説明

積層型透明導電性フィルム

【課題】形成した薄膜のひび割れ耐性、可撓性に優れ、低抵抗で高光透過性の積層型透明導電性フィルムを提供する。
【解決手段】透明プラスチックフィルムの上に、第1のITO膜(A)、金属膜(M)、第2のITO膜(A)をこの順で積層した積層膜ユニットを有する積層型透明導電性フィルムであって、該透明プラスチックフィルムの厚さが、100μm以上、150μm以下であり、該第1のITO膜(A)の膜厚をhA1とし、該第2のITO膜(A)の膜厚をhA2としたとき、hA1>hA2の関係を満たし、かつ該積層膜ユニットの総膜厚が、100nm以下であることを特徴とする積層型透明導電性フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明プラスチックフィルム上に形成された積層型の透明導電性薄膜を有する積層型透明導電性フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
透明導電性薄膜は、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、無機及び有機エレクトロルミネッセンス(以下、ELと略記する)ディスプレイ等の表示装置等の電極材料や、無機及び有機EL素子による発光装置等の光学素子の電極材料や、タッチパネル材料、太陽電池用材料等で利用されている。
【0003】
透明導電性薄膜は、光透過性と導電性を有した金属化合物から構成される薄膜であり、その代表例としては、ITO(詳しくは、インジウムチンオキシド、錫ドープ酸化インジウム)から構成される薄膜が挙げられる。
【0004】
現在、汎用されている透明電極としては、ガラス基板上にITO薄膜を形成した透明導電性薄膜が広く用いられている。しかしながら、この透明導電膜は、基材としてガラス板を使用しているため、可撓性、軽量化、量産適性等の観点から、その適用できる用途分野に大きな制約を受けているのが現状である。特に、近年、有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、有機EL素子と略記する)が実用化され始めている。この有機EL素子等に透明導電性薄膜を適用する場合には、可撓性を有していること、抵抗値が低いこと、高い光透過性を備えていること等の特性が求められている。上記有機EL素子への要求に対し、可撓性に乏しいガラス基板を用いた透明導電性薄膜では、制約が極めて大きいという課題を抱えている。
【0005】
近年、透明プラスチックフィルムを可撓性基材として用い、このプラスチックフィルム基材上に、ITO薄膜を形成した透明導電性フィルムが、可撓性、加工性、耐衝撃性、薄膜化、軽量化、連続生産性等の観点から注目され、その一部は実用化され始めている。
【0006】
しかしながら、プラスチックフィルム基材上に形成したITO薄膜は、柔軟性に乏しい無機酸化物により形成された層であり、折り曲げに対しITO薄膜がひび割れ等を起こしやすいため、所望の可撓性を得る制約からは、形成するITO膜の厚さを薄く形成せざるをえなかった。しかしながら、ITOの膜厚は、薄いほど高抵抗化となるため、透明電極として十分な特性を得ることができず、薄い透明導電膜でありながら、低抵抗特性を備えた透明導電性フィルムの開発が求められていた。
【0007】
上記課題に対し、例えば、複数の酸化物透明導電薄膜の中間に、金属薄膜を成形した構成を有する積層型透明導電膜が開示されており、抵抗値の小さく、透過率の高い積層型透明導電膜が提供できるとされている(例えば、特許文献1参照。)。また、透明なプラスチックから構成される基材フィルム上に、スパッタリングにより順次積層形成されたITOから構成される第1導電層、Agからなる第2導電層及びITOからなる第3導電層を有する透明導電フィルムが開示されており、表面抵抗が小さく、充分な熱線反射機能を有する透明導電フィルムが提供できるとされている(例えば、特許文献2参照。)。
【0008】
しかしながら、上記提案されている構成からなる透明導電膜あるいは透明導電フィルムでは、透明プラスチックフィルム上に設けた酸化物透明導電薄膜の折り曲げに対する柔軟性が低いため、ひび割れを起こし、十分な抵抗特性を得ることができないという課題を抱えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2005−93441号公報
【特許文献2】特開2006−216266号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、その目的は、形成した薄膜のひび割れ耐性、可撓性に優れ、低抵抗で高光透過性の積層型透明導電性フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の上記目的は、以下の構成により達成される。
【0012】
1.透明プラスチックフィルムの上に、第1のITO膜(A)、金属膜(M)、第2のITO膜(A)をこの順で積層した積層膜ユニットを有する積層型透明導電性フィルムであって、
該透明プラスチックフィルムの厚さが、100μm以上、150μm以下であり、該第1のITO膜(A)の膜厚をhA1とし、第2のITO膜(A)の膜厚をhA2としたとき、hA1>hA2の関係を満たし、かつ該積層膜ユニットの総膜厚が、100nm以下であることを特徴とする積層型透明導電性フィルム。
【0013】
2.前記金属膜(M)の平均厚みが10nm以上、15nmであることを特徴とする前記1に記載の積層型透明導電性フィルム。
【0014】
3.前記金属膜(M)を構成する金属種が、銀、金、白金、パラジウム、ニッケル、ビスマス、銅及びアルミニウムから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする前記1または2に記載の積層型透明導電性フィルム。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、形成した薄膜のひび割れ耐性、可撓性に優れ、低抵抗で高光透過性の積層型透明導電性フィルムを提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の積層型透明導電性フィルムの構成を示す概略断面図である。
