし、その点から試料の重量が5%減る温度を5%重量減少温度とした。
装置名 : MACサイエンス社製 TG−DTA2000S
パン : アルミパン(非気密型)
試料重量 : 10mg
昇温開始温度 : 30℃
昇温速度 : 20℃/min
雰囲気 : 窒素
【0061】
《裏打ちフィルムの評価》剥離強度
ポリイミドフィルム/裏打ちフィルム間の剥離強度は下記条件で90°剥離試験を行うことで求めた。
装置名 : 島津製作所社製 オートグラフAG−IS
サンプル長さ : 100mm
サンプル幅 : 10mm
測定温度 : 25℃
剥離速度 : 50mm/min
雰囲気 : 大気
【0062】
《裏打ちフィルムの評価》粘着層残り(糊移り)
裏打ちフィルムを剥がした後に熱可塑性樹脂層が基材フィルム側に完全に残っているか否かを目視判定し、熱可塑性樹脂層が基材フィルム側に完全に残っているものを○、熱可塑性樹脂層がポリイミドフィルム側と基材フィルム側の双方に存在するものを△、熱可塑性樹脂層がポリイミドフィルム側に完全に移っているものを×とした。
【0063】
《裏打ちフィルムの評価》剥がし状態
裏打ちフィルムを剥がした時にポリイミドフィルムに皺、歪などの異常が起きていないか目視確認判定し、皺、歪などの異常が殆ど見られないものを○、皺、歪などの異常が少し見られるものを△、皺、歪などの異常が多く見られるものを×とした。
【0064】
《裏打ちフィルムの評価》耐熱性
ポリイミドフィルム、熱可塑性樹脂、基材フィルムから成る各積層ポリイミドフィルムにつき、N雰囲気下で350℃1時間、加熱処理を行った。試験後の外観より、剥がれ,膨れ,変色の全く見られないものを○、剥がれ,膨れ,変色が僅か見られるものを△、剥がれ,膨れ,変色が見られるものを×とした。
【0065】
〔製造例1〕
(ポリアミド酸溶液Aの作成)
窒素導入管,温度計,攪拌棒を備えた反応容器内を窒素置換した後、5−アミノ−2−(p−アミノフェニル)ベンゾオキサゾール223質量部、N,N−ジメチルアセトアミド4416質量部を加えて完全に溶解させた後,コロイダルシリカをジメチルアセトアミドに分散してなるスノーテックス(DMAC−ST30、日産化学工業社製)40.5質量部(シリカを8.1質量部含む)、ピロメリット酸二無水物217質量部を加え、25℃の反応温度で24時間攪拌すると、褐色で粘調なポリアミド酸溶液Aが得られた。この還元粘度は3.9dl/gであった。
【0066】
〔製造例2〕
(ポリアミド酸溶液Bの作成)
窒素導入管,温度計,攪拌棒を備えた反応容器内を窒素置換した後、ジアミノジフェニルエーテル200質量部、N−メチル−2−ピロリドン4170質量部を加えて完全に溶解させた後、コロイダルシリカをジメチルアセトアミドに分散してなるスノーテックス(DMAC−ST30、日産化学工業社製)40.5質量部(シリカを8.1質量部含む)、ピロメリット酸二無水物217質量部を加え、25℃の反応温度で5時間攪拌すると、褐色の粘調なポリアミド酸溶液Bが得られた。この還元粘度は3.6dl/gであった。
【0067】
〔製造例3〕
(ポリアミド酸溶液Cの作成)
窒素導入管,温度計,攪拌棒を備えた反応容器内を窒素置換した後、フェニレンジアミン108質量部、N−メチル−2−ピロリドン4010質量部を加えて完全に溶解させた後、コロイダルシリカをジメチルアセトアミドに分散してなるスノーテックス(DMAC−ST30、日産化学工業社製)40.5質量部(シリカを8.1質量部含む)、ジフェニルテトラカルボン酸二無水物292.5質量部を加え、25℃の反応温度で12時間攪拌すると、褐色の粘調なポリアミド酸溶液Cが得られた。この還元粘度は4.3dl/gであった。
【0068】
〔製造例4〕
(ポリアミド酸溶液Dの作成)
