説明

線状発熱体及びこれを使用した既設路面の融雪構造

【課題】既設路面を全壊することなく、既設路面を利用した融雪路面とすることで、工事期間が短く、設置費用が安価で、融雪効率も高い既設路面の融雪構造と、これに使用する線状発熱体を提供する。
【解決手段】既設路面に溝を掘削し、該溝内に、内部に抵抗線が挿入されるとともに耐熱絶縁体が充填されたシース材の外周を、ニッケルメッキ軟銅線を編組して被覆した線状発熱体を蛇行状に収容し、溝内と既設路面上に遠赤外線発生物質が混入されたモルタル又はコンクリートの融雪路床を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリートやアスファルト等によって舗装されている路面に埋設される融雪用の線状発熱体と、この線状発熱体を使用し、かつ既設路面を利用した融雪構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、駐車場や通路等のアスファルトやコンクリートによって舗装された既設の路面を融雪構造にする場合、まず既設路面を全て取り壊して新しい路床を形成し、この上に電熱線や温水循環パイプ等の発熱体を敷設した後、更に新しい路床を形成して発熱体を埋設することで融雪機能を備えた路面構造としていた。
【0003】
また、電熱線等の線状の発熱体を埋設する場合は、故障が生じやすい線状発熱体を保護するため、金属棒を格子状して形成された枠体に線状発熱体を蛇行状に取り付けて埋設されていた。
【特許文献1】特開平11―93109
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の路面の融雪構造は、既設路面を全壊した後、新たに路床と融雪構造を形成するため、工事期間が長く、設置費用も高額であったため、一般に普及しにくいという問題があった。
【0005】
また、従来の線状発熱体では、金属管を使用したシーズヒータのように折り曲げが自在にできなかったり、発熱体を細くすると断線や漏電等の故障が生じ易かったり、さらに熱効率が低いため、直径の大きい線状発熱体が用いられることが多かった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、請求項1記載の発明は、線状発熱体であって、抵抗線と、抵抗線を内部に収容するポリエステル系エラストマーからなるシース材と、シース材内部に充填される耐熱絶縁体と、シース材外周を編組状に被覆するニッケルメッキ軟銅線からなるシールド材から構成されることを特徴とする。
【0007】
また、請求項2記載の発明は、既設路面を利用した融雪構造であって、既設路面に複数の縦溝と、該縦溝を交差する少なくとも2本の横溝が掘削され、該縦溝及び横溝内に請求項1記載の線状発熱体が蛇行状に収容され、溝内及び既設路面上に遠赤外線を発生させる物質が混入されたモルタル又はコンクリートが流し込まれて形成される融雪路床が形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の線状発熱体は、直径が細く、また折り曲げが自在であり、かつ耐久性も高いことから、従来の太い線状発熱体に比べて、既設路面に形成する溝をより小さいものとすることができる。
【0009】
また、本発明の既設路面を利用した融雪構造によれば、既設路面を全壊することなく施工できるため、施工が容易で工事期間が短く、設置費用を安価にすることができる。
【0010】
さらに、本発明の線状発熱体は通電効率もよく、またこれを利用した融雪構造においては、路床表面に遠赤外線を発生させるモルタル又はコンクリート層を設けていることから、ランニングコストが安価にも拘らず、効率のよい融雪を行うことが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の線状発熱体及び既設路面を利用した融雪構造の実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。図1は、本発明の既設路面を利用した融雪構造の実施形態を示す断面図であり、図2は、本発明の線状発熱体を敷設した状態を示す図であり、図3は、本発明の線状発熱体の実施形態を示す斜視図である。
【0012】
図3に示すように、本発明の線状発熱体は、管状のポリエステル系エラストマーからなるシース材13内に抵抗線11が挿入され、シース材13内には耐熱絶縁体12が充填されるとともに、シーズ材13の外周はニッケルメッキ軟銅線からなるシールド材14が編組されて線状発熱体が構成されている。ここで、熱効率の見地から、抵抗線11としては、銅ニッケルが好ましく、耐熱絶縁体12としては、耐熱シリコンゴムとするのが好ましい。
【0013】
シールド材14としては、スズメッキ軟銅線等の他のものでもよいが、スズメッキに比べて耐熱性に優れ、防食効果が高いことから、ニッケルメッキ軟銅線とすることが好ましい。このニッケルメッキ軟銅線を編組することで、折り曲げが容易で、かつ耐久性の高い線状発熱体を得ることができる。
【0014】
尚、線状発熱体5の直径は約5mmとするのが好ましく、このように従来より細いものであっても、前記構成により、耐久性や熱効率に優れた線状発熱体を得ることができる。
【0015】
また、本発明の既設路面を利用した融雪構造は、図1及び2に示すように、アスファルトやコンクリート等の既設路面1の表面に、まず、コンクリートカッター等により複数の縦溝3と、これと交差する少なくとも2本以上の横溝4を掘削される。縦溝3及び横溝4の大きさは、深さ30mm、幅6mm、縦溝の間隔は50〜100mmとするのが好ましい。
【0016】
掘削された縦溝3及び横溝4内には、前記構成からなる線状発熱体5が蛇行状に収容される。縦溝3及び横溝4内と既設路面1上には、遠赤外線を発生させる物質が混入されたモルタル又はコンクリートが流し込まれて融雪路床2が形成される。 融雪路床2内の遠赤外線を発生させる物質としては、トルマリンや炭素繊維が考えられるが、必ずしもこれらに限定されるわけではない。
【0017】
次に作用について説明する。まず、線状発熱体5に通電がなされると、線状発熱体5から熱が放熱されて融雪路床2が暖められる。融雪路床2が加温されると、融雪路床2内の遠赤外線発生物質から遠赤外線が発生される。このように、加温された融雪路床2の熱と放射される遠赤外線の効果により、融雪路床2上の雪が融雪される。
【0018】
以上のように、本発明の線状発熱体と既設路面を利用した融雪構造によれば、既設路面を容易に融雪路面とすることができ、その融雪路面は非常に効率のよい融雪を行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の既設路面を利用した融雪構造の実施形態を示す断面図である。
【図2】本発明の線状発熱体を敷設した状態を示す図である。
【図3】本発明の線状発熱体の実施形態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0020】
1 既設路面
2 融雪路床
3 縦溝
4 横溝
5 線状発熱体
11 抵抗線
12 耐熱絶縁体
13 シース材
14 シールド材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
抵抗線と、抵抗線を内部に収容するポリエステル系エラストマーからなるシース材と、シース材内部に充填される耐熱絶縁体と、シース材外周を編組状に被覆するニッケルメッキ軟銅線からなるシールド材から構成されることを特徴とする線状発熱体。
【請求項2】
既設路面に複数の縦溝と、該縦溝を交差する少なくとも2本の横溝が掘削され、該縦溝及び横溝内に請求項1記載の線状発熱体が蛇行状に収容され、溝内及び既設路面上に遠赤外線を発生させる物質が混入されたモルタル又はコンクリートが流し込まれて形成される融雪路床が形成されていることを特徴とする既設路面を利用した融雪構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−95286(P2008−95286A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−274694(P2006−274694)
【出願日】平成18年10月6日(2006.10.6)
【出願人】(596091934)有限会社アオヤギ (5)
【Fターム(参考)】