説明

給油口廻りの車体構造

【課題】 後部車体の剛性確保と給油口保護の両立が図れる給油口廻りの車体構造を提供することを目的とする。
【解決手段】 ブラケットソーサ2が車体骨格1に対して隙間δ1、δ2を有するフローティング構造を採り、軽度の後面衝突時には、車体骨格を構成するリヤピラーリンフォース1等の高い剛性によりブラケットソーサ2が確実に保護される。比較的大きな衝撃荷重が作用してリヤピラーリンフォース1等が変形を開始した場合でも、ブラケットソーサ2がリヤピラーリンフォース1に対してフローティング構造を採っていることで、リヤピラーからの衝撃荷重の影響を受けにくく、ブラケットソーサ2の変形移動やキャップの離脱が抑止され、フィラーチューブ3との接続が断たれることも未然に防げる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体骨格内にブラケットソーサが配設された給油口廻りの車体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車体後部構造において、リヤゲート開口部周囲は開口部であるが故に強度が不足しがちである。このリヤゲート開口部の補強やリヤサスペンションからの突上げ荷重に対する剛性を確保するため、リヤピラー部において補強体としての車体骨格であるリヤピラーリンフォースが車体屋根部近傍からタイヤハウスにかけて配設されている。そして、主に4ドアタイプの車両では、後部ドアとリヤゲートとの間の間隔が比較的小さいことから、リヤサスペンション取付部の真上からリンフォースが上方に延びている。高い剛性が確保されたこのリンフォースを利用して給油口を構成するブラケットソーサが配設されものが提案されている(例えば下記特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−337736号公報(請求項1、段落0026および0036参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
図4を用いて、前記特許文献1に開示された自動車の車体後部補強構造について説明する。この補強構造は、リヤピラーインナ103とピラーリンフォース105とで構成した閉断面部106が、剛性メンバのリヤホイールハウス111につながり、特に該閉断面部106がリヤホイールハウスアウタ113に形成した略箱形の剛性強化部114に直結して剛体結合としたものである、このような構成により、リヤサスペンション入力を前記閉断面部106がその軸線方向で受けることができ、リヤピラー101の倒れ変形を防止してバックドアの開閉性能を確実に保持させることができることとなった。
【0004】
そして、前記剛性強化部114の側壁にフィラーチューブ接続口117を形成し、前記側壁にベッセル(ブラケットソーサ)118を接合して図示外のフィラーチューブを接続している。このような構成により、フィラーチューブ接続口117を、剛性の高いリヤピラーインナ103とピラーリンフォース105とで構成される閉断面部106に直結した剛性強化部114に設けてあるため、車両の後面衝突に対して給油口廻りの変形を抑止して、フィラーチューブ接続口117に接続されるフィラーチューブの破損を防止できることとなった。
【0005】
しかしながら、前記従来例にあって、給油口を構成する前記ベッセル(ブラケットソーサ)118はピラーリンフォース105に結合されている。そのために通常、リヤサスペンション取付部の剛性により保護されるフィラーチューブに対して、ピラーリンフォース105が大きな衝撃によって変形した場合には、前記ベッセル118も変形して給油口キャップが外れたり、フィラーチューブとの接続が断たれる虞れも発生した。
【0006】
そこで本発明は、このような従来の自動車の車体後部補強構造の課題を解決して、特に、ストラットサスペンションを備え、リヤピラーの前後幅が比較的大きく採れる2ドア車の後部車体の剛性確保と給油口保護の両立が図れる給油口廻りの車体構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このため本発明は、車体骨格内にブラケットソーサが配設された給油口廻りの車体構造において、前記ブラケットソーサが車体骨格に対してフローティング構造を採っていることを特徴とする。また本発明は、前記ブラケットソーサがリヤサスペンション取付部の前方に配設されたことを特徴とするもので、これらを課題解決のための手段とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、車体骨格内にブラケットソーサが配設された給油口廻りの車体構造において、前記ブラケットソーサが車体骨格に対してフローティング構造を採っていることにより、軽度の後面衝突時には、車体骨格を構成するリヤピラーリンフォース等の高い剛性によりブラケットソーサが確実に保護される。また、比較的大きな衝撃荷重が作用してリヤピラーリンフォース等が変形を開始した場合でも、ブラケットソーサがリヤピラーリンフォースに対してフローティング構造を採っていることで、リヤピラーからの衝撃荷重の影響を受けにくく、ブラケットソーサの変形移動やキャップの離脱が抑止され、フィラーチューブとの接続が断たれることも未然に防げる。
【0009】
