説明

細胞増殖阻害剤

【課題】MDM4とp53との相互作用を阻害する細胞増殖阻害剤を提供する。
【解決手段】下記一般式Iで表される化合物又はその医薬的に許容し得る塩からなる、細胞増殖阻害剤:


ここで、R1〜R5は、独立して水素原子、ハロゲン原子、アルキル基等、R6は、炭素原子、水素原子等、R7とR8は、独立して水素原子、又はハロゲン原子等、R9とR10は、独立してアルキル基、アルケニル基等、Xは、−C(O)−、−CH(OH)−、又は−C(S)−であり、Yは、−CH−、−C(O)−、−CH(OH)−、又は−C(S)−であり、Zは、炭素原子、窒素原子、ハロゲン原子、又は硫黄原子である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンパク質相互作用阻害剤及びこれに基づく増殖性疾患の治療剤に関する。より詳細には、細胞増殖阻害剤ないしMDM4結合性相互作用阻害剤並びにこれを含む抗癌剤に関する。
【背景技術】
【0002】
p53腫瘍抑制因子は、DNA損傷、炎症性サイトカイン及びウイルス感染等を含む多様な細胞性ストレスに応答して細胞周期の停止又はアポトーシスを誘導する転写因子である。p53の機能は細胞の制御されていない増殖を防ぎ、癌の発症を防止することにあると考えられ、実際にヒト腫瘍の約50%で変異を受けている。正常細胞ではp53はユビキチン依存性プロテアソーム経路を通じて速やかに分解されるため細胞内でのレベルは低い。MDM2は、このp53に結合してユビキチンE3リガーゼとして働き、p53の代謝回転を調節しているタンパク質である。MDM2の過剰発現はp53の機能を阻害する。ヒト骨原性肉腫、及び柔軟組織の肉腫の凡そ30%では遺伝子増幅によるMDM2の過剰発現が認められる。p53のMDM2結合領域は、転写活性化領域と重複するため、MDM2の結合はp53の転写活性を抑制し、効果的にその機能を阻害する。このMDM2とp53との相互作用は、MDM2のN末端側(17〜125番目のアミノ酸残基)のSWIBドメインに対して、p53のN末端領域(15〜29番目のアミノ酸残基)が結合していることが知られ、その複合体構造も報告されている(PDB:1YCR)。従って、MDM2は野生型p53を発現する腫瘍細胞において、p53の機能を阻害する主要な因子として重要である。
【0003】
MDM2とp53との結合を阻害する化合物であるシス−2,4,5−トリフェニル−イミダゾリン類やイソインドリン−1−オン化合物及び腫瘍の処理へのそれらの使用が報告されている(例えば、特許文献1および2参照)。当該イミダゾリン類に含まれる低分子薬剤のNutlin−3は、シスプラチンやカルボプラチン等の化学療法剤、或いはトポテカン等のトポイソメラーゼ阻害剤との併用で有効な抗腫瘍効果を発揮する(例えば、非特許文献1及び2参照)。
【0004】
MDM2と相同性が高く、且つp53と結合するタンパク質としてMDM4(MDMXと称する場合もある)がある。MDM2とは異なり、MDM4はユビキチンE3リガーゼ活性を有さずp53の分解を促進しないが、MDM2と相互作用してそのユビキチン化活性を促進する。また、野生型p53を発現する数多くの原発腫瘍や腫瘍細胞株においてMDM4が過剰発現していることも報告されている。
【0005】
一方、タンパク質や核酸の相互作用を解析する方法として、1分子蛍光分析により蛍光標識した試料の並進拡散時間(Diffusion time)を解析する蛍光相関分光法がある。この方法は、共焦点レーザーにより、1000兆分の1リットル程度という超微少領域中で、数分子程度の高感度で蛍光強度の時間変化を計測することが可能である。したがって、測定領域を分子がブラウン運動によって出入りすることによって生じる蛍光強度の揺らぎを観測する。このとき、小さな分子は速い揺らぎとなり並進拡散時間が小さくなり、大きな分子は遅い揺らぎとなり並進拡散時間は大きくなる。並進拡散時間は分子量の3乗根に比例することが知られている。そこで、上記MDM4とp53との相互作用を蛍光相関分光法で解析する際に、これらの相互作用を阻害する低分子化合物を存在させるとタンパク質間相互作用が抑止され、検出される蛍光強度のゆらぎが変化する。この蛍光強度のゆらぎに基づいてタンパク質間相互作用の有無を検出することができる。
【0006】
【特許文献1】特表2005−511766号公報
【特許文献2】WO2006/024837
【非特許文献1】Ambrosini G, et al., Oncogene, Vol. 26, pp.3473-3481, (2007)
【非特許文献2】Laurie, NA, et al., Nature, Vol. 444, pp.61-66 (2006)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
Nutlin−3は、MDM2高発現細胞においては高い致死性を与える。しかし、通常のヒト細胞株においては、細胞中に多量に存在するMDM4が、MDM2に代わって作用することによって、Nutlin−3単独では細胞死を引き起こす活性が弱い。MDM4はMDM2と相同であり、MDM2と同様にp53のN末端領域に結合するが、Nutlin−3によるp53との結合阻害作用は弱い。従って、腫瘍細胞においてp53を完全に活性化するためにはMDM4の阻害剤が必要となる。本発明は、MDM4とp53との相互作用を高感度且つ効率的に検出することによって、これらの相互作用を阻害する化合物をスクリーニングし、細胞増殖の阻害剤を見出すことを目的とする。
【0008】

さらに、MDM2−p53相互作用阻害剤であるNutlin−3の活性は、主としてp53依存的な腫瘍細胞の増殖抑制活性であるため、腫瘍細胞の半数を占める、p53欠損癌細胞に対しては効果がない。本発明のもう一つの課題は、p53欠損癌細胞に対しても効果を発揮する阻害剤を見出すことである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明で見出された細胞増殖阻害剤ないしMDM4結合性相互作用阻害剤は、p53欠損癌細胞株に対しても顕著な増殖抑制活性を示し、p53非依存的な腫瘍細胞の増殖阻害活性を有する。この活性は、Nutlin−3などの既知のMDM2−p53相互作用阻害剤では観察されない、新規な活性である。
【0010】
本発明は、第一の視点において、下記一般式I
【0011】
【化1】

