説明

結晶製造方法及び装置、露光装置、デバイス製造方法

【課題】 結晶内のサブバウンダリの発生を抑制し、内部透過率などの光学特性に優れた結晶を製造することができる結晶製造方法及び装置を提供する。
【解決手段】 坩堝に収納された結晶性物質の原料から単結晶を製造する結晶製造方法であって、前記坩堝を移動させることで溶融した前記原料の結晶を成長させるステップと、前記成長ステップで成長させた結晶から単結晶を切り出すステップとを有し、前記切り出しステップは、前記原料から所定の結晶方位を有する母結晶を成長させる際に、前記所定の結晶方位とは異なる結晶方位を有するグレインバウンダリから切り出すことを特徴とする結晶製造方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般には、結晶製造方法及び装置に係り、特に、真空紫外域から遠紫外域までの短波長範囲において用いられる各種光学素子、レンズ、窓材、プリズム、露光装置に好適なフッ化カルシウム(CaF)結晶の結晶製造方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の電子機器の小型化及び薄型化の要請から電子機器に搭載される半導体素子の微細化への要求は益々高くなっており、かかる要求を満足するために露光解像度を高める提案が様々なされている。露光光源の波長を短くすることは解像度の向上に有効な一手段であるため、近年では、露光光源はKrFエキシマレーザー(波長約248nm)からArFエキシマレーザー(波長約193nm)になろうとしており、Fレーザー(波長約157nm)の実用化も進んでいる。
【0003】
一方、光源の短波長化に伴い、従来の硝材のほとんどが透過率不足のため使用することができなくなる。ArFエキシマレーザーの波長域では、かろうじて石英ガラス(SiO)を使用することができるが、Fレーザーの波長域では、石英ガラスさえも使用することができない。フッ化カルシウム(CaF)単結晶は、かかる波長域の光の透過率(即ち、内部透過率)が硝材の中では高いために露光光学系に使用されるレンズや回折格子などの光学素子の光学材料として最適である。
【0004】
レンズ等の光学材料の光学特性を評価するパラメーターとしては、内部透過率に加え、レーザー光を継続的に受光した場合の透過率変化を表すレーザー耐久性、レンズの屈折率が場所によらず一定であることを表す屈折率均一性(ホモジニティー)、複屈折率及び研磨(又は加工)精度などがあり、露光装置に用いられるフッ化カルシウムには高い品質が要求される。
【0005】
フッ化カルシウム単結晶は、一般に、(「垂直ブリッジマン法」としても知られる)坩堝降下法によって製造されている(例えば、特許文献1及び2参照。)。かかる方法は、結晶性物質の原料を坩堝内に充填し、ヒーター等による加熱により溶融させた原料を坩堝を降下させて冷却することによって結晶化する。なお、フッ化カルシウム多結晶は、露光光学系を構成する光学素子(レンズ等)に必要とされる面精度を確保することが困難であることに加えて、結晶粒界には不純物が偏析しやすく、屈折率均一性を損ねたり、レーザー耐久性に問題が生じたりする。そこで、坩堝降下法では、成長した結晶全体が一つの結晶方位に揃ったもの、所謂、結晶粒界(以下、「グレインバウンダリ」と称する。)のない単結晶の製造を目的としていた(例えば、特許文献3参照。)。
【特許文献1】米国特許第2149076号
【特許文献2】米国特許第2214976号
【特許文献3】特開平10−265296号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、結晶全体をグレンインバウンダリのない単結晶として成長させると転位密度が高くなり、高品質な光学特性を有する結晶を製造することができなかった。
【0007】
詳細には、坩堝降下法を用いて成長中に結晶全体を単結晶化してしまうと、得られる結晶は、結晶内の転位の影響により、成長方向を軸として僅かに傾いた小さな領域及びそれらの境界である亜粒界(以下、「サブバウンダリ」と称する。)で構成されたものとなる。転位が集積してできたサブバウンダリには応力が集中しており、光学的な品質低下を招くことが知られている。従って、サブバウンダリの発生を抑制し、露光光学系に要求されるような高品質な結晶を製造する方法が望まれている。
【0008】
そこで、本発明は、結晶内のサブバウンダリの発生を抑制し、内部透過率などの光学特性に優れた結晶を製造することができる結晶製造方法及び装置を提供することを例示的目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の一側面としての結晶製造方法は、坩堝に収納された結晶性物質の原料から単結晶を製造する結晶製造方法であって、前記坩堝を移動させることで溶融した前記原料の結晶を成長させるステップと、前記成長ステップで成長させた結晶から単結晶を切り出すステップとを有し、前記切り出しステップは、前記原料から所定の結晶方位を有する母結晶を成長させる際に、前記所定の結晶方位とは異なる結晶方位を有するグレインバウンダリから切り出すことを特徴とする。
【0010】
