説明

粘接着剤組成物、粘接着シートおよび半導体装置の製造方法

【課題】薄い半導体チップを実装したパッケージにおいて、厳しいリフロー条件に曝された場合であっても、接着界面の剥離やパッケージクラックの発生がない、高いパッケージ信頼性を達成できる粘接着剤組成物を提供する。
【解決手段】アクリル重合体(A)、エポキシ樹脂(B)、および硬化剤(C)を含有する粘接着剤組成物であって、該組成物中に含まれるエポキシ基数(x)と、該硬化剤(C)が有するエポキシ基と反応しうる官能基数(c)との比(c)/(x)が、0.3〜0.93であることを特徴とする粘接着剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子(半導体チップ)を有機基板やリードフレームにダイボンディングする工程および半導体ウエハなどをダイシングしかつ半導体チップを有機基板やリードフレームにダイボンディングする工程で使用するのに特に適した粘接着剤組成物、および該粘接着剤組成物からなる粘接着剤層を有する粘接着シート、ならびに該粘接着シートを用いた半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコン、ガリウムヒ素などの半導体ウエハは大径の状態で製造され、この半導体ウエハは、素子小片(半導体チップ)に切断分離(ダイシング)された後に次の工程であるマウント工程に移されている。この際、半導体ウエハは予め粘着シートに貼着された状態でダイシング、洗浄、乾燥、エキスパンディング、ピックアップの各工程が加えられた後、次工程のボンディング工程に移送される。
【0003】
これらの工程の中でピックアップ工程とボンディング工程のプロセスを簡略化するために、ウエハ固定機能とダイ接着機能とを同時に兼ね備えたダイシング・ダイボンディング用粘接着シートが種々提案されている(たとえば、特許文献1〜4参照。)。
【0004】
上記特許文献1〜4には、特定の組成物よりなる粘接着剤層と基材とからなる粘接着シートが開示されている。この粘接着剤層は、ウエハダイシング時には、ウエハを固定する機能を有する。さらにこの粘接着剤層は、エネルギー線照射により接着力が低下し基材との間の接着力がコントロールできるため、ダイシング終了後、チップのピックアップを行うと、粘接着剤層はチップとともに剥離される。粘接着剤層を伴ったチップを基板に載置し、加熱すると、粘接着剤層中の熱硬化性樹脂が接着力を発現し、チップと基板との接着が完了する。上記特許文献に開示されている粘接着シートは、いわゆるダイレクトダイボンディングを可能にし、ダイ接着用接着剤の塗布工程を省略できるようになる。
【0005】
ところで、近年、半導体装置に対する要求物性は非常に厳しいものとなっており、厳しい熱湿環境下におけるパッケージ信頼性が求められている。たとえば、半導体チップなどの電子部品の接続においては、環境への配慮から鉛を含まない半田への移行により実装温度が従来の240℃から260℃へと上昇し、パッケージ全体が半田の融点以上の高温化にさらされる表面実装法(リフロー)が行われている。このため、半導体パッケージ内部で発生する応力が大きくなり、接着界面の剥離発生やパッケージクラック発生の危険性が高くなっている。
【0006】
しかしながら、半導体チップ自体が薄型化した現在において、半導体チップの強度が低下し、厳しい熱湿環境下におけるパッケージ信頼性は充分なものとは言えなくなってきている。すなわち、半導体チップの薄型化および実装温度の上昇が、パッケージの信頼性低下を招いている。
【0007】
このような問題は、半導体チップなどの電子部品の封止材料においても起こりうる。この問題を解決するために、上記の表面実装法が適用される環境においても半導体チップなどの封止材料として使用可能な封止用樹脂組成物が提案されている(たとえば、特許文献5参照。)。前記特許文献5には、(A)エポキシ樹脂、(B)フェノール樹脂硬化剤および(C)無機充填材を含有し、該(B)フェノール樹脂硬化剤が有するフェノール性水酸基数(b)と該(A)エポキシ樹脂が有するエポキシ基数(a)との比(b)/(a)を特定の範囲(0.3〜0.7)に調節した封止用樹脂組成物が開示されている。
【特許文献1】特開平2−32181号公報
【特許文献2】特開平8−239636号公報
【特許文献3】特開平10−8001号公報
【特許文献4】特開2000−17246号公報
【特許文献5】特開2004−99836号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このため、薄型化しつつある半導体チップを実装したパッケージにおいて、厳しいリフロー条件に曝された場合であっても、半導体チップや基板などとの接着界面の剥離やパッケージクラックの発生がない、高いパッケージ信頼性を実現することが要求されている。
【0009】
本発明は上記のような従来技術に鑑みてなされたものであって、ダイボンドに使用される接着剤に検討を加え、上記要求に応えることを目的としている。
なお、上記特許文献5に開示されている封止用樹脂組成物は、耐熱性や硬化物の機械特性など封止剤としての性能を得るため、必須成分として無機充填材を含有し(70重量%以上)、しかも本発明で必須成分としているアクリル重合体を含有していないため充分な粘接着性が得られず、造膜性がないことから粘接着シートとして用いることは困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題の解決を目的として鋭意研究し、粘接着剤組成物中に含まれるエポキシ基数と、硬化剤が有するエポキシ基と反応しうる官能基数との比に着目した。従来、粘接着剤組成物中に含まれるエポキシ基数と硬化剤が有するエポキシ基と反応しうる官能基数との比(エポキシ基と反応しうる官能基数/エポキシ基数)は、1.0以上であるのが通常である。しかし、本発明者らは、粘接着剤組成物に含まれるエポキシ基の絶対量を増やすと、厳しいリフロー条件に曝された場合であっても、接着界面の剥離やパッケージクラックが発生しないことを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
本発明の要旨は以下のとおりである。
