説明

粘性流体材料の傾斜波状パターンを形成するノズル、粘性流体材料を基材に塗布する方法、及び製品

【課題】隣り合うパターンを近づけることができ、且つ粘性流体材料の垂れ落ちがないノズルを提供する。
【解決手段】粘性流体材料の概ね傾斜波状パターンを形成するノズル(40)において、ノズルが塗布装置に取り付けられたときに、基材との相対移動方向に対して所定角度で傾斜した長手方向に延在する突起(46)と、突起に設けられ、粘性流体材料を吐出して、実質的に連続した粘性流体材料の繊維を形成するためのオリフィス(48)と、突起(46)の長手方向に延在する両壁(46a)の近傍にそれぞれ設けられ、粘性流体材料の繊維に対してガスを噴射して粘性流体材料を長手方向とほぼ垂直な方向に振動させる少なくとも二つのガス孔(56)とを設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘性流体材料の傾斜波状パターンを形成するノズル、粘性流体材料を基材に塗布する方法、及び製品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、紙おむつ等のPE製バックシート、不織布等の平面状のシート、或いは、糸状、紐状又は帯状の基材に、ホットメルト接着剤をジグザグ状に塗布する装置がある。
【0003】
図1は、従来のジグザグ状パターンでホットメルト接着剤を塗布するためのノズルを示す斜視図である。
ノズル10は、底面12に4つの突起部14が設けられている。突起部14は、断面がほぼ台形で基材の移動方向に平行に延在している。突起部14には、接着剤を吐出するためにオリフィス16が設けられている。それぞれのオリフィス16の周りには、4つのガス孔18が設けられている。ガス孔18は、突起部14の両側にそれぞれ2つずつ設けられている。
【0004】
図2は、従来のノズルから吐出されたホットメルト接着剤のジグザグパターンを模式的に描いた説明図である。図2において、(a)は、正面図、(b)は、底面図、(c)は、基材上に塗布された接着剤のパターンを示す図である。
基材20に付着する接着剤付着パターンを近づけるために、オリフィス16を近づけて接着剤を吐出すると、図2(a)及び(b)に示すように、接着剤吐出パターン22が互いに干渉してしまう。これは、隣り合うパターンのガス孔から噴射される空気が互いのパターンに干渉するためである。従って、接着剤付着パターン24は、図2(c)に示すように、乱れてしまう。
【0005】
接着剤吐出パターン22の干渉は、接着剤付着パターン24において、塗布エッジの蛇行、塗布間隔の不均一となって現われ、特に、高い分布精度が要求される平面パターン塗布には向かなかった。さらにまた、このような接着剤付着パターン24の乱れは、接着強度を低下させ、また、内容物の漏れを生じさせたりする。
【0006】
そこで、このような接着剤付着パターンの乱れを防止するために、隣り合うオリフィスの間に遮蔽板(バンク)を設けたノズルがある(たとえば、特許文献1参照。)。
【0007】
図3は、遮蔽板を設けた従来のノズルを示す斜視図である。ノズル30は、隣り合うオリフィス36の間に遮蔽板32を設けている。
【0008】
図4は、遮蔽板を設けた従来のノズルから吐出されたホットメルト接着剤のジグザグパターンを模式的に描いた説明図である。図4において、(a)は、正面図、(b)は、底面図、(c)は、基材上に塗布された接着剤のパターンを示す図である。
【0009】
図4(a)及び(b)に示すように、遮蔽板32により、隣り合うオリフィス34から吐出される接着剤繊維に対して噴射される空気の干渉が防止され接着剤吐出パターン36が干渉しないので、接着材繊維の規則正しい振動運動を確保することができる。これによって、図4(c)に示すように、接着剤付着パターン38も規則正しい安定したものになる。
【0010】
遮蔽板32は、隣り合う接着剤吐出パターンの干渉を効果的に防止することができる。しかし、遮蔽板32の先端部に接着剤が引っかかりやすい。遮蔽板32の先端部に堆積した接着剤は、たれ落ちることがある。基材20上に堆積した接着剤が垂れ落ちると、製品不良が発生するという問題がある。
