説明

置換ピリジルメチルビシクロカルボキサミド化合物

本発明は、式(I):
【化1】


(式中、AはNであり、AはCRであるか、又はAはCRであり、AはNであり;
、Y及びYは、それぞれ独立してCH又はNであり、Y及びYは、それぞれ独立してCR又はNであるが、ただし、Y、Y、Y、Y及びYの1個がNである場合、他はNでなく;R及びRは、それぞれ独立して水素、ハロゲン、(C−C)アルキル、ハロ(C−C)アルキル又はヒドロキシ(C−C)アルキル、であり;R及びRは、それぞれ独立して水素、ハロゲン、ヒドロキシ、(C−C)アルキル、ヒドロキシ(C−C)アルコキシ、(C−C)アルコキシ−(C−C)アルキル、(C−C)アルコキシ−(C−C)アルコキシ、ハロ(C−C)アルキル、(C−C)アルキルチオ、(C−C)アルキルスルフィニル又は(C−C)アルキルスルホニルであり、Rは、ハロゲン、(C−C)アルキル、(C−C)シクロアルキル、ハロ(C−C)アルキル、ヒドロキシ(C−C)アルキル、ハロ(C−C)アルコキシ、ヒドロキシ(C−C)アルコキシ、(C−C)アルコキシ−(C−C)アルキル、(C−C)アルコキシ−(C−C)アルコキシ、ハロ(C−C)アルキルスルホニル、ハロ(C−C)アルキルスルフィニル、ハロ(C−C)アルキルチオ、[(C−C)アルキル]NH−又は[(C−C)アルキル]N−であり;R、R及びRは、それぞれ独立して水素、ハロゲン、(C−C)アルキル、ヒドロキシ(C−C)アルキル又は(C−C)アルコキシである)の化合物、又は薬学的に許容されるその塩又は溶媒和物を提供する。これらの化合物は、哺乳動物において疼痛のようなVR1受容体の過剰活性化により引き起こされる病状の治療に有用である。本発明は、前記化合物を含む医薬組成物をも提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な置換ピリジルメチルビシクロカルボキサミド化合物及び治療におけるそれらの使用に関する。これらの化合物は、特にVR1(I型バニロイド)受容体のモジュレータとして有用であり、それ故、哺乳動物、特にヒトにおける疼痛、神経痛、神経障害、神経損傷、熱傷、偏頭痛、手根管症候群、線維筋痛、神経炎、坐骨神経痛、骨盤過敏症、膀胱疾患、炎症等を治療するのに有用である。本発明は、前記化合物を含む医薬組成物にも関する。
【背景技術】
【0002】
バニロイド受容体1(VR1)は、リガンド作動性非選択的カチオンチャンネルである。それは、一過性の受容体電位スーパーファミリの一員であると考えられている。VR1は、多数の疼痛刺激、例えば、侵害的熱、プロトン及びバニロイドを統合する多モード侵害受容器であると認識されている(European Journal of Physiology 451:151−159,2005)。VR1の主な分布は知覚(Aδ−及びC−)繊維にあり、これは、知覚神経節中に細胞体を有する双極ニューロンである。これらのニューロンの末梢繊維は、皮膚、粘膜及びほとんど全ての内臓器官に神経分布している。VR1が膀胱、腎臓、脳、膵臓及び種々の臓器に存在することも認識されている。VR1アゴニスト、例えば、カプサイシン又はレシニフェラトキシンを用いた多数の研究は、VR1陽性神経が、痛覚を含む種々の生理的応答に関与していると考えられることを示唆している(Clinical Therapeutics.13(3):338−395,1991,Journal of Pharmacology and Experimental Therapeutics 314:410−421,2005,and Neuroscience Letter 388:75−80,2005)。VR1の組織分布及び役割の両方に基づき、VR1アンタゴニストは良好な治療可能性を有するであろう。
【0003】
WO2005070929は、バニロイド受容体リガンドとしての複素環アミン誘導体を開示している。WO2005070885は、バニロイド受容体リガンドとして有用なアミン誘導体を開示している。WO2005003084は、VR1アンタゴニストとしての活性を有することが示される4−(メチルスルホニルアミノ)フェニル類似体について議論している。WO2004069792は、例えば、炎症性痛覚、灼熱痛、慢性閉塞性肺疾患及び変形性関節症の予防又は治療に有用なキノリンに由来するアミド誘導体を開示しており、これはバニロイド受容体1モジュレータである。WO2003080578は、疼痛及び/又は炎症が優勢である疾患及び病状の治療に用いられるバニロイド−1受容体モジュレータである、複素芳香族尿素誘導体を開示している。WO2003068749は、バニロイド受容体(VR1)のアンタゴニストとして有用なキノリン又はイソキノリンカルボキサミド誘導体を開示している。WO2003014064は、バニロイド受容体1アンタゴニストとして有用なアミド誘導体を開示している。WO2002100819は、例えば、疼痛、躁病及びアレルギー性鼻炎の治療のためのバニロイド受容体VR1アンタゴニストであるN−アリールフェニルアセトアミド誘導体を開示している。WO2006051378は、バニロイド受容体のモジュレータとしての種々のN−スルホニルアミノベンジル−2−フェノキシアミド誘導体を開示している。日本国特開平11−80107号公報は、抗骨粗鬆症薬として用いられる骨形成プロモーターとしてのアミド化合物を開示している。WO2005033079は、真菌感染症の治療に有用な複素環誘導体を開示している。WO03035621は、例えば、糖尿病、肥満症及び難聴の治療のためのプロテインキナーゼ及びホスファターゼ阻害剤としてのナフチルアミド化合物を開示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
全身投与によりVR1受容体と高い結合活性を有し、良好な代謝安定性を有する改善されたVR1選択的アンタゴニストが提供されることが望ましい。他の潜在的な利点には、低い毒性、良好な吸収、良好な溶解性、低いタンパク質結合親和性、低い薬物−薬物相互作用、HERGチャンネルにおける低い阻害活性、低いQT延長及び良好な代謝安定性が含まれる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
特定の置換カルボキサミド誘導体が、全身投与によって鎮痛作用を有する有力なVR1アンタゴニストであることがわかった。
【0006】
本発明は、式(I):
【0007】
【化1】

