説明

繊維強化プラスチック成形品およびその製造方法

【課題】
少なくともガラス繊維を含む繊維強化プラスチック成形品の機械加工による切断面を、塗料などにより塗装することなく平滑性を持たせて乱反射光線を防ぎ、マトリックス樹脂に含ませた顔料とほぼ同一の樹脂色を切断面で得ることができる繊維強化プラスチック成形品ならびにその製造方法を提供すること。
【解決手段】
マトリックス樹脂に顔料を含む繊維強化プラスチック成形品であって、成形品の機械加工による切断面を研磨加工すること、もしくは透光性を有する樹脂を塗布することにより算術平均粗さ(R)が0.3μm以下であることを特徴とする繊維強化プラスチック成形品ならびにその製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくともガラス繊維を強化繊維とし、マトリックス樹脂に顔料を含む繊維強化プラスチック成形品に関し、機械加工による切断面に塗料等を塗布することなく、機械加工による切断面での乱反射光線による白色化を防止し、マトリックス樹脂に含ませた顔料とほぼ同一の樹脂色を切断面で得ることが出来る繊維強化プラスチック成形品およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
繊維強化プラスチック成形品は少なくとも1種類以上の強化繊維を使用して成形を行って得られる。強化繊維として炭素繊維やガラス繊維を始めとして各種繊維が用いられており、プラスチック部分も熱硬化性樹脂を中心に種々の樹脂が提案されており、目的とする強度や物性、用途に合わせて多種多様な組み合わせが存在し、それらの組み合わせ方に応じた繊維強化プラスチック成形品およびその製造方法が存在する。
【0003】
それらの組み合わせの中でも炭素繊維とガラス繊維を組み合わせが特に多く存在する。このうちガラス繊維は、炭素繊維と物性比較した場合、比重が大きく力学的特性面とくに弾性率の点で及ばないものの、衝撃強度や生産コスト面においては炭素繊維と比較して利点がある特徴を持っているため、両者の短所を補うように組み合わせることにより、両者を単一で使用した場合よりも高い価値を持つ繊維強化プラスチック成形品を得ることが出来る。
【0004】
例えば、高強度かつ低コストに矩形断面を持った棒状の繊維強化プラスチック成形品を提供する製造方法の1つとして、矩形断面最外層に炭素繊維を、断面の中心部にガラス繊維を配置するように2種類の強化繊維を組み合わせて、引抜成形する製造方法が開示されている(特許文献1参照)。
【0005】
また、炭素繊維強化プラスチック構造体と金属構造体との結合構造において、構造体間での電食反応(ガルバニック・コロージョン)を防止できる結合構造を提供する方法の1つとして、電気的絶縁層(例えばガラス繊維強化プラスチック層)を含む炭素繊維強化プラスチック構造体を製造し、電気的絶縁層を介在させるように金属構造体と結合させる方法が開示されている(特許文献2参照)。
【0006】
上記特許文献1の例では、顔料を直接混入したマトリックス樹脂を樹脂含浸槽に注入し、複数種の繊維をその樹脂含浸槽で樹脂含浸させることにより、強化繊維が異なる場合でもマトリックス樹脂の樹脂色を同一である繊維強化プラスチックを製造する方法が開示されている。しかし、使用した複数種の強化繊維の繊維色が異なる場合、例えば上記特許文献1の例による棒状の繊維強化プラスチック成形品部材の断面を観察すると、ガラス繊維を含む繊維強化プラスチック層と炭素繊維を含む繊維強化プラスチック層では各層の樹脂色が異なって見えるため、意匠性が悪くなる問題があった。
【0007】
また、マトリックス樹脂に顔料を含んだ繊維強化プラスチック成形品であっても、機械加工による切断面において図2のように平滑性が充分に保たれていない場合には、切断面表面の乱反射光線によりマトリックス樹脂に含まれた顔料とほぼ同一の樹脂色を得ることが出来ず、切断加工後の表面品位は改善されなかった。
【0008】
これに対し、機械加工による切断面に図3のようにマトリックス樹脂に含まれている顔料と同一の色の塗料などを用いて塗装することにより、意図した樹脂色を得る方法がある。しかしながら、この方法を用いたとしても、塗膜の乾燥・硬化に時間を要し、また塗膜が経時劣化等により剥離する可能性や、さらに、成形品が真空中やクリーンルーム等で使用される場合、塗膜からの溶剤成分の揮発により、使用環境を汚染する可能性があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2009−173026号公報
