説明

筒内直接燃料噴射式内燃機関及び内燃機関の制御装置

【課題】 筒内に生成される旋回気流を燃料の噴射によって好適に強化できる筒内噴射火花点火式内燃機関及び内燃機関の制御装置を提供する。
【解決手段】 筒内にタンブル流Tが生成される筒内直接燃料噴射式内燃機関50Aであって、吸気弁55開弁時に吸気ポート52aに向けて、噴射すべき総燃料噴射量の一部を噴射する第1の燃料噴射弁58と、ピストン53が吸気行程及び圧縮行程間の下死点近傍に位置するときに、タンブル流Tに沿って筒内に燃料を噴射する第2の燃料噴射弁59とを備える。第1の燃料噴射弁58は、具体的には吸気ポート52aから筒内にタンブル流Tの旋回方向とは逆方向の流れを形成するように流入する逆タンブル成分を打ち消すように総燃料噴射量の一部を噴射する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は筒内直接燃料噴射式内燃機関及び内燃機関の制御装置に関し、特に筒内に生成される旋回気流を燃料の噴射によって強化する筒内直接燃料噴射式内燃機関及び内燃機関の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、タンブル流やスワール流といった旋回気流が筒内に生成される筒内直接燃料噴射式内燃機関が知られている。係る内燃機関が備える燃料噴射弁に関し、本発明と関連性があると考えられる技術が例えば特許文献1または2で提案されている。
【0003】
【特許文献1】特開平6−81656号公報
【特許文献2】特開2004−316538号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、筒内に生成される旋回気流を強めることができれば、一般に混合気のミキシング性や火炎の伝播性の向上や希薄燃焼限界の拡大などを図ることができる。この点、筒内に生成される旋回気流を強めるにあたって、燃料の噴射に着目した場合、ピストンが吸気行程及び圧縮行程間の下死点近傍に位置するときに旋回気流に沿って燃料を噴射する方法がある。この燃料噴射方法によれば、ピストンが吸気行程及び圧縮行程間の下死点近傍に位置しているとき以外のタイミングでは、燃料の噴射によって却って旋回気流を減衰させてしまう虞があるところ、ピストンがほぼ静止している状態で燃料を噴射することで、旋回気流を強める噴流効果を適切に得ることができる(図8参照)。
【0005】
しかしながら、この燃料噴射方法によってピストンが吸気行程及び圧縮行程間の下死点近傍に位置しているときに燃料の噴射を行った場合でも、例えば燃料噴射量が多くなる高負荷運転時には、噴射時間が長くなる結果、燃料の噴射が旋回気流を減衰させる虞があるタイミングにまで及んでしまう虞がある。この点、このようなときには残りの燃料をピストンが吸気行程及び圧縮行程間の下死点近傍に位置するとき以外のタイミングで噴射する必要が生じるところ、このようなときに旋回気流を強めるように残りの燃料を噴射するための技術は特に見当たらない。
【0006】
そこで本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、筒内に生成される旋回気流を燃料の噴射によって好適に強化できる筒内噴射火花点火式内燃機関及び内燃機関の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は筒内に旋回気流が生成される筒内直接燃料噴射式内燃機関であって、吸気弁開弁時に吸気ポートに向けて、噴射すべき総燃料噴射量の一部を噴射する第1の燃料噴射弁を備えることを特徴とする。また本発明は具体的には前記第1の燃料噴射弁が、前記吸気ポートから筒内に前記旋回気流の旋回方向とは逆方向の流れを形成するように流入する吸気流を打ち消すように前記総燃料噴射量の一部を噴射することが好ましい。
【0008】
