説明

積層体及び積層体の製造方法

【課題】樹脂基材と硬化塗膜層、硬化塗膜層と無機物質層の双方の付着性に優れ、しかも耐候性、耐擦傷性に非常に優れた積層体及び積層体の製造方法を提供すること。
【解決手段】樹脂基材に、活性エネルギー線硬化型プライマー組成物による硬化塗膜層(I)、及び無機物質層(II)が順次積層されてなる積層体であって、
該活性エネルギー線硬化型プライマー組成物が、(A)ケイ素原子に直接に結合した有機基を有するシルセスキオキサン化合物であって、該有機基の少なくとも1つが(メタ)アクリロイルオキシ基を有する有機基であるシルセスキオキサン化合物及び、(B)光重合開始剤を含有するものであり、
該無機物質層(II)が乾式成膜工法によって形成されたものであることを特徴とする積層体及び積層体の製造方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂基材と硬化塗膜層、硬化塗膜層と無機物質層の双方の付着性に優れ、しかも耐候性、耐擦傷性に非常に優れた積層体及び積層体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂等のプラスチック材料は、耐衝撃性、透明性に優れ、軽量であり、加工が容易であること等から、ガラスに代わる材料として、建物の採光材、車両の窓、ランプレンズ、計器カバー等に用いられている。しかしながら、プラスチック材料は、ガラスと比較して耐擦傷性、耐薬品性、耐候性等の表面特性に劣ることから、プラスチック材料の表面特性を改良することが行われている。プラスチック材料の表面特性を改良する方法としてポリオルガノシロキサン系、メラミン系等の熱硬化性塗料組成物を塗装する方法や多官能アクリレート系の活性エネルギー線硬化型塗料組成物を塗装する方法が提案されている。
【0003】
近年、プラスチック材料の屋外での用途が広がるに従い、プラスチック材料の表面特性(耐擦傷性、耐候性)のさらなる向上が要求されている。
【0004】
プラスチックの表面特性を改良する方法として、プラスチックの表面上に無機質の保護層を積層させる方法が挙げられる。しかしながら、ポリカーボネートのようなプラスチック材料上に直接二酸化珪素のような無機物質を積層させ、無機質の保護層を形成しても、プラスチック材料との特性の違いから、機械的、又は熱的効果によって生じた応力を受けた際に付着不良やワレ等の性能上の問題が生じる。
【0005】
そこで、本出願人は、特許文献1において、プラスチック板の表面に、クリロイル基及び/又はメタクリロイル基を分子中に少なくとも2個有する化合物及び/又は樹脂、重合性不飽和モノマーからなる組成物を膜形成要素とする活性エネルギー線硬化性プライマー組成物の硬化膜、該硬化膜上に物理蒸着法によって無機物質層が形成されてなる表面改質プラスチック板を提案した。しかしながら、特許文献1に記載の方法では、無機物質層の膜厚が不十分なために、耐擦傷性の点で問題があった。また、樹脂基材と硬化塗膜層、硬化塗膜層と無機物質層の双方の付着性が不十分なために、耐候性の点においても問題があった。
【0006】
また、特許文献2において、プラスチック成形品の表層に、シリコン系コーティング層を形成し、プラズマCVD法によりSiO膜を形成することを特徴とする、表面硬化プラスチック成形品の製造方法が開示されている。しかしながら、該シリコン系コーティング層の形成には80℃で1時間以上の焼付を必要としており、時間がかかる。また、例えば基材がアクリル樹脂成形品である場合には、基材との付着性が良好なため該シリコン系コーティング層を基材表層に直接形成することができる。しかし、基材がポリカーボネート樹脂である場合には、中間にプライマー層の形成が必要となり、より多くの工程がかかるために問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平4−202240号公報
【特許文献2】特開平2−66172号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、樹脂基材と硬化塗膜層、硬化塗膜層と無機物質層の双方の付着性に優れ、しかも耐候性、耐擦傷性に非常に優れた積層体及び積層体の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定のシルセスキオキサン化合物及び、光重合開始剤を含有する活性エネルギー線硬化型プライマー組成物を用いて、硬化塗膜層を積層することにより上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、樹脂基材に、活性エネルギー線硬化型プライマー組成物による硬化塗膜層(I)、及び無機物質層(II)を順次積層してなる積層体であって、該活性エネルギー線硬化型プライマー組成物が、(A)ケイ素原子に直接に結合した有機基を有するシルセスキオキサン化合物であって、該有機基の少なくとも1つが(メタ)アクリロイルオキシ基を有する有機基であるシルセスキオキサン化合物、及び(B)光重合開始剤を含有するものであり、
該無機物質層(II)が乾式成膜工法によって形成されたものであることを特徴とする積層体と積層体の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、特定の活性エネルギー線硬化型プライマー組成物を用いることにより、樹脂基材と硬化塗膜層、硬化塗膜層と無機物質層の双方の付着性に優れ、しかも耐候性に非常に優れた積層体を得ることができる。また、無機物質層が無機物であることから、有機物被膜にない耐候性及び耐擦傷性に優れた積層体を得ることができる。また、該プライマー層に無機物質層を順次積層することにより、該プライマー層と無機物質層の相乗効果により、得られる積層体は、付着性、耐候性、耐水性及び耐擦傷性に非常に優れたものを得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の積層体は、樹脂基材に、活性エネルギー線硬化型プライマー組成物による硬化塗膜層(I)、及び無機物質層(II)を順次積層してなる積層体であって、該活性エネルギー線硬化型プライマー組成物が、(A)ケイ素原子に直接に結合した有機基を有するシルセスキオキサン化合物であって、該有機基の少なくとも1つが(メタ)アクリロイルオキシ基を有する有機基であるシルセスキオキサン化合物、及び(B)光重合開始剤を含有するものであり、該無機物質層(II)が乾式成膜工法によって形成されたものである。
【0013】
また、本発明の積層体の製造方法は、樹脂基材に、上記活性エネルギー線硬化型プライマー組成物を塗布し、活性エネルギー線を照射し硬化塗膜層(I)を形成する工程と、前記硬化塗膜層(I)上に、乾式成膜工法によって無機物質層(II)を少なくとも1層形成する工程と、を有するものである。
以下に説明する。
【0014】
≪樹脂基材≫
本発明の積層体に用いる樹脂基材は特に限定されない。
【0015】
例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂等の樹脂や各種のFRP等のプラスチック材料等が挙げられ、なかでも、ポリカーボネート樹脂が好適である。
【0016】
また、本発明の積層体の用途としては、特に制限されず、例えば、乗用車、トラック、オートバイ、バス等の自動車車体の外板部;自動車部品;携帯電話、オーディオ機器等の家庭電気製品の外板部等が挙げられ、なかでも、自動車車体の外板部及び自動車部品が好ましい。
【0017】
≪硬化塗膜層(I)≫
本発明の硬化塗膜層(I)は、樹脂基材に、(A)ケイ素原子に直接に結合した有機基を有するシルセスキオキサン化合物であって、該有機基の少なくとも1つが(メタ)アクリロイルオキシ基を有する有機基であるシルセスキオキサン化合物、及び(B)光重合開始剤を含有する活性エネルギー線硬化型プライマー組成物を塗布し、活性エネルギー線を照射することによって形成されるものである。以下にさらに詳しく説明する。
【0018】
≪(A)成分であるシルセスキオキサン化合物≫
「シルセスキオキサン化合物」とは、基本構成単位がT単位であるポリシロキサン化合物である。
【0019】
本明細書において「シルセスキオキサン化合物」は、Si−OH基(ヒドロキシシリル基)の全てが加水分解縮合した構造のシルセスキオキサン化合物のみを意味するのではなく、Si−OH基が残存したラダー構造、不完全籠型構造、ランダム縮合体のシルセスキオキサン化合物をも含むことができる。
【0020】
(A)成分であるシルセスキオキサン化合物は、Si−OH基の全てが加水分解縮合した構造のシルセスキオキサン化合物の割合が、(A)成分であるシルセスキオキサン化合物中に80質量%以上、好ましくは90質量%以上、より好ましくは100質量%であることが液安定性の点から好ましい。
【0021】
(A)成分であるシルセスキオキサン化合物は、ケイ素原子に直接に結合した有機基を有するシルセスキオキサン化合物であって、該有機基の少なくとも1つが(メタ)アクリロイルオキシ基を有するシルセスキオキサン化合物である。
【0022】
(A)成分であるシルセスキオキサン化合物は、該有機基を有することにより後述する反応性粒子(fa)やさまざまな重合性不飽和化合物との相溶性に優れ、かつ光重合開始剤の存在下での活性エネルギー線照射により硬化する。そのため、活性エネルギー線硬化型プライマー組成物により得られる硬化塗膜は透明性及び付着性に優れる。
【0023】
また、さらに、ケイ素原子に直接に結合した有機基を有し、該有機基の少なくとも1つが、2級水酸基、ウレタン結合及びウレア結合よりなる群から選ばれる少なくとも1つと少なくとも1つの(メタ)アクリロイルオキシ基との両者を有するシルセスキオキサン(a)を好適に使用できる。(A)成分であるシルセスキオキサン化合物が上記シルセスキオキサン化合物(a)であると、後述する反応性粒子(fa)やさまざまな重合性不飽和化合物との相溶性により優れるのは、該シルセスキオキサン化合物が2級水酸基、ウレタン結合及びウレア結合よりなる群から選ばれる少なくとも1つ官能基又は結合によって極性を調節することができるためと推測される。
【0024】
シルセスキオキサン化合物(a)としては、例えば、以下の(A1)、(A2)で表されるシルセスキオキサン化合物が挙げられる。
(A1):ケイ素原子に直接に結合した有機基を有するシルセスキオキサン化合物であって、該有機基の少なくとも1つが、少なくとも1つの2級水酸基と少なくとも1つの(メタ)アクリロイルオキシ基との両者を有する有機基であるシルセスキオキサン化合物[以下、「(A1)で表されるシルセスキオキサン化合物」と略すことがある。]。
(A2):ケイ素原子に直接に結合した有機基を有するシルセスキオキサン化合物であって、該有機基の少なくとも1つが、少なくとも1つのウレタン結合及び/又はウレア結合と少なくとも1つの(メタ)アクリロイルオキシ基との両者を有する有機基であるシルセスキオキサン化合物[以下、「(A2)で表されるシルセスキオキサン化合物」と略すことがある。]。
【0025】
(A)成分であるシルセスキオキサン化合物としては、(A2)で表されるシルセスキオキサン化合物が特に好ましい。(A2)で表されるシルセスキオキサン化合物は後述する反応性粒子(fa)及びさまざまな重合性不飽和化合物との相溶性が特に優れることから、(A2)で表されるシルセスキオキサン化合物を用いた活性エネルギー線硬化型プライマー組成物により得られる硬化塗膜層は透明性が特に優れ、また耐水性に優れる。
【0026】
(A2)で表されるシルセスキオキサン化合物としては、具体的には、下記(A21)〜(A23)で表されるシルセスキオキサン化合物が挙げられる。
(A21):ケイ素原子に直接に結合した有機基を有するシルセスキオキサン化合物であって、該有機基の少なくとも1つが、少なくとも1つのウレタン結合と1つの(メタ)アクリロイルオキシ基との両者を有する有機基であるシルセスキオキサン化合物[以下、「(A21)で表されるシルセスキオキサン化合物」と略すことがある。]。
(A22):ケイ素原子に直接に結合した有機基を有するシルセスキオキサン化合物であって、該有機基の少なくとも1つが、少なくとも1つのウレア結合と1つの(メタ)アクリロイルオキシ基との両者を有する有機基であるシルセスキオキサン化合物[以下、「(A22)で表されるシルセスキオキサン化合物」と略すことがある。]。
(A23):ケイ素原子に直接に結合した有機基を有するシルセスキオキサン化合物であって、該有機基の少なくとも1つが、少なくとも1つのウレタン結合及び/又はウレア結合と2つ以上の(メタ)アクリロイルオキシ基との両者を有する有機基であるシルセスキオキサン化合物[以下、「(A23)で表されるシルセスキオキサン化合物」と略すことがある。]。
【0027】
続いて、前記(A1)で表されるシルセスキオキサン化合物、(A21)で表されるシルセスキオキサン化合物、(A22)で表されるシルセスキオキサン化合物及び(A23)で表されるシルセスキオキサン化合物について詳細に説明する。
【0028】
まず、(A1)で表されるシルセスキオキサン化合物について説明する。前記(A1)で表されるシルセスキオキサン化合物は、ケイ素原子に直接に結合した有機基を有する。そして、該有機基の少なくとも1つは、少なくとも1つの2級水酸基と少なくとも1つの(メタ)アクリロイルオキシ基との両者を有する有機基である。
【0029】
少なくとも1つの2級水酸基と少なくとも1つの(メタ)アクリロイルオキシ基との両者を有する有機基としては、例えば、下記一般式(A1−I)で表される有機基及び下記一般式(A1−II)で表される有機基が挙げられる。
【0030】
【化1】

【0031】
[式(A1−I)中、Rは水素原子又はメチル基を示す。Rは炭素数1〜10の2価の炭化水素基を示す。式(A1−II)中、R及びRは前記と同じである。]。
【0032】
前記Rとしては、炭素数1〜10の2価の炭化水素基であれば特に限定されるものではない。具体的には例えば、メチレン基、エチレン基、1,2−プロピレン基、1,3−プロピレン基、1,2−ブチレン基、1,4−ブチレン基、へキシレン基、デカニレン基等のアルキレン基;シクロヘキシレン基等のシクロアルキレン基;フェニレン基、キシリレン基等のアリーレン基等が挙げられる。なかでも、炭素数1〜6(より好ましくは炭素数1〜3)の2価の炭化水素基、特にエチレン基、1,3−プロピレン基であることが、耐候性及び極性の高い重合性不飽和化合物との相溶性がより優れる点から好ましい。
【0033】
前記一般式(A1−I)で表される有機基としては、耐候性、極性の高い重合性不飽和化合物との相溶性及び光重合開始剤存在下での活性エネルギー線硬化性がより優れる点から、Rが水素原子であり、かつRが1,3−プロピレン基である有機基が好ましい。
【0034】
前記一般式(A1−II)で表される有機基としては、耐候性、極性の高い重合性不飽和化合物との相溶性及び光重合開始剤存在下での活性エネルギー線硬化性がより優れる点から、Rが水素原子であり、かつRがエチレン基である有機基が好ましい。
【0035】
次に、(A21)で表されるシルセスキオキサン化合物について説明する。前記(A21)で表されるシルセスキオキサン化合物は、ケイ素原子に直接に結合した有機基を有する。そして、該有機基の少なくとも1つは、少なくとも1つのウレタン結合と1つの(メタ)アクリロイルオキシ基との両者を有する有機基である。
【0036】
少なくとも1つのウレタン結合と1つの(メタ)アクリロイルオキシ基との両者を有する有機基としては、例えば、下記一般式(A21−I)で表される有機基等が挙げられる。
【0037】
【化2】

【0038】
[式(A21−I)中、Rは水素原子又はメチル基を示す。Rは炭素数1〜10の2価の炭化水素基を示す。Rは炭素数1〜10の2価の炭化水素基を示す。X
【0039】
【化3】

【0040】
(式中、Rは前記と同じである。mは0〜9の整数を示す。)、
【0041】
【化4】

【0042】
(式中、Rは置換又は非置換の、炭素数1〜6の1価の炭化水素基を示す。)又は
【0043】
【化5】

【0044】
(式中、Rは前記と同じである。)を示す。]。
【0045】
ここで、(A21)で表されるシルセスキオキサン化合物としては、上記一般式(A21−I)で表される有機基のうち、一種類を有していても、複数種類の有機基を有していてもよい。
【0046】
いいかえると、(A21)で表されるシルセスキオキサン化合物としては、例えば、前記少なくとも1つのウレタン結合と1つの(メタ)アクリロイルオキシ基との両者を有する有機基が、下記一般式(A21−II)〜(A21−IV)で表される有機基のいずれかを有するシルセスキオキサン化合物等を例示することができる。
【0047】
【化6】

【0048】
[式(A21−II)中、Rは水素原子又はメチル基を示す。Rは炭素数1〜10の2価の炭化水素基を示す。Rは炭素数1〜10の2価の炭化水素基を示す。mは0〜9の整数を示す。]
【0049】
【化7】

