説明

積層構造の車両用内装基材及びその製造法

【課題】余分な発泡性熱硬化性樹脂を使用することなく、加圧及び加熱成形により繊維補強材とハニカム構造体との接合形成ができ、また欠肉及びボイド等の発生を抑制して表面品質の低下を防ぐことのできる積層構造の車両用内装基材を提供する。
【解決手段】外面が成形面となるシート状のガラス繊維マット30(繊維補強材)とシート状のハニカム構造体20との間には、加圧及び加熱成形の際に発泡性ポリウレタン樹脂(発泡性熱硬化性樹脂)の浸入を必要とされるレベルに抑制する更紙40(中間シート材)が挟まれて配設されており、中間シート材による発泡性ポリウレタン樹脂の浸入の必要とされるレベルは加圧及び加熱成形の際におけるガラス繊維マット30とハニカム構造体20との接合のために必要十分な量である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層構造の車両用内装基材及びその製造法に関する。詳しくは、シート状のハニカム構造体の両面にシート状の繊維補強材が重ね合わせられて配設された両外面から発泡性熱硬化性樹脂を塗布して含浸させ、加圧及び加熱成形により前記繊維補強材とハニカム構造体とを前記発泡性熱硬化性樹脂により接合形成してなる積層構造の車両用内装基材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車等の車両においては、内装品の軽量化、高剛性化の対応が望まれてきている。ここで、従来の内装品として、たとえば特許文献1のようにインナーリブが形成された中空構造体が知られている。また、特許文献2のように、繊維性基材と発泡コア材の積層構造体が知られている。この特許文献1および2で知られている内装材の成形に用いられる材料は、熱可塑性樹脂が使用されることが一般的である。そのため、耐熱性(摂氏温度60度以上)において荷重によるたわみ剛性が低いという物理的な欠点があり、その欠点を補うために、鉄及びアルミ延伸材等による金属リインフォースメントを追加して剛性の補強を図っている。ところが、金属リインフォースメントの追加は、コストの増化を招き、軽量化の妨げとなっている。
【0003】
そこで、特許文献3のように高温時の剛性低下を根本的に防止する技術が知られている。図8(A)〜(C)に図示されるように、詳しくは、シート状のハニカム構造体120の両面にシート状の繊維補強材130が重ね合わせられて配設された両外面から発泡性熱硬化性樹脂132を塗布して含浸させ、加圧及び加熱成形により繊維補強材130とハニカム構造体120とを発泡性熱硬化性樹脂132により接合形成してなる積層構造の車両用内装基材110とするものである。この車両用内装基材110は、繊維補強材130に塗布された発泡性熱硬化性樹脂132が加圧成形の圧縮力によってハニカム構造体120に流入し、更に加熱成形によって発泡、硬化されて固結することで繊維補強材130とハニカム構造体120とが接合して積層構造とされるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−260213号公報
【特許文献2】特開2008−222208号公報
【特許文献3】特開平11−188807号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献3で開示された技術は、成形上において形状の制約を有していた。すなわち、加圧及び加熱成形される外表面形状が、平坦形状のような成形容易な形状の場合には、加圧成形の圧縮力によってハニカム構造体120に流入する発泡性熱硬化性樹脂132の量が予測しやすいため、均一に発泡、硬化させることが容易であり、予定された成形形状に形成しやすい。ところが、図8(D)に図示されるように、外表面形状が凹凸面形状に形成されるような場合においては、凹凸面110aの角部110bを形成するのに必要な発泡性熱硬化性樹脂132が繊維補強材130に含浸された状態で加熱成形する必要がある。ところが、加圧成形の圧縮力の作用によって、繊維補強材130を通過する発泡性熱硬化性樹脂132が凹凸面110aの角部110bを形成するのに必要な量までハニカム構造体120側に流入した状態で加熱成形されて硬化されると凹凸面110aの角部110bが成形されない欠肉状態で形成されてしまう。
