説明

竪型内燃機関

【課題】 重心が低くて安定してフライホィールを支持することができるとともに、吐出能力の高い潤滑油ポンプを供えた竪型内燃機関を提供することにある。
【解決手段】 クランク軸が略上下方向に指向し、該クランク軸の下端部にフライホィールが一体に設けられ、該フライホィールの下方にオイルパンが設けられた竪型内燃機関において、前記クランク軸により回転駆動される潤滑油ポンプが、前記フライホィールの下方に配設されたことを特徴とする竪型内燃機関。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クランク軸が略上下方向に指向した竪型内燃機関、特に船外機用竪型内燃機関に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特開平7−149290号公報に記載された4サイクル竪型内燃機関においては、上下方向に指向したクランク軸下端にフライホィールが一体に装着され、該フライホィールの上方に位置して潤滑油ポンプが配設され、該フライホィールより上方に位置してクランク軸にドライブギヤが一体に設けられ、該ドライブギヤと潤滑油ポンプとに歯車増速機が介装されており、前記潤滑油ポンプはクランク軸よりも高速に回転駆動されるようになっていた。
【0003】
また特開平8−100616号公報の4サイクル竪型内燃機関では、上下方向に指向したカム軸の下端に潤滑油ポンプが直結されていた。
【解決しようとする課題】
【0004】
特開平7−149290号公報に記載のものでは、クランク軸よりも潤滑油ポンプの方が高速回転するため、該潤滑油ポンプが小型であっても、高い吐出能力を有しているが、クランク軸を枢支する内燃機関の枢支部より下方へ位置した潤滑油ポンプの存在によって、該枢支部よりクランク軸下方延長部分が長くなってしまい、振動の面で慣性質量の大きなフライホィールを安定して支持することが困難であった。
【0005】
また特開平8−100616号公報記載のものでは、フライホィールの上方に潤滑油ポンプを配設していないので、フライホィールを内燃機関に接近して配置でき、その結果、慣性質量の大きなフライホィールを安定して支持することができる。しかしカム軸は、クランク軸の回転速度の半分の回転速度であるため、吐出能力が低く、潤滑油ポンプが必然的に大きくなる不具合があった。
【0006】
本発明の目的は、クランク軸縦置きの4サイクル内燃機関において、フライホィールと潤滑油ポンプとのよりよい配置を可能とした内燃機関を提供することと、またその内燃機関を搭載した船外機を提供することと、さらにまた、そのような内燃機関にバランサ機構を設ける場合の好ましい潤滑装置を備えた内燃機関を提供することにある。
【課題を解決するための手段および効果】
【0007】
本発明はこのような難点を克服した竪型内燃機関の改良に係り、クランク軸が略上下方向に指向し、該クランク軸の下端部にフライホィールが一体に設けられ、該フライホィールの下方にオイルパンが設けられた竪型内燃機関において、前記クランク軸により回転駆動される潤滑油ポンプが、前記フライホィールの下方に配設されたことを特徴とするものである。
【0008】
本発明は前記したように構成されているので、前記フライホィールは内燃機関本体に接近し、該フライホィールは、その回転数がどのように変化しても、安定して支持される。
【0009】
また請求項2記載のように本発明を構成することにより、潤滑油ポンプの駆動系を単純化して、軽量化とコストダウンを図ることができる。そして該潤滑油ポンプをクランク軸と同一回転速度で回転させることができるので、潤滑油ポンプの大型化を伴なわずに、潤滑油ポンプの吐出能力を向上させることができる。
【0010】
さらに請求項3記載のように本発明を構成することにより、潤滑油ポンプの保守整備のために、該潤滑油ポンプを分解しても、前記フライホィールとオイルポンプボディを取外す必要がなく、分解、組付け作業を能率良く容易に行うことができる。
【0011】
そしてフライホィール室を密閉できるため、フライホィールへの潤滑油の付着を阻止でき、動力損失や潤滑油の劣化を避けることができる。
【0012】
さらにまた請求項4記載のように本発明を構成することにより、潤滑油の戻りをより一層円滑に遂行することができる。
【0013】
しかも請求項5記載のように本発明を構成することにより、内燃機関の位置を下げて、その重心を低下させることができ、船舶の安定性を向上させることができる。
【発明の実施の形態】
【0014】
以下、図面に図示された本発明の一実施形態について説明する。
