絶縁ゲート型デバイスの駆動回路
【課題】通常動作への影響(消費電流やRon)を低減しつつ、デバイスの誤オンの防止と高速ターンオフとを実現することができる絶縁ゲート型デバイスの駆動回路を提供する。
【解決手段】パワーMOSFET8のゲート−ソース間にパワーMOSFET8のゲート電圧を下げるためのゲート電圧制御用MOSFET14を設け、ゲート電圧制御用MOSFET14のゲート−ドレイン間にプルアップ素子としてN型デプレッションMOSFET25を設ける。そして、N型デプレッションMOSFET25を、パワーMOSFET8のドレイン電圧Vdが急激に持ち上げられたときに発生する、パワーMOSFET8のゲート−ドレイン間の寄生容量Cgdの充電電流Irによって駆動されるように構成する。
【解決手段】パワーMOSFET8のゲート−ソース間にパワーMOSFET8のゲート電圧を下げるためのゲート電圧制御用MOSFET14を設け、ゲート電圧制御用MOSFET14のゲート−ドレイン間にプルアップ素子としてN型デプレッションMOSFET25を設ける。そして、N型デプレッションMOSFET25を、パワーMOSFET8のドレイン電圧Vdが急激に持ち上げられたときに発生する、パワーMOSFET8のゲート−ドレイン間の寄生容量Cgdの充電電流Irによって駆動されるように構成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁ゲート型デバイスの駆動回路に関し、特に当該デバイスの誤オンを防止すると共に、ターンオフ動作を高速にて行う絶縁ゲート型デバイスの駆動回路に関する。
【背景技術】
【0002】
図11は、従来の絶縁ゲート型デバイスの駆動回路の構成を示す回路図である。
この図11に示すように、抵抗負荷や誘導負荷等である負荷102の一端を電源101に接続し、負荷102の他端を負荷駆動制御素子(高機能MOSFET)103に接続している。負荷駆動制御素子103は、ドレイン端子104、ゲート端子105、ソース端子106の3端子で構成する。ドレイン端子104は負荷102の他端に接続し、ソース端子106はグランドに接続している。また、ゲート端子105には、外部からゲート信号が入力される。負荷駆動制御素子103は、駆動回路部117と、パワー部118とで構成されており、駆動回路部117とパワー部118とは1つの半導体チップ内に形成する。
【0003】
パワー部118は、駆動回路部117によってオンオフ制御される絶縁ゲート型デバイスであるパワーMOSFET108からなる。
負荷駆動制御素子103のゲート端子105およびパワーMOSFET108のゲート電位123とグランド電位(ソース電位)124との間には、温度を検出する温度検出センサ111と、温度検出センサ111の信号処理及び負荷駆動制御素子3の閾値電圧を決定する論理回路112と、論理回路112の信号を受けてゲート電位123のシャットダウンを制御するゲート電圧制御用MOSFET114とをそれぞれ設ける。
【0004】
また、ドレイン電位122とグランド電位(ソース電位)124との間には、電流検出センサ110を設けており、ゲート電位123とグランド電位(ソース電位)124との間には、電流検出センサ110の信号を受けてゲート電位123の電圧レベルを制御するゲート電圧制御回路115も設ける。
その他にゲート電位123とグランド電位(ソース電位)124との間には、パワーMOSFET108のゲートの保護素子としてダイオード109及び抵抗113があり、ダイオード109と抵抗113の接続点はゲート端子105に接続されている。さらに、ゲート端子105にノイズが来てもパワーMOSFET108がオンしないようにゲート電位123をプルダウンするための定電流源116がある。
【0005】
負荷駆動制御素子103は、負荷102を駆動するためのスイッチング素子として機能する。また、この負荷駆動制御素子103は、上記スイッチング機能以外に、負荷102が短絡したとき等に負荷駆動制御素子103に流れる大電流により負荷駆動制御素子103自体が破壊するのを防止するための過電流検出機能、その大電流による発熱で負荷駆動制御素子103自体が破壊するのを防止するための過熱検出機能、およびスイッチング素子のゲート保護機能を有する。過熱検出機能及び過電流検出機能は、ゲート電圧を電源として動作する。
【0006】
過熱検出機能は以下のように動作する。すなわち、温度上昇に伴い温度検出センサ111の出力(論理回路112の入力)121の電圧が所定の電圧に達したとき、論理回路112は、ゲート電圧制御用MOSFET114のゲート119に電圧制御用MOSFET114をオン状態とする電圧を印加する。これにより、ゲート電位123をパワーMOSFET108の閾値電圧より低くしてパワーMOSFET108をオフし、負荷駆動制御素子103をオフする。
【0007】
また、過電流検出機能は以下のように動作する。すなわち、ドレイン端子104とグランド端子(ソース端子)106との間に流れる電流の増大に伴い、電流検出センサ110からゲート電圧制御回路115への入力120が所定の電圧に達したとき、ゲート電圧制御回路115は、ゲート電位123を小さくすることにより、ドレイン端子104とグランド端子(ソース端子)106との間に流れる電流を制限する。
また、論理回路112及びゲート電圧制御用MOSFET114は、ゲート端子105に負荷駆動制御素子103の閾値電圧が印加されるまでは、パワーMOSFET108のゲート電位123をパワーMOSFET108の閾値電圧より低くして、パワーMOSFET108をオンしないようにする、閾値決定機能も有している。
【0008】
図12は、閾値決定機能を示すタイミングチャートである。ここでは、ゲート端子105に三角波が入力された場合のゲート端子105の電圧Vin、パワーMOSFET108のゲート電圧Vg(ゲート電位123)、ドレイン電圧Vd(ドレイン電位122)、ゲート電圧制御用MOSFET114のゲート電圧Vaを示している。図12に示すように、ゲート電圧制御用MOSFET114をオンオフ制御することで、ゲート端子105の電圧Vinが負荷駆動制御素子103の閾値VIN(th)に達するまで、パワーMOSFET108のゲート電圧VgをパワーMOSFET108の閾値Vg(th)より低くする。製造バラツキを含めて、ゲート電圧制御用MOSFET114の閾値Va(th)<パワーMOSFET108の閾値Vg(th)とすることにより、このように駆動回路部117でパワーMOSFET108のゲート電圧Vgを制御でき、負荷駆動制御素子103の閾値VIN(th)を決定することが可能である。
【0009】
ところで、パワーMOSFET108のゲート−ドレイン間には、比較的大きな寄生容量Cgdが形成されている。
そのため、パワーMOSFET108をオン状態からオフ状態へ切り替える際に、寄生容量Cgdの充電電流によりゲート電圧Vgが持上げられる。このとき、オフ時のゲート端子105の電圧Vinがゲート電圧制御用MOSFET114の閾値より低い状態では、ゲート電圧制御用MOSFET114による上記充電電流の引き抜きが行われないため、ターンオフ時間が長くなるといった問題がある。
【0010】
そこで、この充電電流を素早く引き抜くために、パワーMOSFET108のゲートとグランド124との間や、ゲート端子105とグランド124との間に抵抗や定電流源を配置することで、パワーMOSFET108のゲートとグランド124との間のインピーダンスを小さくするといった対策が一般的に行われている。
また、パワーMOSFETがターンオフする際に発生するサージ電圧とターンオフ損失とを効果的に低減するものとして、特許文献1に記載の技術がある。この技術は、パワーMOSFETの主端子に流れる電流をターンオフする際にゲート容量を放電させる電流源回路と、この電流源回路を介してゲート容量を放電する電流値を調整する電流調整回路とを備えるものである。
【0011】
この特許文献1に記載の技術では、ゲート信号によりパワーMOSFETがターンオフするときに電流源回路を接続し、パワーMOSFETがターンオンしているときは電流源回路を切り離すようにしている。また、ここでは、電流源回路の出力電流を可変とし、電流調整回路により、パワーMOSFETの主端子両端の電圧が上昇をはじめるまでは電流源回路の出力電流を一定値とし、上記主端子両端の電圧の上昇に伴って電流源回路の出力電流を徐々に低下させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2008−67593号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上述したように、パワーMOSFET108のゲート−ドレイン間には、比較的大きな寄生容量Cgdが形成されている。そのため、パワーMOSFET108がオフ状態のときに電源101が急激に上昇した場合、寄生容量Cgdを充電する電流Idgが流れ、この電流が定電流源116やゲート抵抗113を介して、グランド107に流れる。電流Idgが定電流源116やゲート抵抗113を流れると、ゲート電圧123が持ち上げられ、この電位がパワーMOSFET108の閾値を越えると、パワーMOSFET108がオフ状態からオン状態に切り替わってしまう。このような現象は、特に、ゲート端子105の電圧がゲート電圧制御用MOSFET114の閾値より低い状態のとき、ゲート電圧制御用MOSFET114による電流の引き抜きが行われないことに起因して顕著に発生する。
【0014】