【0050】
[式(A21−III)中、R、R、R及びRは前記と同じである。]
【0051】
【化8】

【0052】
[式(A21−IV)中、R、R、R及びRは前記と同じである。]。
【0053】
前記Rとしては、炭素数1〜10の2価の炭化水素基であれば特に限定されるものではない。具体的には例えば、メチレン基、エチレン基、1,2−プロピレン基、1,3−プロピレン基、1,2−ブチレン基、1,4−ブチレン基、へキシレン基、デカニレン基等のアルキレン基;シクロヘキシレン基等のシクロアルキレン基;フェニレン基、キシリレン基等のアリーレン基等が挙げられる。なかでも、炭素数1〜6の2価の炭化水素基、特にエチレン基、1,2−プロピレン基、1,4−ブチレン基であることが、耐候性及び極性の高い重合性不飽和化合物との相溶性がより優れる点から好ましい。
【0054】
前記Rとしては、炭素数1〜10の2価の炭化水素基であれば特に限定されるものではない。具体的には例えば、メチレン基、エチレン基、1,2−プロピレン基、1,3−プロピレン基、1,2−ブチレン基、1,4−ブチレン基、へキシレン基、デカニレン基等のアルキレン基;シクロヘキシレン基等のシクロアルキレン基;フェニレン基、キシリレン基等のアリーレン基等が挙げられる。なかでも、炭素数1〜6(より好ましくは炭素数1〜3)の2価の炭化水素基、特にエチレン基、1,3−プロピレン基であることが、耐候性及び極性の高い重合性不飽和化合物との相溶性がより優れる点から好ましい。
【0055】
前記mとしては、0〜9の整数であれば特に限定されるものではない。mとしては、好ましくは0〜5の整数、さらに好ましくは0〜3の整数、特に好ましくは0又は1である。
【0056】
前記Rとしては、置換又は非置換の、炭素数1〜6の1価の炭化水素基であれば特に限定されるものではない。具体的には例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、sec−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、シクロヘキシル基等の直鎖状又は分岐状のアルキル基といった非環状脂肪族1価炭化水素基又は環状脂肪族1価炭化水素基;トリフルオロメチル基、3,3,3−トリフルオロ−n−プロピル基等の含フッ素アルキル基等が挙げられる。特に、極性の高い重合性不飽和化合物との相溶性がより優れる点からメチル基が好ましい。
【0057】
前記一般式(A21−II)で表される有機基としては、耐候性、極性の高い重合性不飽和化合物との相溶性及び光重合開始剤存在下での活性エネルギー線硬化性がより優れる点から、Rが水素原子であり、Rがエチレン基又は1,4−ブチレン基であり、Rがエチレン基又は1,3−プロピレン基であり、かつmが0である有機基が好ましい。
【0058】
前記一般式(A21−III)で表される有機基としては、耐候性、極性の高い重合性不飽和化合物との相溶性及び光重合開始剤存在下での活性エネルギー線硬化性がより優れる点から、Rが水素原子であり、Rがエチレン基であり、Rがエチレン基又は1,3−プロピレン基であり、かつRがメチル基である有機基が好ましい。
【0059】
前記一般式(A21−IV)で表される有機基としては、耐候性、極性の高い重合性不飽和化合物との相溶性及び光重合開始剤存在下での活性エネルギー線硬化性がより優れる点から、Rが水素原子であり、Rがエチレン基であり、Rがエチレン基又は1,3−プロピレン基であり、かつRがメチル基である有機基が好ましい。
【0060】
次に、(A22)で表されるシルセスキオキサン化合物について説明する。前記(A22)で表されるシルセスキオキサン化合物は、ケイ素原子に直接に結合した有機基を有する。そして、該有機基の少なくとも1つは、少なくとも1つのウレア結合と1つの(メタ)アクリロイルオキシ基との両者を有する有機基である。
【0061】
少なくとも1つのウレア結合と1つの(メタ)アクリロイルオキシ基との両者を有する有機基としては、例えば、下記一般式(A22−I)
【0062】
【化9】

【0063】
[式(A22−I)中、Rは水素原子又はメチル基を示す。Xはウレア結合を有する2価の有機基を示す。]で表される有機基が挙げられる。
【0064】
前記一般式(A22−I)で表される有機基としては、具体的には例えば、下記一般式(A22−II)で表される有機基が挙げられる。
【0065】
【化10】

【0066】
{式(A22−II)中、Rは前記と同じである。Rは炭素数1〜10の2価の炭化水素基又は下記一般式(A22−III)
【0067】
【化11】

【0068】
[式(A22−III)中、R10は炭素数2〜4の2価の炭化水素基を示す。R11はジイソシアネート残基を示す。]で表される2価の基を示し、Rは炭素数1〜10の2価の炭化水素基を示す。}。
【0069】
前記Rとしては、炭素数1〜10の2価の炭化水素基又は前記一般式(A22−III)で表される2価の基であれば特に限定されるものではない。炭素数1〜10の2価の炭化水素基としては、具体的には例えば、メチレン基、エチレン基、1,2−プロピレン基、1,3−プロピレン基、1,2−ブチレン基、1,4−ブチレン基、へキシレン基、デカニレン基等のアルキレン基;シクロヘキシレン基等のシクロアルキレン基;フェニレン基、キシリレン基等のアリーレン基等が挙げられる。なかでも、炭素数1〜6(より好ましくは炭素数1〜3)の2価の炭化水素基、特にエチレン基、1,3−プロピレン基であることが、耐候性及び極性の高い重合性不飽和化合物との相溶性がより優れる点から好ましい。
【0070】
前記Rとしては、炭素数1〜10の2価の炭化水素基であれば特に限定されるものではない。具体的には例えば、メチレン基、エチレン基、1,2−プロピレン基、1,3−プロピレン基、1,2−ブチレン基、1,4−ブチレン基、へキシレン基、デカニレン基等のアルキレン基;シクロヘキシレン基等のシクロアルキレン基;フェニレン基、キシリレン基等のアリーレン基等が挙げられる。なかでも、炭素数1〜6(より好ましくは炭素数1〜3)の2価の炭化水素基、特にエチレン基、1,3−プロピレン基であることが、耐候性及び極性の高い重合性不飽和化合物との相溶性がより優れる点から好ましい。
【0071】
前記R10としては、炭素数2〜4の2価の炭化水素基であれば特に限定されるものではない。具体的には例えば、エチレン基、1,2−プロピレン基、1,3−プロピレン基、1,2−ブチレン基、1,4−ブチレン基等が挙げられる。
【0072】
前記R11は、ジイソシアネート残基を示す。ジイソシアネート残基とは、ジイソシアネート化合物から2つのイソシアネート基(NCO)を除いた残りの部分である。ジイソシアネート化合物としては、具体的には例えば、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、1−クロロ−2,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4´−ジイソシアネート、3,3´−ジメチル−4,4´−ビフェニレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート化合物;エタンジイソシアネート、プロパンジイソシアネート、ブタンジイソシアネート、ペンタンジイソシアネート、ヘキサンジイソシアネート、ヘプタンジイソシアネート、オクタンジイソシアネート、ノナンジイソシアネート、デカンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート化合物等が挙げられる。また、ジイソシアネート化合物としては、耐候性、光重合開始剤存在下での活性エネルギー線硬化性がより優れる点から分子量300以下のジイソシアネート化合物が好ましい。なかでも、脂肪族ジイソシアネート化合物、特にイソホロンジイソシアネートが耐候性に優れる点から好ましい。
【0073】
前記一般式(A22−II)で表される有機基としては、耐候性、極性の高い重合性不飽和化合物との相溶性及び光重合開始剤存在下での活性エネルギー線硬化性がより優れる点から、Rが水素原子であり、Rがエチレン基であり、Rがエチレン基若しくは1,3−プロピレン基である有機基が好ましい。また、Rが水素原子であり、Rが前記一般式(A22−III)で表される2価の基であってかつR10がエチレン基でありR11がイソホロンジイソシアネート残基である2価の基であり、Rがエチレン基若しくは1,3−プロピレン基である有機基が好ましい。
【0074】
次に、(A23)で表されるシルセスキオキサン化合物について説明する。前記(A23)で表されるシルセスキオキサン化合物は、ケイ素原子に直接に結合した有機基を有する。そして、該有機基の少なくとも1つは、少なくとも1つのウレタン結合及び/又はウレア結合と2つ以上の(メタ)アクリロイルオキシ基との両者を有する有機基である。
【0075】
少なくとも1つのウレタン結合及び/又はウレア結合と2つ以上の(メタ)アクリロイルオキシ基との両者を有する有機基としては、例えば、下記一般式(A23−I)
【0076】
【化12】

【0077】
[式(A23−I)中、R12は水素原子又はメチル基を示す。nは2〜5の整数を示す。Xはウレタン結合及び/又はウレア結合を有する(n+1)価の有機基を示す。]で表される有機基が挙げられる。
【0078】
前記一般式(A23−I)で表される有機基としては、具体的には例えば、下記一般式(A23−II)〜一般式(A23−V)で表される有機基が挙げられる。
【0079】
【化13】

【0080】
{式(A23−II)中、R12は前記と同じであり、R12はそれぞれ同一でも又は異なっていてもよい。R13は炭素数1〜10の2価の炭化水素基を示す。R14は炭素数1〜10の2価の炭化水素基又は下記一般式(A23−VI)
【0081】
【化14】

【0082】
[式(A23−VI)中、R16は炭素数2〜4の2価の炭化水素基を示し、R17はジイソシアネート残基を示す。]で表される2価の基を示す。式(A23−III)中、R12は前記と同じであり、R12はそれぞれ同一でも又は異なっていてもよい。R13は前記と同じである。R14は前記と同じである。式(A23−IV)中、R12は前記と同じであり、R12はそれぞれ同一でも又は異なっていてもよい。R13は前記と同じである。R14は前記と同じであり、R14はそれぞれ同一でも又は異なっていてもよい。式(A23−V)中、pは1〜3の整数を示す。R12は前記と同じであり、R12はそれぞれ同一でも又は異なっていてもよい。R13は前記と同じである。R14は前記と同じであり、R14はそれぞれ同一でも又は異なっていてもよい。R15は炭素数1〜10の(p+1)価の炭化水素基を示す。}。
【0083】
前記R13は、炭素数1〜10の2価の炭化水素基であれば特に限定されるものではない。具体的には例えば、メチレン基、エチレン基、1,2−プロピレン基、1,3−プロピレン基、1,2−ブチレン基、1,4−ブチレン基、へキシレン基、デカニレン基等のアルキレン基;シクロヘキシレン基等のシクロアルキレン基;フェニレン基、キシリレン基等のアリーレン基等が挙げられる。なかでも、炭素数1〜6(より好ましくは炭素数1〜3)の2価の炭化水素基、特にエチレン基、1,3−プロピレン基であることが、耐候性及び極性の高い重合性不飽和化合物との相溶性がより優れる点から好ましい。
【0084】
前記R14は、炭素数1〜10の2価の炭化水素基又は前記一般式(A23−VI)で表される2価の基であれば特に限定されるものではない。炭素数1〜10の2価の炭化水素基としては、具体的には例えば、メチレン基、エチレン基、1,2−プロピレン基、1,3−プロピレン基、1,2−ブチレン基、1,4−ブチレン基、へキシレン基、デカニレン基等のアルキレン基;シクロヘキシレン基等のシクロアルキレン基;フェニレン基、キシリレン基等のアリーレン基等が挙げられる。なかでも、炭素数1〜6(より好ましくは炭素数1〜3)の2価の炭化水素基、特にエチレン基、1,3−プロピレン基であることが、耐候性及び極性の高い重合性不飽和化合物との相溶性がより優れる点から好ましい。
【0085】
前記R16としては、炭素数2〜4の2価の炭化水素基であれば特に限定されるものではない。具体的には例えば、エチレン基、1,2−プロピレン基、1,3−プロピレン基、1,2−ブチレン基、1,4−ブチレン基等が挙げられる。
【0086】
前記R17は、ジイソシアネート残基を示す。ジイソシアネート残基とは、ジイソシアネート化合物から2つのイソシアネート基(NCO)を除いた残りの部分である。ジイソシアネート化合物としては、具体的には例えば、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、1−クロロ−2,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4´−ジイソシアネート、3,3´−ジメチル−4,4´−ビフェニレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート化合物;エタンジイソシアネート、プロパンジイソシアネート、ブタンジイソシアネート、ペンタンジイソシアネート、ヘキサンジイソシアネート、ヘプタンジイソシアネート、オクタンジイソシアネート、ノナンジイソシアネート、デカンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート化合物等が挙げられる。また、ジイソシアネート化合物としては、耐候性、活性エネルギー線硬化性がより優れる点から分子量300以下のジイソシアネート化合物が好ましい。
なかでも、脂肪族ジイソシアネート化合物、特にイソホロンジイソシアネートが耐候性に優れる点から好ましい。
【0087】
前記R15は、炭素数1〜10の(p+1)価の炭化水素基であれば特に限定されるものではない。R15における(p+1)価の炭化水素基は、ヒドロキシモノカルボン酸残基である。ヒドロキシモノカルボン酸残基とは、ヒドロキシモノカルボン酸からヒドロキシル基とカルボキシル基を除いた残りの部分である。具体的には例えば、2価の炭化水素基としては、メチレン基、エチレン基、1,2−プロピレン基、1,3−プロピレン基、1,2−ブチレン基、1,4−ブチレン基、へキシレン基、デカニレン基等のアルキレン基;シクロヘキシレン基等のシクロアルキレン基;フェニレン基、キシリレン基等のアリーレン基等が挙げられる。ヒドロキシモノカルボン酸としては、具体的には例えば、ヒドロキシピバリン酸、グリコール酸、乳酸、3−ヒドロキシプロピオン酸、2−ヒドロキシ酪酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、2−ヒドロキシイソ酪酸、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸、3−ヒドロキシ吉草酸、5−ヒドロキシ吉草酸、2−ヒドロキシシクロヘキサンカルボン酸、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、o−ヒドロキシ安息香酸、m−ヒドロキシ安息香酸、p−ヒドロキシ安息香酸等が挙げられる。なかでも、耐候性、活性エネルギー線硬化性がより優れる点からジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸が好ましい。
【0088】
前記一般式(A23−II)で表される有機基としては、耐候性、極性の高い重合性不飽和化合物との相溶性及び光重合開始剤存在下での活性エネルギー線硬化性がより優れる点から、R12が水素原子であり、R13がエチレン基若しくは1,3−プロピレン基であり、R14がエチレン基である有機基が好ましい。また、R12が水素原子であり、R13がエチレン基若しくは1,3−プロピレン基であり、R14が前記一般式(A23−VI)で表される2価の基であってかつR16がエチレン基でありR17がイソホロンジイソシアネート残基である2価の基である有機基が好ましい。
【0089】
前記一般式(A23−III)で表される有機基としては、耐候性、極性の高い重合性不飽和化合物との相溶性及び光重合開始剤存在下での活性エネルギー線硬化性がより優れる点から、R12が水素原子であり、R13がエチレン基若しくは1,3−プロピレン基であり、R14がエチレン基である有機基が好ましい。また、R12が水素原子であり、R13がエチレン基若しくは1,3−プロピレン基であり、R14が前記一般式(A23−VI)で表される2価の基であってかつR16がエチレン基でありR17がイソホロンジイソシアネート残基である2価の基である有機基が好ましい。
【0090】
前記一般式(A23−IV)で表される有機基としては、耐候性、極性の高い重合性不飽和化合物との相溶性及び光重合開始剤存在下での活性エネルギー線硬化性がより優れる点から、R12が水素原子であり、R13がエチレン基若しくは1,3−プロピレン基であり、R14がエチレン基である有機基が好ましい。また、R12が水素原子であり、R13がエチレン基若しくは1,3−プロピレン基であり、R14が前記一般式(A23−VI)で表される2価の基であってかつR16がエチレン基でありR17がイソホロンジイソシアネート残基である2価の基である有機基が好ましい。
【0091】
前記一般式(A23−V)で表される有機基としては、耐候性、極性の高い重合性不飽和化合物との相溶性及び光重合開始剤存在下での活性エネルギー線硬化性がより優れる点から、pが2であり、R12が水素原子であり、R13がエチレン基若しくは1,3−プロピレン基であり、R14がエチレン基であり、R15がジメチロールプロピオン酸残基である有機基が好ましい。また、pが2であり、R12が水素原子であり、R13がエチレン基若しくは1,3−プロピレン基であり、R14が前記一般式(A23−VI)で表される2価の基であってかつR16がエチレン基でありR17がイソホロンジイソシアネート残基である2価の基であり、R15がジメチロールプロピオン酸残基である有機基が好ましい。
【0092】
前記(A)成分であるシルセスキオキサン化合物は、単一の組成の化合物であってもよく、又は組成の異なる化合物の混合物であってもよい。
【0093】
前記(A)成分であるシルセスキオキサン化合物の重量平均分子量は、特に限定されるものではない。好ましくは重量平均分子量が1,000〜100,000、より好ましくは重量平均分子量が1,000〜10,000である。これら範囲は、活性エネルギー線硬化型プライマー組成物の粘度及び塗装性の点で意義がある。
【0094】
本明細書において、重量平均分子量は、光散乱法により測定した重量平均分子量である。光散乱法による重量平均分子量の測定には、Zetasizer Nano Nano−ZS(Malvern Instruments Ltd.社製)を用いた。測定に用いた試料は、プロピレングリコールモノメチルエーテルに(A)成分であるシルセスキオキサン化合物を溶解させ、濃度を0.5〜5.0質量%に調整した濃度の異なる10種の試料である。この10種の試料の光散乱強度を測定することにより、重量平均分子量を求めた。
【0095】
(A)成分であるシルセスキオキサン化合物の製造方法
(A)成分であるシルセスキオキサン化合物は、種々の方法により製造され得る。その一例を以下に示す。
【0096】
製造方法a
製造方法aとしては、ケイ素原子に直接に結合した有機基であり、かつ2級水酸基、ウレタン結合及びウレア結合よりなる群から選ばれる少なくとも1つと少なくとも1つの(メタ)アクリロイルオキシ基との両者を有する有機基である加水分解性シランを含有する出発物質を用いた製造方法が挙げられる。
【0097】
製造方法b
製造方法bとしては、エポキシ基、アミノ基、イソシアネート基等の官能基を有する加水分解性シランを用いて、官能基を有するシルセスキオキサン化合物を製造する工程、該工程により得られたシルセスキオキサン化合物と、(メタ)アクリロイル基及び官能基を有する化合物とを反応させ、所望の有機基を有するシルセスキオキサン化合物を製造する工程を有する製造方法が挙げられる。
【0098】
また製造方法bの他の一例としては、エポキシ基、アミノ基、イソシアネート基等の官能基を有する加水分解性シランを用いて、官能基を有するシルセスキオキサン化合物を製造する工程、該工程により得られたシルセスキオキサン化合物と、官能基を有する化合物とを反応させ、新たな官能基を生成する工程、該工程により新たに生成した官能基と、(メタ)アクリロイル基及び官能基を有する化合物の官能基とを反応させ、所望の有機基を有するシルセスキオキサン化合物を製造する工程を有する製造方法が挙げられる。
【0099】
これら製造方法について、具体例を示して詳細に説明する。
【0100】
まず、(A)成分であるシルセスキオキサン化合物であって、ケイ素原子に直接に結合した有機基の少なくとも1つが下記一般式(A1−I)で表される有機基を有するシルセスキオキサン化合物[以下、「一般式(A1−I)で表される有機基を有するシルセスキオキサン化合物」と略すことがある。]の製造方法を例示する。
【0101】
【化15】

【0102】
[式(A1−I)中、R及びRは前記と同じである。]。
【0103】
以下の製造方法は、前記製造方法bに該当する。この製造方法では、出発物質に下記一般式(A1−I−1)
【0104】
【化16】

