説明

組電池

【課題】 複数の素電池を組み合わせてなる加熱型の組電池において、素電池間の熱伝導を良くし、安定した動作を実現することができる組電池を提供する。
【解決手段】 単位組電池1は、4つの素電池20を電気的に直列接続して電池電圧を高くした組電池である。この単位組電池1における隣り合う素電池20の容器本体25同士は、隣り合う壁面25Xを共有して一体に形成されている。これにより、素電池20間の熱伝導が良くなり、これらの素電池20の温度が均衡しやすく、結果として単位組電池1全体の温度を均一に保ち易い。このため、電池寿命向上、電池立ち上り時間短縮、レート特性向上(電解質全体が良好に動作し、電流密度が上げられる)などの効果が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室温より高い温度にて動作させられる素電池を複数接続した組電池の構造に関し、特に溶融塩電池に適した組電池の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
電力貯蔵や自動車向けの比較的大型の二次電池の開発が進められている。所望の電圧及び所望の容量を得るためには、複数の素電池(単電池)を直並列に接続した組電池が用いられる。
常温で動作させる組電池として、リチウムイオン電池やニッケルマンガン電池の素電池を複数接続した組電池が知られている。この組電池においては、充放電の際に組電池を構成する各素電池内で熱が発生するため、発生した熱を速やかに冷却できるように組電池の放熱性を確保することが要求される。例えば、特許文献1においては、隣接する各素電池間に放熱部材として機能し得る間隔保持板(スペーサ)を挟んで組電池の放熱性を高めている。
【0003】
また、室温よりも高い温度で動作させる組電池として、ナトリウム硫黄電池の素電池を複数接続した組電池が知られている。この組電池は保温のため真空断熱容器に収容されており、また、各素電池の隙間には絶縁性の砂が充填され、各素電池を動揺しないように固定すると同時に局所的な異常加熱や活物質の漏洩を防止している(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−48996号公報
【特許文献2】特開2000−215908号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、100℃以下の温度で動作し、加熱時の安全性の高い溶融塩電池の素電池を複数接続した組電池を開発している。かかる溶融塩電池は、常温では固体の塩を比較的低温に加熱して溶融塩とし、電解質として用いる。このため、加熱手段を備えるとともに組電池を断熱容器に収容することで、電解質を溶融状態に維持しつつ運転する必要がある。
この溶融塩電池の組電池においては、各素電池内部の温度の均一性が要求される。電解質である溶融塩の温度にばらつきがあると、温度の高い部分では溶融塩の局所的な蓄熱により電池寿命の低下を引き起こし、また、温度の低い部分ではイオン伝導度が大きく低下して電池の内部抵抗の不均一が発生し、特定の電池のみに過大な電流が流れるなどの負荷の分布による特性の低下、電池寿命の低下を引き起こす。
また、溶融塩電池の組電池を電気自動車やハイブリッド自動車の二次電池に用いる場合には、組電池をできる限り早く動作温度まで昇温させることも求められる。
【0006】
しかしながら、上述のリチウムイオン電池の組電池のように、素電池間に冷却構造が設けられていると、各素電池内部の温度を均一に保つことができず、また、組電池を動作温度まで早く昇温させることができないという問題がある。
また、上述のナトリウム硫黄電池の組電池のように、素電池間に断熱構造が設けられていると、素電池間の熱伝導が悪くなるため、加熱手段に近い素電池は動作温度まで早く昇温させることができても、加熱手段から遠い素電池は動作温度まで早く昇温させることができないという問題がある。個々の素電池に加熱手段を設ければ、いずれの素電池も動作温度まで早く昇温させることができるが、組電池全体の大きさが大きくなり、またコスト増となることから好ましくない。
