説明

空間像表示装置

【課題】簡素な構造でありながら、より自然な空間像を形成可能な空間像表示装置を提供する。
【解決手段】空間像表示装置10では、映像信号に応じた2次元表示画像が表示部2によって生成される。表示部2における一群の画素22に応じた表示画像光が、その一群の画素22に対応する一の液体光学素子41によって一括して波面変換され、かつ、一括して偏向される。このため、一の画素22に対して一の液体光学素子41を設けるようにした場合と比較した場合、表示部2におけるフレームレートを高めなくとも、より多くの異なった2次元の表示画像光が水平面内の異なる方向に向けてそれぞれ一度に射出されることとなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空間に物体の立体映像を表示する空間像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
立体映像の生成は、人間の持つ認識生理機能を利用することにより実現されるものである。すなわち、観察者は、左右の眼に入る画像のズレ(両眼視差)や輻輳角からの認識、眼の水晶体の焦点距離を眼の毛様体やチン小体を使って調節する際に起こる生理機能(焦点距離調整機能)からの認識、および運動したときに見える画像の変化による認識(運動視差)に基づき、脳で総合的に処理する過程で立体を認識している。上記の認識生理機能のうち「両眼視差」や「輻輳角」を利用した従来の立体映像の生成方法としては、例えば、左右、色の異なる眼鏡をかけて左右の眼にそれぞれ異なる画像(視差画像)を送る方法や、液晶シャッタの付いたゴーグルをかけて液晶シャッタを高速に切り替えて左右の眼に視差画像を送る方法などがある。また、2次元表示装置に左右のそれぞれの眼に対応した画像を映しこれをレンチキュラーレンズで左右のそれぞれの眼に振り分けることによって立体画像を表現する方法も存在する。さらに、レンチキュラーレンズを用いる方法に類似したものとして、液晶ディスプレイ表面にマスクを設け右眼には右眼用の画像が左眼には左眼用の画像が見えるようにすることによって立体像を表現する方法も開発されている。
【0003】
ところが、上記のような特別な眼鏡やゴーグルを使用して視差画像を得る方法は、観察者にとって非常に煩わしいものである。一方、レンチキュラーレンズを用いる方法等では、1つの2次元画像表示装置の領域を右眼用の領域と左眼用の領域とに分割する必要があるので、高精細な画像の表示には適さないという問題がある。
【0004】
特許文献1には、複数の1次元表示装置と、各1次元表示装置からの表示パターンをそれぞれの配置方向と同一方向に偏向する偏向手段とを備えるようにした3次元表示装置が提案されている。この3次元表示装置によれば、複数の出力像が眼の残像効果により同時に認識され、両眼視差の作用により立体像として知覚可能であるとされている。しかしながら、各1次元表示装置からの放射光が球面波として放射されるので観察者の両眼の各々に対応した画像が相互に反対側の眼にも入射してしまい、実際には両眼視差が得られるどころか、2重の画像が認識される可能性が高いと考えられる。
【0005】
これに対し特許文献2には、液晶表示素子と観測点との間に、1組の集光レンズと、それら1組の集光レンズに挟まれたピンホール部材とを配置するようにした3次元画像表示装置が開示されている。この3次元画像表示装置では、液晶表示素子の射出光を一方の集光レンズによってピンホール部材のピンホールの位置において最も小径となるように集光し、ピンホールを通過した光を他方の集光レンズ(例えばフレネルレンズ)によって平行光とするようになっている。このような構成によれば、観察者の左眼および右眼の各々に対応した画像が適切に振り分けられ両眼視差が得られるものと推測される。
【0006】
また、上記の方法とは異なるものとして、ホログラフィ技術を利用して立体映像を生成する方法も存在する。ホログラフィ技術とは、物体からの光波を人工的に再現するものである。ホログラフィ技術を用いた立体映像は、光の干渉により生成された干渉縞を用い、その干渉縞に光が照明された際に生じる回折波面そのものを映像情報媒体として用いている。そのため、観察者が実世界において物体を観察しているときと同様の輻輳、調節などの視覚系生理反応が起き、眼精疲労の少ない映像を提供することができる。さらに、物体からの光波面が再現されているということは、映像情報を伝達する方向に対して連続性が確保されていることといえる。このため、観察者の視点が移動することにより、その移動に応じた異なる角度からの適切な映像を連続的に提示することが可能である。すなわち、ホログラフィ技術を利用した立体映像の生成方法は、運動視差が連続的に提供される映像提供の手法である。
【0007】
上記のホログラフィ技術による立体映像の生成方法は、物体からの回折波面そのものを記録し、それを再生する方法であるので、極めて理想的な立体映像の表現方法であるといえる。
【0008】