窒素導入管、温度計、攪拌棒を備えた反応容器内を窒素置換した後、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン930質量部、N,N−ジメチルアセトアミド15,000質量部を加えて完全に溶解させた後、コロイダルシリカをジメチルアセトアミドに分散してなるスノーテックス(DMAC−ST30、日産化学工業社製)40.5質量部(シリカを8.1質量部含む)、4,4−オキシジフタル酸無水物990質量部を加え、25℃の反応温度で17時間攪拌すると、薄黄色で粘調なポリアミド酸溶液Dが得られた。この還元粘度は3.1dl/gであった。
【0069】
〔製造例5〕
(端部補強用ポリイミドフィルムの作成)
製造例1で得たポリアミド酸溶液Aを使用して、ポリエチレンテレフタレート製フィルム(A−4100、東洋紡績社製)の無滑材面上に、コンマコーターを用いてコーティングし(塗工幅1240mm)、90℃にて60分間乾燥した。乾燥後に自己支持性となったポリアミド酸フィルムを支持体から剥離して両端をカットし、厚さ15μm、幅1200mmのグリーンフィルムを得た。得られたグリーンフィルムを図1、図2に示す装置で、以下括弧内に示す様にピンシートやブラシロール、押さえロール、支え治具の条件でピンテンターにて両端を把持し熱処理を行った。ピンは、ピンシートが並んだ際にピン間隔が一定となるように配置されており、ピン台座からのピン高さは8mm、ピンシート間隔は1140mmであり、ピンシートの長手方向の長さは95mm、幅方向の長さは35mmで、ピンシートの幅方向外側に設定した該台の長手方向の長さは95mm、幅方向の長さは15mmであり、該台の周囲は面取り加工を施した。また、ブラシロールは幅方向に2種類の素材を用いた2層構造を用い、内側にはコーネックス製で素線径φ0.3mmを配置し、外側には素線径φ0.5mmの金属素線を配置した。
(ピンシートの形状は平板形状、押さえロールとフィルム把持開始部との距離は150mm、支え治具はテトラフルオロエチレン製バーを使用、支え治具とフィルム把持開始部との距離は170mm)
テンターの熱処理設定は以下の通りである。第1段が180℃で5分間、昇温速度4℃/秒で昇温して第2段として460℃で5分間の条件で2段階の加熱を施して、生産性を無視して、速度を抑えて、イミド化反応を進行させた。その後、5分間で室温にまで冷却し、ロール状に巻き上げ、厚さ10μmのポリイミドフィルムAを得た。
別途、N,N−ジメチルアセトアミドで10倍に希釈したポリアミド酸溶液Dを作製し、得られたポリイミドフィルムAの一面上に、バーコーターを用いてコーティングした。次いで、90℃にて10分間乾燥し、易接着性ポリイミドフィルムAを得た易接着性層の厚さは、ポリイミドフィルムAの厚さ1に対して0.1である。この得られた易接着性ポリイミドフィルムをスリットし、幅35mmの端部補強用ポリイミドフィルムを得た。
【0070】
〔製造例6〕
(ポリイミドフィルムA1の作成)
製造例1で得たポリアミド酸溶液Aを、ポリエチレンテレフタレート製フィルム(A−4100、東洋紡績社製)の無滑材面上に、コンマコーターを用いてコーティングし(塗工幅1240mm)、90℃にて60分間乾燥した。乾燥後に自己支持性となったポリアミド酸フィルムを支持体から剥離して両端をカットし、幅1200mmのグリーンフィルムを得た。得られたグリーンフィルムに前記幅35mmのポリイミドフィルムDを両側端部に重ね合わせながら、図1、図2に示す装置で、以下括弧内に示す様にピンシートやブラシロール、押さえロール、支え治具の条件でピンテンターにて両端を把持し熱処理を行った。ピンは、ピンシートが並んだ際にピン間隔が一定となるように配置されており、ピン台座からのピン高さは8mm、ピンシート間隔は1140mmであり、ピンシートの長手方向の長さは95mm、幅方向の長さは35mmで、ピンシートの幅方向外側に設定した該台の長手方向の長さは95mm、幅方向の長さは15mmであり、該台の周囲は面取り加工を施した。また、ブラシロールは幅方向に2種類の素材を用いた2層構造を用い、内側にはコーネックス製で素線径φ0.3mmを配置し、外側には素線径φ0.5mmの金属素線を配置した。