【0105】
[式(A1−I−1)中、Rは前記と同じである。Yは塩素又は炭素数1〜6のアルコキシ基であり、Yは同一でも又は異なっていてもよい。]で表される加水分解性シランを用いて、触媒の存在下で加水分解縮合を行うことにより下記一般式(A1−I−2)
【0106】
【化17】

【0107】
[式(A1−I−2)中、Rは前記と同じである。]で表される有機基を有するシルセスキオキサン化合物を製造する。
【0108】
前記一般式(A1−I−1)のYとしては、具体的には、塩素、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等が挙げられる。
【0109】
前記一般式(A1−I−1)で表される加水分解性シランとしては、具体的には例えば、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0110】
前記一般式(A1−I−2)で表される有機基を有するシルセスキオキサン化合物を得るためには、具体的には、
[1]前記一般式(A1−I−1)で表される加水分解性シランを出発物質に用いて触媒の存在下で加水分解縮合する、又は、
[2]前記一般式(A1−I−1)で表される加水分解性シラン、及びエポキシ基を有する加水分解性シラン以外の加水分解性シランを出発物質に用いて触媒の存在下で加水分解縮合する、
ことが挙げられる。
【0111】
前記エポキシ基を有する加水分解性シラン以外の加水分解性シランとしては、前記一般式(A1−I−1)で表される加水分解性シランとともに加水分解縮合することによりシルセスキオキサン化合物を製造できるものであれば特に限定されるものではない。具体的には例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン等のアルキルトリアルコキシシラン;3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン等の3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリアルコキシシラン;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のビニルトリアルコキシシラン等が挙げられる。
【0112】
前記触媒としては、塩基性触媒が好適に用いられる。塩基性触媒としては、具体的には例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化セシウム等のアルカリ金属水酸化物、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド等の水酸化アンモニウム塩、テトラブチルアンモニウムフルオリド等のフッ化アンモニウム塩等が挙げられる。
【0113】
前記触媒の使用量は特に限定されるものではないが、多すぎるとコスト高、除去が困難等の問題があり、一方、少なすぎると反応が遅くなってしまう。そのため、触媒の使用量は、好ましくは加水分解性シラン1モルに対して0.0001〜1.0モル、より好ましくは0.0005〜0.1モルの範囲である。
【0114】
加水分解縮合する場合(前記[1]又は[2]の場合)は水を使用する。加水分解性シランと水との量比は、特に限定されるものでない。水の使用量は、加水分解性シラン1モルに対し、好ましくは水0.1〜100モル、さらに好ましくは0.5〜3モルの割合である。水の量が少なすぎると、反応が遅くなり、目的とするシルセスキオキサンの収率が低くなるおそれがあり、水の量が多すぎると高分子量化し、所望とする構造の生成物が減少するおそれがある。また、使用する水は塩基性触媒を水溶液として用いる場合はその水で代用してもよいし、別途水を加えてもよい。
【0115】
前記加水分解縮合において、有機溶媒は使用してもよく、又は使用しなくてもよい。有機溶媒を用いることは、ゲル化を防止する点及び製造時の粘度を調節できる点から好ましい。有機溶媒としては、極性有機溶媒、非極性有機溶媒を単独又は混合物として用いることができる。
【0116】
極性有機溶媒としてはメタノール、エタノール、2−プロパノール等の低級アルコール類、アセトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、テトラヒドロフラン等のエーテル類が用いられるが、特にアセトン、テトラヒドロフランは沸点が低く系が均一になり反応性が向上することから好ましい。非極性有機溶媒としては、炭化水素系溶媒が好ましく、トルエン、キシレン等の水よりも沸点が高い有機溶媒が好ましく、特にトルエン等の水と共沸する有機溶媒は系内から水を効率よく除去できるため好ましい。特に、極性有機溶媒と非極性有機溶媒とを混合することで、前述したそれぞれの利点が得られるため混合溶媒として用いることが好ましい。
【0117】
加水分解縮合時の反応温度としては0〜200℃、好ましくは10〜200℃、更に好ましくは、10〜120℃である。当該反応は、通常、1〜12時間程度で終了する。
【0118】
加水分解縮合反応では、加水分解と共に縮合反応が進行し、加水分解性シランの加水分解性基[具体的には例えば、前記一般式(A1−I−1)中のY]の大部分、好ましくは100%がヒドロキシル基(OH基)に加水分解され、更にそのOH基の大部分、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、特に好ましくは99%以上を縮合させることが液安定性の点から好ましい。
【0119】
前記一般式(A1−I−2)で表される有機基を有するシルセスキオキサン化合物の具体例としては、Glycidyl POSS cage mixture(商品名、Hybrid Plastics社)が挙げられる。
【0120】
続いて、上記で製造された前記一般式(A1−I−2)で表される有機基を有するシルセスキオキサン化合物に、下記一般式(A1−I−3)
【0121】
【化18】

【0122】
[式(A1−I−3)中、Rは前記と同じである。]で表される化合物を反応させ、前記一般式(A1−I)で表される有機基を有するシルセスキオキサン化合物を製造する。
【0123】
前記一般式(A1−I−3)で表される化合物としては、アクリル酸及びメタクリル酸が挙げられる。
【0124】
前記反応は、エポキシ基とカルボキシル基とを反応させる常法に従って行うことができる。反応温度は、例えば、0〜200℃、好ましくは20〜200℃、更に好ましくは、20〜120℃である。当該反応は、通常、10〜24時間程度で終了する。
【0125】
前記反応における前記一般式(A1−I−2)で表される有機基を有するシルセスキオキサン化合物と前記一般式(A1−I−3)で表される化合物との使用割合は、シルセスキオキサン化合物が有する一般式(A1−I−2)で表される有機基1モルに対し一般式(A1−I−3)で表される化合物を、通常、0.80〜1.20モル程度、好ましくは0.90〜1.10モル程度とすればよい。
【0126】
前記反応では適宜触媒を使用しても良い。触媒としては、具体的には例えば、トリエチルアミン、ベンジルジメチルアミン等の3級アミン;テトラメチルアンモニウムクロライド、テトラエチルアンモニウムブロマイド、テトラブチルアンモニウムブロマイド等の4級アンモニウム塩;ジエチルアミン等の酢酸塩、ギ酸塩等の2級アミン塩;水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム等のアルカリ金属、アルカリ土類金属の水酸化物;酢酸ナトリウム、酢酸カルシウム等のアルカリ金属、アルカリ土類金属塩;イミダゾ−ル類;ジアザビシクロウンデセン等の環状含窒素化合物、トリフェニルフォスフィン、トリブチルフォスフィン等のリン化合物等が挙げられる。触媒の使用量は、特に限定されるものではないが、反応原料に対して、0.01〜5質量%である。
【0127】
前記反応では適宜溶媒を使用しても良い。溶媒は特に限定されるものではない。具体的には例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルアミルケトン、エチルイソアミルケトン、ジイソブチルケトン、メチルへキシルケトン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、安息香酸メチル、プロピオン酸メチル等のエステル類;テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメトキシエタン等のエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシブチルアセテート等のグリコールエーテル類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、脂肪族炭化水素類等が挙げられる。
【0128】
以上の製造方法により一般式(A1−I)で表される有機基を有するシルセスキオキサン化合物が製造される。
【0129】
上記各反応により得られる目的とする化合物は、通常の分離手段により反応系内より分離され、さらに精製することができる。この分離及び精製手段としては、例えば、蒸留法、溶媒抽出法、希釈法、再結晶法、カラムクロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、ゲルクロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー等を用いることができる。
【0130】
ここで、前記加水分解縮合において100%縮合しない場合には、この製造方法により得られる生成物には、Si−OH基(ヒドロキシシリル基)の全てが加水分解縮合した構造のシルセスキオキサン化合物以外に、Si−OH基が残存したラダー構造、不完全籠型構造及び/又はランダム縮合体のシルセスキオキサン化合物が含まれる場合があるが、この製造方法により得られる一般式(A1−I)で表される有機基を有するシルセスキオキサン化合物は、それらラダー構造、不完全籠型構造及び/又はランダム縮合体を含んでいてもよい。なお、この製造方法により得られる一般式(A1−I)で表される有機基を有するシルセスキオキサン化合物は、Si−OH基の全てが加水分解縮合した構造のシルセスキオキサン化合物の割合が、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上であることが液安定性の点から好ましい。
【0131】
次に、(A)成分であるシルセスキオキサン化合物であって、ケイ素原子に直接に結合した有機基の少なくとも1つが下記一般式(A21−II)で表される有機基を有するシルセスキオキサン化合物[以下、「一般式(A21−II)で表される有機基を有するシルセスキオキサン化合物」と略すことがある。]の製造方法を例示する。
【0132】
【化19】

【0133】
[式(A21−II)中、R、R、R及びmは前記と同じである。]。
【0134】
以下の製造方法は、前記製造方法aに該当する。この製造方法では、出発物質に下記一般式(A21−II−1)
【0135】
【化20】

【0136】
[式(A21−II−1)中、R、R、R、m及びYは前記と同じである。Yは同一でも又は異なっていてもよい。]で表される加水分解性シラン及び必要に応じて前記一般式(A21−II−1)で表される加水分解性シラン以外の加水分解性シランを用いて、触媒の存在下で加水分解縮合を行って前記一般式(A21−II)で表される有機基を有するシルセスキオキサン化合物を製造する。
【0137】
前記一般式(A21−II−1)で表される加水分解性シラン以外の加水分解性シランとしては、前記一般式(A21−II−1)で表される加水分解性シランとともに加水分解縮合することによりシルセスキオキサン化合物を製造できるものであれば特に限定されるものではない。具体的には例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン等のアルキルトリアルコキシシラン;3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン等の3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリアルコキシシラン;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のビニルトリアルコキシシラン等が挙げられる。
【0138】
前記一般式(A21−II−1)で表される加水分解性シランは、例えば、下記一般式(A21−II−2)で表される加水分解性シランと、下記一般式(A21−II−3)で表される化合物とを反応させることにより得ることができる。
【0139】
【化21】

【0140】
[式(A21−II−2)中、R及びYは前記と同じである。Yは同一でも又は異なっていてもよい。]。
【0141】
【化22】

【0142】
[式(A21−II−3)中、R、R及びmは前記と同じである。]。
【0143】
前記一般式(A21−II−2)で表される化合物としては、例えば、3−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0144】
前記一般式(A21−II−3)で表される化合物としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0145】
前記一般式(A21−II−2)で表される加水分解性シランと前記一般式(A21−II−3)で表される化合物との反応は、イソシアネート基と水酸基とを反応させる常法に従って行うことができる。
【0146】
前記反応における一般式(A21−II−2)で表される加水分解性シランと前記一般式(A21−II−3)で表される化合物との使用割合は、通常前者1モルに対し後者を0.90〜1.10モル程度、好ましくは0.95〜1.05モル程度とすればよい。
【0147】
反応温度は、例えば、0〜200℃、好ましくは20〜200℃、更に好ましくは、20〜120℃である。また、この反応は必要に応じて加圧(又は減圧)して実施できるが、0.02〜0.2MPa、特に0.08〜0.15MPaの圧力範囲が好ましい。当該反応は、通常、2〜10時間程度で終了する。
【0148】
前記反応では適宜触媒を使用しても良い。触媒としては、トリエチルアミン等の第三級アミン、ジブチル錫ジラウレート等の有機金属化合物等が挙げられる。
【0149】
前記反応では適宜溶媒を使用しても良い。溶媒としては、具体的には例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルアミルケトン、エチルイソアミルケトン、ジイソブチルケトン、メチルへキシルケトン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、安息香酸メチル、プロピオン酸メチル等のエステル類;テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメトキシエタン等のエーテル類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシブチルアセテート等のグリコールエーテル類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類や、脂肪族炭化水素類等が挙げられる。
【0150】
この製造方法において、前記一般式(A21−II)で表される有機基を有するシルセスキオキサン化合物を得るためには、具体的には、
[3]前記一般式(A21−II−1)で表される加水分解性シランを出発物質に用いて触媒の存在下で加水分解縮合する、又は、
[4]前記一般式(A21−II−1)で表される加水分解性シラン及び前記一般式(A21−II−1)で表される加水分解性シラン以外の加水分解性シランを出発物質に用いて触媒の存在下で加水分解縮合する、ことが挙げられる。
【0151】
この加水分解縮合において、触媒、触媒の使用量、水の使用量、有機溶媒を使用する場合の有機溶媒の種類、加水分解縮合時の反応温度及び反応時間は、前述の一般式(A1−I−2)で表される有機基を有するシルセスキオキサン化合物を製造する際の各種条件と同じ条件が適用できる。
【0152】
加水分解縮合反応では、加水分解と共に縮合反応が進行し、加水分解性シランの加水分解性基[具体的には例えば、前記一般式(A21−II−1)中のY]の大部分、好ましくは100%がヒドロキシル基(OH基)に加水分解され、更にそのOH基の大部分、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、特に好ましくは99%以上を縮合させることが液安定性の点から好ましい。
【0153】
以上の製造方法により一般式(A21−II)で表される有機基を有するシルセスキオキサン化合物が製造される。
【0154】
上記各反応により得られる目的とする化合物は、通常の分離手段により反応系内より分離され、さらに精製することができる。この分離及び精製手段としては、例えば、蒸留法、溶媒抽出法、希釈法、再結晶法、カラムクロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、ゲルクロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー等を用いることができる。
【0155】
ここで、前記加水分解縮合において100%縮合しない場合には、この製造方法により得られる生成物には、Si−OH基(ヒドロキシシリル基)の全てが加水分解縮合した構造のシルセスキオキサン化合物以外に、Si−OH基が残存したラダー構造、不完全籠型構造及び/又はランダム縮合体のシルセスキオキサン化合物が含まれる場合があるが、この製造方法により得られる一般式(A21−II)で表される有機基を有するシルセスキオキサン化合物は、それらラダー構造、不完全籠型構造及び/又はランダム縮合体を含んでいてもよい。なお、この製造方法により得られる一般式(A21−II)で表される有機基を有するシルセスキオキサン化合物は、Si−OH基の全てが加水分解縮合した構造のシルセスキオキサン化合物の割合が、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上であることが液安定性の点から好ましい。
【0156】
次に、(A)成分であるシルセスキオキサン化合物であって、ケイ素原子に直接に結合した有機基の少なくとも1つが下記一般式(A22−II)で表される有機基を有するシルセスキオキサン化合物[以下、「一般式(A22−II)で表される有機基を有するシルセスキオキサン化合物」と略すことがある。]の製造方法を例示する。
【0157】
【化23】

【0158】
[式(A22−II)中、R、R及びRは前記と同じである。]。
【0159】
以下の製造方法は、前記製造方法bに該当する。この製造方法では、出発物質に下記一般式(A22−II−1)
【0160】
【化24】

【0161】
[式(A22−II−1)中、R及びYは前記と同じである。Yは同一でも又は異なっていてもよい。]で表される加水分解性シランを用いて、触媒の存在下で加水分解縮合を行うことにより下記一般式(A22−II−2)
【0162】
【化25】

【0163】
[式(A22−II−2)中、Rは前記と同じである。]で表される有機基を有するシルセスキオキサン化合物を製造する。
【0164】
前記一般式(A22−II−1)で表される加水分解性シランとしては、具体的には例えば、アミノメチルトリメトキシシラン、アミノメチルトリエトキシシラン、2−アミノエチルトリメトキシシラン、2−アミノエチルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0165】
前記一般式(A22−II−2)で表される有機基を有するシルセスキオキサン化合物を得るためには、具体的には、
[5]前記一般式(A22−II−1)で表される加水分解性シランを出発物質に用いて触媒の存在下で加水分解縮合する、又は、
[6]前記一般式(A22−II−1)で表される加水分解性シラン、及びアミノ基を有する加水分解性シラン以外の加水分解性シランを出発物質に用いて触媒の存在下で加水分解縮合する、
ことが挙げられる。
【0166】
前記アミノ基を有する加水分解性シラン以外の加水分解性シランとしては、前記アミノ基を有する加水分解性シランとともに加水分解縮合することによりシルセスキオキサン化合物を製造できるものであれば特に限定されるものではない。具体的には例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン等のアルキルトリアルコキシシラン;3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン等の3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリアルコキシシラン;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のビニルトリアルコキシシラン等が挙げられる。
【0167】
この加水分解縮合において、触媒、触媒の使用量、水の使用量、有機溶媒を使用する場合の有機溶媒の種類、加水分解縮合時の反応温度及び反応時間は、前述の一般式(A1−I−2)で表される有機基を有するシルセスキオキサン化合物を製造する際の各種条件と同じ条件が適用できる。
【0168】
加水分解縮合反応では、加水分解と共に縮合反応が進行し、加水分解性シランの加水分解性基[具体的には例えば、前記一般式(A22−II−1)中のY]の大部分、好ましくは100%がヒドロキシル基(OH基)に加水分解され、更にそのOH基の大部分、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、特に好ましくは99%以上を縮合させることが液安定性の点から好ましい。
【0169】
続いて、上記で製造された前記一般式(A22−II−2)で表される有機基を有するシルセスキオキサン化合物のアミノ基に、下記一般式(A22−II−3)で表される化合物のイソシアネート基を反応させ、前記一般式(A22−II)で表される有機基を有するシルセスキオキサン化合物を製造する。
【0170】
【化26】