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術では、パワーMOSFETがオフ状態のときに電源が急激に上昇した場合の対策が講じられていないため、このような状況下では、オフ状態であるパワーMOSFETが誤オンしてしまう。この問題に対処するためには、パワーMOSFETがターンオフしているときに電流源回路の出力電流を常に一定以上の電流値にしておく必要がある。
【0015】
ところが、この場合、ゲート端子に印加された電圧をプルダウンしてしまうため、通常オン時のパワーMOSFETのゲート電圧の低下によるパワーMOSFETの通電能力の低下(Ronの増大)や、消費電流の増大といった問題が生じる。
そこで、本発明は、通常動作への影響(消費電流やRon)を低減しつつ、デバイスの誤オンの防止と高速ターンオフとを実現することができる絶縁ゲート型デバイスの駆動回路を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するために、請求項1に係る絶縁ゲート型デバイスの駆動回路は、外部から入力されるゲート信号に基づいて絶縁ゲート半導体素子を駆動する絶縁ゲート型デバイスの駆動回路であって、前記絶縁ゲート半導体素子のゲート・ソース間に接続されたゲート電圧制御用半導体素子と、前記ゲート電圧制御用半導体素子のゲート・ドレイン間に接続されたプルアップ素子と、を備え、前記ゲート電圧制御用半導体素子は、前記絶縁ゲート半導体素子のゲート・ドレイン間に形成された寄生容量の充電電流によって駆動されることを特徴としている。
【0017】
これにより、絶縁ゲート半導体素子がオフ状態であるときに電源電圧が急激に上昇した場合に、絶縁ゲート半導体素子のゲート・ドレイン間の寄生容量を充電する電流が流れることに起因して、絶縁ゲート半導体素子のゲート電圧が持ち上げられた場合であっても、ゲート電圧制御用半導体素子によって上記充電電流を引き抜くことができる。そのため、絶縁ゲート半導体素子のゲート電圧を下げることができ、絶縁ゲート半導体素子の誤オンを防止することができる。
【0018】
また、ターンオフ動作時にも、ゲート電圧制御用半導体素子によって上記充電電流を引き抜くことができるので、高速ターンオフが可能となる。
このように、絶縁ゲート半導体素子のゲート・ドレイン間に形成された寄生容量の充電電流を電源としてゲート電圧制御用半導体素子を駆動するので、ゲート信号を印加する外部入力回路の出力インピーダンスや、ゲート信号の電圧レベルに依存せずに、絶縁ゲート半導体素子の誤オンの防止と高速ターンオフとを実現することができる。
【0019】
また、請求項2に係る絶縁ゲート型デバイスの駆動回路は、請求項1に係る発明において、前記プルアップ素子は、デプレッション型のMOSFETであることを特徴としている。
これにより、プルアップ素子を定電流源素子とすることができる。
さらに、請求項3に係る絶縁ゲート型デバイスの駆動回路は、請求項1又は2に係る発明において、前記ゲート電圧制御用半導体素子は、前記ゲート信号の電圧値が前記ゲート電圧制御用半導体素子の閾値電圧よりも高い所定の基準電圧以上であるときにオフ状態となり、前記ゲート信号の電圧値が前記基準電圧を下回っているときだけ、オン状態に駆動制御可能とすることを特徴としている。
【0020】
このように、ゲート信号の電圧値が基準電圧を下回っているときだけゲート電圧制御用半導体素子をオン状態に駆動制御可能とするので、ゲート信号の電圧値が基準電圧に達している場合にゲート電圧制御用半導体素子がオンするのを防止することができる。したがって、通常動作への影響(絶縁ゲート半導体素子の誤オフ、消費電流やRonの増大など)を抑制することができる。
【0021】
また、請求項4に係る絶縁ゲート型デバイスの駆動回路は、請求項1〜3の何れかに係る発明において、前記ゲート信号に基づいて前記ゲート電圧制御用半導体素子を駆動制御する閾値制御回路を備え、前記プルアップ素子から前記閾値制御回路の高電位側電源へ電流が流れることを防止するダイオードを備えることを特徴としている。
このように、閾値制御回路を設けることで、ゲート信号の電圧値が所定の基準電圧に達するまで、ゲート電圧制御用半導体素子によって絶縁ゲート半導体素子のゲート電圧を絶縁ゲート半導体素子の閾値電圧より低くして絶縁ゲート半導体素子をオフしておくことができるので、絶縁ゲート半導体素子がターンオンする電圧を制御することが可能である。そして、プルアップ素子から閾値制御回路の高電位側電源へ電流が流れるのを防止するダイオードを備えることで、プルアップ素子から流れてくる電流の影響を受けずに閾値制御回路を動作させることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、絶縁ゲート半導体素子のゲート−ドレイン間の寄生容量の充電電流を電源としてゲート電圧制御用半導体素子をオンさせる構成とするので、ゲート端子に電圧を印加する入力回路の出力インピーダンスや、ゲート端子に印加される信号のオフ時の電圧レベルに依存することなく、ゲート電圧制御用半導体素子によって上記充電電流を素早く引き抜くことができる。したがって、絶縁ゲート半導体素子の誤オンの防止と、高速ターンオフとを実現することができる。
【0023】
また、絶縁ゲート半導体素子をオンさせて上記充電電流を引き抜くため、チップサイズを小さく抑えることができると共に、通常動作への影響(消費電流やRon)を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係る絶縁ゲート型デバイスの駆動回路の構成を示す回路図である。
【図2】電流検出センサの構成を示す回路図である。
【図3】温度検出センサの構成を示す回路図である。
【図4】論理回路の構成を示す回路図である。
【図5】ゲート電圧制御回路の構成を示す回路図である。
【図6】パワーMOSFETの素子構造である。
【図7】パワーMOSFETを単純化モデルで示した回路図である。
【図8】従来のパワーMOSFETの誤オンについて説明するための図である。
【図9】入力回路の構成を示す回路図である。
【図10】従来のパワーMOSFETのターンオフ動作について説明するための図である。
【図11】従来の絶縁ゲート型デバイスの駆動回路の構成を示す回路図である。
【図12】閾値決定機能を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
(第1の実施形態)
(構成)
図1は、本発明に係る絶縁ゲート型デバイスの駆動回路を適用した半導体集積回路装置の構成を示す回路図である。
この図1に示すように、抵抗負荷や誘導負荷等の負荷2の一端を電源1に接続し、負荷2の他端を半導体集積回路装置である負荷駆動制御素子3に接続している。
負荷駆動制御素子3は、ドレイン端子4、ゲート端子5、ソース端子6の3端子で構成する。ドレイン端子4は負荷2の他端に接続し、ソース端子6はグランドに接続する。また、ゲート端子5には、外部からゲート信号が入力される。負荷駆動制御素子3は、駆動回路部17とパワー部18とで構成されており、これらは1つの半導体チップ内に形成されている。パワー部18は、駆動回路部17によってオンオフ制御されるパワーMOSFET(絶縁ゲート半導体素子)8からなる。
【0026】
負荷駆動制御素子3のゲート端子5とグランド電位(ソース電位)24との間には、ツェナーダイオード9を接続する。
また、ドレイン電位22とグランド電位24との間には、電流検出センサ10を接続する。電流検出センサ10としては、例えば、図2(a)に示すように、抵抗10a及び10bの抵抗分圧を用いたものや、図2(b),(c)に示すように、電流検出MOSFET10c,10dを用いたものがある。
【0027】
さらに、ゲート端子5とグランド電位24との間には、温度検出センサ11を接続する。温度検出センサ11としては、例えば、図3に示すダイオード11aのVF特性の温度特性を利用したセンサを用いることができる。
また、ゲート端子5とグランド電位24との間には、論理回路(閾値制御回路)12を接続する。論理回路12としては、例えば、図4に示すように、N型デプレッションMOSFET12aと、ダイオード12bと、N型エンハンスメントMOSFET12cとから構成される回路を用いることができる。ここで、ダイオード12bは、後述するN型デプレッションMOSFET25を流れる電流が、N型デプレッションMOSFET12aを介して論理回路(閾値制御回路)12の高電位側電源であるゲート端子5に流れないようにするために設けている。
【0028】
また、パワーMOSFET8のゲートとゲート端子5の間には、ゲート抵抗13が接続されている。
さらに、パワーMOSFET(絶縁ゲート半導体素子)8のゲート電位23とグランド電位24との間には、ゲート電圧制御用MOSFET(ゲート電圧制御用半導体素子)14が接続されており、このゲート電圧制御用MOSFET14のドレイン−ゲート間には、プルアップ素子としてN型デプレッションMOSFET25が接続されている。
【0029】
また、ゲート電位23とグランド電位24との間には、ゲート電圧制御回路15が接続されている。このゲート電圧制御回路15の入力端は、電流検出センサ10の出力端に接続している。ゲート電圧制御回路15としては、図5(a)〜(c)に示すような構成のものを用いることができる。
さらに、ゲート電位23とグランド電位24との間には、定電流源16が接続されている。この定電流源16は、ゲート端子5にノイズが来てもパワーMOSFET8がオンしないようにゲート電位23をプルダウンするためのものである。なお、定電流源16の出力電流値は、図11に示す従来の定電流源116に要求される電流値より小さく設定されたものを用いることができる。