【特許文献2】特開平11−123765号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで本発明の課題は、繊維強化プラスチック成形品の切断面を、塗料などにより塗装することなく平滑性を持たせて乱反射光線を防ぎ、マトリックス樹脂に含ませた顔料とほぼ同一の樹脂色を切断面で得ることで、表面品位を向上させた繊維強化プラスチック成形品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、すなわち、本発明の繊維強化プラスチック成形品は、
(1)少なくともガラス繊維を強化繊維とし、マトリックス樹脂に顔料を含む繊維強化プラスチック成形品において、成形品の切断面における算術平均粗さ(Ra)が、0.30μm以下であることを特徴とする繊維強化プラスチック成形品。
(2)前記切断面を研磨加工していることを特徴とする(1)に記載の繊維強化プラスチック成形品。
(3)前記研磨加工が湿式研磨であることを特徴とする(2)に記載の繊維強化プラスチック成形品。
(4)前記切断面に透光性を有する樹脂を塗布することを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の繊維強化プラスチック成形品。
(5)引抜成形品であることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の繊維強化プラスチック成形品。
(6)少なくともガラス繊維を強化繊維とし、マトリックス樹脂に顔料を含む繊維強化プラスチック成形品の製造方法において、成形品の切断面を、算術平均粗さ(Ra)が0.30μm以下とすることを特徴とする繊維強化プラスチック成形品の製造方法。
(7)前記切断面を研磨加工することを特徴とする(6)に記載の繊維強化プラスチック成形品の製造方法。
(8)前記研磨加工が湿式研磨であることを特徴とする(7)に記載の繊維強化プラスチック成形品の製造方法。
(9)前記切断面に透光性を有する樹脂を塗布することを特徴とする(6)〜(8)のいずれかに記載の繊維強化プラスチック成形品の製造方法。
(10)引抜成形法で成形されたことを特徴とする(6)〜(9)のいずれかに記載の繊維強化プラスチック成形品の製造方法。
である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、少なくともガラス繊維を含む繊維強化プラスチック成形品の切断面が平滑性を有するため、乱反射光線を防ぎ、マトリックス樹脂に含ませた顔料とほぼ同一の樹脂色を切断面で得ることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に用いられる繊維強化プラスチック成形品の切断面を含む模式斜視図である。
【図2】繊維強化プラスチック成形品のトリミング直後における切断面の模式図である。
【図3】繊維強化プラスチック成形品の切断面を塗料または顔料を含む樹脂などで塗装した場合の模式図である。
【図4】(a)繊維強化プラスチック成形品の切断面研磨後における模式図である。(b)繊維強化プラスチック成形品の切断面に透光性を有する樹脂を塗布した場合における切断面の模式図である。
【図5】繊維強化プラスチック成形品の切断面の研磨前後における比較写真である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の好ましい実施形態を、図を用いて説明する。
【0015】
本発明は、少なくともガラス繊維を含む1種類以上の強化繊維を組み合わせて成形した繊維強化プラスチック成形品20に関するものである。繊維強化プラスチック成形品20は、ガラス繊維以外の強化繊維を含む繊維強化プラスチック層1とガラス繊維強化プラスチック層2とから構成され、例えば図1に示すように、ガラス繊維強化プラスチック層2の両側を繊維強化プラスチック層1で挟んだ構成とすることができる。ガラス繊維以外の強化繊維の種類は特に限定されず、例えば、炭素繊維、アラミド繊維、ビニロン繊維、アルミナ繊維、シリコンカーバイド繊維等の高強度、高弾性率補強繊維や、これらの組合せからなる、ロービング、クロス、マット、不織布等が挙げられ、これらは単独でも使用できるし併用しても良い。さらに繊維長についても特に限定はされず、連続繊維や不連続繊維のいずれを使用しても良い。なかでも、炭素繊維は軽量かつ高強度、高弾性を発現できる強化繊維として好適であり、ポリアクリルニトリル(PAN)系炭素繊維やピッチ系炭素繊維を使用することができる。