更には、発泡性熱硬化性樹脂132が繊維補強材130を通過してハニカム構造体120側に多く流入した状態で、加熱成形して発泡、硬化されると繊維補強材130内に微小な空洞状(泡状)のボイドが外表面に形成されてしまう。この欠肉及びボイドの発生した成形品は著しく見栄えを損ない、表面品質の低下を招くため、不良品として廃棄されてしまうという問題があった。ここで、欠肉及びボイドの発生を抑制する一案として、ハニカム構造体120側に流入する発泡性熱硬化性樹脂132を補うために、塗布量を大幅に増加して熱成形型にて成形することも考えられる。しかし、成形に必要とする以上の発泡性熱硬化性樹脂132を使用することは、余分な材料費がかかってコストの増大を招くと共に、質量増加となるため軽量化の阻害となり費用対効果が優れないという懸念が拭えない。
【0006】
而して、本発明は、このような点に鑑みて創案されたものであり、本発明が解決しようとする課題は、シート状のハニカム構造体の両面にシート状の繊維補強材が重ね合わせられて配設された両外面から発泡性熱硬化性樹脂を塗布して含浸させ、加圧及び加熱成形により前記繊維補強材とハニカム構造体とを前記発泡性熱硬化性樹脂により接合形成してなる積層構造の車両用内装基材において、余分な発泡性熱硬化性樹脂を使用することなく、加圧及び加熱成形により繊維補強材とハニカム構造体との接合形成ができ、また欠肉及びボイド等の発生を抑制して表面品質の低下を防ぐことのできる積層構造の車両用内装基材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の積層構造の車両用内装基材は次の手段をとる。
先ず、第1の発明は、シート状のハニカム構造体の両面にシート状の繊維補強材が重ね合わせられて配設された両外面から発泡性熱硬化性樹脂を塗布して含浸させ、加圧及び加熱成形により前記繊維補強材とハニカム構造体とを前記発泡性熱硬化性樹脂により接合形成してなる積層構造の車両用内装基材であって、前記外面が成形面となるシート状の繊維補強材とシート状のハニカム構造体との間には、前記加圧及び加熱成形の際に前記発泡性熱硬化性樹脂の浸入を必要とされるレベルに抑制する中間シート材が挟まれて配設されており、該中間シート材による発泡性熱硬化性樹脂の浸入の必要とされるレベルは前記加圧及び加熱成形の際における前記繊維補強材とハニカム構造体との接合のために必要十分な量であることを特徴とする。
【0008】
この第1の発明によれば、外面が成形面となるシート状の繊維補強材とシート状のハニカム構造体との間には、中間シート材が挟まれて配設されている。この中間シート材は、加圧及び加熱成形の際に発泡性熱硬化性樹脂の浸入を必要とされるレベルに抑制するものである。この中間シート材による発泡性熱硬化性樹脂の浸入の必要とされるレベルは、加圧及び加熱成形の際における繊維補強材とハニカム構造体との接合のために必要十分な量として設定されている。そのため、繊維補強材とハニカム構造体との接合に必要な量だけ発泡性熱硬化性樹脂が浸入(発泡性熱硬化性樹脂が繊維補強材を通過してハニカム構造体側に流入)することとなるため、外表面形状を形成するのに必要な発泡性熱硬化性樹脂が繊維補強材に含浸された状態で加熱成形することができ、欠肉状態で形成されることを防ぐことができる。また、外表面形状を形成するのに必要な発泡性熱硬化性樹脂が繊維補強材に含浸された状態であるため、加熱成形時に繊維補強材内が空洞状(泡状)となるのを防いで、ボイドの発生を抑制することができる。よって、余分な発泡性熱硬化性樹脂を使用することなく、加圧及び加熱成形により繊維補強材とハニカム構造体との接合形成ができ、また欠肉及びボイド等の発生を抑制して表面品質の低下を防ぐことのできる積層構造の車両用内装基材を提供することができる。
【0009】
