説明

粘着性アクリル系熱伝導シート

【課題】 高熱伝導性を有し、かつ良好な粘着特性を有するアクリル系熱伝導シートを提供する。
【解決手段】 (a)炭素数2〜12のアルキル基を有するアクリレートまたはメタクリレート、(b)式(1)で表されるアクリル系モノマー、(c)ポリチオール、(d)アクリル酸、(e)無機粉末からなり、無機粉末を除く樹脂成分中のアクリル酸の割合が6〜10体積%、全構成材料中の無機粉末の配合割合が30〜50体積%、かつ無機粉末の平均粒子径が1〜4μmであることを特徴とする粘着性アクリル系熱伝導シート。
【化11】



ここでR1は水素またはメチル基を表す。R2はエチレン基、プロピレン基、ブチレン基等のアルキレン基を表し、R3は水素または炭素数1〜12のアルキル基または置換または非置換のフェニル基を表し、nは0〜12の整数を表す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は粘着性を有するアクリル系熱伝導シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子機器内の各部品の固定方法として、ねじ止め法、接着剤固定法などがあるが、手間がかかるという問題がある。これに対して、粘着テープによる固定方法は、固定の信頼性については、ねじ止め法や接着剤固定法に劣るものの、比較的簡便な作業であるため、作業性の観点から、それほど強固な固定を必要としないケースにはよく用いられている。
【0003】
一方で、近年、電子機器の小型化、高集積化にともない、電子機器内の各部品からの発熱密度が増大し、その熱をいかに外部へ逃がすかが重要になってきている。その場合、前記各部品の固定に用いる粘着テープを介した熱伝導が、重要な放熱パスとなる。
【0004】
一般に通常の粘着テープは、基本的に有機物であることから、その熱伝導率は0.2W/mK程度と低い(非特許文献1)。そこで熱伝導性を高めるため、比較的高熱伝導を有する無機系の充填剤を配合させたものが用いられている(特許文献1)。しかしながら、熱伝導性を保たせるために無機系の充填材を配合すると、一般的に粘着特性は低下する(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−089579号公報
【特許文献2】特開2005−336369号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】エレクトロニクス分野における熱制御 放熱・冷却技術 上巻 P533(技術情報協会 2006年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、高熱伝導性を有し、かつ良好な粘着特性を有するアクリル系熱伝導シートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下のような解決手段により、前記課題を解決する。
(1)(a)炭素数2〜12のアルキル基を有するアクリレートまたはメタクリレート、(b)式(1)で表されるアクリル系モノマー、(c)ポリチオール、(d)アクリル酸、(e)無機粉末からなり、無機粉末を除く樹脂成分中のアクリル酸の割合が6〜10体積%、全構成材料中の無機粉末の配合割合が30〜50体積%、かつ無機粉末の平均粒子径が1〜4μmであることを特徴とする粘着性アクリル系熱伝導シート。
【化1】



ここでR1は水素またはメチル基を表す。R2はエチレン基、プロピレン基、ブチレン基等のアルキレン基を表し、R3は水素または炭素数1〜12のアルキル基または置換または非置換のフェニル基を表し、nは0〜12の整数を表す。
(2)無機粉末の平均球形度が0.8以上であることを特徴とする前記(1)に記載の粘着性アクリル系熱伝導シート。
(3)無機粉末が、アルミナ及び/または水酸化アルミニウムであることを特徴とする前記(1)又は(2)に記載の粘着性アクリル系熱伝導シート。
(4)無機粉末を除く樹脂成分中のポリチオールが0.04〜0.5体積%である前記(1)〜(3)のいずれか一項に記載の粘着性アクリル系熱伝導シート。
(5)アクリル系モノマーが光反応性であり、光重合開始剤を含有していることを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれか一項に記載の粘着性熱伝導シート。
(6)前記(1)〜(5)のいずれか一項に記載の粘着性アクリル系熱伝導シートを用いた電子回路基板。
(7)前記(1)〜(5)のいずれか一項に記載の粘着性アクリル系熱伝導シートを用いたヒートシンク。
(8)前記(1)〜(5)のいずれか一項に記載の粘着性アクリル系熱伝導シートを用いたヒートパイプ。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、高熱伝導性を有し、かつ良好な粘着特性を有するアクリル系熱伝導シートを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明における(a)炭素数2−12のアルキル基を有するアクリレートまたはメタクリレートは炭素数が2〜12のアクリル酸アルキルエステルまたはメタクリル酸アルキルエステルである。(a)の例としてはたとえばエチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、デシルアクリレート、デシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート等があげられる。
【0011】
本発明における(b)の式(1)で表されるアクリル系モノマーは式(1)で表される。
【化2】