【図2】薄膜形成手段としてスパッタリング法を用いた本発明に係るITO膜の形成装置の一例を示す概略図である。
【図3】成膜形成手段としてプラズマイオンプレーティングを用いたITO膜の形成装置の一例を示す概略図である。
【図4】成膜形成手段としてプラズマイオンプレーティングを用いたITO膜の形成装置の他の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。
【0018】
本発明者は、上記課題に鑑み鋭意検討を行った結果、透明プラスチックフィルムの上に、第1のITO膜(A)、金属膜(M)、第2のITO膜(A)をこの順で積層した積層膜ユニットを有する積層型透明導電性フィルムであって、該透明プラスチックフィルムの厚さが、100μm以上、150μm以下であり、該第1のITO膜(A)の膜厚をhA1とし、該第2のITO膜(A)の膜厚をhA2としたとき、hA1>hA2の関係を満たし、かつ該積層膜ユニットの総膜厚が、100nm以下であることを特徴とする積層型透明導電性フィルムにより、形成した薄膜のひび割れ耐性、可撓性に優れ、低抵抗で高光透過性の積層型透明導電性フィルムを実現することができることを見出し、本発明に至った次第である。
【0019】
すなわち、単層あたりの無機酸化物層を薄膜化することにより、所望の可撓性を確保しつつ、その薄膜化による高抵抗化の課題を解決すること目的として、金属膜を中間層として配置することにより、透明導電膜の低抵抗化を達成することができた。また、透明導電膜のシート抵抗特性を大きく支配する金属膜を、透明導電膜表面近傍に配することにより、従来の積層型透明導電膜に比較し、更に低抵抗化が達成できたものである。
【0020】
以下、本発明の積層型透明導電性フィルムの構成要素の詳細について説明する。
【0021】
本発明の積層型透明導電性フィルムAは、図1に示すように、透明プラスチックフィルムFの上に、第1のITO膜(A)、金属膜(M)、第2のITO膜(A)をこの順で積層した積層膜ユニットUを有することを特徴とする。
【0022】
〔透明プラスチックフィルム〕
本発明に適用可能な透明プラスチックフィルムは、透過性が高い樹脂フィルムであれば特に制限はないが、具体的には、エチレン、ポリプロピレン、ブテン等の単独重合体または共重合体または共重合体等のポリオレフィン(PO)樹脂、環状ポリオレフィン等の非晶質ポリオレフィン樹脂(APO)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンナフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート(PEN)等のポリエステル系樹脂、ナイロン6、ナイロン12、共重合ナイロン等のポリアミド系(PA)樹脂、ポリビニルアルコール(PVA)樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)等のポリビニルアルコール系樹脂、ポリイミド(PI)樹脂、ポリエーテルイミド(PEI)樹脂、ポリサルホン(PS)樹脂、ポリエーテルサルホン(PES)樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリビニルブチラート(PVB)樹脂、ポリアリレート(PAR)樹脂、エチレン−四フッ化エチレン共重合体(ETFE)、三フッ化塩化エチレン(PFA)、四フッ化エチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(FEP)、フッ化ビニリデン(PVDF)、フッ化ビニル(PVF)、パーフルオロエチレン−パーフロロプロピレン−パーフロロビニルエーテル−共重合体(EPA)等のフッ素系樹脂等を用いて作製したプラスチックフィルムを挙げることができる。
【0023】
また、上記に挙げた樹脂以外にも、ラジカル反応性不飽和化合物を有するアクリレート化合物によりなる樹脂組成物や、上記アクリルレート化合物とチオール基を有するメルカプト化合物よりなる樹脂組成物、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート等のオリゴマーを多官能アクリレートモノマーに溶解せしめた樹脂組成物等の光硬化性樹脂およびこれらの混合物等を用いることも可能である。更に、これらの樹脂の1または2種以上をラミネート、コーティング等の手段によって積層させたものをプラスチックフィルムとして用いることも可能である。
【0024】
これらの素材は単独であるいは適宜混合されて使用することもできる。中でも、ゼオネックスやゼオノア(日本ゼオン(株)製)、非晶質シクロポリオレフィン樹脂フィルムのARTON(ジェイエスアール(株)製)、ポリカーボネートフィルムのピュアエース(帝人(株)製)、セルローストリアセテートフィルムのコニカタックKC4UX、KC8UX(コニカミノルタオプト(株)製)などの市販品も好ましく使用することができる。
【0025】
上記プラスチックフィルムの中でも、本発明においては、特に、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルムまたはポリカーボネートフィルムであることが好ましい。
【0026】
本発明においては、透明プラスチックフィルムの厚さが、100μm以上、150μm以下であることを特徴の1つとし、更に好ましくは115μm以上、135μm以下である。
【0027】
透明プラスチックフィルムの厚さが100μm以上であれば、基材としての十分な強度維持することができ、150μm以下であれば所望の光透過性と可撓性を維持することができる。
【0028】
また、本発明に係る透明プラスチックフィルム上に、ハードコート層、ガスバリア層等の機能層を形成したフィルムも本発明に係る透明プラスチックフィルムとして用いることができる。
【0029】