【0030】
この負荷駆動制御素子3は、負荷2を駆動するためのスイッチング素子としての機能の他に、負荷2が短絡したとき等に負荷駆動制御素子3に流れる大電流により負荷駆動制御素子3自体が破壊するのを防止するための過電流検出・保護機能と、その大電流による発熱で負荷駆動制御素子3自体が破壊するのを防止するための過熱検出・保護機能とを有する。
【0031】
過電流検出・保護機能は、電流検出センサ10およびゲート電圧制御回路15で実現する。以下、過電流検出・保護機能について具体的に説明する。
ドレイン端子4とグランド端子6との間に過電流が流れると、電流検出センサ10の出力、すなわちゲート電圧制御回路15の入力20の電圧は大きくなる。ゲート電圧制御回路15の入力20の電圧が所定電圧以上となると、図5に示すゲート電圧制御回路15のN型エンハンスメントMOSFET15aがオンする。これにより、ゲート電位23を小さくし、ドレイン端子4とグランド端子6との間に流れる電流を制限する。
【0032】
過熱検出・保護機能は、温度検出センサ11、論理回路12およびゲート電圧制御用MOSFET14で実現する。以下、過熱検出・保護機能について具体的に説明する。
温度上昇に伴い、温度検出センサ11の出力、すなわち論理回路12の入力21の電圧は小さくなる。論理回路12の入力21の電圧が所定電圧以下となると、論理回路12からゲート電圧制御用MOSFET14のゲート19に電圧Vinを印加する。これにより、ゲート電圧制御用MOSFET14がオンし、ゲート電位23がパワーMOSFET8の閾値電圧より低くなる。このようにして負荷駆動制御素子3をオフする。
【0033】
過電流検出・保護機能および過熱検出・保護機能は、外部電源を必要とせず、ゲート端子5の電圧を電源として動作する。これにより、本実施形態における負荷駆動制御素子3は、単体MOSFET同様、3端子で動作することができる。また、ゲート保護回路は外付けで構成されるのが一般的であるが、これを負荷駆動制御素子3内に形成することで、外付け素子が不要となる。その結果、コストダウン、占有面積の縮小化が可能となる。さらに、各検出回路及びゲート保護回路を1チップに搭載することによるチップコストの低減、組立工程の簡略化が可能になる。
【0034】
また、論理回路12及びゲート電圧制御用MOSFET14で、負荷駆動制御素子3の閾値電圧(基準電圧)VIN(th)を決定する閾値決定機能を実現する。この機能は、ゲート端子5に閾値VIN(th)の電圧が印加されるまでは、パワーMOSFET8のゲート電位23をパワーMOSFET8の閾値電圧より低くして、パワーMOSFET8をオンしないようにするものである。
【0035】
ゲート端子5にゲート信号として三角波が入力された場合、閾値決定機能を示すタイミングチャートは図12に示すようになる。すなわち、時刻t1で、ゲート端子5の電圧Vinが上昇し始めると、ゲート端子5の電圧Vinの上昇に伴って論理回路12の出力電圧(ゲート電圧制御用MOSFET14のゲート電圧)Vaが上昇する。論理回路12は、電源電圧としてゲート信号の電圧を利用しているため、ゲート電圧制御用MOSFET14のゲート電圧Vaはゲート端子5の電圧Vinと同じになる。時刻t2に達するまではゲート電圧制御用MOSFET14がオフしているので、パワーMOSFET8のゲート電位23(Vg)はゲート端子5の電圧Vinに等しい(Vg=Vin)。
【0036】
その後、時刻t2で、ゲート電圧制御用MOSFET14のゲート電圧Vaがゲート電圧制御用MOSFET14の閾値Va(th)に達すると、ゲート電圧制御用MOSFET14がオンする。したがって、パワーMOSFET8のゲート電位23(Vg)は接地電圧(0[V])となる。
そして、時刻t3で、ゲート端子5の電圧Vinが負荷駆動制御素子3の閾値VIN(th)に達すると、論理回路12がオフ信号(Va=Vin)を出力することによりゲート電圧制御用MOSFET14がオフする。これにより、パワーMOSFET8のゲートにゲート端子5の電圧Vinが印加される。このように、ゲート電圧制御用MOSFET14は、ゲート端子5の電圧Vinが閾値VIN(th)を下回っているときだけオン状態に制御可能とする。
【0037】
この時刻t3では、パワーMOSFET8のゲート電位23(Vg)がパワーMOSFET8の閾値Vg(th)を超えているため、この時点でパワーMOSFET8がオフ状態からオン状態に切り替わり、負荷駆動制御素子3がオン状態となる。
このように、Va(th)<Vg(th)とすることにより、パワーMOSFET8のゲート電位23を制御することができ、負荷駆動制御素子3の閾値VIN(th)を決定することが可能である。
本実施形態では、通常動作時において、N型デプレッションMOSFET25の電流が論理回路12のN型エンハンスメントMOSFET12cを流れる。そのため、この電流を考慮し、所望の特性が得られるよう論理回路12のN型デプレッションMOSFET12aとN型エンハンスメントMOSFET12cのサイズを設定する。
【0038】
(動作)
次に、本実施形態の動作について説明する。
今、負荷駆動制御素子3をオン状態とするべく、外部から負荷駆動制御素子3のゲート端子5にゲート信号を入力したものとする。このとき、図12に示すように、ゲート信号として三角波を入力したものとすると、上述した閾値決定機能により、時刻t3でゲート端子5の電圧が負荷駆動制御素子3の閾値VIN(th)に達するまで、ゲート電位23(Vg)はパワーMOSFET8の閾値電圧より低くなる。そのため、パワーMOSFET8は、時刻t3までオフ状態を維持する。その後、時刻t3で、ゲート端子5の電圧Vinが閾値VIN(th)に達すると、ゲート電圧制御用MOSFET14がオフし、パワーMOSFET8のゲートにその時点でのゲート端子5の電圧Vinが印加される。これにより、パワーMOSFET8がオンし、負荷駆動制御素子3がオン状態となる。
【0039】
負荷駆動制御素子3をオン状態からオフ状態へ切り替える場合には、負荷駆動制御素子3のゲート端子5にオフ信号を入力する。すなわち、図12の時刻t4以降、ゲート端子5の電圧Vinは低下する。すると、これに伴いパワーMOSFET8のゲート電圧Vgが低下する。そして、時刻t5でゲート端子5の電圧Vinが閾値VIN(th)を下回ると、ゲート電圧制御用MOSFET14のゲートに、その時点でのゲート端子5の電圧Vinが印加される。このときゲート端子5の電圧Vinは、ゲート電圧制御用MOSFET14の閾値Va(th)以上となっているため、この時刻t5でゲート電圧制御用MOSFET14がオンする。これにより、パワーMOSFET8のゲート電圧Vgが接地電圧となってパワーMOSFET8が速やかにオフし、負荷駆動制御素子3がオフ状態となる。
【0040】
その後、時刻t6でゲート端子5の電圧Vinがゲート電圧制御用MOSFET14の閾値Va(th)を下回ると、ゲート電圧制御用MOSFET14がオフし、パワーMOSFET8のゲートにゲート端子5の電圧Vinが印加される。このとき、パワーMOSFET5のゲート電圧VgはパワーMOSFET8の閾値Vg(th)を下回っていることから、パワーMOSFET8はオフ状態を維持する。そして、時刻t6以降は、ゲート端子5の電圧Vinの低下に伴って、パワーMOSFET8のゲート電圧Vgも低下していく。
【0041】
次に、このゲート端子5の電圧Vinがゲート電圧制御用MOSFET14の閾値Va(th)より低い状態であり、パワーMOSFET8がオフ状態であるときに、電源1の電圧が急激に上昇した場合について説明する。ここで、電源1の電圧が急激に上昇する状況としては、負荷2の上流回路の切り替わりやサージ、電源1の立ち上がりなどが挙げられる。
【0042】
先ず、パワーMOSFET8の素子構造について説明する。
図6は、パワーMOSFET8の素子構造を示す図である。ドレイン端子,ソース端子,ゲート端子をそれぞれD,S,Gで示している。
この図6に示すように、パワーMOSFET8は、n+基板の上に形成されたn-エピタキシャル層表面側に低濃度のp型層(pウェル)と高濃度のn型層とを二重拡散で形成した構造となっている。パワーMOSFET8のゲート−ドレイン間には、比較的大きな寄生容量Cgdが形成されている。
【0043】
図7は、パワーMOSFET8を単純化モデルで示した回路図である。ゲート端子5の電圧Vinは接地電圧(0[V])としている。
パワーMOSFET8のゲート−ドレイン間には寄生容量Cgd、ドレイン−ソース間には寄生容量Cds、ゲート−ソース間には寄生容量Cgsが形成されている。
パワーMOSFET8に負荷2(インダクタL)を介して電源1から電源電圧VBを印加すると、容量Cdsを充電する電流Idsと、容量Cgdを充電する電流Igdとが流れる。電流Igdの一部は電流Igsとなって容量Cgsを充電し、残りの電流Irはゲート抵抗13(放電抵抗R)を介して放電される。このとき、パワーMOSFET8のゲート電圧Vgは、電流Igsによる容量Cgsの充電電圧に等しく、また放電抵抗Rによる電圧降下Ir・Rに等しい。
したがって、パワーMOSFET8がオフ状態であるときに電源電圧VBが急激に上昇すると、容量Cgdを充電する電流Igdが流れ、この電流Igdの一部が電流Irとして放電抵抗Rを流れることにより、パワーMOSFET8のゲート電圧Vgが急激に持ち上げられる。
【0044】