しかしながら、ホログラフィ技術では3次元空間情報を2次元空間における干渉縞として記録しており、その空間周波数は同じ物体を撮影した写真などの2次元空間の場合と比較すると極めて膨大な量になる。これは、3次元空間の情報を2次元空間に変換する際に、その情報が2次元空間上における密度に変換されていると考えることができる。そのために、CGH(Computer Generated Hologram)による干渉縞を表示するデバイスに求め
られる空間分解能は極めて高く、また膨大な情報量が必要であることから、実時間ホログラムにより立体映像を実現することは、現状において技術的に困難である。その上、記録の際に使用する光はレーザ光のような位相の揃ったものでなければならず、自然光での記録(撮影)が不可能であるという問題もある。
【0009】
また、特許文献2の3次元画像表示装置ついてはフーリエ変換光学系のような構成となっており、ピンホールもある程度の大きさ(直径)を有していることから、ピンホールの位置では空間周波数の高い成分(すなわち、解像度の高い成分)が、光軸と直交する面内において不均一に分布(周縁部により多く分布)しているものと考えられる。したがって、厳密な平行光を実現するためにはピンホールの直径を極めて小さくする必要がある。ところがピンホールの直径を小さくすればするほど得られる画像の明るさの低下や不均一化を招くうえ、ピンホールによって空間周波数の高い成分が除去されてしまうので解像度も劣化してしまうものと推定される。
【0010】
そこで、近年、光線再生法に基づく空間像表示装置の検討が進められている(例えば非特許文献1参照)。光線再生法とは、ディスプレイから放射される多数本の光線で空間像を表現しようとするものであり、理論的には、裸眼観察であっても正確な運動視差情報と焦点距離情報とを観察者に提供し、比較的、眼精疲労の少ない空間像が得られるものである。本出願人も、このような光線再生法に基づく空間像表示を実現するための空間像表示装置を既に提案している(例えば特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特許第3077930号公報
【特許文献2】特開2000−201359号公報
【特許文献3】特開2007−86145号公報
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】高木康博,「立体映像とフラットパネル型立体表示技術」,光学,第35巻,第8号,2006年,p.400−406
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ところで、光線再生法によって自然な空間像を表示するには、通常の2次元ディスプレイにおいて通常の2次元画像を1フレーム表示する間に、およそ数十〜百以上の異なった2次元画像をそれぞれ異なる方向に向けて投影する必要がある。しかしながら、特許文献3などに開示した空間像表示装置では、1つの画素に対して1つの偏向素子を設けるようにしている。そのため、そのような空間像表示装置に搭載される2次元ディスプレイには、通常の2次元ディスプレイにおいて通常の2次元画像を1フレーム表示する間に、およそ数十〜百以上の異なった2次元画像を表示する能力が求められることとなる。すなわち、例えば毎秒1000〜6000フレーム以上という非常に高いフレームレートが必要となる。ところが、その様なハイフレームレートを有する2次元ディスプレイは高価であるうえ、複雑かつ大型な構成となりがちである。このため、2次元ディスプレイにおいてそのような高いフレームレートを必要とせず、よりコンパクト化された構造でありながら、より自然な空間像を表示することのできる空間像表示装置が望まれる。
【0014】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、簡素な構造でありながら、より自然な空間像を形成可能な空間像表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の空間像表示装置は、複数の画素を有し、映像信号に応じた2次元表示画像を生成する2次元画像生成手段と、2次元画像生成手段からの表示画像光を、少なくとも水平方向に並ぶ一群の画素を一単位として、水平方向に偏向する偏向手段とを備えるようにしたものである。
【0016】
本発明の空間像表示装置では、2次元画像生成手段からの表示画像光のうち一群の画素に応じた表示画像光が、その一群の画素に対応する一の偏向手段によって一括して偏向される。すなわち、水平方向に並ぶ一群の画素がn個の画素からなる場合、それらに対応する一の偏向手段から、互いに異なる方向へ向かうn個の偏向された表示画像光が同時に射出される。このため、一の画素に対して一の偏向手段を設けるようにした場合と比較した場合、2次元画像生成手段における単位時間当たりのフレーム表示速度(フレームレート)を上げなくとも、より多くの異なった2次元画像が水平面内の異なる方向に向けてそれぞれ投影されることとなる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の空間像表示装置によれば、一群の画素に対して一の偏向手段を設け、一群の画素に応じた表示画像光を一括して偏向するようにしたので、2次元画像生成手段におけるフレームレートが従来と同程度であっても、より多くの2次元画像を適切な方向へ射出することができる。このため、簡素な構造でありながら、より自然な空間像を形成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明における一実施の形態としての空間像表示装置の一構成例を表す概略図である。