【0008】
(式中、AはNであり、AはCRであるか、又はAはCRであり、AはNであり;
、Y及びYは、それぞれ独立してCH又はNであり、Y及びYは、それぞれ独立してCR又はNであるが、ただし、Y、Y、Y、Y及びYの1個がNである場合、他はNでなく;
及びRは、それぞれ独立して水素、ハロゲン、(C−C)アルキル、ハロ(C−C)アルキル又はヒドロキシ(C−C)アルキルであり;
及びRは、それぞれ独立して水素、ハロゲン、ヒドロキシ、(C−C)アルキル、ヒドロキシ(C−C)アルコキシ、(C−C)アルコキシ−(C−C)アルキル、(C−C)アルコキシ−(C−C)アルコキシ、ハロ(C−C)アルキル、(C−C)アルキルチオ、(C−C)アルキルスルフィニル又は(C−C)アルキルスルホニルであり、
は、ハロゲン、(C−C)アルキル、(C−C)シクロアルキル、ハロ(C−C)アルキル、ヒドロキシ(C−C)アルキル、ハロ(C−C)アルコキシ、ヒドロキシ(C−C)アルコキシ、(C−C)アルコキシ−(C−C)アルキル、(C−C)アルコキシ−(C−C)アルコキシ、ハロ(C−C)アルキルスルホニル、ハロ(C−C)アルキルスルフィニル、ハロ(C−C)アルキルチオ、[(C−C)アルキル]NH−又は[(C−C)アルキル]N−であり;
、R及びRは、それぞれ独立して水素、ハロゲン、(C−C)アルキル、ヒドロキシ(C−C)アルキル又は(C−C)アルコキシである)の化合物、又は薬学的に許容されるその塩又は溶媒和物を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書で用いられる場合、「ハロゲン」なる用語は、フルオロ、クロロ、ブロモ又はヨードを意味し、好ましくはフルオロ又はクロロである。
【0010】
本明細書で用いられる場合、「(C−C)アルキル」及び「(C−C)アルキル」なる用語は、必要数の炭素原子を有する、直鎖又は分岐鎖の飽和基を意味し、メチル、エチル、n−プロピル、イソ−プロピル、n−ブチル、イソ−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル及び2−メチルブチル基が含まれるが、これらに限定されない。好ましい置換基は、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、tert−ブチル及び2−メチルブチル基である。
【0011】
本明細書で用いられる場合、「(C−C)シクロアルキル」なる用語は、必要数の炭素原子を有する、非芳香族の飽和又は不飽和炭化水素環を意味し、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル及びシクロヘキシル基が含まれるが、これらに限定されない。
【0012】
本明細書で用いられる場合、「(C−C)アルコキシ」なる用語は、(C−C)アルキル基が前記に定義されるような(C−C)アルキル−O−を意味し、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソ−プロポキシ、n−ブトキシ、イソ−ブトキシ、sec−ブトキシ及びtert−ブトキシが含まれるが、これらに限定されない。好ましい置換基は、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、n−ブトキシ及びtert−ブトキシである。
【0013】
本明細書で用いられる場合、「ヒドロキシ(C−C)アルキル」なる用語は、少なくとも1個のヒドロキシ基で置換されている前記に定義されるような(C−C)アルキル基を意味し、ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、ヒドロキシn−プロピル、ヒドロキシイソ−プロピル(例えば、1−ヒドロキシ−1,1−ジメチルメチル)、ヒドロキシn−ブチル、ヒドロキシイソ−ブチル、ヒドロキシsec−ブチル及びヒドロキシtert−ブチルが含まれるが、これらに限定されない。好ましい置換基は、ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、ヒドロキシn−プロピル、ヒドロキシイソ−プロピル(例えば、1−ヒドロキシ−1,1−ジメチルメチル)、ヒドロキシn−ブチル及びヒドロキシtert−ブチルである。
【0014】
本明細書で用いられる場合、「ヒドロキシ(C−C)アルコキシ」なる用語は、ヒドロキシ基により置換されている、前記に定義されるような(C−C)アルコキシ基を意味し、ヒドロキシメトキシ、ヒドロキシエトキシ、ヒドロキシn−プロポキシ、ヒドロキシイソ−プロポキシ、ヒドロキシn−ブトキシ、ヒドロキシイソ−ブトキシ、ヒドロキシsec−ブトキシ及びヒドロキシtert−ブトキシが含まれるが、これらに限定されない。好ましいヒドロキシアルコキシ基は、ヒドロキシメトキシ、ヒドロキシエトキシ、ヒドロキシn−プロポキシ及びヒドロキシn−ブトキシである。
【0015】
本明細書で用いられる場合、「(C−C)アルコキシ−(C−C)アルキル」なる用語は、前記に定義されるような(C−C)アルコキシによって置換されている、前記に定義されるような(C−C)アルキル基を意味する。
【0016】
本明細書で用いられる場合、「(C−C)アルコキシ−(C−C)アルコキシ」なる用語は、前記に定義されるような(C−C)アルコキシによって置換されている、前記に定義されるような(C−C)アルキル基を意味する。好ましい置換基は、メトキシメトキシ、メトキシエトキシ又はエトキシエトキシ基である。
【0017】
本明細書で用いられる場合、「ヒドロキシ(C−C)アルコキシ−(C−C)アルキル」なる用語は、ヒドロキシ(C−C)アルコキシ基によって置換されている前記に定義されるような(C−C)アルキル基、又は前記に定義されるようなヒドロキシ(C−C)アルコキシ基によって置換されている前記に定義されるような置換基を意味する。
【0018】
本明細書で用いられる場合、「ハロ(C−C)アルキル」及び「ハロ(C−C)アルキル」なる用語は、前記に定義されるような1個以上のハロゲン原子によって置換されている(C−C)アルキル又は(C−C)アルキル基を意味し、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、2−フルオロエチル、2,2−ジフルオロエチル、2,2,2−トリフルオロエチル、2,2,2−トリフルオロ−1,1−ジメチルエチル、2,2,2−トリクロロエチル、3−フルオロプロピル、4−フルオロブチル、クロロメチル、トリクロロメチル、ヨードメチル、ブロモメチル及び4,4,4−トリフルオロ−3−メチル基が含まれるが、これらに限定されない。好ましい置換基は、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、2−フルオロエチル、2,2−ジフルオロエチル、2,2,2−トリフルオロエチル及び2,2,2−トリフルオロ−1,1−ジメチルエチル基である。
【0019】
本明細書で用いられる場合、「ハロ(C−C)アルコキシ」なる用語は、前記に定義されるような1個以上のハロゲン原子によって置換されている(C−C)アルキル−O−を意味し、フルオロメトキシ、ジフルオロメトキシ、トリフルオロメトキシ、2−フルオロエトキシ、2,2−ジフルオロエトキシ、2,2,2−トリフルオロエトキシ、2,2,2−トリフルオロ−1,1−ジメチルエトキシ、2,2,2−トリクロロエトキシ、3−フルオロプロポキシ、4−フルオロブトキシ、クロロメトキシ、トリクロロメトキシ、ヨードメトキシ、ブロモメトキシ及び4,4,4−トリフルオロ−3−メチルブトキシ基が含まれるが、これらに限定されない。好ましいハロ(C−C)アルキル−O−又はハロ(C−C)アルキル−O−基は、フルオロメトキシ、ジフルオロメトキシ、トリフルオロメトキシ、2−フルオロエトキシ、2,2−ジフルオロエトキシ、2,2,2−トリフルオロエトキシ及び2,2,2−トリフルオロ−1,1−ジメチルエトキシ基である。
【0020】
本明細書で用いられる場合、「(C−C)アルキルチオ」なる用語は、(C−C)アルキル基が前記に定義される、(C−C)アルキル−S−を意味し、メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ及びブチルチオが含まれるが、これらに限定されない。好ましい置換基はメチルチオ基である。
【0021】
本明細書で用いられる場合、「(C−C)アルキルスルフィニル」なる用語は、(C−C)アルキル基が前記に定義される(C−C)アルキル−SO−を意味し、メチルスルフィニル、エチルスルフィニル、プロピルスルフィニル及びブチルスルフィニルが含まれるが、これらに限定されない。好ましい置換基はメチルスルフィニル基である。
【0022】
本明細書で用いられる場合、「(C−C)アルキルスルホニル」なる用語は、(C−C)アルキル基が前記に定義される(C−C)アルキル−SO−を意味し、メチルスルホニル、エチルスルホニル、プロピルスルホニル及びブチルスルホニルが含まれるが、これらに限定されない。好ましい置換基は、メチルスルホニル基である。
【0023】
本明細書で用いられる場合、「ハロ(C−C)アルキルチオ」なる用語は、前記に定義されるような1個以上のハロゲン原子によって置換されている(C−C)アルキル−S−を意味し、フルオロメチルチオ、ジフルオロメチルチオ、トリフルオロメチルチオ、2−フルオロエチルチオ、2,2−ジフルオロエチルチオ、2,2,2−トリフルオロエチルチオ、2,2,2−トリフルオロ−1,1−ジメチルエチルチオ、2,2,2−トリクロロエチルチオ、3−フルオロプロピルチオ、4−フルオロブチルチオ、クロロメチルチオ、トリクロロメチルチオ、ヨードメチルチオ、ブロモメチルチオ及び4,4,4−トリフルオロ−3−メチルブチルチオ基が含まれるが、これらに限定されない。好ましい置換基は、フルオロメチルチオ、ジフルオロメチルチオ、トリフルオロメチルチオ、2−フルオロエチルチオ、2,2−ジフルオロエチルチオ、2,2,2−トリフルオロエチルチオ及び2,2,2−トリフルオロ−1,1−ジメチルエチルチオ基である。
【0024】
本明細書で用いられる場合、「ハロ(C−C)アルキルスルフィニル」なる用語は、前記に定義されるような1個以上のハロゲン原子によって置換されている(C−C)アルキル−SO−を意味し、フルオロメチルスルフィニル、ジフルオロメチルスルフィニル、トリフルオロメチルスルフィニル、2−フルオロエチルスルフィニル、2,2−ジフルオロエチルスルフィニル、2,2,2−トリフルオロエチルスルフィニル、2,2,2−トリフルオロ−1,1−ジメチルエチルスルフィニル、2,2,2−トリクロロエチルスルフィニル、3−フルオロプロピルスルフィニル、4−フルオロブチルスルフィニル、クロロメチルスルフィニル、トリクロロメチルスルフィニル、ヨードメチルスルフィニル、ブロモメチルスルフィニル及び4,4,4−トリフルオロ−3−メチルブチルスルフィニル基が含まれるが、これらに限定されない。好ましい置換基は、フルオロメチルスルフィニル、ジフルオロメチルスルフィニル、トリフルオロメチルスルフィニル、2−フルオロメチルスルフィニル、2,2−ジフルオロメチルスルフィニル、2,2,2−トリフルオロエチルスルフィニル及び2,2,2−トリフルオロ−1,1−ジメチルエチルスルフィニル基である。
【0025】
本明細書で用いられる場合、「ハロ(C−C)アルキルスルホニル」なる用語は、前記に定義されるような1個以上のハロゲン原子によって置換されている(C−C)アルキル−SO−を意味し、フルオロメチルスルホニル、ジフルオロメチルスルホニル、トリフルオロメチルスルホニル、2−フルオロエチルスルホニル、2,2−ジフルオロエチルスルホニル、2,2,2−トリフルオロエチルスルホニル、2,2,2−トリフルオロ−1,1−ジメチルエチルスルホニル、2,2,2−トリクロロエチルスルホニル、3−フルオロプロピルスルホニル、4−フルオロブチルスルホニル、クロロメチルスルホニル、トリクロロメチルスルホニル、ヨードメチルスルホニル、ブロモメチルスルホニル及び4,4,4−トリフルオロ−3−メチルブチルスルホニル基が含まれるが、これらに限定されない。好ましい置換基は、フルオロメチルスルホニル、ジフルオロメチルスルホニル、トリフルオロメチルスルホニル、2−フルオロエチルスルホニル、2,2−ジフルオロエチルスルホニル、2,2,2−トリフルオロエチルスルホニル及び2,2,2−トリフルオロ−1,1−ジメチルエチルスルホニル基である。
【0026】
本明細書で用いられる場合、「[(C−C)アルキル]NH−」なる用語は、アルキルが前記に定義されるアルキル−NH−を意味し、メチルアミノ、エチルアミノ、n−プロピルアミノ、イソ−プロピルアミノ、n−ブチルアミノ、イソ−ブチルアミノ、sec−ブチルアミノ、tert−ブチルアミノが含まれるが、これらに限定されない。好ましいアルキルアミノ基は、メチルアミノ、エチルアミノ、n−プロピルアミノ及びn−ブチルアミノである。
【0027】
本明細書で用いられる場合、「[(C−C)アルキル]N−」なる用語は、アルキルが前記に定義されるジアルキル−N−を意味し、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、メチルエチルアミノ、ジn−プロピルアミノ、メチルn−プロピルアミノ、エチルn−プロピルアミノ、ジイソ−プロピルアミノ、ジn−ブチルアミノ、メチルn−ブチルアミノ、ジイソ−ブチルアミノ、ジsec−ブチルアミノ、ジtert−ブチルアミノが含まれるが、これらに限定されない。好ましいジアルキルアミノ基は、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジn−プロピルアミノ、ジn−ブチルアミノである。
【0028】
式(I)の好ましい構造には以下のものが含まれる。好ましくは、Y、Y及びYがCHであり、Y及びYがCRであり;YがNであり、Y及びYがCHであり、Y及びYがCRであり;YがNであり、Y及びYがCHであり、Y及びYがCRであり;又はYがNであり、Y、Y及びYがCHであり、YがCRである。
【0029】
好ましいR及びRは、それぞれ独立して水素、(C−C)アルキル、ハロ(C−C)アルキル又はヒドロキシ(C−C)アルキルであり;更に好ましくは水素、(C−C)アルキル又はヒドロキシ(C−C)アルキルであり;更に好ましくは水素、メチル、エチル、プロピル、ヒドロキシメチル、トリフルオロメチル又はヒドロキシエチルであり;最も好ましくは水素、メチル、トリフルオロメチル又はエチルである。
【0030】
好ましいR及びRは、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、(C−C)アルキル、ヒドロキシ(C−C)アルコキシ又はハロ(C−C)アルキルであり;更に好ましくは、水素、ハロゲン又は(C−C)アルキルであり;更に好ましくは、水素又はハロゲンであり;更に好ましくは、水素、フルオロ又はクロロであり;最も好ましくは水素である。
【0031】