ここでR1は水素またはメチル基を表す。R2はエチレン基、プロピレン基、ブチレン基等のアルキレン基を表し、R3は水素または炭素数1〜12のアルキル基または置換または非置換のフェニル基を表し、nは0〜12の整数を表す。(b)の例としてはアクリル酸、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、エトキシエチルアクリレート、エチルカルビトールアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、ノニルフェノキシエチルアクリレート、2−エチルヘキシルカルビトールアクリレート、ジエチレングリコールモノアクリレート、トリエチレングリコールモノアクリレート、エチレングリコールユニット繰り返し数が12以下のポリエチレングリコールモノアクリレート、エチレングリコールユニット繰り返し数が12以下のメトキシポリエチレングリコールモノアクリレート、エチレングリコールユニット繰り返し数が12以下のエトキシポリエチレングリコールモノアクリレート、エチレングリコールユニット繰り返し数が12以下のフェノキシポリエチレングリコールモノアクリレート、プロピレングリコールユニット繰り返し数が12以下のポリプロピレングリコールモノアクリレート、プロピレングリコールユニット繰り返し数が12以下のメトキシポリプロピレングリコールモノアクリレート、プロピレングリコールユニット繰り返し数が12以下のエトキシポリプロピレングリコールモノアクリレート、プロピレングリコールユニット繰り返し数が12以下のフェノキシポリプロピレングリコールモノアクリレート、ブチレングリコールユニット繰り返し数が12以下のポリブチレングリコールモノアクリレート、エチレングリコールユニット繰り返し数が12以下のポリエチレングリコールモノメタクリレート、プロピレングリコールユニット繰り返し数が12以下のポリプロピレングリコールモノメタクリレート、ブチレングリコールユニット繰り返し数が12以下のポリブチレングリコールモノメタクリレート等が例示されるが、これに限られるものではない。
【0012】
本発明における(c)のポリチオールはメルカプト基が2個以上のメルカプタン化合物を示し、式(2)、式(3)、及び式(4)で表される平均分子量が50−15000の物質である。
【化3】



【化4】



【化5】



式中Zはm個の官能基を有する有機残基であり、mは2−6の整数であり、pおよびqは0−3の整数である。さらに式(2)、式(3)、式(4)、の有機残基Zが式(5)、式(6)、式(7)、式(8)であるポリチオールが好ましい。
【化6】