【図2】図1に示した第1レンズアレイの構成を表す斜視図、および表示部の画素の配置を表す平面図である。
【図3】図1に示した第2レンズアレイの構成を表す斜視図である。
【図4】図1に示した波面変換偏向部における液体光学素子の構成を示す斜視図である。
【図5】図4に示した液体光学素子の動作を説明するための概念図である。
【図6】図1に示した空間像表示装置において立体映像を観測する際の動作を説明するための概念図である。
【図7】図1に示した空間像表示装置において立体映像を観測する際の動作を説明するための他の概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0020】
図1〜図4を参照し、本発明における一実施の形態としての空間像表示装置10について説明する。図1は、空間像表示装置10の、水平面内における一構成例を表すものである。図2(A)は、図1に示した第1レンズアレイ1の斜視構成を表し、図2(B)は、図1に示した表示部2のXY平面での画素22(22R,22G,22B)の配置を表している。図3は、図1に示した第2レンズアレイ3の斜視構成を表すものである。図4は、図1に示した波面変換偏向部4の具体的な構成を表すものである。
【0021】
<空間像表示装置の構成>
図1に示したように、空間像表示装置10は、光源(図示せず)の側から、第1レンズアレイ1、画素22(後述)を複数有する表示部2、第2レンズアレイ3、波面変換偏向部4、拡散板5を順に備えている。
【0022】
第1レンズアレイ1は、光軸(Z軸)と直交する面(XY平面)に沿ってマトリクス状に並ぶ複数のマイクロレンズ11(11A,11B,11C)を有している(図2(A))。マイクロレンズ11は、それぞれ光源からのバックライトBLを集光し、対応する各画素22へ向けて射出するものである。マイクロレンズ11は、レンズ面が球面であり、光軸を含む水平面(XZ平面)を通過する光の焦点距離と、光軸を含み水平面と直交する面(YZ平面)を通過する光の焦点距離とが互いに一致するものである。全てのマイクロレンズ11は、互いに等しい焦点距離f11を有することが望ましい。バックライトBLとしては、蛍光灯などの光をコリメータレンズなどによって平行化した平行光を用いることが望ましい。
【0023】
表示部2は、映像信号に応じた2次元表示画像を生成するものであり、具体的にはバックライトBLが照射されることにより表示画像光を射出するカラー液晶デバイスである。表示部2は、第1レンズアレイ1の側からガラス基板21と、それぞれ画素電極および液晶層を含む複数の画素22と、ガラス基板23とが順に積層された構造を有している。ガラス基板21およびガラス基板23は透明であり、いずれか一方には赤(R),緑(G),青(B)の着色層を有するカラーフィルタが設けられている。このため、画素22は、赤色を表示する画素22Rと、緑色を表示する画素22Gと、青色を表示する画素22Bとに分類される。この表示部2では、例えば、図2(B)に示したように、X軸方向においては画素22Rと、画素22Gと、画素22Bとが順に繰り返し配置される一方、Y軸方向においては同色の画素22が揃うように配置されている。本明細書では、便宜上、X軸方向に並ぶ画素22を行と呼び、Y軸方向に並ぶ画素22を列と呼ぶ。
【0024】
各画素22は、XY平面においてY軸方向に延在する矩形状をなしており、Y軸方向に並ぶ一群のマイクロレンズ11A〜11Cからなるマイクロレンズ群12(図2(A))に対応して設けられている。すなわち、第1レンズアレイ1と表示部2とは、マイクロレンズ群12のマイクロレンズ11A〜11Cを通過した光が各画素22の有効領域内のスポットSP1〜SP3にそれぞれ集光するような位置関係となっている(図2(A)および図2(B))。例えば、マイクロレンズ群12nのマイクロレンズ11A〜11Cを通過した光は、画素22RnのスポットSP1〜SP3にそれぞれ集光する。同様に、マイクロレンズ群12n+1からの光は画素22Rn+1に集光し、マイクロレンズ群12n+2からの光は画素22Rn+2に集光する。なお、1つのマイクロレンズ11に対応して1つの画素22が配置されていてもよいし、2または4以上のマイクロレンズ11に対応して1つの画素22が配置されていてもよい。
【0025】