好ましいRは、ハロゲン、(C−C)アルキル、(C−C)シクロアルキル、ハロ(C−C)アルキル、ヒドロキシ(C−C)アルキル、ハロ(C−C)アルコキシ、ハロ(C−C)アルキルスルホニル、ハロ(C−C)アルキルスルフィニル又はハロ(C−C)アルキルチオであり;更に好ましくは、ハロゲン、(C−C)アルキル、(C−C)シクロアルキル、ハロ(C−C)アルキル、ヒドロキシ(C−C)アルキル、ハロ(C−C)アルコキシ、ハロ(C−C)アルキルスルホニル又はハロ(C−C)アルキルスルフィニルであり;更に好ましくは、ハロゲン、(C−C)アルキル、ヒドロキシ(C−C)アルキル又はハロ(C−C)アルキルであり;更に好ましくは、(C−C)アルキル又はハロ(C−C)アルキルであり;更に好ましくはイソ−プロピル、t−ブチル、トリフルオロメチル又は2,2,2−トリフルオロ−1,1−ジメチルエチルであり、最も好ましくは、t−ブチル、トリフルオロメチル又は2,2,2−トリフルオロ−1,1−ジメチルエチルである。
【0032】
好ましいR、R及びRは、それぞれ独立して水素、ハロゲン、メチル、エチル、n−プロピル、イソ−プロピル、n−ブチル、t−ブチル、メトキシ、エトキシ、ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル又はヒドロキシイソ−プロピルであり;更に好ましくは、水素、ハロゲン、メチル、エチル、メトキシ、エトキシ、ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、1,2−ジヒドロキシエチル又はヒドロキシイソ−プロピル(例えば、1−ヒドロキシ1,1−ジメチルメチル)であり;最も好ましくは、水素、フルオロ、クロロ、メチル、メトキシ又はヒドロキシメチルである。
【0033】
本発明の好ましい化合物には、式(I)中の各変数が、各変数についての好ましい群から選択されるものが含まれる。
【0034】
本発明の特に好ましい化合物は、以下の実施例の項に挙げられているもの、並びに薬学的に許容されるその塩及び溶媒和物である。
【0035】
VR1アンタゴニストである式(I)の化合物は、様々な範囲の障害の治療において、特に哺乳動物、特にヒトにおける、急性脳虚血、疼痛、慢性疼痛、急性疼痛、侵害受容性疼痛、神経障害性疼痛、炎症性疼痛、ヘルペス後神経痛、神経障害、神経痛、糖尿病性神経障害、HIV関連神経障害、神経損傷、リウマチ様関節炎、骨関節炎疼痛、熱傷、背痛、内臓痛、癌性疼痛、歯痛、頭痛、偏頭痛、手根管症候群、線維筋痛、神経炎、坐骨神経痛、骨盤過敏症、骨盤痛、生理痛;失禁、排尿障害、腎仙痛及び膀胱炎のような膀胱疾患;熱傷、リウマチ様関節炎及び変形性関節症のような炎症;脳卒中、脳卒中後の疼痛及び多発性硬化症のような神経変性疾患;喘息、咳、慢性閉塞性肺疾患(COPD)及び気管支収縮のような肺疾患;胃食道逆流性疾患(GERD)、嚥下障害、潰瘍、過敏性腸症候群(IBS)、炎症性腸疾患(IBD)、大腸炎及びクローン病のような胃腸病;脳血管虚血のような虚血;又は癌化学療法に誘発される嘔吐のような嘔吐及び肥満症の治療に有用である。疼痛、特に神経障害性疼痛の治療に好ましく用いられる。
【0036】
生理的疼痛は、外部環境からの潜在的に有害な刺激による危険を警告するように設計されている重要な防御機構である。この系は、一次知覚性ニューロンの特定のセットを介して作動し、末梢の伝達メカニズムを介して有害な刺激により活性化される(総説については、Millan,1999,Prog.Neurobiol.,57,1−164を参照されたい)。これらの感覚繊維は侵害受容器として知られており、伝達速度の遅い特徴的な小さな直径の軸索である。侵害受容器は、有害な刺激の強度、持続時間及び質を、並びに組織分布的に体系化された脊髄に対する照射によって、刺激の位置をコードする。侵害受容器は侵害神経線維に見出され、それには2種の主要なタイプ、A−デルタ繊維(脊髄化)及びC繊維(非脊髄化)がある。侵害受容器のインプットにより生成した活性は、後角における複雑な処理の後に、直接又は脳幹中継核を介して、基底腹側視床へ、次いで皮質へ伝達され、そこで痛覚が生成される。
【0037】
通常、疼痛は急性又は慢性に分類することができる。急性疼痛は突然に開始し、期間が短い(通常、12週間以下)。これは、通常、特定の外傷のような特定の原因に関連しており、激しく重症である場合がある。これは、手術、歯科的処理、損傷又はねんざから生じる特定の外傷の後に生じ得る疼痛の種類である。急性疼痛は、通常、あらゆる持続性の心理的応答をもたらさない。対照的に、慢性疼痛は長期の疼痛であり、通常、3ヶ月よりも長く持続し、顕著な心理的及び感情的な問題をもたらす。慢性疼痛の一般的な具体例は、神経障害性疼痛(例えば、疼痛性糖尿病性神経障害、ヘルペス後神経痛)、手根管症候群、背痛、頭痛、癌性疼痛、関節痛及び慢性手術後疼痛である。
【0038】
疾患又は外傷により、身体組織に相当な損傷が生じた場合、侵害受容器活性の特性が変化し、末梢において、損傷の周辺で局所的に、及び侵害受容器が終結する部位で中枢的に感作がある。これらの効果が疼痛の感覚の増強をもたらす。急性疼痛においては、これらのメカニズムが有用であり、修復過程をより良好に開始させ得る防御行動が促進される。通常の予想は、損傷が治癒すると、感覚が正常に戻ることであろう。しかし、多くの慢性疼痛状態においては、治癒過程よりも知覚過敏が長く持続し、神経系の損傷による場合がある。この損傷は、適応不全及び異常な活性を伴う感覚神経線維における異常をもたらす場合がある(Woolf & Salter,2000,Science,288,1765−1768)。
【0039】
不快かつ異常な感覚が患者の症状を特徴づける場合、臨床的な疼痛が存在する。患者は完全に不均一である傾向があり、種々の疼痛症状をが存在し得る。このような症状には、1)鈍いか、灼熱感があり、又は刺すような自発的疼痛;2)有害な刺激に対する誇張に表現される疼痛(痛覚過敏);及び3)正常かつ無害な刺激により生じる疼痛(allodynia− Meyer et al.,1994,Textbook of Pain,13−44)が含まれる。さまざまな形の急性及び慢性疼痛を患っている患者は同じ症状を示し得るが、基礎となるメカニズムは異なっており、それ故、異なる治療方法が必要である。従って、疼痛は、侵害受容性、炎症及び神経障害性疼痛を含む、異なる病態生理学に従い、いくつかの異なるサブタイプに更に分類することができる。
【0040】
侵害受容性疼痛は、組織損傷により、又は損傷を引き起こし得る強烈な刺激により誘発される。疼痛求心性は、損傷部位における侵害受容器による刺激の導入によって活性化され、その末端のレベルで脊髄中の神経細胞を活性化する。次いで、これは、脊髄路から疼痛を知覚する脳へ中継される(Meyer et al.,1994,Textbook of Pain,13−44)。侵害受容器の活性化は、2種のタイプの求心性神経線維を活性化する。有髄のA−デルタ繊維は迅速に伝達され、強く、刺すような疼痛感覚の原因となり、無髄のC繊維は遅い速度で伝達し、鈍いか、うずく疼痛をもたらす。中程度から重度の急性侵害受容性疼痛は、中枢神経系外傷、損傷/ねんざ、熱傷、心筋梗塞及び急性膵炎、手術後疼痛(任意のタイプの外科的処置の後の疼痛)、外傷後疼痛、腎仙痛、癌性疼痛及び背痛からの疼痛の顕著な痛みの特徴である。癌性疼痛は、腫瘍関連疼痛(例えば、骨痛、頭痛、顔面痛又は内臓痛)又は癌治療に付随する疼痛(例えば、化学療法後症候群、慢性手術後疼痛症候群又は放射線後症候群)のような慢性疼痛であり得る。癌性疼痛は、化学療法、免疫療法、ホルモン療法又は放射線療法に応答しても起こり得る。背痛は、椎間板ヘルニア又は椎間板の破断、又は腰椎椎間関節、仙腸関節、傍脊柱筋群又は後縦靱帯の異常によるものであるかもしれない。背痛は自然に消散することもあるが、何人かの患者においては、少なくとも12週間続き、特に衰弱性であり得る慢性症状になる。
【0041】
神経障害性疼痛は、現在では、神経系の初期病変又は機能不全によって開始又は誘発される疼痛と定義されている。神経損傷は、外傷及び疾患により引き起こされ得、それ故、「神経障害疼痛」なる用語は、種々の原因を伴う多くの障害を包含する。これらには、末梢神経障害、糖尿病性神経障害、帯状疱疹後神経痛、三叉神経痛、背痛、癌神経障害、HIV神経障害、幻肢痛、手根管症候群、中枢発作後疼痛及び慢性アルコール中毒に伴う疼痛、甲状腺機能減退症、尿毒症、多発性硬化症、脊髄損傷、パーキンソン病、てんかん及びビタミン欠乏が含まれるが、これらに限定されない。神経障害性疼痛は保護的役割を果たさないので病的である。それは、元の原因が消滅した後に存在し、通常は数年間続き、患者の生活の質を顕著に低下させる場合がある(Woolf and Mannion,1999,Lancet,353,1959−1964)。神経障害性疼痛の症状は、同じ疾患を患っている患者の間でさえも不均一である場合があるので、治療することが困難である(Woolf & Decosterd,1999,Pain Supp.,6,S141−S147;Woolf and Mannion,1999,Lancet,353,1959−1964)。これらには、持続し得る自発性疼痛、痛覚過敏(有害な刺激に対する高い感受性)及び異痛症(通常の無害な刺激に対する感受性)のような発作性又は異常な誘発疼痛が含まれる。
【0042】
炎症の過程は、組織損傷又は外来物質の存在に応答して活性化される、複雑な一連の生化学的及び細胞事象であり、腫脹及び疼痛をもたらす(Levine and Taiwo,1994,Textbook of Pain,45−56)。関節痛は、最も一般的な炎症性疼痛である。リウマチ性疾患は、先進国において最も一般的な慢性炎症性疾患の1種であり、リウマチ様関節炎は、身体障害の一般的な原因である。リウマチ様関節炎の正確な原因は未知であるが、現在の仮説は、遺伝的及び微生物学的因子の両方が重要であることを示唆している(Grennan & Jayson,1994,Textbook of Pain,397−407)。ほぼ1600万人のアメリカ人が症候性変形性関節炎(OA)又は変性性関節疾患を患っていると推定されており、そのうちのほとんどが60歳を超えており、これは、人口の年齢が上昇すると、4,000万人に増加すると予測されており、多大な公衆衛生の問題になる(Houge & Mersfelder,2002,Ann Pharmacother.,36,679−686;McCarthy et al.,1994,Textbook of Pain,387−39)。変形性関節症患者のほとんどが、随伴疼痛のために医学的な注意を求めている。関節炎は、心理的及び生理的機能に顕著な影響を及ぼし、後半生における身体障害の主な原因であることが知られている。硬直性脊椎炎も、脊椎や仙腸関節の関節炎を引き起こすリウマチ性疾患であもある。それは生涯を通して起こる背痛の間欠性のエピソードから、脊椎末梢関節及び他の身体器官を攻撃する重度の慢性疾患まで変動する。
【0043】
他のタイプの炎症性疼痛は、炎症性腸疾患(IBD)を伴う疼痛を含む内臓痛である。内臓痛は、腹腔の器官を包含する内臓と関連する痛みである。これらの器官には、性器、脾臓及び消化器系の一部が含まれる。内臓に関連数疼痛は、消化器系内臓痛及び非内臓系疼痛に分類することができる。疼痛の原因となる、一般的に遭遇する胃腸(GI)障害には、機能性腸障害(FBD)及び炎症性腸疾患(IBD)が含まれる。これらのGI障害には、種々の疾患状態が含まれ、FBDに関しては、胃食道逆流、消化浮流、過敏性腸症候群(IBS)及び機能性腹痛症候群(FAPS)を含み、更にIBDに関しては、クローン病、回腸炎及び潰瘍を含み、現在では中程度にしか制御されておらず、それら全ては定期的に内臓痛をもたらす。他のタイプの内臓痛には、月経困難症、膀胱炎及び膵炎並びに骨盤痛に関した痛みが含まれる。
【0044】
いつくかのタイプの疼痛は複数の原因を有するので、1つの分野よりも多くに分類することができ、例えば、背痛及び癌性疼痛は、侵害性受容器及び神経障害性の両方の成分を有することを記述すべきである。
【0045】
他のタイプの疼痛には:
・筋肉痛、線維筋痛、脊椎炎、血清陰性(非リウマチ性)関節症、非関節リウマチ、ジストロフィン異常症、糖原分解、多発性筋炎及び化膿性筋炎を含む筋骨格障害から生じる疼痛;
・狭心症、心筋梗塞、僧帽弁狭窄症、心膜炎、レーノー現象、浮腫性硬化症及び骨格筋虚血により起こる疼痛を含む心臓及び血管疼痛;
・偏頭痛(前兆を伴う偏頭痛及び伴わない偏頭痛を含む)、群発性頭痛、緊張性頭痛混合頭痛及び血管障害を伴う頭痛のような頭部疼痛;並びに
・歯痛、耳痛、口腔灼熱症候群及び側頭下顎筋筋膜痛を含む口腔顔面痛が含まれる。
【0046】
本発明は、式(I)の化合物、又は薬学的に許容されるその塩又は溶媒和物を、薬学的に許容される賦形剤と一緒に含む医薬組成物を提供する。この組成物は、好ましくは、前記に定義した病状の治療に有用である。
【0047】
本発明は、更に、薬物として用いるための、式(I)の化合物、又は薬学的に許容されるその塩又は溶媒和物を提供する。
【0048】
本発明は、更に、VR1アンタゴニストを必要とする障害の治療、好ましくは疼痛の治療に用いるための、式(I)の化合物、又は薬学的に許容されるその塩又は溶媒和物を提供する。
【0049】
更に、本発明は、哺乳動物、好ましくはヒトにおける前記に定義される病状の治療方法であって、前記哺乳動物に、治療に有効な量の式(I)の化合物、又は薬学的に許容されるその塩、溶媒和物を投与することを含む方法を提供する。好ましくは、前記病状は疼痛である。
【0050】
更に、本発明は、前記に定義される病状の治療のための薬剤の製造における、式(I)の化合物、又は薬学的に許容されるその塩、溶媒和物の使用を提供する。好ましくは、前記病状は疼痛である。
【0051】
更に、本発明は、式(I)の化合物、又は薬学的に許容されるその塩、溶媒和物と、他の薬学的に活性な物質との組み合わせを提供する。
【0052】
本明細書において、特に「一般的合成」及び「実施例」において、次の略語を用いることができる:
BEP 2−ブロモ−1−エチルピリジニウムテトラフルオロボレート
BOP ベンゾトリアゾール−1−イルオキシ−トリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート
CDI 2−クロロ−1,3−ジメチルイミダゾリニウムクロライド
DCC ジシクロヘキシルカルボジイミド
DCM ジクロロメタン
DME 1,2−ジメトキシエタン、ジメトキシエタン
DMF N,N−ジメチルホルムアミド
DMSO ジメチルスルホキシド
EDC 1−エチル−3−(3’−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩化水素
EtO ジエチルエーテル
EtOAc 酢酸エチル
EtOH エタノール
HBTU 2−(1H−ベンゼントリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート
HOBt 1−ヒドロキシベンゾトリアゾール
Me メチル
MeOH メタノール
NMP N−メチル−2−ピロリドン
THF テトラヒドロフラン
TFA トリフルオロ酢酸
【0053】
【化2】