ディスプレイ材料においては湿度や酸素を嫌うものも多く、透明プラスチックフィルムの表面には防湿層等の機能層があることが好ましい。ガスバリア性を付与する為、無機物、有機物の被膜またはその両者のハイブリッド被膜が形成されている必要がある。水蒸気透過度が0.01g/m・day・atm以下のバリア性フィルムであることが好ましく、特に有機EL用途では、酸素透過度10−3ml/m・day・atm以下、水蒸気透過度10−5g/m・day・atm以下の高バリア性フィルムであることが好ましい。
【0030】
該バリア膜を形成する材料としては、水分や酸素など素子の劣化をもたらすものの浸入を抑制する機能を有する材料であればよく、例えば、酸化珪素、二酸化珪素、窒化珪素などを用いることができる。更に該膜の脆弱性を改良するためにこれら無機層と有機材料からなる層の積層構造を持たせ複合膜がより好ましい。無機層と有機層の積層順については特に制限はないが、両者を交互に複数回積層させることが好ましい。該防湿膜の形成方法については、特に限定はなく、例えば真空蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、分子線エピタキシー法、クラスターイオンビーム法、イオンプレーティング法、プラズマ重合法、大気圧プラズマ重合法、プラズマCVD法、レーザーCVD法、熱CVD法、コーティング法などを用いることができる。
【0031】
〔ITO膜〕
本発明の積層型透明導電性フィルムにおいては、透明プラスチックフィルムの上に第1の錫ドープ酸化インジウム膜であるITO(インジウムチンオキシド)膜(A)を形成し、更にITO膜(A)上に金属膜(M)を形成した後、該金属膜(M)上に第2のITO膜(A)を積層して積層膜ユニットを形成することを特徴とする。
【0032】
本発明に係るITO膜は、公知の成膜法、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、イオンプレーティング法、プラズマCVD法、レーザーCVD法、熱CVD法などを用いることができる。中でも、所定の真空条件でITO膜を効率よく形成できるスパッタリング、またイオンプレーティング、中でも圧力勾配型プラズマガンを使用する活性化反応蒸着法(以降、プラズマイオンプレーティングと記載する)を用いて成膜することが好ましい。
【0033】
以下、本発明に好ましく適用することのできるITO膜(錫ドープ酸化インジウム膜)の形成方法の一例を、図を交えて説明する。
【0034】
図2は、薄膜形成手段としてスパッタリング法を用いた本発明に係るITO膜の形成装置の一例を示す概略図である。
【0035】
真空槽1中にあらかじめ脱ガスされた可撓性の透明プラスチックフィルム2のロールが配置されており、アンワインダー(UW)〜ワインダー(W)間を搬送される。真空槽1内は、例えば、10−4Paオーダーの高真空度を維持し、これに、例えば、不活性ガス(Ar)を導入して、チャンバー内の真空度を数Paに維持する。
【0036】
次いで、アンワインダー(UW)から巻き出された透明プラスチックフィルム2は中空のロール状のマスク部材Mに所定位置で密着され、マスク部材Mの回転と共に移動、搬送され、マスク部材が密着する所定の成膜区間を搬送されて透明プラスチックフィルム樹脂2上に、ITO膜(A)の成膜を行う。成膜後、再びマスク部材から離れ、ワインダー(W)に巻き取られる。
【0037】
マスク部材Mは、図2に示すように透明プラスチックフィルム2の支持ロールとしての役割も果たす中空の金属(例えばステンレス)ロールであり、ITO膜パターンを形成する開口部をその表面に有している。
【0038】
可撓性の透明プラスチックフィルム2と、支持ロールを兼ねたマスク部材Mとが密着して搬送されるITO膜の成膜区間において、このマスク部材Mの開口部を通して、マスク部材Mの内部に設置されたITO膜形成手段により、マスクを介して透明プラスチックフィルム2上にスパッタにより、ITO膜を形成する方法である。支持部材としてのマスク部材Mの回転と共に、透明プラスチックフィルムが搬送され、搬送速度に応じて、ITO膜がパターニング形成される。
【0039】
図2においては、ITO膜の形成手段としてマグネトロンスパッタ装置を用いている。
【0040】
スパッタは、全体を真空状態にして、試料とターゲット間に電圧をかけ、高速の電子やイオンを発生させ、ターゲットに衝突したイオンがターゲットの粒子をはじき飛ばす(スパッタリング現象)ことで、はじき飛ばされた原材料の粒子が試料に衝突、付着し、膜が形成されるもので、真空槽1を、排気口(これも省略)に接続された図示しない真空ポンプにより槽内を減圧状態にして、ターゲット3と接続されたカソード(陰極)を介して電圧が印加され、スパッタガスが導入されると、所定のガス圧の環境下において、ターゲットの近傍空間にプラズマが発生してスパッタリングが行われる。ターゲット3としては、スパッタターゲット用のITO材料を用い、スパッタガスとしてアルゴン、酸素を用い形成する。マグネット4は、所定の磁界を発生する磁界発生手段であり、プラズマ発生空間で所定の磁界を発生する位置に配置すればよいが、図2では、スパッタリングが行われるターゲット材料近くに配置され、電子は磁界(磁力線)に沿って運動するので、プラズマが電子の周りに発生し、プラズマをターゲット付近に封じ込めスパッタ速度が上げることができる。ターゲットに電圧を印加する電源は材料の導電性により直流、或いは直流バイアスを印加させた交流を用いる。
【0041】
成膜区間において、透明プラスチックフィルム2の支持ロールを兼ねるマスク部材Mと密着して搬送された透明プラスチックフィルム2は、ITO膜がマスク部材Mを介したスパッタによりパターン成膜され、ITO膜が成膜された透明プラスチックフィルム2は、真空槽1内にあるワインダーWに順次に巻き取られる。一方、ロール状のマスク部材Mはロール断面中心を回転軸として透明プラスチックフィルム2の搬送と同期して回転しており、回転することで再度、未成膜の透明プラスチックフィルム2と密着され、再度透明プラスチックフィルム2上にITO膜パターンを成膜する。ロール状のマスク部材を用いることでこの工程を繰り返し、連続して長尺の透明プラスチックフィルム2上にITO膜のパターニング形成を行うことができる。
