説明

粘性流体封入装置

【課題】粘性流体の封入時間を短くすることが可能な小型の粘性流体封入装置を提供する。
【解決手段】基板4bと、基板4bとの間に隙間を置いて基板4b上に配設される電子部品4aとから構成される被塗布体4の隙間に封止樹脂を塗布する装置であって、被塗布体4を搬送する搬送部2と、被塗布体4を下面側から加熱する加熱部5と、被塗布体4における隙間の周辺に位置する部分上に電子部品4aの一辺に沿って封止樹脂を塗布する塗布部7と、隙間を被塗布体4の周囲の空間よりも負圧にする負圧発生部12とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘性流体封入装置に関し、特に電子部品と基板との間に封止剤等を封入する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、トランジスタ、ダイオード等の電子部品の基板への実装にはフリップチップ実装が用いられている。フリップチップ実装においては、電子部品と基板とを接合した後に、電子部品と基板との間の約数十ミクロンの隙間に封止樹脂を封入することが一般に行われている。このような封止樹脂の封入には、電子部品の近傍に封止樹脂を塗布した後、毛細管現象により隙間に封止樹脂を進入させる方法が用いられている。
【0003】
しかしながら、毛細管現象を用いて封止樹脂を封入した場合には、封入完了後でも、電子部品と基板との隙間の封止樹脂にボイド(気泡)が残り易くなる。その結果、このボイドにより、電子部品と基板との間の接続の信頼性が低下する。また、毛細管現象を用いて封止樹脂を封入するため、封止樹脂の粘度が高くなると、封入速度が遅くなる。
【0004】
このような問題を解決する先行技術として、特許文献1に記載の樹脂封止方法がある。すなわち、電子部品側方の基板上に封止樹脂を塗布した後、これを密閉の容器内に配置し、容器中の封止樹脂を加熱すると共に容器内の圧力を減圧することで電子部品と基板との隙間に封止樹脂を封入する方法がある。
【0005】
上記樹脂封止方法によれば、減圧された容器内で封止樹脂が封入されるので、電子部品と基板との隙間の封止樹脂にボイドが残らず、電子部品と基板との間の接続の信頼性の低下を防止することができる。また、減圧により発生する空気の流れにより封止樹脂の封入速度が上がる。例えば、基板を55℃に加熱されたホットプレートに配置し、100l/minの能力の持つロータリーポンプで容器内の空気を排気した場合、封止樹脂は容器内に配置してからおよそ10秒で封入される。
【特許文献1】特開平8−241900号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の樹脂封止方法では、封止樹脂を基板に塗布した後に、容器を被せ、その後に容器内の減圧を行う。従って、封止樹脂の封入速度は上がるものの、基板を容器内に配置する工程及び容器から基板を取り出す工程が必要となるために、封止樹脂の封入時間としては長くなるという問題がある。すなわち、この方法では、封入装置のスループットが悪化するという問題がある。
【0007】
また、容器内を減圧するために基板全体を容器の中に入れなければならず、大容量の容器が必要になるため、装置が大型化するという問題がある。
【0008】
さらに、封止樹脂を基板に塗布した後、容器内に基板を移動させてから封止樹脂の封入を行うため、基板を移動させている間に毛細管現象により半導体素子の周辺に向かって封止樹脂が広がる。その結果、封止樹脂によってできるはみ出し部(フィレット)が大きくなるので、例えば、図14に示されるように、周辺に抵抗やコンデンサのような受動素子である電子部品110が実装される電子部品100を基板120に実装する場合には、電子部品110に向かって封止樹脂130が広がることになる。従って、封止樹脂の広がりを考慮に入れて部品間の間隔を大きくとらなければならず、この方法では高集積化の要望に対応することができない。
【0009】
そこで、本発明は、かかる問題点に鑑み、粘性流体の封入時間を短くすることが可能な小型の粘性流体封入装置を提供することを第1の目的とする。
【0010】