【0054】
これは、式(I)の化合物の製造を説明する。
【0055】
工程1A: この工程においては、不活性溶媒中、カップリング剤の存在下又は非存在下に式(II)のアミン化合物を式(III)の酸化合物とカップリング反応させることにより、式(I)のアミド化合物を製造することができる。適切なカップリング剤は、ペプチド合成において通常に用いられるものであり、例えば、ジイミド類(例えばDCC、EDC、2−エトキシ−N−エトキシカルボニル−1,2−ジヒドロキノリン、BEP、CDI、BOP、ジエチルアゾジカルボキシレート−トリフェニルホスフィン、ジエチルシアノホスフェート、アジ化ジエチルホスホリル、ヨウ化2−クロロ−1−メチルピリジニウム、N,N’−カルボニルジイミダゾール、ベンゾトリアゾール−1−イルジエチルホスフェート、クロロギ酸エチル又はクロロギ酸イソブチル)である。反応は、HOBt、N,N−ジイソプロピルエチルアミン、N−メチルモルホリン又はトリエチルアミンのような塩基の存在下に実施することができる。式(I)のアミド化合物は、塩化オキサリル、オキシ塩化リン又は塩化チオニルのようなハロゲン化剤との反応により得ることができるアシルハロゲン化物を介して形成することができる。反応は、通常、好ましくは、溶媒の存在下に実施する。関与する反応又は試薬に有害な影響を示さず、少なくともある程度は試薬を溶解することができれば、用いられる溶媒の性質には、特に制限はない。適切な溶媒の具体例には、アセトン;ニトロメタン;DMF;NMP;スルホラン;DMSO;2−ブタノン;アセトニトリル;DCM、ジクロロエタン又はクロロホルムのようなハロゲン化炭化水素;及びTHF又は1,4−ジオキサンのようなエーテルが含まれる。反応は、広範囲の温度で実施することができ、正確な反応温度は、本発明では重要でない。好ましい反応温度は、溶媒、並びに用いられる出発原料又は試薬の性質等の因子によって決まるであろう。しかし、我々は、一般に、−20℃〜100℃、更に好ましくは約0℃〜60℃の温度で反応を実施すると都合がよいことを見出した。反応に必要な時間は、多くの因子、特に、反応温度並びに用いられる試薬及び溶媒の性質によって幅広く変動してもよい。しかし、前記の好ましい条件下に反応を実施すると、5分〜1週間、更に好ましくは30分〜24時間で通常は十分であろう。
【0056】
【化3】

【0057】
がメチルである場合、式(II)の化合物は式(IV)の化合物から製造することができる。これは、式(II)の化合物の製造を説明する。
【0058】
工程2A: 前記式において、溶媒中、遷移金属触媒及び添加剤の存在下に、塩基性条件下、式(IV)の化合物のカップリング反応により、式(V)の化合物を製造することができる。適切な溶媒の具体例には、水のようなプロトン性溶媒、MeOH又はEtOHのようなアルコール類、並びにTHF、1,4−ジオキサン、DMF又はアセトニトリルと混合したプロトン性溶媒としての水又はアルコールの共溶媒が含まれる。この反応は、適切な触媒の存在下に実施することができる。同様に、用いられる触媒の性質には特に制限はなく、本明細書においては、このタイプの反応に通常に用いられる任意の触媒を同様に用いることができる。このような触媒の具体例には、テトラキス(トリフェニルホスフィン)−パラジウム、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)クロライド、銅(0)、酢酸銅(I)、臭化銅(I)、塩化銅(I)、ヨウ化銅(I)、酸化銅(I)、トリフルオロメタンスルホン酸銅(II)、酢酸銅(II)、臭化銅(II)、塩化銅(II)、ヨウ化銅(II)、酸化銅(II)、トリフルオロメタンスルホン酸銅(II)、酢酸パラジウム(II)、塩化パラジウム(II)、ビスアセトニトリルジクロロパラジウム(0)、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)又は[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)ジクロライドが含まれる。好ましい触媒は、テトラキス(トリフェニルホスフィン)−パラジウム、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)クロライド、酢酸パラジウム(II)、塩化パラジウム(II)、ビスアセトニトリルジクロロパラジウム(0)、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)又は[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)ジクロライドである。この反応は、適切な添加剤の存在下に実施することができる。このような添加剤の具体例には、トリフェニルホスフィン、トリ−tert−ブチルホスフィン、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン、トリ−2−フリルホスフィン、トリ−o−トリルホスフィン、2−(ジクロロヘキシルホスフィノ)ビフェニル又はトリフェニルアルシンが含まれる。この反応は、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム又は炭酸セシウムのような塩基の存在下に実施することができる。反応は、0℃〜200℃、更に好ましくは20℃〜120℃の温度で実施することができる。反応時間は、一般に、5分〜48時間、更に好ましくは30分〜24時間が通常に十分であろう。
【0059】
工程2B: この工程においては、脱水剤及び/又はHCl−MeOH及び/又はルイス酸の存在下に、式(V)の化合物を式(VI)のアミンとカップリング反応させることにより、式(VII)の化合物を製造することができる。好ましい脱水剤には、硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム又はギ酸メチルが含まれる。適切な溶媒の具体例には、THF;1,4−ジオキサン;DMF;アセトニトリル;MeOH又はEtOHのようなアルコール類;DCM、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム又は四塩化炭素のようなハロゲン化炭化水素;又は酢酸が含まれる。反応温度は、一般に0〜200℃の範囲であり、好ましくは100℃〜140℃の範囲である。反応時間は、一般に、1分〜1日であり、好ましくは5分〜1時間である。必要に応じて、反応にマイクロ波条件を適用する。
【0060】
工程2C: この工程においては、還元剤を用いて、式(VII)の化合物の還元により、式(VIII)の化合物を製造することができる。この反応は、THF及びジエチルエーテルから選択される不活性溶媒中、ジボラン、ボラン−硫化メチル錯体、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素リチウム、水素化ホウ素ナトリウム又は水素化アルミニウムリチウムのような適切な還元剤の存在下に実施することができる。反応温度は、一般に、−100〜250℃の範囲であり、好ましくは0℃〜還流温度の範囲であるが、必要に応じて、より低い温度又はより高い温度を用いることができる。反応時間は、一般に、1分〜1日であり、好ましくは20分〜5時間であるが、必要に応じて、より短い時間又はより長い時間を用いることができる。更に、還元を、水素雰囲気下、ラネーニッケル触媒のような金属触媒の存在下、ヒドラジン、パラジウム触媒又は白金触媒の存在下又は非存在下のような、公知の水素化条件下で実施することもできる。この反応は、塩化水素の存在下又は非存在下に、MeOH、EtOH及びTHFのような不活性溶媒中で実施することができる。必要に応じて、この還元を、約0.5〜10kg/cmの範囲、好ましくは1〜6kg/cmの範囲の適切な圧力下で実施することができる。適切な溶媒の具体例は、工程2Bにおいて記載したものと同様である。反応温度は、一般に、−100℃〜250℃の範囲であり、好ましくは0℃〜還流温度の範囲であるが、必要に応じて、より低い温度又はより高い温度を用いることができる。反応時間は、一般に、1分〜2日であり、好ましくは20分〜24時間である。
【0061】
工程2D: この工程においては、D.CoganらによるJournal of American Chemical Society,1999,121,268−269の方法を用いて、不活性溶媒中、酸性条件下で、式(VIII)の化合物の脱保護及び/又は塩形成により、式(II)の化合物を製造することができる。酸には、塩化水素、臭化水素、トリフルオロメタンスルホン酸、酢酸又はp−トルエンスルホン酸が含まれるが、これらに限定されない。反応は、水素雰囲気下、パラジウム−炭素触媒又は白金触媒のような金属触媒の存在下のような、公知の水素化条件下で実施することもできる。反応は、塩化水素の存在下又は非存在下に、MeOH、EtOH及びTHFのような不活性溶媒中で実施することができる。必要に応じて、この還元を、約0.5〜10kg/cmの範囲、好ましくは1〜6kg/cmの範囲の適切な圧力下で実施することができる。反応温度は、一般に、−100℃〜250℃の範囲であり、好ましくは0℃〜還流温度の範囲であるが、必要に応じて、より低い温度又はより高い温度を用いることができる。反応時間は、一般に、1分〜2日であり、好ましくは20分〜24時間である。
【0062】
【化4】

【0063】
がHでない場合、式(II)の化合物は式(IV)の化合物から製造することができる。
【0064】
工程3A: この工程においては、不活性溶媒中、触媒及び/又は塩基の存在下に、式(X)の化合物を一酸化炭素及びアルコール(例えば、MeOH、EtOH)と反応させることにより、式(IX)の化合物を製造することができる。適切な触媒の具体例には、酢酸パラジウム又はパラジウムジベンジルアセトンのようなパラジウム試薬が含まれる。適切な塩基の具体例には、N,N−ジイソプロピルエチルアミン、N−メチルモルホリン又はトリエチルアミンが含まれる。所望であれば、この反応を、1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン、トリフェニルホスフィン又は1,3−ビス−(ジフェニルホスフィノ)プロパン(DPPP)のような添加剤の存在下又は非存在下に実施することができる。反応は、通常、好ましくは、溶媒の存在下に実施する。関与する反応又は試薬に有害な影響を示さず、少なくともある程度は試薬を溶解することができれば、用いられる溶媒の性質には、特に制限はない。適切な溶媒の具体例には、アセトン;ニトロメタン;DMF;スルホラン;DMSO;NMP;2−ブタノン;アセトニトリル;DCM、ジクロロエタン又はクロロホルムのようなハロゲン化炭化水素;又はTHF又は1,4−ジオキサンのようなエーテルが含まれる。反応は、広範囲の温度で実施することができ、正確な反応温度は、本発明では重要でない。好ましい反応温度は、溶媒、並びに用いられる出発原料又は試薬の性質等の因子によって決まるであろう。しかし、我々は、一般に、−20℃〜150℃、更に好ましくは約50℃〜80℃の温度で反応を実施すると都合がよいことを見出した。反応に必要な時間は、多くの因子、特に、反応温度並びに用いられる試薬及び溶媒の性質によって幅広く変動してもよい。しかし、前記の好ましい条件下に反応を実施すると、30分〜24時間、更に好ましくは1時間〜10時間で通常は十分であろう。
【0065】
工程3B−1: この工程においては、溶媒中、式(IX)の化合物の加水分解により、酸化合物を製造することができる。加水分解は従来の手段により実施することができる。
通常の手段においては、加水分解は、水の存在下、塩基性条件下で実施することができ、適切な塩基には、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム又は水酸化リチウムが含まれる。適切な溶媒には、例えば、MeOH、EtOH、プロパノール、ブタノール、2−メトキシエタノール又はエチレングリコールのようなアルコール類;THF、DME又は1,4−ジオキサンのようなエーテル類;DMF又はヘキサメチルホスホリックトリアミドのようなアミド類;又はDMSOのようなスルホキシド類が含まれる。この反応は、−20〜100℃、通常は20℃〜65℃の範囲の温度で、30分〜24時間、通常は60分〜10時間実施する。加水分解は、酸性条件化、例えば、塩化水素及び臭化水素のようなハロゲン化水素類;p−トルエンスルホン酸及びベンゼンスルホン酸のようなスルホン酸類;p−トルエンスルホン酸ピリジウム;並びに酢酸及びトリフルオロ酢酸のようなカルボン酸の存在下に実施することもできる。適切な溶媒には、例えば、MeOH、EtOH、プロパノール、ブタノール、2−メトキシエタノール及びエチレングリコールのようなアルコール類;THF、DME及び1,4−ジオキサンのようなエーテル類;DMF及びヘキサメチルホスホリックトリアミドのようなアミド類;並びにDMSOのようなスルホキシド類が含まれる。この反応は、−20〜100℃、通常は20℃〜65℃の範囲の温度で、30分〜24時間、通常は60分〜10時間実施する。
【0066】
工程3B−2: この工程においては、工程1と同様の手段により、3B−1の化合物から式(X)のアミド化合物を製造することができる。
【0067】
工程3C: この工程においては、有機金属試薬RMを用いて、式(X)の化合物の反応により、式(XI)の化合物を製造することができる。RMは、Rのハロゲン化化合物の反応により製造することができる。例えば、MがMgZを表わすRMを、30〜80℃の範囲の加温条件下に、Mg及びRZをジブロモエタン及びIと撹拌して製造することができる。この反応は、有機金属試薬又は金属の存在下に実施することができる。適切な有機金属試薬の具体例には、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム又はtert−ブチルリチウムのようなアルキルリチウム類;フェニルリチウム又はリチウムナフチリドのようなアリールリチウム類が含まれる。適切な金属の具体例にはマグネシウムが含まれる。好ましい不活性溶媒には、例えば、ヘキサンのような炭化水素類;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、DME、THF又は1,4−ジオキサンのようなエーテル類;又はそれらの混合物が含まれる。反応温度は、一般に−100〜50℃の範囲であり、好ましくは−100℃〜室温の範囲である。反応時間は、一般に、1分〜1日であり、好ましくは1時間〜10時間である。
【0068】
経路1
工程3D: この工程においては、式(XI)の化合物の還元により、式(XII)の化合物を製造することができる。式(XI)の化合物のカルボニル基の還元は、従来の手段により実施することができる。通常の手段においては、適切な不活性溶媒中、水素化アルミニウムリチウム、水素化ホウ素リチウム又はボランを用いた処理により、還元を実施する。適切な溶媒には、例えば、THF、DME又は1,4−ジオキサンのようなエーテル類が含まれる。この反応は、−20〜100℃、通常は20℃〜65℃の範囲の温度で、30分〜24時間、通常は60分〜10時間実施する。他の還元方法は、リガンドとして(R)−3,3−ジフェニル−1−メチルピロリジノ[1,2,C]−1,3,2−オキサザボロールを有するBHMeS錯体のような還元剤を用いた処理により実施することができる。適切な不活性溶媒にはTHFが含まれる。反応は、−10℃の温度で30分〜24時間、通常は60分〜10時間実施する。
【0069】
工程3E−1: この工程においては、当業者に公知の条件下で、式(XII)の化合物を脱離基を有する化合物に変換することができる。例えば、式(XII)の化合物のヒドロキシ基を、不活性溶媒、例えば、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素又は1,2−ジクロロエタンのようなハロゲン化炭化水素類;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、THF又は1,4−ジオキサンのようなエーテル類;DMF又はDMSOの存在下又は非存在下に、塩素化剤、例えば、塩化チオニル、塩化オキサリルを用いて、塩化物に変換することができる。他の具体例については、式(XII)の化合物のヒドロキシ基を、不活性溶媒、例えば、ヘキサン、ヘプタン又は石油エーテルのような脂肪族炭化水素類;ベンゼン、トルエン、o−ジクロロベンゼン、ニトロベンゼン、ピリジン又はキシレンのような芳香族炭化水素類;塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素又は1,2−ジクロロエタンのようなハロゲン化炭化水素類;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、THF又は1,4−ジオキサンのようなエーテル類;DMF又はDMSOの存在下又は非存在下に、塩基、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムtert−ブトキシド、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、フッ化カリウム、水素化ナトリウム又は水素化カリウムのようなアルカリ又はアルカリ土類金属水酸化物、アルコキシド、炭酸塩、ハロゲン化物又は水素化物、又はトリエチルアミン、トリブチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン又はジメチルアミノピリジンのようなアミンの存在下又は非存在下に、スルホン化剤、例えば、塩化パラ−トルエンスルホニル、パラ−トルエンスルホン酸無水物、塩化メタンスルホニル、メタンスルホン酸無水物、トリフルオロメタンスルホン酸無水物を用いて、スルホン酸基に変換することができる。
【0070】
工程3E−2: アジドの導入により、式(XIII)の化合物を製造することができる。ジエチルアゾジカルボキシレート(DEAD)のようなジアルキルアゾジカルボキシレート、及びトリフェニルホスフィンのようなホスフィン試薬の存在下に、アジ化ジフェニルホスホリル(DPPA)、アジ化ナトリウム又はHNを用いて、工程3E−1で得られた化合物を処理することができる。好ましくは、この反応は、不活性溶媒中で実施することができる。好ましい不活性溶媒には、THF、ジエチルエーテル、DMF、ベンゼン、トルエン、キシレン、o−ジクロロベンゼン、ニトロベンゼン、DCM、1,2−ジクロロエタン又はDME;又はそれらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。還元は、THF、ジエチルエーテル、MeOH及びEtOHから選択されるが、これらに限定されない不活性溶媒中で、水素化リチウムアルミニウム、水素化ホウ素ナトリウム、トリエチルホスファイト、トリフェニルホスフィン、亜鉛、水素化ジブチルスズ又はジボランのような適切な還元剤の存在下に実施することができる。所望であれば、反応を、塩酸又は酢酸の存在下、酸性条件下で実施することができる。反応温度は、一般に、−100〜250℃の範囲であり、好ましくは0℃〜還流温度の範囲であるが、必要に応じて、より低い温度又はより高い温度を用いることができる。反応時間は、一般に、1分〜1日、好ましくは20分〜5時間であるが、必要に応じて、より短い時間又はより長い時間を用いることができる。
【0071】
工程3F: この工程においては、還元剤を用いて、式(XIII)のアジ化化合物の還元により、式(II)の化合物を製造することができる。この反応は、THF又はジエチルエーテルのような不活性溶媒中、ジボラン、ボラン−硫化メチル錯体又は水素化リチウムアルミニウムのような適切な還元剤の存在下に実施することができる。反応は、前記工程2Dに記載されたのと同様の条件で実施することもできる。反応温度は、一般に、−100〜250℃の範囲であり、好ましくは0℃〜還流温度の範囲であるが、必要に応じて、より低い温度又はより高い温度を用いることができる。反応時間は、一般に、1分〜1日、好ましくは20分〜5時間であるが、必要に応じて、より短い時間又はより長い時間を用いることができる。還元は、水素雰囲気下、ヒドラジン、パラジウム触媒又は白金触媒の存在下又は非存在下に、ラネーニッケル触媒のような金属触媒の存在下のような、公知の水素化条件下で実施することもできる。この反応は、塩化水素の存在下又は非存在下、MeOH、EtOH又はTHFのような不活性溶媒中で実施することもできる。必要に応じて、この還元を、約0.5〜10kg/cmの範囲、好ましくは1〜6kg/cmの範囲の適切な圧力下で実施することができる。反応温度は、一般に、−100℃〜250℃の範囲であり、好ましくは0℃〜還流温度の範囲であるが、必要に応じて、より低い温度又はより高い温度を用いることができる。反応時間は、一般に、1分〜2日であり、好ましくは20分〜24時間である。
【0072】
経路2
工程3G: この工程においては、前記工程2Bにおいて記載した方法により、式(XI)の化合物を式(VI)のアミンとカップリング反応させることにより、式(XIV)の化合物を製造することができる。
【0073】
工程3H: この工程においては、前記工程2Cにおいて記載した方法により、式(XIV)の化合物から式(XV)の化合物を製造することができる。
【0074】
工程3I: この工程においては、前記工程2Dにおいて記載した方法により、式(XV)の化合物から式(II)の化合物を製造することができる。
【0075】
経路3
この経路においては、前記工程3C、工程3E−1及びE−2及び工程3Fに記載した方法により、式(II)の化合物を製造することができる。
【0076】
経路4
この経路においては、前記工程3G、工程3C及び工程3Iに記載した方法により、式(II)の化合物を製造することができる。
【0077】
【化5】