第2レンズアレイ3は、第1レンズアレイ1および表示部2を通過して集光された表示画像光を水平面内において平行光に変換して射出するものである。具体的には、第2レンズアレイ3は、いわゆるレンチキュラーレンズであり、例えば図3に示したように、Y軸に沿った軸を中心とした円柱面を各々有する複数のシリンドリカルレンズ31がX軸方向に並ぶように配置されたものである。したがって、シリンドリカルレンズ31は、光軸(Z軸)を含む水平面において屈折力を発揮する。図1では、X軸方向に沿って並ぶ9列の画素22ごとに1つのシリンドリカルレンズ31が設けられているが、この数はこれに限定されるものではない。また、シリンドリカルレンズ31は、Y軸から所定の角度θ(θ<45°)だけ傾いた軸を中心とした円柱面を有するものとしてもよい。全てのシリンドリカルレンズ31は、互いに等しい焦点距離f31を有することが望ましい。また、第1レンズアレイ1と第2レンズアレイ3との距離f13は、各々の焦点距離の合計、すなわちマイクロレンズ11の焦点距離f11とシリンドリカルレンズ31の焦点距離f31との合計|f11+f31|と一致している。このため、バックライトBLが平行光であれば、シリンドリカルレンズ31からの射出光も水平面内において平行光となる。
【0026】
波面変換偏向部4は、1つの第2レンズアレイ3に対して1つもしくは複数設けられた液体光学素子41を有しており、第2レンズアレイ3から射出された表示画像光に対し、波面変換および偏向を行うものである。具体的には、液体光学素子41によって、第2レンズアレイ3から射出された表示画像光の波面を水平方向(X軸方向)および鉛直方向(Y軸方向)の双方に並ぶ一群の画素22を一単位として所定の曲率を有する波面に一括して変換すると共に、その表示画像光を水平面内(XZ平面内)において一括して偏向する。ここで、液体光学素子41を透過した表示画像光は、任意の観測点を基点として、この観測点から仮想物点までの光路長と等しい光路長となる位置に焦点を結ぶような曲率を有する波面に変換される。
【0027】
図4(A)〜図4(C)に、液体光学素子41の具体的な斜視構成を表す。図4(A)に示したように、液体光学素子41は、光軸(Z軸)上において、互いに屈折率および界面張力の異なる透明な無極性液体42および極性液体43が、銅などからなる一対の電極44A,44Bの間に挟まれるように配置されたものである。一対の電極44A,44Bは、それぞれ、透明な底板45および天板46と絶縁性のシール部47を介して接着され、固定されている。電極44A,44Bは、それぞれの外表面と接続された端子44AT,44BTを介して外部電源(図示せず)と接続されている。天板46は、酸化インジウム錫(ITO:Indium Tin Oxide)や酸化亜鉛(ZnO)などの透明な導電材料によって構成され、接地電極として機能する。電極44A,44Bはそれぞれ制御部(図示せず)と接続されており、所定の大きさの電位に設定できるようになっている。なお、電極44A,44Bと異なる側面(XZ平面)は図示しないガラス板などで覆われており、無極性液体42および極性液体43が完全に密閉された空間に封入された状態となっている。無極性液体42および極性液体43は、その閉空間において互いに溶解せずに分離して存在し、界面41Sを形成している。
【0028】
電極44A,44Bの内表面(互いの対向面)44AS,44BSは、疎水性絶縁膜によって覆われていることが望ましい。この疎水性絶縁膜は、極性液体43に対して疎水性(撥水性)を示す(より厳密には無電界下において無極性液体42に親和性を示す)と共に、電気的絶縁性に優れた性質を有する材料からなるものである。具体的には、フッ素系の高分子であるポリフッ化ビニリデン(PVdF)やポリテトラフルオロエチレン(PTFE)が挙げられる。但し、電極44Aと電極44Bとの電気的絶縁性をより高めることを目的として、電極44Aおよび電極44Bと上記の疎水性絶縁膜との間に例えばスピン・オン・グラス(SOG)などからなる他の絶縁膜を設けるようにしてもよい。
【0029】
無極性液体42は、ほとんど極性を有さず、かつ、電気絶縁性を示す液体材料であり、例えばデカン、ドデカン、ヘキサデカンもしくはウンデカンなどの炭化水素系材料のほか、シリコンオイルなどが好適である。無極性液体42は、電極44Aと電極44Bとの間に電圧を印加しない場合において、底板45の表面を全て覆う程度に十分な容量を有していることが望ましい。
【0030】
一方、極性液体43は、極性を有する液体材料であり、例えば水のほか、塩化カリウムや塩化ナトリウムなどの電解質を溶解させた水溶液が好適である。極性液体43に電圧を印加すると、内表面44AS,44BS(またはそれを覆う疎水性絶縁膜)に対する濡れ性(極性液体43と内表面44AS,44BS(またはそれを覆う疎水性絶縁膜)との接触角)が無極性液体42と比べて大きく変化する。極性液体43は、接地電極としての天板46と接している。
【0031】
一対の電極44A,44Bと底板45および天板46とに囲まれるように封入された無極性液体42および極性液体43は、互いに混在することなく分離し、界面41Sを形成する。なお、無極性液体42および極性液体43は互いにほぼ同等の比重を有するように調整されており、無極性液体42と極性液体43との位置関係は封入する順序で決定される。無極性液体42および極性液体43は透明であることから、界面41Sを透過する光は、その入射角と無極性液体42および極性液体43の屈折率とに応じて屈折する。
【0032】