[1]アクリル重合体(A)、エポキシ樹脂(B)、および硬化剤(C)を含有する粘接着剤組成物であって、該組成物中に含まれるエポキシ基数(x)と、該硬化剤(C)が有するエポキシ基と反応しうる官能基数(c)との比(c)/(x)が、0.3〜0.93であることを特徴とする粘接着剤組成物。
【0012】
[2]前記エポキシ樹脂(B)として、エポキシ当量が180g/eq以下であるエポキシ樹脂を少なくとも用いることを特徴とする前記[1]に記載の粘接着剤組成物。
[3]前記硬化剤(C)が、フェノール性水酸基を2個以上有する化合物であることを特徴とする前記[1]または[2]に記載の粘接着剤組成物。
【0013】
[4]前記[1]から[3]のいずれかに記載の粘接着剤組成物からなる粘接着剤層が基材上に形成されてなることを特徴とする粘接着シート。
[5]前記[4]に記載の粘接着シートの粘接着剤層に半導体ウエハを貼着し、該半導体ウエハをダイシングして半導体チップとし、該半導体チップ裏面に該粘接着剤層を固着残存させて基材から剥離し、該半導体チップをダイパッド部上に該粘接着剤層を介して熱圧着する工程を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、薄型化しつつある半導体チップを実装したパッケージにおいて、厳しいリフロー条件に曝された場合であっても、半導体チップや基板などとの接着界面の剥離
やパッケージクラックの発生がない、高いパッケージ信頼性を達成できる粘接着剤組成物および該粘接着剤組成物からなる粘接着剤層を有する粘接着シートならびに該粘接着シートを用いた半導体装置の製造方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明についてさらに具体的に説明する。
本発明に係る粘接着剤組成物は、アクリル重合体(A)、エポキシ樹脂(B)および硬化剤(C)を必須成分として含有し、該組成物中に含まれるエポキシ基数(x)と、硬化剤(C)が有するエポキシ基と反応しうる官能基数(c)との比(c)/(x)が0.3〜0.93であることを特徴とするが、各種物性を改良するため、必要に応じ他の成分を含有してもよい。以下、これら各成分について具体的に説明する。
【0016】
(A)アクリル重合体;
本発明において、粘接着剤組成物に充分な粘接着性および造膜性(シート加工性)を付与するためにアクリル重合体(A)が用いられる。アクリル重合体(A)としては、従来公知のアクリル重合体を用いることができる。
【0017】
アクリル重合体(A)の重量平均分子量は、1万以上200万以下であることが望ましく、10万以上150万以下であることがより望ましい。アクリル重合体(A)の重量平均分子量が低過ぎると粘接着剤層と基材との粘着力が高くなり、ピックアップ不良が起こることがあり、高過ぎると基板の凹凸へ粘接着剤層が追従できないことがあり、ボイドなどの発生要因になることがある。
【0018】
アクリル重合体(A)のガラス転移温度は、好ましくは−60℃以上10℃以下、さらに好ましくは−50℃以上5℃以下、特に好ましくは−40℃以上0℃以下の範囲にある。アクリル重合体(A)のガラス転移温度が低過ぎると粘接着剤層と基材との剥離力が大きくなってチップのピックアップ不良が起こることがあり、高過ぎるとウエハを固定するための接着力が不充分となるおそれがある。
【0019】
上記アクリル重合体(A)を構成するモノマーとしては、(メタ)アクリル酸エステルモノマーまたはその誘導体が挙げられる。例えば、アルキル基の炭素数が1〜18であるアルキル(メタ)アクリレート、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレートなどが挙げられ;環状骨格を有する(メタ)アクリレート、例えばシクロアルキル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソボルニルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート、イミドアクリレートなどが挙げられ;水酸基を有する2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレートなどが挙げられる。これらの中では、水酸基を有するモノマーを重合して得られるアクリル重合体が、エポキシ樹脂(B)との相溶性が良いため好ましい。また、上記アクリル重合体(A)は、酢酸ビニル、アクリロニトリル、スチレンなどが共重合されていてもよい。
【0020】
(B)エポキシ樹脂;
エポキシ樹脂(B)としては、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂であれば、分子構造、分子量などに制限されることなく一般に使用されているものを広く用いることができるが、エポキシ当量が180g/eq以下であるエポキシ樹脂を少なくとも用いることが好ましく、エポキシ当量が70〜170g/eqであるエポキシ樹脂を少なくとも用いることがより好ましい。エポキシ当量が前記範囲にあるエポキシ樹脂を用いると、接着性に寄与するエポキシ基の絶対量が多いエポキシ樹脂を用いることになる。
このため、本発明の粘接着剤組成物を硬化させてなる硬化物は高い接着性能を有し、該粘接着剤組成物を粘接着剤として用いて製造されたパッケージは、厳しいリフロー条件に曝された場合であっても、接着界面の剥離やパッケージクラックが発生しない、または、極めて発生し難い。なお、本発明におけるエポキシ当量の値は、JIS K7236に準じて測定される場合の値である。
【0021】
本発明において、上記エポキシ当量が180g/eq以下であるエポキシ樹脂を用いる場合にあっては、エポキシ樹脂(B)中、エポキシ当量が180g/eq以下であるエポキシ樹脂は通常5重量%以上、好ましくは10〜99重量%、さらに好ましくは10〜70重量%の範囲で含まれる。
【0022】
上記エポキシ当量が180g/eq以下であるエポキシ樹脂としては、具体的には、下記式(1)で示されるような多官能系エポキシ樹脂や、下記式(2)で示されるビフェニル化合物などが挙げられる。これらは、1種単独で、または2種以上混合して使用することができる。
【0023】
【化1】