また、隣り合った接着剤パターンは、それぞれの空気流が障害となるため重ね合わせることができないという問題もある。
【0011】
【特許文献1】特開2002−126596号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、堆積した粘性流体が垂れ落ちることのないノズル及び粘性流体塗布方法を提供することを目的とする。
【0013】
また、本発明は、隣り合う粘性流体パターンを近づけても、粘性流体パターンの干渉が生じないノズルを及び粘性流体材料塗布方法を提供することを目的とする。
【0014】
さらにまた、本発明は、隣り合う粘性流体パターンを一部重複させることができるノズル及び粘性流体材料塗布方法を提供することを目的とする。
【0015】
さらにまた、本発明は、粘性流体材料の傾斜波状パターンを形成するノズル、粘性流体材料を傾斜波状パターンで基材に塗布する方法、及び傾斜波状パターンの粘性流体材料が付着された製品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前述した課題を解決する為に本発明では次のようなノズルとした。
すなわち、粘性流体材料の概ね傾斜波状パターンを形成するノズルにおいて、
粘性流体材料を吐出して、実質的に連続した粘性流体材料の繊維を形成するためのオリフィスと、
前記ノズルが塗布装置に取り付けられたときに、基材との相対移動方向に対して所定角度で傾斜した所定方向に前記オリフィスを挟んで設けられ、粘性流体材料の繊維に対してガスを噴射して粘性流体材料を該所定方向に振動させる少なくとも一対のガス孔とを設けた。
【0017】
また、粘性流体材料の概ね傾斜波状パターンを形成するノズルにおいて、
ノズルが塗布装置に取り付けられたときに、基材との相対移動方向に対して所定角度で傾斜した長手方向に延在する突起と、
突起に設けられ、粘性流体材料を吐出して、実質的に連続した粘性流体材料の繊維を形成するためのオリフィスと、
突起の長手方向に延在する両壁の近傍にそれぞれ設けられ、粘性流体材料の繊維に対してガスを噴射して粘性流体材料を長手方向とほぼ垂直な方向に振動させる少なくとも二つのガス孔とを設けた。
【0018】
前記突起は、断面が台形状をしており、前記両壁の近傍にそれぞれ二つのガス孔が設けられ、前記所定角度が約45°であるとよい。
【0019】
前記突起に設けられた前記オリフィスと前記ガス孔の複数の組が、相対移動方向にほぼ垂直な方向に一列に設けられているとよい。
【0020】
また、粘性流体材料を基材へ塗布する方法において、
基材と塗布装置との間に所定方向の相対移動を与える行程と、
粘性流体材料を吐出して、実質的に連続した粘性流体材料の繊維を形成する工程と、
粘性流体材料の繊維に対して複数のガス孔からガスを噴射して、前記所定方向に対して所定角度で傾斜した方向に粘性流体材料の繊維を振動させる工程と、
粘性流体材料の繊維を概ね傾斜波状パターンで基材上へ付着させる工程とを設けた。
【0021】
また、少なくとも二本の粘性流体材料の繊維が概ね傾斜波状パターンで基材上に付着した製造物品を生産する方法であって、
基材と塗布装置との間に所定方向の相対移動を与える行程と、
粘性流体材料を吐出して、実質的に連続した粘性流体材料の繊維を形成する工程と、
粘性流体材料の繊維に対して複数のガス孔からガスを噴射して、前記所定方向に対して所定角度で傾斜した方向に粘性流体材料の繊維を振動させる工程と、
粘性流体材料の繊維を概ね傾斜波状パターンで基材上へ付着させる工程とを設けた。
【0022】
また、第一表面を有する基材と、
前記第一表面に付着した実質的に連続した接着剤の繊維すなわちフィラメントとからなる製造物品において、
前記接着剤の繊維すなわちフィラメントは、概ね傾斜波状パターンの繰り返しで形成されており、
前記概ね傾斜波状パターンは、繰り返し形成される前記概ね傾斜波状パターンの連続方向に前記概ね傾斜波状パターンのほぼ中心あるいは中心から上下にわずかにずれた位置を通る仮想線を想定したときに、仮想線を横切る前記概ね傾斜波状パターンの傾きが仮想線に対して90°以内の傾きであるようにした。
【0023】
また、少なくとも二枚のシート部材を積層することによって形成された複合シートにおいて、
