経口投与されたペプチド−スタチンの相乗作用
本発明は、アテローム性動脈硬化症の1以上の症状を緩和する新規なペプチドを提供する。当該ペプチドは、高安定性であり、経口経路によって簡便に投与される。当該ペプチドは、未β高密度リポ蛋白様粒子の形成及び循環を刺激し、及び/又は脂質輸送及び解毒を促進するために効果的である。本発明はまた、哺乳動物中のペプチドを追跡する方法を提供する。更に、当該ペプチドは、骨粗鬆症を抑制する。スタチンと共投与される場合、当該ペプチドは、スタチンを著しく低用量で使用することを可能にするスタチン活性を亢進し、及び/又は任意の与えられた用量でスタチンに著しく抗炎症性を引き起こす。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、その全てを、全ての目的のためにその全体を参考として本明細書に組み込まれている、2002年10月16日に出願された第10/273,386号の一部継続である、2003年4月25日に出願された第USSN 10/423,830号の継続である。
本研究は、米国公衆衛生サービス及び国立心臓・肺・血液研究所グランツHL30568とHL34343によって支持された。米国政府は、本発明に一定の権利を有するだろう。
本発明は、アテローム性動脈硬化症の分野に関する。特に、本発明は、経口投与可能で、アテローム性動脈硬化症の1以上の症状を改善するペプチドの種類の同定に関する。
【背景技術】
【0002】
心疾患は、特に米国及び西欧諸国では、疾病及び死亡の主な原因である。種々の原因因子が、疾患に対する遺伝的素因、性別、喫煙及びダイエット等の生活スタイル要因、高血圧症、高コレステロール血症を含む高脂血症、を含む心疾患の発症に関係している。当該要因のいくつか、特に高脂血症及び高コレステロール血症(高血中コレステロール濃度)は、アテローム性動脈硬化症に関連する重要な危険因子を与える。
【0003】
コレステロールは、血中では、一般的にキロミクロン、超低密度リポ蛋白(VLDLs)、低密度リポ蛋白(LDLs)及び高密度リポ蛋白(HDLs)として知られているリポ蛋白粒子内で遊離のエステル化コレステロールとして存在する。血中の総コレステロール濃度は、(1)消化管からのコレステロールの吸収、(2)炭水化物、蛋白質、脂質及びエタノール等の食事成分からのコレステロール合成、並びに(3)組織、特に肝臓による血液からのコレステロールの除去、及び胆汁酸、ステロイドホルモン及び胆汁性コレステロールのその後の変換、によって影響を受ける。
【0004】
血中コレステロール濃度の維持は、遺伝的及び環境的要因によって影響される。遺伝的要因は、コレステロール生合成における律速酵素の濃度、肝臓中の低密度リポ蛋白に対する受容体の濃度、コレステロール/胆汁酸の変換のための律速酵素の濃度、リポ蛋白の合成及び分泌の速度、並びに性別を含む。ヒトの血中コレステロール濃度の止血に影響を与える環境的要因は、食事成分、喫煙の発生、身体活動度及び種々の物質の使用を含む。食事で変化するものは、脂質の量及び型(飽和及びポリ不飽和脂肪酸)、コレステロールの量、繊維の量及び型、並びにおそらくビタミンC及びD等のビタミンの量及びカルシウム等のミネラルの量を含む。
【0005】
疫学的研究は、高密度リポ蛋白(HDL)及びアポリポ蛋白(アポ)A−Iレベルと、アテローム動脈硬化性事象の発生との逆相関を示す(Wilson et al. (1988) 「アテローム性動脈硬化症」 8: 737-741)。粥腫発生の食事を与えたウサギへのHDL投与は、アテローム動脈硬化性の形成を抑制することが判った(Badimon et al., (1990) J. Invest. 85: 1234-1241)。
【0006】
ヒトアポA−Iは、その抗粥腫発生的性質のため、熱心な研究の題材となっている。アポA−Iを含む交換可能なアポリポ蛋白は、脂質関連ドメインを有する(Brouillette and Anantharamaiah (1995) Biochim, Biophys. Acta 1256: 103-129; Segrest et al., (1974) FEBS Lett. 38:: 247-253)。アポA−Iは、8つの縦一列に並んだ22マー配列の繰り返しを有すると仮定され、その多くは、クラスA両親媒性ヘリックス構造を形成する可能性がある(Segrest et al., (1974) FEBS Lett. 38:: 247-253)。クラスA両親媒性ヘリックスの特徴は、極性−非極性界面の正に荷電した残基及び極性表面の中心の負に荷電した残基を含む(Segrest et al., (1974) FEBS Lett. 38: 247-253; Segrest et al., (1990) 「蛋白質:構造、機能及び遺伝学」 8: 103-117)。アポA−Iは、複合体を形成し、コレステロール濃縮細胞からコレステロール流出を促進するべく、リン脂質と強い関連を示す。アテローム性動脈硬化症の1以上の症状を効果的に緩和するためのアポA−Iの血漿レベルの送達及び維持は、これまで理解しにくいとされてきた。
【発明の開示】
【0007】
本発明は、アテローム性動脈硬化症の1以上の症状を緩和する、新規なペプチド投与を提供する。特に、「D」アミノ酸残基で製剤化される場合に、クラスA両親媒性ヘリックスを含み、及び/又は保護アミノ末端及びカルボキシル末端を有するペプチドが、生物に経口投与することができ、直ちに吸収され血漿へ送達され、アテローム性動脈硬化症の1以上の症状の緩和に効果的である、ことは本発明で発見された。ある実施態様では、当該ペプチドは、全て「L」アミノ酸残基で製剤化することができ、特に、経口投与以外の経路によって投与される場合には更に効果的である。
【0008】
本発明のペプチドは、典型的には、製剤化及び未β高密度リポ蛋白様粒子の循環を促進し、及び/又は脂質輸送及び解毒作用を促進するのに効果的である。
【0009】
本明細書に記載されたペプチドは、骨粗鬆症の発現を回避し、その1以上の症状を抑制又は除去するためにも効果的である。
【0010】
当該ペプチドが、スタチンの活性を亢進(例えば相乗作用的に亢進)し、その結果、低投薬量でのスタチンの効果的使用を可能にし、及び/又は任意の与えられた投薬量で、スタチンに顕著に抗炎症作用を引き起こすために使用できることも、驚くべき発見である。
【0011】
従って、一つの実施態様では、本発明は、アテローム性動脈硬化症の1以上の症状を緩和するペプチド、ここで、当該ペプチドは、約10〜約30のアミノ酸長の範囲であり、少なくとも一つのクラスA両親媒性ヘリックスを含み;酸化剤による酸化からリン脂質を保護し;国際公開第97/36927号パンフレット及び/又は米国特許第6,037,323号明細書及び/又は米国特許第4,643,988号明細書に開示されたペプチドでない、ペプチド又はペプチドのコンカテマーを含む、を提供する。ある実施態様では、当該ペプチドは、少なくとも10アミノ酸長である。ある実施態様では、当該ペプチドは、約40以下のアミノ酸長である。ある実施態様では、当該ペプチドは、全て「L」アミノ酸を含み、一方、ある他の実施態様では、当該ペプチドは、少なくとも一つの「D」アミノ酸残基を含む。ある実施態様では、当該ペプチドを含む全ての鏡像異性アミノ酸は、「D」アミノ酸である。
【0012】
当該アミノ酸は、場合により、更に保護基(例えば、アミノ及び/又はカルボキシル末端に結合された保護基)を含む。好適な保護基は、限定されず、アセチル(Ac)、アミド、3〜20炭素原子のアルキル基、Fmoc、t−ブトキシカルボニル(Tboc)、9−フルオレンアセチル基、1−フルオレンカルボン酸基、9−フルオレンカルボン酸基、9−フルオレン−1−カルボン酸基、ベンジルオキシカルボニル、キサンチル(Xan)、トリチル(Trt)、4−メチルトリチル(Mtt)、メシチレン−2−スルホニル(Mts)、4,4−ジメトキシベンズヒドリル(Mbh)、トシル(Tos)、2,2,5,7,8−ペンタメチル クロマン−6−スルホニル(Pmc)、4−メチルベンジル(MeBzl)、4−メトキシベンジル(MeOBzl)、ベンジルオキシ(BzlO)、ベンジル(Bzl)、ベンゾイル(Bz)、3−ニトロ−2−ピリジンスルフェニル(Npys)、1−(4,4,−ジメチル−2,6−ジオキソシクロヘキシリデン)エチル(Dde)、2,6−ジクロロベンジル(2,6−DiCl−Bzl)、2−クロロベンジルオキシカルボニル(2−Cl−Z)、2−ブロモベンジルオキシカルボニル(2−Br−Z)、ベンジルオキシメチル(Bom)、シクロヘキシルオキシ(cHxO)、t−ブトキシメチル(Bum)、t−ブトキシ(tBuO)、t−ブチル(tBu)及びトリフルオロアセチル(TFA)を含む。
【0013】
ある実施態様では、当該ペプチドは、アミノ末端に結合された第一保護基及びカルボキル末端に結合された第二保護基を更に含む。当該ペプチドは、薬理的に許容される賦形剤(例えば、哺乳動物の経口投与に好適な薬理的に許容される賦形剤)と混合することができる。
【0014】
ある実施態様では、
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L−K−A−F−Y−E−K−V−F−E−K−F−K−E(配列番号:103)からなる群より選ばれる配列を含む。
【0015】
ある実施態様では、上記ペプチドは、全て「L」アミノ酸を含む。ある実施態様では、上記ペプチドは、少なくとも一つの「D」アミノ酸、より典型的には、多数の「D」アミノ酸を含む。ある実施態様では、鏡像異性アミノ酸の少なくとも半数は、「D」アミノ酸であり、ある実施態様では、全ての鏡像異性アミノ酸は、「D」アミノ酸である。
【0016】
ある実施態様では、当該ペプチドは、アミノ及び/又はカルボキシル末端に結合された保護基を更に含む。従って、例えば、当該ペプチドは、アミノ末端に結合された保護、ここで、当該アミノ保護基は、ベンゾイル基、アセチル、プロピオニル、カルボベンゾキシ、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、N−メチル アンスラニリル及び3〜20炭素原子のアルキルであり、及び/又はカルボキシル末端に結合された保護基、ここで、当該カルボキシル末端保護基は、アミドである、を含む。
【0017】
酸化剤は、過酸化水素、13(S)−HPODE、15(S)−HPETE、HPODE、HPETE、HODE、HETE等の物質でよい。ある実施態様では、リン脂質は、1−パルミトリル−2−アラキドニル−sn−グリセロ−3−ホスホリルコリン(PAPC)、1−ステアロイル−2−アラキドノイル−sn−グリセロ−3−ホスホリルコリン(SAPC)、1−ステアロイル−2−アラキドニル−sn−グリセロ−3−ホスホリルエタノールアミン(SAPE)からなる群より選ばれる。
【0018】
ペプチドは、物質、例えば薬学的に許容される賦形剤と混合した物質として提供することができる。ペプチドは、単位投薬製剤として提供することができる。ある実施態様では、徐放製剤(例えば「徐放」マトリックス、マイクロカプセル化等として)として提供することができる。
【0019】
別の実施態様では、本発明は、哺乳動物にスタチンの活性を亢進する方法を提供する。当該方法は、典型的には、本明細書に記載された1以上のペプチドの有効量をスタチンと共投与することを含む。ある実施態様では、当該スタチンは、セリバスタチン、アトルバスタチン、シムバスタチン、プラバスタチン、フラバスタチン、ロバスタチン、ロスバスタチン及びピタバスタチンからなる群より選ばれる1以上のスタチンを含むが、これらに限定されない。当該ペプチドは、スタチン(スタチン類)の前に、スタチン(スタチン類)と同時に又はスタチン(スタチン類)の後に投与することができる。ある実施態様では、当該ペプチド及び/又は当該スタチンの投与は、経口投与、鼻腔内投与、直腸投与、腹腔内注射、静脈内注射、皮下注射、経皮的投与、筋肉内注射等を含む経路でよいが、これらに限定されない。ある実施態様では、哺乳動物は、アテローム性動脈硬化症の1以上の症状を有すると診断された哺乳動物である。ある実施態様では、哺乳動物は、卒中又はアテローム性動脈硬化症の危険にあると診断された哺乳動物である。哺乳動物は、ヒト又はヒト以外の哺乳動物である。
【0020】
更に別の実施態様では、本発明は、哺乳動物におけるアテローム性動脈硬化症と関連する1以上の症状を緩和する方法を提供する。当該方法は、典型的には、1以上のスタチン(例えばセリバスタン、アトルバスタチン、シムバスタチン、プラバスタチン、フラバスタチン、ロバスタチン、ロスバスタチン、ピタバスタチン等)の有効量及び本明細書に記載された1以上のペプチドの有効量を哺乳動物に投与することを含む。但し、当該スタチンの有効量は、ペプチドなしに投与されたスタチンの有効量よりも低い。ペプチド(ペプチド類)は、スタチン(スタチン類)の前に、スタチン(スタチン類)と同時に、又はスタチン(スタチン類)の後に投与することができる。ペプチド及び/又はスタチンは、単位投薬製剤として投与することができる。ペプチド(ペプチド類)及び/又はスタチン(スタチン類)は、経口投与、鼻腔内投与、直腸投与、腹腔内注射、静脈内注射、皮下注射、経皮的投与、吸入投与及び筋肉内注射を含む経路によって投与することができるが、これらに限定されない。ある実施態様では、哺乳動物は、アテローム性動脈硬化症の1以上の症状を有し、及び/又は卒中及び/又はアテローム性動脈硬化症の危険にあると診断されたヒト又はヒト以外の哺乳動物である。
【0021】
本発明はまた、物質を提供する。当該製剤は、典型的には、薬学的に許容される賦形剤及び本明細書に記載された1以上のペプチドを含む。別の物質は、典型的には、1以上のスタチン(例えばセリバスタン、アトルバスタチン、シムバスタチン、プラバスタチン、フラバスタチン、ロバスタチン、ロスバスタチン、ピタバスタチン等)及び本明細書に記載された1以上のペプチドを含む。ある実施態様では、当該ペプチド及び当該スタチンは、有効投薬量で存在する。ある実施態様では、当該スタチンの有効量は、ペプチド(ペプチド類)なしで投与されたスタチンの有効量よりも低く、及び/又は当該ペプチド(ペプチド類)の有効量は、スタチン(スタチン類)なしで投与されたペプチド(ペプチド類)の有効量よりも低い。種々の実施態様において、スタチン(スタチン類)及び/又はペプチド(ペプチド類)は、徐放製剤(例えば徐放マトリックス、マイクロカプセル化製剤等)に存在する。物質は、単位投薬製剤、例えば経口投与でよい。ある実施態様では、当該製剤は、経口投与、鼻腔内投与、直腸投与、腹腔内注射、静脈内注射、皮下注射、経皮的投与、吸入投与及び筋肉内注射からなる群より選ばれる経路による投与のために調合する。当該製剤は、場合により、1以上のリン脂質(例えばUSSN 09,994,227号に記載されたリン脂質)を更に含んでもよい。
【0022】
別の実施態様では、本発明は、哺乳動物における骨粗鬆症の1以上の症状を軽減又は抑制する方法を提供する。当該方法は、典型的には、本明細書に記載された1以上のペプチドの哺乳動物への投与を含み、ここで、当該ペプチドは、骨粗鬆症の1以上の症状を軽減又は除去するために十分な濃度で投与する。ある実施態様では、当該ペプチドは、骨の脱石灰を低減又は除去するために十分な濃度で投与する。ある実施態様では、当該ペプチドは、骨の再脱石灰を誘導するために十分な濃度で投与する。当該ペプチド(ペプチド類)は、薬理的に許容される賦形剤、例えば本明細書に記載された賦形剤と混合することができる。
【0023】
ある実施態様では、本発明の方法及び/又はペプチドは、国際公開第97/36927号パンフレット及び/又は米国特許第6,037,323号明細書及び/又は米国特許第4,634,988号明細書及び/又はGarber et al., (1992) 「アテローム性動脈硬化症及び血栓症」, 12: 886-894に開示された任意の1以上のペプチドを除く。本発明のある実施態様では、Lアミノ酸である全ての鏡像異性アミノ酸で合成された又はDアミノ酸で合成された、米国特許第4,634,988号明細書及び/又はGarber et al., (1992)に開示された任意の1以上のペプチドであって、当該ペプチドが保護基であるものを除く。
【0024】
ある実施態様では、本発明は、式:A1−B1−B2−C1−D−B3−B4−A2−C2−B5−B6−A3−C3−B7−C4−A4−B8−B9(配列番号:87)[式中、A1、A2、A3及びA4は、独立してアスパラギン酸もしくはグルタミン酸又は相同体もしくはそのアナログであり;B1、B2、B3、B4、B5、B6、B7、B8及びB9は、独立してトリプトファン、フェニルアラニン、アラニン、ロイシン、チロシン、イソロイシン、バリンもしくはα−ナフチルアラニン又は相同体もしくはそのアナログであり;C1、C2、C3及びC4は、独立してリジン又はアルギニンであり、Dはセリン、スレオニン、アラニン、グリシン、ヒスチジン又は相同体もしくはそのアナログである、但し、A1及びA2はアスパラギン酸であり、A3及びA4はグルタミン酸であり、B2及びB9はロイシンであり、B3及びB7はフェニルアラニンであり、B4はチロシンであり、B5はバリンであり、B6、B8及びDはアラニンであり、C1、C2、C3及びC4はリジンであり、B1はトリプトファンでない。]
で表されるペプチドを除く。
【0025】
ある実施態様では、本発明は、国際公開第97/36927号パンフレットに記載の1以上のペプチド及び/又はそのD変異体を除く。特別の実施態様では、国際公開第97/36927号パンフレットに記載されている、の次の1以上のペプチド:アポ蛋白質A、アポ蛋白質A−1、アポ蛋白質A−2、アポ蛋白質A4、アポ蛋白質B、アポ蛋白質B−48、アポ蛋白質b−100、アポ蛋白質C、アポ蛋白質C−1、アポ蛋白質C−2、アポ蛋白質C−3、アポ蛋白質D、アポ蛋白質Eを除く。
【0026】
ある実施態様ではまた、米国特許第6,037,323号明細書に開示された任意の1以上のペプチド及び/又はそのD変異体を除く。
【0027】
特別の実施態様では、
(i)脂質の存在下で両親媒性α−へリックスを形成し、式(I):Z1−X1−X2−X3−X4−X5−X6−X7−X8−X9−X10−X11−X12−X13−X14−X15−X16−X17−X18−Z2
[式中、X1は、プロリン(P)、アラニン(A)、グリシン(G)、アスパラギン(N)、グルタミン酸(Q)又はD−プロリン(p)であり;X2は脂肪族アミノ酸であり;X3はロイシン(L)であり;X4は酸性アミノ酸であり;X5はロイシン(L)又はフェニルアラン(F)であり;X6はロイシン(L)又はフェニルアラニン(F)であり;X7は塩基性アミノ酸であり;X8は酸性アミノ酸であり;X9はロイシン(L)又はトリプトファン(W)であり;X10はロイシン(L)又はトリプトファン(W)であり;X11は酸性アミノ酸又はアスパラギン(N)であり;X12は酸性アミノ酸であり;X13はロイシン(L)、トリプトファン(W)又はフェニルアラニン(F)であり;X14は塩基性アミノ酸又はロイシン(L)であり;X15はグルタミン酸(Q)又はアスパラギン(N)であり;X16は塩基性アミノ酸であり;X17はロイシン(L)であり;X18は塩基性アミノ酸であり;Z1はH2N−又はRC(O)NH−であり;Z2は−C(O)NRR、−C(O)ORもしくは−C(O)OH又はそれらの塩である。ここで、各Rは独立して、水素原子、(C1−C6)アルキル、(C1−C6)アルケニル、(C1−C6)アルキニル、(C5−C20)アリール、(C6−C26)アルカアリール、5〜20員ヘテロアリール又は6〜26員アルクヘテロアリール、又は残基1〜7間の1以上の結合が、独立して置換アミド、アミドの等量式もしくは模倣アミドである、1〜4残基ペプチド又はペプチドアナログ;残基X1からX18間の各「−」は、独立してアミド結合、置換アミド結合、アミドの等量式又は模倣アミドを指す。]
を含む18〜22残基ペプチド又はペプチドアナログペプチド、あるいは
(ii)X1、X2、X3、X4、X5、X6、X7、X8、X9、X10、X11、X12、X13、X14、X15、X16、X17又はX18の少なくとも一つの残基が、別の残基及び/又はそのD変異体で保存的に置換されている式(I)の別の形態、
を含むアポA−Iアゴニスト化合物を除く。
【0028】
定義
「ポリペプチド」、「ペプチド」及び「蛋白質」の語は、本明細書では、アミノ酸残基のポリマーを言うために交換して使用することができる。当該語は、1以上のアミノ酸残基が、対応する天然由来のアミノ酸及び天然由来アミノ酸ポリマーの人工化学的アナログであるアミノ酸ポリマーに適用する。
【0029】
「クラスA両親媒性ヘリックス」の語は、極性−非極性界面に存在する正に荷電した残基及び極性表面の中心に存在する負に荷電した残基を有する極性及び非極性表面の分離を生じるα−ヘリックスを形成する蛋白質構造を言う(例えばSegrest et al., (1990) 「蛋白質:構造、機能及び遺伝学」 8: 103-117を参照されたい)。
【0030】
「アテローム性動脈硬化症の1以上の症状」に関して使用する場合、「緩和すること」の語は、アテローム性動脈硬化症及び/又は関連する病状に特徴的な1以上の症状の低減、回避又は除去を言う。かかる低減は、酸化リン脂質の低減又は除去、アテローム動脈硬化性班の形成及び破裂、心臓発作、狭心症又は卒中等の臨床的事象の低減、高血圧症の減少、炎症性蛋白質生合成の減少、血漿コレステロールの低減等を含が、これらに限定されない。「アテローム性動脈硬化症の1以上の症状を緩和すること」とはまた、アテローム性動脈硬化症によって影響される血管床への血流を改善することを言う。
【0031】
「鏡像異性アミノ酸」の語は、互いに重ね合わせられない鏡像関係にある少なくとも2種の型で存在するアミノ酸を言う。ほとんどのアミノ酸(グリシンを除いて)は、鏡像異性であり、いわゆるL型(Lアミノ酸)又はD型(Dアミノ酸)で存在する。ほとんどの天然由来のアミノ酸は、「L」アミノ酸である。「Dアミノ酸」及び「Lアミノ酸」の語は、直線偏光の特定方向の回転よりも、アミノ酸の絶対配置を言うために使用する。本明細書での使用は、当業者による標準的な使用と一致している。
【0032】
「保護基」の語は、それがアミノ酸の官能基(例えば側鎖、α−アミノ基、α−カルボキシル基等)に結合されている場合に、当該官能基の性質を阻止又は隠す化学基を言う。好ましいアミノ末端保護基は、脂肪酸のアルキル鎖、プロピオニル、ホルミルその他を含むが、これらに限定されない。好ましいカルボキシル末端保護基は、アミド又はエステルを形成する基を含むが、これらに限定されない。
【0033】
「酸化剤による酸化からリン脂質を保護する」の語句は、リン脂質が酸化剤(例えば過酸化水素、13−(S)−HPODE、15−(S)−HPETE、HPODE、HPETE、HODE、HETE等)と接触する場合に、当該リン脂質の酸化速度(又は生成した酸化リン脂質の量)を減じる能力を言う。
【0034】
「低密度リポ蛋白」又は「LDL」の語は、当業者の一般的な使用に従って定義される。一般的に、LDLは、超遠心によって単離される場合に、d:1.019〜d:1.063の密度範囲に見られる脂質−蛋白質複合体を言う。
【0035】
「高密度リポ蛋白」又は「HDL」の語は、当業者の一般的な使用に従って定義される。一般的に、HDLは、超遠心によって単離される場合に、d:1.063〜d:1.21の密度範囲に見られる脂質−蛋白質複合体を言う。
【0036】
「群I HDL」の語は、酸化脂質(例えば低密度リポ蛋白での)を減じ、又は酸化剤による酸化から酸化脂質を保護する高密度リポ蛋白又はその成分(例えばアポA−I、パラオキソナーゼ、血小板活性化因子アセチルヒドロラーゼ等)を言う。
【0037】
「群II HDL」の語は、酸化から脂質の保護又は酸化脂質の修繕(例えば削減)に若干の活性を示すかあるいは全く活性を示さないHDLを言う。
【0038】
「HDL」成分の語は、高密度リポ蛋白(HDL)を含む成分(例えば分子)を言う。酸化から脂質を保護し、又は修繕する(例えば酸化脂質を削減する)HDL試験は、HDL(例えばアポA−I、パラオキソナーゼ、血小板活性化因子アセチルヒドロラーゼ等)の成分の試験をも含む。
【0039】
「ヒトアポA−Iペプチド」の語は、完全長ヒトA−Iペプチド、又はクラスA両親媒性ヘリックスを含むその断片もしくはドメインを言う。
【0040】
本明細書で使用する「単球反応」とは、アテローム性動脈硬化症班と関連する「炎症性応答」に特徴的な単球活性を言う。単球反応は、血管内壁(例えば血管内皮細胞)の細胞への単球接着及び/又は内皮間隙への走化性、及び/又は単球のマクロファージへの分化によって特徴付けられる。
【0041】
「変化なし」の語は、酸化リン脂質の量に言及する場合に、検出可能な変化がないこと、より好ましくは統計的に重要な変化がないこと(例えば少なくとも85%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも98%又は99%信頼水準で)を言う。検出可能な変化がないことは、酸化リン脂質レベルが変化する試験にも言及することができるが、それは、本明細書に記載された蛋白質(蛋白質類)の不在とは同程度ではなく、又は他の正のコントロールもしくは負のコントロールを参照した場合である。
【0042】
本明細書では次の略語を使用する:PAPC:L−α−1−パルミトイル−2−アラキドノイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン;POVPC:1−パルミトイル−2−(5−オキソバレリル)−sn−グリセロ−3−ホスホコリン;PGPC:1−パルミトイル−2−グルタリル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン;PEIPC:1−パルミトイル−2−(5,6−エポキシイソプロスタンE2)−sn−グリセロ−3−ホスホコリン;ChC18:2:コレステリルリノレエート;ChC18:2−OOH:コレステリル リノレエート ヒドロパーオキサイド;DMPC:1,2−ジテトラデカノイル−rac−グリセロール−3−ホスホコリン;PON:パラオキソナーゼ;HPF:標準化強力分野;PAPC:L−α−1−パルミトイル−2−アラキドノイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン;POVAC:1−パルミトイル−2−(5−オキソバレリル)−sn−グリセロ−3−ホスホコリン;PGPC:1−パルミトイル−2−グルタリル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン;PEIPC:1−パルミトイル−2−(5,6−エポキシイソプロスタンE2)−sn−グリセロ−3−ホスホコリン;BL/6:C57BL/6J;C3H:C3H/HeJ。
【0043】
「保存的置換」の語は、蛋白質又はペプチドに関して、分子の活性(特異性(例えばリポ蛋白に対する)又は結合アフィニティー(例えば脂質もしくはリポ蛋白質に対して))を実質的に変化させないアミノ酸を示すために使用する。典型的には、保存的アミノ酸置換は、1アミノ酸を同様な化学的性質(例えば電荷又は疎水性)を有する別のアミノ酸と置換することを含む。次の6群は、各々、互いに典型的な保存的置換であるアミノ酸を含む。1)アラニン(A)、セリン(S)、スレオニン(T);2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E);3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q);4)アルギニン(R)、リジン(K);5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V);及び6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W)。
【0044】
2以上の核酸又はポリペプチド配列の文脈において、「同一な」又は「同一性」の割合の語は、比較し、最大に一致させるために一列に並べた場合に、次の配列比較アルゴリズムの一つを用いて測定されたもの又は視覚検査によるものと同一である、あるいは同一である特定の割合のアミノ酸残基又はヌクレオチドを有する2以上の配列又はサブ配列を言う。本発明のペプチドに関し、配列同一性は、ペプチドの完全長に渡って測定する。
【0045】
配列比較に関し、典型的には、一つの配列は、それと試験配列を比較する参照配列として働く。配列比較アルゴリズムを用いる場合、試験配列及び参照配列をコンピューターにインプットし、必要ならば、配列座標を設計し、配列アルゴリズムプログラムパラメーターを設計する。次いで、配列比較アルゴリズムは、設計したプログラムパラメーターに基いて、参照配列に対する試験配列の配列同一性率を計算する。
【0046】
比較のための配列の最適アライメントは、例えば、Smith & Waterman, Adv, Appl. Math. 2: 482 (1981)の局所ホモロジーアルゴリズム、Needleman & Wunsch, J. Mol. Biol. 48: 443 (1970)のホモロジーアライメント アルゴリズム、Pearson & Lipman (1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85: 2444の同様な方法の検索、これらのアルゴリズムの計算実行(GAP, BESTFIT, FASTA, and TFASTA in the Wisconsin Genetics Software Package, Genetics Computer Group, 575 Science Dr., Madison, WI)、又は目視検査(一般的にはAusubel et al., supra)によって行うことができる。
【0047】
有用なアルゴリズムの一例は、PILEUPである。PILEUPは、進行性(progressive)ペアワイズアライメントを用いて一群の関連アライメントから複数の配列アライメントをつくり、関係及び配列同一性率を示す。それはまた、アライメントをつくるために使用される集積関係を示す系図又はデンドグラムをプロットする。PILEUPは、Feng & Doolittle (1987) J. Mol. Evol. 36: 351-360進行性アライメント法の簡素化を使用する。使用される方法は、Higgins & Sharp (1989) CABIOS 5: 151-153に記載の方法に類似している。プログラムは、300配列まで並べることができ、各配列は最大の5,000ヌクレオチド長又はアミノ酸長である。マルチプルアライメント法は、2個のアライメント配列のクラスターをつくる、2個の最類似配列のペアワイズアライメントで開始する。次いで、当該クラスターは、次の最関連配列又はアライメント配列のクラスターに整列する。2個の配列クラスターは、2個の個々の配列のペアワイズアライメントの簡便な伸張によって整列する。最終アライメント列は、一連の進行性ペアワイズ配列によって得られる。プログラムは、配列比較領域のための特定の配列及びそのアミノ酸又はヌクレオチド軸を設計することによって、またプログラムパラメーターを設計することによって実行する。例えば、対照配列は、他の試験配列と比較して、次のパラメーター:デフォルトギャップウェイト(3.00)、デフォルトギャップ長加重(0.10)及び加重エンドギャップを用いる配列同一性率を決定することができる。
【0048】
配列同一性率及び配列類似性を決定するために好適な別のアルゴリズムの例は、BLASTアルゴリズムである。Altschul et al. (1990) J. Mol. Biol. 215: 403-410に記載されたBALST解析を実行するためのソフトウェアは、国立バイオテクノロジー情報センターを通して公に入手できる。当該アルゴリズムは、データベース配列に同一の長さの言語を並べる場合に、正の数の閾値スコアのいくつかと一致又はこれを満足する問い合わせ配列中の長さWの単語を同定することによって、高スコア配列ペア(HSPs)をまず同定することを含む。Tは、隣接言語スコア閾値(Altschul et al., supra)と言われる。当該初期隣接言語ヒットは、それを含む長HSPsを見つけるために初期検索の種付けとして働く。当該言語ヒットは、次いで、累積アライメントスコアを増加できる限り、各配列に沿って両方向に伸張する。累積スコアは、ヌクレオチド配列のために、パラメーターM(一組のマッチング残基のリワードスコア;常に>0)及びN(ミスマッチング残基のペナルティースコア;常に<0)を用いて計算する。アミノ酸配列に関し、スコアマトリックスは、累積スコアを計算するために使用する。累積アライメントスコアが、その最高獲得値から量Xだけ減少し;1以上の負スコア残基アライメントの蓄積によって、累積スコアがゼロ以下に下がり;又は、いずれかの配列の末端に届く場合に、各方向での言語ヒットの伸張は停止する。BLASTアルゴリズムパラメーターW、T及びXは、アライメントの感度及びスピードを決定する。BLASTNプログラム(ヌクレオチド配列のための)は、デフォルトとして、言語長(W)11、期待値(E)10、Mが5、Nが−4及び両ストレンドの比較を使用する。アミノ酸配列としては、BLASTPプログラムは、デフォルトとして、言語長(W)3、期待値(E)10及びBLOSUM62スコアマトリックスを使用する(Henikoff & Henikoff (1989) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89: 10915を参照されたい)。
【0049】
配列同一性率の計算に加えて、BLASTアルゴリズムはまた、2配列間の類似性の統計的解析を実行する(例えば、Karlin & Altschul (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90: 16873-5787を参照されたい)。BLASTアルゴリズムによって提供される類似性の一つの測定は、2ヌクレオチド又はアミノ酸配列間の一致が偶然に起こる確率を示す最小合計確率(P(N))である。例えば、試験核酸の対照核酸との比較における最小合計確率が、約0.1未満、より好ましくは約0.01未満及び最も好ましくは約0.001未満であるならば、核酸は、参照配列に類似すると考えられる。
【0050】
「D−18ペプチド」の語は、全ての鏡像異性アミノ酸がD型アミノ酸である、配列:D−W−L−K−A−F−Y−D−K−V−A−E−K−L−K−E−A−F(配列番号:1)を有するペプチドを言う。
【0051】
「共投与すること」又は「同時投与」の語は、例えば本発明のペプチド及び他の活性物質(例えばスタチン)に関して使用する場合に、いずれも、同時に生理的効果を達成することができるようなペプチド及び活性物質の投与を言う。しかしながら、2つの物質は、同時に投与する必要はない。ある実施態様では、一つの物質の投与は、他の物質に先行することができるが、かかる共投与は、典型的には、両剤が、任意の与えられた投薬量に対してその最高濃度(例えば20%以上、好ましくは30%又は40%以上、より好ましくは50%又は60%以上、最も好ましくは70%又は80%又は90%以上)を有する有意な割合で、身体中(例えば血漿中)に同時に存在する結果となる。
【0052】
「解毒する」の語は、脂質、LDL又はHDLについて使用する場合に、酸化されている脂質及び/又は酸化された脂質のいくつかもしくは全ての除去を言う。従って、例えば、HPODE及び/又はHPETE(いずれも脂肪酸に対するヒドロペルオキシド)の全てもしくはいくつかの取り込みは、当該過酸化物のLDLsへの進入を回避し又は軽減し、その結果、LDL酸化を回避し又は軽減するだろう。
【0053】
「未β高密度リポ蛋白様粒子」の語は、典型的には、小さく、かつ多数のHDL粒子中の脂質:蛋白質の比に比べて相対的に脂質比が低い、アポA−Iをも含む粒子含有コレステロールを言う。血漿がFPLCによって分離される場合に、当該「未β高密度リポ蛋白様粒子」は、本明細書に示した図5及び8から明らかなように、FPLCクロマトグラムにおいて、主要なHDLピーク中にある粒子よりも小さな粒子を含むFPLC分画に見られ、HDLの右側に位置する。
【0054】
「逆脂質輸送及び解毒化」の語句は、動脈等の組織から、コレステロールを含む脂質、酸化ステロールを含む他のステロール、リン脂質、酸化剤及び酸化リン脂質の除去、並びに、抹消組織から、肝臓による胆汁の排出及び腎臓による尿素の排出等、それらが解毒され、排出される器官への輸送を言う。解毒化はまた、本明細書で説明した酸化リン脂質の形成を回避し及び/又は破壊することを言う。
【0055】
本明細書で使用する「生物試料」の語は、生きている生物又は死亡した生物から得られた任意の試料を言う。生物試料の例は、生物(例えばヒト又はヒト以外の哺乳動物)から採取した体液、組織片、細胞及び細胞株を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0056】
