説明

粉末金属鍛造品とその製造方法及び製造装置

粉末金属鍛造品を成形する方法と装置は、第1の金型と、該第1の金型と縦方向に補足関係にある第2の金型とを有する、粉末金属鍛造品成形用の金型セットを含む。前記金型セットは、縦構成部分と横構成部分とを含む、少なくとも2つの寸法的凹凸を有し、少なくとも該横構成部分は縦方向に沿って変化し、少なくとも該凹凸の1つは、各金型内で変化する。前記第1の金型と前記第2の金型の各々は、前記第1の金型内の横に変化する内側における縦方向に設けられた凹凸を前記第2の金型内の横変化凹凸から切り裂くキャストレイテッド分割境界面を含む。前記金型内の前記切り裂きは、鍛造された粉末金属部品を前記金型内にトラップすることなく、該粉末金属部品に正反対ドラフトの凹凸を付与する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉末金属鍛造品に関し、より詳しくは、鍛造プロセスにおける横流動を有する粉末金属鍛造品に関する。
【背景技術】
【0002】
本願は、2006年12月12日付で出願されたアメリカ合衆国仮特許出願第60/869,659号を優先権として主張するものである。
【0003】
等速ジョイント(CVJ)の内側レースなどの粉末金属鍛造品の製造においては、時として、鍛造プレスから直接的にスルー硬化部品を供給することが望ましい。このためには、前記部品が鍛造工具から放出された後に、該部品が直接的に冷却されねばならない。そのような部品の鍛造においては、上方の金型が下方の金型に向けて下方向へ移動して、前記部品を形成するビレットを変形させる。その結果、CVJの内側レース用のベアリングレースのエリア内にある、上方の金型と下方の金型が出会う部品の側面上にフラッシュ(ばり)が形成される。前記部品が直接的に冷却された場合は、工具フラッシュが硬化状態にある。部品からフラッシュを取り去る方法であるハードトリミングは可能であるが、実用的な方法ではない。なぜなら、フラッシュはトリミングの硬度を上回り、作業者にとって危険な状況を発生させるとともに、製品の品質に悪い影響を与えるおそれがある。すなわち、トリミング中に部品が壊れて分解し、工具の場所から飛び出すおそれがある。さらに、ベアリングレースは高精度の表面であり、非常に複雑なので、一般にせん断に対して従順でない。
【0004】
CVJの内側レースを鍛造する方法は既知であり、分割された金型(6つの分割金型)が、昔からある冷間鍛造技術を用いて、CVJの内側レースを成形するのに使用される。しかしながら、この技術は、ブローチ機械(machine broach)と、比較的長い加炭プロセスを必要とする。さらに、部品上には、6つの分割金型に対応する6つの垂直当たり確認線がある。この方法のその他の欠点は、金型の寿命が比較的短い一方で、比較的複雑で高価な工具配備を必要とする点である。
【0005】
その上、CVJは、トラックの浅端部と深端部とが位置を互い違いにする、すなわち、1トラックおきに浅端部と深端部が存在する、交替又は反対ボールトラックを有することが知られている。例えば、特許文献1を参照のこと。そのようなデザインが、大きな関節角度と高トルク容量のために等速固定ジョイントに用いられる。このような装置を製造する方法の一つが、上述のように、鍛造プロセス後に分離される分割金型を用いる方法である。この方法は該プロセスを複雑にし、サイクル時間を遅くし、そして、金型の潤滑剤に起因する熱間鍛造雰囲気におけるシール面の汚染をもたらす。さらに、該プロセスは、CVJを製造するための冷間鍛造プロセスに用いられる。
【0006】
CVJの内側レースにおいて、交替ボールトラックによれば、ボールトラックの浅端部と深端部とが1トラックおきに存在するので、成形された内側レースは、鍛造プロセスにおける横方向の物質流れを有する。上方の金型が下方の金型に向かって下方向へ移動してビレットを変形させ、上方の金型と下方の金型とが出会う箇所の部分の側面にフラッシュ(ばり)が形成される上述のプロセスでは、鍛造中の横方向の物質流れにより、部品が成形された後に金型セットが分離できない。反対ボールトラックを有しない、棒材なし又は粉末金属部分なしの交替ボールトラックによってCVJを作ることは、高価で、かつ物質効率が低いが、可能である。
【0007】