前記少なくとも二枚のシート部材は、一列に配置されたオリフィスから吐出されて隣り合う縦列を形成するように前記少なくとも二枚のシート部材の一方に付着した少なくとも二本の実質的に連続した接着剤の繊維又はフィラメントにより接合されており、該縦列のそれぞれは、繰り返し形成される概ね傾斜波状パターンで塗布されており、
少なくとも二本の隣り合う縦列の接着剤の繊維すなわちフィラメントの前記概ね傾斜波状パターンが一部重なり合っており、
前記概ね傾斜波状パターンは、繰り返し形成される前記概ね傾斜波状パターンの連続方向に前記概ね傾斜波状パターンのほぼ中心あるいは中心から上下にわずかにずれた位置を通る仮想線を想定したときに、仮想線を横切る前記概ね傾斜波状パターンの傾きが仮想線に対して90°以内の傾きであるようにした。
【0024】
接合された前記シート部材は、不織布及び透湿性の樹脂シートであるとよい。
【0025】
前記複合シートは、使い捨ておむつ、生理用ナプキン、尿とりパッド、母乳パッドなどの使い捨て着用物品に使用することができるとよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明を、好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。ただし、以下の実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0027】
(ノズルの構成)
図5〜図13を参照して、本発明の一実施例によるノズルを説明する。なお、本実施例においては、一つのノズルから4条の接着剤吐出パターンを形成する構成のものを示すが、本発明はこれに限定されるものではない。必要な塗布幅に応じて、1条から任意の条数に変更できる。
【0028】
図5は、本発明の実施例によるノズルの斜視図である。図6は、本発明の実施例によるノズルの側面図である。図7は、本発明の実施例によるノズルの正面図である。図8は、本発明の実施例によるノズルの底面図である。図9は、本発明の実施例によるノズルの平面図である。図10は、図9の線X−Xに沿って取ったノズルの拡大断面図である。図11は、図8の線XI−XIに沿って取ったノズルの拡大断面図である。図12は、図8の線XII−XIIに沿って取ったノズルの拡大断面図である。図13は、図8の円XIIIで囲んだ部分の拡大図である。本実施例においては、粘性流体材料としてホットメルト接着剤を使用し、ガスとして圧縮空気を使用する。
【0029】
図5、図6、及び図7に示すように、本発明の一実施例によるノズル40は、本体42の底面44に四つの台形状突起46が設けられている。図8に示すように、四つの台形状突起46は、所定距離Pの等間隔で基材の移動方向Xに垂直な方向に並んで配置されている。台形状突起46は、所定の方向に長く延在し、断面が台形状をしている。図13に示すように、台形状突起46の長手方向軸線Cは、基材の移動方向Xに対して所定の角度θ傾斜して設けられている。本実施例において、角度θは45°に設定されている。角度θは、30°〜60°の範囲で設定されることが好ましい。
【0030】
図11に示すように、台形状突起46には、ホットメルト接着剤を吐出するオリフィス48が設けられている。オリフィス48は、図10に示すように、縦通路50を介して、本体42の上面52に設けられた横通路54へ連通している。横通路54には、四つのオリフィス48の縦通路50が連通している。横通路54にホットメルト接着剤を供給することにより、ホットメルト接着剤は四つのオリフィス48から四つのホットメルト接着剤の繊維として吐出される。
【0031】
図13に示すように、台形状突起48の両側には、それぞれ二つのガス孔56が設けられている。図12に示すように、ガス孔56は、オリフィス48の軸線48aに向けて斜めに開口している。ガス孔56の軸線56aは、台形状突起46の傾斜面46aとほぼ同じ角度で傾斜している。
【0032】