本発明は、クラスA両親媒性ヘリックスモチーフに模倣するように設計された合成ペプチド(Segrest et al., (1990) 「蛋白質:構造、機能及び遺伝学」 8: 103-117)が、リン脂質と関連し、ヒトアポA−Iに類似した多くの生物学的性質を呈することができる、という発見に関する。特に、かかるペプチドがDアミノ酸を用いて式で表される場合に、当該ペプチドが劇的に高い血清半減期を示し、特にアミノ及び/又はカルボキシル末端が保護されている場合に、当該ペプチドが経口でも投与することができる、というのが本発明の発見である。
【0057】
当該ペプチドが、未−β高密度リポ蛋白様粒子の形成及び循環を刺激することができることも驚くべき発見である。更に、当該ペプチドは、スタチンを著しく低用量で投与することができ、又は任意の与えられた用量で著しくより抗炎症性にすることができる、スタチン効果を亢進し/相乗作用を与えることができる。本明細書に記載された当該ペプチドは骨粗鬆症の1以上の症状を抑制及び/又は回避及び/又は治療することができることも発見された。
【0058】
更に、かかるD−型ペプチドが対応するL−型ペプチドの生物活性を有することは驚くべき発見である。かかるD−型ペプチドを用いるin vivoでの動物研究は、効果的な経口送達、高い血清半減期及びアテローム性動脈硬化症の1以上の症状を軽減し又は回避/抑制する能力を示した。
【0059】
I.未β高密度リポ蛋白様粒子の形成及び循環の刺激
逆コレステロール輸送は、アテローム性動脈硬化症にかかりやすくする脂質の蓄積を回避する点で重要であると考えられている(Ahah et al., (2001) Circulation, 103: 3047-3050)。重要な脂質はコレステロールであると多くの人は考えている。我々の研究室では、鍵脂質は、アテローム性動脈硬化症において炎症応答を開始する酸化リン脂質であることが判っている(Navab et al., (2001) Arterioscler Thromb Vasc Biol., 21 (4): 481-488; Van Lenten et al., (001) Trends Cardiovasc Med, 11: 155-161; Navab M et al., (2001) Circulation, 104: 2386-2387)。
【0060】
当該炎症応答は、心臓病及び卒中につながる班糜爛又は決裂の原因ともなり得る。HDL−コレステロールレベルは、心臓病及び卒中の危険と逆相関する(Downs et al., (1998) JAMA 279: 1615-1622; Gordon et al., (1977) Am J Med., 62: 707-714; Castelli e al., (1986) JAMA, 256: 2835-2838)。
【0061】
未βHDLは、一般的に、逆コレステロール輸送を促進する最も活性なHDL分画であると考えられる(例えば、動脈等の抹消組織からコレステロールを取り出し、それを胆汁として排出するために肝臓へ運ぶ;Fieldingn and Fielding (2001) Biochim Biophys Acta, 1533 (3): 175-189を参照されたい)。しかしながら、未βHDLのレベルは、未βHDLの未熟α−移動HDLの循環故障、例えばLCAT欠乏又は阻害のために、増加するだろう(O’Connor et al., (1998) J Lipid Res, 39: 670-678)。高レベルの未βHDLは、冠動脈疾患の患者で報告されている(Miida et al. (1996) Clin Chem., 42: 1992-1995)。
【0062】
更に、男性は、女性よりも、高レベルの未βHDLを有することが判っているが、冠動脈疾患の危険は、女性よりも高い(O’Connor et al., (1998) J Lipid Res, 39: 670-678)。従って、未βHDLの静的測定は、冠動脈疾患の危険を必ずしも予測するものではない。しかしながら、未βHDLを経るコレステロールの未熟HDLへの循環は、アテローム性動脈硬化症から保護すると考えられている(Fieldingn and Fielding (2001) Biochim Biophys Acta, 1533 (3): 175-189)。更に、我々は、当該経路を経る動脈壁細胞からの酸化脂質の除去は、LDL酸化から保護する、ことを証明した。
【0063】
本明細書の実施例1で記載したように、経口投与する場合に、比較的低吸収速度であるにもかかわらず、本発明のペプチド(例えばD−4F)は高活性である。
【0064】
D−4Fを経口投与されたアポEヌルマウスの研究では、我々は、腸からの吸収後20分で、D−4Fは、比較的高含量のアポA−I及びパラオキソナーゼを含む小未βHDL様粒子を形成する。実際、当該未βHDL様粒子中のアポA−I量をウェスタンブロッティングから推定し、またアポA−I量を当該粒子中のD−4F量(放射活性又はLC−MRMによって測定された)と比較することは、D−4Fが腸から吸収されるので、それが、当該未βHDL様粒子の形成を引き起こす触媒として作用することを示唆する。当該少量の腸から得られたD−4Fは、D−4F量よりも高いオーダーであるアポA−I、パラオキソナーゼ及びコレステロールの量を当該粒子中に補充しているように考えられる。
【0065】
従って、吸収後、D−4Fは、急速に比較的大量のアポA−I及びパラオキソナーゼを補充して、逆コレステロール輸送を促進し、生物的に活性な酸化脂質を破壊するための最も可能性のある粒子である未βHDL様粒子を形成する。我々は、当該粒子の形成及びそれらの次の急速な未熟HDLへの取り込みは、我々が、ウェスタン節食状態のLDL受容体ヌルマウス及び血漿コレステロール又はHDL−コレステロールでの変化に無関係な節食状態のアポEヌルマウスで観察したアテローム性動脈硬化症の劇的な減少を説明する、と考えている。
【0066】
従って、一つの実施態様では、本発明は、本明細書に記載した1以上のペプチドの投与によって、未β高密度リポ蛋白様粒子の形成及び循環を刺激する方法を提供する。その結、当該ペプチドは、脂質輸送及び解毒を促進することができる。
【0067】
II.スタチン活性に相乗作用の付与
実施例2で証明したように、D−4Fの低用量(1μg/ml)をアポEヌルマウスの飲料水に24時間添加しても、HDL機能を著しく改善しなかった(例えば図9を参照されたい)。図9はまた、0.05mg/mlのアトルバスタチン又はプラバスタチンのみをアポEヌルマウスの飲料水に24時間添加しても、HDL機能を著しく改善しなかったことを示す。しかしながら、D−4Fの1μg/mlを、0.05mg/mlのアトルバスタチン又はプラバスタチンと共に飲料水に添加した場合には、HDL機能に著しい改善が認められた(例えば図9を参照されたい)。実際に、前炎症性アポEヌルHDLは、350μg/mlの標準的ヒトHDL(h,HDL)と同程度の抗炎症性を示した。
【0068】
従って、それ自身では、HDL機能に全く影響を与えないD−4Fのみ又はスタチンのみの投薬量は、一緒に与えた場合に、相乗的に作用した。D−4F及びスタチンをアポEヌルマウスに一緒に与えた場合、50μg/mlのコレステロールでの当該前炎症性HDLは、ヒト動脈壁細胞の共培養物中におけるHPODEのPAPC酸化作用によって誘導される炎症応答を回避する点で、350μg/mlのHDL−コレステロールでの標準的ヒトHDLと同程度に効果的であった。
【0069】
従って、ある実施態様では、本発明は、スタチン活性を亢進するための方法を提供する。当該方法は、一般的に、本明細書に記載された1以上のペプチドを1以上のスタチンと投与することを含む。本明細書に記載されたD−4F又は他の類似のペプチドは、アテローム性動脈硬化症を緩和するために、スタチンと経口投与されるペプチド(ペプチド類)との相乗効果を達成する。当該文脈では、スタチンは、著しく低用量で投与することができ、それによって、高用量のスタチン使用に関連する種々の有害な副作用(例えば筋肉疲労)を回避することができ、及び/又は任意の与えられた用量でのスタチンの抗炎症特性は著しく亢進される。
【0070】
III.骨粗鬆症の抑制/治療
冠動脈の石灰化及び骨粗鬆症は、同一の患者においてしばしば共存する(Ouchi et al., (1993) Ann NY Acad Sci., 676: 297-307; Boukhris and Becker (1972) JAMA, 219: 1307-1311; Banks et al., (1994) Eur J Clin Invest., 24: 813-817; Laroche et al., (1994) Clin Rheumatol., 13:611-614; Broulik and Kapitola (1993) Endocr Regul., 27: 57-60; Frye et al., (1992) Bone Mine., 19: 185-194; Barengolts et al. (1998) Calcif Tissue Int., 62: 209-213; Burnett and Vasikaran (2002) Ann Clin Biochem., 39: 203-210)。
【0071】
Parhami et al. (Parhami et al. (1997) Arterioscl Thromb Vasc Biol., 17: 680-687)は、非酸化リン脂質(PAPC)又はイソプロスタン 8−イソ プロスタグランジン F2ではなく、緩やかな酸化LDL(MM−LDL)及びMM−LDL(すなわち、酸化1−パルミトイル−2−アラキドノイル−sn−グリセロ−3−ホスホリルコリン(Ox−PAPC))中の生物学的に活性な脂質、並びにイソプロスタン、8−イソ プロスタグランジン E2が、アルカリホスファターゼ活性及びin vivoで冠動脈細胞(CVCs)を石灰化する造骨細胞の分化を誘導したが、MC3T3−E1骨細胞の分化を抑制しなかったことを証明した。
【0072】
骨単位は、その骨単位が、マトリックス及び繊維芽細胞様細胞を含む内皮間隙によって、動脈壁の平滑筋細胞に位置アナログを占める前骨芽細胞及び骨芽細胞によって交互に囲まれている内皮細胞株光束の中心に位置している動脈壁に類似する(Id.)。小柱骨芽細胞はまた、骨髄内皮間隙との境界面となる(Id.)。Parhami et al.は、リポ蛋白が骨動脈の内皮細胞を越えて、リポ蛋白冠動脈中で酸化を受ける内皮間隙中に沈着すると仮定している(Id.)。彼らのin vitroのデータに基いて、彼らは、骨動脈の内皮細胞間隙及び骨髄でのLDL酸化が、骨粗鬆症の原因となる低骨芽細胞分化と石化を導くことを予測している(Id.)。彼らの仮説は、更に、LDLレベルが、冠動脈の石灰化と関連するように、骨粗鬆症と積極的に関連するが(Pohle et al. (2001) Circulation, 104: 1927-1932)、HDLレベルは骨粗鬆症とはほとんど関係しないと予測している(Parhami et al. (1997) Arterioscl Thromb Vasc Biol., 17: 680-687)。
【0073】
In vitroでは、骨髄間質性(marrow stromal)細胞株M2−10B4の骨芽細胞分化は、MM−LDLによって抑制されるが、天然LDLによっては抑制されなかった(Parhami et al. (1997) J. Bone Miner Res., 14: 2067-2078)。アテローム性動脈硬化症にかかりやすい低脂肪節食状態のC57BL6/6(BL6)マウス由来の骨髄間質性(marrow stromal)細胞を培養した場合には、強力に骨形成分化した(Id.)。反対に、高脂肪の粥腫発生性節食を与えたマウスから採取した骨髄間質性(marrow stromal)細胞を培養した場合には、骨形成分化はしなかった(Id.)。当該観察は、骨粗鬆症の罹患において骨髄間質性(marrow stromal)細胞の減少骨形成可能性を説明することができるので(Nuttall and Gimble (2000) Bone, 27: 177-184)、特に重要である。In vivoでは、骨形成可能性の減少には、骨粗鬆症性骨における脂肪生成の増加を伴っている(Id.)。
【0074】
アポEヌルマウスの飲料水に6週間、D−4Fを添加すると、小柱骨密度が劇的に増加することが判った(実施例3)。
【0075】
当該データは、骨粗鬆症が「骨のアテローム性動脈硬化症」とみなされることを示している。これは、酸化脂質の作用の結果であると考えられる。HDLは、当該酸化脂質を破壊し、骨形成分化を促進する。当該データは、実施例3では、本発明のペプチド(ペプチド類)の哺乳動物への投与(例えばアポEヌルマウスの飲料水中に)がまさに数週間の事態で劇的に小柱骨を増やすことを示した。
【0076】
このことは、本明細書に記載のペプチドが、アテローム性動脈硬化症の1以上の症状の緩和(例えば脱石灰化の抑制のために)又は骨粗鬆症性骨の再石灰化の誘導に有用であることを示している。当該ペプチドは、哺乳動物(たとえば骨粗鬆症の危険にある患者)の骨粗鬆症の症状(症状類)の開始を回避する予防薬として有用である。
【0077】
IV.アテローム性動脈硬化症の症状の軽減
我々は、標準的HDLが緩やかな酸化LDLの形成において、3つのステップを抑制することを発見した。当該研究(例えば、2000年3月31日に出願された懸案出願のUSSN 09/541,468を参照されたい)では、ヒトLDLをin vitroでアポA−I又はアポA−I模倣ペプチド(37pA)で処理すると、HPODE及びHPETEを含むLDLから種付け分子を除けることを証明した。当該種付け分子は、LDLを酸化することができるヒト動脈壁細胞の共培養物のために、及び当該LDLが、動脈壁細胞を誘導して単球走化性活性を発現させるために必要であった。我々はまた、アポA−Iをマウスに注射又はヒトに注入した後、アポA−Iの注射/注入後のマウス又はヒトボランティアから単離されたLDLが、ヒト動脈壁細胞による酸化に対抗性であり、動脈壁細胞共培養物中の単球走化性活性を誘導しなかったことを証明した。
【0078】
本発明のDペプチドの保護的機能は、親出願(2000年8月24日に出願された第09/645,454号、2001年6月29日に出願された第09/896,841号2001年6月29日に出願された、及び2001年6月29日に出願された国際公開第02/15923号パンフレット(PCT/US01/26497)に説明があり、例えば国際公開第02/15923号パンフレットの図1〜5を参照されたい。国際公開第02/15923号パンフレットの図1のパネルA、B、C及びDは、14C−D−5Fとアポエヌルマウス中の血液成分との関連を示している。アテローム節食を与え、PBSを注射したマウス由来のHDLは、ヒトLDLの酸化を抑制できず、ヒト動脈壁細胞中のLDL−誘導単球活性を抑制できなかったことも説明している。反対に、アテローム節食を与え、毎日、本明細書に記載のペプチドを投与したマウス由来のHDLは、標準的ヒトHDLと同じように、ヒトHDL酸化の抑制及び共培養物中のLDL−誘導単球走化性活性の回避に効果的であった(国際公開第02/15923号パンフレットに記載の図2A及び2B)。更に、アテローム節食を与え、毎日PBSを注射したマウスから採取したLDLは、同一の節食を与えたが、毎日20μgのペプチド5Fを注射したマウスから採取したLDLよりも速く酸化され、速く単球走化性活性を誘導した。当該Dペプチドは、免疫原性を示さなかった(国際公開第02/15923号パンフレットに記載の図4)。
【0079】
アテローム節食を与え、本発明に従うペプチドを注射したマウス由来のHDL及びLDLに対するヒト動脈壁細胞のin vitroでの応答は、in vivoでのかかるペプチドによって示される保護作用と一致している。総コレステロール、LDL−コレステロール、IDL+VLDL−コレステロール、及び低HDL−コレステロールは、総コレステロールの割合で、類似したレベルであるにもかかわらず、アテローム節食を与え、当該ペプチドを注射した動物は、著しく低い病班スコアを示した(国際公開第第02/15923号パンフレットに記載の図5)。従って、本発明のペプチドは、アテローム節食を与えたマウスにおいて、アテローム性動脈硬化症班の進行を抑制した。
【0080】
従って、一つの実施態様では、アテローム性動脈硬化症の1以上の症状を軽減及び/又は抑制するための方法を提供する。
【0081】
VI.急性炎症応答に関連するアテローム性動脈硬化症の症状の緩和
本発明のペプチドは、多数の状況で有用である。例えば、我々は、心血管の病訴(例えば、アテローム性動脈硬化症、卒中等)がしばしば急性期炎症応答を伴うか又は付随することを観察している。かかる急性状態の炎症応答は、再発性炎症疾患(例えば、ハンセン氏病、結核、紅斑性狼瘡及び慢性関節リウマチ)、ウイルス感染症(例えばインフルエンザ)、細菌性感染症、真菌感染症、臓器移植、外傷又は他の損傷、インプラント人工器官、バイオフィルム等に関連することが多い。
【0082】
本明細書に記載の1以上のペプチドの投与が、急性期応答の間に又はその後の急性相応答で、酸化リン脂質の生成を軽減又は回避でき、それによって、かかる症状に関連した心血管病訴を緩和又は排除できることは驚くべき本発明の発見である。
【0083】
従って、例えば、インフルエンザ感染症の結果が、パラオキソナーゼ及びHDL中の血小板活性化アセチルヒドロラーゼ活性の減少であることを、我々は証明している。特定の理論に拘束されるものではないが、当該HDL酵素活性の損失の結果及び急性期応答中のHDLと酸化促進剤蛋白質との関係の結果として、HDLは、もはやLDL酸化を回避することができず、内皮細胞によるLDL−誘導単球走化性活性の発現を回避することができなかった、我々は考えている。
【0084】
インフルエンザAウイルスで感染させた後、本発明のポリペプチドの超低用量(例えばマウス1匹当り20μg)を毎日注射した対象では、パラオキソナーゼのレベルは低下せず、生物学的に活性な酸化リン脂質は基底を越えては生成しなかった、ことを我々は観察した。このことは、D−4F(及び/又は本発明の他のペプチド)が、インフルエンザ感染症、又は急性期炎症応答(例えば、ウイルス感染、細菌性感染症、外傷、移植、種々の自己免疫疾患等)を引き起こす他の事象での周知の冠動脈疾患に罹患している患者に投与する(例えば経口又は注射によって)ことができ、それ故、我々は、かかる炎症症状を引き起こす病状に関連した心臓病及び卒中の発生の増加を、当該短期間治療によって回避することができる、ことを示している。
【0085】
従って、ある実施態様では、本発明は、急性炎症応答の危険にある又は被っている及び/又はアテローム性動脈硬化症の症状の危険にある又は被っている患者に、本発明の1以上のペプチドを投与することを画する。
【0086】
従って、例えば、冠動脈疾患を有する又は危険にある人は、インフルエンザの季節には、本発明のポリペプチドを予防的に投与することができる。リウマチ様関節炎、種々の自己免疫疾患等の再発性炎症症状にかかりやすい人(又は動物)は、アテローム性動脈硬化症もしくは卒中の罹患を緩和又は回避するために、本発明のポリペプチドで治療することができる。急性損傷、組織移植等の外傷にかかっている人(又は動物)は、アテローム性動脈硬化症もしくは卒中の罹患を緩和又は回避するために、本発明のポリペプチドで治療することができる。
【0087】
ある実施態様では、かかる方法は、急性炎症応答の発生又は危険の診断を伴うだろう。当該急性炎症応答は、典型的には、代謝の反復及び肝臓での遺伝子調節を含む。それは、免疫系、心血管系及び中枢神経系に加えて、身体の全ての主な系を含む動的ホメオスタティック・プロセスである。一般的には、急性期応答は数日間のみ続くが、慢性又は再発性の炎症の場合、急性期応答のある態様の異常な継続は、疾患に伴う内在的組織の損傷の原因となり、更なる病訴、例えば心血管疾患又はアミロイド症等の蛋白沈殿疾患にも繋がる。
【0088】
当該急性期応答の重要な態様は、過激に変化した肝臓の生合成的プロファイルである。標準的な状況の下では、肝臓は、定常状態濃度で、特徴的な範囲の血漿蛋白質を合成する。当該蛋白質の多くは、当該急性期反応物(APRs)の重要な機能及び高血漿レベルを有するか、又は急性期蛋白質(APPs)が、急性期応答の間、その後の炎症性興奮に必要とされる。ほとんどのAPRsは肝細胞によって合成されるが、単球、内皮細胞、繊維芽細胞及び含脂肪細胞を含み、他の細胞種によって産生されるものもある。ほとんどのAPRsは、50%と標準レベルを超えて7倍の間で誘導される。反対に、主なAPRsは、標準レベルを超えて、1000倍にまで増加することができる。当該群は、血漿アミロイドA(SAA)、及びヒトのC−反応性蛋白質(CRP)又はマウスのそのホモロジーである血清アミロイドP成分(SAP)を含む。いわゆる負のAPRsは、急性期応答中の血漿濃度を減少させて、誘導APRsを合成するために肝臓の容量を増大させることができる。
【0089】
ある実施態様では、急性期応答又はその危険性は、1以上のAPRsを測定することによって評価する。かかるマーカーの測定は、当業者に周知であり、かかる測定を提供する営利会社が存在する(例えば、Cardiotech Services, Louisville, KYによって測定されるAGP)。
【0090】
VII.冠動脈の石灰化及び骨粗鬆症に関連する症状又は症候の軽減
我々はまた、冠動脈の石灰化及び骨粗鬆症の原因として酸化脂質を同定した。更に、特定の理論に拘束されるものではないが、我々は、同一のメカニズムが石灰沈着性大動脈狭窄に含まれると考えている。
【0091】
従って、ある実施態様では、本発明は、リウマチ性多発性筋痛、結節性多発性動脈炎、強皮症、紅斑性狼瘡、特発性肺線維症、慢性閉塞性肺疾患、アルツハイマー病、AIDS、冠動脈石灰化、石灰沈着性大動脈狭窄、骨粗鬆症等の疾患の1以上の症状を抑制又は回避するために、本明細書に記載されたペプチドの使用を画する。
【0092】
V.ペプチド投与
本発明の方法は、典型的には、生物、好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒトに、本発明の1以上のペプチド(又はかかるペプチドの模倣体)投与することを含む。当該ペプチド(ペプチド類)は、本明細書に記載のようにして、注射剤、座剤、鼻腔スプレー剤、徐放インプラント、経皮的貼付剤等を含むが、これらに限定されない任意の多数の標準的方法に従って、投与することができる。一つの特に好ましい実施態様では、当該ペプチド(ペプチド類)は、経口投与される(例えばシロップ剤、カプセル剤又は錠剤)。
【0093】
当該方法は、本発明の単一のペプチドの投与又は2以上の異なったペプチドの投与を含むことができる。当該ペプチドは、モノマー又はダイマー、オリゴマー又はポリマーの形で提供することができる。ある実施態様では、多重結合形は、関連するモノマー(例えばイオン的又は疎水的に結合された)を含んでもよく、一方、特定の他の多重結合形は、共有結合されたモノマー(直接結合又はリンカーを介して)を含む。
【0094】
本発明は、ヒトでの使用に関して記載するが、例えば獣医使用等の動物にも好適である。従って、好ましい生物は、特に限定されないが、ヒト、ヒト以外の霊長類、犬、馬、ネコ、豚、有蹄動物、largomorphs等を含む。
【0095】
本発明の方法は、アテローム性動脈硬化症(例えば、高血圧、班形成及び破裂、心臓病、狭心症又は卒中等の臨床的事象の縮小、高レベルの血漿コレステロール、高レベルの低密度リポ蛋白、高レベルの超低密度リポ蛋白、又はCRP等の炎症性蛋白質)の1以上の症状を示すヒト又はヒト以外の動物に限定されないが、予防薬の文脈で有用である。従って、本発明のペプチド(又はその模倣体)は、アテローム性動脈硬化症の1以上の症状の発現/進行を回避するために、生物に投与することができる。本文脈において特に好ましい対象は、アテローム性動脈硬化症のための1以上の危険因子を示す対象である(例えば、家族歴、高血圧、肥満症、高アルコール消費、喫煙、高血中コレステロール、高血中トリグリセリド、高血中LDL、VLDL、IDLもしくは低HDL、糖尿病又は糖尿病の家族歴、高血中脂質、心臓病、破裂又は卒中等)。
【0096】
本発明のペプチドは、未−β高密度リポ蛋白様粒子の形成及び循環を刺激し、及び/又は逆脂質輸送及び解毒を促進するためにも投与することができる。
【0097】
当該ペプチドはまた、それらが、スタチンの活性を亢進し(例えば相乗効果を与える)、スタチン(スタチン類)を低用量で投与することができ、及び/又は任意の与えられた用量でスタチンの抗炎症特性が著しく亢進されるスタチンと共に投与するために有用である。
【0098】
更に、当該ペプチドは、骨粗鬆症の1以上の症状を軽減又は除去及び/又は骨粗鬆症の1以上の症状の発現を回避/抑制するために投与することができる。
【0099】
VIII.好ましいペプチド及びその調製
好ましいペプチド
クラスA両親媒性ヘリックス(「クラスAペプチド」)を含むペプチドは、アテローム性動脈硬化症の1以上の症状を軽減することができることは、本発明の発見である。クラスAペプチドは、極性及び非極性残基が分離し、それによって、極性−非極性界面に存在する正に荷電した残基及び極性表面の中心に存在する負に荷電した残基を有する極性及び非極性表面を形成するα−ヘリックスの形成によって特徴付けられる(例えばAnantharamaiah (1986) Meth. Enzymol, 128: 626-668を参照されたい)。3.667残基/回転に折りたたまれる場合に、アポA−Iの4番目のエキソンが、クラスA両親媒性ヘリックス構造を生成することは注目される。
【0100】
18Aで表される一つの好ましいクラスAペプチド(1及びAnantharamaiah (1986) Meth. Enzymol, 128: 626-668を参照されたい)は、本明細書に記載のようにして修飾して、経口投与可能で、アテローム性動脈硬化症の1以上の症状の抑制又は回避に高い効果を有するペプチドを製造することができる。特別な理論に拘束されるわけではないが、本発明のペプチドは、LDLの酸化を緩和する種づけ分子(分子類)を取り上げることによって、in vivoで作用すると考えられる。
【0101】
18Aの疎水性表面上のPhe残基の数の増加が、Palgunachari et al., (1996) Arteriosclerosis, Thrombosis, & Vascular Biology 16: 328-338によって記載された計算によって決定される脂質親和性を増大させると、我々は判断した。理論的には、Pheを有する18Aの非極性表面での残基の系統的置換により、6種のペプチドが得られた。更に2、3及び4個のPheを有するペプチドは、それぞれ、13、14及び15単位の理論上の脂質親和性(λ)値を有する。しかしながら、追加のPheが4〜5個(19λユニットに)増加する場合には、λ値は4単位急増する。6又は7個のPheに増加すると、若干劇的に増加する(それぞれ、20及び21λに)。そのため、我々は、5個の追加のPhe(及び5Fとして示されるペプチド)を選択した。一つの特に好ましい実施態様では、5Fペプチドは、アミノ末端残基をアセチル化し、カルボキシル末端をアミド化して保護した。
【0102】
新規クラスAペプチドアナログ5Fは、アテローム性動脈硬化症にかかりやすいマウスにおいて、病班の進行を抑制した。新規ペプチドアナログ5Fを、Levine et al. (Levine et al. (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90: 12040-12044)の研究に基いたペプチド投薬量を用いる当該マススにおける節食誘導性アテローム性動脈硬化症の抑制の効力について、マウスアポA−I(MoA−I)と比較した。
【0103】
多数の他のクラスAペプチドも製造し、アテローム性動脈硬化症の1以上の症状の緩和に、異なるが顕著な程度の効能を示した。多数のかかるペプチドを表1に示す。
【0104】
【表1】
【0105】
【表2】
【0106】
【表3】
【0107】
【表4】
【0108】
ある好ましい実施態様では、ペプチドは、1個又は2個のアスパラギン酸(D)がグルタミン酸(E)によって置換された、4F又はD−4Fの変異体を含む。1、2、3又は4個のアミノ酸がカルボキシル末端から除去され、及び/又は1、2、3又は4個のアミノ酸がカルボキシル末端から除去され及び/又は1個又は2個のアスパラギン酸(D)がグルタミン酸(E)によって置換されたペプチド(例えば4F又はD−4F)も、本発明で画されている。本明細書に記載された任意のペプチドにおいて、N−末端は、マンチル部分(例えばN−メチルアンスラニリル)を用いて保護又は標識することができる。
【0109】
アミノ末端を保護するアセチル基又はN−メチルアンスラニリル基及びカルボキシル末端を保護するアミド基を有する表1の種々のペプチドを例示するが、当該保護基のいずれかは、除去されていても及び/又は本明細書に記載の別の保護基で置換されていてもよい。特に好ましい実施態様では、ペプチドは、本明細書に記載の1以上のD−型アミノ酸を含む。ある実施態様では、表1のペプチド全てのアミノ酸(例えば全ての鏡像異性アミノ酸)はD−型アミノ酸である。
【0110】
表1のペプチドは全てを包括するものではないことに注意されたい。本明細書で提供した教示を用いて、他の好適なペプチドを規定どおりに製造することができる(例えば保存的又は半保存的置換(例えばDをEで置換する)、伸張、削除等によって)。
【0111】
従って、例えば、一つの実施態様では、配列番号2〜20及び39〜85によって特定された任意の1以上のペプチドの端の切り取りを利用する。すなわち、例えば、配列番号21は、1以上のDアミノ酸を含む18AのC−末端から14個のアミノ酸を含むペプチドを例示する。長鎖のペプチドも好適である。かかる長鎖のペプチドは、クラスA両親媒性ヘリックスの全体を形成するか、又は当該クラスA両親媒性ヘリックス(へリックス類)は、当該ペプチドの1以上のドメインを形成することができる。更に、本発明は、当該ペプチドの多重結合的な変化を画する。従って、例えば、表1に例示したペプチドは、互いに結合することができる(1以上の介在アミノ酸と、直接に又はリンカー(例えば炭素原子リンカー又は1以上のアミノ酸)を介して)。例示的なポリマー性ペプチドは、好ましくは1以上のDアミノ酸、より好ましくは全てのアミノ酸、本明細書に記載のDアミノ酸を含み、及び/又は保護された1末端又は両末端を有する、18A−プロ−18A及び配列番号79〜85のペプチドを含む。
【0112】
クラスAペプチド(例えば表1に例示した)がDアミノ酸を含む場合には、それらは活性を保持したまま、経口投与することができたことは本発明の驚くべき発見である。更に、当該経口投与は、かなり効果的な取り込み及び重要な血清半減期をもたらし、その結果、アテローム性動脈硬化症の1以上の症状を緩和する効果的な方法を提供することができる。
【0113】
本明細書で提供した教示を用いて、当業者であれば、例示されたクラスAペプチドを規定どおりに修飾して、本発明の他の好適なクラスAペプチドを製造することができる。例えば、規定の保存的又は半保存的置換(例えばEをDに)は、現存するアミノ酸について行うことができる。得られたペプチドの脂質親和性に与える種々の置換効果は、Palgunachari et al., (1996) Arteriosclerosis, Thrombosis, & Vascular Biology 16: 328-338によって記載された計算方法を用いて予測することができる。当該ペプチドは、クラスAα−ヘリックス構造が保存される長さで長くしたり、又は短くしたりすることができる。更に、得られるペプチドを、対象種によって内生的に産生されるペプチドにより類似するように提供するために、置換することができる。
【0114】
ある実施態様では、本発明のペプチドは、米国特許第4,643,988号に記載の「D」型ペプチド、より好ましくは保護基に結合した1末端又は両末端を有する「D」型を含む。かかるペプチドは、式:A1−B1−B2−C1−D−B3−B4−A2−C2−B5−B6−A3−C3−B7−C4−A4−B8−B9(配列番号:86):
[式中、A1、A2、A3及びA4は、独立してアスパラギン酸もしくはグルタミン酸又は相同体もしくはそのアナログであり;B1、B2、B3、B4、B5、B6、B7、B8及びB9は、独立してトリプトファン、フェニルアラニン、アラニン、ロイシン、チロシン、イソロイシン、バリンもしくはα−ナフチルアラニン又は相同体もしくはそのアナログであり;C1、C2、C3及びC4は、独立してリジン又はアルギニンであり、Dはセリン、スレオニン、アラニン、グリシン、ヒスチジン又は相同体もしくはそのアナログである、但し、A1及びA2はアスパラギン酸であり、A3及びA4はグルタミン酸であり、B2及びB9はロイシンであり、B3及びB7はフェニルアラニンであり、B4はチロシンであり、B5はバリンであり、B6、B8及びDはアラニンであり、C1、C2、C3及びC4はリジンであり、B1はトリプトファンでない。ここで、少なくとも一つの鏡像アミノ酸は、「D」型アミノ酸である。]
を有するペプチドを含む。
好ましくは少なくとも50%の鏡像アミノ酸は「D」型であり、より好ましくは少なくとも80%の鏡像アミノ酸は「D」型であり、及び最も好ましくは少なくとも90%又は全ての鏡像アミノ酸は「D」型アミノ酸である。
【0115】
好ましい実施態様では、本発明のペプチドは、天然由来のアミノ酸又は天然由来のアミノ酸のD型を利用するが、非天然由来のアミノ酸による置換体(例えば、メチオニン スルホキシド、メチオニン メチルスルホニウム、ノルロイシン、イプシロン−アミノカプロン酸、4−アミノブタン酸、テトラヒドロイソキノリン−3−カルボン酸、8−アミノカプリル酸、4−アミノ酪酸、Lys(N(イプシロン)−トリフルオロアセチル)、α−アミノイソ酪酸等)も本発明に画されている。
【0116】
本明細書に記載されたクラスAペプチドに加えて、ペプチド模倣体も本明細書に画される。ペプチドアナログは、一般的に、鋳型ペプチドの性質に類似した性質を有する非ペプチド性薬物として製薬産業で使用される。当該種の非ペプチド化合物は、「模倣ペプチド」又は「ペプチド模倣体」と言われ(Fauchere (1986) Adv. Drug Res. 15: 29; Veber and Freidinger (1985) TINS p. 392; and Evans et al. (1987) J. Med. Chem. 30: 1229)、通常、コンピュータ化分子モデリングによって開発されている。治療上有用なペプチドに構造的に類似したペプチド模倣体は、等価な治療又は予防効果を発現するために使用することができる。
【0117】
一般的に、ペプチド模倣体は、模範ポリペプチド(すなわち、本明細書に記載の5F)に構造的に類似するが、場合により、当該分野で知られた方法及び更に次の参考文献:Spatola (1983) p. 267 in Chemistry and Biochemistry of Amino Acids, Peptides and Proteins, B. Weinstein, eds., Marcel Dekker, New York, ; Spatola (1983) Vega Data 1 (3) Peptide Backbone Modifications. (一般評論); Morley (1980) Trends Pharm Sci pp. 463-468 (一般評論):; Hudson et al. (1979) Int J Pept Prot Res 14: 177-185 (-CH2NH-, -CH2CH2-); Spatola (1986) Life Sci 38: 1243-1249 (-CH2-S-); Hann, (1982) J Chem Soc Perkin Trans I 307-314 (-CH-CH-, cis and trans); Almquist et al. (1980) J Med Chem. 23: 1392-1398 (-COCH2-); Jennings - White et al. (1982) Tetrahedron Lett. 23: 2533 (-COCH2-); Szelke, M. et al., European Appln. EP 45665 (1982) CA 97: 39405 (1982) (-CH(OH)CH2-); Holladay et al.,(1983) Tetrahedron Lett. 24: 4401-4404 (-C(OH)CH2-); and Hruby (1982) Life Sci., 31: 189-199 (-CH2-S-)に記載した方法によって、−CH2NH−、−CH2S−、−CH2−CH2−、−CH=CH−(シス及びトランス)、−COCH2−、−CH(OH)CH2−、−CH2SO−等からなる群より選ばれる結合によって置換された1以上のペプチド結合を有する。
【0118】
特に好ましい非ペプチド結合は、−CH2NH−である。かかるペプチド模倣体は、ポリペプチドの実施態様、例えば、より経済的な製造、より高い化学的安定性、亢進した薬理的性質(半減期、吸収、効力、効果等)、低減した抗原性などを含む重要な利益を有する。
【0119】