(ピンシートの形状は平板形状、押さえロールとフィルム把持開始部との距離は150mm、支え治具はテトラフルオロエチレン製バーを使用、支え治具とフィルム把持開始部との距離は170mm)
テンターの熱処理設定は以下の通りである。第1段が200℃で5分間、昇温速度4℃/秒で昇温して第2段として450℃で5分間の条件で2段階の加熱を施して、イミド化反応を進行させた。またテンター内の最大風速は0.5m/秒であった。
テンターの第1段目の中間地点までは両端のピンの幅を2%縮め初期幅の98%とした。第1段目の後半ではピン幅をやや広げ初期幅の99%とし、昇温区間にて102%まで広げ、第2段目の中間点までさらにピン幅を広げて103%とし、以後は一定幅にて処理した。その後、5分間で室温にまで冷却し、フィルムの両端部の平面性が悪い部分をスリッターにて切り落とし、ロール状に巻き上げ、厚さ5μmの褐色を呈するポリイミドフィルムA1を得た。
得られたポリイミドフィルムA1の評価結果を表1に示す。
【0071】
〔製造例7〜11〕
(ポリイミドフィルムA2〜A6の作成)
塗工厚みを変更する以外は、製造例6と同様の方法でポリイミドフィルムA2〜A6を作成した。
得られたポリイミドフィルムA2〜A6の評価結果を表1に示す。
【0072】
〔製造例12〕
(ポリイミドフィルムBの作成)
ポリアミド酸溶液Aの代わりに製造例2で得られたポリアミド酸溶液Bを用いる以外は、製造例6と同様の方法でポリイミドフィルムBを作成した。
得られたポリイミドフィルムBの評価結果を表2に示す。
【0073】
〔製造例13〕
(ポリイミドフィルムCの作成)
ポリアミド酸溶液Aの代わりに製造例3で得られたポリアミド酸溶液Cを用いる以外は、製造例6と同様の方法でポリイミドフィルムCを作成した。
得られたポリイミドフィルムCの評価結果を表2に示す。
【0074】
【表1】

【0075】
【表2】

【0076】
〔製造例14〕
(ポリアミドイミド溶液Eの作成)
窒素導入管,温度計,攪拌棒を備えた反応容器内を窒素置換した後、トリメリット酸無水物192g、O−トリジンジイソシアネート211g(80モル%)、2,4−トリレンジイソシアネート35g、及びトリエチレンジアミン1gを仕込み、さらにN−メチル−2−ピロリドンを仕込み、120℃で約1時間反応させた後、さらに180℃で5時間攪拌しながら反応させた。次に加熱を止め、冷却しながら、さらにN−メチル−2−ピロリドンを加え希釈して、固形分濃度が20質量%のポリアミドイミド溶液Eを得た。
得られたポリアミドイミド溶液Eのポリマーのガラス転移温度は320℃、5%重量減少温度は485℃であった。また、粘弾性測定の貯蔵弾性率:E’のガラス転移温度以上での減衰より熱可塑性を有することを確認した。
【0077】
〔製造例15〕
(ポリアミドイミド溶液Fの作成)
窒素導入管、温度計、攪拌棒を備えた反応容器内を窒素置換した後、トリメリット酸無水物1モル、ジフェニルメタンジイソシアネート1モル、フッ化カリウム0.01モルを仕込み、さらにN、N−ジメチルアセトアミドを仕込み、90℃で3時間攪拌しながら反応させた。次に加熱を止め、冷却しながら、さらにN、N−ジメチルアセトアミドを加え希釈して、固形分濃度が20質量%のポリアミドイミド溶液Fを得た。
得られたポリアミドイミド溶液Fのポリマーのガラス転移温度は290℃、5%重量減少温度は475℃であった。また、粘弾性測定の貯蔵弾性率:E’のガラス転移温度以上での減衰より熱可塑性を有することを確認した。
【0078】
〔製造例16〕
(ポリイミド溶液Gの作成)
