説明

粉末からなるイオン性水溶性高分子とその製造方法およびその用途

【課題】 輸送コストや環境負荷の小さいイオン性の水溶性高分子とその製造法を提供することであり、凝集剤用途さらに詳しくは汚泥の脱水処理用途、製紙スラッジの脱水処理用途と製紙原料に添加して抄紙する方法に対して優れた機能を発揮するカチオン性の水溶性高分子を提供する。
【解決手段】 分散剤および疎水性分散媒を含有する連続相と、カチオン性単量体および複数の不飽和二重結合を有する多官能性単量体を必須として含有する分散相とからなる分散体を逆相懸濁重合させた後、得られる重合体を乾燥したイオン性高分子であって、特定のイオン性を発現する粉末からなるイオン性水溶性高分子を提供することで本課題を解決できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉末からなるイオン性水溶性高分子とその製造方法および用途に関するものである。さらに詳しくは、特定のイオン性を発現する粉末からなるイオン性水溶性高分子とその製造方法および用途に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、イオン性の水溶性高分子は水分散性スラリーや水溶液の増粘剤、分散剤、紙力増強剤、汚泥脱水剤、製紙原料の歩留向上剤、抄紙時の濾水性向上剤などさまざまな分野で使用されており、その形態は、粉末、ペースト状水溶液、油中水型エマルジョンあるいは水性分散液など様々である。
【0003】
汚泥の脱水処理の分野においては、汚泥の発生量の増加、汚泥性状の悪化による難脱水化が進んでおり、汚泥脱水性の改善、脱水ケーキの含水率の低下が強く求められており、製紙工業の分野では、古紙配合量の増加による原料事情の悪化、抄紙速度の増大による生産性の向上などが求められている。
【0004】
このような要望に対し、イオン性の水溶性高分子は様々な改良が進められてきた。特許文献1には、架橋されたカチオン性水溶性高分子の汚泥への適用が例示されている。特許文献2には、電荷内包率35%以上のビニル重合系架橋性水溶性イオン性高分子と、電荷内包率5以上、35%未満のビニル重合系架橋性水溶性イオン性高分子を組み合わせた汚泥脱水剤としての適用が例示されている。
【0005】
また、特許文献3には、架橋された水溶性カチオン性の単量体重合物の油中水型エマルジョンを歩留向上剤および濾水性向上剤として抄紙工程に適用する方法が例示されている。
【0006】
一方で、粉末状のイオン性水溶性高分子は、その他の形態のものと比較し疎水性溶媒、水あるいは分散剤といった不純物が少ない特徴があり、輸送コストや環境負荷の面で優位性がある。粉末状のイオン性水溶性高分子を得る方法としては水溶液重合法、薄膜重合法、逆相懸濁重合法等が挙げられ、これらのうち逆相懸濁重合法によるポリマーは粒子が球状となるため供給時に目詰まり等のトラブルを起こしにくいことが知られている。
【0007】
特許文献4、特許文献5には、カチオン性水溶性高分子の逆相懸濁重合法について記載されており、特許文献6には、逆相懸濁重合法により得られた架橋されたカチオン性水溶性高分子と凝集剤としての適用が例示されている。
【0008】
これらの逆相懸濁重合法で得られる粉末状のイオン性水溶性高分子について電荷内包率についての記載は無く、考慮の範疇外であることが明白である。
【特許文献1】特公平08−164号公報
【特許文献2】特開2005−144346号公報
【特許文献3】特開平10−140496号公報
【特許文献4】特開昭54−56690号公報
【特許文献5】特開2004−181449号公報
【特許文献6】特開2004−255378号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、輸送コストや環境負荷の小さいイオン性水溶性高分子とその製造法を提供することであり、凝集剤用途さらに詳しくは汚泥の脱水処理用途、製紙スラッジの脱水処理用途と製紙原料に添加して抄紙する方法に対して優れた機能を発揮する粉末からなるイオン性水溶性高分子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは鋭意検討の結果、驚くべきことに特定のイオン性を発現する水溶性高分子が汚泥の脱水処理用途、製紙スラッジの脱水処理用途と製紙原料に添加して抄紙する方法に対して特に優れた機能を発揮し、分散剤および疎水性分散媒を含有する連続相と、カチオン性単量体および複数の不飽和二重結合を有する多官能性単量体を必須として含有する分散相とからなる分散液を逆相懸濁重合させた後、得られる重合体を乾燥した粉末からなるイオン性の水溶性高分子が上記課題を解決するものであることを見出した。
【0011】
すなわち請求項1の発明は、分散剤および疎水性分散媒を含有する連続相と、カチオン性単量体および複数の不飽和二重結合を有する多官能性単量体を必須として含有する分散相とからなる分散液を逆相懸濁重合させた後、得られる重合体を乾燥した粉末からなるイオン性の水溶性高分子であって、イオン性高分子の電荷内包率が35%以上90%以下であることを特徴とする水溶性高分子粉末である。
【0012】
請求項2の発明は、前記イオン性高分子が、下記一般式(1)及び/または(2)であらわされる単量体5〜100mol%、下記一般式(3)であらわされる単量体0〜50mol%および水溶性の非イオン性単量体0〜95mol%および複数の不飽和二重結合を有する多官能性単量体を共重合して得られることを特徴とする、請求項1に記載の粉末からなるイオン性の水溶性高分子である。
【化1】

一般式(1)
は水素又はメチル基、R、Rは炭素数1〜3のアルキル基、アルコキシル基あるいはベンジル基、Rは水素、炭素数1〜3のアルキル基、アルコキシル基あるいはベンジル基であり、同種でも異種でも良い。AはOまたはNH、Bは炭素数2〜4のアルキレン基またはアルコキシレン基、Xは陰イオンをそれぞれ表す。