したがって、この分野で従来から要求されているのは、サイクル時間を犠牲にすることなく、また、道具セットの単純性を維持しつつ、ニアネットシェイプの交替ボールレースCVJを与える、又は、鍛造プロセスにおける横方向の物質流れを含むその他の粉末金属部品を与えるデザインとプロセスである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第5,221,233号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明は、サイクル時間を犠牲にすることなく、また、道具セットの単純性を維持しつつ、ニアネットシェイプの交替ボールレースCVJを与える、又は、鍛造プロセスにおける横方向の物質流れを含むその他の粉末金属部品を与えるデザインとプロセスを提供するものである。
【0010】
また、本発明は、粉末金属鍛造品と、閉じた金型セットを含む製造方法と製造装置を提供するものであり、さらに、フラッシュの生成が極小又はフラッシュの生成がない高精度のフラッシュ粉末金属鍛造品を製造するために、閉じた金型セットの中で鍛造される粉末金属プリフォームを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一形態として本発明に含まれる粉末金属鍛造品成形用金型セットは、第1の金型と、該第1の金型と縦方向に嵌合する第2の金型と、を有する。この金型セットは、第1の金型から第2の金型まで縦方向に延長する少なくとも1つの横に変化する内側における縦方向に設けられた凹凸(laterally varying internal longitudinal feature)を有する。第1の金型と第2の金型の各々は、それぞれの横に変化する内側における縦方向に設けられた凹凸を第1の金型内の第1要素及び第2の金型内の第2要素へ切り裂くキャストレイテッド分割境界面(castellated parting interface)を含む。
【0012】
本発明の別の一形態として本発明に含まれる粉末金属鍛造品成形用金型セットは、第1の金型と、該第1の金型と縦方向に補足関係にある第2の金型とを有する。この金型セットは、第1の金型から第2の金型まで縦方向に延長する少なくとも1つの内側における縦方向に設けられた凹凸を有する。この少なくとも1つの内側における縦方向に設けられた凹凸は、縦方向に沿って変化する横構成部分を有する。
【0013】
本発明の他の一形態として本発明に含まれるキャストレイテッド金型セットは第1金型を含み、該第1金型は、縦方向と、該縦方向を横切る第1の複数の金型嵌め合い表面をもつ第1金型嵌め合い外形要素と、を有する。該第1の複数の金型嵌め合い表面は、少なくとも1つの第1表面と1つの第2表面とを有する。該第1表面は、縦方向において第1位置内にあり、該第2表面は、縦方向において第2位置内にある。該第1位置は、縦方向において該第2位置からオフセットされている。第2金型は、該縦方向を横切る第2の複数の金型嵌め合い表面をもつ第2金型嵌め合い外形要素を有する。該第2の複数の金型嵌め合い表面は、少なくとも、第3表面と第4表面とを有し、該第3表面は、前記第1位置と補足関係にある第3位置内にあり、該第4表面は、前記第2位置と補足関係にある第4位置内にある。
【0014】
本発明の他の一形態として本発明に含まれる粉末金属鍛造品の製造方法は、縦方向において第2金型と嵌め合う第1金型を含むキャストレイテッド金型セットを供給する工程と(ここで、該金型セットは、縦方向に該第1金型から該第2金型まで延長する少なくとも1つの横に変化する内側における縦方向に設けられた凹凸を有し、該第1金型と該第2金型の各々は、それぞれの横に変化する内側における縦方向に設けられた凹凸を該第1金型内の第1要素及び該第2金型内の第2要素へ切り裂くキャストレイテッド分割境界面を含む)、プリフォームを該第1金型内に挿入する工程と、該第1金型を該第2金型に接触させることにより、前記金型セットを閉じる工程と、そして、該プリフォームにパンチを押圧する工程と(ここで、該押圧工程は、前記閉鎖工程に続いて行われ、該プリフォームを粉末金属鍛造品に変える)、を含む。
【0015】