(但し、式中nは0以上の整数を表す。)
【0024】
【化2】

また、上記エポキシ当量が180g/eqを超えるエポキシ樹脂としては、具体的には、下記式(3)で示されるようなビフェニル型エポキシ樹脂、下記式(4)で示されるようなクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、下記式(5)で示されるようなジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、複素環型エポキシ樹脂、下記式(6)で示されるようなビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、縮合環芳香族炭化水素変性エポキシ樹脂や、これらのハロゲン化物などが挙げられる。これらは、1種単独で、または2種以上混合して使用することができる。
【0025】
【化3】

(但し、式中nは0以上の整数を表す。)
【0026】
【化4】

(但し、式中nは0以上の整数を表す。)
【0027】
【化5】

(但し、式中nは0以上の整数を表す。)
【0028】
【化6】

(但し、式中nは0以上の整数を表す。)
本発明の粘接着剤組成物には、アクリル重合体(A)100重量部に対して、エポキシ樹脂(B)が、好ましくは1〜1500重量部含まれ、より好ましくは3〜1200重量部含まれ、さらに好ましくは500〜1000重量部含まれる。エポキシ樹脂(B)の含
有量が1重量部未満であると充分な接着性が得られないことがあり、1500重量部を超えると粘接着剤層と基材との剥離力が高くなり、ピックアップ不良が起こることがある。
【0029】
(C)硬化剤;
本発明において、硬化剤(C)は、エポキシ樹脂(B)に対する硬化剤として機能する。好ましい硬化剤(C)としては、1分子中にエポキシ基と反応しうる官能基を2個以上有する化合物が挙げられ、その官能基としてはフェノール性水酸基、アルコール性水酸基、アミノ基、カルボキシル基および酸無水物などが挙げられる。これらのうち、好ましくはフェノール性水酸基、アミノ基、酸無水物などが挙げられ、さらに好ましくはフェノール性水酸基、アミノ基が挙げられる。
【0030】
これらの具体的な例としては、下記式(7)で示される多官能系フェノール樹脂や、下記式(8)で示されるビフェノール、下記式(9)で示されるノボラック型フェノール樹脂、下記式(10)で示されるジシクロペンタジエン系フェノール樹脂などのフェノール性硬化剤や、下記式(11)で示されるザイロック型フェノール樹脂や、DICY(ジシアンジアミド)などのアミン系硬化剤が挙げられる。これらは、1種単独で、または2種以上混合して使用することができる。
【0031】
【化7】