【0007】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、複数の素電池を組み合わせてなる加熱型の組電池において、素電池間の熱伝導を良くし、安定した動作を実現することができる組電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る組電池は、電池容器に1又は複数の正極及び1又は複数の負極が収容されている素電池が複数組み合わされて筐体内に収納され、室温より高い温度にて動作させられる組電池であって、前記電池容器は、上部に開口を有する容器本体と、該容器本体の開口を封口する蓋体とを有し、隣り合う前記素電池の容器本体同士は隣り合う壁面を共有して一体に形成されているものである(請求項1)。
【0009】
本発明によれば、隣り合う素電池の容器本体同士は隣り合う壁面を共有して一体に形成されているので、素電池間の熱伝導が良くなり、これらの素電池の温度が均衡しやすく、結果として組電池全体の温度を均一に保ち易い。このため、電池寿命向上、電池立ち上り時間短縮、レート特性向上(電解質全体が良好に動作し、電流密度が上げられる)などの効果が得られる。
なお、「室温より高い温度」の「室温」とは、日本工業規格(JIS)における「常温」のことを示しているのではなく、外部系から加熱も冷却もしていない状態のことを示している。従って、「室温より高い温度にて動作させられる組電池」とは、加熱により動作させられる組電池のことを指す。
【0010】
特に、前記素電池は、室温より高い温度で溶融する溶融塩を電解質として用いた溶融塩電池であると、本発明の効果が著しく、好ましい(請求項2)。
【0011】
特に、内部に加熱手段を設けた溶融塩電池の組電池では、加熱手段に近い部分は高温となり、遠い部分は低温となるので、溶融塩電池内の温度が不均一となりやすい。本発明のように溶融塩電池間の熱伝導を良くし、組電池全体の温度を均一に安定させることで、電池寿命の低下や電池特性の低下を防止することができる。
【0012】
また、前記隣り合う前記素電池の容器本体は、該容器本体の共有する壁面を貫通する貫通孔を有し、前記隣り合う前記素電池が各別に備える正極及び負極は、前記貫通孔を通じて電気的に直列又は並列に接続されていることが好ましい(請求項3)。
【0013】
隣り合う溶融塩電池の容器本体が別々に形成されており、これらの溶融塩電池の正極及び負極が、これらの容器本体が互いに接する壁面を連通する貫通孔を通じて電気的に直列又は並列に接続されていると、電解質である溶融塩が貫通孔を通じて前記壁面同士の隙間に漏れ出て、溶融塩電池の電池特性が低下するおそれがある。また、外部の水分がこの隙間から貫通孔を通じて電池容器内に侵入することにより、溶融塩電池の電池特性が低下するおそれがある。
これに対し、隣り合う溶融塩電池の容器本体同士が隣り合う壁面を共有して一体に形成されており、これらの溶融塩電池の正極及び負極が、前記の共有する壁面を貫通する貫通孔を通じて電気的に直列又は並列に接続されていると、一方の溶融塩電池の溶融塩が貫通孔を通じて他方の溶融塩電池の電池容器内に侵入することはあっても、貫通孔を通じて電池容器の外部に漏れ出ることはないため、溶融塩電池の電池特性が低下するおそれはない。また、外部の水分が貫通孔を通じて電池容器内に侵入することもないため、溶融塩電池の電池特性が低下するおそれがない。
【0014】
また、前記隣り合う前記素電池の蓋体同士は一体に形成されていることが好ましい(請求項4)。
【0015】
隣り合う素電池の蓋体が別々に形成されている場合、これらの素電池の容器本体と個々の蓋体とのシール性(気密性)を高めるためには、容器本体の共有する壁面と個々の蓋体とが接する部分の面積がそれぞれ一定量以上となるように、当該壁面の厚みをある程度大きくする必要がある。
これに対し、隣り合う素電池の蓋体同士が一体に形成されていると、前記壁面と一体形成された1つの蓋体とが接する部分の面積が一定量以上となれば良いため、蓋体が別々に形成されている場合に比べて前記壁面の厚みが薄くても、容器本体と蓋体とのシール性を高めることができる。このため、組電池全体を軽量化することができる。