(式中、R1〜R5は、相互に独立して水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アルコキシ基、アルキルチオ基、ハロゲノアルキル基、アルコキシアルキル基、アルコキシカルボニル基、シアノ基、又はヘテロアリール基 、スルフォニル基、又はアシルアミノ基であり、R2とR3は互いにまとまって、それらが結合しているベンゼン環とともに縮環となり、インドール環、又はカルバゾール環を形成してもよく、
R6は、独立して、炭素原子、水素原子、又はハロゲン原子であり、
R7とR8は、独立して水素原子、又はハロゲン原子であるか、又はR7とR8は互いにまとまって二重結合を形成し、
R9とR10は、独立してアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ハロゲノアルキル基、アルコキシアルキル基、シアノ基、若しくはヘテロアリール基であるか、又は互いにまとまって、Z部分と共に、ピロリジニル基、ピペリジニル基、モルホニリル基若しくはピペラジニル基(該ピペラジンのもう一方の窒素原子はアルキル基、アリール基、アシル基、ヘテロアリール基、アルコキシカルボニル基、アラルキル基で置換されてもよい)、ヘキサヒドロアゼピノ基、若しくはデカヒドロキノリノ基を形成するか、又はZ部分が硫黄原子、又はハロゲン原子である場合は存在しなくてもよく、
R6とR9は、互いにまとまってマレイミド環とともに縮環を形成してもよく、
Xは、−C(O)−、−CH(OH)−、又は−C(S)−であり、
Yは、−CH−、−C(O)−、−CH(OH)−、又は−C(S)−であり、
Zは、炭素原子、窒素原子、ハロゲン原子、又は硫黄原子である)
で表される化合物又はその医薬的に許容し得る塩からなる、細胞増殖阻害剤を提供することができる。
【0012】
また、本発明は、第二の視点において、下記一般式II
【0013】
【化2】

(式中、R1〜R5は、相互に独立して、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アルコキシ基、アルキルチオ基、ハロゲノアルキル基、アルコキシアルキル基、アルコキシカルボニル基、シアノ基、ヘテロアリール基、スルフォニル基、又はアシルアミノ基であり、R2とR3は互いにまとまって、それらが結合しているベンゼン環とともに縮環となり、インドール環、カルバゾール環を形成してもよく、
R6は、水素原子、又はハロゲン原子であり、
R7とR8は、独立して水素原子であるか、又はR7とR8は互いにまとまって二重結合を形成し、
R9は、水素原子、アルキル基、アリール基、アリールアミノ基、ハロゲノアルキル基、アルコキシアルキル基、アルコキシカルボニル基、アシル基、アラルキル基、又はヘテロアリール基であるか、又はZ部分が酸素原子の場合は存在しなくてもよく、
Xは、−C(O)−、−CH(OH)−、又は−C(S)−であり、
Yは、−CH−、−C(O)−、−CH(OH)−、又は−C(S)−であり、
Zは、メチン基、酸素原子、又は窒素原子である)
で表される化合物又はその医薬的に許容し得る塩からなる、細胞増殖阻害剤を提供することができる。
【0014】
また、本発明は、第三の視点において、下記一般式III
【0015】
【化3】