【化2】

一般式(2)
、Rは水素又はメチル基、R、Rは炭素数1〜3のアルキル基、アルコキシ基あるいはベンジル基、Xは陰イオンをそれぞれ表す。
【化3】

一般式(3)
は水素またはCHCOOY、R10は水素、メチル基またはCOOY、QはSO、CSO、CONHC(CHCHSO、CCOOあるいはCOOであり、Yは水素または陽イオンをそれぞれ表す。
【0013】
請求項3の発明は、請求項1〜2に記載の粉末からなるイオン性の水溶性高分子を水に溶解した後、汚泥に添加し凝集させ脱水機により脱水することを特徴とした汚泥の脱水方法である。
【0014】
請求項4の発明は、請求項1〜2に記載の粉末からなるイオン性の水溶性高分子を水に溶解した後、製紙スラッジに添加し凝集させ脱水機により脱水することを特徴とした製紙スラッジの脱水方法である。
【0015】
請求項5の発明は、請求項1〜2に記載の粉末からなるイオン性の水溶性高分子を水に溶解した後、抄紙前の製紙原料中に添加し使用することを特徴とした製紙方法である。
【0016】
請求項6の発明は、無機及び/または有機のアニオン性物質と組み合わせて使うことを特徴とした、請求項5記載の製紙方法である。
【0017】
請求項7の発明は、前記アニオン性物質がコロイダルシリカあるいはベントナイトであることを特徴とする、請求項6記載の製紙方法である。
【0018】
請求項8の発明は、前記アニオン性物質が、下記一般式(3)で表される単量体3〜100mol%と水溶性の非イオン性単量体の重合物であることを特徴とする、請求項6記載の製紙方法である。
【化3】