本発明によれば、旋回気流を減衰させる流れを形成するように筒内に流入する吸気流を燃料の噴射によって打ち消すことができ、以って筒内に生成される旋回気流を燃料の噴射によって強化できる。また本発明は例えば前述の噴流効果を適切に得ることができる燃料噴射方法と組み合わせて実現できる点で、筒内に生成される旋回気流を燃料の噴射によって好適に強化できる。この点、本発明は必ずしも前述の燃料噴射方法と組み合わせて実現することに限定されないが、前述の燃料噴射方法と組み合わせて実現するにあたっては、ピストンが吸気行程及び圧縮行程間の下死点近傍に位置するときに、前記旋回気流に沿って筒内に燃料を噴射する第2の燃料噴射弁をさらに備えることが好ましい。
【0009】
また本発明は請求項3記載の筒内直接燃料噴射式内燃機関を制御するための内燃機関の制御装置であって、前記筒内直接燃料噴射式内燃機関の運転状態に応じて、前記総燃料噴射量が増減されるとともに、該総燃料噴射量が所定の割合で前記第1及び第2の燃料噴射弁夫々から噴射される場合に、前記第2の燃料噴射弁から噴射すべき燃料噴射量が所定量以上になったときに、該所定量を前記第2の燃料噴射弁から噴射すべき燃料噴射量とするとともに、前記総燃料噴射量から前記所定量を差し引いた残りの噴射量を前記第1の燃料噴射弁から噴射すべき燃料噴射量とする特定燃料噴射量制御手段を備えることを特徴とする。
【0010】
ここで、第2の燃料噴射弁から噴射すべき燃料噴射量が多くなり、この結果、ピストンが吸気行程及び圧縮行程間の下死点近傍から離れた後でも燃料を噴射し続けなければならなくなると、却って旋回気流を減衰させてしまうことになる。これに対して本発明によれば、噴流効果を適切に得られる範囲内で第2の燃料噴射弁から燃料を噴射できるとともに、第1の燃料噴射弁から残りの燃料を噴射することによって、旋回気流を減衰させるように筒内に流入する吸気流を打ち消すことができ、以って筒内に生成される旋回気流を燃料の噴射によって好適に強化できる。
【0011】
なお、上記所定の割合は一定値でなくてもよく、例えば内燃機関の運転状態に応じて異なる割合に設定されてよい。この点、筒内噴射火花点火式内燃機関が可変動弁機構を備えている場合には、例えば吸気弁のバルブリフト量に応じて、リフト量が小さいほど総燃料噴射量に占める第1の燃料噴射弁からの燃料噴射量の割合が大きくなるようにすることが好ましい。これにより、バルブリフト量に応じて旋回気流を減衰させるように筒内に流入する吸気流を好適に打ち消すことができることから、この点で旋回気流を燃料の噴射によってさらに好適に強化できる。
【0012】
また本発明は請求項3記載の筒内直接燃料噴射式内燃機関を制御するための内燃機関の制御装置であって、前記筒内直接燃料噴射式内燃機関の回転数に応じて、前記第1及び第2の燃料噴射弁から噴射する燃料の噴射期間を変更する燃料噴射期間変更手段を備えることを特徴とする。
【0013】
ここで燃料の噴射期間はクランク角に基づいて設定されるところ、同じ噴射期間であっても、筒内噴射火花点火式内燃機関の回転数が高い場合には回転数が低い場合よりも噴射時間は短くなってしまう。このため係る場合には、第1及び第2の燃料噴射弁から噴射すべき燃料噴射量を確実に噴射できなくなってしまう事態が生じ得る。これに対して本発明によれば、回転数が高くなった場合でも噴射時間を確保でき、以って噴射すべき燃料噴射量を確実に噴射できるようになる点で、筒内に生成される旋回気流を燃料の噴射によって好適に強化できる。なお、燃料の噴射期間変更手段は具体的には回転数が高くなるほど、噴射期間を長く変更することが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、筒内に生成される旋回気流を燃料の噴射によって好適に強化できる筒内噴射火花点火式内燃機関及び内燃機関の制御装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面と共に詳細に説明する。
【実施例1】
【0016】