本発明に係る竪型内燃機関1は、クランク軸30が上下方向に指向し、かつシリンダ32が船体後方へ指向した直列4気筒水冷式4サイクル内燃機関であって、図1に図示されるように、船外機0に搭載され、該船外機0の本体ケースは、竪型内燃機関1を覆う内燃機関カバー2と、その下方のエクステンションケース3と、ギヤケース4、等からなっており、竪型内燃機関1の下方にマウントケース5とオイルパン6とが順次下方へ重ねられて、これらが竪型内燃機関1に一体に結合されている。
【0015】
また図1に図示されるように、図示されないモータボートの船尾19に、取付け装置7のブラケット8が一体に固定され、該ブラケット8の上端に横架されたチルト軸9にスイベルケース10の前端が上下に揺動可能に枢支され、該スイベルケース10の可旋回部の上下部分にマウントMを有する連結手段11を介して船外機0は一体に取付けられ、該スイベルケース10の旋回部に図示されない操舵取手が設けられ、該取付け装置7は、ブラケット8、チルト軸9およびスイベルケース10で構成されており、前記操舵取手を左右に振ると、スイベルケース10の可旋回部分および船外機0は左右に旋回されるようになっている。
【0016】
さらに竪型内燃機関1における上下方向に指向したクランク軸30の下端に駆動軸12が一体に結合され、該駆動軸12はギヤケース4内を下方へ延長してギヤケース4内に達し、該駆動軸12の下端はギヤケース4内の前後進切換装置13を介してプロペラ軸14に連結されており、プロペラ15には、クランク軸30、駆動軸12、前後進切換装置13およびプロペラ軸14を経由して竪型内燃機関1の動力が伝達されて、プロペラ15は回転駆動されるようになっている。
【0017】
さらにまた前記スイベルケース10内を上下に貫通した正逆転操作軸16は下方へ延長して前後進切換装置13に達しており、正逆転操作軸16の上端の操作レバー17を左右に揺動すると、前後進切換装置13が切換えられ、プロペラ15が正転または逆転されるようになっている。
【0018】
また竪型内燃機関1の本体部は、クランクケース20とシリンダブロック21とシリンダヘッド22と、ヘッドカバー23と、マウントケース5と、オイルパン6とにより構成され、これらクランクケース20、シリンダブロック21、シリンダヘッド22、ヘッドカバー23は船体前方から後方に向って並べられて、図6ないし図9に図示されるように、ボルト24,25, 26, 28でもってそれぞれ相互に一体に結合され、クランクケース20およびシリンダブロック21の下面に前記したようにマウントケース5およびオイルパン6が図示されないボルトによりクランクケース20およびシリンダブロック21に一体に結合されている。
【0019】
さらにまた上下方向に指向したクランク軸30は、図4に図示されるように、クランクケース20およびシリンダブロック21のクランク軸支部103 でもって、ジャーナル31を介して回転自在に枢支され、前後水平方向に指向したシリンダ32が上下方向に亘り略等間隔にシリンダブロック21に設けられ、該シリンダ32にピストン33が摺動自在に嵌装され、該ピストン33は連結棒34を介してクランク軸30に連結されており、ピストン33の前後動に伴なってクランク軸30が、上方から下方を見て時計回りに回転駆動されるようになっている。
【0020】
しかも図7ないし図10に図示されるように、シリンダヘッド22とヘッドカバー23とで形成された動弁室35内では、シリンダヘッド22の頂面(船体を基準とすると後面)にボルト29により取付けられるカム軸ホルダ36とシリンダヘッド22とでジャーナル37を介してカム軸38が回転自在に枢支され、該カム軸ホルダ36には船体を基準としカム軸38の左右にこれと平行にロッカー軸39,40が支持され、該ロッカー軸39,40にロッカーアーム41,42が揺動自在に枢支され、ロッカーアーム41,42の各先端に吸気弁43、排気弁44がそれぞれ当接されており、後記する動弁装置55により、クランク軸30の半分の回転数で回転駆動されるカム軸38により、クランク軸30の2回転につき1回ずつ吸気弁43、排気弁44は間欠的に開閉駆動されるようになっている。
【0021】
また図8に図示されるように吸気弁43でもって開閉される吸気通路45は、シリンダブロック21の船体右側(図2で左側)に位置する吸気マニホールド47の下流端に接続され、図2に図示されるように、該吸気マニホールド47の上流端は、絞り弁48を介して吸気チャンバー49に接続され、該吸気チャンバー49の吸入口(図示されず)は内燃機関カバー2内に開口されており、該内燃機関カバー2の吸入口2a(図1参照)から内燃機関カバー2中の吸気チャンバー49内に空気が吸入され、該吸気チャンバー49内に吸入された空気は絞り弁48および吸気マニホールド47を経由して吸気通路45に導かれるようになっている。