一般式(1)
は水素またはCHCOOY、R10は水素、メチル基またはCOOY、QはSO、CSO、CONHC(CHCHSO、CCOOあるいはCOOであり、Yは水素または陽イオンをそれぞれ表す。
【発明の効果】
【0019】
本発明の粉末からなるイオン性水溶性高分子は、不純物の少ない粉末状の水溶性高分子であるため、輸送コストを低減することが可能であり、さらには輸送で生じる二酸化炭素の排出を低減することも可能である。さらには、電荷内包率35%以上のイオン性水溶性高分子であることから、凝集剤用途、詳しくは汚泥の脱水処理用途、製紙スラッジの脱水処理用途と製紙原料に添加して抄紙する方法に対して特に優れた機能を発揮することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の粉末からなるイオン性水溶性高分子は、電荷内包率が35%以上90%以下であるイオン性の水溶性高分子である。ここで、カチオン性水溶性高分子および両性でかつカチオン性単量体とアニオン性単量体のモル濃度の差が正である水溶性イオン性高分子の電荷内包率とは以下のように計算される。
電荷内包率[%]=(1−α/β)×100
αは酢酸にてpH4.0に調整したカチオン性水溶性高分子0.01%水溶液をミューテック社製PCD滴定装置(Meutek PCD 03、Meutek PCD−Two Titrator Version2)により、滴下液:1/1000N ポリビニルスルホン酸カリウム水溶液、滴下速度:0.05ml/10秒、終点判定:0mvにて滴定し、求めた滴定量である。βは酢酸にてpH4.0に調整したカチオン性水溶性高分子0.01%水溶液に1/400N ポリビニルスルホン酸カリウム水溶液を電荷の中和を行うに十分な量加え、十分に攪拌し、同様にPCD滴定装置により、滴下液:1/1000N ジアリルジメチルアンモニウムクロライド水溶液、滴下速度:0.05ml/10秒、終点判定:0mvにて滴定し、ブランク値とこの滴定量との差である。ブランク値とは酢酸にてpH4.0に調整した前記1/400N ポリビニルスルホン酸カリウム水溶液と同量のポリビニルスルホン酸カリウム水溶液を、同様にPCD滴定装置により滴下液:1/1000N ジアリルジメチルアンモニウムクロライド水溶液、滴下速度:0.05ml/10秒、終点判定:0mvにて滴定し、求めた滴定量である。
【0021】
本発明において、両性でかつカチオン性単量体とアニオン性単量体のモル濃度の差が負である水溶性イオン性高分子では、電荷内包率とは以下のように計算される。
電荷内包率[%]=(1−α/β)×100
αはアンモニアにてpH10.0に調整した水溶性イオン性高分子0.01%水溶液をミューテック社製PCD滴定装置(Meutek PCD 03、Meutek PCD−Two Titrator Version2)により、滴下液:1/1000N
ジアリルジメチルアンモニウムクロライド水溶液、滴下速度:0.05ml/10sec、終点判定:0mvにて 滴定し、求めた滴定量である。βはアンモニアにてpH10.0に調整したイオン性水溶性高分子0.01%水溶液に1/400N
ジアリルジメチルアンモニウムクロライド水溶液を電荷の中和を行うに十分な量加え、十分に攪拌し、同様にPCD滴定装置により、滴下液:1/1000N ポリビニルスルホン酸カリウム水溶液、滴下速度:0.05ml/10sec、終点判定:0mvにて滴定し、この滴定量をブランク値から差し引いた値とする。ブランク値とはアンモニアにてpH10.0に調整した前記サンプルと同濃度のジアリルジメチルアンモニウムクロライド水溶液を同様にPCD滴定装置により、滴下液:1/1000N ポリビニルスルホン酸カリウム水溶液、滴下速度:0.05ml/10sec、終点判定:0mvにて滴定し、求めた滴定量である。
【0022】
本発明におけるイオン性水溶性高分子の電荷内包率は、イオン性の発現効率に関するパラメーターであり、イオン性物質のポリビニルスルホン酸カリウムによる正滴定と逆滴定との間に大きな差が生じることが汚泥、製紙スラッジおよび製紙原料に添加した場合、効果との間に明確な相関が生じるものである。
【0023】
電荷内包率35%より小さいイオン性水溶性高分子を汚泥あるいは製紙スラッジに添加した場合、比較的低い添加量で凝集し含水率は低下するが、添加量の増大とともに汚泥あるいは製紙スラッジが再分散し、粘性を帯び、汚泥含水率が増大する。電荷内包率35%以上のものを添加した場合、幅広い添加量範囲で添加の増大とともに巨大で強固なフロックを形成し、著しく汚泥あるいは製紙スラッジの含水率を低下させる。また、90%より大きいものを添加した場合は、それ以外のものの数倍以上の薬品を添加せねば汚泥あるいは製紙スラッジの凝集挙動に全く寄与しない。
【0024】
電荷内包率35%より小さいイオン性水溶性高分子を製紙原料に添加し抄紙した場合、比較的低い添加量で緩やかに凝集し製紙原料の歩留率、濾水性は向上する。電荷内包率35%以上のものを添加し抄紙した場合、より高シェアの混合条件で強固で緻密なフロックを形成し、特に製紙原料中の填料歩留率を向上させる。90%より大きいものを添加した場合は、数倍以上の薬品を添加しても凝集挙動はそれ以外のものに大きく劣る。すなわち、好適な電荷内包率の範囲は35%以上90%以下の範囲である。
【0025】
本発明の粉末からなるイオン性水溶性高分子は、分散剤および疎水性分散媒を含有する連続相と、カチオン性単量体および複数の不飽和二重結合を有する多官能性単量体を含有する分散相とからなる分散体を逆相懸濁重合させた後、得られる重合体を乾燥し得ることが出来る。一般式(1)で表されるカチオン性単量体の例としては、例えばジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドやこれらのハロゲン化水素、硫酸、硝酸、有機酸等による中和塩、ハロゲン化アルキル、ベンジルハライド、ジメチル硫酸、ジエチル硫酸等による四級化物、一般式(2)で表されるカチオン性単量体の例としては、ジメチルジ(メタ)アリルアンモニウム塩化物、ジ(メタ)アリルメチルベンジルアンモニウム塩化物等が挙げられ、単独で使用することも複数を同時に使用することも可能である。カチオン性単量体の量としては、重合後の水溶性高分子がカチオン性を有する範囲であれば特に制限は無いが、前記多官能性単量体を除く全単量体に対してカチオン性単量体の量が5〜95mol%の範囲であることが好ましい。
【0026】
前記多官能性単量体は複数の不飽和二重結合を複数有していれば特に制限はないが、N,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、トリアリルアミン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、N−ビニル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。多官能性単量体の量としては、多官能性単量体を除く全単量体重量に対して0.1〜100ppmの範囲であることが好ましく、さらに好ましくは、0.2〜50ppmの範囲である。
【0027】
本発明における単量体水溶液混合物は、上記単量体のほかに共重合可能なアニオン性単量体および/または水溶性の非イオン性単量体を含むことが出来る。一般式(3)で表されるアニオン性単量体の例としては、ビニルスルホン酸、ビニルベンゼンスルホン酸、2−アクリルアミド2−メチルプロパンスルホン酸、メタクリル酸、アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸あるいはp−カルボキシスチレンなどが挙げられる。アニオン性単量体の量としては、前記多官能性単量体を除く全単量体に対して0〜50mol%の範囲であることが好ましい。
【0028】
水溶性の非イオン性単量体の例としては、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、酢酸ビニル、アクリロニトリル、アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、ジアセトンアクリルアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、アクリロイルモルホリン、アクリロイルピペラジンなどが挙げられ、その量としては前記多官能性単量体を除く全単量体に対して0〜95mol%の範囲であることが好ましい。
【0029】
単量体水溶液混合物には前記単量体の他に、連鎖移動性を有する化合物を含むことが出来る。連鎖移動性を有する化合物の例としては、2−プパノール、2−メルカプトエタノール、メタリルスルホン酸ナトリウム、ギ酸ナトリウムなどが上げられ、目的とする重合物の組成、重合速度および分子量に応じて適宜添加する。
【0030】
重合開始はラジカル重合開始剤を使用する。これら開始剤は水溶性あるいは油溶性のどちらでも良く、アゾ系、過酸化物系、レドックス系いずれでも重合することが可能である。水溶性アゾ系開始剤の例としては、2、2’−アゾビス(アミジノプロパン)二塩化水素化物、2、2’−アゾビス〔2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン〕二塩化水素化物、4、4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)などがあげられる。
【0031】
