説明

縮合環化合物及びその製造方法、重合体、これらを含む有機薄膜、並びに、これを備える有機薄膜素子及び有機薄膜トランジスタ

【課題】十分な電荷輸送性を発揮し得るとともに、溶媒に対する優れた溶解性を有する縮合環化合物の提供。
【解決手段】下記一般式(1)で表される縮合環化合物。


[式中、R11及びR12は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基等を示す。ただし、R11及びR12の少なくとも一方は水素原子ではない。R13及びR14は、それぞれ独立に1価の基を示し、n及びmは、それぞれ独立に0〜2の整数である。Y11及びY12は、それぞれ独立に硫黄原子等である。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、縮合環化合物及びその製造方法、重合体、これらを含む有機薄膜、並びに、これを備える有機薄膜素子及び有機薄膜トランジスタに関する。
【背景技術】
【0002】
有機半導体材料は、有機EL(エレクトロルミネッセンス)素子、有機トランジスタ、有機太陽電池、光センサ等の種々の有機薄膜素子に適用されることから、近年盛んに検討されている。これらの用途において優れた性能を得るために、有機半導体材料に対しては、電荷(電子又はホール)輸送性が高いことが求められる。高い電荷輸送性を得るためには、有機半導体材料において、π共役が広がった分子を用い、分子のパッキングを良好とし、分子間の相互作用を高めることが重要である。
【0003】
このような観点から高い電荷輸送性が得られる有機半導体材料として、ジチエノチオフェンを含む化合物(特許文献1)や、複数のチオフェン環が平面的に結合された化合物(非特許文献1〜3参照)等が知られている。
【特許文献1】特開2004−339516号公報
【非特許文献1】Z. Bao et al., 「Appl.Phys. Lett.」, 1996, 69, 4108.
【非特許文献2】X. Li et al., 「J.Am. Chem. Soc.」, 1998, 120,2206.
【非特許文献3】P. Coppo et al., 「Chem. Commun.」, 2003, 2548.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した有機半導体材料として用いられる化合物は、いずれも平面性が高く電荷輸送性にも優れるものであるが、これらの化合物は溶媒への溶解性が高くないため、有機薄膜等の形成が困難なものが多かった。化合物の平面性を低くする等によって溶媒への溶解性を高めることも考えられるが、その場合、今度は電荷輸送性が不十分となり易い傾向にあった。
【0005】
そこで、本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、十分な電荷輸送性を発揮し得るとともに、溶媒に対する優れた溶解性を有する縮合環化合物及び重合体を提供することを目的とする。本発明はまた、上記縮合環化合物の製造方法、上記縮合環化合物を用いた有機薄膜、並びに、この有機薄膜を備える電気素子及び有機薄膜トランジスタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の縮合環化合物は、下記一般式(1)で表されることを特徴とする。
【化1】


[式中、R11及びR12は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルアミノ基、アルコキシカルボニル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよい複素環基又はシアノ基を示す。ただし、R11及びR12の少なくとも一方は水素原子ではない。R13及びR14は、それぞれ独立に1価の基を示し、n及びmは、それぞれ独立に0〜2の整数である。ただし、R13及びR14がそれぞれ複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。Y11及びY12は、それぞれ独立に下記一般式(2a)、(2b)、(2c)、(2d)、(2e)、(2f)、(2g)又は(2h)で表される2価の基である。
【化2】


ただし、R21及びR22は、それぞれ独立に、水素原子又は1価の基を示す。]
【0007】
上記構造を有する縮合環化合物は、3つの芳香環構造が縮合してπ共役が広がった構造を有していることから、有機薄膜等を形成した場合に高い電荷輸送性を発揮し得る。また、かかる縮合環化合物は、中央のベンゼン環構造に置換基が導入された構造を有している。このため、溶媒等に対する溶解性も良好であり、有機薄膜等への加工が容易なものである。したがって、本発明の縮合環化合物は、有機薄膜素子における有機薄膜を形成するための有機半導体材料として有用である。
【0008】
上記本発明の縮合環化合物において、Y11及びY12は、上記(2a)で表される2価の基であると好ましい。これにより、縮合環化合物による電荷輸送性が更に良好になる。また、このような化合物は、合成が比較的容易であり、入手し易いという利点も有している。
【0009】
さらに、R11及びR12は、それぞれ独立に、炭素数1〜10のアルキル基又は炭素数6〜20の置換基を有していてもよいアリール基であると好ましい。これにより、縮合環化合物の溶媒への溶解性が更に良好となる。
【0010】
また、本発明の重合体は、下記一般式(3)で表されるモノマー単位を含むことを特徴とする。
【化3】


[式中、R31及びR32は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルアミノ基、アルコキシカルボニル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよい複素環基又はシアノ基を示す。ただし、R31及びR32の少なくとも一方は水素原子ではない。R33及びR34は、それぞれ独立に、水素原子又は1価の基を示す。Y31及びY32は、それぞれ独立に、下記一般式(4a)、(4b)、(4c)、(4d)、(4e)、(4f)、(4g)又は(4h)で表される2価の基である。
【化4】


ただし、R41及びR42は、それぞれ独立に、水素原子又は1価の基を示す。]
【0011】
このような重合体は、上記本発明の縮合環化合物と同様の縮合環構造を含むことから、優れた電荷移動度を有するとともに、溶媒に対する溶解性にも優れるものとなる。
【0012】
本発明の重合体は、下記一般式(5)で表される繰り返し単位を更に含むものであるとより好ましい。これにより、重合体の電荷移動度が更に優れるようになる。
【化5】


[式中、Arは、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい複素環基を示す。]
【0013】
特に、上記Arは、下記一般式(6)で表される基であると好適である。こうすれば、重合体の電荷移動度が一層優れるようになる。
【化6】


[式中、R61及びR62は、それぞれ独立に水素原子又は1価の基であり、R61とR62とが結合して環を形成してもよい。Yは、下記一般式(7a)、(7b)、(7c)、(7d)、(7e)、(7f)、(7g)、(7h)又は(7i)で表される2価の基である。
【化7】


ただし、R71、R72、R73及びR74は、それぞれ独立に、水素原子又は1価の基を示し、R73とR74とは、互いに結合して環を形成していてもよい。]
【0014】
より具体的には、上記本発明の重合体において、Y31及びY32は、上記(4a)で表される2価の基であり、一般式(6)で表される基におけるYは、上記(7a)で表される2価の基であると好ましい。これにより、更に優れた電荷移動度及び溶解性が得られるようになる。
【0015】
また、本発明による縮合環化合物の製造方法は、上記本発明の縮合環化合物を良好に形成する方法であって、塩基及び金属錯体触媒の存在下で、下記一般式(8a)で表される化合物と、下記一般式(8b)で表される化合物とを反応させて、下記一般式(8c)で表される縮合環化合物を得ることを特徴とする。
【化8】


[式中、X81及びX82は、それぞれ独立に水素原子又はハロゲン原子である。ただし、X81及びX82の少なくとも一方はハロゲン原子である。R81及びR82は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルアミノ基、アルコキシカルボニル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよい複素環基又はシアノ基を示す。ただし、R81及びR82の少なくとも一方は水素原子ではない。R83及びR84は、それぞれ独立に1価の基を示し、p及びqは、それぞれ独立に0〜2の整数である。ただし、R83及びR84がそれぞれ複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。Y81及びY82は、それぞれ独立に下記一般式(9a)、(9b)、(9c)、(9d)、(9e)、(9f)、(9g)又は(9h)で表される2価の基である。
【化9】


