説明

立体配線構造物

【課題】立体的な電子回路を簡単に形成することができる立体配線構造物を提供することを目的としている。
【解決手段】筐体2の内側に、電子部品3及び配線パターン4をそれぞれ内蔵する立体配線構造物であって、筐体2は、複数のセグメント5,6,7を直列に連結して組み合わせた構成からなり、そのセグメント5,6,7として、筐体2の両端部を構成する一対の端部セグメント5,6と、一対の端部セグメント5,6間に配設された少なくとも1つの中間セグメント7と、を備えており、中間セグメント7に、筐体2の内側に配設される壁部71が一体に形成されており、壁部71の平面状の壁面71a,71bに電子部品3が実装されているとともに、壁面71a,71b及びセグメント5,6,7の内面50a,51a,60a,61a,70aにそれぞれ配線パターン4が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品及び配線パターンをそれぞれ内蔵する立体配線構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、電子機器の筐体の内側には、電子回路が形成された回路基板が収容されている。この回路基板は、配線パターンが形成されたプリント配線板上に電子部品が実装された構成からなる。
【0003】
ところで、近年の電子機器の小型化に伴い、筐体の内側空間が縮小される傾向にあるが、平板状の回路基板では大面積になり易く、小型の筐体内に収容させることができない場合がある。そこで、従来、例えば下記特許文献1に示されているように、回路基板を折り畳んで筐体の内側に内蔵させる立体配線の回路基板が知られている。この従来技術は、複数の小型回路基板を折り曲げ可能な接続部を介して連結し、この接続部を折り曲げることによって複数の小型回路基板を重ねた状態に形成するものである。上記した接続部は、小型回路基板よりも薄くフレキシブルな板部であり、この接続部には、隣り合う小型回路基板の配線同士を接続するフレキシブル配線が設けられている。このような立体配線の回路基板は、複数の小型回路基板を横並びに配置した状態で製作され、筐体の内側に収納させる際に、接続部を折り曲げて複数の小型回路基板を重ねた状態にする。これにより、多数の電子部品が実装された回路基板を小型の筐体の内側に収容させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−7471号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記した従来技術では、回路基板を筐体の内側に収容する際に、接続部を折り曲げる必要があり、作業工数が増えて煩雑であるという問題が存在する。また、回路基板のサイズが小さくなるほど、上記した折り曲げ作業には手間と労力を要し、より煩雑となる。
【0006】
本発明は、上記した従来の問題が考慮されたものであり、立体的な電子回路を簡単に形成することができる立体配線構造物を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る立体配線構造物は、筐体の内側に、電子部品及び該電子部品に電気的に接続される配線パターンをそれぞれ内蔵する立体配線構造物であって、前記筐体は、複数のセグメントを直列に連結して組み合わせた構成からなり、該セグメントとして、前記筐体の両端部を構成する一対の端部セグメントと、該一対の端部セグメント間に配設された少なくとも1つの中間セグメントと、を備えており、該中間セグメントに、前記筐体の内側に配設される壁部が一体に形成されており、該壁部の平面状の壁面に前記電子部品が実装されているとともに、前記壁面及び前記セグメントの内面にそれぞれ前記配線パターンが形成されていることを特徴としている。
【0008】
このような特徴により、複数のセグメントが組み合わせる前に、まず、壁部の平面状の壁面及びセグメントの内面に配線パターンを形成する。そして、壁部の平面状の壁面に電子部品を実装し、この電子部品と配線パターンとを電気的に接続させる。次に、複数のセグメントを組み合わせて筐体を形成する。これにより、筐体の内側に、電子部品及び配線パターンからなる電子回路が立体的に形成される。また、中間セグメントを複数連結させることで、実装可能な電子部品の数量が増える。
【0009】