油溶性アゾ系開始剤の例としては、2、2’−アゾビスイソブチロニトリル、1、1’−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、2、2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2、2’−アゾビス(2−メチルプロピオネ−ト)、4、4−アゾビス(4−メトキシ−2、4ジメチル)バレロニトリルなどがあげられる。またレドックス系の例としては、ペルオクソ二硫酸アンモニウムと亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、トリメチルアミン、テトラメチルエチレンジアミンなどとの組み合わせがあげられる。さらに過酸化物の例としては、ペルオクソ二硫酸アンモニウムあるいはカリウム、過酸化水素,ベンゾイルペルオキサイド、ラウロイルペルオキサイド、オクタノイルペルオキサイド、サクシニックペルオキサイド、t-ブチルペルオキシ2−エチルヘキサノエ−トなどをあげることができる。
【0032】
本発明の単量体混合物水溶液合計濃度(重量%)としては、該水溶液の重量に基づいて通常50以上、好ましくは55以上、より好ましくは5
8以上、特に好ましくは60以上、最も好ましくは65以上であり、通常90以下、好ましくは85以下、より好ましくは82以下、特に好ましくは80以下、最も好ましくは78以下である。合計濃度(重量%)が50未満では生産性が悪いだけでなく、重合槽や撹拌羽根へゲルが付着し易いため収率が低下し、また9 0を越えると開始剤や連鎖移動剤が充分に拡散しないため、重合が完結せずに途中で停止するといった問題がある。これらの単量体を重合して得られる水溶性高分子の分子量は、好ましくは300万〜2000万の範囲である。
【0033】
本発明の疎水性分散媒としては、脂肪族炭化水素(炭素数5〜12、例えば、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン等)
、脂環式炭化水素(炭素数5〜12、例えば、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、メチルシクロヘキサン、シクロオクタン等)、芳香族炭化水素(炭素数6〜12、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等)、脂肪族ケトン(炭素数3〜10例えばメチル−n−プロピルケトン、ジエチルケトン等)、脂環式ケトン(炭素数5〜10、例えばシクロペンタノン、シクロヘキサノン等)、芳香族ケトン(炭素数8〜13、例えばアセトフェノン、ベンゾフェノン等)、脂肪族エーテル(炭素数4〜8、例えば、ジ−n−プロピルエーテル、ジ−n−ブチルエーテル等)、芳香族エーテル(炭素数7〜12、例えば、アニソール等)、脂肪族エステル(炭素数3〜10、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル等)、脂環式エステル(炭素数7〜12、例えば、酢酸シクロヘキシル、シクロヘキサンカルボン酸メチル等)、芳香族エステル(炭素数8〜13、例えば、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸n−ブチル、酢酸ベンジル、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート等)が挙げられる。これらの内、比較的高分子量体が得やすい点、又は製造時の取り扱い上の点から、好ましいものは脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素であり、より好ましくはシクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、n−ヘキサン、n−
ヘプタン、n−デカンである。また分散媒は1 種又は2 種以上の混合物として使用しても良い。
【0034】
分散媒の使用量(重量%)は、分散系の安定化の観点から単量体水溶液混合物の重量に基づいて、好ましくは25以上、さらに好ましくは40以上、特に好ましくは65以上であり、好ましくは1,000以下、さらに好ましくは400以下、特に好ましくは200以下である。
【0035】
本発明で用いる分散剤としては、アルケンとα,β−不飽和多価カルボン酸(無水物)との共重合体又はその誘導体が用いられる。アルケンとしては、炭素数が10
以上100以下の炭化水素が使用できる。アルケンとしては、分散安定性の観点から、炭素数が好ましくは12以上、より好ましくは16以上、特に好ましくは18以上、最も好ましくは20以上であり、好ましくは60以下、より好ましくは50以下、特に好ましくは45以下、最も好ましくは40以下である。これらは単独でも良いが、混合物となっていても良い。具体的な好ましい例としては、炭素数20以上40以下の1−オレフィン、及びそれらの混合物が挙げられる。
【0036】
α,β−不飽和多価カルボン酸(無水物)としては、(無水)マレイン酸、(無水)シトラコン酸、(無水)イタコン酸等が挙げられる。これらの内で、分散安定性の観点から、好ましくは(無水)マレイン酸である。これらは単独で用いても良いが、2種以上の併用でも良い。
【0037】
上記共重合体の誘導体としては、共重合体の部分エステル化物、部分アミド化物、部分中和物が挙げられる。部分エステル化物としては、共重合体のモノメチルエステル、モノエチルエステル、モノブチルエステル等が挙げられる。部分アミド化物としては、モノエチルアミド、モノプロピルアミド、モノブチルアミド等が挙げられる。部分中和物としてはアルカリ金属(リチウム、ナトリウム、カリウム等)、アルカリ土類金属(マグネシウム、カルシウム等)、アンモニウム等の中和物が挙げられる。これらの誘導体は1
種又は2 種以上併用しても良い。部分エステル化、部分アミド化又は部分中和の割合(モル%)としては、分散剤中のα,β−不飽和多価カルボン酸(無水物)のモル数に対して、好ましくは5以上、より好ましくは10以上であり、好ましくは70以下、より好ましくは50以下である。
【0038】
共重合体のアルケンとα ,β−不飽和多価カルボン酸(無水物)との共重合体組成比(重量比)は、好ましくは10以上99以下/1以上90以下、より好ましくは20以上99以下/1以上80以下、特に好ましくは30以上99以下/
1以上70以下、最も好ましくは50以上99以下/1以上50以下である。
【0039】
分散剤の重量平均分子量は、分散安定性の観点から、好ましくは1,000以上、より好ましくは2,000以上、特に好ましくは3,000以上、最も好ましくは5,000以上であり、好ましくは100,000以下、より好ましくは50,000以下、特に好ましくは30,000以下、最も好ましくは10,000以下である。
【0040】
分散剤の使用量(重量%)は、疎水性分散媒の重量に対して、分散安定性及び粒径制御の観点から、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.1以上、特に好ましくは0.5以上、最も好ましくは1以上であり、好ましくは10以下、より好ましくは8以下、特に好ましくは5以下、最も好ましくは3以下である。
【0041】
分散剤は、必要により公知の油溶性高分子物質と併用してもよく、その場合油溶性高分子物質の割合(重量%)は、分散剤に対して、通常0以上、好ましくは1以上、さらに好ましくは5以上であり、通常100以下、好ましくは80以下、さらに好ましくは60以下、特に好ましくは40以下である。
【0042】
油溶性高分子物質としては、セルロースエーテル(
例えば、エチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロースなど)、ショ糖脂肪酸エステル(例えば、ショ糖ジステアレート、ショ糖トリステアレートなど)、ソルビタン脂肪酸エステル(例えば、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレートなど)、ポリグリセリン脂肪酸エステル(例えば、モノステアリン酸グリセリンなど)、などが挙げられる。これらの内で、製造時における装置への粒子付着防止の観点から、好ましくはショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステルであり、特に好ましくはショ糖脂肪酸エステルである。
【0043】
本発明の逆相懸濁重合方法としては、上記単量体水溶液混合物、疎水性分散媒及び分散剤を用いる以外は公知の方法(例えば、特許文献4参照)が利用できる。具体的には、上述の疎水性分散媒と分散剤を重合槽に加え、必要に応じて加熱しながら予め溶解せしめ、所定の重合温度に調整し槽内を不活性ガス(例えば窒素等)で十分置換する。予め調製した上述の単量体水溶液混合物および重合開始剤を不活性ガスで十分置換した後、撹拌下で重合槽内に加え、油中水型で懸濁させながら重合する。この時単量体水溶液混合物および重合開始剤の投入は、一括で投入しても滴下しながら徐々に投入しても良い。また単量体水溶液混合物および重合開始剤はあらかじめ均一に混合してもよいし、直前に混合してもよいし、別々に同時滴下しても良い。滴下時間はモノマー濃度、及び重合反応発熱量により異なるが、通常0.5〜20時間、好ましくは1〜10時間である。
【0044】
逆相懸濁重合の重合温度(℃ )は、分子量又は粒子安定性の点から、好ましくは10以上、より好ましくは30以上、特に好ましくは40以上、最も好ましくは50以上であり、好ましくは95以下、より好ましくは80以下、特に好ましくは70以下、最も好ましくは60以下である。また、重合中は所定重合温度を一定(
例えば、所定重合温度±5℃)に保つ様、適宜加熱、冷却して調節することが好ましい。
【0045】
重合後のポリマーは、通常直径0.1〜3.0mmの真球状又は真球状の一次粒子が凝集した形態(
例えば、葡萄房状)になった含水ゲルとして得られる。得られた含水ゲルは通常ろ過又は遠心分離により固液分離した後、乾燥させる。但し、重合時において分散媒の水との共沸により脱水が可能な場合は、重合終了後、還流下で所定量の含水率(例えば、10重量%