なお、ここで、本発明の「成形面」とは、外面に凹凸面形状等の変化をもたせて形成する面である。ここで、通常、積層構造の車両用内装基材においては、車両構造物等と干渉しないように裏面形状がフィットする様に凹凸面形状等の変化をもたせて形成する面や、意匠面をデザインにより凹凸面形状等の変化をもたせて形成する面が「成形面」とされる。すなわち、積層構造の車両用内装基材の裏面、意匠面のいずれかに限られるものではなく、両面を含み得るものである。なお、成形面として特に表面形状が急に変化する凹凸面形状に形成されるような場合に有効である。更には、この凹凸面の輪郭となる端末部位が角部に形成されるような場合に特に有効である。
【0010】
次に、第2の発明は、第1の発明の積層構造の車両用内装基材の製造法において、前記シート状のハニカム構造体の両面にシート状の繊維補強材を配設するに際して、外面が成形面となる該シート状の繊維補強材とシート状のハニカム構造体との間には中間シート材を挟んで配設して内装基材積層配設体を形成する配設工程と、前記配設工程により形成された内装基材積層配設体のシート状の繊維補強材の外面から発泡性熱硬化性樹脂を塗布して含浸させる塗布工程と、前記発泡性熱硬化性樹脂が含浸した内装基材積層配設体を成形型内に投入して、成形型により投入された内装基材積層配設体を加圧及び加熱成形する成形工程と、からなり、前記中間シート材は前記成形工程において前記繊維補強材とハニカム構造体との接合のために必要十分な量の発泡性熱硬化性樹脂を浸入させるものであり、前記塗布工程により繊維補強材の外面から塗布した発泡性熱硬化性樹脂は該塗布工程においては前記繊維補強材に滞留された状態にあるが、前記成形工程時には加圧成形の圧縮力によって中間シート材を通過してハニカム構造体側に流入されて加熱されることで前記繊維補強材とハニカム構造体が接合されることを特徴とする。
【0011】
この第2の発明によれば、第1の発明の積層構造の車両用内装基材は、上記した配設工程、塗布工程、成形工程の各工程を経ることで得ることができる。ここで、中間シート材は、成形工程において繊維補強材とハニカム構造体との接合のために必要十分な量の発泡性熱硬化性樹脂を浸入させるものである。この塗布工程により繊維補強材の外面から塗布した発泡性熱硬化性樹脂は、塗布工程においては繊維補強材に滞留された状態にあるが、成形工程時には加圧成形の圧縮力によって中間シート材を通過してハニカム構造体側に流入されて加熱される。これにより、余分な発泡性熱硬化性樹脂を使用することなく、加圧及び加熱成形により繊維補強材とハニカム構造体との接合形成ができ、また欠肉及びボイド等の発生を抑制して表面品質の低下を防ぐことのできる積層構造の車両用内装基材を提供することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明は上記各発明の手段をとることにより、積層構造の車両用内装基材及びその製造法は、余分な発泡性熱硬化性樹脂を使用することなく、加圧及び加熱成形により繊維補強材とハニカム構造体との接合形成ができ、また欠肉及びボイド等の発生を抑制して表面品質の低下を防ぐことのできる積層構造の車両用内装基材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施例1に係る積層構造の車両用内装基材の全体側面図である。
【図2】実施例1に係る積層構造の車両用内装基材における内装基材積層配設体を構成する繊維補強材とハニカム構造体と中間シート材を分離した状態で示した斜視図である。
【図3】実施例1に係る積層構造の車両用内装基材の製造方法を実施し得るプレス成形機の一部断面図である。
【図4】実施例1に係る積層構造の車両用内装基材の製造方法の工程の内、内装基材積層配設体を形成する配設工程の概略を示した一部拡大側面図である。
【図5】実施例1に係る積層構造の車両用内装基材の製造方法の工程の内、内装基材積層配設体の外面から発泡性熱硬化性樹脂を塗布して含浸させる塗布工程の概略を示した一部拡大側面図である。
【図6】実施例1に係る積層構造の車両用内装基材の製造方法の工程の内、内装基材積層配設体を成形型内に投入して加圧及び加熱成形する成形工程の概略を示した一部拡大側面図である。
【図7】実施例1に係る積層構造の車両用内装基材の完成した状態の概略を示した一部拡大側面図である。