すなわち、図13に示すように、ガス孔56は、ノズル40の底面44で台形状突起46の両側においてそれぞれ二個ずつ傾斜面46aに近接して開口している。それぞれの側の二個のガス孔56の開口は、基材の移動方向Xに対して所定角度β傾斜しオリフィス48の中心を通る直線Aに対してオリフィス48の軸線48cを中心とする円Bの周上において所定の等角度αで振り分けられた位置に設けられている。角度αは19°で設定されている。角度αはなるべく小さい角度として該片側二個のガス孔56の開口は互いにくっつかずに加工でき、最小限近接した位置に設けることが望ましい。またそれぞれのガス孔56の軸線56a(底面視)はオリフィス48の中心を通っている。
【0033】
本実施例に示すように、ノズル40に台形状突起46を設けた場合には、台形状突起46の長手方向軸線Cに対して直線Aが垂直になるように、すなわち角度βが45°となるように設定されている。しかしながら、台形状突起46をノズル40に設けなくてもよい。この台形状突起を設けない場合には、前記したように、ガス孔56は、基材の移動方向Xに対して所定角度β傾斜しオリフィス48の中心を通る直線Aに対してオリフィス48の軸線48cを中心とする円Bの周上において所定の等角度αで振り分けられた位置に設けられていれば十分である。台形状突起46を設けない場合でも該直線Aの傾斜角βは45°に設定される。そして該角度βは、30°〜60°の範囲で設定されることが好ましい。
【0034】
ガス孔56の直径は、0.3mm〜1.0mmに設定されているとよい。ガス孔56の軸線56aとオリフィス48の軸線48aとがなす角度は、10°に設定されている。該角度は6°〜14°の範囲で設定されることが好ましい。
【0035】
ガス孔56は、本体42の上面52に設けられた横空気通路58に連通している。横空気通路58へ圧縮空気を供給することにより、それぞれのオリフィス48の周りの四つのガス孔56から圧縮空気が噴射される。
【0036】
(接着剤パターン)
図14は、ホットメルト接着剤繊維の吐出パターンを模式的に説明する図である。オリフィス48は、ホットメルト接着剤繊維60を吐出する。ガス孔56は、空気流62をホットメルト接着剤繊維60へ向ける。ホットメルト接着剤繊維60は、空気流62の影響を受けて、台形状突起46の長手方向と交差する方向に、すなわち、本実施例では基材20の移動方向Xに対して約45°の方向に波状(ジグザグ状、シーム状)の振幅(振動)運動を起こす。
【0037】
この場合、それぞれのガス孔56は、台形状突起46の両側の傾斜面(壁)46aに近接されて開口され、かつオリフィス48の中心(軸線48a)に向けて設けられているので、ガス孔から噴射された空気流62は、突起46の傾斜面46aに沿い傾斜面46aにガイドされて安定した流れとなって層流(整然とした流れ)になり、かつ該流れはオリフィスの軸線48aに向かって下降する。この点からも、ホットメルト接着剤繊維60に安定した振動を引き起こし振幅も安定し、より規則正しい傾斜波状パターンを得るようにすることができる。
【0038】
なお、以上のガス孔56を台形状突起46の長手方向の両側にそれぞれ二個ずつ設けた本実施例では、同じ振幅の傾斜波状パターンを得る場合に、該突起46の両側にそれぞれ一個ずつガス孔を設ける場合に比べて、ガス孔56から噴射される圧縮空気の圧力を低く抑えることができた。すなわち空気消費量を低く抑えることができた。また本実施例では、逆に圧縮空気の圧力を、ガス孔を突起46の両側にそれぞれ一つずつ設けた場合の圧力と同じにしたときは、傾斜波状パターンの振幅を広げることができた。これは本実施例では、圧縮空気が該片側二個のガス孔から噴射されるので空気流が前記したように安定した流れとなってホットメルト接着剤繊維60に作用するためと考えられる。
【0039】
図15は、本発明によるノズルから吐出されたホットメルト接着剤の傾斜波状パターンを模式的に描いた説明図である。図15において、(a)は、正面図、(b)は、底面図、(c)は、基材上に塗布された接着剤のパターンを示す図である。
【0040】
図15(b)に示すように、オリフィス48から吐出されるホットメルト接着剤繊維は、基材20の移動方向Xに対して約45°傾いて振動し、接着剤吐出パターン64を形成する。従って、隣り合うオリフィス48から吐出されるホットメルト接着剤繊維の吐出パターン64は、互いに干渉せず、規則正しい振動運動を確保することができる。これによって、図15(c)に示すように、接着剤付着パターン66も規則正しい安定したものになる。接着剤付着パターン66は、基材20に移動方向Xに対して約45°傾いた傾斜波状パターンである。