ただし、R91及びR92は、それぞれ独立に、水素原子又は1価の基を示す。]
【0016】
かかる製造方法において、Y81及びY82は、上記(9a)で表される2価の基であると好ましい。これにより、電荷輸送性に優れる縮合環化合物が得られるようになる。また、このような化合物は合成が比較的容易であるため、かかる化合物を用いることにより、縮合環化合物を容易に製造することができる。
【0017】
また、X81及びX82は、少なくとも一方がハロゲン原子であることが好ましく、両方がハロゲン原子であることがより好ましい。より具体的には、X81及びX82は、少なくとも一方がヨウ素原子であると好ましく、両方がヨウ素原子であるとより好ましい。こうすれば、上記一般式(8a)で表される化合物と上記一般式(8b)で表される化合物との反応が生じ易くなり、上記一般式(8c)で表される化合物が更に効率よく得られるようになる。
【0018】
本発明はまた、上記本発明の縮合環化合物及び/又は重合体を含む有機薄膜を提供する。このような有機薄膜は、上記本発明の縮合環化合物及び/又は重合体を含むことから、優れた電荷輸送性を有しており、有機薄膜素子等に好適である。
【0019】
本発明は更に、上記本発明の有機薄膜を備える有機薄膜素子を提供する。かかる有機薄膜素子としては、有機薄膜トランジスタが好ましい。このような有機薄膜素子は、本発明の電荷輸送性の高い有機薄膜を備えることから、優れた特性を発揮し得るものとなる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、十分な電荷輸送性を発揮し得るとともに、溶媒に対する優れた溶解性を有する縮合環化合物及び重合体を提供することが可能となる。また、本発明によれば、上記縮合環化合物の好適な製造方法を提供することが可能となる。さらに、本発明によれば、上記縮合環化合物を用いて得られた優れた電荷輸送性を有する有機薄膜、並びに、この有機薄膜を備える有機薄膜素子及び有機薄膜トランジスタを提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、必要に応じて図面を参照することにより、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、図面の説明においては、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
[縮合環化合物]
【0022】
まず、好適な実施形態に係る縮合環化合物について説明する。本実施形態の縮合環化合物は、上記一般式(1)で表される化合物である。一般式(1)で表される化合物において、R11又はR12で表される基は、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルアミノ基、アルコキシカルボニル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよい複素環基又はシアノ基である。R11及びR12の少なくとも一方は水素原子ではなく、これらの両方が水素原子でないことが好ましい。なお、アルキル基としては、直鎖状、分岐状及び環状のものが含まれる。また、上述した官能基は、当該官能基が有している水素原子の一部又は全てがハロゲン原子(特にフッ素原子)で置換されていてもよい。
【0023】
ここで、アルキル基としては、炭素数1〜20(「C1〜20」と略す。以下同様)のものが好ましい。このようなアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ラウリル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロドデシル基等が挙げられる。なかでも、C1〜10のアルキル基が好ましく、例えば、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基又はシクロヘキシル基が好適である。
【0024】
また、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルアミノ基又はアルコキシカルボニル基としては、これらの有しているアルキル基がC1〜20のアルキル基であるものが好適である。このC1〜20のアルキル基としては、上述したのと同様のものが例示できる。
【0025】
置換基を有していてもよいアリール基としては、C6〜60のものが好ましい。例えば、フェニル基、C1〜12のアルコキシ基を有するフェニル基、C1〜12のアルキル基を有するフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基等が例示できる。なかでも、C6〜20のアリール基が好ましく、C1〜12のアルコキシ基を有するフェニル基又はC1〜12のアルキル基を有するフェニル基が更に好適である。
【0026】
置換基を有していてもよい複素環基としては、C4〜60のものが好ましい。例えば、チエニル基、C1〜12のアルキル基を有するチエニル基、ピロリル基、フリル基、ピリジル基、C1〜12のアルキル基を有するピリジル基等が挙げられる。なかでも、C4〜20の複素環基が好ましく、チエニル基、C1〜12のアルキル基を有するチエニル基、ピリジル基、又は、C1〜12のアルキル基を有するピリジル基がより好ましい。なお、複素環基とは、環状構造を有する有機基において、環を構成する少なくとも1つの原子がヘテロ原子である基をいうものとする。
【0027】
縮合環化合物において、R11及びR12としては、それぞれ独立に、炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数6〜60の置換基を有していてもよいアリール基が好ましく、炭素数1〜10のアルキル基又は炭素数6〜20の置換基を有していてもよいアリール基がより好ましく、炭素数1〜10のアルキル基が特に好ましい。
【0028】
13及びR14は、それぞれ独立に一価の基であり、n及びmは0〜2である。ただし、n又はmが2である場合、複数のR13又はR14は、それぞれ同一の基であっても異なる基であってもよい。R13及びR14としては、アルキル基、アルコキシ基、フルオロアルキル基、フルオロアルコキシ基、アリール基、アリールアミノ基又は複素環基が挙げられる。なかでも、アルキル基、アルコキシ基、フルオロアルキル基、フルオロアルコキシ基、アリール基又はアリールアミノ基が好ましく、アルキル基又はアリール基が更に好ましい。なお、R13及びR14は、縮合環化合物を含む有機薄膜が輸送すべきキャリアに応じて適宜変更することが好ましい。例えば、有機薄膜のホール輸送性を高める場合はアリールアミノ基等の電子供与基が好ましく、電子輸送性を高める観点からは、フルオロアルキル基、フルオロアルコキシ基等の電子吸引基が好ましい。
【0029】
また、R13及びR14で表される一価の基としては、重合性官能基も挙げられる。特に、R13及びR14のそれぞれ少なくとも1つずつが重合性官能基であると、一般式(1)で表される縮合環化合物は、後述する重合体の原料として好適となる。なお、縮合環化合物のみで有機薄膜を形成する場合は、R13及びR14としては、重合性官能基以外の上述したような基とすることが好ましい。
【0030】
ここで、重合性官能基とは、他の重合性官能基との間で重合反応を生じさせ得る基をいい、例えば、Wittig反応、Heck反応、Horner−Wadsworth−Emmons反応、Knoevenagel反応、鈴木カップリング反応、Grinard反応、Stille反応等や、Ni(0)触媒を用いた重合反応等に供することにより、他の重合性官能基と反応して結合を生じ得る基をいう。重合性官能基としては、例えば、ハロゲン原子、アルキルスルホネート基、アリールスルホネート基、アリールアルキルスルホネート基、アルキルスタニル基、アリールスタニル基、アリールアルキルスタニル基、ホウ酸エステル基(−B(OR))、スルホニウムメチル基、ホスホニウムメチル基、ホスホネートメチル基、モノハロゲン化メチル基、ホウ酸基(−B(OH))、ホルミル基、ビニル基等が例示できる。なかでも、ハロゲン原子、アルキルスタニル基又はホウ酸エステル基が好ましい。なお、これらの例示中、Rは、アルキル基又はアリール基であり、2つのRが結合して環を形成していてもよい。
【0031】
11及びY12は、それぞれ独立に、上記一般式(2a)、(2b)、(2c)、(2d)、(2e)、(2f)、(2g)又は(2h)(以下、「(2a)〜(2h)」のように表記する)で表される2価の基である。これらの2価の基におけるR21及びR22は、それぞれ独立に、水素原子又は1価の基である。この一価の基としては、上述したR11又はR12と同様の基のほか、ハロゲン原子が挙げられる。なお、上記(2h)で表される基は非対称な構造を有しているが、その結合鎖が結合する方向は特に限定されない。
【0032】
なかでも、Y11及びY12としては、上記(2a)、(2b)、(2c)又は(2h)で表される2価の基が好ましく、上記(2a)、(2b)又は(2c)で表される2価の基がより好ましい。なお、Y11及びY12が、上記(2a)、(2b)又は(2c)で表される2価の基である場合、これらを含む環構造(ベンゼン環に縮合している2つの5員環)は、それぞれ、チオフェン環、フラン環又はピロール環となる。特に、Y11及びY12が(2a)で表される2価の基である(すなわち環構造がチオフェン環である)と、良好な電荷輸送性が得られることから好ましい。
[重合体]
【0033】
次に、好適な実施形態に係る重合体について説明する。本実施形態の重合体は、上記一般式(3)で表されるモノマー単位を含む。一般式(3)で表されるモノマー単位において、R31、R32、R33、R34、Y31及びY32としては、それぞれ上述したR11、R12、R13、R14、Y11及びY12と同様の基が好ましい。ただし、R33及びR34としては、上述した重合性官能基以外の基が好適である。なお、本実施形態において、重合体とは、モノマー単位を2つ以上有するものをいい、通常オリゴマーやポリマーに分類されるものの両方を含むこととする。
【0034】
本実施形態の重合体は、上記一般式(3)のモノマー単位のみから構成されるものでもよく、他のモノマー単位を更に含むものであってもよい。なお、重合体中、一般式(3)のモノマー単位は複数含まれることとなるが、複数の一般式(3)のモノマー単位は、それぞれ同一の構造を有していてもよく、異なる構造を有していてもよい。ただし、重合体を容易に得る観点からは、複数の一般式(3)のモノマー単位は、それぞれ同一の構造であると好ましい。
【0035】
重合体は、上記一般式(3)のモノマー単位に加え、上記一般式(5)のモノマー単位を更に有していることも好ましい。このように一般式(5)のモノマー単位を有することで、重合体による電荷輸送性が高められるとともに、溶媒への溶解性、機械的強度、耐熱性等も向上する。
【0036】
一般式(5)のモノマー単位におけるArで表される基は、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい複素環基である。かかる芳香族炭化水素基又は複素環基は、芳香族炭化水素又は複素環において2箇所の置換位がポリマーにおける結合に供された構造を有する基であり、芳香族炭化水素又は複素環から2つの水素原子を除いた残りの原子団から構成される基である。
【0037】
芳香族炭化水素基としては、好ましくはC6〜60、より好ましくはC6〜20の芳香環(単環又は縮合環)から形成される2価の基が好ましい。縮合環としては、ナフタレン、アントラセン、ピレン、ペリレン、フルオレンが例示できる。なかでも、この芳香族炭化水素基を構成する芳香環としては、ベンゼン環又はフルオレンが好ましい。また、芳香族炭化水素基は、上述の如く、置換基を更に有していてもよい。かかる置換基としては、ハロゲン原子、飽和又は不飽和炭化水素基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、複素環基、アミノ基、ニトロ基又はシアノ基が例示できる。
【0038】
また、複素環基としては、好ましくはC4〜60、より好ましくはC4〜20の複素環から形成される2価の基が好ましい。かかる複素環基も更に置換基を有していてもよく、このような置換基としては、上述した芳香族炭化水素基と同様の置換基が挙げられる。
【0039】
一般式(5)のモノマー単位において、Arで表される基としては、上記一般式(6)で表される基が好ましい。一般式(6)中のYで表される基としては、上記一般式(1)におけるY11又はY12と同様のものが好ましい。特に、一般式(6)で表される基におけるYは、一般式(7a)で表される基であると好適である。
【0040】
重合体が上記一般式(3)で表されるモノマー単位と上記一般式(5)で表されるモノマー単位との両方を含む場合、重合体における好適なこれらの比率は、一般式(3)のモノマー単位100モルに対して、一般式(5)のモノマー単位が好ましくは10〜1000モル、より好ましくは25〜400モル、更に好ましくは50〜200モルとなるような比率である。
【0041】
本実施形態の重合体としては、上述の如く、上記一般式(3)で表されるモノマー単位と上記一般式(5)で表されるモノマー単位とを含むものが好適である。重合体において、これらのモノマー単位は、ランダムに共重合していてもよく、ブロック的に共重合していてもよい。このような重合体としては、下記一般式(10a)、(10b)又は(10c)で表される構造を有するものが例示できる。なお、下記一般式(10c)において、2つのArは、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
【化10】

【0042】
式中、R31〜R34、Y31、Y32及びArは、いずれも上記と同義である。また、aは、好ましくは2〜500、より好ましくは3〜20の整数である。さらに、bは好ましくは1〜500、より好ましくは2〜20の整数である。さらにまた、cは好ましくは1〜500、より好ましくは1〜10の整数である。これらの重合体としては、Y31及びY32がいずれもスルフィド基であり、R31及びR32がそれぞれ独立にアルキル基又はアリール基(好ましくはアルキル基)であり、R33及びR34が水素原子であるものが特に好適である。
【0043】
重合体の末端基としては、特に限定されないが、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、フルオロアルキル基、フルオロアルコキシ基、アリール基、複素環基等の電子吸引基又は電子供与基が挙げられる。重合体の電子輸送性を高める観点からは、末端基はフルオロアルキル基、フルオロアルコキシ基等の電子吸引基であることが好ましい。また、末端基は、主鎖の共役構造と共役し得る構造を有するものであってもよく、例えば、主鎖との結合部位に不飽和結合を有するアリール基又は複素環基が挙げられる。
【0044】
また、後述するように、重合体の製造に用いる原料モノマーとして、上記一般式(1)においてR13及びR14で表される基として重合性官能基を有する縮合環化合物を用いる場合は、重合後の末端には重合性官能基が残ることになる。しかし、この重合性官能基からなる末端は、有機薄膜としたときに耐久性等を低下させるおそれがある。したがって、重合体においては、重合性官能基を安定な基で保護しておくことが好ましい。
【0045】
より具体的には、本実施形態の重合体としては、下記一般式(11a)〜(11g)で表されるものが好適である。
【化11】