また、フィレットを小さくすることが可能な粘性流体封入装置を提供することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の粘性流体封入装置は、第1部材と、前記第1部材との間に隙間を置いて第1部材上に配設される第2部材とから構成される被塗布体の前記隙間に粘性流体を封入する装置であって、前記被塗布体上に粘性流体を塗布する塗布手段と、前記隙間を前記被塗布体の周囲の空間よりも負圧にする負圧発生手段とを備えるであることを特徴とする。ここで、前記負圧発生手段は、前記隙間の空気を吸引する吸引手段を有してもよいし、前記吸引手段は、前記隙間に向けて開口する吸引口を有してもよい。また、前記吸引手段は、ノズルであってもよいし、前記負圧発生手段は、前記吸引手段を前記被塗布体に移動させる移動手段を有してもよい。
【0012】
これによって、被塗布体の隙間を部分的に負圧にし、これにより発生する空気の流れにより粘性流体の封入速度を上げて封入時間を短くするので、従来の樹脂封止方法のように、被塗布体を容器内に配置する工程及び容器から被塗布体を取り出す工程を行うこと無く封入速度を高くすることができる。その結果、粘性流体の封入時間を短くすることが可能な粘性流体封入装置を実現することができる。すなわち、粘性流体封入装置のスループットを向上させることができる。また、被塗付体を入れる大容量の容器が必要無くなるので、小型の粘性流体封入装置を実現することができる。
【0013】
また、粘性流体の粘度を低下させるための被塗布体の加熱温度を下げることができるので、低消費電力化が可能な粘性流体封入装置を実現することができる。
【0014】
また、従来の樹脂封止方法のように、被塗布体を移動させる必要が無いので、被塗布体に粘性流体を塗布してからすぐに粘性流体の封入を開始させることができ、粘性流体は周辺の電子部品等に向かって広がらない。その結果、フィレットが小さくなり、高集積化の要望に対応することが可能な粘性流体封入装置を実現することができる。
【0015】
また、前記吸引手段の吸引口は、前記第2部材の外周の一部に沿って配置されてもよい。
【0016】
これによって、被塗布体の隙間を効率良く負圧にすることができるので、粘性流体の封入時間をさらに短くすることが可能な粘性流体封入装置を実現することができる。
【0017】
また、前記負圧発生手段は、前記複数の被塗布体に対応して配置される複数の前記吸引手段と、前記吸引手段の吸引動作を前記複数の吸引手段毎に独立に制御する制御手段とを有してもよい。
【0018】
これによって、ある被塗布体に対して塗布動作を行っている間に、塗布動作がなされている被塗布体とは別の被塗布体の隙間を負圧にすることができるので、粘性流体の封入時間をさらに短くすることが可能な粘性流体封入装置を実現することができる。
【0019】
また、本発明は、第1部材と、前記第1部材との間に隙間を置いて前記第1部材上に配設される第2部材とから構成される被塗布体の前記隙間に粘性流体を封入する方法であって、前記被塗布体上に粘性流体を塗布する塗布ステップと、前記隙間を前記被塗布体の周囲の空間よりも負圧にする負圧発生ステップとを含むことを特徴とする粘性流体封入方法とすることもできる。ここで、前記負圧発生ステップにおいて、前記隙間の空気を吸引することで前記隙間を負圧にしてもよい。
【0020】
これによって、粘性流体の封入時間を短くし、装置を小型化することが可能な粘性流体塗布方法を実現することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、粘性流体の封入時間を短くすることが可能な小型の粘性流体封入装置を実現することができる。また、低消費電力化が可能な粘性流体封入装置を実現することができる。また、高集積化の要望に対応することが可能な粘性流体封入装置を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態における粘性流体封入装置について、図面を参照しながら説明する。
【0023】
(第1の実施の形態)
図1は、本実施の形態の粘性流体封入装置の斜視図である。
【0024】
この粘性流体封入装置は、基板と、外部につながる隙間が基板との間に形成されるように基板上に配設された4角形状の電子部品とから構成される被塗布体の隙間に粘性流体としてのフィラーを含む封止樹脂を塗布する装置である。なお、電子部品は4角形状であるとしたが、これに限られず、例えば多角形状であってもよい。
【0025】
粘性流体封入装置は、X方向(キャリア搬送方向)に配設され、キャリア3と共に複数の被塗布体4を搬送する搬送部2と、搬送部2に対して固定した状態で設けられ、電子部品4aと基板4bとの間の隙間のみを被塗布体4の周囲の空間よりも負圧にする負圧発生部12と、被塗布体4を下面側から加熱する加熱部5と、被塗布体4における隙間の周辺に位置する部分上に電子部品4aの一辺に沿って封止樹脂を塗布する塗布部7とから構成される。