窒素導入管、温度計、攪拌棒を備えた反応容器内を窒素置換した後、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物73.56g、ジアミノポリシロキサン88g、2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン61.58g、及びN−メチル−2−ピロリドン1000gを仕込んだ。60℃で約2時間攪拌させた後、水を除去しながら200℃で3時間攪拌しながら反応させた。反応後、反応液を10リットル水中に添加して、ホモミキサ−を使用して30分間で析出させ、濾過によりポリマー粉末を単離した。このポリマー粉末について5リットルの2−プロパノ−ル中でホモミキサ−を使用して80℃で1時間洗浄を2回行い、120℃で5時間熱風乾燥後、120℃で24時間真空乾燥した後、テトラヒドロフランを加え、固形分濃度が20%のポリイミド溶液Gを得た。
得られたポリイミド溶液Gのポリマーのガラス転移温度は192℃、5%重量減少温度は495℃であった。また、粘弾性測定の貯蔵弾性率:E’のガラス転移温度以上での減衰より熱可塑性を有することを確認した。
【0079】
〔製造例17〕
(ポリイミド溶液Hの調製)
窒素導入管、温度計、攪拌棒を備えた反応容器内を窒素置換した後、4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物63.2g、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン63.57g、分子量が750のビス( 3−アミノプロピル)ポリメチルシロキサン 62.11g、及びキシレン315gを仕込んだ。150℃で約1時間反応させた後、水を除去しながら165℃で18時間攪拌しながら反応させた。反応後、減圧下で残存するキシレンを留去し、N−メチル−2−ピロリドンを加え、固形分濃度が20%のポリイミド溶液Hを得た。
得られたポリイミド溶液Hのポリマーのガラス転移温度は186℃、5%重量減少温度は366℃であった。また、粘弾性測定の貯蔵弾性率:E’のガラス転移温度以上での減衰より熱可塑性を有することを確認した。
【0080】
〔製造例18〕
(シリコーン溶液Iの作成)
窒素導入管、温度計、攪拌棒を備えた反応容器内を窒素置換した後、(CH33SiO1/2単位1.1モルとSiO4/2単位1モルの割合からなり、水酸基を100g当たり0.07モル含有するメチルポリシロキサンレジン50質量部と、末端が水酸基で封鎖された重合度2,000の生ゴム状のジメチルポリシロキサン50質量部、トルエン100質量部、及び28質量%アンモニア水0.5質量を加え、室温で16時間攪拌し、縮合反応を行った。この間、生成する水は共沸により系外に除去した。その後、不揮発分が40質量%になるようにトルエンを加えてシリコーン縮合物を合成した。得られたシリコーン部分縮合物を100質量部と、ビス(4−メチルベンゾイル)パーオキサイド0.5質量部を混合し、シリコーン溶液Iを得た。
得られたシリコーン溶液Iのポリマーのガラス転移温度は190℃、5%重量減少温度は250℃であった。また、粘弾性測定の貯蔵弾性率:E’のガラス転移温度以上での減衰より熱可塑性を有することを確認した。
【0081】
〔製造例19、20〕
(アクリル溶液J、Kの作成)
窒素導入管、温度計、攪拌棒を備えた反応容器内を窒素置換した後、アルキル(メタ)アクリレート系単量体、酢酸エチルを仕込み攪拌しながら還流するまで置換し保持した。次いで2、2’−アゾビスイソブチロニトリルを加え合計8時間反応させた。反応終了後、トルエンを添加して希釈して室温まで冷却し、アクリル系重合体の固形分100%に対して、架橋剤としてヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(スミジュールN−3300、住化バイエル社製)を1.4%(NCO当量/OH当量比が1.2)添加して、固形分濃度が20%のアクリル溶液J、Kを得た。ここで、アルキル(メタ)アクリレート系単量体の組成量、架橋剤量、および評価結果を表3に示す。また、粘弾性測定の貯蔵弾性率:E’のガラス転移温度以上での減衰より熱可塑性を有することを確認した。
【0082】
【表3】

【0083】
〔実施例1〕