本発明の他の一形態として本発明に含まれる粉末金属鍛造品は、第1端部と、該第1端部の反対にある第2端部と、該第1端部と該第2端部とをつなぐ外側外形部と、を有する。この外側外形部は、少なくとも1つの外側における縦方向に設けられた凹凸を有する。該外側外形部は、少なくとも1つの外側における縦方向に設けられた凹凸を、該キャストレイテッド分割線(castellated parting line)から前記第1端部に向けて延長する第1構成部分と、該キャストレイテッド分割線から前記第2端部に向けて延長する第2構成部分と、に切り裂くキャストレイテッド分割線も有する。
【0016】
また、本発明が提供する粉末金属鍛造品は、第1端部と、該第1端部の反対にある第2端部と、該第1端部と該第2端部とをつなぐ外側外形部と、を有する。この外側外形部は、複数の縦凸部と複数の縦凹部とを含む。各縦凸部は、対応する1つの縦凹部により、他の縦凸部から分離されている。前記外側外形部は、前記複数の縦凸部と前記複数の縦凹部を切り裂くキャストレイテッド分割線を含む。
【0017】
本発明は、サイクル時間を犠牲にすることなく、また、道具セットの単純性を維持しつつ、ニアネットシェイプの交替ボールレースCVJを与える、又は、鍛造プロセスにおける横方向の物質流れを含むその他の粉末金属部品を与えるデザインとプロセスを提供する。本発明は、製造サイクル時間、製造部品の総コスト、部品成形に必要とされる道具の複雑さ等を低減させるものである。本発明は、冷間鍛造プロセスにおいて必要とされるよりも短いサイクル時間で、かつ、最小限度のストックリムーバルで、粉末鍛造プロセスに利用できる。本発明によれば、部品が工作道具と接触している時間を最小限度にできるので、道具コストが低減できる。
【0018】
また、本発明は、所望の場合、鍛造部品における内部スプラインを鍛造するのに利用できる。加えて、特にプリフォームの内径上の縦スプラインにより、鍛造操作における座屈(buckling)が皆無又は極少のプリフォームが成形できる。
【0019】
また、本発明は、最小限度のフラッシュの又はフラッシュのない高精度のフラッシュ粉末金属鍛造を提供するのに利用できる。本発明によれば、鍛造操作中の金属重なりや金属折り曲げを最少又は皆無にできるとともに、比較的高密度のプリフォームを使用することができる。本発明によって作られた鍛造品は、鍛造プロセス後、直ちに、例えば浸油などにより直接冷却できる。
【0020】
本発明は、交替ボールレースにより、等速ジョイントの内側レースを製造する際、コスト的に有効な方法を提供する。本発明は、その有利な点の幾つか又は全部を用いて、その他の複雑な部品を製造するのに利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1A〜1Fは、本発明による方法と装置の一実施形態を示す一連の断面模式図である。
【図2】図1A〜1Fに示された金型セットの断面斜視図である。
【図3】粉末金属プリフォームが挿入された状態の、図2の金型セットの断面斜視図である。
【図4】図1のキャストレイテッド上方金型の断片的な断面斜視図である。
【図5】図1のキャストレイテッド下方金型の断片的な断面斜視図である。
【図6】本発明による交替ボールレースを有するCVJ内側レースの斜視図である。
【図7】図6のCVJ内側レースの別の斜視図である。
【図8】図6のCVJ内側レースの断面斜視図である。
【図9】図6のCVJ内側レースの断面図である。
【図10】図1及び図3の粉末金属プリフォームの斜視図である。
【図11】図1及び図3の粉末金属プリフォームの別の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明の好ましい実施形態とその利点について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0023】