更に、コンセンサス配列又は実質的に同一のコンセンサス配列の変異体を含む本明細書に記載されたペプチド又は制約的ペプチド(循環ペプチドを含む)の循環的な置換は、例えば、当該ペプチドを循環する分子内ジスルフィド結合を形成することができる内部システイン残基を加えることによって、当該分野で知られた方法によって起こるだろう(Rizo and Gierasch (1992) Ann. Rev. Biochem. 61: 387)。
【0120】
ペプチドの調製
本発明で使用するペプチドは、標準的な化学的ペプチド合成技術を用いて化学的に合成することができる、又は、特に、当該ペプチドが「D」アミノ酸残基を含まない場合には、当該ペプチドは、組み換え的に簡便に発現することができる。「D」ポリペプチドが組み換え的に発現できる場合には、宿主生物(例えば細菌、植物、真菌性細胞等)は、1以上のアミノ酸がD型として専ら生物中に提供される環境で培養することができる。かかる系で組み換え的に発現したペプチドは、その後、当該Dアミノ酸を取り込む。
【0121】
ある実施態様では、Dアミノ酸は、D−アミノ酸を認識する修飾アミノアシル−tRNA合成酵素を用いて、組み換え的に発現したペプチド中に組み込むことができる。
【0122】
ある好ましい実施態様では、当該ペプチドは、当業者に知られた多数の液相又は固相合成技術のいずれかによって化学的に合成することができる。配列のC−末端アミノ酸が不溶性支持体に結合し、次いで、配列中の残余アミノ酸が逐次付加する固相合成は、本発明のポリペプチドの化学的合成のための好ましい方法である。固相合成のための技術は、当業者に周知であり、例えば、Barany and Merrifield (1963) Solid-Phase Peptide Synthesis; pp. 3-284 in The Peptides: Analysis, Synthesis, Biology. Vol. 2: Special Methods in Peptide Synthesis, Part A.; Merrifield et al. (1963) J. Am. Chem. Soc., 85: 2149-2156, and Stewart et al. (1984) Solid Phase Peptide Synthesis, 2nd ed. Pierce Chem. Co., Rockford, IIIに記載されている。
【0123】
ある実施態様では、当該ペプチドは、固体支持体としてベンズヒドリルアミン樹脂(Beckman Bioproducts, 0.59mmolのNH2/樹脂g)を用いる固相ペプチド合成法によって合成することができる。COOH末端アミノ酸(例えば、t−ブチルカルボニル−Phe)は、4−(オキシメチル)フェナセチル基を介して固相支持体に結合する。これは、慣用的なベンジルエステルよりもより安定な結合であるが、最終的なペプチドは、水素添加によって切断することができる。ギ酸を水素供与体として用いる転移水素添加は、本目的に使用することができる。ペプチド合成及び合成されたペプチドの分析に使用する詳細なプロトコールは、Anantharamaiah et al. (1985) J. Biol. Chem., 260 (16): 10248-10255を含む小印刷物補遺に記載されている。
【0124】
ペプチド、特にDアミノ酸を含むペプチドの化学合成において、当該合成が、通常、所望の完全長生成物に加えて、多数の端を切り取ったペプチドを生成することは注目される。精製過程(例えばHPLC)は、典型的には、かなりの量の完全長生成物を損失する結果になる。
【0125】
特にDペプチド(例えばD−4)の合成では、最長の型を精製において損失しないように、混合物を透析して使用することができ、それによって最後のHPLC精製を省くことができることは本発明の発見である。かかる混合物は、高度に精製された生成物(例えば、蛋白質生成物の重量当たり)の約50%を損失するが、当該混合物は約6倍を超えるペプチドを含有し、そのため高い総活性を有する。
【0126】
D−型アミノ酸
D−アミノ酸は、化学合成においてD−型誘導アミノ酸残基を用いることによって、簡便に当該ペプチドの1以上の位置に組み込むことができる。固相ペプチド合成のためのD−型残基は、多数の供給者から市販されている(例えば、Advanced Chem tech, Louisville; Nova Biochem, San Diego; Sigma, St Louis; Bachem California Inc., Torrance等を参照されたい)。当該D−型アミノ酸は、完全に省くことも又は所望のペプチドの任意の位置に組み込むこともできる。従って、例えば、ある実施態様では、当該ペプチドは、1個のD−アミノ酸を含むことができるが、他の実施態様では、当該アミノ酸は、少なくとも2個、一般的には少なくとも3個、より一般的には少なくとも4個、最も一般的には少なくとも5個、好ましくは少なくとも6個、より好ましくは少なくとも7個及び最も好ましくは少なくとも8個のDアミノ酸を含む。特に好ましい実施態様では、本質的に全ての他の(鏡像異性)アミノ酸は、D−型アミノ酸である。ある実施態様では、少なくとも90%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%の鏡像異性アミノ酸は、D−型アミノ酸である。一つの特定の実施態様では、本質的に全ての鏡像異性アミノ酸は、D−型アミノ酸である。
【0127】
保護基
ある実施態様では、構成アミノ酸及び/又は末端アミノ酸上の1以上のR−基は、保護基で保護する。特定の理論に拘束されるものではないが、特に、本発明の対象ペプチドのアミノ及び/又はカルボキシル末端の保護が、経口送達を大いに改善し、血清半減期を著しく増大させることは本発明の発見である。
【0128】
幅広い多数の保護基が当該目的に適している。かかる基は、特に限定されないが、N−末端保護に特に好ましいアセチル、アミド、及びアセチルやアルキルを有するアルキル基、カルボキシ末端保護に好ましいアミド基を含む。ある実施態様では、保護基は、検出可能な標識(例えば、N−メチル アンスラニリル)を更に含むことができる。
【0129】
ある特定の好ましい実施態様では、保護基は、特に限定されないが、脂肪酸において見られるようなアルキル鎖、プロピオニル、ホルミル等である。特に好ましいカルボキシル保護基は、アミド、エステル及びエーテルの形成保護基を含む。一つの好ましい実施態様では、アセチル基はアミノ末端の保護に使用し、アミド基はカルボキシル末端の保護に使用する。当該保護基は、ペプチドのヘリックス形成傾向を亢進する。ある特定の好ましい保護基は、種々の長さのアルキル基、例えば式:CH3−(CH2)n−CO−を有する基(ここで、nは、約1〜約20の範囲、好ましくは約1〜約16又は18、より好ましくは約3〜約13及び最も好ましくは約3〜約10である)を含む。
【0130】
ある特定の好ましい実施態様では、保護基は、特に限定されないが、脂肪酸おいて見られるようなアルキル鎖、プロピオニル、ホルミル等である。特に好ましいカルボキシル保護基は、アミド、エステル及びエーテルの形成保護基を含む。一つの好ましい実施態様では、アセチル基はアミノ末端の保護に使用し、アミド基はカルボキシル末端の保護に使用する。当該保護基は、ペプチドのヘリックス形成傾向を亢進する。ある特定の好ましい保護基は、種々の長さのアルキル基、例えば式:CH3−(CH2)n−CO−を有する基(ここで、nは、約3〜約20の範囲、好ましくは約3〜約16、より好ましくは約3〜約13及び最も好ましくは約3〜約10である)を含む。
【0131】
他の保護基は、特に限定されないが、N−メチル アンスラニリル、Fmoc、t−ブトキシカルボニル(t−BOC)、9−フルオレンアセチル基、1−フルオレンカルボン酸基、9−フルオレンカルボン酸基、9−フルオレノン−1−カルボン酸基、ベンジルオキシカルボニル、キサンチル(Xan)、トリチル(Trt)、4−メチルトリチル(Mtt)、4−メトキシトリチル(Mmt)、4−メトキシ−2,3,6−トリメチル−ベンゼンスルホニル(Mtr)、メシチレン−2−スルホニル(Mts)、4,4−ジメトキシベンズヒドリル(Mbh)、トシル(Tos)、2,2,5,7,8−ペンタメチル クロマン−6−スルホニル(Pmc)、4−メチルベンジル(MeBzl)、4−メトキシベンジル(MeOBzl)、ベンジルオキシ(BzlO)、ベンジル(Bzl)、ベンゾイル(Bz)、3−ニトロ−2−ピリジンスルフェニル(Npys)、1−(4,4,−ジメチル−2,6−ジオキソシクロヘキシリデン)エチル(Dde)、2,6−ジクロロベンジル(2,6−DiCl−Bzl)、2−クロロベンジルオキシカルボニル(2−Cl−Z)、2−ブロモベンジルオキシカルボニル(2−Br−Z)、ベンジルオキシメチル(Bom)、シクロヘキシルオキシ(cHxO)、t−ブトキシメチル(Bum)、t−ブトキシ(tBuO)、t−ブチル(tBu)、アセチル(Ac)及びトリフルオロアセチル(TFA)を含む。
【0132】
保護基/封鎖基は、かかる基を、本発明のペプチドを含む好適な残基(残基類)に結合する方法として、当業者に周知である(例えば、Greene etal. (1991) Protective Groups in Organic Synthesis, 2nd ed., John Wiley & Sons, inc. Somerset, N. J.)を参照されたい)。一つの好ましい実施態様では、例えば、当該ペプチドが無水酢酸を用いる樹脂上にある場合に、合成中にアセチル化が行われる。アミド保護は、合成のための好適な樹脂の選択によって達成できる。本明細書の実施例に記載のペプチド合成中には、結合アミド樹脂を使用する。合成完了後、AspやGlu等の酸性二官能性アミノ酸及び塩基性アミノ酸Lys、Tyrのヒドロキシルの半永久的保護基は、全て同時に除去することができる。酸性処理によるかかる樹脂から遊離したペプチドは、アセチルで保護したN−末端及びNH2で保護したカルボキシル末端を有し、他の全ての保護基が同時に除去されている。
【0133】
IX.ペプチド取り込みの亢進
全てのLアミノ酸ペプチド(あるいは、例えば、本発明のペプチドの配列を有する他のペプチド)をD−型(すなわち本発明のペプチド)と共投与する場合には、D−型ペプチドの取り込みは増大することも本発明の驚くべき発見である。従って、ある実施態様では、本発明は、本発明の方法におけるD−型及びL−型ペプチドの併用を画する。D−型ペプチド及びL−型ペプチドは、異なったアミノ酸配列を有することができるが、好ましい実施態様では、それらはいずれも本明細書に記載のペプチドのアミノ酸配列を有し、より好ましくは、それらは同一のアミノ酸配列を有する。
【0134】
本発明のクラスA両親媒性ヘリックスペプチドのコンカテマーが、アテローム性動脈硬化症の1以上の症状を緩和する点でも効果的であることはまた本発明の発見である。コンカテマーを含むモノマーは、直接結合するか又はリンカーで連結することができる。ある実施態様では、当該リンカーは、アミノ酸リンカー(例えばプロリン)又はペプチドリンカー(例えばGly4Ser3)である。ある実施態様では、コンカテマーは、2マー、より好ましくは3マー、更により好ましくは4マー及び最も好ましくは5マー、8マー又は10マーである。
【0135】
X.医薬製剤
本発明の方法を実施するために、本発明の1以上のペプチド又はペプチド模倣体は、例えば、アテローム性動脈硬化症の1以上の症状を有すると診断された又はアテローム性動脈硬化症の危険にあると診断された個体に投与する。ペプチド又はペプチド模倣体は、「天然」型で投与することができ、又は、塩、エステル、アミド、プロドラッグ又は誘導体が薬理的に好適である、すなわち本発明において効果的である場合には、もし必要であれば、塩、エステル、アミド、プロドラッグ、誘導体等の形態で投与することができる。塩、エステル、アミド、プロドラッグ及び活性物質の他の誘導体は、合成有機化学の当業者に知られた及び例えばMarch (1992) Advanced Organic Chemistry; Reactions, Mechanisms and Structure, 4th Ed. N.Y. Wiley-Interscienceに記載の標準的な方法を用いて調製することができる。
【0136】
例えば、酸付加塩は、典型的には好適な酸との反応を含む慣用的方法を用いて遊離塩基から調製する。一般的に、薬物の塩基型は、メタノール又はエタノール等の極性有機溶媒中に溶解し、当該酸をそこに添加する。得られた塩は沈殿するか又は低極性溶媒の添加によって溶液から取り出すことができる。酸付加塩を調製するための好適な塩は、例えば、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、シュウ酸、リンゴ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、桂皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、サルチル酸等の有機酸、及び塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等の無機酸である。酸付加塩は、好適な塩基を用いる処理によって遊離塩基に再変換することができる。本明細書の活性物質の特に好ましい酸付加塩は、塩酸又は臭化水素酸を用いて調製することができるハロゲン化物塩である。反対に、ペプチド又は模倣体の塩基性塩の調製は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウム、トリメチルアミン等の薬学的に許容される塩基を用いて同様な方法で行うことができる。特に好ましい塩基性塩は、例えばナトリウム塩等のアルカリ金属塩及び銅塩を含む。
【0137】
エステルの調製は、典型的には、薬物の分子構造内に存在するヒドロキシル及び/又はカルボキシル基の官能基化を含む。エステルは、典型的には、遊離アルコール基のアシル置換誘導体、すなわち式RCOOHのカルボン酸(ここで、Rはアルキル、好ましくは低級アルキルである)から誘導される部分である。エステルは、必要ならば、慣用的な水素添加又は加水分解手段を用いることによって、遊離酸に再変換することができる。
【0138】
アミド及びプロドラッグは、当業者に知られた技術又は関連文献に記載の技術を用いて調製してもよい。例えば、アミドは、好適なアミン反応物を用いてエステルから調製してもよく、あるいはアンモニア又は低級アルキルアミンとの反応によって、無水物又は酸クロリドから調製してもよい。プロドラッグは、典型的には、個体の代謝系によって調節されるまで治療上不活性である化合物となっている部分の共有結合的接着によって調製する。
【0139】
本明細書で同定されたペプチド又は模倣体は、アテローム性動脈硬化症及び/又はその症状の予防的及び/又は治療的処置のための、非経口、局所、経口、鼻腔内(あるいは吸入)、直腸又はエアゾールもしくは皮内等の局部投与に有用である。医薬組成物は、投与方法に応じて種々の単位剤形で投与することができる。好適な単位剤形は、特に限定されないが、粉剤、ピル剤、カプセル剤、トローチ剤、座剤、貼付剤、鼻腔スプレー、注射、移植可能な徐放剤、脂質複合体等を含む。
【0140】
本発明のペプチド及び/又はペプチド模倣体は、典型的には、薬学的に許容される担体(賦形剤)と混合して薬理的組成物をつくる。薬学的に許容される担体は、例えば、当該組成物を安定化し又は活性物質(活性物質類)の吸収を増大又は減少させるように作用する1以上の生理的に許容される化合物(化合物類)を含むことができる。生理的に許容される化合物は、例えば、グルコース、スクロース又はデキストラン等の炭水化物、アスコルビン酸又はグルタチオン等の抗酸化剤、キレート化剤、低分子蛋白質、活性物質もしくは賦形剤もしくは他の安定剤及び/又は緩衝液の一掃又は加水分解を減じる、脂質、組成物等の保護及び取り込みエンハンサーを含むことができる。
【0141】
他の生理的に許容される化合物は、特に微生物の繁殖又は作用を妨げるために有用である湿潤剤、乳化剤、分散剤又は保存剤を含む。種々の安定剤は周知であり、例えばフェノール及びアスコルビン酸を含む。当業者であれば、生理的に許容される化合物を含む薬学的に許容される担体(担体類)の選択が、例えば活性物質(活性物質類)の投与経路及び活性物質(活性物質類)の特定の物理−化学的性質に依拠することは理解できよう。
【0142】
賦形剤は、好ましくは殺菌され、一般的には望ましくない物質が含まれていないものである。当該組成物は、慣用的な周知の殺菌技術によって殺菌することができる。
【0143】
治療的適用において、本発明の組成物は、アテローム性動脈硬化症の1以上の症状に罹患している又はアテローム性動脈硬化症の危険にある患者、疾患及び/又は病訴を治癒もしくは少なくとも部分的に回避又は停止させるために十分な量で投与する。これを達成するために十分な量は、「治療上効果的な用量」として定義する。当該使用のための有効な量は、疾患の重大性及び一般的な患者の健康状態に依拠するだろう。組成物の単回又は複数回投与は、患者によって必要とされ及び忍従される投薬量及び頻度に従って投与することができる。いずれにしろ、組成物は、患者を効果的に治療する(1以上の症状を軽減する)ために、本発明の製剤の活性物質の十分な量を提供する必要がある。
【0144】
ペプチド又は模倣体の濃度は、幅広く変化させることができ、選択される特定の投与様式及び患者の必要性に応じて、液体体積、粘度、体重等に基いて主に選択する。しかしながら、濃度は、典型的には、約0.1又は1mg/kg/日〜約50mg/kg/日の範囲の投薬量、時にはそれより高い投薬量を提供するために選択する。典型的な投薬量は、約3mg/kg/日〜約3.5mg/kg/日、好ましくは約3.5mg/kg/日〜約7.2mg/kg/日、より好ましくは約7.2mg/kg/日〜約11.0mg/kg/日及び最も好ましくは約11.0mg/kg/日〜約15.0mg/kg/日の範囲である。ある好ましい実施態様では、投薬量は、約10mg/kg/日〜約50mg/kg/日の範囲である。かかる投薬量は、特定の対象又は対象群での治療処方を最適化するために変えることができる。
【0145】
ある好ましい実施態様では、本発明のペプチド又はペプチド模倣体は、当業者に周知の標準的方法に従って、経口的に(例えば錠剤によって)又は注射可能物質として投与する。他の好ましい実施態様では、ペプチドは、慣用的な経皮的薬物送達システム、すなわち、活性物質(活性物質類)が、典型的に皮膚に貼付される薬物送達装置として役立つラミネート構造内に含まれる、経皮的「貼付剤」を用いて皮膚を通して送達することもできる。かかる構造では、薬物組成物は、典型的に、層又は上側の裏打ち層の下にある「リザーバ」内に含まれる。本文脈中、「リザーバ」の語は、皮膚表面に送達するために最終的に利用できる「活性成分(成分類)」の量を言う。従って、例えば、「リザーバ」は、当該貼付剤の裏打ち層に接着している、又は当業者に知られた多数の異なったマトリックス製剤のいずれかに存在する活性成分(成分類)を含む。当該貼付剤は、単一のリザーバを含んでもよく、又は多数のリザーバを含んでもよい。
【0146】
一つの実施態様では、リザーバは、ポリマー性マトリックスを含む。送達中に当該装置を皮膚に固定するために役立つ薬学的に許容される密着性接着材料を含む。好適な皮膚接着材料の例は、特に限定されないが、ポリエチレン、ポリシロキサン、ポリイソブチレン、ポリアクリレート、ポリウレタン等を含む。あるいは、薬物−含有リザーバ及び皮膚密着性接着剤は、別々の又は別個の層に存在する、かかる場合には、上記のポリマー性マトリックスであるか、又は液体もしくはヒドロゲルのリザーバであってもよいリザーバを下に付けた接着剤を付けて存在するか、あるいは何らかの他の形態をとってもよい。かかる装置の上面として役立つ当該ラミネートにおける裏打ち層は、好ましくは当該「貼付剤」の一次構造的要素として機能し、多大なその柔軟性を有する装置を提供する。裏打ち層として選択された材料は、好ましくは実質的に、存在する活性物質(活性物質類)及び任意の他の材料に不浸透性である。
【0147】
局所薬物送達のための他の好ましい製剤は、特に限定されず、軟膏及びクリームを含む。軟膏は、典型的には、石油及び他の石油誘導体に基いた半固体である。選択された活性物質を含むクリームは、典型的には、粘性液体又は半固体エマルションであり、しばしば水中油型、油中水型のいずれかである。クリーム基材は、典型的には、水で洗浄可能であり、油相、乳化剤及び水相を含む。油相は、「内」相と呼ばれることもあり、一般的には、石油及びアセチル又はステアリルアルコール等の脂肪酸を含み;水相は、通常、必ずしも、体積で油相を超え、一般的に水分活性の調節剤(humectant)を含むとは限らない。クリーム製剤中の乳化剤は、一般的に非イオン性、アニオン性、カチオン性又は両新媒性の界面活性剤である。当業者によって認識されるであろう、使用されるべき特定の軟膏又はクリーム基材は、最適な薬物送達を提供するものである。他の担体又は媒質と同様に、軟膏基材は、不活性で、安定で、非刺激性でかつ非敏感性である。
【0148】
典型的なペプチド製剤とは異なり、D−型アミノ酸を含む本発明のペプチドは、胃酸等による蛋白質分解から保護することなく、経口でも投与することができる。しかしながら、ある実施態様では、ペプチド送達は、保護的な賦形剤の使用によって亢進することができる。これは、典型的には、ポリペプチドに酸のもしくは酵素的な加水分解への抵抗性を付与するために、当該ポリペプチドを組成物と複合化することによって、あるいはリポソーム等の好適な抵抗性担体中にポリペプチドを内包することによって、達成することができる。経口送達のための保護ポリペプチドの手段は、当該分野で周知である(例えば、治療物質の経口送達のための脂質組成物について記載した米国特許第5,391,377号明細書を参照されたい)。
【0149】
徐放製剤
高血清半減期は、徐放蛋白「内包」システムの使用によって維持することができる。かかる徐放システムは、当業者に周知である。一つの好ましい実施態様では、蛋白質及びペプチドのProLease生物分解性マイクロスフェア送達システム(Tracy (1998) Biotechnol. Prog. 14: 108: Johnson et al. (1996), Nature Med. 2: 795; Herbert et al., (1998), Pharmaceut. Res. 15, 357)であって、他の物質を有する又は有さない乾燥製剤として混合することができる、ポリマーマトリックス中に蛋白質を含む生物分解性ポリマー性マイクロスフェアを含む乾燥粉体である。
【0150】
ProLeaseマイクロスフェア成形方法は、特に、高蛋白質カプセル化効率を達成できると同時に蛋白質の完全な状態を維持するように設計されている。当該方法は、(i)安定化賦形剤と共に薬物溶液をスプレー凍結乾燥することによって、凍結乾燥蛋白質粒子を大量蛋白質から調製すること、(ii)薬物ポリマー懸濁液を調製後、音波処理又はホモジナイズによって、薬物粒子サイズを小さくすること、(iii)噴霧によって凍結薬−ポリマーマイクロスフェアを液体窒素中に生成させること、(iv)ポリマー性溶媒をエタノールで抽出すること、及び(v)ろ過及び真空乾燥によって最終乾燥粉体生成物を製造すること、から成る。得られた粉体は、多孔性ポリマー粒子内に均一かつ堅く分散された、蛋白質の固体を含む。本方法で最も一般的に使用されるポリマーは、乳酸・グリコール酸共重合体(PLG)であり、いずれも生物学的適合性でかつ生分解性である。
【0151】
カプセル化は、低温(例えば−40℃)で行うことができる。カプセル化中、蛋白質は、水の非存在下に固体状態で維持されるため、蛋白質の水−誘導構造的流動性を最小化し、反応物として水を含む分解反応を回避し、蛋白質が変性する有機−水界面を回避することができる。好ましい方法は、その中ではほとんどの蛋白質が不溶性である溶媒を使用し、それによって高カプセル化効率(例えば95%を超える高効率)が得られる。
【0152】
他の実施態様では、溶液中の1以上の成分は、例えば希釈のために用意された貯蔵容器中に(例えば未測定体積中に)又は大量の水に添加するために用意された溶解性カプセル中に、「濃縮物」として提供することができる。
【0153】
併用製剤
ある例では、本発明の1以上のペプチドは、1以上の活性物質(例えばスタチン、β遮断薬、ACE阻害剤、脂質等)と組み合わせて投与することができる。当該2つの物質(例えばペプチド及びスタチン)は、同時に又は連続して投与することができる。連続して投与される場合には、当該2つの物質は、同様な時間間隔(例えば両剤がある共通の時間において活性である)で、いずれも生理的に関連した濃度となるように投与する。
【0154】
ある実施態様では、両剤は、同時に投与する。このような例では、単一の混合製剤として両剤を提供することが簡便である。このことは、当業者に周知の多数の方法によって達成できる。例えば、錠剤では、当該錠は、例えばスタチン(スタチン類)を含む一層と、例えばペプチド(ペプチド類)を含む他の一層との2層を含むことができる。
【0155】
前記の錠剤及び投与方法は、例示にすぎず、限定するものではない。本明細書で提供された教示を用いて、他の好適な製剤及び投与方法を直ちに考案することができる。
【0156】
XI.追加の生理学的に活性な物質
【0157】
追加の生理学的に活性な物質は、本発明のペプチド等の主要な活性物質と共に送達することができる。ある実施態様では、かかる物質は、アテローム性動脈硬化症事象の危険及びその病訴を低減する物質に限定されない。かかる物質は、特に限定されず、β遮断薬、β遮断薬とチアシド系利尿薬との組み合わせ、スタチン、アスピリン、ace阻害剤、ace受容体阻害剤(ARBs)等を含む。
【0158】
スタチン
1以上のスタチンを「同時に」有する本発明の1以上のペプチドの投与は、スタチン(スタチン類)の効果を相乗的に亢進する。すなわち、スタチンは、低用量で類似の効能を達成することができ、それによって当該薬物に関連する可能な逆の副作用(例えば筋肉疲労)を未然に防ぎ、及び/又は任意の与えられた投薬量で、スタチンに、より高い抗炎症性を顕著にもたらす。
【0159】
スタチンの主な効果は、LDL−コレステロールレベルを下げることであり、それらは、多く他の種の薬物より更にLDL−コレステロールを下げる。スタチンは、一般的に、酵素である、体の中のコレステロール生成速度を制御するHMG−CoAレダクターゼを阻害する。当該薬物は、典型的には、コレステロールの生成を減速し、血中に存在するLDL−コレステロールを除去するために肝臓の能力を増大させることによって、コレステロールを下げる。
【0160】
全体で、及び当該薬物によって生成されるLDL−コレステロールの大幅な低減は、心臓発作及び心臓病死に大幅削減をもたらすように思われる。コレステロールを低減する薬を必要としている場合には、当該研究でのその業績及びLDL−コレステロールを下げるその能力により、スタチンは最も頻繁に処方される薬物となっている。スタチンを使用する研究では、当該薬物を処方された患者において、20〜60%低いLDL−コレステロールレベルを報告している。スタチンはまた、高いトリグリセリドレベルを低減し、HDL−コレステロールの適度な増加を生じる。最近、スタチンが、達成された脂質低減の程度に直接関連しない抗炎症特性を有することが理解されている。例えば、スタチンは、血漿脂質レベルでの変化に比較的無関係な炎症性マーカーCRPの血漿レベルを減少させることが判っている。当該スタチンの抗炎症活性は、LDL低減の程度よりも、スタチンによって誘起される臨床的事象中の削減の予想において、重要又はより重要であることが判っている。
【0161】
スタチンは、一般的に、毎食又は毎就寝時に単用量で与えられる。当該医薬品は、体が日中よりも夜に、よりコレステロールを産生する事実を利用して、しばしば夕方に与えられる。本明細書に記載のペプチドと組み合わせる場合、ペプチド/スタチンの併用治療処方もまた、典型的には夕方に与えられる。
【0162】
好適なスタチンは、当業者に周知である。かかるスタチンは、アトルバスタチン(リピトール(登録商標)、ファイザー)、シムバスタチン(ゾコール(登録商標)、メルク)、プラバスタチン(プラバコール(登録商標)、ブリストル・マイヤーズ・スクイブ)、フラバスタチン(レスコール(登録商標)、ノバルティス)、ロバスタチン(メヴァコール(登録商標)、メルク)、ロスバスタチン(クレストール(登録商標)、アストラ・ゼネカ)及びピタバスタチン(三共)を含むが、これらに限定されない。
【0163】
併用スタチン/ペプチド投薬量は、通常、各患者について最適化することができる。典型的には、スタチンは、数週間後に結果を示し、4〜6週間で最大の効果を有する。スタチン及び本明細書に記載のペプチドの一つの併用療法の前に、医師は、LDL−コレステロール及びHDL−コレステロールのレベルを含むスタチンを開始するための規定の試験を入手するだろう。更に、医師はまた、高感度試験を用いて、患者のHDLの抗炎症特性を測定し、CRPレベルを測定するだろう。併用療法の4〜6週間後に、医師は、典型的には、当該試験を繰り返し、低減した最大脂質及び最大抗炎症活性を得るために、医薬の投薬量を調整するだろう。
【0164】
β遮断薬
好適なβ遮断薬は、心選択性(選択的β1遮断薬)、例えばアセブトロール(セクトラール(登録商標))、アテノロール(テノーミン(登録商標))、ベータキソロール(ゲルロング(登録商標))、ビソプロロール(ゼベータ(登録商標))、メトプロロール(ロプレッサー(登録商標))等を含む。好適な非選択的遮断薬(β1とβ2を同様に遮断)は、カルテオロール(カルトロール(登録商標))、ナドロール(コルガード(登録商標))、ペンブトロール(レヴァトール(登録商標))、ピンドロール(ヴィスケン(登録商標))、プロプラノロール(インデラール(登録商標))、チモロール(ブロックアーデン(登録商標))、ラベタロール(ノルモディン(登録商標)、トランデート(登録商標)等を含むが、これらに限定されない。
【0165】
好適なβ遮断薬・チアシド系利尿薬の組み合わせは、限定されず、ロプレッサーHCT、ZIAC、テノレティック、チモライド、インデラル LA40/25、インデライド、ノルモザイド等を含む。
【0166】
ACE阻害剤
好適なace阻害剤は、限定されず、カプトプリル(例えばスクイブのカポテン(登録商標))、ベナセプリル(例えばノバルティスのロテンシン(登録商標))、エナラプリル(例えばメルクのヴァソティック(登録商標))、フォシノプリル(例えばブリストル・マイヤーのモノプリル(登録商標))、リシノプリル(例えばメルクのプリニヴィル(登録商標)又はアストラ・ゼネカのゼストリル(登録商標))、クィナプリル(例えばパーク・ディービスのアクプリル(登録商標))、ラミプリル(例えばヘキスト・マリオン・ルセル、キング・ファーマシューティカルのアルタース(登録商標))、イミダプル、ペリンドプリル エルビミン(例えばローヌ・プーラン ローラーのアセオン(登録商標))、トランドラプリル(例えばノル・ファーマシューティカルのマビック(登録商標))等を含む。
【0167】
脂質系製剤
ある実施態様では、本発明のペプチドは、1以上の脂質と共投与する。当該脂質は、当該ペプチドの保護及び/又は輸送/取り込みの亢進するために、活性物質及び/又は賦形剤として調剤化することができ、あるいは別々に投与することができる。
【0168】
特定の理論に拘束されることなく、特定のリン脂質の投与(例えば経口投与)が著しくHDL/LDL率を増やすことができることは、本発明において発見された。更に、特定の中等度の長さのリン脂質は、一般的な脂質輸送に含まれるプロセスとは異なったプロセスによって輸送されると考えられる。従って、特定の中等度の長さのリン脂質と本発明のペプチドとの共投与は、多数の利益を提供する。それは、消化又は加水分解からリン脂質を保護し、HDL/LDL率を改善する。
【0169】
脂質は、本発明のポリペプチドをカプセル化するリポソーム中に形成することができ、ポリペプチドと簡単に複合化/混合することができる。リポソームを形成し、試薬をカプセル化する方法は、当業者に周知である(例えば、Martin and Papahadjopoulos (1982) J. Biol. Chem., 257: 286-288; Papahadjopoulos et al., (1991) Proc Natl. Acad. Sci. USA, 88: 11460-11464; Huang et al., (1992) Cancer Res., 52: 6774-6781; Lasic et al., (1992) FEBS Lett., 312: 255-258等を参照されたい)。
【0170】
当該方法で使用するための好ましいリン脂質は、sn−1及びsn−2の位置に、約4炭素原子〜約24炭素原子の範囲の脂肪酸を有する。ある好ましい実施態様では、脂肪酸は飽和である。他の好ましい実施態様では、脂肪酸は不飽和でもよい。種々の好ましい脂肪酸を表2に示す。
【0171】
【表5】
【0172】
かかる位置の脂肪酸は、同じでも異なっていてもよい。特に好ましいリン脂質は、sn−3の位置にホスホリルコリンを有する。
【0173】
XII.キット
別の実施態様では、本発明は、アテローム性動脈硬化症の1以上の症状の緩和のための及び/又はアテローム性動脈硬化症の危険にある対象(例えば人又は動物)の予防的治療のための及び/又は未β高密度リポ蛋白様粒子の形成及び循環を刺激するための及び/又は骨粗鬆症の1以上の症状を抑制するためのキットを提供する。当該キットは、好ましくは、1以上の本発明のポリヌクレオチド又は模倣ペプチドを含む容器を含む。当該ペプチド又は模倣ペプチドは、単位投薬製剤(例えば座薬、錠剤、キャプレット、貼付剤等)で提供することができ、及び/又は場合により1以上の薬学的に許容される賦形剤と混合することができる。
【0174】
当該キットは、場合により、心疾患及び/又はアテローム性動脈硬化症の治療に使用される1以上の他の物質を更に含むことができる。かかる物質は、例えば上記のβ遮断薬、血管拡張薬、アスピリン、スタチン、ace阻害剤又はace受容体阻害剤(ARBs)等を含むが、これらに限定されない。
【0175】
ある好ましい実施態様では、当該キットは、ペプチド(ペプチド類)と別々に製剤化された又は組み合わされて製剤化されたスタチン(例えばセリバスタチン、アトルバスタチン、シムバスタチン、プラバスタチン、フラバスタチン、ロバスタチン、ロスバスタチン、ピタバスタチン等)を含む。典型的には、当該製剤中のスタチンの投薬量は、相乗的ペプチドなしで典型的に処方されたスタチンの投薬量よりも低くてよい。
【0176】
更に、当該キットは、場合により、本発明の「治療学」又は「予防学」の方法又は使用の実施のための指示(すなわちプロトコール)を与える標識及び/又は指示的材料を含む。好ましい指示的材料は、アテローム性動脈硬化症の1以上の症状を軽減し、及び/又はアテローム性動脈硬化症の危険にある個体のかかる症状の1以上の発現もしくは増大を回避し、及び/又は未β高密度リポ蛋白様粒子の形成及び循環を刺激し、及び/又は骨粗鬆症の1以上の症状を抑制するために、本発明の1以上のポリペプチドの使用を記載する。指示的材料はまた、場合により、好ましい投薬量/治療処方、カウンター指示等を教示してもよい。
【0177】
当該指示的材料は、典型的には、記載された又は印刷された材料を含むが、当該材料は、そのようなものに限定されない。かかる指示的材料を含み、末端の使用者にそれらを伝達することができるいずれかの媒体は、本発明で画されている。かかる媒体は、電子記憶装置媒体(例えば磁気ディスク、テープ、カートリッジ、チップ)、光媒体(例えばCDROM)等を含むが、これらに限定されない。かかる媒体は、かかる指示的材料を提供するインターネットサイトへのアドレスを含む。
【実施例】
【0178】
以下の実施例は例示に過ぎず、本発明の範囲を限定するものではない。
【0179】
実施例1
未−β高密度リポ蛋白様粒子の形成及び循環を刺激することによる脂質輸送及び解毒作用
経口投与のD−4F血清濃度を注射によって得られた濃度と比較した。図1は、アポEヌルマウスへの胃管による14C−D−4F投与の結果を示す。血液試料を図1に示す各時点で採取した。
【0180】
図2は、D−4Fの同量及び放射活性をマウスの尾に静脈注射した後の血漿中の放射活性を示す。図1及び2のデータは、経口投与後2時間、IV注射後に見られた放射活性の約1.2%が血漿中に存在した、ことを示す。多数の研究から、我々は、D−4Fの経口投与の約1%が吸収されると結論した。
【0181】
低吸収の結果から、D−4Fは、生物的に活性でないと考えられる。標準マウス血漿は、アポA−Iを100mg/dl又は1mg/mlのオーダーで含む。アポEヌルマウスは低HDL−コレステロールレベルを有するため、そのアポA−Iレベルが標準の5分の1に過ぎない場合には、約0.20mg/mlのアポA−Iを有する。500μgのD−4Fをマウスの胃に注入し、その1%のみが吸収された場合、5μgのD−4Fを約1.5mlのマウス血漿に添加すると、マウス血漿1ml当たり、約3.3μgのD−4Fが吸収されたこととなる。従って、アポEヌルマウス血漿が既に約200μgのアポA−Iを含む場合、マウス血漿1ml当たり約3.3μgのD−4Fがどのように脂質輸送に影響を与えるか。