本発明の別の側面としての結晶製造方法は、坩堝に収納された結晶性物質の原料から単結晶を製造する結晶製造方法であって、前記坩堝を引き下げることで溶融した前記原料の結晶を成長させるステップと、前記成長ステップで成長させた結晶から単結晶を切り出すステップとを有し、前記成長ステップは、前記原料から所定の結晶方位を有する母結晶を成長させる際に、前記所定の結晶方位とは異なる結晶方位を有するグレインバウンダリを発生させるステップと、前記グレンインバウンダリから前記異なる結晶方位を有する結晶を成長させるステップとを有し、前記切り出しステップは、前記異なる結晶方位を有する結晶を切り出すことを特徴とする。
【0011】
本発明の更に別の側面としての結晶製造装置は、結晶性物質の原料から単結晶を成長させる結晶製造装置であって、前記原料を収納して結晶成長させ、前記結晶成長が開始する前記坩堝の下部に円錐形状のコニカル部を有する坩堝であって、前記コニカル部が70度乃至110度の円錐角度を有する坩堝を有することを特徴とする。
【0012】
本発明の更に別の側面としての光学素子は、上述の結晶製造方法又は装置を用いて製造される単結晶から製造されることを特徴とする。
【0013】
本発明の更に別の側面としての露光装置は、紫外光、遠紫外光及び真空紫外光を露光光として利用し、当該露光光を上述の光学素子を含む光学系を介して被処理体に照射して当該被処理体を露光することを特徴とする。
【0014】
本発明の更に別の側面としてのデバイス製造方法は、上述の露光装置を用いて被処理体を露光するステップと、露光された前記被処理体を現像するステップとを有することを特徴とする。
【0015】
本発明の更なる目的又はその他の特徴は、以下、添付図面を参照して説明される好ましい実施例によって明らかにされるであろう。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、内部透過率などの光学特性に優れた結晶を製造することができる結晶製造方法及び装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して、本発明の一側面としての結晶製造方法及び装置について説明する。なお、各図において、同一の部材については同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。本実施形態では、フッ化カルシウム単結晶の製造を例に説明するが、本発明は、フッ化カルシウム単結晶の製造に限定されるものではない。
【0018】
まず、本発明の結晶製造方法及び装置の理解を深めるために、グレインバウンダリが結晶の品質に与える影響について説明する。結晶内に生じるサブバウンダリは、転位がエネルギー的に安定な箇所に凝集することで形成される。また、かかる転位がある程度以上凝集するとグレインバウンダリに変化し、結晶内を移動することが可能となる。
【0019】
結晶内を移動可能となったグレインバウンダリは、転位又はサブバウンダリを掃引しながら結晶内を移動し、再結晶化する。再結晶化の過程において、結晶内のサブバウンダリは減少し、品質的に非常に高い結晶へと変化する。
【0020】
図6は、成長方向に対して平行に切り出した結晶の断面のX線トポ画像である。なお、結晶CRは、X線トポ画像(図6)の上に向かって成長している。図6を参照するに、結晶CRは、母結晶MCRの成長途中でグレインバウンダリGBが発生し、それ以降の(即ち、グレインバウンダリGBの内部の)領域GBEがサブバウンダリの少ない、即ち、結晶の品質の高い領域に変化していることが分かる。従って、母結晶MCRの成長初期段階にグレインバウンダリGBを発生させて転位を除去し、その後、グレインバウンダリGBの内部の領域GBE(なお、以下の説明では、グレインバウンダリの内部の領域(即ち、グレインバウンダリから成長した結晶)もグレインバウンダリと称することにする。)から単結晶を切り出すことで、高品質な単結晶を得ることができる。
【0021】
本発明者は、グレインバウンダリの発生について鋭意検討した結果、坩堝の形状がグレインバウンダリの発生頻度に大きく影響することを見出した。また、一方で、本発明者は、坩堝の形状以外にグレインバウンダリの発生に関係する要因がないか検討した結果、坩堝の移動速度(引き下げ速度)の変動もグレインバウンダリの発生頻度に大きく影響することを見出した。即ち、結晶の成長途中で坩堝の引き下げ速度を変化させると、グレインバウンダリが発生し易くなることを発見した。
【0022】
以下、本発明の結晶製造装置及び方法を具体的に説明する。図1は、本発明の結晶製造装置100の構成を示す概略断面図である。結晶製造装置100は、原料IDを坩堝110内で溶融し、次いで、冷却することで原料IDを結晶成長させる。結晶製造装置100は、図1に示すように、坩堝110と、支持部材120と、坩堝昇降部130と、ヒーター140と、熱電対150と、断熱部材160と、筐体170とを有する。
【0023】
結晶製造装置100においては、支持部材120に支持された略円筒形の坩堝110が、略円筒形の断熱部材160及び筐体170によって画定された成長炉CGFに収納され、坩堝110の円筒面の周囲に沿って配置されたヒーター140によって加熱される。また、結晶製造装置100は、成長炉CGFを減圧又は真空環境に排気する排気装置EMを備えている。
【0024】