【0016】
また、前記容器本体が金属で構成されていると(請求項5)、素電池間の熱伝導が良くなり、これらの素電池の温度が均衡しやすく、結果として組電池全体の温度を均一に保ち易い。また、素電池を加熱するための加熱手段が発生する熱が伝わりやすいため、素電池を動作温度まで早く昇温させることができる。
【0017】
また、前記容器本体が樹脂で構成されていると(請求項6)、樹脂は加工が容易であることから、隣り合う素電池の容器本体を一体形成するのに適している。また、樹脂は軽量であることから、組電池全体を軽量化することができるため、特に軽量化が要求される自動車用途の組電池として好適である。
【0018】
また、前記筐体内に前記素電池を加熱する加熱手段を備えた組電池では(請求項7)、加熱手段に近い部分は高温となり、遠い部分は低温となるので、特に素電池内の温度が不均一となりやすい。本発明のように素電池間の熱伝導を良くし、組電池全体の温度を均一に安定させることで、電池寿命の低下や電池特性の低下を防止することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、素電池間の熱伝導を良くし、安定した動作を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施形態1に係る組電池の全体構造を説明する斜視図である。
【図2】図1のA−A’部で切った断面を模式的に示した図である。
【図3】実施形態1に係る組電池の一例として、図1に用いる単位組電池の構成を説明する図である。
【図4】単位組電池容器本体を金属で作成する方法を説明するための図である。
【図5】実施形態1に係る組電池に用いる素電池の一例としての溶融塩電池の構成を示す図であり、Aは溶融塩電池の内部構成を模式的に示す上面図、Bは同縦断面図である。
【図6】複数の素電池の容器本体が一体形成されるバリエーションを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
実施形態1:
以下、本発明の実施の形態を、添付図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、実施形態1に係る組電池の全体構造を説明する斜視図である。内部を説明するために一部を開口して表現している。図1は、素電池が4個直列に接続されてなる単位組電池を9個並列に接続されてなる組電池の構成例である。
図1において、組電池10を構成する断熱容器としての筐体2内には、9個の扁平形状の単位組電池1がその厚み方向に積層されて収容されている。単位組電池1は直方体形状であり、両端部側面に充放電のための端子が形成されている。本例において筐体2の大きさは高さ170mm×幅(単位組電池1の幅広面の幅方向)550mm×奥行き(単位組電池1の積層方向)350mmである。9個の各単位組電池1は、並列に並べられ、接続端子板4aおよび4bにボルト5によりそれぞれ固定されて電気的に並列に接続されている。接続端子板はその端部を筐体2の外部に引き出す構造になっており、接続端子板4aがプラス極、接続端子板4bがマイナス極として利用される。また各単位組電池1は複数の加熱手段としてのヒーター3により加熱される。ヒーターは扁平形状であり、外部からの配線(図示せず)により通電され、その発熱により組電池10を室温よりも高温状態に維持できるように加熱する。温度調節は温度センサと制御回路による既知の制御手段により行うことができる。
ここで、「室温よりも高温」の「室温」とは、上述のように、日本工業規格(JIS)における「常温」のことを示しているのではなく、外部系から加熱も冷却もしていない状態のことを示している。
【0022】
図2を用いて内部構成をさらに説明する。図2は図1のA−A’部で切った断面を模式的に示した図である。
筐体2の内面は断熱材7に覆われ、筐体内全体を保温するように構成されている。筐体2および断熱材7の材質は特に限定されず、組電池全体の機械的保護、保温等の観点で選択される材料を用いることができる。たとえば筺体2をアルミニウム合金で構成すると軽量化および強度の両立の点で好ましい。
【0023】