【図8】従来における積層構造の車両用内装基材の製造方法の工程の概略を示した一部拡大側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明を実施するための形態について、図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0015】
始めに、実施例1の積層構造の車両用内装基材の構成について、図1〜図7を用いて説明する。本実施例の積層構造の車両用内装基材10は、車両の内装材として採用されるものであり、例えば、車両の荷室の床面として構成されるフロアボード、デッキボード等や、車両内の棚として構成されるパッケージトレイ、リヤパーセルシェルフ等や、更には、車両の天井面において、車両の前後方向にスライドする構成のサンシェード等がある。この車両用内装基材10は、車両の内装を構成する種々の部位に適用されるものである。
【0016】
図1に図示されるように、実施例1の車両用内装基材10は、複数の素材を積層させて一体的に成形した積層構造として構成されている。図2に図示されるように、この積層構造の車両用内装基材10は、コア材(芯材)として構成されるシート状のハニカム構造体20と、このハニカム構造体20の両面にシート状のガラス繊維マット30(繊維補強材)が配設されている。更に、外面が成形面12aとなるガラス繊維マット30とハニカム構造体20との間には、更紙40(中間シート材)が挟まれて配設されている。
なお、車両用内装基材10は、一般に外周全周を加圧成形(外周を潰す)してハニカム構造体20が隠れる状態にすることで強度を確保した構成とするものもあるが、車両用内装基材10の積層構造の構成を明確にするために、本実施例1においては外周が加圧成形されていない構成にして、図1はハニカム構造体20が外観上を見える簡素な構成のものについて図示しているが、これに限定はされず、外周全周を加圧成形(外周を潰す)するものでもよい。
【0017】
このガラス繊維マット30とハニカム構造体20と更紙40(中間シート材)が積層された内装基材積層配設体12の外面に、発泡性熱硬化性樹脂として選択された発泡性ポリウレタン樹脂32(図5参照)がスプレー等によって塗布され、後述するように、発泡性ポリウレタン樹脂32を加圧、加熱して発泡・硬化(図6参照)させることにより、積層された内装基材積層配設体12の各材料を一体的に接合形成する構成とされている。
【0018】
なお、ここで、成形面12aとは、外面に凹凸面形状等の変化をもたせて形成する面である。ここで、本実施例1の積層構造の車両用内装基材10においては、車両構造物等と干渉しないように裏面形状がフィットする様に変化をもたせて形成する形状として表面形状が急に変化する凹凸面形状に形成される面が成形面12aである。この成形面12a側にガラス繊維マット30(繊維補強材)とハニカム構造体20との間に更紙40(中間シート材)が構成されている。ここで、成形面12aは、裏面形状に変化をもたせて形成する場合に限られず、意匠面をデザインにより凹凸面形状等の変化をもたせて形成する場合には、両面とも成形面12aとされる。なお、発泡性ポリウレタン樹脂32(発泡性熱硬化性樹脂)がスプレー等によってシート状のガラス繊維マット30(繊維補強材)の表面に塗布される塗布量は、要求される強度その他の種々の条件に適合する量とされるが、好ましくは、ガラス繊維マット30(繊維補強材)に対して片面200g/m2〜1000g/m2程度が好ましい。本実施例1においては、450g/m2の発泡性ポリウレタン樹脂32(発泡性熱硬化性樹脂)がスプレーによって塗布されている。
【0019】
ハニカム構造体20について説明する。