図1は本実施例に係る筒内直接燃料噴射式内燃機関(以下、単に内燃機関と称す)50Aの要部をECU(Electronic Control Unit:電子制御装置)1Aとともに模式的に示す図である。内燃機関50Aはシリンダブロック51、シリンダヘッド52及びピストン53などを有して構成されている。シリンダブロック51には略円筒状のシリンダ51aが形成されており、シリンダ51a内にはピストン53が収容されている。
【0017】
シリンダブロック51にはシリンダヘッド52が固定されている。燃焼室54はシリンダブロック51、シリンダヘッド52及びピストン53によって囲われた空間として形成されている。シリンダヘッド52には吸気を燃焼室54(以下、筒内とも称す)に導入するための吸気ポート52aと、燃焼したガスを燃焼室54から排気するための排気ポート52bとが夫々形成されており、さらに吸気ポート52aを開閉するための吸気弁55と、排気ポート52bを開閉するための排気弁56とが夫々配設されている。吸気弁55が開弁し、吸気ポート52aから筒内に吸気が流入すると、筒内にタンブル流T(請求項記載の旋回気流に相当)が生成される。内燃機関50Aには回転数NEを検出するためのクランク角センサ71や水温センサ72などが配設されている。
【0018】
図2は図1で図示省略した第1及び第2の燃料噴射弁58、59の配置夫々を側面模式図及び上面模式図を用いて示す図である。第1及び第2の燃料噴射弁58、59はともに燃焼室54周りで吸気ポート52a側に配設されている。2つの第1の燃料噴射弁58夫々は筒内に噴射孔を突出させた状態で吸気ポート52a各々の下方にこれらに対応させて配設されている。第2の燃料噴射弁59は筒内に噴射孔を突出させた状態で、上方から見て吸気ポート52a間略中央に配設されている。またこれら第1及び第2の燃料噴射弁58、59はともに燃焼室54上部に対応させて配設されている。
【0019】
ECU1Aは図示しないCPU(Central Processing Unit:中央演算処理装置)と、ROM(Read Only Memory)と、RAM(Random Access Memory)とを有して構成されるマイクロコンピュータと、入出力回路などを有して構成されている。ECU1Aは主として内燃機関50Aを制御するための構成であり、本実施例では第1の燃料噴射弁58や、第2の燃料噴射弁59などが制御対象として電気的に接続されている。またECU1Aにはクランク角センサ71や、水温センサ72や、図示しないエアフロメータなどが電気的に接続されている。なお、ECU1にはこのほか各種の制御対象やセンサ、スイッチ類が電気的に接続されていてよい。
【0020】
ROMはCPUが実行する種々の処理が記述されたプログラムやマップデータなどを格納するための構成であり、本実施例では内燃機関制御用プログラムのほか、以下に示す特定噴射タイミング制御用プログラムや特定燃料噴射量制御用プログラムなども格納している。なお、これらのプログラムは一体として構成されていてもよい。特定噴射タイミング制御用プログラムは、第1の燃料噴射弁58からの燃料噴射タイミングAを制御するための第1の燃料噴射タイミング制御用プログラムと、第2の燃料噴射弁59からの燃料噴射タイミングBを制御するための第2の燃料噴射タイミング制御用プログラムとを有して構成されている。第1の燃料噴射タイミング制御用プログラムは、吸気弁55開弁時に第1の燃料噴射弁58から燃料噴射を行うように作成されている。また第2の燃料噴射タイミング制御用プログラムは、ピストン53が吸気行程及び圧縮行程間の下死点近傍に位置するときに、第2の燃料噴射弁59から燃料噴射を行うように作成されている。
【0021】