また、本発明に係る立体配線構造物は、隣り合うセグメントの端部同士が嵌合されるとともに固定手段を介して固定されることで、前記複数のセグメントが連結されていることが好ましい。
【0010】
これにより、隣り合うセグメントの端部が固定手段によって確実に連結される。
【0011】
また、本発明に係る立体配線構造物は、前記固定手段として、前記隣り合うセグメントの端部同士を接合する導電性接合材料が用いられ、前記隣り合うセグメントにそれぞれ形成された配線パターンは、互いに前記導電性接合材料を介して接続されていることが好ましい。
【0012】
これにより、隣り合うセグメントの端部が導電性接合材料によって確実に連結される。また、隣り合うセグメントの各配線パターン同士が導電性接合材料を介して確実に接続される。
【0013】
また、本発明に係る立体配線構造物は、隣り合うセグメントの連結部分が水密気密構造になっていることが好ましい。
【0014】
これにより、複数のセグメントからなる筐体の密閉性が向上し、電子回路が収容される筐体の内部空間の水密性及び気密性が向上する。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る立体配線構造物によれば、複数のセグメントを組み合わせて筐体を形成することで筐体の内側に電子回路が立体的に形成されるので、立体的な電子回路を簡単に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1の実施の形態を説明するための立体配線構造物の斜視図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態を説明するための立体配線構造物の分解断面図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態を説明するための中間セグメントの端面図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態を説明するためのセグメント連結部分の分解断面図である。
【図5】本発明の第3の実施の形態を説明するためのセグメント連結部分の分解断面図である。
【図6】本発明の第3の実施の形態を説明するためのセグメント連結部分の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る立体配線構造物の第1から第3の実施の形態について説明する。
【0018】
[第1の実施の形態]
まず、本発明に係る立体配線構造物の第1の実施の形態について、図1から図3に基いて説明する。
図1は本実施の形態に係る立体配線構造物1の斜視図であり、図2は本実施の形態に係る立体配線構造物1の分解断面図であり、図3は後述するセグメント5,6,7を軸方向側からみたセグメント5,6,7の端面図である。
なお、図2に示す鎖線Oは立体配線構造物1の中心軸線であり、下記の実施の形態の説明では、この中心軸線O方向を「軸方向」とし、中心軸線Oに直交する方向を「径方向」とし、中心軸線O回りの方向を「周方向」とする。
【0019】
図1、図2に示すように、立体配線構造物1は、筐体2の内側に、複数の電子部品3及びその電子部品3に電気的に接続される配線パターン4をそれぞれ内蔵する部品である。電子部品3は、例えばトランジスタやコンデンサ、抵抗器等の公知の電子部品である。配線パターン4は、銅や銀等の導電性材料からなる配線部である。
【0020】
筐体2は、例えば液晶ポリマー(LCP)やポリフェニレンサルファイド(PPS)、芳香族ポリエーテルケトン樹脂(例えばPEEK(登録商標))等の耐熱性に優れた合成樹脂からなる樹脂部材であり、内部に空洞を有する中空形状に形成されている。具体的に説明すると、筐体2は、両端が閉塞された円筒形状の部材である。この筐体2は、軸方向に複数に分割されており、複数のセグメント5,6,7を直列に連結して組み合わせた構成となっている。複数のセグメント5,6,7としては、筐体2の両端部を構成する一対の端部セグメント5,6と、これら一対の端部セグメント5,6間に配設された中間セグメント7と、がある。また、複数のセグメント5,6,7は、隣り合うセグメント5,6,7の端部同士が嵌合されることで連結されている。すなわち、隣り合うセグメント5,6,7のうち、一方のセグメント5(7)の端部の内側に他方のセグメント7(6)の端部が嵌合されることで、隣り合うセグメント5,6,7同士が連結されている。また、隣り合うセグメント5,6,7の連結部分は水密気密構造になっている。具体的に説明すると、一方のセグメント5(7)の端部と他方のセグメント7(6)の端部とはレーザによって全周に亘って融着されている。