図2に図示されるように、このハニカム構造体20は、積層構造の車両用内装基材10のコア材(芯材)として構成されるものである。このハニカム構造体20は、一定幅の板状の紙片が立設して空間部位20a(セル)を形成するように囲んで形成されており、この空間部位20a(セル)どうしが連続して隣接するように順次貼り合せてシート状に形成されている。このハニカム構造体20は、連続した複数の透孔が画成されていることから、中実の板部材より軽量であり、かつ、厚さ(上下)方向の圧縮応力に対して大きな強度を有している。このシート状のハニカム構造体20の板厚は、用途等によって適宜選択されるものであるが、3mm〜40mm程度の板厚が好ましい。また、実施例1のハニカム構造体20は、空間部位20a(セル)の形状が波状に形成された紙片を連続的に貼り重ねることで円柱状の空間部位20a(セル)を連続成型積層したロールコアが選択されており、質量は720g/m2とされている。このハニカム構造体20の空間部位20a(セル)の形状は、種々の形状を選択できるものであり、例えば、六角形の空間部位(セル)の集合体でもよいし、それ以外にも、OX、フレックス、バイセクト、フェザー等を選択できる。また、実施例1におけるハニカム構造体20の材質は、紙製ハニカム体を選択しているが、これに限定されず、紙、アルミニウム等の金属部材や、ガラス繊維や、植物繊維等とのマトリックス樹脂とからなる強化複合材料等、要求される強度その他の種々の条件に適合する様に選択し使用することが出来る。
【0020】
次にガラス繊維マット30(繊維補強材)について説明する。
図2に図示されるように、このガラス繊維マット30(繊維補強材)は、無機繊維であるガラス繊維を50mm〜100mm長に切断したチヨツプドストランドを適宜バインダーで固めることによりシート状に成形したガラス繊維マットが選択されている。なお、ここで使用するガラス繊維は上記のようにチヨツプドストランドを固結したもののほか、ガラス繊維を切断することなくバインダーで固めたもの(コンテイニアスマツト)或いはガラス繊維不織布、ガラス繊維紙、ガラス繊維織布でもよい。また、実施例1におけるガラス繊維マット30(繊維補強材)は、目付量が、450g/m2として形成されているが、要求される強度その他の種々の条件に適合する様に目付量を選択し使用することが出来るものである。本発明における繊維補強材は、チヨツプドストランド等の無機繊維や、有機繊維であるジュート(黄麻)、ケナフ(洋麻)、ラミー、ヘンプ(麻)、サイザル麻、竹等の天然繊維等を適宜選択して、アクリル等のバインダー又はニードル加工によってシート状、マット状にしたものであればよい。
【0021】
次に更紙40(中間シート材)について説明する。
図2に図示されるように、この更紙40(中間シート材)は、加圧及び加熱成形の際に発泡性ポリウレタン樹脂32(発泡性熱硬化性樹脂)の浸入(発泡性熱硬化性樹脂がガラス繊維マット30を通過してハニカム構造体20側に流入)を必要とされるレベルに抑制するために、ガラス繊維マット30(繊維補強材)とハニカム構造体20との間に挟まれて配設されるものである。
この更紙40(中間シート材)による発泡性ポリウレタン樹脂32の浸入(発泡性熱硬化性樹脂がガラス繊維マット30を通過してハニカム構造体20側に流入)の必要とされるレベルは、加圧及び加熱成形の際におけるガラス繊維マット30とハニカム構造体20との接合のために必要十分な量である。すなわち、塗布工程によりガラス繊維マット30の外面から塗布した発泡性ポリウレタン樹脂32は、塗布工程においてはガラス繊維マット30に滞留された状態にあるが、成形工程時には加圧成形の圧縮力によって更紙40(中間シート材)を通過してハニカム構造体20側に流入されて加熱されることでガラス繊維マット30とハニカム構造体20と更紙40(中間シート材)が一体として接合される。
【0022】
本実施例1においては、中間シート材に適切な材料として、紙が選択されている。一般に紙は、植物の繊維を水中でバラバラにして金網などで薄く抄き上げたものとされている。
ここで本実施例1において選択される紙は、更紙40が選択されている。この更紙は、砕木パルプを主原料とし、化学パルプを配合して作ったものである。この更紙は、化学パルプの比が40%未満の洋紙とされている。