特定燃料噴射量制御用プログラムは、噴射すべき総燃料噴射量を所定の割合で第1の燃料噴射弁58及び第2の燃料噴射弁59夫々から噴射するように作成されている。なお、この所定の割合は一定値でなくてもよく、例えば内燃機関50Aの運転状態に応じて異なる割合に設定されていてもよい。本実施例ではこれら特定噴射タイミング制御用プログラム及び特定燃料噴射量制御用プログラムに基づきECU1Aが制御を行うことで、第1の燃料噴射弁58が吸気弁55開弁時に吸気ポート52aに向けて、噴射すべき総燃料噴射量の一部を噴射するように構成される。またこれら特定噴射タイミング制御用プログラム及び特定燃料噴射量制御用プログラムに基づきECU1Aが制御を行うことで、第2の燃料噴射弁59が、ピストン53が吸気行程及び圧縮行程間の下死点近傍に位置するときに、タンブル流Tに沿って総燃料噴射量から第1の燃料噴射弁58が噴射する燃料噴射量を差し引いた分の燃料を筒内に噴射するように構成される。
【0022】
なお、本実施例ではマイコンとROMが格納するプログラムとで各種の制御手段や判定手段や検出手段や算出手段などが実現され、特にマイコンと特定噴射タイミング制御用プログラムとで特定噴射タイミング制御手段が、マイコンと第1の燃料噴射タイミング制御用プログラムとで第1の燃料噴射タイミング制御手段が、マイコンと第2の燃料噴射タイミング制御用プログラムとで第2の燃料噴射タイミング制御手段が、マイコンと特定燃料噴射量制御用プログラムとで特定燃料噴射量制御手段が夫々実現される。また本実施例ではECU1Aで内燃機関の制御装置が実現される。
【0023】
図3は第1の燃料噴射弁58からの燃料噴射タイミングA及び第2の燃料噴射弁59からの燃料噴射タイミングBをグラフで模式的に示す図である。図3に示すグラフにおいて、縦軸はバルブリフト量、横軸はクランク角度となっており、このグラフではクランク角度を吸気行程から圧縮行程にかけて示している。図3に示すように、第1の燃料噴射弁58からの燃料噴射タイミングAはさらに具体的にはバルブリフト量が最大となるクランク角度を中心として、前後に均等に燃料が噴射されるように設定される。また図3からこの設定が吸気弁55開弁時に第1の燃料噴射弁58から燃料が噴射されるように設定されていることがわかる。
【0024】
一方、第2の燃料噴射弁59からの燃料噴射タイミングBはさらに具体的には吸気行程及び圧縮行程間の下死点に対応するクランク角度(BTDC180°CA)の手前から、すなわち吸気行程末期から燃料が噴射されるように設定され、図3に示す例ではさらに圧縮行程にかけて燃料が噴射されるように設定されている。また図3からこの設定が、ピストン53が吸気行程及び圧縮行程間の下死点近傍に位置するときに、第2の燃料噴射弁59から燃料が噴射されるように設定されていることがわかる。
【0025】
図2に戻り、第1の燃料噴射弁58夫々は、吸気弁55開弁時に吸気ポート52a各々に向けて噴射すべき総燃料噴射量の一部を噴射する。具体的には第1の燃料噴射弁58夫々は、吸気ポート52a各々から筒内にタンブル流Tの旋回方向とは逆方向の吸気の流れを形成するように流入する逆タンブル成分を打ち消すように燃料を噴射する。また第2の燃料噴射弁59はピストン53が吸気行程及び圧縮行程間の下死点近傍に位置するときに、タンブル流Tに沿って筒内に燃料を噴射する。
【0026】
これにより、第1の燃料噴射弁58及び第2の燃料噴射弁59夫々からの燃料の噴射によって、筒内に生成されるタンブル流Tを強化できる。また第1の燃料噴射弁58からの燃料の噴射によってタンブル流Tを強化することは、係る第2の燃料噴射弁59からの燃料の噴射によってタンブル流Tを強化することと組み合わせて実現できる点で、筒内に生成されるタンブル流Tを燃料の噴射によって好適に強化できる。以上により、筒内に生成されるタンブル流Tを燃料の噴射によって好適に強化できる内燃機関50A及びECU1Aを実現できる。
【実施例2】
【0027】
本実施例に係る内燃機関50Bは可変動弁機構(図示省略)を備えている点以外、実施例1に係る内燃機関50Aと実質的に同一のものとなっている。またECU1Bは、さらに後述するように作成された特定燃料噴射量制御用プログラムをROMに格納している点以外、ECU1Aと実質的に同一のものとなっている。なお、可変動弁機構は吸気弁55のバルブリフト量を可変にするものであれば、特に限定されない。図4は筒内に流入する吸気の流入態様を吸気弁55のバルブリフト量が大きい場合(高リフト時の場合)と小さい場合(低リフト時の場合)について夫々模式的に示す図である。