【0046】
式中、R31〜R34は上記と同義である。R111及びR112はそれぞれ独立に上述した末端基である。R113〜R115は、それぞれ独立に水素原子又は1価の基を示す。この1価の基としては、上記一般式(1)におけるR13及びR14等と同様のものが挙げられる。なかでも、アルキル基又はアルコキシ基が好ましく、アルキル基がより好ましい。また、式中、dは、1〜500の整数を示し、eは、0〜R113が置換可能な数までの整数である。ただし、R113が複数存在する場合、それらはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。ここで、dの値は、重合体を用いた有機薄膜の形成方法に応じて適宜選択することが好ましい。例えば、真空蒸着法等の気相成長法により有機薄膜を形成する場合は、上記重合体としては、dが好ましくは1〜10、より好ましくは2〜10、更に好ましくは2〜5であるオリゴマーが好ましい。また、重合体を有機溶媒に溶解した溶液を塗布する方法により有機薄膜を形成する場合は、重合体としては、dが好ましくは3〜500、より好ましくは6〜300、更に好ましくは20〜200であるものが好ましい。さらに、塗布により成膜する場合に、膜の均一性を向上する観点からは、重合体の数平均分子量は、1×10〜1×10であると好ましく、1×10〜1×10であるとより好ましい。
【0047】
なお、重合体は、上述した各一般式における括弧内の構造単位が複数繰り返された構成を有するが、重合体において、この複数の構造単位は、それぞれ同一の構造を有していても異なる構造を有していてもよい。つまり、構造単位中のR113〜R115等の官能基は、繰り返し単位ごとに同じでも異なっていてもよい。ただし、重合体を容易に製造する観点からは、全ての構造単位が同一の構造を有していることが好ましい。
[縮合環化合物の製造方法]
【0048】
次に、上述した構造を有する縮合環化合物の好適な製造方法について説明する。縮合環化合物は、上記一般式(8a)で表される化合物と、上記一般式(8b)で表される化合物とを、塩基及び金属錯体触媒の存在下で反応させることによって得ることができる。このような製造方法においては、一般式(8a)の化合物におけるX81及びX82で表される基と、一般式(8b)の化合物における3重結合との間で反応が生じ、これによって一般式(8a)の化合物における2つの5員環が架橋されて、これらの間に6員環構造が形成される。なお、この反応は、窒素やアルゴン等の不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。
【0049】
上記一般式(8a)の化合物において、R83、R84、Y81及びY82としては、上記一般式(1)におけるR13、R14、Y11及びY12で表される基とそれぞれ同様のものが適用できる。また、X81及びX82は、それぞれ独立に水素原子又はハロゲン原子であり、両方がハロゲン原子であると好ましい。X81及びX82としては、少なくとも一方がヨウ素原子であると好ましく、両方がヨウ素原子であるとより好ましい。X81及びX82がヨウ素原子であると、上述した反応が極めて生じ易くなる傾向にある。また、一般式(8b)の化合物におけるR81及びR82としては、上記一般式(1)におけるR11及びR12とそれぞれ同様のものが適用できる。
【0050】
上記反応における金属錯体触媒としては、例えば、パラジウム錯体、ニッケル錯体、白金錯体、ルテニウム錯体、ロジウム錯体又はイリジウム錯体が挙げられる。なかでも、パラジウム錯体又はニッケル錯体が好ましく、パラジウム錯体がより好ましい。パラジウム錯体としては、特に制限されないが、芳香族ハロゲン化物のカップリング反応を促進し得るものが好適である。このパラジウム錯体としては、例えば、2価パラジウム錯体や電子供与性の配位子を有するパラジウム錯体化合物等が挙げられる。
【0051】
2価パラジウム錯体としては、酢酸パラジウム、塩化パラジウム、パラジウム酸ナトリウム、パラジウム酸カリウム等が例示でき、酢酸パラジウムが好ましい。また、電子供与性の配位子を有するパラジウム錯体化合物としては、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム等が挙げられ、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウムが好ましい。
【0052】
なお、金属錯体触媒としては、上述したものを単独で、又は複数種組み合わせて適用してもよい。金属錯体触媒は、原料である一般式(8a)で表される化合物に対し、好ましくは0.01〜50モル%、より好ましくは1.0〜20モル%、更に好ましくは3〜15モル%用いる。
【0053】
また、塩基としては、無機塩基及び有機塩基の両方が適用でき、有機塩基がより好ましい。無機塩基としては、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸塩、アンモニウム塩、酢酸塩等が挙げられる。有機塩基としては、C1〜20のアルキル基を含むトリアルキルアミン、ジアルキルアリールアミン、アルキルジアリールアミンや、トリアリールアミン等のアミン類のほかピリジン等が挙げられる。
【0054】
有機塩基としては、具体的には、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリブチルアミン、ジシクロヘキシルメチルアミン、ピリジン、2,3−ルチジン、2,4−ルチジン、2,5−ルチジン、2,6−ルチジン、3,4−ルチジン、3,5−ルチジン、2,3,4−コリジン、2,4,5−コリジン、2,5,6−コリジン、2,4,6−コリジン、3,4,5−コリジン、3,5,6−コリジン等が挙げられる。
【0055】
有機塩基としては、特にアミン類が好ましい。塩基としてアミン類を用いることで、反応中の副生成物の生成を抑制でき、高収率で目的とする縮合環化合物を得ることができるようになる。アミン類のなかでも、アルキルアミン、特にトリアルキルアミンが好適である。このようなアルキルアミンとしては、窒素原子に隣接する炭素が1つ以上の水素原子を有するもの、つまり、N−CHx(X=1〜3)で表される構造を有するものが好ましく、窒素原子に隣接する炭素が2つ以上の水素原子を有するもの、つまり、N−CHx(X=2〜3)で表される構造を有するものがより好ましい。
【0056】
上述した反応は、溶媒中で行うこともできる。反応に用いる溶媒としては、金属錯体触媒による反応に対して不活性なものが好適である。例えば、トルエン、ジメチルホルムアミド(DMF)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン、イソプロピルアルコール、アセトニトリル、ピナコロン等が挙げられる。なかでも、トルエン、NMP又はジオキサンが好ましい。溶媒の使用量は特に限定されないが、例えば、原料である一般式(8a)で表される化合物の重量に対して好ましくは1〜100倍量、より好ましくは2〜30倍量とすることができる。
【0057】
反応時間は特に限定されず、一般式(8a)の化合物又は一般式(8b)の化合物のいずれか一方が無くなった時点で終了とすることができる。反応開始から終了までにかかる時間は、0.5〜200時間程度である。また、反応温度は、−50〜300℃の範囲で適宜設定することができ、50〜150℃程度とすることが好ましい。
【0058】
なお、高純度の有機薄膜を得るために、上述した反応後には、得られた縮合環化合物を蒸留、昇華、再結晶等により精製することが好ましい。
【0059】
以上説明した製造方法により縮合環化合物が良好に得られるが、かかる製造方法においては、特に限定されないが、以下の反応式で表される反応が生じ、下記一般式(8c)で表される縮合環化合物が得られる。なお、下記の反応式は、X81及びX82としてヨウ素原子を適用した場合の例である。
【化12】


[重合体の製造方法]
【0060】
次に、上述した構造を有する重合体の好適な製造方法について説明する。以下の説明においては、上記一般式(3)で表されるモノマー単位及び上記一般式(5)で表されるモノマー単位の両方を有する重合体を製造する方法について説明する。
【0061】
重合体は、下記一般式(13a)で表されるモノマー及び下記一般式(13b)で表されるモノマーを反応させて高分子化することにより得ることができる。
【化13】