(但し、式中nは0以上の整数を表す。)
【0032】
【化8】

【0033】
【化9】

(但し、式中nは0以上の整数を表す。)
【0034】
【化10】

(但し、式中nは0以上の整数を表す。)
【0035】
【化11】

(但し、式中nは0以上の整数を表す。)
本発明の粘接着剤組成物には、該組成物中に含まれるエポキシ基数(x)と、硬化剤(C)が有するエポキシ基と反応しうる官能基数(c)との比(c)/(x)が0.3〜0.93、好ましくは0.5〜0.9の範囲になる量で、硬化剤(C)が含まれる。なお、本発明において、粘接着剤組成物中に含まれるエポキシ基数(x)とは、アクリル重合体(A)が有するエポキシ基数(a)と、エポキシ樹脂(B)が有するエポキシ基数(b)と、必要に応じて含まれる他の成分が有するエポキシ基数(y)との和(a)+(b)+(y)を指す。たとえば、本発明の粘接着剤組成物が後述するエポキシ基を有するカップリング剤(E)(エポキシ基数を(e)とする。)を含む場合、(x)=(a)+(b)+(e)である。
【0036】
硬化剤(C)の含有量が過小で(c)/(x)が上記範囲を下回ると、硬化不足で接着性が得られないことがある。また、硬化剤(C)の含有量が過剰で(c)/(x)が上記範囲を上回ると吸水率が高くなり、吸水後の接着力が低下してしまい、パッケージの信頼性を充分向上させることが困難となる。
【0037】
本発明に係る粘接着剤組成物は、上記アクリル重合体(A)、エポキシ樹脂(B)および硬化剤(C)を必須成分として含有し、各種物性を改良するため、必要に応じ下記の成分を含有してもよい。
【0038】
(D)硬化促進剤;
硬化促進剤(D)は、粘接着剤組成物の硬化速度を調整するために用いられる。
好ましい硬化促進剤としては、エポキシ基とフェノール性水酸基やアミンなどとの反応を促進し得る化合物が挙げられ、具体的には、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノールなどの3級アミン類;2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾールなどのイミダゾール類;トリブチルホスフィン、ジフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィンなどの有機ホスフィン類;テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、トリフェニルホスフィンテトラフェニルボレートなどのテトラフェニルボロン塩などが挙げられる。これらは1種単独で、または2種以上混合して使用することができる。
【0039】
硬化促進剤(D)は、エポキシ樹脂(B)および硬化剤(C)の合計100重量部に対
して、好ましくは0.001〜100重量部、より好ましくは0.01〜50重量部、さらに好ましくは0.1〜10重量部の量で含まれる。
【0040】
(E)カップリング剤;
カップリング剤(E)は、粘接着剤組成物の被着体に対する接着性、密着性を向上させるために用いられる。また、カップリング剤(E)を使用することで、粘接着剤組成物を硬化して得られる硬化物の耐熱性を損なうことなく、その耐水性を向上することができる。
【0041】
カップリング剤(E)としては、上記アクリル重合体(A)、エポキシ樹脂(B)などが有する官能基と反応する基を有する化合物が好ましく使用される。カップリング剤(E)としては、シランカップリング剤が望ましい。このようなカップリング剤としてはγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−(メタクリロプロピル)トリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−6−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−6−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルファン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、イミダゾールシランなどが挙げられる。これらは1種単独で、または2種以上混合して使用することができる。
【0042】
カップリング剤(E)は、エポキシ樹脂(B)および硬化剤(C)の合計100重量部に対して、通常0.1〜20重量部、好ましくは0.2〜10重量部、より好ましくは0.3〜5重量部の割合で用いられる。カップリング剤(E)の含有量が0.1重量部未満だと効果が得られない可能性があり、20重量部を超えるとアウトガスの原因となる可能性がある。
【0043】
(F)架橋剤;
粘接着剤組成物の初期接着力および凝集力を調節するために、架橋剤(F)を添加することもできる。架橋剤(F)としては有機多価イソシアナート化合物、有機多価イミン化合物が挙げられる。
【0044】
上記有機多価イソシアナート化合物としては、芳香族多価イソシアナート化合物、脂肪族多価イソシアナート化合物、脂環族多価イソシアナート化合物およびこれらの有機多価イソシアナート化合物の三量体、ならびにこれら有機多価イソシアナート化合物とポリオール化合物とを反応させて得られる末端イソシアナートウレタンプレポリマーなどを挙げることができる。有機多価イソシアナート化合物の具体的な例としては、たとえば2,4−トリレンジイソシアナート、2,6−トリレンジイソシアナート、1,3−キシリレンジイソシアナート、1,4−キシレンジイソシアナート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアナート、ジフェニルメタン−2,4’−ジイソシアナート、3−メチルジフェニルメタンジイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナート、イソホロンジイソシアナート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアナート、ジシクロヘキシルメタン−2,4’−ジイソシアナート、トリメチロールプロパンアダクトトルイレンジイソシアナート、リジンイソシアナートなどが挙げられる。
【0045】
上記有機多価イミン化合物の具体例としては、N,N’−ジフェニルメタン−4,4’−ビス(1−アジリジンカルボキシアミド)、トリメチロールプロパン−トリ−β−アジ
リジニルプロピオナート、テトラメチロールメタン−トリ−β−アジリジニルプロピオナート、N,N’−トルエン−2,4−ビス(1−アジリジンカルボキシアミド)トリエチレンメラミンなどを挙げることができる。
【0046】
架橋剤(F)は、アクリル重合体(A)100重量部に対して、通常0.01〜10重量部、好ましくは0.1〜5重量部、より好ましくは0.5〜3重量部の割合で用いられる。
【0047】
(G)無機充填材;
無機充填材を粘接着剤に配合することにより、熱膨張係数を調整することが可能となり、金属や有機樹脂からなる基板と異なる熱膨張係数を有する半導体チップに対し、硬化後の粘接着剤層の熱膨張係数を最適化することでパッケージの耐熱性を向上させることができる。また、粘接着剤層の硬化後の吸湿率を低減させることも可能となる。