【0022】
さらに図8に図示されるように排気弁44でもって開閉される排気通路46は船体左側(図8で右側)に指向し、その下流端はシリンダブロック21に向って(船体前方に向って)曲げられ、該排気通路46に接続されるシリンダブロック21中の排気通路50は、上下方向に指向し、図11および図12に図示されるように、その下端は排気孔51に開口し、該排気孔51はマウントケース5の排気通路52に連通され、該排気通路52の下端に図1に図示される排気管53の上端が接続され、該排気管53の下端はエクステンションケース3内に開口されており、排気管53よりエクステンションケース3内に排出された排気は、ギヤケース4内の空間を通過し、排気通路54より水中に排出されるようになっている。
【0023】
さらにまたクランクケース20およびシリンダブロック21の上方には、図8に図示されるように、動弁装置55が配設されている。すなわち図2、図4に図示されるように、クランク軸30の上部にドライブプーリ56が一体に嵌着されるとともにカム軸38の上端にドリブンプーリ57が一体に嵌着され、シリンダブロック21にアイドラプーリ58が回転自在に枢支され、これらドライブプーリ56、ドリブンプーリ57、アイドラプーリ58に無端ベルト59が架渡されている。
【0024】
また図2、図4および図6に図示されるように、ドライブプーリ56より上方に位置してクランク軸30にバランサドライブプーリ60が一体に嵌着され、シリンダ32を挟んで左右に位置してバランサドリブンプーリ61, 62が回転自在に設けられ、前記アイドラプーリ58と同心状にアイドラプーリ63が枢支され、これらバランサドライブプーリ60、バランサドリブンプーリ61, 62、アイドラプーリ63に無端ベルト64が架渡されている。
【0025】
さらに図2、図6に図示されるように、船体左側(図2、図6では右側)のバランサドリブンプーリ61は、シリンダブロック21に回転自在に枢支された左側のバランサ軸65に一体に嵌着され、該バランサ軸65とシリンダ32を挟んで左右対称位置に配置されたバランサ軸66は、下部にてシリンダブロック21と、上部にてバランサ枢支ブラケット67と、バランサ枢支ブラケット67に取付けられたブラケットカバー68とに回転自在に枢支され、バランサ軸66と一体のドライブギヤ69と、バランサドリブンプーリ62と一体のドリブンギヤ70とが、相互に噛合されており、バランサ軸65, 66は同一回転数で相互に逆方向に回転駆動されるようになっている。
【0026】
さらにまた図2および図4に図示されるように、クランクケース20の上面にブラケット71が装着され、該ブラケット71の一端71aに交流発電機72の一端72aが揺動自在に枢着され、前記ブラケット71の他端の円弧溝71bに交流発電機72の他端部72bが移動可能に取付けられ、図示されない固定手段で該他端部72bはブラケット71に固定され、クランク軸30の上端にドライブプーリ73が一体に嵌着されるとともに、交流発電機72の回転軸上端にドリブンプーリ74が一体に嵌着され、該ドライブプーリ73、ドリブンプーリ74に無端ベルト75が架渡されている。
【0027】
また図4および図5に図示されるように、クランク軸30の下端にフライホィール76がボルト78でもって一体に嵌着され、該フライホィール76の外周にリングギヤ77が形成され、フライホィール76の下面に装着された結合部材79に前記駆動軸12の上端がスプライン嵌合されている。そして図11、図12に図示されるようにシリンダブロック21の下面に形成された円弧状凹部80に図示されないドライブピニオンが配設され、該ドライブピニオンはリングギヤ77に噛合されており、図5に図示されたスタータモータSにより前記ドライブピニオンが回転すると、リングギヤ77、フライホィール76およびクランク軸30は回転駆動されるようになっている。
【0028】
次に竪型内燃機関1の潤滑系統について説明する。図4に図示されるように、クランクケース20およびシリンダブロック21の下面にトロコイド型潤滑油ポンプ81のオイルポンプボディ82が装着され、該潤滑油ポンプ81のロータ83は結合部材79に一体に嵌着され、該潤滑油ポンプ81のポンプ室84は蓋85で密閉され、該潤滑油ポンプ81の吸入口86は下方に開口して、該吸入口86に吸入管88の上端が接続され、該吸入管88は後記戻り油孔116 を貫通してオイルパン6内で下方へ延長して、その下端にストレーナ89が接続されている。