坩堝110は、結晶性物質(本実施形態では、フッ化カルシウム)の原料IDを収納する。坩堝110は、結晶性物質の原料IDを溶融、保持及び結晶成長させるため、融液(液体部)IDと反応せず不純物含有量の少ない材質、例えば、カーボン、プラチナ、石英ガラス、窒化ホウ素など、から構成されることが好ましい。また、坩堝110は、その熱伝導度が成長させる結晶の熱伝導度と同程度、特に、1/2倍乃至2倍程度があることが好ましい。熱伝導度が大きすぎると坩堝110による縦方向の熱伝導が大きくなり、成長させる単結晶の縦方向の温度勾配が小さくなるためである。また、熱伝導度が小さすぎると断熱効果によりヒーター140の作る温度分布が原料IDに反映されなくなり、成長させる単結晶に所定の縦方向の温度勾配を形成することが困難になるためである。
【0025】
坩堝110は、種結晶SCを収納する収納部114を下部112に有する。収納部114は、後述するコニカル部116が坩堝110の内部に連なるように形成される。坩堝110は、下部112において支持部材120に連結して成長炉CGFの中央部に設置される。
【0026】
坩堝110は、結晶成長が開始する下部112に下に凸の円錐形状のコニカル部116を有する。なお、コニカル部116は、原料IDを収納する内面の形状が円錐形上であることが重要であり、図1に示すように、坩堝110の下部112の外面形状が必ずしも円錐形状である必要はない。坩堝110の下部112の外面形状は、熱の輻射空間に影響しない形状、例えば、円筒形状等であっても構わない。コニカル部116は、70度乃至110度の円錐角度AG(円錐頂点の角度)を有する。これにより、坩堝110の下部112においてグレインバウンダリが発生し易くなる。
【0027】
ここで、坩堝110のコニカル部116の円錐角度AGとグレインバウンダリの発生の関係について説明する。本実施形態では、コニカル部116の円錐角度AGを60度、90度、120度とし、コニカル部116の円錐角度AG以外の条件、例えば、成長炉CGFの温度制御、原料IDの充填量、種結晶SCの方位、坩堝110の引き下げ速度等は、全て同じ条件として実験を行った。また、温度分布シミュレーションにおいて、各坩堝間で結晶の温度分布に顕著な差がないことを確認している。
【0028】
コニカル部116の円錐角度AGが60度、90度、120度の坩堝110で製造した結晶を評価すると、コニカル部116の円錐角度AGが60度と120度の坩堝110から製造された結晶にはグレインバウンダリが全く発生しなかった(各実験回数2回)のに対し、コニカル部116の円錐角度AGが90度の坩堝110から製造された結晶には全てグレインバウンダリが発生していた(実験回数3回)。これにより、コニカル部116の円錐角度AGを90度を含む70度乃至110度とすることで、グレインバウンダリを発生し易くすることができることが分かる。
【0029】
また、発生したグレインバウンダリと母結晶との結晶方位の関係を調べるために、Coincident Site Lattice(CSL)の概念に従って分類してみると、その関係の一つは、Σ11(オイラー角(φ、Φ、φ)=(33.68、79.53、33.68))に近いという結果が得られた。
【0030】
一方、フッ化カルシウムの優先成長方位を調べたところ、種結晶SCのない成長においては、<0、1、1>に近い結晶方位が出現し易い傾向にあることが明らかになった。そこで、坩堝110のコニカル部116の法線とΣ11におけるフッ化カルシウムの優先成長方位(優先成長方位は、(0.083、0.600、0.796)とした)とのなす角度Δθを計算した結果を図2に示す。図2は、横軸にコニカル部116の円錐角度AG/2を、縦軸に角度Δθを採用した。
【0031】
図2を参照するに、角度Δθが小さいほど、グレインバウンダリが発生し易いと考えられる。なお、計算は、コニカル部116の円錐角度AGに対して5度毎に行っている。また、コニカル部116の円錐角度AG毎に等価な24の優先成長方位をプロットしている。図2から、上述した実験と同様に、坩堝110のコニカル部116の円錐角度AGが70度乃至110度の範囲において、角度Δθが小さい値となっていることがわかる。
【0032】
以上のことから、グレインバウンダリの発生頻度は、坩堝110のコニカル部116の円錐角度AGと密接な関係があると結論することができ、特に、コニカル部116の円錐角度AGが70度乃至110度の範囲において発生頻度が高いことが判明した。
【0033】
支持部材120は、筐体170の底部を貫通し、上部が成長炉CGFに達する。支持部材120は、坩堝110と坩堝110中の融液重量を支持し、坩堝昇降部130によって駆動されて坩堝120を上下移動する。また、支持部材120は、図示しない回転機構によって駆動されて坩堝110を回転できるように構成される。支持部材120による坩堝110の回転は、坩堝110の温度を均一にするために行われる。
【0034】
坩堝昇降部130は、支持部材120に接続されたモーター132と、モーター132を通電する電源134とを有する。モーター132への電源134による通電を制御することにより、坩堝110をヒーター140の加熱領域から非加熱領域へ移動させ、坩堝110の温度を徐々に下げることができる。
【0035】