【0182】
他の研究では、生理食塩水又は500μgの[14C]−D−4FをアポEヌルマウスの胃に注入後10分では、血漿中にはD−4Fが検出できなかった。しかしながら、D−4Fを与えた後20分では、血漿中にD−4Fが検出できた。当該血漿をFPLCによって分画した場合、分画30でHDLピークが溶出し、FPLC分画35〜37(図3では、標識CCP)でD−4Fが溶出した。D−4Fが存在しない場合(D−4Fなし)、分画35は、ウェスタンブロッティングによるいくらかのアポA−Iを含み、分画36はアポA−Iを若干含み、分画37は検出可能なアポA−Iをほとんど含まなかった(図3)。更に、D−4Fが存在しない場合、アポA−Iを含む粒子のサイズは、PAGEによって約10.5nmであった(図3)。D−4Fを与えた(D−4Fあり)後20分では、ウェスタンブロッティングによって、分画35はいくらかのアポA−Iを含み、分画36はより多くのアポA−Iを含み、分画37は分画35よりも多くアポA−Iを含んだが、分画36では少量であった(図3)。しかしながら、D−4Fを与えた後、分画35〜37中のアポA−Iを含む粒子は、より小さかった(10.5nmに対し、8.5nm)(図3のD−4Fあり、CCPを参照されたい)。
【0183】
LC−MRMによって、D−4Fを経口投与した後20分では、分画35〜37もD−4Fを含むことが判った(図4)。この結果は、14C−D−4Fについても確認された。更に、D−4F経口投与後、アポA−Iを含む分画35〜37の小粒子は、パラオキソナーゼ活性を有し、コレステロールを含有した(図5の下段パネル)。D−4Fが存在しない場合、分画35〜37は、全くパラオキソナーゼ活性を含まず、コレステロール活性があったとしても僅かであった(図5の上段パネル)。
【0184】
図5の下段パネルは、D−4F投与後にHDLの右側に現れるコレステロール含有粒子(CCP)を有する分画を示す。図5の下段パネルから明らかなように、CCP分画は、D−4F投与後にパラオキソナーゼ(PON)活性を含んだ。
【0185】
図3に示したように、D−4Fを経口投与した、分画35〜37をPAGEによって分析した後、当該粒子は、約8.5nmの大きさであった。当該分画をpreparativePAGEで精製し、逆染色電子顕微鏡法で試験すると、その大きさは、PAGEによる推定を確認する8〜9nmと決定した。D−4F経口投与後6.5時間までに、D−4Fのほとんどの全ては、リポ蛋白を含有するBよりも10倍を超えるHDLに対する高い親和性を有する大リポ蛋白粒子に移動した。14C−D−4Fを尾静脈注射によって与えた20分後には、胃管による経口投与後に比べて、血漿中では100倍を超えるD−4Fが存在した。しかしながら、FPLC分画35〜37中のD−4Fの量は、経口投与後に比べて、注射後には約2倍を超えて高いにすぎなかった(データ非表示)。
【0186】
我々は、腸からの吸収の20分後、D−4Fは、アポA−I及びパラキソナーゼを比較的高含量で含む、小さな未βHDL様粒子を形成すると、結論付けている。実際、当該未βHDL様粒子の量をウェスタンブロッティングから推定し、アポA−Iの量と当該粒子中のD−4Fの量との比較(放射活性又はLC−MRMによって決定される)は、D−4Fが腸から吸収されるため、当該未βHDL様粒子の形成を引き起こす触媒として作用する、ことを示唆している。この少量の腸由来のD−4Fは、アポA−I、パラオキソナーゼ及びコレステロールの量を、D−4Fの量よりも大きいオーダーの当該粒子中に何とかして補う。
【0187】
D−4F投与20分後に生成した未βHDL様粒子(CCP)中のアポA−I、D−4F及びパラオキソナーゼの量に基いて、当該未βHDL様粒子が、酸化脂質を解毒し、また動脈壁差細胞に、単球走化性活性の発現によって明らかにされる炎症応答を生じないようにすることを予測することができる。図6に示した実験は、実際に当該ケースに当てはまることを示している。図6から明らかなように、D−4Fを与えなかったアポEヌルマウスからの血漿のFPLC分離後の未βHDL様粒子領域(CCP)は、HPODEによるPAPCの酸化を促進し、前炎症性であった。反対に、D−4FのアポEヌルマウスへの経口投与後では、当該分画はHPODE(脂質を解毒した)によるPAPCの酸化を抑制し、抗炎症性であった。更に、D−4F投与後、未βHDL様粒子の抗炎症特性は、D−4F投与後のアポEヌルHDLの5倍を超える濃度で得られるものと同様であった。図6からも明らかなように、D−4F投与後のアポEヌルHDLは、D−4Fを投与しない標準的なヒトHDLによって得られるのと同様な脂質解毒度を、7倍を超える濃度で得た。従って、D−4F投与後のアポEヌルマウス中の未βHDL様粒子は、標準的ヒトHDLよりも約35倍高く、脂質を解毒し、また動脈壁差細胞に、単球走化性活性を発現させないようにすることができる。
【0188】
図7から明らかなように、当該粒子の行方を長期にわたって追及するために、D−4Fを新規な蛍光プローブで標識した。LD受容体ヌル雌性マウス8週齢(各群5匹)に、胃管によって、22μg/マウスのN−メチル アンスラニリル−D−4Fを与え、次いで1、2又は8時間後に採血した。その血漿をFPLCによって分画し、コレステロール及び蛍光を分析した。1時間時点を図8A示す。2時間時点を図8Bに示し、8時間時点を図8Cに示す。
【0189】
吸収によれば、D−4Fは、急速に比較的大量のアポA−I及びパラオキソナーゼを補い、逆コレステロール輸送を促進し、生物的に活性な酸化脂質を破壊するための最も可能性のある粒子である未−βHDL様粒子を形成する。当該粒子の形成及び成熟したHDLへの次の急速な取り込みが、ウェスタン節食状態にあるLDL受容体ヌルマウスで、及び血漿コレステロール又はHDL−コレステロールの変化に無関係な接食状態にあるアポEヌルマウスで我々が観察した、アテローム性動脈硬化症の劇的な軽減をおそらく説明すると、我々は考えている。当該データから、本発明のペプチドの投与は、脂質輸送を促進し、また未β高密度リポ蛋白様粒子の形成及び循環を刺激することによって「解毒」することができると、我々は考えている。
【0190】
実施例2
アテローム性動脈硬化症を緩和するために、スタチンと経口投与されたペプチド間の相乗作用
節食状態のアポEヌルマウス3ケ月齢に、飲料水のみ(水)、又は1μg/mlのD−4Fもしくは0.05μg/mlのアトルバスタチンもしくは0.05μg/mlのプラバスタチンもしくは1μg/mlのD−4F及び0.05μg/mlのアトルバスタチンもしくは1μg/mlのD−4F及び0.05μg/mlのプラバスタチンを含む飲料水を与えた。24時間後、マウスを採血し、そのHDLをヒト動脈壁共培養モデルで試験した。20μgの1−パルミトリル−2−アラキドニル−sn−グリセロ−3−ホスホリルコリン(PAPC)を、前記のように(Navab et al., (2001) J Lipid Res., 42: 1308-1317)、1μg/mlのヒドロペルオキシエイコサテトラエノール酸(HPODE)と共にヒト動脈壁細胞の共培養物に添加した。ヒトHDL(h,HDL)を350μg/mlコレステロールで共培養物に添加又は添加しなかった(非添加)、あるいは、飲料水のみ(水)を与えたマウスからFPLCによって単離されたマウスHDL又はX軸に示した添加物を、50μg/ml HDL−コレステロールで当該共培養物に添加した。インキュベーションの8時間後、上清を集め、標準神経プローブ・チェンバーを用いて単球走化性活性を試験した。
【0191】
結果を図9に示す。図9から明らかなように、1μg/mlのD−4FのアポEヌルマウスの飲料水への24時間の添加は、HDL機能を著しく改善しなかった。図9はまた、0.05mg/mlのアトルバスタチン又はプラバスタチンのみのアポEヌルマウスの飲料水への24時間の添加が、HDL機能を著しく改善しなかったことを示す。しかしながら、図9は、D−4F 1μg/mlが0.05mg/mlのアトルバスタチン又はプラバスタチンと共に飲料水に添加された場合に、HDL機能が顕著に改善されたことを示している。実際に、前炎症アポEヌルHDLは、350μg/mlの標準的ヒトHDL(h,HDL)(*=p<0.05)と同程度の抗炎症性を示した。
【0192】
従って、D−4Fのみ又はスタチンのみの投薬量は、一緒に与えられる場合には、それ自身では、HDL機能に何の影響も与えず、相乗的に作用した。D−4F及びスタチンがアポEヌルマウスに一緒に与えられる場合には、ヒト動脈壁細胞の共培養物中のPAPCを酸化するHPODEの作用によって誘導された炎症応答を抑制する点で、50μg/mlのHDLコレステロールにおけるその前炎症HDLは、350μg/mlのHDL−コレステロールにおいて、標準的ヒトHDLと同様に効果的であった。
【0193】
実施例3
骨粗鬆症を軽減するための経口投与ペプチドの使用
1mg/mlのD−4F(Ac−D−W−F−K−A−F−Y−D−K−V−A−E−K−F−K−E−A−F−NH2、配列番号5)を、アポEヌルマウス(1群8匹)の飲料水に添加又は添加しなかった。6週間後、マウスを安楽死させ、各マウスの左大腿を取り外し、定量的CTスキャニングによって分析し、BMDを測定した。スキャンは、各大腿について、4縦軸位置(スライス)で、末端に近くで1回、中心の近くで4回行った。BMDの値は、平均±SEMで表す。
【0194】
アポEヌルマウスの飲料水にD−4Fを6週間添加すると、小柱骨塩密度が劇的に増加した(表3)。
【0195】
【表6】
【0196】
ビスホスホネートが小柱骨に特に活性があることは興味深い(Bohic et al., (2000) Bone, 26: 341-348; Ramamurthy et al., (2001) Curr Med Chem., 8: 295-303; Rohanizadeh et al., (2000) Calcif Tissue Int., 67: 330-336; Rodan (1997) Bone 20: 1-4)。D−4Fは、当該マウスにおいて脂質プロファイルを変えないことが測定されたため、ペプチドの有益な効果が、骨に与える酸化脂質の阻害効果との関連による可能性がある。我々のデータは、骨芽細胞又は溶骨細胞に対する作用を識別することはできないが、当該予備的データは、D−4Fが骨粗鬆症を抑制/回避/治療するための優れた物質であることを強く示唆する。
【0197】
実施例4
「L」型ペプチドは効果的である
本発明のペプチドは、Dアミノ酸から合成される場合には、全てLアミノ酸を含むペプチド(「L−型ペプチド」)よりも、経口投与の場合により効果的であった。このことは、本出願の先行文献(全て本明細書に参考として組み込んだ、例えばUSSN 09/645,454、09/896,841、10/187,215及び10/273,386)において提供された実施例に十分に説明されている。例えば、PCT/US01/26497(国際公開第02/15923号パンフレット)で公表された明細書であるUSSN 10/187,215(’215出願)の第46頁〜第57頁に記載の実施例1には、L−アミノ酸から合成された5Fとして知られているペプチド(第27頁の表1の配列番号6)が注射によって与えられる場合に、6.22時間のT1/2を有するマウスの循環から除かれ(第51頁の表3を参照されたい)、無毒性であり(第52頁及び’215出願の第52頁の表4を参照されたい)、抗原性がなく(第53頁の冒頭を参照されたい)、LDLの酸化を抑制し、またヒト動脈壁細胞共培養物中のLDL−誘導単球走化性活性を回避するマウスHDL能力を劇的に改善した(第54頁及び図7を参照されたい)という証拠が提供されている。更に、第54頁の下部及び’215出願の図8から明らかなように、当該5Fペプチドの注射は、劇的にマウスのアテローム性動脈硬化のを低減した。
【0198】
第73頁の下部にある’215出願の実施例3及び図18では、L−アミノ酸から全て合成されている4F、5F及び6Fのインキュベーションは、ヒト動脈壁細胞共培養物中のLDL−誘導単球走化性活性を劇的に低減した、ことを我々は証明した。
【0199】
第78頁の下部に示した’215出願の実施例5及び図22Aでは、ペプチド4Fは、マウスに口から与えた場合に、当該ペプチドがD−アミノ酸から合成されている場合よりも、L−アミノ酸から合成されている場合に、より分解された。しかしながら、図22Aから明らかなように、完全なペプチドの中には、L−4Fの経口投与後の循環で見られるものもあった。更に、図22Bから明らかなように、マウスHDLは、ヒト動脈壁細胞がヒトLDLに暴露された場合に、単球走化性活性を抑制するその能力の点で、L−4Fの経口投与後に改善された。しかし、HDLの抗炎症特性の改善は、当該ペプチドが全てDアミノ酸から合成されている場合ほど劇的ではなかった。
【0200】
要約すると、本出願の先行文献に記載され、本明細書に参考として組み込まれた実施例は、D−型ペプチドは、経口で与えられる場合により効果的であるが、本発明のペプチドの投与は、Lアミノ酸から合成されようが又はDアミノ酸から合成されようが、効果的であることを証明している。
【0201】
本明細書に記載された実施例及び実施態様は、本発明の目的の例示にすぎず、種々の軽度な修飾又は変化は、当業者に連想されるだろうし、また本出願の精神や範囲及び添付された請求の範囲の中に含まれることとなる。本明細書に列挙された全ての刊行物、特許及び特許出願は、全ての目的のためにその全体を参考として組み込んだ。
【図面の簡単な説明】
【0202】
【図1】図1は、マウス血漿における14C−D−4Fの検出を示す。l22μgの14C−D−4F、140,000DPMを含む水100μlを、4ケ月齢雌性アポEヌルマウスに胃管によって投与した。血液試料を各時点(各時点当たり、n=4マウス)で採取し、1.0mlの血漿中の血漿14C放射活性を測定した。
【図2】図2は、D−4Fの血中濃度を示す。24μgの14C−D−4Fを含む水100μlを、4ケ月齢雌性アポEヌルマウスの尾の静脈注射によって投与した(各時点当たり、n=4マウス)。血液試料を各時点で採取し、1.0mlの血漿中の14C放射活性を測定した。
【図3】図3は、マウスアポA−Iのウェスタンブッロトの結果を示す。アポEヌルマウスに、採血の20分前に胃管によって500μgのD−4F(+D−4F)を投与又は非投与(D−4Fなし)した。血漿をFPLCによって分離し、分画30、35、36及び37を、nativePAGE及びマウスアポA−Iに対する高血清を用いるウェスタンブロッティングによって分析した。粒子の直径を左に示す(FPLC Fxnは、FPLC分画番号を示し;HDLピークは、分画30を示し;CCPは分画35〜37を示す)。
【図4A】図4Aは、LC−MRM分析の結果を示す。500μgのD−4FをアポEヌルマウスの胃に注入した20分後に、マウスを採血し、その血漿をFPLCによって分画し、内部標準としてD−5Fを添加した後、その分画をLC−MRMによって分析した。図4Aは、溶媒ブランクを示す。
【図4B】図4Bは、LC−MRM分析の結果を示す。500μgのD−4FをアポEヌルマウスの胃に注入した20分後に、マウスを採血し、その血漿をFPLCによって分画し、内部標準としてD−5Fを添加した後、その分画をLC−MRMによって分析した。図4Bは、D−4F(上段)及びD−5F(下段)の標準を示す。
【図4C】図4Cは、LC−MRM分析の結果を示す。500μgのD−4FをアポEヌルマウスの胃に注入した20分後に、マウスを採血し、その血漿をFPLCによって分画し、内部標準としてD−5Fを添加した後、その分画をLC−MRMによって分析した。図4Cは、上段パネルのD−4Fについての、プールしたFPLC分画35〜37の分析結果を、下段パネルの内部標準D−5Fの結果と共に示す。
【図5】図5は、コレステロール及びパラオキソナーゼ活性を示す。生理食塩水(D−4Fなし、上段パネル)又は500μgのD−4F(D−4Fあり、下段パネル)をアポEヌルマウスの胃に注入した20分後に、マウスを採血し、その血漿をFPLCによって分画し、各分画中のコレステロール(濃黒線)及びパラオキソナーゼ(PON)活性(淡黒線)を測定した。下段パネルは、D−4F投与後に、HDLの右側に現れる、粒子含有コレステロール(CCP)を有する分画を示す。下段のパネルから明らかなように、CCP分画もまた、D−4F投与後に、PON活性を有した。
【図6】図6は、脂質を解毒化し、ヒト動脈壁細胞に炎症反応(単球走化性活性)を生じないようにする未βHDL様粒子(CCP)の能力を示す。水又は500μgのD−4FをアポEヌルマウスの胃に注入した。20分後、マウスを採血し、その血漿をFPLCによって分画した。HDLを含む分画28〜30及び未βHDL様粒子(CCP)を含む分画35〜37。前記のように(Navab et al., (2001) J Lipid Res., 42: 1308-1317)、20μgの1−パルミトイル−2−アラキドニル−sn−グリセロ−3−ホスホリルコリン(PAPC)を、1μg/mlのヒドロペルオキシエイコサテトラエノール酸(HPODE)と共にヒト動脈壁細胞の共培養物に添加した。ヒトHDL(h,HDL)を350μg/mlコレステロールで共培養物に添加又は添加しなかった(非添加)、あるいは、水のみ(水コントロールCCP)もしくはD−4F(D−4F CCP)を10μg/mlコレステロールで与えた後に、水のみ(水コントロールHDL)もしくはD−4F(D−4F HDL)を50μg/ml HDL−コレステロールで又は未βHDL様粒子分画(分画35〜37)を与えたマウスからFPLC(分画28〜30)によって単離されたマウスHDLを、当該共培養物に添加した。インキュベーションの8時間後、上清を集め、標準神経プローブ・チェンバーを用いて単球走化性活性を試験した。データは、三つ組試料についての9領域における移動単球の数の平均±SDである。
【図7】図7は、N−メチル アンスラニリル−D−4Fの式を示す。4Fポリペプチドの2つの末端アミノ酸のみが見られる。
【図8A】図8Aは、D−4F及び血漿コレステロールの時間的経過を示す。LDL受容体8週齢のヌル雌性マウス(1群5匹)に、22μg/マウスのN−メチル アンスラニリル−D−4Fを胃管によって与え、次いで1、2又は8時間後に採血した。その血漿をFPLCで分画し、コレステロール及び蛍光を分析した。1時間時点を図8Aに示す。
【図8B】図8Bは、D−4F及び血漿コレステロールの時間的経過を示す。LDL受容体8週齢のヌル雌性マウス(1群5匹)に、22μg/マウスのN−メチル アンスラニリル−D−4Fを胃管によって与え、次いで1、2又は8時間後に採血した。その血漿をFPLCで分画し、コレステロール及び蛍光を分析した。2時間時点を図8Bに示す。
【図8C】図8Cは、D−4F及び血漿コレステロールの時間的経過を示す。LDL受容体8週齢のヌル雌性マウス(1群5匹)に、22μg/マウスのN−メチル アンスラニリル−D−4Fを胃管によって与え、次いで1、2又は8時間後に採血した。その血漿をFPLCで分画し、コレステロール及び蛍光を分析した。8時間時点を図8Cに示す。
【図9】図9は、HDL保護能の回復におけるスタチン及びD−4Fの相乗効果を示す。節食状態のアポEヌル雌性マウス3ケ月齢に、飲料水のみ(水)、又は1μg/mlのD−4F、もしくは0.05μg/mlのアトルバスタチン、もしくは0.05μg/mlのプラバスタチン、もしくは1μg/mlのD−4Fと0.05μg/mlのアトルバスタチン、もしくは1μg/mlのD−4Fと0.05μg/mlのプラバスタチンを含む飲料水を与えた。24時間後、マウスを採血し、そのHDLをヒト動脈壁共培養モデルで試験した。20μgの1−パルミトイル−2−アラキドニル−sn−グリセロ−3−ホスホリルコリン(PAPC)を、前記のように(Navab et al., (2001) J Lipid Res., 42: 1308-1317)、1μg/mlのヒドロペルオキシエイコサテトラエノール酸(HPODE)と共にヒト動脈壁細胞の共培養物に添加した。ヒトHDL(h,HDL)を350μg/mlコレステロールで共培養物に添加又は添加しなかった(非添加)、あるいは、飲料水のみ(水)を与えたマウスからFPLCによって単離されたマウスHDL又はX軸に示した添加物を、50μg/ml HDL−コレステロールで当該共培養物に添加した。インキュベーションの8時間後、上清を集め、標準神経プローブ・チェンバーを用いて単球走化性活性を試験した。データは、2つの別々の実験の各々から得られた三つ組試料について、9領域における移動単球の数の平均±SDである。アスタリスクは、その混合物の値と比較した個々の化合物の値間で、p<0.05レベルの統計的な有意差を示す。
【技術分野】
【0001】
本出願は、その全てを、全ての目的のためにその全体を参考として本明細書に組み込まれている、2002年10月16日に出願された第10/273,386号の一部継続である、2003年4月25日に出願された第USSN 10/423,830号の継続である。
本研究は、米国公衆衛生サービス及び国立心臓・肺・血液研究所グランツHL30568とHL34343によって支持された。米国政府は、本発明に一定の権利を有するだろう。
本発明は、アテローム性動脈硬化症の分野に関する。特に、本発明は、経口投与可能で、アテローム性動脈硬化症の1以上の症状を改善するペプチドの種類の同定に関する。
【背景技術】
【0002】
心疾患は、特に米国及び西欧諸国では、疾病及び死亡の主な原因である。種々の原因因子が、疾患に対する遺伝的素因、性別、喫煙及びダイエット等の生活スタイル要因、高血圧症、高コレステロール血症を含む高脂血症、を含む心疾患の発症に関係している。当該要因のいくつか、特に高脂血症及び高コレステロール血症(高血中コレステロール濃度)は、アテローム性動脈硬化症に関連する重要な危険因子を与える。
【0003】
コレステロールは、血中では、一般的にキロミクロン、超低密度リポ蛋白(VLDLs)、低密度リポ蛋白(LDLs)及び高密度リポ蛋白(HDLs)として知られているリポ蛋白粒子内で遊離のエステル化コレステロールとして存在する。血中の総コレステロール濃度は、(1)消化管からのコレステロールの吸収、(2)炭水化物、蛋白質、脂質及びエタノール等の食事成分からのコレステロール合成、並びに(3)組織、特に肝臓による血液からのコレステロールの除去、及び胆汁酸、ステロイドホルモン及び胆汁性コレステロールのその後の変換、によって影響を受ける。
【0004】
血中コレステロール濃度の維持は、遺伝的及び環境的要因によって影響される。遺伝的要因は、コレステロール生合成における律速酵素の濃度、肝臓中の低密度リポ蛋白に対する受容体の濃度、コレステロール/胆汁酸の変換のための律速酵素の濃度、リポ蛋白の合成及び分泌の速度、並びに性別を含む。ヒトの血中コレステロール濃度の止血に影響を与える環境的要因は、食事成分、喫煙の発生、身体活動度及び種々の物質の使用を含む。食事で変化するものは、脂質の量及び型(飽和及びポリ不飽和脂肪酸)、コレステロールの量、繊維の量及び型、並びにおそらくビタミンC及びD等のビタミンの量及びカルシウム等のミネラルの量を含む。
【0005】
疫学的研究は、高密度リポ蛋白(HDL)及びアポリポ蛋白(アポ)A−Iレベルと、アテローム動脈硬化性事象の発生との逆相関を示す(Wilson et al. (1988) 「アテローム性動脈硬化症」 8: 737-741)。粥腫発生の食事を与えたウサギへのHDL投与は、アテローム動脈硬化性の形成を抑制することが判った(Badimon et al., (1990) J. Invest. 85: 1234-1241)。
【0006】
ヒトアポA−Iは、その抗粥腫発生的性質のため、熱心な研究の題材となっている。アポA−Iを含む交換可能なアポリポ蛋白は、脂質関連ドメインを有する(Brouillette and Anantharamaiah (1995) Biochim, Biophys. Acta 1256: 103-129; Segrest et al., (1974) FEBS Lett. 38:: 247-253)。アポA−Iは、8つの縦一列に並んだ22マー配列の繰り返しを有すると仮定され、その多くは、クラスA両親媒性ヘリックス構造を形成する可能性がある(Segrest et al., (1974) FEBS Lett. 38:: 247-253)。クラスA両親媒性ヘリックスの特徴は、極性−非極性界面の正に荷電した残基及び極性表面の中心の負に荷電した残基を含む(Segrest et al., (1974) FEBS Lett. 38: 247-253; Segrest et al., (1990) 「蛋白質:構造、機能及び遺伝学」 8: 103-117)。アポA−Iは、複合体を形成し、コレステロール濃縮細胞からコレステロール流出を促進するべく、リン脂質と強い関連を示す。アテローム性動脈硬化症の1以上の症状を効果的に緩和するためのアポA−Iの血漿レベルの送達及び維持は、これまで理解しにくいとされてきた。
【発明の開示】
【0007】
本発明は、アテローム性動脈硬化症の1以上の症状を緩和する、新規なペプチド投与を提供する。特に、「D」アミノ酸残基で製剤化される場合に、クラスA両親媒性ヘリックスを含み、及び/又は保護アミノ末端及びカルボキシル末端を有するペプチドが、生物に経口投与することができ、直ちに吸収され血漿へ送達され、アテローム性動脈硬化症の1以上の症状の緩和に効果的である、ことは本発明で発見された。ある実施態様では、当該ペプチドは、全て「L」アミノ酸残基で製剤化することができ、特に、経口投与以外の経路によって投与される場合には更に効果的である。
【0008】
本発明のペプチドは、典型的には、製剤化及び未β高密度リポ蛋白様粒子の循環を促進し、及び/又は脂質輸送及び解毒作用を促進するのに効果的である。
【0009】
本明細書に記載されたペプチドは、骨粗鬆症の発現を回避し、その1以上の症状を抑制又は除去するためにも効果的である。
【0010】
当該ペプチドが、スタチンの活性を亢進(例えば相乗作用的に亢進)し、その結果、低投薬量でのスタチンの効果的使用を可能にし、及び/又は任意の与えられた投薬量で、スタチンに顕著に抗炎症作用を引き起こすために使用できることも、驚くべき発見である。
【0011】
従って、一つの実施態様では、本発明は、アテローム性動脈硬化症の1以上の症状を緩和するペプチド、ここで、当該ペプチドは、約10〜約30のアミノ酸長の範囲であり、少なくとも一つのクラスA両親媒性ヘリックスを含み;酸化剤による酸化からリン脂質を保護し;国際公開第97/36927号パンフレット及び/又は米国特許第6,037,323号明細書及び/又は米国特許第4,643,988号明細書に開示されたペプチドでない、ペプチド又はペプチドのコンカテマーを含む、を提供する。ある実施態様では、当該ペプチドは、少なくとも10アミノ酸長である。ある実施態様では、当該ペプチドは、約40以下のアミノ酸長である。ある実施態様では、当該ペプチドは、全て「L」アミノ酸を含み、一方、ある他の実施態様では、当該ペプチドは、少なくとも一つの「D」アミノ酸残基を含む。ある実施態様では、当該ペプチドを含む全ての鏡像異性アミノ酸は、「D」アミノ酸である。
【0012】
当該アミノ酸は、場合により、更に保護基(例えば、アミノ及び/又はカルボキシル末端に結合された保護基)を含む。好適な保護基は、限定されず、アセチル(Ac)、アミド、3〜20炭素原子のアルキル基、Fmoc、t−ブトキシカルボニル(Tboc)、9−フルオレンアセチル基、1−フルオレンカルボン酸基、9−フルオレンカルボン酸基、9−フルオレン−1−カルボン酸基、ベンジルオキシカルボニル、キサンチル(Xan)、トリチル(Trt)、4−メチルトリチル(Mtt)、メシチレン−2−スルホニル(Mts)、4,4−ジメトキシベンズヒドリル(Mbh)、トシル(Tos)、2,2,5,7,8−ペンタメチル クロマン−6−スルホニル(Pmc)、4−メチルベンジル(MeBzl)、4−メトキシベンジル(MeOBzl)、ベンジルオキシ(BzlO)、ベンジル(Bzl)、ベンゾイル(Bz)、3−ニトロ−2−ピリジンスルフェニル(Npys)、1−(4,4,−ジメチル−2,6−ジオキソシクロヘキシリデン)エチル(Dde)、2,6−ジクロロベンジル(2,6−DiCl−Bzl)、2−クロロベンジルオキシカルボニル(2−Cl−Z)、2−ブロモベンジルオキシカルボニル(2−Br−Z)、ベンジルオキシメチル(Bom)、シクロヘキシルオキシ(cHxO)、t−ブトキシメチル(Bum)、t−ブトキシ(tBuO)、t−ブチル(tBu)及びトリフルオロアセチル(TFA)を含む。
【0013】
ある実施態様では、当該ペプチドは、アミノ末端に結合された第一保護基及びカルボキル末端に結合された第二保護基を更に含む。当該ペプチドは、薬理的に許容される賦形剤(例えば、哺乳動物の経口投与に好適な薬理的に許容される賦形剤)と混合することができる。
【0014】
ある実施態様では、
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D−W−L−K−A−F−V−D−K−F−A−E−K−F−K−E−A−Y−(配列番号:56)、
E−K−W−K−A−V−Y−E−K−F−A−E−A−F−K−E−F−L−(配列番号:57)、
D−W−L−K−A−F−V−Y−D−K−V−F−K−L−K−E−F−F−(配列番号:58)、
E−W−L−K−A−F−V−Y−E−K−V−F−K−L−K−E−F−F−(配列番号:59)、
D−W−L−R−A−F−Y−D−K−V−A−E−K−L−K−E−A−F−(配列番号:60)、
E−W−L−R−A−F−Y−E−K−V−A−E−K−L−K−E−A−F−(配列番号:61)、
D−W−L−K−A−F−Y−D−R−V−A−E−K−L−K−E−A−F−(配列番号:62)、
E−W−L−K−A−F−Y−E−R−V−A−E−K−L−K−E−A−F−(配列番号:63)、
D−W−L−K−A−F−Y−D−K−V−A−E−R−L−K−E−A−F−(配列番号:64)、
E−W−L−K−A−F−Y−E−K−V−A−E−R−L−K−E−A−F−(配列番号:65)、
D−W−L−K−A−F−Y−D−K−V−A−E−K−L−R−E−A−F−(配列番号:66)、
E−W−L−K−A−F−Y−E−K−V−A−E−K−L−R−E−A−F−(配列番号:67)、
D−W−L−K−A−F−Y−D−R−V−A−E−R−L−K−E−A−F−(配列番号:68)、
E−W−L−K−A−F−Y−E−R−V−A−E−R−L−K−E−A−F−(配列番号:69)、
D−W−L−R−A−F−Y−D−K−V−A−E−K−L−R−E−A−F−(配列番号:70)、
E−W−L−R−A−F−Y−E−K−V−A−E−K−L−R−E−A−F−(配列番号:71)、
D−W−L−R−A−F−Y−D−R−V−A−E−K−L−K−E−A−F−(配列番号:72)、
E−W−L−R−A−F−Y−E−R−V−A−E−K−L−K−E−A−F−(配列番号:73)、
D−W−L−K−A−F−Y−D−K−V−A−E−R−L−R−E−A−F−(配列番号:74)、
E−W−L−K−A−F−Y−E−K−V−A−E−R−L−R−E−A−F−(配列番号:75)、
D−W−L−R−A−F−Y−D−K−V−A−E−R−L−K−E−A−F−(配列番号:76)、
E−W−L−R−A−F−Y−E−K−V−A−E−R−L−K−E−A−F−(配列番号:77)、
D−W−L−K−A−F−Y−D−K−V−A−E−K−L−K−E−A−F−P−D−W−K−L−A−F−Y−D−K−V−A−E−K−L−K−E−A−F(配列番号:78)、
D−W−L−K−A−F−Y−D−K−V−A−E−K−L−K−E−F−F−P−D−W−L−K−A−F−Y−D−K−V−A−E−K−L−K−E−F−F(配列番号:79)、
D−W−F−K−A−F−Y−D−K−V−A−E−K−L−K−E−A−F−P−D−W−F−K−A−F−Y−D−K−V−A−E−K−L−K−E−A−F(配列番号:80)、
D−K−L−K−A−F−Y−D−K−V−F−E−W−A−K−E−A−F−P−D−K−L−K−A−F−Y−D−K−V−F−E−W−L−K−E−A−F(配列番号:81)、
D−K−W−K−A−V−Y−D−K−F−A−E−A−F−K−E−F−L−P−D−K−W−K−A−V−Y−D−K−F−A−E−A−F−K−E−F−L(配列番号:82)、
D−W−F−K−A−F−Y−D−K−V−A−E−K−F−K−E−A−F−P−D−W−F−K−A−F−Y−D−K−V−A−E−K−F−K−E−A−F(配列番号:83)、
D−W−L−K−A−F−V−Y−D−K−V−F−K−L−K−E−F−F−P−D−W−L−K−A−F−V−Y−D−K−V−F−K−L−K−E−F−F(配列番号:84)、
D−W−L−K−A−F−Y−D−K−F−A−E−K−F−K−E−F−F−P−D−W−L−K−A−F−Y−D−K−F−A−E−K−F−K−E−F−F(配列番号:85)、
E−W−F−K−A−F−Y−E−K−V−A−E−K−F−K−E−A−F(配列番号:86)、
D−W−F−K−A−F−Y−D−K−V−A−E−K−F(配列番号:87)、
F−K−A−F−Y−D−K−V−A−E−K−F−K−E(配列番号:88)、
F−K−A−F−Y−E−K−V−A−E−K−F−K−E(配列番号:89)、
F−K−A−F−Y−D−K−V−A−E−K−F−K−E(配列番号:90)、
F−K−A−F−Y−E−K−V−A−E−K−F−K−E(配列番号:91)、
D−W−F−K−A−F−Y−D−K−V−A−E−K−F−K−E−A−F(配列番号:92)、
E−W−F−K−A−F−Y−E−K−V−A−E−K−F−K−E−A−F(配列番号:93)、
A−F−Y−D−K−V−A−E−K−F−K−E−A−F(配列番号:94)、
D−W−F−K−A−F−Y−D−K−V−A−E−K−F(配列番号:95)、
D−W−L−K−A−F−Y−D−K−V−F−E−K−F−K−E−F−F(配列番号:96)、
E−W−L−K−A−F−Y−E−K−V−F−E−K−F−K−E−F−F(配列番号:97)、
A−F−Y−D−K−V−F−E−K−F−K−E−F−F(配列番号:98)、
A−F−Y−E−K−V−F−E−K−F−K−E−F−F(配列番号:99)、
D−W−L−K−A−F−Y−D−K−V−F−E−K−F(配列番号:10)、
E−W−L−K−A−F−Y−E−K−V−F−E−K−F(配列番号:101)、
L−K−A−F−Y−D−K−V−F−E−K−F−K−E(配列番号:102)、及び
L−K−A−F−Y−E−K−V−F−E−K−F−K−E(配列番号:103)からなる群より選ばれる配列を含む。
【0015】
ある実施態様では、上記ペプチドは、全て「L」アミノ酸を含む。ある実施態様では、上記ペプチドは、少なくとも一つの「D」アミノ酸、より典型的には、多数の「D」アミノ酸を含む。ある実施態様では、鏡像異性アミノ酸の少なくとも半数は、「D」アミノ酸であり、ある実施態様では、全ての鏡像異性アミノ酸は、「D」アミノ酸である。
【0016】
ある実施態様では、当該ペプチドは、アミノ及び/又はカルボキシル末端に結合された保護基を更に含む。従って、例えば、当該ペプチドは、アミノ末端に結合された保護、ここで、当該アミノ保護基は、ベンゾイル基、アセチル、プロピオニル、カルボベンゾキシ、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、N−メチル アンスラニリル及び3〜20炭素原子のアルキルであり、及び/又はカルボキシル末端に結合された保護基、ここで、当該カルボキシル末端保護基は、アミドである、を含む。
【0017】
酸化剤は、過酸化水素、13(S)−HPODE、15(S)−HPETE、HPODE、HPETE、HODE、HETE等の物質でよい。ある実施態様では、リン脂質は、1−パルミトリル−2−アラキドニル−sn−グリセロ−3−ホスホリルコリン(PAPC)、1−ステアロイル−2−アラキドノイル−sn−グリセロ−3−ホスホリルコリン(SAPC)、1−ステアロイル−2−アラキドニル−sn−グリセロ−3−ホスホリルエタノールアミン(SAPE)からなる群より選ばれる。
【0018】
ペプチドは、物質、例えば薬学的に許容される賦形剤と混合した物質として提供することができる。ペプチドは、単位投薬製剤として提供することができる。ある実施態様では、徐放製剤(例えば「徐放」マトリックス、マイクロカプセル化等として)として提供することができる。
【0019】
別の実施態様では、本発明は、哺乳動物にスタチンの活性を亢進する方法を提供する。当該方法は、典型的には、本明細書に記載された1以上のペプチドの有効量をスタチンと共投与することを含む。ある実施態様では、当該スタチンは、セリバスタチン、アトルバスタチン、シムバスタチン、プラバスタチン、フラバスタチン、ロバスタチン、ロスバスタチン及びピタバスタチンからなる群より選ばれる1以上のスタチンを含むが、これらに限定されない。当該ペプチドは、スタチン(スタチン類)の前に、スタチン(スタチン類)と同時に又はスタチン(スタチン類)の後に投与することができる。ある実施態様では、当該ペプチド及び/又は当該スタチンの投与は、経口投与、鼻腔内投与、直腸投与、腹腔内注射、静脈内注射、皮下注射、経皮的投与、筋肉内注射等を含む経路でよいが、これらに限定されない。ある実施態様では、哺乳動物は、アテローム性動脈硬化症の1以上の症状を有すると診断された哺乳動物である。ある実施態様では、哺乳動物は、卒中又はアテローム性動脈硬化症の危険にあると診断された哺乳動物である。哺乳動物は、ヒト又はヒト以外の哺乳動物である。