【0048】
好ましい無機充填材としては、シリカ、アルミナ、タルク、炭酸カルシウム、チタンホワイト、ベンガラ、炭化珪素、窒化ホウ素などの粉末、これらを球形化したビーズ、単結晶繊維、アモルファス繊維などが挙げられる。これらは1種単独で、または2種以上混合して使用することができる。本発明においては、これらのなかでも、シリカ粉末、アルミナ粉末の使用が好ましい。
【0049】
無機充填材の使用量は、本発明の粘接着剤組成物全体に対して、通常70重量%未満、好ましくは0.1〜60重量%、より好ましくは5〜40重量%の範囲で調整が可能である。本発明の粘接着剤組成物においては、無機充填材は必須成分ではないが、無機充填材の使用量が前記範囲にあると、粘接着剤組成物に適切な熱膨張係数を付与することができ、熱硬化後においても基板および半導体チップ双方に対して良好な接着性が発現される。
【0050】
(H)エネルギー線重合性化合物;
本発明の粘接着剤組成物には、エネルギー線重合性化合物(H)が配合されてもよい。エネルギー線重合性化合物(H)をエネルギー線照射によって重合・硬化させることで、粘接着剤層の粘着力を低下させることができるため、基材と粘接着剤層との層間剥離を容易に行えるようになる。
【0051】
エネルギー線重合性化合物(H)は、紫外線や電子線などのエネルギー線の照射を受けると重合・硬化する化合物である。このエネルギー線重合性化合物としては、具体的には、ジシクロペンタジエンジメトキシジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートあるいは1,4−ブチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、オリゴエステルアクリレート、ウレタンアクリレート系オリゴマー、エポキシ変性アクリレート、ポリエーテルアクリレート、イタコン酸オリゴマーなどのアクリレート系化合物が用いられる。このような化合物は、分子内に少なくとも1つの重合性二重結合を有し、重量平均分子量が通常100〜30,000、好ましくは300〜10,000程度である。
【0052】
エネルギー線重合性化合物(H)を使用する場合は、エネルギー線重合性化合物(H)は、アクリル共重合体(A)100重量部に対して、通常1〜400重量部、好ましくは3〜300重量部、より好ましくは10〜200重量部の割合で用いられる。400重量部を超えると、有機基板やリードフレームに対する粘接着剤層の接着性が低下することがある。
【0053】
(I)光重合開始剤;
本発明の粘接着剤組成物には、光重合開始剤(I)が配合されてもよい。上記エネルギー線重合性化合物(H)、およびエネルギー線として紫外線などの光を使用する場合には、その使用に際して、粘接着剤組成物中に光重合開始剤(I)を添加することで、重合・硬化時間および光線照射量を少なくすることができる。
【0054】
このような光重合開始剤(I)としては、具体的には、ベンゾフェノン、アセトフェノン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾイン安息香酸、ベンゾイン安息香酸メチル、ベンゾインジメチルケタール、2,4−ジエチルチオキサンソン、α−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンジルジフェニルサルファイド、テトラメチルチウラムモノサルファイド、アゾビスイソブチロニトリル、ベンジル、ジベンジル、ジアセチル、β−クロールアンスラキノンなどが挙げられる。光重合開始剤(I)は1種類単独で、または2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0055】
光重合開始剤(I)の配合割合は、理論的には、粘接着剤中に存在する不飽和結合量やその反応性および使用される光重合開始剤の反応性に基づいて、決定されるべきであるが、複雑な混合物系においては必ずしも容易ではない。光重合開始剤(I)を使用する場合には、一般的な指針として、光重合開始剤(I)は、アクリル共重合体(A)100重量部に対して、0.1〜10重量部含まれることが好ましく、1〜5重量部含まれることがより好ましい。光重合開始剤(I)の含有量が前記範囲にあると、満足なピックアップ性が得られる。10重量部を超えると光重合に寄与しない残留物が生成し、粘接着剤の硬化性が不充分となることがある。
【0056】
(その他の成分)
本発明の粘接着剤組成物には、上記の他に、必要に応じて各種添加剤が配合されてもよい。たとえば、硬化後の可とう性を保持するため可とう性成分を添加することができる。可とう性成分は、常温および加熱下で可とう性を有する成分である。可とう性成分は、熱可塑性樹脂やエラストマーからなるポリマーであってもよいし、ポリマーのグラフト成分、ポリマーのブロック成分であってもよい。また、可とう性成分がエポキシ樹脂に予め変性された変性樹脂であってもよい。
【0057】
さらに、粘接着剤組成物の各種添加剤としては、可塑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、顔料、染料などを用いてもよい。
(粘接着剤組成物)
上記のような各成分からなる粘接着剤組成物は、感圧接着性と加熱硬化性とを有し、未硬化状態では各種被着体を一時的に保持する機能を有する。そして熱硬化を経て最終的には耐衝撃性の高い硬化物を与えることができ、しかもせん断強度と剥離強度とのバランスにも優れ、厳しい熱湿条件下においても充分な接着性を保持し得る。
【0058】
本発明に係る粘接着剤組成物は、上記各成分を適宜の割合で混合して得られる。混合に際しては、各成分を予め溶媒で希釈しておいてもよく、また混合時に溶媒を加えてもよい。
【0059】
(粘接着シート)
本発明に係る粘接着シートは、基材上に、上記粘接着剤組成物からなる粘接着剤層が積層してなる。本発明に係る粘接着シートの形状は、テープ状、ラベル状などあらゆる形状をとり得る。
【0060】
粘接着シートの基材としては、たとえば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィ
ルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリウレタンフィルム、エチレン酢酸ビニル共重合体フィルム、アイオノマー樹脂フィルム、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体フィルム、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリイミドフィルム、フッ素樹脂フィルムなどの透明フィルムが用いられる。また、これらの架橋フィルムも用いられる。さらにこれらの積層フィルムであってもよい。また、前記の透明フィルムの他、これらを着色した不透明フィルムなどを用いることができる。
【0061】