【0026】
搬送部2は、搬送コンベア2bを備えた2本の搬送レール2aを平行に対向させた構造となっており、上流側(図1において左側)から搬入されたキャリア3を、搬送コンベア2bによって下流側に搬送する。
【0027】
キャリア3は、図2のキャリア3の斜視図に示されるように、ステンレス等の金属板の両端を折り曲げた構造となっており、被塗布体4を載置するための複数の開口部3aが形成されている。被塗布体4は、上流側装置において、開口部3aを塞ぐ状態で複数載置される。
【0028】
塗布部7は、Y軸テーブル7Yと、Y方向に往復動自在にY軸テーブル7Yの下面側に配設された移動ブロック8と、移動ブロック8に結合されたタンク9及びX軸テーブル7Xと、X方向に水平往復動自在にX軸テーブル7Xに装着され、下端部にノズル10aが装着されたディスペンサ10とから構成される。なお、塗布部7は塗布手段の一例である。
【0029】
タンク9は、被塗布体4に塗布される封止樹脂を貯留してディスペンサ10に供給する機能を有している。タンク9内の容器からチューブ9aを介してディスペンサ10に供給された封止樹脂はノズル10aから下方へ吐出される。このとき、X軸テーブル7X及びY軸テーブル7Yを駆動してノズル10aを所定のパターンで移動させることにより、被塗布体4には封止樹脂が塗布される。
【0030】
加熱部5は、図3の加熱部5の断面図に示されるように、加熱ユニット11と、加熱ユニット11を昇降動作させ、突出部14の上面の加熱面14aと被塗布体4の下面の受熱面4dとを接近・離隔させる加熱ユニット昇降機構5aとから構成される。
【0031】
加熱ユニット11は、加熱ユニット11の上方への移動によりキャリア3の下面に当接し、キャリア3を押し上げてストッパ6の下面に押し付ける押上ピン15と、キャリア3を押上ピン15と共に挟み込んで加熱位置にクランプするストッパ6と、加熱位置にクランプされた被塗布体4を加熱する突出部14とから構成される。
【0032】
ここで、上流側装置から搬送部2に搬入されたキャリア3は搬送コンベア2bによって搬送され、加熱部5の上方で停止する。搬送部2によるキャリア3の搬送において、開口部3aに載置された被塗布体4が突出部14の上方に位置するように、キャリア3の停止位置が制御される。これにより、突出部14は、開口部3aを介してキャリア3の下面側に露呈された被塗布体4の下面に向かって上方に突出した状態となる。
【0033】
負圧発生部12は、図4の負圧発生部12の斜視図に示されるように、複数の吸引ノズル21と、吸引ノズル21が固定される枠体22と、20〜100l/min、例えば50l/minで空気を吸引するロータリーポンプあるいはコンバム(登録商標)等の吸引装置(図外)と、吸引装置と吸引ノズル21とをバルブユニット(図外)を介して接続するチューブ23とから構成される。なお、負圧発生部12は塗布手段の一例であり、吸引ノズル21は吸引手段の一例である。
【0034】
複数の吸引ノズル21は、キャリア3に載置された複数の被塗布体4に対応して配置され、それぞれ対応する被塗布体4の隙間の空気を吸引する。吸引ノズル21の吸引口は、被塗布体4の隙間に向けて開口し、被塗布体4における隙間の周辺に位置する部分上に、封止樹脂が塗布されていない電子部品4aの一辺に沿って位置する。このとき、吸引ノズル21の吸引口は、対向する電子部品4aの一辺に対応した形状を有する。すなわち、吸引ノズル21の吸引口の幅(図4におけるA)は対向する電子部品4aの一辺と同じかそれよりも小さく、吸引ノズル21の吸引口の高さ(図4におけるB)は隙間の間隔と同じかそれよりも小さい。
【0035】
図5は、上記構造を有する粘性流体封入装置の制御系の構成を示すブロック図である。
【0036】
粘性流体封入装置は、制御部30、塗布機構部31、搬送機構部32、加熱機構部33、表示部34、入力部35、バルブユニット36及び開閉タイミングデータ記憶部38から構成される。
【0037】
制御部30は、バルブ制御部37を備えており、バルブユニット36によるバルブ切替え動作を制御するほか、塗布機構部31、搬送機構部32及び加熱機構部33の動作を制御する。すなわち、制御部30が塗布機構部31、搬送機構部32及び加熱機構部33をそれぞれ制御することにより、搬送機構部32によるキャリア3の搬送動作、加熱機構部33による被塗布体4の加熱動作が実行され、さらに加熱された被塗布体4への封止樹脂の塗布動作が塗布機構部31によって実行される。なお、バルブ制御部37、バルブユニット36及び開閉タイミングデータ記憶部38は制御手段の一例である。