このとき、図11に示す一般的な負荷駆動制御素子3のように、ゲート電圧制御用MOSFET14がゲート端子5の電圧のみに基づき駆動される、すなわちゲート電圧制御用MOSFET14のゲート電圧がゲート端子5の電圧のみに基づき決定されるものであるとすると、ゲート端子5の電圧がゲート電圧制御用MOSFET14の閾値Va(th)を下回っている状態であるときに電源電圧VBが急激に上昇し、パワーMOSFET8のゲート電圧VgがパワーMOSFET8の閾値Vg(th)以上に持ち上げられると、ゲート電圧制御用MOSFET14による電流Irの引き抜きが行われないことから、パワーMOSFET8が一時的にオフ状態からオン状態に切り替わってしまう。
【0045】
図8は、パワーMOSFET8の誤オン時の状態を示すタイミングチャートである。
電源電圧VBが急激に上昇し、時刻t11でパワーMOSFET8のゲート電圧VgがパワーMOSFET8の閾値Vg(th)以上に持ち上げられたものとする。すると、この時刻t11で、パワーMOSFET8がオフ状態からオン状態へ切り替わる。
このとき、容量Cgdには一定電流が流れるため、容量Cgdの両端電圧は直線的に上昇する。また、ゲート電圧VgはパワーMOSFET8の閾値電圧Vg(th)でほぼ一定となるため、容量Cgdの両端電圧の上昇に伴い、パワーMOSFET8のドレイン電圧Vdも直線的に上昇する(ドレイン電圧Vd=ゲート電圧Vg+容量Cgdの両端電圧)。
【0046】
時刻t11から時刻t12の期間では、パワーMOSFET8のドレイン電圧Vdは電源電圧VBより低く、このVd<VBである期間ではd(Id)/dt=(VB−Vd)/L>0となって電流Idが増加する(インダクタLのインダクタンスもLで表した。)。そして、時刻t12でVd=VBとなるとd(Id)/dt=0となり、その後はVd>VBとなるため、d(Id)/dt<0となって電流Idは減少していく。時刻t13でId=0となると、Vd=VBとなる。このとき、Idg=0となるため、ゲート電圧Vgは急速に低下し、パワーMOSFET8はオフ状態に戻る。
【0047】
このように、ゲート端子5の電圧がゲート電圧制御用MOSFET14の閾値電圧を下回っている状態であるときに電源電圧VBが急激に上昇すると、パワーMOSFET8が一時的にオフ状態からオン状態に切り替わってしまう。
なお、ここでは、ゲート端子5の電圧がゲート電圧制御用MOSFET14の閾値より低い状態である場合について説明したが、ゲート端子5がハイインピーダンス素子にてグランド7に接続された状態や、ゲート端子5が図9に示すような入力回路に接続された状態でも同様の現象が生じる。
【0048】
また、ターンオフ動作においても、パワーMOSFET8がオン状態からオフ状態へ移行する際には、比較的大きな寄生容量Cgdの充電により電流Irが流れ、図10に示すように、時刻t21から時刻t22の期間でゲート電圧Vgが持ち上げられる。そのため、オフ時のゲート端子5の電圧がゲート電圧制御用MOSFET14の閾値Va(th)を下回っている状態では、ターンオフ時間が長くなってしまう。なお、図10において、ゲート端子5の電圧Vinとゲート電圧Vgの基準電位(0[V])の位置は異なっている(電圧Vinの方が若干上側に表示されている。)。
【0049】
これに対して、本実施形態では、ゲート電圧制御用MOSFET14を、パワーMOSFET8のドレイン電圧Vdがローレベルからハイレベルへ移行する際の寄生容量Cgdにより発生する電流Irによって駆動する、すなわちゲート電圧制御用MOSFET14のゲート電圧が電流Irによっても決定されるように構成する。そのため、ゲート端子5の電圧がゲート電圧制御用MOSFET14の閾値電圧を下回っている状態であるときに電源電圧VBが急激に上昇し、パワーMOSFET8のゲート電圧VgがパワーMOSFET8の閾値電圧以上に持ち上げられると、それに応じてゲート電圧制御用MOSFET14がオン状態に切り替わる。
【0050】
例えば、ゲート電圧制御用MOSFET14の閾値電圧が0.6V、パワーMOSFET8の閾値電圧が1.2Vであるものとする。このとき、図8の時刻t11の状態のように、電源電圧VBの急激な上昇によってゲート電位23が0.6V以上となると、N型デプレッションMOSFET25を介してゲート電圧制御用MOSFET14のゲート電圧が0.6V以上に持ち上げられる。そのため、ゲート電圧制御用MOSFET14がオン状態となり、容量Cgdによる電流Irを素早く引き抜くことができる。その結果、ゲート電位23をパワーMOSFET8の閾値電圧1.2Vより低く抑え、パワーMOSFET8の誤オンを防止することができる。
また、ターンオフ動作においても、ターンオフ時の寄生容量Cgdによる電流Irを上記同様素早く引き抜くことができる。そのため、高速にターンオフ動作を行うことができる。
【0051】
(効果)
上記実施形態では、パワーMOSFETのゲート−ソース間にゲート電圧制御用MOSFETを設け、ゲート電圧制御用MOSFETのゲート−ドレイン間にプルアップ素子としてN型デプレッションMOSFETを設ける。そして、ゲート電圧制御用MOSFETを、パワーMOSFETのゲート−ドレイン間の寄生容量を充電する電流Irにより駆動する構成とする。
【0052】
したがって、ゲート端子の電圧がゲート電圧制御用MOSFETの閾値電圧を下回っているとき、すなわちゲート電圧制御用MOSFETがオフ状態であるときに、電源電圧が急激に上昇しパワーMOSFETのゲート電圧が持ち上げられた場合であっても、パワーMOSFETのドレイン電圧がローレベルからハイレベルに移行する際に発生する電流Irによりゲート電圧制御用MOSFETをオン状態へ切り替えることができる。その結果、パワーMOSFETのゲート電圧を低下させてパワーMOSFETをオフ状態に維持することができる。このように、パワーMOSFETの誤オンを防止することができる。
【0053】
また、ターンオフ動作時においても、上記同様、ゲート電圧制御用MOSFETによって電流Irを引き抜くことができるので、高速にパワーMOSFETをターンオフすることが可能となる。
このように、ゲート端子に印加されるゲート信号の電圧レベルや、ゲート端子に電圧を印加する外部入力回路の出力インピーダンス等に依存せず、電源電圧が急激に上昇した際のパワーMOSFETの誤オンを防止することができると共に、高速でパワーMOSFETをターンオフさせることができる。
さらに、ゲート電圧制御用MOSFETをオンさせることで電流Irを引き抜くため、チップサイズが小さくてすむと共に、消費電流の増加やパワーMOSFETの通電能力の低下(Ronの増大)などの通常動作への影響を抑えることができる。
【0054】
(変形例)
なお、上記実施形態においては、絶縁ゲート半導体素子としてパワーMOSFET8を用いる場合について説明したが、IGBT(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)を用いることもできる。
また、上記実施形態においては、プルアップ素子としてN型デプレッションMOSFET12a及び25を用いる場合について説明したが、これに代えて抵抗を用いることもできる。図1に示すように、プルアップ素子としてデプレッションMOSFETを用いると、定電流源素子とすることができ、抵抗を用いる場合と比較して電源電圧が高くなっても電流値の増加を僅かにすることができるが、製造工程は増加する。プルアップ素子として抵抗を用いることで、製造工程を簡易化することができる。
さらに、上記実施形態においては、定電流源16を省略することも可能である。
【符号の説明】
【0055】
1…電源、2…負荷、3…負荷駆動制御素子、4…ドレイン端子、5…ゲート端子、6…グランド端子(ソース端子)、7…グランド、8…パワーMOSFET、9…ツェナーダイオード、10…電流検出センサ、11…温度検出センサ、12…論理回路、13…ゲート抵抗、14…ゲート電圧制御用MOSFET、15…ゲート電圧制御回路、16…定電流源、17…駆動回路部、18…パワー部、19…ゲート電圧制御用MOSFETゲート、20…ゲート電圧制御回路入力、21…論理回路入力、22…ドレイン電位、23…ゲート電位、24…グランド電位、25…N型デプレッションMOSFET
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁ゲート型デバイスの駆動回路に関し、特に当該デバイスの誤オンを防止すると共に、ターンオフ動作を高速にて行う絶縁ゲート型デバイスの駆動回路に関する。
【背景技術】
【0002】
図11は、従来の絶縁ゲート型デバイスの駆動回路の構成を示す回路図である。
この図11に示すように、抵抗負荷や誘導負荷等である負荷102の一端を電源101に接続し、負荷102の他端を負荷駆動制御素子(高機能MOSFET)103に接続している。負荷駆動制御素子103は、ドレイン端子104、ゲート端子105、ソース端子106の3端子で構成する。ドレイン端子104は負荷102の他端に接続し、ソース端子106はグランドに接続している。また、ゲート端子105には、外部からゲート信号が入力される。負荷駆動制御素子103は、駆動回路部117と、パワー部118とで構成されており、駆動回路部117とパワー部118とは1つの半導体チップ内に形成する。
【0003】
パワー部118は、駆動回路部117によってオンオフ制御される絶縁ゲート型デバイスであるパワーMOSFET108からなる。