【0042】
また、図2には本発明に適用可能なロール状のマスク部材の例を示した。例えば円筒状の金属の支持ロールであって、円筒面に、形成されるITO膜パターンに対応する所定の形状の開口部をもち、透明プラスチックフィルムを支持ロールとして密着搬送しつつ、マスク部材として、その内部に薄膜形成手段を備え使用される。金属(例えばステンレス)等の、腐食や、変形のない平滑な面をもつ材料で作製される。
【0043】
次いで、図3に、成膜形成手段としてプラズマイオンプレーティングを用いたITO膜の形成装置の例を同じく概略図で示す。
【0044】
図3においては、真空槽1中に、可撓性の透明プラスチックフィルム2のロールが配置されており、アンワインダー(UW)から巻き出された透明プラスチックフィルム2は、支持ロール11上に略円弧状に支持、密着、搬送され、ワインダー(W)に巻き取られる。真空槽1中において、アンワインダー(UW)から巻き出された透明プラスチックフィルム2は、11上で、マスク部材が密着されてマスク部材とともに搬送される。透明プラスチックフィルム2に密着されるマスク部材は、所定の開口部をもつ、例えば、ステンレス等の金属ベルトからなる循環して移送されるエンドレスベルトである。このベルト状マスク部材は、透明プラスチックフィルム2のワインダーW、アンワインダーUWと連動して駆動される駆動ロール21により複数のガイドロールに懸架されて透明プラスチックフィルムと同期した速度で、循環、移送される。マスク部材は張力によって透明プラスチックフィルム2に支持ロール11上で密着し、マスク部材と透明プラスチックフィルム2が密着搬送される区間において、ITO膜形成手段はマスク部材を介して透明プラスチックフィルム2上にITO膜パターンを成膜する。
【0045】
前記各ロールは温度制御が可能に構成されていて、各々任意の温度に調整可能である。
【0046】
支持ロール11は、例えば、液体循環式による温度制御がされる(非図示)。支持ロール11の温度を検出する温度センサーの設定温度情報を基に温度制御手段(非図示)により温調される。これらにより、成膜途中でのITOの結晶性を変えることが可能となり、抵抗値、表面粗さを変化させることが可能となる。また、成膜エネルギーにより経時で上昇する透明プラスチックフィルム基板表面の温度上昇を抑える事が可能となる。
【0047】
また支持ロール11は駆動手段(不図示)と接続され、任意の設定された搬送速度で駆動、搬送される。
【0048】
透明プラスチックフィルムはITO膜をパターン成膜された後、支持ロールの回転と共に再びマスク部材から分離されワインダーに巻き取られる。また、マスク部材も支持ロールの回転と共に樹脂フィルムから分離され、これは再度循環して、マスク部材として連続使用される。
【0049】
図3において、薄膜形成装置は、プラズマイオンプレーティング法による。
【0050】
即ち、支持ロール11上において、マスク材が密着して搬送される間に、支持ロールの図で下方に備えられたプラズマイオンプレーティング装置によってマスクを通して透明プラスチックフィルム2上に、ITO膜がパターン成膜される。
【0051】
薄膜形成装置は、真空槽1の底部に配置したるつぼ5と、側壁に取り付けられた圧力勾配型プラズマガン6によって構成されている。圧力勾配型プラズマガンはマイナスの電源に接続されている。また図示されていないが、るつぼと近傍にはマスフローコントローラを介して反応ガス供給装置に接続されている。また、真空槽は真空排気装置に接続され、所定の真空度に維持されるようになっている。圧力勾配型プラズマガン6は、圧力勾配型ホロカソードプラズマガンで、放電ガス(Arガス)の導入によりその複合陰極から熱電子が放出され、プラズマビームPが発生する。圧力勾配型プラズマガン6内部の圧力を真空槽1内の蒸着室より高くし、圧力勾配を持たせることで酸素ガス等の反応ガスからの劣化を抑えられる構造となっている。プラズマビームPは、これを収束するための環状永久磁石や収束コイルを内蔵した電極、ステアリングコイル等で制御され、るつぼ5へ照射される。
【0052】
プラズマビームPによる加熱で蒸発したITO原材料や導入ガスは、このプラズマ内でイオン化され透明プラスチックフィルム上にマスク材を介して成膜される。
【0053】
成膜は、るつぼ5に蒸発材料としてITO膜の成膜材料として、In/Sn酸化物(または、In/Sn金属)を充填して行われる。連続搬送する透明プラスチックフィルム2に成膜する際には蒸発材料供給手段(不図示)により蒸発量に見合う量の蒸発材料がるつぼ4に供給される。
【0054】
真空槽1は、ターボ分子ポンプ等の真空ポンプ(不図示)と接続されており、ガス導入前は高真空が保たれる。真空槽1の内部の圧力は、電離真空計、ピラニ真空計等のセンサー(不図示)でモニターされ、成膜時の圧力は真空槽1の側面のポートからの導入ガスによりコントロールされる。
【0055】
図3に同じく循環するベルト状のマスク材の1例を示した。
【0056】
切り出される有機ELパネルの陽極及び陽極配線パターンに対応した開口部を連続して複数、繰り返しもつ金属(ステンレスが好ましい)のベルトである。
【0057】
図3のベルト状マスク部材はスパッタ方式でも用いることができ、図4は同じベルト状のマスク部材を用いたスパッタによるITO膜形成装置の別の例である。真空槽1下部のITO膜形成手段に、スパッタを用い、同様に、可撓性の透明プラスチックフィルム基板にマスク材を介し連続して成膜が可能である。
【0058】
上記のようなITO膜成膜方法により、透明プラスチックフィルム基板をロールツウロールで連続的にITO膜パターン形成を行うことができる。また、フォトリソグラフィー方式でのパターニングによらず可動式のマスクにより連続的にパターニングしながら成膜を行うことができる。また、ITO膜の形成を、スパッタ、好ましくはプラズマイオンプレーティングで行うことからイオンダメージが少なく、表面性がよいため、有機EL素子基板として用いる場合に適している。特に有機EL用途としての照明や面発光素子に用いるパターン作製に有用である。