【0038】
塗布機構部31は、X軸テーブル7X、Y軸テーブル7Y、移動ブロック8、タンク9、ディスペンサ10、及びこれらを駆動するモータやモータコントローラ等を含む機構部品の集合である。
【0039】
搬送機構部32は、搬送レール2a、搬送コンベア2b、及びこれらを駆動するモータやモータコントローラ等を含む機構部品の集合である。
【0040】
加熱機構部33は、加熱ユニット昇降機構5a、加熱ユニット11、及びこれを駆動するモータやモータコントローラ等を含む機構部品の集合である。
【0041】
表示部34は、オペレータに各種情報を提示するLCD等である。
【0042】
入力部35は、オペレータからの指示を取得するキーボード等である。
【0043】
開閉タイミングデータ記憶部38は、ハードディスクやメモリ等であり、開閉タイミングデータ等を保持する。
【0044】
バルブ制御部37は、開閉タイミングデータ記憶部38に記憶された開閉タイミングデータに基づいて、複数の吸引ノズル21と吸引装置とをつなぐバルブユニット36の開閉動作を制御する。すなわち、バルブ制御部37は、吸引ノズル21の吸引動作を複数の吸引ノズル21毎に独立に制御する。
【0045】
ここで、バルブ制御部37によるバルブユニット36の開閉動作の制御について、図6を参照して説明する。図6(a)は複数の吸引ノズル21のうちの第1吸引ノズルと吸引装置との間に接続された第1バルブの開閉タイミングを示し、図6(b)は第1吸引ノズルの次に吸引動作が行われる第2吸引ノズルと吸引装置との間に接続された第2バルブの開閉タイミングを示している。
【0046】
まず、第1バルブを開いて第1吸引ノズルの吸引動作を開始させる(t=t0)。これにより、第1吸引ノズルに対応して配置された第1被塗付体の隙間の空気が吸引され、第1被塗付体の隙間のみが第1被塗布体の封止樹脂が塗布される周囲の空間よりも負圧になる。
【0047】
次に、塗布部7による第1被塗布体への封止樹脂の塗布動作を開始させる(t=t1)。すなわち、ディスペンサ10のノズル10aから、吸引ノズル21の吸引口が配置されていない電子部品4aの一辺に沿って封止樹脂を吐出させる。このとき、第1被塗布体は加熱されているため、第1被塗布体に塗布された封止樹脂は加熱されて粘度が低下し流動性が向上する。これにより、第1被塗布体の隙間に封止樹脂が徐々に進入して隙間への封入が開始される。
【0048】
次に、塗布部7による塗布動作及び第1吸引ノズルの吸引動作を終了させた後、図7に示されるように、第1被塗布体の隙間に封止樹脂が十分封入されるのを待つ。このとき、吸引装置が50l/minで吸引を行うロータリーポンプであり、電子部品4aが40mm×40mmの大きさを持つものであり、さらに塗布時間が約1秒である場合には、塗布から2秒程度で封止樹脂が十分封入される。その後、第2バルブを開いて第2吸引ノズルの吸引動作を開始させる(t=t2)。これにより、第2吸引ノズルに対応して配置された第2被塗付体の隙間の空気が吸引され、第2被塗付体の隙間のみが第2被塗布体の封止樹脂が塗布される周囲の空間よりも負圧になる。
【0049】
次に、塗布部7による第2被塗布体への封止樹脂の塗布動作を開始させる(t=t3)。すなわち、ディスペンサ10のノズル10aから、吸引ノズル21の吸引口が配置されていない電子部品4aの一辺に沿って封止樹脂を吐出させる。これにより、第2被塗布体の隙間に封止樹脂が徐々に進入して隙間への封入が開始される。
【0050】
次に、塗布部7による塗布動作及び第2吸引ノズルの吸引動作を終了させた後、同一のキャリア3の上に載置された他の被塗付体に対しても上記吸引動作及び塗布動作を行う。
【0051】
以上のように、本実施の形態の粘性流体封入装置によれば、吸引ノズル21を用いて被塗布体4の隙間のみを負圧にし、これにより発生する空気の流れにより封止樹脂の封入速度を上げて封入時間を短くする。よって、従来の樹脂封止方法のように、基板を容器内に配置する工程及び容器から基板を取り出す工程を行うこと無く封入速度を高くすることができるので、粘性流体の封入時間を短くすることが可能な粘性流体封入装置を実現することができる。すなわち、粘性流体封入装置のスループットを向上させることができる。また、被塗付体4を入れる大容量の容器が必要無くなるので、小型の粘性流体封入装置を実現することができる。