負荷駆動制御素子103のゲート端子105およびパワーMOSFET108のゲート電位123とグランド電位(ソース電位)124との間には、温度を検出する温度検出センサ111と、温度検出センサ111の信号処理及び負荷駆動制御素子3の閾値電圧を決定する論理回路112と、論理回路112の信号を受けてゲート電位123のシャットダウンを制御するゲート電圧制御用MOSFET114とをそれぞれ設ける。
【0004】
また、ドレイン電位122とグランド電位(ソース電位)124との間には、電流検出センサ110を設けており、ゲート電位123とグランド電位(ソース電位)124との間には、電流検出センサ110の信号を受けてゲート電位123の電圧レベルを制御するゲート電圧制御回路115も設ける。
その他にゲート電位123とグランド電位(ソース電位)124との間には、パワーMOSFET108のゲートの保護素子としてダイオード109及び抵抗113があり、ダイオード109と抵抗113の接続点はゲート端子105に接続されている。さらに、ゲート端子105にノイズが来てもパワーMOSFET108がオンしないようにゲート電位123をプルダウンするための定電流源116がある。
【0005】
負荷駆動制御素子103は、負荷102を駆動するためのスイッチング素子として機能する。また、この負荷駆動制御素子103は、上記スイッチング機能以外に、負荷102が短絡したとき等に負荷駆動制御素子103に流れる大電流により負荷駆動制御素子103自体が破壊するのを防止するための過電流検出機能、その大電流による発熱で負荷駆動制御素子103自体が破壊するのを防止するための過熱検出機能、およびスイッチング素子のゲート保護機能を有する。過熱検出機能及び過電流検出機能は、ゲート電圧を電源として動作する。
【0006】
過熱検出機能は以下のように動作する。すなわち、温度上昇に伴い温度検出センサ111の出力(論理回路112の入力)121の電圧が所定の電圧に達したとき、論理回路112は、ゲート電圧制御用MOSFET114のゲート119に電圧制御用MOSFET114をオン状態とする電圧を印加する。これにより、ゲート電位123をパワーMOSFET108の閾値電圧より低くしてパワーMOSFET108をオフし、負荷駆動制御素子103をオフする。
【0007】
また、過電流検出機能は以下のように動作する。すなわち、ドレイン端子104とグランド端子(ソース端子)106との間に流れる電流の増大に伴い、電流検出センサ110からゲート電圧制御回路115への入力120が所定の電圧に達したとき、ゲート電圧制御回路115は、ゲート電位123を小さくすることにより、ドレイン端子104とグランド端子(ソース端子)106との間に流れる電流を制限する。
また、論理回路112及びゲート電圧制御用MOSFET114は、ゲート端子105に負荷駆動制御素子103の閾値電圧が印加されるまでは、パワーMOSFET108のゲート電位123をパワーMOSFET108の閾値電圧より低くして、パワーMOSFET108をオンしないようにする、閾値決定機能も有している。
【0008】
図12は、閾値決定機能を示すタイミングチャートである。ここでは、ゲート端子105に三角波が入力された場合のゲート端子105の電圧Vin、パワーMOSFET108のゲート電圧Vg(ゲート電位123)、ドレイン電圧Vd(ドレイン電位122)、ゲート電圧制御用MOSFET114のゲート電圧Vaを示している。図12に示すように、ゲート電圧制御用MOSFET114をオンオフ制御することで、ゲート端子105の電圧Vinが負荷駆動制御素子103の閾値VIN(th)に達するまで、パワーMOSFET108のゲート電圧VgをパワーMOSFET108の閾値Vg(th)より低くする。製造バラツキを含めて、ゲート電圧制御用MOSFET114の閾値Va(th)<パワーMOSFET108の閾値Vg(th)とすることにより、このように駆動回路部117でパワーMOSFET108のゲート電圧Vgを制御でき、負荷駆動制御素子103の閾値VIN(th)を決定することが可能である。
【0009】
ところで、パワーMOSFET108のゲート−ドレイン間には、比較的大きな寄生容量Cgdが形成されている。
そのため、パワーMOSFET108をオン状態からオフ状態へ切り替える際に、寄生容量Cgdの充電電流によりゲート電圧Vgが持上げられる。このとき、オフ時のゲート端子105の電圧Vinがゲート電圧制御用MOSFET114の閾値より低い状態では、ゲート電圧制御用MOSFET114による上記充電電流の引き抜きが行われないため、ターンオフ時間が長くなるといった問題がある。
【0010】
そこで、この充電電流を素早く引き抜くために、パワーMOSFET108のゲートとグランド124との間や、ゲート端子105とグランド124との間に抵抗や定電流源を配置することで、パワーMOSFET108のゲートとグランド124との間のインピーダンスを小さくするといった対策が一般的に行われている。
また、パワーMOSFETがターンオフする際に発生するサージ電圧とターンオフ損失とを効果的に低減するものとして、特許文献1に記載の技術がある。この技術は、パワーMOSFETの主端子に流れる電流をターンオフする際にゲート容量を放電させる電流源回路と、この電流源回路を介してゲート容量を放電する電流値を調整する電流調整回路とを備えるものである。
【0011】
この特許文献1に記載の技術では、ゲート信号によりパワーMOSFETがターンオフするときに電流源回路を接続し、パワーMOSFETがターンオンしているときは電流源回路を切り離すようにしている。また、ここでは、電流源回路の出力電流を可変とし、電流調整回路により、パワーMOSFETの主端子両端の電圧が上昇をはじめるまでは電流源回路の出力電流を一定値とし、上記主端子両端の電圧の上昇に伴って電流源回路の出力電流を徐々に低下させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2008−67593号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上述したように、パワーMOSFET108のゲート−ドレイン間には、比較的大きな寄生容量Cgdが形成されている。そのため、パワーMOSFET108がオフ状態のときに電源101が急激に上昇した場合、寄生容量Cgdを充電する電流Idgが流れ、この電流が定電流源116やゲート抵抗113を介して、グランド107に流れる。電流Idgが定電流源116やゲート抵抗113を流れると、ゲート電圧123が持ち上げられ、この電位がパワーMOSFET108の閾値を越えると、パワーMOSFET108がオフ状態からオン状態に切り替わってしまう。このような現象は、特に、ゲート端子105の電圧がゲート電圧制御用MOSFET114の閾値より低い状態のとき、ゲート電圧制御用MOSFET114による電流の引き抜きが行われないことに起因して顕著に発生する。
【0014】
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術では、パワーMOSFETがオフ状態のときに電源が急激に上昇した場合の対策が講じられていないため、このような状況下では、オフ状態であるパワーMOSFETが誤オンしてしまう。この問題に対処するためには、パワーMOSFETがターンオフしているときに電流源回路の出力電流を常に一定以上の電流値にしておく必要がある。
【0015】
ところが、この場合、ゲート端子に印加された電圧をプルダウンしてしまうため、通常オン時のパワーMOSFETのゲート電圧の低下によるパワーMOSFETの通電能力の低下(Ronの増大)や、消費電流の増大といった問題が生じる。
そこで、本発明は、通常動作への影響(消費電流やRon)を低減しつつ、デバイスの誤オンの防止と高速ターンオフとを実現することができる絶縁ゲート型デバイスの駆動回路を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するために、請求項1に係る絶縁ゲート型デバイスの駆動回路は、外部から入力されるゲート信号に基づいて絶縁ゲート半導体素子を駆動する絶縁ゲート型デバイスの駆動回路であって、前記絶縁ゲート半導体素子のゲート・ソース間に接続されたゲート電圧制御用半導体素子と、前記ゲート電圧制御用半導体素子のゲート・ドレイン間に接続されたプルアップ素子と、を備え、前記ゲート電圧制御用半導体素子は、前記絶縁ゲート半導体素子のゲート・ドレイン間に形成された寄生容量の充電電流によって駆動されることを特徴としている。
【0017】
これにより、絶縁ゲート半導体素子がオフ状態であるときに電源電圧が急激に上昇した場合に、絶縁ゲート半導体素子のゲート・ドレイン間の寄生容量を充電する電流が流れることに起因して、絶縁ゲート半導体素子のゲート電圧が持ち上げられた場合であっても、ゲート電圧制御用半導体素子によって上記充電電流を引き抜くことができる。そのため、絶縁ゲート半導体素子のゲート電圧を下げることができ、絶縁ゲート半導体素子の誤オンを防止することができる。
【0018】
また、ターンオフ動作時にも、ゲート電圧制御用半導体素子によって上記充電電流を引き抜くことができるので、高速ターンオフが可能となる。
このように、絶縁ゲート半導体素子のゲート・ドレイン間に形成された寄生容量の充電電流を電源としてゲート電圧制御用半導体素子を駆動するので、ゲート信号を印加する外部入力回路の出力インピーダンスや、ゲート信号の電圧レベルに依存せずに、絶縁ゲート半導体素子の誤オンの防止と高速ターンオフとを実現することができる。
【0019】