(式中、R1〜R5は、相互に独立して水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アルコキシ基、アルキルチオ基、ハロゲノアルキル基、アルコキシアルキル基、アルコキシカルボニル基、シアノ基、又はヘテロアリール基 、スルフォニル基、又はアシルアミノ基であり、R2とR3は互いにまとまって、それらが結合しているベンゼン環とともに縮環となり、インドール環、カルバゾール環を形成してもよく、
R6は、水素原子、又はハロゲン原子であり、
R7とR8は、独立して水素原子、若しくはハロゲン原子であるか、又はR7とR8は互いにまとまって二重結合を形成し、
R9は、アリール基、ヘテロアリール基、又はアシル基であり、
Xは、−C(O)−、−CH(OH)−、又は−C(S)−であり、
Yは、−CH−、−C(O)−、−CH(OH)−、又は−C(S)−であり、
Zは、−NH−、又は−S−である)
で表される化合物又はその医薬的に許容し得る塩からなる、細胞増殖阻害剤を提供することができる。
【0016】
また、本発明は、第四の視点において、1−(4−クロロ-2−メトキシ−5−メチルフェニル)−3−[4-(4-ヒドロキシフェニル)ピペラジン−1−イル]ピロリジン−2,5−ジオン;
1−(4−クロロ-2−メトキシ−5−メチルフェニル)−3−(ピペリジン−1−イル)ピロリジン−2,5−ジオン;
3−クロロ-1−(3−メトキシフェニル)−4−(モルフォリン−4-イル)−1H−ピロール−2,5−ジオン;
3−クロロ-1−(5−クロロ−2−メトキシフェニル)−4−(モルフォリン−4-イル)−1H−ピロール−2,5−ジオン;
3−[4−(4−ヒドロキシフェニル)ピペラジン−1−イル]−1−(4−メトキシフェニル)ピロリジン−2,5−ジオン;
1−(2−クロロフェニル)−3−[4−(4−ヒドロキシフェニル)ピペラジン−1−イル]ピロリジン−2,5−ジオン;
1−(4−クロロフェニル)−3−{4−[(4−メトキシフェニル)アミノ]ピペリジン−1−イル}ピロリジン−2,5−ジオン;
1−(3−クロロ−4−フルオロフェニル)−3−{4−[(4−メトキシフェニル)アミノ]ピペリジン−1−イル}ピロリジン−2,5−ジオン;
エチル 1−[1−(2,4−ジブロモフェニル)−2,5−ジオキソピロリジン−3−イル]ピペリジン−4−カルボキシレート;
メチル 4−[3−クロロ−4−(モルフォリン−4−イル)−2,5−ジオキソ−2,5−ジヒドロ−1H−ピロール−1−イル]ベンゾエート;
プロパン−2−イル 4−[3−クロロ−4−(モルフォリン−4−イル)−2,5−ジオキソ−2,5−ジヒドロ−1H−ピロール−1−イル]ベンゾエート;
メチル 3−[3−クロロ−2,5−ジオキソ−4−(4−フェニルピペラジン−1−イル)−2,5−ジヒドロ−1H−ピロール−1−イル]ベンゾエート;
メチル 1−[1−(4−クロロ−2−メトキシ−5−メチルフェニル)−2,5−ジオキソピロリジン−3−イル]ピペリジン−4−カルボキシレート;
エチル 4−[3−クロロ−4−(モルフォリン−4−イル)−2,5−ジオキソ−2,5−ジヒドロ−1H−ピロール−1−イル]ベンゾエート;
3−クロロ−1−(3−クロロ−4−メチルフェニル)−4−(モルフォリン−4−イル)−1H−ピロール−2,5−ジオン;
3−クロロ−1−(2,5−ジクロロフェニル)−4−(モルフォリン−4−イル)−1H−ピロール−2,5−ジオン;
1,1’−ベンゼン−1,2−ジイルビス[3−クロロ−4−(モルフォリン−4−イル)−1H−ピロール−2,5−ジオン];
3−クロロ−1−(4−ヨードフェニル)−4−(モルフォリン−4−イル)−1H−ピロール−2,5−ジオン;
2−(4−メトキシフェニル)−2−オキソエチル 4−{3−[4−(ジフェニルメチル)ピペラジン−1−イル]−2,5−ジオキソピロリジン−1−イル}ベンゾエート;
2−(3−メトキシフェニル)−2−オキソエチル 4−{3−[4−(ジフェニルメチル)ピペラジン−1−イル]−2,5−ジオキソピロリジン−1−イル}ベンゾエート;
2−(ビフェニル−4−イル)−2−オキソエチル 4−{3−[4−(5−クロロ−2−メチルフェニル)ピペラジン−1−イル]−2,5−ジオキソピロリジン−1−イル}ベンゾエート;
3−[4−(2,3−ジヒドロ−1,4−ベンゾジオキン−2−イルカルボニル)ピペラジン−1−イル]−1−(2−メトキシフェニル)ピロリジン−2,5−ジオン;
1−(4−メトキシフェニル)−3−(4H−1,2,4−トリアゾール−3−イルスルファニル)ピロリジン−2,5−ジオン;
プロパン−2−イル 4−(3,4−ジクロロ−2,5−ジオキソ−2,5−ジヒドロ1H−ピロール−1−イル)ベンゾエート;及び
4−{[4−クロロ−1−(5−クロロ−2−メトキシフェニル)−2,5−ジオキソ−2,5−ジヒドロ−1H−ピロール−3−イル]アミノ}ベンゼンスルホンアミド;
から選ばれる1以上、又はその医薬的に許容し得る塩からなる、細胞増殖阻害剤を提供することができる。
【0017】
また、本発明は、第五の視点において、前記記載の阻害剤(本発明の阻害剤)と、医薬的に許容し得る担体と、を含んでなる細胞増殖性疾患の治療のための医薬組成物を提供することができる。
【0018】
本発明において、前記増殖性疾患は好ましくは癌である。
【0019】
さらに、本発明は、第六の視点において、ヒトMDM4タンパク質、そのSWIBドメイン領域、又はSWIBドメイン領域を含むヒトMDM4タンパク質の断片と標識物質との融合タンパク質を用いて、これと結合する化合物を抗癌剤として選定する抗癌剤のスクリーニング方法を提供することができる。