【0029】
さらに図3、図5、図10および図11に図示されるように、潤滑油ポンプ81の吐出口87は、シリンダブロック21の鉛直油通路90に接続され、該鉛直油通路90の上端は、船体前方のクランクケース20に向う前後水平油通路91に接続され、該前後水平油通路91は、クランクケース20の前後水平油通路92に接続され、該前後水平油通路92の前端に上方へ向う鉛直油通路93の下端が接続され、該鉛直油通路93の上端は左方(図3では右方)に向いた前後水平油通路94に接続されている。
【0030】
さらに図3および図9に図示されるように、前後水平油通路94の左端はオイルフィルタ95の吸入部96に接続され、該オイルフィルタ95の吐出部97は、クランクケース20の左方(図3では右方)に向いた連通油通路98に接続されている。
【0031】
さらにまた連通油通路98には、図3および図9に図示されるように、略左右巾方向中央に位置して上下方向に向いたクランク軸油通路99が連通されるとともに、その左右両側に位置して上下方向に向いたバランサ軸油通路100 , 101 が連通れている。
【0032】
そして図7、図10に図示されるように、水平後方に向うクランク軸油通路102 が、各シリンダ32の中間およびその上下両端のクランク軸支部103 に形成され、該クランク軸油通路102 の先端は、クランク軸30のジャーナル31に連通されており、クランク軸30のジャーナル31は、潤滑油ポンプ81で圧送されてオイルフィルタ95にて濾過され、前記した油通路を経由した潤滑油で潤滑されるようになっている。
【0033】
しかも図7および図10に図示されるように、最上段のクランク軸支部103 aには、水平後方に向かうバランサ軸油通路104 ,105 がクランクケース20およびシリンダブロック21に亘って形成され、該バランサ軸油通路104 ,105 (図10では下端)の前端は前記バランサ軸油通路100 ,101 にそれぞれ連通されるとともに、該バランサ軸油通路104 ,105 の後端(図10では上端)はバランサ軸65,66の上端枢支部に連通されており、図6に図示されるように、バランサ軸65の上端枢支部65aは該バランサ軸油通路104 の後端から吐出される潤滑油で潤滑され、該バランサ軸65の上端枢支部65aを潤滑した潤滑油は重力により落下して、バランサ軸65の下端枢支部65bに達し、該下端枢支部65bも潤滑されるようになっている。
【0034】
また図6に図示されるように、バランサ軸油通路105 の上端はシリンダブロック21およびバランサ枢支ブラケット67のバランサ軸油通路106 に接続され、該バランサ軸油通路106 はブラケットカバー68のカム軸油通路107 に接続され、カム軸油通路107 の上端はバランサドリブンプーリ62の枢支部62aに開口され、該枢支部62aも潤滑されるようになっている。
【0035】
さらに図7に図示されるように、シリンダブロック21の上部には水平斜後方に向うカム軸油通路107 が形成され、該カム軸油通路107 の前端は、最上段のクランク軸支部103 aのジャーナル31aに接続され、該カム軸油通路107 の後端に水平後方へ向うカム軸油通路108 の前端が接続され、該カム軸油通路108 の後端は、シリンダヘッド22の連通路27と、シリンダブロック21、シリンダヘッド22を相互に結合するボルト26の挿通孔26aとを介してシリンダヘッド22のカム軸油通路109 に接続され、該109 の後端はカム軸38の軸支部38aに開口され、該カム軸38の軸支部38aに開口するロッカ油通路110 がカム軸ホルダ36に形成されており、最上段のジャーナル31aに供給された潤滑油の一部は、カム軸油通路107 、カム軸油通路108 、カム軸油通路109 を介してカム軸38の軸支部38aに送られ、カム軸38の軸支部38aが潤滑されるようになっている。そしてカム軸38の軸支部38aに供給された潤滑油の残部は、ロッカ油通路110 を介してロッカー軸39,40の中心孔(図示されず)に送られ、該中心孔より各ロッカーアーム41,42の枢支部(図示されず)に潤滑油が送られて、この枢支部が潤滑されるようになっている。
【0036】