【0062】
式中、R31〜R34、Y31及びY32は、いずれも上記と同義である。また、R131〜R134は、それぞれ独立に重合性官能基である。この重合性官能基としては、上記一般式(1)におけるR13及びR14の重合性官能基として例示したものと同様の基が挙げられる。
【0063】
重合体を得るためには、上記一般式(13a)の化合物と上記一般式(13b)の化合物との間、一般式(13a)の化合物同士、又は、一般式(13b)の化合物同士で結合を生じる反応を繰り返し生じさせる。上記の化合物同士で結合を生じさせる反応としては、Wittig反応、Heck反応、Horner−Wadsworth−Emmons反応、Knoevenagel反応、鈴木カップリング反応、Grinard反応、Stille反応や、Ni(0)触媒を用いた重合反応等が挙げられる。その他、適当な脱離基を有する中間体化合物の分解による反応も適用できる。例えば、スルホニウム基を有する中間体化合物からポリ(p−フェニレンビニレン)を合成する方法が挙げられる。上記R131〜R134の重合性官能基は、目的とする反応に応じて適宜選択することが好ましい。また、重合体は、重合性官能基による反応以外によって形成されてもよい。例えば、上記一般式(1)においてn及びmが0である縮合環化合物同士を、FeClを用いた酸化重合反応や電気化学的な酸化による重合反応等によって繰り返し結合させる方法も挙げられる。
【0064】
重合体を得るための反応としては、上述したなかでも、鈴木カップリング反応、Grinard反応、Stille反応、Ni(0)触媒を用いた重合反応が、構造制御がし易く、原料の準備が比較的容易であり、しかも反応操作が簡便であることから好ましい。また、FeClを用いた酸化重合反応も、原料の準備が比較的容易であり、しかも反応操作が簡便であることから好ましい。
【0065】
これらの反応に好適な重合性官能基の組み合わせとしては、具体的には、鈴木カップリング反応の場合、ホウ酸基又はホウ酸エステル基と、ハロゲンとの組み合わせが挙げられ、Grinard反応の場合、ハロマグネシウムカルバニオンとハロゲンとの組み合わせが挙げられる。また、Stille反応の場合、アルキルスタニル基とハロゲンとの組み合わせが挙げられ、Ni(0)触媒を用いた重合反応の場合、ハロゲン同士の組み合わせが挙げられる。
【0066】
重合体を得るための反応は、副反応を抑制するため、不活性雰囲気下で行うことが好ましい。また、重合体から純度の高い有機薄膜を得る観点からは、原料のモノマーは、蒸留、昇華、再結晶等の種々の方法で精製しておくことが望ましい。さらに、反応後、目的生成物である重合体は、有機溶媒で抽出して溶媒を留去した後に抽出物から単離されるが、この重合体は、クロマトグラフィーや再結晶等の手段で更に精製することが好ましい。
【0067】
また、上記の各反応は、原料モノマーを溶媒に溶解させた溶液中で生じさせることができる。この場合、必要に応じて塩基や触媒等を加えて溶解させた上、溶媒の沸点以下の温度で反応を行うことが好ましい。
【0068】
好適な溶媒は、生じさせるべき反応によってそれぞれ異なるが、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン等の飽和炭化水素、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン等の芳香族炭化水素、四塩化炭素、クロロホルム、ジクロロメタン、クロロブタン、ブロモブタン、クロロペンタン、ブロモペンタン、クロロヘキサン、ブロモヘキサン、クロロシクロヘキサン、ブロモシクロヘキサン等のハロゲン化飽和炭化水素、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン等のハロゲン化芳香族炭化水素、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、t−ブチルアルコール等のアルコール類、蟻酸、酢酸、プロピオン酸等のカルボン酸類、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチル−t−ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ジオキサン等のエーテル類、塩酸、臭素酸、フッ化水素酸、硫酸、硝酸等の無機酸等が例示できる。これらは、必要に応じて複数種組み合わせてもよい。なお、溶媒としては、副反応を抑制する観点から、十分に脱酸素処理が施されたものを用いることが好ましい。
[有機薄膜]
【0069】
次に、好適な実施形態に係る有機薄膜について説明する。有機薄膜は、上述した実施形態の縮合環化合物や重合体を含み膜状の形状を有する構成を有している。有機薄膜は、縮合環化合物及び重合体のいずれか一方のみを含んでいてもよく、これらの両方を含んでいてもよい。また、有機薄膜中には、縮合環化合物又は重合体がそれぞれ2種以上組み合わせて含まれていてもよい。
【0070】
さらに、有機薄膜は、縮合環化合物又は重合体のみから構成されるものであってもよく、他の成分を更に含んで構成されるものであってもよい。このような有機薄膜の好適な厚さは、当該有機薄膜を適用する素子に応じて異なるが、通常1nm〜100μmの範囲とされ、2nm〜1000nmであると好ましく、5nm〜500nmであるとより好ましく、20nm〜200nmであると更に好ましい。
【0071】
有機薄膜は、優れた電荷(ホール又は電子)移動性を得るために、ホール輸送性又は電子輸送性を有する化合物を更に含んでいてもよい。ホール輸送性を有する化合物としては、例えば、ピラゾリン誘導体、アリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、トリフェニルジアミン誘導体、オリゴチオフェン若しくはその誘導体、ポリビニルカルバゾール若しくはその誘導体、ポリシラン若しくはその誘導体、側鎖若しくは主鎖に芳香族アミンを有するポリシロキサン誘導体、ポリアニリン若しくはその誘導体、ポリチオフェン若しくはその誘導体、ポリピロール若しくはその誘導体、ポリフェニレンビニレン若しくはその誘導体、又は、ポリチエニレンビニレン若しくはその誘導体等が例示できる。
【0072】
また、電子輸送性を有する化合物としては、例えば、オキサジアゾール誘導体、アントラキノジメタン若しくはその誘導体、ベンゾキノン若しくはその誘導体、ナフトキノン若しくはその誘導体、アントラキノン若しくはその誘導体、テトラシアノアンスラキノジメタン若しくはその誘導体、フルオレノン誘導体、ジフェニルジシアノエチレン若しくはその誘導体、ジフェノキノン誘導体、8−ヒドロキシキノリン若しくはその誘導体の金属錯体、ポリキノリン若しくはその誘導体、ポリキノキサリン若しくはその誘導体、ポリフルオレン若しくはその誘導体、C60等のフラーレン類若しくはその誘導体等が例示できる。
【0073】
有機薄膜は、その特性を向上させるために、その他の成分を更に含有していてもよい。その他の成分としては、例えば、電荷発生材料が挙げられる。有機薄膜が電荷発生材料を含むことで、当該薄膜が光を吸収して電荷を発生するようになり、光の吸収による電荷発生を要する光センサ等の用途に好適となる。
【0074】
電荷発生材料としては、例えば、アゾ化合物又はその誘導体、ジアゾ化合物又はその誘導体、無金属フタロシアニン化合物又はその誘導体、金属フタロシアニン化合物又はその誘導体、ペリレン化合物又はその誘導体、多環キノン系化合物又はその誘導体、スクアリリウム化合物又はその誘導体、アズレニウム化合物又はその誘導体、チアピリリウム化合物又はその誘導体、C60等のフラーレン類又はその誘導体等が挙げられる。
【0075】
また、有機薄膜は、上述した電荷発生材料による電荷発生機能を増感するための増感剤や、薄膜を安定化するための安定化剤、UV光を吸収するためのUV吸収剤等を更に含んでいてもよい。
【0076】
さらに、有機薄膜は、その機械的強度を高める観点から、高分子バインダーとして、縮合環化合物又は重合体以外の高分子化合物を更に含有していてもよい。このような高分子バインダーとしては、電荷輸送性を過度に低下させないものが好ましく、また、可視光を過度に吸収しないものが好ましい。
【0077】
高分子バインダーとしては、例えば、ポリ(N−ビニルカルバゾール)、ポリアニリン若しくはその誘導体、ポリチオフェン若しくはその誘導体、ポリ(p−フェニレンビニレン)若しくはその誘導体、ポリ(2,5−チエニレンビニレン)若しくはその誘導体、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリシロキサン等が挙げられる。
【0078】
上述した有機薄膜は、例えば、以下のような方法によって製造することができる。
【0079】
すなわち、有機薄膜は、縮合環化合物及び/又は重合体、並びに、必要に応じて上述したその他の成分を溶媒に溶解させた溶液を、所定の基材上に塗布した後、溶媒を揮発させる等により除去することによって形成することができる。
【0080】
溶媒としては、縮合環化合物又は重合体や、その他の成分を溶解又は均一に分散し得るものが好ましい。このような溶媒としては、トルエン、キシレン、メシチレン、テトラリン、デカリン、n−ブチルベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒、四塩化炭素、クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロブタン、ブロモブタン、クロロペンタン、ブロモペンタン、クロロヘキサン、ブロモヘキサン、クロロシクロヘキサン、ブロモシクロヘキサン等のハロゲン化飽和炭化水素系溶媒、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン等のハロゲン化芳香族炭化水素系溶媒、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン等のエーテル類系溶媒等が例示できる。縮合環化合物又は重合体は、溶媒に0.1質量%以上溶解させることが好ましい。
【0081】
溶液を塗布する方法としては、例えば、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェット印刷法、ディスペンサー印刷法等が挙げられる。なかでも、スピンコート法、フレキソ印刷法、インクジェット印刷法又はディスペンサー印刷法が好ましい。
【0082】
上述したような方法により有機薄膜が得られるが、有機薄膜の製造方法は必ずしもこれに限定されない。例えば、原料として縮合環化合物やオリゴマー等の低分子材料を用いる場合は、真空蒸着法等の気相成長法を適用することもできる。
【0083】
なお、有機薄膜に対しては、その用途に応じて有機薄膜中の縮合環化合物又は重合体を配向させる工程を更に施してもよい。かかる配向によって、有機薄膜中の縮合環化合物や重合体(主鎖又は側鎖)が一定の方向に並ぶこととなり、有機薄膜の電荷輸送性が更に高められる。
【0084】
有機薄膜の配向方法としては、通常液晶等の配向に用いられる方法を適用することができる。具体的には、ラビング法、光配向法、シェアリング法(ずり応力印加法)、引き上げ塗布法等が、簡便かつ有用であることから好ましく、ラビング法又はシェアリング法がより好ましい。
[有機薄膜素子]
【0085】
上述した実施形態の有機薄膜は、上記実施形態の縮合環化合物及び/又は重合体を含むことから、優れた電荷(電子又はホール)輸送性を有するものとなる。したがって、この有機薄膜は、電極等から注入された電子又はホール、或いは、光吸収により発生した電荷等を効率よく輸送できるものであり、有機薄膜を用いた各種の電気素子(有機薄膜素子)に応用することができる。以下、有機薄膜素子の例についてそれぞれ説明する。
【0086】
(有機薄膜トランジスタ)
まず、好適な実施形態に係る有機薄膜トランジスタについて説明する。有機薄膜トランジスタは、ソース電極及びドレイン電極、これらの間の電流経路となり上述した実施形態の縮合環化合物又はこれを含む重合体を含有する有機薄膜からなる活性層、電流経路を通る電流を制御するゲート電極、並びに、活性層とゲート電極との間に配置される絶縁層を備えるものである。このような有機トランジスタは、ゲート電極に印加する電圧を調節することで活性層を流れる電流量を制御する、いわゆる電界効果トランジスタである。以下、このような有機薄膜トランジスタの好適な構成について、図1〜図4を参照して説明する。
【0087】
図1は、第1の例に係る有機薄膜トランジスタの断面構成を模式的に示す図である。図示されるように、有機薄膜トランジスタ100は、基板1、この基板1上に形成されたソース電極5及びドレイン電極6、ソース電極5及びドレイン電極6を覆うように基板1上に形成された活性層2、活性層2上に形成された絶縁層3、並びに、絶縁層3上に形成されたゲート電極4を備えた構成を有している。
【0088】
基板1は、トランジスタとしての特性に影響し難いものであれば特に制限なく適用でき、例えば、ガラス基板、プラスチック基板又はフレキシブルなフィルム基板等が挙げられる。活性層2は、本発明に係る有機薄膜から構成される。このような活性層2は、基板1上に上述したような形成方法により有機薄膜を形成することで形成することができる。
【0089】
絶縁層3は、活性層2とゲート電極4との間に形成され、これらを電気的に絶縁するものである。絶縁層3としては、例えば、SiO、SiN、Ta、ポリイミド、ポリビニルアルコール、ポリビニルフェノール等からなるものが例示できる。なお、駆動電圧を低くする観点から、誘電率の高い材料からなるものが好適である。
【0090】
ゲート電極4は、導電性材料から構成される。導電性材料としては、アルミニウム、金、白金、銀、銅、クロム、ニッケル、チタン等の金属、ITO等の導電性酸化物、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレンスルホン酸の混合高分子等の導電性高分子等が例示できる。また、金属微粒子、カーボンブラック、グラファイト微粉がバインダー中に分散した導電性材料も適用できる。また、ソース電極5及びドレイン電極6は、活性層2とそれぞれ接するように設けられており、ゲート電極4と同様の導電性材料から構成される。
【0091】
なお、有機薄膜トランジスタ100は、活性層2と絶縁層3とが密着した構成を有しているが、この両層の界面特性を改善するため、絶縁層3の活性層2に接する側の表面は、シランカップリング剤等の表面処理剤で処理されることにより改質されていることが好ましい。表面処理剤としては、長鎖アルキルクロロシラン類、長鎖アルキルアルコキシシラン類、フッ素化アルキルクロロシラン類、フッ素化アルキルアルコキシシラン類、ヘキサメチルジシラザン等のシリルアミン化合物等が挙げられる。なお、表面処理剤による処理を行う前に、絶縁層3の上記表面をオゾンUV、Oプラズマ等で処理をしておいてもよい。
【0092】
図2は、第2の例に係る有機薄膜トランジスタの断面構成を模式的に示す図である。有機薄膜トランジスタ110は、基板1、基板1上に設けられたソース電極5、ソース電極5を覆うように基板1上に設けられた活性層2、活性層2上に設けられたドレイン電極6、活性層2上に設けられた絶縁層3、及び、絶縁層3上に設けられたゲート電極4を備えている。このように、有機薄膜トランジスタ110においては、ソース電極5及びドレイン電極6が活性層2のそれぞれ異なる面側に形成されている。
【0093】
図3は、第3の例に係る有機薄膜トランジスタの断面構成を模式的に示す図である。有機薄膜トランジスタ120は、基板1、基板1上に設けられたゲート電極4、ゲート電極4を覆うように基板1上に設けられた絶縁層3、絶縁層3上に設けられたソース電極5及びドレイン電極6、並びに、ソース電極5及びドレイン電極6と接するように絶縁層3上に設けられた活性層2を備えている。
【0094】
図4は、第4の例に係る有機薄膜トランジスタの断面構成を模式的に示す図である。有機薄膜トランジスタ130は、基板1、基板1上に設けられたゲート電極4、ゲート電極4を覆うように基板1上に設けられた絶縁層3、絶縁層3上に設けられたソース電極5、ソース電極5を覆うように絶縁層3上に設けられた活性層2、並びに、活性層2上に設けられ、且つ、端部が絶縁層3に接しているドレイン電極6を備えている。
【0095】
第1〜第4の例で示した有機薄膜トランジスタにおいては、活性層2は、ソース電極5とドレイン電極6の間の電流通路(チャンネル)となる。また、ゲート電極4は、電圧を印加することにより活性層2における電流通路(チャンネル)を通る電流量を制御する。このような有機薄膜トランジスタは、公知の方法により製造することができる。その製造方法としては、例えば、特開平5−110069号公報に記載の方法が挙げられる。
【0096】
なお、上述した実施形態の有機薄膜トランジスタは、その耐久性の向上等を目的として、素子構造(活性層2、絶縁層3、ゲート電極4、ソース電極5及びドレイン電極6を含む構造)が保護膜によって覆われていてもよい。これにより、上記素子構造と大気との接触が抑制され、有機薄膜トランジスタの経時的な特性低下等を低減することが可能となる。また、有機薄膜トランジスタ上に表示デバイス等の他の電気素子を形成する場合、その素子構造の形成プロセスに対する影響を低減することも可能となる。
【0097】
このような保護膜としては、UV硬化樹脂、熱硬化樹脂や、SiON膜等の無機膜等が挙げられる。なお、保護膜の形成は、例えば、乾燥した窒素雰囲気下や真空下等、大気に素子構造が触れない条件で行うことが好ましい。こうすれば、有機薄膜トランジスタの経時劣化が極めて生じ難くなる。
【0098】
以下、有機薄膜トランジスタの製造方法の一例を具体的に示す。すなわち、まず、活性層2の構成材料である重合体(オリゴマー)のジクロロベンゼン溶液を調整する。また、基板1とゲート電極4を兼ねる高濃度にドープされたn型シリコン基板(これを基板1とする)を準備した後、その表面を熱酸化することにより厚さ200nmのシリコン酸化膜を生じさせて絶縁層3を形成する。この絶縁層3の表面は、アルカリ洗剤、超純水及びアセトンで超音波洗浄を行った後、オゾンUV照射を施して清浄化する。
【0099】
次いで、絶縁層3上に真空蒸着法によりAuを堆積させ、チャネル幅2mm、チャネル長20μmのソース電極5及びドレイン電極6を形成する。それから、基板1、絶縁層3並びにソース及びドレイン電極5,6が形成された積層体をスピンコーター上に配置し、そのソース及びドレイン電極5,6が形成された側の表面上にヘキサメチルジシラザン(HMDS、Ardrich社製)を滴下して2000rpmでスピンを行うことにより、当該表面をHMDSで処理する。
【0100】
その後、上述したオリゴマーのジクロロベンゼン溶液を、上記積層体のHMDS処理を行った表面上にスピンコート法により塗布して、この表面上に有機薄膜からなる活性層2を形成して、有機薄膜トランジスタを得る。このようにして得られた有機薄膜トランジスタは、図3に示す有機薄膜トランジスタ120と同等の構成を有し、ゲート電極4が基板1の機能を兼ねるものとなる。
【0101】
このような構成を有する有機薄膜トランジスタについて、真空中でゲート電圧及びソース−ドレイン間電圧を変化させることによりトランジスタ特性を測定した場合、良好なIsd−Vg特性が得られる。
【0102】
(太陽電池)
次に、好適な実施形態に係る太陽電池について説明する。図5は、好適な実施形態に係る太陽電池の断面構成を模式的に示す図である。太陽電池200は、基板10上に、第1の電極17a、活性層12及び第2の電極17bをこの順に備える構成を有している。基板10としては、シリコン基板、ガラス基板、プラスチック基板等が好ましい。また、活性層12は、本発明に係る有機薄膜から構成される。この活性層12は、光に対する感度を高めるためにキャリア発生剤、増感剤等を更に含んでいてもよい。