【0078】
が水素でなく、Rが水素である場合、式(XI)の化合物は式(IV)の化合物から製造することができる。これは、式(XI)の化合物の他の製造を説明する。
【0079】
工程4A: この工程においては、不活性溶媒中、遷移金属触媒及び金属シアン化物試薬を用いて、シアン化条件下に、式(IV)の化合物のシアン化により、式(XIX)の化合物を製造することができる。適切な溶媒の具体例には、THF;1,4−ジオキサン;DMF;アセトニトリル;MeOH又はEtOHのようなアルコール類;DCM、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム又は四塩化炭素のようなハロゲン化炭化水素;又はDMEが含まれる。適切な試薬には、例えば、シアン化リチウム、シアン化ナトリウム、シアン化カリウムのようなアルカリ金属シアン化物、シアン化鉄(II)、シアン化コバルト(II)、シアン化銅(I)、シアン化銅(II)、シアン化亜鉛(II)又はシアン化トリメチルシリルのような遷移金属シアン化物が含まれる。この反応は、適切な触媒の存在下に実施することができる。同様に、用いられる触媒の性質には特に制限はなく、本明細書においては、このタイプの反応に通常に用いられる任意の触媒を同様に用いることができる。このような触媒の具体例には、テトラキス(トリフェニルホスフィン)−パラジウム、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)クロライド、銅(0)、酢酸銅(I)、臭化銅(I)、塩化銅(I)、ヨウ化銅(I)、酸化銅(I)、トリフルオロメタンスルホン酸銅(II)、酢酸銅(II)、臭化銅(II)、塩化銅(II)、ヨウ化銅(II)、酸化銅(II)、トリフルオロメタンスルホン酸銅(II)、酢酸パラジウム(II)、塩化パラジウム(II)、ビスアセトニトリルジクロロパラジウム(0)、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)又は[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)ジクロライドが含まれる。好ましい触媒は、テトラキス(トリフェニルホスフィン)−パラジウム、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)クロライド、酢酸パラジウム(II)、塩化パラジウム(II)、ビスアセトニトリルジクロロパラジウム(0)、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)又は[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)ジクロライドである。この反応は、適切な添加剤の存在下に実施することができる。このような添加剤の具体例には、トリフェニルホスフィン、トリ−tert−ブチルホスフィン、1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン、トリ−2−フリルホスフィン、トリ−o−トリルホスフィン、2−(ジクロロヘキシルホスフィノ)ビフェニル又はトリフェニルアルシンが含まれる。反応は、0℃〜200℃、更に好ましくは20℃〜120℃の温度で実施することができる。反応時間は、一般に、5分〜48時間、更に好ましくは30分〜24時間が通常に十分であろう。必要に応じて、反応にマイクロ波条件を適用する。
【0080】
工程4B: この工程においては、化合物(XIX)をグリニャール試薬と反応させ、次いで炭酸水素ナトリウム又は塩化アンモニウムの水溶液を用いて加水分解することにより、式(XI)の化合物を製造することができる。適切なグリニャール試薬の具体例には、例えば、臭化メチルマグネシウムのようなアルキルマグネシウム臭化物、エチルマグネシウム、フェニルマグネシウムが含まれるが、これらに限定されない。好ましい不活性溶媒には、例えば、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、DME、THF又は1,4−ジオキサンのようなエーテル類;又はこれらの混合物が含まれる。反応温度は、一般に、−100〜50℃の範囲であり、好ましくは−100℃〜室温の範囲である。反応時間は、一般に、1分〜1日であり、好ましくは1時間〜10時間である。
【0081】
【化6】

【0082】
がメチルである場合、式(XI)の化合物は式(IV)の化合物から製造することができる。これは、式(XI)の化合物の他の製造を説明する。
【0083】
工程5A: この工程においては、不活性溶媒中、ルイス酸触媒及び試薬を用いて、アシル化条件下に、式(IV)の化合物からフリーデル−クラフツ反応により、式(XI)の化合物を製造することができる。適切な溶媒の具体例には、DCM、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム又は四塩化炭素のようなハロゲン化炭化水素;又はDMEが含まれる。適切な試薬は塩化アシルである。この反応は、塩化アルミニウム(III)、塩化チタン(IV)又は塩化ジルコニウムのような適切な触媒の存在下に実施することができる。反応温度は、一般に、−100〜90℃の範囲であり、好ましくは室温〜70℃の範囲である。反応時間は、一般に、1分〜1日であり、好ましくは1時間〜10時間である。
【0084】
【化7】

【0085】
工程6A: この工程においては、工程1と同様の手段により、式(XX)の化合物から式(XXI)のアミド化合物を製造することができる。
【0086】
工程6B: この工程においては、工程3Cと同様の手段により、式(XXI)の化合物から式(XXII)のケトン化合物を製造することができる。
【0087】
工程6C: この工程においては、不活性溶媒中、ゲミナルなアルキル化剤を用いて式(XXII)の化合物アルキル化反応させることにり、式(XXIII)の化合物を製造することができる。好ましいアルキル化剤の具体例には、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウムのようなトリアルキル金属類;臭化リチウムのような添加剤化合物の存在下における臭化メチルマグネシウムのようなアルキルマグネシウムハロゲン化物;ジメチル亜鉛及び塩化チタンにより製造される二塩化ジメチルチタンのようなジアルキルチタンハロゲン化物が含まれ、最も好ましくは二塩化ジメチルチタンである。反応のための好ましい不活性溶媒の具体例には、DCM、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム又は四塩化炭素のようなハロゲン化炭化水素類;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、DME、THF及び1,4−ジオキサンのようなエーテル類;n−ヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン及びトルエンのような炭化水素類;又はそれらの混合物が含まれる。反応温度は、一般に−100〜200℃であり、好ましくは−40℃〜100℃である。反応時間は、一般に、1分〜1日であり、好ましくは1時間〜10時間である。
【0088】
工程6D: この工程においては、工程3Aと同様の手段により、式(XXIII)の化合物から式(XXIV)の化合物を製造することもできる。
【0089】
工程6E: この工程においては、溶媒中、工程3B−1と同様の手段により、式(XXIV)の化合物から式(III)の化合物を製造することになった。
【0090】
【化8】

【0091】
工程7A: この工程においては、反応不活性溶媒中、又は溶媒なしで、式(XXV)の化合物をジアルキルアルコキシメチレンマロネートとN−置換アクリル化させることにより、式(XXVI)の化合物を製造することができる。適切な溶媒の具体例には、MeOH、EtOH、プロパノール、ブタノール、2−メトキシエタノール及びエチレングリコールのようなアルコール類;THF、DME及び1,4−ジオキサンのようなエーテル類が含まれる。記載されるように、反応は、更に溶媒なしで実施することができる。反応は、50℃〜150℃の範囲の温度で30分間〜24時間、通常は60分〜3時間実施される。
【0092】
工程7B: この工程においては、反応不活性溶媒中、式(XXVI)の化合物の熱環化により、式(XXVII)の化合物を製造することができる。適切な溶媒の具体例には、フェニルエーテルのようなエーテル類が含まれる。この反応は、200〜300℃の温度で、30分〜24時間、通常は250℃で30分〜5時間実施することができる(Journal of Medicinal chemistry,1998,Vol 41,No25)。
【0093】
工程7C: この工程においては、式(XXVII)の化合物のハロゲン化により、式(XXVIII)の化合物を製造することができる。反応不活性溶媒中、又は溶媒なしで、ハロゲン化試薬を用いて、ハロゲン化条件下で反応を実施する。適切な溶媒の具体例には、THF、1,4−ジオキサン、DMF、アセトニトリル;DCM、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム又は四塩化炭素のようなハロゲン化炭化水素類並びに酢酸が含まれる。適切なハロゲン化試薬の具体例には、オキシ塩化リン及びオキシ臭化リンのようなオキシハロゲン化リンが含まれる。反応は、0℃〜200℃、更に好ましくは室温〜150℃の温度で実施することができる。反応時間は、一般に、5分〜48時間であり、更に好ましくは30分〜6時間が通常に十分であろう。
【0094】
工程7D: この工程においては、溶媒中、式(XXVIII)の化合物の水素化にょり、式(XXIX)の化合物の脱ハロゲン化化合物を製造することができる。水素化反応は、公知の水素分解条件下、例えば、水素雰囲気下、金属触媒の存在下、又は反応不活性溶媒中、ギ酸又はギ酸アンモニウムのような水素源の存在下に実施される。所望であれば、反応は、塩基性条件下、例えば、トリエチルアミンの存在下に実施される。好ましい試薬は、ラネーニッケルのようなニッケル触媒、パラジウム−炭素、水酸化パラジウム−炭素、酸化白金、白金−炭素、ルテニウム−炭素、ロジウム−酸化アルミニウム、トリス[トリフェニホスフィン]ロジウムクロライドから選択される。適切な反応不活性の水性又は非水性有機溶媒の具体例には、MeOH、EtOHのようなアルコール類;THF又は1,4−ジオキサンのようなエーテル類;アセトン;ジメチルホルムアミド;DCM、ジクロロエタン又はクロロホルムのようなハロゲン化炭化水素類;並びに酢酸又はそれらの混合物が含まれる。反応は、20℃〜100℃の範囲、好ましくは20℃〜60℃の範囲の温度で実施することができる。反応時間は、一般に、10分〜48時間であり、好ましくは30分〜24時間である。この反応は、1〜100気圧、好ましくは1〜10気圧の範囲の圧力下、水素雰囲気下に実施することができる。好ましい条件は、バルーンを用いて、水素雰囲気下に、室温で1〜24時間、5又は10%パラジウム−炭素を用いることである。
【0095】
工程7E: この工程においては、工程3B−1に記載された方法により、溶媒中、式(XXIX)の化合物の加水分解により、式(III)の酸化合物を製造することができる。
【0096】
【化9】

【0097】
工程8A: この工程においては、反応不活性溶媒中、式(XXX)の化合物の酸化により、式(XXXI)のN−オキシド化合物を製造することができる。酸化反応は、反応不活性溶媒中、添加剤の非存在下又は存在下に実施することができる。好ましい酸化剤の具体例には、メタ−クロロ過安息香酸(mCPBA)、過酸化水素、過酢酸が含まれる。好ましい反応不活性溶媒の具体例には、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素及びジクロロエタンのようなハロゲン化炭化水素類;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、DME、THF及び1,4−ジオキサンのようなエーテル類;アセトニトリル、酢酸及び水、又はそれらの混合物が含まれる。反応温度は、一般に、0℃〜250℃の範囲であり、更に好ましくは0℃〜100℃の範囲である。反応時間は、一般に、1分〜10日であり、更に好ましくは20分〜6時間である。反応は、適切な触媒の存在下に実施することができる。同様に、用いられる触媒の性質には特に制限はなく、本明細書においては、このタイプの反応に通常に用いられる任意の触媒を同様に用いることができる。このよな触媒の具体例には、メチルトリオキソレニウム(VII)、タングステン酸及び脱水タングステン酸ナトリウムが含まれる。
【0098】
工程8B: この工程においては、反応不活性溶媒中、式(XXXI)の化合物のシアン化により、式(XXXII)のシアノ化合物を製造することができる。好ましいシアン化剤の具体例には、トリメチルシランカルボニトリル(TMSCN)、トリメチルクロロシランとシアン化ナトリウムとの組み合わせ、N,N−ジメチルカルバモイルクロライドとトリメチルシランカルボニトリル(TMSCN)との組み合わせのようなアシル化剤の組み合わせが含まれる。好ましいシアン化剤は、反応不活性溶媒中のトリエチルアミンのような塩基の存在におけるトリメチルシランカルボニトリル(TMSCN)である。好ましい反応不活性溶媒の具体例には、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素及びジクロロエタンのようなハロゲン化炭化水素類;ジエチルエーテル、DME、THF及び1,4−ジオキサンのようなエーテル類;アセトニトリル、DMF、DMSO又はそれらの混合物が含まれる。反応温度は、一般に、0℃〜250℃の範囲であり、更に好ましくは0℃〜100℃の範囲である。反応時間は、一般に、1分〜10日間であり、更に好ましくは20分〜24時間である。
【0099】
工程8C: この工程においては、溶媒中、式(XXXII)のシアノ化合物加水分解により、式(III)の酸化合物を製造することができる。加水分解は、従来の手段によって実施することができる。通常の手段においては、加水分解は、塩基性条件下に、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム又は水酸化リチウムの存在下に実施することができる。適切な溶媒の具体例には、MeOH、EtOH、プロパノール、ブタノール、2−メトキシエタノール及びエチレングリコールのようなアルコール類;THF、DME及び1,4−ジオキサンのようなエーテル類、DMF及びヘキサメチルホスホリックトリアミドのようなアミド類;及びDMSOのようなスルホキシド類が含まれる。好ましい溶媒は、MeOH、EtOH、プロパノール、THF、DME、1,4−ジオキサン、DMF及びDMSOである。この反応は、−20〜150℃、通常は20℃〜100℃の範囲の温度で、30分〜24時間、通常は60分〜10時間実施することができる。
【0100】
【化10】

【0101】
工程9A: この工程においては、工程8Aに記載された方法により、溶媒中、式(XXXIII)の化合物の酸化により、式(XXXIV)のN−オキシド化合物を製造することができる。
【0102】
工程9B: この工程においては、反応不活性溶媒中、式(XXXIV)の化合物のトリフルオロメチル化により、式(XXXV)の化合物を製造することができる。好ましいトリフルオロメチル化剤の具体例には、トリフルオロメチルトリメチルシラン(TMSCF)と開始剤との組み合わせが含まれる。好ましい触媒開始剤の具体例には、フッ化テトラブチルアンモニウム、フッ化セシウム、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸テトラブチルアンモニウム、ピバル酸リチウム、安息香酸リチウム、カリウムt−ブトキシド、ナトリウムt−ブトキシドが含まれる。好ましい反応不活性溶媒の具体例には、ヘキサン、ベンゼン、トルエンのような炭水化物類;塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素及びジクロロエタンのようなハロゲン化炭化水素類;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、DME、THF及び1,4−ジオキサンのようなエーテル類;アセトニトリル、EtOAc、DMF、DMSO又はそれらの混合物が含まれる。反応温度は、一般に、−78℃〜200℃の範囲であり、更に好ましくは−78℃〜100℃の範囲である。反応時間は、一般に、1分〜10日であり、更に好ましくは20分〜24時間である。
【0103】
工程9C: この工程においては、工程3B−1に記載された方法により、溶媒中、式(XXXV)の化合物の加水分解により、式(III)の一部である式(III)の酸化合物を製造することができる。
【0104】
【化11】