さらにまた図5、図6、図14、図15および図16に図示されるように、クランクケース20およびシリンダブロック21における最下段のクランク軸支部103 bの上下巾中央に、水平面に沿った扁平油通路空間111 a,111 bがそれぞれ形成され(図15および図16の断面図では、シリンダブロック21の扁平油通路空間111 bのみが図示されている)、該扁平油通路空間111 a,111 bの外周部は仕切り壁112 a,112 bでもって仕切られ、図12および図14に図示されるように、該クランクケース20およびシリンダブロック21の仕切壁112 a,112 bの外側の仕切空間113 a,113 bと扁平油通路空間111 a,111 bとは戻り油路114 a,114 bでもって連通され、該仕切り空間113 a,113 bの下方に鉛直連通孔136 a,136 bが形成され、マウントケース5には、図12、図13に図示されるように、鉛直連通孔136 a,136 bと連通する仕切り空間115 が形成され、該仕切り空間115 の下方にはオイルパン6内の空間と連通する戻り油孔116 が形成されている。
【0037】
しかも図1および図4に図示されるように、シリンダヘッド22およびヘッドカバー23で囲まれた動弁室35は、シリンダヘッド22の戻り油孔117 およびシリンダブロック21の戻り油通路118 を介してマウントケース5の油通路空間119 に連通されるとともに、連通パイプ120 を介してマウントケース5の油通路空間119 に連通され、該油通路空間119 は蓋板121 で密閉され、該蓋板121 を貫通して油通路空間119 に連通する戻り油パイプ122 の上端が該蓋板121 に一体に取付けられ、該戻り油パイプ122 の下端はオイルパン6の底部に開口されている。
【0038】
そして図6に図示されるように、最上段のクランク軸支部103 aから下方の各段のクランク軸支部103 に向いバランサ軸65,66を挿通するための加工孔133 が、上方から下方に向けて挿入される図示されない工具により形成されるとともに最下段の113 bの上下分割壁103 ba,103 bbにはこれより小径の加工孔134 a、134 bがそれぞれ形成され、該下方の分割下壁103 bbの加工孔134 bに栓135 が嵌着されて、油通路空間111 bはその下方のフライホィールの空間Aに対して密封されている。
【0039】
また竪型内燃機関1の冷却系統について説明する。図1に図示されるように、エクステンションケース3とギヤケース4との接合部にて駆動軸12により回転駆動される冷却水ポンプ123 が設けられ、ギヤケース4の側壁に吸水口124 が形成されるとともに、該吸水口124 に図示されない網が張設されており、該吸水口124 からギヤケース4内に浸入した水が冷却水ポンプ123 により吸入され、吸水管125 を介して竪型内燃機関1に送水されるようになっている。
【0040】
さらに図11および図12に図示されるように、マウントケース5を上下に貫通する排気通路52と、該排気通路52に連通してシリンダブロック21を上下に貫通する排気孔51との外周に位置して冷却水上昇通路126,127,128,129 が、マウントケース5とシリンダブロック21とに形成されるとともに、冷却水下降通路130 が形成されている。
【0041】
さらにシリンダブロック21には、前記マウントケース5の冷却水上昇通路126 (図11および図12参照)に連通する冷却水通路137 (図8参照)が形成され、該冷却水通路137 は、図8、図17に図示されるように、排気通路50の外側の冷却水通路138 に連通し、該冷却水通路138 はシリンダヘッド22の冷却水通路139 に相互に連通している。
【0042】
さらにまた図11、図12に図示されたマウントケース5の冷却水上昇通路127 に連通するようにシリンダブロック21にウォータジャケット140 が形成され、該ウォータジャケット140 の開口端は、図7、図8に図示されるようにシリンダヘッド22の冷却水通路141 に連通している。
【0043】
しかもマウントケース5の冷却水上昇通路128 は、図8、図17に図示されるように、排気通路50よりシリンダブロック21、シリンダヘッド22の合わせ部寄りに位置してシリンダブロック21に冷却水通路142 が形成され、該冷却水通路142 に連通する冷却水通路143 がシリンダヘッド22に形成されている。
【0044】