【0171】
[式(A22−II−3)中、R及びRは前記と同じである。]。
【0172】
前記一般式(A22−II−3)で表される化合物としては、具体的には例えば、イソシアネートメチル(メタ)アクリレート、2−イソシアネートエチル(メタ)アクリレート、3−イソシアネートプロピル(メタ)アクリレート、イソシアネートオクチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。また、ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートとジイソシアネート化合物との付加物が挙げられる。ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートとしては、具体的には例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。ジイソシアネート化合物としては、具体的には例えば、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、1−クロロ−2,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4´−ジイソシアネート、3,3´−ジメチル−4,4´−ビフェニレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート化合物;エタンジイソシアネート、プロパンジイソシアネート、ブタンジイソシアネート、ペンタンジイソシアネート、ヘキサンジイソシアネート、ヘプタンジイソシアネート、オクタンジイソシアネート、ノナンジイソシアネート、デカンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート化合物等が挙げられる。
【0173】
前記反応は、通常、前記一般式(A22−II−2)で表される有機基1モルに対して、前記一般式(A22−II−3)で表される化合物を1モル以上用いて行われる。
【0174】
前記反応は、アミノ基とイソシアネート基を反応させる常法に従って行うことができる。反応温度は、例えば、−78℃〜200℃、好ましくは−78℃〜100℃、更に好ましくは、−10℃〜40℃である。また、この反応は必要に応じて加圧(又は減圧)して実施できるが、0.02〜0.2MPa、特に0.08〜0.15MPaの圧力範囲が好ましい。当該反応は非常に早く、通常、滴下が終了すると反応は終了する。
【0175】
前記反応では適宜溶媒を使用しても良い。溶媒としては、具体的には例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、安息香酸メチル、プロピオン酸メチル等のエステル類;テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメトキシエタン等のエーテル類;プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシブチルアセテート等のグリコールエーテル類;メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、脂肪族炭化水素類等が挙げられる。
【0176】
以上の製造方法により一般式(A22−II)で表される有機基を有するシルセスキオキサン化合物が製造される。
【0177】
上記各反応により得られる目的とする化合物は、通常の分離手段により反応系内より分離され、さらに精製することができる。この分離及び精製手段としては、例えば、蒸留法、溶媒抽出法、希釈法、再結晶法、カラムクロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、ゲルクロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー等を用いることができる。
【0178】
ここで、前記加水分解縮合において100%縮合しない場合には、この製造方法により得られる生成物には、Si−OH基(ヒドロキシシリル基)の全てが加水分解縮合した構造のシルセスキオキサン化合物以外に、Si−OH基が残存したラダー構造、不完全籠型構造及び/又はランダム縮合体のシルセスキオキサン化合物が含まれる場合があるが、この製造方法により得られる一般式(A22−II)で表される有機基を有するシルセスキオキサン化合物は、それらラダー構造、不完全籠型構造及び/又はランダム縮合体を含んでいてもよい。なお、この製造方法により得られる一般式(A22−II)で表される有機基を有するシルセスキオキサン化合物は、Si−OH基の全てが加水分解縮合した構造のシルセスキオキサン化合物の割合が、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上であることが液安定性の点から好ましい。
【0179】
次に、(A)成分であるシルセスキオキサン化合物であって、ケイ素原子に直接に結合した有機基の少なくとも1つが下記一般式(A23−II)で表される有機基を有するシルセスキオキサン化合物[以下、「一般式(A23−II)で表される有機基を有するシルセスキオキサン化合物」と略すことがある。]の製造方法を例示する。
【0180】
【化27】

【0181】
[式(A23−II)中、R12、R13及びR14は前記と同じである。]。
【0182】
以下の製造方法は、前記製造方法bに該当する。この製造方法では、出発物質に下記一般式(A23−II−1)
【0183】
【化28】

【0184】
[式(A23−II−1)中、R13及びYは前記と同じである。Yは同一でも又は異なっていてもよい。]で表される加水分解性シラン及び必要に応じて前記一般式(A23−II−1)で表される加水分解性シラン以外の加水分解性シランを用いて、触媒の存在下で加水分解縮合を行って下記一般式(A22−II−2)
【0185】
【化29】

【0186】
[式(A23−II−2)中、R13は前記と同じである。]で表される有機基を有するシルセスキオキサン化合物を製造する。
【0187】
前記一般式(A23−II−1)で表される加水分解性シランとしては、具体的には例えば、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0188】
前記一般式(A23−II−2)で表される有機基を有するシルセスキオキサン化合物を得るためには、具体的には、
[7]前記一般式(A23−II−1)で表される加水分解性シランを出発物質に用いて触媒の存在下で加水分解縮合する、又は、
[8]前記一般式(A23−II−1)で表される加水分解性シラン、及びエポキシ基を有する加水分解性シラン以外の加水分解性シランを出発物質に用いて触媒の存在下で加水分解縮合する、ことが挙げられる。
【0189】
前記エポキシ基を有する加水分解性シラン以外の加水分解性シランとしては、前記一般式(A23−II−1)で表される加水分解性シランとともに加水分解縮合することによりシルセスキオキサン化合物を製造できるものであれば特に限定されるものではない。具体的には例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン等のアルキルトリアルコキシシラン;3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン等の3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリアルコキシシラン;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のビニルトリアルコキシシラン等が挙げられる。
【0190】
この加水分解縮合において、触媒、触媒の使用量、水の使用量、有機溶媒を使用する場合の有機溶媒の種類、加水分解縮合時の反応温度及び反応時間は、前述の一般式(A1−I−2)で表される有機基を有するシルセスキオキサン化合物を製造する際の各種条件と同じ条件が適用できる。
【0191】
加水分解縮合反応では、加水分解と共に縮合反応が進行し、加水分解性シランの加水分解性基[具体的には例えば、前記一般式(A23−II−1)中のY]の大部分、好ましくは100%がヒドロキシル基(OH基)に加水分解され、更にそのOH基の大部分、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、特に好ましくは99%以上を縮合させることが液安定性の点から好ましい。
【0192】
前記一般式(A23−II−2)で表される有機基を有するシルセスキオキサン化合物の具体例としては、Glycidyl POSS cage mixture(商品名、Hybrid Plastics社)が挙げられる。
【0193】
続いて、上記で製造された前記一般式(A23−II−2)で表される有機基を有するシルセスキオキサン化合物に、下記一般式(A23−II−3)
【0194】
【化30】

【0195】
[式(A23−II−3)中、R12は前記と同じである。]で表される化合物を反応させ、下記一般式(A23−II−4)
【0196】
【化31】

【0197】
[式(A23−II−4)中、R12及びR13は前記と同じである。]で表される有機基を有するシルセスキオキサン化合物を製造する。
【0198】
前記一般式(A23−II−3)で表される化合物としては、アクリル酸及びメタクリル酸が挙げられる。
【0199】
前記反応は、エポキシ基とカルボキシル基とを反応させる常法に従って行うことができる。この反応において、反応温度、使用割合、反応時間、触媒及び溶媒等の各種反応条件は、前述の前記一般式(A1−I−2)で表される有機基を有するシルセスキオキサン化合物に、前記一般式(A1−I−3)で表される化合物を反応させる際の各種反応条件と同じ条件が適用できる。
【0200】
続いて、上記で製造された前記(A23−II−4)で表される有機基を有するシルセスキオキサン化合物の2級水酸基に、下記一般式(A23−II−5)で表される化合物のイソシアネート基を反応させる。
【0201】
【化32】

【0202】
[式(A23−II−5)中、R12及びR14は前記と同じである。]。
【0203】
前記反応は、水酸基とイソシアネート基を反応させる常法に従って行うことができる。
反応温度としては例えば、0〜200℃、好ましくは10〜200℃、更に好ましくは、10〜120℃である。当該反応は、通常、2〜10時間程度で終了する。
【0204】
上記反応における前記一般式(A23−II−4)で表される有機基を有するシルセスキオキサン化合物と前記一般式(A23−II−5)で表される化合物との使用割合は、シルセスキオキサン化合物が有する一般式(A23−II−4)で表される有機基1モルに対し一般式(A23−II−5)で表される化合物を、通常、0.90〜1.10モル程度、好ましくは0.95〜1.05モル程度とすればよい。
【0205】
前記反応では適宜触媒を使用しても良い。触媒としては、トリエチルアミン等の第三級アミン、ジブチル錫ジラウレート等の有機金属化合物等が挙げられる。
【0206】
以上の製造方法により一般式(A23−II)で表される有機基を有するシルセスキオキサン化合物が製造される。
【0207】
上記各反応により得られる目的とする化合物は、通常の分離手段により反応系内より分離され、さらに精製することができる。この分離及び精製手段としては、例えば、蒸留法、溶媒抽出法、希釈法、再結晶法、カラムクロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、ゲルクロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー等を用いることができる。
【0208】
ここで、加水分解縮合において100%縮合しない場合には、この製造方法により得られる生成物には、Si−OH基(ヒドロキシシリル基)の全てが加水分解縮合した構造のシルセスキオキサン化合物以外に、Si−OH基が残存したラダー構造、不完全籠型構造及び/又はランダム縮合体のシルセスキオキサン化合物が含まれる場合があるが、この製造方法により得られる一般式(A23−II)で表される有機基を有するシルセスキオキサン化合物は、それらラダー構造、不完全籠型構造及び/又はランダム縮合体を含んでいてもよい。なお、この製造方法により得られる一般式(A23−II)で表される有機基を有するシルセスキオキサン化合物は、Si−OH基の全てが加水分解縮合した構造のシルセスキオキサン化合物の割合が、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上であることが液安定性の点から好ましい。
【0209】
上記活性エネルギー線硬化型プライマー組成物における(A)成分であるシルセスキオキサン化合物の配合割合は、後述する無機物質層との付着性及び耐侯性の点から、好ましくは、活性エネルギー線硬化型プライマー組成物の不揮発分100質量部に対して、1〜95質量部であり、より好ましくは10〜80質量部であり、特に好ましくは15〜50質量部である。
【0210】
≪光重合開始剤(B)≫
本発明の積層体に使用する活性エネルギー線硬化型プライマー組成物は光重合開始剤(B)を含有する。
光重合開始剤(B)としては、活性エネルギー線を吸収してラジカルを発生する開始剤であれば特に限定されることなく使用できる。
【0211】
光重合開始剤(B)としては、例えばベンジル、ジアセチル等のα−ジケトン類;ベンゾイン等のアシロイン類;ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のアシロインエーテル類;チオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、チオキサントン−4−スルホン酸等のチオキサントン類;ベンゾフェノン、4,4´−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4´−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン等のベンゾフェノン類;ミヒラーケトン類;アセトフェノン、2−(4−トルエンスルホニルオキシ)−2−フェニルアセトフェノン、p−ジメチルアミノアセトフェノン、α,α´−ジメトキシアセトキシベンゾフェノン、2,2´−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、p−メトキシアセトフェノン、2−メチル〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルフォリノ−1−プロパノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、α−イソヒドロキシイソブチルフェノン、α,α´−ジクロル−4−フェノキシアセトフェノン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン等のアセトフェノン類;2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(アシル)フォスフィンオキサイド等のアシルフォスフィンオキサイド類;アントラキノン、1,4−ナフトキノン等のキノン類;フェナシルクロライド、トリハロメチルフェニルスルホン、トリス(トリハロメチル)−s−トリアジン等のハロゲン化合物;ジ−t−ブチルパーオキサイド等の過酸化物等が挙げられる。これらは1種又は2種以上の混合物として使用できる。
【0212】
光重合開始剤(B)の市販品としては、例えば、イルガキュア 184(IRGACURE 184)、イルガキュア 127、イルガキュア 261、イルガキュア 500、イルガキュア 651、イルガキュア 819、イルガキュア 907、イルガキュア CGI−1700(BASF社製、商品名、IRGACURE及びイルガキュアは登録商標)、ダロキュア 1173(Darocur 1173)、ダロキュア 1116、ダロキュア 2959、ダロキュア 1664、ダロキュア 4043(メルクジャパン社製、商品名、Darocur\ダロキュアは登録商標)、カヤキュア MBP、カヤキュア DETX−S、カヤキュア DMBI、カヤキュア EPA、カヤキュア OA(日本化薬社製、商品名、KAYACURE\カヤキュア−は登録商標)、ビキュア 10(VICURE 10)、ビキュア 55〔ストウファー社(STAUFFER Co., LTD.)製、商品名〕、トリゴナル P1〔TRIGONAL(登録商標)P1〕〕〔アクゾ社(AKZO Co., LTD.)製、商品名〕、サンドレイ 1000(SANDORAY 1000)〔サンドズ社(SANDOZ Co., LTD.)製、商品名〕、ディープ(DEAP)〔アプジョン社(APJOHN Co., LTD.)製、商品名〕、カンタキュア PDO(QUANTACURE PDO)、カンタキュア ITX、カンタキュア EPD〔ウォードブレキンソプ社(WARD BLEKINSOP Co., LTD.)製、商品名〕、ESACURE KIP150、ESACURE ONE(LAMBERTI社製、商品名、esacure\by lambertiは登録商標)、ルシリン TPO等が挙げられる。
【0213】
前記光重合開始剤(B)としては、光硬化性の点からチオキサントン類、アセトフェノン類及びアシルフォスフィンオキシド類の1種又は2種以上の混合物であることが好ましく、なかでもアセトフェノン類とアシルフォスフィンオキシド類との混合物であることが特に好適である。
【0214】
光重合開始剤(B)の使用割合としては、特に限定されるものではない。活性エネルギー線硬化型プライマー組成物の不揮発分100質量部に対し0.1〜10質量部、好ましくは2〜8質量部の範囲内が適当である。
【0215】
<重合性不飽和化合物(C)>
本発明の積層体に使用する活性エネルギー線硬化型プライマー組成物はさらに重合性不飽和化合物(C)を含有していてもよい。
重合性不飽和化合物(C)としては、本発明のシルセスキオキサン化合物(A)及び後述する有機物変性シリカ粒子(f)を含む場合はそれ以外の化合物であって、その化学構造中に重合性不飽和二重結合を少なくとも1つ有する化合物であれば特に限定されない。
【0216】
前記重合性不飽和化合物(C)としては、単官能重合性不飽和化合物、多官能重合性不飽和化合物が挙げられる。
【0217】
単官能重合性不飽和化合物としては、例えば、一価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化物等が挙げられる。具体的には、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ネオペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、N−アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド等が挙げられる。また、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリレート;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、2−カルボキシエチル(メタ)アクリレート、2−カルボキシプロピル(メタ)アクリレート、5−カルボキシペンチル(メタ)アクリレート等のカルボキシル基含有(メタ)アクリレート;グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等のグリシジル基含有重合性不飽和化合物;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、α−クロルスチレン等のビニル芳香族化合物;N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−t−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート等の含窒素アルキル(メタ)アクリレート;アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド等の重合性アミド類等が挙げられる。
【0218】
多官能重合性不飽和化合物としては、例えば、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化物等が挙げられる。具体的には、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAエチレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデンカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、水素化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、水素化ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、水素化ヘキサフルオロビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ビス(2−(メタ)アクリロイルオキシ)ヘキサヒドロフタル酸、5−エチル−2−(2−ヒドロキシ−1,1ジメチルエチル)−5−(ヒドロキシメチル)−1,3−ジオキサンジ(メタ)アクリレート等のジ(メタ)アクリレート化合物;グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンプロピレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ε−カプロラクトン変性トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート等のトリ(メタ)アクリレート化合物;ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等のテトラ(メタ)アクリレート化合物;その他、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。さらに、重合性不飽和基含有アクリル樹脂、(メタ)アクリロイル基含有ウレタン樹脂、(メタ)アクリロイル基含有エポキシ樹脂、(メタ)アクリロイル基含有ポリエステル樹脂等が挙げられる。重合性不飽和基含有アクリル樹脂としては、例えば、カルボキシル基含有アクリル樹脂にグリシジル(メタ)アクリレート等のグリシジル基含有重合性不飽和化合物を付加して得られる重合性不飽和基含有アクリル樹脂、ヒドロキシル基含有アクリル樹脂に2−イソシアネートエチル(メタ)アクリレート等のイソシアネート基と重合性不飽和基とを有する化合物を付加して得られる重合性不飽和基含有アクリル樹脂等が挙げられる。これら重合性不飽和化合物は単独で又は2種以上組合せて使用することができる。
【0219】
さらに多官能重合性不飽和化合物としては、下記一般式(C−I)で表される重合性不飽和化合物及び/又は下記一般式(C−II)で表される重合性不飽和化合物が挙げられる。
【0220】
【化33】