【0020】
更に別の実施態様では、本発明は、哺乳動物におけるアテローム性動脈硬化症と関連する1以上の症状を緩和する方法を提供する。当該方法は、典型的には、1以上のスタチン(例えばセリバスタン、アトルバスタチン、シムバスタチン、プラバスタチン、フラバスタチン、ロバスタチン、ロスバスタチン、ピタバスタチン等)の有効量及び本明細書に記載された1以上のペプチドの有効量を哺乳動物に投与することを含む。但し、当該スタチンの有効量は、ペプチドなしに投与されたスタチンの有効量よりも低い。ペプチド(ペプチド類)は、スタチン(スタチン類)の前に、スタチン(スタチン類)と同時に、又はスタチン(スタチン類)の後に投与することができる。ペプチド及び/又はスタチンは、単位投薬製剤として投与することができる。ペプチド(ペプチド類)及び/又はスタチン(スタチン類)は、経口投与、鼻腔内投与、直腸投与、腹腔内注射、静脈内注射、皮下注射、経皮的投与、吸入投与及び筋肉内注射を含む経路によって投与することができるが、これらに限定されない。ある実施態様では、哺乳動物は、アテローム性動脈硬化症の1以上の症状を有し、及び/又は卒中及び/又はアテローム性動脈硬化症の危険にあると診断されたヒト又はヒト以外の哺乳動物である。
【0021】
本発明はまた、物質を提供する。当該製剤は、典型的には、薬学的に許容される賦形剤及び本明細書に記載された1以上のペプチドを含む。別の物質は、典型的には、1以上のスタチン(例えばセリバスタン、アトルバスタチン、シムバスタチン、プラバスタチン、フラバスタチン、ロバスタチン、ロスバスタチン、ピタバスタチン等)及び本明細書に記載された1以上のペプチドを含む。ある実施態様では、当該ペプチド及び当該スタチンは、有効投薬量で存在する。ある実施態様では、当該スタチンの有効量は、ペプチド(ペプチド類)なしで投与されたスタチンの有効量よりも低く、及び/又は当該ペプチド(ペプチド類)の有効量は、スタチン(スタチン類)なしで投与されたペプチド(ペプチド類)の有効量よりも低い。種々の実施態様において、スタチン(スタチン類)及び/又はペプチド(ペプチド類)は、徐放製剤(例えば徐放マトリックス、マイクロカプセル化製剤等)に存在する。物質は、単位投薬製剤、例えば経口投与でよい。ある実施態様では、当該製剤は、経口投与、鼻腔内投与、直腸投与、腹腔内注射、静脈内注射、皮下注射、経皮的投与、吸入投与及び筋肉内注射からなる群より選ばれる経路による投与のために調合する。当該製剤は、場合により、1以上のリン脂質(例えばUSSN 09,994,227号に記載されたリン脂質)を更に含んでもよい。
【0022】
別の実施態様では、本発明は、哺乳動物における骨粗鬆症の1以上の症状を軽減又は抑制する方法を提供する。当該方法は、典型的には、本明細書に記載された1以上のペプチドの哺乳動物への投与を含み、ここで、当該ペプチドは、骨粗鬆症の1以上の症状を軽減又は除去するために十分な濃度で投与する。ある実施態様では、当該ペプチドは、骨の脱石灰を低減又は除去するために十分な濃度で投与する。ある実施態様では、当該ペプチドは、骨の再脱石灰を誘導するために十分な濃度で投与する。当該ペプチド(ペプチド類)は、薬理的に許容される賦形剤、例えば本明細書に記載された賦形剤と混合することができる。
【0023】
ある実施態様では、本発明の方法及び/又はペプチドは、国際公開第97/36927号パンフレット及び/又は米国特許第6,037,323号明細書及び/又は米国特許第4,634,988号明細書及び/又はGarber et al., (1992) 「アテローム性動脈硬化症及び血栓症」, 12: 886-894に開示された任意の1以上のペプチドを除く。本発明のある実施態様では、Lアミノ酸である全ての鏡像異性アミノ酸で合成された又はDアミノ酸で合成された、米国特許第4,634,988号明細書及び/又はGarber et al., (1992)に開示された任意の1以上のペプチドであって、当該ペプチドが保護基であるものを除く。
【0024】
ある実施態様では、本発明は、式:A1−B1−B2−C1−D−B3−B4−A2−C2−B5−B6−A3−C3−B7−C4−A4−B8−B9(配列番号:87)[式中、A1、A2、A3及びA4は、独立してアスパラギン酸もしくはグルタミン酸又は相同体もしくはそのアナログであり;B1、B2、B3、B4、B5、B6、B7、B8及びB9は、独立してトリプトファン、フェニルアラニン、アラニン、ロイシン、チロシン、イソロイシン、バリンもしくはα−ナフチルアラニン又は相同体もしくはそのアナログであり;C1、C2、C3及びC4は、独立してリジン又はアルギニンであり、Dはセリン、スレオニン、アラニン、グリシン、ヒスチジン又は相同体もしくはそのアナログである、但し、A1及びA2はアスパラギン酸であり、A3及びA4はグルタミン酸であり、B2及びB9はロイシンであり、B3及びB7はフェニルアラニンであり、B4はチロシンであり、B5はバリンであり、B6、B8及びDはアラニンであり、C1、C2、C3及びC4はリジンであり、B1はトリプトファンでない。]
で表されるペプチドを除く。
【0025】
ある実施態様では、本発明は、国際公開第97/36927号パンフレットに記載の1以上のペプチド及び/又はそのD変異体を除く。特別の実施態様では、国際公開第97/36927号パンフレットに記載されている、の次の1以上のペプチド:アポ蛋白質A、アポ蛋白質A−1、アポ蛋白質A−2、アポ蛋白質A4、アポ蛋白質B、アポ蛋白質B−48、アポ蛋白質b−100、アポ蛋白質C、アポ蛋白質C−1、アポ蛋白質C−2、アポ蛋白質C−3、アポ蛋白質D、アポ蛋白質Eを除く。
【0026】
ある実施態様ではまた、米国特許第6,037,323号明細書に開示された任意の1以上のペプチド及び/又はそのD変異体を除く。
【0027】
特別の実施態様では、
(i)脂質の存在下で両親媒性α−へリックスを形成し、式(I):Z1−X1−X2−X3−X4−X5−X6−X7−X8−X9−X10−X11−X12−X13−X14−X15−X16−X17−X18−Z2
[式中、X1は、プロリン(P)、アラニン(A)、グリシン(G)、アスパラギン(N)、グルタミン酸(Q)又はD−プロリン(p)であり;X2は脂肪族アミノ酸であり;X3はロイシン(L)であり;X4は酸性アミノ酸であり;X5はロイシン(L)又はフェニルアラン(F)であり;X6はロイシン(L)又はフェニルアラニン(F)であり;X7は塩基性アミノ酸であり;X8は酸性アミノ酸であり;X9はロイシン(L)又はトリプトファン(W)であり;X10はロイシン(L)又はトリプトファン(W)であり;X11は酸性アミノ酸又はアスパラギン(N)であり;X12は酸性アミノ酸であり;X13はロイシン(L)、トリプトファン(W)又はフェニルアラニン(F)であり;X14は塩基性アミノ酸又はロイシン(L)であり;X15はグルタミン酸(Q)又はアスパラギン(N)であり;X16は塩基性アミノ酸であり;X17はロイシン(L)であり;X18は塩基性アミノ酸であり;Z1はH2N−又はRC(O)NH−であり;Z2は−C(O)NRR、−C(O)ORもしくは−C(O)OH又はそれらの塩である。ここで、各Rは独立して、水素原子、(C1−C6)アルキル、(C1−C6)アルケニル、(C1−C6)アルキニル、(C5−C20)アリール、(C6−C26)アルカアリール、5〜20員ヘテロアリール又は6〜26員アルクヘテロアリール、又は残基1〜7間の1以上の結合が、独立して置換アミド、アミドの等量式もしくは模倣アミドである、1〜4残基ペプチド又はペプチドアナログ;残基X1からX18間の各「−」は、独立してアミド結合、置換アミド結合、アミドの等量式又は模倣アミドを指す。]
を含む18〜22残基ペプチド又はペプチドアナログペプチド、あるいは
(ii)X1、X2、X3、X4、X5、X6、X7、X8、X9、X10、X11、X12、X13、X14、X15、X16、X17又はX18の少なくとも一つの残基が、別の残基及び/又はそのD変異体で保存的に置換されている式(I)の別の形態、
を含むアポA−Iアゴニスト化合物を除く。
【0028】
定義
「ポリペプチド」、「ペプチド」及び「蛋白質」の語は、本明細書では、アミノ酸残基のポリマーを言うために交換して使用することができる。当該語は、1以上のアミノ酸残基が、対応する天然由来のアミノ酸及び天然由来アミノ酸ポリマーの人工化学的アナログであるアミノ酸ポリマーに適用する。
【0029】
「クラスA両親媒性ヘリックス」の語は、極性−非極性界面に存在する正に荷電した残基及び極性表面の中心に存在する負に荷電した残基を有する極性及び非極性表面の分離を生じるα−ヘリックスを形成する蛋白質構造を言う(例えばSegrest et al., (1990) 「蛋白質:構造、機能及び遺伝学」 8: 103-117を参照されたい)。
【0030】
「アテローム性動脈硬化症の1以上の症状」に関して使用する場合、「緩和すること」の語は、アテローム性動脈硬化症及び/又は関連する病状に特徴的な1以上の症状の低減、回避又は除去を言う。かかる低減は、酸化リン脂質の低減又は除去、アテローム動脈硬化性班の形成及び破裂、心臓発作、狭心症又は卒中等の臨床的事象の低減、高血圧症の減少、炎症性蛋白質生合成の減少、血漿コレステロールの低減等を含が、これらに限定されない。「アテローム性動脈硬化症の1以上の症状を緩和すること」とはまた、アテローム性動脈硬化症によって影響される血管床への血流を改善することを言う。
【0031】
「鏡像異性アミノ酸」の語は、互いに重ね合わせられない鏡像関係にある少なくとも2種の型で存在するアミノ酸を言う。ほとんどのアミノ酸(グリシンを除いて)は、鏡像異性であり、いわゆるL型(Lアミノ酸)又はD型(Dアミノ酸)で存在する。ほとんどの天然由来のアミノ酸は、「L」アミノ酸である。「Dアミノ酸」及び「Lアミノ酸」の語は、直線偏光の特定方向の回転よりも、アミノ酸の絶対配置を言うために使用する。本明細書での使用は、当業者による標準的な使用と一致している。
【0032】
「保護基」の語は、それがアミノ酸の官能基(例えば側鎖、α−アミノ基、α−カルボキシル基等)に結合されている場合に、当該官能基の性質を阻止又は隠す化学基を言う。好ましいアミノ末端保護基は、脂肪酸のアルキル鎖、プロピオニル、ホルミルその他を含むが、これらに限定されない。好ましいカルボキシル末端保護基は、アミド又はエステルを形成する基を含むが、これらに限定されない。
【0033】
「酸化剤による酸化からリン脂質を保護する」の語句は、リン脂質が酸化剤(例えば過酸化水素、13−(S)−HPODE、15−(S)−HPETE、HPODE、HPETE、HODE、HETE等)と接触する場合に、当該リン脂質の酸化速度(又は生成した酸化リン脂質の量)を減じる能力を言う。
【0034】
「低密度リポ蛋白」又は「LDL」の語は、当業者の一般的な使用に従って定義される。一般的に、LDLは、超遠心によって単離される場合に、d:1.019〜d:1.063の密度範囲に見られる脂質−蛋白質複合体を言う。
【0035】
「高密度リポ蛋白」又は「HDL」の語は、当業者の一般的な使用に従って定義される。一般的に、HDLは、超遠心によって単離される場合に、d:1.063〜d:1.21の密度範囲に見られる脂質−蛋白質複合体を言う。
【0036】
「群I HDL」の語は、酸化脂質(例えば低密度リポ蛋白での)を減じ、又は酸化剤による酸化から酸化脂質を保護する高密度リポ蛋白又はその成分(例えばアポA−I、パラオキソナーゼ、血小板活性化因子アセチルヒドロラーゼ等)を言う。
【0037】
「群II HDL」の語は、酸化から脂質の保護又は酸化脂質の修繕(例えば削減)に若干の活性を示すかあるいは全く活性を示さないHDLを言う。
【0038】
「HDL」成分の語は、高密度リポ蛋白(HDL)を含む成分(例えば分子)を言う。酸化から脂質を保護し、又は修繕する(例えば酸化脂質を削減する)HDL試験は、HDL(例えばアポA−I、パラオキソナーゼ、血小板活性化因子アセチルヒドロラーゼ等)の成分の試験をも含む。
【0039】
「ヒトアポA−Iペプチド」の語は、完全長ヒトA−Iペプチド、又はクラスA両親媒性ヘリックスを含むその断片もしくはドメインを言う。
【0040】
本明細書で使用する「単球反応」とは、アテローム性動脈硬化症班と関連する「炎症性応答」に特徴的な単球活性を言う。単球反応は、血管内壁(例えば血管内皮細胞)の細胞への単球接着及び/又は内皮間隙への走化性、及び/又は単球のマクロファージへの分化によって特徴付けられる。
【0041】
「変化なし」の語は、酸化リン脂質の量に言及する場合に、検出可能な変化がないこと、より好ましくは統計的に重要な変化がないこと(例えば少なくとも85%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも98%又は99%信頼水準で)を言う。検出可能な変化がないことは、酸化リン脂質レベルが変化する試験にも言及することができるが、それは、本明細書に記載された蛋白質(蛋白質類)の不在とは同程度ではなく、又は他の正のコントロールもしくは負のコントロールを参照した場合である。
【0042】
本明細書では次の略語を使用する:PAPC:L−α−1−パルミトイル−2−アラキドノイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン;POVPC:1−パルミトイル−2−(5−オキソバレリル)−sn−グリセロ−3−ホスホコリン;PGPC:1−パルミトイル−2−グルタリル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン;PEIPC:1−パルミトイル−2−(5,6−エポキシイソプロスタンE2)−sn−グリセロ−3−ホスホコリン;ChC18:2:コレステリルリノレエート;ChC18:2−OOH:コレステリル リノレエート ヒドロパーオキサイド;DMPC:1,2−ジテトラデカノイル−rac−グリセロール−3−ホスホコリン;PON:パラオキソナーゼ;HPF:標準化強力分野;PAPC:L−α−1−パルミトイル−2−アラキドノイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン;POVAC:1−パルミトイル−2−(5−オキソバレリル)−sn−グリセロ−3−ホスホコリン;PGPC:1−パルミトイル−2−グルタリル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン;PEIPC:1−パルミトイル−2−(5,6−エポキシイソプロスタンE2)−sn−グリセロ−3−ホスホコリン;BL/6:C57BL/6J;C3H:C3H/HeJ。
【0043】
「保存的置換」の語は、蛋白質又はペプチドに関して、分子の活性(特異性(例えばリポ蛋白に対する)又は結合アフィニティー(例えば脂質もしくはリポ蛋白質に対して))を実質的に変化させないアミノ酸を示すために使用する。典型的には、保存的アミノ酸置換は、1アミノ酸を同様な化学的性質(例えば電荷又は疎水性)を有する別のアミノ酸と置換することを含む。次の6群は、各々、互いに典型的な保存的置換であるアミノ酸を含む。1)アラニン(A)、セリン(S)、スレオニン(T);2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E);3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q);4)アルギニン(R)、リジン(K);5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V);及び6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W)。
【0044】
2以上の核酸又はポリペプチド配列の文脈において、「同一な」又は「同一性」の割合の語は、比較し、最大に一致させるために一列に並べた場合に、次の配列比較アルゴリズムの一つを用いて測定されたもの又は視覚検査によるものと同一である、あるいは同一である特定の割合のアミノ酸残基又はヌクレオチドを有する2以上の配列又はサブ配列を言う。本発明のペプチドに関し、配列同一性は、ペプチドの完全長に渡って測定する。
【0045】
配列比較に関し、典型的には、一つの配列は、それと試験配列を比較する参照配列として働く。配列比較アルゴリズムを用いる場合、試験配列及び参照配列をコンピューターにインプットし、必要ならば、配列座標を設計し、配列アルゴリズムプログラムパラメーターを設計する。次いで、配列比較アルゴリズムは、設計したプログラムパラメーターに基いて、参照配列に対する試験配列の配列同一性率を計算する。
【0046】
比較のための配列の最適アライメントは、例えば、Smith & Waterman, Adv, Appl. Math. 2: 482 (1981)の局所ホモロジーアルゴリズム、Needleman & Wunsch, J. Mol. Biol. 48: 443 (1970)のホモロジーアライメント アルゴリズム、Pearson & Lipman (1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85: 2444の同様な方法の検索、これらのアルゴリズムの計算実行(GAP, BESTFIT, FASTA, and TFASTA in the Wisconsin Genetics Software Package, Genetics Computer Group, 575 Science Dr., Madison, WI)、又は目視検査(一般的にはAusubel et al., supra)によって行うことができる。
【0047】
有用なアルゴリズムの一例は、PILEUPである。PILEUPは、進行性(progressive)ペアワイズアライメントを用いて一群の関連アライメントから複数の配列アライメントをつくり、関係及び配列同一性率を示す。それはまた、アライメントをつくるために使用される集積関係を示す系図又はデンドグラムをプロットする。PILEUPは、Feng & Doolittle (1987) J. Mol. Evol. 36: 351-360進行性アライメント法の簡素化を使用する。使用される方法は、Higgins & Sharp (1989) CABIOS 5: 151-153に記載の方法に類似している。プログラムは、300配列まで並べることができ、各配列は最大の5,000ヌクレオチド長又はアミノ酸長である。マルチプルアライメント法は、2個のアライメント配列のクラスターをつくる、2個の最類似配列のペアワイズアライメントで開始する。次いで、当該クラスターは、次の最関連配列又はアライメント配列のクラスターに整列する。2個の配列クラスターは、2個の個々の配列のペアワイズアライメントの簡便な伸張によって整列する。最終アライメント列は、一連の進行性ペアワイズ配列によって得られる。プログラムは、配列比較領域のための特定の配列及びそのアミノ酸又はヌクレオチド軸を設計することによって、またプログラムパラメーターを設計することによって実行する。例えば、対照配列は、他の試験配列と比較して、次のパラメーター:デフォルトギャップウェイト(3.00)、デフォルトギャップ長加重(0.10)及び加重エンドギャップを用いる配列同一性率を決定することができる。
【0048】
配列同一性率及び配列類似性を決定するために好適な別のアルゴリズムの例は、BLASTアルゴリズムである。Altschul et al. (1990) J. Mol. Biol. 215: 403-410に記載されたBALST解析を実行するためのソフトウェアは、国立バイオテクノロジー情報センターを通して公に入手できる。当該アルゴリズムは、データベース配列に同一の長さの言語を並べる場合に、正の数の閾値スコアのいくつかと一致又はこれを満足する問い合わせ配列中の長さWの単語を同定することによって、高スコア配列ペア(HSPs)をまず同定することを含む。Tは、隣接言語スコア閾値(Altschul et al., supra)と言われる。当該初期隣接言語ヒットは、それを含む長HSPsを見つけるために初期検索の種付けとして働く。当該言語ヒットは、次いで、累積アライメントスコアを増加できる限り、各配列に沿って両方向に伸張する。累積スコアは、ヌクレオチド配列のために、パラメーターM(一組のマッチング残基のリワードスコア;常に>0)及びN(ミスマッチング残基のペナルティースコア;常に<0)を用いて計算する。アミノ酸配列に関し、スコアマトリックスは、累積スコアを計算するために使用する。累積アライメントスコアが、その最高獲得値から量Xだけ減少し;1以上の負スコア残基アライメントの蓄積によって、累積スコアがゼロ以下に下がり;又は、いずれかの配列の末端に届く場合に、各方向での言語ヒットの伸張は停止する。BLASTアルゴリズムパラメーターW、T及びXは、アライメントの感度及びスピードを決定する。BLASTNプログラム(ヌクレオチド配列のための)は、デフォルトとして、言語長(W)11、期待値(E)10、Mが5、Nが−4及び両ストレンドの比較を使用する。アミノ酸配列としては、BLASTPプログラムは、デフォルトとして、言語長(W)3、期待値(E)10及びBLOSUM62スコアマトリックスを使用する(Henikoff & Henikoff (1989) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89: 10915を参照されたい)。
【0049】
配列同一性率の計算に加えて、BLASTアルゴリズムはまた、2配列間の類似性の統計的解析を実行する(例えば、Karlin & Altschul (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90: 16873-5787を参照されたい)。BLASTアルゴリズムによって提供される類似性の一つの測定は、2ヌクレオチド又はアミノ酸配列間の一致が偶然に起こる確率を示す最小合計確率(P(N))である。例えば、試験核酸の対照核酸との比較における最小合計確率が、約0.1未満、より好ましくは約0.01未満及び最も好ましくは約0.001未満であるならば、核酸は、参照配列に類似すると考えられる。
【0050】
「D−18ペプチド」の語は、全ての鏡像異性アミノ酸がD型アミノ酸である、配列:D−W−L−K−A−F−Y−D−K−V−A−E−K−L−K−E−A−F(配列番号:1)を有するペプチドを言う。
【0051】
「共投与すること」又は「同時投与」の語は、例えば本発明のペプチド及び他の活性物質(例えばスタチン)に関して使用する場合に、いずれも、同時に生理的効果を達成することができるようなペプチド及び活性物質の投与を言う。しかしながら、2つの物質は、同時に投与する必要はない。ある実施態様では、一つの物質の投与は、他の物質に先行することができるが、かかる共投与は、典型的には、両剤が、任意の与えられた投薬量に対してその最高濃度(例えば20%以上、好ましくは30%又は40%以上、より好ましくは50%又は60%以上、最も好ましくは70%又は80%又は90%以上)を有する有意な割合で、身体中(例えば血漿中)に同時に存在する結果となる。
【0052】
「解毒する」の語は、脂質、LDL又はHDLについて使用する場合に、酸化されている脂質及び/又は酸化された脂質のいくつかもしくは全ての除去を言う。従って、例えば、HPODE及び/又はHPETE(いずれも脂肪酸に対するヒドロペルオキシド)の全てもしくはいくつかの取り込みは、当該過酸化物のLDLsへの進入を回避し又は軽減し、その結果、LDL酸化を回避し又は軽減するだろう。
【0053】
「未β高密度リポ蛋白様粒子」の語は、典型的には、小さく、かつ多数のHDL粒子中の脂質:蛋白質の比に比べて相対的に脂質比が低い、アポA−Iをも含む粒子含有コレステロールを言う。血漿がFPLCによって分離される場合に、当該「未β高密度リポ蛋白様粒子」は、本明細書に示した図5及び8から明らかなように、FPLCクロマトグラムにおいて、主要なHDLピーク中にある粒子よりも小さな粒子を含むFPLC分画に見られ、HDLの右側に位置する。
【0054】
「逆脂質輸送及び解毒化」の語句は、動脈等の組織から、コレステロールを含む脂質、酸化ステロールを含む他のステロール、リン脂質、酸化剤及び酸化リン脂質の除去、並びに、抹消組織から、肝臓による胆汁の排出及び腎臓による尿素の排出等、それらが解毒され、排出される器官への輸送を言う。解毒化はまた、本明細書で説明した酸化リン脂質の形成を回避し及び/又は破壊することを言う。
【0055】
本明細書で使用する「生物試料」の語は、生きている生物又は死亡した生物から得られた任意の試料を言う。生物試料の例は、生物(例えばヒト又はヒト以外の哺乳動物)から採取した体液、組織片、細胞及び細胞株を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0056】
本発明は、クラスA両親媒性ヘリックスモチーフに模倣するように設計された合成ペプチド(Segrest et al., (1990) 「蛋白質:構造、機能及び遺伝学」 8: 103-117)が、リン脂質と関連し、ヒトアポA−Iに類似した多くの生物学的性質を呈することができる、という発見に関する。特に、かかるペプチドがDアミノ酸を用いて式で表される場合に、当該ペプチドが劇的に高い血清半減期を示し、特にアミノ及び/又はカルボキシル末端が保護されている場合に、当該ペプチドが経口でも投与することができる、というのが本発明の発見である。
【0057】
当該ペプチドが、未−β高密度リポ蛋白様粒子の形成及び循環を刺激することができることも驚くべき発見である。更に、当該ペプチドは、スタチンを著しく低用量で投与することができ、又は任意の与えられた用量で著しくより抗炎症性にすることができる、スタチン効果を亢進し/相乗作用を与えることができる。本明細書に記載された当該ペプチドは骨粗鬆症の1以上の症状を抑制及び/又は回避及び/又は治療することができることも発見された。
【0058】
更に、かかるD−型ペプチドが対応するL−型ペプチドの生物活性を有することは驚くべき発見である。かかるD−型ペプチドを用いるin vivoでの動物研究は、効果的な経口送達、高い血清半減期及びアテローム性動脈硬化症の1以上の症状を軽減し又は回避/抑制する能力を示した。
【0059】
I.未β高密度リポ蛋白様粒子の形成及び循環の刺激
逆コレステロール輸送は、アテローム性動脈硬化症にかかりやすくする脂質の蓄積を回避する点で重要であると考えられている(Ahah et al., (2001) Circulation, 103: 3047-3050)。重要な脂質はコレステロールであると多くの人は考えている。我々の研究室では、鍵脂質は、アテローム性動脈硬化症において炎症応答を開始する酸化リン脂質であることが判っている(Navab et al., (2001) Arterioscler Thromb Vasc Biol., 21 (4): 481-488; Van Lenten et al., (001) Trends Cardiovasc Med, 11: 155-161; Navab M et al., (2001) Circulation, 104: 2386-2387)。
【0060】
当該炎症応答は、心臓病及び卒中につながる班糜爛又は決裂の原因ともなり得る。HDL−コレステロールレベルは、心臓病及び卒中の危険と逆相関する(Downs et al., (1998) JAMA 279: 1615-1622; Gordon et al., (1977) Am J Med., 62: 707-714; Castelli e al., (1986) JAMA, 256: 2835-2838)。
【0061】
未βHDLは、一般的に、逆コレステロール輸送を促進する最も活性なHDL分画であると考えられる(例えば、動脈等の抹消組織からコレステロールを取り出し、それを胆汁として排出するために肝臓へ運ぶ;Fieldingn and Fielding (2001) Biochim Biophys Acta, 1533 (3): 175-189を参照されたい)。しかしながら、未βHDLのレベルは、未βHDLの未熟α−移動HDLの循環故障、例えばLCAT欠乏又は阻害のために、増加するだろう(O’Connor et al., (1998) J Lipid Res, 39: 670-678)。高レベルの未βHDLは、冠動脈疾患の患者で報告されている(Miida et al. (1996) Clin Chem., 42: 1992-1995)。
【0062】
更に、男性は、女性よりも、高レベルの未βHDLを有することが判っているが、冠動脈疾患の危険は、女性よりも高い(O’Connor et al., (1998) J Lipid Res, 39: 670-678)。従って、未βHDLの静的測定は、冠動脈疾患の危険を必ずしも予測するものではない。しかしながら、未βHDLを経るコレステロールの未熟HDLへの循環は、アテローム性動脈硬化症から保護すると考えられている(Fieldingn and Fielding (2001) Biochim Biophys Acta, 1533 (3): 175-189)。更に、我々は、当該経路を経る動脈壁細胞からの酸化脂質の除去は、LDL酸化から保護する、ことを証明した。
【0063】
本明細書の実施例1で記載したように、経口投与する場合に、比較的低吸収速度であるにもかかわらず、本発明のペプチド(例えばD−4F)は高活性である。
【0064】
D−4Fを経口投与されたアポEヌルマウスの研究では、我々は、腸からの吸収後20分で、D−4Fは、比較的高含量のアポA−I及びパラオキソナーゼを含む小未βHDL様粒子を形成する。実際、当該未βHDL様粒子中のアポA−I量をウェスタンブロッティングから推定し、またアポA−I量を当該粒子中のD−4F量(放射活性又はLC−MRMによって測定された)と比較することは、D−4Fが腸から吸収されるので、それが、当該未βHDL様粒子の形成を引き起こす触媒として作用することを示唆する。当該少量の腸から得られたD−4Fは、D−4F量よりも高いオーダーであるアポA−I、パラオキソナーゼ及びコレステロールの量を当該粒子中に補充しているように考えられる。
【0065】
従って、吸収後、D−4Fは、急速に比較的大量のアポA−I及びパラオキソナーゼを補充して、逆コレステロール輸送を促進し、生物的に活性な酸化脂質を破壊するための最も可能性のある粒子である未βHDL様粒子を形成する。我々は、当該粒子の形成及びそれらの次の急速な未熟HDLへの取り込みは、我々が、ウェスタン節食状態のLDL受容体ヌルマウス及び血漿コレステロール又はHDL−コレステロールでの変化に無関係な節食状態のアポEヌルマウスで観察したアテローム性動脈硬化症の劇的な減少を説明する、と考えている。
【0066】
従って、一つの実施態様では、本発明は、本明細書に記載した1以上のペプチドの投与によって、未β高密度リポ蛋白様粒子の形成及び循環を刺激する方法を提供する。その結、当該ペプチドは、脂質輸送及び解毒を促進することができる。
【0067】
II.スタチン活性に相乗作用の付与
実施例2で証明したように、D−4Fの低用量(1μg/ml)をアポEヌルマウスの飲料水に24時間添加しても、HDL機能を著しく改善しなかった(例えば図9を参照されたい)。図9はまた、0.05mg/mlのアトルバスタチン又はプラバスタチンのみをアポEヌルマウスの飲料水に24時間添加しても、HDL機能を著しく改善しなかったことを示す。しかしながら、D−4Fの1μg/mlを、0.05mg/mlのアトルバスタチン又はプラバスタチンと共に飲料水に添加した場合には、HDL機能に著しい改善が認められた(例えば図9を参照されたい)。実際に、前炎症性アポEヌルHDLは、350μg/mlの標準的ヒトHDL(h,HDL)と同程度の抗炎症性を示した。
【0068】
従って、それ自身では、HDL機能に全く影響を与えないD−4Fのみ又はスタチンのみの投薬量は、一緒に与えた場合に、相乗的に作用した。D−4F及びスタチンをアポEヌルマウスに一緒に与えた場合、50μg/mlのコレステロールでの当該前炎症性HDLは、ヒト動脈壁細胞の共培養物中におけるHPODEのPAPC酸化作用によって誘導される炎症応答を回避する点で、350μg/mlのHDL−コレステロールでの標準的ヒトHDLと同程度に効果的であった。
【0069】
従って、ある実施態様では、本発明は、スタチン活性を亢進するための方法を提供する。当該方法は、一般的に、本明細書に記載された1以上のペプチドを1以上のスタチンと投与することを含む。本明細書に記載されたD−4F又は他の類似のペプチドは、アテローム性動脈硬化症を緩和するために、スタチンと経口投与されるペプチド(ペプチド類)との相乗効果を達成する。当該文脈では、スタチンは、著しく低用量で投与することができ、それによって、高用量のスタチン使用に関連する種々の有害な副作用(例えば筋肉疲労)を回避することができ、及び/又は任意の与えられた用量でのスタチンの抗炎症特性は著しく亢進される。
【0070】
III.骨粗鬆症の抑制/治療
冠動脈の石灰化及び骨粗鬆症は、同一の患者においてしばしば共存する(Ouchi et al., (1993) Ann NY Acad Sci., 676: 297-307; Boukhris and Becker (1972) JAMA, 219: 1307-1311; Banks et al., (1994) Eur J Clin Invest., 24: 813-817; Laroche et al., (1994) Clin Rheumatol., 13:611-614; Broulik and Kapitola (1993) Endocr Regul., 27: 57-60; Frye et al., (1992) Bone Mine., 19: 185-194; Barengolts et al. (1998) Calcif Tissue Int., 62: 209-213; Burnett and Vasikaran (2002) Ann Clin Biochem., 39: 203-210)。
【0071】
Parhami et al. (Parhami et al. (1997) Arterioscl Thromb Vasc Biol., 17: 680-687)は、非酸化リン脂質(PAPC)又はイソプロスタン 8−イソ プロスタグランジン F2ではなく、緩やかな酸化LDL(MM−LDL)及びMM−LDL(すなわち、酸化1−パルミトイル−2−アラキドノイル−sn−グリセロ−3−ホスホリルコリン(Ox−PAPC))中の生物学的に活性な脂質、並びにイソプロスタン、8−イソ プロスタグランジン E2が、アルカリホスファターゼ活性及びin vivoで冠動脈細胞(CVCs)を石灰化する造骨細胞の分化を誘導したが、MC3T3−E1骨細胞の分化を抑制しなかったことを証明した。
【0072】
骨単位は、その骨単位が、マトリックス及び繊維芽細胞様細胞を含む内皮間隙によって、動脈壁の平滑筋細胞に位置アナログを占める前骨芽細胞及び骨芽細胞によって交互に囲まれている内皮細胞株光束の中心に位置している動脈壁に類似する(Id.)。小柱骨芽細胞はまた、骨髄内皮間隙との境界面となる(Id.)。Parhami et al.は、リポ蛋白が骨動脈の内皮細胞を越えて、リポ蛋白冠動脈中で酸化を受ける内皮間隙中に沈着すると仮定している(Id.)。彼らのin vitroのデータに基いて、彼らは、骨動脈の内皮細胞間隙及び骨髄でのLDL酸化が、骨粗鬆症の原因となる低骨芽細胞分化と石化を導くことを予測している(Id.)。彼らの仮説は、更に、LDLレベルが、冠動脈の石灰化と関連するように、骨粗鬆症と積極的に関連するが(Pohle et al. (2001) Circulation, 104: 1927-1932)、HDLレベルは骨粗鬆症とはほとんど関係しないと予測している(Parhami et al. (1997) Arterioscl Thromb Vasc Biol., 17: 680-687)。
【0073】
In vitroでは、骨髄間質性(marrow stromal)細胞株M2−10B4の骨芽細胞分化は、MM−LDLによって抑制されるが、天然LDLによっては抑制されなかった(Parhami et al. (1997) J. Bone Miner Res., 14: 2067-2078)。アテローム性動脈硬化症にかかりやすい低脂肪節食状態のC57BL6/6(BL6)マウス由来の骨髄間質性(marrow stromal)細胞を培養した場合には、強力に骨形成分化した(Id.)。反対に、高脂肪の粥腫発生性節食を与えたマウスから採取した骨髄間質性(marrow stromal)細胞を培養した場合には、骨形成分化はしなかった(Id.)。当該観察は、骨粗鬆症の罹患において骨髄間質性(marrow stromal)細胞の減少骨形成可能性を説明することができるので(Nuttall and Gimble (2000) Bone, 27: 177-184)、特に重要である。In vivoでは、骨形成可能性の減少には、骨粗鬆症性骨における脂肪生成の増加を伴っている(Id.)。