このほかに、中間シート材の紙類としては、種々の紙を適用できる。例えばクラフト紙も選択選択することができる。このクラフト紙は、クラフト法により製造されたパルプを原料とした洋紙のうち、強度を落とさないため漂白行程を行なわない紙である。また、木材を原料としない非木材として、竹やワラ等の草類繊維、ケナフ、コウゾ、ミツマタ、ガンピ等の靭皮繊維を使用した紙であってもよい。例えば、コウゾ、ミツマタ、ガンピ等の樹皮の内側の靭皮繊維を原料として抄いた和紙等であってもよい。また、常態時に発泡性ポリウレタン樹脂32(発泡性熱硬化性樹脂)が透過しない防水透湿シート材等も適宜選択することができる。
【0023】
ここで、本発明における更紙40(中間シート材)として適用されるものは、加圧成型における圧縮力との関係において、以下の条件で発泡性ポリウレタン樹脂32を通過することが必要とされている。すなわち、プレス成形機50の加圧成型前においては、更紙40(中間シート材)の構成によって発泡性ポリウレタン樹脂32がハニカム構造体20側に流入しないでガラス繊維マット30に滞留された状態とされているが、プレス成形機50の面圧(圧縮力)によってガラス繊維マット30に滞留された発泡性ポリウレタン樹脂32(発泡性熱硬化性樹脂)のうち、ガラス繊維マット30とハニカム構造体20との接合のために必要十分な量だけが更紙40(中間シート材)を通過してハニカム構造体20側に流入する。ここで、本実施例1に適用される更紙においては、秤量10g/m2〜100g/m2の範囲が好適である。中間シート材として更紙以外を適用する際は、上記条件に適合する秤量を適宜選択する。
【0024】
図3は、実施例1に係る積層構造の車両用内装基材10の製造に使用されるプレス成形機50の概略を示した一部断面図である。図3に図示されるように、このプレス成形機50は、ベース52に固定され、ガラス繊維マット30(繊維補強材)とハニカム構造体20と更紙40(中間シート材)が積層された内装基材積層配設体12を載置する下型54と、支柱56、56に沿って上下動するスライダ58の下面に固定された上型60とを具備している。このプレス成形機50は、それぞれの金型に加熱機構(図示せず)が装備されており、あらかじめ、上型60および下型54を摂氏温度60℃〜170℃に加熱保持し得るようになっている。なお上型60は、車両用内装基材10の表面形状に凹部を形成するための凸部60aを有している。また、プレス成形機50は、内装基材積層配設体12に対して面圧(圧縮力)を7.85N/cm2〜196.1N/cm2(0.8kgf/cm2〜20kgf/cm2)の範囲で加圧することができる。そして、下型54の上に内装基材積層配設体12をセットした後、この状態でスライダ58を上型60と共に下降させると、上型60の凸部60aが内装基材積層配設体12の表面を押圧し、内装基材積層配設体12を車両用内装基材10に要求される所定の形状に変形させる(図6、7参照)。以下に、図3に示すプレス成形機50を用いた製造方法を順次説明する。
【0025】
〔内装基材積層配設体12を形成する配設工程〕
先ず、図4に図示されるように、ハニカム構造体20と、ハニカム構造体20の両面に配設されるガラス繊維マット30(繊維補強材)と、ハニカム構造体20とガラス繊維マット30の間に配設される更紙40(中間シート材)とからなる内装基材積層配設体12を得る。
【0026】
〔内装基材積層配設体12の外面から発泡性ポリウレタン樹脂32を塗布して含浸させる塗布工程〕
次に、図5に図示されるように、プレス成形に先立って、内装基材積層配設体12の外表面となるガラス繊維マット30に発泡性ポリウレタン樹脂32(発泡性熱硬化性樹脂)が450g/m2(一体成形に必要充分な量)スプレーによって塗布する(成形面12a及び成形面12aと反対側の外面も共に塗布)。ここで、プレス成形機50の加圧成型前においては、更紙の配設される側のガラス繊維マット30は、更紙の構成によって発泡性ポリウレタン樹脂32がハニカム構造体20側に流入しないでガラス繊維マット30に滞留された状態とされている。
【0027】
〔内装基材積層配設体12を加圧及び加熱成形する成形工程〕