内部には9個の単位組電池1が並べられ、その3個毎の単位組電池間に、ヒーター3としての板状ヒーターが、その幅広面と単位組電池の幅広面とが接するように配置されている。
また、ヒーター3は、両端側の単位組電池1、すなわち、断熱材7の内壁面に対向する幅広面を備える単位組電池1に対し、ヒーター3の幅広面が当該単位組電池1の幅広面と対向するように設置されている。
【0024】
単位組電池1とヒーター3とは、より密着して接するように板バネ6によって単位組電池1の積層方向に加圧付勢されている。ここで、密着とは、通常の意味において顕著な隙間無く、面と面が互いに接している状態をいうものであり、言い換えれば面と面の間を流体が容易に流動しない程度に接している状態である。
なお、密着するように並べられた単位組電池1とヒーター3のそれぞれの間に隙間が生じないように付勢する加圧手段であれば、板バネに限定されるものではない。
【0025】
ヒーターの配置は、本例のように単位組電池(素電池)の間に挟み込まれるものに限定されず、またその数も本例に限定されるものではない。加熱の点で最も好ましくは個々の単位組電池(素電池)毎にヒーターを設ける方が良い。しかしヒーターの数を増やすと組電池全体のコスト増および容積増を招く。逆に例えばヒーターを筐体内面だけに設けることもでき、コストや容積の点で好ましいが、内蔵する個々の素電池とヒーターとの距離による温度差が生じやすくなる。本例はそのバランスを考慮して3個毎の単位組電池1の間にヒーター3を配置した例を示したものである。
【0026】
ヒーターは板状ヒーターを例示しており、これに限定されるものではないが、ヒーターが扁平形状であれば、単位組電池(素電池)と密着させやすく、特にヒーターが板状ヒーターであれば、直方体形状の単位組電池(素電池)とより密着させやすい。また、個々の単位組電池、あるいはその構成要素となる個々の素電池を効率よく、また出来るだけ均一に加熱するために、ヒーター3は単位組電池の側面と同程度に面積の大きな板状ヒーターが好ましい。
【0027】
単位組電池1、あるいはその構成要素となる個々の素電池の形状は直方体形状に限られないが、直方体形状とすることで、単位組電池(素電池)と板状ヒーターとを互いに密着させやすくなるため、各素電池内部の温度を均一に保ち易く、また、各素電池を動作温度まで早く昇温させることができる。なお、ここでの直方体形状には略直方体形状も含まれるものとする。
【0028】
単位組電池1の隣り合う面同士(例えば図2の最も右に図示される単位組電池1の面11aとその左となりの単位組電池1の面11b)は電極等の突起を有さない平面で構成されており、互いに密着しやすいようになっている。
【0029】
図3は、上記の単位組電池1の内部構造を説明する縦断面図である。単位組電池1は、複数の素電池を電気的に直列接続して電池電圧を高くした組電池である。本例では図3のように4つの素電池20(素電池20A、20B、20C、20D)を連結した例を示すが、連結数は4つに限定されるものではない。例えば素電池が電圧3Vの溶融塩電池であれば連結数を4つとすることで、単位組電池としての公称電圧が12Vとなり、既存の自動車用鉛蓄電池等に相当する電池として使用でき、また既存の電池に用いられる機器(例えば充電器)の流用が容易にできる点で好ましく用いられる。
【0030】
この4つの素電池20の容器本体25は一体に形成されている。すなわち、単位組電池1における隣り合う素電池20の容器本体25同士は、隣り合う壁面25Xを共有して一体に形成されている。
これにより、素電池20間の熱伝導が良くなり、これらの素電池20の温度が均衡しやすく、結果として単位組電池1全体の温度を均一に保ち易い。このため、電池寿命向上、電池立ち上り時間短縮、レート特性向上(電解質全体が良好に動作し、電流密度が上げられる)などの効果が得られる。
以下、4つの素電池20の容器本体25を一体形成したものを単位組電池容器本体250と呼ぶ。
【0031】
また、この4つの素電池20の蓋体26は一体に形成されている。すなわち、単位組電池1における隣り合う素電池20の蓋体26同士は、一体に形成されている。
