説明

給油ポンプ

【課題】 排出管内に付着した残留液を、強制的に排出することで、排出管からの液垂れを阻止するようにした給油ポンプの提供を目的とする。
【解決手段】 その一端に吸入と排出との作動を行なうと共に、中空室の押圧により作動する第1のポンプ室と、このポンプ室に連接した吸入管と排出管とを有するポンプ体の、前記排出管の中間部に押圧により作動する中空体の第2のポンプ室を配設して給油ポンプとした。
給油後に第2のポンプ室を作動すると、その排気によって排気管先端部の周壁内に付着した残留液が強制的に排出されることで、排出管からの液垂れを阻止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給油後に生じる排出管からの液垂れを促進させて、液垂れ時間を短縮するように改善した給油ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
給油後の液垂れを防止する従来例としては、吸入管や排出管の先端部に蓋を設けて、その上部に開口を設けることで、開口の下部を滴溜りとした滴溜り灯油ポンプがある。
すなわち管の先端を塞いで、その上部に設けた開口から油を流通させる構成である。(例えば特許文献1参照)
また吸入管や排出管の先端部に網目を設けて、液垂れを防止する油滴が落ちない灯油ポンプがある。(例えば特許文献2参照)
更に、両端が降下する複数の半円形の溝をホースの半周部分に設けると共に、他の半周部分をストレートの筒状にした液垂れしない給油用蛇腹ホースとしたものもある。(例えば特許文献3参照)
【特許文献1】 特開2002−31042号公報(第1頁、図1)
【特許文献2】 実開昭63−170583号公報(第1頁、図1)
【特許文献3】 特開2007−85355号公報(第2頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1に示す滴溜り灯油ポンプは、滴溜り8、9には給油後にも吸入や排出した灯油が存在し、滴を溜めることができないので、残存する灯油を排出しなければ、目的を達成することができないという不具合があった。この作業は吸入管や排出管を引き抜く際に、60度程度傾斜させて、滴溜りの灯油を排出させるが、手に油が付着したり傾斜させたりするための空間も必要であり、面倒な作業であった。
特許文献2に示す油滴が落ちない灯油ポンプは、吸入管と排出管の先端に網目を設けて、この網目を滴溜りとするものであるが、給油後に吸入管や排出管を引き抜いた際には、網目にも液体が付着しているために、この付着液を衝撃により落としてからでなければ、目的を達成することができず、この衝撃により周囲に液体を散乱させる恐れのあるものであった。
更に参考文献3に示す液だれしない給油用蛇腹ホースは、ホースの半周がストレート管なので、蛇腹の効果が少なく取扱いの悪いものであった。
本発明は、このような欠点を解消するためになされたものであり、排出管に付着した液体を第2のポンプ室で強制的に排出させることで、排出管に衝撃を与えたり傾斜させたりすることなく、液垂れを阻止する給油ポンプの提供を目的とする。
【発明を解決するための手段】
【0004】
上記不具合を解消するために、本発明は次のような構成としている。
請求項1に記載した給油ポンプは、その一端に吸入と排出との作動を行う第1のポンプ室を有し、このポンプ室の作動により前記吸入と排出とを分配して、分配したそれぞれを導くための吸入口と排出口とを有する分配管とを配設してポンプ体とした。このポンプ体の前記吸入口にパイプ状の吸入管を配設すると共に、前記排出口には、その終端部分をストレート状のパイプ管とした蛇腹状ホースよりなる排出管を接続した。
この蛇腹状ホースよりなる排出管の蛇腹終端部と前記ストレート状のパイプ管との間に設けられ、少なくとも前記ストレート状のパイプ管内の周壁面に付着した給油後の、残液の排出を促進させる第2のポンプ室を排出管に設けることで給油ポンプとした。
このような給油ポンプは、給油後に第2のポンプ室を押圧することにより複数回作動させると、排出管内に付着した残液を、ポンプ室で生じた風圧により液垂れの速度を早くして、終決させることができる。
請求項2に記載した給油ポンプは、請求項1に記載した給油ポンプの排出管終端部にある前記ストレート状のパイプ管先端を鋸歯状カットに形成することにより、鋸歯状三角形の先端部から液垂れを早めたものであり、排出管内外に付着した液体を短時間で滴下させることができる。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、排出管の中間部に第2のポンプ室と、終端部に鋸歯状カットを設けたことにより、給油後に排出管をカートリッジから完全に引き抜く前、すなわち排出管から液垂れした液体がカートリッジ内に滴下する状態で、第2のポンプ室を押圧により作動すると、その風圧で排出管の内壁に付着した残液の降下が促進されて、液垂れが早く終了するだけでなく、排出管の先端に衝撃を加えることも無いので周囲に残液が飛散することも無く安心である。