【0041】
本実施例によれば、接着剤繊維は、基材20の移動方向に対して約45°傾いて振動しているので、隣り合うオリフィス48を近づけてもガス孔56からの空気流が干渉することがない。したがって、オリフィス48の間の距離を小さくしても、接着剤吐出パターン64が乱れることがなく、その結果、接着剤付着パターン66の一部を互いに重ね合わせることができる。これによって、接着強度を上げることができる。
【0042】
図16は、オーバーラップした接着剤付着パターンを示す図である。隣り合う接着剤繊維のパターンが一部重なり合っても、接着剤付着パターン68は乱れずにきれいなパターンを維持することができる。
【0043】
(接着剤付着パターンの詳細)
図17は、傾斜波状パターンの詳細を示す図である。図17は、四つのオリフィスから吐出された4条のホットメルト接着剤繊維の付着パターンを示している。傾斜波状パターンは、パターンの連続方向にパターンのほぼ中心あるいは中心から上下にわずかにずれた位置を通る仮想線Lを想定したときに、仮想線Lを横切るパターンの傾き角γが仮想線Lに対して約30°〜約60°の範囲内に入るのが理想的である。仮想線Lを横切るパターンの傾きが仮想線Lに対して90°以内であれば、傾斜波状パターンといえる。
【0044】
図17を参照して、傾斜波状パターンは、以下の条件に適合すると好ましい。
条数: 1 条 以上
一つのオリフィスから吐出される一つのホットメルト接着剤繊維を一条とする。条数は、必要な塗布幅に応じて変更することができる。
【0045】
条の振れ幅:2〜8mm
条の振れ幅は、基材の移動方向Xに垂直な方向におけるパターンの幅をいう。条の振れ幅は、圧縮空気の圧力を変化させることにより変更できる要素である。条の振れ幅が2mm未満であると、ホットメルト接着剤が棒状に塗布されるので平面を塗布する目的とならない。条の振れ幅を8mm以上にすると、ホットメルト接着剤が飛散ってしまう。したがって、条の振れ幅は、2〜8mmが好ましい。
【0046】
条の振動密度:100回/m〜300回/m
条の振動密度は、基材の長さ1m当たりに接着剤繊維が何回振動しているかを表す。塗布速度(基材の移動速度)を下げれば塗布パターンは高密度となるが、基材の移動方向に重なり合うパターンが多くなる。塗布速度を早くすれば低密度となる。
【0047】
条の太さ(線径): 0.2mm〜0.8mm
ホットメルト接着剤の流量を少なくすれば条の太さ(接着剤繊維の線径)は細くなるが、それに伴って、接着剤繊維が引きちぎられやすくなるので飛散を生じる。ホットメルト接着剤の流量を多くすれば、接着剤繊維の線径は太くなる。
基材に塗布された接着剤付着パターンの線径が0.2mmより小さいと、基材に接着剤繊維が付着する前に飛散してしまうおそれがある。基材に塗布された接着剤付着パターンの線径が0.8mmより大きいと、接着したときに接着剤が基材からはみ出すおそれがある。
【0048】
(製品の実施例)
本実施例による傾斜波状パターンのホットメルト接着剤繊維は、プラスチックシートや不織布などの平面状基材、糸ゴムなどの糸状、ひも状、又は帯状の基材、及び透湿性シートや多孔質シートなどの吸収性基材に非接触で塗布することができる。また、本実施例は、体液を吸収、保持する使い捨ておむつや生理用ナプキン、尿とりパッド、母乳パッド等の使い捨て着用物品の製造において使用できる。
【0049】
図18は、使い捨ておむつに使用される複合シートの概略構成図である。使い捨ておむつに使用される複合シート70は、不織布71と透湿性の樹脂シート72とがホットメルト接着剤73を介して重ね合わせて接合されている。樹脂シート72の接着面には、複数本の傾斜波状パターンのホットメルト接着剤73が付着している。隣り合う傾斜波状パターンは互いに一部重なり合っている。傾斜波状パターンは、乱れなくきれいに形成されている。これによって、接着強度を強くすると共に肌触りをよくしている。
【0050】