【0105】
工程10A: この工程においては、反応不活性溶媒中、式(XXXVI)の化合物のアルキル化により、式(XXXVII)の1,2−ジヒドロキノリン化合物を製造することができる。式R4−MXの有機金属化合物を、R(Rはアルキルである)のハロゲン化化合物の反応により製造することができる。Mはリチウムのような金属又はMgXを表わし、Xは、水素、又はフッ素、塩素、臭素又はヨウ素のようなハロゲン原子を表わす。適切な有機金属試薬の具体例には、メチルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム及びtert−ブチルリチウムのようなアルキルリチウム類;フェニルリチウム及びリチウムナフチリドのようなアリールリチウム類;ハロゲン化メチルマグネシウム、ハロゲン化イソプロピルマグネシウム及びハロゲン化t−ブチルマグネシウムのようなハロゲン化アルキルマグネシウム;ハロゲン化フェニルマグネシウムのようなハロゲン化アリールマグネシウムが含まれる。好ましい反応不活性溶媒の具体例には、ヘキサンのような炭水化物類;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、DME、THF及び1,4−ジオキサンのようなエーテル類;又はそれらの混合物が含まれる。反応温度は、一般に、−100〜100℃の範囲であり、好ましくは−100℃〜室温の範囲である。反応時間は、一般に、1分〜1日であり、好ましくは1時間〜24時間である。
【0106】
工程10B: この工程においては、溶媒中、式(XXXVII)の化合物の酸化により、式(XXXVIII)の化合物を製造することができる。適切な酸化剤の具体例には、三酸化クロム(CrO)、クロム酸カリウム(KCrO)、重クロム酸カリウム(KCr)のようなCr−試薬;二酸化マンガン(MnO)、過マンガン酸カリウム(KMnO)のようなMn−試薬、2,3,5,6,−テトラクロロ−1,4−ベンゾキノン(p−クロラニル)、2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノ−1,4−ベンゾキノン(DDQ)のようなキニン試薬、及び空気酸化が含まれる。適切な溶媒の具体例には、THF、1,4−ジオキサン、アセトン、DMF、アセトニトリル、ハロゲン化炭化水素(例えば、DCM、ジクロロエタン、クロロホルム)、水;又はそれらの混合物が含まれる。反応は、広範囲の温度で実施することができ、正確な反応温度は、本発明では重要でない。好ましい反応温度は、溶媒、並びに用いられる出発原料又は試薬の性質等の因子によって決まるであろう。しかし、我々は、一般に、−78℃〜100℃、更に好ましくは約−60℃〜60℃の温度で反応を実施すると都合がよいことを見出した。反応に必要な時間は、多くの因子、特に、反応温度並びに用いられる試薬及び溶媒の性質によって幅広く変動してもよい。しかし、前記の好ましい条件下に反応を実施すると、1分〜24時間、更に好ましくは30分〜12時間で通常は十分であろう。
【0107】
工程10C: この工程においては、工程3B−1に記載された方法により、溶媒中、式(XXXVIII)の化合物の加水分解により、式(III)の酸化合物を製造することができる。
【0108】
前記の様々な一般的方法は、必要な化合物の段階的形成における任意の段階で所望の置換基を導入するのに有用であり、これらの一般的方法を、このような多段階工程において様々な方法で組み合わせることができることは理解されるであろう。多段階プロセスにおける反応の順番は、当然に、用いられる反応条件が最終生成物において望まれる分子中の置換基に影響を及ぼさないように選択すべきである。
【0109】
生物学的活性を評価する方法
ヒトVR1アンタゴニストアッセイ
ヒトVR1高発現細胞を用いるCa2+画像アッセイにより、VR1アンタゴニスト活性を測定することができる。ヒトVR1受容体を高度に発現する細胞は、いくつかの異なる従来の方法から得ることができる。標準的な方法の1つは、学術論文;Nature,389,pp816−824,1997に記載されているような方法に従い、ヒト後根神経節(DRG)又は腎臓をクローニングすることである。又は、ヒトケラチノサイトを高度に発現するVR1受容体も知られており、学術論文(Biochemical and Biophysical Research Communications,291,pp124−129,2002)に公開されている。この論文においては、ヒトケラチノサイトは、カプサイシンを加えると、VR1媒介細胞内のCa2+を増大させることが証明された。更に、通常は沈黙遺伝子であり、検出可能なレベルでVR1受容体を産生しないヒトVR1遺伝子をアップレギュレーションする方法も、適切な細胞を得るために利用することができる。このような遺伝子修飾方法は、Nat.Biotechnol.,19,pp440−445,2001に詳述されている。
【0110】
アッセイに用いるまで、ヒトVR1受容体発現細胞を、培養フラスコ中で、37℃、CO5%含有環境下に維持した。VR1アンタゴニスト活性を測定するための細胞内Ca2+画像アッセイを以下の手順により行った。
【0111】
培地をフラスコから除去し、fura−2/AM蛍光カルシウム指示薬を、培地中に5μMの濃度でフラスコに加えた。フラスコをCOインキュベーターに入れ、1時間インキュベーションした。次いで、ヒトVR1受容体発現細胞をフラスコから分離し、次いで、リン酸緩衝生理食塩水PBS(−)で洗浄し、アッセイ緩衝液に再懸濁した。細胞懸濁液のアリコート80μL(3.75×10細胞/mL)をアッセイプレートに加え、細胞を遠心分離により回転分離した(950rpm、20℃、3分)。
【0112】
実施例の化合物を、前記ヒトVR1アンタゴニストアッセイにおいて試験した。50%阻害濃度(IC50)を下記表に示す。
【0113】
【表1】

【0114】
カプサイシン刺激アッセイ
FDSS6000(浜松フォトニクス、日本)、蛍光画像システムを用いて、細胞内カルシウム濃度のカプサイシン誘発変化を観察した。クレブス−リンガーHEPES(KRH)バッファー(115mMのNaCl、5.4mMのKCl、1mMのMgSO、1.8mMのCaCl、11mMのD−グルコース、25mMのHEPES、0.96mMのNaHPO、pH7.3)中の細胞懸濁液を、種々の濃度の試験化合物又はKRHバッファー(バッファーコントロール)と共に、室温で暗所条件下に15分間予備インキュベーションした。次いで、アッセイ混合物中300nMであるカプサイシン溶液を、FDSS6000により、自動的にアッセイプレートに加えた。
【0115】
酸刺激アッセイ
FDSS6000(浜松フォトニクス、日本)、蛍光画像システムを用い、細胞内カルシウム濃度の酸誘発変化を観察した。休止バッファー(10mMのHEPESを補充したHBSS、pH7.4)中の細胞懸濁液を、種々の濃度の試験化合物又は休止バッファー(バッファーコントロール)と共に、室温で、暗所条件下に15分間予備インキュベーションした。FDSS6000により、細胞を刺激溶液(MESを補充したHBSS、最終アッセイバッファー、pH5.8)を自動的に加えた。VR1アンタゴニストのIC50値を、酸刺激の後にバッファーコントロール試料により実証された増大の半分から決定した。
【0116】
アンタゴニスト活性の測定
蛍光シグナルの変化の観察(λex=340nm/380nm、λem=510〜520nm)を、カプサイシン溶液又は酸性バッファーを加える1分前から開始し、5分間継続した。VR1アンタゴニストのIC50値は、アゴニスト刺激の後にバッファーコントロール試料により実証された増加の半分から決定した。
【0117】
ヒトVR1アゴニストアッセイ
アッセイに用いるまで、ヒトVR1受容体発現細胞を、培養フラスコ中で、37℃、CO5%含有環境下に維持した。VR1アゴニスト活性を測定するための細胞内Ca2+画像アッセイを以下の手順により行った。培地をフラスコから除去し、fura−2/AM蛍光カルシウム指示薬を、培地中に5μMの濃度でフラスコに加えた。フラスコをCOインキュベーターに入れ、1時間インキュベーションした。次いで、ヒトVR1受容体発現細胞をフラスコから分離し、次いで、リン酸緩衝生理食塩水PBS(−)で洗浄し、クレブス−リンガーHEPES(KRH)バッファー:115mMのNaCl、5.4mMのKCl、1mMのMgSO、1.8mMのCaCl、11mMのD−グルコース、25mMのHEPES、0.96mMのNaHPO、pH7.3に再懸濁した。
【0118】
96−ウェルフォーマットアッセイ
FDSS6000(浜松フォトニクス、日本)、蛍光画像システムを用い、細胞内カルシウム濃度の試験化合物誘発変化を観察した。KRHバッファー中の細胞懸濁液のアリコート80μL(3.75×10細胞/mL)を96−ウェルプレートに加え、このアッセイプレートをFDSS6000に入れた。最終20μLの種々の濃度の試験化合物又はKRHバッファー(バッファーコントロール)又は1μMのカプサイシン(最大応答コントロール)を、FDSS6000により、自動的にアッセイプレートに加えた。
【0119】
384−ウェルフォーマットアッセイ
KRHバッファー中の細胞懸濁液のアリコート30μL(8×10細胞/mL)を384−ウェルプレートに加え、このアッセイプレートをFDSS6000に入れた。最終15μLの種々の濃度の試験化合物又はKRHバッファー(バッファーコントロール)又は2μMのカプサイシン(最大応答コントロール)を、FDSS6000により、自動的にアッセイプレートに加えた。
【0120】
アゴニスト活性の測定
蛍光シグナルの変化の観察(λex=340nm/380nm、λem=510〜520nm)を、試験化合物を加える1分(96−ウェルフォーマット)又は15秒(384−ウェルフォーマット)前から開始し、5分間継続した。化合物のEC50値は、試験化合物の最大応答から決定した。Emax値は、1μM(96−ウェルフォーマット)又は2μM(384−ウェルフォーマット)のカプサイシンが誘発する応答の割合として決定した。
【0121】
慢性絞傷モデル(CCIモデル)
オスのSprague−Dawleyラット(270〜300g;B.W.、Charles River、筑波、日本)を用いた。慢性絞傷(CCI)手術を、Bennett及びXieにより記載された方法(Bennett,G.J.and Xie,Y.K.Pain,33:87−107,1988)に従って実施した。手短に述べると、動物をペントバルビタールナトリウム(64.8mg/kg、腹腔内注射)で麻酔し、左の共通坐骨神経を、大腿二頭筋を介してのブラントジセクションにより、大腿の中央レベルで露出させた。坐骨神経三分岐近辺で、付着組織を除去し、4本の結紮糸(4−0シルク)をその周囲に、約1mmの間隔でゆるく結んだ。疑似手術を、坐骨神経結紮以外、CCI手術と同様に実施する。手術の2週間後に、フライ毛(VFH)を後肢の足底に当てることにより、機械的異痛症を評価した。応答を誘発するために必要な最も少ないVFH力を、足引っ込め閾値(PWT)として記録した。VFH試験を、投与の0.5、1及び2時間後に実施した。Kruskal−Wallis試験、次いで、複数比較のためのDunn試験又は対比較のためのMann−Whitney U試験を用いて、実験データを分析した。
【0122】
モノヨード酢酸(MIA)誘発OAモデル
オスの6週齢Sprague−Dawley(SD、Japan SLC又はCharles River Japan)ラットをペントバルビタールで麻酔した。MIAの注射部位(膝)の毛を剃り、70%エタノールで清浄にした。MIA溶液又は生理食塩水25μLを、29G針を用いて右膝関節に注射した。無能力性試験器(Linton Instrumentation,Norfolk,UK)を用い、右(損傷)及び(未処置)膝における重量分布により関節損傷作用を評価した。各後肢により発揮される力を、グラムで測定した。各肢に負荷される重量の相違により、体重負荷(WB)不足を決定した。MIA注射の20日後まで、1週間に1回、WBを測定するためにラットを訓練した。MIA注射後21日目に、化合物の鎮痛作用を測定した。化合物を投与する前に、WB不足の「前値」を測定した。化合物を投与した後に、WB不足の減衰を、鎮痛効果として決定した。
【0123】
ラットにおいて完全フロイントアジュバント(CFA)により誘発される熱的及び機械的痛覚過敏
熱的痛覚過敏
オスの6週齢SDラットを用いた。完全フロイントアジュバント(CFA、Mycobacterium Tuberculosis H37RA300μg(Difco、MI)、流動パラフィン100μL(Wako、日本、大阪)中)を、ラットの後肢の足底表面に注射した。CFA注射の2日後に、既に開示された方法(Hargreavesら、1988)により、足底試験装置(Ugo−Basil、Varese、イタリア)を用いてて、熱的痛覚過敏を測定した。刺激の前の少なくとも15分間、ラットを試験環境に慣れさせた。輻射熱を、後肢の足底表面に当て、足引っ込め潜伏時間(PWL、秒)を測定した。輻射熱の強度を調節して、10〜15秒の安定なPWLを生じさせた。試験化合物を、体重100gあたり0.5mLの容量で投与した。PWLを、薬物投与の1、3又は5時間後に測定した。
【0124】
機械的痛覚過敏
オスの4週齢SDラットを用いた。CFA(300μgのMycobacterium Tuberculosis H37RA(Difco、MI)、流動パラフィン100μL(Wako、日本、大阪)中)を、ラットの後肢の足底表面に注射した。CFA注射の2日後に、analgesy−Meter(Ugo−Basil、Varese、イタリア)を用いて、圧力に対する足引っ込め閾値(PWT、グラム)を測定することにより、機械的痛覚過敏を試験した。動物を穏やかに拘束し、圧力を徐々に上昇しながらプラスチックチップを介して後肢の足底表面に掛けた。足引っ込めを誘発するために必要な圧力を測定した。試験化合物を、体重100gあたり0.5mLの容量で投与した。PWTを、薬物投与の1、3又は5時間後に測定した。
【0125】
人工膜透過アッセイ(PAMPA)
実験は、96−ウェルのアクセプター及びドナープレート中で実施した。このような96−ウェルシステムは、Journal of Medicinal Chemistry,1998,vol.41,No.7,1007−1010に開示されている。ドデカン中の4%ホスファチジルコリン及び1%ステアリン酸を、人工膜材料として用いた。アクセプタープレート(96ウェル疎水性フィルタープレート(MAIP N45, Millipore))を、フィルター上部に5μLの人工膜材料を加えることにより調整し、ハンクス平衡塩溶液(HBSS)(pH6.5)で緩衝した、250μLの2−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸(MES)でプレートを満たした。ドナープレート(トランスポートレシーバープレート(MATRNPS50,Millipore)を、10μMの試験化合物を含むHBSS(pH6.5)で緩衝した300μLのMESで満たした。アクセプタープレートを、「サンドイッチ」の形にドナープレートの上に置き、30℃で2.5時間インキュベーションした。インキュベーション後、アクセプター、ドナー及び初期ドナー溶液(参考)を、LC−MS/MSにより分析した。データを、cm×10−6/秒における有効な透過性値及び膜保持値として報告した。
【0126】
ヒトドフェチリド結合
HERG産物を発現するHEK−293細胞の細胞ペーストは、2MのHClを用いて25℃でpH7.5に調整した1mMのMgCl、10mMのKClを含む、10倍容量の50mMトリスバッファーに懸濁させることができる。ポリトロンホモジナイザー(最高出力で20秒)を用いて、細胞を均質化し、48,000g、4℃で20分間遠心分離した。ペレットを再懸濁し、均質化し、同じ方法でもう一度遠心分離した。得られた上清を廃棄し、最終ペレットを再懸濁し(10倍容量の50mMのトリスバッファー)、最大出力で20秒間均質化した。膜ホモジネートを一定量ずつに分け、用いるまで−80℃に貯蔵した。Protein Assay Rapid Kit及びARVO SXプレートリーダー(Wallac)を用いるタンパク質濃度測定のために、一定量を用いた。操作、ストック溶液及び装置は全て、いずれの時点においても氷上に保持した。飽和アッセイのために、200μLの全体積で実験を実施した。室温、10μMのドフェチリドの非存在下又は存在下に、最終濃度(20μL)で、それぞれ全結合又は非特異的結合のために、[H]−ドフェチリド20μL及び膜ホモジネート160μL(1ウェルあたりタンパク質20〜30μg)を60分間インキュベーションすることにより、飽和を測定した。Skatron細胞ハーベスターを用いてポリエーテルイミド(PEI)吸引ガラスファイバーろ紙を介して急速に減圧ろ過し、次いで、50mMトリスバッファー(25℃においてpH7.5)で2回洗浄することにより、インキュベーションを全て終了させた。受容体結合放射性を、Packard LSカウンターを用いる液体シンチレーションカウントにより定量した。
【0127】
競合アッセイのために、化合物を96ウェルポリプロピレンプレート中、片対数形式で4ポイント希釈として希釈した。最初に希釈を全てDMSO中で実施し、次いで、1mMのMgCl、10mMのKClを含む50mMトリスバッファー(25℃においてpH7.5)に移して、最終DMSO濃度が1%に等しくなるようにした。化合物をアッセイプレートに三重に分取した(4μL)。全結合及び非特異的結合ウェルを、それぞれ媒体及び最終濃度で10μMのドフェチリドとして6ウェルに用意した。放射リガンドを5.6×最終濃度で調製し、この溶液を各ウェル(36μL)に加えた。YSiポリ−L−リシンシンチレーション近接アッセイ(SPA)ビーズ(50μL、1mg/ウェル)及び膜(110μL、20μg/ウェル)を加えることにより、アッセイを開始した。インキュベーションを室温で60分間継続した。更に、プレートを室温で3時間インキュベーションし、ビーズを沈殿させた。Wallac MicroBetaプレートカウンターをカウントすることにより、受容体−結合放射性を定量した。
【0128】
HERGアッセイ
HERGカリウムチャネルを安定して発現するHEK293細胞を、電気生理学的研究のために用いた。HEK細胞に、このチャネルを安定に形質移入するための方法は、他の場所で見ることができる(Z.Zhou et al.,1998,Biophysical Journal,74,pp230−241)。実験の前の日に、細胞を培養フラスコから採取し、10%ウシ胎児血清(FCS)を含む標準最小必須培地(MEM)中のガラスカバースリップにプレートした。プレートされた細胞をインキュベーター中で、37℃で、O95%/CO5%の雰囲気下に維持して保存した。採取後、15〜28時間の間に、細胞を調べた。
【0129】
標準パッチクランプ技術を用いて、全細胞モードでHERG電流を調べた。実験の間、細胞を、以下の組成(mM)の標準外部溶液を用いて表面灌流した。NaCl、130;KCl、4;CaCl、2;MgCl、1;グルコース、10;HEPES、5;NaOHでpH7.4。以下の組成(mM);KCl、130;MgATP、5;MgCl、1.0;HEPES、10;EGTA5、KOHでpH7.2の標準内部溶液を満たした時に、抵抗1〜3Mオームを有するパッチクランプ増幅器及びパッチピペットを用いて全細胞記録を実施した。15MΩ未満のアクセス抵抗及び>1GΩのシール抵抗を有する細胞のみを、更なる実験のために受け入れた。直列抵抗補償を、最大80%まで適用した。漏れ減算は実施しなかった。しかし、許容可能なアクセス抵抗は、記録された電流のサイズ及び安全に用いることができる直列抵抗補償のレベルに依存した。全細胞構造の達成及びピペット溶液を用いた細胞透析のために必要な時間(>5分)の後に、標準電圧プロトコルを、細胞に適用し、膜電流を誘発させた。電圧プロトコルは以下の通りである。膜を、保持電位−80mVから+40mVへと1000msで脱分極させた。これに続き、再び保持電位まで、電圧傾斜を下降させた(速度0.5mVmsec−1)。電圧プロトコルを、各4秒の実験を通して継続的に細胞に印可した(0.25Hz)。傾斜の間に約−40mVを誘発したピーク電流の振幅を測定した。安定な誘発電流応答が外部溶液で得られたら、媒体(標準外部溶液中0.5%のDMSO)を10〜20分間、循環ポンプにより適用した。媒体対照条件における誘発電流応答の振幅の最小変化が生じたら、0.3、1、3、10μMの試験化合物を10分間適用した。この10分間には、ポンプにより供給溶液が溶液レザバーから記録室へと管を通過する時間が含まれる。チャンバーウェル中の薬物濃度が所定濃度に達した後、化合物溶液に細胞を曝露する時間は5分間を超えていた。可逆性を評価するために、この後に、10〜20分間の洗浄期間が存在した。最後に、細胞を高濃度のドフェチリド(5μM)、特異的IKrブロッカーに曝露して、不感内因電流を評価した。
【0130】
全ての実験は、室温(23±1℃)で実施した。誘発膜電流を、オンラインでコンピューターに記録し、500−1KHz(Bessel−3dB)でフィルタリングし、パッチクランプ増幅器及び特異的データ分析ソフトウェアを用いて1〜2KHzでサンプリングした。約−40mVで生じたピーク電流幅を、オフラインによりコンピューターで測定した。
【0131】
振幅の10個の値の算術平均を、媒体対照条件下及び薬物の存在下に算出した。各実験におけるIの低下割合を、以下の式:I=(1−I/I)×100を用いる正規化電流値により得た(ここで、Iは薬物の存在下における平均電流値であり、Iはコントロール条件下における平均電流値である)。各薬物濃度又は時間対応コントロールについての別々の実験を実施し、各実験における算術平均を、研究の結果と定義する。
【0132】
薬物−薬物相互作用アッセイ
この方法は、基本的に、蛍光プローブからの生成物形成の阻害割合を各化合物3μMで決定することを含む。
【0133】
特に、このアッセイを以下の通りに実施する。化合物を、組み換えCYP、100mMのリン酸カリウムバッファー及び基質としての蛍光プローブと共に5分間予備インキュベーションした。0.5mMのNADP(ただし2D6については0.03mM)、10mMのMgCl、6.2mMのDL−イソクエン酸及び0.5U/mlのイソクエン酸デヒドロゲナーゼ(ICD)からなる加温されたNADPH生成系を加えることにより、反応を開始した。アッセイプレートを37℃で(ただし1A2及び3A4については30℃で)インキュベーションし、20〜30分までの各分、蛍光読み取りを実施した。
【0134】
データ算出は、以下のように実施した。
1.直線領域において、勾配(時間対蛍光単位)を算出した。
2.化合物での阻害割合を、式:
{(V−V)/V}×100=阻害%
(式中、V=対照反応速度(阻害剤なし)
=化合物の存在下での反応速度)により算出した。
【0135】
【表2】