【0016】
本発明に用いられる繊維強化プラスチック成形品20の積層構成は、図2〜図4のようにそれぞれの強化繊維プラスチック層において含まれている強化繊維が、ガラス繊維もしくはガラス繊維以外の強化繊維のいずれか単一種の繊維で、各層内に均一に分散されているようなものであれば、それぞれの強化繊維プラスチック層での繊維方向、繊維体積含有率や厚みなどは特に限定されることはない。繊維強化プラスチック成形品が外力による曲げ変形が作用する構造部材として使用される場合は、外層から順に引張弾性率が高い繊維を層内で同一方向に配置することが、繊維強化プラスチック成形品の曲げによる変形量を抑制することができる点で好ましい。また強化繊維プラスチック成形品の断面内における強化繊維プラスチック層を上下および左右で対称になるように配置すると、断面形状に起因する繊維強化プラスチック成形品の反りを抑制することができる点で好ましい。
【0017】
積層した繊維強化プラスチック成形品の外周を機能素材で被覆した構造を取ることも、成形品の表面電気抵抗を高め、絶縁性を付与する点で好ましい。機能素材としては特に限定されず、布帛を用いることが製造面からも好ましい。布帛に用いる繊維には、電気抵抗が比較的高いとされる熱可塑性合成繊維であれば特に限定されず、コストや汎用性から、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリオレフィン系、ポリイミド系、ポリアラミド系などの繊維が好ましく用いられる。
【0018】
本発明に用いられる繊維強化プラスチック成形品のマトリックス樹脂として熱硬化性樹脂を使用する場合、熱硬化性樹脂の種類については熱または光や電子線などの外部からのエネルギーによって硬化し、少なくとも部分的に硬化物を形成する樹脂であれば特に限定されず、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、フェノール樹脂等の熱硬化性樹脂が好適に用いられる。
【0019】
また本発明に用いられる繊維強化プラスチック成形品のマトリックス樹脂として熱可塑性樹脂を使用する場合、熱可塑性樹脂の種類については特に限定されず、ポリエチレンテレフタレート樹脂やポリブチレンテレフタレート樹脂や液晶ポリエステル樹脂等のポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹脂やポリブチレン樹脂等のポリオレフィン樹脂の他、ポリオキシメチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネイト樹脂、ポリスチレン樹脂、スチレン・アクリルニトリル共重合体樹脂、アクリルニトリル・ブタジエンスチレン共重合体樹脂、アクリレート・スチレン・アクリルニトリル共重合体樹脂、ポリメチレンメタクリレート樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリフェニレンスルファイド樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂等を使用することができ、特にポリプロピレン樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネイト樹脂が好適に用いられる。また、これらの共重合体、変成体および2種類以上のブレンドした樹脂も使用することができる。また、更に耐衝撃性向上のために、上記樹脂にエラストマーもしくはゴム成分を添加した樹脂も使用することができる。
【0020】
ガラス繊維が含まれる繊維強化プラスチック層に使われるマトリックス樹脂に混入させる顔料も特に限定されないが、表面品位を向上させるため、組み合わせて使用する強化繊維が含まれている繊維強化プラスチック層の樹脂色と同じ色を得ることが出来る顔料を用いることが好ましい。例えば、組み合わせて使用する強化繊維が炭素繊維の場合には、炭素繊維が含まれる繊維強化プラスチック層の樹脂色が黒色となるため、ガラス繊維が含まれる繊維強化プラスチック層に使用するマトリックス樹脂に混入する顔料も黒色を発色するものを使用するのが望ましい。
【0021】
本発明に係る繊維強化プラスチック成形品の成形方法としては、例えばハンドレイアップ法、オートクレーブ法、引抜成形法等、一般的な繊維強化プラスチック成形品の成形方法のいずれでも成形することができるが、実施例として挙げたような繊維強化プラスチック成形品では形状、コストの点から、引抜成形法を用いることが特に好ましい。