また、請求項2に係る絶縁ゲート型デバイスの駆動回路は、請求項1に係る発明において、前記プルアップ素子は、デプレッション型のMOSFETであることを特徴としている。
これにより、プルアップ素子を定電流源素子とすることができる。
さらに、請求項3に係る絶縁ゲート型デバイスの駆動回路は、請求項1又は2に係る発明において、前記ゲート電圧制御用半導体素子は、前記ゲート信号の電圧値が前記ゲート電圧制御用半導体素子の閾値電圧よりも高い所定の基準電圧以上であるときにオフ状態となり、前記ゲート信号の電圧値が前記基準電圧を下回っているときだけ、オン状態に駆動制御可能とすることを特徴としている。
【0020】
このように、ゲート信号の電圧値が基準電圧を下回っているときだけゲート電圧制御用半導体素子をオン状態に駆動制御可能とするので、ゲート信号の電圧値が基準電圧に達している場合にゲート電圧制御用半導体素子がオンするのを防止することができる。したがって、通常動作への影響(絶縁ゲート半導体素子の誤オフ、消費電流やRonの増大など)を抑制することができる。
【0021】
また、請求項4に係る絶縁ゲート型デバイスの駆動回路は、請求項1〜3の何れかに係る発明において、前記ゲート信号に基づいて前記ゲート電圧制御用半導体素子を駆動制御する閾値制御回路を備え、前記プルアップ素子から前記閾値制御回路の高電位側電源へ電流が流れることを防止するダイオードを備えることを特徴としている。
このように、閾値制御回路を設けることで、ゲート信号の電圧値が所定の基準電圧に達するまで、ゲート電圧制御用半導体素子によって絶縁ゲート半導体素子のゲート電圧を絶縁ゲート半導体素子の閾値電圧より低くして絶縁ゲート半導体素子をオフしておくことができるので、絶縁ゲート半導体素子がターンオンする電圧を制御することが可能である。そして、プルアップ素子から閾値制御回路の高電位側電源へ電流が流れるのを防止するダイオードを備えることで、プルアップ素子から流れてくる電流の影響を受けずに閾値制御回路を動作させることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、絶縁ゲート半導体素子のゲート−ドレイン間の寄生容量の充電電流を電源としてゲート電圧制御用半導体素子をオンさせる構成とするので、ゲート端子に電圧を印加する入力回路の出力インピーダンスや、ゲート端子に印加される信号のオフ時の電圧レベルに依存することなく、ゲート電圧制御用半導体素子によって上記充電電流を素早く引き抜くことができる。したがって、絶縁ゲート半導体素子の誤オンの防止と、高速ターンオフとを実現することができる。
【0023】
また、絶縁ゲート半導体素子をオンさせて上記充電電流を引き抜くため、チップサイズを小さく抑えることができると共に、通常動作への影響(消費電流やRon)を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係る絶縁ゲート型デバイスの駆動回路の構成を示す回路図である。
【図2】電流検出センサの構成を示す回路図である。
【図3】温度検出センサの構成を示す回路図である。
【図4】論理回路の構成を示す回路図である。
【図5】ゲート電圧制御回路の構成を示す回路図である。
【図6】パワーMOSFETの素子構造である。
【図7】パワーMOSFETを単純化モデルで示した回路図である。
【図8】従来のパワーMOSFETの誤オンについて説明するための図である。
【図9】入力回路の構成を示す回路図である。
【図10】従来のパワーMOSFETのターンオフ動作について説明するための図である。
【図11】従来の絶縁ゲート型デバイスの駆動回路の構成を示す回路図である。
【図12】閾値決定機能を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
(第1の実施形態)
(構成)
図1は、本発明に係る絶縁ゲート型デバイスの駆動回路を適用した半導体集積回路装置の構成を示す回路図である。
この図1に示すように、抵抗負荷や誘導負荷等の負荷2の一端を電源1に接続し、負荷2の他端を半導体集積回路装置である負荷駆動制御素子3に接続している。
負荷駆動制御素子3は、ドレイン端子4、ゲート端子5、ソース端子6の3端子で構成する。ドレイン端子4は負荷2の他端に接続し、ソース端子6はグランドに接続する。また、ゲート端子5には、外部からゲート信号が入力される。負荷駆動制御素子3は、駆動回路部17とパワー部18とで構成されており、これらは1つの半導体チップ内に形成されている。パワー部18は、駆動回路部17によってオンオフ制御されるパワーMOSFET(絶縁ゲート半導体素子)8からなる。
【0026】
負荷駆動制御素子3のゲート端子5とグランド電位(ソース電位)24との間には、ツェナーダイオード9を接続する。
また、ドレイン電位22とグランド電位24との間には、電流検出センサ10を接続する。電流検出センサ10としては、例えば、図2(a)に示すように、抵抗10a及び10bの抵抗分圧を用いたものや、図2(b),(c)に示すように、電流検出MOSFET10c,10dを用いたものがある。
【0027】
さらに、ゲート端子5とグランド電位24との間には、温度検出センサ11を接続する。温度検出センサ11としては、例えば、図3に示すダイオード11aのVF特性の温度特性を利用したセンサを用いることができる。
また、ゲート端子5とグランド電位24との間には、論理回路(閾値制御回路)12を接続する。論理回路12としては、例えば、図4に示すように、N型デプレッションMOSFET12aと、ダイオード12bと、N型エンハンスメントMOSFET12cとから構成される回路を用いることができる。ここで、ダイオード12bは、後述するN型デプレッションMOSFET25を流れる電流が、N型デプレッションMOSFET12aを介して論理回路(閾値制御回路)12の高電位側電源であるゲート端子5に流れないようにするために設けている。
【0028】
また、パワーMOSFET8のゲートとゲート端子5の間には、ゲート抵抗13が接続されている。
さらに、パワーMOSFET(絶縁ゲート半導体素子)8のゲート電位23とグランド電位24との間には、ゲート電圧制御用MOSFET(ゲート電圧制御用半導体素子)14が接続されており、このゲート電圧制御用MOSFET14のドレイン−ゲート間には、プルアップ素子としてN型デプレッションMOSFET25が接続されている。
【0029】
また、ゲート電位23とグランド電位24との間には、ゲート電圧制御回路15が接続されている。このゲート電圧制御回路15の入力端は、電流検出センサ10の出力端に接続している。ゲート電圧制御回路15としては、図5(a)〜(c)に示すような構成のものを用いることができる。
さらに、ゲート電位23とグランド電位24との間には、定電流源16が接続されている。この定電流源16は、ゲート端子5にノイズが来てもパワーMOSFET8がオンしないようにゲート電位23をプルダウンするためのものである。なお、定電流源16の出力電流値は、図11に示す従来の定電流源116に要求される電流値より小さく設定されたものを用いることができる。
【0030】
この負荷駆動制御素子3は、負荷2を駆動するためのスイッチング素子としての機能の他に、負荷2が短絡したとき等に負荷駆動制御素子3に流れる大電流により負荷駆動制御素子3自体が破壊するのを防止するための過電流検出・保護機能と、その大電流による発熱で負荷駆動制御素子3自体が破壊するのを防止するための過熱検出・保護機能とを有する。
【0031】
過電流検出・保護機能は、電流検出センサ10およびゲート電圧制御回路15で実現する。以下、過電流検出・保護機能について具体的に説明する。
ドレイン端子4とグランド端子6との間に過電流が流れると、電流検出センサ10の出力、すなわちゲート電圧制御回路15の入力20の電圧は大きくなる。ゲート電圧制御回路15の入力20の電圧が所定電圧以上となると、図5に示すゲート電圧制御回路15のN型エンハンスメントMOSFET15aがオンする。これにより、ゲート電位23を小さくし、ドレイン端子4とグランド端子6との間に流れる電流を制限する。
【0032】
過熱検出・保護機能は、温度検出センサ11、論理回路12およびゲート電圧制御用MOSFET14で実現する。以下、過熱検出・保護機能について具体的に説明する。
温度上昇に伴い、温度検出センサ11の出力、すなわち論理回路12の入力21の電圧は小さくなる。論理回路12の入力21の電圧が所定電圧以下となると、論理回路12からゲート電圧制御用MOSFET14のゲート19に電圧Vinを印加する。これにより、ゲート電圧制御用MOSFET14がオンし、ゲート電位23がパワーMOSFET8の閾値電圧より低くなる。このようにして負荷駆動制御素子3をオフする。
【0033】
過電流検出・保護機能および過熱検出・保護機能は、外部電源を必要とせず、ゲート端子5の電圧を電源として動作する。これにより、本実施形態における負荷駆動制御素子3は、単体MOSFET同様、3端子で動作することができる。また、ゲート保護回路は外付けで構成されるのが一般的であるが、これを負荷駆動制御素子3内に形成することで、外付け素子が不要となる。その結果、コストダウン、占有面積の縮小化が可能となる。さらに、各検出回路及びゲート保護回路を1チップに搭載することによるチップコストの低減、組立工程の簡略化が可能になる。
【0034】
また、論理回路12及びゲート電圧制御用MOSFET14で、負荷駆動制御素子3の閾値電圧(基準電圧)VIN(th)を決定する閾値決定機能を実現する。この機能は、ゲート端子5に閾値VIN(th)の電圧が印加されるまでは、パワーMOSFET8のゲート電位23をパワーMOSFET8の閾値電圧より低くして、パワーMOSFET8をオンしないようにするものである。