【0021】
上記した一対の端部セグメント5,6のうち、軸方向の一方側に配設された端部セグメント5は、中心軸線Oを中心線とする円筒形状の周壁部50と、中心軸線Oに対して垂直に配設されて周壁部50の軸方向一方側(図2における左側)の端部を閉塞する端壁部51と、を備えている。前記した周壁部50の軸方向他方側の端部には、中間セグメント7の一方側の端部(後述する嵌入部72)が内側に嵌入される被嵌入部52が形成されている。この被嵌入部52は、端部セグメント5の端部内周面を径方向外側に拡径させた拡径部であり、全周に亘って段差状に形成されている。端壁部51のうち、少なくとも軸方向他方側(筐体2の内部空間側)の壁面51aは平面状に形成されており、この壁面51aには電子部品3が実装されている。また、端壁部51の壁面51a及び周壁部50の内周面50aには複数の配線パターン4が形成されている。
【0022】
上記した一対の端部セグメント5,6のうち、軸方向の他方側に配設された端部セグメント6は、中心軸線Oを中心線とする円筒形状の周壁部60と、中心軸線Oに対して垂直に配設されて周壁部60の軸方向他方側の端部を閉塞する端壁部61と、を備えている。前記した周壁部60の軸方向一方側の端部には、中間セグメント7の他方側の端部(後述する被嵌入部73)の内側に嵌入する嵌入部62が形成されている。この嵌入部62は、端部セグメント6の端部外周面を径方向内側に縮径させた縮径部であり、全周に亘って段差状に形成されている。端壁部61のうち、少なくとも軸方向一方側(筐体2の内部空間側)の壁面61aは平面状に形成されており、この壁面61aには電子部品3が実装されている。また、端壁部61の壁面61a及び周壁部60の内周面60aには複数の配線パターン4が形成されている。
【0023】
上記した中間セグメント7は、中心軸線Oを中心線とする円筒形状の周壁部70と、中心軸線Oに対して垂直に配設されて周壁部70の軸方向中央部分に配設された隔壁部71(本発明における壁部に相当する。)と、を備えている。中間セグメント7の周壁部70の軸方向一方側の端部には、端部セグメント5の被嵌入部52に嵌入する嵌入部72が形成されている。この嵌入部72は、中間セグメント7の端部外周面を径方向内側に縮径させた縮径部であり、全周に亘って段差状に形成されている。また、中間セグメント7の周壁部70の軸方向他方側の端部には、端部セグメント6の嵌入部62が内側に嵌入される被嵌入部73が形成されている。この被嵌入部73は、中間セグメント7の端部内周面を径方向外側に拡径させた拡径部であり、全周に亘って段差状に形成されている。隔壁部71は、筐体2の内部空間を2つに区画する壁部であり、筐体2の内側に配設されている。この隔壁部71の両側の壁面71a,71bはそれぞれ平面状に形成されており、これらの壁面71a,71bには電子部品3が実装されている。また、隔壁部71の壁面71a,71b及び周壁部70の内周面70aには複数の配線パターン4が形成されており、これらの配線パターン4は、上記した端部セグメント5,6の配線パターン4にそれぞれ接続されている。
【0024】
次に、上記した構成からなる立体配線構造物1の製造方法について説明する。
【0025】
まず、射出成形された樹脂製のセグメント5,6,7の内面に所定形状の配線パターン4を形成する工程を行う。詳しく説明すると、図3(a)に示すように、MID(Molded Interconnection Device)工法によって、端部セグメント5,6の周壁部50,60の内周面50a,60a及び端壁部51,61の壁面51a,61aと、中間セグメント7の周壁部70の内周面70a及び隔壁部71の両側の壁面71a,71bとに、所定形状の配線パターン4を形成する。このとき、端部セグメント5,6の端壁部51,61の壁面51a,61a、及び中間セグメント7の隔壁部71の壁面71a,71bに、電子部品3を実装させる部分(電子部品実装部4a)をそれぞれ形成する。
【0026】