【化7】



【化8】



【化9】



ここでRはエチレン基、プロピレン基、ブチレン基等のアルキレン基を表し、v、wは1−6の整数でx、y、zは0−6の整数。
【0013】
本発明の粘着性アクリル系熱伝導シートにおいて、無機粉末を除く樹脂成分中のポリチオールが0.04〜0.5体積%であることが好ましい。ポリチオールが少ないと、シートを構成するアクリル系マトリックスの分子量が大きくなり粘着性が低下する恐れがある。一方、ポリチオールが多いと分子量が小さくなりすぎて、シートとしての強度が小さくなるため、これも粘着力を低下させる恐れがある。
なお、無機粉末を除く樹脂成分中とは上記(a)、(b)、(c)、(d)、光開始剤およびアクリルゴムのことである。
【0014】
本発明のアクリル酸とは、CHCHCOOHである。
無機粉末を除く樹脂成分中のアクリル酸の割合は6〜10体積%である。6%未満ではアクリル酸による粘着力向上効果が小さく、粘着力が低下し、また10%を超える場合はシート全体が硬くなるためこれも粘着力が低下する。
【0015】
本発明の両面粘着性アクリル系熱伝導シートは(a)、(b)、(c)、(d)の樹脂構成成分以外に、公知の重合性化合物や公知の多官能ビニル化合物や多官能アクリレートや多官能アリル化合物等の共重合性の架橋成分を含むことができる。
【0016】
本発明の両面粘着性アクリル系熱伝導シートは硬化時に影響がないかぎり、必要に応じて公知の添加剤を任意の添加量で添加することができる。添加剤としては例えば粘度、粘性をコントロールするための各種添加物、その他、改質剤、老化防止剤、熱安定剤、着色剤などがあげられる。
【0017】
本発明の両面粘着性アクリル系熱伝導シートは、熱重合開始剤による熱重合や熱重合開始剤と硬化促進剤を併用した重合により硬化させることができる。
【0018】
熱重合開始剤としてはアゾ化合物や有機過酸化物を使用することができる。有用なアゾ化合物としては2,2‘−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2‘−アゾビス(2−メチルブチルニトリル)等があげられる。有用な有機過酸化物としてはメチルエチルケトンパーオキシド、シクロヘキサノンパーオキシド、アセチルアセトンパーオキシド、1,1,−ジ(ターシャリーブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ジ(ターシャリーブチルパーオキシ)ブタン、n−ブチル4,4−ジ(ターシャリーブチルパーオキシ)バレレート、2,2−ジ(4,4−ジ(ターシャリーブチルパーオキシ)シクロへキシル)プロパン、p−メンタンハイドロパーオキシド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキシド、1,1,3,3,−テトラメチルブチルハイドロパーオキシド、クメンハイドロパーオキシド、ターシャリーブチルハイドロパーオキシド、ジ(2−ターシャリーブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、ジクミルパーオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ターシャリーブチルパーオキシ)ヘキサン、ターシャリーブチルクミルパーオキシド、ジターシャリーブチルパーオキシド、ジターシャリーヘキシルパーオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ターシャリーブチルパーオキシ)ヘキシン−3、ジイソブチリルパーオキシド、ジ(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキシド、ジ−n−オクタノイルパーオキシド、ジラウロイルパーオキシド、ジサクシニックアシッドパーオキシド、ジベンゾイルパーオキシド、ジ(4−メチルベンゾイル)パーオキシド、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ(4−ターシャリーブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ(2−エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、クミルパーオキシネオデカノエート、ターシャリーブチルパーオキシネオデカノエート、ターシャリーブチルパーオキシピバレート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、ターシャリーブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ターシャリーブチルパーオキシイソブチレート、ターシャリーブチルパーオキシマレイックアシッド、ターシャリーブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、ジ−ターシャリーブチルパーオキシヘキサハイドロテレフタレート、ターシャリーブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、ターシャリーブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)へキサン、ターシャリーブチルパーオキシアセテート、ターシャリーブチルパーオキシベンゾエート等が例示できるが、これらに限定されるものでない。