また、排出管の終端に設けた鋸歯状カットは管内外に付着した残液の滴下を促進するだけでなく、鋸歯状カットの先端で一体となって付着した管内外の残液は第2のポンプの風圧により、同時に排出が促進されるから、排出管外周壁に付着した残液もその排出が促進されるという効果を生じるものであり、液垂れ時間を更に短縮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明について、図面を参照して説明する。図1は本発明の給油ポンプを示す斜視図、図2は図1で示すポンプ体を示す説明図、図3は図1で示す排出管の一部を破断して示す斜視図である。
図1で示すように、本発明の給油ポンプ10は、その一端に設けられて、吸引と排出とを行なうためのポンプ体12と、このポンプ体12で分配した吸引と排出とを、それぞれ導く吸入管30と排出管32とからなる。
このようなポンプ体12と吸入管30及び排出管32とについて更に詳細に説明する。
ポンプ体12は、図2で示すように中空の樽状よりなる第1のポンプ室13と、この第1のポンプ室の作動により、吸入と排出とを行う分配管20とからなる。
第1のポンプ室13の一端には、ポンプ室内の機密性を維持したりさせなかったりするためのキャップ14を有し、他端側には分配管20を接続している。
分配管20内には図示しないが、吸入と排出を規制する弁が設けられると共に、その側壁には排出口24を、また分配管20の終端を吸入口22としている。すなわち、この分配管20は、液体の分配作用と吸排口とを備えたものである。
第1のポンプ室13を図中の矢印A方向に押圧するように握ると、図中の矢印Bで示す方向に排出口24から排出され、握り動作を中止して第1のポンプ室13から手を離すと吸入口22より、図中の矢印Cで示す方向に吸引されるように形成されており、市販のものと略同様である。
更にこの分配管20には、排出管の先端を掛止させるために、対向配置した円弧形の掛止体25を設けている。
【0007】
吸入管30は、図2で示した吸入口22に接続したパイプ体よりなり、図1で示すように取付けている。
排出管32は、図2で示した排出口24に接続した蛇腹状のパイプよりなり、図1で示すように取付けている。
この排出管32が本発明の特徴となるものであり、図3を参照して説明する。
図3で示すように排出管32は、その一端を接続口とした屈曲可能な蛇腹33よりなる蛇腹状ホースの他端部に、中空室よりなる第2のポンプ室34と、このポンプ室に連接して直管よりなるパイプ36とを設けている。
第2のポンプ室34は、蛇腹状ホースよりもその直径を大きくして、図中で示す矢印D方向から押圧することにより、中空室内の排気を行なうものである。
また、この第2のポンプ室34は、注油するカートリッジ等の注入口よりも大きくすることで、第2のポンプ室34がカートリッジ内に挿入できないように形成している。その理由は、本発明の給油ポンプを使用して、給油終了後にこの第2のポンプ室を、手で握って押圧するために、手が液体で汚れないように配慮したためである。
【0008】
この第2のポンプ室34に連接して設けた直管よりなるパイプ36の先端部には、その周囲を複数の三角形よりなる山形に形成した鋸歯状カット38としている。
この第2のパイプ室34と鋸歯状カット38部は、給油後の蛇腹33周壁部に付着して残留する液体の排出を促進するためのものであり、その作用を説明する。
給油後に給油ポンプを引出すと、特に排出管32である蛇腹ホースの内周壁面には、カートリッジに注入した残液が多く付着して、自然落下にまかせるといつまでも落下し続けるものである。そこで第2のポンプ室34を押圧すると、その中空部の排気力で少なくともパイプ36内の内壁面に付着した残液を強制的に排出させることになる。
パイプ36先端には鋸歯状カット38が設けられているから、強制的に排出された残液は、三角形の山形部分で液離れが良くなり加速されるだけでなく、第2のポンプ室34による強制的な排気でその滴下が更に促進されることになる。
尚、パイプ36の外周壁に付着した残液は、鋸歯状カット38の山形部分でパイプ36の内壁面に付着した残液と一体になると共に、第2のポンプ室34の排気でその滴下が促進されるので、パイプ36内外の両方に付着した残液の液垂れが早まるものである。
【0009】
給油後の排出管32内壁面には、付着した残液が残って垂れ続けるが、第2のポンプ室34の作用によって、一時的にパイプ36内の残液が強制的に排出されることになる。また、蛇腹33内の残液は、第2のポンプ室34の作動によって少しではあるが上昇させる作用が生じる。すなわち、第2のポンプ室34を押圧すると、蛇腹33とパイプ36との両方に排気されるが、排出口付近に設けた逆止弁の作用によって、蛇腹33方向への排気力は少ないと言えども多少の通気があって、この通気が残液を一時的に推し止めることになる。
このような蛇腹33部分の液垂れを、押し止めると共に、パイプ36内の残液は強制的に滴下させてしまうので、液垂れが一時的に止まることになる。この時間を利用して、排出管32を図2で示した掛止体25に掛止すると、周囲に液垂れを生じることなく給油ポンプの使用を終了させることができる。