次に、上記したセグメント5,6,7に電子部品3を実装する工程を行う。詳しく説明すると、図3(b)に示すように、図示せぬディスペンス装置によって、上記した電子部品実装部4aに電子部品接合材料8を塗布する。この電子部品接合材料8は、電子部品3を接合させるためのものであり、加熱することで溶融する例えば低融点のクリームはんだ等のはんだを用いる。続いて、図3(c)に示すように、図示せぬ実装機によって、上記した電子部品接合材料8上に電子部品3の端子を載せ、図示せぬリフロー装置で電子部品接合材料8を加熱する。これにより、電子部品接合材料8を介して電子部品3が端部セグメント5,6の端壁部51,61の壁面51a,61a、及び中間セグメント7の隔壁部71の壁面71a,71bにそれぞれ実装される。なお、電子部品接合材料8として低融点のクリームはんだを用いるのは、加熱時にセグメント5,6,7が熱で変形するのを防ぐためであり、セグメント5,6,7が高い耐熱性を有する場合には、高融点のはんだを用いることも可能である。さらに、電子部品接合材料8として、はんだ以外のものを用いることも可能であり、例えば銀ペースト等の金属材料を添加した接着剤を用いることも可能である。
【0027】
次に、上記したセグメント5,6,7を組み立てる工程を行う。詳しく説明すると、一方の端部セグメント5の被嵌入部52の内側に中間セグメント7の嵌入部72を嵌入させて、一方の端部セグメント5の他方側端部と中間セグメント7の一方側端部とを嵌合させる。また、中間セグメント7の被嵌入部73の内側に他方の端部セグメント6の嵌入部62を嵌入させて、中間セグメント7の他方側端部と他方の端部セグメント6の一方側端部とを嵌合させる。このとき、中間セグメント7の周壁部70の内周面に形成された配線パターン4と端部セグメント5,6の周壁部50,60の内周面50a,60aに形成された配線パターン4とが接続されるように、各セグメント5,6,7の周方向の位置合わせを行う。
【0028】
次に、隣り合うセグメント5,6,7の連結部分を水密気密構造にする工程を行う。詳しく説明すると、一方の端部セグメント5と中間セグメント7との嵌合部分(被嵌入部52及び嵌入部72)にレーザを照射して被嵌入部52と嵌入部72とを全周に亘って融着させる。また、中間セグメント7と他方の端部セグメント6との嵌合部分(被嵌入部73及び嵌入部62)にレーザを照射して被嵌入部73と嵌入部62とを全周に亘って融着させる。これにより、一方の端部セグメント5と中間セグメント7との嵌合部分、及び中間セグメント7と他方の端部セグメント6との嵌合部分が、それぞれ水密気密構造になる。
以上の工程により、筐体2内に電子部品3及び配線パターン4を内蔵した立体配線構造物1が完成する。
【0029】
上記した構成からなる立体配線構造物によれば、複数のセグメント5,6,7を組み合わせて筐体2を形成することで筐体2の内側に電子回路(電子部品3及び配線パターン4)が立体的に形成されるので、立体的な電子回路を簡単に形成することができる。
【0030】
また、隣り合うセグメント5,6,7の連結部分が水密気密構造になっているので、複数のセグメント5,6,7からなる筐体2の密閉性が向上し、電子回路が収容される筐体2の内部空間の水密性及び気密性が向上する。これにより、隣り合うセグメント5,6,7の連結部分から筐体2の内側に水分や埃等が浸入するのを防止することができ、筐体2内の電子部品3や配線パターン4を保護することができる。
【0031】
[第2の実施の形態]
次に、本発明に係る立体配線構造物の第2の実施の形態について、図4に基いて説明する。
図4は本実施の形態に係る立体配線構造物1の隣り合うセグメント5,6,7の連結部分を表した分解断面図である。
なお、上述した第1の実施の形態と同様の構成については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0032】
図4に示すように、隣り合うセグメント5,6,7の端部同士が嵌合されるとともに固定手段10を介して固定されることで、複数のセグメント5,6,7が連結されている。前記した固定手段10は、一方のセグメント5(7)の端部に形成された凸部11と、他方のセグメント7(6)の端部に形成された凹部12と、からなり、これら凸部11と凹部12とは、隣り合うセグメント5,6,7の端部同士が嵌合された際に互いに嵌合される。
【0033】