【0052】
また、本実施の形態の粘性流体封入装置によれば、被塗布体4に塗布を行っていると同時に、被塗布体4の隙間を負圧にし、封止樹脂を封入させる。よって、ボイドを発生させること無く被塗布体4の隙間に封止樹脂を封入できるので、品質を安定させることが可能な粘性流体封入装置を実現することができる。また、塗布動作の終了を待つこと無く封止樹脂の封入を開始させるので、封入時間をさらに短くすることが可能な粘性流体封入装置を実現することができる。
【0053】
また、本実施の形態の粘性流体封入装置によれば、複数の被塗布体4に対応して配置された複数の吸引ノズル21を備え、バルブユニット36を制御することで複数の吸引ノズル21の吸引動作を独立に制御する。よって、ある被塗布体4に対して塗布動作を行っている間に、塗布動作がなされている被塗布体4とは別の被塗布体4に対して吸引動作を行うことができるので、封入時間をさらに短くすることが可能な粘性流体封入装置を実現することができる。
【0054】
また、本実施の形態の粘性流体封入装置によれば、吸引ノズル21は基板4bの封止樹脂が塗布されていない部分上に電子部品4aの外周に沿って位置する。よって、被塗布体4の隙間を効率良く負圧にすることができるので、封入時間をさらに短くすることが可能な粘性流体封入装置を実現することができる。
【0055】
また、本実施の形態の粘性流体封入装置によれば、被塗布体4の隙間は負圧にされる。よって、加熱ユニット11による被塗布体4の加熱温度を下げることができるので、低消費電力化が可能な粘性流体封入装置を実現することができる。
【0056】
また、本実施の形態の粘性流体封入装置によれば、吸引動作を開始してから塗布動作を開始させる。よって、被塗布体4に塗布された封止樹脂は周辺の電子部品4aに向かって広がることなく、隙間に進入するので、フィレットを小さくし、高集積化の要望に対応することが可能な粘性流体封入装置を実現することができる。
【0057】
なお、本実施の形態の粘性流体封入装置の負圧発生部12において、1つの被塗布体4に対して1つの吸引ノズル21が配置されるとした。しかし、1つの被塗布体4に対して複数の吸引ノズル21が配置されてもよい。1つの被塗布体4に対応して配置される吸引ノズル21の数を増やすことで、隙間を効率的に負圧にすることができ、封入時間をさらに短くすることができる。
【0058】
例えば、図8の負圧発生部12の斜視図に示されるように、枠体22の内側に被塗布体4を挟み込むように複数の凸部40が設けられ、1つの被塗布体4に対して2つの吸引ノズル21が配置されるように、この凸部40上に吸引ノズル21が設けられてもよい。この場合には、封止樹脂は電子部品4aにおける吸引ノズル21の吸引口が配置されていない一辺あるいは二辺に沿って塗布される。
【0059】
また、図9の負圧発生部12の斜視図に示されるように、枠体22の内側に被塗布体4を挟み込むように複数の凸部40が設けられ、1つの被塗布体4に対して3つの吸引ノズル21が配置されるように、この凸部40上に吸引ノズル21が設けられてもよい。この場合には、封止樹脂は電子部品4aにおける吸引ノズル21の吸引口が配置されていない一辺に沿って塗布される。
【0060】
また、本実施の形態の粘性流体封入装置において、1つの被塗布体4に対して1回の吸引動作で封止樹脂の封入を行ったが、複数回の吸引動作で封止樹脂の封入を行ってもよい。この場合には、封止樹脂の封入状態を認識する認識カメラが設けられ、この認識結果に基づいて吸引動作が行われる。
【0061】
また、本実施の形態の粘性流体封入装置において、第1吸引ノズルの吸引動作を終了させた後で第2吸引ノズルの吸引動作を開始させるとしたが、第1吸引ノズルの吸引動作を終了させる前に第2吸引ノズルの吸引動作を開始させてもよい。
【0062】
(第2の実施の形態)
図10は、本実施の形態の粘性流体封入装置の斜視図である。
【0063】
この粘性流体封入装置は、負圧発生部が搬送部に対して移動可能な状態で設けられるという点で第1の実施の形態の粘性流体封入装置と異なる。以下、第1の実施の形態の粘性流体封入装置と異なる点を中心に説明する。
【0064】
この粘性流体封入装置は、搬送部2と、電子部品4aと基板4bとの間の隙間のみを被塗布体4の周囲の空間よりも負圧にする負圧発生部52と、加熱部5と、塗布部7とから構成される。