この液体光学素子41では、電極44A,44Bの間に電圧が印加されていない状態(電極44A,44Bの電位がいずれも零である状態)では、図4(A)に示したように、界面41Sは、極性液体43の側から無極性液体42へ向けて凸の曲面をなす。内表面44ASに対する無極性液体42の接触角42θA、および内表面44BSに対する無極性液体42の接触角42θBは、例えば内表面44AS,44BSを覆う疎水性絶縁膜の材料種を選択することによって調整することができる。ここで、無極性液体42が極性液体43よりも大きな屈折率を有していれば、液体光学素子41は負の屈折力を発揮する。これに対し、無極性液体42が極性液体43よりも小さな屈折率を有していれば、液体光学素子41は正の屈折力を発揮する。例えば、無極性液体42が炭化水素系材料またはシリコンオイルであり、極性液体43が水または電解質水溶液であれば、液体光学素子41が負の屈折力を発揮することとなる。界面41SはY軸方向においては一定の曲率を有し、その曲率はこの状態(電極44A,44Bの間に電圧を印加しない状態)が最大となる。
【0033】
電極44A,44Bの間に電圧が印加されると、例えば図4(B)に表したように界面41Sの曲率が小さくなり、ある一定以上の電圧を印加すると平面となる。すなわち、接触角42θA,42θBがいずれも直角(90°)となる。この現象は以下のように推察される。すなわち、電圧印加により、内表面44AS,44BS(またはそれを覆う疎水性絶縁膜)の表面に電荷が蓄積され、その電荷のクーロン力によって、極性を有する極性液体43が疎水性絶縁膜へ引き寄せられる。すると、極性液体43が内表面44AS,44BS(またはそれを覆う疎水性絶縁膜)と接触する面積を拡大する一方、無極性液体42が内表面44AS,44BS(またはそれを覆う疎水性絶縁膜)と接触する部分から極性液体43によって排除されるように移動(変形)し、結果として界面41Sが平面に近づくこととなる。なお、図4(B)は、電極44Aの電位(Vaとする)と電極44Bの電位(Vbとする)とが互いに等しい(Va=Vb)場合を示している。電位Vaと電位Vbとが異なる場合には、例えば図4(C)に表したように、X軸およびZ軸に対して傾斜した平面(Y軸に対しては平行な面)となる(42θA≠42θB)。なお、図4(C)は、電位Vaよりも電位Vbが大きい(接触角42θAよりも接触角42θBが大きい)場合を示している。この場合、例えば電極44A,44Bと平行に進行して液体光学素子41へ入射した入射光は、界面41SにおいてXZ平面内で屈折し、偏向される。したがって、電位Vaおよび電位Vbの大きさを調整することで、入射光をXZ平面内の所定の向きへ偏向可能となる。
【0034】
また、電位Vaおよび電位Vbの大きさの調整により界面41Sの曲率が変わるようになっている。例えば、電位Va,Vb(Va=Vbとする)を、界面41Sが水平面となる場合の電位Vmaxよりも低い値とすれば、例えば図5(A)に表したように、電位V1,V2が零の場合の界面41S0(破線で表示)よりも曲率の小さな界面41S1(実線で表示)が得られる。このため、界面41Sを透過する光に対して発揮する屈折力は、電位Vaおよび電位Vbの大きさを変えることで調整可能である。すなわち、液体光学素子41は、可変焦点レンズとして機能する。さらに、その状態で電位Vaと電位Vbとが互いに異なる大きさ(Va≠Vb)となれば、界面41Sは適度な曲率を有しつつ、傾斜した状態となる。例えば電位Vaのほうが大きい(Va>Vb)場合には、図5(B)において実線で表した界面41Saが形成される。一方、電位Vbのほうが大きい(Va<Vb)場合には、図5(B)において破線で表した界面41Sbが形成される。したがって、電位Vaおよび電位Vbの大きさを調整することで、液体光学素子41は、入射光に対して適度な屈折力を発揮しつつ、その入射光を所定の向きへ偏向することが可能である。なお、図5(A),5(B)では、無極性液体42が極性液体43よりも大きな屈折率を有しており、液体光学素子41が負の屈折力を発揮する場合に、界面41S1,41Saを形成したときの入射光の変化を表している。
【0035】
拡散板5は、波面変換偏向部4からの光を鉛直方向(Y軸方向)のみに拡散させるものである。波面変換偏向部4からの光は、X軸方向には拡散しないようになっている。このような拡散板5としては、例えばレンズ拡散板(米国Luminit,LLC社;型番LSD40×0.2など)を用いるとよい。あるいは、例えば図3に示した第2レンズアレイ3のように、複数のシリンドリカルレンズが配列されたレンチキュラーレンズを用いてもよい。但し、この場合、シリンドリカルレンズはX軸に沿った軸を中心とした円柱面を有するものとし、それらをY軸方向に配列させるようにする。さらに、シリンドリカルレンズの円柱面の曲率をなるべく大きくし、Y軸方向の単位長さあたりのレンチキュラーレンズの数を大きくするほうがよい。なお、ここでは、拡散板5は、第2レンズアレイ3の投影側に配置されているが、第1レンズアレイ1と第2レンズアレイ3との間に配置するようにしてもよい。
【0036】
<空間像表示装置の動作>
次に、空間像表示装置10の動作について、図6および図7を参照して説明する。
【0037】