【0221】
[式(C−I)中、R15は同一、又は異なって水素原子又はメチル基を示す。R16は同一、又は異なって炭素数1〜6の2価の炭化水素基を示す。mは、同一又は異なって0〜5の整数を示す。式(C−II)中、R17は同一、又は異なって水素原子又はメチル基を示す。R18は同一、又は異なって炭素数1〜6の2価の炭化水素基を示す。]
前記R16は、炭素数1〜6の2価の炭化水素基であれば特に限定されるものではない。具体的には例えば、メチレン基、エチレン基、1,2−プロピレン基、1,3−プロピレン基、1,2−ブチレン基、1,4−ブチレン基、ヘキシレン基等が挙げられる。なかでも、炭素数2〜4の2価の炭化水素基、特にエチレン基であることが好ましい。
【0222】
前記R18は、炭素数1〜6の2価の炭化水素基であれば特に限定されるものではない。具体的には例えば、メチレン基、エチレン基、1,2−プロピレン基、1,3−プロピレン基、1,2−ブチレン基、1,4−ブチレン基、ヘキシレン基等が挙げられる。なかでも、炭素数2〜4の2価の炭化水素基、特にエチレン基であることが好ましい。
【0223】
前記一般式(C−I)で表される重合性不飽和化合物は、例えば、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート環付加物、及びヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート又はカプロラクトン変性ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートをジラウリン酸ジn−ブチル錫等の錫系触媒の存在下、イソシアネート基とヒドロキシル基がほぼ等量になるように用いて、60〜70℃で数時間加熱することにより得ることができる。
【0224】
前記一般式(C−II)で表される重合性不飽和化合物としては、例えば、トリス(2−アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、トリス(2−アクリロイルオキシプロピル)イソシアヌレート等が挙げられる。
【0225】
ここで、前記一般式(C−I)で表される重合性不飽和化合物は、後述する反応性粒子(fa)の製造方法において説明する一般式(VIII)で表される化合物と同じ化合物である。また、前記一般式(C−II)で表される重合性不飽和化合物は、後述する、反応性粒子(fa)の製造方法において説明する一般式(XI)で表される化合物と同じ化合物である。そのため、反応性粒子(fa)を製造する際に、前記一般式(C−I)で表される重合性不飽和化合物、又は前記一般式(II)で表される重合性不飽和化合物が含まれることがあるが、それら前記一般式(C−I)で表される重合性不飽和化合物及び前記一般式(C−II)で表される重合性不飽和化合物は、本発明においては、重合性不飽和化合物(C)に含まれるものとする。
【0226】
さらに多官能重合性不飽和化合物としては、例えばイミノオキサジアジンジオン基を有するヘキサメチレンジシソシアネートトリマーとヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとを触媒の存在下、イソシアネート基とヒドロキシル基がほぼ等量になるように用いて反応させることにより得られるウレタン(メタ)アクリレートも使用することができる。イミノオキサジアジンジオン基を有するヘキサメチレンジシソシアネートトリマーの市販品としては、例えば、デスモジュール(登録商標)XP2410(バイエルマテリアルサイエンス社製)等が挙げられる。ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0227】
上記ヘキサメチレンジシソシアネートトリマーとヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとの反応は、例えば、0〜200℃、好ましくは20〜200℃、更に好ましくは、20℃〜120℃の温度で行うことができる。当該反応は、通常、2〜10時間程度で終了する。反応では適宜触媒を使用しても良い。触媒としては、トリエチルアミン等の第三級アミン、ジブチル錫ジラウレート等の有機金属化合物等が挙げられる。
【0228】
前記反応では適宜溶媒を使用しても良い。溶媒としては、具体的には例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、安息香酸メチル、プロピオン酸メチル等のエステル類;テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメトキシエタン等のエーテル類;プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシブチルアセテート等のグリコールエーテル類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、脂肪族炭化水素類等が挙げられる。
【0229】
活性エネルギー線硬化型プライマー組成物は、得られる硬化塗膜の耐候性及び被塗物への付着性の点から、前記一般式(C−I)で表される重合性不飽和化合物及び/又は前記一般式(C−II)で表される重合性不飽和化合物を含有することが好ましい。
【0230】
活性エネルギー線硬化型プライマー組成物における重合性不飽和化合物(C)の使用量は、得られる硬化塗膜の耐候性及び被塗物への付着性の点から、好ましくは、活性エネルギー線硬化型プライマー組成物の不揮発分100質量部に対して、20〜95質量部であり、より好ましくは25〜90質量部、さらに好ましくは30〜80質量部の範囲である。
【0231】
また、重合性不飽和化合物(C)の中でも、多官能重合性不飽和化合物として特に前記一般式(C−I)で表される重合性不飽和化合物及び/又は前記一般式(C−II)で表される重合性不飽和化合物を用いる場合は、それらの使用割合は、重合性不飽和化合物(C)の不揮発分の総量に対して、10質量%〜90質量%、より好ましくは15質量%〜85質量%、さらに好ましくは20〜80質量%の範囲であることが、樹脂基材との付着性、耐候性及び耐水性の点から好適である。
【0232】
本発明の積層体に使用する活性エネルギー線硬化型プライマー組成物はさらに紫外線吸収剤(D)、及び/又は光安定剤(E)を含有していてもよい。
<紫外線吸収剤(D)>
紫外線吸収剤としては、従来から公知のものが使用でき、例えば、ベンゾトリアゾール系吸収剤、トリアジン系吸収剤、サリチル酸誘導体系吸収剤、ベンゾフェノン系吸収剤等を使用できる。
【0233】
ベンゾトリアゾール系吸収剤の具体例としては、2−(2´−ヒドロキシ−5´−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2´−ヒドロキシ−5´−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2´−ヒドロキシ−3´,5´−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3´−t−ブチル−5´−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2´−ヒドロキシ−3´,5´−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2´−ヒドロキシ−3´,5´−ジ−t−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2´−ヒドロキシ−4´−オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−{2´−ヒドロキシ−3´−(3´´,4´´,5´´,6´´−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5´−メチルフェニル}ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
【0234】
トリアジン系吸収剤の具体例としては、2,4−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−6−(2−ヒドロキシ−4−イソオクチルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジンン、2−[4((2−ヒドロキシ−3−ドデシルオキシプロピル)−オキシ)−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジンン、2−[4−((2−ヒドロキシ−3−トリデシルオキシプロピル)−オキシ)−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジンン、2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン等が挙げられる。
【0235】
サリチル酸誘導体系吸収剤の具体例としては、フェニルサリシレート、p−オクチルフェニルサリシレート、4−tert−ブチルフェニルサリシレート等が挙げられる。
【0236】
ベンゾフェノン系吸収剤の具体例としては、4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2´−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−2´−カルボキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノントリヒドレート、2,2´−ジヒドロキシ−4,4´−ジメトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクタデシロキシベンゾフェノン、ナトリウム2,2´−ジヒドロキシ−4,4´−ジメトキシ−5−スルホベンゾフェノン、2,2´,4,4´−テトラヒドロキシベンゾフェノン、4−ドデシロキシ−2−ヒドロキシベンゾフェノン、5−クロロ−2−ヒドロキシベンゾフェノン、レゾルシノールモノベンゾエート、2,4−ジベンゾイルレゾルシノール、4,6−ジベンゾイルレゾルシノール、ヒドロキシドデシルベンゾフェノン等が挙げられる。紫外線吸収剤としては、また、公知の重合性紫外線吸収剤、例えば2−(2´−ヒドロキシ−5´−メタクリロイルオキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2,2´−ジヒドロキシ−4(3−メタクリルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン等も使用することが可能である。
【0237】
上記紫外線吸収剤の市販品としては、例えば、TINUVIN 900、TINUVIN 928、TINUVIN 348−2、TINUVIN 479、TINUVIN 405(BASF社製、商品名、TINUVIN\チヌビンは登録商標)、RUVA 93(大塚化学社製、商品名)等が挙げられる。
【0238】
上記紫外線吸収剤の使用量は、特に限定されるものではないが、被塗物への付着性及び耐候性の点から、活性エネルギー線硬化型プライマー組成物の不揮発分100質量部に対して、0.1〜20質量部、好ましくは1〜10質量部の範囲であることが好適である。
【0239】
<光安定剤(E)>
光安定剤は、積層膜の劣化過程で生成する活性なラジカル種を捕捉するラジカル連鎖禁止剤として用いられるもので、光安定剤のなかで優れた光安定化作用を示す光安定剤としてヒンダードピペリジン類が挙げられる。
【0240】
ヒンダードピペリジン類としては、例えば、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)セバケート、ビス(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)セバケート、4−ベンゾイルオキシ−2,2´,6,6´−テトラメチルピペリジン、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル){[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル}ブチルマロネート等のモノマータイプのもの;ポリ{[6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)イミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル][(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]ヘキサメチレン[(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノール]}等のオリゴマータイプのもの;4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノールとコハク酸とのポリエステル化物等のポリエステル結合タイプのもの等が挙げられるが、これらに限られるものではない。光安定剤としては、また、公知の重合性光安定剤も使用することが可能である。
【0241】
上記光安定剤の市販品としては、例えば、TINUVIN 123、TINUVIN 152、TINUVIN 292(BASF社製、商品名、TINUVIN\チヌビンは登録商標)、HOSTAVIN 3058(クラリアント社製、商品名Hostavinは登録商標)、アデカスタブLA−82(株式会社ADEKA製、商品名、アデカスタブ\ADKSTAB及びアデカスタブは登録商標)等が挙げられる。
【0242】
上記光安定剤の使用量は、特に限定されるものではないが、耐候性の点から活性エネルギー線硬化型プライマー組成物の不揮発分100質量部に対して、0.1〜10質量部、好ましくは0.2〜5質量部の範囲であることが好適である。
【0243】
本発明の積層体に使用する活性エネルギー線硬化型プライマー組成物はさらにシリカ粒子(F)を含有していてもよい。
【0244】
<シリカ粒子(F)>
シリカ粒子(F)は、コロイダルシリカ等のシリカ微粒子(F−1)であってもよいし、シリカ微粒子(F−1)が有機物で変性されたシリカ粒子、すなわち有機物変性シリカ粒子(f)であってもよい。
【0245】
また、有機物変性シリカ粒子(f)として特に限定されるものではないが、シリカ微粒子(F−1)表面に(メタ)アクリロイルオキシ基を有する有機基を持つ反応性粒子(fa)が付着性及び耐候性の点から好適に使用でき、特にシリカ微粒子(F−1)表面に(メタ)アクリロイルオキシ基及びイソシアヌレート環構造を有する反応性粒子が、透明性、付着性及び耐候性の点からより好適に使用できる。
【0246】
反応性粒子(fa)において、シリカ微粒子(F−1)表面に(メタ)アクリロイルオキシ基を有する有機基を持たせる方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、シリカ微粒子(F−1)と、分子内に(メタ)アクリロイルオキシ基を有する加水分解性シラン(s−1)とを反応させる方法が挙げられる。
【0247】
シリカ粒子(F)
シリカ粒子(F)の市販品としては、コロイダルシリカ微粒子、粉末状微粒子シリカ等が挙げられる。
【0248】
コロイダルシリカ微粒子[以下、シリカ微粒子(F−1)]は、シリカの超微粒子を分散媒に分散させたものである。
【0249】
分散媒としては、水;メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、イソブタノール、n−ブタノール等のアルコール系溶剤;エチレングリコール等の多価アルコール系溶剤;エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル等の多価アルコール誘導体;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジアセトンアルコール等のケトン系溶剤;2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート等のモノマー類がある。なかでも、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール等が製造の容易さの点から好ましい。
【0250】
コロイダルシリカ微粒子としては、メタノールシリカゾル、IPA−ST、MEK−ST、NBA−ST、XBA−ST、DMAC−ST、PGM−ST、ST−UP、ST−OUP、ST−20、ST−40、ST−C、ST−N、ST−O、ST−50、ST−OL(いずれも日産化学工業社製)等が挙げられる。
【0251】
粉末状微粒子シリカとしては、アエロジル130、アエロジル300、アエロジル380、アエロジルTT600、アエロジルOX50(いずれも日本アエロジル社製)、E220A、E220(いずれも日本シリカ工業社製)、SYLYSIA470(富士シリシア化学社製)等が挙げられる。
【0252】
シリカ微粒子(F−1)の平均一次粒子径は、1〜200nmが好ましく、5〜100nmがより好ましい。これら範囲の下限値は、後述する加水分解性シランと反応させる際にゲル化を抑制する点で意義がある。これら範囲の上限値は、活性エネルギー線硬化型プライマー組成物により得られる硬化塗膜層の透明性の点で意義がある。
【0253】
本発明における平均一次粒子径は、動的光散乱法によって測定される体積基準粒度分布のメジアン径(d50)であって、例えば日機装社製のナノトラック粒度分布測定装置を用いて測定することができる。
【0254】
分子内に(メタ)アクリロイルオキシ基を有する加水分解性シラン(s−1)
分子内に(メタ)アクリロイルオキシ基を有する加水分解性シラン(s−1)[以下、「加水分解性シラン(s−1)」と略すことがある。]は、加水分解性シリル基を有する。該加水分解性シリル基とは、シラノール基又は加水分解によってシラノール基を生成する基である。シラノール基を生成する基としては、ケイ素原子にアルコキシ基、アリールオキシ基、アセトキシ基、ハロゲン原子等が結合した基が挙げられる。ここでアルコキシ基としては炭素数1〜8のアルコキシ基が好ましく、アリールオキシ基としては、炭素数6〜18のアリールオキシ基が好ましい。ハロゲン原子としては、塩素が挙げられる。
【0255】
加水分解性シラン(s−1)は、分子内に(メタ)アクリロイルオキシ基及び加水分解性シリル基を有する化合物であれば特に限定されない。
【0256】
加水分解性シラン(s−1)としては、例えば、下記一般式(I)
【0257】
【化34】

【0258】
[式(I)中、Xは(メタ)アクリロイルオキシ基を示す。R19は炭素数1〜8の2価の炭化水素基を示す。R、R及びRのうち少なくとも1つは、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基又はアリールオキシ基を示し、残余は水素原子、アルキル基又はアリール基を示す。]で表される加水分解性シラン(s−1−1)が挙げられる。
【0259】
前記一般式(I)中のR19は、炭素数1〜8の2価の炭化水素基であれば特に限定されるものではない。具体的には例えば、例えば、メチレン基、エチレン基、1,2−プロピレン基、1,3−プロピレン基、1,2−ブチレン基、1,4−ブチレン基、ヘキシレン基、オクチレン基等が挙げられる。
【0260】
、R及びRで示されるアルコキシ基としては、炭素数1〜8のものが挙げられ、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、オクチルオキシ基等が好ましい。
【0261】
、R及びRで示されるアルキル基としては、炭素数1〜8のものが挙げられ、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、オクチル基等が好ましい。
【0262】
、R及びRで示されるアリールオキシ基としては、炭素数6〜18のものが挙げられ、フェノキシ基、キシリルオキシ基等が好ましい。
【0263】
、R及びRで示されるアリール基としては、炭素数6〜18のものが挙げられ、フェニル基、キシリル基等が好ましい。
【0264】
(R)(R)Si−で示される基としては、例えば、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、トリフェノキシシリル基、メチルジメトキシシリル基、ジメチルメトキシシリル基等を挙げることができる。このような基のうち、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基等が好ましい。
【0265】
前記一般式(I)で表される加水分解性シラン(s−1−1)としては、例えば、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、2−メタクリロイルオキシエチルトリメトキシシラン、2−アクリロイルオキシエチルトリメトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、2−メタクリロイルオキシエチルトリエトキシシラン、2−アクリロイルオキシエチルトリエトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン等から選択される少なくとも1種の化合物が挙げられる。
【0266】
加水分解性シラン(s−1)としては、前記一般式(I)で表される加水分解性シラン(s−1−1)の他に、例えば、分子内に(メタ)アクリロイルオキシ基及びウレタン結合を有する加水分解性シラン(s−1−2)が挙げられる。
【0267】
分子内に(メタ)アクリロイルオキシ基及びウレタン結合を有する加水分解性シランとしては、例えば、下記一般式(II)
【0268】
【化35】

【0269】
[式(II)中、R20は水素原子又はメチル基を示す。R21は炭素数1〜10の2価の炭化水素基を示す。R22は炭素数1〜10の2価の炭化水素基を示す。R、R及びRは前記と同じである。nは1〜10の整数を示す。]で表される加水分解性シラン(s−1−2)が挙げられる。
【0270】
前記R21としては、炭素数1〜10の2価の炭化水素基であれば特に限定されるものではない。具体的には例えば、メチレン基、エチレン基、1,2−プロピレン基、1,3−プロピレン基、1,2−ブチレン基、1,4−ブチレン基、ヘキシレン基等のアルキレン基;シクロヘキシレン基等のシクロアルキレン基;フェニレン基、キシリレン基等のアリーレン基等が挙げられる。なかでも、炭素数1〜6の2価の炭化水素基、特にエチレン基、1,2−プロピレン基、1,4−ブチレン基であることが好ましい。
【0271】
前記R22としては、炭素数1〜10の2価の炭化水素基であれば特に限定されるものではない。具体的には例えば、メチレン基、エチレン基、1,2−プロピレン基、1,3−プロピレン基、1,2−ブチレン基、1,4−ブチレン基、ヘキシレン基等のアルキレン基;シクロヘキシレン基等のシクロアルキレン基;フェニレン基、キシリレン基等のアリーレン基等が挙げられる。なかでも、炭素数1〜6の2価の炭化水素基、特にエチレン基、1,3−プロピレン基であることが好ましい。
【0272】
前記nとしては、1〜10の整数であれば特に限定されるものではない。nとしては、好ましくは1〜5の整数、さらに好ましくは1〜3の整数、特に好ましくは1である。
【0273】
前記一般式(II)で表される加水分解性シランは、例えば、下記一般式(III)で表される加水分解性シランと、下記一般式(IV)で表される化合物とを反応させることにより得ることができる。
【0274】
【化36】

【0275】
[式(III)中、R22、R、R及びRは前記と同じである。]
【0276】
【化37】

【0277】
[式(IV)中、R20、R21及びnは前記と同じである。]
前記一般式(III)で表される加水分解性シランとしては、例えば、3−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0278】
前記一般式(IV)で表される化合物としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0279】
前記一般式(III)で表される加水分解性シランと前記一般式(IV)で表される化合物との反応は、イソシアネート基と水酸基とを反応させる常法に従って行うことができる。
【0280】
上記反応式における一般式(III)で表される加水分解性シランと前記一般式(IV)で表される化合物との使用割合は、通常前者1モルに対し後者を0.90〜1.10モル程度、好ましくは0.95〜1.05モル程度とすればよい。
【0281】
反応温度は、例えば、0〜200℃、好ましくは20〜200℃、更に好ましくは、20〜120℃である。また、この反応は必要に応じて加圧(又は減圧)して実施できるが、0.02〜0.2MPa、特に0.08〜0.15MPaの圧力範囲が好ましい。当該反応は、通常、2〜10時間程度で終了する。
【0282】
前記反応では適宜触媒を使用しても良い。触媒としては、トリエチルアミン等の第三級アミン、ジブチル錫ジラウレート等の有機金属化合物等が挙げられる。
【0283】
前記反応では適宜溶媒を使用しても良い。溶媒としては、具体的には例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルアミルケトン、エチルイソアミルケトン、ジイソブチルケトン、メチルへキシルケトン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、安息香酸メチル、プロピオン酸メチル等のエステル類;テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメトキシエタン等のエーテル類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシブチルアセテート等のグリコールエーテル類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類や、脂肪族炭化水素類等が挙げられる。
【0284】
加水分解性シラン(s−1)としては、前記一般式(I)で表される加水分解性シラン(s−1−1)や、前記一般式(II)で表される分子内に(メタ)アクリロイルオキシ基及びウレタン結合を有する加水分解性シランである加水分解性シラン(S−1−2)の他に、例えば、分子内に(メタ)アクリロイルオキシ基とイソシアヌレート環構造との両者を有する加水分解性シラン(s−1−3)[以下、「加水分解性シラン(s−1−3)」と略すことがある。]が挙げられる。
【0285】
シリカ微粒子(F−1)と加水分解性シランとを反応させて反応性粒子(fa)を得る際に、加水分解性シラン(s−1)として加水分解性シラン(s−1−3)を用いて反応させることで、得られる反応性粒子(fa)は、光重合開始剤存在下での活性エネルギー線硬化性がより優れる場合がある。
【0286】
加水分解性シラン(s−1−3)としては、例えば、下記一般式(V)
【0287】
【化38】