【0065】
負圧発生部52は、図11の負圧発生部52の斜視図に示されるように、1つの吸引ノズル61と、X、Y、Z方向に往復動自在な状態でディスペンサ10に配設され、空気を吸引する本体62と、本体62と吸引ノズル61とを接続する接続部材63とから構成される。このとき、X軸テーブル7X及びY軸テーブル7Yを駆動して吸引ノズル61を所定の位置に移動させることにより、被塗布体4の隙間の空気が吸引される。なお、X軸テーブル7X及びY軸テーブル7Yは移動手段の一例である。
【0066】
図12は、上記構造を有する粘性流体封入装置の制御系の構成を示すブロック図である。
【0067】
粘性流体封入装置は、制御部70、塗布機構部31、搬送機構部32、加熱機構部33、表示部34、入力部35及び負圧発生機構部76から構成される。
【0068】
制御部70は、塗布機構部31、搬送機構部32及び加熱機構部33の動作を制御するほか、負圧発生機構部76を制御する。すなわち、塗布機構部31による塗布動作が実行される前に、制御部70が負圧発生機構部76を制御することにより、塗布動作が行われる被塗布体4に本体62が移動し、その被塗布体4に対して吸引ノズル61による吸引動作が実行される。吸引動作に際して、吸引ノズル61の吸引口は、被塗布体4の隙間に向けて開口し、被塗布体4における隙間の周辺に位置する部分上に、封止樹脂が塗布されていない4角形状の電子部品4aの一辺に沿って位置するように配置される。
【0069】
負圧発生機構部76は、吸引ノズル61、本体62、接続部材63、及び本体62を駆動するモータやモータコントローラ等を含む機構部品の集合である。
【0070】
以上のように、本実施の形態の粘性流体封入装置によれば、第1の実施の形態の粘性流体封入装置と同様の理由により、粘性流体の封入時間を短くすることが可能な小型の粘性流体封入装置を実現することができる。また、低消費電力化が可能な粘性流体封入装置を実現することができる。また、高集積化の要望に対応することが可能な粘性流体封入装置を実現することができる。
【0071】
以上、本発明の粘性流体封入装置について、実施の形態に基づいて説明したが、本発明は、この実施の形態の限定されるものではない。本発明の要旨を逸脱しない範囲内で当業者が思いつく各種変形を施したものも本発明の範囲内に含まれる。
【0072】
例えば、上記実施の形態の粘性流体封入装置において、吸引動作を開始した後で塗布動作を開始するとしたが、吸引動作を開始する前に塗布動作を開始してもよいし、あるいは吸引動作を開始すると同時に塗布動作を開始してもよい。
【0073】
また、上記実施の形態の粘性流体封入装置において、封止樹脂は電子部品の一辺に沿って塗布されるとした。しかし、吸引ノズルの吸引口が電子部品の外周の一部に沿って配置され、封止樹脂がその電子部品の外周の吸引口が配置されない部分に沿って塗布されればこれに限られない。例えば、上面形状がL字型になるように電子部品の二辺に沿って封止樹脂が塗布されてもよいし、あるいは上面形状がコの字型になるように三辺に沿って封止樹脂が塗布されてもよい。塗布される辺の数を増やすことで、隙間を効率的に負圧にすることができ、封入時間をさらに短くすることができる。
【0074】
また、上記実施の形態の粘性流体封入装置の負圧発生部において、1つの吸引ノズルの吸引口は、電子部品の一辺に沿って位置するとした。しかし、1つの吸引ノズルの吸引口は、電子部品の複数の辺に沿って位置してもよい。例えば、図13の負圧発生部12の斜視図に示されるように、1つの吸引ノズル21の吸引口は、電子部品4aの三辺に沿って位置してもよい。1つの吸引ノズルの吸引口の数を増やすことで、隙間を効率的に負圧にすることができ、封入時間をさらに短くすることができる。
【0075】
また、上記実施の形態の粘性流体封入装置において、被塗布体の隙間の空気を吸引して隙間を負圧にしたが、被塗布体の周囲の空間の圧力を上げて隙間を負圧にしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明は、粘性流体封入装置に利用でき、特に電子部品と基板との間に封止樹脂を封入する装置等に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明の第1の実施の形態の粘性流体封入装置の斜視図である。
【図2】同実施の形態の粘性流体封入装置におけるキャリアの斜視図である。