ポリアミドイミド溶液Eを固形分濃度が2.5%になるよう希釈した後、ポリイミドフィルムA5の表面に、マイクログラビアコーターを用いてコーティングした。次いで、120℃にて60分間、160℃にて300分間の熱処理を行い、裏打ちフィルムAを得た。得られた裏打ちフィルムAにおけるポリアミドイミド層の厚さは、1.0μmであった。
次いで、ポリイミドフィルムA1の一面と、裏打ちフィルムAのポリアミドイミドE面とを貼り合わせ、300℃、5MPaにて15分間で加熱圧着を行い、裏打ちフィルム付きポリイミドフィルムAを得た。得られた裏打ちフィルム付きポリイミドフィルムAの剥離強度、糊移り、剥がし状態の初期評価結果を表4に示す。
得られた裏打ちフィルム付きポリイミドフィルムAを、ロール・ツー・ロールでのスパッタリング機に入れ、裏打ちフィルム付きポリイミドフィルムAのポリイミドフィルムA1面にプラズマ処理をした後、スパッタリングを実施した。プラズマ処理、スパッタリング条件は、以下のとおりである。まず、酸素のグロー放電でポリイミドフィルムの表面を処理した。処理時の条件はOガス圧2×10−3Torr、流量50SCCM、放電周波数13.56MHz、出力250W、処理時間はフィルム送り速度0.1m/minで有効プラズマ照射幅が10cm程度のため1箇所のプラズマ照射時間が1分間となる。この後、表面処理装置より取り出し、裏打ちフィルム付きポリイミドフィルムAのプラズマ処理が施された面に、NiCr合金をターゲットとしてアルゴンガスによるDCマグネトロンスパッタリング法により厚さ15nmのNiCr下地薄膜層を形成させた。ターゲットのNiCr合金の組成は、Ni80質量%、Cr20質量%純度3Nのものを用いた。薄膜層作成時の真空度は3×10−3Torrである。その後、直ちに銅をターゲットとして、アルゴンガスによるDCマグネトロンスパッタリング法により厚さ250nmの銅薄膜層を形成させた。ターゲットのCuは純度4Nのものを用いた。各ターゲットのフィルム送り方向の幅は12cm、フィルム送り方向の幅は27cmの矩形である。この矩形のターゲットがフィルム送り方向に、4ケ設置されている。ターゲットは2ケずつ接近しているが、NiCrのために使用したターゲットと、Cuのために使用したターゲットの間隔は離れているため、NiCrのスパッタリングされた原子と、Cuの原子が、真空中で混合されてからフィルムに到達することはなく、下地のNiCr薄膜とCu薄膜は交じり合うことなくそれぞれの薄膜が形成され2層の薄膜となる。薄膜の厚さは、NiCr層が20nm、Cu層が200nmであった。
なお、スパッタ装置はロール・ツー・ロール方式の装置であり、巻き出し室、スパッタ室、予備室、巻き取り室へとロールからフィルムが移動されながら、順次、表面処理、NiCr層作成、Cu層作成が行われ、その後に、ロールに巻き取られる。各室の間は、スリットによって概略仕切られており、スパッタ室ではフィルムはチルロールに接しており、チルロールの温度(−5℃)によって冷やされながら、巻きだし側に近い、NiCrタ
ーゲット1ケ、1ケのターゲットを使わず、その後Cuターゲット2ケからの金属粒子によって薄膜が形成される。
次いで、裏打ちフィルム付きポリイミドフィルムAのスパッタリングが施された面にさらにめっきを施した。すなわち、裏打ちフィルムが貼り付けられたままの状態で、スパッタリング面に、硫酸銅めっき浴を用いて、厚さ5μmの厚付け銅めっき層(厚付け層)を形成し、引き続き80℃で1分間乾燥し、目的とする機能性薄膜層が積層された裏打ちフィルム付き機能性薄膜層積層ポリイミドフィルムAを得た。得られた裏打ちフィルム付き機能性薄膜層積層ポリイミドフィルムAの剥離強度、糊移り、剥がし状態のめっき後評価結果を表4に示す。
次いで、最初の裏打ちフィルムを剥がし、ポリイミドフィルムA1に機能性薄膜層が積層された、機能性薄膜層積層ポリイミドフィルムAを得た。
【0084】
〔実施例2〕
ポリアミドイミド溶液Eの代わりに、ポリアミドイミド溶液Fを使用し、加熱圧着の条件を320℃、5MPa、15分間とする以外は実施例1と同様の方法で作成し、評価した。