図6に図示されるように、この内装基材積層配設体12を、プレス成形機50における下型54の上に載置する。なおプレス成形機50は、内装基材積層配設体12の成形加工に先立って、上型60および下型54をあらかじめ所定温度(摂氏温度60℃〜170℃に)に加熱保持しておく。次に、図3及び図6に図示されるように、プレス成形機50の運転を開始し、スライダ58を下降させて上型60と下型54を相対的に近接させ、ハニカム構造体20およびガラス繊維マット30(繊維補強材)並びに更紙40(中間シート材)とからなる内装基材積層配設体12を両金型60、54により挟圧する。そうすると、プレス成形機50の面圧(圧縮力)によってガラス繊維マット30に滞留された発泡性ポリウレタン樹脂32(発泡性熱硬化性樹脂)のうち、ガラス繊維マット30とハニカム構造体20との接合のために必要十分な量だけが更紙を通過してハニカム構造体20側に流入する。そして、ガラス繊維マット30に熱伝導がなされ、ガラス繊維マット30に塗布されている発泡性ポリウレタン樹脂32の発泡を開始させる。上型60および下型54を所定時間に亘り型締めしたまま加圧および加熱保持することで、発泡性ポリウレタン樹脂32は発泡しながらガラス繊維マット30の内部隙間で膨張し、次いで硬化することによりハニカム構造体20とガラス繊維マット30と更紙40(中間シート材)の一体的な接着が達成される。発泡性ポリウレタン樹脂32はガラス繊維マット30に浸透することでガラス繊維の脱落を防ぎ表面が平滑に仕上がると共にガラス繊維特有のチクチクとした不快な肌ざわりがなくなる。
【0028】
図7に図示されるように、発泡性ポリウレタン樹脂32(発泡性熱硬化性樹脂)の硬化が完了し、ガラス繊維マット30(繊維補強材)およびハニカム構造体20が一体的に接着されたタイミングで、上型60を上方へ退避させて内装基材積層配設体12を下型54から脱型する。
【0029】
なお、図示を省略するが、車両用内装基材10の最も表面に位置する外表面には、表面材および裏面材が接着材又はホツトメルトフイルムによって接着されている。この表面材および裏面材は、商品価値を高めると共に、手触りがよい、例えばポリエステル、レーヨン等を材質とするニードルパンチカーペットやパイルカーペット等が好適に使用される。ハニカム構造体20およびガラス繊維マット30(繊維補強材)に対して表面材および裏面材を同時に重合して加圧及び加熱成型することもできる。
【0030】
このように、本実施例1の積層構造の車両用内装基材10によれば、外面が成形面となるシート状のガラス繊維マット30(繊維補強材)とシート状のハニカム構造体20との間には、更紙40(中間シート材)が挟まれて配設されている。この更紙は、加圧及び加熱成形の際に発泡性ポリウレタン樹脂32(発泡性熱硬化性樹脂)の浸入を必要とされるレベルに抑制するものである。この更紙による発泡性ポリウレタン樹脂32の浸入の必要とされるレベルは、加圧及び加熱成形の際におけるガラス繊維マット30とハニカム構造体20との接合のために必要十分な量として設定されている。そのため、ガラス繊維マット30とハニカム構造体20との接合に必要な量だけ発泡性ポリウレタン樹脂32が浸入(発泡性ポリウレタン樹脂32がガラス繊維マット30を通過してハニカム構造体20側に流入)することとなるため、外表面形状を形成するのに必要な発泡性ポリウレタン樹脂32がガラス繊維マット30に含浸された状態で加熱成形することができ、欠肉状態で形成されることを防ぐことができる。また、外表面形状を形成するのに必要な発泡性ポリウレタン樹脂32がガラス繊維マット30に含浸された状態であるため、加熱成形時にガラス繊維マット30内が空洞状(泡状)となるのを防いで、ボイドの発生を抑制することができる。よって、余分な発泡性ポリウレタン樹脂32を使用することなく、加圧及び加熱成形によりガラス繊維マット30とハニカム構造体20との接合形成ができ、また欠肉及びボイド等の発生を抑制して表面品質の低下を防ぐことのできる積層構造の車両用内装基材10を提供することができる。なお、成形面として特に表面形状が急に変化する凹凸面形状に形成されるような場合に有効である。更には、この凹凸面の輪郭となる端末部位が角部に形成されるような場合に特に有効である。
【0031】