また、前記ブラケットソーサがリヤサスペンション取付部の前方に配設された場合は、補強体としての車体骨格を構成するリヤピラーリンフォース等がリヤサスペンション取付部よりも充分に前方に配設されて、ブラケットソーサのリヤピラーリンフォース等におけるフローティング配設構造の自由度が向上する。また、高い剛性のリヤサスペンション取付部により保護されるフィラーチューブも、リヤサスペンション取付部よりも充分に前方にて後面衝突から保護される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。図1は本発明の給油口廻りの車体構造の1つの実施例を示すもので、車体骨格の平断面図で図3のA−A断面図、図2は車体後部側面図、図3は要部側面図である。本発明の基本的な構造は、図1に示すように、車体骨格1内にブラケットソーサ2が配設された給油口廻りの車体構造において、前記ブラケットソーサ2が車体骨格1に対してフローティング構造(隙間δ1、δ2を有する)を採っていることを特徴とする。
【0011】
実施例について以下に詳述する。図1に示すものは、ストラットサスペンションを備え、リヤピラーの前後幅が比較的大きく採れる2ドア車の車体後部に適用された例である。リヤサスペンション取付部4に対して給油口が幾分前方に所定量Lだけ偏位して配置される。つまり、車体骨格を構成するリヤピラーリンフォース1がリヤサスペンション取付部4に対してLだけ前方へ偏位して配置され、フィラーチューブ3が接続されるブラケットソーサ(フラップ)2もリヤサスペンション取付部4に対してLだけ前方へ偏位して配置されることになる。
【0012】
本発明では、車体骨格を構成するリヤピラーリンフォース1に対して、前部側1Aとの間にδ2、後部側1Bとの間にδ1の隙間を有して、ブラケットソーサ2がフローティング構造を採っている。ブラケットソーサ2は車体アウタパネル5に接合されている。したがって、後面衝突時には比較的変形し易い車体アウタパネル5からの衝撃がブラケットソーサ2に影響を及ぼすことは少ない。
【0013】
図2は車体後部側面図で、車体後部側面のリヤピラー部において補強体としての車体骨格であるリヤピラーリンフォース1が車体屋根部近傍からタイヤハウスにかけて配設されている。リヤピラーリンフォース1の後部側下端がリヤサスペンション取付部4に接続固定される。リヤピラーリンフォース1の前部側1Aと後部側1Bとの間に、隙間を有してブラケットソーサ2がフローティング状態にて配設されていることが明瞭に分かる。ブラケットソーサ2に接続されたフィラーチューブ3がリヤサスペンション取付部4の前方に配設されて、後部からの衝突から保護されていることも理解される。
【0014】
図3は図2の要部側面図である。リヤピラーリンフォース1の前部側1Aと後部側1Bとの間に、隙間を有してフローティング状態にて配設されブラケットソーサ2において、フィラーチューブ3との接続ブラケットである給油口の周囲に補強リブ2Aを形成して、衝突時のブラケットソーサ2の変形を抑制できるように構成した。さらに、リヤピラーリンフォース1の後部側下端が接続固定されたリヤサスペンション取付部4の側壁面にも補強リブ4Aを数条形成して、リヤサスペンション取付部4の剛性を高めるようにしている。これにより、フィラーチューブ3が後部からの衝突から充分に保護される。
【0015】
以上、本発明の各実施の形態について説明してきたが、本発明の趣旨の範囲内で、リヤピラーリンフォース等の車体骨格の形状(適宜の形状のリヤピラーに対してリヤピラーリンフォースを補完させてもよいし、リヤピラー自体がリヤピラーリンフォースとして機能するものでもよい。他のパネルと適宜の閉断面形状を構成することが好ましい。上下方向の配設形状等についても車体シルエットや車体部品等と関連させた適宜の形状が採用され得る。)、形式、ブラケットソーサの形状(円形、楕円形等)、形式、隙間の形態を含む車体骨格とブラケットソーサとのフローティング関連構成(所定の隙間を有するフローティング形態の他、軟質材を介在させたフローティング形態としてもよい。)、フィラーチューブの形状、形式、ブラケットソーサとフィラーチューブとの接続形態、リヤサスペンション取付ブラケットの形状、形式、リヤサスペンションと車体骨格との接続形態(ストラットサスペンションの応力が適切に分散して伝達される適宜の接続形態が採用され得る。)、リヤサスペンション取付ブラケットとフィラーチューブとの関連構成(フィラーチューブが後面衝突時に有効に保護され得る適宜の関連構成)等については適宜選定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の給油口廻りの車体構造の1つの実施例を示すもので、車体骨格の平断面図で図3のA−A断面図である。
【図2】同、車体後部側面概略図である。
【図3】同、要部側面図である。
【図4】従来の自動車の車体後部構造の斜視図および要部断面図である。
【符号の説明】
【0017】
1 車体骨格(リヤピラーリンフォース等)
2 ブラケットソーサ
3 フィラーチューブ
4 リヤサスペンション取付部
5 車体パネルアウタ
δ1 前部隙間
δ2 後部隙間
L 偏位量

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体骨格内にブラケットソーサが配設された給油口廻りの車体構造において、前記ブラケットソーサが車体骨格に対してフローティング構造を採っていることを特徴とする給油口廻りの車体構造。
【請求項2】
前記ブラケットソーサがリヤサスペンション取付部の前方に配設されたことを特徴とする請求項1に記載の給油口廻りの車体構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−103445(P2006−103445A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−291004(P2004−291004)
【出願日】平成16年10月4日(2004.10.4)
【出願人】(000005348)富士重工業株式会社 (3,010)
【Fターム(参考)】