【0288】
[式(V)中、R23は同一、又は異なって水素原子又はメチル基を示す。R24は同一、又は異なって2価の有機基を示す。R25は2価の有機基を示す。R、R及びRは前記と同じである。]で表される加水分解性シランが挙げられる。
【0289】
前記R24は、2価の有機基であれば特に限定されるものではない。2価の有機基としては、例えば、炭素数1〜100の2価の有機基が挙げられる。好ましくは炭素数1〜30の2価の有機基である。2価の有機基は、炭化水素基に限定されるものではなく、例えば、ウレタン結合、エステル結合、エーテル結合等を有していてもよい。
【0290】
前記R25は、2価の有機基であれば特に限定されるものではない。2価の有機基としては、例えば、炭素数1〜100の2価の有機基が挙げられる。好ましくは炭素数1〜30の2価の有機基である。2価の有機基は、炭化水素基に限定されるものではなく、例えば、ウレタン結合、エステル結合、エーテル結合等を有していてもよい。
【0291】
前記一般式(V)で表される加水分解性シランとしては、さらに具体的には例えば、下記一般式(VI)で表される加水分解性シラン及び下記一般式(VII)で表される加水分解性シランが挙げられる。
【0292】
【化39】

【0293】
[式(VI)中、R26は同一、又は異なって水素原子又はメチル基を示す。R27は同一、又は異なって炭素数1〜6の2価の炭化水素基を示す。R28は炭素数1〜4の2価の炭化水素基を示す。mは同一、又は異なって0〜5の整数を示す。R、R及びRは前記と同じである。式(VII)中、R29は同一、又は異なって水素原子又はメチル基を示す。R30は同一、又は異なって炭素数1〜6の2価の炭化水素基を示す。R29は炭素数1〜4の2価の炭化水素基を示す。R、R及びRは前記と同じである。]。
【0294】
前記R27は、炭素数1〜6の2価の炭化水素基であれば特に限定されるものではない。具体的には例えば、メチレン基、エチレン基、1,2−プロピレン基、1,3−プロピレン基、1,2−ブチレン基、1,4−ブチレン基、ヘキシレン基等が挙げられる。なかでも、炭素数2〜4の2価の炭化水素基であることが、得られる硬化塗膜層の透明性の点から好ましい。
【0295】
前記R28は、炭素数1〜4の2価の炭化水素基であれば特に限定されるものではない。具体的には例えば、エチレン基、1,2−プロピレン基、1,3−プロピレン基、1,2−ブチレン基、1,4−ブチレン基等が挙げられる。
【0296】
前記一般式(VI)で表される有機基としては、耐候性、透明性及び光重合開始剤存在下での活性エネルギー線硬化性がより優れる点から、R26が水素原子であり、R27がエチレン基であり、R28が1,3−プロピレン基であり、mが0である有機基が好ましい。
【0297】
前記R30は、炭素数1〜6の2価の炭化水素基であれば特に限定されるものではない。具体的には例えば、メチレン基、エチレン基、1,2−プロピレン基、1,3−プロピレン基、1,2−ブチレン基、1,4−ブチレン基、ヘキシレン基等が挙げられる。なかでも、炭素数2〜4の2価の炭化水素基であることが、得られる硬化塗膜の透明性の点から好ましい。
【0298】
前記R31は、炭素数1〜4の2価の炭化水素基であれば特に限定されるものではない。具体的には例えば、エチレン基、1,2−プロピレン基、1,3−プロピレン基、1,2−ブチレン基、1,4−ブチレン基等が挙げられる。
【0299】
前記一般式(VII)で表される有機基としては、耐候性、透明性及び光重合開始剤存在下での活性エネルギー線硬化性がより優れる点から、R29が水素原子であり、R30がエチレン基であり、R31が1,3−プロピレン基である有機基が好ましい。
【0300】
前記一般式(VI)で表される加水分解性シランを製造する方法を例示する。前記一般式(VI)で表される加水分解性シランは、例えば、下記一般式(VIII)で表される加水分解性シランと下記一般式(IX)で表される化合物とを反応させることにより得ることができる。
【0301】
【化40】

【0302】
前記一般式(VIII)中のR28、R、R及びRは前記と同じである。
【0303】
前記一般式(IX)中のR26、R27及びmは前記と同じである。
【0304】
前記一般式(VIII)で表される加水分解性シランとしては、具体的には例えば、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0305】
前記一般式(VIII)で表される加水分解性シランと前記一般式(IX)で表される化合物とを反応させる際の両者の配合割合は特に限定されるものではないが、通常、前記一般式(VIII)で表される加水分解性シランのアミノ基のモル数に対して、前記一般式(IX)で表される化合物のイソシアネート基を等モルとなるように用いて反応が行われる。
【0306】
この反応は、アミノ基とイソシアネート基とを反応させる常法に従って行うことができる。反応温度は、例えば、−78℃〜200℃、好ましくは−78℃〜100℃、更に好ましくは、−10℃〜40℃である。また、この反応は必要に応じて加圧(又は減圧)して実施できるが、0.02〜0.2MPa、特に0.08〜0.15MPaの圧力範囲が好ましい。
【0307】
前記反応では適宜溶媒を使用しても良い。溶媒としては、具体的には例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、安息香酸メチル、プロピオン酸メチル等のエステル類;テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメトキシエタン等のエーテル類;プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシブチルアセテート等のグリコールエーテル類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、脂肪族炭化水素類等が挙げられる。
【0308】
前記一般式(IX)で表される化合物は、例えば、下記一般式(X)で表される化合物と下記一般式(XI)で表される化合物とを反応させることにより得ることができる。
【0309】
【化41】

【0310】
前記一般式(X)で表される化合物は、いわゆる1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート環付加物であり、商品名としては、スミジュールN3300(住化バイエルウレタン社製)、デュラネートTPA100(旭化成ケミカルズ社製)等が挙げられる。
【0311】
前記一般式(XI)中のR26、R27及びmは前記と同じである。前記一般式(XI)で表される化合物は、例えば、mが0の場合の化合物としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。mが1〜5の場合の化合物としては、カプロラクトン変性ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。具体的には、商品名として、「プラクセルFA−1」、「プラクセルFA−2」、「プラクセルFA−2D」、「プラクセルFA−3」、「プラクセルFA−4」、「プラクセルFA−5」、「プラクセルFM−1」、「プラクセルFM−2」、「プラクセルFM−2D」、「プラクセルFM−3」、「プラクセルFM−4」、「プラクセルFM−5」(いずれもダイセル化学社製、プラクセル\PLACCELは登録商標)等が挙げられる。
【0312】
前記一般式(X)で表される化合物と前記一般式(XI)で表される化合物とを反応させる際の両者の配合割合は特に限定されるものではないが、前記一般式(X)で表される化合物のイソシアネート基と前記一般式(XI)で表される化合物の水酸基とがモル比で、通常、NCO/OH=1.05〜2.00、好ましくは1.10〜1.50となる配合割合である。
【0313】
この反応は、イソシアネート基と水酸基とを反応させる常法に従って行うことができる。反応温度は、例えば、0〜200℃、好ましくは20〜200℃、更に好ましくは、20℃〜120℃である。また、この反応は必要に応じて加圧(又は減圧)して実施できるが、0.02〜0.2MPa、特に0.08〜0.15MPaの圧力範囲が好ましい。当該反応は、通常、2〜10時間程度で終了する。
【0314】
前記反応では適宜溶媒を使用しても良い。溶媒としては、具体的には例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、安息香酸メチル、プロピオン酸メチル等のエステル類;テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメトキシエタン等のエーテル類;プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシブチルアセテート等のグリコールエーテル類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、脂肪族炭化水素類等が挙げられる。
【0315】
なお、前記一般式(X)で表される化合物と前記一般式(XI)で表される化合物とを反応させることにより得られる生成物には、前記一般式(IX)で表される化合物のほかに、下記一般式(XII)
【0316】
【化42】

【0317】
[式(XII)中、R26、R27及びmは前記と同じである。]で表される化合物等が含まれる場合がある。
【0318】
そして、前記一般式(VI)で表される加水分解性シランを製造する際、及び前記一般式(VI)で表される加水分解性シランを反応させて反応性粒子(fa)を製造する際に、その製造の原料中に前記一般式(XII)で表される化合物等が含まれていても特段問題はない。
【0319】
続いて、前記一般式(VII)で表される加水分解性シランを製造する方法を例示する。前記一般式(VII)で表される加水分解性シランは、例えば、下記一般式(XIII)で表される加水分解性シランと下記一般式(XIV)で表される化合物とを反応させることにより得ることができる。
【0320】
【化43】

【0321】
前記一般式(XIII)中のR31、R、R及びRは前記と同じである。
【0322】
前記一般式(XIV)中のR29及びR30は前記と同じである。
【0323】
前記一般式(XIII)で表される加水分解性シランとしては、具体的には例えば、3−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0324】
前記一般式(XIV)で表される化合物としては、例えば、ビス(2−アクリロイルオキシエチル)ヒドロキシエチルイソシアヌレート、ビス(2−アクリロイルオキシプロピル)ヒドロキシエチルイソシアヌレート等が挙げられる。商品名としては、アロニックスM−215、アロニックスM−313(いずれも東亞合成社製、アロニックスは登録商標)等が挙げられる。
【0325】
前記一般式(XIII)で表される加水分解性シランと前記一般式(XIV)で表される化合物とを反応させる際の両者の配合割合は特に限定されるものではないが、通常、前記一般式(XIII)で表される加水分解性シランのイソシアネート基のモル数に対して、前記一般式(XIV)で表される化合物の水酸基を等モルとなるように用いて反応が行われる。
【0326】
この反応は、イソシアネート基と水酸基とを反応させる常法に従って行うことができる。反応温度は、例えば、0〜200℃、好ましくは20〜200℃、更に好ましくは、20℃〜120℃である。また、この反応は必要に応じて加圧(又は減圧)して実施できるが、0.02〜0.2MPa、特に0.08〜0.15MPaの圧力範囲が好ましい。当該反応は、通常、2〜10時間程度で終了する。
【0327】
前記反応では適宜溶媒を使用しても良い。溶媒としては、具体的には例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、安息香酸メチル、プロピオン酸メチル等のエステル類;テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメトキシエタン等のエーテル類;プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシブチルアセテート等のグリコールエーテル類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、脂肪族炭化水素類等が挙げられる。
【0328】
なお、前記一般式(XIV)で表される化合物は、例えば、アロニックスM−215やアロニックスM−313(いずれも東亞合成社製、アロニックスは登録商標)等の名称で、トリス(2−アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、トリス(2−アクリロイルオキシプロピル)イソシアヌレート等の下記一般式(XV)
【0329】
【化44】