本実施例による傾斜波状パターン塗布によれば、隣り合う接着剤繊維の空気流の干渉がなくなり、遮蔽板がなくてもパターンの蛇行及び振れ幅変動を少なくすることができる。
本実施例においては、複数のオリフィスを一列に並べたノズルを示したが、本発明は、これに限定されるものではなく、複数のオリフィスを複数列に並べることもできる。また、複数のオリフィスを千鳥状に並べることもできる。
【0051】
また、図13等の本実施例において、ガス孔56は台形状突起48の両側にそれぞれ二つずつ設けられているが、ガス孔56は、開口がオリフィス48の中心を通る直線A上の円周B上、すなわち直線Aと円Bの周上の交点において、台形状突起46の両側にそれぞれ一個ずつ、該突起46の傾斜面46aに近設させてノズル40の底面44に開口させて設けてもよい。この場合は該直線Aとガス孔の軸線56a(底面視)は一致(合致)する。
【0052】
本発明は、以上の実施形態に限定されるものではなく、その特徴事項から逸脱することなく、他のいろいろな形態で実施することができる。そのため、前述の実施の形態はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、何ら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、すべて本発明の範囲内のものである。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】従来のジグザグ状パターンでホットメルト接着剤を塗布するためのノズルを示す斜視図。
【図2】従来のノズルから吐出されたホットメルト接着剤のジグザグパターンを模式的に描いた説明図。
【図3】遮蔽板(バンク)を設けた従来のノズルを示す斜視図。
【図4】遮蔽板を設けた従来のノズルから吐出されたホットメルト接着剤のジグザグパターンを模式的に描いた説明図。
【図5】本発明の実施例によるノズルの斜視図。
【図6】本発明の実施例によるノズルの側面図。
【図7】本発明の実施例によるノズルの正面図。
【図8】本発明の実施例によるノズルの底面図。
【図9】本発明の実施例によるノズルの平面図。
【図10】図9の線X−Xに沿って取ったノズルの拡大断面図。
【図11】図8の線XI−XIに沿って取ったノズルの拡大断面図。
【図12】図8の線XII−XIIに沿って取ったノズルの拡大断面図。
【図13】図8の円XIIIで囲んだ部分の拡大図。
【図14】ホットメルト接着剤繊維の吐出パターンを模式的に説明する図。
【図15】本発明によるノズルから吐出されたホットメルト接着剤の傾斜波状パターンを模式的に描いた説明図。
【図16】オーバーラップした接着剤付着パターンを示す図。
【図17】傾斜波状パターンの詳細を示す図。
【図18】使い捨ておむつに使用される複合シートの概略構成図。
【符号の説明】
【0054】
40 ノズル
42 本体
44 底面
46 台形状突起
46a 傾斜面
48 オリフィス
48a オリフィスの軸線
50 縦通路
52 上面
54 横通路
56 ガス孔
56a ガス孔の軸線
58 横空気通路
60 ホットメルト接着剤繊維
62 空気流
64 接着剤吐出パターン
66 接着剤付着パターン
68 オーバーラップした接着剤付着パターン
70 複合シート
71 不織布
72 透湿性の樹脂シート
73 ホットメルト接着剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘性流体材料の概ね傾斜波状パターンを形成するノズルであって、
粘性流体材料を吐出して、実質的に連続した粘性流体材料の繊維を形成するためのオリフィスと、
前記ノズルが塗布装置に取り付けられたときに、基材との相対移動方向に対して所定角度で傾斜した所定方向に前記オリフィスを挟んで設けられ、粘性流体材料の繊維に対してガスを噴射して粘性流体材料を該所定方向に振動させる少なくとも一対のガス孔とを有することを特徴とするノズル。
【請求項2】
粘性流体材料の概ね傾斜波状パターンを形成するノズルであって、
前記ノズルが塗布装置に取り付けられたときに、基材との相対移動方向に対して所定角度で傾斜した長手方向に延在する突起と、