【0059】
以下、上記図3に示したプラズマイオンプレーティングを用いたITO膜のパターン成膜の具体的な条件の一例を示す。
【0060】
図3に示す装置を用いて、ITO膜を透明プラスチックフィルム基板にパターン成膜した。
【0061】
(1)透明プラスチックフィルムは、防湿層としてSiNxからなる機能層を少なくとも有している幅300mm、厚さ200μmのPES(ポリエーテルサルホン)を用いた。
【0062】
(2)また、ITOの成膜(蒸発)材料としては、InにSnOを5質量%ドープしたITOペレット材料を使用した。
【0063】
(3)透明プラスチックフィルムと同期して循環されるエンドレスのベルト状マスク部材として、図3に示した透明電極に対応する100mm×100mmの開口部の繰り返しパターンを有する透明プラスチックフィルムと同じ幅のステンレスのベルト(厚み0.1mm)を用いた。また、ステンレスベルトは透明プラスチックフィルム基材にマスク端部においてクリアランスもたせた。
【0064】
(4)真空槽内に装着した透明プラスチックフィルム基板のロールは、フィルムに含有する水分、ガスの除去を行うため、真空槽の圧力が1.5×10−4Paになるまで減圧を行った。
【0065】
(5)圧力勾配型プラズマガンに、15sccm(sccm:standard ml/min(1×10−6/min))のArガスを流し、Oガスを20sccm流し、更に真空槽内圧力を0.15PaになるようにArガスを10〜20sccm流した。
【0066】
(6)圧力勾配型プラズマガンの出力を4kWになるまで徐々に電力を加え、プラズマビームを発生させ、ITOペレット材料に照射して材料を蒸発させた。
【0067】
(7)放電が安定した後、透明プラスチックフィルム基板を搬送させ、搬送速度1.96m/minに安定したところでシャッター(図示されていない)を開け、ITO膜の成膜を開始した。この時の成膜レートは、2.5nm/secで、ITOの膜厚は45nm。
【0068】
上記の成膜条件において、支持ロールの温度を100℃の温度条件で、連続して成膜を実施した。防湿層としてSiNx層を有するPES(ポリエーテルサルホン)のロールフィルムを、30m連続パターニング成膜を行った。
【0069】
比抵抗は、抵抗率測定器ロレスタGP(三菱化学社製)で測定したところ、得られたITO膜は、比抵抗3.5×10−4Ωcm以上であった。
【0070】
以上のようにして、透明プラスチックフィルム樹脂2上に、ITO膜(A)の成膜を行った後、後述の方法でITO膜(A)上に金属膜(M)を形成し、次いで、上記と同様の方法で、金属膜(M)上に第2のITO膜(A)を積層して、積層膜ユニットを形成する。
【0071】
本発明の積層型透明導電性フィルムにおいては、透明プラスチックフィルム上に形成する第1のITO膜(A)の膜厚をhA1とし、金属膜(M)上に形成する最表層である第2のITO膜(A)の膜厚をhA2としたとき、hA1>hA2の関係を満足することを特徴とする。第1のITO膜(A)の膜厚hA1を、第2のITO膜(A)の膜厚hA2に対し厚くなる様に設定することにより、積層膜ユニットの高いひび割れ耐性と可撓性を実現することができる。
【0072】
〔金属膜(M)〕
本発明の積層型透明導電性フィルムにおいては、第1のITO膜(A)と第2のITO膜(A)との間に、金属膜(M)を有する構成であることを特徴とする。更に、本発明においては、金属膜(M)の平均厚さとしては、10nm以上、15nm以下であることが、ひび割れ耐性、可撓性に優れ、低抵抗で高光透過性の積層型透明導電性フィルムを得ることができる観点から好ましい。
【0073】
(形成材料)
本発明に係る金属膜(M)を構成する金属としては、特に制限はなく、例えば、銀、金、白金、銅、パラジウム、スズ、ニッケル、ビスマス、アルミニウム、鉄等を挙げることができるが、その中でも、銀、金、白金、パラジウム、ニッケル、ビスマス、銅及びアルミニウムから選ばれる少なくとも1種または2種以上の金属種を用いた合金であることが好ましい。
【0074】
(金属膜の形成方法)
本発明に係る金属膜を形成する方法としては、特に制限はないが、蒸着法、スパッタ法、グラビア塗布法、スクリーン印刷法、インクジェット印字法等を挙げることができる。
【0075】
〈蒸着法〉
蒸着方式は、金属膜を形成する第1のITO膜(A)を有する透明プラスチックフィルムと、金属膜の形成原料とを容器内におき、全体を真空状態(10−3〜10−4Pa程度)にして、原料を加熱、溶解させることにより、原料が気体分子となり、透明プラスチックフィルムに衝突、付着して金属膜が形成される。加熱溶解の方法によって、抵抗加熱式、電子ビーム式、高周波誘導式、レーザー式などがある。
【0076】
〈スパッタ法〉
スパッタ法とは、高融点材料や化合物でも比較的容易に膜形成が可能な方法で、上記蒸着法のように熱的過程ではなく、金属膜を形成する材料を溶解する必要がなく、ターゲット材料として金属酸化物等の高融点の材料でも容易に成膜が可能な方法である。スパッタ法によって、金属膜を成膜するには、金属(例えば、銀)のターゲットに、スパッタ(数Paの雰囲気下)、窒素ガスや酸素ガス等の反応性ガスを導入して、例えば、DC放電スパッタ、RFスパッタ、或いはターゲットに対向して基板を配置して、ターゲット表面のイオンや中性粒子の衝突により、ターゲットの粒子をはじき飛ばして透明プラスチックフィルム上にすでに形成されている第1のITO膜(A)表面に付着して金属膜形成する。ターゲットのスパッタを行う近傍にマグネットを配置して磁界を印加、ターゲット表面のイオンや中性粒子の衝突を増加させて、成膜速度を大きくしたマグネトロン方式を用いてもよい。
【0077】
〈グラビア塗布法〉
グラビア印刷法では、グラビア印刷機のシリンダ上に、小さい凹型のくぼみから構成されている金属膜パターンを形成し、このくぼみに金属膜形成材料(例えば、銀粉末)を含むインクを付着させた後、基材上に金属膜パターンとして印刷、転写する方法である。
【0078】
〈スクリーン印刷法〉