【0028】
図4(a)に示すように高リフト時の場合には、吸気ポート52aが大きく開放される結果、吸気は慣性に従ってそのまま筒内に流入し易くなる。このため高リフト時の場合には、筒内に流入する吸気の流れのうち、タンブル流Tに生成される正タンブル成分のほうが逆タンブル成分よりも強くなる。一方、図4(b)に示すように低リフト時には、吸気ポート52aが吸気弁55によって絞られる結果、筒内に流入する吸気の流れは吸気弁55周りにほぼ均等になる。このため、低リフト時のほうが高リフト時よりも第1の燃料噴射弁58からの燃料噴射で逆タンブル成分を打ち消す必要性が高くなる。
【0029】
このため本実施例では、総燃料噴射量に占める第1及び第2の燃料噴射弁58、59からの燃料噴射量の割合が吸気弁55のバルブリフト量に応じて予め設定されている。図5は総燃料噴射量に占める第1及び第2の燃料噴射弁58、59からの燃料噴射量の割合を模式的に示す図である。図5に示すように、総燃料噴射量に占める第1の燃料噴射弁58からの燃料噴射量の割合は、具体的には吸気弁55のバルブリフト量が小さくなるほど大きくなるように設定されている。
【0030】
本実施例では係る設定がROMにマップデータとして予め格納されており、特定燃料噴射量制御用プログラムはこのマップデータに基づき、総燃料噴射量から第1の燃料噴射弁58及び第2の燃料噴射弁59の燃料噴射量を決定するように作成されている。この特定燃料噴射量制御用プログラムに基づき、ECU1Bが制御を行うことで、吸気弁55のバルブリフト量が小さくなるほど、総燃料噴射量に占める第1の燃料噴射弁58からの燃料噴射量の割合が大きくなる第1の燃料噴射弁58が構成される。これにより、バルブリフト量に応じて逆タンブル成分を好適に打ち消すことができることから、内燃機関50Bによれば、この点でタンブル流Tを燃料の噴射によってさらに好適に強化できる。
【0031】
なお、本実施例ではマイコンとROMが格納するプログラムとで各種の制御手段や判定手段や検出手段や算出手段などが実現され、特にマイコンと特定燃料噴射量制御用プログラムとで特定燃料噴射量制御手段が夫々実現される。また本実施例ではECU1Bで内燃機関の制御装置が実現される。以上により、筒内に生成されるタンブル流Tを燃料の噴射によって好適に強化できる内燃機関50B及びECU1Bを実現できる。
【実施例3】
【0032】
本実施例ではECU1Cで実現されている内燃機関の制御装置について詳述する。このECU1Cは内燃機関50Bを制御するための構成となっており、実施例2で前述した特定燃料噴射量制御用プログラムに対してさらに以下に示すように作成された特定燃料噴射量制御用プログラムをROMに格納している点以外、ECU1Bと実質的に同一のものとなっている。なお、特定燃料噴射量制御用プログラムは、実施例1で前述した特定燃料噴射量制御用プログラムに対してさらに以下に示すように作成することも可能であり、またこのときECU1Cは内燃機関50Aを制御してもよい。
【0033】
総燃料噴射量は内燃機関制御用プログラムに基づき、内燃機関50Bの運転状態(具体的にはここでは負荷)に応じて増減される。また総燃料噴射量は特定燃料噴射量制御用プログラムに基づき、所定の割合で第1及び第2の燃料噴射弁58、59夫々から噴射される。これに対して本実施例では、特定燃料噴射量制御用プログラムが、さらに第2の燃料噴射弁59から噴射すべき燃料噴射量が所定量α以上になったときに、第2の燃料噴射弁59から噴射すべき燃料噴射量を所定量αとするとともに、第1の燃料噴射弁58から噴射すべき燃料噴射量を総燃料噴射量から所定量αを差し引いた残りの噴射量とするように作成されている。本実施例ではマイコンとROMに格納されたプログラムとで各種の制御手段や判定手段や検出手段や算出手段が実現されており、特にマイコンと上述の特定燃料噴射量制御用プログラムとで特定燃料噴射量制御手段が実現されている。