前記突起に設けられ、粘性流体材料を吐出して、実質的に連続した粘性流体材料の繊維を形成するためのオリフィスと、
前記突起の長手方向に延在する両壁の近傍にそれぞれ設けられ、粘性流体材料の繊維に対してガスを噴射して粘性流体材料を長手方向とほぼ垂直な方向に振動させる少なくとも二つのガス孔とを有することを特徴とするノズル。
【請求項3】
前記突起は、断面が台形状をしており、前記両壁の近傍にそれぞれ二つのガス孔が設けられ、前記所定角度が約45°であることを特徴とする請求項2に記載のノズル。
【請求項4】
前記突起に設けられた前記オリフィスと前記ガス孔の複数の組が、相対移動方向にほぼ垂直な方向に一列に設けられていることを特徴とする請求項2又は3に記載のノズル。
【請求項5】
粘性流体材料を基材へ塗布する方法であって、
基材と塗布装置との間に所定方向の相対移動を与える行程と、
粘性流体材料を吐出して、実質的に連続した粘性流体材料の繊維を形成する工程と、
粘性流体材料の繊維に対して複数のガス孔からガスを噴射して、前記所定方向に対して所定角度で傾斜した方向に粘性流体材料の繊維を振動させる工程と、
粘性流体材料の繊維を概ね傾斜波状パターンで基材上へ付着させる工程とを有する方法。
【請求項6】
少なくとも二本の粘性流体材料の繊維が概ね傾斜波状パターンで基材上に付着した製造物品を生産する方法であって、
基材と塗布装置との間に所定方向の相対移動を与える行程と、
粘性流体材料を吐出して、実質的に連続した粘性流体材料の繊維を形成する工程と、
粘性流体材料の繊維に対して複数のガス孔からガスを噴射して、前記所定方向に対して所定角度で傾斜した方向に粘性流体材料の繊維を振動させる工程と、
粘性流体材料の繊維を概ね傾斜波状パターンで基材上へ付着させる工程とを有する方法。
【請求項7】
第一表面を有する基材と、
前記第一表面に付着した実質的に連続した接着剤の繊維すなわちフィラメントとからなり、
前記接着剤の繊維すなわちフィラメントは、概ね傾斜波状パターンの繰り返しで形成されており、
前記概ね傾斜波状パターンは、繰り返し形成される前記概ね傾斜波状パターンの連続方向に前記概ね傾斜波状パターンのほぼ中心あるいは中心から上下にわずかにずれた位置を通る仮想線を想定したときに、仮想線を横切る前記概ね傾斜波状パターンの傾きが仮想線に対して90°以内の傾きであることを特徴とする製造物品。
【請求項8】
少なくとも二枚のシート部材を積層することによって形成された複合シートであって、
前記少なくとも二枚のシート部材は、一列に配置されたオリフィスから吐出されて隣り合う縦列を形成するように前記少なくとも二枚のシート部材の一方に付着した少なくとも二本の実質的に連続した接着剤の繊維又はフィラメントにより接合されており、該縦列のそれぞれは、繰り返し形成される概ね傾斜波状パターンで塗布されており、
少なくとも二本の隣り合う縦列の接着剤の繊維すなわちフィラメントの前記概ね傾斜波状パターンが一部重なり合っており、
前記概ね傾斜波状パターンは、繰り返し形成される前記概ね傾斜波状パターンの連続方向に前記概ね傾斜波状パターンのほぼ中心あるいは中心から上下にわずかにずれた位置を通る仮想線を想定したときに、仮想線を横切る前記概ね傾斜波状パターンの傾きが仮想線に対して90°以内の傾きであることを特徴とする複合シート。
【請求項9】
接合された前記シート部材は、不織布及び透湿性の樹脂シートであることを特徴とする請求項8に記載の複合シート。
【請求項10】
前記複合シートは、使い捨ておむつ、生理用ナプキン、尿とりパッド、母乳パッドなどの使い捨て着用物品に使用されることを特徴とする請求項8又は9に記載の複合シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2008−104998(P2008−104998A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−292911(P2006−292911)
【出願日】平成18年10月27日(2006.10.27)
【出願人】(391019120)ノードソン コーポレーション (150)
【氏名又は名称原語表記】NORDSON CORPORATION
【Fターム(参考)】