【0330】
[式(XV)中、R29及びR30は前記と同じである。]で表される化合物との混合物として販売されている。
【0331】
そして、前記一般式(VII)で表される加水分解性シランを製造する際、及び前記一般式(VII)で表される加水分解性シランを反応させて反応性粒子(fa)を製造する際に、その製造の原料中に前記一般式(XV)で表される化合物等が含まれていても特段問題はない。
【0332】
加水分解性シラン(s−1)以外の加水分解性シラン(s−2)
上記加水分解性シラン(s−1)に加えて、反応性粒子(Fa)を得る際に、必要に応じて炭素数1以上のアルキル基を有する加水分解性シラン(s−2)[以下、加水分解性シラン(s−2)と略すことがある]を加水分解性シラン(s−1)とともにシリカ微粒子(F−1)と反応させても良い。炭素数1以上のアルキル基を有するアルコキシシランやビニルシランを反応させることで、得られる反応性粒子(fa)を用いて得られる塗膜の耐水性を向上させる場合がある。かかる炭素数1以上のアルキル基を有するアルコキシシランとしては、例えば、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン等が挙げられ、これら例示した化合物中のメトキシ基をエトキシ基に置換した化合物(例えばメチルトリエトキシシラン等)も挙げられる。また、かかる炭素数1以上のアルキル基を有するビニルシランとしては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0333】
反応性粒子(fa)の製造方法
反応性粒子(fa)は、シリカ微粒子(F−1)と加水分解性シラン(s−1)とを反応させて得る、又はシリカ微粒子(F−1)と加水分解性シラン(s−1)及び加水分解性シラン(s−2)の混合物、[以下、反応性粒子(fa)の製造方法の説明において、加水分解性シラン(s−1)と、加水分解性シラン(s−1)及び加水分解性シラン(s−2)の混合物とをまとめて、「加水分解性シラン」と略すことがある。]とを反応させて得る。シリカ微粒子(F−1)と加水分解性シランとを反応させる方法としては、特に限定されない。例えば、[i]水を含む有機溶剤の存在下にシリカ微粒子(F−1)と加水分解性シランとを混合し、加水分解縮合を行う方法、[ii]水を含む有機溶剤の存在下で加水分解性シランを加水分解した後、加水分解性シランの加水分解物とシリカ微粒子(F−1)とを縮合させる方法、[iii]シリカ微粒子(F−1)と加水分解性シランとを、水、有機溶剤及び前述した重合性不飽和化合物(C)等のその他の成分の存在下で混合し、加水分解縮合を一度に行う方法が挙げられる。ここで、これら製造方法において使用する水は、原材料に含まれる水、例えば、コロイダルシリカ微粒子の分散媒である水であってもよい。
【0334】
反応性粒子(fa)を製造する方法についてより具体的に説明する。反応性粒子(fa)は、例えば、シリカ微粒子(F−1)であるコロイダルシリカ微粒子と、加水分解性シランと、任意で低級アルコールと、任意で重合性不飽和化合物との存在下で、コロイダルシリカ微粒子中の分散媒、及び低級アルコール(加水分解性シランを加水分解して生じた低級アルコールを含む。)を常圧又は減圧下で低級アルコールよりも高沸点の溶剤とともに共沸留出させ、分散媒を該溶剤に置換した後、加熱下で脱水縮合反応させることにより製造することができる。
【0335】
この製造方法においては、シリカ微粒子(F−1)であるコロイダルシリカ微粒子と、加水分解性シランと、任意で低級アルコールと、任意で重合性不飽和化合物との混合物に必要により加水分解触媒を加え、常温又は加熱下で攪拌する等の常法によって、加水分解性シランの加水分解を行う。続いて、コロイダルシリカ微粒子中の分散媒、及び低級アルコールを常圧又は減圧下で低級アルコールよりも高沸点の溶剤とともに共沸留出させ、分散媒を該溶剤に置換した後、60〜150℃、好ましくは80〜130℃の温度で、通常不揮発分濃度を5〜50質量%の範囲に保ちながら、0.5〜10時間攪拌下で反応させる。反応後には、縮合反応又は加水分解で生ずる水及び低級アルコールを、低級アルコールよりも高沸点の溶剤とともに共沸留去することが好ましい。
【0336】
上記反応に用いられる溶媒は、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、シクロヘキサン等の炭化水素類;トリクロルエチレン、テトラクロルエチレン等のハロゲン化炭化水素類;1,4−ジオキサン、ジブチルエーテル等のエーテル類;メチルイソブチルケトン等のケトン類;酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸エチル、プロピオン酸エチル等のエステル類;エチレングリコールモノブチルエーテル等の多価アルコール誘導体等が挙げられる。
【0337】
反応中の不揮発分濃度は5〜50質量%の範囲が好ましい。不揮発分濃度が5質量%未満、すなわち溶剤が95質量%を超える場合、シリカ微粒子(F−1)と加水分解性シランとの反応が不十分であり、このような反応性粒子を含む活性エネルギー硬化性組成物により得られる硬化塗膜層は透明性に劣る場合がある。一方、不揮発分濃度が50質量%を超えると、生成物がゲル化する恐れがある。
【0338】
これらの製造方法によりシリカ微粒子(F−1)表面のケイ素原子と、加水分解性シランのケイ素原子が酸素原子を介して結合することにより、シリカ微粒子(F−1)と加水分解性シランとが化学的に結合した反応性粒子(fa)が得られる。
【0339】
加水分解性シラン(s−1)は上記で例示された化合物を単独で又は2種以上を組合せて用いても良い。
【0340】
光重合開始剤存在下での活性エネルギー線硬化性の点から、加水分解性シラン(s−1−1)及び/又は加水分解性シラン(s−1−2)と、加水分解性シラン(s−1−3)とを併用することが好ましく、加水分解性シラン(s−1−1)と加水分解性シラン(s−1−3)とを併用することがより好ましい。加水分解性シラン(s−1−1)と加水分解性シラン(s−1−3)とを併用する際の配合割合は、加水分解性シラン(s−1−1)及び加水分解性シラン(s−1−2)の合計量/加水分解性シラン(s−1−3)=10/90〜90/10(質量比)であることが好ましく、20/80〜80/20(質量比)であることがより好ましい。
【0341】
また、加水分解性シラン(s−2)として、炭素数1以上のアルキル基を有するアルコキシシランを用いると、得られる積層体の耐水性が向上する場合がある。その配合割合は、加水分解性シラン(s−1)の合計質量に対して80質量%以下、好ましくは50質量%以下の範囲である。
【0342】
反応性粒子(fa)を得る際の加水分解性シラン(s−1)の配合割合は、得られる積層体の透明性の観点から、粒子径によって異なるが、シリカ微粒子(F−1)100質量部に対して、好ましくは1〜99質量部であり、より好ましくは5〜90質量部である。
【0343】
活性エネルギー線硬化型プライマー組成物においてシリカ粒子(F)の使用量は、特に限定されるものではないが、得られる硬化塗膜層と後述する無機物質層との付着性、ワレ防止及び透明性の点から、活性エネルギー線硬化型プライマー組成物の不揮発分100質量部に対して、5〜80質量部であり、より好ましくは10〜75質量部であり、特に好ましくは20〜70質量部の範囲である。
【0344】
<その他の成分>
本発明で用いる活性エネルギー線硬化型プライマー組成物には、さらに必要に応じて各種添加剤、飽和樹脂等を配合してもよく、所望により溶剤で希釈しても良い。添加剤としては、例えば、増感剤、重合禁止剤、酸化防止剤、消泡剤、表面調整剤、可塑剤、着色剤等が挙げられる。飽和樹脂は、重合性不飽和基を有さない樹脂であり、例えば、飽和アクリル樹脂、飽和ポリエステル樹脂、飽和ウレタン樹脂等が挙げられる。
【0345】
表面調整剤としては、シリコン系表面調整剤(G)、アクリル系表面調整剤、フッ素系表面調整剤などを挙げることができ、中でも、特にCVD層との付着性の点から、シリコン系表面調整剤が好ましく、特に好ましくは、重合性不飽和基含有シリコン系表面調整剤(Ga)がCVD層とプライマー層との層間付着性の点から好ましい。
【0346】
シリコン系表面調整剤(G)は、ジメチルポリシロキサン等のオルガノポリシロキサン、オルガノポリシロキサンを変性した変性シリコン等が挙げられる。変性シリコンとしては、具体的には、アルキル変性ポリシロキサン、フェニル変性ポリシロキサン、ポリエーテル変性ポリシロキサン等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0347】
具体的には例えば、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、ポリエーテル変性ジメチルポリシロキサン、ポリエステル変性ジメチルポリシロキサン、ポリエステル変性ポリジメチルシロキサン、ポリメチルアルキルシロキサン、ポリエステル変性ポリメチルアルキルシロキサン、アラルキル変性ポリメチルアルキルシロキサンなどが挙げられる。
【0348】
上記シリコン系表面調整剤(G)としては、市販品を用いることができる。
例えば、DC11PA、ST80PA、DC3074、DC3037、SR2402(以上、商品名、東レ・ダウコーニング社製);KP−321、KP−324、KP−327、KR−9218、X−40−9220(以上、商品名、信越化学工業社製);TSR165、XR−31B1763(以上、商品名、東芝シリコン社製);BYK−341、BYK−344、BYK−306、BYK−307、BYK−325、BYK−315、BYK−320、BYK−322、BYK−323、BYK−300、BYK−302、BYK−330、BYK−333、BYK−335、BYK−370、BYK−SILCLEAN3700(以上、商品名、ビックケミー・ジャパン社製);DISPARLON 1711、1751N、1761、LS−001、LS−050(以上、商品名、楠本化成株式会社製);ポリフロー KL−400HF、KL−401、KL−402、KL−403、KL−404(以上、商品名、共栄社化学社製商品名)などが挙げられる。
【0349】
不飽和基含有シリコン系表面調整剤(Ga)は、上記ジメチルポリシロキサン等のオルガノポリシロキサンに重合性不飽和基を導入してなる変性シリコン等が挙げられる。
【0350】
重合性不飽和基としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基等が挙げられる。重合性不飽和基の数は特に制限はないが、光重合開始剤存在下での活性エネルギー線硬化性の点から、少なくとも1つ以上、好ましくは2つ以上含有することが良い。
【0351】
不飽和基含有シリコン系表面調整剤として、具体的には、(メタ)アクリロイル基含有ポリシロキサン、ビニル基含有ポリシロキサンやその他不飽和基含有ポリエーテル変性ポリシロキサン、重合性不飽和基含有ポリエステル変性ポリシロキサンなどが挙げられる。
【0352】
上記重合性不飽和基含有シリコン系表面調整剤(Ga)としては、市販品を用いることができる。
例えば、(メタ)アクリロイル基含有ポリシロキサンとしては、BYK−UV−3500、BYK−UV−3510、BYK−UV−3570(以上、商品名、ビックケミー・ジャパン社製);サイラプレーンFM−7711、FM−7721、FM−7725(以上、商品名、JNC株式会社製)、X−22−2457、X−22−2458、X−22−2459、X−22−1602、X−22−1603(以上、商品名、信越シリコーン株式会社製);TEGO Rad−2100、−2200N、−2250、−2300、−2500、−2600、−2700(以上、TEGO Radシリーズ、商品名、エボニックジャパン社製)などが挙げられる。
【0353】
また、ビニル基含有ポリシロキサンとしては、サイラプレーンFM−2231(商品名、JNC株式会社製)等が挙げられる。
【0354】
上記、重合性不飽和基含有シリコン系表面調整剤(Ga)の中でもCVD層との付着性及び相溶性の点から、(メタ)アクリロイル基含有ポリシロキサンが好ましい。
【0355】
重合性不飽和基含有シリコン系表面調整剤(Ga)を使用する場合には、CVD層との付着性の観点から、活性エネルギー線硬化型プライマー組成物の不揮発分100質量部に対して、40質量部以下、好ましくは0.05〜35質量部、より好ましくは1〜35質量部の範囲である。重合性不飽和基含有シリコン系表面調整剤(Ga)を配合すると、重合性不飽和基を有する他の成分と架橋し、かつ塗膜表面に働き、CVD層との付着性を向上させるものと考えられる。
【0356】
その他の表面調整剤を含有する場合の配合量は、相溶性および塗膜性能を著しく悪化させない範囲であれば特に制限されないが、通常、活性エネルギー線硬化型プライマー組成物の不揮発分100質量部に対して、5質量部以下、好ましくは0.01質量部〜3質量部の範囲である。
【0357】
希釈に用いる溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、安息香酸メチル、プロピオン酸メチル等のエステル類;テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメトキシエタン等のエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシブチルアセテート等のグリコールエーテル類;芳香族炭化水素類、脂肪族炭化水素類等が挙げられる。これらは、粘度の調整、塗布性の調整等の目的に応じて適宜組合せて使用することができる。
【0358】
活性エネルギー線硬化型プライマー組成物の不揮発分は特に限定されるものではない。例えば、好ましくは20〜100質量%であり、さらに好ましくは25〜70質量%である。これら範囲は、塗膜の平滑性及び乾燥時間の短縮化の点で意義がある。
【0359】
本発明における、樹脂基材に活性エネルギー線硬化型プライマー組成物を塗布する方法は特に制限されず、公知の方法を採用できる。該活性エネルギー線硬化型プライマー組成物を例えば、塗装によって塗布し、硬化せしめ硬化塗膜層(I)を得る。その塗装方法としては、例えば、ローラー塗装、ロールコーター塗装、スピンコーター塗装、カーテンロールコーター塗装、スリットコーター塗装、スプレー塗装、静電塗装、浸漬塗装、シルク印刷、スピン塗装等が挙げられる。
【0360】
前記活性エネルギー線硬化型プライマー組成物を塗布し、硬化塗膜層(I)を得る際、必要に応じて乾燥を行うことができる。乾燥は、添加溶剤を除去できる条件であれば特に限定されるものではない。例えば、20〜120℃の乾燥温度において3〜20分間の乾燥時間で行うことができる。
【0361】
硬化塗膜層(I)の厚さ(以下膜厚)は、目的に応じて適宜設定される。例えば膜厚は3〜30μmが好ましく、5〜15μmがさらに好ましい。膜厚がこれら範囲の下限値以上の場合には、得られる積層体の耐候性(特に被塗物との付着性)に優れる。またこれら範囲の上限値以下の場合には塗膜の硬化性に優れる。
【0362】
活性エネルギー線の照射源及び照射量は特に限定されるものではない。例えば活性エネルギー線の照射源としては、超高圧、高圧、中圧、低圧の水銀灯、ケミカルランプ、カーボンアーク灯、キセノン灯、メタルハライド灯、蛍光灯、タングステン灯、太陽光等が挙げられる。
【0363】
照射量は、例えば好ましくは100〜10,000mJ/cm、さらに好ましくは300〜5,000mJ/cmの範囲が挙げられる。
【0364】
上記のようにして、樹脂基材と硬化塗膜層及び硬化塗膜層と無機物質層(II)の双方の付着性に優れる活性エネルギー線硬化型プライマー組成物による硬化塗膜層(I)が形成される。
次に無機物質層(II)について詳しく述べる。
【0365】
無機物質層(II)
本発明における無機物質層(II)としては、乾式成膜工法で形成されたものであれば特に制限されるものではなく、例えば、Si、Ti、Zn、Al、Ga、In、Ce、Bi、Sb、B、Zr、Sn、及びTa等の元素を有する少なくとも1種以上の各種金属又は金属酸化物、窒化物及び硫化物等を主成分とする層が挙げられる。また、例えば、高硬度で絶縁性に優れたダイヤモンドライクカーボン(以下DLC)膜層も挙げられる。DLC膜は、炭素間のSP3結合を主体としたアモルファス構造の炭素膜で、非常に硬く、低摩擦係数、耐摩耗性、耐食性、ガスバリア性を有し、絶縁性に優れたダイヤモンド状炭素膜である。
【0366】
本発明における無機物質層(II)としては、少なくとも1層以上であればよく、複層でも構わない。無機物質層(II)が複層である場合、それらの積層順や無機物質層(II)の種類も特に限定されない。また、無機物質層(II)としては、紫外線吸収層や機能性層等の種々の機能層であっても良い。
【0367】
これらの中でも、最表層の無機物質層(II)は、高い硬度、硬化塗膜層との付着性、積層膜の透明性及び優れた耐化学安定性を備えた表面層が得られる観点から金属酸化物、特に酸化珪素化合物からなる層であることが、特に好ましい。
【0368】
無機物質層(II)の一層をDLC層とする場合には、前記性能を有している点から、上記金属酸化物層を積層した上に、最表層として積層することが好ましい。
【0369】
本発明における無機物質層(II)の積層方法は、乾式成膜工法であれば特に限定されず、例えば、抵抗加熱蒸着、電子ビーム蒸着、分子線エピタキシー法、イオンビームデポジション、イオンプレーティング、スパッタリング等の物理気相成長法(以下、「PVD」ともいう)や、熱CVD、プラズマCVD、光CVD、エピタキシャルCVD、アトミックレイヤーCVD、catCVD等の化学気相成長法(以下、「CVD」ともいう)等の乾式成膜工法があるが、特にこの中でも成膜温度や成膜速度の点からプラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)が好ましい。ここでいう、乾式成膜工法とは材料表面を気相または融解状態を用いて処理することで、一般にドライプロセスと呼ばれることもある。
【0370】
無機物質層(II)として、酸化珪素層をプラズマCVDで形成する際には、原料として有機珪素化合物を好適に使用できる。具体的な例としては、テトラエトキシシラン、ヘキサメチルジシロキサン、トリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、テトラメトキシシラン、メトキシトリメチルシラン、テトラメチルシラン、ヘキサメチルトリシロキサン、テトラクロロシラン、トリクロロメチルシラン、トリメチルクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、ジメチルクロロシラン等を挙げることができる。
【0371】
また、DLC層をプラズマCVDで形成する際には、原料として炭化水素系化合物を用いる。具体的な例としては、トルエン、アセチレン、メタン、ヘキサン等が挙げられる。
【0372】
無機物質層(II)をプラズマCVD法で形成する際に、原料の有機珪素化合物や炭化水素系化合物のほかに、分解ガスとして、水素ガス、メタンガス、オゾンガス、酸素ガス、一酸化炭素ガス、二酸化炭素ガス、窒素ガス、二酸化窒素ガス、一酸化二窒素ガス、等を用いる。この中でも、酸素ガス、オゾンガス、二酸化窒素ガス、一酸化二窒素ガス、二酸化ガス、一酸化ガス等のいずれか又は2種以上の組合せ等を好適に用いることができる。
【0373】
このように、種々の金属原料を含む原料と、分解ガスを適宜選択することで、様々な無機物質層(II)を形成することができ、無機物質層(II)を形成するための原料等は、1種又は2種以上併用しても構わない。
【0374】
また、無機物質層(II)の厚みは1μm以上であることが、耐擦傷性の点から好ましく、十分な耐摩耗性を保持するうえで、2μm以上であることがより好ましい。無機物質層(II)の厚みの上限は特に限定されないが、好ましくは25μm以下、特に好ましくは15μm以下である。無機物質層(II)の厚みが1μm未満では、十分な耐擦傷性を発現させることができないことがある。無機物質層(II)の厚みを調整するには、プラズマCVDにおいて、処理時間等を調整すればよい。
【0375】
本発明による積層体は、上記のようにして積層した無機物質層が無機物であることから、有機物被膜にない優れた外観、耐候性(特に耐候性試験後の塗膜外観)及び耐擦傷性を有しており、また該プライマー組成物による硬化塗膜層(I)との付着性に優れ、耐候性、耐水性及び耐擦傷性に非常に優れたものであることができる。
【実施例】
【0376】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。尚、「部」及び「%」は、別記しない限り「質量部」及び「質量%」を示す。なお、製造例における構造解析及び測定は、本明細書に記載の前記分析装置に加え、以下の分析装置及び測定方法を用いて行った。
【0377】
29Si−NMR、H−NMR分析)
装置:JEOL社製 FT−NMR EX−400
溶媒:CDCl
内部標準物質:テトラメチルシラン
(FT−IR分析)
装置:日本分光社製 FT/IR−610。
【0378】
≪シルセスキオキサン化合物(A)の製造≫
(製造例1)A−1
還流冷却器、温度計、攪拌機を取り付けたセパラブルフラスコに、KBM−5103(商品名、信越化学製、3−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン) 142部、イソプロピルアルコール 500部、メトキノン 0.10部、テトラブチルアンモニウムフルオリド 1.0部、脱イオン水 20部を配合し、20℃で24時間反応させ、黄色透明の液体を得た。減圧蒸留にてこれを不揮発分50%まで濃縮し、エチレングリコールモノブチルエーテル 150部を投入した。減圧蒸留をさらに継続し、無色透明の液体である生成物(A−1)の不揮発分40%溶液250部を得た。
【0379】
生成物(A−1)の重量平均分子量は1,800であり、UV検出器(測定波長=335nm)の分子量分布は検出されなかった。
生成物(A−1)について29Si−NMR測定を行った結果、T3体比率が90%以上であり、わずかにT2構造の存在が示された。
生成物(A−1)についてH−NMR測定を行った結果、珪素に結合したメチレン基に対する不飽和基のモル比は100%であり、配合比率と一致した。
上記の結果より、生成物(A−1)は3−アクリロイルオキシプロピル基(P−I)を有するシルセスキオキサン化合物であることが確認された。
【0380】
【化45】

【0381】
(製造例2)A−3
還流冷却器、温度計及び攪拌機を取り付けたセパラブルフラスコに、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン 100部、2−ヒドロキシエチルアクリレート 47部、メトキノン 0.10部を仕込み、乾燥空気を吹き込みながら100℃で12時間反応させ、生成物(A−2)を得た。次に、還流冷却器、温度計及び攪拌機を取り付けたセパラブルフラスコに、トルエン 300部、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド40%のメタノール溶液 30部及び脱イオン水 12部を入れ、混合物を氷浴で2℃まで冷却した。ここに、テトラヒドロフラン 300部と生成物(A−2) 147部を混合した溶液を投入し、20℃にて24時間反応させた。減圧蒸留にて揮発分を除去した後、これをプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート100部に溶解し、生成物(A−3)の不揮発分40%溶液を得た。
生成物(A−3)について29Si−NMR分析を行った結果、Siに結合した3つの酸素原子が全て他のSiと結合したT3構造に由来する−70ppm付近のピークと、一つのヒドロキシシリル基を有するT2構造に由来する−59ppmのピークが確認された。これらのピークの積分強度比は、T3構造に由来するピーク/T2構造に由来するピーク=90/10であった。
【0382】
また、生成物(A−3)についてH−NMR分析を行った結果、Siに結合したメチレン基に由来する0.6ppmのピークが確認された。また、アクリロイルオキシ基の炭素−炭素不飽和結合に由来する5.9ppm、6.1ppm、6.4ppmのピークが確認された。これらのピーク強度比より計算したSiに結合したメチレン基に対するアクリロイルオキシ基の炭素−炭素不飽和結合のモル比率は、1.01であった。
また、生成物(A−3)についてFT−IR分析を行った結果、ウレタン結合に帰属する1540cm−1付近のピークが確認された。
また、生成物(A−3)の重量平均分子量は2,500であった。
生成物(A−3)についての前記29Si−NMR、H−NMR、FT−IR、重量平均分子量等の結果から、生成物(A−3)が、ケイ素原子に直接に結合した有機基の全てが下記式(P−II)で表される有機基
【0383】
【化46】

【0384】
を有する重量平均分子量2,500のシルセスキオキサン化合物であることが確認された。
【0385】
<重合性不飽和化合物(C)の製造>
(製造例3)C−1
還流冷却器、温度計、空気導入管及び攪拌機を備えた4つ口フラスコにスミジュールN3300(住化バイエルウレタン社製) 179部、2−ヒドロキシエチルアクリレート 109部、酢酸イソブチル 192部及びp−メトキシフェノール 1.0部を配合し、攪拌した。空気を吹き込みながら100℃まで昇温させ、100℃で8時間反応させた。反応後、エチレングリコールモノブチルエーテル 192部を配合して80℃まで昇温させ、80℃で1時間攪拌した後、減圧蒸留にて酢酸イソブチルを除去し、生成物(C−1)の不揮発分60%溶液を得た。
【0386】
得られた生成物(C−1)はNCO価=0mgNCO/gであった。上記の結果から、生成物(C−1)は、下記式(P−III)で表される化合物であった。
【0387】
【化47】

【0388】
(製造例4)C−2
還流冷却器、温度計、空気導入管及び攪拌機を備えた4つ口フラスコにスミジュールN3300(住化バイエルウレタン社製) 179部、4−ヒドロキシブチルアクリレート 135部、酢酸イソブチル 209部及びp−メトキシフェノール 0.20部を配合し、攪拌した。空気を吹き込みながら100℃まで昇温させ、100℃で8時間反応させた。反応後、エチレングリコールモノブチルエーテル 209部を配合して80℃まで昇温させ、80℃で1時間攪拌した後、減圧蒸留にて酢酸イソブチルを除去し、生成物(C−2)の不揮発分60%溶液を得た。
【0389】
得られた生成物(C−2)はNCO価=0mgNCO/gであった。上記の結果から、生成物(C−2)は、下記式(P−IV)で表される化合物であった。
【0390】
【化48】