以下)まで水を留去し、固液分離後における溶剤除去のための乾燥を行うだけで乾燥ポリマーを得ることができる。
【0046】
含水ゲルの乾燥法としては、熱風乾燥、赤外線乾燥、間接加熱乾燥(真空乾燥、攪拌型の乾燥機、ドラムドライヤー)等が挙げられ、乾燥速度の観点から好ましいのは攪拌型の乾燥機である。
【0047】
乾燥機内の設定温度(℃)は、乾燥速度の観点から、40℃以上が好ましく、さらに好ましくは50℃以上、特に好ましくは70℃以上であり、高分子凝集剤の水に対する溶解性の観点から150℃以下が好ましく、さらに好ましくは12
0℃以下、特に好ましくは100℃以下である。
【0048】
乾燥中の乾燥機内の圧力(kPa)は、特に制限はないが、10kPa以上が好ましく、さらに好ましくは65kPa以上、特に好ましくは90kPa以上であり、110kPa以下が好ましく、さらに好ましくは105kPa以下、特に好ましくは102kPa以下である。乾燥時間は乾燥能力にもよるが、1分以上が好ましく、さらに好ましくは3分以上、特に好ましくは5分以上であり、5時間以下が好ましく、さらに好ましくは4時間以下、特に好ましくは3時間以下である。
【0049】
本発明の高分子凝集剤の平均粒径(μm)は、重合時の粒子安定性又は製品のハンドリングの点から、好ましくは50以上、より好ましくは100以上、特に好ましくは200以上、最も好ましくは300 以上であり、好ましくは2,00 0以下、より好ましくは1,500以下、特に好ましくは1,000以下、最も好ましくは800以下である。また、これらの粒子は真球状となっていても良く、真球状の一次粒子が凝集した形態( 例えば、葡萄房状)となっていても良い。
【0050】
本発明の汚泥の脱水方法は、請求項1〜2に記載の粉末からなるイオン性水溶性高分子を水に溶解した後、汚泥に添加し凝集させ脱水機により脱水する方法である。汚泥の種類としては特に制限はなく、製紙排水、化学工業排水、食品工業排水などの生物処理したときに発生する余剰汚泥、あるいは都市下水の生汚泥、混合生汚泥、余剰汚泥、消化汚泥などの有機汚泥に使用することができる。
【0051】
本発明の粉末からなるイオン性水溶性高分子は、水に溶解した後、汚泥脱水および製紙スラッジに添加し凝集させ脱水機により脱水する方法である。汚泥脱水および製紙スラッジの脱水に用いる脱水機の種類としては特に制限はなく、ベルトプレス、スクリュープレス、ロータリープレス、フィルタープレスなどの圧搾脱水装置、または遠心分離機、真空濾過機などの圧力脱水装置が例として挙げられる。
【0052】
本発明の汚泥の脱水方法および製紙スラッジの脱水方法において、特に好適に使用できる脱水機としては、請求項1〜2に記載の粉末からなるイオン性水溶性高分子の電荷内包率と脱水効果の挙動を考慮すると、電荷内包率が35%以上90%以下の範囲では、添加量の増大とともに巨大で強固なフロックを形成する特徴があり、それに伴って脱水の初期濾水量が増大することから、強固なフロックや初期脱水性能が要求されるスクリュープレス脱水機およびロータリープレス脱水機が挙げられる。
【0053】
本発明の汚泥の脱水方法および製紙スラッジの脱水方法は、請求項1〜2に記載の粉末からなるイオン性水溶性高分子の他に有機もしくは無機の凝結剤を併用することが可能である。有機凝結剤の例としてはとしてはカチオン性を有する高分子が挙げられ(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリドといった、(メタ)アクリロイルオキシアルキルトリアルキルアンモニウムハライド類やジアリルジメチルアンモニウムクロリドといったジアリルアミン化合物などが挙げられ、無機凝結剤の例としては、ポリ塩化アルミニウムや塩化第二鉄、硫酸第二鉄といった金属塩が挙げられる。
【0054】
本発明の製紙方法は、請求項1〜2に記載の粉末からなるイオン性水溶性高分子を水に溶解した後、抄紙前の製紙原料中に添加し使用する方法である。製紙原料の種類に特に制限はなく、クラフトパルプ、BKP、TMP、DIPなどのパルプを用いることができ、電荷内包率が35%以上90%以下のイオン性水溶性高分子に対して、DIPなどの短繊維分を多いパルプ、TMPなどのアニオン性物質を多く含有するパルプ、あるいはパルプの他に填料を多く含む原料を用いる場合、特に好適である。
【0055】
填料の種類は特に制限は無く、炭酸カルシウム、タルク、カオリン、酸化チタンなどが挙げられる。また、抄紙時のpHにも制限はなく酸性、中性条件での抄紙も可能である。本発明のイオン性水溶性高分子を用いる場合、特に炭酸カルシウムを多く使用する中性抄紙条件での填料歩留率の向上に用いることが好適である。
【0056】
本発明の粉末からなるイオン性水溶性高分子の水溶液をパルプスラリーに添加して抄造し、紙を製造することができるが、添加場所は特に制限されないが、種箱、マシンチェスト、スクリーンの入り口あるいは出口等が想定される。イオン性水溶性高分子をパルプ重量に対し10〜500ppm添加して使用することが好ましい。
【0057】
本発明の粉末からなるイオン性水溶性高分子の水溶液を用いた製紙方法は、無機及び/または有機のアニオン性物質と組み合わせて使うことが可能である。無機のアニオン性物質の例としては、コロイダルシリカあるいはベントナイトが例示され、有機のアニオン性物質としては、一般式(3)で表せるアニオン性単量体3〜100mol%と水溶性の非イオン性単量体の共重合物が例示できる。
【0058】
一般式(3)で表されるアニオン性単量体3〜100mol%と水溶性の非イオン性単量体の共重合物の形態に特に制限は無く、ペースト状水溶液、油中水型エマルジョン、水性分散液等が挙げられ、いずれも水に溶解した水溶液として添加できる。添加場所については特に制限はなく、カチオン性水溶性高分子の添加前あるいは添加後あるいは同時に添加することが可能であるし、両者の水溶液もしくは分散液を混合して用いることも可能である。
【0059】
(実施例)以下、実施例および比較例によって本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に制約されるものではない。
【実施例1】
【0060】
(イオン性水溶性高分子粉末の製造例1)イオン交換水1.21g、50重量%アクリルアミド水溶液67.80g、80重量%アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド水溶液28.87g、0.1重量%メチレンビスアクリルアミド水溶液0.11gおよび10重量%ギ酸ナトリウム水溶液0.86gを仕込んだ単量体水溶液混合物に、10重量%2、2’−アゾビス(アミジノプロパン)二塩化水素化物水溶液1.14gを加えて均一溶液とした。別に攪拌翼、還流冷却管、温度計、窒素導入管、滴下配管を備えた四つ口セパラブルフラスコにシクロヘキサン200.00gを仕込み、これにアルカンと無水マレイン酸の共重合物(三菱化学製:商品名「PA30」)2.00gを仕込み回転数200rpmで攪拌しながらフラスコ内を窒素置換した後、55℃まで昇温した。55℃到達後、前述の水溶液混合物を滴下配管より120分間かけて全量滴下した。滴下完了後60分間70℃で攪拌を継続し、重合を完結させた。重合後の樹脂スラリーをデカンテーションにより固液分離した後、真空乾燥機内で50℃、4時間乾燥しイオン性水溶性高分子の粉末を得た。このものを製造例1とし物性を表1に示す。
【0061】
(イオン性水溶性高分子粉末の製造例2)イオン交換水0.26g、50重量%アクリルアミド水溶液27.12g、80重量%アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド水溶液69.30g、0.1重量%メチレンビスアクリルアミド水溶液0.90gおよび10重量%ギ酸ナトリウム水溶液1.04gを仕込んだ単量体水溶液混合物に、10重量%2、2’−アゾビス(アミジノプロパン)二塩化水素化物水溶液1.38gを加えて均一溶液とした。以上の仕込み以外は製造例1と同様な方法でイオン性水溶性高分子の粉末を得た。このものを製造例2とし物性を表1に示す。
【0062】
(イオン性水溶性高分子粉末の製造例3)イオン交換水2.00g、50重量%アクリルアミド水溶液12.10g、80重量%アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド水溶液82.44g、0.1重量%メチレンビスアクリルアミド水溶液0.94gおよび10重量%ギ酸ナトリウム水溶液1.08gを仕込んだ単量体水溶液混合物に、10重量%2、2’−アゾビス(アミジノプロパン)二塩化水素化物水溶液1.44gを加えて均一溶液とした。以上の仕込み以外は製造例1と同様な方法でイオン性水溶性高分子の粉末を得た。このものを製造例3とし物性を表1に示す。
【0063】
(比較例1)(イオン性水溶性高分子粉末の比較製造例1)イオン交換水を1.29g、0.1重量%メチレンビスアクリルアミド水溶液を0.03gに変えたこと以外は、水溶性高分子粉末の製造例1と同様な方法でイオン性水溶性高分子の粉末を得た。このものを比較製造例1とし物性を表1に示す。
【0064】
(イオン性水溶性高分子粉末の比較製造例2)イオン交換水を1.12g、0.1重量%メチレンビスアクリルアミド水溶液を0.04gに変えたこと以外は、水溶性高分子粉末の製造例2と同様な方法でイオン性水溶性高分子の粉末を得た。このものを比較製造例2とし物性を表1に示す。
【0065】
(イオン性水溶性高分子粉末の比較製造例3)イオン交換水を2.89g、0.1重量%メチレンビスアクリルアミド水溶液を0.04gに変えたこと以外は、水溶性高分子粉末の製造例3と同様な方法でイオン性水溶性高分子の粉末を得た。このものを比較製造例3とし物性を表1に示す。
【0066】
(表1)