詳しく説明すると、端部セグメント5の被嵌入部52の内周面52a、及び中間セグメント7の被嵌入部73の内周面73aには、複数の凸部11が突設されている。凸部11は、略半球状(回転楕円体状)の突起であり、複数の凸部11は、周方向に間隔をあけて配設されている。また、凸部11は、被嵌入部52,73の先端部分(他方側の部分)に配設されている。
【0034】
一方、中間セグメント7の嵌入部72の外周面72a、及び端部セグメント6の嵌入部62の外周面62aには、凸部11が嵌合可能な凹部12が形成されている。凹部12は、略半球状(回転楕円体状)の窪みである。複数の凹部12は、周方向に間隔をあけて配設されており、複数のセグメント5,6,7を連結して周方向に位置合わせした際に複数の凸部11と一致する位置にそれぞれ形成されている。また、凹部12は、嵌入部72,62の基端部分(他方側の部分)に配設されている。
【0035】
上記した固定手段10を備える立体配線構造物1によれば、隣り合うセグメント5,6,7の端部が固定手段10によって確実に連結されるので、所定形状の筐体2を確実に形成することができる。
【0036】
また、凸部11と凹部12からなる固定手段10によれば、凸部11と凹部12とを嵌合させることにより、隣り合うセグメント5,6,7の周方向の位置合わせが行われるので、一方のセグメント5(7)の内面に形成された配線パターン4と他方のセグメント7(6)の内面に形成された配線パターン4とを確実に接続させることができる。
【0037】
[第3の実施の形態]
次に、本発明に係る立体配線構造物の第3の実施の形態について、図5、図6に基いて説明する。
図5は本実施の形態に係る立体配線構造物1の隣り合うセグメント5,6,7の連結部分を表した分解断面図であり、図6は本実施の形態に係る立体配線構造物1の隣り合うセグメント5,6,7の連結部分を表した断面図である。
なお、上述した第1の実施の形態と同様の構成については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0038】
図5に示すように、端部セグメント5及び中間セグメント7の被嵌入部52,73には、後述する導電性接着剤20(導電性接合材料)を注入するための注入口21がそれぞれ形成されている。この注入口21は、被嵌入部52,73の内周面52a,73aから外周面52b,73bにかけて延在する貫通孔であり、被嵌入部52,73の径方向外側から内側に向かうに従い漸次縮径されたテーパー形状になっている。
【0039】
また、各セグメント5,6,7の内面にそれぞれ形成された配線パターン4は、隣り合うセグメント5,6,7の端部に連結される嵌合部分にまで延設されている。詳しく説明すると、一方の端部セグメント5の周壁部50の内周面50aに形成された配線パターン4、及び、中間セグメント7の周壁部70の他方側の内周面70aに形成された配線パターン4は、被嵌入部52,73の内周面52a,73aの先端までそれぞれ延設されている。また、中間セグメント7の周壁部70の一方側の内周面70aに形成された配線パターン4、及び、他方の端部セグメント6の周壁部60の内周面60aに形成された配線パターン4は、嵌入部72,62の内周面72a,62aの先端まで延設され、さらに嵌入部72,62の先端面72b,62b上を通って他方側に向けて折り返され、嵌入部72,62の外周面72c,62cの基端まで延設されている。
【0040】
また、図6に示すように、被嵌入部52,73の内周面52a,73aに形成された配線パターン4と嵌入部72,62の外周面72c,62cに形成された配線パターン4とは、導電性接着剤20を介して接続されている。この導電性接着剤20は、隣り合うセグメント5,6,7の端部同士を固定する固定手段であり、上記した注入口21から被嵌入部52,73と嵌入部72,62との間に注入された接着剤である。この導電性接着剤20としては、加熱することにより溶融する例えば低融点のクリームはんだ等のはんだを用いることができる。なお、導電性接着剤20として低融点のクリームはんだを用いるのは、加熱時にセグメント5,6,7が熱で変形するのを防ぐためであり、セグメント5,6,7が高い耐熱性を有する場合には、高融点のはんだを用いることも可能である。さらに、導電性接着剤20として、はんだ以外のものを用いることも可能であり、例えば銀ペースト等の金属材料を添加した接着剤を用いることも可能である。また、接着剤のような接着性を有しなくても、導電性の接合材料であればよい。