【0035】
ゲート端子5にゲート信号として三角波が入力された場合、閾値決定機能を示すタイミングチャートは図12に示すようになる。すなわち、時刻t1で、ゲート端子5の電圧Vinが上昇し始めると、ゲート端子5の電圧Vinの上昇に伴って論理回路12の出力電圧(ゲート電圧制御用MOSFET14のゲート電圧)Vaが上昇する。論理回路12は、電源電圧としてゲート信号の電圧を利用しているため、ゲート電圧制御用MOSFET14のゲート電圧Vaはゲート端子5の電圧Vinと同じになる。時刻t2に達するまではゲート電圧制御用MOSFET14がオフしているので、パワーMOSFET8のゲート電位23(Vg)はゲート端子5の電圧Vinに等しい(Vg=Vin)。
【0036】
その後、時刻t2で、ゲート電圧制御用MOSFET14のゲート電圧Vaがゲート電圧制御用MOSFET14の閾値Va(th)に達すると、ゲート電圧制御用MOSFET14がオンする。したがって、パワーMOSFET8のゲート電位23(Vg)は接地電圧(0[V])となる。
そして、時刻t3で、ゲート端子5の電圧Vinが負荷駆動制御素子3の閾値VIN(th)に達すると、論理回路12がオフ信号(Va=Vin)を出力することによりゲート電圧制御用MOSFET14がオフする。これにより、パワーMOSFET8のゲートにゲート端子5の電圧Vinが印加される。このように、ゲート電圧制御用MOSFET14は、ゲート端子5の電圧Vinが閾値VIN(th)を下回っているときだけオン状態に制御可能とする。
【0037】
この時刻t3では、パワーMOSFET8のゲート電位23(Vg)がパワーMOSFET8の閾値Vg(th)を超えているため、この時点でパワーMOSFET8がオフ状態からオン状態に切り替わり、負荷駆動制御素子3がオン状態となる。
このように、Va(th)<Vg(th)とすることにより、パワーMOSFET8のゲート電位23を制御することができ、負荷駆動制御素子3の閾値VIN(th)を決定することが可能である。
本実施形態では、通常動作時において、N型デプレッションMOSFET25の電流が論理回路12のN型エンハンスメントMOSFET12cを流れる。そのため、この電流を考慮し、所望の特性が得られるよう論理回路12のN型デプレッションMOSFET12aとN型エンハンスメントMOSFET12cのサイズを設定する。
【0038】
(動作)
次に、本実施形態の動作について説明する。
今、負荷駆動制御素子3をオン状態とするべく、外部から負荷駆動制御素子3のゲート端子5にゲート信号を入力したものとする。このとき、図12に示すように、ゲート信号として三角波を入力したものとすると、上述した閾値決定機能により、時刻t3でゲート端子5の電圧が負荷駆動制御素子3の閾値VIN(th)に達するまで、ゲート電位23(Vg)はパワーMOSFET8の閾値電圧より低くなる。そのため、パワーMOSFET8は、時刻t3までオフ状態を維持する。その後、時刻t3で、ゲート端子5の電圧Vinが閾値VIN(th)に達すると、ゲート電圧制御用MOSFET14がオフし、パワーMOSFET8のゲートにその時点でのゲート端子5の電圧Vinが印加される。これにより、パワーMOSFET8がオンし、負荷駆動制御素子3がオン状態となる。
【0039】
負荷駆動制御素子3をオン状態からオフ状態へ切り替える場合には、負荷駆動制御素子3のゲート端子5にオフ信号を入力する。すなわち、図12の時刻t4以降、ゲート端子5の電圧Vinは低下する。すると、これに伴いパワーMOSFET8のゲート電圧Vgが低下する。そして、時刻t5でゲート端子5の電圧Vinが閾値VIN(th)を下回ると、ゲート電圧制御用MOSFET14のゲートに、その時点でのゲート端子5の電圧Vinが印加される。このときゲート端子5の電圧Vinは、ゲート電圧制御用MOSFET14の閾値Va(th)以上となっているため、この時刻t5でゲート電圧制御用MOSFET14がオンする。これにより、パワーMOSFET8のゲート電圧Vgが接地電圧となってパワーMOSFET8が速やかにオフし、負荷駆動制御素子3がオフ状態となる。
【0040】
その後、時刻t6でゲート端子5の電圧Vinがゲート電圧制御用MOSFET14の閾値Va(th)を下回ると、ゲート電圧制御用MOSFET14がオフし、パワーMOSFET8のゲートにゲート端子5の電圧Vinが印加される。このとき、パワーMOSFET5のゲート電圧VgはパワーMOSFET8の閾値Vg(th)を下回っていることから、パワーMOSFET8はオフ状態を維持する。そして、時刻t6以降は、ゲート端子5の電圧Vinの低下に伴って、パワーMOSFET8のゲート電圧Vgも低下していく。
【0041】
次に、このゲート端子5の電圧Vinがゲート電圧制御用MOSFET14の閾値Va(th)より低い状態であり、パワーMOSFET8がオフ状態であるときに、電源1の電圧が急激に上昇した場合について説明する。ここで、電源1の電圧が急激に上昇する状況としては、負荷2の上流回路の切り替わりやサージ、電源1の立ち上がりなどが挙げられる。
【0042】
先ず、パワーMOSFET8の素子構造について説明する。
図6は、パワーMOSFET8の素子構造を示す図である。ドレイン端子,ソース端子,ゲート端子をそれぞれD,S,Gで示している。
この図6に示すように、パワーMOSFET8は、n+基板の上に形成されたn-エピタキシャル層表面側に低濃度のp型層(pウェル)と高濃度のn型層とを二重拡散で形成した構造となっている。パワーMOSFET8のゲート−ドレイン間には、比較的大きな寄生容量Cgdが形成されている。
【0043】
図7は、パワーMOSFET8を単純化モデルで示した回路図である。ゲート端子5の電圧Vinは接地電圧(0[V])としている。
パワーMOSFET8のゲート−ドレイン間には寄生容量Cgd、ドレイン−ソース間には寄生容量Cds、ゲート−ソース間には寄生容量Cgsが形成されている。
パワーMOSFET8に負荷2(インダクタL)を介して電源1から電源電圧VBを印加すると、容量Cdsを充電する電流Idsと、容量Cgdを充電する電流Igdとが流れる。電流Igdの一部は電流Igsとなって容量Cgsを充電し、残りの電流Irはゲート抵抗13(放電抵抗R)を介して放電される。このとき、パワーMOSFET8のゲート電圧Vgは、電流Igsによる容量Cgsの充電電圧に等しく、また放電抵抗Rによる電圧降下Ir・Rに等しい。
したがって、パワーMOSFET8がオフ状態であるときに電源電圧VBが急激に上昇すると、容量Cgdを充電する電流Igdが流れ、この電流Igdの一部が電流Irとして放電抵抗Rを流れることにより、パワーMOSFET8のゲート電圧Vgが急激に持ち上げられる。
【0044】
このとき、図11に示す一般的な負荷駆動制御素子3のように、ゲート電圧制御用MOSFET14がゲート端子5の電圧のみに基づき駆動される、すなわちゲート電圧制御用MOSFET14のゲート電圧がゲート端子5の電圧のみに基づき決定されるものであるとすると、ゲート端子5の電圧がゲート電圧制御用MOSFET14の閾値Va(th)を下回っている状態であるときに電源電圧VBが急激に上昇し、パワーMOSFET8のゲート電圧VgがパワーMOSFET8の閾値Vg(th)以上に持ち上げられると、ゲート電圧制御用MOSFET14による電流Irの引き抜きが行われないことから、パワーMOSFET8が一時的にオフ状態からオン状態に切り替わってしまう。
【0045】
図8は、パワーMOSFET8の誤オン時の状態を示すタイミングチャートである。
電源電圧VBが急激に上昇し、時刻t11でパワーMOSFET8のゲート電圧VgがパワーMOSFET8の閾値Vg(th)以上に持ち上げられたものとする。すると、この時刻t11で、パワーMOSFET8がオフ状態からオン状態へ切り替わる。
このとき、容量Cgdには一定電流が流れるため、容量Cgdの両端電圧は直線的に上昇する。また、ゲート電圧VgはパワーMOSFET8の閾値電圧Vg(th)でほぼ一定となるため、容量Cgdの両端電圧の上昇に伴い、パワーMOSFET8のドレイン電圧Vdも直線的に上昇する(ドレイン電圧Vd=ゲート電圧Vg+容量Cgdの両端電圧)。
【0046】
時刻t11から時刻t12の期間では、パワーMOSFET8のドレイン電圧Vdは電源電圧VBより低く、このVd<VBである期間ではd(Id)/dt=(VB−Vd)/L>0となって電流Idが増加する(インダクタLのインダクタンスもLで表した。)。そして、時刻t12でVd=VBとなるとd(Id)/dt=0となり、その後はVd>VBとなるため、d(Id)/dt<0となって電流Idは減少していく。時刻t13でId=0となると、Vd=VBとなる。このとき、Idg=0となるため、ゲート電圧Vgは急速に低下し、パワーMOSFET8はオフ状態に戻る。
【0047】
このように、ゲート端子5の電圧がゲート電圧制御用MOSFET14の閾値電圧を下回っている状態であるときに電源電圧VBが急激に上昇すると、パワーMOSFET8が一時的にオフ状態からオン状態に切り替わってしまう。
なお、ここでは、ゲート端子5の電圧がゲート電圧制御用MOSFET14の閾値より低い状態である場合について説明したが、ゲート端子5がハイインピーダンス素子にてグランド7に接続された状態や、ゲート端子5が図9に示すような入力回路に接続された状態でも同様の現象が生じる。