【0103】
第1又は第2の電極17a,17bを構成する電極材料としては、例えば、アルミニウム、金、銀、銅、アルカリ金属、アルカリ土類金属等の金属等が挙げられる。第1及び第2の電極17a,17bのうちの少なくとも一方は、透明又は半透明の電極材料が適用される。高い開放電圧を得るために、電極材料としては、第1及び第2の電極17a,17b間の仕事関数の差が大きくなるような組み合わせとすることが好ましい。
【0104】
(光センサ)
次に、好適な実施形態に係る光センサについて説明する。図6は、第1の例に係る光センサの断面構成を模式的に示す図である。図6に示す光センサ300は、基板20上に、第1の電極27a、活性層22、電荷発生層28及び第2の電極27bをこの順に備える構成を有している。基板20、活性層22並びに第1及び第2の電極27a,27bとしては、上述した太陽電池における基板10、活性層12並びに第1及び第2の電極17a,17bとそれぞれ同様の構成が適用できる。
【0105】
電荷発生層28は、少なくとも一方の電極と活性層22との間に形成される。この電荷発生層28は、光を吸収して電荷を発生する層である。電荷発生層28の構成材料としては、上述した有機薄膜に適用し得る各種の電荷発生材料が適用できる。
【0106】
図7は、第2の例に係る光センサの断面構成を模式的に示す図である。図7に示される光センサ310は、基板20上に、第1の電極27a、電荷発生層28、活性層22及び第2の電極27bをこの順に備える構成を有している。
【0107】
また、図8は、第3の例に係る光センサの断面構成を模式的に示す図である。図8に示される光センサ320は、基板20上に、第1の電極27a、活性層22及び第2の電極27bをこの順に備える構成を有している。このように、有機薄膜からなる活性層22自身が光の入射により十分に電荷を発生し得る場合、光センサは、必ずしも第1及び第2の例のような電荷発生層28を有していなくてもよい。
【0108】
以上、本発明に係る有機薄膜を適用した有機薄膜素子の実施形態を例示したが、有機薄膜素子は、有機薄膜を適用した電気素子であれば上述した実施形態のものに限定されない。上記以外の有機薄膜素子としては、例えば、有機EL素子、有機メモリー、フォトリフラクティブ素子、空間光変調器、撮像素子等が挙げられる。
【実施例】
【0109】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0110】
(測定条件)
以下の合成例及び実施例において、各種の分析等は以下の条件で行った。すなわち、まず、核磁気共鳴(NMR)スペクトルは、日本電子社製のJNM−GSX−400を用いて測定した。ガスクロマトグラフ−質量分析(GC−MS)は、島津社製のQP−5050を用い、電子衝撃法により行った。高分解質量分析(HRMS)は、日本電子社製のJMS−DX−303を用いて行った。ガスクロマトグラフ(GC)分析は、島津社製のGC−8Aにジーエルサイエンス社製のシリコンOV−17充填ガラスカラム(内径2.6mm、長さ1.5m)を装着して用いた。カラムクロマトグラフィー分離におけるシリカゲルは、和光純薬工業社製のワコーゲルC−200を用いた。
【0111】
(合成例1;3,3’−ジヨード−2,2’−ビチオフェンの合成)
まず、出発原料である3,3’−ジブロモ−2,2’−ビチオフェンを、参考文献(Hong M., Wei H., J. Org. Chem.,2000, 65, 3895)の記載を参照して合成した。そして、これを用いてハロゲン交換反応を行い、3,3’−ジヨード−2,2’−ビチオフェンを合成した。すなわち、まず、300mLの三口フラスコに3,3’−ジブロモ−2,2’−ビチオフェン(2.7g(7mmol))を入れ、これをジエチルエーテル(70mL)に溶かした。次に、反応容器内を窒素置換し、−78℃に冷却した。続いて、ブチルリチウム(1.5Mへキサン溶液、10.3mL(15.4mmol))を加え、1時間撹拌した。さらに、ジエチルエーテルに溶かしたヨウ素(3.9g(15.4mmol))を加え、室温下で1時間撹拌して反応させた。
【0112】
反応後の溶液に、ジエチルエーテル(約50mL)を加えて飽和チオ硫酸ナトリウム水溶液で洗浄した。それから、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させた後、セライトでろ過した。そして、ろ液から溶媒を留去し、得られた固体をヘキサンとトルエンで再結晶して、目的物である3,3’−ジヨード−2,2’−ビチオフェンを白色固体(1.9g,収率65%)の状態で得た。得られた白色固体の融点を測定したところ、148℃であった。(文献値149.5−151℃;Gronowitz S., Vilks V., Arkiv Kemi,1963, 21, 191.)。
[縮合環化合物の製造]
【0113】
(実施例1;4,5−ジ(n−プロピル)ベンゾ[2,1−b:3,4−b’]ジチオフェンの合成)
20mLの二口フラスコに3,3’−ジヨード−2,2’−ビチオフェン(84mg(0.2mmol))、酢酸パラジウム(II)(4.5mg(0.02mmol))、4−オクチン(66mg(0.6mmol))、N,N−ジシクロヘキシルメチルアミン(117mg(0.6mmol))、N,N−ジメチルホルムアミド(2.5mL)を加え、反応容器内を窒素置換して100℃で加熱、撹拌して反応させた。4時間後、GC及びGC−MS分析により、反応混合物中に4,5−ジ(n−プロピル)ベンゾ[2,1−b:3,4−b’]ジチオフェンがほぼ定量的(GC収量;99%以上)に生成していることが確認された。
【0114】
次いで、得られた反応溶液にジエチルエーテル(約20mL)を加え、水で洗浄した。その後、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させた後、セライトでろ過した。ろ液から溶媒を留去した後、残存した液体を、ヘキサンを展開溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することにより、目的物である4,5−ジ(n−プロピル)ベンゾ[2,1−b:3,4−b’]ジチオフェンを油状物質(46mg)の状態で得た。得られた目的物のH−NMR及びHRMSの測定結果は以下の通りであった。
H−NMR(400MHz,CDCl,ppm):δ7.45(d,J=5.5Hz,2H),7.35(d,J=5.5Hz,2H),3.01(m,4H),1.74−1.64(m,4H),1.07(t,J=7.3Hz,6H).
HRMS(EI):m/z 274.0847(C1618で測定して得られた値は274.0850であった).
【0115】
(実施例2)
N,N−ジシクロヘキシルメチルアミンに代えてトリブチルアミン(111mg(0.6mmol))を用いたこと、及び、反応時間を8時間としたこと以外は、実施例1と同様の反応を行った。反応後、GC及びGC−MS分析により、反応混合物中に4,5−ジ(n−プロピル)ベンゾ[2,1−b:3,4−b’]ジチオフェンがほぼ定量的(GC収量;99%以上)に生成していることが確認された。
【0116】
(実施例3)
N,N−ジシクロヘキシルメチルアミンに代えてトリブチルアミン(111mg(0.6mmol))を用いたことシクロヘキシルジメチルアミン(76mg(0.6mmol))を用いたこと、及び、反応時間を8時間としたこと以外は、実施例1と同様の反応を行った。反応後、GC及びGC−MS分析により、反応混合物中に4,5−ジ(n−プロピル)ベンゾ[2,1−b:3,4−b’]ジチオフェンが92%のGC収量で生成していることが確認された。
【0117】
(実施例4)
N,N−ジシクロヘキシルメチルアミンに代えてジイソプロピルエチルアミン(78mg(0.6mmol))を用いたこと、及び、反応時間を6時間としたこと以外は、実施例1と同様の反応を行った。反応後、GC及びGC−MS分析により、反応混合物中に4,5−ジ(n−プロピル)ベンゾ[2,1−b:3,4−b’]ジチオフェンが88%のGC収量で生成していることが確認された。
【0118】
(実施例5;4,5−ジ(n−ペンチル)ベンゾ[2,1−b:3,4−b’]ジチオフェンの合成)
20mLの二口フラスコに3,3’−ジヨード−2,2’−ビチオフェン(84mg,0.2mmol)、酢酸パラジウム(II)(2.2mg,0.01mmol)、6−ドデシン(40mg,0.24mmol)、N,N−ジシクロヘキシルメチルアミン(94mg,0.48mmol)、N,N−ジメチルホルムアミド(2.5mL)を加え、反応容器内を窒素置換して130℃で加熱、撹拌して反応させた。
【0119】
3時間後、反応溶液にジエチルエーテル(約20mL)を加え、水で洗浄した。その後、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、セライトでろ過した。ろ液から溶媒を留去した後、残存した液体を、ヘキサンを展開溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することにより、目的物である4,5−ジ(n−ペンチル)ベンゾ[2,1−b:3,4−b’]ジチオフェンを油状物質(41mg)の状態で得た。なお、反応後の溶液をGCにより分析したところ、生成物のGC収量は89%であった。得られた目的物のH−NMR及びHRMSの測定結果は以下の通りであった。
H−NMR(400MHz,CDCl,ppm):δ7.46(d,J=5.5Hz,2H),7.37(d,J=5.5Hz,2H),3.02(m,4H),1.70−1.62(m,4H),1.53〜1.37(m,8H)、0.93(t,J=7.3Hz,6H).
HRMS(EI):m/z 330.1469(C2026で測定して得られた値は330.1476であった。).
【0120】
(実施例6;4,5−ジ(n−ヘプチル)ベンゾ[2,1−b:3,4−b’]ジチオフェンの合成)
6−ドデシンに代えて、8−ヘキサデシン(53mg(0.24mmol))を用いたこと以外は、実施例5と同様にして目的物である4,5−ジ(n−ヘプチル)ベンゾ[2,1−b:3,4−b’]ジチオフェンを油状物質(58mg)の状態で得た。なお、反応後の溶液をGCにより分析したところ、生成物のGC収量は99%以上であった。得られた目的物のH−NMR及びHRMSの測定結果は以下の通りであった。
H−NMR(400MHz,CDCl,ppm):δ7.46(d,J=5.5Hz,2H),7.36(d,J=5.5Hz,2H),3.01(m,4H),1.70−1.61(m,4H),1.52〜1.45(m,4H)、1.41〜1.25(m,12H),0.90(t,J=7.0Hz,6H).
HRMS(EI):m/z 386.2168(C2434で測定して得られた値は386.2102であった。).
【0121】
(実施例7;4,5−ジフェニルベンゾ[2,1−b:3,4−b’]ジチオフェンの合成)
20mLの二口フラスコに、3,3’−ジヨード−2,2’−ビチオフェン(418mg(1mmol))、酢酸パラジウム(II)(11mg(0.05mmol))、ジフェニルアセチレン(214mg(1.2mmol))、N,N−ジシクロヘキシルメチルアミン(469mg(2.4mmol))、N,N−ジメチルホルムアミド(2.5mL)を加え、反応容器内を窒素置換して130℃で加熱、撹拌して反応させた。
【0122】
3時間後、反応溶液にジエチルエーテル(約20mL)を加え、水で洗浄した。その後、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、セライトでろ過した。ろ液から溶媒を留去した後、残存した液体を、ヘキサンを展開溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することにより、目的物である4,5−ジフェニルベンゾ[2,1−b:3,4−b’]ジチオフェンを褐色固体(134mg)の状態で得た。なお、反応後の溶液をGCにより分析したところ、生成物のGC収量は64%であった。得られた目的物のH−NMR及びGC−MSの測定結果は以下の通りであった。
H−NMR(400MHz,CDCl,ppm):δ7.34(d,J=5.5Hz,2H),7.26−7.17(m,10H),7.16(d,J=5.5Hz,2H).
GC−MS(EI):m/z 342.
【0123】
実施例1〜7においては、R11及びR12で表される基として各種の基を有する上記一般式(1)で表される縮合環化合物が得られることが確認された。また、実施例1〜7より、塩基として各種アミンを用いることで、縮合環化合物が高収率で得られることが確認された。
【0124】
(実施例8;2,7−ジブロモ−4,5−ジ(n−プロピル)ベンゾ〔2,1−b:3,4−b’〕ジチオフェンの合成)
20mLの二口フラスコに、4,5−ジ(n−プロピル)ベンゾ〔2,1−b:3,4−b’〕ジチオフェン(191.1mg(0.70mmol))、N−ブロモスクシンイミド(261.6mg(1.47mmol))、N,N−ジメチルホルムアミド(2.5mL)を加え、反応容器内を窒素置換して室温下で2.5時間撹拌して反応させた。
【0125】
反応後の溶液に、ジエチルエーテル(約20mL)を加えて水で洗浄した。その後、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させた後、ろ過した。ろ液から溶媒を留去した後、得られた固体をヘキサンで再結晶して、目的物である2,7−ジブロモ−4,5−ジ(n−プロピル)ベンゾ〔2,1−b:3,4−b’〕ジチオフェンを白色固体(214.5mg,収率70%)の状態で得た。得られた目的物のH−NMR及びHRMSの測定結果は以下の通りであった。
H−NMR(400MHz,CDCl,ppm):δ7.40(s,2H),2.91−2.86(m,4H),1.67−1.60(m,4H),1.06(t,J=7.3Hz,6H).
HRMS(EI):m/z 429.9055(C1616Brで測定して得られた値は429.9060であった。)
【0126】
(実施例9;2,7−ジブロモ−4,5−ジ(n−ペンチル)ベンゾ〔2,1−b:3,4−b’〕ジチオフェンの合成)
4,5−ジ(n−プロピル)ベンゾ〔2,1−b:3,4−b’〕ジチオフェンに代えて、4,5−ジ(n−ペンチル)ベンゾ〔2,1−b:3,4−b’〕ジチオフェン(442.1mg(1.34mmol))を用いたこと以外は、実施例8と同様にして反応を行った。反応後の溶液に、ジエチルエーテル(約20mL)を加え、水で洗浄した。その後、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させた後、ろ過した。ろ液から溶媒を留去した後、残存した液体を、ヘキサンを展開溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することにより、目的物である2,7−ジブロモ−4,5−ジ(n−ペンチル)ベンゾ〔2,1−b:3,4−b’〕ジチオフェンを白色固体(124.9mg,収率59%)の状態で得た。得られた目的物のH−NMR及びHRMSの測定結果は以下の通りであった。
H−NMR(400MHz,CDCl,ppm):δ7.39(s,2H),2.94−2.85(m,4H),1.64−1.54(m,4H),1.50−1.32(m,8H),0.93(t,J=7.3Hz,6H).
HRMS(EI):m/z 485.9689(C2024Brで測定して得られた値は485.9686であった。)
【0127】
(実施例10;2,7−ジブロモ−4,5−ジ(n−ヘプチル)ベンゾ〔2,1−b:3,4−b’〕ジチオフェンの合成)
4,5−ジ(n−ペンチル)ベンゾ〔2,1−b:3,4−b’〕ジチオフェンに代えて、4,5−ジ(n−ヘプチル)ベンゾ〔2,1−b:3,4−b’〕ジチオフェン(247.3mg(0.64mmol))を用いた事以外は、実施例9と同様にして目的物である2,7−ジブロモ−4,5−ジ(n−ペンチル)ベンゾ〔2,1−b:3,4−b’〕ジチオフェンを白色固体(242.0mg,収率69%)の状態で得た。得られた目的物のH−NMR及びHRMSの測定結果は以下の通りであった。
H−NMR(400MHz,CDCl,ppm):δ7.39(s,2H),2.91−2.86(m,4H),1.64−1.55(m,4H),1.50−1.24(m,16H),0.90(t,J=7.3Hz,6H).
HRMS(EI):m/z 542.0314(C2432Brで測定して得られた値は542.0312であった。)
【0128】
(実施例11;2,7−ジフェニル−4,5−ジ(n−プロピル)ベンゾ〔2,1−b:3,4−b’〕ジチオフェンの合成)
20mLの二口フラスコに、2,7−ジブロモ−4,5−ジ(n−プロピル)ベンゾ〔2,1−b:3,4−b’〕ジチオフェン(81.9mg(0.19mmol))、フェニルボロン酸(92.7mg(0.76mmol))、酢酸パラジウム(II)(2.1mg(0.01mmol))、フッ化カリウム(88.3mg(1.52mmol))、ジ(t−ブチル)−2−ビフェニルホスフィン(5.7mg(0.02mmol))、及び、トルエン(2.5mL)を加え、反応容器内を窒素置換して100℃で3時間撹拌して反応させた。
【0129】
反応後の溶液に、ジエチルエーテル(約20mL)を加え、水で洗浄した。その後、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させた後、ろ過した。ろ液から溶媒を留去した後、得られた固体をヘキサンとトルエンで再結晶して、目的物である2,7−ジフェニル−4,5−ジ(n−プロピル)ベンゾ〔2,1−b:3,4−b’〕ジチオフェンを黄色固体(64.5mg,収率80%)の状態で得た。得られた目的物のH−NMR及びHRMSの測定結果は以下の通りであった。
H−NMR(400MHz,CDCl,ppm):δ7.77−7.74(m,4H),7.65(s,2H),7.47−7.42(m,4H),7.37−7.32(m,2H),3.05−3.00(m,4H),1.78−1.69(m,4H),1.11(t,J=7.3Hz,6H).
HRMS(EI):m/z 426.1480(C2826で測定して得られた値は426.1476であった。)
【0130】
(実施例12;2,7−ジフェニル−4,5−ジ(n−ペンチル)ベンゾ〔2,1−b:3,4−b’〕ジチオフェンの合成)
2,7−ジブロモ−4,5−ジ(n−プロピル)ベンゾ〔2,1−b:3,4−b’〕ジチオフェンに代えて、2,7−ジブロモ−4,5−ジ(n−ペンチル)ベンゾ〔2,1−b:3,4−b’〕ジチオフェン(124.9mg(0.26mmol))を用いたこと以外は、実施例11と同様にして反応を行った。反応後の溶液に、ジエチルエーテル(約20mL)を加え、水で洗浄した。その後、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させた後、ろ過した。ろ液から溶媒を留去した後、残存した固体を、ヘキサンを展開溶媒とする薄層クロマトグラフィーで精製することにより、目的物である2,7−ジフェニル−4,5−ジ(n−ペンチル)ベンゾ〔2,1−b:3,4−b’〕ジチオフェンを黄色固体(83.8mg,収率67%)の状態で得た。得られた目的物のH−NMR及びHRMSの測定結果は以下の通りであった。