隣り合う素電池20の蓋体26が別々に形成されている場合、これらの素電池20の容器本体25と個々の蓋体26とのシール性(気密性)を高めるためには、容器本体25の共有する壁面25Xと個々の蓋体26とが接する部分の面積がそれぞれ一定量以上となるように、当該壁面25Xの厚みをある程度大きくする必要がある。
これに対し、隣り合う素電池20の蓋体26同士が一体に形成されていると、前記壁面25Xと一体形成された1つの蓋体26とが接する部分の面積が一定量以上となれば良いため、蓋体26が別々に形成されている場合に比べて前記壁面25Xの厚みが薄くても、容器本体25と蓋体26とのシール性を高めることができる。このため、組電池全体を軽量化することができる。
以下、4つの素電池20の蓋体26を一体形成したものを単位組電池蓋体260と呼ぶ。
単位組電池蓋体260は、単位組電池容器本体250の開口部の内周に形成された段部に内嵌されて開口部を塞ぐようになっている。
【0032】
素電池20の容器本体25(単位組電池容器本体250)は金属又は樹脂で構成されていることが好ましい。
金属で構成されていると、素電池20間の熱伝導が良くなり、これらの素電池20の温度が均衡しやすく、結果として単位組電池1全体の温度を均一に保ち易いからである。また、素電池20を加熱するためのヒーター3が発生する熱が伝わりやすいため、素電池20を動作温度まで早く昇温させることができるという効果も奏する。金属の具体例としては、アルミニウムやステンレスなどが挙げられる。
一方、樹脂で構成されていると、樹脂は加工が容易であることから、隣り合う素電池20の容器本体25を一体形成するのに適している。また、樹脂は軽量であることから、組電池1全体を軽量化することができるため、特に軽量化が要求される自動車用途の組電池として好適である。樹脂の具体例としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などの耐熱性樹脂が挙げられる。
【0033】
単位組電池容器本体250は種々の製法を用いて作成することができる。
図4は、単位組電池容器本体を金属で作成する方法を説明するための図である。
まず、図4(a)に示すように、単位組電池容器本体250の外枠に相当する、単位組電池容器本体外枠250Aを準備する。単位組電池容器本体外枠250Aは金属で構成されている。
次に、図4(b)に示すように、単位組電池容器本体250を4つの素電池20の容器本体25に区分けするための単位組電池容器本体仕切り250Bを3つ準備し、単位組電池容器本体外枠250Aに挿入する。単位組電池容器本体仕切り250Bも金属で構成されている。
さらに、図4(c)に示すように、単位組電池容器本体外枠250Aの内部の空間を4等分するように単位組電池容器本体仕切り250Bを位置決めし、単位組電池容器本体外枠250Aと単位組電池容器本体仕切り250Bとを溶接する。
このように、単位組電池容器本体250を作成することができる。なお、3つの単位組電池容器本体仕切り250Bで区分された単位組電池容器本体外枠250Aの内部の4つの空間は、それぞれ素電池20の容器本体25の内部の空間となる。また、3つの単位組電池容器本体仕切り250Bは、それぞれ隣り合う素電池20の容器本体25が共有する壁面25Xとなる。
【0034】
また、金属からなる単位組電池容器本体250は、鋳造により作成することもできる。すなわち、単位組電池容器本体250を形成できる鋳型を準備しておき、その鋳型に溶融した金属を流し込んで、冷却・凝固させることにより、単位組電池容器本体250を作成しても良い。
一方、単位組電池容器本体250を樹脂で作成する場合も、同様に単位組電池容器本体250を形成できる鋳型を準備しておき、その鋳型に溶融した樹脂を流し込んで、冷却・凝固させることにより、単位組電池容器本体250を作成することができる。
【0035】
図5は、図3を構成する素電池20Bとしての溶融塩電池の構成を説明する図であり、図5のAは溶融塩電池の内部構成を模式的に示す上面図、Bは同溶融塩電池の構成を模式的に示す縦断面図である。
【0036】