【0034】
図6は負荷に応じて第1及び第2の燃料噴射弁58、59からの燃料噴射量が変化する様子を模式的に示す図である。図6に示すように負荷が大きくなるに従って総燃料噴射量は増大する。このとき特定燃料噴射量制御用プログラムに基づきECU1Cが制御を行うことで、第1の燃料噴射弁58からの燃料噴射量は負荷が大きくなるに従って増大する。一方、第2の燃料噴射弁59からの燃料噴射量は所定量αになるまでは負荷が大きくなるに従って増大し、所定量αになった後は負荷が増大しても所定量αのままとなる。
【0035】
この所定量αはピストン53が吸気行程及び圧縮行程間の下死点近傍に位置しているときに、第2の燃料噴射弁59からの燃料噴射で噴流効果を適切に得ることができる最大の燃料噴射量として予め設定される。これにより、噴流効果が適切に得られる範囲内で第2の燃料噴射弁59から燃料を噴射できるとともに、第1の燃料噴射弁58から残りの燃料を噴射することによって逆タンブル成分を打ち消すことができ、以ってタンブル流Tを燃料の噴射によって好適に強化できる。以上により、筒内に生成されるタンブル流Tを燃料の噴射によって好適に強化できるECU1Cを実現できる。
【実施例4】
【0036】
本実施例に係るECU1Dは以下に示す特定噴射期間制御用プログラムをさらにROMに格納している点以外、ECU1Cと実質的に同一のものとなっている。なお、ECU1AまたECU1BのROMに対してさらに以下に示す特定噴射期間制御用プログラムを格納することも可能である。特定噴射期間制御用プログラムは、内燃機関50Bの回転数NEに応じて、第1及び第2の燃料噴射弁58、59から噴射する燃料の噴射期間を変更するためのプログラムであり、具体的には回転数NEが高くなるほど、噴射期間を長く変更するように作成されている。本実施例ではマイコンとROMに格納されたプログラムとで各種の制御手段や判定手段や検出手段や算出手段が実現され、特にマイコンと特定噴射期間制御用プログラムとで特定噴射期間制御手段が実現されている。
【0037】
図7は回転数NEに応じて第1及び第2の燃料噴射弁58、59の燃料噴射期間が変更される前後の様子を夫々模式的に示す図である。図7に示す例では回転数が上昇する前には、第1の燃料噴射弁58の燃料噴射期間は図7(a)に示すように吸気弁55の最大バルブリフト量に対応するクランク角度を中心として、前後に均等に燃料を噴射するように設定されている。一方、第2の燃料噴射弁59の燃料噴射期間は吸気行程及び圧縮行程間の下死点に対応するクランク角度(BTDC180°CA)の手前からBTDC180°CAにかけて燃料を噴射するように設定されている。
【0038】
これに対して回転数NEが上昇した場合には、特定燃料噴射期間制御用プログラムに基づきECU1Dが制御を行うことで、図7(b)に示すように燃料噴射期間が変更される。具体的には第1の燃料噴射弁58の燃料噴射期間は吸気弁55の最大バルブリフト量に対応するクランク角度を中心として、前後に均等に拡大される。また第2の燃料噴射弁59の燃料噴射期間は吸気行程及び圧縮行程間の下死点に対応するクランク角度(BTDC180°CA)の前後に均等に拡大される。これにより、回転数NEが上昇した場合でも噴射時間を確保でき、以って噴射すべき燃料噴射量を確実に噴射できるようになる点で、筒内に生成されるタンブル流Tを燃料の噴射で好適に強化できる。以上により、筒内に生成されるタンブル流Tを燃料の噴射によって好適に強化できるECU1Dを実現できる。
【実施例5】
【0039】
本実施例に係るECU1Eは、実施例3で前述した特定燃料噴射量制御用プログラムに対してさらに以下に示すように作成された特定燃料噴射量制御用プログラムをROMに格納している点以外、ECU1Dと実質的に同一のものとなっている。なお、特定燃料噴射量制御用プログラムは、実施例1または2で前述した特定燃料噴射量制御用プログラムに対してさらに以下に示すように作成することも可能であり、またこのときECU1Eは内燃機関50Aを制御してもよい。本実施例でも総燃料噴射量は内燃機関制御用プログラムに基づき、内燃機関50Bの運転状態(具体的にはここでは負荷)に応じて増減される。また総燃料噴射量は特定燃料噴射量制御用プログラムに基づき、所定の割合で第1及び第2の燃料噴射弁58、59夫々から噴射される。