【0019】
硬化促進剤は、前記熱重合開始剤と反応し、ラジカルを発生する公知の硬化促進剤であれば使用できる。代表的な硬化促進剤としては例えば、第3級アミン、チオ尿素誘導体及び遷移金属塩等が挙げられる。第3級アミンとしては例えば、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン及びN,N−ジメチル−p−トルイジン等が挙げられる。チオ尿素誘導体としては例えば、2−メルカプトベンズイミダゾール、メチルチオ尿素、シブチルチオ尿素、テトラメチルチオ尿素及びエチレンチオ尿素等が挙げられる。遷移金属塩としては例えば、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸銅及びバナジルアセチルアセトネート等が挙げられる。
【0020】
本発明の両面粘着性アクリル系熱伝導シートは、光重合開始剤による光重合によって重合されることが、硬化反応制御の面から好ましい。光重合開始剤としては、ベンゾフェノン、p−メトキシベンゾフェノン、4,4−ビスジメチルアミノベンゾフェノン、キサントン、チオキサントン、クロロチオキサントン、m−クロルアセトン、プロピオフェノン、アンスラキノン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾイソプロピルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、ベンジル、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、アセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2,2−ジメチルアセトフェノンなどが挙げられるが、これらに限定されるものでない
【0021】
本発明で使用される無機粉末は酸化アルミニウム、酸化亜鉛、二酸化チタン等の金属酸化物、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化珪素等の窒化物、炭化珪素、水酸化アルミニウム、さらにはアルミニウムなどの金属粉等が挙げられるが、これらの限定されるものではなく、単独あるいは数種類を組み合わせて使用することができる。ただ光硬化型重合方法によって作成する場合は、光の浸透性を考慮すると酸化アルミニウム、水酸化アルミニウムが好ましい。
【0022】
無機粉末の配合割合は、全構成材料中の30〜50体積%である。30体積%未満では充分な熱伝導性が得られず、また50体積%を超える場合にはシート硬度が大きくなるため粘着特性が低下する。
【0023】
無機粉末の粒子径については、平均粒子径が1〜4μmである。1μm未満では充填性が悪く成形性に問題があり、一方、4μmを超えるとシート表面の凹凸が大きくなるため粘着特性が低下する。
【0024】
無機粉末の平均球形度については、0.8以上であることが好ましい。0.8未満では充填性が悪くなる恐れがあり、シート表面の凹凸が大きくなるため粘着特性が低下する可能性がある。
【0025】
本発明の両面粘着性アクリル系熱伝導シートでは、難燃剤を使用することによって難燃性を付与することができる。使用する難燃剤としては、環境問題や光重合の場合を考慮すると、金属水酸化物系、リン酸エステル系が特に好ましい。ハロゲン系難燃剤は環境への影響という点で問題があり、りん系難燃剤も赤リンは光透過率が低いため光重合には問題がある。
【0026】
本発明の両面粘着性アクリル系熱伝導シートについては、取扱性の点からより高強度の基材と積層させるなどして補強させた形が好ましい。基材としては、ポリエステル等各種樹脂製のフィルムの他、不織布やガラスクロス、ガラスチョップトストランド、炭素繊維、金属繊維、金属箔、グラファイトシート等が挙げられる。不織布、ガラスクロスは軽量で補強効果があり、またその基材中にも粘着性アクリル系熱伝導シートの成分を存在させることにより熱伝導性も確保できる。この場合、ガラスクロスとしてはチョップトストランド等種々の原材料を使用したものを用いることができる。炭素繊維や金属箔、グラファイトシートには基材の面内方向への熱伝導性によるヒートスプレッド効果や、電磁波に対する遮蔽効果も期待できる。この場合に使用する金属繊維、炭素繊維としては特に限定されず、適宜各種原料材を使用したものを用いることができる。また金属箔としてもAl、Cu、Sn等各種金属をもちいることができる。また不織布、ガラスクロス表面に金属、炭素などの導電性や高熱伝導性を有する材料をコーティングすることによっても類似の効果が期待できる。また金属箔を用いる場合、スリットを入れた金属箔を用いることにより、基材と積層した粘着性アクリル系熱伝導シートの剛性を低下させることも可能である。また各種基材との積層する場合には、両面粘着性アクリル系熱伝導シートをその基材の片面、両面いずれに積層された形でも良く、また両面粘着性アクリル系熱伝導シートの片面または両面に複数積層された形でも良い。また両面粘着性アクリル系熱伝導シートと基材との濡れ性を向上させるため、必要に応じ基材表面を各種カップリング剤等で処理してもよい。