H−NMR(400MHz,CDCl,ppm):δ7.77−7.74(m,4H),7.66(s,2H), 7.47−7.42(m,4H),7.37−7.32(m,2H),3.05−3.00(m,4H),1.79−1.68(m,4H),1.55−1.40(m,8H),0.95 (t,J= 7.3Hz,6H).
HRMS(EI):m/z 482.2097(C3234で測定して得られた値は482.2102であった。)
【0131】
(実施例13;2,7−ジフェニル−4,5−ジ(n−ヘプチル)ベンゾ〔2,1−b:3,4−b’〕ジチオフェンの合成)
2,7−ジブロモ−4,5−ジ(n−ペンチル)ベンゾ〔2,1−b:3,4−b’〕ジチオフェンに代えて、2,7−ジブロモ−4,5−ジ(n−ヘプチル)ベンゾ〔2,1−b:3,4−b’〕ジチオフェン(128.2mg(0.24mmol))を用いた事以外は、実施例12と同様にして目的物である2,7−ジフェニル−4,5−ジ(n−ヘプチル)ベンゾ〔2,1−b:3,4−b’〕ジチオフェンを黄色固体(54.5mg,収率42%)の状態で得た。得られた目的物のH−NMR及びHRMSの測定結果は以下の通りであった。
H−NMR(400MHz,CDCl,ppm):δ7.77−7.71(m,4H),7.63(s,2H),7.46−7.40(m,4H),7.36−7.30(m,2H),3.05−2.97(m,4H),1.74−1.63(m,4H),1.56−1.47(m,4H),1.46−1.19(m,12H),0.91(t,J=6.9Hz,6H).
HRMS(EI):m/z 538.2722(C3642で測定して得られた値は538.2728であった。)
【0132】
(実施例14;2,7−ジ(2−ナフチル)−4,5−ジ(n−ペンチル)ベンゾ〔2,1−b:3,4−b’〕ジチオフェンの合成)
フェニルボロン酸に代えて2−ナフチルボロン酸(137.6mg(0.80mmol))を用いた事以外は、実施例12と同様にして目的物である2,7−ジ(2−ナフチル)−4,5−ジ(n−ペンチル)ベンゾ〔2,1−b:3,4−b’〕ジチオフェンを黄色固体(72.0mg,収率62%)の状態で得た。得られた目的物のH−NMR及びHRMSの測定結果は以下の通りであった。
H−NMR(400MHz,CDCl,ppm):δ8.15(s,2H),7.92−7.81(m,8H),7.75(s,2H),7.54−7.45(m,4H),3.08−3.03(m,4H),1.78−1.69(m,4H),1.58−1.40(m,8H),0.97(t,J=7.3Hz,6H).
HRMS(EI):m/z 582.2423(C4038で測定して得られた値は582.2415であった。)
【0133】
(実施例15;2,7−ジ(2−ナフチル)−4,5−ジ(n−ヘプチル)ベンゾ〔2,1−b:3,4−b’〕ジチオフェンの合成)
フェニルボロン酸に代えて2−ナフチルボロン酸(111.8mg(0.65mmol))を用いたこと、及び、2,7−ジブロモ−4,5−ジ(n−プロピル)ベンゾ〔2,1−b:3,4−b’〕ジチオフェンに代えて2,7−ジブロモ−4,5−ジ(n−ヘプチル)ベンゾ〔2,1−b:3,4−b’〕ジチオフェン(89.1mg(0.16mmol))を用いたこと以外は、実施例11と同様にして、目的物である2,7−ジ(2−ナフチル)−4,5−ジ(n−ヘプチル)ベンゾ〔2,1−b:3,4−b’〕ジチオフェンを黄色固体(96.6mg,収率94%)の状態で得た。得られた目的物のH−NMR及びHRMSの測定結果は以下の通りであった。
H−NMR(400MHz,CDCl,ppm):δ8.19(s,2H),7.93−7.83(m,8H),7.78(s,2H),7.55−7.47(m,4H),3.11−3.03(m,4H),1.79−1.69(m,4H),1.61−1.28(m,16H),0.92(t,J=6.9Hz,6H).
HRMS(EI):m/z 638.3031(C4446で測定して得られた値は638.3041であった。)
【0134】
(実施例16;2,7−ジ(4−ビフェニル)−4,5−ジ(n−ペンチル)ベンゾ〔2,1−b:3,4−b’〕ジチオフェンの合成)
2−ナフチルボロン酸に代えて4−ビフェニルボロン酸(158.6mg(0.80mmol))を用いた事以外は、実施例14と同様にして、目的物である2,7−ジ(4−ビフェニル)−4,5−ジ(n−ペンチル)ベンゾ〔2,1−b:3,4−b’〕ジチオフェンを黄色固体(122.5mg,収率96%)の状態で得た。得られた目的物のH−NMR及びHRMSの測定結果は以下の通りであった。
H−NMR(400MHz,CDCl,ppm):δ7.84−7.80(m,4H),7.70−7.63(m,8H),7.69(s,2H),7.50−7.45(m,4H),7.40−7.35(m,2H),3.07−3.02(m,4H),1.77−1.68(m,4H),1.56−1.41(m,8H),0.97(t,J=7.3Hz,6H).
HRMS(EI):m/z 634.2720(C4442で測定して得られた値は634.2728であった。)
【0135】
(実施例17;2,7−ジ(4−ビフェニル)−4,5−ジ(n−ヘプチル)ベンゾ〔2,1−b:3,4−b’〕ジチオフェンの合成)
2−ナフチルボロン酸に代えて4−ビフェニルボロン酸(103.0mg(0.52mmol))を用いた事以外は、実施例15と同様にして、目的物である2,7−ジ(4−ビフェニル)−4,5−ジ(n−ヘプチル)ベンゾ〔2,1−b:3,4−b’〕ジチオフェンを黄色固体(56.4mg,収率63%)の状態で得た。得られた目的物のH−NMR及びHRMSの測定結果は以下の通りであった。
H−NMR(400MHz,CDCl,ppm):δ7.84−7.80(m,4H),7.71−7.63(m,8H),7.69(s,2H),7.50−7.44(m,4H),7.41−7.35(m,2H),3.08−3.02(m,4H),1.76−1.66(m,4H),1.58−1.25(m,16H),0.92(t,J=6.9Hz,6H).HRMS(EI):m/z 690.3362(C4850で測定して得られた値は690.3354であった。)
【0136】
(実施例18;2,7−ジフェニル−4,5−ジ(n−ペンチル)ベンゾ〔2,1−b:3,4−b’〕ジチオフェンの合成)
20mLの二口フラスコに,4,5−ジ(n−ペンチル)ベンゾ〔2,1−b:3,4−b’〕ジチオフェン(172.4mg(0.52mmol))、ブロモベンゼン(244.9mg(1.56mmol))、酢酸パラジウム(II)(11.7mg(0.05mmol))、炭酸セシウム(407.3mg(1.25mmol))、ジ(t−ブチル)−2−ビフェニルホスフィン(29.8mg(0.1mmol))、及び、N,N−ジメチルホルムアミド(2.5mL)を加え、反応容器内を窒素置換して150℃で17時間撹拌して反応させた。
【0137】
反応後の溶液に、ジエチルエーテル(約20mL)を加えて水で洗浄した。その後、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させた後、ろ過した。ろ液から溶媒を留去した後、得られた固体をヘキサンとトルエンで再結晶して、目的物である2,7−ジフェニル−4,5−ジ(n−ペンチル)ベンゾ〔2,1−b:3,4−b’〕ジチオフェンを黄色固体(94.0mg,収率37%)の状態で得た。
【0138】
(実施例19;2,7−ジ(2−チエニル)−4,5−ジ(n−ヘプチル)ベンゾ〔2,1−b:3,4−b’〕ジチオフェンの合成)
30mLの二口フラスコに、2,7−ジブロモ−4,5−ジ(n−ヘプチル)ベンゾ〔2,1−b:3,4−b’〕ジチオフェン(163.3mg(0.30mmol))、トリブチル(2−チエニル)スズ(223.9mg(0.6mmol))、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(17.3mg(0.015mmol))、N,N−ジメチルホルムアミド(2.5mL)、及び、トルエン(2.5mL)を加え、反応容器内を窒素置換して85℃で24時間攪拌して反応させた。
【0139】
反応後の溶液に、塩化メチレン(約20mL)を加え、水で洗浄した。その後、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させた後、ろ紙でろ過した。ろ液から溶媒を留去した後、得られた固体をトルエンに溶かし、ヘキサンを展開溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製した後、得られた固体をヘキサンで再結晶して、目的物である2,7−ジ(2−チエニル)−4,5−ジ(n−ヘプチル)ベンゾ〔2,1−b:3,4−b’〕ジチオフェンを黄白色固体(89.2mg、収率54%)の状態で得た。得られた目的物のH−NMRの測定結果は以下の通りであった。
H−NMR(400MHz,CDCl,ppm):δ7.46(s,2H),7.31−7.27(m,4H),7.07−7.04(dd,J=5.2,3.6Hz,2H),2.99−2.92(m,4H),1.68−1.60(m,4H),1.54−1.27(m,16H),0.92(t,J=7.3Hz,6H).
[重合体の製造]
【0140】
(実施例20;ポリ(4,5−ジ(n−ヘプチル)ベンゾ〔2,1−b:3,4−b’〕ジチオフェン)の合成)
20mLの二口フラスコに、2,7−ジブロモ−4,5−ジ(n−ヘプチル)ベンゾ〔2,1−b:3,4−b’〕ジチオフェン(108.9mg(0.20mmol))、Ni(COD)(66.0mg(0.24mmol))、1,5−シクロオクタジエン(21.6mg(0.20mmol))、ビピリジル(37.5mg(0.24mmol))、及び、N,N−ジメチルホルムアミド(2.5mL)を加え、反応容器内を窒素置換して60℃で24時間撹拌して反応させた。
【0141】
反応後の溶液に、トルエン(約20mL)を加えて水で洗浄した。その後、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させた後、ひだ折りろ紙でろ過した。ろ液から溶媒を留去した後、ヘキサンとトルエン(7:3)を展開溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、得られた液体にエタノールを加えることにより、目的物である、ポリ(4,5−ジ(n−ヘプチル)ベンゾ〔2,1−b:3,4−b’〕ジチオフェン)を茶褐色固体(36.4mg)の状態で得た。得られたポリマーを重合体Aとする。
【0142】
(実施例21;ポリ(4,5−ジ(n−ヘプチル)ベンゾ〔2,1−b:3,4−b’〕ジチオフェン)の合成)
100mLの二口フラスコに、4,5−ジ(n−ヘプチル)ベンゾ〔2,1−b:3,4−b’〕ジチオフェン(223.4mg(0.58mmol))、塩化鉄(III)(1844.5mg(11.6mmol))、及び、ジクロロメタン(20mL)を加え、反応容器内を窒素置換して室温で20時間撹拌して反応させた。
【0143】
反応後の溶液に、ヒドラジン水溶液、トルエン(約20mL)を加えて水で洗浄した。その後、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させた後、ろ過した。ろ液から溶媒を留去した後、ヘキサンとトルエン(7:3)を展開溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、得られた液体にエタノールを加えることにより、目的物である、ポリ(4,5−ジ(n−ヘプチル)ベンゾ〔2,1−b:3,4−b’〕ジチオフェン)を赤褐色固体(37.3mg)の状態で得た。得られたポリマーを、重合体Bとする。
【0144】
(実施例22;ポリ(4,5−ジ(n−ヘプチル)ベンゾ〔2,1−b:3,4−b’〕ジチオフェン)の合成)
20mLの二口フラスコに、4,5−ジ(n−ヘプチル)ベンゾ〔2,1−b:3,4−b’〕ジチオフェン(119.3mg(0.31mmol))、塩化鉄(III)(110.6mg(0.68mmol))、及び、クロロベンゼン(5.5mL)を加え、空気雰囲気下、65℃で36時間撹拌して反応させた。
【0145】
反応後の溶液に、ヒドラジン水溶液、トルエン(約20mL)を加えて水で洗浄した。その後、有機層をろ紙でろ過し、ろ紙に付着した固体をクロロホルムに溶かして回収した。溶媒を留去した後、得られた固体をエタノールで洗浄することにより、目的物であるポリ(4,5−ジ(n−ヘプチル)ベンゾ〔2,1−b:3,4−b’〕ジチオフェン)を赤褐色固体(41.5mg)の状態で得た。得られたポリマーを重合体Cとする。
【0146】
(実施例23;ポリ(9,9−ジオクチルフルオレン−co−4,5−ジ(n−ヘプチル)ベンゾ〔2,1−b:3,4−b’〕ジチオフェン)の合成)
窒素置換した50mlカローセル試験管に、2,7−ビス(ボロン酸エチルエステル)−9,9−ジオクチルフルオレン(0.26mmol)、2,7−ジブロモ−4,5−ジ(n−ヘプチル)ベンゾ〔2,1−b:3,4−b’〕ジチオフェン)(0.26mmol)、及び、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0.19μmol)を入れ、次いで、あらかじめ30分間窒素バブリングしたトルエン4mlを入れ、これらを撹拌して完全に溶解させた。
【0147】
続いて、Aliquat336(0.07mmol)を加え、試験管を密閉した。これを105℃まで昇温しながら、炭酸ナトリウム水溶液(2mol/l、0.48ml)をシリンジでセプタムを通して滴下し、5時間加熱撹拌した。さらに、フェニルボロン酸(4.2mg)をTHFに溶かして加え、105℃で5時間加熱撹拌した。得られた溶液を90℃まで冷却した後、これにN,N−ジエチルジチオカルバミド酸ナトリウム三水和物0.1gをイオン交換水に溶かして加え、90℃で3時間加熱撹拌した。
【0148】
それから、撹拌を停止し、水層を除いた後、60℃のイオン交換水4mlで3回有機層を洗浄し、次いで3%酢酸4mlで3回洗浄し、再び60℃のイオン交換水で3回洗浄した。そして、シリカゲル、中性アルミナカラムを用いたクロマトグラフィーにより精製し、更にメタノール60mlで再沈殿させることにより、目的とするポリマーを得た。得られたポリマーのポリスチレン換算分子量は1.0×10であった。得られたポリマーを重合体Dとする。
【0149】
(実施例24;ポリ(2,2’−ビチオフェン−co−4,5−ジ(n−ヘプチル)ベンゾ〔2,1−b:3,4−b’〕ジチオフェン)の合成)
窒素置換した50mlシュレンク型フラスコに、5,5’−ビス(トリメチルスタニル)−2,2’−ビチオフェン(0.44mmol)、2,7−ジブロモ−4,5−ジ(n−ヘプチル)ベンゾ〔2,1−b:3,4−b’〕ジチオフェン)(0.37mmol)、及び、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0.97μmol)を入れ、さらにDMFを3ml加えて150℃まで昇温し、24時間撹拌した。続いて、THFを2ml加え、これをさらに48時間撹拌した。得られた溶液を室温まで冷却した後、メタノール/水混合液(1:1)50mlで再沈殿させることにより、目的とするポリマーを得た。得られたポリマーのポリスチレン換算分子量は4.1×10であった。このポリマーを、重合体Eとする。
[有機薄膜素子の製造及び評価]
【0150】
(実施例25;有機薄膜トランジスタの製造及びその特性の評価)
重合体Dを5mg秤量しこれにクロロホルム1gを加えて、0.5wt%のクロロホルム溶液を調整した後、これをテフロン(登録商標)製の0.2μmメンブランフィルターで濾過して、塗布液とした。
【0151】
次に、ゲート電極となる高濃度にドープされたn−型シリコン基板の表面上に、絶縁層となる熱酸化シリコン酸化膜を200nm形成させた基板に対し、アルカリ洗剤、超純水、アセトンで超音波洗浄を行った後、オゾンUV照射により表面を洗浄した。この洗浄された基板に、ヘキサメチルジシラザン(HMDS;Hexamethyldisilazane、Aldrich製)を滴下した後、2000rpmでスピンすることにより、基板表面をHMDSで処理した。この表面処理された基板上に、上記の重合体Dのクロロホルム溶液(塗布液)を滴下し、1000rpmでスピンして重合体Dの薄膜を形成した。
【0152】
それから、重合体Dの薄膜の上に、真空蒸着法により、金属マスクを用いてPt/Au電極を2nm/50nmで蒸着し、チャネル幅2mm、チャネル長20μmのソース電極及びドレイン電極を形成して、有機薄膜トランジスタを得た。
【0153】
得られた有機薄膜トランジスタに、真空中でゲート電圧V、ソース−ドレイン間電圧VSDを変化させて、トランジスタ特性を測定したところ、良好なId−Vg特性が得られた。そして、Vg=−60V,Vd=−60Vにおいてドレイン電流Id=1.5×10−7Aの電流が流れた。このときの移動度は、1.3×10−3cm/Vsであり、on/off比=10であり、電流が入るしきい値電圧Vth=−27Vであった。
【0154】
(実施例26;有機薄膜トランジスタの製造及びその特性の評価)
重合体Dに代えて重合体Aに変えたこと以外は、実施例25と同様にして有機薄膜トランジスタを作製する。そして、得られた有機薄膜トランジスタに、真空中でゲート電圧V、ソース−ドレイン間電圧VSDを変化させ、トランジスタ特性を測定すると、良好なId−Vg特性が得られる。
【0155】
(実施例27;有機薄膜トランジスタの製造及びその特性の評価)
重合体Dに代えて重合体Cを用いたこと以外は、実施例25と同様にして有機薄膜トランジスタを作製する。得られた有機薄膜トランジスタに、真空中でゲート電圧V、ソース−ドレイン間電圧VSDを変化させ、トランジスタ特性を測定すると、良好なId−Vg特性が得られる。
【0156】
(実施例28;有機薄膜トランジスタの製造及びその特性の評価)
重合体Dに代えて重合体Eを用いたこと以外は、実施例25と同様にして有機薄膜トランジスタを作製した。得られた有機薄膜トランジスタに、真空中でゲート電圧V、ソース−ドレイン間電圧VSDを変化させて、トランジスタ特性を測定したところ、良好なId−Vg特性が得られた。そして、Vg=−60V、Vd=−60Vで、ドレイン電流Id=2.2×10−8Aの電流が流れた。このときの移動度は、1.6×10−5cm/Vsであり、on/off比=10であり、電流が流れるしきい値電圧Vthは−5Vであった。
【図面の簡単な説明】
【0157】
【図1】第1の例に係る有機薄膜トランジスタの断面構成を模式的に示す図である。
【図2】第2の例に係る有機薄膜トランジスタの断面構成を模式的に示す図である。
【図3】第3の例に係る有機薄膜トランジスタの断面構成を模式的に示す図である。
【図4】第4の例に係る有機薄膜トランジスタの断面構成を模式的に示す図である。
【図5】好適な実施形態に係る太陽電池の断面構成を模式的に示す図である。
【図6】第1の例に係る光センサの断面構成を模式的に示す図である。
【図7】第2の例に係る光センサの断面構成を模式的に示す図である。
【図8】第3の例に係る光センサの断面構成を模式的に示す図である。
【符号の説明】
【0158】
1…基板、2…活性層、3…絶縁層、4…ゲート電極、5…ソース電極、6…ドレイン電極、10…基板、12…活性層、17a…第1の電極、17b…第2の電極、20…基板、22…活性層、27a…第1の電極、27b…第2の電極、28…電荷発生層、100,110,120,130…有機薄膜トランジスタ、200…太陽電池、300,310,320…光センサ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される、ことを特徴とする縮合環化合物。
【化1】