本発明に係る粘接着シートは、各種の被着体に貼付され、被着体に所要の加工を施した後、粘接着剤層は、被着体に固着残存させて基材から剥離される。すなわち、粘接着剤層を、基材から被着体に転写する工程を含むプロセスに使用される。このため、基材の粘接着剤層に接する面の表面張力は、好ましくは40mN/m以下、さらに好ましくは37mN/m以下、特に好ましくは35mN/m以下である。下限値は通常25mN/m程度である。このような表面張力が低い基材は、材質を適宜に選択して得ることが可能であるし、また基材の表面に剥離剤を塗布して剥離処理を施すことで得ることもできる。
【0062】
基材の剥離処理に用いられる剥離剤としては、アルキッド系、シリコーン系、フッ素系、不飽和ポリエステル系、ポリオレフィン系、ワックス系などが用いられるが、特にアルキッド系、シリコーン系、フッ素系の剥離剤が耐熱性を有するので好ましい。
【0063】
上記の剥離剤を用いて基材の表面を剥離処理するためには、剥離剤をそのまま無溶剤で、または溶剤希釈やエマルション化して、グラビアコーター、メイヤーバーコーター、エアナイフコーター、ロールコーターなどにより塗布して、常温もしくは加熱または電子線硬化させたり、ウェットラミネーションやドライラミネーション、熱溶融ラミネーション、溶融押出ラミネーション、共押出加工などで積層体を形成すればよい。
【0064】
基材の膜厚は、通常は10〜500μm、好ましくは15〜300μm、特に好ましくは20〜250μm程度である。
また、粘接着剤層の厚みは、通常は1〜500μm、好ましくは5〜300μm、特に好ましくは10〜150μm程度である。
【0065】
粘接着シートの製造方法は、特に限定はされず、基材上に、粘接着剤層を構成する組成物を塗布乾燥することで製造してもよく、また粘接着剤層を剥離フィルム上に設け、これを上記基材に転写することで製造してもよい。なお、粘接着シートの使用前に、粘接着剤層を保護するために、粘接着剤層の上面に剥離フィルムを積層しておいてもよい。また、粘接着剤層の表面外周部には、リングフレームなどの他の治具を固定するために別途粘着剤層や粘着テープが設けられていてもよい。
【0066】
次に本発明に係る粘接着シートの利用方法について、該粘接着シートを半導体装置の製造に適用した場合を例にとって説明する。
(半導体装置の製造方法)
本発明に係る半導体装置の製造方法は、上記粘接着シートの粘接着剤層に半導体ウエハを貼着し、該半導体ウエハをダイシングして半導体チップとし、該半導体チップ裏面に粘接着剤層を固着残存させて基材から剥離し、該半導体チップをダイパッド部上に該粘接着剤層を介して熱圧着する工程を含む。
【0067】
以下、本発明に係る半導体装置の製造方法について説明する。
本発明に係る半導体装置の製造方法においては、まず、本発明に係る粘接着シートをダ
イシング装置上に、リングフレームにより固定し、半導体ウエハの一方の面を粘接着シートの粘接着剤層上に載置し、軽く押圧し、半導体ウエハを固定する。次いで、ダイシングソーなどの切断手段を用いて、上記の半導体ウエハを切断し半導体チップを得る。この際の切断深さは、半導体ウエハの厚みと、粘接着剤層の厚みとの合計およびダイシングソーの磨耗分を加味した深さにする。
【0068】
次いで必要に応じ、粘接着シートのエキスパンドを行うと、半導体チップ間隔が拡張し、半導体チップのピックアップをさらに容易に行えるようになる。この際、粘接着剤層と基材との間にずれが発生することになり、粘接着剤層と基材との間の接着力が減少し、半導体チップのピックアップ性が向上する。
【0069】
このようにして半導体チップのピックアップを行うと、切断された粘接着剤層を半導体チップ裏面に固着残存させて基材から剥離することができる。
次いで粘接着剤層を介して半導体チップを有機基板またはリードフレーム上のダイパッド部に載置する。ダイパッド部は半導体チップを載置する前に加熱するか載置直後に加熱される。加熱温度は、通常は80〜200℃、好ましくは100〜180℃であり、加熱時間は、通常は0.1秒〜5分、好ましくは0.5秒〜3分であり、チップマウント圧力は、通常1kPa〜600MPaである。
【0070】
半導体チップをダイパッド部にチップマウントした後、必要に応じさらに加熱を行ってもよい。この際の加熱条件は、上記加熱温度の範囲であって、加熱時間は通常1〜180分、好ましくは10〜120分である。
【0071】
また、チップマウント後の加熱処理は行わずに仮接着状態としておき、パッケージ製造において通常行われる樹脂封止での加熱を利用して粘接着剤層を硬化させてもよい。
このような工程を経ることで、粘接着剤層が硬化し、半導体チップとダイパッド部とを強固に接着することができる。粘接着剤層はダイボンド条件下では流動化しているため、ダイパッド部の凹凸にも充分に埋め込まれ、ボイドの発生を防止できる。
【0072】
すなわち、得られる実装品においては、半導体チップの固着手段である粘接着剤が硬化し、かつダイパッド部の凹凸にも充分に埋め込まれた構成となるため、過酷な条件下にあっても、充分なパッケージ信頼性とボード実装性とが達成される。
【0073】
なお、本発明の粘接着剤組成物および粘接着シートは、上記のような使用方法の他、半導体化合物、ガラス、セラミックス、金属などの接着に使用することもできる。
【実施例】
【0074】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例および比較例において、<せん断応力測定評価>および<表面実装性の評価>は次のように行った。
【0075】
<せん断応力測定評価>
(1)チップの作成;
ウエハグラインド装置(DISCO社製,DFG840)により#2000研磨したシリコンウエハ(150mm径,厚さ350μm)の研磨面に、実施例および比較例の粘接着シートの貼付をテープマウンター(リンテック社製,Adwill RAD2500)により行い、ウエハダイシング用リングフレームに固定した。その後、エネルギー線重合性化合物および光重合開始剤を含む粘接着剤組成物を用いた粘接着シートの場合には、紫外線照射装置(リンテック社製,Adwill RAD2000)を用いて粘接着シートの基材面から紫外線を照射(350mW/cm2,190mJ/cm2)し、粘接着シート
の基材から個片化したチップおよび粘接着剤層を容易に剥離できるようにした。
【0076】
次いで、ダイシング装置(東京精密社製,AWD―4000B)を使用してダイシングし、5mm×5mmサイズのチップを得た。ダイシングの際の切り込み量については、粘接着シートの基材を20μm切り込むようにした。
【0077】
(2)被着体チップの作成;
ウエハグラインド装置(DISCO社製、DGP8760)により表面をドライポリッシュ処理し、表面粗度を0.12μmにしたシリコンウエハ(200mm径,厚さ350μm)の研磨面の反対面に、ダイシングテープ(リンテック社製,Adwill D―175)の貼付を上記(1)と同様に行った。
【0078】
次いで、ダイシング装置(東京精密社製,AWD−4000B)を使用してダイシングし、12mm×12mmサイズの被着体チップを作成した。ダイシングの際、ドライポリッシュ処理した研磨面を上面に、切り込み量については、ダイシングテープの基材を20μm切り込むようにした。