【図3】同実施の形態の粘性流体封入装置における加熱部の断面図である。
【図4】同実施の形態の粘性流体封入装置における負圧発生部の斜視図である。
【図5】同実施の形態の粘性流体封入装置の制御系の構成を示すブロック図である。
【図6】(a)第1バルブの開閉タイミングを示す図である。(b)第2バルブの開閉タイミングを示す図である。
【図7】被塗布体の隙間への封止樹脂の封入を説明するための図である。
【図8】負圧発生部の変形例の斜視図である。
【図9】負圧発生部の変形例の斜視図である。
【図10】本発明の第2の実施の形態の粘性流体封入装置の斜視図である。
【図11】同実施の形態の粘性流体封入装置における負圧発生部の斜視図である。
【図12】同実施の形態の粘性流体封入装置の制御系の構成を示すブロック図である。
【図13】負圧発生部の変形例の斜視図である。
【図14】封止樹脂によってできるはみ出し部(フィレット)を説明するための図である。
【符号の説明】
【0078】
2 搬送部
3 キャリア
3a 開口部
4 被塗布体
4a、100、110 電子部品
4b、120 基板
4d 受熱面
5 加熱部
5a 加熱ユニット昇降機構
6 ストッパ
7 塗布部
7X X軸テーブル
7Y Y軸テーブル
8 移動ブロック
9 タンク
10 ディスペンサ
10a ノズル
11 加熱ユニット
12、52 負圧発生部
14 突出部
14a 加熱面
15 押上ピン
21、61 吸引ノズル
22 枠体
23 チューブ
30、70 制御部
31 塗布機構部
32 搬送機構部
33 加熱機構部
34 表示部
35 入力部
36 バルブユニット
37 バルブ制御部
38 開閉タイミングデータ記憶部
40 凸部
62 本体
63 接続部材
76 負圧発生機構部
130 封止樹脂

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1部材と、前記第1部材との間に隙間を置いて第1部材上に配設される第2部材とから構成される被塗布体の前記隙間に粘性流体を封入する装置であって、
前記被塗布体上に粘性流体を塗布する塗布手段と、
前記隙間を前記被塗布体の周囲の空間よりも負圧にする負圧発生手段とを備える
ことを特徴とする粘性流体封入装置。
【請求項2】
前記負圧発生手段は、前記隙間の空気を吸引する吸引手段を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の粘性流体封入装置。
【請求項3】
前記吸引手段は、前記隙間に向けて開口する吸引口を有する
ことを特徴とする請求項2に記載の粘性流体封入装置。
【請求項4】
前記吸引手段の吸引口は、前記第2部材の外周の一部に沿って配置される
ことを特徴とする請求項3に記載の粘性流体封入装置。
【請求項5】
前記吸引手段は、ノズルである
ことを特徴とする請求項4に記載の粘性流体封入装置。
【請求項6】
前記負圧発生手段は、前記複数の被塗布体に対応して配置される複数の前記吸引手段と、前記吸引手段の吸引動作を前記複数の吸引手段毎に独立に制御する制御手段とを有する
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の粘性流体封入装置。
【請求項7】
前記負圧発生手段は、前記吸引手段を前記被塗布体に移動させる移動手段を有する
ことを特徴とする請求項2〜5のいずれか1項に記載の粘性流体封入装置。
【請求項8】
第1部材と、前記第1部材との間に隙間を置いて前記第1部材上に配設される第2部材とから構成される被塗布体の前記隙間に粘性流体を封入する方法であって、
前記被塗布体上に粘性流体を塗布する塗布ステップと、
前記隙間を前記被塗布体の周囲の空間よりも負圧にする負圧発生ステップとを含む
ことを特徴とする粘性流体封入方法。
【請求項9】
前記負圧発生ステップにおいて、前記隙間の空気を吸引することで前記隙間を負圧にする
ことを特徴とする請求項8に記載の粘性流体封入方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2007−142101(P2007−142101A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−333001(P2005−333001)
【出願日】平成17年11月17日(2005.11.17)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】