[式中、R11及びR12は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルアミノ基、アルコキシカルボニル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよい複素環基又はシアノ基を示す。ただし、R11及びR12の少なくとも一方は水素原子ではない。R13及びR14は、それぞれ独立に1価の基を示し、n及びmは、それぞれ独立に0〜2の整数である。ただし、R13及びR14がそれぞれ複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。Y11及びY12は、それぞれ独立に下記一般式(2a)、(2b)、(2c)、(2d)、(2e)、(2f)、(2g)又は(2h)で表される2価の基である。
【化2】


ただし、R21及びR22は、それぞれ独立に、水素原子又は1価の基を示す。]
【請求項2】
前記Y11及び前記Y12は、前記(2a)で表される2価の基である、ことを特徴とする請求項1記載の縮合環化合物。
【請求項3】
前記R11及び前記R12は、それぞれ独立に、炭素数1〜10のアルキル基又は炭素数6〜20の置換基を有していてもよいアリール基である、ことを特徴とする請求項1又は2記載の縮合環化合物。
【請求項4】
下記一般式(3)で表されるモノマー単位を含む、ことを特徴とする重合体。
【化3】


[式中、R31及びR32は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルアミノ基、アルコキシカルボニル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよい複素環基又はシアノ基を示す。ただし、R31及びR32の少なくとも一方は水素原子ではない。R33及びR34は、それぞれ独立に、水素原子又は1価の基を示す。Y31及びY32は、それぞれ独立に、下記一般式(4a)、(4b)、(4c)、(4d)、(4e)、(4f)、(4g)又は(4h)で表される2価の基である。
【化4】