【0040】
これに対して本実施例では、特定燃料噴射量制御用プログラムがさらに第1の燃料噴射弁58からの燃料噴射量が吸気弁55開弁時を超えて噴射されることになる所定量βになった場合に、第1の燃料噴射弁58からの燃料噴射量を所定値βとするとともに、第2の燃料噴射弁59からの燃料噴射量を総燃料噴射量から所定量βを差し引いた噴射量とするように作成されている。本実施例ではマイコンとROMに格納されたプログラムとで各種の制御手段や判定手段や検出手段や算出手段が実現され、特にマイコンと上述の特定燃料噴射量制御用プログラムとで特定燃料噴射量制御手段が実現されている。これにより、吸気弁55開弁時以外に第1の燃料噴射弁58から燃料が噴射されることが確実に防止される点で、筒内に生成されるタンブル流Tを燃料の噴射で好適に強化できる。以上により、筒内に生成されるタンブル流Tを燃料の噴射によって好適に強化できるECU1Dを実現できる。
【実施例6】
【0041】
本実施例に係るECU1Fは、実施例5で前述した特定燃料噴射量制御用プログラムに対してさらに以下に示すように作成された特定燃料噴射量制御用プログラムをROMに格納している点以外、ECU1Eと実質的に同一のものとなっている。このECU1Fは可変動弁機構を備えた内燃機関50Bを制御するための構成となっている。なお、特定燃料噴射量制御用プログラムは、実施例1、2または3で前述した特定燃料噴射量制御用プログラムに対してさらに以下に示すように作成することも可能であるが、このときECU1Fは内燃機関50Bを制御することになる。
【0042】
ここで吸気弁55にデポジットが堆積した場合には、吸気弁55低リフト時に筒内に吸入される吸入空気量が、内燃機関50Bの運転状態に応じて吸入されるべき空気量よりも減少する。これに対して本実施例では、特定燃料噴射量制御用プログラムが、さらに吸気弁55低リフト時に筒内に吸入される吸入空気量が、内燃機関50Bの運転状態に応じて吸入されるべき空気量よりも減少している場合に、総燃料噴射量に占める第1の燃料噴射弁58からの燃料噴射量の割合を増大させるように作成されている。なお、吸入空気量が減少しているか否かは、例えば内燃機関50Bの運転状態に応じて吸入されるべき空気量に対応した燃料を噴射した後のA/Fやエミッションを検出するとともに、検出値が適正値となっているか否かを判定することで判定できる。本実施例ではマイコンとROMに格納されたプログラムとで各種の制御手段や判定手段や検出手段や算出手段が実現され、特にマイコンと上述の特定燃料噴射量制御用プログラムとで特定燃料噴射量制御手段が実現されている。
【0043】
上述の特定燃料噴射量制御用プログラムに基づき、ECU1Fが制御を行うことで、吸入空気量が減少していた場合には第1の燃料噴射弁58からの燃料噴射量の割合が大きく変更される。これにより、第1の燃料噴射弁58からの燃料噴射で吸気弁55に付着したデポジットを除去することができる。なお、デポジットが除去された結果、吸入空気量が適正な量になった場合には、さらに総燃料噴射量に占める第1の燃料噴射弁58からの燃料噴射量の割合を元に戻すように特定燃料噴射量制御用プログラムを作成することも可能である。これにより、吸気弁55にデポジットが堆積した場合でも好適に吸気弁55を燃料噴射によって洗浄できる。以上により、筒内に生成されるタンブル流Tを燃料の噴射によって好適に強化できるとともに、さらに吸気弁55にデポジットが堆積した場合でも吸気弁55を燃料噴射によって好適に洗浄できるECU1Fを実現できる。
【0044】