【0027】
一方で両面粘着性があると扱いにくい様な場合や、貼り付ける両面の粘着力に差を付けたい場合は、より金属箔やポリエステルフィルムのような粘着力のほとんどないシート、あるいは粘着力の値が異なるシートと積層等で複合化することで対応することも可能である。この場合、本発明の熱伝導性両面粘着テープが良好な粘着特性と有するため、層間の剥離等の問題なく取り扱うことができる。
【0028】
各構成材料の混合方法は、特に限定されるのもではないが、少量の場合は手混合も可能であるが、万能混合機、プラネタリーミキサー、ハイブリッドミキサー、ヘンシェルミキサー、ニーダー、ボールミル、ミキシングロール等の一般的な混合機が用いられる。混合に際して、各成形方法に適する混合物とするため、適宜、水、トルエン、アルコール等の各種溶剤を添加することもできる。
【0029】
本発明の粘着性アクリル系熱伝導シートの加工方法としては従来公知の方法、例えば、コーター法、ドクターブレード法、押出成形法、射出成形法、プレス成形法等の各種成形法を用いて作製することができる。なお、基材補強方法としては、本発明のシートが両面粘着性を有していることから、シートと基材を通常のラミネート法、プレス法など公知の積層方法を用いて積層させることが可能であるが、コーター法などで使用する基材としてこれら補強用基材を使用し、直接作製しても良い。
【実施例】
【0030】
表1の実施例1〜12に記載の各成分を自公転式ミキサーで混合し、スラリー状の混合物を作製した。そのスラリーを2枚の紫外線透過型PET(Polyethylene Telephthalate)ライナー(厚み75μm)(以下「PETライナー」と記す)で挟持し、ラミネート成形後、紫外線を照射し硬化させ、シート状成形体(厚み200μm)を得た。ここでDAM−05−1およびFB−3SDC−1はそれぞれ篩分けをし、平均粒子径が4μm、及び1μmになるように調整した。
【0031】
実施例1〜12と同様に、表2の比較例1〜13に記載の各成分を自公転式ミキサーで混合し、スラリー状の混合物を作製した。そのスラリーを2枚の紫外線透過型PET(Polyethylene Telephthalate)ライナー(厚み75μm)(以下「PETライナー」と記す)で挟持し、ラミネート成形後、紫外線を照射し硬化させ、シート状成形体(厚み200μm)を得た。
【0032】
以下に無機粉末の平均粒子径の測定方法について記載する。
本発明における平均粒子径(50%体積径)は、島津製作所製「レーザー回折式粒度分布測定装置SALD−2200」を用いて測定を行った。評価サンプルは、ガラスビーカーに50ccの純水と測定する熱伝導性粉末を5g添加して、スパチュラを用いて撹拌し、その後超音波洗浄機で10分間、分散処理を行った。分散処理を行った熱伝導性材料の粉末の溶液をスポイドを用いて、装置のサンプラ部に一滴ずつ添加して、吸光度が測定可能になるまで安定するのを待った。このようにして吸光度が安定になった時点で測定を行う。レーザー回折式粒度分布測定装置では、センサで検出した粒子による回折/散乱光の光強度分布のデータから粒度分布を計算する。粒子径(体積径)は測定される粒子径の値に相対粒子量(差分%)を掛けて、相対粒子量の合計(100%)で割って求められる。
【0033】
以下に無機粉末の平均球形度の測定方法について記載する。
本発明における平均球形度は、実体顕微鏡(例えばニコン社製「SMZ−10型」)、走査型電子顕微鏡(例えば日本電子社製「JSM−T200型」)にて接写した粒子径を画像解析装置に取り込む。その後、倍率200倍の写真から粒子の投影面積(A)と周囲長(PM)を測定する。周囲長(PM)に対応する真円の面積をBとすると、その粒子の球形度はA/Bとして表示できる。そこで、試料粒子の周囲長(PM)と同一の周囲長を持つ真円を想定すると、PM=2πr、B=πrであるから、B=π×(PM/2π)となり、個々の粒子の球形度は、球形度=A/B=A×4π/(PM)として算出できる。平均球形度は、200個の粒子の球形度から算出した。
【0034】
以下に熱伝導率の測定方法について記述する。サンプルを10mm角にカットし剥離ライナーを剥がし、ASTM D5470 D法で熱抵抗値を測定した。
【数1】