ここで、坩堝昇降部130が坩堝110を引き下げる速度(即ち、上下の移動速度)について説明する。坩堝昇降部130は、本実施形態では、結晶成長の途中で坩堝110の引き下げ速度を変化させる機能を有する。坩堝昇降部130は、例えば、成長途中において、坩堝110の引き下げ速度を1mm/hから0.25mm/hに急峻に変化させることができる。これにより、坩堝110の引き下げ速度を変えた箇所からグレインバウンダリを発生させることができる。また、坩堝110を0.25mm/hの低速度で引き下げることにより、グレインバウンダリを縮小させることなく、結晶全体に拡大させることができる。なお、坩堝110の引き下げ速度は、原料IDの固液界面SLIがコニカル部116を通過している間は、0.5mm/h以下にし、それ以外の領域では1mm/h以下にすることが好ましいことが、本発明者の実験によって確認されている。
【0036】
なお、坩堝110のコニカル部116の円錐角度AGによらず、坩堝110を引き下げる速度を変化させることでグレインバウンダリを発生させることが可能であることも、コニカル部の円錐角度が60度の坩堝を用いた実験によって確かめられている。
【0037】
ヒーター140は、坩堝110の円筒面に対してリング状に配置され、坩堝110ごと原料IDを加熱し、これを溶融する。ヒーター140は、坩堝110の鉛直方向に沿って均一な加熱力で坩堝110を加熱する。ヒーター140は、本実施形態では、グラファイトから構成される。
【0038】
ヒーター140は、図1に示すように、上ヒーター142と、下ヒーター144の多段で構成され、成長炉CGF内の温度を精密に制御することができる。具体的には、上ヒーター142は、融液IDaの温度を保持するために原料IDの融点以上の温度に、また、下ヒーター144は、成長した結晶(固体部)IDの保持に適した温度に設定される。更に、上ヒーター142と下ヒーター144との中間付近において、坩堝110内が原料IDの融点温度になるように調整されている。
【0039】
熱電対150は、上ヒーター142と下ヒーター144の中央外側の側面に配置され、上ヒーター142の温度及び下ヒーター144の温度を検出する。上ヒーター142及び下ヒーター144の温度分布は、その内部の電流の分布を制御することに略均一な温度分布を有するように熱的な設計がなされているが、外部との熱の出入りにより一定の範囲で変化する。
【0040】
断熱部材160は、ヒーター140を取り囲むように成長炉CGFの内側面に近接して配置される。断熱部材160は、内面がよく研磨されたカーボン製を使用し、ヒーター140の熱から筐体170を保護する。
【0041】
筐体170は、結晶成長に際して成長炉CGF内の雰囲気を外気から遮断すると共に、成長炉CGF内の減圧又は真空環境を維持する。本実施形態では、ステンレス製の二重円筒等を用いて、図示しない断熱材を二重円筒内に配置することにより筐体170を構成している。
【0042】
図1に示す結晶製造装置100を用いてフッ化カルシウムの製造を行った。以下、本発明の一側面である結晶製造方法1000を、結晶性装置100の動作とあわせて説明する。図3は、本発明の結晶製造方法1000を説明するためのフローチャートである。
【0043】
本実施形態では、直径300mmのグラファイト製の坩堝110を用意し、コニカル部116の円錐角度AGを80度に設定した。なお、コニカル部116の円錐角度AGは、成長させる結晶の材質や大きさによって変化するものであり、本実施形態の円錐角度に限定するものではない。また、原料IDに使用するフッ化カルシウムとしては、原石(天然蛍石)ではなく、CaCOをフッ酸で処理して化学合成された高純度フッ化カルシウム粉末を一度溶融し、固化させた(即ち、精製)後の粉砕品を用いる。これは、高純度フッ化カルシウムでは溶融したときの体積減少が大きく、坩堝110のサイズに対して得られる結晶のサイズが著しく小さくなってしまうためである。
【0044】
図3を参照するに、まず、坩堝110の収納部114に{1 1 1}面を上面に有する種結晶SCを収納する(ステップ1002)。次に、坩堝110に粉砕された原料IDとスカベンジャーを充填する(ステップ1004)。スカベンジャーの量は、原料IDの量に対して、0.01wt%以上0.1%以下が好ましく、本実施形態では、原料IDに対して0.01wt%のスカベンジャーを添付した。
【0045】
ここで、スカベンジャーとは、フッ化カルシウムに対して水分の存在により発生した酸化カルシウム(CaO)を、フッ化カルシウムに還元する機能を有する。スカベンジャーとしては、フッ化亜鉛、フッ化カドミウム、フッ化マンガン、フッ化ビスマス、フッ化ナトリウム、フッ化リチウム等、成長させるフッ化物より酸素と結合し易く、且つ、分解及び蒸発しやすいものが望ましい。フッ化物原料中に混在している酸化物と反応し、気化し易い酸化物となる物質が選択され、特に、フッ化亜鉛が好ましい。
【0046】
次に、排気装置EMを操作することにより成長炉CGFを10−3Pa乃至10−4Pa程度の真空度に維持し、ヒーター140に通電して坩堝110内のフッ化カルシウムの原料IDを加熱し、坩堝110に充填した原料IDを完全に溶融する(ステップ1006)。具体的には、種結晶SCの一部及び原料IDが溶融するように成長炉CGFの温度を制御し、かかる融解状態で2日間保持した。
【0047】