【0020】
さらに、本発明は、第七の視点において、ヒトMDM4タンパク質、そのSWIBドメイン領域、又はSWIBドメイン領域を含むヒトMDM4タンパク質の断片とp53由来で標識物質で標識したペプチドやタンパク質断片等との相互作用を阻害する化合物を抗癌剤として選定する抗癌剤のスクリーニング方法を提供することができる。
【0021】
本発明において、標識物質とは、標識タンパク質又は標識化合物等をさす。標識タンパク質は、GFP等の蛍光タンパク質である。標識化合物は、TAMRA等の蛍光色素をさす。SWIBドメイン領域はヒトMDM4タンパク質のアミノ酸残基26−106を含む領域であり、10アミノ酸残基以下のペプチド配列が付加されていてもよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る上記化合物は、MDM4とp53との相互作用を阻害するため、MDM4が発現することによってp53の機能が抑制されている腫瘍細胞のp53を活性化し、アポトーシスへ導くことができる。さらに、p53を欠損する腫瘍細胞においても増殖阻害活性を有することから、これらはMDM4結合性相互作用阻害剤であり、p53非依存的な腫瘍細胞の増殖阻害活性も発揮する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
(本発明の細胞増殖阻害剤)
本発明に係る細胞増殖阻害剤は、MDM4の相互作用を阻害する活性に基づくものであり、MDM4結合性相互作用阻害剤である。本明細書において、「MDM2」とは、形質転換したマウス3T3細胞の二重微小染色体において最初に見出されたガン遺伝子mdm−2がコードするタンパク質MDM2をいう。その後、MDM2タンパク質はp53と複合体を形成することが見出された。MDM2タンパク質のヒト相同体タンパク質は、490個のアミノ酸残基からなり、そのアミノ酸配列は、SWISSPROT等の公的データベースに登録番号:Q00987として登録されている。「MDM4」とは、同じくマウスの二重微小染色体に由来し、MDM2と相同性が高く、且つp53と結合するタンパク質である。MDM4のヒト相同体タンパク質は、490個のアミノ酸残基からなり、そのアミノ酸配列はSWISSPROT等の公的データベースに登録番号:O15151として登録されている。
【0024】
一方、これらのMDM4と相互作用する他のタンパク質としては、細胞増殖に関与する遺伝子発現を調節する転写因子であれば特に限定されないが、好ましくはp53及び/又はE2F−1が挙げられる。上述したように、活性型p53の細胞濃度の上昇によって、細胞分裂抑制薬に対する細胞の感受性が増大することが示されている。一方、活性p53の細胞内濃度の上昇により仲介される作用に加えて、MDM4結合性相互作用阻害剤は、p53とは独立した哺乳動物の細胞周期調節に作用を及ぼすことができる。MDM2及びMDM4はp53結合部位と相同な部位でE2Fと相互作用する。この部位を化合物によってブロックすることにより、細胞中のフリーのE2F濃度が上昇し、細胞をアポトーシスに導く。従って、MDM4結合性相互作用阻害物質はp53経路とは独立して腫瘍細胞の増殖を阻害しうる。
【0025】
本明細書において、「阻害する」又は「阻害剤」とは、上記タンパク質間の相互作用、すなわち複合体の形成を阻害すること、又は哺乳動物由来培養癌細胞株の生存を阻害すること、及びそのような化合物を意味し、しばしば当該活性を50%阻害するような化合物濃度で表される。用語「IC50」は、このような活性の50%を阻害する化合物濃度を意味する。
【0026】
本発明のMDM4結合性相互作用阻害剤、又は細胞増殖阻害剤には、下記一般式(I)で表す化合物、下記一般式(II)で表す化合物、若しくは下記一般式(III)で表す化合物、或いはその医薬的に許容しうる塩又はその水和物等が含まれる。
【0027】
【化4】

(式中、R1〜R5は、相互に独立して水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アルコキシ基、アルキルチオ基、ハロゲノアルキル基、アルコキシアルキル基、アルコキシカルボニル基、シアノ基、又はヘテロアリール基 、スルフォニル基、又はアシルアミノ基であり、R2とR3は互いにまとまって、それらが結合しているベンゼン環とともに縮環となり、インドール環、カルバゾール環などを形成してもよく、
R6は、独立して、炭素原子(好ましくはアルキル基)、水素原子、又はハロゲン原子であり、
R7とR8は、独立して水素原子、又はハロゲン原子であるか、又はR7とR8は互いにまとまって二重結合を形成し、
R9とR10は、独立してアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ハロゲノアルキル基、アルコキシアルキル基、シアノ基、若しくはヘテロアリール基であるか、又は互いにまとまって、Z部分と共に、ピロリジニル基、ピペリジニル基、モルホニリル基若しくはピペラジニル基(該ピペラジンのもう一方の窒素原子はアルキル基、アリール基、アシル基、ヘテロアリール基、アルコキシカルボニル基、アラルキル基で置換されてもよい)、ヘキサヒドロアゼピノ基、若しくはデカヒドロキノリノ基を形成するか、又は、Z部分が硫黄原子、若しくはハロゲン原子である場合は存在しなくてもよく、
R6とR9は、互いにまとまってマレイミド環とともに縮環を形成してもよく、
Xは、−C(O)−、−CH(OH)−、又は−C(S)−であり、
Yは、−CH−、−C(O)−、−CH(OH)−、又は−C(S)−であり、
Zは、窒素原子、ハロゲン原子、又は硫黄原子である。)
【0028】
【化5】