得られた熱抵抗の値をもとに下記式(10)より熱伝導率を算出した。なお、ここでの試料の厚みは熱抵抗測定時の厚みである。また伝熱面積は、0.0001mである。
【数2】




【0035】
以下に粘着力の試験方法について記述する。
粘着力の試験方法について説明する。まず試験対象となる粘着放熱シートについて、15mm×100mmのサンプルを用意する。このサンプルから剥離ライナーを剥がしAL試験片(1050材、厚さ0.1mm、20mm×180mm)に貼り付ける。粘着放熱シートの両面にこのAL試験片を貼り付けた後に2kgローラーで1往復させ圧着した後、30分室温にて養生する。その後、引っ張り試験機(テンシロン、エーアンドディー社製)にて両側のAL試験片を引っ張ることで粘着力を測定した。そのときの引っ張り速度は300mm/秒であった。
【0036】
【表1】



【0037】
【表2】



【0038】
表1及び表2の使用材料の品種を以下に示す。
1)AR53L 商品名(アクリルゴム、日本ゼオン社製)
2)2−EHA 商品名(アクリル酸2−エチルヘキシルアクリレート、東亜合成社製)
3)BA ブチルアクリレート、日本触媒社製
4)DDA ドデシルアクリレート、シグマアルドリッチ社
5)ODA オクタデシルアクリレート、シグマアルドリッチ社
6)2−HEA 商品名(アクリル酸2−ヒドロキシエチルアクリレート、東亜合成社製)
7)アクリル酸 98%アクリル酸 東亞合成社製
8)JPA−514 商品名(2−メタクリロイルオキシエチル アシッドホスフェート、城北化学社製)
9)HDDA 商品名(1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、共栄社化学社製)
10)DMDO 商品名(1,8−ジメルカプト−3,6−ジオキサオクタン、丸善ケミカル社製)
11)Irgacure500 商品名(ベンゾフェノン、ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン混合物、チバスペシャリティーケミカルズ社製)
12)DAM−03 商品名(球状アルミナ、電気化学工業社製)
13)DAM−05−1 商品名(球状アルミナ、電気化学工業社製)
13)FB−3SDC 商品名(溶融シリカ、電気化学工業社製)
14)FB−3SDC−1 商品名(溶融シリカ、電気化学工業社製)
15)CW−350B 商品名(水酸化アルミニウム、住友化学社製)
16)SFP−0.3 商品名(溶融シリカ、電気化学工業社製)
【0039】
表1の実施例と表2の比較例より、本願発明の粘着性アクリル系熱伝導シートは、高熱伝導性を示し、かつ良好な粘着特性を有することが認めされる。

【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明の粘着性アクリル系熱伝導シートは、電子部品のみならず放熱性と粘着性が求められるあらゆる分野での応用が期待される。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)炭素数2〜12のアルキル基を有するアクリレートまたはメタクリレート、(b)式(1)で表されるアクリル系モノマー、(c)ポリチオール、(d)アクリル酸、(e)無機粉末からなり、
無機粉末を除く樹脂成分中のアクリル酸の割合が6〜10体積%、全構成材料中の無機粉末の配合割合が30〜50体積%、かつ無機粉末の平均粒子径が1〜4μmであることを特徴とする粘着性アクリル系熱伝導シート。
【化10】



ここでR1は水素またはメチル基を表す。R2はエチレン基、プロピレン基、ブチレン基等のアルキレン基を表し、R3は水素または炭素数1〜12のアルキル基または置換または非置換のフェニル基を表し、nは0〜12の整数を表す。
【請求項2】
無機粉末の平均球形度が0.8以上であることを特徴とする請求項1に記載の粘着性アクリル系熱伝導シート。
【請求項3】
無機粉末が、アルミナ及び/または水酸化アルミニウムであることを特徴とする請求項1又は2に記載の粘着性アクリル系熱伝導シート。
【請求項4】
無機粉末を除く樹脂成分中のポリチオールが0.04〜0.5体積%である請求項1〜3のいずれか一項に記載の粘着性アクリル系熱伝導シート。
【請求項5】
アクリル系モノマーが光反応性であり、光重合開始剤を含有していることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の粘着性熱伝導シート。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の粘着性アクリル系熱伝導シートを用いた電子回路基板。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の粘着性アクリル系熱伝導シートを用いたヒートシンク。
【請求項8】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の粘着性アクリル系熱伝導シートを用いたヒートパイプ。


【公開番号】特開2012−46677(P2012−46677A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−191620(P2010−191620)
【出願日】平成22年8月30日(2010.8.30)
【出願人】(000003296)電気化学工業株式会社 (1,539)
【Fターム(参考)】