その後、徐々に坩堝110を引き下げることで溶融したフッ化カルシウムの原料IDを冷却し、単結晶を成長させた(ステップ1008)。即ち、融点温度付近で成長した結晶の表面に更に融液を析出させることで結晶が成長する。本実施形態では、成長炉CGF全体の温度分布を固定し、坩堝110の引き下げ速度を、原料IDの固液界面SLIがコニカル部116を通過している間は、0.25mm/hとし、それ以外の領域では1mm/hとした。即ち、結晶の成長初期段階にグレインバウンダリを発生させ、その後、かかるグレインバウンダリを拡大させる。換言すれば、グレインバウンダリの発生後の坩堝110の引き下げ速度を、グレインバウンダリの発生前の坩堝110の引き下げ速度よりも遅くした。成長させたフッ化カルシウム結晶の長さは100mm乃至300mmであり、400時間乃至1500時間程度の時間をかけて成長を行った。
【0048】
続いて、結晶成長したフッ化物単結晶をアニール炉で熱処理する(アニール工程)(ステップ1010)。アニール工程は、成長したフッ化カルシウム単結晶を熱処理し、結晶の割れを引き起こす歪みを除去する工程である。成長した単結晶はアニール炉に収納された坩堝内に入れる。アニール工程では、坩堝を約1080℃に均熱的に加熱して、固体のままフッ化カルシウム結晶の歪を除去する。
【0049】
その後、成長させたフッ化カルシウム結晶から単結晶を切り出す(ステップ1012)。なお、成長させたフッ化カルシウムの母結晶からではなく、グレインバウンダリから切り出す。図4は、成長させたフッ化カルシウム結晶のグレインバウンダリから切り出した単結晶の結晶性を示す図である。図4を参照するに、結晶性の高い、光学性能に優れたフッ化カルシウムが得られていることがわかる。なお、結晶製造装置100から得られる単結晶は、種結晶SC(母結晶)が有する所定の結晶方位(例えば、(1 1 1)面)とは異なる結晶方位(例えば、(1 1 0))を有するが、切り出しの際に、レンズ設計上必要なサイズ(例えば、直径300mm)及び方位(例えば、(1 1 1)面)を有した結晶が得られれば良く、種結晶と異なる方位(斜め方向)で切り出すこと自体は、光学特性上、何ら問題無い。また、結晶の方位が母結晶と異なっていても、上述したように、応力が集積しているサブバウンダリの無いグレインバウンダリ内から所望の結晶を切り出すことができれば、光学特性上、高品質な結晶を得ることができる。
【0050】
このように、結晶製造装置100及び結晶製造方法1000は、坩堝110の形状、詳細には、コニカル部116の円錐角度AGを70度乃至110度にすることで、結晶の成長初期段階でグレインバウンダリを発生させ、成長中に坩堝110の引き下げ速度を変更することでグレインバウンダリを拡大し、その後、かかるグレインバウンダリから単結晶を切り出すことで、内部透過率などの光学特性に優れた結晶を製造することができる。
【0051】
以下、図5を参照して、結晶製造装置100の変形例である結晶製造装置100Aについて説明する。図5は、結晶製造装置100Aの構成を示す概略断面図である。結晶製造装置100Aは、結晶製造装置100の基本構成と同様であるが、更に、坩堝110の移動距離を計測する計測装置180を有する。結晶製造装置100Aは、計測装置180の計測した坩堝110の移動距離に基づいて、坩堝110の引き下げ速度(移動速度)を制御することができる。
【0052】
計測装置180は、本実施形態では、支持部材120に取り付けられ、計測部182と、制御部184とを有する。計測部182は、支持部材120の移動距離をモニターすることで、坩堝110の移動距離を計測する。
【0053】
制御部184は、計測部182が計測した坩堝110の移動距離を取り込む。また、制御部184は、実験又は成長シミュレーションから求められた固液界面SLIの位置と坩堝110の移動距離との関係を予め格納している。これにより、制御部184は、坩堝110の移動距離から固液界面SLIの位置を算出し、かかる固液界面SLIの位置に応じて坩堝110の引き下げ速度を制御することができる。
【0054】
制御部184は、例えば、坩堝110のコニカル部116の下端から30mmの位置でグレインバウンダリを発生させるために、固液界面SLIがコニカル部116の下端から30mmの位置を通過するまでは1mm/h、それ以降は0.25mm/hの速度で坩堝110が移動するように制御する。これにより、成長の初期段階でグレインバウンダリを発生させ、かかるグレインバウンダリを拡大することができる。その結果、高品質、且つ、大口径の単結晶を切り出すために必要な結晶サイズを確保することが可能となる。なお、坩堝110の速度は、成長させる結晶の材質や大きさによって変化するものであり、本実施形態の速度に限定するものではない。
【0055】
結晶製造装置100Aから製造した結晶のグレインバウンダリから単結晶を切り出すことで、結晶製造装置100(結晶製造方法1000)と同様に、高品質な単結晶を得ることができる。
【0056】
以上、説明したように、本発明の結晶製造装置100、100A及び結晶製造方法1000によれば、成長の初期段階で積極的にグレインバウンダリを発生させることで結晶内のサブバウンダリを抑制し、内部透過率やレーザー耐久性などの品質に優れた結晶を再現性よく製造することができる。
【0057】