【実施例2】
【0067】
製造例2で合成した粉末からなるイオン性水溶性高分子を水で溶解し0.2重量%の水溶液を調製し汚泥の脱水試験を行った。し尿余剰汚泥(pH7.06、全ss分46,250mg/L)を200mLポリビーカーに採取し、前記製造例2のイオン性水溶性高分子粉末の溶解液を汚泥に対する高分子の重量で370ppm、400ppmおよび430ppm添加し、それぞれビーカー移し変え攪拌20回行った後、T−1178Lのナイロン濾布で濾過し、45秒後の濾液量を測定した。また濾過した汚泥のケーキ支持性(脱水ケーキの硬さ)を観察した後、プレス圧2kg/mで1分間脱水し濾布剥離性を確認し、ケーキ含水率(105℃、20時間乾燥)を測定した。結果を表2に示す。
【0068】
(比較例2)イオン性水溶性高分子粉末を比較製造例2としたこと以外は、実施例2と同様な方法で汚泥の脱水試験を行った。結果を表2に示す。


【0069】
(表2)

【0070】
表2で示した通り製造例2と比較製造例2のイオン性水溶性高分子粉末を比較すると、電荷内包率の高い製造例2イオン性水溶性高分子粉末の方が45秒後濾液量が多く、ケーキ支持性、濾布剥離性に優れ、脱水ケーキの含水率が大きく低減することが出来ることが明白である。
【実施例3】
【0071】
製造例3で合成した粉末からなるイオン性水溶性高分子を水で溶解し0.2重量%の水溶液を調製し汚泥の脱水試験を行った。食肉余剰汚泥(pH6.64、全ss分24,000mg/L)を200mLポリビーカーに採取し、前記製造例3のイオン性水溶性高分子粉末の溶解液を汚泥に対する高分子の重量で400ppm、500ppmおよび600ppm添加し、それぞれCST1000rpmで30秒間攪拌混合を行った後#202のナイロン濾布で濾過し、45秒後の濾液量を測定した。また濾過した汚泥のケーキ支持性(脱水ケーキの硬さ)を観察した後、プレス圧3kg/mで30秒間脱水し濾布剥離性を確認し、ケーキ含水率(105℃、20時間乾燥)を測定した。結果を表3に示す。
【0072】
(比較例3)イオン性水溶性高分子粉末を比較製造例3としたこと以外は、実施例3と同様な方法で汚泥の脱水試験を行った。結果を表3に示す。
【0073】
(表3)

【0074】
表3で示した通り製造例3と比較製造例3のイオン性水溶性高分子粉末を比較すると、電荷内包率の高い製造例3のイオン性水溶性高分子粉末の方が特に高添加量範囲での45秒後濾液量が極度に多く、ケーキ支持性、濾布剥離性に優れ、脱水ケーキの含水率が大きく低減することが出来ることが明白である。
【実施例4】
【0075】
製造例1で合成したイオン性水溶性高分子粉末を水で溶解し0.2重量%の水溶液を調製し製紙スラッジの脱水試験を行った。製紙スラッジ(pH6.90、全ss分11,750mg/L)を200mLポリビーカーに採取し、アニオン性高分子凝集剤(ハイモロックV−320)の0.1重量%水溶液を汚泥に対して高分子の重量で5ppm、10ppmおよび20ppm添加した後、前記製造例1のイオン性水溶性高分子粉末の溶解液を汚泥に対する高分子の重量でそれぞれ10ppm、20ppm、40ppm添加し、それぞれスパチュラで50回攪拌しさらにビーカー移し変え6回行った後#202のナイロン濾布で濾過し、45秒後の濾液量を測定した。また濾過した汚泥のケーキ支持性(脱水ケーキの硬さ)を観察した後、プレス圧4kg/mで60秒間脱水し濾布剥離性を確認し、ケーキ含水率(105℃、20時間乾燥)を測定した。結果を表4に示す。
【0076】
(比較例4)製造例1のイオン性水溶性高分子粉末を比較製造例1としたこと以外は、実施例4と同様な方法で製紙スラッジの脱水試験を行った。結果を表4に示す。
【0077】
(表4)