また図8に図示されるように、冷却水上昇通路129 に連通する冷却水通路137 の外側の冷却水通路144 がシリンダブロック21に形成されるとともに、冷却水通路137 、138 、144 に隣接して冷却水通路145 が形成され、該冷却水通路145 はマウントケース5の冷却水下降通路130 に連通されており、冷却水ポンプ123 に吸収された冷却水は、マウントケース5の冷却水上昇通路126 、127 、128 、129 よりシリンダブロック21の冷却水通路137 、138 、142 、144 およびウォータジャケット140 を介してシリンダヘッド22の冷却水通路139 、141 、143 に供給され、さらにシリンダブロック21の冷却水通路145 からマウントケース5の冷却水下降通路130 を介して外部に排出されるようになっている。
【0045】
さらに図8に図示されるようにクランク室146 と動弁室35に連通するブリーザ通路147 は、孔148 を介してブリーザ室149 に連通されている。
【0046】
本発明の実施形態は前記したように構成されているので、竪型内燃機関1が始動されて、運転状態になると、図4に図示されるように、クランク軸30と、これと一体の潤滑油ポンプ81のロータ83とが回転し、オイルパン6内の潤滑油がストレーナ89から吸入管88および吸入口86を介してポンプ室84内に吸入され、図3、図9および図10に図示されるように、鉛直油通路90、前後水平油通路91、前後水平油通路92、鉛直油通路93および前後水平油通路94を介してオイルフィルタ95の吸入部96に送られ、オイルフィルタ95にて濾過された後、連通油通路98を経由してクランク軸油通路99、バランサ軸油通路100 、バランサ軸油通路101 に供給される。
【0047】
そしてクランク軸油通路99に供給された潤滑油は、図7および図10に図示されるように、クランク軸支部103 に設けられた船体後方へ向うクランク軸油通路102 を介してクランク軸30のジャーナル31に送られ、該ジャーナル31は潤滑される。
【0048】
このジャーナル31を潤滑した潤滑油は、図4に図示されるように、シリンダブロック21における下方のクランク軸支部103 の連通孔131 を通過して、その下方のクランク室132 に流入し、さらに次々と下方のクランク室132 を通過して最下段のクランク軸支部103 bの扁平油通路空間111 bに流出し、該扁平油通路空間111 bに流入した潤滑油は、図5および図12に図示されるように、側方に向って戻り油孔114 b及び仕切り空間113 bおよび鉛直連通孔136 bを介してマウントケース5の上面に落下するとともに、クランクケース20における最下段のクランク軸支部103 bの扁平油通路空間111 aに流出した潤滑油は仕切り空間113 aおよび鉛直連通孔136 aを介してマウントケース5の上面に落下し、該マウントケース5の上面に溜った潤滑油は、図12および図13に図示されるように、マウントケース5に設けられた戻り油通路116 からオイルパン6内に落下する。
【0049】
また図7に図示されるように、最上段のクランク軸支部103 aのクランク軸油通路102 aを介してクランク軸30のジャーナル31aに供給された潤滑油の内、該ジューナル31aを潤滑した潤滑油の残りの潤滑油はカム軸油通路107 ,108 およびカム軸油通路109 を経由してカム軸38の潤滑部分38aに供給され、該潤滑部分38aは潤滑される。この残りの潤滑油はロッカ油通路110 を経由してカム軸38内に供給され、動弁装置の摩擦部分が、この潤滑油で潤滑され、この潤滑油は動弁室35内に溜り、該動弁室35内の潤滑油は、図4に図示されるように、戻り油通路117 および戻り油通路118 とこれと並列の連通パイプ120 を経由してマウントケース5の油通路空間119 に流入し、戻り油パイプ122 を介してオイルパン6内底部に戻る。
【0050】
さらに図7、図9および図10に図示されるように、連通油通路98からバランサ軸油通路100 ,101 に流入した潤滑油は、バランサ軸油通路105 ,106 ,図6に図示されるように、バランサ軸65,66の上方枢支部分65a,66aが潤滑され、これらを潤滑した潤滑油は重力によって下降して、バランサ軸65,66の下方枢支部分65b,66bが潤滑されるので、各バランサ軸65, 66にそれぞれバランサ軸油
通路104,105 のみを設けるだけで、バランサ軸65, 66の中間軸受部および下端軸
受部をも潤滑され、バランサ潤滑系が大巾に単純化され、コストダウンが可能となる。
【0051】
さらにまた図6に図示されるように、バランサ軸油通路105 の上端からバランサ軸油通路106 内に流入した潤滑油は、カム軸油通路107 を経由してパランサドリブンプーリ62の枢支部62aに供給され、該枢支部62aも潤滑されるので各これらの潤滑構造も頗る単純化される。
【0052】