【0074】
アポEヌルマウスの飲料水に6週間、D−4Fを添加すると、小柱骨密度が劇的に増加することが判った(実施例3)。
【0075】
当該データは、骨粗鬆症が「骨のアテローム性動脈硬化症」とみなされることを示している。これは、酸化脂質の作用の結果であると考えられる。HDLは、当該酸化脂質を破壊し、骨形成分化を促進する。当該データは、実施例3では、本発明のペプチド(ペプチド類)の哺乳動物への投与(例えばアポEヌルマウスの飲料水中に)がまさに数週間の事態で劇的に小柱骨を増やすことを示した。
【0076】
このことは、本明細書に記載のペプチドが、アテローム性動脈硬化症の1以上の症状の緩和(例えば脱石灰化の抑制のために)又は骨粗鬆症性骨の再石灰化の誘導に有用であることを示している。当該ペプチドは、哺乳動物(たとえば骨粗鬆症の危険にある患者)の骨粗鬆症の症状(症状類)の開始を回避する予防薬として有用である。
【0077】
IV.アテローム性動脈硬化症の症状の軽減
我々は、標準的HDLが緩やかな酸化LDLの形成において、3つのステップを抑制することを発見した。当該研究(例えば、2000年3月31日に出願された懸案出願のUSSN 09/541,468を参照されたい)では、ヒトLDLをin vitroでアポA−I又はアポA−I模倣ペプチド(37pA)で処理すると、HPODE及びHPETEを含むLDLから種付け分子を除けることを証明した。当該種付け分子は、LDLを酸化することができるヒト動脈壁細胞の共培養物のために、及び当該LDLが、動脈壁細胞を誘導して単球走化性活性を発現させるために必要であった。我々はまた、アポA−Iをマウスに注射又はヒトに注入した後、アポA−Iの注射/注入後のマウス又はヒトボランティアから単離されたLDLが、ヒト動脈壁細胞による酸化に対抗性であり、動脈壁細胞共培養物中の単球走化性活性を誘導しなかったことを証明した。
【0078】
本発明のDペプチドの保護的機能は、親出願(2000年8月24日に出願された第09/645,454号、2001年6月29日に出願された第09/896,841号2001年6月29日に出願された、及び2001年6月29日に出願された国際公開第02/15923号パンフレット(PCT/US01/26497)に説明があり、例えば国際公開第02/15923号パンフレットの図1〜5を参照されたい。国際公開第02/15923号パンフレットの図1のパネルA、B、C及びDは、14C−D−5Fとアポエヌルマウス中の血液成分との関連を示している。アテローム節食を与え、PBSを注射したマウス由来のHDLは、ヒトLDLの酸化を抑制できず、ヒト動脈壁細胞中のLDL−誘導単球活性を抑制できなかったことも説明している。反対に、アテローム節食を与え、毎日、本明細書に記載のペプチドを投与したマウス由来のHDLは、標準的ヒトHDLと同じように、ヒトHDL酸化の抑制及び共培養物中のLDL−誘導単球走化性活性の回避に効果的であった(国際公開第02/15923号パンフレットに記載の図2A及び2B)。更に、アテローム節食を与え、毎日PBSを注射したマウスから採取したLDLは、同一の節食を与えたが、毎日20μgのペプチド5Fを注射したマウスから採取したLDLよりも速く酸化され、速く単球走化性活性を誘導した。当該Dペプチドは、免疫原性を示さなかった(国際公開第02/15923号パンフレットに記載の図4)。
【0079】
アテローム節食を与え、本発明に従うペプチドを注射したマウス由来のHDL及びLDLに対するヒト動脈壁細胞のin vitroでの応答は、in vivoでのかかるペプチドによって示される保護作用と一致している。総コレステロール、LDL−コレステロール、IDL+VLDL−コレステロール、及び低HDL−コレステロールは、総コレステロールの割合で、類似したレベルであるにもかかわらず、アテローム節食を与え、当該ペプチドを注射した動物は、著しく低い病班スコアを示した(国際公開第第02/15923号パンフレットに記載の図5)。従って、本発明のペプチドは、アテローム節食を与えたマウスにおいて、アテローム性動脈硬化症班の進行を抑制した。
【0080】
従って、一つの実施態様では、アテローム性動脈硬化症の1以上の症状を軽減及び/又は抑制するための方法を提供する。
【0081】
VI.急性炎症応答に関連するアテローム性動脈硬化症の症状の緩和
本発明のペプチドは、多数の状況で有用である。例えば、我々は、心血管の病訴(例えば、アテローム性動脈硬化症、卒中等)がしばしば急性期炎症応答を伴うか又は付随することを観察している。かかる急性状態の炎症応答は、再発性炎症疾患(例えば、ハンセン氏病、結核、紅斑性狼瘡及び慢性関節リウマチ)、ウイルス感染症(例えばインフルエンザ)、細菌性感染症、真菌感染症、臓器移植、外傷又は他の損傷、インプラント人工器官、バイオフィルム等に関連することが多い。
【0082】
本明細書に記載の1以上のペプチドの投与が、急性期応答の間に又はその後の急性相応答で、酸化リン脂質の生成を軽減又は回避でき、それによって、かかる症状に関連した心血管病訴を緩和又は排除できることは驚くべき本発明の発見である。
【0083】
従って、例えば、インフルエンザ感染症の結果が、パラオキソナーゼ及びHDL中の血小板活性化アセチルヒドロラーゼ活性の減少であることを、我々は証明している。特定の理論に拘束されるものではないが、当該HDL酵素活性の損失の結果及び急性期応答中のHDLと酸化促進剤蛋白質との関係の結果として、HDLは、もはやLDL酸化を回避することができず、内皮細胞によるLDL−誘導単球走化性活性の発現を回避することができなかった、我々は考えている。
【0084】
インフルエンザAウイルスで感染させた後、本発明のポリペプチドの超低用量(例えばマウス1匹当り20μg)を毎日注射した対象では、パラオキソナーゼのレベルは低下せず、生物学的に活性な酸化リン脂質は基底を越えては生成しなかった、ことを我々は観察した。このことは、D−4F(及び/又は本発明の他のペプチド)が、インフルエンザ感染症、又は急性期炎症応答(例えば、ウイルス感染、細菌性感染症、外傷、移植、種々の自己免疫疾患等)を引き起こす他の事象での周知の冠動脈疾患に罹患している患者に投与する(例えば経口又は注射によって)ことができ、それ故、我々は、かかる炎症症状を引き起こす病状に関連した心臓病及び卒中の発生の増加を、当該短期間治療によって回避することができる、ことを示している。
【0085】
従って、ある実施態様では、本発明は、急性炎症応答の危険にある又は被っている及び/又はアテローム性動脈硬化症の症状の危険にある又は被っている患者に、本発明の1以上のペプチドを投与することを画する。
【0086】
従って、例えば、冠動脈疾患を有する又は危険にある人は、インフルエンザの季節には、本発明のポリペプチドを予防的に投与することができる。リウマチ様関節炎、種々の自己免疫疾患等の再発性炎症症状にかかりやすい人(又は動物)は、アテローム性動脈硬化症もしくは卒中の罹患を緩和又は回避するために、本発明のポリペプチドで治療することができる。急性損傷、組織移植等の外傷にかかっている人(又は動物)は、アテローム性動脈硬化症もしくは卒中の罹患を緩和又は回避するために、本発明のポリペプチドで治療することができる。
【0087】
ある実施態様では、かかる方法は、急性炎症応答の発生又は危険の診断を伴うだろう。当該急性炎症応答は、典型的には、代謝の反復及び肝臓での遺伝子調節を含む。それは、免疫系、心血管系及び中枢神経系に加えて、身体の全ての主な系を含む動的ホメオスタティック・プロセスである。一般的には、急性期応答は数日間のみ続くが、慢性又は再発性の炎症の場合、急性期応答のある態様の異常な継続は、疾患に伴う内在的組織の損傷の原因となり、更なる病訴、例えば心血管疾患又はアミロイド症等の蛋白沈殿疾患にも繋がる。
【0088】
当該急性期応答の重要な態様は、過激に変化した肝臓の生合成的プロファイルである。標準的な状況の下では、肝臓は、定常状態濃度で、特徴的な範囲の血漿蛋白質を合成する。当該蛋白質の多くは、当該急性期反応物(APRs)の重要な機能及び高血漿レベルを有するか、又は急性期蛋白質(APPs)が、急性期応答の間、その後の炎症性興奮に必要とされる。ほとんどのAPRsは肝細胞によって合成されるが、単球、内皮細胞、繊維芽細胞及び含脂肪細胞を含み、他の細胞種によって産生されるものもある。ほとんどのAPRsは、50%と標準レベルを超えて7倍の間で誘導される。反対に、主なAPRsは、標準レベルを超えて、1000倍にまで増加することができる。当該群は、血漿アミロイドA(SAA)、及びヒトのC−反応性蛋白質(CRP)又はマウスのそのホモロジーである血清アミロイドP成分(SAP)を含む。いわゆる負のAPRsは、急性期応答中の血漿濃度を減少させて、誘導APRsを合成するために肝臓の容量を増大させることができる。
【0089】
ある実施態様では、急性期応答又はその危険性は、1以上のAPRsを測定することによって評価する。かかるマーカーの測定は、当業者に周知であり、かかる測定を提供する営利会社が存在する(例えば、Cardiotech Services, Louisville, KYによって測定されるAGP)。
【0090】
VII.冠動脈の石灰化及び骨粗鬆症に関連する症状又は症候の軽減
我々はまた、冠動脈の石灰化及び骨粗鬆症の原因として酸化脂質を同定した。更に、特定の理論に拘束されるものではないが、我々は、同一のメカニズムが石灰沈着性大動脈狭窄に含まれると考えている。
【0091】
従って、ある実施態様では、本発明は、リウマチ性多発性筋痛、結節性多発性動脈炎、強皮症、紅斑性狼瘡、特発性肺線維症、慢性閉塞性肺疾患、アルツハイマー病、AIDS、冠動脈石灰化、石灰沈着性大動脈狭窄、骨粗鬆症等の疾患の1以上の症状を抑制又は回避するために、本明細書に記載されたペプチドの使用を画する。
【0092】
V.ペプチド投与
本発明の方法は、典型的には、生物、好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒトに、本発明の1以上のペプチド(又はかかるペプチドの模倣体)投与することを含む。当該ペプチド(ペプチド類)は、本明細書に記載のようにして、注射剤、座剤、鼻腔スプレー剤、徐放インプラント、経皮的貼付剤等を含むが、これらに限定されない任意の多数の標準的方法に従って、投与することができる。一つの特に好ましい実施態様では、当該ペプチド(ペプチド類)は、経口投与される(例えばシロップ剤、カプセル剤又は錠剤)。
【0093】
当該方法は、本発明の単一のペプチドの投与又は2以上の異なったペプチドの投与を含むことができる。当該ペプチドは、モノマー又はダイマー、オリゴマー又はポリマーの形で提供することができる。ある実施態様では、多重結合形は、関連するモノマー(例えばイオン的又は疎水的に結合された)を含んでもよく、一方、特定の他の多重結合形は、共有結合されたモノマー(直接結合又はリンカーを介して)を含む。
【0094】
本発明は、ヒトでの使用に関して記載するが、例えば獣医使用等の動物にも好適である。従って、好ましい生物は、特に限定されないが、ヒト、ヒト以外の霊長類、犬、馬、ネコ、豚、有蹄動物、largomorphs等を含む。
【0095】
本発明の方法は、アテローム性動脈硬化症(例えば、高血圧、班形成及び破裂、心臓病、狭心症又は卒中等の臨床的事象の縮小、高レベルの血漿コレステロール、高レベルの低密度リポ蛋白、高レベルの超低密度リポ蛋白、又はCRP等の炎症性蛋白質)の1以上の症状を示すヒト又はヒト以外の動物に限定されないが、予防薬の文脈で有用である。従って、本発明のペプチド(又はその模倣体)は、アテローム性動脈硬化症の1以上の症状の発現/進行を回避するために、生物に投与することができる。本文脈において特に好ましい対象は、アテローム性動脈硬化症のための1以上の危険因子を示す対象である(例えば、家族歴、高血圧、肥満症、高アルコール消費、喫煙、高血中コレステロール、高血中トリグリセリド、高血中LDL、VLDL、IDLもしくは低HDL、糖尿病又は糖尿病の家族歴、高血中脂質、心臓病、破裂又は卒中等)。
【0096】
本発明のペプチドは、未−β高密度リポ蛋白様粒子の形成及び循環を刺激し、及び/又は逆脂質輸送及び解毒を促進するためにも投与することができる。
【0097】
当該ペプチドはまた、それらが、スタチンの活性を亢進し(例えば相乗効果を与える)、スタチン(スタチン類)を低用量で投与することができ、及び/又は任意の与えられた用量でスタチンの抗炎症特性が著しく亢進されるスタチンと共に投与するために有用である。
【0098】
更に、当該ペプチドは、骨粗鬆症の1以上の症状を軽減又は除去及び/又は骨粗鬆症の1以上の症状の発現を回避/抑制するために投与することができる。
【0099】
VIII.好ましいペプチド及びその調製
好ましいペプチド
クラスA両親媒性ヘリックス(「クラスAペプチド」)を含むペプチドは、アテローム性動脈硬化症の1以上の症状を軽減することができることは、本発明の発見である。クラスAペプチドは、極性及び非極性残基が分離し、それによって、極性−非極性界面に存在する正に荷電した残基及び極性表面の中心に存在する負に荷電した残基を有する極性及び非極性表面を形成するα−ヘリックスの形成によって特徴付けられる(例えばAnantharamaiah (1986) Meth. Enzymol, 128: 626-668を参照されたい)。3.667残基/回転に折りたたまれる場合に、アポA−Iの4番目のエキソンが、クラスA両親媒性ヘリックス構造を生成することは注目される。
【0100】
18Aで表される一つの好ましいクラスAペプチド(1及びAnantharamaiah (1986) Meth. Enzymol, 128: 626-668を参照されたい)は、本明細書に記載のようにして修飾して、経口投与可能で、アテローム性動脈硬化症の1以上の症状の抑制又は回避に高い効果を有するペプチドを製造することができる。特別な理論に拘束されるわけではないが、本発明のペプチドは、LDLの酸化を緩和する種づけ分子(分子類)を取り上げることによって、in vivoで作用すると考えられる。
【0101】
18Aの疎水性表面上のPhe残基の数の増加が、Palgunachari et al., (1996) Arteriosclerosis, Thrombosis, & Vascular Biology 16: 328-338によって記載された計算によって決定される脂質親和性を増大させると、我々は判断した。理論的には、Pheを有する18Aの非極性表面での残基の系統的置換により、6種のペプチドが得られた。更に2、3及び4個のPheを有するペプチドは、それぞれ、13、14及び15単位の理論上の脂質親和性(λ)値を有する。しかしながら、追加のPheが4〜5個(19λユニットに)増加する場合には、λ値は4単位急増する。6又は7個のPheに増加すると、若干劇的に増加する(それぞれ、20及び21λに)。そのため、我々は、5個の追加のPhe(及び5Fとして示されるペプチド)を選択した。一つの特に好ましい実施態様では、5Fペプチドは、アミノ末端残基をアセチル化し、カルボキシル末端をアミド化して保護した。
【0102】
新規クラスAペプチドアナログ5Fは、アテローム性動脈硬化症にかかりやすいマウスにおいて、病班の進行を抑制した。新規ペプチドアナログ5Fを、Levine et al. (Levine et al. (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90: 12040-12044)の研究に基いたペプチド投薬量を用いる当該マススにおける節食誘導性アテローム性動脈硬化症の抑制の効力について、マウスアポA−I(MoA−I)と比較した。
【0103】
多数の他のクラスAペプチドも製造し、アテローム性動脈硬化症の1以上の症状の緩和に、異なるが顕著な程度の効能を示した。多数のかかるペプチドを表1に示す。
【0104】
【表1】
【0105】
【表2】
【0106】
【表3】
【0107】
【表4】
【0108】
ある好ましい実施態様では、ペプチドは、1個又は2個のアスパラギン酸(D)がグルタミン酸(E)によって置換された、4F又はD−4Fの変異体を含む。1、2、3又は4個のアミノ酸がカルボキシル末端から除去され、及び/又は1、2、3又は4個のアミノ酸がカルボキシル末端から除去され及び/又は1個又は2個のアスパラギン酸(D)がグルタミン酸(E)によって置換されたペプチド(例えば4F又はD−4F)も、本発明で画されている。本明細書に記載された任意のペプチドにおいて、N−末端は、マンチル部分(例えばN−メチルアンスラニリル)を用いて保護又は標識することができる。
【0109】
アミノ末端を保護するアセチル基又はN−メチルアンスラニリル基及びカルボキシル末端を保護するアミド基を有する表1の種々のペプチドを例示するが、当該保護基のいずれかは、除去されていても及び/又は本明細書に記載の別の保護基で置換されていてもよい。特に好ましい実施態様では、ペプチドは、本明細書に記載の1以上のD−型アミノ酸を含む。ある実施態様では、表1のペプチド全てのアミノ酸(例えば全ての鏡像異性アミノ酸)はD−型アミノ酸である。
【0110】
表1のペプチドは全てを包括するものではないことに注意されたい。本明細書で提供した教示を用いて、他の好適なペプチドを規定どおりに製造することができる(例えば保存的又は半保存的置換(例えばDをEで置換する)、伸張、削除等によって)。
【0111】
従って、例えば、一つの実施態様では、配列番号2〜20及び39〜85によって特定された任意の1以上のペプチドの端の切り取りを利用する。すなわち、例えば、配列番号21は、1以上のDアミノ酸を含む18AのC−末端から14個のアミノ酸を含むペプチドを例示する。長鎖のペプチドも好適である。かかる長鎖のペプチドは、クラスA両親媒性ヘリックスの全体を形成するか、又は当該クラスA両親媒性ヘリックス(へリックス類)は、当該ペプチドの1以上のドメインを形成することができる。更に、本発明は、当該ペプチドの多重結合的な変化を画する。従って、例えば、表1に例示したペプチドは、互いに結合することができる(1以上の介在アミノ酸と、直接に又はリンカー(例えば炭素原子リンカー又は1以上のアミノ酸)を介して)。例示的なポリマー性ペプチドは、好ましくは1以上のDアミノ酸、より好ましくは全てのアミノ酸、本明細書に記載のDアミノ酸を含み、及び/又は保護された1末端又は両末端を有する、18A−プロ−18A及び配列番号79〜85のペプチドを含む。
【0112】
クラスAペプチド(例えば表1に例示した)がDアミノ酸を含む場合には、それらは活性を保持したまま、経口投与することができたことは本発明の驚くべき発見である。更に、当該経口投与は、かなり効果的な取り込み及び重要な血清半減期をもたらし、その結果、アテローム性動脈硬化症の1以上の症状を緩和する効果的な方法を提供することができる。
【0113】
本明細書で提供した教示を用いて、当業者であれば、例示されたクラスAペプチドを規定どおりに修飾して、本発明の他の好適なクラスAペプチドを製造することができる。例えば、規定の保存的又は半保存的置換(例えばEをDに)は、現存するアミノ酸について行うことができる。得られたペプチドの脂質親和性に与える種々の置換効果は、Palgunachari et al., (1996) Arteriosclerosis, Thrombosis, & Vascular Biology 16: 328-338によって記載された計算方法を用いて予測することができる。当該ペプチドは、クラスAα−ヘリックス構造が保存される長さで長くしたり、又は短くしたりすることができる。更に、得られるペプチドを、対象種によって内生的に産生されるペプチドにより類似するように提供するために、置換することができる。
【0114】
ある実施態様では、本発明のペプチドは、米国特許第4,643,988号に記載の「D」型ペプチド、より好ましくは保護基に結合した1末端又は両末端を有する「D」型を含む。かかるペプチドは、式:A1−B1−B2−C1−D−B3−B4−A2−C2−B5−B6−A3−C3−B7−C4−A4−B8−B9(配列番号:86):
[式中、A1、A2、A3及びA4は、独立してアスパラギン酸もしくはグルタミン酸又は相同体もしくはそのアナログであり;B1、B2、B3、B4、B5、B6、B7、B8及びB9は、独立してトリプトファン、フェニルアラニン、アラニン、ロイシン、チロシン、イソロイシン、バリンもしくはα−ナフチルアラニン又は相同体もしくはそのアナログであり;C1、C2、C3及びC4は、独立してリジン又はアルギニンであり、Dはセリン、スレオニン、アラニン、グリシン、ヒスチジン又は相同体もしくはそのアナログである、但し、A1及びA2はアスパラギン酸であり、A3及びA4はグルタミン酸であり、B2及びB9はロイシンであり、B3及びB7はフェニルアラニンであり、B4はチロシンであり、B5はバリンであり、B6、B8及びDはアラニンであり、C1、C2、C3及びC4はリジンであり、B1はトリプトファンでない。ここで、少なくとも一つの鏡像アミノ酸は、「D」型アミノ酸である。]
を有するペプチドを含む。
好ましくは少なくとも50%の鏡像アミノ酸は「D」型であり、より好ましくは少なくとも80%の鏡像アミノ酸は「D」型であり、及び最も好ましくは少なくとも90%又は全ての鏡像アミノ酸は「D」型アミノ酸である。
【0115】
好ましい実施態様では、本発明のペプチドは、天然由来のアミノ酸又は天然由来のアミノ酸のD型を利用するが、非天然由来のアミノ酸による置換体(例えば、メチオニン スルホキシド、メチオニン メチルスルホニウム、ノルロイシン、イプシロン−アミノカプロン酸、4−アミノブタン酸、テトラヒドロイソキノリン−3−カルボン酸、8−アミノカプリル酸、4−アミノ酪酸、Lys(N(イプシロン)−トリフルオロアセチル)、α−アミノイソ酪酸等)も本発明に画されている。
【0116】
本明細書に記載されたクラスAペプチドに加えて、ペプチド模倣体も本明細書に画される。ペプチドアナログは、一般的に、鋳型ペプチドの性質に類似した性質を有する非ペプチド性薬物として製薬産業で使用される。当該種の非ペプチド化合物は、「模倣ペプチド」又は「ペプチド模倣体」と言われ(Fauchere (1986) Adv. Drug Res. 15: 29; Veber and Freidinger (1985) TINS p. 392; and Evans et al. (1987) J. Med. Chem. 30: 1229)、通常、コンピュータ化分子モデリングによって開発されている。治療上有用なペプチドに構造的に類似したペプチド模倣体は、等価な治療又は予防効果を発現するために使用することができる。
【0117】
一般的に、ペプチド模倣体は、模範ポリペプチド(すなわち、本明細書に記載の5F)に構造的に類似するが、場合により、当該分野で知られた方法及び更に次の参考文献:Spatola (1983) p. 267 in Chemistry and Biochemistry of Amino Acids, Peptides and Proteins, B. Weinstein, eds., Marcel Dekker, New York, ; Spatola (1983) Vega Data 1 (3) Peptide Backbone Modifications. (一般評論); Morley (1980) Trends Pharm Sci pp. 463-468 (一般評論):; Hudson et al. (1979) Int J Pept Prot Res 14: 177-185 (-CH2NH-, -CH2CH2-); Spatola (1986) Life Sci 38: 1243-1249 (-CH2-S-); Hann, (1982) J Chem Soc Perkin Trans I 307-314 (-CH-CH-, cis and trans); Almquist et al. (1980) J Med Chem. 23: 1392-1398 (-COCH2-); Jennings - White et al. (1982) Tetrahedron Lett. 23: 2533 (-COCH2-); Szelke, M. et al., European Appln. EP 45665 (1982) CA 97: 39405 (1982) (-CH(OH)CH2-); Holladay et al.,(1983) Tetrahedron Lett. 24: 4401-4404 (-C(OH)CH2-); and Hruby (1982) Life Sci., 31: 189-199 (-CH2-S-)に記載した方法によって、−CH2NH−、−CH2S−、−CH2−CH2−、−CH=CH−(シス及びトランス)、−COCH2−、−CH(OH)CH2−、−CH2SO−等からなる群より選ばれる結合によって置換された1以上のペプチド結合を有する。
【0118】
特に好ましい非ペプチド結合は、−CH2NH−である。かかるペプチド模倣体は、ポリペプチドの実施態様、例えば、より経済的な製造、より高い化学的安定性、亢進した薬理的性質(半減期、吸収、効力、効果等)、低減した抗原性などを含む重要な利益を有する。
【0119】
更に、コンセンサス配列又は実質的に同一のコンセンサス配列の変異体を含む本明細書に記載されたペプチド又は制約的ペプチド(循環ペプチドを含む)の循環的な置換は、例えば、当該ペプチドを循環する分子内ジスルフィド結合を形成することができる内部システイン残基を加えることによって、当該分野で知られた方法によって起こるだろう(Rizo and Gierasch (1992) Ann. Rev. Biochem. 61: 387)。
【0120】
ペプチドの調製
本発明で使用するペプチドは、標準的な化学的ペプチド合成技術を用いて化学的に合成することができる、又は、特に、当該ペプチドが「D」アミノ酸残基を含まない場合には、当該ペプチドは、組み換え的に簡便に発現することができる。「D」ポリペプチドが組み換え的に発現できる場合には、宿主生物(例えば細菌、植物、真菌性細胞等)は、1以上のアミノ酸がD型として専ら生物中に提供される環境で培養することができる。かかる系で組み換え的に発現したペプチドは、その後、当該Dアミノ酸を取り込む。
【0121】
ある実施態様では、Dアミノ酸は、D−アミノ酸を認識する修飾アミノアシル−tRNA合成酵素を用いて、組み換え的に発現したペプチド中に組み込むことができる。
【0122】
ある好ましい実施態様では、当該ペプチドは、当業者に知られた多数の液相又は固相合成技術のいずれかによって化学的に合成することができる。配列のC−末端アミノ酸が不溶性支持体に結合し、次いで、配列中の残余アミノ酸が逐次付加する固相合成は、本発明のポリペプチドの化学的合成のための好ましい方法である。固相合成のための技術は、当業者に周知であり、例えば、Barany and Merrifield (1963) Solid-Phase Peptide Synthesis; pp. 3-284 in The Peptides: Analysis, Synthesis, Biology. Vol. 2: Special Methods in Peptide Synthesis, Part A.; Merrifield et al. (1963) J. Am. Chem. Soc., 85: 2149-2156, and Stewart et al. (1984) Solid Phase Peptide Synthesis, 2nd ed. Pierce Chem. Co., Rockford, IIIに記載されている。
【0123】
ある実施態様では、当該ペプチドは、固体支持体としてベンズヒドリルアミン樹脂(Beckman Bioproducts, 0.59mmolのNH2/樹脂g)を用いる固相ペプチド合成法によって合成することができる。COOH末端アミノ酸(例えば、t−ブチルカルボニル−Phe)は、4−(オキシメチル)フェナセチル基を介して固相支持体に結合する。これは、慣用的なベンジルエステルよりもより安定な結合であるが、最終的なペプチドは、水素添加によって切断することができる。ギ酸を水素供与体として用いる転移水素添加は、本目的に使用することができる。ペプチド合成及び合成されたペプチドの分析に使用する詳細なプロトコールは、Anantharamaiah et al. (1985) J. Biol. Chem., 260 (16): 10248-10255を含む小印刷物補遺に記載されている。
【0124】
ペプチド、特にDアミノ酸を含むペプチドの化学合成において、当該合成が、通常、所望の完全長生成物に加えて、多数の端を切り取ったペプチドを生成することは注目される。精製過程(例えばHPLC)は、典型的には、かなりの量の完全長生成物を損失する結果になる。
【0125】
特にDペプチド(例えばD−4)の合成では、最長の型を精製において損失しないように、混合物を透析して使用することができ、それによって最後のHPLC精製を省くことができることは本発明の発見である。かかる混合物は、高度に精製された生成物(例えば、蛋白質生成物の重量当たり)の約50%を損失するが、当該混合物は約6倍を超えるペプチドを含有し、そのため高い総活性を有する。
【0126】
D−型アミノ酸
D−アミノ酸は、化学合成においてD−型誘導アミノ酸残基を用いることによって、簡便に当該ペプチドの1以上の位置に組み込むことができる。固相ペプチド合成のためのD−型残基は、多数の供給者から市販されている(例えば、Advanced Chem tech, Louisville; Nova Biochem, San Diego; Sigma, St Louis; Bachem California Inc., Torrance等を参照されたい)。当該D−型アミノ酸は、完全に省くことも又は所望のペプチドの任意の位置に組み込むこともできる。従って、例えば、ある実施態様では、当該ペプチドは、1個のD−アミノ酸を含むことができるが、他の実施態様では、当該アミノ酸は、少なくとも2個、一般的には少なくとも3個、より一般的には少なくとも4個、最も一般的には少なくとも5個、好ましくは少なくとも6個、より好ましくは少なくとも7個及び最も好ましくは少なくとも8個のDアミノ酸を含む。特に好ましい実施態様では、本質的に全ての他の(鏡像異性)アミノ酸は、D−型アミノ酸である。ある実施態様では、少なくとも90%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%の鏡像異性アミノ酸は、D−型アミノ酸である。一つの特定の実施態様では、本質的に全ての鏡像異性アミノ酸は、D−型アミノ酸である。
【0127】
保護基
ある実施態様では、構成アミノ酸及び/又は末端アミノ酸上の1以上のR−基は、保護基で保護する。特定の理論に拘束されるものではないが、特に、本発明の対象ペプチドのアミノ及び/又はカルボキシル末端の保護が、経口送達を大いに改善し、血清半減期を著しく増大させることは本発明の発見である。
【0128】
幅広い多数の保護基が当該目的に適している。かかる基は、特に限定されないが、N−末端保護に特に好ましいアセチル、アミド、及びアセチルやアルキルを有するアルキル基、カルボキシ末端保護に好ましいアミド基を含む。ある実施態様では、保護基は、検出可能な標識(例えば、N−メチル アンスラニリル)を更に含むことができる。
【0129】
ある特定の好ましい実施態様では、保護基は、特に限定されないが、脂肪酸において見られるようなアルキル鎖、プロピオニル、ホルミル等である。特に好ましいカルボキシル保護基は、アミド、エステル及びエーテルの形成保護基を含む。一つの好ましい実施態様では、アセチル基はアミノ末端の保護に使用し、アミド基はカルボキシル末端の保護に使用する。当該保護基は、ペプチドのヘリックス形成傾向を亢進する。ある特定の好ましい保護基は、種々の長さのアルキル基、例えば式:CH3−(CH2)n−CO−を有する基(ここで、nは、約1〜約20の範囲、好ましくは約1〜約16又は18、より好ましくは約3〜約13及び最も好ましくは約3〜約10である)を含む。
【0130】
ある特定の好ましい実施態様では、保護基は、特に限定されないが、脂肪酸おいて見られるようなアルキル鎖、プロピオニル、ホルミル等である。特に好ましいカルボキシル保護基は、アミド、エステル及びエーテルの形成保護基を含む。一つの好ましい実施態様では、アセチル基はアミノ末端の保護に使用し、アミド基はカルボキシル末端の保護に使用する。当該保護基は、ペプチドのヘリックス形成傾向を亢進する。ある特定の好ましい保護基は、種々の長さのアルキル基、例えば式:CH3−(CH2)n−CO−を有する基(ここで、nは、約3〜約20の範囲、好ましくは約3〜約16、より好ましくは約3〜約13及び最も好ましくは約3〜約10である)を含む。
【0131】
他の保護基は、特に限定されないが、N−メチル アンスラニリル、Fmoc、t−ブトキシカルボニル(t−BOC)、9−フルオレンアセチル基、1−フルオレンカルボン酸基、9−フルオレンカルボン酸基、9−フルオレノン−1−カルボン酸基、ベンジルオキシカルボニル、キサンチル(Xan)、トリチル(Trt)、4−メチルトリチル(Mtt)、4−メトキシトリチル(Mmt)、4−メトキシ−2,3,6−トリメチル−ベンゼンスルホニル(Mtr)、メシチレン−2−スルホニル(Mts)、4,4−ジメトキシベンズヒドリル(Mbh)、トシル(Tos)、2,2,5,7,8−ペンタメチル クロマン−6−スルホニル(Pmc)、4−メチルベンジル(MeBzl)、4−メトキシベンジル(MeOBzl)、ベンジルオキシ(BzlO)、ベンジル(Bzl)、ベンゾイル(Bz)、3−ニトロ−2−ピリジンスルフェニル(Npys)、1−(4,4,−ジメチル−2,6−ジオキソシクロヘキシリデン)エチル(Dde)、2,6−ジクロロベンジル(2,6−DiCl−Bzl)、2−クロロベンジルオキシカルボニル(2−Cl−Z)、2−ブロモベンジルオキシカルボニル(2−Br−Z)、ベンジルオキシメチル(Bom)、シクロヘキシルオキシ(cHxO)、t−ブトキシメチル(Bum)、t−ブトキシ(tBuO)、t−ブチル(tBu)、アセチル(Ac)及びトリフルオロアセチル(TFA)を含む。
【0132】
保護基/封鎖基は、かかる基を、本発明のペプチドを含む好適な残基(残基類)に結合する方法として、当業者に周知である(例えば、Greene etal. (1991) Protective Groups in Organic Synthesis, 2nd ed., John Wiley & Sons, inc. Somerset, N. J.)を参照されたい)。一つの好ましい実施態様では、例えば、当該ペプチドが無水酢酸を用いる樹脂上にある場合に、合成中にアセチル化が行われる。アミド保護は、合成のための好適な樹脂の選択によって達成できる。本明細書の実施例に記載のペプチド合成中には、結合アミド樹脂を使用する。合成完了後、AspやGlu等の酸性二官能性アミノ酸及び塩基性アミノ酸Lys、Tyrのヒドロキシルの半永久的保護基は、全て同時に除去することができる。酸性処理によるかかる樹脂から遊離したペプチドは、アセチルで保護したN−末端及びNH2で保護したカルボキシル末端を有し、他の全ての保護基が同時に除去されている。
【0133】
IX.ペプチド取り込みの亢進
全てのLアミノ酸ペプチド(あるいは、例えば、本発明のペプチドの配列を有する他のペプチド)をD−型(すなわち本発明のペプチド)と共投与する場合には、D−型ペプチドの取り込みは増大することも本発明の驚くべき発見である。従って、ある実施態様では、本発明は、本発明の方法におけるD−型及びL−型ペプチドの併用を画する。D−型ペプチド及びL−型ペプチドは、異なったアミノ酸配列を有することができるが、好ましい実施態様では、それらはいずれも本明細書に記載のペプチドのアミノ酸配列を有し、より好ましくは、それらは同一のアミノ酸配列を有する。
【0134】
本発明のクラスA両親媒性ヘリックスペプチドのコンカテマーが、アテローム性動脈硬化症の1以上の症状を緩和する点でも効果的であることはまた本発明の発見である。コンカテマーを含むモノマーは、直接結合するか又はリンカーで連結することができる。ある実施態様では、当該リンカーは、アミノ酸リンカー(例えばプロリン)又はペプチドリンカー(例えばGly4Ser3)である。ある実施態様では、コンカテマーは、2マー、より好ましくは3マー、更により好ましくは4マー及び最も好ましくは5マー、8マー又は10マーである。
【0135】
X.医薬製剤