【0078】
表4で示した通り製造例1と比較製造例1のイオン性水溶性高分子粉末を比較すると、電荷内包率の高い製造例1のイオン性水溶性高分子粉末の方は45秒後濾液量に大きな差は無いものの、ケーキ支持性、濾布剥離性に優れ、脱水ケーキの含水率が大きく低減することが出来る、カチオン性高分子の添加量を低減することが可能であることが明白である。
【実施例5】
【0079】
製造例1で合成した粉末からなるイオン性水溶性高分子を水で溶解し0.2重量%の水溶液を調製し、カナディアンスタンダードフリーネス400mlに叩解したLBKPを用いて抄紙試験およびブリット式ダイナミックジャーテスターによる歩留試験を行った。LBKPを1.0%濃度とした後、市販の炭酸カルシウムをパルプ重量に対して20%、硫酸アルミニウム(Al分として8.0%)を対パルプ重量1.2%添加して硫酸でpH7.5に調整した。この製紙原料に前記製造例1のイオン性水溶性高分子粉末溶解液をパルプ重量に対して高分子の重量で200ppmになるように添加した後30秒攪拌した。その後、タッピスタンダードシートマシンで坪量80g/mとなるように抄紙し、得られた湿紙を4Kg/cmで5分間プレス後、105℃回転式ドライヤーで3分間乾燥し手抄き紙を得た。この手抄き紙を20℃、65% HRの条件下に24時間調湿した後、成紙の地合いの様子、不透明度およびISO白色度を評価した。結果を表5に示す。
【0080】
LBKPを0.5%濃度とした後、市販の炭酸カルシウムをパルプ重量に対して20%、硫酸アルミニウム(Al2O3分として8.0%)を対パルプ重量1.2%添加して硫酸でpH7.5に調整した。この製紙原料をブリット式ダイナミックジャーテスターに投入し、前記製造例1のイオン性水溶性高分子粉末溶解液をパルプ重量に対して高分子の重量で200ppmになるように添加した。2000rpmで30秒攪拌した後、攪拌回転数を800rpmに落とし白水を10秒間排出し、その後、30秒間白水を回収した。回収した白水のSS濃度および525℃で2時間灰化して得られた灰分量から、製紙原料の総歩留率および灰分歩留率を求めた。結果を表5に示す。
【0081】
(比較例5)製造例1のイオン性水溶性高分子粉末を比較製造例1としたこと以外は、実施例5と同様な方法で抄紙試験および歩留試験を行い、成紙の地合いの様子、不透明度、ISO白色度、製紙原料の総歩留率および灰分歩留率を求めた。結果を表5に示す。
【0082】
(表5)

【0083】
表5で示した通り製造例1と比較製造例1のイオン性水溶性高分子粉末を比較すると、電荷内包率の高い製造例1のイオン性水溶性高分子粉末の方は地合い評価、不透明度、ISO白色度、総歩留率および灰分歩留率について比較製造例1のイオン性水溶性高分子より優位にあることが明白である。
【実施例6】
【0084】
水で2.0重量%に調整したベントナイト分散液および製造例1で合成した粉末からなるイオン性水溶性高分子を水で溶解し0.2重量%とした水溶液を調製し、カナディアンスタンダードフリーネス400mlに叩解したLBKPを用いて抄紙試験およびブリット式ダイナミックジャーテスターによる歩留試験を行った。LBKPを1.0%濃度とした後、市販の炭酸カルシウムをパルプ重量に対して20%、硫酸アルミニウム(Al分として8.0%)を対パルプ重量1.2%添加して硫酸でpH7.5に調整した。この製紙原料に前記ベントナイト分散液をパルプ重量に対してベントナイト1000ppmとなるように添加した後15秒攪拌し、次に製造例1のイオン性水溶性高分子粉末溶解液をパルプ重量に対して高分子の重量でそれぞれ100ppmおよび200ppmになるように添加した後さらに2000rpmで30秒攪拌した。その後、タッピスタンダードシートマシンで坪量80g/mとなるように抄紙し、得られた湿紙を4Kg/cmで5分間プレス後、105℃回転式ドライヤーで3分間乾燥し手抄き紙を得た。この手抄き紙を20℃、65% HRの条件下に24時間調湿した後、成紙の地合いの様子、不透明度およびISO白色度を評価した。結果を表6に示す。
【0085】
LBKPを0.5%濃度とした後、市販の炭酸カルシウムをパルプ重量に対して20%、硫酸アルミニウム(Al2O3分として8.0%)を対パルプ重量1.2%添加して硫酸でpH7.5に調整した。この製紙原料をブリット式ダイナミックジャーテスターに投入し、前記ベントナイト分散液をパルプ重量に対してベントナイト1000ppmとなるように添加した後2000rpmで15秒攪拌し、次に製造例1のイオン性水溶性高分子粉末溶解液をパルプ重量に対して高分子の重量でそれぞれ100ppmおよび200ppmになるように添加した。次に、2000rpmで30秒攪拌した後、攪拌回転数を800rpmに落とし白水を10秒間排出し、その後、30秒間白水を回収した。回収した白水のSS濃度および525℃で2時間灰化して得られた灰分量から、製紙原料の総歩留率および灰分歩留率を求めた。結果を表6に示す。
【0086】
(比較例6)ベントナイトを添加しないこと以外は、実施例6と同様な方法で抄紙試験および歩留試験を行い、成紙の地合いの様子、不透明度、ISO白色度、製紙原料の総歩留率および灰分歩留率を求めた。結果を表6に示す。
【0087】
(比較例7)製造例1のイオン性水溶性高分子粉末を比較製造例1としたこと以外は、実施例6と同様な方法で抄紙試験および歩留試験を行い、成紙の地合いの様子、不透明度、ISO白色度、製紙原料の総歩留率および灰分歩留率を求めた。結果を表6に示す。
【0088】
(表6)