また、積層構造の車両用内装基材10は、上記した配設工程、塗布工程、成形工程の各工程を経ることで得ることができる。ここで、更紙は、成形工程においてガラス繊維マット30とハニカム構造体20との接合のために必要十分な量の発泡性ポリウレタン樹脂32を浸入させるものである。この塗布工程によりガラス繊維マット30の外面から塗布した発泡性ポリウレタン樹脂32は、塗布工程においてはガラス繊維マット30に滞留された状態にあるが、成形工程時には加圧成形の圧縮力によって更紙を通過してハニカム構造体20側に流入されて加熱される。これにより、余分な発泡性ポリウレタン樹脂32を使用することなく、加圧及び加熱成形によりガラス繊維マット30とハニカム構造体20との接合形成ができ、また欠肉及びボイド等の発生を抑制して表面品質の低下を防ぐことのできる積層構造の車両用内装基材10を提供することができる。
【0032】
以上、本発明の実施形態について実施例1について説明したが、本発明の積層構造の車両用内装基材及びその製造法は、本実施の形態に限定されず、その他各種の形態で実施することができるものである。例えば、本実施例1の発泡性熱硬化性樹脂は、発泡性ポリウレタン樹脂を選択したものについて例示したが他の発泡性熱硬化性樹脂を種々適用できる。
【符号の説明】
【0033】
10 車両用内装基材
12 内装基材積層配設体
12a 成型面
20 ハニカム構造体
20a 空間部位
30 ガラス繊維マット(繊維補強材)
32 発泡性ポリウレタン樹脂(発泡性熱硬化性樹脂)
40 更紙(中間シート材)
50 プレス成形機
52 ベース
54 下型
56 支柱
58 スライダ
60 上型
60a 凸部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状のハニカム構造体の両面にシート状の繊維補強材が重ね合わせられて配設された両外面から発泡性熱硬化性樹脂を塗布して含浸させ、加圧及び加熱成形により前記繊維補強材とハニカム構造体とを前記発泡性熱硬化性樹脂により接合形成してなる積層構造の車両用内装基材であって、
前記外面が成形面となるシート状の繊維補強材とシート状のハニカム構造体との間には、前記加圧及び加熱成形の際に前記発泡性熱硬化性樹脂の浸入を必要とされるレベルに抑制する中間シート材が挟まれて配設されており、該中間シート材による発泡性熱硬化性樹脂の浸入の必要とされるレベルは前記加圧及び加熱成形の際における前記繊維補強材とハニカム構造体との接合のために必要十分な量であることを特徴とする積層構造の車両用内装基材。
【請求項2】
請求項1に記載の積層構造の車両用内装基材の製造法であって、
前記シート状のハニカム構造体の両面にシート状の繊維補強材を配設するに際して、外面が成形面となる該シート状の繊維補強材とシート状のハニカム構造体との間には中間シート材を挟んで配設して内装基材積層配設体を形成する配設工程と、
前記配設工程により形成された内装基材積層配設体のシート状の繊維補強材の外面から発泡性熱硬化性樹脂を塗布して含浸させる塗布工程と、
前記発泡性熱硬化性樹脂が含浸した内装基材積層配設体を成形型内に投入して、成形型により投入された内装基材積層配設体を加圧及び加熱成形する成形工程と、からなり、
前記中間シート材は前記成形工程において前記繊維補強材とハニカム構造体との接合のために必要十分な量の発泡性熱硬化性樹脂を浸入させるものであり、前記塗布工程により繊維補強材の外面から塗布した発泡性熱硬化性樹脂は該塗布工程においては前記繊維補強材に滞留された状態にあるが、前記成形工程時には加圧成形の圧縮力によって中間シート材を通過してハニカム構造体側に流入されて加熱されることで前記繊維補強材とハニカム構造体が接合されることを特徴とする積層構造の車両用内装基材の製造法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−6175(P2012−6175A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−141698(P2010−141698)
【出願日】平成22年6月22日(2010.6.22)
【出願人】(509069892)豊和繊維工業株式会社 (23)
【Fターム(参考)】