【0022】
本発明に係わる繊維強化プラスチック成形品の湿式研磨に適用する研磨機は特に限定されないが、給水した際に研磨時に発生する加工粉を充分に洗い流すことが出来るような装置であることが望ましい。また研磨時間や研磨紙の粒度などの研磨条件も特に限定されないが、研磨後の表面粗さがJISB 0651(2001)に基づく算術平均粗さ(R)が0.3μm以下、好ましくは0.2μmとなるように適宜条件を設定して行うことが望ましい。算術平均荒さが0.3μmを超えると可視光短波長(380nm)と同程度となり、切断面での光の散乱が多くなりガラス繊維強化プラスチック層が白色に見える点で好ましくない。また、算術平均荒さが小さいほど表面が平滑にできるため、下限値は特に規定されるものではないが、0.003μm程度であることが好ましい。
【0023】
本発明に係る繊維強化プラスチック成形品に対して、機械加工による切断面の平滑性を向上させるために塗布する樹脂は、透明かつ透光性を有するものであれば特に限定されないが、塗布が容易かつ塗布した樹脂の硬化時間が短いものが望ましい。
【実施例】
【0024】
以下に実施例を示し、本発明をさらに具体的に説明するが、下記実施例は本発明を何ら制限するものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で変更することは、本発明の技術範囲である。
【0025】
(実施例1)
ガラス繊維(セントラル硝子株式会社製のガラス繊維ストランド、ERS2310−821)と組み合わせる強化繊維としてPAN系炭素繊維(東レ株式会社製の炭素繊維“トレカ”(登録商標)S300−48KとT700SC−24Kのストランド)を使用し、顔料としてカーボンブラックを混入したビニルエステル樹脂をマトリックス樹脂として使用し、引抜成形法で繊維強化プラスチック成形品を成形した。
【0026】
具体的な手順としては、上記の繊維基材を、硬化剤が混合された未硬化の熱硬化性樹脂に同時に浸漬させ、スクイズを通して前記繊維基材を種類別に分配ならびに余剰に含浸させた樹脂を掻き取った後、成形方向の中央部を145℃に保持した金型空間を通過させつつ加熱・硬化させて、連続的に引き抜くことにより、幅:20mm、高さ:9mmの矩形断面を持つ棒状の繊維強化プラスチック成形品を得た。この際、成形後の棒状部材の断面において、各強化繊維プラスチック層内に単一種の繊維が均一に分散されていた。
【0027】
この棒状の繊維強化プラスチック成形品を繊維の配向方向となす角が90°となるようにダイヤモンドカッターで切断した。切断面を見ると、ガラス繊維が含まれている繊維強化プラスチック層の樹脂色は白色となっていた。
【0028】
得られた棒状の繊維強化プラスチック成形品についてさらに長手方向に10〜20mmの長さに切断した成形品20の切断面を、リファインテック株式会社製の湿式自動ディスク研磨機リファイン・ポリッシャー,HV(型式:RPO−228KR)を使用して湿式研磨した。湿式研磨に用いる研磨紙としては、リファインテック株式会社製カーボマック・ペーパーの粒度Pが400のものを選択して、研磨紙を研磨用ディスクに貼り付けた。研磨紙が貼り付けられた研磨用ディスクを200rpmで回転させ切断面をディスクに30秒間押し当てることによって切断面を研磨した。
【0029】
この成形体の研磨した後の切断面の表面粗さをJIS B 0651(2001)に基づいて株式会社東京精密製の表面粗さ形状測定機“サーフコム”(商標登録)480Aを用いて測定したところ、算術平均粗さ(R)が0.217μmであった。
【0030】
この成形品における切断面の樹脂色は、ガラス繊維層を含めてほぼ均一な黒色顔料の樹脂色となっていることが確認出来た。
【0031】
(実施例2)
実施例1と同じ材料、成形法で得られた繊維強化プラスチック成形品20の切断面に、株式会社GSIクレオス販売の水溶性合成樹脂塗料Mr.スーパークリアー(光沢あり)を吹き付けた。この塗料を吹き付けた後の切断面の表面粗さをJISB 0651(2001)に基づいて測定したところ、算術平均粗さ(R)が0.201μmであった。この成形体における切断面の樹脂色は、ガラス繊維層を含めてほぼ均一な黒色顔料の樹脂色となっていることが確認出来た。
【0032】
(実施例3)
研磨紙をカーボマック・ペーパーの粒度Pが800のものを研磨用ディスクに貼り付けて研磨した以外は、実施例1と同様にして繊維強化プラスチック成形品を得た。得られた成形品の切断面の表面粗さを実施例1と同様の方法で測定したところ、算術平均粗さ(R)が0.14μmであった。この成形体における切断面の樹脂色は、ガラス繊維層を含めてほぼ均一な黒色顔料の樹脂色となっていることが確認出来た。