(式中、R1〜R5は、相互に独立して、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アルコキシ基、アルキルチオ基、ハロゲノアルキル基、アルコキシアルキル基、アルコキシカルボニル基、シアノ基、又はヘテロアリール基 、スルフォニル基、又はアシルアミノ基であり、R2とR3は互いにまとまって、それらが結合しているベンゼン環とともに縮環となり、インドール環、カルバゾール環などを形成してもよく、
R6は、水素原子、又はハロゲン原子であり、
R7とR8は、独立して水素原子であるか、又はR7とR8は互いにまとまって二重結合を形成し、
R9は、水素原子、アルキル基、アリール基、アリールアミノ基、ハロゲノアルキル基、アルコキシアルキル基、アルコキシカルボニル基、アシル基、アラルキル基、又はヘテロアリール基であるか、又はZ部分が酸素原子の場合は存在しなくてもよく、
Xは、−C(O)−、−CH(OH)−、又は−C(S)−であり、
Yは、−CH−、−C(O)−、−CH(OH)−、又は−C(S)−であり、
Zは、メチン基、酸素原子、又は窒素原子である。)
【0029】
【化6】

(式中、R1〜R5は、相互に独立して水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アルコキシ基、アルキルチオ基、ハロゲノアルキル基、アルコキシアルキル基、アルコキシカルボニル基、シアノ基、又はヘテロアリール基 、スルフォニル基、又はアシルアミノ基であり、R2とR3は互いにまとまって、それらが結合しているベンゼン環とともに縮環となり、インドール環、カルバゾール環などを形成してもよく、
R6は、水素原子、又はハロゲン原子であり、
R7とR8は、独立して水素原子、若しくはハロゲン原子であるか、又はR7とR8は互いにまとまって二重結合を形成し、
R9は、アリール基、ヘテロアリール基、又はアシル基であり、
Xは、−C(O)−、−CH(OH)−、又は−C(S)−であり、
Yは、−CH2−、−C(O)−、−CH(OH)−、又は−C(S)−であり、
Zは、−NH−、−S−である。)
【0030】
用語「医薬的に許容し得る塩」とは、医薬上許容できる無毒の塩基又は酸から調製される塩を意味する。本発明に係る化合物は、塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩、硫酸塩、又は硝酸塩のような無機酸の塩、又は有機スルホン酸塩若しくは有機カルボン酸塩のような有機酸の塩を含む当該化合物の製薬上許容される塩の形態で提供されてもよい。上記有機スルホン酸塩としては、例えば、メタンスルホン酸塩、パラトルエンスルホン酸塩等が挙げられ、有機カルボン酸塩としては、酢酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、フマール酸塩、安息香酸塩、乳酸塩、グルコン酸塩、アスコルビン酸塩、マンデル酸塩、リンゴ酸塩、酒石酸塩、及びクエン酸塩等が挙げられる。
【0031】
他の場合において、式(I)、(II)及び(III)の化合物は1以上の酸性の官能基を含むことができ、それ故、医薬的に許容可能な塩基と医薬的に許容可能な塩を形成することができる。これらの例において、用語「医薬的に許容可能な塩」とは、本発明の化合物の比較的非毒性の無機塩基及び有機塩基付加塩をいう。これらの塩は、投与溶媒中又は剤形の製造工程中のその場で調製することができ、或いは遊離の酸型の精製された本発明の化合物と、医薬的に許容可能な金属カチオンの水酸化物、炭酸塩、又は重炭酸塩のような適切な塩基と、アンモニアと、又は医薬的に許容可能な有機一級アミン、二級アミン若しくは三級アミンとを別個に反応させて調製することができる。塩基付加塩の生成に有用な代表的な有機アミンは、エチルアミン、ジエチルアミン、エチレンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、ピペラジン等を含む。
【0032】
本発明に係る化合物はまた、プロドラッグの形であってもよい。用語「プロドラッグ」とは、生体内において(例えばpHの変化による)自発的な化学変化により又は生体内に通常存在する酵素により又は生体内に導入ないし操作された酵素により活性となる医薬的に不活性の化合物を意味する。当該技術分野において様々な形のプロドラッグ、例えば、生体内加水分解性エステル又はエーテル等が知られている。このようなプロドラッグは、試験中の化合物を、例えば試験動物に静脈内投与した後、試験動物の体液を調べることによって同定することができる。無機酸エステルとしては、リン酸エステル等が含まれ、有機酸エステルには、脂肪族カルボン酸エステル、芳香族カルボン酸エステル、カルバミン酸エステル等が含まれる。エーテルとしては、アセトキシメチルエーテル、及びピバロイルオキシメシルエーテル等のアシルオキシアルキルエーテル等が含まれるがこれらに限定されない。
【0033】
本発明に係る若干の化合物は、溶媒和の形で、例えば、水和した形で、更には、非溶媒和の形で存在しうるということも理解されるであろう。
【0034】
本発明に係る化合物については、当業者に既知の反応を用いて合成(製造)したものを使用することができるが、また、市販品を購入することで容易に入手することができる。なお、本発明に係る化合物を製造するために採用しうる合成経路はいくつか存在する。
【0035】
(本発明の医薬組成物)
本発明の細胞増殖阻害剤ないしMDM4結合性相互作用阻害剤は、後述する実施例において具体的に示されるように、ヒト腫瘍細胞株の増殖を抑制し、又は死滅させることから、細胞増殖の調節異常によって引き起こされる病気、又はこれと関連した病気の治療薬、特に、抗癌剤として用いることができる。医薬として投与する場合、そのまま又は医薬的に許容される無毒性かつ不活性の担体と共に医薬組成物としてヒトを含む哺乳動物に投与される。
【0036】
「医薬的に許容し得る担体」とは、液体又は固体の賦形剤、希釈液、潤滑剤、又は物質をカプセル化する溶媒のような、医薬的に許容し得る物質、組成物又は媒体を意味する。各担体は、前記製剤の他の成分との適合性があり且つ患者に対し傷害性でないという意味において、「許容し得る」ものでなければならない。医薬的に許容し得る担体として供することが可能な物質の例には、例えば、ラクトース、グルコース及びショ糖のような糖類;コーンスターチ及びジャガイモデンプンのようなデンプン;セルロース、及びナトリウムカルボキシメチルセルロース、エチルセルロース及びセルロース酢酸塩のようなその誘導体;粉末のトラガカント;麦芽;ゼラチン;滑石;カカオバター及び坐薬ワックスのような賦形剤類;ピーナッツ油、綿実油、紅花油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油及びダイズ油のような油;プロピレングリコールのようなグリコール;グリセリン、ソルビトール、マンニトール及びポリエチレングリコールのようなポリオール;オレイン酸エチル及びラウリン酸エチルのようなエステル;寒天;水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウムのような緩衝化剤;アルギン酸;発熱物質を含まない水;等張性生理食塩水;リンゲル溶液;エチルアルコール;水素イオン指数緩衝溶液;ポリエステル、ポリカーボネート及び/又はポリ無水物類;並びにその他の医薬製剤に使用される無毒の適合性物質を含む。
【0037】
本明細書において、「増殖する」又は「増殖」とは、細胞が有糸分裂することをいう。「細胞増殖性疾患」とは、乳癌、卵巣癌、結腸直腸線癌、膵臓癌、膀胱癌、肺癌、胃癌、食道癌、多発性骨髄腫、リンパ腫、白血病及び前立腺癌等の癌;並びに乾癬等の増殖性皮膚疾患を含む。本発明の医薬組成物は、治療の必要のある対象に単剤として又は他の抗癌剤と組み合わせて投与によって、上記各種癌の治療の一部として使用し得る。
【0038】
ある実施形態においては、本発明は、治療の必要のある対象に治療上有効量の上述の医薬組成物を投与することを含む、癌の治療方法に関する。また、ある実施形態において、前記方法は放射線療法又はその他の抗癌化学療法剤と組み合わせて使用される。その他の化学療法剤とは、ゲムシタビン、メトトレキサート、タキソール、メルカプトプリン、チオグアニン、ヒドロキシ尿素、シタラビン、シクロホスファミド、イホスファミド、ニトロソ尿素、シスプラチン、カルボプラチン、マイトマイシン、ダカルバジン、プロカルビジン、エトポシド、プレドニゾロン、デキサメサゾン、シタラビン、カンパセシン類、ブレオマイシン、ドキソルビシン、イダルビシン、ダウノルビシン、ダクチノマイシン、プリカマイシン、ミトキサントロン、アスパラギナーゼ、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビノレルビン、パクリタキセル、及びドセタキセルを含むがこれらに限定されない。