【0089】
表6で示したように、実施例6は比較例6および7と比較して、総歩留率、灰分歩留率を大きく向上する効果が得られることが明白である。特に、灰分の歩留向上効果が高い。
【実施例7】
【0090】
水で0.2重量%に調整したアニオン性高分子(アクリル酸ナトリウム20mol%−アクリルアミド80mol%共重合物、0.5重量%食塩水溶液粘度120.0(mPa・s)(食塩濃度4重量%、B型粘度計2号ローター、60rpm、25℃測定))および、製造例1で合成したイオン性水溶性高分子粉末を水で溶解し0.2重量%とした水溶液を調製し、カナディアンスタンダードフリーネス400mlに叩解したLBKPを用いて抄紙試験およびブリット式ダイナミックジャーテスターによる歩留試験を行った。LBKPを1.0%濃度とした後、市販の炭酸カルシウムをパルプ重量に対して20%、硫酸アルミニウム(Al分として8.0%)を対パルプ重量1.2%添加して硫酸でpH7.5に調整した。この製紙原料に前記アニオン性高分子水溶液をパルプ重量に対してアニオン性高分子100ppmとなるように添加した後15秒攪拌し、次に製造例1のイオン性水溶性高分子粉末溶解液をパルプ重量に対して高分子の重量でそれぞれ100ppmおよび200ppmになるように添加した後さらに2000rpmで30秒攪拌した。その後、タッピスタンダードシートマシンで坪量80g/mとなるように抄紙し、得られた湿紙を4Kg/cmで5分間プレス後、105℃回転式ドライヤーで3分間乾燥し手抄き紙を得た。この手抄き紙を20℃、65% HRの条件下に24時間調湿した後、成紙の地合いの様子、不透明度およびISO白色度を評価した。結果を表7に示す。
【0091】
LBKPを0.5%濃度とした後、市販の炭酸カルシウムをパルプ重量に対して20%、硫酸アルミニウム(Al2O3分として8.0%)を対パルプ重量1.2%添加して硫酸でpH7.5に調整した。この製紙原料をブリット式ダイナミックジャーテスターに投入し、前記アニオン性高分子溶解液をパルプ重量に対してアニオン性高分子重量で100ppmとなるように添加した後2000rpmで15秒攪拌し、次に製造例1のイオン性水溶性高分子粉末溶解液をパルプ重量に対して高分子の重量でそれぞれ100ppmおよび200ppmになるように添加した。次に、2000rpmで30秒攪拌した後、攪拌回転数を800rpmに落とし白水を10秒間排出し、その後、30秒間白水を回収した。回収した白水のSS濃度および525℃で2時間灰化して得られた灰分量から、製紙原料の総歩留率および灰分歩留率を求めた。結果を表7に示す。
【0092】
(比較例8)アニオン性高分子を添加しないこと以外は、実施例7と同様な方法で抄紙試験および歩留試験を行い、成紙の地合いの様子、不透明度、ISO白色度、製紙原料の総歩留率および灰分歩留率を求めた。結果を表7に示す。
【0093】
(比較例9)製造例1のイオン性水溶性高分子粉末を比較製造例1としたこと以外は、実施例7と同様な方法で抄紙試験および歩留試験を行い、成紙の地合いの様子、不透明度、ISO白色度、製紙原料の総歩留率および灰分歩留率を求めた。結果を表7に示す。
【0094】
(表7)

【0095】
表7で示したように、実施例7は比較例8および9と比較して、総歩留率、灰分歩留率を大きく向上する効果が得られることが明白である。実施例6と同様に、本発明の粉末からなるイオン性水溶性高分子は特に灰分の歩留向上効果が高い。












【特許請求の範囲】
【請求項1】
分散剤および疎水性分散媒を含有する連続相と、カチオン性単量体および複数の不飽和二重結合を有する多官能性単量体を必須として含有する分散相とからなる分散液を逆相懸濁重合させた後、得られる重合体を乾燥したイオン性高分子の粉末であって、イオン性高分子の電荷内包率が35%以上90%以下であることを特徴とする粉末からなるイオン性水溶性高分子。
【請求項2】
前記イオン性高分子が、下記一般式(1)及び/または(2)であらわされる単量体5〜100mol%、下記一般式(3)であらわされる単量体0〜50mol%および水溶性の非イオン性単量体0〜95mol%および複数の不飽和二重結合を有する多官能性単量体を共重合して得られることを特徴とする、請求項1に記載の粉末からなるイオン性水溶性高分子。
【化1】

一般式(1)
は水素又はメチル基、R、Rは炭素数1〜3のアルキル基、アルコキシル基あるいはベンジル基、Rは水素、炭素数1〜3のアルキル基、アルコキシル基あるいはベンジル基であり、同種でも異種でも良い。AはOまたはNH、Bは炭素数2〜4のアルキレン基またはアルコキシレン基、Xは陰イオンをそれぞれ表す。




【化2】

一般式(2)
、Rは水素又はメチル基、R、Rは炭素数1〜3のアルキル基、アルコキシ基あるいはベンジル基、Xは陰イオンをそれぞれ表す。
【化3】

一般式(3)
は水素またはCHCOOY、R10は水素、メチル基またはCOOY、QはSO、CSO、CONHC(CHCHSO、CCOOあるいはCOOであり、Yは水素または陽イオンをそれぞれ表す。
【請求項3】
請求項1〜2に記載の粉末からなるイオン性水溶性高分子を水に溶解した後、汚泥に添加し凝集させ脱水機により脱水することを特徴とした汚泥の脱水方法。
【請求項4】
請求項1〜2に記載の粉末からなるイオン性水溶性高分子を水に溶解した後、製紙スラッジに添加し凝集させ脱水機により脱水することを特徴とした製紙スラッジの脱水方法。
【請求項5】
請求項1〜2に記載の粉末からなるイオン性水溶性高分子を水に溶解した後、抄紙前の製紙原料中に添加し使用することを特徴とした製紙方法。
【請求項6】
無機及び/または有機のアニオン性物質と組み合わせて使うことを特徴とした、請求項5記載の製紙方法。
【請求項7】
前記アニオン性物質がコロイダルシリカあるいはベントナイトであることを特徴とする、請求項6記載の製紙方法。
【請求項8】
前記アニオン性物質が、下記一般式(3)で表わされる単量体3〜100mol%と水溶性の非イオン性単量体の重合物であることを特徴とする、請求項6記載の製紙方法。
【化3】

一般式(3)
は水素またはCHCOOY、R10は水素、メチル基またはCOOY、QはSO、CSO、CONHC(CHCHSO、CCOOあるいはCOOであり、Yは水素または陽イオンをそれぞれ表す。











【公開番号】特開2009−280648(P2009−280648A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−131695(P2008−131695)
【出願日】平成20年5月20日(2008.5.20)
【出願人】(000142148)ハイモ株式会社 (151)
【Fターム(参考)】