【0033】
(比較例1)
実施例1〜3のそれぞれの成形方法で得られた棒状の繊維強化プラスチック成形品について、さらに長手方向に10〜20mmの長さに切断した繊維強化プラスチック成形品20の切断面に対して、実施例1〜3いずれの表面処理方法も施さない繊維強化プラスチック成形品を得た。これらの切断面の表面粗さをJISB 0651(2001)に基づいて測定したところ、算術平均粗さ(R)が0.534μmであった。この成形体における切断面の樹脂色を観察すると、図5に示すように、ガラス繊維層の樹脂色が白色となり、炭素繊維層の黒色とのコントラストが大きい成形部材となった。
【0034】
(比較例2)
実施例1の成形方法で得られた繊維強化プラスチック成形品20の切断面を、実施例1ならびに実施例3で使用した研磨機と同一のものを使用し、粒度Pが220の研磨紙を研磨用ディスクに貼り付け、100rpmで回転させ切断面をディスクに300秒間押し当てて研磨した。研磨後の切断面の表面粗さをJISB 0651(2001)に基づいて実施例1と同様の表面粗さ測定をしたところ、算術平均粗さ(R)が0.48μmであった。この成形体における切断面の樹脂色を観察すると、図5に示すように、ガラス繊維層の樹脂色が白色となり、炭素繊維層の黒色とのコントラストが大きい成形部材となった。
【0035】
以上の実施例1〜3、比較例1〜2をまとめると表1のようになった。
【0036】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、自動車や飛行機の部材、産業用機械部品分野などにおいて使用されるガラス強化繊維が含まれる繊維強化プラスチックのうち、特に高い意匠性が求められる場合に幅広く利用される可能性がある。
【符号の説明】
【0038】
1 繊維強化プラスチック層
2 ガラス繊維強化プラスチック層
3 切断面
4 塗料
5 研磨加工した後の切断面
6 透光性を有する樹脂
20 繊維強化プラスチック成形品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともガラス繊維を強化繊維とし、マトリックス樹脂に顔料を含む繊維強化プラスチック成形品において、成形品の切断面における算術平均粗さ(Ra)が、0.30μm以下であることを特徴とする繊維強化プラスチック成形品。
【請求項2】
前記切断面を研磨加工していることを特徴とする請求項1に記載の繊維強化プラスチック成形品。
【請求項3】
前記研磨加工が湿式研磨であることを特徴とする請求項2に記載の繊維強化プラスチック成形品。
【請求項4】
前記切断面に透光性を有する樹脂を塗布することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の繊維強化プラスチック成形品。
【請求項5】
引抜成形品であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の繊維強化プラスチック成形品。
【請求項6】
少なくともガラス繊維を強化繊維とし、マトリックス樹脂に顔料を含む繊維強化プラスチック成形品の製造方法において、成形品の切断面を、算術平均粗さ(Ra)が0.30μm以下とすることを特徴とする繊維強化プラスチック成形品の製造方法。
【請求項7】
前記切断面を研磨加工することを特徴とする請求項6に記載の繊維強化プラスチック成形品の製造方法。
【請求項8】
前記研磨加工が湿式研磨であることを特徴とする請求項7に記載の繊維強化プラスチック成形品の製造方法。
【請求項9】
前記切断面に透光性を有する樹脂を塗布することを特徴とする請求項6〜8のいずれかに記載の繊維強化プラスチック成形品の製造方法。
【請求項10】
引抜成形法で成形されたことを特徴とする請求項6〜9のいずれかに記載の繊維強化プラスチック成形品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−162647(P2012−162647A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−23936(P2011−23936)
【出願日】平成23年2月7日(2011.2.7)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】