【0041】
次に、上記した導電性接着剤20を備える立体配線構造物1の製造方法について説明する。
【0042】
この立体配線構造物1では、セグメント5,6,7を組み立てる工程の後、隣り合うセグメント5,6,7の端部同士を導電性接着剤20で接着させる工程を行う。詳しく説明すると、端部セグメント5及び中間セグメント7の被嵌入部52,73に形成された注入口21に導電性接着剤20(はんだ)を注入する。続いて、その導電性接着剤20を図示せぬはんだごて等を用いて加熱する。これにより、溶融した導電性接着剤20が被嵌入部52,73と嵌入部72,62との間に濡れ広がり、その導電性接着剤20を介して被嵌入部52,73の内周面52a,73aに形成された配線パターン4と嵌入部72,62の外周面72c,62cに形成された配線パターン4とが接合される。
【0043】
上記した導電性接着剤20を備える立体配線構造物1によれば、隣り合うセグメント5,6,7の端部が導電性接着剤20によって確実に連結されるので、所定形状の筐体2を確実に形成することができる。また、導電性接着剤20によって隣り合うセグメント5,6,7の連結部分が補強されるので、筐体2の強度を向上させることができる。さらに、一方のセグメント5(7)の内面に形成された配線パターン4と他方のセグメント7(6)の内面に形成された配線パターン4とが、導電性接着剤20を介して確実に接続させることができる。
【0044】
以上、本発明に係る立体配線構造物の第1から第3の実施の形態について説明したが、本発明は上記した第1から第3の実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、上記した第1の実施の形態では、一方のセグメント5(7)の端部と他方のセグメント7(6)の端部とをレーザによって融着することで、隣り合うセグメント5,6,7の連結部分を水密気密構造にしているが、本発明は、他の方法によって隣り合うセグメント5,6,7の連結部分を水密気密構造にすることできる。例えば、超音波によって一方のセグメント5(7)の端部と他方のセグメント7(6)の端部とを溶着させる方法であってもよく、或いは、一方のセグメント5(7)の端部と他方のセグメント7(6)の端部との間に封止材料を介在させる方法であってもよい。さらに、本発明は、隣り合うセグメント5,6,7の連結部分が水密気密構造になっていない構成にすることも可能である。
【0045】
また、上記した第2の実施の形態では、固定手段10として、被嵌入部52,73に凸部11が形成され、嵌入部72,62に凹部12が形成されているが、本発明は、他の固定手段を用いることも可能である。例えば、被嵌入部52,73に凹部12が形成され、嵌入部72,62に凸部11が形成されていてもよく、或いは、被嵌入部52,73の内周面52a,73aに雌ねじ(タップ)が形成され、嵌入部72,62の外周面72c,62cに雄ねじが形成され、被嵌入部52,73と嵌入部72,62とが螺合された構成であってもよい。L字状の溝と突起とからなる固定手段であってもよい。詳しく説明すると、被嵌入部52,73の内周面52a,73a及び嵌入部72,62の外周面72c,62cのうちの何れか一方にL字状に延在する溝を形成し、他方に前記溝に嵌め込まれる突起を形成する。そして、溝の内側に突起を配置させるとともに被嵌入部52,73の内側に嵌入部72,62を嵌入させ、その後、被嵌入部52,73と嵌入部72,62とを相対的に軸回転させることで、突起と溝とが係合され、隣り合うセグメント5,6,7の端部同士が固定される。また、本発明における固定手段は、上記した機械式の固定手段に限定されず、接着剤や溶着などで、隣り合うセグメント5,6,7の端部同士を固定させる方法であってもよい。
【0046】
また、上記した第3の実施の形態では、被嵌入部52,73に注入口21が形成されているが、本発明は、注入口21を省略することも可能である。例えば、被嵌入部52,73の先端面と嵌入部72,62の基端面(段差面)との間に隙間があけられ、この隙間から導電性接着剤20を注入することも可能である。
【0047】