ただし、R41及びR42は、それぞれ独立に、水素原子又は1価の基を示す。]
【請求項5】
下記一般式(5)で表されるモノマー単位を更に含む、ことを特徴とする請求項4記載の重合体。
【化5】


[式中、Arは、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい複素環基を示す。]
【請求項6】
前記Arは、下記一般式(6)で表される基である、ことを特徴とする請求項5記載の重合体。
【化6】


[式中、R61及びR62は、それぞれ独立に水素原子又は1価の基であり、R61とR62とが結合して環を形成してもよい。Yは、下記一般式(7a)、(7b)、(7c)、(7d)、(7e)、(7f)、(7g)、(7h)又は(7i)で表される2価の基である。
【化7】


ただし、R71、R72、R73及びR74は、それぞれ独立に、水素原子又は1価の基を示し、R73とR74とは、互いに結合して環を形成していてもよい。]
【請求項7】
前記Y31及び前記Y32は、前記(4a)で表される2価の基であり、前記Yは、前記(7a)で表される2価の基である、ことを特徴とする請求項6記載の重合体。
【請求項8】
塩基及び金属錯体触媒の存在下で、下記一般式(8a)で表される化合物と、下記一般式(8b)で表される化合物と、を、反応させて、下記一般式(8c)で表される縮合環化合物を得る、ことを特徴とする縮合環化合物の製造方法。
【化8】


[式中、X81及びX82は、それぞれ独立に水素原子又はハロゲン原子である。ただし、X81及びX82の少なくとも一方はハロゲン原子である。R81及びR82は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルアミノ基、アルコキシカルボニル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよい複素環基又はシアノ基を示す。ただし、R81及びR82の少なくとも一方は水素原子ではない。R83及びR84は、それぞれ独立に1価の基を示し、p及びqは、それぞれ独立に0〜2の整数である。ただし、R83及びR84がそれぞれ複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。Y81及びY82は、それぞれ独立に下記一般式(9a)、(9b)、(9c)、(9d)、(9e)、(9f)、(9g)又は(9h)で表される2価の基である。
【化9】


ただし、R91及びR92は、それぞれ独立に、水素原子又は1価の基を示す。]
【請求項9】
前記Y81及び前記Y82は、前記(9a)で表される2価の基である、ことを特徴とする請求項8記載の縮合環化合物の製造方法。
【請求項10】
前記X81及び前記X82の少なくとも一方は、ヨウ素原子である、ことを特徴とする請求項8又は9記載の縮合環化合物の製造方法。
【請求項11】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の縮合環化合物、及び/又は、請求項4〜7のいずれか一項に記載の重合体を含む、ことを特徴とする有機薄膜。
【請求項12】
請求項11記載の有機薄膜を備える、ことを特徴とする有機薄膜素子。
【請求項13】
請求項11記載の有機薄膜を備える、ことを特徴とする有機薄膜トランジスタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−269775(P2007−269775A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−24498(P2007−24498)
【出願日】平成19年2月2日(2007.2.2)
【出願人】(504176911)国立大学法人大阪大学 (1,536)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】