一般に、観測者は、ある物体上の物点を観測するとき、その物点を点光源として発射される球面波を観測することにより、3次元空間の固有な場所に存在する「点」として認識している。通常、自然界においては物体から発射される波面は同時に進行し、かつ常に連続的に、ある波面形状を伴って観測者に到達する。ところが、現状ではホログラフィ技術を除いては、空間の各点における光波の波面を同時かつ連続的に再現することは困難である。しかしながら、ある仮想物体があって、その仮想の各点からの光波が発射され、それぞれの光波が観測者に到達する時刻が多少不正確であっても、また連続的に到達するのではなく間歇的な光信号として到達しても、人の眼にはこの積分作用があることによって、不自然な感覚を感じることなく仮想物体を観測することができる。本実施の形態の空間像表示装置10Aでは、この人の眼の積分作用を利用して空間各点の波面を時系列的に順序立てて高速に形成することにより、従来よりも自然な3次元画像を形成することができる。
【0038】
空間像表示装置10では、以下のようにして空間像を表示することができる。図6は、空間像表示装置10を使用して観測者I,IIが立体映像としての仮想物体IMGを観測している状態を表す概念図である。以下、その動作原理を説明する。
【0039】
例えば、仮想物体IMGにおける任意の仮想物点(例えば仮想物点B)の映像光波は次のように形成される。まず、左右それぞれの眼に対応した2種類の画像を表示部2に表示する。その際、光源からバックライトBL(ここでは図示せず)を第1レンズアレイ1に照射し、複数のマイクロレンズ11を透過する光を、それぞれに対応する画素22へ向けて集光させる。各画素22に到達した光は、表示画像光として発散しながら第2レンズアレイ3へ向かう。各画素22からの表示画像光は、第2レンズアレイ3を通過する際、水平面内において平行光に変換される。当然、2つの画像を同時に表示することは不可能であるので、それぞれの画像は順次表示されて最終的にそれぞれ左右の眼に順次送られる。例えば、仮想物点Cに対応することとなる画像は、表示部2における点CL1(左眼用)および点CR1(右眼用)にそれぞれ表示される。その際、表示部2における点CL1(左眼用)および点CR1(右眼用)に位置する画素22に対し、それぞれに対応するマイクロレンズ11から収束光が照射される。表示部2から射出される表示画像光は、第2レンズアレイ3、水平方向の波面変換偏向部4および拡散板5を順次透過したのち観測者IIの左眼IILおよび右眼IIRに各々到達する。同様に、観測者Iに対する仮想物点Cの画像は表示部2における点BL1(左眼用)および点BR1(右眼用)にそれぞれ表示され、第2レンズアレイ3、波面変換偏向部4および拡散板5を順次透過したのち観測者Iの左眼ILおよび右眼IRに各々到達する。この動作は人の眼の積分効果の時定数内に高速に行われるので、観測者I,IIは画像が順次送られてきていることを認識することはなく、仮想物点Cを認識することができる。
【0040】
第2レンズアレイ3から射出された表示画像光は、水平面内において平行光として波面変換偏向部4へ向かう。第2レンズアレイ3において、表示画像光を平行光に変換し、焦点距離を無限大にすることで、光波が放射された点の位置情報のうち眼の焦点距離をあわせる際に生じる生理機能から得られる情報を一度消すことができる。図6では、第2レンズアレイ3から波面変換偏向部4へ向かう光の波面を、進行方向と直交する平行な波面r0として示している。これにより、両眼視差・輻輳角からの情報と焦点距離からの情報とが一致しないことに起因する脳の混乱が緩和される。
【0041】
表示部2の点CL1,CR1から放射された表示画像光は、第2レンズアレイ3を経たのち、それぞれ波面変換偏向部4の点CL2,CR2に到達する。波面変換偏向部4の点CL2,CR2に到達した光波は水平面内において所定方向へ偏向されると共に、各画素22に応じた適切な焦点距離情報が付加され、そののち、拡散板5の点CL3,CR3に到達する。焦点距離情報は、平面状の波面r0を、曲面状の波面r1に変換することで付加される。これについては、のちに詳述する。
【0042】
拡散板5に到達した表示画像光は、拡散板5によって垂直面内において拡散され、それぞれ観測者IIの左眼IILおよび右眼IIRへ向かって放射される。ここで、例えば、偏向角が観測者IIの左眼IILに向いたときに表示画像光の波面が点CL3に到達し、偏向角が観測者IIの右眼IIRに向いたときに表示画像光の波面が点CR3に到達するように、波面変換偏向部4による偏向角に同期して表示部2が画像光を送り出すようにする。同時に、波面変換偏向部4は、自らの偏向角に同期して波面r0を波面r1に変換する動作を行うようにしてもよい。拡散板5から放射された画像光の波面が観測者IIの左眼IILおよび右眼IIRに到達することにより、観測者IIは仮想物体IMG上の仮想物点Cを3次元空間中の一点として認識することができる。仮想物点Bについても同様に、表示部2の点BL1,BR1から放射された画像光は、第2レンズアレイ3を経たのち、それぞれ波面変換偏向部4の点BL2,BR2に到達する。点BL2,BR2に到達した光波は水平面内において所定方向へ偏向されたのち、拡散板5によって垂直面内において拡散され、それぞれ観測者IIの左眼IILおよび右眼IIRへ向かって放射される。なお、図6では、表示部2の点BL1,BR1において、観測者Iに対する仮想物点Cの画像を表示すると共に観測者IIに対する仮想物点Bの画像を表示する様子を表しているが、これらは同時に表示されるのではなく、互いに異なるタイミングで表示される。