本発明の方法を実施するために、本発明の1以上のペプチド又はペプチド模倣体は、例えば、アテローム性動脈硬化症の1以上の症状を有すると診断された又はアテローム性動脈硬化症の危険にあると診断された個体に投与する。ペプチド又はペプチド模倣体は、「天然」型で投与することができ、又は、塩、エステル、アミド、プロドラッグ又は誘導体が薬理的に好適である、すなわち本発明において効果的である場合には、もし必要であれば、塩、エステル、アミド、プロドラッグ、誘導体等の形態で投与することができる。塩、エステル、アミド、プロドラッグ及び活性物質の他の誘導体は、合成有機化学の当業者に知られた及び例えばMarch (1992) Advanced Organic Chemistry; Reactions, Mechanisms and Structure, 4th Ed. N.Y. Wiley-Interscienceに記載の標準的な方法を用いて調製することができる。
【0136】
例えば、酸付加塩は、典型的には好適な酸との反応を含む慣用的方法を用いて遊離塩基から調製する。一般的に、薬物の塩基型は、メタノール又はエタノール等の極性有機溶媒中に溶解し、当該酸をそこに添加する。得られた塩は沈殿するか又は低極性溶媒の添加によって溶液から取り出すことができる。酸付加塩を調製するための好適な塩は、例えば、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、シュウ酸、リンゴ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、桂皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、サルチル酸等の有機酸、及び塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等の無機酸である。酸付加塩は、好適な塩基を用いる処理によって遊離塩基に再変換することができる。本明細書の活性物質の特に好ましい酸付加塩は、塩酸又は臭化水素酸を用いて調製することができるハロゲン化物塩である。反対に、ペプチド又は模倣体の塩基性塩の調製は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウム、トリメチルアミン等の薬学的に許容される塩基を用いて同様な方法で行うことができる。特に好ましい塩基性塩は、例えばナトリウム塩等のアルカリ金属塩及び銅塩を含む。
【0137】
エステルの調製は、典型的には、薬物の分子構造内に存在するヒドロキシル及び/又はカルボキシル基の官能基化を含む。エステルは、典型的には、遊離アルコール基のアシル置換誘導体、すなわち式RCOOHのカルボン酸(ここで、Rはアルキル、好ましくは低級アルキルである)から誘導される部分である。エステルは、必要ならば、慣用的な水素添加又は加水分解手段を用いることによって、遊離酸に再変換することができる。
【0138】
アミド及びプロドラッグは、当業者に知られた技術又は関連文献に記載の技術を用いて調製してもよい。例えば、アミドは、好適なアミン反応物を用いてエステルから調製してもよく、あるいはアンモニア又は低級アルキルアミンとの反応によって、無水物又は酸クロリドから調製してもよい。プロドラッグは、典型的には、個体の代謝系によって調節されるまで治療上不活性である化合物となっている部分の共有結合的接着によって調製する。
【0139】
本明細書で同定されたペプチド又は模倣体は、アテローム性動脈硬化症及び/又はその症状の予防的及び/又は治療的処置のための、非経口、局所、経口、鼻腔内(あるいは吸入)、直腸又はエアゾールもしくは皮内等の局部投与に有用である。医薬組成物は、投与方法に応じて種々の単位剤形で投与することができる。好適な単位剤形は、特に限定されないが、粉剤、ピル剤、カプセル剤、トローチ剤、座剤、貼付剤、鼻腔スプレー、注射、移植可能な徐放剤、脂質複合体等を含む。
【0140】
本発明のペプチド及び/又はペプチド模倣体は、典型的には、薬学的に許容される担体(賦形剤)と混合して薬理的組成物をつくる。薬学的に許容される担体は、例えば、当該組成物を安定化し又は活性物質(活性物質類)の吸収を増大又は減少させるように作用する1以上の生理的に許容される化合物(化合物類)を含むことができる。生理的に許容される化合物は、例えば、グルコース、スクロース又はデキストラン等の炭水化物、アスコルビン酸又はグルタチオン等の抗酸化剤、キレート化剤、低分子蛋白質、活性物質もしくは賦形剤もしくは他の安定剤及び/又は緩衝液の一掃又は加水分解を減じる、脂質、組成物等の保護及び取り込みエンハンサーを含むことができる。
【0141】
他の生理的に許容される化合物は、特に微生物の繁殖又は作用を妨げるために有用である湿潤剤、乳化剤、分散剤又は保存剤を含む。種々の安定剤は周知であり、例えばフェノール及びアスコルビン酸を含む。当業者であれば、生理的に許容される化合物を含む薬学的に許容される担体(担体類)の選択が、例えば活性物質(活性物質類)の投与経路及び活性物質(活性物質類)の特定の物理−化学的性質に依拠することは理解できよう。
【0142】
賦形剤は、好ましくは殺菌され、一般的には望ましくない物質が含まれていないものである。当該組成物は、慣用的な周知の殺菌技術によって殺菌することができる。
【0143】
治療的適用において、本発明の組成物は、アテローム性動脈硬化症の1以上の症状に罹患している又はアテローム性動脈硬化症の危険にある患者、疾患及び/又は病訴を治癒もしくは少なくとも部分的に回避又は停止させるために十分な量で投与する。これを達成するために十分な量は、「治療上効果的な用量」として定義する。当該使用のための有効な量は、疾患の重大性及び一般的な患者の健康状態に依拠するだろう。組成物の単回又は複数回投与は、患者によって必要とされ及び忍従される投薬量及び頻度に従って投与することができる。いずれにしろ、組成物は、患者を効果的に治療する(1以上の症状を軽減する)ために、本発明の製剤の活性物質の十分な量を提供する必要がある。
【0144】
ペプチド又は模倣体の濃度は、幅広く変化させることができ、選択される特定の投与様式及び患者の必要性に応じて、液体体積、粘度、体重等に基いて主に選択する。しかしながら、濃度は、典型的には、約0.1又は1mg/kg/日〜約50mg/kg/日の範囲の投薬量、時にはそれより高い投薬量を提供するために選択する。典型的な投薬量は、約3mg/kg/日〜約3.5mg/kg/日、好ましくは約3.5mg/kg/日〜約7.2mg/kg/日、より好ましくは約7.2mg/kg/日〜約11.0mg/kg/日及び最も好ましくは約11.0mg/kg/日〜約15.0mg/kg/日の範囲である。ある好ましい実施態様では、投薬量は、約10mg/kg/日〜約50mg/kg/日の範囲である。かかる投薬量は、特定の対象又は対象群での治療処方を最適化するために変えることができる。
【0145】
ある好ましい実施態様では、本発明のペプチド又はペプチド模倣体は、当業者に周知の標準的方法に従って、経口的に(例えば錠剤によって)又は注射可能物質として投与する。他の好ましい実施態様では、ペプチドは、慣用的な経皮的薬物送達システム、すなわち、活性物質(活性物質類)が、典型的に皮膚に貼付される薬物送達装置として役立つラミネート構造内に含まれる、経皮的「貼付剤」を用いて皮膚を通して送達することもできる。かかる構造では、薬物組成物は、典型的に、層又は上側の裏打ち層の下にある「リザーバ」内に含まれる。本文脈中、「リザーバ」の語は、皮膚表面に送達するために最終的に利用できる「活性成分(成分類)」の量を言う。従って、例えば、「リザーバ」は、当該貼付剤の裏打ち層に接着している、又は当業者に知られた多数の異なったマトリックス製剤のいずれかに存在する活性成分(成分類)を含む。当該貼付剤は、単一のリザーバを含んでもよく、又は多数のリザーバを含んでもよい。
【0146】
一つの実施態様では、リザーバは、ポリマー性マトリックスを含む。送達中に当該装置を皮膚に固定するために役立つ薬学的に許容される密着性接着材料を含む。好適な皮膚接着材料の例は、特に限定されないが、ポリエチレン、ポリシロキサン、ポリイソブチレン、ポリアクリレート、ポリウレタン等を含む。あるいは、薬物−含有リザーバ及び皮膚密着性接着剤は、別々の又は別個の層に存在する、かかる場合には、上記のポリマー性マトリックスであるか、又は液体もしくはヒドロゲルのリザーバであってもよいリザーバを下に付けた接着剤を付けて存在するか、あるいは何らかの他の形態をとってもよい。かかる装置の上面として役立つ当該ラミネートにおける裏打ち層は、好ましくは当該「貼付剤」の一次構造的要素として機能し、多大なその柔軟性を有する装置を提供する。裏打ち層として選択された材料は、好ましくは実質的に、存在する活性物質(活性物質類)及び任意の他の材料に不浸透性である。
【0147】
局所薬物送達のための他の好ましい製剤は、特に限定されず、軟膏及びクリームを含む。軟膏は、典型的には、石油及び他の石油誘導体に基いた半固体である。選択された活性物質を含むクリームは、典型的には、粘性液体又は半固体エマルションであり、しばしば水中油型、油中水型のいずれかである。クリーム基材は、典型的には、水で洗浄可能であり、油相、乳化剤及び水相を含む。油相は、「内」相と呼ばれることもあり、一般的には、石油及びアセチル又はステアリルアルコール等の脂肪酸を含み;水相は、通常、必ずしも、体積で油相を超え、一般的に水分活性の調節剤(humectant)を含むとは限らない。クリーム製剤中の乳化剤は、一般的に非イオン性、アニオン性、カチオン性又は両新媒性の界面活性剤である。当業者によって認識されるであろう、使用されるべき特定の軟膏又はクリーム基材は、最適な薬物送達を提供するものである。他の担体又は媒質と同様に、軟膏基材は、不活性で、安定で、非刺激性でかつ非敏感性である。
【0148】
典型的なペプチド製剤とは異なり、D−型アミノ酸を含む本発明のペプチドは、胃酸等による蛋白質分解から保護することなく、経口でも投与することができる。しかしながら、ある実施態様では、ペプチド送達は、保護的な賦形剤の使用によって亢進することができる。これは、典型的には、ポリペプチドに酸のもしくは酵素的な加水分解への抵抗性を付与するために、当該ポリペプチドを組成物と複合化することによって、あるいはリポソーム等の好適な抵抗性担体中にポリペプチドを内包することによって、達成することができる。経口送達のための保護ポリペプチドの手段は、当該分野で周知である(例えば、治療物質の経口送達のための脂質組成物について記載した米国特許第5,391,377号明細書を参照されたい)。
【0149】
徐放製剤
高血清半減期は、徐放蛋白「内包」システムの使用によって維持することができる。かかる徐放システムは、当業者に周知である。一つの好ましい実施態様では、蛋白質及びペプチドのProLease生物分解性マイクロスフェア送達システム(Tracy (1998) Biotechnol. Prog. 14: 108: Johnson et al. (1996), Nature Med. 2: 795; Herbert et al., (1998), Pharmaceut. Res. 15, 357)であって、他の物質を有する又は有さない乾燥製剤として混合することができる、ポリマーマトリックス中に蛋白質を含む生物分解性ポリマー性マイクロスフェアを含む乾燥粉体である。
【0150】
ProLeaseマイクロスフェア成形方法は、特に、高蛋白質カプセル化効率を達成できると同時に蛋白質の完全な状態を維持するように設計されている。当該方法は、(i)安定化賦形剤と共に薬物溶液をスプレー凍結乾燥することによって、凍結乾燥蛋白質粒子を大量蛋白質から調製すること、(ii)薬物ポリマー懸濁液を調製後、音波処理又はホモジナイズによって、薬物粒子サイズを小さくすること、(iii)噴霧によって凍結薬−ポリマーマイクロスフェアを液体窒素中に生成させること、(iv)ポリマー性溶媒をエタノールで抽出すること、及び(v)ろ過及び真空乾燥によって最終乾燥粉体生成物を製造すること、から成る。得られた粉体は、多孔性ポリマー粒子内に均一かつ堅く分散された、蛋白質の固体を含む。本方法で最も一般的に使用されるポリマーは、乳酸・グリコール酸共重合体(PLG)であり、いずれも生物学的適合性でかつ生分解性である。
【0151】
カプセル化は、低温(例えば−40℃)で行うことができる。カプセル化中、蛋白質は、水の非存在下に固体状態で維持されるため、蛋白質の水−誘導構造的流動性を最小化し、反応物として水を含む分解反応を回避し、蛋白質が変性する有機−水界面を回避することができる。好ましい方法は、その中ではほとんどの蛋白質が不溶性である溶媒を使用し、それによって高カプセル化効率(例えば95%を超える高効率)が得られる。
【0152】
他の実施態様では、溶液中の1以上の成分は、例えば希釈のために用意された貯蔵容器中に(例えば未測定体積中に)又は大量の水に添加するために用意された溶解性カプセル中に、「濃縮物」として提供することができる。
【0153】
併用製剤
ある例では、本発明の1以上のペプチドは、1以上の活性物質(例えばスタチン、β遮断薬、ACE阻害剤、脂質等)と組み合わせて投与することができる。当該2つの物質(例えばペプチド及びスタチン)は、同時に又は連続して投与することができる。連続して投与される場合には、当該2つの物質は、同様な時間間隔(例えば両剤がある共通の時間において活性である)で、いずれも生理的に関連した濃度となるように投与する。
【0154】
ある実施態様では、両剤は、同時に投与する。このような例では、単一の混合製剤として両剤を提供することが簡便である。このことは、当業者に周知の多数の方法によって達成できる。例えば、錠剤では、当該錠は、例えばスタチン(スタチン類)を含む一層と、例えばペプチド(ペプチド類)を含む他の一層との2層を含むことができる。
【0155】
前記の錠剤及び投与方法は、例示にすぎず、限定するものではない。本明細書で提供された教示を用いて、他の好適な製剤及び投与方法を直ちに考案することができる。
【0156】
XI.追加の生理学的に活性な物質
【0157】
追加の生理学的に活性な物質は、本発明のペプチド等の主要な活性物質と共に送達することができる。ある実施態様では、かかる物質は、アテローム性動脈硬化症事象の危険及びその病訴を低減する物質に限定されない。かかる物質は、特に限定されず、β遮断薬、β遮断薬とチアシド系利尿薬との組み合わせ、スタチン、アスピリン、ace阻害剤、ace受容体阻害剤(ARBs)等を含む。
【0158】
スタチン
1以上のスタチンを「同時に」有する本発明の1以上のペプチドの投与は、スタチン(スタチン類)の効果を相乗的に亢進する。すなわち、スタチンは、低用量で類似の効能を達成することができ、それによって当該薬物に関連する可能な逆の副作用(例えば筋肉疲労)を未然に防ぎ、及び/又は任意の与えられた投薬量で、スタチンに、より高い抗炎症性を顕著にもたらす。
【0159】
スタチンの主な効果は、LDL−コレステロールレベルを下げることであり、それらは、多く他の種の薬物より更にLDL−コレステロールを下げる。スタチンは、一般的に、酵素である、体の中のコレステロール生成速度を制御するHMG−CoAレダクターゼを阻害する。当該薬物は、典型的には、コレステロールの生成を減速し、血中に存在するLDL−コレステロールを除去するために肝臓の能力を増大させることによって、コレステロールを下げる。
【0160】
全体で、及び当該薬物によって生成されるLDL−コレステロールの大幅な低減は、心臓発作及び心臓病死に大幅削減をもたらすように思われる。コレステロールを低減する薬を必要としている場合には、当該研究でのその業績及びLDL−コレステロールを下げるその能力により、スタチンは最も頻繁に処方される薬物となっている。スタチンを使用する研究では、当該薬物を処方された患者において、20〜60%低いLDL−コレステロールレベルを報告している。スタチンはまた、高いトリグリセリドレベルを低減し、HDL−コレステロールの適度な増加を生じる。最近、スタチンが、達成された脂質低減の程度に直接関連しない抗炎症特性を有することが理解されている。例えば、スタチンは、血漿脂質レベルでの変化に比較的無関係な炎症性マーカーCRPの血漿レベルを減少させることが判っている。当該スタチンの抗炎症活性は、LDL低減の程度よりも、スタチンによって誘起される臨床的事象中の削減の予想において、重要又はより重要であることが判っている。
【0161】
スタチンは、一般的に、毎食又は毎就寝時に単用量で与えられる。当該医薬品は、体が日中よりも夜に、よりコレステロールを産生する事実を利用して、しばしば夕方に与えられる。本明細書に記載のペプチドと組み合わせる場合、ペプチド/スタチンの併用治療処方もまた、典型的には夕方に与えられる。
【0162】
好適なスタチンは、当業者に周知である。かかるスタチンは、アトルバスタチン(リピトール(登録商標)、ファイザー)、シムバスタチン(ゾコール(登録商標)、メルク)、プラバスタチン(プラバコール(登録商標)、ブリストル・マイヤーズ・スクイブ)、フラバスタチン(レスコール(登録商標)、ノバルティス)、ロバスタチン(メヴァコール(登録商標)、メルク)、ロスバスタチン(クレストール(登録商標)、アストラ・ゼネカ)及びピタバスタチン(三共)を含むが、これらに限定されない。
【0163】
併用スタチン/ペプチド投薬量は、通常、各患者について最適化することができる。典型的には、スタチンは、数週間後に結果を示し、4〜6週間で最大の効果を有する。スタチン及び本明細書に記載のペプチドの一つの併用療法の前に、医師は、LDL−コレステロール及びHDL−コレステロールのレベルを含むスタチンを開始するための規定の試験を入手するだろう。更に、医師はまた、高感度試験を用いて、患者のHDLの抗炎症特性を測定し、CRPレベルを測定するだろう。併用療法の4〜6週間後に、医師は、典型的には、当該試験を繰り返し、低減した最大脂質及び最大抗炎症活性を得るために、医薬の投薬量を調整するだろう。
【0164】
β遮断薬
好適なβ遮断薬は、心選択性(選択的β1遮断薬)、例えばアセブトロール(セクトラール(登録商標))、アテノロール(テノーミン(登録商標))、ベータキソロール(ゲルロング(登録商標))、ビソプロロール(ゼベータ(登録商標))、メトプロロール(ロプレッサー(登録商標))等を含む。好適な非選択的遮断薬(β1とβ2を同様に遮断)は、カルテオロール(カルトロール(登録商標))、ナドロール(コルガード(登録商標))、ペンブトロール(レヴァトール(登録商標))、ピンドロール(ヴィスケン(登録商標))、プロプラノロール(インデラール(登録商標))、チモロール(ブロックアーデン(登録商標))、ラベタロール(ノルモディン(登録商標)、トランデート(登録商標)等を含むが、これらに限定されない。
【0165】
好適なβ遮断薬・チアシド系利尿薬の組み合わせは、限定されず、ロプレッサーHCT、ZIAC、テノレティック、チモライド、インデラル LA40/25、インデライド、ノルモザイド等を含む。
【0166】
ACE阻害剤
好適なace阻害剤は、限定されず、カプトプリル(例えばスクイブのカポテン(登録商標))、ベナセプリル(例えばノバルティスのロテンシン(登録商標))、エナラプリル(例えばメルクのヴァソティック(登録商標))、フォシノプリル(例えばブリストル・マイヤーのモノプリル(登録商標))、リシノプリル(例えばメルクのプリニヴィル(登録商標)又はアストラ・ゼネカのゼストリル(登録商標))、クィナプリル(例えばパーク・ディービスのアクプリル(登録商標))、ラミプリル(例えばヘキスト・マリオン・ルセル、キング・ファーマシューティカルのアルタース(登録商標))、イミダプル、ペリンドプリル エルビミン(例えばローヌ・プーラン ローラーのアセオン(登録商標))、トランドラプリル(例えばノル・ファーマシューティカルのマビック(登録商標))等を含む。
【0167】
脂質系製剤
ある実施態様では、本発明のペプチドは、1以上の脂質と共投与する。当該脂質は、当該ペプチドの保護及び/又は輸送/取り込みの亢進するために、活性物質及び/又は賦形剤として調剤化することができ、あるいは別々に投与することができる。
【0168】
特定の理論に拘束されることなく、特定のリン脂質の投与(例えば経口投与)が著しくHDL/LDL率を増やすことができることは、本発明において発見された。更に、特定の中等度の長さのリン脂質は、一般的な脂質輸送に含まれるプロセスとは異なったプロセスによって輸送されると考えられる。従って、特定の中等度の長さのリン脂質と本発明のペプチドとの共投与は、多数の利益を提供する。それは、消化又は加水分解からリン脂質を保護し、HDL/LDL率を改善する。
【0169】
脂質は、本発明のポリペプチドをカプセル化するリポソーム中に形成することができ、ポリペプチドと簡単に複合化/混合することができる。リポソームを形成し、試薬をカプセル化する方法は、当業者に周知である(例えば、Martin and Papahadjopoulos (1982) J. Biol. Chem., 257: 286-288; Papahadjopoulos et al., (1991) Proc Natl. Acad. Sci. USA, 88: 11460-11464; Huang et al., (1992) Cancer Res., 52: 6774-6781; Lasic et al., (1992) FEBS Lett., 312: 255-258等を参照されたい)。
【0170】
当該方法で使用するための好ましいリン脂質は、sn−1及びsn−2の位置に、約4炭素原子〜約24炭素原子の範囲の脂肪酸を有する。ある好ましい実施態様では、脂肪酸は飽和である。他の好ましい実施態様では、脂肪酸は不飽和でもよい。種々の好ましい脂肪酸を表2に示す。
【0171】
【表5】
【0172】
かかる位置の脂肪酸は、同じでも異なっていてもよい。特に好ましいリン脂質は、sn−3の位置にホスホリルコリンを有する。
【0173】
XII.キット
別の実施態様では、本発明は、アテローム性動脈硬化症の1以上の症状の緩和のための及び/又はアテローム性動脈硬化症の危険にある対象(例えば人又は動物)の予防的治療のための及び/又は未β高密度リポ蛋白様粒子の形成及び循環を刺激するための及び/又は骨粗鬆症の1以上の症状を抑制するためのキットを提供する。当該キットは、好ましくは、1以上の本発明のポリヌクレオチド又は模倣ペプチドを含む容器を含む。当該ペプチド又は模倣ペプチドは、単位投薬製剤(例えば座薬、錠剤、キャプレット、貼付剤等)で提供することができ、及び/又は場合により1以上の薬学的に許容される賦形剤と混合することができる。
【0174】
当該キットは、場合により、心疾患及び/又はアテローム性動脈硬化症の治療に使用される1以上の他の物質を更に含むことができる。かかる物質は、例えば上記のβ遮断薬、血管拡張薬、アスピリン、スタチン、ace阻害剤又はace受容体阻害剤(ARBs)等を含むが、これらに限定されない。
【0175】
ある好ましい実施態様では、当該キットは、ペプチド(ペプチド類)と別々に製剤化された又は組み合わされて製剤化されたスタチン(例えばセリバスタチン、アトルバスタチン、シムバスタチン、プラバスタチン、フラバスタチン、ロバスタチン、ロスバスタチン、ピタバスタチン等)を含む。典型的には、当該製剤中のスタチンの投薬量は、相乗的ペプチドなしで典型的に処方されたスタチンの投薬量よりも低くてよい。
【0176】
更に、当該キットは、場合により、本発明の「治療学」又は「予防学」の方法又は使用の実施のための指示(すなわちプロトコール)を与える標識及び/又は指示的材料を含む。好ましい指示的材料は、アテローム性動脈硬化症の1以上の症状を軽減し、及び/又はアテローム性動脈硬化症の危険にある個体のかかる症状の1以上の発現もしくは増大を回避し、及び/又は未β高密度リポ蛋白様粒子の形成及び循環を刺激し、及び/又は骨粗鬆症の1以上の症状を抑制するために、本発明の1以上のポリペプチドの使用を記載する。指示的材料はまた、場合により、好ましい投薬量/治療処方、カウンター指示等を教示してもよい。
【0177】
当該指示的材料は、典型的には、記載された又は印刷された材料を含むが、当該材料は、そのようなものに限定されない。かかる指示的材料を含み、末端の使用者にそれらを伝達することができるいずれかの媒体は、本発明で画されている。かかる媒体は、電子記憶装置媒体(例えば磁気ディスク、テープ、カートリッジ、チップ)、光媒体(例えばCDROM)等を含むが、これらに限定されない。かかる媒体は、かかる指示的材料を提供するインターネットサイトへのアドレスを含む。
【実施例】
【0178】
以下の実施例は例示に過ぎず、本発明の範囲を限定するものではない。
【0179】
実施例1
未−β高密度リポ蛋白様粒子の形成及び循環を刺激することによる脂質輸送及び解毒作用
経口投与のD−4F血清濃度を注射によって得られた濃度と比較した。図1は、アポEヌルマウスへの胃管による14C−D−4F投与の結果を示す。血液試料を図1に示す各時点で採取した。
【0180】
図2は、D−4Fの同量及び放射活性をマウスの尾に静脈注射した後の血漿中の放射活性を示す。図1及び2のデータは、経口投与後2時間、IV注射後に見られた放射活性の約1.2%が血漿中に存在した、ことを示す。多数の研究から、我々は、D−4Fの経口投与の約1%が吸収されると結論した。
【0181】
低吸収の結果から、D−4Fは、生物的に活性でないと考えられる。標準マウス血漿は、アポA−Iを100mg/dl又は1mg/mlのオーダーで含む。アポEヌルマウスは低HDL−コレステロールレベルを有するため、そのアポA−Iレベルが標準の5分の1に過ぎない場合には、約0.20mg/mlのアポA−Iを有する。500μgのD−4Fをマウスの胃に注入し、その1%のみが吸収された場合、5μgのD−4Fを約1.5mlのマウス血漿に添加すると、マウス血漿1ml当たり、約3.3μgのD−4Fが吸収されたこととなる。従って、アポEヌルマウス血漿が既に約200μgのアポA−Iを含む場合、マウス血漿1ml当たり約3.3μgのD−4Fがどのように脂質輸送に影響を与えるか。
【0182】
他の研究では、生理食塩水又は500μgの[14C]−D−4FをアポEヌルマウスの胃に注入後10分では、血漿中にはD−4Fが検出できなかった。しかしながら、D−4Fを与えた後20分では、血漿中にD−4Fが検出できた。当該血漿をFPLCによって分画した場合、分画30でHDLピークが溶出し、FPLC分画35〜37(図3では、標識CCP)でD−4Fが溶出した。D−4Fが存在しない場合(D−4Fなし)、分画35は、ウェスタンブロッティングによるいくらかのアポA−Iを含み、分画36はアポA−Iを若干含み、分画37は検出可能なアポA−Iをほとんど含まなかった(図3)。更に、D−4Fが存在しない場合、アポA−Iを含む粒子のサイズは、PAGEによって約10.5nmであった(図3)。D−4Fを与えた(D−4Fあり)後20分では、ウェスタンブロッティングによって、分画35はいくらかのアポA−Iを含み、分画36はより多くのアポA−Iを含み、分画37は分画35よりも多くアポA−Iを含んだが、分画36では少量であった(図3)。しかしながら、D−4Fを与えた後、分画35〜37中のアポA−Iを含む粒子は、より小さかった(10.5nmに対し、8.5nm)(図3のD−4Fあり、CCPを参照されたい)。
【0183】
LC−MRMによって、D−4Fを経口投与した後20分では、分画35〜37もD−4Fを含むことが判った(図4)。この結果は、14C−D−4Fについても確認された。更に、D−4F経口投与後、アポA−Iを含む分画35〜37の小粒子は、パラオキソナーゼ活性を有し、コレステロールを含有した(図5の下段パネル)。D−4Fが存在しない場合、分画35〜37は、全くパラオキソナーゼ活性を含まず、コレステロール活性があったとしても僅かであった(図5の上段パネル)。
【0184】
図5の下段パネルは、D−4F投与後にHDLの右側に現れるコレステロール含有粒子(CCP)を有する分画を示す。図5の下段パネルから明らかなように、CCP分画は、D−4F投与後にパラオキソナーゼ(PON)活性を含んだ。
【0185】
図3に示したように、D−4Fを経口投与した、分画35〜37をPAGEによって分析した後、当該粒子は、約8.5nmの大きさであった。当該分画をpreparativePAGEで精製し、逆染色電子顕微鏡法で試験すると、その大きさは、PAGEによる推定を確認する8〜9nmと決定した。D−4F経口投与後6.5時間までに、D−4Fのほとんどの全ては、リポ蛋白を含有するBよりも10倍を超えるHDLに対する高い親和性を有する大リポ蛋白粒子に移動した。14C−D−4Fを尾静脈注射によって与えた20分後には、胃管による経口投与後に比べて、血漿中では100倍を超えるD−4Fが存在した。しかしながら、FPLC分画35〜37中のD−4Fの量は、経口投与後に比べて、注射後には約2倍を超えて高いにすぎなかった(データ非表示)。
【0186】
我々は、腸からの吸収の20分後、D−4Fは、アポA−I及びパラキソナーゼを比較的高含量で含む、小さな未βHDL様粒子を形成すると、結論付けている。実際、当該未βHDL様粒子の量をウェスタンブロッティングから推定し、アポA−Iの量と当該粒子中のD−4Fの量との比較(放射活性又はLC−MRMによって決定される)は、D−4Fが腸から吸収されるため、当該未βHDL様粒子の形成を引き起こす触媒として作用する、ことを示唆している。この少量の腸由来のD−4Fは、アポA−I、パラオキソナーゼ及びコレステロールの量を、D−4Fの量よりも大きいオーダーの当該粒子中に何とかして補う。
【0187】
D−4F投与20分後に生成した未βHDL様粒子(CCP)中のアポA−I、D−4F及びパラオキソナーゼの量に基いて、当該未βHDL様粒子が、酸化脂質を解毒し、また動脈壁差細胞に、単球走化性活性の発現によって明らかにされる炎症応答を生じないようにすることを予測することができる。図6に示した実験は、実際に当該ケースに当てはまることを示している。図6から明らかなように、D−4Fを与えなかったアポEヌルマウスからの血漿のFPLC分離後の未βHDL様粒子領域(CCP)は、HPODEによるPAPCの酸化を促進し、前炎症性であった。反対に、D−4FのアポEヌルマウスへの経口投与後では、当該分画はHPODE(脂質を解毒した)によるPAPCの酸化を抑制し、抗炎症性であった。更に、D−4F投与後、未βHDL様粒子の抗炎症特性は、D−4F投与後のアポEヌルHDLの5倍を超える濃度で得られるものと同様であった。図6からも明らかなように、D−4F投与後のアポEヌルHDLは、D−4Fを投与しない標準的なヒトHDLによって得られるのと同様な脂質解毒度を、7倍を超える濃度で得た。従って、D−4F投与後のアポEヌルマウス中の未βHDL様粒子は、標準的ヒトHDLよりも約35倍高く、脂質を解毒し、また動脈壁差細胞に、単球走化性活性を発現させないようにすることができる。
【0188】
図7から明らかなように、当該粒子の行方を長期にわたって追及するために、D−4Fを新規な蛍光プローブで標識した。LD受容体ヌル雌性マウス8週齢(各群5匹)に、胃管によって、22μg/マウスのN−メチル アンスラニリル−D−4Fを与え、次いで1、2又は8時間後に採血した。その血漿をFPLCによって分画し、コレステロール及び蛍光を分析した。1時間時点を図8A示す。2時間時点を図8Bに示し、8時間時点を図8Cに示す。
【0189】
吸収によれば、D−4Fは、急速に比較的大量のアポA−I及びパラオキソナーゼを補い、逆コレステロール輸送を促進し、生物的に活性な酸化脂質を破壊するための最も可能性のある粒子である未−βHDL様粒子を形成する。当該粒子の形成及び成熟したHDLへの次の急速な取り込みが、ウェスタン節食状態にあるLDL受容体ヌルマウスで、及び血漿コレステロール又はHDL−コレステロールの変化に無関係な接食状態にあるアポEヌルマウスで我々が観察した、アテローム性動脈硬化症の劇的な軽減をおそらく説明すると、我々は考えている。当該データから、本発明のペプチドの投与は、脂質輸送を促進し、また未β高密度リポ蛋白様粒子の形成及び循環を刺激することによって「解毒」することができると、我々は考えている。
【0190】
実施例2
アテローム性動脈硬化症を緩和するために、スタチンと経口投与されたペプチド間の相乗作用
節食状態のアポEヌルマウス3ケ月齢に、飲料水のみ(水)、又は1μg/mlのD−4Fもしくは0.05μg/mlのアトルバスタチンもしくは0.05μg/mlのプラバスタチンもしくは1μg/mlのD−4F及び0.05μg/mlのアトルバスタチンもしくは1μg/mlのD−4F及び0.05μg/mlのプラバスタチンを含む飲料水を与えた。24時間後、マウスを採血し、そのHDLをヒト動脈壁共培養モデルで試験した。20μgの1−パルミトリル−2−アラキドニル−sn−グリセロ−3−ホスホリルコリン(PAPC)を、前記のように(Navab et al., (2001) J Lipid Res., 42: 1308-1317)、1μg/mlのヒドロペルオキシエイコサテトラエノール酸(HPODE)と共にヒト動脈壁細胞の共培養物に添加した。ヒトHDL(h,HDL)を350μg/mlコレステロールで共培養物に添加又は添加しなかった(非添加)、あるいは、飲料水のみ(水)を与えたマウスからFPLCによって単離されたマウスHDL又はX軸に示した添加物を、50μg/ml HDL−コレステロールで当該共培養物に添加した。インキュベーションの8時間後、上清を集め、標準神経プローブ・チェンバーを用いて単球走化性活性を試験した。
【0191】
結果を図9に示す。図9から明らかなように、1μg/mlのD−4FのアポEヌルマウスの飲料水への24時間の添加は、HDL機能を著しく改善しなかった。図9はまた、0.05mg/mlのアトルバスタチン又はプラバスタチンのみのアポEヌルマウスの飲料水への24時間の添加が、HDL機能を著しく改善しなかったことを示す。しかしながら、図9は、D−4F 1μg/mlが0.05mg/mlのアトルバスタチン又はプラバスタチンと共に飲料水に添加された場合に、HDL機能が顕著に改善されたことを示している。実際に、前炎症アポEヌルHDLは、350μg/mlの標準的ヒトHDL(h,HDL)(*=p<0.05)と同程度の抗炎症性を示した。
【0192】
従って、D−4Fのみ又はスタチンのみの投薬量は、一緒に与えられる場合には、それ自身では、HDL機能に何の影響も与えず、相乗的に作用した。D−4F及びスタチンがアポEヌルマウスに一緒に与えられる場合には、ヒト動脈壁細胞の共培養物中のPAPCを酸化するHPODEの作用によって誘導された炎症応答を抑制する点で、50μg/mlのHDLコレステロールにおけるその前炎症HDLは、350μg/mlのHDL−コレステロールにおいて、標準的ヒトHDLと同様に効果的であった。
【0193】
実施例3
骨粗鬆症を軽減するための経口投与ペプチドの使用
1mg/mlのD−4F(Ac−D−W−F−K−A−F−Y−D−K−V−A−E−K−F−K−E−A−F−NH2、配列番号5)を、アポEヌルマウス(1群8匹)の飲料水に添加又は添加しなかった。6週間後、マウスを安楽死させ、各マウスの左大腿を取り外し、定量的CTスキャニングによって分析し、BMDを測定した。スキャンは、各大腿について、4縦軸位置(スライス)で、末端に近くで1回、中心の近くで4回行った。BMDの値は、平均±SEMで表す。
【0194】
アポEヌルマウスの飲料水にD−4Fを6週間添加すると、小柱骨塩密度が劇的に増加した(表3)。
【0195】
【表6】
【0196】
ビスホスホネートが小柱骨に特に活性があることは興味深い(Bohic et al., (2000) Bone, 26: 341-348; Ramamurthy et al., (2001) Curr Med Chem., 8: 295-303; Rohanizadeh et al., (2000) Calcif Tissue Int., 67: 330-336; Rodan (1997) Bone 20: 1-4)。D−4Fは、当該マウスにおいて脂質プロファイルを変えないことが測定されたため、ペプチドの有益な効果が、骨に与える酸化脂質の阻害効果との関連による可能性がある。我々のデータは、骨芽細胞又は溶骨細胞に対する作用を識別することはできないが、当該予備的データは、D−4Fが骨粗鬆症を抑制/回避/治療するための優れた物質であることを強く示唆する。
【0197】
実施例4
「L」型ペプチドは効果的である
本発明のペプチドは、Dアミノ酸から合成される場合には、全てLアミノ酸を含むペプチド(「L−型ペプチド」)よりも、経口投与の場合により効果的であった。このことは、本出願の先行文献(全て本明細書に参考として組み込んだ、例えばUSSN 09/645,454、09/896,841、10/187,215及び10/273,386)において提供された実施例に十分に説明されている。例えば、PCT/US01/26497(国際公開第02/15923号パンフレット)で公表された明細書であるUSSN 10/187,215(’215出願)の第46頁〜第57頁に記載の実施例1には、L−アミノ酸から合成された5Fとして知られているペプチド(第27頁の表1の配列番号6)が注射によって与えられる場合に、6.22時間のT1/2を有するマウスの循環から除かれ(第51頁の表3を参照されたい)、無毒性であり(第52頁及び’215出願の第52頁の表4を参照されたい)、抗原性がなく(第53頁の冒頭を参照されたい)、LDLの酸化を抑制し、またヒト動脈壁細胞共培養物中のLDL−誘導単球走化性活性を回避するマウスHDL能力を劇的に改善した(第54頁及び図7を参照されたい)という証拠が提供されている。更に、第54頁の下部及び’215出願の図8から明らかなように、当該5Fペプチドの注射は、劇的にマウスのアテローム性動脈硬化のを低減した。