【0048】
また、ターンオフ動作においても、パワーMOSFET8がオン状態からオフ状態へ移行する際には、比較的大きな寄生容量Cgdの充電により電流Irが流れ、図10に示すように、時刻t21から時刻t22の期間でゲート電圧Vgが持ち上げられる。そのため、オフ時のゲート端子5の電圧がゲート電圧制御用MOSFET14の閾値Va(th)を下回っている状態では、ターンオフ時間が長くなってしまう。なお、図10において、ゲート端子5の電圧Vinとゲート電圧Vgの基準電位(0[V])の位置は異なっている(電圧Vinの方が若干上側に表示されている。)。
【0049】
これに対して、本実施形態では、ゲート電圧制御用MOSFET14を、パワーMOSFET8のドレイン電圧Vdがローレベルからハイレベルへ移行する際の寄生容量Cgdにより発生する電流Irによって駆動する、すなわちゲート電圧制御用MOSFET14のゲート電圧が電流Irによっても決定されるように構成する。そのため、ゲート端子5の電圧がゲート電圧制御用MOSFET14の閾値電圧を下回っている状態であるときに電源電圧VBが急激に上昇し、パワーMOSFET8のゲート電圧VgがパワーMOSFET8の閾値電圧以上に持ち上げられると、それに応じてゲート電圧制御用MOSFET14がオン状態に切り替わる。
【0050】
例えば、ゲート電圧制御用MOSFET14の閾値電圧が0.6V、パワーMOSFET8の閾値電圧が1.2Vであるものとする。このとき、図8の時刻t11の状態のように、電源電圧VBの急激な上昇によってゲート電位23が0.6V以上となると、N型デプレッションMOSFET25を介してゲート電圧制御用MOSFET14のゲート電圧が0.6V以上に持ち上げられる。そのため、ゲート電圧制御用MOSFET14がオン状態となり、容量Cgdによる電流Irを素早く引き抜くことができる。その結果、ゲート電位23をパワーMOSFET8の閾値電圧1.2Vより低く抑え、パワーMOSFET8の誤オンを防止することができる。
また、ターンオフ動作においても、ターンオフ時の寄生容量Cgdによる電流Irを上記同様素早く引き抜くことができる。そのため、高速にターンオフ動作を行うことができる。
【0051】
(効果)
上記実施形態では、パワーMOSFETのゲート−ソース間にゲート電圧制御用MOSFETを設け、ゲート電圧制御用MOSFETのゲート−ドレイン間にプルアップ素子としてN型デプレッションMOSFETを設ける。そして、ゲート電圧制御用MOSFETを、パワーMOSFETのゲート−ドレイン間の寄生容量を充電する電流Irにより駆動する構成とする。
【0052】
したがって、ゲート端子の電圧がゲート電圧制御用MOSFETの閾値電圧を下回っているとき、すなわちゲート電圧制御用MOSFETがオフ状態であるときに、電源電圧が急激に上昇しパワーMOSFETのゲート電圧が持ち上げられた場合であっても、パワーMOSFETのドレイン電圧がローレベルからハイレベルに移行する際に発生する電流Irによりゲート電圧制御用MOSFETをオン状態へ切り替えることができる。その結果、パワーMOSFETのゲート電圧を低下させてパワーMOSFETをオフ状態に維持することができる。このように、パワーMOSFETの誤オンを防止することができる。
【0053】
また、ターンオフ動作時においても、上記同様、ゲート電圧制御用MOSFETによって電流Irを引き抜くことができるので、高速にパワーMOSFETをターンオフすることが可能となる。
このように、ゲート端子に印加されるゲート信号の電圧レベルや、ゲート端子に電圧を印加する外部入力回路の出力インピーダンス等に依存せず、電源電圧が急激に上昇した際のパワーMOSFETの誤オンを防止することができると共に、高速でパワーMOSFETをターンオフさせることができる。
さらに、ゲート電圧制御用MOSFETをオンさせることで電流Irを引き抜くため、チップサイズが小さくてすむと共に、消費電流の増加やパワーMOSFETの通電能力の低下(Ronの増大)などの通常動作への影響を抑えることができる。
【0054】
(変形例)
なお、上記実施形態においては、絶縁ゲート半導体素子としてパワーMOSFET8を用いる場合について説明したが、IGBT(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)を用いることもできる。
また、上記実施形態においては、プルアップ素子としてN型デプレッションMOSFET12a及び25を用いる場合について説明したが、これに代えて抵抗を用いることもできる。図1に示すように、プルアップ素子としてデプレッションMOSFETを用いると、定電流源素子とすることができ、抵抗を用いる場合と比較して電源電圧が高くなっても電流値の増加を僅かにすることができるが、製造工程は増加する。プルアップ素子として抵抗を用いることで、製造工程を簡易化することができる。
さらに、上記実施形態においては、定電流源16を省略することも可能である。
【符号の説明】
【0055】
1…電源、2…負荷、3…負荷駆動制御素子、4…ドレイン端子、5…ゲート端子、6…グランド端子(ソース端子)、7…グランド、8…パワーMOSFET、9…ツェナーダイオード、10…電流検出センサ、11…温度検出センサ、12…論理回路、13…ゲート抵抗、14…ゲート電圧制御用MOSFET、15…ゲート電圧制御回路、16…定電流源、17…駆動回路部、18…パワー部、19…ゲート電圧制御用MOSFETゲート、20…ゲート電圧制御回路入力、21…論理回路入力、22…ドレイン電位、23…ゲート電位、24…グランド電位、25…N型デプレッションMOSFET
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部から入力されるゲート信号に基づいて絶縁ゲート半導体素子を駆動する絶縁ゲート型デバイスの駆動回路であって、
前記絶縁ゲート半導体素子のゲート・ソース間に接続されたゲート電圧制御用半導体素子と、
前記ゲート電圧制御用半導体素子のゲート・ドレイン間に接続されたプルアップ素子と、を備え、
前記ゲート電圧制御用半導体素子は、前記絶縁ゲート半導体素子のゲート・ドレイン間に形成された寄生容量の充電電流によって駆動されることを特徴とする絶縁ゲート型デバイスの駆動回路。
【請求項2】
前記プルアップ素子は、デプレッション型のMOSFETであることを特徴とする請求項1に記載の絶縁ゲート型デバイスの駆動回路。
【請求項3】
前記ゲート電圧制御用半導体素子は、前記ゲート信号の電圧値が前記ゲート電圧制御用半導体素子の閾値電圧よりも高い所定の基準電圧以上であるときにオフ状態となり、前記ゲート信号の電圧値が前記基準電圧を下回っているときだけ、オン状態に駆動制御可能とすることを特徴とする請求項1又は2に記載の絶縁ゲート型デバイスの駆動回路。
【請求項4】
前記ゲート信号に基づいて前記ゲート電圧制御用半導体素子を駆動制御する閾値制御回路を備え、
前記プルアップ素子から前記閾値制御回路の高電位側電源へ電流が流れることを防止するダイオードを備えることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の絶縁ゲート型デバイスの駆動回路。
【請求項1】
外部から入力されるゲート信号に基づいて絶縁ゲート半導体素子を駆動する絶縁ゲート型デバイスの駆動回路であって、
前記絶縁ゲート半導体素子のゲート・ソース間に接続されたゲート電圧制御用半導体素子と、
前記ゲート電圧制御用半導体素子のゲート・ドレイン間に接続されたプルアップ素子と、を備え、
前記ゲート電圧制御用半導体素子は、前記絶縁ゲート半導体素子のゲート・ドレイン間に形成された寄生容量の充電電流によって駆動されることを特徴とする絶縁ゲート型デバイスの駆動回路。
【請求項2】
前記プルアップ素子は、デプレッション型のMOSFETであることを特徴とする請求項1に記載の絶縁ゲート型デバイスの駆動回路。
【請求項3】
前記ゲート電圧制御用半導体素子は、前記ゲート信号の電圧値が前記ゲート電圧制御用半導体素子の閾値電圧よりも高い所定の基準電圧以上であるときにオフ状態となり、前記ゲート信号の電圧値が前記基準電圧を下回っているときだけ、オン状態に駆動制御可能とすることを特徴とする請求項1又は2に記載の絶縁ゲート型デバイスの駆動回路。
【請求項4】
前記ゲート信号に基づいて前記ゲート電圧制御用半導体素子を駆動制御する閾値制御回路を備え、
前記プルアップ素子から前記閾値制御回路の高電位側電源へ電流が流れることを防止するダイオードを備えることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の絶縁ゲート型デバイスの駆動回路。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−34079(P2012−34079A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−170376(P2010−170376)
【出願日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【出願人】(000005234)富士電機株式会社 (3,146)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【出願人】(000005234)富士電機株式会社 (3,146)
【Fターム(参考)】
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