また、上記した実施の形態では、一対の端部セグメント5,6の間に1つの中間セグメント7が介装されているが、本発明は、一対の端部セグメント5,6の間に、直列に連結された複数の中間セグメント7が介装されていてもよい。これにより、多数の電子部品3を実装させることができる。すなわち、1つの中間セグメント7の隔壁部71に電子部品3を載せきれない場合には、中間セグメント7を直列に連結して隔壁部71を増加させることができ、電子部品3の数量に応じて中間セグメント7を複数個連結させることができる。
【0048】
また、上記した実施の形態では、筐体2が、液晶ポリマー等の耐熱性に優れた合成樹脂によって形成されているが、本発明は、電子部品3を実装させる際に加熱を行わない場合に、耐熱性の低い樹脂材料で筐体を形成することも可能である。さらに、本発明は、金属やガラス等の樹脂以外の材料で筐体を形成することも可能である。
また、上記した実施の形態では、筐体2を構成する複数のセグメント5,6,7が同一材料によって形成されているが、本発明は、複数のセグメントが異なる材料で形成されていてもよい。
【0049】
また、上記した実施の形態では、筐体2が円筒形状を成しているが、本発明における筐体の形状は適宜変更可能であり、例えば角筒形状であってもよく、或いは、その他の形状の箱体であってもよい。さらに、本発明における筐体は、その内部が密閉されていない形状にすることも可能であり、例えば、両端若しくは何れか一方の端部が開放された筒形状の筐体を用いることも可能である。
【0050】
また、上記した実施の形態では、隣り合うセグメント5,6,7の端部同士が嵌合されているが、本発明は、隣り合うセグメントの端部同士が嵌合されていなくてもよく、例えば、隣り合うセグメントの端部同士が突き合わされて溶着されていてもよい。
【0051】
その他、本発明の主旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した各実施の形態や変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0052】
1 立体配線構造物
2 筐体
3 電子部品
4 配線パターン
5,6 端部セグメント(セグメント)
50a 内周面(内面)
51a 壁面(内面)
60a 内周面(内面)
61a 壁面(内面)
7 中間セグメント(セグメント)
70a 内周面(内面)
71 隔壁部(壁部)
71a,71b 壁面
10 固定手段
20 導電性接着剤(導電性接合材料)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体の内側に、電子部品及び該電子部品に電気的に接続される配線パターンをそれぞれ内蔵する立体配線構造物であって、
前記筐体は、複数のセグメントを直列に連結して組み合わせた構成からなり、該セグメントとして、前記筐体の両端部を構成する一対の端部セグメントと、該一対の端部セグメント間に配設された少なくとも1つの中間セグメントと、を備えており、
該中間セグメントに、前記筐体の内側に配設される壁部が一体に形成されており、
該壁部の平面状の壁面に前記電子部品が実装されているとともに、前記壁面及び前記セグメントの内面にそれぞれ前記配線パターンが形成されていることを特徴とする立体配線構造物。
【請求項2】
請求項1に記載の立体配線構造物において、
隣り合うセグメントの端部同士が嵌合されるとともに固定手段を介して固定されることで、前記複数のセグメントが連結されていることを特徴とする立体配線構造物。
【請求項3】
請求項2に記載の立体配線構造物において、
前記固定手段として、前記隣り合うセグメントの端部同士を接合する導電性接合材料が用いられ、
前記隣り合うセグメントにそれぞれ形成された配線パターンは、互いに前記導電性接合材料を介して接続されていることを特徴とする立体配線構造物。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の立体配線構造物において、
隣り合うセグメントの連結部分が水密気密構造になっていることを特徴とする立体配線構造物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−219424(P2010−219424A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−66631(P2009−66631)
【出願日】平成21年3月18日(2009.3.18)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】