まず図5および図3を参照して素電池20Bから説明する。なお、図3の他の素電池20(20A、20C、20D)についても内容は素電池20Bと基本的に同じである。
本例の溶融塩電池では、複数(図では6つ)の矩形平板状の負極21と、袋状のセパレータに各別に収容された複数(図では5つ)の矩形平板状の正極41とが、上下方向に沿う状態で交互に対向して横方向(図では前後方向)に並設されている。1組の負極21、セパレータ31及び正極41が1つの発電要素を構成し、本実施の形態では5つの発電要素及び1つの他の負極21が積層されて、直方体形状のアルミニウム合金からなる電池容器内に収容されている。電池容器は、上面に開口部を有する容器本体25と、容器本体25の開口部を塞ぐ矩形平板状の蓋体26とを有している。電池容器の内側は、フッ素樹脂コーティングによって絶縁処理が施されている。
【0037】
負極21のそれぞれの上端部には、容器本体25の短辺側に位置する一方の壁面25XAに近い側に、電流を取り出すための矩形のアルミニウム合金からなる接続タブ22の下端部がそれぞれ接合されている。接続タブ22及びその上部は、平面視が壁面25XB側に開いたコの字状をなす接続部材23が有する2つの腕部231及び231の相対向する2面に夫々溶接されている。接続部材23は、面方向が腕部231と平行な矩形の接続板部232を有し、該接続板部232の上部中央には、壁面25XAに開設された貫通孔25Hと対向する取付孔233が設けられている。
【0038】
正極41のそれぞれの上端部には、容器本体25の短辺側に位置する他方の壁面25XBに近い側に、電流を取り出すための矩形のアルミニウム合金からなる接続タブ42の下端部がそれぞれ接合されている。接続タブ42及びその上部は、平面視が壁面25XA側に開いたコの字状をなす接続部材43が有する2つの腕部431及び431の相対向する2面に夫々溶接されている。接続部材43は、面方向が腕部431と平行な矩形の接続板部432を有し、該接続板部432の上部中央には、壁面25XBに開設された貫通孔25Hと対向する取付孔433が設けられている。このように、上述した5つの発電要素及び1つの負極21が電気的に並列接続されて、電池容量が大きい溶融塩電池を構成する。
【0039】
負極21は、負極活物質である錫がメッキされたアルミニウム箔からなる。アルミニウムは、正/負各電極の集電体に適した材料であり、且つ溶融塩に対して耐腐食性を有する。負極21は活物質を含めた厚さが約0.14mmであり、縦方向及び横方向夫々の寸法が、100mm及び120mmである。なお容器本体の大きさは縦方向(高さ)150mm×横方向(横幅)130mm×厚さ35mmである。
【0040】
正極41は、アルミニウム合金の多孔質体を集電体とし、該集電体にバインダと導電助剤と正極活物質であるNaCrOとを含む合剤を充填して、約1mmの板厚に形成してある。正極41の縦方向及び横方向夫々の寸法は、デンドライトの発生を防止するために、負極21の縦方向及び横方向の寸法より小さくしてあり、正極41の外縁が、セパレータ31を介して負極21の周縁部に対向するようになっている。尚、正極41の集電体は、例えば、繊維状のアルミニウムからなる不織布であってもよい。
【0041】
セパレータ31は、溶融塩電池が動作する温度で溶融塩に対する耐性を有するフッ素樹脂の膜からなり、多孔質に且つ袋状をなすように形成されている。セパレータ31は、負極21及び正極41と共に、直方体状の電池容器内に満たされた溶融塩30の液面下約10mmの位置から下側に浸漬されている。これにより、多少の液面低下が許容される。
【0042】
接続部材23及び43の夫々は、負極21及び正極41と外部の電気回路とを接続するための外部電極の役割を果たすものであり、溶融塩30の液面より上側に位置するようにしてある。溶融塩30は、FSI(ビスフルオロスルフォニルイミド)又はTFSI(ビストリフルオロメチルスルフォニルイミド)系アニオンと、ナトリウム及び/又はカリウムのカチオンとからなるが、これに限定されるものではない。
【0043】
上述した構成において、上述のヒーター3を用いて電池容器全体を85℃〜95℃に加熱することにより、溶融塩30が融解して、接続部材23,43を介しての充電及び放電が可能となる。