【0010】
このような排出管32の処置について、図面を参照して説明する。図4は図3で示す排出管内の液垂れ防止処置を示す説明図である。
前述した様に、給油後の給油ポンプは、保管タンクから吸入管30を、また、給油したカートリッジ等からは排出管32を引出すことになる。但し給油直後は吸入管30と排出管32との両方の筒内に付着した残液が垂れるので、液垂れが早く終了する直管よりなる吸入管30の液垂れを待つことになる。
排出管32は前述したように、蛇腹部分の滴下が遅くいつまでも続くので、吸入管の液垂れが終るころに、排出管32に設けた第2のポンプ室を作動して、パイプ36部分の液垂れを促進することで、前述したような一時的に液垂れのしない時間を設ける。この液垂れのしない間に、排出管32を形成するパイプ36の先端部を、図4の矢印で示す方向に移動させて、分配管20の周壁面などに設けた掛止体25に差し込む。
このような状態では、図2で示したように排出管32を取付ける排出口24と掛止体25とが、略同一高さに設けられている理由で、排出管32の中間部は掛止体25の位置よりも下側になる。従って、排出管32の管内中央部に残留液が集まるので、この残留液は鋸歯状カット38部から外にこぼれることがない。
【0011】
本発明によれば、排出管に第2のポンプ室を設けたことにより、その先端部分に付着した残液を強制的に滴下させて、液垂れの生じない時間を設け、その間に排出管32をカートリッジから引抜いて、周囲に液垂れを生じさせることなく、給油ポンプの使用終了後の始末をすることができるものである。
更に鋸歯状カットの存在により、液垂れ時間の更なる短縮と、パイプ36外周壁に付着した残液の処置も同時に行なうことができるようになったものである。
また、本発明の特徴となる第2のポンプ室は、電動用の給油ポンプにも適用することができる。それは、本願と同様に排出管の途中に第2のポンプ室を設けると共に、この第2のポンプ室の前方に逆止弁を設けることで、対応することが可能である。
電動用の給油ポンプは、手動用の給油ポンプとはその構造の違いによって、排気用の逆止弁が設けられていないものもある。よって、第2のポンプ室の前方に逆止弁を設けて、この第2のポンプ室によって生じる排気を、液垂れ方向にのみ排出するようにすると、本発明の効果が同様に得られるものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】 本発明の給油ポンプを示す斜視図である。
【図2】 図1で示すポンプ体を示す説明図である。
【図3】 図1で示す排出管の一部を破断して示す斜視図である。
【図4】 図3で示す排出管内の液垂れ防止処置を示す説明図である。
【符号の説明】
【0013】
10 給油ポンプ
12 ポンプ体
13 第1のポンプ室
20 分配管
22 吸入口
24 排出口
25 掛止体
30 吸入管
32 排出管
33 蛇腹
34 第2のポンプ室
36 パイプ
38 鋸歯状カット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
その一端に吸入と排出との作動を行うための第1のポンプ室と、この第1のポンプ室の作動により前記吸入と排出とに分配して、分配したそれぞれを導くための吸排口を設けた分配管とを備えたポンプ体と、
このポンプ体を形成する前記分配管の吸入口に接続したパイプ状の吸入管と、
前記分配管に設けた排出口に接続すると共に、その終端部分をストレート状のパイプ管とした蛇腹状ホースと、この蛇腹状ホースの蛇腹終端部と前記ストレート状のパイプ管との間に設けられ、給油後に少なくとも前記ストレート状のパイプ管内の周壁面に付着した残液の排出を、促進させる第2のポンプ室とを設けた排出管とからなる給油ポンプ。
【請求項2】
その一端に吸入と排出との作動を行うための第1のポンプ室と、この第1のポンプ室の作動により前記吸入と排出とに分配して、分配したそれぞれを導くための吸排口を設けた分配管とを備えたポンプ体と、
このポンプ体を形成する前記分配管の吸入口に接続したパイプ状の吸入管と、
前記分配管に設けた排出口に接続すると共に、その終端部分をストレート状のパイプ管として、このストレート状のパイプ管の端部周囲を鋸歯状カットとした蛇腹状ホースと、この蛇腹状ホースの蛇腹終端部と前記ストレート状のパイプ管との間に設けられ、給油後に少なくとも前記ストレート状のパイプ管内の周壁面に付着した残液の排出を、前記鋸歯状カットと共に促進させる第2のポンプ室とを設けた排出管とからなる給油ポンプ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2009−270558(P2009−270558A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−145121(P2008−145121)
【出願日】平成20年5月5日(2008.5.5)
【出願人】(507252292)
【Fターム(参考)】