【0039】
本発明の医薬組成物を、上記の疾患の治療あるいは予防を目的としてヒトに投与する場合は、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、丸剤、液剤等として経口的に、または注射剤、坐剤、経皮吸収剤、吸入剤等として非経口的に投与することができる。また、本発明化合物の有効量を、その剤型に適した賦形剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、滑沢剤等の医薬用添加剤を必要に応じて混合し、医薬製剤とすることができる。注射剤の場合には、適当な担体とともに滅菌処理を行って製剤とする。
【0040】
本発明の医薬組成物の投与量は、疾患の状態、投与ルート、患者の年齢、または体重によっても異なり、最終的には医師の判断に委ねられるが、成人に経口で投与する場合、通常、0.1−100mg/kg/日、好ましくは、1−20mg/kg/日、非経口で投与する場合、通常、0.01−10mg/kg/日、好ましくは、0.1−2mg/kg/日を投与する。これを1回あるいは数回に分割して投与すればよい。
【0041】
(本発明のスクリーニング方法)
本発明のスクリーニング方法は、後述する実施例において具体的に示されるように、抗癌剤のスクリーニング方法として使用できる。
【0042】
例えば、MDM4の立体構造を用いて、これと相互作用することが予想される化合物をインシリコスクリーニングにより探索するなどし、これらを候補化合物として、以下の工程を含む方法を実施することによって、MDM4結合性相互作用阻害剤のスクリーニングを行うことができる:
MDM4タンパク質を調製し、精製する工程;及び
MDM4結合性相互作用阻害化合物をスクリーニングする工程
【0043】
具体的には、例えば、p53由来でTAMRA等の蛍光色素で標識したペプチドやタンパク質断片など、充分濃度のMDM4、適切な濃度の候補化合物を適切なバッファー中で混合し、蛍光粒子の並進拡散速度を測定する。得られた並進拡散時間を、上記遊離標識ペプチドの並進拡散時間と標識ペプチドーMDM4タンパク質複合体の並進拡散時間の二成分に二成分分析し、相互作用している標識ペプチドの存在割合を算出する。その結果、MDM4結合性相互作用阻害剤の存在は、ペプチドーMDM4タンパク質複合体形成の割合が減少するのを確認することで、スクリーニングできる。
【実施例1】
【0044】
本実施例では、まずProtein Data Bankに公開されているMDM4の立体構造(PDB:2Z5S、2Z5T)を用いて、これと相互作用することが予想される化合物をインシリコスクリーニングにより探索し、これを候補化合物として蛍光相関分光法によるMDM4とp53との相互作用阻害剤のスクリーニングを行なった。
【0045】
[材料及び方法]
1 化合物
本実施例で用いた化合物は、Ambinter社、AnalytiCon Discovery社、ART−CHEM社、ASINEX社、Bionet社、CBI社、ChemBridge社、ChemDiv社、ChemT&I社、Enamine社、IBS社、Labotest社、LifeChem社、Life Chemicals社、Maybridge社、MDD社、Otava社、Peakdale社、Pharmeks社、Princeton社、SALOR社、SCIEXCH社、Specs社、TimTec社、UkrOrgSynthe社、Vitas−M社から購入した。これらの化合物は10mMの濃度でジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解して用いた。
【0046】
2 蛍光相関分光法用蛍光色素
TAMRA(分子量は528Da)(MF20用標準試薬)をFCSバッファーで溶解し使用した。非特異的な結合の有無を調べるために、カークらの方法(Kirk D. Beebe, P. Wang, G. Arabaci, D. Pei: Determination of the Binding Specificity of the SH2 Domains of Protein Tyrosine Phosphatase SHP-1 through the Screening of a Combinatorial Phosphotyrosyl Peptide Library. Biochemistry., 39: 13251-13260, 2000)に基づいて選択したSHP−1結合ペプチド配列のC末側にTAMRA標識した10merのペプチド(ITpYSLLKGGK−TAMRA)(分子量:1.5kDa)を調製した。p53との相互作用を検出するために、15merのペプチド(分子量:2.2kDa)のN末またはC末側にTAMRA標識したp53N末ペプチド(SQETFSDLWKLLPEN)を購入した。
【0047】
[MDM4タンパク質の調製]
MDM4(26−106)(10.3kDa)試料の調製は、以下の方法によった。ここで、MDM4断片としては、該タンパク質の26−106アミノ酸残基を含むタンパク質断片でよく、MDM4のC末端側でGFP等のタンパク質と融合したものでもよい。大腸菌無細胞タンパク質合成系(Kigawa et al., FEBS Lett., 442-1: 15-19、 1999)(内液9ml/外液90ml)を用いて30℃、4時間の反応によりタンパク質を発現させた。発現させたタンパク質は、4%PEG8000を含む20mMトリス塩酸(pH8.0)、100mMのNaCl、20mMイミダゾールに対して4℃、一晩透析を行なった。
【0048】
得られたサンプルには、TEVプロテアーゼによる切断部位、及びヒスチジンタグが付加されているため、タグを利用してアフィニティー精製を行なった。サンプルをHisTrapカラムに通し、20mMトリス塩酸(pH8.0)、100mMのNaCl、500mMイミダゾールで溶出した。溶出したサンプルは脱塩カラムにかけ、イミダゾールの除去と、20mMトリス塩酸(pH8.0)、150mMのNaCl、2mMのDTTへのバッファー交換を行なった。このサンプルにTEVプロテアーゼを4000ユニット加え、4℃、一晩、転倒混和し、ヒスチジンタグを切断した。タグを切断したサンプルは、再びHisTrapによるアフィニティー精製を行なうことで、切断したタグと目的のタンパク質に分離した。得られた目的タンパク質は、限外ろ過(Amicon Ultra-15 MWCO 5000)により濃縮した。濃縮した最終サンプルをブラッドフォードの方法を用いて定量した結果、3mg/mlであった。タンパク質液量としては2ml得られた。
【0049】
[タンパク質−蛍光標識ペプチドの解離定数の測定]
上記で精製したMDM4タンパク質を用いて、p53ペプチドとの解離定数(K)を、蛍光相関分光法で解析した。p53ペプチドは、p53のMDM2及びMDM4との相互作用部位であるN末端から15〜29残基に相当するペプチドSQETFSDLWKLLPEN(15mer)を合成し、そのC末端を蛍光色素TAMRAで標識した。4mMの濃度になるようにDMSOに溶解したものをストック溶液とした。蛍光相関分光測定用バッファーとしては、FCSバッファー(50mM トリス塩酸(pH8)、150mM NaCl、0.05%Tween20)を用い、DMSOの終濃度が0.5%となるように調整したものを反応溶液とした。p53ペプチドは、1nMで一定濃度とし、MDM4濃度を0、1、10、50、100、200及び500nM、さらに1、10、50及び100μMとした。測定装置は、1分子蛍光分析システム(MF20)(OLYMPUS社製)を使用した。調製したサンプルをMF20測定用384プレートに30μlずつ分注し測定を行った。MF20の測定は励起波長543nmで10秒、5回行った。これを1サンプルにつき2ウェルずつ測定し、その平均値を算出した。この値から、複合体形成の割合をMF20付属ソフトによって2成分解析により算出し、グラフソフトOrigin(ライトストーン製)によってグラフ化しKを求めた。その結果、MDM4とp53ペプチドとのKは200nMであった(図1参照)。
【0050】
[MDM4−p53結合阻害化合物のスクリーニング]
候補化合物1379個について、MDM4を結合阻害対象とする阻害剤のスクリーニングを行なった。蛍光相関分光測定用バッファーとしては、FCSバッファー(10mM HEPES−水酸化カリウム(pH7.4)、150mM NaCl、0.005%Tween20)を用い、DMSOの終濃度が0.5%となるように調整したものを反応溶液とした。p53ペプチドは、4nMで一定濃度とし、TAMRA標識をしていないp53−ペプチド(15mer)を用いて陽性コントロールとした。4nMp53−TAMRAペプチド、500nMのMDM4、10μM候補化合物をアッセイプレートの最終条件としてスクリーニングを行なった。
【0051】
【表1】