得られた評価結果を表4に示す。
【0085】
〔実施例3〕
ポリアミドイミド溶液Eの代わりに、ポリイミド溶液Gを使用し、加熱圧着の条件を200℃、5MPa、60分間とする以外は実施例1と同様の方法で作成し、評価した。
得られた評価結果を表4に示す。
【0086】
〔実施例4、5〕
ポリアミドイミド溶液Eの膜厚を1.0μmの代わりに、0.1μm、および5.0μmとする以外は実施例1と同様の方法で作成し、評価した。
得られた評価結果を表4に示す。
【0087】
〔実施例6〜10〕
ポリイミドフィルムA1の代わりに、ポリイミドフィルムA2、A3、A4、B、およびCを使用する以外は実施例1と同様の方法で作成し、評価した。
得られた評価結果を表5に示す。
【0088】
〔実施例11、12〕
基材フィルムとしてポリイミドフィルムA5の代わりに、ポリイミドフィルムA4、およびA6を使用する以外は実施例1と同様の方法で作成し、評価した。
得られた評価結果を表6に示す。
【0089】
〔比較例1、2〕
ポリアミドイミド溶液Eの代わりに、ポリイミド溶液H、およびシリコーン溶液Iを使用し、加熱圧着の条件を200℃、5MPa、60分間とする以外は実施例1と同様の方法で作成し、評価した。得られた評価結果を表7に示す。
ポリイミド溶液H、およびシリコーン溶液Iは耐熱性に乏しく、300℃、1時間のプロセスを通過することができなかった。
【0090】
〔比較例3、4〕
ポリアミドイミド溶液Eの代わりに、アクリル溶液J、およびアクリル溶液Kを使用し、加熱圧着の条件を160℃、5MPa、60分間とする以外は実施例1と同様の方法で作成し、評価した。得られた評価結果を表7に示す。
アクリル溶液J、およびアクリル溶液Kは耐熱性に乏しく、300℃、1時間のプロセスを通過することができなかった。
【0091】
〔比較例5〕
基材フィルムとしてポリイミドフィルムA5の代わりに、ポリエチレンテレフタレート製フィルム(A−4100、東洋紡績社製、ガラス転移温度=80℃、5%重量減少温度=380℃)を使用する以外は実施例1と同様の方法で作成し、評価した。得られた評価結果を表7に示す。
ポリエチレンテレフタレート製フィルムは耐熱性に乏しく、300℃、1時間のプロセスを通過することができなかった。
【0092】
〔比較例6〕
一般的な市販裏打ちフィルムの模倣品として、基材フィルムとしてポリイミドフィルムA5の代わりに、ポリエチレンテレフタレート製フィルム(A−4100、東洋紡績社製、ガラス転移温度=80℃、5%重量減少温度=380℃)を、ポリアミドイミド溶液Eの代わりに、アクリル溶液Jを使用し、加熱圧着の条件を160℃、5MPa、60分間とする以外は実施例1と同様の方法で作成し、評価した。得られた評価結果を表7に示す。
アクリル溶液J、ポリエチレンテレフタレート製フィルムは共に耐熱性に乏しく、300℃、1時間のプロセスを通過することができなかった。
【0093】
〔比較例7、8〕
ポリアミドイミド溶液Eの膜厚を1.0μmの代わりに、0.01μm、25μmとする以外は実施例1と同様の方法で作成し、評価した。得られた評価結果を表8に示す。
ポリアミドイミド溶液Eの膜厚が0.01μmでは接着性が乏しく、300℃、1時間のプロセス通過中に剥離が生じた。一方、25μmでは接着性が強すぎ、プロセス通過後に裏打ちフィルムを剥離する際、ポリイミドフィルムに皺、歪が生じた。また、熱可塑性樹脂の糊移りも見られた。
【0094】
〔比較例9〜11〕
基材フィルムとしてポリイミドフィルムA5の代わりに、ポリイミドフィルムA1〜A3を使用する以外は実施例1と同様の方法で作成し、評価した。得られた評価結果を表8に示す。
これらは、基材フィルムの膜厚が薄すぎ、ハンドリング性向上の効果が見られなかった。
【0095】
【表4】

【0096】
【表5】

【0097】
【表6】

【0098】
【表7】

【0099】
【表8】