【0044】
次に、単位組電池1について図3および図5を参照して説明する。素電池20としての4つの溶融塩電池の容器本体25同士は、隣り合う壁面25Xを共有するように一体に形成されている。
そして、各容器本体25内には、接続部材23,43によって並列接続された前記5つの発電要素(負極21、セパレータ31に包まれた正極41)及び1つの負極21と溶融塩30とが組み込まれている。
素電池20の容器本体25の幅狭の壁面(隣り合う素電池20の容器本体25が共有する壁面25Xを含む)の上部中央には、横方向に貫通する貫通孔25Hが設けられており、この貫通孔25Hにテフロン(登録商標)等からなる絶縁性のブッシング(軸受筒)を解して、アルミニウム合金からなるボルト51が挿通されている。ボルト51は、同じくアルミニウム合金からなるナット52により締め付けられる。これにより、隣り合う素電池20が各別に備える正極41及び負極21は、貫通孔25Hを通じて電気的に直列に接続される。
【0045】
仮に、隣り合う素電池20の容器本体25が別々に形成されており、これらの素電池20の正極41及び負極21が、これらの容器本体25が互いに接する壁面を連通する貫通孔を通じて電気的に直列に接続されているとすると、電解質である溶融塩30が貫通孔を通じて前記壁面同士の隙間に漏れ出て、溶融塩電池の電池特性が低下するおそれがある。また、外部の水分がこの隙間から貫通孔を通じて電池容器内に侵入することにより、溶融塩電池の電池特性が低下するおそれがある。
これに対し、実施形態1に係る組電池1では、隣り合う素電池20の容器本体25同士が隣り合う壁面25Xを共有して一体に形成されており、これらの素電池20の正極41及び負極21が、前記の共有する壁面25Xを貫通する貫通孔25Hを通じて電気的に直列に接続されていると、一方の素電池20(例えば、20A)の溶融塩30が貫通孔25Hを通じて他方の素電池20(例えば、20B)の電池容器内に侵入することはあっても、貫通孔25Hを通じて電池容器の外部に漏れ出ることはないため、溶融塩電池の電池特性が低下するおそれはない。また、外部の水分が貫通孔25Hを通じて電池容器内に侵入することもないため、素電池20の電池特性が低下するおそれがない。
【0046】
次に、溶融塩電池に用いた導電材料について説明する。溶融塩30のような電解質に接する部位にイオン化傾向が異なる金属(導電材料)を置いた場合、一方の金属から他の金属に電流が流れることによって電蝕が発生する。このため、本実施の形態では、上述したように、接続タブ22,42、接続部材23,43、ボルト51及びナット52は、負極21及び正極41と同種の導電材料(本実施の形態ではアルミニウム合金)を含むようにしてあり、電蝕の発生が防止されている。上述したように、電池容器もアルミニウム合金からなる。
【0047】
以上のように、単位組電池1を構成する複数の素電池20の容器本体25同士は、隣り合う壁面25Xを共有して一体に形成されており、また、単位組電池1同士はその構成要素としての素電池20の側面を密着させるように配置されて全体の組電池10を構成している。
この溶融塩電池の組電池10は、各素電池20内部の温度の均一性が要求される。電解質である溶融塩の温度にばらつきがあると、温度の高い部分では溶融塩の局所的な蓄熱により電池寿命の低下を引き起こし、また、温度の低い部分ではイオン伝導度が大きく低下して電池の内部抵抗の不均一が発生し、特定の電池のみに過大な電流が流れるなどの負荷の分布による特性の低下、電池寿命の低下を引き起こす。
また、溶融塩電池の組電池10を電気自動車やハイブリッド自動車の二次電池に用いる場合には、組電池をできる限り早く動作温度まで昇温させる必要がある。
実施形態1に係る溶融塩電池の組電池10は、隣り合う溶融塩電池(素電池20)の容器本体25同士が隣り合う壁面25Xを共有するように一体に形成されているので、溶融塩電池間の熱伝導が良くなり、これらの溶融塩電池の温度が均衡しやすく、結果として組電池全体の温度を均一に保ちやすい。このため、電池寿命の低下や電池特性の低下を防止することができる。
【0048】