図1〜図6は粉末金属鍛造品Bを成形する方法と装置を示しており、図1Aにおいて、コア棒Eを用いてプリフォームBが金型キャビティ内へ装填される。プリフォームBとコア棒Eが、2つ又は1つの軸とハブとの間の駆動連結用のスプライン又は他の形状を定める。図1Bにおいて、上方の金型Aが降りてきて下方の金型Dと接触する。金型Aと金型Dとで金型セットが構成される。鍛造プロセスの初めから終わりまで、金型Aと金型Dを互いに接触させるのに十分な力がシリンダーCにかけられている。プレスサイクルにおいて、図1Aと図1Bに示された状態では、まだ何らの鍛造も行われていない。図1Cにおいて、上方の金型Aが降下し続けて、シリンダーCを圧縮するとともに、下方の金型Dを下方のパンチFの面へ降下させて、部品Bを最終的な鍛造サイズと形状になるように鍛造する。この工程の間、パンチFにより、プリフォームBの低いほうの部分が高いほうの部分へ押し上げられ、プリフォームBが縦方向に効果的に短くされて、縦方向及び横方向に金型のキャビティ内に充填され、最終的な鍛造サイズと形状にされる。
【0024】
図1Dにおいて、金型Aがその最上位置へ移動し、金型DがシリンダーCに駆動されてその最上位置へ移動する。そして、部品Bが一部分、コア棒Eから排出され、下方のパンチFから持ち上げられる。この排出のタイミングは、鍛造部品Bの底部と下方パンチFの頂面の間の空隙量を除去するように調整可能である。図1Eにおいて、下方パンチFが上昇して、下方の金型Dからの鍛造部品Bの排出が終了し、鍛造部品Bはコア棒Eから離れていく。鍛造部品Bは、適切な方法(通常、自動的な手段)でプレスから取り出される。図1Fにおいて、下方パンチFがその押圧位置まで降下され、第1の全プレスサイクルが終了する。
【0025】
図4〜図7に示されているように、粉末金属鍛造品B成形用のキャストレイテッド金型セットA,Dは、第1の金型Aと、該第1の金型Aと縦方向ZCに嵌合する第2の金型Dと、を有する。該金型セットは、第1の金型Aから第2の金型Dまで縦方向ZCに延長する少なくとも1つの横に変化する内側における縦方向に設けられた凹凸10を有する。第1の金型Aと第2の金型Dは、それぞれの横に変化する内側における縦方向に設けられた凹凸10を第1の金型A内の第1要素14及び第2の金型D内の第2要素16へ切り裂くキャストレイテッド分割境界面12,13を含む。このキャストレイテッド分割境界面12は、図4及び図5に示されているように、凹凸10の形状に依って、ほぼ方形波の形をしているか、又は、正弦形状或いはよりランダムなキャストレイション(castellation)の形状をしている。
【0026】
内側における縦方向に設けられた凹凸10は、縦方向ZCとは垂直な方向に広がり(extent)18を有しているとともに、縦方向ZCに沿って延長している。少なくとも1つの広がり18が、縦方向ZCに拡大及び/又は縮小している。このような金型構造が、特に図6及び図7に示された交替ボールレースを生み出し、該交替ボールレースにおいては、1トラックおきに浅端部と深端部が位置を交替している。言い換えれば、すべてのボールレースが横に変化し、隣接するボールレース同士が横に反対に変化する。つまり、1つの縦方向において1つのボールレースが横に幅広となり、これと隣接するボールレースが横に狭くなる。このような状態においては、金型が部品内にくさび留めされているので、単一の水平面上で分離された2つの金型は、部品を鍛造した後に開かない。しかるに、本発明による新規なキャストレイテッド金型セットは、CVJの粉末金属内側レース又は他の部品を鍛造するのに使用できる。ここで、他の部品とは、横構成部分が交互に又は反対に変化するボールレースを有する部品、又は、縦構成部分と横に変化する構成部分を有する寸法的特徴をもつ部品、あるいは、反対方向に先細りになるスペース内への横流れを含む他の粉末金属部品、すなわち、鍛造プロセスの間に、1つの縦方向においてスペースのある部分が横に小さくなり、該スペースの他の部分が横に大きくなるような粉末金属部品である。
【0027】
第1金型嵌め合い外形要素12は、該縦方向を横切る第1の複数の金型嵌め合い表面20,22を有し、該第1の複数の金型嵌め合い表面は、少なくとも1つの第1表面20と1つの第2表面22とを有する。第1表面20は縦方向ZCにおける第1位置にあるとともに、第2表面22は縦方向ZCにおける第2位置にあり、該第1位置は、縦方向において該第2位置からオフセットされている。
【0028】
同様に、第2の金型Dは、縦方向を横切る第2の複数の金型嵌め合い表面24,26を有する1つの第2金型嵌め合い外形要素13を含む。第3表面24は、第1表面20の第1位置と補足関係にある第3位置にあるとともに、第4表面26は、第2表面22の第2位置と補足関係にある第4位置にある。
【0029】