また図6に図示されるように、バランサ軸65,66を潤滑した潤滑油は下方へ落下して、最下段クランク軸支部103 bの加工孔134 aを介して油通路空間111 b内に流入し、該油通路空間111 b内の潤滑油は図14に図示されるように戻り油孔114 を介して仕切り空間113 bに流れ、該仕切り空間113 内の潤滑油は、図13のマウントケース5 の仕切り空間115 内に流出し、該仕切り空間115 内の潤滑油は鉛直連通孔136 を介してオイルパン6内に戻る。
【0053】
また図6に図示のバランサ軸65, 66を貫通し最上段クランク軸支部103 aで該バランサ軸65,66の上端を枢支する加工孔133 と、最下段のクランク軸支部103 bでバランサ軸65,66の下端を枢支する加工孔134 aと、その下方の加工孔134 bとは、一直線上に配列されているため、図示されない工具による加工が容易となり、該加工孔134 a,134 bでもって工具の下端部を支持して、その上方の加工孔133 の仕上げ加工が可能なため、生産が高い。そして下方の加工孔134 bが存在しても、該加工孔134 bに栓135 が嵌着されているため、油通路空間111 内の潤滑油はその下方のフライホィール空間Aに流入することがない。
【0054】
さらに図7、図17および図18に図示されるように、クランク軸30の最上段ジャーナル31aからカム軸38の軸支部38aに通ずるカム軸油通路107 、108 、連通路27、挿通孔26aカム軸油通路109 は、排気通路50と反対側に配置されているため、これらの油通路を通過する潤滑油は加熱されにくく、劣化が抑制される。
【0055】
さらにまたシリンダ32の中心から略等距離離れ、かつシリンダ32の周方向に亘り略間隔にボルト26が配置されているため、竪型内燃機関1の大型化を図るために、シリンダ32を大径としても、これら外縁の合わせ面は略均等に圧着される。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明に係る竪型内燃機関を備えた船外機の縦断側面図せある。
【図2】前記内燃機関の平面図である。
【図3】前記内燃機関の正面図である。
【図4】前記内燃機関の縦断側面図である。
【図5】前記内燃機関のクランクケースに対するシリンダブロックの割り面正面図である。
【図6】前記内燃機関のバランサ軸を通る横断正面図である。
【図7】図3のVII −VII 線に沿って截断した断面図である。
【図8】図3のVIII−VIII線に沿って截断した断面図である。
【図9】図3のIX−IX線に沿って截断した断面図である。
【図10】図3のX−X線に沿って截断した断面図である。
【図11】クランクケースおよびシリンダブロックを下方から見た図面である。
【図12】マウントケースの平面図である。
【図13】図12のXIII −XIII 線に沿って截断した断面図である。
【図14】図5のXIV−XIV線に沿って截断した断面図である。
【図15】図14のXV−XV線に沿って截断した断面図である。
【図16】図14 のXVI−XVI線に沿って截断した断面図である。
【図17】シリンダブロックの合わせ面を図示した図面である。
【図18】シリンダヘッドの合わせ面を図示した図面である。
【符号の説明】
【0057】
0…船外機、1…竪型内燃機関、2…内燃機関カバー、3…エクステンションケース、4…ギヤケース、5…マウントケース、6…オイルパン、7…取付け装置、8…ブラケット、9…チルト軸、10…スイベルケース、11…連結手段、12…駆動軸、13…前後進切換装置、14…プロペラ軸、15…プロペラ、16…正逆転操作軸、17…操作レバー、
19…船尾、20…クランクケース、21…シリンダブロック、22…シリンダヘッド、23…ヘッドカバー、24…ボルト、25…ボルト、26…ボルト、27…連通孔、28…ボルト、29…ボルト、30…クランク軸、31…ジャーナル、32…シリンダ、33…ピストン、34…連接棒、35…動弁室、36…カム軸ホルダ、37…ジャーナル、38…カム軸、39…ロッカー軸、40…ロッカー軸、41…ロッカーアーム、42…ロッカーアーム、43…吸気弁、44…排気弁、45…吸気通路、46…排気通路、47…吸気マニホールド、48…絞り弁、49…吸気チャンバー、50…排気通路、51…排気孔、52…排気通路、53…排気管、54…排気通路、55…動弁装置、56…ドライプーリ、57…ドリブンプーリ、58…アイドラプーリ、59…無端ベルト、60…バランサドライブプーリ、61…バランサドリブンプーリ、62…パランサドリブンプーリ、63…アイドラプーリ、64…無端ベルト、65…バランサ軸、66