【0391】
<有機物変性シリカ(f)の製造>
(製造例5) F−1
還流冷却器、温度計、空気導入管及び攪拌機を備えた4つ口フラスコにスミジュールN3300(住化バイエルウレタン社製) 179部、2−ヒドロキシエチルアクリレート 87部、酢酸イソブチル 205部及びp−メトキシフェノール 1.0部を配合し、攪拌した。空気を吹き込みながら100℃まで昇温させ、100℃で8時間反応させた。反応後、5℃まで冷却し、3−アミノプロピルトリエトキシシラン 41部を1時間かけて滴下した。この際、フラスコ内の反応物の温度が20℃を超えないように制御した。続いて、エチレングリコールモノブチルエーテル 205部を配合して80℃まで昇温させ、80℃で1時間攪拌した後、減圧蒸留にて酢酸イソブチルを除去し、生成物(F−1)の不揮発分60%溶液を得た。
【0392】
得られた生成物(F−1)はNCO価=0mgNCO/g、アミン価=0mgKOH/gであった。また、生成物(F−1)についてH−NMR分析を行った結果、生成物(F−1)のSiに結合したメチレン基に対するアクリロイルオキシ基の炭素−炭素不飽和結合のモル比率は4.0であった。また、生成物(A−1)について29Si−NMR分析を行った結果、生成物(F−1)中のエトキシシリル基の加水分解は確認されなかった。
【0393】
上記の結果から、生成物(F−1)は、下記式(F−I)で表される化合物と下記式(F−II)で表される化合物との混合物であり、
【0394】
【化49】

【0395】
その比率は、前記式(F−I)で表される化合物/前記式(F−II)で表される化合物=60/40(モル比)であった。
【0396】
(製造例6)F−2
還流冷却器、温度計及び攪拌機を取り付けたセパラブルフラスコに、コロイダルシリカ微粒子(分散媒;イソプロパノール、シリカ濃度;30質量%、平均一次粒子径;12nm、商品名;IPA−ST、日産化学工業社製) 333部(シリカ微粒子は100部)、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン 10部、p−メトキシフェノール 0.20部及びイソプロパノール 227部を配合した後、攪拌しながら昇温した。揮発成分の還流が始まったところで、プロピレングリコールモノメチルエーテルを加えて共沸留出させ、反応系内の溶剤を置換した。続いて、製造例5で得られた生成物(F−1)の不揮発分60%溶液 17部[前記式(F−I)で表される化合物が6.0部]を添加し、95℃で2時間攪拌しながら脱水縮合反応を行った後、60℃に温度を下げてテトラブチルアンモニウムフルオリド 0.03部を加えて更に1時間攪拌しながら反応させた。反応終了後、減圧状態で揮発成分を留出させ、さらにプロピレングリコールモノメチルエーテルを加えて共沸留出させた。プロピレングリコールモノメチルエーテルを加えて共沸留出する操作を数回行うことで溶剤を置換し、反応性粒子及び前記式(F−II)で表される化合物の不揮発分30%の混合液を得た。配合量から計算される反応性粒子と前記式(F−II)で表される化合物との比率は、反応性粒子/前記式(F−II)で表される化合物=100/4(質量比)であった。なお、本製造例で得られた反応性粒子及び前記式(F−II)で表される化合物の混合物を生成物(F−2)と称する。
【0397】
(製造例7)F−3
還流冷却器、温度計、空気導入管及び攪拌機を備えた4つ口フラスコにアロニックス(登録商標)M−313(東亞合成社製、イソシアヌル酸EO変性ジ及びトリアクリレート) 179部、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン 38部、酢酸イソブチル 145部及びp−メトキシフェノール 1.0部を配合し、攪拌した。空気を吹き込みながら100℃まで昇温させ、100℃で8時間反応させた。反応後、エチレングリコールモノブチルエーテル 145部を配合して80℃まで昇温させ、80℃で1時間攪拌した後、減圧蒸留にて酢酸イソブチルを除去し、生成物(F−3)の不揮発分60%溶液を得た。
【0398】
得られた生成物(F−3)はNCO価=0mgNCO/gであった。また、生成物(F−3)についてH−NMR分析を行った結果、生成物(F−3)のSiに結合したメチレン基に対するアクリロイルオキシ基の炭素−炭素不飽和結合のモル比率は7.7であった。また、生成物(A−3)について29Si−NMR分析を行った結果、生成物(F−3)中のエトキシシリル基の加水分解は確認されなかった。
【0399】
上記の結果から、生成物(F−3)は、下記式(F−III)で表される化合物と下記式(F−IV)で表される化合物との混合物であり、
【0400】
【化50】

【0401】
その比率は、前記式(F−III)で表される化合物/前記式(F−IV)で表される化合物=35/65(モル比)であった。
【0402】
(製造例8) F−4
還流冷却器、温度計及び攪拌機を取り付けたセパラブルフラスコに、コロイダルシリカ微粒子(分散媒;イソプロパノール、シリカ濃度;30質量%、平均一次粒子径;12nm、商品名;IPA−ST、日産化学工業社製) 333部(シリカ微粒子は100部)、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン 10部、p−メトキシフェノール 0.20部及びイソプロパノール 227部を配合した後、攪拌しながら昇温した。揮発成分の還流が始まったところで、プロピレングリコールモノメチルエーテルを加えて共沸留出させ、反応系内の溶剤を置換した。続いて、製造例7で得られた生成物(F−3)の不揮発分60%溶液17部[前記式(F−III)で表される化合物が4.0部]を添加し、95℃で2時間攪拌しながら脱水縮合反応を行った後、60℃に温度を下げてテトラブチルアンモニウムフルオリド 0.03部を加えて更に1時間攪拌しながら反応させた。反応終了後、減圧状態で揮発成分を留出させ、さらにプロピレングリコールモノメチルエーテルを加えて共沸留出させた。プロピレングリコールモノメチルエーテルを加えて共沸留出する操作を数回行うことで溶剤を置換し、反応性粒子及び前記式(F−IV)で表される化合物の不揮発分30%の混合液を得た。配合量から計算される反応性粒子と前記式(F−IV)で表される化合物との比率は、反応性粒子/前記式(F−IV)で表される化合物=100/5(質量比)であった。なお、本製造例で得られた反応性粒子及び前記式(F−IV)で表される化合物の混合物を生成物(F−4)と称する。
【0403】
(製造例9)F−5
還流冷却器、温度計及び攪拌機を取り付けたセパラブルフラスコに、コロイダルシリカ微粒子(分散媒;イソプロパノール、シリカ濃度;30質量%、平均一次粒子径;12nm、商品名;IPA−ST、日産化学工業社製) 333部(シリカ微粒子は100部)、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン 10部、p−メトキシフェノール 0.20部及びイソプロパノール233部を配合した後、攪拌しながら昇温した。揮発成分の還流が始まったところで、プロピレングリコールモノメチルエーテルを加えて共沸留出させ、反応系内の溶剤を置換した。続いて、95℃で2時間攪拌しながら脱水縮合反応を行った後、60℃に温度を下げてテトラブチルアンモニウムフルオリド 0.03部を加えて更に1時間攪拌しながら反応させた。反応終了後、減圧状態で揮発成分を留出させ、さらにプロピレングリコールモノメチルエーテルを加えて共沸留出させた。プロピレングリコールモノメチルエーテルを加えて共沸留出する操作を数回行うことで溶剤を置換し、反応性粒子の不揮発分30%分散液を得た。なお、本製造例で得られた反応性粒子を生成物(F−5)と称する。
【0404】
≪硬化塗膜層(I)用プライマー組成物の作製≫
(製造例10) 活性エネルギー線硬化型プライマー組成物 No.1
製造例1で得られた生成物(A−1)溶液 33部(不揮発分 10部)、
製造例3で得られた生成物(C−1)溶液 100部(不揮発分 60部)
Ebecryl(登録商標) 8804(注1)15部、
アロニックス(登録商標) M−313(注4) 15部、
イルガキュア(登録商標) 184(注7) 3.0部、
イルガキュア(登録商標) 819(注9) 0.40部、
TINUVIN(登録商標) 928(注11) 3.0部、
TINUVIN(登録商標) 292(注14) 1.0部、
及びBYK(登録商標)−333(注15) 0.10部を混合し、
1−メトキシ−2−プロパノールで不揮発分を調整して、不揮発分30%の活性エネルギー線硬化型プライマー組成物No.1を得た。
【0405】
(製造例11〜32)
製造例10において、各成分の種類及び配合量を表1及び表2に記載の各成分の種類及び配合量にする以外は製造例10と同様にして、活性エネルギー線硬化型プライマー組成物No.1〜23を得た。なお、表1及び表2の配合量は不揮発分量を示す。
【0406】
(注1)Ebecryl(登録商標) 8804:ダイセル・サイテック社製、商品名、2官能ウレタンアクリレート
(注2)Ebecryl(登録商標) 8402:ダイセル・サイテック社製、商品名、高耐候性2官能ウレタンアクリレート
(注3)CN9001:サートマー社製、商品名、2官能ウレタンアクリレート
(注4)アロニックス(登録商標) M−313:東亞合成社製、商品名、イソシアヌル酸EO変性−ジ及びトリアクリレートの混合物、ジアクリレート比(%)30〜40%
(注5)アロニックス(登録商標) M−315:東亞合成社製、商品名、イソシアヌル酸EO変性−ジ及びトリアクリレートの混合物、ジアクリレート比(%)3〜13%
(注6)アロニックス(登録商標) M−325:東亞合成社製、商品名、1分子あたり1個のカプロラクトンにより変性されたトリス(2−アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート。
【0407】
(注7)イルガキュア(登録商標) 184:BASF社製、商品名、光重合開始剤(B−1)
(注8)イルガキュア(登録商標) 754:BASF社製、商品名、光重合開始剤(B−2)
(注9)イルガキュア(登録商標) 819:BASF社製、商品名、光重合開始剤(B−3)
(注10)ルシリン TPO:BASF社製、商品名、光重合開始剤(B−4)。
【0408】
(注11)TINUVIN(登録商標) 928:BASF社製、商品名、紫外線吸収剤(D−1)
(注12)TINUVIN(登録商標) 384−2:BASF社製、商品名、紫外線吸収剤(D−2)
(注13)RUVA 93:大塚化学社製、商品名、紫外線吸収剤(D−3)。
【0409】
(注14)TINUVIN(登録商標) 292:BASF社製、商品名、光安定剤(E−1)。
【0410】
(注15)BYK(登録商標)−333:ビックケミー社製、商品名、シリコン系表面調整剤
(注16)BYK(登録商標)−UV 3500:ビックケミー社製、商品名、アクリロイル基含有シリコン系表面調整剤。
【0411】
【表1】

【0412】
【表2】

【0413】
積層体の作製及び評価結果
(実施例1〜24、比較例1)
ポリカーボネート樹脂板に、表3及び表4に示す活性エネルギー線硬化型プライマー組成物No.1〜23を乾燥膜厚が8μmとなるようエアスプレー塗装した。続いて、80℃で10分間プレヒートした後、高圧水銀ランプを用い2,000mJ/cmの照射量で活性エネルギー線を照射して硬化塗膜層(I)を作製した。次いでその上に、表3及び表4に示す無機物質層(II)を膜厚が5μmとなるようプラズマCVD装置を用いて積層させた。得られた各試験体について、下記評価試験に供した。評価結果を表3及び表4に併せて示す。
【0414】
【表3】

【0415】
【表4】

【0416】
(比較例2)
ポリカーボネート樹脂板に、活性エネルギー線硬化型プライマー組成物No.16を乾燥膜厚が8μmとなるようエアスプレー塗装した。続いて、80℃で10分間プレヒートした後、高圧水銀ランプを用い2,000mJ/cmの照射量で活性エネルギー線を照射して硬化塗膜層(I)を作製した。得られた各試験積層体について、下記評価試験に供した。評価結果を表4に示す。
【0417】
性能試験及び評価基準
<透明性>
ガラス板上に各プライマー組成物を3滴滴下し、80℃で15分乾燥した後、高圧水銀ランプメタルハライドランプを用い2,000mJ/cmの照射量で活性エネルギー線を照射して硬化塗膜層を作製した。さらに、ポリカーボネート(PC)樹脂基材上には、実施例1と同様に各プライマー組成物を乾燥膜厚が8μmとなるようエアスプレー塗装し、続いて80℃で10分間プレヒートした後高圧水銀ランプメタルハライドランプを用い2,000mJ/cmの照射量で活性エネルギー線を照射して硬化塗膜層を作製した。それぞれの硬化塗膜層を目視により観察し、下記基準により評価した。
【0418】
◎:ガラス板上の硬化塗膜層及び
PC樹脂基材上の硬化塗膜層の両方で濁りが確認できない
○:ガラス板上の硬化塗膜層で濁りが確認され、
PC樹脂基材上の硬化塗膜層では濁りが確認できず、
製品とした時に問題ないレベル
×:ガラス板上の硬化塗膜層及び
PC樹脂基材上の硬化塗膜層の両方で濁りが確認される。
【0419】
<耐擦傷性>
各試験体について、ASTM D1044に準じて、テーバー磨耗試験(磨耗輪CF−10F、荷重500g、1000回転)を行った。試験前後の積層膜についてヘイズ値を測定してその変化(ΔH)を求め、下記基準により評価した。
【0420】
◎:ΔHが2未満
○:ΔHが2以上5未満
△:ΔHが5以上10未満
×:ΔHが10以上。
【0421】
<付着性(初期)>
JIS K 5600−5−6(1990)に準じて素地に達するまで積層膜に1mm×1mmのゴバン目100個を作り、その面に粘着テープを貼着し、急激に剥がした後に、塗面に残ったゴバン目積層膜の数を評価した。
【0422】
◎:残存個数/全体個数=100個/100個で縁欠けなし
○:残存個数/全体個数=100個/100個で縁欠け5個以下である
△:残存個数/全体個数=99個〜90個/100個、
又は100個/100個で縁欠け6個以上
×:残存個数/全体個数=89個以下/100個。
【0423】
<耐水性>
各試験体について、40℃の温水に240時間浸漬した後、水洗いした試験体の外観及び付着性を下記基準にて評価した。外観は目視で評価し、付着性(耐水試験後)は上記≪付着性(初期)≫と同じ方法及び評価基準で評価した。
【0424】
〔外観(耐水試験後)〕
◎:試験前の試験体の積層膜に対して、全く外観の変化のないもの
〇:試験前の試験体の積層膜に対して、若干ツヤびけ又は白化が見られるが、製品とした時に問題ないレベル
△:試験前の試験体の積層膜に対して、若干ツヤびけ又は白化が見られる
×:試験前の試験体の積層膜に対して、著しくツヤびけ又は白化が見られる。
【0425】
<耐候性>
各試験体について、スーパーUVテスター(大日本プラスチック社製、W−13型、促進耐候性試験機)を用いて、ブラックパネル温度60℃、24時間紫外線照射−24時間水噴霧のサイクル条件を1サイクルとして20サイクルまで試験を行った。外観及び付着性を下記基準にて評価した。外観は目視で評価し、付着性(耐候試験後)は上記<付着性(初期)>と同じ方法及び評価基準で評価した。
【0426】
<外観(耐候試験後)>
◎:試験体の積層膜にワレが生じていない、かつ、ツヤびけ又は変色はほぼ見られない
〇:試験体の積層膜にワレが生じていない、かつ、若干ツヤびけ又は変色が見られるが、製品とした時に問題ないレベル
△:試験体の積層膜にワレが生じていないが、顕著なつやびけ又は変色が見られる
×:試験体の積層膜にワレが生じている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂基材に、活性エネルギー線硬化型プライマー組成物による硬化塗膜層(I)、及び無機物質層(II)が順次積層されてなる積層体であって、
該活性エネルギー線硬化型プライマー組成物が、(A)ケイ素原子に直接に結合した有機基を有するシルセスキオキサン化合物であって、該有機基の少なくとも1つが(メタ)アクリロイルオキシ基を有する有機基であるシルセスキオキサン化合物及び、(B)光重合開始剤を含有するものであり、
該無機物質層(II)が乾式成膜工法によって形成されたものであることを特徴とする積層体。
【請求項2】
上記シルセスキオキサン化合物(A)が、ケイ素原子に直接に結合した有機基を有し、該有機基の少なくとも1つが、2級水酸基、ウレタン結合及びウレア結合よりなる群から選ばれる少なくとも1つと少なくとも1つの(メタ)アクリロイルオキシ基との両者を有する有機基であるシルセスキオキサン化合物(a)である請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
上記活性エネルギー線硬化型プライマー塗料組成物が、さらに、上記(A)成分以外の重合性不飽和化合物(C)を含有する請求項1又は2に記載の積層体。
【請求項4】
上記活性エネルギー線硬化型プライマー塗料組成物が、さらに、紫外線吸収剤(D)、及び/又は光安定剤(E)を含有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項5】
上記活性エネルギー線硬化型プライマー塗料組成物が、さらに、シリカ粒子(F)を含有する請求項1〜4のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項6】
上記シリカ粒子(F)が、有機物変性シリカ粒子(f)である請求項5に記載の積層体。
【請求項7】
上記有機物変性シリカ粒子(f)が、シリカ微粒子(F−1)表面に(メタ)アクリロイルオキシ基を有する有機基を持つ反応性粒子(fa)であることを特徴とする請求項6に記載の積層体。
【請求項8】
上記乾式成膜工法が、化学蒸着法である請求項1〜7のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項9】
樹脂基材に、
(A)ケイ素原子に直接に結合した有機基を有するシルセスキオキサン化合物であって、該ケイ素原子に直接に結合した有機基の少なくとも1つが(メタ)アクリロイルオキシ基を有する有機基であるシルセスキオキサン化合物、及び(B)光重合開始剤を含有する活性エネルギー線硬化型プライマー組成物を塗布し、活性エネルギー線を照射し硬化塗膜層(I)を形成する工程と、
前記硬化塗膜層(I)上に、乾式成膜工法によって無機物質層(II)を少なくとも1層形成する工程と、
を有する積層体の製造方法。
【請求項10】
上記乾式成膜工法が、化学蒸着法である請求項9に記載の積層体の製造方法。

【公開番号】特開2013−35274(P2013−35274A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−149365(P2012−149365)
【出願日】平成24年7月3日(2012.7.3)
【出願人】(000001409)関西ペイント株式会社 (815)
【Fターム(参考)】