【0198】
第73頁の下部にある’215出願の実施例3及び図18では、L−アミノ酸から全て合成されている4F、5F及び6Fのインキュベーションは、ヒト動脈壁細胞共培養物中のLDL−誘導単球走化性活性を劇的に低減した、ことを我々は証明した。
【0199】
第78頁の下部に示した’215出願の実施例5及び図22Aでは、ペプチド4Fは、マウスに口から与えた場合に、当該ペプチドがD−アミノ酸から合成されている場合よりも、L−アミノ酸から合成されている場合に、より分解された。しかしながら、図22Aから明らかなように、完全なペプチドの中には、L−4Fの経口投与後の循環で見られるものもあった。更に、図22Bから明らかなように、マウスHDLは、ヒト動脈壁細胞がヒトLDLに暴露された場合に、単球走化性活性を抑制するその能力の点で、L−4Fの経口投与後に改善された。しかし、HDLの抗炎症特性の改善は、当該ペプチドが全てDアミノ酸から合成されている場合ほど劇的ではなかった。
【0200】
要約すると、本出願の先行文献に記載され、本明細書に参考として組み込まれた実施例は、D−型ペプチドは、経口で与えられる場合により効果的であるが、本発明のペプチドの投与は、Lアミノ酸から合成されようが又はDアミノ酸から合成されようが、効果的であることを証明している。
【0201】
本明細書に記載された実施例及び実施態様は、本発明の目的の例示にすぎず、種々の軽度な修飾又は変化は、当業者に連想されるだろうし、また本出願の精神や範囲及び添付された請求の範囲の中に含まれることとなる。本明細書に列挙された全ての刊行物、特許及び特許出願は、全ての目的のためにその全体を参考として組み込んだ。
【図面の簡単な説明】
【0202】
【図1】図1は、マウス血漿における14C−D−4Fの検出を示す。l22μgの14C−D−4F、140,000DPMを含む水100μlを、4ケ月齢雌性アポEヌルマウスに胃管によって投与した。血液試料を各時点(各時点当たり、n=4マウス)で採取し、1.0mlの血漿中の血漿14C放射活性を測定した。
【図2】図2は、D−4Fの血中濃度を示す。24μgの14C−D−4Fを含む水100μlを、4ケ月齢雌性アポEヌルマウスの尾の静脈注射によって投与した(各時点当たり、n=4マウス)。血液試料を各時点で採取し、1.0mlの血漿中の14C放射活性を測定した。
【図3】図3は、マウスアポA−Iのウェスタンブッロトの結果を示す。アポEヌルマウスに、採血の20分前に胃管によって500μgのD−4F(+D−4F)を投与又は非投与(D−4Fなし)した。血漿をFPLCによって分離し、分画30、35、36及び37を、nativePAGE及びマウスアポA−Iに対する高血清を用いるウェスタンブロッティングによって分析した。粒子の直径を左に示す(FPLC Fxnは、FPLC分画番号を示し;HDLピークは、分画30を示し;CCPは分画35〜37を示す)。
【図4A】図4Aは、LC−MRM分析の結果を示す。500μgのD−4FをアポEヌルマウスの胃に注入した20分後に、マウスを採血し、その血漿をFPLCによって分画し、内部標準としてD−5Fを添加した後、その分画をLC−MRMによって分析した。図4Aは、溶媒ブランクを示す。
【図4B】図4Bは、LC−MRM分析の結果を示す。500μgのD−4FをアポEヌルマウスの胃に注入した20分後に、マウスを採血し、その血漿をFPLCによって分画し、内部標準としてD−5Fを添加した後、その分画をLC−MRMによって分析した。図4Bは、D−4F(上段)及びD−5F(下段)の標準を示す。
【図4C】図4Cは、LC−MRM分析の結果を示す。500μgのD−4FをアポEヌルマウスの胃に注入した20分後に、マウスを採血し、その血漿をFPLCによって分画し、内部標準としてD−5Fを添加した後、その分画をLC−MRMによって分析した。図4Cは、上段パネルのD−4Fについての、プールしたFPLC分画35〜37の分析結果を、下段パネルの内部標準D−5Fの結果と共に示す。
【図5】図5は、コレステロール及びパラオキソナーゼ活性を示す。生理食塩水(D−4Fなし、上段パネル)又は500μgのD−4F(D−4Fあり、下段パネル)をアポEヌルマウスの胃に注入した20分後に、マウスを採血し、その血漿をFPLCによって分画し、各分画中のコレステロール(濃黒線)及びパラオキソナーゼ(PON)活性(淡黒線)を測定した。下段パネルは、D−4F投与後に、HDLの右側に現れる、粒子含有コレステロール(CCP)を有する分画を示す。下段のパネルから明らかなように、CCP分画もまた、D−4F投与後に、PON活性を有した。
【図6】図6は、脂質を解毒化し、ヒト動脈壁細胞に炎症反応(単球走化性活性)を生じないようにする未βHDL様粒子(CCP)の能力を示す。水又は500μgのD−4FをアポEヌルマウスの胃に注入した。20分後、マウスを採血し、その血漿をFPLCによって分画した。HDLを含む分画28〜30及び未βHDL様粒子(CCP)を含む分画35〜37。前記のように(Navab et al., (2001) J Lipid Res., 42: 1308-1317)、20μgの1−パルミトイル−2−アラキドニル−sn−グリセロ−3−ホスホリルコリン(PAPC)を、1μg/mlのヒドロペルオキシエイコサテトラエノール酸(HPODE)と共にヒト動脈壁細胞の共培養物に添加した。ヒトHDL(h,HDL)を350μg/mlコレステロールで共培養物に添加又は添加しなかった(非添加)、あるいは、水のみ(水コントロールCCP)もしくはD−4F(D−4F CCP)を10μg/mlコレステロールで与えた後に、水のみ(水コントロールHDL)もしくはD−4F(D−4F HDL)を50μg/ml HDL−コレステロールで又は未βHDL様粒子分画(分画35〜37)を与えたマウスからFPLC(分画28〜30)によって単離されたマウスHDLを、当該共培養物に添加した。インキュベーションの8時間後、上清を集め、標準神経プローブ・チェンバーを用いて単球走化性活性を試験した。データは、三つ組試料についての9領域における移動単球の数の平均±SDである。
【図7】図7は、N−メチル アンスラニリル−D−4Fの式を示す。4Fポリペプチドの2つの末端アミノ酸のみが見られる。
【図8A】図8Aは、D−4F及び血漿コレステロールの時間的経過を示す。LDL受容体8週齢のヌル雌性マウス(1群5匹)に、22μg/マウスのN−メチル アンスラニリル−D−4Fを胃管によって与え、次いで1、2又は8時間後に採血した。その血漿をFPLCで分画し、コレステロール及び蛍光を分析した。1時間時点を図8Aに示す。
【図8B】図8Bは、D−4F及び血漿コレステロールの時間的経過を示す。LDL受容体8週齢のヌル雌性マウス(1群5匹)に、22μg/マウスのN−メチル アンスラニリル−D−4Fを胃管によって与え、次いで1、2又は8時間後に採血した。その血漿をFPLCで分画し、コレステロール及び蛍光を分析した。2時間時点を図8Bに示す。
【図8C】図8Cは、D−4F及び血漿コレステロールの時間的経過を示す。LDL受容体8週齢のヌル雌性マウス(1群5匹)に、22μg/マウスのN−メチル アンスラニリル−D−4Fを胃管によって与え、次いで1、2又は8時間後に採血した。その血漿をFPLCで分画し、コレステロール及び蛍光を分析した。8時間時点を図8Cに示す。
【図9】図9は、HDL保護能の回復におけるスタチン及びD−4Fの相乗効果を示す。節食状態のアポEヌル雌性マウス3ケ月齢に、飲料水のみ(水)、又は1μg/mlのD−4F、もしくは0.05μg/mlのアトルバスタチン、もしくは0.05μg/mlのプラバスタチン、もしくは1μg/mlのD−4Fと0.05μg/mlのアトルバスタチン、もしくは1μg/mlのD−4Fと0.05μg/mlのプラバスタチンを含む飲料水を与えた。24時間後、マウスを採血し、そのHDLをヒト動脈壁共培養モデルで試験した。20μgの1−パルミトイル−2−アラキドニル−sn−グリセロ−3−ホスホリルコリン(PAPC)を、前記のように(Navab et al., (2001) J Lipid Res., 42: 1308-1317)、1μg/mlのヒドロペルオキシエイコサテトラエノール酸(HPODE)と共にヒト動脈壁細胞の共培養物に添加した。ヒトHDL(h,HDL)を350μg/mlコレステロールで共培養物に添加又は添加しなかった(非添加)、あるいは、飲料水のみ(水)を与えたマウスからFPLCによって単離されたマウスHDL又はX軸に示した添加物を、50μg/ml HDL−コレステロールで当該共培養物に添加した。インキュベーションの8時間後、上清を集め、標準神経プローブ・チェンバーを用いて単球走化性活性を試験した。データは、2つの別々の実験の各々から得られた三つ組試料について、9領域における移動単球の数の平均±SDである。アスタリスクは、その混合物の値と比較した個々の化合物の値間で、p<0.05レベルの統計的な有意差を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
E−W−F−K−A−F−Y−E−K−V−A−E−K−F−K−E−A−F(配列番号:86)、
D−W−F−K−A−F−Y−D−K−V−A−E−K−F(配列番号:87)、
F−K−A−F−Y−D−K−V−A−E−K−F−K−E(配列番号:88)、
F−K−A−F−Y−E−K−V−A−E−K−F−K−E(配列番号:89)、
F−K−A−F−Y−D−K−V−A−E−K−F−K−E(配列番号:90)、
F−K−A−F−Y−E−K−V−A−E−K−F−K−E(配列番号:91)、
D−W−F−K−A−F−Y−D−K−V−A−E−K−F−K−E−A−F(配列番号:92)、
E−W−F−K−A−F−Y−E−K−V−A−E−K−F−K−E−A−F(配列番号:93)、
A−F−Y−D−K−V−A−E−K−F−K−E−A−F(配列番号:94)、
D−W−F−K−A−F−Y−D−K−V−A−E−K−F(配列番号:95)、
D−W−L−K−A−F−Y−D−K−V−F−E−K−F−K−E−F−F(配列番号:96)、
E−W−L−K−A−F−Y−E−K−V−F−E−K−F−K−E−F−F(配列番号:97)、
A−F−Y−D−K−V−F−E−K−F−K−E−F−F(配列番号:98)、
A−F−Y−E−K−V−F−E−K−F−K−E−F−F(配列番号:99)、
D−W−L−K−A−F−Y−D−K−V−F−E−K−F(配列番号:100)、
E−W−L−K−A−F−Y−E−K−V−F−E−K−F(配列番号:101)、
L−K−A−F−Y−D−K−V−F−E−K−F−K−E(配列番号:102)、及び
L−K−A−F−Y−E−K−V−F−E−K−F−K−E(配列番号:103)
からなる群より独立して選ばれる1以上のアミノ酸配列を含む、アテローム性動脈硬化症の1以上の症状を改善するペプチド。
【請求項2】
少なくとも10アミノ酸長である、請求項1記載のペプチド。
【請求項3】
約40以下のアミノ酸長である、請求項2記載のペプチド。
【請求項4】
全てのアミノ酸が、「L」アミノ酸である、請求項1記載のペプチド。
【請求項5】
少なくとも一つの「D」アミノ酸を含む、請求項1記載のペプチド。
【請求項6】
複数の「D」アミノ酸を含む、請求項1記載のペプチド。
【請求項7】
鏡像異性アミノ酸の少なくとも半数が、「D」アミノ酸である、請求項1記載のペプチド。
【請求項8】
鏡像異性アミノ酸の全てが、「D」アミノ酸である、請求項1記載のペプチド。
【請求項9】
アミノ酸及び/又はカルボキシル末端に結合された保護基を更に含む、請求項1記載のペプチド。
【請求項10】
前記保護基が、アセチル(Ac)、アミド、3〜20の炭素原子のアルキル基、Fmoc、t−ブトキシカルボニル(Tboc)、9−フルオレンアセチル基、1−フルオレンカルボン酸基、9−フルオレンカルボン酸基、9−フルオレノン−1−カルボン酸基、ベンジルオキシカルボニル、キサンチル(Xan)、トリチル(Trt)、4−メチルトリチル(Mtt)、4−メトキシトリチル(Mmt)、4−メトキシ−2,3,6−トリメチル−ベンゼンスルホニル(Mtr)、メシチレン−2−スルホニル(Mts)、4,4−ジメトキシベンズヒドリル(Mbh)、トシル(Tos)、2,2,5,7,8−ペンタメチル クロマン−6−スルホニル(Pmc)、4−メチルベンジル(MeBzl)、4−メトキシベンジル(MeOBzl)、ベンジルオキシ(BzlO)、ベンジル(Bzl)、ベンゾイル(Bz)、3−ニトロ−2−ピリジンスルフェニル(Npys)、1−(4,4,−ジメチル−2,6−ジオキソシクロヘキシリデン)エチル(Dde)、2,6−ジクロロベンジル(2,6−DiCl−Bzl)、2−クロロベンジルオキシカルボニル(2−Cl−Z)、2−ブロモベンジルオキシカルボニル(2−Br−Z)、ベンジルオキシメチル(Bom)、シクロヘキシルオキシ(cHxO)、t−ブトキシメチル(Bum)、t−ブトキシ(tBuO)、t−ブチル(tBu)及びトリフルオロアセチル(TFA)からなる群より選ばれる保護基である、請求項9記載のペプチド。
【請求項11】
アミノ酸末端に結合された第一保護基及びカルボキシル末端に結合された第二保護基を更に含む、請求項1記載のペプチド。
【請求項12】
薬理的に許容される賦形剤と混合される、請求項1記載のペプチド。
【請求項13】
哺乳動物への経口投与に好適な薬理的に許容される賦形剤と混合される、請求項1記載のペプチド。
【請求項14】
アミノ末端に結合された保護基を含み、かつ当該アミノ末端保護基が、ベンゾイル基、アセチル、プロピオニル、カルボベンゾキシ、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、N−メチル アンスラニリル及び3〜20の炭素原子のアルキルからなる群より選ばれる保護基である、請求項9記載のペプチド。
【請求項15】
カルボキシル末端に結合された保護基を含み、かつ当該カルボキシル末端保護基がアミドである、請求項9記載のペプチド。
【請求項16】
アミノ酸末端に結合された第一保護基及びカルボキシル末端に結合された第二保護基を更に含む、請求項1記載のペプチド。
【請求項17】
ベンゾイル基、アセチル、プロピオニル、カルボベンゾキシ、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、N−メチル アンスラニリル及び3〜20炭素原子のアルキルからなる群より選ばれるアミノ末端に結合された第一保護基;並びに、カルボキシル末端に結合された第二保護基を更に含み、かつ当該カルボキシル末端保護基がアミドである、請求項16記載のペプチド。
【請求項18】
リン脂質が、1−パルミトイル−2−アラキドノイル−sn−グリセロ−3−ホスホリルコリン(PAPC)、1−ステアロイル−2−アラキドノイル−sn−グリセロ−3−ホスホリルコリン(SAPC)、1−ステアロイル−2−アラキドノイル−sn−グリセロ−3−ホスホリルエタノールアミン(SAPE)からなる群より選ばれる、請求項1記載のペプチド。
【請求項19】
薬学的に許容される賦形剤において単位製剤として提供される、請求項1記載のペプチド。
【請求項20】
徐放製剤として提供される、請求項1記載のペプチド。
【請求項21】
請求項1記載のペプチドの有効量を哺乳動物に投与することを含む、当該哺乳動物のアテローム性動脈硬化症の1以上の症状を緩和する方法。
【請求項22】
前記ペプチドが、薬学的に許容される賦形剤中にある、請求項21記載の方法。
【請求項23】
前記ペプチドが、経口投与に好適な薬学的に許容される賦形剤中にある、請求項21記載の方法。
【請求項24】
前記ペプチドが、単位投薬製剤として投与される、請求項21記載の方法。
【請求項25】
前記投与が、経口投与、鼻腔内投与、直腸投与、腹腔内注射、静脈内注射、皮下注射、経皮的投与及び筋肉内注射からなる群より選ばれる経路によって前記ペプチドを投与することを含む、請求項21記載の方法。
【請求項26】
前記哺乳動物が、アテローム性動脈硬化症の1以上の症状を有すると診断された哺乳動物である、請求項21記載の方法。
【請求項27】
前記哺乳動物が、卒中又はアテローム性動脈硬化症の危険にあると診断された哺乳動物である、請求項21記載の方法。
【請求項28】
前記哺乳動物がヒトである、請求項21記載の方法。
【請求項29】
前記哺乳動物がヒト以外の動物である、請求項21記載の方法。
【請求項30】
請求項1記載のペプチドの有効量をスタチンと共投与することを含む、哺乳動物のスタチンの活性を亢進する方法。
【請求項31】
前記スタチンが、セリバスタチン、アトルバスタチン、シムバスタチン、プラバスタチン、フラバスタチン、ロバスタチン、ロスバスタチン及びピタバスタチンからなる群より選ばれる、請求項30記載の方法。
【請求項32】
前記ペプチドが、前記スタチンと同時に投与される、請求項30記載の方法。
【請求項33】
前記ペプチドが、前記スタチンの前に投与される、請求項30記載の方法。
【請求項34】
前記ペプチドが、前記スタチンの後に投与される、請求項30記載の方法。
【請求項35】
前記ペプチド及び/又は前記スタチンが、単位投薬製剤として投与される、請求項30記載の方法。
【請求項36】
前記投与が、経口投与、鼻腔内投与、直腸投与、腹腔内注射、静脈内注射、皮下注射、経皮的投与及び筋肉内注射からなる群より選ばれる経路によって、前記ペプチド及び/又は前記スタチンを投与することを含む、請求項30記載の方法。
【請求項37】
前記哺乳動物が、アテローム性動脈硬化症の1以上の症状を有すると診断された哺乳動物である、請求項30記載の方法。
【請求項38】
前記哺乳動物が、卒中又はアテローム性動脈硬化症の危険にあると診断された哺乳動物である、請求項30記載の方法。
【請求項39】
前記動物がヒトである、請求項30記載の方法。
【請求項40】
前記動物がヒト以外の哺乳動物である、請求項30記載の方法。
【請求項41】
スタチンの有効量及び請求項1記載のペプチドの有効量を哺乳動物に投与することを含む、哺乳動物におけるアテローム性動脈硬化症に関連する1以上の症状を緩和する方法であって;当該スタチンの有効量が、当該ペプチドなしに投与されたスタチンの有効量よりも低い、前記方法。
【請求項42】
前記ペプチドの有効量が、スタチンなしに投与された前記ペプチドの有効量よりも低い、請求項41記載の方法。
【請求項43】
前記スタチンが、セリバスタチン、アトルバスタチン、シムバスタチン、プラバスタチン、フラバスタチン、ロバスタチン、ロスバスタチン及びピタバスタチンからなる群より選ばれる、請求項41記載の方法。
【請求項44】
前記ペプチドが、前記スタチンと同時に投与される、請求項41記載の方法。
【請求項45】
前記ペプチドが、前記スタチンの前に投与される、請求項41記載の方法。
【請求項46】
前記ペプチドが、前記スタチンの後に投与される、請求項41記載の方法。
【請求項47】
前記ペプチド及び/又は前記スタチンが、単位投薬製剤として投与される、請求項41記載の方法。
【請求項48】
前記投与が、組成物を経口投与することを含む、請求項41記載の方法。
【請求項49】
前記投与が、経口投与、鼻腔内投与、直腸投与、腹腔内注射、静脈内注射、皮下注射、経皮的投与、吸入投与及び筋肉内注射からなる群より選ばれる経路による、請求項41記載の方法。
【請求項50】
前記哺乳動物が、アテローム性動脈硬化症の1以上の症状を有すると診断された哺乳動物である、請求項41記載の方法。
【請求項51】
前記哺乳動物が、卒中又はアテローム性動脈硬化症の危険にあると診断された哺乳動物である、請求項41記載の方法。
【請求項52】
前記動物がヒトである、請求項41記載の方法。
【請求項53】
前記動物がヒト以外の哺乳動物である、請求項41記載の方法。
【請求項54】
スタチン;及び、約10〜30のアミノ酸長の範囲にあり;少なくとも一つのクラスA両親媒性ヘリックスを含み;酸化剤による酸化からリン脂質を保護し;かつ、D−18Aペプチドでない、ペプチド又はペプチドのコンカテマーを含む医薬製剤。
【請求項55】
前記ペプチドが、少なくとも一つの「D」アミノ酸残基を含む、請求項54記載の医薬製剤。
【請求項56】
前記ペプチド及び/又はスタチンが、有効用量で存在する、請求項54記載の医薬製剤。
【請求項57】
前記スタチンの有効量が、前記ペプチドなしに投与された前記スタチンの有効量よりも低い、請求項56記載の医薬製剤。
【請求項58】
前記ペプチドの有効量が、前記スタチンなしに投与された前記ペプチドの有効量よりも低い、請求項56記載の医薬製剤。
【請求項59】
前記スタチンが、セリバスタチン、アトルバスタチン、シムバスタチン、プラバスタチン、フラバスタチン、ロバスタチン、ロスバスタチン及びピタバスタチンからなる群より選ばれる、請求項54記載の医薬製剤。
【請求項60】
前記スタチン及び/又は前記ペプチドが、徐放製剤中にある、請求項54記載の医薬製剤。
【請求項61】
単位投薬製剤として製剤化される、請求項54記載の医薬製剤。
【請求項62】
経口投与のために製剤化される、請求項54記載の医薬製剤。
【請求項63】
経口投与、鼻腔内投与、直腸投与、腹腔内注射、静脈内注射、皮下注射、経皮的投与、吸入投与及び筋肉内注射からなる群より選ばれる経路による投与のために製剤化される、請求項54記載の医薬製剤。
【請求項64】
前記ペプチドが、配列番号5(F4)のアミノ酸配列を含む、請求項54記載の医薬製剤。
【請求項65】
1以上のリン脂質を更に含む、請求項54記載の医薬製剤。
【請求項66】
請求項1記載のペプチドを哺乳動物に投与することを含む、哺乳動物における骨粗鬆症の1以上の症状を軽減又は抑制する方法であって、当該ペプチドが、骨粗鬆症の1以上の症状を軽減又は除去するために十分な濃度で投与される、前記方法。
【請求項67】
前記ペプチドが、骨の脱石灰を軽減又は除去するために十分な濃度で投与される、請求項66記載の方法。
【請求項68】
前記ペプチドが、骨の脱石灰を軽減するために十分な濃度で投与される、請求項66記載の方法。
【請求項69】
前記ペプチドが、薬理的に許容される賦形剤と混合される、請求項66記載の方法。
【請求項70】
前記ペプチドが、哺乳動物への経口投与に好適な薬理的に許容される賦形剤と混合される、請求項66記載の方法。
【請求項1】
E−W−F−K−A−F−Y−E−K−V−A−E−K−F−K−E−A−F(配列番号:86)、
D−W−F−K−A−F−Y−D−K−V−A−E−K−F(配列番号:87)、
F−K−A−F−Y−D−K−V−A−E−K−F−K−E(配列番号:88)、
F−K−A−F−Y−E−K−V−A−E−K−F−K−E(配列番号:89)、
F−K−A−F−Y−D−K−V−A−E−K−F−K−E(配列番号:90)、
F−K−A−F−Y−E−K−V−A−E−K−F−K−E(配列番号:91)、
D−W−F−K−A−F−Y−D−K−V−A−E−K−F−K−E−A−F(配列番号:92)、
E−W−F−K−A−F−Y−E−K−V−A−E−K−F−K−E−A−F(配列番号:93)、
A−F−Y−D−K−V−A−E−K−F−K−E−A−F(配列番号:94)、
D−W−F−K−A−F−Y−D−K−V−A−E−K−F(配列番号:95)、
D−W−L−K−A−F−Y−D−K−V−F−E−K−F−K−E−F−F(配列番号:96)、
E−W−L−K−A−F−Y−E−K−V−F−E−K−F−K−E−F−F(配列番号:97)、
A−F−Y−D−K−V−F−E−K−F−K−E−F−F(配列番号:98)、
A−F−Y−E−K−V−F−E−K−F−K−E−F−F(配列番号:99)、
D−W−L−K−A−F−Y−D−K−V−F−E−K−F(配列番号:100)、
E−W−L−K−A−F−Y−E−K−V−F−E−K−F(配列番号:101)、
L−K−A−F−Y−D−K−V−F−E−K−F−K−E(配列番号:102)、及び
L−K−A−F−Y−E−K−V−F−E−K−F−K−E(配列番号:103)
からなる群より独立して選ばれる1以上のアミノ酸配列を含む、アテローム性動脈硬化症の1以上の症状を改善するペプチド。
【請求項2】
少なくとも10アミノ酸長である、請求項1記載のペプチド。
【請求項3】
約40以下のアミノ酸長である、請求項2記載のペプチド。
【請求項4】
全てのアミノ酸が、「L」アミノ酸である、請求項1記載のペプチド。
【請求項5】
少なくとも一つの「D」アミノ酸を含む、請求項1記載のペプチド。
【請求項6】
複数の「D」アミノ酸を含む、請求項1記載のペプチド。
【請求項7】
鏡像異性アミノ酸の少なくとも半数が、「D」アミノ酸である、請求項1記載のペプチド。
【請求項8】
鏡像異性アミノ酸の全てが、「D」アミノ酸である、請求項1記載のペプチド。
【請求項9】
アミノ酸及び/又はカルボキシル末端に結合された保護基を更に含む、請求項1記載のペプチド。
【請求項10】
前記保護基が、アセチル(Ac)、アミド、3〜20の炭素原子のアルキル基、Fmoc、t−ブトキシカルボニル(Tboc)、9−フルオレンアセチル基、1−フルオレンカルボン酸基、9−フルオレンカルボン酸基、9−フルオレノン−1−カルボン酸基、ベンジルオキシカルボニル、キサンチル(Xan)、トリチル(Trt)、4−メチルトリチル(Mtt)、4−メトキシトリチル(Mmt)、4−メトキシ−2,3,6−トリメチル−ベンゼンスルホニル(Mtr)、メシチレン−2−スルホニル(Mts)、4,4−ジメトキシベンズヒドリル(Mbh)、トシル(Tos)、2,2,5,7,8−ペンタメチル クロマン−6−スルホニル(Pmc)、4−メチルベンジル(MeBzl)、4−メトキシベンジル(MeOBzl)、ベンジルオキシ(BzlO)、ベンジル(Bzl)、ベンゾイル(Bz)、3−ニトロ−2−ピリジンスルフェニル(Npys)、1−(4,4,−ジメチル−2,6−ジオキソシクロヘキシリデン)エチル(Dde)、2,6−ジクロロベンジル(2,6−DiCl−Bzl)、2−クロロベンジルオキシカルボニル(2−Cl−Z)、2−ブロモベンジルオキシカルボニル(2−Br−Z)、ベンジルオキシメチル(Bom)、シクロヘキシルオキシ(cHxO)、t−ブトキシメチル(Bum)、t−ブトキシ(tBuO)、t−ブチル(tBu)及びトリフルオロアセチル(TFA)からなる群より選ばれる保護基である、請求項9記載のペプチド。
【請求項11】
アミノ酸末端に結合された第一保護基及びカルボキシル末端に結合された第二保護基を更に含む、請求項1記載のペプチド。
【請求項12】
薬理的に許容される賦形剤と混合される、請求項1記載のペプチド。
【請求項13】
哺乳動物への経口投与に好適な薬理的に許容される賦形剤と混合される、請求項1記載のペプチド。
【請求項14】
アミノ末端に結合された保護基を含み、かつ当該アミノ末端保護基が、ベンゾイル基、アセチル、プロピオニル、カルボベンゾキシ、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、N−メチル アンスラニリル及び3〜20の炭素原子のアルキルからなる群より選ばれる保護基である、請求項9記載のペプチド。
【請求項15】
カルボキシル末端に結合された保護基を含み、かつ当該カルボキシル末端保護基がアミドである、請求項9記載のペプチド。
【請求項16】
アミノ酸末端に結合された第一保護基及びカルボキシル末端に結合された第二保護基を更に含む、請求項1記載のペプチド。
【請求項17】
ベンゾイル基、アセチル、プロピオニル、カルボベンゾキシ、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、N−メチル アンスラニリル及び3〜20炭素原子のアルキルからなる群より選ばれるアミノ末端に結合された第一保護基;並びに、カルボキシル末端に結合された第二保護基を更に含み、かつ当該カルボキシル末端保護基がアミドである、請求項16記載のペプチド。
【請求項18】
リン脂質が、1−パルミトイル−2−アラキドノイル−sn−グリセロ−3−ホスホリルコリン(PAPC)、1−ステアロイル−2−アラキドノイル−sn−グリセロ−3−ホスホリルコリン(SAPC)、1−ステアロイル−2−アラキドノイル−sn−グリセロ−3−ホスホリルエタノールアミン(SAPE)からなる群より選ばれる、請求項1記載のペプチド。
【請求項19】
薬学的に許容される賦形剤において単位製剤として提供される、請求項1記載のペプチド。
【請求項20】
徐放製剤として提供される、請求項1記載のペプチド。
【請求項21】
請求項1記載のペプチドの有効量を哺乳動物に投与することを含む、当該哺乳動物のアテローム性動脈硬化症の1以上の症状を緩和する方法。
【請求項22】
前記ペプチドが、薬学的に許容される賦形剤中にある、請求項21記載の方法。
【請求項23】
前記ペプチドが、経口投与に好適な薬学的に許容される賦形剤中にある、請求項21記載の方法。
【請求項24】
前記ペプチドが、単位投薬製剤として投与される、請求項21記載の方法。
【請求項25】
前記投与が、経口投与、鼻腔内投与、直腸投与、腹腔内注射、静脈内注射、皮下注射、経皮的投与及び筋肉内注射からなる群より選ばれる経路によって前記ペプチドを投与することを含む、請求項21記載の方法。
【請求項26】
前記哺乳動物が、アテローム性動脈硬化症の1以上の症状を有すると診断された哺乳動物である、請求項21記載の方法。
【請求項27】
前記哺乳動物が、卒中又はアテローム性動脈硬化症の危険にあると診断された哺乳動物である、請求項21記載の方法。
【請求項28】
前記哺乳動物がヒトである、請求項21記載の方法。
【請求項29】
前記哺乳動物がヒト以外の動物である、請求項21記載の方法。
【請求項30】
請求項1記載のペプチドの有効量をスタチンと共投与することを含む、哺乳動物のスタチンの活性を亢進する方法。
【請求項31】
前記スタチンが、セリバスタチン、アトルバスタチン、シムバスタチン、プラバスタチン、フラバスタチン、ロバスタチン、ロスバスタチン及びピタバスタチンからなる群より選ばれる、請求項30記載の方法。
【請求項32】
前記ペプチドが、前記スタチンと同時に投与される、請求項30記載の方法。
【請求項33】
前記ペプチドが、前記スタチンの前に投与される、請求項30記載の方法。
【請求項34】
前記ペプチドが、前記スタチンの後に投与される、請求項30記載の方法。
【請求項35】
前記ペプチド及び/又は前記スタチンが、単位投薬製剤として投与される、請求項30記載の方法。
【請求項36】
前記投与が、経口投与、鼻腔内投与、直腸投与、腹腔内注射、静脈内注射、皮下注射、経皮的投与及び筋肉内注射からなる群より選ばれる経路によって、前記ペプチド及び/又は前記スタチンを投与することを含む、請求項30記載の方法。
【請求項37】
前記哺乳動物が、アテローム性動脈硬化症の1以上の症状を有すると診断された哺乳動物である、請求項30記載の方法。
【請求項38】
前記哺乳動物が、卒中又はアテローム性動脈硬化症の危険にあると診断された哺乳動物である、請求項30記載の方法。
【請求項39】
前記動物がヒトである、請求項30記載の方法。
【請求項40】
前記動物がヒト以外の哺乳動物である、請求項30記載の方法。
【請求項41】
スタチンの有効量及び請求項1記載のペプチドの有効量を哺乳動物に投与することを含む、哺乳動物におけるアテローム性動脈硬化症に関連する1以上の症状を緩和する方法であって;当該スタチンの有効量が、当該ペプチドなしに投与されたスタチンの有効量よりも低い、前記方法。
【請求項42】
前記ペプチドの有効量が、スタチンなしに投与された前記ペプチドの有効量よりも低い、請求項41記載の方法。
【請求項43】
前記スタチンが、セリバスタチン、アトルバスタチン、シムバスタチン、プラバスタチン、フラバスタチン、ロバスタチン、ロスバスタチン及びピタバスタチンからなる群より選ばれる、請求項41記載の方法。
【請求項44】
前記ペプチドが、前記スタチンと同時に投与される、請求項41記載の方法。
【請求項45】
前記ペプチドが、前記スタチンの前に投与される、請求項41記載の方法。
【請求項46】
前記ペプチドが、前記スタチンの後に投与される、請求項41記載の方法。
【請求項47】
前記ペプチド及び/又は前記スタチンが、単位投薬製剤として投与される、請求項41記載の方法。
【請求項48】
前記投与が、組成物を経口投与することを含む、請求項41記載の方法。
【請求項49】
前記投与が、経口投与、鼻腔内投与、直腸投与、腹腔内注射、静脈内注射、皮下注射、経皮的投与、吸入投与及び筋肉内注射からなる群より選ばれる経路による、請求項41記載の方法。
【請求項50】
前記哺乳動物が、アテローム性動脈硬化症の1以上の症状を有すると診断された哺乳動物である、請求項41記載の方法。
【請求項51】
前記哺乳動物が、卒中又はアテローム性動脈硬化症の危険にあると診断された哺乳動物である、請求項41記載の方法。
【請求項52】
前記動物がヒトである、請求項41記載の方法。
【請求項53】
前記動物がヒト以外の哺乳動物である、請求項41記載の方法。
【請求項54】
スタチン;及び、約10〜30のアミノ酸長の範囲にあり;少なくとも一つのクラスA両親媒性ヘリックスを含み;酸化剤による酸化からリン脂質を保護し;かつ、D−18Aペプチドでない、ペプチド又はペプチドのコンカテマーを含む医薬製剤。
【請求項55】
前記ペプチドが、少なくとも一つの「D」アミノ酸残基を含む、請求項54記載の医薬製剤。
【請求項56】
前記ペプチド及び/又はスタチンが、有効用量で存在する、請求項54記載の医薬製剤。
【請求項57】
前記スタチンの有効量が、前記ペプチドなしに投与された前記スタチンの有効量よりも低い、請求項56記載の医薬製剤。
【請求項58】
前記ペプチドの有効量が、前記スタチンなしに投与された前記ペプチドの有効量よりも低い、請求項56記載の医薬製剤。
【請求項59】
前記スタチンが、セリバスタチン、アトルバスタチン、シムバスタチン、プラバスタチン、フラバスタチン、ロバスタチン、ロスバスタチン及びピタバスタチンからなる群より選ばれる、請求項54記載の医薬製剤。
【請求項60】
前記スタチン及び/又は前記ペプチドが、徐放製剤中にある、請求項54記載の医薬製剤。
【請求項61】
単位投薬製剤として製剤化される、請求項54記載の医薬製剤。
【請求項62】
経口投与のために製剤化される、請求項54記載の医薬製剤。
【請求項63】
経口投与、鼻腔内投与、直腸投与、腹腔内注射、静脈内注射、皮下注射、経皮的投与、吸入投与及び筋肉内注射からなる群より選ばれる経路による投与のために製剤化される、請求項54記載の医薬製剤。
【請求項64】
前記ペプチドが、配列番号5(F4)のアミノ酸配列を含む、請求項54記載の医薬製剤。
【請求項65】
1以上のリン脂質を更に含む、請求項54記載の医薬製剤。
【請求項66】
請求項1記載のペプチドを哺乳動物に投与することを含む、哺乳動物における骨粗鬆症の1以上の症状を軽減又は抑制する方法であって、当該ペプチドが、骨粗鬆症の1以上の症状を軽減又は除去するために十分な濃度で投与される、前記方法。
【請求項67】
前記ペプチドが、骨の脱石灰を軽減又は除去するために十分な濃度で投与される、請求項66記載の方法。
【請求項68】
前記ペプチドが、骨の脱石灰を軽減するために十分な濃度で投与される、請求項66記載の方法。
【請求項69】
前記ペプチドが、薬理的に許容される賦形剤と混合される、請求項66記載の方法。
【請求項70】
前記ペプチドが、哺乳動物への経口投与に好適な薬理的に許容される賦形剤と混合される、請求項66記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図9】
【公表番号】特表2006−508179(P2006−508179A)
【公表日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−501402(P2005−501402)
【出願日】平成15年10月14日(2003.10.14)
【国際出願番号】PCT/US2003/032442
【国際公開番号】WO2004/034977
【国際公開日】平成16年4月29日(2004.4.29)
【出願人】(301043487)ザ・リージェンツ・オブ・ザ・ユニバーシティ・オブ・カリフォルニア (15)
【氏名又は名称原語表記】The Regents of the University of California
【Fターム(参考)】
【公表日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成15年10月14日(2003.10.14)
【国際出願番号】PCT/US2003/032442
【国際公開番号】WO2004/034977
【国際公開日】平成16年4月29日(2004.4.29)
【出願人】(301043487)ザ・リージェンツ・オブ・ザ・ユニバーシティ・オブ・カリフォルニア (15)
【氏名又は名称原語表記】The Regents of the University of California
【Fターム(参考)】
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