注)
遊離ペプチド:TAMRA−p53ペプチド
ペプチド−タンパク質複合体:TAMRA−p53ペプチド及びMDM4
陽性コントロール:TAMRA−p53ペプチド、MDM4及び10μMのp53ペプチド
【0052】
得られた並進拡散時間を、上記遊離ペプチドの並進拡散時間とペプチドータンパク質複合体の並進拡散時間の二成分に二成分分析し、相互作用しているペプチドの存在割合を算出した。その結果、次表に示す70化合物が、p53−MDM4のタンパク質間相互作用を強く阻害することが分かった。






【0053】
【表2】
































【実施例2】
【0054】
[ヒット化合物のIC50の測定]
本実施例では、上記70種類の化合物と上記で調製したMDM4タンパク質を用いて、蛍光分光法によりp53−MDM4相互作用の50%阻害濃度IC50を測定した。
蛍光相関分光測定用バッファーとしては、FCSバッファー(10mMHEPES−水酸化カリウム(pH7.4)、150mMNaCl、0.005%Tween20)を用い、DMSOの最終濃度が0.5%となるように調製したものを反応溶液とした。MDM4濃度を500nMとし、最終濃度50、10、3、1、0.3、0.1μMの各種化合物と25℃、1時間インキュベートした。p53ペプチドは、p53のMDM4との相互作用部位であるN末端から15〜29残基に相当するペプチドSQETFSDLWKLLPEN(15mer)を合成し、そのN末端を蛍光色素TAMRAで標識し、4nMで添加した。調製したサンプル30μlを用い、蛍光相関分光法により蛍光色素の並進拡散時間を測定した。測定は励起波長543nmで10秒、5回行った。
その結果から実施例1同様に複合体形成の割合を算出し、IC50を決定した。その一部を図2に表示した。図2に示されたように、高い相互作用阻害活性が得られた。
【実施例3】
【0055】
[ヒット化合物の細胞致死活性の測定]
本実施例では、上記70種類の化合物を用いて、ヒト由来培養癌細胞H1299(肺癌細胞でp53欠損株)に対する細胞致死活性IC50を測定した。H1299細胞はATCCより購入した。
炭酸インキュベーター内(37℃、5%CO)で培養した上記細胞を回収し、96ウェルプレートに1ウェルに250個播種した。24時間培養後に化合物を最終濃度0〜50μMとなるように添加して炭酸インキュベーター内(37℃、5%CO)で培養し、6日目に、WST−8試薬(ナカライテスク製:生細胞数測定試薬SF)を1ウェルに10μl加え炭酸インキュベーター内(37℃、5%CO)で1時間培養し反応後、マイクロプレートリーダーPOWERSCAN HT(DSファーマバイオメディカル製)にて450nm、620nmの吸光度差を測定した。培養液のみのウェルの吸光度をブランクとしサンプルのウェルの値から差し引いた後、0.5%DMSOのみが入っているウェルの値を100%としてサンプルの生存率(Viability)を計算した。1化合物につき3ウェルずつ測定を行い(triplicate)その平均値を用いた。
その結果、化合物は、p53欠損株であるH1299細胞に対して高い致死活性を示した(図3参照)。
【実施例4】
【0056】
[MDM4結合性相互作用阻害剤であることの検証]
本実施例では、上記70種類の化合物を用いて、SJSA−1(骨肉腫細胞で野生型p53を発現し、且つMDM2を高発現するNutlin高感受性株)、JEG3(絨毛癌細胞で野生型p53を発現し、且つMDM2及びMDM4を発現している細胞株)、H1299(肺癌細胞でp53欠損株)の3種類の形質転換細胞の細胞致死活性を測定した。3種類のヒト由来培養癌細胞はATCCより購入した。
炭酸インキュベーター内(37℃、5%CO)で培養した上記3種類の細胞を回収し、96ウェルプレートに1ウェルに1500〜2000個播種した。24時間培養後に化合物を最終濃度10〜50μMとなるように添加して炭酸インキュベーター内(37℃、5%CO)で培養し、2日目および3日目に、WST−8試薬(ナカライテスク製:生細胞数測定試薬SF)を1ウェルに10μl加え炭酸インキュベーター内(37℃、5%CO)で1時間培養し反応後、マイクロプレートリーダーPOWERSCAN HT(DSファーマバイオメディカル製)にて450nm、620nmの吸光度差を測定した。培養液のみのウェルの吸光度をブランクとしサンプルのウェルの値から差し引いた後、0.5%DMSOのみが入っているウェルの値を100%としてサンプルの生存率(Viability)を計算した。1化合物につき3ウェルずつ測定を行い(triplicate)その平均値を用いた。
その結果、これらの化合物阻害はNutlin-3とは異なり、MDM2非増幅株であるJEG3細胞株にも効果を示し、阻害標的がMDM2だけではないことが示された。さらに、これらは実施例3にも示されたように、p53欠損株H1299においても顕著な致死活性を示したことから、これら化合物の標的タンパク質がp53だけではないことが示された(図4参照)。
【0057】
さらに、MDM2−p53結合阻害活性を持たず、MDM4−p53結合阻害活性を有する化合物を見出した。ここでMDM2−p53結合阻害活性は、実施例1で示したMDM4−p53結合阻害活性測定法において、タンパク質標品をMDM4(26−106)の代わりにMDM2(17−124)を用いることによって、測定することができる。これらの化合物の細胞致死活性を検討した。
その結果、これらの化合物においても、顕著な癌細胞致死活性を示し、これら化合物の活性は、既知の活性であるMDM2−p53相互作用阻害ではなく、新規の活性であるMDM4結合性相互作用阻害活性であることが示された(図5参照)。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明により、タンパク質相互作用阻害剤、特に、MDM4結合性相互作用阻害剤を提供することができる。
【0059】
また、前記阻害剤を使用(配合)して、特に抗癌剤を、容易かつ簡便に製造することができる。さらに、本発明によりこれらの相互作用を阻害する化合物をスクリーニングし、細胞増殖の阻害剤を見出すことができ、本発明は、このようなスクリーニング方法を利用することにより、ヒト及び動物に対する抗癌剤開発に資することができる。したがって、本発明は特に医薬又は製薬分野において、工業的に極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】蛍光相関分光法によりMDM4とp53ペプチドとの解離定数(K)を測定した結果である。
【図2】MDM4結合性相互作用阻害剤について、蛍光相関分光法により50%阻害濃度(IC50)を測定した結果である。
【図3】MDM4結合性相互作用阻害剤について、細胞致死活性IC50を測定した結果である。
【図4】MDM4結合性相互作用阻害剤について、3種のヒト形質転換細胞の細胞致死活性を測定した結果である。
【図5】MDM2とp53ペプチドとの相互作用阻害活性を持たず、MDM4結合性相互作用阻害活性を有する化合物の細胞致死活性IC50を測定した結果である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式I
【化1】

(式中、R1〜R5は、相互に独立して水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アルコキシ基、アルキルチオ基、ハロゲノアルキル基、アルコキシアルキル基、アルコキシカルボニル基、シアノ基、又はヘテロアリール基 、スルフォニル基、又はアシルアミノ基であり、R2とR3は互いにまとまって、それらが結合しているベンゼン環とともに縮環となり、インドール環、又はカルバゾール環を形成してもよく、
R6は、独立して、炭素原子、水素原子、又はハロゲン原子であり、
R7とR8は、独立して水素原子、又はハロゲン原子であるか、又はR7とR8は互いにまとまって二重結合を形成し、
R9とR10は、独立してアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ハロゲノアルキル基、アルコキシアルキル基、シアノ基、若しくはヘテロアリール基であるか、又は互いにまとまって、Z部分と共に、ピロリジニル基、ピペリジニル基、モルホニリル基若しくはピペラジニル基(該ピペラジンのもう一方の窒素原子はアルキル基、アリール基、アシル基、ヘテロアリール基、アルコキシカルボニル基、アラルキル基で置換されてもよい)、ヘキサヒドロアゼピノ基、若しくはデカヒドロキノリノ基を形成するか、又はZ部分が硫黄原子、若しくはハロゲン原子である場合は存在しなくてもよく、
R6とR9は、互いにまとまってマレイミド環とともに縮環を形成してもよく、
Xは、−C(O)−、−CH(OH)−、又は−C(S)−であり、
Yは、−CH−、−C(O)−、−CH(OH)−、又は−C(S)−であり、
Zは、炭素原子、窒素原子、ハロゲン原子、又は硫黄原子である)
で表される化合物又はその医薬的に許容し得る塩からなる、細胞増殖阻害剤。
【請求項2】
下記一般式II
【化2】

(式中、R1〜R5は、相互に独立して、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アルコキシ基、アルキルチオ基、ハロゲノアルキル基、アルコキシアルキル基、アルコキシカルボニル基、シアノ基、ヘテロアリール基、スルフォニル基、又はアシルアミノ基であり、R2とR3は互いにまとまって、それらが結合しているベンゼン環とともに縮環となり、インドール環、カルバゾール環を形成してもよく、
R6は、水素原子、又はハロゲン原子であり、
R7とR8は、独立して水素原子であるか、又はR7とR8は互いにまとまって二重結合を形成し、
R9は、水素原子、アルキル基、アリール基、アリールアミノ基、ハロゲノアルキル基、アルコキシアルキル基、アルコキシカルボニル基、アシル基、アラルキル基、又はヘテロアリール基であるか、又はZ部分が酸素原子の場合は存在しなくてもよく、
Xは、−C(O)−、−CH(OH)−、又は−C(S)−であり、
Yは、−CH−、−C(O)−、−CH(OH)−、又は−C(S)−であり、
Zは、メチン基、酸素原子、又は窒素原子である)
で表される化合物又はその医薬的に許容し得る塩からなる、細胞増殖阻害剤。
【請求項3】
下記一般式III
【化3】