【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明の厚さ0.5μm〜12.5μmのポリイミドフィルム、厚さ0.05μm〜10μmの熱可塑性樹脂層、厚さ12.5μm〜200μmの基材フィルムがこの順に積層されてなる積層ポリイミドフィルムにおいて、前記ポリイミドフィルム、熱可塑性樹脂層、および基材フィルムの5%重量減少温度がすべて400℃以上であり、且つポリイミドフィルムと基材フィルム間の剥離強度が0.01N/cm〜1.0N/cmの構成であるため、種々工程で取扱う際に、特に高温での取り扱い時に、剥がれ、皺や歪み、こすれなどの問題発生を低減することが可能である。
さらに基材フィルムを積層ポリイミドフィルムから剥がす時や別の基材と積層する場合には、基材フィルムのついている側とは反対側のポリイミドフィルム面に粘着層又は接着層を形成させて他の裏打ちフィルムや基板と積層すれば、基材フィルムの剥離が容易であり、ポリイミドフィルムの皺や歪みの発生が低減可能になるので、耐熱性、フレキシブル性、機械的強度をより高いレベルで具備する極薄の厚さのポリイミドフィルムを使用した製品の製造が容易に、かつ安定してなすことができる。
このため、耐熱性の要求される分野での、薄いFPCなどの細密かつ軽小短薄が要求される電気電子部品に対応し得る機能性薄膜層積層ポリイミドフィルムとして工業的に極めて有用である。
【符号の説明】
【0101】
1:ブラシロール
2:ピン
3:ピン台座
4:台
5:支え治具
6:押さえロール
7:前駆体フィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚さ0.5μm〜12.5μmのポリイミドフィルム、厚さ0.05μm〜10μmの熱可塑性樹脂層、厚さ12.5μm〜200μmの基材フィルム(以下、熱可塑性樹脂層、基材フィルムの2層フィルムを裏打ちフィルムと呼称する。)がこの順に積層されてなる積層ポリイミドフィルムにおいて、前記ポリイミドフィルム、熱可塑性樹脂層、および基材フィルムの5%重量減少温度がすべて400℃以上であり、且つポリイミドフィルムと基材フィルム間の剥離強度が0.01N/cm〜1.0N/cmであることを特徴とする積層ポリイミドフィルム。
【請求項2】
熱可塑性樹脂層が、ポリアミドイミド、およびポリイミドのいずれかから選ばれた少なくとも一種以上の樹脂から成り、且つ有機溶媒可溶性である請求項1記載の積層ポリイミドフィルム。
【請求項3】
ポリイミドフィルムが、ポリイミドベンゾオキサゾール成分を有するポリイミドフィルムで、かつ線膨張係数が−10ppm/℃〜10ppm/℃である請求項1又は2に記載の積層ポリイミドフィルム。
【請求項4】
基材フィルムが、ポリイミドフィルムである請求項1〜3のいずれかに記載の積層ポリイミドフィルム。
【請求項5】
基材フィルムが、ポリイミドベンゾオキサゾール成分を有するポリイミドフィルムで、かつ線膨張係数が−10ppm/℃〜10ppm/℃である請求項1〜4のいずれかに記載の積層ポリイミドフィルム。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の積層ポリイミドフィルムの、裏打ちフィルムが貼られている面とは反対の面に、厚さ0.01μm〜10μmの機能性薄膜層が積層されていることを特徴とする機能性薄膜層積層ポリイミドフィルム。
【請求項7】
機能性薄膜層が銅、ニッケル、およびクロムから選ばれた一種以上からなる請求項6に記載の機能性薄膜層積層ポリイミドフィルム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−94983(P2010−94983A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−211295(P2009−211295)
【出願日】平成21年9月14日(2009.9.14)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】