本発明の結晶製造装置100、100A及び結晶製造方法1000によって得られたフッ化カルシウム結晶を必要とされる光学素子に形成する。光学素子は、レンズ、回折素子、光学膜体及びそれらの複合体、例えば、レンズ、マルチレンズ、レンズアレイ、レンチキュラーレンズ、ハエの目レンズ、非球面レンズ、回折格子、バイナリーオプティックス素子及びそれらの複合体を含む。また、光学素子は、単体のレンズ等に加えて(例えば、フォーカス制御用の)光センサーなどを含む。必要に応じて、反射防止膜をフッ化カルシウム結晶の光学部品表面に設けるとよい。反射防止膜としては、フッ化マグネシウムや酸化アルミニウム、酸化タンタルが好適に用いられ、これらは抵抗加熱による蒸着や電子ビーム蒸着やスパッタリングなどで形成できる。本発明により得られた光学素子は、内部透過率やレーザー耐久性などの品質に優れているため、従来の光学素子よりも光学性能が向上している。
【0058】
本発明の光学素子を各種組み合わせれば、ArFエキシマレーザー、Fレーザーに適した投影光学系、照明光学系を構成することができる。そして、各種レーザー光源と、本発明の結晶製造装置100、100A及び結晶製造方法1000から得られたフッ化カルシウムからなるレンズを有する光学系と、ウェハを移動させ得るステージとを組み合わせてフォトリソグラフィー用の露光装置を構成することができる。
【0059】
以下、図7を参照して、本発明の例示的な露光装置500について説明する。ここで、図7は、本発明の露光装置500の構成を示す概略ブロック図である。露光装置500は、図7に示すように、回路パターンが形成されたレチクル520を照明する照明装置510と、照明されたレチクルパターンから生じる回折光をプレート540に投影する投影光学系530と、プレート540を支持するステージ545とを有する。
【0060】
露光装置500は、例えば、ステップ・アンド・スキャン方式やステップ・アンド・リピート方式でレチクル520に形成された回路パターンをプレート540に露光する投影露光装置である。かかる露光装置は、サブミクロンやクオーターミクロン以下のリソグラフィー工程に好適であり、以下、本実施形態ではステップ・アンド・スキャン方式の露光装置(「スキャナー」とも呼ばれる。)を例に説明する。ここで、「ステップ・アンド・スキャン方式」とは、レチクルに対してウェハを連続的にスキャン(走査)してレチクルパターンをウェハに露光すると共に、1ショットの露光終了後ウェハをステップ移動して、次の露光領域に移動する露光方法である。「ステップ・アンド・リピート方式」とは、ウェハの一括露光ごとにウェハをステップ移動して次のショットの露光領域に移動する露光方法である。
【0061】
照明装置510は、転写用の回路パターンが形成されたレチクル520を照明し、光源部512と、照明光学系514とを有する。
【0062】
光源部512は、例えば、光源としては、波長約193nmのArFエキシマレーザー、波長約248nmのKrFエキシマレーザーなどを使用することができるが、光源の種類はエキシマレーザーに限定されず、例えば、波長約153nmのFレーザーやYAGレーザーを使用してもよいし、その光源も個数も限定されない。例えば、独立に動作する2個の固体レーザーを使用すれば固体レーザー間相互のコヒーレンスはなく、コヒーレンスに起因するスペックルはかなり低減する。更にスペックルを低減するために光学系を直線的又は回動的に揺動させてもよい。また、光源部512にレーザーが使用される場合、レーザー光源からの平行光束を所望のビーム形状に整形する光束整形光学系、コヒーレントなレーザー光束をインコヒーレント化するインコヒーレント化光学系を使用することが好ましい。また、光源部512に使用可能な光源はレーザーに限定されるものではなく、一又は複数の水銀ランプやキセノンランプなどのランプも使用可能である。
【0063】
照明光学系514は、レチクル520を照明する光学系であり、レンズ、ミラー、オプティカルインテグレーター、絞り等を含む。例えば、コンデンサーレンズ、ハエの目レンズ、開口絞り、コンデンサーレンズ、スリット、結像光学系の順で整列する等である。照明光学系514は、軸上光、軸外光を問わずに使用することができる。オプティカルインテグレーターは、ハエの目レンズや2組のシリンドリカルレンズアレイ(又はレンチキュラーレンズ)板を重ねることによって構成されるインテグレーター等を含むが、光学ロッドや回折素子に置換される場合もある。かかる照明光学系514のレンズなどの光学素子に本発明のフッ化カルシウム結晶から製造される光学素子を使用することができる。
【0064】
レチクル520は、例えば、石英製で、その上には転写されるべき回路パターン(又は像)が形成され、図示しないレチクルステージに支持及び駆動される。レチクル520から発せられた回折光は、投影光学系530を通りプレート540上に投影される。レチクル520とプレート540は、光学的に共役の関係にある。本実施形態の露光装置500はスキャナーであるため、レチクル520とプレート540を縮小倍率比の速度比でスキャンすることによりレチクル520のパターンをプレート540上に転写する。なお、ステップ・アンド・リピート方式の露光装置(「ステッパー」とも呼ばれる。)の場合は、レチクル520とプレート540を静止させた状態で露光が行われる。
【0065】