(式中、R1〜R5は、相互に独立して水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アルコキシ基、アルキルチオ基、ハロゲノアルキル基、アルコキシアルキル基、アルコキシカルボニル基、シアノ基、又はヘテロアリール基 、スルフォニル基、又はアシルアミノ基であり、R2とR3は互いにまとまって、それらが結合しているベンゼン環とともに縮環となり、インドール環、カルバゾール環を形成してもよく、
R6は、水素原子、又はハロゲン原子であり、
R7とR8は、独立して水素原子、若しくはハロゲン原子であるか、又はR7とR8は互いにまとまって二重結合を形成し、
R9は、アリール基、ヘテロアリール基、又はアシル基であり、
Xは、−C(O)−、−CH(OH)−、又は−C(S)−であり、
Yは、−CH−、−C(O)−、−CH(OH)−、又は−C(S)−であり、
Zは、−NH−、又は−S−である)
で表される化合物又はその医薬的に許容し得る塩からなる、細胞増殖阻害剤。
【請求項4】
1−(4−クロロ-2−メトキシ−5−メチルフェニル)−3−[4-(4-ヒドロキシフェニル)ピペラジン−1−イル]ピロリジン−2,5−ジオン;
1−(4−クロロ-2−メトキシ−5−メチルフェニル)−3−(ピペリジン−1−イル)ピロリジン−2,5−ジオン;
3−クロロ-1−(3−メトキシフェニル)−4−(モルフォリン−4-イル)−1H−ピロール−2,5−ジオン;
3−クロロ-1−(5−クロロ−2−メトキシフェニル)−4−(モルフォリン−4-イル)−1H−ピロール−2,5−ジオン;
3−[4−(4−ヒドロキシフェニル)ピペラジン−1−イル]−1−(4−メトキシフェニル)ピロリジン−2,5−ジオン;
1−(2−クロロフェニル)−3−[4−(4−ヒドロキシフェニル)ピペラジン−1−イル]ピロリジン−2,5−ジオン;
1−(4−クロロフェニル)−3−{4−[(4−メトキシフェニル)アミノ]ピペリジン−1−イル}ピロリジン−2,5−ジオン;
1−(3−クロロ−4−フルオロフェニル)−3−{4−[(4−メトキシフェニル)アミノ]ピペリジン−1−イル}ピロリジン−2,5−ジオン;
エチル 1−[1−(2,4−ジブロモフェニル)−2,5−ジオキソピロリジン−3−イル]ピペリジン−4−カルボキシレート;
メチル 4−[3−クロロ−4−(モルフォリン−4−イル)−2,5−ジオキソ−2,5−ジヒドロ−1H−ピロール−1−イル]ベンゾエート;
プロパン−2−イル 4−[3−クロロ−4−(モルフォリン−4−イル)−2,5−ジオキソ−2,5−ジヒドロ−1H−ピロール−1−イル]ベンゾエート;
メチル 3−[3−クロロ−2,5−ジオキソ−4−(4−フェニルピペラジン−1−イル)−2,5−ジヒドロ−1H−ピロール−1−イル]ベンゾエート;
メチル 1−[1−(4−クロロ−2−メトキシ−5−メチルフェニル)−2,5−ジオキソピロリジン−3−イル]ピペリジン−4−カルボキシレート;
エチル 4−[3−クロロ−4−(モルフォリン−4−イル)−2,5−ジオキソ−2,5−ジヒドロ−1H−ピロール−1−イル]ベンゾエート;
3−クロロ−1−(3−クロロ−4−メチルフェニル)−4−(モルフォリン−4−イル)−1H−ピロール−2,5−ジオン;
3−クロロ−1−(2,5−ジクロロフェニル)−4−(モルフォリン−4−イル)−1H−ピロール−2,5−ジオン;
1,1’−ベンゼン−1,2−ジイルビス[3−クロロ−4−(モルフォリン−4−イル)−1H−ピロール−2,5−ジオン];
3−クロロ−1−(4−ヨードフェニル)−4−(モルフォリン−4−イル)−1H−ピロール−2,5−ジオン;
2−(4−メトキシフェニル)−2−オキソエチル 4−{3−[4−(ジフェニルメチル)ピペラジン−1−イル]−2,5−ジオキソピロリジン−1−イル}ベンゾエート;
2−(3−メトキシフェニル)−2−オキソエチル 4−{3−[4−(ジフェニルメチル)ピペラジン−1−イル]−2,5−ジオキソピロリジン−1−イル}ベンゾエート;
2−(ビフェニル−4−イル)−2−オキソエチル 4−{3−[4−(5−クロロ−2−メチルフェニル)ピペラジン−1−イル]−2,5−ジオキソピロリジン−1−イル}ベンゾエート;
3−[4−(2,3−ジヒドロ−1,4−ベンゾジオキン−2−イルカルボニル)ピペラジン−1−イル]−1−(2−メトキシフェニル)ピロリジン−2,5−ジオン;
1−(4−メトキシフェニル)−3−(4H−1,2,4−トリアゾール−3−イルスルファニル)ピロリジン−2,5−ジオン;
プロパン−2−イル 4−(3,4−ジクロロ−2,5−ジオキソ−2,5−ジヒドロ1H−ピロール−1−イル)ベンゾエート;及び
4−{[4−クロロ−1−(5−クロロ−2−メトキシフェニル)−2,5−ジオキソ−2,5−ジヒドロ−1H−ピロール−3−イル]アミノ}ベンゼンスルホンアミド;
から選ばれる1以上、又はその医薬的に許容し得る塩からなる、細胞増殖阻害剤。
【請求項5】
請求項1〜4何れか記載の阻害剤と、医薬的に許容し得る担体と、を含んでなる細胞増殖性疾患の治療のための医薬組成物。
【請求項6】
前記増殖性疾患が癌である請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項7】
ヒトMDM4タンパク質、そのSWIBドメイン領域、又はSWIBドメイン領域を含むヒトMDM4タンパク質の断片と標識物質との融合タンパク質を用いて、これと結合する化合物を抗癌剤として選定する抗癌剤のスクリーニング方法。
【請求項8】
ヒトMDM4タンパク質、そのSWIBドメイン領域、又はSWIBドメイン領域を含むヒトMDM4タンパク質の断片とp53由来で標識物質で標識したペプチドやタンパク質断片との相互作用を阻害する化合物を抗癌剤として選定する抗癌剤のスクリーニング方法。
【請求項9】
前記SWIBドメイン領域が、10アミノ酸残基以下のペプチド配列が付加されていてもよい前記ヒトMDM4タンパク質のアミノ酸残基26−106を含む領域である請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
前記標識物質が、標識タンパク質又は標識化合物である請求項7又は8に記載の方法。
【請求項11】
前記標識タンパク質が、蛍光タンパク質であり、前記標識化合物が、蛍光色素である請求項10に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−275020(P2009−275020A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−129953(P2008−129953)
【出願日】平成20年5月16日(2008.5.16)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成19年度文部科学省、科学技術試験研究委託事業、産業技術力強化法第19条の適用を受けるもの
【出願人】(503359821)独立行政法人理化学研究所 (1,056)
【出願人】(504137912)国立大学法人 東京大学 (1,942)
【出願人】(500386563)株式会社ファルマデザイン (9)
【Fターム(参考)】