また、実施形態1に係る溶融塩電池の組電池10のように、素電池を加熱する加熱手段を備えた組電池では、加熱手段に近い部分は高温となり、遠い部分は低温となるので、特に素電池内の温度が不均一となりやすい。実施形態1のように素電池間の熱伝導を良くし、組電池全体の温度を均一に安定させることで、電池寿命の低下や電池特性の低下を防止することができる。
【0049】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
例えば、上述の実施の形態においては、複数の素電池20の容器本体25は、幅狭の壁面を共有するように一体に形成されている構成であったが、これに限定されるわけではない。
【0050】
図6は、複数の素電池の容器本体が一体形成されるバリエーションを説明するための図である。
図6(a)では、3つの素電池20の容器本体25が、隣り合う幅広の壁面を共有するように一体形成されている。
図6(b)では、12個の素電池20の容器本体25が、隣り合う幅広の壁面及び幅狭の壁面を共有するように一体形成されている。
このように、幅広の壁面を共有するように一体形成されている構成であっても良いし、幅広の壁面と幅狭の壁面の両方を共有するように一体形成されている構成であっても良い。
【符号の説明】
【0051】
1 単位組電池
2 筐体
3 ヒーター
4a,4b 接続端子板
5 ボルト
6 板バネ
7 断熱材
10 組電池
11a,11b 面
20 素電池
21 負極
22,42 接続タブ
23,43 接続部材
231,431 腕部
232,432 接続板部
233,433 取付孔
25 容器本体
25H 貫通孔
25X,25XA,25XB 側壁
250 単位組電池容器本体
250A 単位組電池容器本体外枠
250B 単位組電池容器本体仕切り
26 蓋体
260 単位組電池蓋体
30 溶融塩
31 セパレータ
41 正極
51 ボルト
52 ナット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池容器に1又は複数の正極及び1又は複数の負極が収容されている素電池が複数組み合わされて筐体内に収納され、室温より高い温度にて動作させられる組電池であって、
前記電池容器は、上部に開口を有する容器本体と、該容器本体の開口を封口する蓋体とを有し、
隣り合う前記素電池の前記容器本体同士は隣り合う壁面を共有して一体に形成されている、
組電池。
【請求項2】
前記素電池は、室温より高い温度で溶融する溶融塩を電解質として用いた溶融塩電池である、
請求項1に記載の組電池。
【請求項3】
前記隣り合う前記素電池の前記容器本体は、該容器本体の共有する壁面を貫通する貫通孔を有し、
前記隣り合う前記素電池が各別に備える正極及び負極は、前記貫通孔を通じて電気的に直列又は並列に接続されている、
請求項2に記載の組電池。
【請求項4】
前記隣り合う前記素電池の前記蓋体同士は一体に形成されている、
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の組電池。
【請求項5】
前記容器本体は金属で構成されている、
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の組電池。
【請求項6】
前記容器本体は樹脂で構成されている、
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の組電池。
【請求項7】
前記筐体内に前記素電池を加熱する加熱手段を備える、
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の組電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−238492(P2012−238492A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−106972(P2011−106972)
【出願日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】