投影光学系530は、物体面であるレチクル520上のパターンを反映する光を像面であるプレート540上に投影する光学系である。投影光学系530は、複数のレンズ素子のみからなる光学系、複数のレンズ素子と少なくとも一枚の凹面鏡とを有する光学系(カタディオプトリック光学系)、複数のレンズ素子と少なくとも一枚のキノフォームなどの回折光学素子とを有する光学系、全ミラー型の光学系等を使用することができる。色収差の補正が必要な場合には、互いに分散値(アッベ値)の異なるガラス材からなる複数のレンズ素子を使用したり、回折光学素子をレンズ素子と逆方向の分散が生じるように構成したりする。かかる投影光学系530のレンズなどの光学素子に本発明のフッ化カルシウム結晶から製造される光学素子を使用することができる。
【0066】
プレート540は、本実施形態ではウェハであるが、液晶基板やその他の被処理体を広く含む。プレート540には、フォトレジストが塗布されている。フォトレジスト塗布工程は、前処理と、密着性向上剤塗布処理と、フォトレジスト塗布処理と、プリベーク処理とを含む。前処理は、洗浄、乾燥などを含む。密着性向上剤塗布処理は、フォトレジストと下地との密着性を高めるための表面改質(即ち、界面活性剤塗布による疎水性化)処理であり、HMDS(Hexamethyl−disilazane)などの有機膜をコート又は蒸気処理する。プリベークは、ベーキング(焼成)工程であるが現像後のそれよりもソフトであり、溶剤を除去する。
【0067】
ステージ545は、プレート540を支持する。ステージ545は、当業界で周知のいかなる構成をも適用することができるので、ここでは詳しい構造及び動作の説明は省略する。例えば、ステージ545は、リニアモーターを利用してXY方向にプレート540を移動することができる。レチクル520とプレート540は、例えば、同期走査され、ステージ545と図示しないレチクルステージの位置は、例えば、レーザー干渉計などにより監視され、両者は一定の速度比率で駆動される。ステージ545は、例えば、ダンパを介して床等の上に支持されるステージ定盤上に設けられ、レチクルステージ及び投影光学系530は、例えば、床等に載置されたベースフレーム上にダンパを介して支持される図示しない鏡筒定盤上に設けられる。
【0068】
露光において、光源部514から発せられた光束は、照明光学系514によりレチクル520を、例えば、ケーラー照明する。レチクル520を通過してレチクルパターンを反映する光は、投影光学系530によりプレート540上に結像される。露光装置500が使用する照明光学系514及び投影光学系530は、本発明によるフッ化カルシウムから製造される光学素子を含んで、紫外光、遠紫外光及び真空紫外光を高い透過率で透過するので、高いスループットで経済性よくデバイス(半導体素子、LCD素子、撮像素子(CCDなど)、薄膜磁気ヘッドなど)を提供することができる。
【0069】
次に、図8及び図9を参照して、上述の露光装置500を利用したデバイスの製造方法の実施例を説明する。図8は、デバイス(ICやLSIなどの半導体チップ、LCD、CCD等)の製造を説明するためのフローチャートである。ここでは、半導体チップの製造を例に説明する。ステップ1(回路設計)では、デバイスの回路設計を行う。ステップ2(マスク製作)では、設計した回路パターンを形成したマスクを製作する。ステップ3(ウェハ製造)では、シリコンなどの材料を用いてウェハを製造する。ステップ4(ウェハプロセス)は、前工程と呼ばれ、マスクとウェハを用いて本発明のリソグラフィー技術によってウェハ上に実際の回路を形成する。ステップ5(組み立て)は、後工程と呼ばれ、ステップ4によって作成されたウェハを用いて半導体チップ化する工程であり、アッセンブリ工程(ダイシング、ボンディング)、パッケージング工程(チップ封入)等の工程を含む。ステップ6(検査)では、ステップ5で作成された半導体デバイスの動作確認テスト、耐久性テストなどの検査を行う。こうした工程を経て半導体デバイスが完成し、これが出荷(ステップ7)される。
【0070】
図9は、ステップ4のウェハプロセスの詳細なフローチャートである。ステップ11(酸化)では、ウェハの表面を酸化させる。ステップ12(CVD)では、ウェハの表面に絶縁膜を形成する。ステップ13(電極形成)では、ウェハ上に電極を蒸着などによって形成する。ステップ14(イオン打ち込み)では、ウェハにイオンを打ち込む。ステップ15(レジスト処理)では、ウェハに感光剤を塗布する。ステップ16(露光)では、上述の露光装置500によってマスクの回路パターンをウェハに露光する。ステップ17(現像)では、露光したウェハを現像する。ステップ18(エッチング)では、現像したレジスト像以外の部分を削り取る。ステップ19(レジスト剥離)では、エッチングが済んで不要となったレジストを取り除く。これらのステップを繰り返し行うことによってウェハ上に多重に回路パターンが形成される。かかるデバイス製造方法によれば、従来よりも高品位のデバイスを製造することができる。このように、露光装置500を使用するデバイス製造方法、並びに結果物としてのデバイスも本発明の一側面を構成する。
【0071】