スクリーン印刷法では、メッシュを持つスクリーンに金属膜パターンを形成して、このパターンを通過した金属膜形成材料(例えば、銀粉末)を含むインクを乗せ、ステージを所定の圧力、角度、速度で移動させることにより、インクがスクリーンのパターンを介して基板上に転写されて、基材上に不連続の金属膜パターンを形成する方法である。
【0079】
〈インクジェット印字法〉
インクジェット方式のインクジェット記録ヘッドを用いて、所望とする金属膜のパターン情報に従って、金属膜形成材料(例えば、銀粉末)を含むインクを基材上に吐出して、金属膜を形成する方法である。
【0080】
インクジェット印字法は、上記のグラビア塗布法やスクリーン印刷法に対し、フォトレジストやマスクパターンの事前の形成を必要としないため、工程を大幅に簡略化できる。
【0081】
特に、上記インクジェット方式の中でも、静電インクジェット方式を用いることが好ましい。静電インクジェット方式とは、ノズル内の金属膜形成用の液体を帯電させ、ノズルと液滴の着弾を受ける対象物となる基材との間に形成される電界から受ける静電吸引力により吐出させる液滴吐出技術であり、静電吸引方式の液体吐出装置の例としては、例えば、特開平8−238774号、また特開2000−127410号等に記載されており、これらに準じた装置を有利に用いることができる。
【0082】
〔積層膜ユニット〕
本発明の積層型透明導電性フィルムにおいては、上記説明した第1のITO膜(A)、金属膜(M)及び第2のITO膜(A)から構成される積層膜ユニットの総膜厚が、100nm以下であることが好ましく、より好ましくは70nm以上、90nm以下である。積層膜ユニットの総膜厚を100nm以下とすることにより、ひび割れ耐性、可撓性に優れ、低抵抗で高光透過性の積層型透明導電性フィルムを得ることができる。
【0083】
〔積層型透明導電性フィルムの適用分野〕
ひび割れ耐性、可撓性に優れ、低抵抗で高光透過性を備えた本発明の積層型透明導電性フィルムは、様々な分野に適用することができるが、その適用分野の一例として、有機EL素子への適用について説明する。
【0084】
(有機EL素子)
有機EL素子は、軽量・薄型で持ち運びに適し、環境負荷の小さく安価な面光源を形成できる。本発明の積層型透明導電性フィルムは、透明電極として用いることができる。
【0085】
有機EL素子は、電極間に単数又は複数の有機層を積層した構造であり、例えば、陽極層/正孔注入・輸送層/発光層/電子注入・輸送層/陰極層等、各種の有機化合物からなる機能層が必要の応じ積層された構成をもつ。最も単純には、陽極層/発光層/陰極層からなる構造を有する。
【0086】
正孔注入・輸送層に用いられる有機材料としては、フタロシアニン誘導体、ヘテロ環アゾール類、芳香族三級アミン類、ポリビニルカルバゾール、ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホン酸(PEDOT:PSS)などに代表される導電性高分子等の高分子材料が用いられる。
【0087】
また、発光層に用いられる、例えば、4,4′−ジカルバゾリルビフェニル、1,3−ジカルバゾリルベンゼン等のカルバゾール系発光材料、(ジ)アザカルバゾール類、1,3,5−トリピレニルベンゼンなどのピレン系発光材料に代表される低分子発光材料、ポリフェニレンビニレン類、ポリフルオレン類、ポリビニルカルバゾール類などに代表される高分子発光材料などが挙げられる。これらのうちで、発光材料としては分子量10000以下の低分子系発光材料が好ましく用いられる。
【0088】
また発光層中、発光材料には、好ましくは0.1〜20質量%程度のドーパントが含まれてもよく、ドーパントとしては、ペリレン誘導体、ピレン誘導体等公知の蛍光色素、また、りん光色素、例えば、トリス(2−フェニルピリジン)イリジウム、ビス(2−フェニルピリジン)(アセチルアセトナート)イリジウム、ビス(2,4−ジフルオロフェニルピリジン)(ピコリナート)イリジウム、などに代表されるオルトメタル化イリジウム錯体等の錯体化合物がある。
【0089】
発光層は、発光層材料を混合或いは発光色の異なる複数の層で構成することで白色発光層とすることもできる。
【0090】
電子注入・輸送層材料としては、8−ヒドロキシキノリナートリチウム、ビス(8−ヒドロキシキノリナート)亜鉛等の金属錯体化合物もしくは以下に挙げられる含窒素五員環誘導体がある。即ち、オキサゾール、チアゾール、オキサジアゾール、チアジアゾールもしくはトリアゾール誘導体が好ましい。具体的には、2,5−ビス(1−フェニル)−1,3,4−オキサゾール、2,5−ビス(1−フェニル)−1,3,4−チアゾール、2,5−ビス(1−フェニル)−1,3,4−オキサジアゾール、2−(4’−tert−ブチルフェニル)−5−(4″−ビフェニル)1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ビス(1−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール、1,4−ビス[2−(5−フェニルオキサジアゾリル)]ベンゼン、1,4−ビス[2−(5−フェニルオキサジアゾリル)−4−tert−ブチルベンゼン]、2−(4′−tert−ブチルフェニル)−5−(4″−ビフェニル)−1,3,4−チアジアゾール、2,5−ビス(1−ナフチル)−1,3,4−チアジアゾール、1,4−ビス[2−(5−フェニルチアジアゾリル)]ベンゼン、2−(4′−tert−ブチルフェニル)−5−(4″−ビフェニル)−1,3,4−トリアゾール、2,5−ビス(1−ナフチル)−1,3,4−トリアゾール、1,4−ビス[2−(5−フェニルトリアゾリル)]ベンゼン等が挙げられる。
【0091】
これらの各層の形成には、各機能層を構成する材料を、例えば、真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、LB法、インクジェット法等の公知の各種の薄膜化法により製膜して形成する。
【0092】
これら各機能層に用いられる材料として、分子中にビニル基等の重合反応性基を有する材料を用い、製膜後に架橋・重合膜を形成させてもよい。