表面20,22,24,26は、キャストレイテッド分割境界面12,13を作るように、周期的な仕方で交替することができる。表面20,22,24,26は、前記縦方向に対してほぼ垂直であってよいが、このことは必ずしも必要ではない。分割境界面は、鍛造された部品が排出されるときに金型A、Dが鍛造部品内へくさび留めされることを防止するため、該分割境界面12,13から各金型の縦方向の端部までの方向において凹凸10が横に寸法減少しないように、言い換えれば、該方向において凹凸10が横に寸法不変又は寸法増加となるように、金型の横に変化する内側における縦方向に設けられた凹凸10を1つの点において切り裂いている。
【0030】
図6〜図9、特に図6に示されているように、粉末金属鍛造品Bは、第1端部28と、該第1端部28の反対側の第2端部30と、第1端部28と第2端部30とをつなぐ外側外形部32と、を含む。外側外形部32は、少なくとも1つの外側における縦方向に設けられた凹凸34と、キャストレイテッド分割線36とを有しており、該キャストレイテッド分割線36は、各凹凸34を、キャストレイテッド分割線36から前記第1端部28に向けて延長する第1構成部分38と、該キャストレイテッド分割線36から前記第2端部30に向けて延長する第2構成部分40と、に切り裂いている。
【0031】
各第1構成部分38は、キャストレイテッド分割線36から前記第1端部28にかけて減少していない第1の横広がり(lateral extent)42を有する。各第2構成部分40は、キャストレイテッド分割線36から前記第2端部30にかけて減少していない第2の横広がり44を有する。ここで、横方向とは、前記縦方向と平行でない方向のことであり、該縦方向とは、部品内の孔を貫通する軸に沿った方向のことである。そして、該縦方向は、金型が開閉する方向とも一致する。キャストレイテッド分割線36は、図示されているようにほぼ方形波の形をしているが、前記凹凸の形状や金型A、Dに依って、その他の多くの形状をとることができる。粉末金属鍛造品Bは、図示されているように、鍛造開始前に金型A、Dが閉じられているので、キャストレイテッド分割線36に沿ってフラッシュ(ばり)が最小限となる等速ジョイントの内側レースである。図6,7に示されている分割線36に沿った如何なるフラッシュも、鍛造後の処理により取り除かれるので、最終部品Bにおいて分割線36は視認されない。粉末金属鍛造品Bは、コア棒Eがスプラインされる内側スプライン46を有する。
【0032】
図10、図11に示されているように、プリフォームBは、圧縮されて焼成された粉末金属組成物を含む。例えば、粉末金属の組成は、約0.40%〜2.00%のNiと、約0.50%〜0.65%のMoと、約0.10%〜0.35%のMnと、約0.0%〜1.20%のCと、を含み、残余が鉄である。ここで、%とは重量%のことである。プリフォームBは円筒形ではなく、第1端部48と、該第1端部48の反対側の第2端部50と、第1端部48と第2端部50をつなぐ外側外形部52と、を含んでいる。この外側外形部52は、複数の縦凸部52と、複数の縦凹部54を含む。各縦凸部52は、対応する縦凹部54によって、他の縦凸部52から分離されている。
【0033】
内側外形部56は、第1端部48と第2端部50をつないでおり、該内側外形部56は、複数の縦スプライン58を有している。縦スプライン58は、特に鍛造プロセスの間、プリフォームBに強度を付与し、鍛造中にプリフォームが座屈することを防止する。一般に、材料の密度が高くなると材料の流動性は減少するけれども、比較的高い密度であることは、鍛造部品に良い特性を与えるので、プリフォームにとって有利なことである。したがって、縦スプライン58により付与されるこの付加的な強度によって、プリフォームBの密度は、約6.0g/cm3〜8.0g/cm3の範囲内、好ましくは約6.85g/cm3〜7.55g/cm3の範囲内の値となる。前記内側外形部は、プリフォームを金型内へ挿入するときにプリフォームを方位付けするのを容易にする不図示のキー溝(key way)も含む。
【0034】
以上、本発明の好ましい実施形態とその利点について、図面を参照しながら詳細に説明した。しかしながら、本発明はそのような実施形態だけに限定されない。本発明の主旨を逸脱しない範囲内で様々な変更や修正が可能である。