以上、本発明の好ましい実施例について説明したが、本発明はこれらの実施例に限定されないことはいうまでもなく、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、溶融した原料を冷却する方法は、ブリッジマン法以外でも、坩堝を固定してヒーターを引き上げていく方法、ヒーター出力を徐々に落としていく方法、その他周知のいかなる方法であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の一側面としての結晶製造装置の構成を示す概略断面図である。
【図2】坩堝のコニカル部に対する優先成長方位とコニカル部のなす角度との関係を示すグラフである。
【図3】本発明の一側面としての結晶製造方法を説明するためのフローチャートである。
【図4】成長させたフッ化カルシウム結晶のグレインバウンダリから切り出した単結晶の結晶性を示す図である。
【図5】図1に示す結晶製造装置の変形例である結晶製造装置の構成を示す概略断面図である。
【図6】結晶内に発生したグレインバウンダリと母結晶との結晶性を示す図である。
【図7】本発明の一側面としての露光装置の構成を示す概略ブロック図である。
【図8】デバイス(ICやLSIなどの半導体チップ、LCD、CCD等)の製造を説明するためのフローチャートである。
【図9】図8に示すステップ4のウェハプロセスの詳細なフローチャートである。
【符号の説明】
【0073】
100及び100A 結晶製造装置
110 坩堝
112 坩堝の下部
114 収納部
116 コニカル部
120 支持部材
130 坩堝昇降部
140 ヒーター
142 上ヒーター
144 下ヒーター
150 熱電対
160 断熱部材
170 筐体
180 計測装置
182 計測部
184 制御部
ID 原料
SC 種結晶
CGF 成長炉
EM 排気装置
500 露光装置
510 照明装置
514 照明光学系
530 投影光学系

【特許請求の範囲】
【請求項1】
坩堝に収納された結晶性物質の原料から単結晶を製造する結晶製造方法であって、
前記坩堝を移動させることで溶融した前記原料の結晶を成長させるステップと、
前記成長ステップで成長させた結晶から単結晶を切り出すステップとを有し、
前記切り出しステップは、前記原料から所定の結晶方位を有する母結晶を成長させる際に、前記所定の結晶方位とは異なる結晶方位を有するグレインバウンダリから切り出すことを特徴とする結晶製造方法。
【請求項2】
前記成長ステップは、前記グレインバウンダリの発生後の前記坩堝の移動速度を、前記グレインバウンダリの発生前の前記坩堝の移動速度よりも遅くすることを特徴とする請求項1記載の結晶製造方法。
【請求項3】
前記成長ステップは、前記グレインバウンダリの発生後の前記坩堝の移動速度を、0.5mm/h以下にすることを特徴とする請求項2記載の結晶製造方法。
【請求項4】
坩堝に収納された結晶性物質の原料から単結晶を製造する結晶製造方法であって、
前記坩堝を引き下げることで溶融した前記原料の結晶を成長させるステップと、
前記成長ステップで成長させた結晶から単結晶を切り出すステップとを有し、
前記成長ステップは、前記原料から所定の結晶方位を有する母結晶を成長させる際に、前記所定の結晶方位とは異なる結晶方位を有するグレインバウンダリを発生させるステップと、
前記グレンインバウンダリから前記異なる結晶方位を有する結晶を成長させるステップとを有し、
前記切り出しステップは、前記異なる結晶方位を有する結晶を切り出すことを特徴とする結晶製造方法。
【請求項5】
前記原料は、フッ化カルシウムであることを特徴とする請求項1又は4記載の結晶製造方法。
【請求項6】
結晶性物質の原料から単結晶を成長させる結晶製造装置であって、
前記原料を収納して結晶成長させ、前記結晶成長が開始する前記坩堝の下部に円錐形状のコニカル部を有する坩堝であって、前記コニカル部が70度乃至110度の円錐角度を有する坩堝を有することを特徴とする結晶製造装置。
【請求項7】
前記坩堝の移動速度を変更する速度変更手段を更に有することを特徴とする請求項6記載の結晶製造装置。
【請求項8】
前記原料は、フッ化カルシウムであることを特徴とする請求項6記載の結晶製造装置。
【請求項9】
請求項1乃至5のうちいずれか一項記載の結晶製造方法を用いて製造される単結晶から製造されることを特徴とする光学素子。
【請求項10】
請求項6乃至7のうちいずれか一項記載の結晶製造装置を用いて製造される単結晶から製造されることを特徴とする光学素子。
【請求項11】
レンズ、回折格子、光学膜体及びそれらの複合体の一であることを特徴とする請求項9又は10記載の光学素子。
【請求項12】
紫外光、遠紫外光及び真空紫外光を露光光として利用し、当該露光光を請求項9又は10記載の光学素子を含む光学系を介して被処理体に照射して当該被処理体を露光することを特徴とする露光装置。
【請求項13】
請求項12記載の露光装置を用いて被処理体を露光するステップと、
露光された前記被処理体を現像するステップとを有することを特徴とするデバイス製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−16229(P2006−16229A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−194047(P2004−194047)
【出願日】平成16年6月30日(2004.6.30)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】