【0043】
ここで、波面変換偏向部4の作用について図6に加えて図7を参照して説明する。波面変換偏向部4では、表示部2から第2レンズアレイ3を経て到達した表示画像光の波面r0が、任意の観測点を基点として、この観測点から仮想物点までの光路長と等しい光路長となる位置に焦点を結ぶような曲率を有する波面r1に変換される。例えば、図7に示したように、仮想物点Cを光源として発射された光の波面RCが光路長L1を経て左眼IILに到達するとした場合、左眼IILでの波面RCと波面r1との曲率が互いに一致するように波面形成がなされる。この場合、点CL2と点CL1とを結ぶ直線上において、点CL2から仮想物点Cまでの光路長L2と等しい距離に波面r1に対応する焦点CCが存在するものと考えることができる。そこで、波面r1を有する表示画像光が焦点CCを光源として発射されたものとみなすとすると、その表示画像光の波面r1が左眼IILに到達したときに、あたかも仮想物点Cを光源として発射された波面RCであるかのように認識される。また、図7に示したように、拡散板5よりも観測者側に近い位置に仮想物点Aが存在する場合、波面変換偏向部4で変換された波面r1は仮想物点Aにおいて焦点を結ぶこととなる。
【0044】
なお、液体光学素子41が負の屈折力のみを発揮する場合には、各液体光学素子41に対応して正の屈折力を有するレンズ(正レンズ)を光軸上に別途設けるようにすればよい。すなわち、表示画像光を収束光としたい場合には、液体光学素子41の界面41Sを平面に近づけ、あるいは界面41Sの曲率を小さくして正レンズの作用が強く表れるようにすればよい。一方、表示画像光を発散光としたい場合には、界面41Sの曲率を大きくして正レンズの作用を弱めればよい。反対に、液体光学素子41が正の屈折力のみを発揮する場合には、各液体光学素子41に対応して負の屈折力を有するレンズ(負レンズ)を光軸上に別途設けるようにすればよい。
【0045】
この結果、両眼視差・輻輳角からの情報と焦点距離からの情報との不一致から生じる脳の混乱は完全に解消される。
【0046】
また、第2レンズアレイ3において表示部2から放射された表示画像光を水平面内において平行化することにより、次のような作用が得られる。両眼視差を確保するためには、左右それぞれの眼に対応した2種類の画像を送る必要がある。すなわち、左右の眼に対応するそれぞれの表示画像光は、互いに反対側の眼に入射してはならない。仮に、第2レンズアレイ3が存在せず、表示部2を光源とした球面波が放射されているとすると、たとえ波面変換偏向部4によって偏向させたとしても互いに反対側の眼にも不要な表示画像光が入射してしまう。その場合、両眼視差が発生せず、2重の画像として認識される。そこで、本実施の形態のように第2レンズアレイ3において表示部2からの表示画像光を平行光束に変換するようにすれば、表示画像光は扇状に広がることなく、よって、他方の眼に入射することなく目的とする一方の眼だけに到達させることができる。
【0047】
このように、空間像表示装置10Aでは、表示部2が映像信号に応じた2次元の表示画像光を生成し、波面変換偏向部4の液体光学素子41が、その表示画像光の偏向を行うと共に、その表示画像光の波面r0を所望の曲率を有する波面r1に変換する。これにより、以下の効果が得られる。すなわち、表示部2の表示画像光の波面r0を波面r1に変換することで、表示画像光が、両眼視差、輻輳角および運動視差に関する情報だけでなく、適切な焦点距離情報を含むものとなる。このため、観察者が、両眼視差、輻輳角および運動視差に関する情報と、適切な焦点距離情報との整合性を図ることができ、生理的な違和感を生ずることなく所望の立体映像を認識することができる。さらに、波面変換偏向部4において、上記の波面変換操作に加え、水平面内での偏向操作をも行うようにしたので、簡素かつコンパクトな構成を実現している。
【0048】
また、波面変換偏向部4では、水平方向および鉛直方向の双方に並ぶ一群の画素22に応じた表示画像光が、その一群の画素22に対応する一の液体光学素子41によって一括して波面変換され、かつ、一括して偏向される。このため、一の画素22に対して一の液体光学素子41を設けるようにした場合と比較すると、表示部2における単位時間当たりのフレーム表示速度(フレームレート)を高めなくとも、より多くの異なった2次元の表示画像光が水平面内の異なる方向に向けてそれぞれ一度に射出されることとなる。このため、簡素な構造を維持しつつ、より自然な空間像を形成することが可能となる。
【0049】
さらに、拡散板5によって鉛直方向に表示画像光を拡散するようにしたので、観察者が画面の上下方向(鉛直方向)に多少ずれた位置に立っていたとしても、観察者は空間像を視認することができる。
【0050】