【符号の説明】
【0035】
A 上方の金型
B プリフォーム
C シリンダー
D 下方の金型
E コア棒
F 下方パンチ
10 内側における縦方向に設けられた凹凸
12 キャストレイテッド分割境界面
14 第1要素14
16 第2要素16
18 広がり
20,22 第1の金型嵌め合い表面
24,26 第2の金型嵌め合い表面
28 第1端部
30 第2端部
32 外側外形部
34 外側における縦方向に設けられた凹凸
36 キャストレイテッド分割線
38 第1構成部分
40 第2構成部分
42 第1の横広がり
44 第2の横広がり
46 内側スプライン
48 第1端部
50 第2端部
52 縦凸部
54 縦凹部
56 内側外形部
58 縦スプライン
【図1A】

【図1B】

【図1C】

【図1D】

【図1E】

【図1F】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の金型と、
前記第1の金型と縦方向に嵌合する第2の金型と、
前記第1の金型から前記第2の金型まで前記縦方向に延長する少なくとも1つの横に変化する内側における縦方向に設けられた凹凸と、
が設けられ、
前記第1の金型内の前記凹凸が、前記第2の金型内の前記凹凸とは反対に変化し、
前記第1の金型と前記第2の金型の各々が、前記横に変化する内側における縦方向に設けられた凹凸を他の前記横に変化する内側における縦方向に設けられた凹凸から切り裂くキャストレイテッド分割境界面を含み、そして、
前記第1の金型の前記分割境界面が、前記第2の金型の前記分割境界面と嵌合する
ことを特徴とする粉末金属鍛造品成形用キャストレイテッド金型セット。
【請求項2】
前記各キャストレイテッド分割境界面が、ほぼ方形波の形をしていることを特徴とする請求項1記載の金型セット。
【請求項3】
第1の金型と、
前記第1の金型と縦方向に嵌合する第2の金型と、
が設けられ、
前記第1の金型と前記第2の金型の各々が、前記縦方向に延長する少なくとも1つの内側における縦方向に設けられた凹凸を有し、
前記各凹凸の横広がりが変化し、そして、
前記凹凸は、横広がりが変化する方向において互いに正反対となっている
ことを特徴とする粉末金属鍛造品成形用金型セット。
【請求項4】
縦方向を有し、該縦方向を横切る第1の複数の金型嵌め合い表面をもつ第1金型嵌め合い外形要素を有する第1金型と、
前記縦方向を横切る第2の複数の金型嵌め合い表面をもつ第2金型嵌め合い外形要素を有する第2金型と、
が設けられ、
前記第1の複数の金型嵌め合い表面は、少なくとも1つの第1表面と1つの第2表面とを有し、
前記第1表面は、前記縦方向において第1位置内にあり、
前記第2表面は、前記縦方向において第2位置内にあり、
前記第1位置は、前記縦方向において前記第2位置からオフセットされており、
前記第2の複数の金型嵌め合い表面は、少なくとも1つの第3表面と1つの第4表面とを有し、
前記第3表面は、前記第1位置と補足関係にある第3位置内にあり、そして、
前記第4表面は、前記第2位置と補足関係にある第4位置内にある
ことを特徴とするキャストレイテッド金型セット。
【請求項5】
前記第1の複数の金型嵌め合い表面が、前記第1表面と前記第2表面とを互い違いにする、第1の複数の対を含むことを特徴とする請求項4記載のキャストレイテッド金型セット。
【請求項6】
前記第2の複数の金型嵌め合い表面が、前記第3表面と前記第4表面とを互い違いにする、第2の複数の対を含み、
前記第2の複数の対が、前記第1の複数の対と補足的関係にあることを特徴とする請求項5記載のキャストレイテッド金型セット。
【請求項7】
前記各金型が、縦構成部分と横構成部分とを含む凹凸を有し、
前記横構成部分の寸法が変化し、
1つの前記金型内で前記横構成部分が寸法変化する方向が、他の前記金型内で該横構成部分が寸法変化する方向と正反対になっている
ことを特徴とする請求項4記載のキャストレイテッド金型セット。
【請求項8】
縦方向において第2金型と嵌め合う第1金型を含むキャストレイテッド金型セットを供給する工程と、
プリフォームを前記第1金型内に挿入する工程と、
前記第1金型を前記第2金型に接触させることにより、前記金型セットを閉じる工程と、
前記プリフォームにパンチを押圧する工程と、
を含み、