【0093】
陽極に使用される導電性材料としては、4eVより大きな仕事関数をもつものが適しており、銀、金、白金、パラジウム等及びそれらの合金、酸化スズ、酸化インジウム、ITO等の酸化金属、さらにはポリチオフェンやポリピロール等の有機導電性樹脂があり、これらの材料からなる薄膜が用いられるが、本発明に係る二層で構成される透明導電膜は平滑性が高く、低抵抗であり、これを陽極として用いることは、輝点発生が少なく、ムラのない、またダークスポット等が生じにくい有機EL素子を得る上で適している。
【0094】
また、陰極に使用される導電性物質としては、4eVより小さな仕事関数をもつものが適しており、マグネシウム、アルミニウム等。合金としては、マグネシウム/銀、リチウム/アルミニウム等が代表例として挙げられる。
【0095】
以上の各機能層が前記透明フィルム基板或いはバリア層を有する透明フィルム基板上に形成され、更に、封止基板により封止され有機ELパネルを構成することができる。
【0096】
封止手段としては、例えば、封止部材と電極、透明フィルム基板とを接着剤で接着する方法を挙げることができる。透明フィルム基板としてはバリア層付きのものを用いることが好ましい。
【0097】
封止部材としては、有機EL素子の表示領域を覆うように配置されておればよく、凹板状でも平板状でもよい。また透明性、電気絶縁性は特に問わない。具体的には、ガラス板、ポリマー板・フィルム、金属板・フィルム等が挙げられる。素子を薄膜化できるということからポリマーフィルム、金属フィルムを好ましく使用することができる。
【0098】
本発明においては、基板がフィルムの為フレキシブル性を考えた場合、可撓性を有する封止部材が好ましい。
【0099】
接着剤として具体的には、アクリル酸系オリゴマー、メタクリル酸系オリゴマーの反応性ビニル基を有する光硬化及び熱硬化型接着剤、2−シアノアクリル酸エステル等の湿気硬化型等の接着剤を挙げることができる。
【0100】
これらの有機EL素子乃至有機ELパネルを面発光光源として用い照明灯を構成することができる。
【実施例】
【0101】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」あるいは「質量%」を表す。
【0102】
実施例1
《積層型透明導電性フィルムの作製》
〔導電性フィルム1の作製〕
(第1のITO膜Aの形成)
図3に記載のプラズマイオンプレーティング法(圧力勾配型プラズマガンを使用した活性化反応蒸着法)の薄膜形成装置を用いて、透明プラスチックフィルムであるPESフィルム(ポリエーテルスルホンフィルム、住友ベークライト社製 厚み125μm)上に、下記の方法に従って第1のITO膜Aを形成した。
【0103】
成膜(蒸発)材料として、ITOペレット材料を使用した。はじめに、図3に記載の薄膜形成装置において、真空槽内の坩堝にITOペレット材料を充填したのち、真空ポンプにて排気し、真空槽内を減圧にした。
【0104】
次いで、30cm×30cmサイズに切り出したPESフィルム(ポリエーテルスルホンフィルム、住友ベークライト社製 厚み125μm)を基板ホルダにセットし、受け渡し室(図には非図示)に設置した。
【0105】
受け渡し室を減圧にし、真空槽と圧力差が規定の範囲内に入った所で、PESフィルムを成膜室に搬入した。
【0106】
真空槽内に装着したPESフィルムは、フィルムに含有される水分、ガスの除去を行うため、真空槽の圧力が1.0×10−3Pa以下まで減圧を行った。
【0107】
搬入したPESフィルムは、基板ホルダ上にて回転機構により基板回転を行いながら、第1のITO膜Aの成膜を下記の条件で行った。
【0108】
ITO膜を成膜するため、ヒータ加熱を行った。基板ヒータを100℃の温度に設定し、PESフィルムの温度が安定するまで30分以上放置した。
【0109】
次いで、圧力勾配型プラズマガンに20sccm(sccm:standard ml/min(1×10−6/min))のArガスを流し、Oガスを10〜50sccm流し、更に真空槽内圧力が一定になるようにArガスを流した。
【0110】
圧力勾配型プラズマガンの出力を5kWになるまで段々に電力を加え、プラズマビームを発生させITOペレット材料に照射し材料を昇華させた。
【0111】
放電が安定した後、シャッターを開け成膜を開始した。第1のITO膜Aの膜厚は,50nmとした。このITO膜の膜厚に関しては、あらかじめ成膜時間と膜厚との関係を検量しておき、そのデータに基づき所望膜厚になるまで時間管理でシャッターを閉じた。
【0112】
(金属膜Mの形成)
上記形成した第1のITO膜A上に、下記の方法に従って、厚さ10nmの銀から構成される金属層Mを形成した。
【0113】
金属膜Mは、DCマグネトロン・スパッタリング法により成膜した。第1のITO膜Aを形成したPESフィルムを真空槽中に設置し、真空槽を2×10−4Paまで真空引きした。ターゲット−基材間の距離は90mmに固定した。アルゴンのガス圧0.7Paで、純Agターゲット(直径129mm、厚み5mm)を用いて、DC30Wの電力で、銀から構成される金属膜Mを10nm堆積させた。
【0114】
(第2のITO膜Aの形成)
上記方法により第1のITO膜A及び金属膜Mを形成したPESフィルムについて、前記第1のITO膜Aの形成方法と同様にして、金属膜M上に厚さ35nmの第2のITO膜Aを形成して、導電性フィルム1を得た。
【0115】
〔導電性フィルム2〜24の作製〕
上記導電性フィルム1の作製において、フィルム基材(PESフィルム)の厚さ、第1のITO膜A、第2のITO膜Aの厚さ、金属膜Mの構成金属種及び膜厚、積層膜ユニットの総膜厚を表1に記載のように変更した以外は同様にして、導電性フィルム2〜24を作製した。
【0116】
《積層型透明導電性フィルムの評価》
上記作製した導電性フィルム1〜24について、下記の方法に従って、可撓性(折曲耐性)の評価と、抵抗値及び分光透過率の測定を行った。
【0117】
〔可撓性(折曲耐性)の評価〕