なお、本実施の形態では、表示画像光を波面変換偏向部4において水平方向に偏向するようにしたが、併せて、鉛直方向に表示画像光を偏向する他の偏向手段を配置してもよい。その場合には、他の偏向手段によって鉛直面内での偏向操作をも行うことができるので、観測者の両眼を結ぶ仮想線が水平方向から外れている場合(例えば観測者が寝転んだ姿勢をとった場合)であっても、左右の眼に対して所定の画像が到達することとなるので立体視が可能となる。
【0051】
以上、いくつかの実施の形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されず、種々の変形が可能である。例えば上記実施の形態では、表示デバイスとして液晶デバイスを利用した例について説明したが、これに限定されるものではない。例えば有機EL素子、プラズマ発光素子、フィールドエミッション(FED)素子、あるいは発光ダイオード(LED)などの自発光素子をアレイ状に配設したものを表示デバイスとして適用することもできる。このような自発光型の表示デバイスを用いた場合には、バックライト用の光源を別途設ける必要がないので、より簡素な構成を実現することができる。また、上記実施の形態で説明した液晶デバイスは透過型のライトバルブとして機能するものであるが、GLV(グレーティングライトバルブ)やDMD(デジタルマルチミラー)などの反射型のライトバルブを表示デバイスとして用いることも可能である。
【0052】
また、上記実施の形態では、偏向手段によって、2次元画像生成手段からの表示画像光を、水平方向(X軸方向)および鉛直方向(Y軸方向)の双方に並ぶ一群の画素を一単位として波面変換および偏向するようにしたが、水平方向のみに配列された一群の画素を一単位として扱うようにしてもよい。この場合、空間像表示装置から射出される光線を平行光に近づけることが可能となり、結果としてボケの少ない空間像を表示することができる。
【0053】
また、上記実施の形態では、偏向手段としての液体光学素子41が、2次元画像生成手段からの表示画像光に対し波面変換操作と偏向操作とを同時に行うようにしたが、偏向操作のみを行うようにしてもよい。あるいは、液体光学素子41の代わりに、波面変換操作を行う機構(波面変換部)と、偏向操作を行う機構(偏向部)とを別々に分離して設けるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0054】
10…空間像表示装置、1…第1レンズアレイ、11…マイクロレンズ、12…マイクロレンズ群、21…ガラス基板、22…画素、23…ガラス基板、3…第2レンズアレイ、4…波面変換偏向部、41…液体光学素子、41S…界面、42…無極性液体,43…極性液体、44A,44B…電極、45…底板、46…天板、47…シール部、5…拡張板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の画素を有し、映像信号に応じた2次元表示画像を生成する2次元画像生成手段と、
前記2次元画像生成手段からの表示画像光を、少なくとも水平方向に並ぶ一群の画素を一単位として、水平方向に偏向する偏向手段と
を備えた空間像表示装置。
【請求項2】
前記偏向手段は、一対の電極と、光軸上において前記一対の電極間に封入され、互いに異なる屈折率を有すると共に分離された状態を保つ極性液体および無極性液体とを含む液体光学素子である請求項1に記載の空間像表示装置。
【請求項3】
前記偏向手段は、
前記2次元画像生成手段からの表示画像光の波面を、任意の観測点を基点として、この観測点から仮想物点までの光路長と等しい光路長となる位置に焦点を結ぶような曲率を有する波面に変換する機能をも有する
請求項1または請求項2に記載の空間像表示装置。
【請求項4】
前記2次元画像生成手段からの表示画像光を、画素単位で、または一群の画素を一単位として平行光に変換して射出するレンズアレイをさらに備えた請求項1に記載の空間像表示装置。
【請求項5】
前記レンズアレイは、鉛直方向の軸を中心とした円柱面を各々有する複数のシリンドリカルレンズが光軸と直交する面内において並列配置されたものである請求項4記載の空間像表示装置。
【請求項6】
鉛直方向に入射光を散乱させる異方性拡散板が、前記2次元画像生成手段と前記レンズアレイとの間、または前記レンズアレイの投影側に配置されている請求項4記載の空間像表示装置。
【請求項7】
前記極性液体は、前記一対の電極から隔離された接地電極と接している請求項1記載の空間像表示装置。
【請求項8】
前記一対の電極の対向面は、無電界下において前記無極性液体に親和性を示す絶縁膜によって覆われている請求項1記載の空間像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−169976(P2010−169976A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−13671(P2009−13671)
【出願日】平成21年1月23日(2009.1.23)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】