前記金型セットは、前記縦方向に前記第1金型から前記第2金型まで延長する少なくとも1つの横に変化する内側における縦方向に設けられた凹凸を有し、
前記第1金型と前記第2金型の各々は、それぞれの前記横に変化する内側における縦方向に設けられた凹凸を前記第1金型内の第1要素及び前記第2金型内の第2要素へ切り裂くキャストレイテッド分割境界面を含み、
前記押圧する工程が前記閉じる工程に続いて行われて、前記プリフォームを粉末金属鍛造品に変える
ことを特徴とする粉末金属鍛造品の製造方法。
【請求項9】
前記第1金型を前記第2金型から解放する工程を更に含むことを特徴とする請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記粉末金属鍛造品を前記金型セットから排出する工程を更に含むことを特徴とする請求項9記載の方法。
【請求項11】
第1端部と、
前記第1端部の反対にある第2端部と、
前記第1端部と前記第2端部とをつなぐ外側外形部と、
を含み、
前記外側外形部が、少なくとも1つの外側における縦方向に設けられた凹凸と、キャストレイテッド分割線と、を有し、
前記キャストレイテッド分割線は、前記少なくとも1つの外側における縦方向に設けられた凹凸を、該キャストレイテッド分割線から前記第1端部に向けて延長する第1構成部分と、該キャストレイテッド分割線から前記第2端部に向けて延長する第2構成部分と、に切り裂く
ことを特徴とする粉末金属鍛造品。
【請求項12】
前記各第1構成部分が、前記キャストレイテッド分割線から前記第1端部にかけて非減少の第1の横広がりを有し、
前記各第2構成部分が、前記キャストレイテッド分割線から前記第2端部にかけて非減少の第2の横広がりを有する
ことを特徴とする請求項11記載の粉末金属鍛造品。
【請求項13】
前記キャストレイテッド分割線が、ほぼ方形波の形をしていることを特徴とする請求項11記載の粉末金属鍛造品。
【請求項14】
前記キャストレイテッド分割線に沿ったフラッシュを最小限とした等速ジョイントの内側レースであることを特徴とする請求項11記載の粉末金属鍛造品。
【請求項15】
第1端部と、
前記第1端部の反対にある第2端部と、
前記第1端部と前記第2端部とをつなぐ外側外形部と、
を含み、
前記外側外形部が、複数の縦凸部と複数の縦凹部とを有し、
前記各縦凸部が、対応する1つの前記縦凹部により、他の前記縦凸部から分離され、
前記外形部が、前記複数の縦凸部と前記複数の縦凹部を切り裂くキャストレイテッド分割線を有する
ことを特徴とする粉末金属鍛造品。
【請求項16】
前記第1端部と前記第2端部とをつなぐ内側外形部を更に含み、該内側外形部が複数の縦スプラインを有することを特徴とする請求項15記載の粉末金属鍛造品。
【請求項17】
前記分割線の1つの側の前記縦凹部のうち少なくとも1つが、1つの縦方向において横に縮み、前記分割線の他の側の前記縦凹部のうち少なくとも1つが、前記1つの縦方向において横に広がることを特徴とする請求項16記載の粉末金属鍛造品。
【請求項18】
前記キャストレイテッド分割境界面が、ほぼ方形波の形をしていることを特徴とする請求項15記載の粉末金属鍛造品。
【請求項19】
前記キャストレイテッド分割線に沿ったフラッシュを最小限とした等速ジョイントの内側レースであることを特徴とする請求項11記載の粉末金属鍛造品。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2010−512249(P2010−512249A)
【公表日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−541541(P2009−541541)
【出願日】平成19年12月12日(2007.12.12)
【国際出願番号】PCT/US2007/087149
【国際公開番号】WO2008/073952
【国際公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【出願人】(505454410)ジーケーエヌ シンター メタルズ、エル・エル・シー (9)
【住所又は居所原語表記】N112 W18700 Mequon Road, Germantown, WI 53022, U.S.A.
【Fターム(参考)】