【0079】
その後、紫外線照射装置(リンテック社製,Adwill RAD2000)を用いてダイシングテープの基材面から紫外線を照射(350mW/cm2,190mJ/cm2)し、ダイシングテープから個片化した被着体チップを容易に剥離できるようにした。
【0080】
(3)測定試験片の作成;
上記(1)で得たチップを、粘接着シートの粘接着剤層とともに基材から取り上げ、上記(2)で得た被着体チップのドライポリッシュ処理した研磨面上に該粘接着剤層を介して120℃,100gf,1秒間の条件で圧着し、次いで120℃で30分、さらに140℃で30分の条件で加熱し、粘接着剤層を充分熱硬化させ試験片(ア)を得た。
【0081】
また、もう一つの試験片として、上記(1)で得たチップを、粘接着シートの粘接着剤層とともに基材から取り上げ、ソルダーレジスト(太陽インキ製PSR4000 AUS303)を40μm厚で有しているFR―4基板上に該粘接着剤層を介して120℃,100gf,1秒間の条件で圧着し、次いで120℃で30分、さらに140℃で30分の条件で加熱し、粘接着剤層を充分熱硬化させ試験片(イ)を得た。
【0082】
(4)試験片の吸湿処理;
上記(3)で得た試験片(ア)および(イ)を温度85℃、湿度85%RHの環境下に168時間放置した。
【0083】
(5)測定;
上記(4)の吸湿処理を行った試験片(ア)および(イ)を、ボンドテスター(Dage社製,ボンドテスターSeries4000)の250℃に設定された測定ステージ上に30秒間放置し、被着体である被着体チップまたはFR−4基板より10μmの高さの位置よりスピード200μm/sで接着面に対し垂直方向(せん断方向)に応力をかけ、粘接着剤層と、(ア)被着体チップのドライポリッシュ処理した研磨面、または(イ)FR−4基板のレジスト面との接着状態が破壊する時の力(N)を測定した。また1水準の測定値として6サンプルの平均値を計算することにより求めた。
【0084】
<表面実装性の評価>
(10)半導体チップの製造;
ウエハグラインド装置(DISCO社製、DGP8760)により表面をドライポリッシュ処理し、表面粗度を0.12μmにしたシリコンウエハ(150mm径,厚さ50μ
m)の研磨面に、実施例および比較例の粘接着シートの貼付をテープマウンター(リンテック社製,Adwill RAD2500)により行い、ウエハダイシング用リングフレームに固定した。その後、エネルギー線重合性化合物および光重合開始剤を含む粘接着剤組成物を用いた粘接着シートの場合には、紫外線照射装置(リンテック社製,Adwill RAD2000)を用いて、粘接着シートの基材面から紫外線を照射(350mW/cm2,190mJ/cm2)した。
【0085】
次いで、ダイシング装置(東京精密社製,AWD―4000B)を使用してダイシングし、8mm×8mmサイズのチップを得た。ダイシングの際の切り込み量については、粘接着シートの基材を20μm切り込むようにした。
【0086】
(20)半導体パッケージの製造;
基板として銅箔張り積層板(三菱ガス化学株式会社製CCL−HL832HS)の銅箔に回路パターンが形成され、パターン上にソルダーレジスト(太陽インキ製PSR4000 AUS303)を40μm厚で有しているBT基板を用いた(日立超LSIシステム
製,210μm厚)。上記(10)で得たチップを、粘接着シートの粘接着剤層とともに
基材から取り上げ、BT基板上に粘接着剤層を介して120℃,100gf,1秒間の条件で圧着し、次いで120℃で30分、さらに140℃で30分の条件で加熱し、粘接着剤層を充分熱硬化させた。
【0087】
その後、モールド樹脂(京セラケミカル株式会社製KE−G1250)で封止厚400μmになるようにBT基板を封止し(封止装置 アピックヤマダ株式会社製MPC−06M Trial Press)、175℃,5時間でモールド樹脂を硬化させた。
【0088】
次いで、封止されたBT基板をダイシングテープ(リンテック株式会社製Adwill
D―510T)に貼付して、ダイシング装置(東京精密社製,AWD−4000B)を使用して12mm×12mmサイズにダイシングすることで信頼性評価用の半導体パッケージを得た。
【0089】
(30)半導体パッケージ表面実装性の評価;
得られた半導体パッケージを85℃、60%RH条件下に168時間放置し、吸湿させた後、最高温度260℃、加熱時間1分間のIRリフロー(リフロー炉:相模理工製WL−15−20DNX型)を3回行った際に、接合部の浮き・剥がれの有無、パッケージクラック発生の有無を走査型超音波探傷装置(日立建機ファインテック株式会社製Hye−Focus)および断面観察により評価した。
【0090】
基板またはチップとの接合部に0.25mm2以上の剥離を観察した場合を剥離してい
ると判断して、パッケージを25個試験に投入し剥離が発生しなかった個数を数えた。また、接合部の浮き・剥がれ、パッケージクラックなどが発生した箇所(基板またはチップとの接合部)についても評価した。
【0091】
<粘接着剤組成物>
粘接着剤組成物を構成する各成分は下記の通りであった。
(A)アクリル重合体:日本合成化学工業株式会社製 コーポニールN−2359−6(Mw:約30万,エポキシ当量710g/eq)
(B−1)固体エポキシ樹脂:多官能系エポキシ樹脂(日本化薬株式会社製 EPPN―502H,エポキシ当量169g/eq)
(B−2)液状エポキシ樹脂:ビスフェノールA型エポキシ樹脂20phrアクリル粒子含有品(株式会社日本触媒製 エポセットBPA328,エポキシ当量235g/eq)(C)硬化剤:ノボラック型フェノール樹脂(昭和高分子株式会社 ショウノールBRG
―556,フェノール性水酸基当量104g/eq)
(D)硬化促進剤:イミダゾール(四国化成工業株式会社製 キュアゾール2PHZ)
(E)シランカップリング剤(三菱化学株式会社製 MKCシリケートMSEP2,エポキシ当量222g/eq)
(G)無機充填材:株式会社アドマテックス製 アドマファインSC2050
(H)エネルギー線重合性化合物:ジシクロペンタジエンジメトキシジアクリレート(日本化薬株式会社製 KAYARAD R−684)
(I)光重合開始剤:α−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製 イルガキュア184)
<基材>
粘接着シートの基材としては、ポリエチレンフィルム(厚さ100μm、表面張力33mN/m)を用いた。
【0092】
(実施例および比較例)
表1に記載の組成の粘接着剤組成物を使用した。表1中、数値は固形分換算の重量部を示す。表1に記載の組成の粘接着剤組成物のMEK(メチルエチルケトン)溶液(固形濃度61wt%)を、シリコーン処理された剥離フィルム(リンテック株式会社製 SP―PET3811(S))上に30μmの厚みになるように塗布、乾燥(乾燥条件:オーブンにて100℃、1分間)した後に基材と貼り合せて、粘接着剤層を基材上に転写することで粘接着シートを得た。
【0093】
得られた粘接着シートを用いて、<せん断応力測定評価>および<表面実装性の評価>を行った。結果を表2に示す。
【0094】
【表1】