上述した実施例は本発明の好適な実施の例である。但し、これに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変形実施可能である。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】内燃機関50Aの要部を一気筒につき断面で模式的に示す図である。
【図2】第1及び第2の燃料噴射弁58、59の配置夫々を側面模式図及び上面模式図を用いて示す図である。
【図3】第1の燃料噴射弁58からの燃料噴射タイミングA及び第2の燃料噴射弁59からの燃料噴射タイミングBをグラフで模式的に示す図である。
【図4】筒内に流入する吸気の流入態様を吸気弁55のバルブリフト量が大きい場合(高リフト時の場合)と小さい場合(低リフト時の場合)について夫々模式的に示す図である。
【図5】総燃料噴射量に占める第1及び第2の燃料噴射弁58、59からの燃料噴射量の割合を模式的に示す図である。
【図6】負荷に応じて第1及び第2の燃料噴射弁58、59からの燃料噴射量が変化する様子を模式的に示す図である。
【図7】回転数NEに応じて第1及び第2の燃料噴射弁58、59の燃料噴射期間が変更される前後の様子を夫々模式的に示す図である。
【図8】旋回気流を強める噴流効果を適切に得ることができる燃料噴射方法をピストン下降時に燃料を噴射場合と比較して模式的に示す図である。
【符号の説明】
【0046】
1 ECU
50 内燃機関
51 シリンダブロック
52 シリンダヘッド
52a 吸気ポート
53 ピストン
55 吸気弁
58 第1の燃料噴射弁
59 第2の燃料噴射弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒内に旋回気流が生成される筒内直接燃料噴射式内燃機関であって、
吸気弁開弁時に吸気ポートに向けて、噴射すべき総燃料噴射量の一部を噴射する第1の燃料噴射弁を備えることを特徴とする筒内直接噴射噴射式内燃機関。
【請求項2】
前記第1の燃料噴射弁が、前記吸気ポートから筒内に前記旋回気流の旋回方向とは逆方向の流れを形成するように流入する吸気流を打ち消すように前記総燃料噴射量の一部を噴射することを特徴とする請求項1記載の筒内直接燃料噴射式内燃機関。
【請求項3】
ピストンが吸気行程及び圧縮行程間の下死点近傍に位置するときに、前記旋回気流に沿って筒内に燃料を噴射する第2の燃料噴射弁をさらに備えることを特徴とする請求項1または2記載の筒内直接燃料噴射式内燃機関。
【請求項4】
請求項3記載の筒内直接燃料噴射式内燃機関を制御するための内燃機関の制御装置であって、
前記筒内直接燃料噴射式内燃機関の運転状態に応じて、前記総燃料噴射量が増減されるとともに、該総燃料噴射量が所定の割合で前記第1及び第2の燃料噴射弁夫々から噴射される場合に、
前記第2の燃料噴射弁から噴射すべき燃料噴射量が所定量以上になったときに、該所定量を前記第2の燃料噴射弁から噴射すべき燃料噴射量とするとともに、前記総燃料噴射量から前記所定量を差し引いた残りの噴射量を前記第1の燃料噴射弁から噴射すべき燃料噴射量とする特定燃料噴射量制御手段を備えることを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項5】
請求項3記載の筒内直接燃料噴射式内燃機関を制御するための内燃機関の制御装置であって、
前記筒内直接燃料噴射式内燃機関の回転数に応じて、前記第1及び第2の燃料噴射弁から噴射する燃料の噴射期間を変更する燃料噴射期間変更手段を備えることを特徴とする内燃機関の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−47073(P2009−47073A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−213923(P2007−213923)
【出願日】平成19年8月20日(2007.8.20)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】