30cm×30cmサイズの各導電性フィルムを5cm×10cmの短冊状に断裁した後、23℃、20%RHの環境下で24時間保管した。次いで、この各導電性フィルムを、積層膜ユニットが外側になるようにコア外径が3cmの金属管に巻き付け、5秒間保持した後巻き戻した。この操作を10回繰り返した後、導電性フィルムの積層膜ユニット面側をルーペによるひび割れの有無を確認し、下記の基準に従って、可撓性(折曲耐性)の評価を行った。
【0118】
5:積層膜ユニット面で、ひび割れ(クラック)の発生が全く認められない
4:積層膜ユニット面で、ほぼひび割れ(クラック)の発生が認められない
3:積層膜ユニット面で、微小なひび割れ(クラック)が散発しているが、実用上は許容される品質である
2:積層膜ユニット面に明らかなひび割れ(クラック)が発生し、実用上問題となる品質である
1:積層膜ユニット面に多数のひび割れ(クラック)が発生し、実用に耐えない品質である
上記ランクが3以上であれば、実用上可と判定した。
【0119】
〔抵抗値の測定〕
導電性フィルムの抵抗値(シート抵抗値)の測定は、三菱化学アナリテック製の抵抗率計 ロレスタGP MCP−T610型を用いて行った(単位は、Ω/□(ohm/square))。
【0120】
上記抵抗値が10(Ω/□)以下であれば、実用上可と判定した。
【0121】
〔分光透過率の測定〕
導電性フィルムの波長470nm及び550nmにおける透過率を、島津製作所製の分光光度計 UV−2450を用いて測定した。
【0122】
上記透過率は80%以上であれば、実用上可と判定した。
【0123】
以上により得られた結果を、表1に示す。
【0124】
【表1】

【0125】
表1に記載の結果より明らかなように、本発明で規定する構成からなる導電性フィルムは、比較例に対し、ひび割れ耐性、可撓性に優れ、低抵抗で高光透過性であることが分かる。
【0126】
実施例2
《有機EL素子の作製》
実施例1で作製した各透明導電性フィルムを用いて、以下の手順に従って有機EL素子1〜24を作製した。
【0127】
各導電性フィルムを5cm×5cmのサイズに断裁し、市販のスピンコーターに取り付け、正孔注入層PEDOT(PEDOT:PEDOT/PSS、Bayer社製、Baytron P Al 4083)をスピンコート(膜厚約40nm)し、ホットプレートで200℃1時間加熱し、正孔注入層とした。更に下記組成の白色発光組成物を1mlとなるように調製し、スピンコートした。(膜厚約25nm)。
【0128】
(白色発光組成物)
溶媒:トルエン 100質量%
ホスト材料:H−A 1質量%
青色材料:Ir−A 0.10質量%
緑色材料:Ir(ppy) 0.004質量%
赤色材料:Ir(piq) 0.005質量%
次いで、電子輸送層用塗布液を下記のように調製し、スピンコーターにて、1500rpm、30秒の条件で塗布し、電子輸送層を設けた。別途用意した基板にて、同条件にて塗布を行い、測定をしたところ、膜厚は20nmであった。
【0129】
(電子輸送層用塗布液)
2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノール 100ml
ET−A 0.50g
【0130】
【化1】

【0131】
更に、真空蒸着装置を用いて電子輸送層上にアルミニウム蒸着層を形成し(110nm)陰極を形成し、それぞれ、有機EL素子1〜24を作製した。
【0132】
《有機EL素子の評価》
上記作製した各有機EL素子について、東洋テクニカ(株)製 ソースメジャーユニット2400型を用いて、直流電圧を有機EL素子に印加し発光させた。コニカミノルタセンシング株式会社製分光放射輝度計CS1000を用いて測定したところ、本発明の有機EL素子においては、色温度3500Kの白色の発光を確認した。
【0133】
次いで、各有機EL素子について、リーク電流特性を以下に示す試験方法により試験し、以下に示す評価ランクに従って評価した。
【0134】
〈リーク電流特性の試験〉
定電圧電源を用いて、逆方向の電圧(逆バイアス)5Vを5秒間印加し、その時素子に流れる電流を測定した。9ドット(発光領域)全てにおいて測定を行い、最大電流値をリーク電流として測定した。
【0135】
上記測定の結果、本発明の導電性フィルムを用いて作製した有機EL素子は、比較例に対し、リーク電流が少なく良好な性能であることを確認することができた。
【符号の説明】
【0136】
1 真空槽
2 可撓性の透明プラスチックフィルム
3 ターゲット
4 マグネット
5 るつぼ
6 圧力勾配型プラズマガン
M マスク部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明プラスチックフィルムの上に、第1のITO膜(A)、金属膜(M)、第2のITO膜(A)をこの順で積層した積層膜ユニットを有する積層型透明導電性フィルムであって、
該透明プラスチックフィルムの厚さが、100μm以上、150μm以下であり、該第1のITO膜(A)の膜厚をhA1とし、第2のITO膜(A)の膜厚をhA2としたとき、hA1>hA2の関係を満たし、かつ該積層膜ユニットの総膜厚が、100nm以下であることを特徴とする積層型透明導電性フィルム。
【請求項2】
前記金属膜(M)の平均厚みが10nm以上、15nmであることを特徴とする請求項1に記載の積層型透明導電性フィルム。
【請求項3】
前記金属膜(M)を構成する金属種が、銀、金、白金、パラジウム、ニッケル、ビスマス、銅及びアルミニウムから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1または2に記載の積層型透明導電性フィルム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−9148(P2012−9148A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−141305(P2010−141305)
【出願日】平成22年6月22日(2010.6.22)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】