【0095】
【表2】

半導体チップなどの表面実装においては、接合部分におけるせん断応力が大きい程、パッケージの信頼性が高く好ましい。上記の<せん断応力測定評価>および<表面実装性の
評価>によれば、本発明で規定する適切な量のエポキシ基が含まれない粘接着剤組成物を用いたパッケージは、チップのドライポリッシュ面または基板のレジスト面でのせん断応力が小さくなり、表面実装性の信頼性が低下した。すなわち、半導体チップを実装したパッケージにおいて、ドライポリッシュ面でのせん断応力が68N以下の場合は、被着体チップとの接合部分で界面剥離やクラックの発生などの接合不良が発生した。また、レジスト面でのせん断応力が40N以下の場合は、基板との接合部分で界面剥離やクラックの発生などの接合不良が発生した。
【0096】
しかしながら、適切な量のエポキシ基が含まれる本発明に係る粘接着剤組成物を用いることにより、ドライポリッシュ面およびレジスト面双方で良好なせん断応力を有し、表面実装評価においても接合不良が発生しない半導体パッケージが得られた。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明によれば、薄型化しつつある半導体チップを実装したパッケージにおいて、厳しいリフロー条件に曝された場合であっても、高いパッケージ信頼性を達成できる粘接着剤組成物および該粘接着組成物からなる粘接着剤層を有する粘接着シートならびに該粘接着シートを用いた半導体装置の製造方法が提供される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル重合体(A)、エポキシ樹脂(B)、および硬化剤(C)を含有する粘接着剤組成物であって、該組成物中に含まれるエポキシ基数(x)と、該硬化剤(C)が有するエポキシ基と反応しうる官能基数(c)との比(c)/(x)が、0.3〜0.93であることを特徴とする粘接着剤組成物。
【請求項2】
前記エポキシ樹脂(B)として、エポキシ当量が180g/eq以下であるエポキシ樹脂を少なくとも用いることを特徴とする請求項1に記載の粘接着剤組成物。
【請求項3】
前記硬化剤(C)が、フェノール性水酸基を2個以上有する化合物であることを特徴とする請求項1または2に記載の粘接着剤組成物。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の粘接着剤組成物からなる粘接着剤層が基材上に形成されてなることを特徴とする粘接着シート。
【請求項5】
請求項4に記載の粘接着シートの粘接着剤層に半導体ウエハを貼着し、該半導体ウエハをダイシングして半導体チップとし、該半導体チップ裏面に該粘接着剤層を固着残存させて基材から剥離し、該半導体チップをダイパッド部上に該粘接着剤層を介して熱圧着する工程を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。

【公開番号】特開2009−203332(P2009−203332A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−46502(P2008−46502)
【出願日】平成20年2月27日(2008.2.27)
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【Fターム(参考)】