…バランサ軸、67…バランサ枢支ブラケット、68…ブラケットカバー、69…ドライブギヤ、70…ドリブンギヤ、71…ブラケット、72…交流発電機、73…ドライブプーリ、74…ドリブンプーリ、75…無端ベルト、76…フライホィール、77…リングギヤ、78…ボルト、79…結合部材、80…円弧状凹部、81…潤滑油ポンプ、82…オイルポンプボディ、83…ロータ、84…ポンプ室、85…蓋、86…吸入口、87…吐出口、88…吸入管、89…ストレーナ、90…鉛直油通路、91…前後水平油通路、92…前後水平油通路、93…鉛直油通路、94…前後水平油通路、95…オイルフィルタ、96…吸入部、97…吐出部、98…連通油通路、99…クランク軸油通路、100 …バランサ軸油通路、101 …バランサ軸油通路、102 …クランク軸油通路、103 …クランク軸支部、104 …バランサ軸油通路、105 …バランサ軸油通路、106 …バランサ軸油通路、107 …カム軸油通路、108 …カム軸油通路、109 …カム軸油通路、110 …ロッカ油通路、111 …扁平油通路空間、112 …仕切壁、113 …仕切り空間、114 …戻り油孔、115 …仕切り空間、116 …戻り油孔、117 …戻り油通路、118 …戻り油通路、119 …油通路空間、120 …連通パイプ、121 …蓋板、122 …戻り油パイプ、123 …冷却水ポンプ、124 …吸水口、125 …吸水管、126 …冷却水上昇通路、127 …冷却水上昇通路、128 …冷却水上昇通路、129 …冷却水上昇通路、130 …冷却水下降通路、131 …連通孔、132 …クランク室、133 …加工孔、134 …加工孔、135 …栓、136 …鉛直連通孔、137 、138 、139 …冷却水通路、140 …ウォータジャケット、141 、142 、143 、144 、145 、…冷却水通路、146 …クランク室、147 …ブリーザ通路、148 …孔、149 …ブリーザ室。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
クランク軸が略上下方向に指向し、該クランク軸の下端部にフライホィールが一体に設けられ、該フライホィールの下方にオイルパンが設けられた竪型内燃機関において、
前記クランク軸により回転駆動される潤滑油ポンプが、前記フライホィールの下方に配設されたことを特徴とする竪型内燃機関。
【請求項2】
前記潤滑油ポンプのロータは、前記クランク軸の下方延長線上に位置して該クランク軸と一体に回転駆動されることを特徴とする前記請求項1記載の竪型内燃機関。
【請求項3】
略上下方向に指向したクランク軸が収容されている内燃機関本体と、
該クランク軸の下端に一体に設けられたフライホィールと、
該フライホィールを収容するフライホィール室が形成されたオイルポンプボディと、
該フライホィールより下方に配置されたオイルパンと、
前記オイルポンプボディと別体であって、該オイルポンプボディより下方に配置され、前記内燃機関本体から前記オイルパンへ潤滑油を戻す戻り油通路と、前記オイルポンプボディの外周から前記クランク軸中心に向って該クランク軸を潤滑した潤滑油を集めて前記オイルパンへ潤滑油を戻す潤滑油通路を有するマウントケースとを有し、前記オイルポンプボディの下方に潤滑油ポンプが配設されたことを特徴とする4サイクル竪型内燃機関。
【請求項4】
前記内燃機関本体は、前記クランク軸を両方から枢支するシリンダブロックと半割状クランクケースとで構成され、
前記オイルポンプボディは、前記内燃機関本体の下部に固着手段で組付けられ、
前記マウントケースは、前記オイルポンプボディの外周を包囲して前記内燃機関本体の下面に油密に結合されたことを特徴とする前記請求項3記載の4サイクル竪型内燃機関。
【請求項5】
前記竪型内燃機関は、気筒列が船体前後面に略沿って配列された船外機内燃機関であることを特徴とする前記請求項1ないし請求項4いずれか記載の竪型内燃機関。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2006−242196(P2006−242196A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−169399(P2006−169399)
【出願日】平成18年6月19日(2006.6.19)
【分割の表示】特願平9−20870の分割
【原出願日】平成9年2月3日(1997.2.3)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】