【0136】
固有クリアランス
試験化合物(1μM)を、多数の384−ウェルプレート上で、100mMリン酸カリウムバッファー(pH7.4)中で、1mMのMgCl、1mMのNADP+、5mMのイソクエン酸、1U/mLのイソクエン酸デヒドロゲナーゼ及び0.8mg/mLのHLM(ヒト肝ミクロソーム)と37℃でインキュベーションした。いくつかの時間ポイントにおいて、プレートをインキュベータから取り出し、2倍容量のアセトニトリルで反応を停止した。上清中の化合物濃度を、LC/MS/MSシステムにより測定した。固有クリアランス値(Clint)を以下の式を用いて算出した;
Clint(μL/分/タンパク質1mg)=(k×インキュベーション容量)/タンパク質濃度
k(分−1)=−Inの勾配(濃度対時間)
【0137】
薬物
式(I)の化合物の薬学的に許容される塩には、その酸付加塩及び塩基付加塩が含まれる。
【0138】
適切な酸付加塩は、非毒性の塩を形成する酸から形成される。具体例には、酢酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベシル酸塩、重炭酸塩/炭酸塩、重硫酸塩/硫酸塩、ホウ酸塩、d−カンシル酸塩、クエン酸塩、エジシル酸塩、エシル酸塩、ギ酸、フマル酸塩、グルセプ酸塩、グルコン酸塩、グルクロン酸塩、ヘキサフルオロリン酸塩、ヒベンズ酸塩、塩酸塩/塩化物、臭化水素酸塩/臭化物、ヨウ化水素酸塩/ヨウ化物、イセチオン酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メシル酸塩、メチル硫酸塩、ナフチル酸塩、2−ナプシル酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オロチン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩、リン酸塩/リン酸水素塩/リン酸二水素塩、サッカリン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、トシル酸塩及びトリフルオロ酢酸塩が含まれる。
【0139】
適切な塩基塩は、非毒性の塩を形成する塩基から形成される。具体例には、アルミニウム、アルギニン、ベンザチン、カルシウム、コリン、ジエチルアミン、ジオラミン、グリシン、リシン、マグネシウム、メグルミン、オラミン、カリウム、ナトリウム、トロメタミン及び亜鉛塩が含まれる。
【0140】
適切な塩に関する概説については、Stahl及びWermuthによる「Handbook of Pharmaceutical Salts:Properties,Selection,and Use」(Wiley−VCH,Weinheim,Germany,2002)を参照されたい。
【0141】
式(I)の化合物の薬学的に許容される塩は、式(I)の化合物の溶液と、所望の酸又は塩基とを一緒に、適切に混合することによって容易に調製することができる。塩が溶液から沈殿し、ろ過により集めるか、溶媒を蒸発させることによって回収することができる。塩の電離度は、完全なイオン化からほぼ非イオン化まで変動し得る。
【0142】
本発明の化合物は、非溶媒和形態及び溶媒和形態のいずれでも存在し得る。本明細書で用いられる「溶媒和物」なる用語は、本発明の化合物、及び1種又は複数の薬学的に許容される溶媒分子、例えばエタノールを含む分子複合体を記載するために用いられる。「水和物」なる用語は、前記の溶媒が水である場合に用いられる。
【0143】
包接化合物、薬物−ホスト包含複合体のような複合体も、本発明の範囲内に包含され、ここで、前記の溶媒和物とは対照的に、薬物及びホストは、化学量論的又はは非化学量論量で存在する。化学量論量又は非化学量論量であってもよい2種以上の有機及び/又は無機成分を含む薬物の複合体も含まれる。得られる複合体は、電離しているか、部分的に電離しているか、又は非電離であってもよい。このような複合体の総説に関しては、HaleblianによるJ Pharm Sci,64(8),1269−1288(August 1975)を参照されたい。
【0144】
以下においては、式(I)の化合物に関する言及は、全て、それらの塩、溶媒和物及び複合体に対する言及並びにそれらの塩の溶媒和物及び複合体についての対する言及を含む。
【0145】
本発明の化合物は、前記に定義された式(I)の化合物、前記に定義されたその多形体、プロドラッグ及び異性体(光学、幾何及び互変異性異性体を含む)並びにに式Iの化合物の同位体標識化合物を包含する。
【0146】
記載されたように、本発明は、前記に定義された式(I)の化合物の多形体全てを包含する。
【0147】
更に、式(I)の化合物の、いわゆる「プロドラッグ」も本発明の範囲内である。従って、それ自体は薬理活性をほとんど有さないか、又は有さない式(I)の化合物の特定の誘導体は、身体に投与されると、例えば加水分解により変換されて、所望の活性を有する式(I)の化合物になり変換され得る。このような誘導体は、「プロドラッグ」と呼ばれる。プロドラッグの使用についての更なる情報は、「Pro−drugs as Novel Delivery Systems,Vol.14,ACS Symposium Series(T Higuchi and W Stella)and‘Bioreversible Carriers in Drug Design’,Pergamon Press,1987(ed.E B Roche,American Pharmaceutical Association)に見ることができる。
【0148】
例えば、式(I)の化合物中に存在する適切な官能基を、例えば、H Bundgaardによる「Design of Prodrugs」(Elsevier,1985)に記載されているような、当業者に「プロ部分」として知られている一定の部分に置換することにより、本発明によるプロドラッグを製造することができる。
【0149】
本発明でのプロドラッグのいくつかの例には
(i)式(I)の化合物がカルボン酸官能基(−COOH)を含む場合、そのエステル(例えば、水素の(C−C)アルキルによる置換);
(ii)式(I)の化合物がアルコール官能基(−OH)を含む場合、そのエーテル(例えば、水素の(C−C)アルカノイルオキシメチルによる置換);
(iii)式(I)の化合物が第1級又は第2級アミノ官能基(−NH又は−NHR(RはHではない))を含む場合、そのアミド(例えば、1個又は両方の水素の(C−C10)アルカノイルによる置換)が含まれる。
【0150】
前記具体例による置換基の更なる具体例及び他のプロドラッグタイプの例は、前記の参照文献中に見ることができる。
【0151】
最後に、ある種の式(I)の化合物は、それ自体、他の式(I)の化合物のプロドラッグとして作用することがある。
【0152】
1個以上の不斉炭素原子を含む式(I)の化合物は、2種以上の立体異性体として存在し得る。式(I)の化合物がアルケニル又はアルケニレン基を含む場合、幾何シス/トランス(又はZ/E)異性体が可能である。化合物が、例えばケトもしくはオキシム基又は芳香部分、もしくは2個以上の窒素を含むヘテロ芳香環を含む場合、互変異性(「tautomerism」)が生じ得る。従って、単一化合物は、1種以上の種類の異性で存在し得ることが理解される。
【0153】
1種以上のタイプの異性を示す化合物、それらの1種以上の混合物を含む、式(I)の化合物の立体異性体、幾何異性体及び互変異性形態の全てが、本発明の範囲内に包含される。更に、対イオンが光学活性であってもよい酸付加塩もしくは塩基塩、例えば、D−乳酸塩もしくはL−リシン又はラセミ体、例えばDL−酒石酸塩又はDL−アルギニンが含まれる。
【0154】
シス/トランス異性体を、当業者に周知の慣用技術、例えばクロマトグラフィー及び分別結晶化により分離することができる。
【0155】
個々の鏡像異性体を調製/単離するための慣用技術には、適切な光学的に純粋な前駆体からのキラル合成又は例えばキラル高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いた、ラセミ体の分割(もしくは塩又は誘導体のラセミ体)が含まれる。
【0156】
また、ラセミ体(又はラセミ前駆体)を適切な光学的に活性な化合物、例えば、アルコールと、又は式(I)の化合物が酸性又は塩基性部分を含む場合には、酒石酸又は1−フェニルエチルアミンのような酸又は塩基と反応させることもできる。得られたジアステレオ異性体の混合物を、クロマトグラフィー及び/又は分別結晶化によって分離し、そのジアステレオ異性体の一方又は両方を、当業者に周知の手段により、対応する純粋な鏡像異性体に変換することもできる
【0157】
不斉樹脂上におけるクロマトグラフィー、通常はHPLCを、炭化水素、通常は、0〜50%のイソプロパノール、通常は2〜20%、及び0〜5%のアルキルアミン、通常は0.1%のジエチルアミンを含むヘプタン又はヘキサンからなる移動相に用いて、本発明のキラル化合物(及びそのキラル前駆体)を鏡像異性的に濃縮された形態で得ることもできる。溶離液を濃縮すると、濃縮された混合物が得られる。
【0158】
立体異性複合体は、当業者に公知の慣用の技術により分離することができる。例えば、E L Elielによる「Stereochemistry of Organic Compounds」(Wiley,New York,1994)を参照されたい。
【0159】
本発明は、1個以上の原子が同じ原子番号を有するが、自然に通常に見られる原子質量又は質量数とは異なる原子質量又は質量数を有する原子に置換されている、薬学的に許容される同位体標識された式(I)の化合物の全てを包含する。本発明の化合物中に含まれるために適切な同位体の具体例には、H及びHのような水素の同位体、11C、13C及び14Cのような炭素の同位体、36Clのような塩素の同位体、18Fのようなフッ素の同位体、123I及び125Iのようなヨウ素の同位体、13N及び15Nのような窒素の同位体、15O、17O及び18Oのような酸素の同位体、32Pのようなリンの同位体並びに35Sのようなイオウの同位体が含まれる。特定の同位体標識された式(I)の化合物、例えば、放射性同位体を含むものは、特に、薬物及び/又は基質組織分布研究において有用である。放射性同位体のトリチウム、すなわち、H及び炭素−14、すなわち、14Cは、導入の容易さ及び検出の迅速な手段である点において、この目的のために特に有用である。重水素、すなわち、Hのような重同位体による置換は、より大きな代謝安定性、例えば、高い生体内半減期又は低い用量要求から生じるある種の治療的利点をもたらすので、ある状況においては好ましい。11C、18F、15O及び13Nのような陽電子放出同位体による置換は、基質受容体占有率を調べるための陽電子放出断層撮影法(PET)研究において有用であり得る。一般に、当業者に公知の慣用技術により、又は前に用いられていた非標識試薬の代わりに適切な同位体標識試薬を用いる、添付の実施例及び調製に記載の方法と同様の方法により、同位体標識された式(I)の化合物を製造することができる。
【0160】
本発明による薬学的に許容される溶媒和物には、結晶化の溶媒が同位体置換されていてもよい、例えばDO、d−アセトン、d−DMSOであるものが含まれる。
【0161】
医薬用途用の本発明の化合物を、結晶又は非晶質生成物として投与することができる。これらは、沈殿、結晶化、凍結乾燥又は噴霧乾燥又は蒸発乾燥のような方法により、例えば、固体プラグ、粉末又はフィルムとして得ることができる。マイクロ波又は高周波乾燥を、この目的のために用いてもよい。
【0162】
これらは、単独でも、本発明の1種以上の他の化合物と組み合わせて、もしくは1種又は複数の他の薬物と組み合わせても(又はこれらの任意の組合せでも)投与することができる。通常は、これらを、1種以上の複数の薬学的に許容される賦形剤を伴う製剤として投与する。本明細書において、「賦形剤」なる用語は、本発明の化合物以外の任意の成分を記載するために用いられる。賦形剤の選択は、大部分、特定の投与方法、可溶性及び安定性に関する賦形剤の作用及び剤形の性質のような因子に依存するであろう。
【0163】
本発明の化合物を送達するために適切な医薬組成物及びその製造方法は、当業者であれば容易に分かるであろう。このような組成物及びそれらを製造するための方法は、例えば、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」、第19版(Mack Publishing Company,1995)に見ることができる。
【0164】
経口投与
本発明の化合物は、経口的に投与することができる。経口投与は、化合物が胃腸管に入るような嚥下を含んでもよく、化合物が口腔から血流に直接入る頬又は舌下投与を用いることができる。
【0165】
経口投与に適している製剤には、錠剤、微粒子、液体又は粉末を含むカプセル、薬用キャンディー(液体充填を含む)、チューイングガム、マルチ−及びナノ粒子、ゲル、固溶体、リポソーム、フィルム(ムコ接着剤を含む)、小卵剤のような固体製剤、スプレー及び液体製剤が含まれる。
【0166】
液体製剤には、懸濁剤、液剤、シロップ及びエリキシルが含まれる。このような製剤は、軟質又は硬質カプセル中の充填材として用いることができ、通常は、担体、例えば水、EtOH、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、メチルセルロース又は適切な油並びに1種以上以上の乳化剤及び/又は懸濁剤を含む。液体製剤は、固体を再構成することにより、例えばサシェから調製することもできる。
【0167】
本発明の化合物は、Liang及びChenによるExpert Opinion in Therapeutic Patents,11(6),981−986(2001)に記載されているもののような、高速溶解、高速崩壊投与形態で用いることもできる。
【0168】
錠剤投与形態のためには、用量に応じて、薬物は、投与形態の1重量%〜80重量%、更に通常には投与形態の5重量%〜60重量%を構成していてもよい。薬物の他に、錠剤は、通常、崩壊剤を含有する。崩壊剤の具体例には、デンプングリコール酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルシウムカルボキシメチルセルロース、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、微結晶性セルロース、低級アルキル置換ヒドロキシプロピルセルロース、デンプン、α化デンプン及びアルギン酸ナトリウムが含まれる。通常、崩壊剤は、投与形態の1重量%〜25重量%、好ましくは5重量%〜20重量%を構成している。
【0169】
通常錠剤製剤に粘着性を付与するためにはバインダーが用いられる。適切なバインダーには、微結晶性セルロース、ゼラチン、糖類、ポリエチレングリコール、天然及び合成ゴム、ポリビニルピロリドン、α化デンプン、ヒドロキシプロピルセルロース及びヒドロキシプロピルメチルセルロースが含まれる。錠剤は、更に、乳糖(一水和物、噴霧乾燥一水和物、無水物等)、マンニトール、キシリトール、デキストロース、スクロース、ソルビトール、微結晶性セルロース、デンプン及び二塩基性リン酸カルシウム二水和物のような希釈剤を含んでいてもよい。
【0170】
錠剤は、ラウリル硫酸ナトリウム及びポリソルベート80のような界面活性剤並びに二酸化ケイ素及びタルクなどの流動促進剤を含んでもよい。存在する場合には、界面活性剤は、錠剤の0.2重量%〜5重量%含まれていてもよく、流動促進剤は、錠剤の0.2重量%〜1重量%含まれていてもよい。
【0171】
更に、錠剤は、通常、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリルフマル酸ナトリウム及びステアリン酸マグネシウムとラウリル硫酸ナトリウムとの混合物のような滑沢剤を含む。滑沢剤は、通常、錠剤の0.25重量%〜10重量%、好ましくは0.5重量%〜3重量%含まれていてもよい。
【0172】
他の可能な成分には、抗酸化剤、着色剤、香料、防腐剤及び矯味剤が含まれる。
【0173】
具体的な錠剤は、約80%以下の薬物、約10重量%〜約90重量%のバインダー、約0重量%〜約85重量%の希釈剤、約2重量%〜約10重量%の崩壊剤及び約0.25重量%〜約10重量%の滑沢剤を含有する。
【0174】
錠剤ブレンドを、直接又はローラーにより圧縮して、錠剤を成形することができる。又は、錠剤ブレンド又はブレンドの一部を湿潤、乾燥又は溶融顆粒化するか、溶融凝固させるか、押し出し、その後に錠剤化することができる。最終製剤は、1個以上の層を含み、コーティングされていても、コーティングされていなくてもよい。これを、更に、カプセル封入することもできる。
【0175】
錠剤の形成は、H.Lieberman and L.Lachmanによる「Pharmaceutical Dosage Forms:Tablets,Vol.1」,Marcel Dekker,N.Y.,N.Y.,1980(ISBN 0−8247−6918−X)で議論されている。
【0176】
経口投与のための固体製剤を、即時及び/又は修飾制御放出であるように製剤化することもできる。修飾放出製剤には、遅延放出、持続放出、拍動放出、制御放出、ターゲット放出及びプログラム放出が含まれる。
【0177】
本発明の目的に適している修飾放出製剤は、米国特許第6,106,864号に開示されている。高エネルギー分散液及び浸透性コーティングされた粒子のような他の適切な放出技術の詳細は、Verma et al,Pharmaceutical Technology On−line,25(2),1−14(2001)に見ることができる。制御放出を達成するためにチューインガムを用いることは、WO00/35298に開示されている。
【0178】
非経口投与
本発明の化合物は、血流中、筋肉中又は内部器官に直接投与することもできる。非経口投与に適している手段には、静脈内、動脈内、腹腔内、クモ膜下、心室内、尿管内、胸骨内、頭蓋内、筋肉内及び皮下が含まれる。非経口投与のための適切な装置には、針(微細針を含む)注射器、無針注射器及び点滴技術が含まれる。
【0179】
非経口製剤は通常は、塩、炭酸塩及びバッファー(好ましくはpH3〜9に)のような賦形剤を含有してもよい水溶液であるが、いくつかの用途については、これらを、更に適切には、無菌非水溶液として、又は無菌の発熱物質不含水のような適切な媒体と共に用いられる粉末乾燥形態として製剤することができる。
【0180】
例えば、凍結乾燥による無菌状態下における非経口製剤の調製は、当業者に周知の標準的な製薬技術を用いて容易に達成することができる。
【0181】
非経口溶液の調製に用いられる式(I)の化合物の可溶性は、可溶性増強剤を導入するなどの適切な製剤技術を用いることによって向上させることができる。無針注射投与で用いるための製剤は、本発明の化合物を粉末化した形態で、無菌の発熱物質不含水のような適切な媒体と共に含有する。
【0182】
非経口投与のための製剤は、即時及び/又は修飾制御放出であるように製剤化することができる。修飾放出製剤には、遅延放出、持続放出、拍動放出、制御放出、ターゲット放出及びプログラム放出が含まれる。本発明の化合物を、活性化合物の修飾放出をもたらす移植された持続性薬剤として投与するための固体、半固体又はチキソトロピー液として製剤化することができる。このような製剤の具体例には、薬物コーティングされたステント及びPGLA微小球が含まれる。
【0183】
局所投与
本発明の化合物は、皮膚又は粘膜に局所的に、すなわち、皮膚に、又は経皮的に投与することもできる。このための通常の製剤には、ゲル、ヒドロゲル、ローション、溶液、クリーム、軟膏、散布剤、包帯、フォーム剤、フィルム剤、皮膚パッチ、ウェハ、インプラント、スポンジ、繊維、帯具及びマイクロエマルションが含まれる。リポソームを用いることもできる。典型的な担体には、アルコール、水、鉱油、液体ワセリン、白色ワセリン、グリセリン、ポリエチレングリコール及びプロピレングリコールが含まれる。透過増強剤を導入してもよい。例えば、Finnin及びMorganによるJ Pharm Sci,88(10),955−958(October 1999)を参照されたい。
【0184】
局所投与の他の手段には、電気穿孔法、イオン導入法、音波泳動法、音泳動法及び微細針又は無針(例えば、Powderject(登録商標)、Bioject(登録商標)等)注射による送達が含まれる。
【0185】
吸入/経鼻投与
本発明の化合物は、鼻腔内又は吸入により、通常は乾燥粉末の形態(単独で、混合物として、例えば乳糖との乾燥ブレンドで、又は混合成分粒子として、例えば、ホスファチジルコリンのようなリン脂質と混合して)で、乾燥粉末吸入器から、又はエアロゾルスプレーとして、加圧容器、ポンプ、スプレー、噴霧器(好ましくは微細な霧を生じさせるために電磁流体力学を用いる噴霧器)又はネブライザから、1,1,1,2−テトラフルオロエタン又は1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパンのような適切な噴射剤を用いて、又は用いずに投与することができる。鼻腔内使用については、粉末は、生体接着剤、例えばキトサン又はシクロデキストリンを含んでもよい。
【0186】
加圧容器、ポンプ、スプレー、噴霧器又はネブライザは、例えば、EtOH、EtOH水溶液又は活性剤の分散、可溶化もしくはその放出の延長に適している別の薬剤、溶媒としての噴射剤並びにトリオレイン酸ソルビタン、オレイン酸又はオリゴ乳酸のような付加的な界面活性剤を含む本発明の化合物の溶液又は懸濁液を含有する。
【0187】
吸入/鼻腔内投与のための製剤は、例えばポリ(DL−乳酸−コグリコール酸)(PGLA)を用いて、即時及び/又は修飾制御放出であるように製剤化することができる。修飾放出製剤には、遅延放出、持続放出、拍動放出、制御放出、ターゲット放出及びプログラム放出が含まれる。
【0188】
乾燥粉末吸入器及びエアロゾルの場合には、投与単位は、計測量を送達するバルブ手段により決定される。本発明による単位は、通常は、1μg〜10mgの式(I)の化合物を含む計測量、又は「パフ」を投与するように設計される。一日の全体用量は、通常は、1μg〜10mgの範囲であり、これを、単回投与で、更に通常には、1日を通して複数回に分けた用量で投与することができる。
【0189】
直腸/膣内投与
本発明の化合物は、直腸又は膣に、例えば、座剤、膣座薬又は浣腸剤の形態で投与することができる。カカオ脂は慣用的な座剤基剤であるが、種々の代替物を適切に用いることができる。
【0190】
他の技術
前記投与方法のいずれかで用いるために、その可溶性、溶解速度、矯味、生物学的利用率及び/又は安定性を改良するため、本発明の化合物を、シクロデキストリン及びその適切な誘導体のような可溶性高分子成分又はポリエチレングリコール−含有ポリマーと組み合わせることができる。
【0191】
例えば、薬物−シクロデキストリン複合体は、通常、多くの投与形態及び投与経路に有用であることがわかっている。包接複合体及び非包接複合体の両方を用いることができる。薬物との直接的な複合体化に代え、シクロデキストリンを補助的添加剤、すなわち、担体、希釈剤又は可溶化剤として用いることができる。これらの目的のために最も一般的に用いられるのは、アルファ−、ベータ−及びガンマ−シクロデキストリンであり、これらの具体例は、WO91/11172、WO94/02518号及びWO98/55148号に見ることができる。
【0192】
投与量
ヒト患者に対する投与については、本発明の化合物の全一日投与量は通常、当然に投与方法に依存し、0.1mg〜3000mg、好ましくは1mg〜500mgの範囲である。例えば、経口投与は、0.1mg〜3000mg、好ましくは1mg〜500mgの全一日投与量を必要とし、静脈投与は、0.1mg〜1000mg、好ましくは0.1mg〜300mgのみを必要とする。全一日投与量を、単回投与で、又は分割投与で投与することができる。
【0193】
これらの投与は、約65kg〜70kgの体重を有する平均的なヒト被験者をベースとしている。医師であれば、乳児及び高齢者のような、この範囲外に体重が該当する被験者に対する投与用量を容易に決定することができるであろう。
【0194】
疑問を回避するために、「治療」に関する本明細書における言及は、治癒的、緩和的及び予防的治療に関する言及を含む。
【0195】
VR1アンタゴニストは、特に疼痛の治療において、他の薬理学的に活性な化合物と、又は2種以上の他の薬理学的に活性な化合物と有用に組み合わせることができる。例えば、前記で定義されたVR1アンタゴニスト、特に式(I)の化合物又は薬学的に許容されるその塩又は溶媒和物を、
・オピオイド鎮痛薬、例えばモルヒネ、ヘロイン、ヒドロモルホン、オキシモルホン、レボルファノール、レバロルファン、メタドン、メペリジン、フェンタニル、コカイン、コデイン、ジヒドロコデイン、オキシコドン、ヒドロコドン、プロポキシフェン、ナルメフェン、ナロルフィン、ナロキソン、ナルトレキソン、ブプレノルフィン、ブトルファノール、ナルブフィン又はペンタゾシン;
・非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)、例えばアスピリン、ジクロフェナク、ジフルシナル、エトドラク、フェンブフェン、フェノプロフェン、フルフェニサル、フルルビプロフェン、イブプロフェン、インドメタシン、ケトプロフェン、ケトロラク、メクロフェナム酸、メフェナム酸、メロキシカム、ナブメトン、ナプロキセン、ニメスリド、ニトロフルルビプロフェン、オルサラジン、オキサプロジン、フェニルブタゾン、ピロキシカム、スルファサラジン、スリンダク、トルメチン又はゾメピラック;
・バルビツレート鎮静剤、例えばアモバルビタール、アプロバルビタール、ブタバルビタール、ブタビタール、メホバルビタール、メタルビタール、メトヘキシタール、ペントバルビタール、フェノバルビタール、セコバルビタール、タルブタール、テアミラル又はチオペンタール;
・鎮静作用を有するベンゾジアゼピン、例えばクロルジアゼポキシド、クロルアゼペート、ジアゼパム、フルラゼパム、ロラゼパム、オキサゼパム、テマゼパム又はトリアゾラム;
・鎮静作用を有するHアンタゴニスト、例えばジフェンヒドラミン、ピリラミン、プロメタジン、クロルフェニラミン又はクロルシクリジン;
・グルテチミド、メプロバメート、メタクワロン又はジクロラルフェナゾンのような鎮静剤;
・骨格筋弛緩剤、例えばバクロフェン、カリソプロドール、クロルゾキサゾン、シクロベンザプリン、メトカルバモール又はオルフレナジン;
・NMDA受容体アンタゴニスト、例えばデキストロメトルファン((+)−3−ヒドロキシ−N−メチルモルフィナン)又はその代謝産物デキストロルファン((+)−3−ヒドロキシ−N−メチルモルフィナン)、ケタミン、メマンチン、ピロロキノリンキニン、シス−4−(ホスホノメチル)−2−ピペリジンカルボン酸、ブジピン、EN−3231(MorphiDex(登録商標)、モルヒネ及びデキストロメトルファンの組合せ製剤)、トピラメート、ネラメキサン又はNR2Bアンタゴニストを含むペルジンフォテル、例えばイフェンプロジル、トラキソプロジル又は(−)−(R)−6−{2−[4−(3−フルオロフェニル)−4−ヒドロキシ−1−ピペリジニル]−1−ヒドロキシエチル−3,4−ジヒドロ−2(1H)−キノリノン};
α遮断薬、例えばドキサゾシン、タムスロシン、クロニジン、グアンファシン、デキスメタトミジン、モダフィニル又は4−アミノ−6,7−ジメトキシ−2−(5−メタン−スルホンアミド−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノール−2−イル)−5−(2−ピリジル)キナゾリン;
・三環式抗うつ薬、例えばデシプラミン、イミプラミン、アミトリプチリン又はノルトリプチリン;
・抗痙攣薬、例えばカルバマゼピン、ラモトリギン、トピラトメート又はバルプロエート;
・タキキニン(NK)アンタゴニスト、特にNK−3、NK−2又はNK−1アンタゴニスト、例えば(αR,9R)−7−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)ベンジル]−8,9,10,11−テトラヒドロ−9−メチル−5−(4−メチルフェニル)−7H−[1,4]ジアゾシノ[2,1−g][1,7]−ナフチリジン−6−13−ジオン(TAK−637)、5−[[(2R,3S)−2−[(1R)−1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エトキシ−3−(4−フルオロフェニル)−4−モルホリニル]−メチル]−1,2−ジヒドロ−3H−1,2,4−トリアゾール−3−オン(MK−869)、アプレピタント、ラネピタント、ダピタント又は3−[[2−メトキシ−5−(トリフルオロメトキシ)フェニル]−メチルアミノ]−2−フェニルピペリジン(2S,3S);
・ムスカリン様アンタゴニスト、例えばオキシブチニン、トルテロジン、プロピベリン、塩化トロプシウム、ダリフェナシン、ソリフェナシン、テミベリン及びイプラトロピウム;
・COX−2選択的阻害剤、例えば、セレコキシブ、ロフェコキシブ、パレコキシブ、バルデコキシブ、デラコキシブ、エトリコキシブ又はルミラコキシブ;
・コールタール鎮痛薬、特にパラセタモール;
・ドロペリドール、クロルプロマジン、ハロペリドール、ペルフェナジン、チオリダジン、メソリダジン、トリフルオペラジン、フルフェナジン、クロザピン、オランザピン、リスペリドン、ジプラシドン、ケチアピン、セルチンドール、アリピプラゾール、ソネピプラゾール、ブロナンセリン、イロペリドン、ペロスピロン、ラクロプリド、ゾテピン、ビフェプルノックス、アセナピン、ルラシドン、アミスルプリド、バラペリドン、パリンドール、エプリバンセリン、オサネタント、リモナバント、メクリネルタント、Miraxion(登録商標)又はサリゾタンのような神経弛緩剤;
・バニロイド受容体アゴニスト(例えばレシンフェラトキシン)又はアンタゴニスト(例えばカプサゼピン);
・プロプラノロールのようなベータ遮断薬;
・メキシレチンのような局所麻酔薬;
・デキサメタゾンのようなコルチコステロイド;
・5−HT受容体アゴニスト又はアンタゴニスト、特に、エレトリプタン、スマトリプタン、ナラトリプタン、ゾルミトリプタン又はリザトリプタンのような5−HT1B/1Dアゴニスト;
・R(+)−アルファ−(2,3−ジメトキシ−フェニル)−1−[2−(4−フルオロフェニルエチル)]−4−ピペリジンメタノール(MDL−100907)のような5−HT2A受容体アンタゴニスト;
・イスプロニクリン(TC−1734)、(E)−N−メチル−4−(3−ピリジニル)−3−ブテン−1−アミン(RJR−2403)、(R)−5−(2−アゼチジニルメトキシ)−2−クロロピリジン(ABT−594)又はニコチンのようなコリン作動性(ニコチン様)鎮痛薬;
Tramadol(登録商標);
・5−[2−エトキシ−5−(4−メチル−1−ピペラジニル−スルホニル)フェニル]−1−メチル−3−n−プロピル−1,6−ジヒドロ−7H−ピラゾロ[4,3−d]ピリミジン−7−オン(シルデナフィル)、
(6R,12aR)−2,3,6,7,12,12a−ヘキサヒドロ−2−メチル−6−(3,4−メチレンジオキシフェニル)−ピラジノ[2’,1’:6,1]−ピリド[3,4−b]インドール−1,4−ジオン(IC−351又はタダラフィル)、
2−[2−エトキシ−5−(4−エチル−ピペラジン−1−イル−1−スルホニル)−フェニル]−5−メチル−7−プロピル−3H−イミダゾ[5,1−f][1,2,4]トリアジン−4−オン(バルデナフィル)、
5−(5−アセチル−2−ブトキシ−3−ピリジニル)−3−エチル−2−(1−エチル−3−アゼチジニル)−2,6−ジヒドロ−7H−ピラゾロ[4,3−d]ピリミジン−7−オン、
5−(5−アセチル−2−プロポキシ−3−ピリジニル)−3−エチル−2−(1−イソプロピル−3−アゼチジニル)−2,6−ジヒドロ−7H−ピラゾロ[4,3−d]ピリミジン−7−オン、
5−[2−エトキシ−5−(4−エチルピペラジン−1−イルスルホニル)ピリジン−3−イル]−3−エチル−2−[2−メトキシエチル]−2,6−ジヒドロ−7H−ピラゾロ[4,3−d]ピリミジン−7−オン、
4−[(3−クロロ−4−メトキシベンジル)アミノ]−2−[(2S)−2−(ヒドロキシメチル)ピロリジン−1−イル]−N−(ピリミジン−2−イルメチル)ピリミジン−5−カルボキサミド、
3−(1−メチル−7−オキソ−3−プロピル−6,7−ジヒドロ−1H−ピラゾロ[4,3−d]ピリミジン−5−イル)−N−[2−(1−メチルピロリジン−2−イル)エチル]−4−プロポキシベンゼンスルホンアミドのようなPDEV阻害剤;
・ガバペンチン、プレガバリン、3−メチルガバペンチン、
(1α,3α,5α)(3−アミノ−メチル−ビシクロ[3.2.0]ヘプト−3−イル)−酢酸、
(3S,5R)−3−アミノメチル−5−メチル−ヘプタン酸、
(3S,5R)−3−アミノ−5−メチル−ヘプタン酸、
(3S,5R)−3−アミノ−5−メチル−オクタン酸、
(2S,4S)−4−(3−クロロフェノキシ)プロリン、
(2S,4S)−4−(3−フルオロベンジル)−プロリン、
[(1R,5R,6S)−6−(アミノメチル)ビシクロ[3.2.0]ヘプト−6−イル]酢酸、
3−(1−アミノメチル−シクロヘキシルメチル)−4H−[1,2,4]オキサジアゾール−5−オン、
C−[1−(1H−テトラゾール−5−イルメチル)−シクロヘプチル]−メチルアミン、
(3S,4S)−(1−アミノメチル−3,4−ジメチル−シクロペンチル)−酢酸、
(3S,5R)−3−アミノメチル−5−メチル−オクタン酸、
(3S,5R)−3−アミノ−5−メチル−ノナン酸、
(3S,5R)−3−アミノ−5−メチル−オクタン酸、
(3R,4R,5R)−3−アミノ−4,5−ジメチル−ヘプタン酸、
(3R,4R,5R)−3−アミノ−4,5−ジメチル−オクタン酸、
(2S)−2−アミノ−4−エチル−2−メチルヘキサン酸及び
(2S)−2−アミノメチル−5−エチル−ヘプタン酸のようなアルファ−2−デルタリガンド;
・カンナビノイド;
・代謝共役型グルタメートサブタイプ1受容体(mGluR1)アンタゴニスト;
・セルトラリン、セルトラリン代謝産物デメチルセルトラリン、フルオキセチン、ノルフルオキセチン(フルオキセチンデスメチル代謝産物)、フルボキサミン、パロキセチン、シタロプラム、シタロプラム代謝産物デスメチルシタロプラム、エスシタロプラム、d,l−フェンフルラミン、フェモキセチン、イフォキセチン、シアノドチエピン、リトキセチン、ダポキセチン、ネファゾドン、セリクラミン及びトラゾドンのようなセロトニン再取り込み阻害剤;
・マプロチリン、ロフェプラミン、ミトラゼピン、オキサプロチリン、フェゾラミン、トモキセチン、ミアンセリン、ブプロプリオン、ブプロプリオン代謝産物ヒドロキシブプロプリオン、ノミフェンシン及びビロキサジン(Vivalan(登録商標))のようなノルアドレナリン(ノルエピネフリン)再取り込み阻害剤、特にレボキセチン、特に(S,S)−レボキセチンのような選択的ノルアドレナリン再取り込み阻害剤;
・ベンラファキシン、ベンラファキシン代謝産物O−デスメチルベンラファキシン、クロミプラミン、クロミプラミン代謝産物デスメチルクロミプラミン、ズロキセチン、ミルナシプラン及びイミプラミンのような二重セロトニン−ノルアドレナリン再取り込み阻害剤;
・S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−L−ホモシステイン、
S−[2−[(1−イミノエチル)−アミノ]エチル]−4,4−ジオキソ−L−システイン、
・S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システイン、
・(2S,5Z)−2−アミノ−2−メチル−7−[(1−イミノエチル)アミノ]−5−ヘプテン酸、
・2−[[(1R,3S)−3−アミノ−4−ヒドロキシ−1−(5−チアゾリル)−ブチル]チオ]−5−クロロ−3−ピリジンカルボニトリル、
・2−[[(1R,3S)−3−アミノ−4−ヒドロキシ−1−(5−チアゾリル)ブチル]チオ]−4−クロロベンゾニトリル、
・(2S,4R)−2−アミノ−4−[[2−クロロ−5−(トリフルオロメチル)フェニル]チオ]−5−チアゾールブタノール、
・2−[[(1R,3S)−3−アミノ−4−ヒドロキシ−1−(5−チアゾリル)ブチル]チオ]−6−(トリフルオロメチル)−3ピリジンカルボニトリル、
・2−[[(1R,3S)−3−アミノ−4−ヒドロキシ−1−(5−チアゾリル)ブチル]チオ]−5−クロロベンゾニトリル、
・N−[4−[2−(3−クロロベンジルアミノ)エチル]フェニル]チオフェン−2−カルボキサミジン、又は
グアニジノエチルジスルフィドのような誘発性酸化窒素シンターゼ(iNOS)阻害剤;
・ドネペジルのようなアセチルコリンエステラーゼ阻害剤;
・N−[({2−[4−(2−エチル−4,6−ジメチル−1H−イミダゾ[4,5−c]ピリジン−1−イル)フェニル]エチル}アミノ)カルボニル]−4−メチルベンゼンスルホンアミド、又は
4−[(1S)−1−({[5−クロロ−2−(3−フルオロフェノキシ)ピリジン−3−イル]カルボニル}アミノ)エチル]安息香酸のようなプロスタグランジンEサブタイプ4(EP4)アンタゴニスト;
・1−(3−ビフェニル−4−イルメチル−4−ヒドロキシ−クロマン−7−イル)−シクロペンタンカルボン酸(CP−105696)、5−[2−(2−カルボキシエチル)−3−[6−(4−メトキシフェニル)−5E−ヘキセニル]オキシフェノキシ]−吉草酸(ONO−4057)又はDPC−11870のようなのロイコトリエンB4アンタゴニスト;
・ジレウトン、6−[(3−フルオロ−5−[4−メトキシ−3,4,5,6−テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イル])フェノキシ−メチル]−1−メチル−2−キノロン(ZD−2138)又は2,3,5−トリメチル−6−(3−ピリジルメチル)、1,4−ベンゾキノン(CV−6504)のような5−リポキシゲナーゼ阻害剤;
・リドカインのようなナトリウムチャンネル遮断薬;
・オンダンセトロンのような5−HT3アンタゴニスト、
薬学的に許容されるそれらの塩及び溶媒和物から選択される1種以上の薬剤と組み合わせて、同時に、連続して、又は別々に投与することができる。
【0196】
例えば、特定の疾患又は病状状態を治療する目的で、活性化合物の組合せを投与することが望ましい場合、少なくともそのうちの1種が本発明の化合物を含む2種以上の医薬組成物を都合よく、それらの組成物を同時に投与するために適切なキットの形態に組み合わせることができることは、本発明の範囲内である。
【0197】
従って、本発明のキットは、そのうちの少なくとも1種が本発明による式(I)の化合物を含む2種以上の別個の医薬組成物並びに容器、別個の瓶又は別個のホイルパケットのような前記組成物を別個に保持するための手段を含む。このようなキットの具体例は、錠剤、カプセル等を包装するために用いられる通常のブリスターパックである。
【0198】
本発明のキットは、別の投与形態、例えば経口及び非経口的に投与するために、別個の組成物を別個の投与間隔で投与するために、又は相互に別個の組成物の用量を漸増するために特に適している。服薬遵守を補助するために、キットは通常は、投与説明書を含み、いわゆる記憶補助体と共に提供され得る。
【0199】
実施例
本発明を、以下の非限定的実施例において説明するが、本明細書では、他に記載のない限り、操作は、全て、室温又は周囲温度、すなわち18〜25℃の範囲で実施し;溶媒の蒸発は、60℃以下の浴温度で減圧下にロータリーエバポレータを用いて実施し;反応を薄層クロマトグラフィー(TLC)で観察し、反応時間は説明のためにのみ示し;記載されている融点(mp)は修正されておらず(多型性により異なる融点が生じ得る);単離された化合物全ての構造及び純度は以下の技術の少なくとも1種、すなわち、TLC(Merckシリカゲル60F254プレコーティングTLCプレート)、質量分析、核磁気共鳴スペクトル(NMR)、赤外吸収スペクトル(IR)又は微量分析により評価した。収率は、説明の目的でのみ示されている。フラッシュカラムクロマトグラフィーを、Merckシリカゲル60(230〜400メッシュASTM)又はFuji Silysiaアミノ結合シリカ(Chromatorex、30〜50μM)又はBiotageアミノ結合シリカ(35〜75μm、KP−NH)又はBiotageシリカ(32〜63μm、KP−Sil)を用いて実施した。HPLCを用いた精製は、以下の装置及び条件により実施した。装置:UVトリガー分取HPLC系、Waters(カラム:XTerra MS C18、5μm、19×50mm又は30×50mm)、検出器:UV254nm条件:CHCN/0.05%HCOOH水溶液又はCHCN/0.01%NH水溶液;周囲温度で20mL/分(19×50mm)又は40mL/分(30×50mm)。反応において用いられるマイクロ波装置は、Emrysオプティマイザ(Personal chemistry)であった。光学回転をP−1020(Jasco)により測定した。低解像度質量スペクトルデータ(EI)を、Integrity(Waters)質量分析計により得た。低解像度質量スペクトルデータ(ESI)を、ZMD(Micromass)質量分析計で得た。他に記載のない限り、溶媒として重水素化クロロホルム(D99.8%)又はDMSO(D99.9%)を用いて、内部標準としてのテトラメチルシラン(TMS)と比較して、NMRデータを270MHz(JEOL JNMLA270分光計)又は300MHz(JEOL JNMLA300分光計)により、百万分率(ppm)で測定した;用いられる慣用の略語は:s=一重項、d=二重項、t=三重項、q=四重項、quint=五重項、m=多重項、br.=ブロード等である。IRスペクトルを、Shimazu赤外分光計(IR−470)により測定した。化学記号は、その通常の意味を有する;bp(沸点)、mp(融点)、L(リットル)、ml(ミリリットル)、g(グラム)、mg(ミリグラム)、mol(モル)、mmol(ミリモル)、eq.(等量)、quant.(定量的収率)、sat.(飽和)、aq(水性)。以下の実施例においては、「Me」なる用語はメチルを、「Et」なる用語はエチルを意味する。
【0200】
製造
アミン類
以下の実施例において用いられるアミンは、フリー化合物又は塩として、以下の方法により製造した。
【0201】
アミン1:[(6−メチルピリジン−3−イル)メチル]アミン塩酸塩
欧州特許出願第1108711号、2001年6月20日に開示された方法により、標題の化合物を合成した。
【0202】
アミン2:1−(6−メチルピリジン−3−イル)エタンアミン塩酸塩
日本化学雑誌(1962),83,218−222に開示された方法により、標題の化合物を合成した。
【0203】
アミン2’:(1R)−1−(6−メチルピリジン−3−イル)エタンアミン塩酸塩
N−メトキシ−N−6−ジメチルニコチンアミド
1A) N,O−ジメチルヒドロキシルアミン(5350mg,87.5ミリモル)のDMF(300mL)溶液に、6−メチルニコチン酸(10000mg,72.9ミリモル)、HBTU(33200mg,87.5ミリモル)及びトリエチルアミン(22100mg)を加え、混合物を室温で12時間撹拌した。水で反応を停止し、生成物をEtOAcで抽出した。次いで、濃縮し、酢酸エチル/ヘキサン(1/1)で溶出するシリカゲルカラムクロマトグラフィーによる精製により標題の化合物(13141mg,53%)を白色固体として得た。
【0204】
1−(6−メチルピリジン−3−イル)エタノン塩酸塩
1B) 0℃で、生成物のTHF(300mL)溶液に、臭化メチルマグネシウム(96mL,76.6ミリモル)の0.8Mヘキサン溶液を加え、混合物を室温で16時間撹拌した。次いで、塩化アンモニウム水溶液で反応を停止し、生成物をAcOEtで抽出し、食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した。次いで、減圧下に濃縮して1−(6−メチルピリジン−3−イル)エタノンを得た。1−(6−メチルピリジン−3−イル)エタノン(2.1g,15.5ミリモル)のTHF(25mL)溶液に、(R)−(+)−2−メチル−2−プロパンスルフィニルアミド(2.26g,18.6ミリモル)及びチタン(IV)エトキシド(25mL)を加え、混合物を70℃で24時間撹拌した。次いで、混合物を0℃に冷却し、水素化ホウ素ナトリウム(2060mg,54ミリモル)を加えた。2時間撹拌した後、室温で1時間撹拌しながら、混合物に水及びEtOHを加えた。ろ過し、濃縮し、N−[(1R)−1−(6−メチルピリジン−3−イル)エチル]−2−メチルプロパン−2−スルフィンアミドを得、室温で、塩酸−MeOH(2.0M,15.0mL)及び1,4−ジオキサン(15.0mL)で1時間30分処理した。次いで、反応混合物を濃縮し、ジエチルエーテルを加えて沈殿を形成させ、この沈殿を集め、ジエチルエーテルで洗浄し、(1R)−1−(6−メチルピリジン−3−イル)エタンアミン塩酸塩を得た(2.12g,28%)。MS(ESI)m/z 161(M−H)
【0205】
アミン3:(1R)−1−(5−クロロ−6−メチルピリジン−3−イル)エタンアミン塩酸塩
工程3A)ジメチル(5−アセチル−3−クロロピリジン−2−イル)マロネート
マロン酸ジメチル(4.69g,35.5ミリモル)をDMSO(24.0mL)に溶解した。0℃で、この溶液に、70%NaH(1.33g,33.2ミリモル)を加えた。得られた混合物を室温まで加温し、次いで同じ温度で40分間撹拌した。室温で、この溶液に、1−(5,6−ジクロロピリジン−3−イル)エタノン(Tetrahedron 1992,48,9233−9236.,4.50g,23.7ミリモル)を加え、得られた混合物を100℃で4時間撹拌した。混合物を、EtO及び水で分配した。有機層を水及び食塩水で洗浄し、NaSOで乾燥し、次いで、濃縮し、褐色のシロップを得た。粗材料をSiOカラムクロマトグラフィー(100g、EtOAc/ヘキサン(1/2))により精製し、標題の化合物を黄色の油状物質として得た(2.18g,32%)。H NMR(300 MHz,CDCl)δ2.64(3H,s),3.83(6H,s),5.31(1H,s),8.26(1H,s),9.02(1H,s)。
【0206】
工程3B)1−(5−クロロ−6−メチルピリジン−3−イル)エタノン
ジメチル(5−アセチル−3−クロロピリジン−2−イル)マロネート(2.18g,7.63ミリモル)及び48%HBr水溶液(10.0mL)の混合物を120℃で1.5時間撹拌した。NaHCOの飽和水溶液を加えることにより、混合物を中和した。混合物をEtOAcで抽出した。有機層を食塩水で洗浄し、NaSOで乾燥し、濃縮し、標題の化合物をわずかに黄色の固体として得た(810mg,63%)。H NMR(300MHz,CDCl)δ2.62(3H,s),2.71(6H,s),8.17(1H,s),8.92(1H,s)。
【0207】
工程3C)(1R)−1−(5−クロロ−6−メチルピリジン−3−イル)エタンアミン塩酸塩
1−(6−メチルピリジン−3−イル)エタノンに代え、1−(5−クロロ−6−メチルピリジン−3−イル)エタノンを用い、アミン2’の実施例の工程1Bのための手段により、標題の化合物を製造した。H NMR(300MHz,CDCl)δ1.66(3H,d,J=6.6Hz),2.54(3H,s),4.47(1H,m),7.95(1H,s),8.50(1H,s),MS(ESI)m/z 171(M+H)
【0208】
アミン4:(1R)−1−(6−メチルピリジン−3−イル)エタンアミン塩酸塩
1−(6−メチルピリジン−3−イル)エタノンに代え、1−[6−(ヒドロキシメチル)ピリジン−3−イル]エタノン(日本国特開昭43−000518号公報(1968)、1968年1月9日)を用い、アミン2’の工程1Bのための類似の手段により、標題の化合物を製造した。所望の化合物は、黄色の油状物質として100%で得られた。189(M+H)
【0209】
アミン5:(1R)−1−(6−メチルピリジン−3−イル)プロパン−1−アミン塩酸塩
工程5A)1−(6−メチルピリジン−3−イル)プロパン−1−オン
臭化メチルマグネシウムに代え、塩化エチルマグネシウムを用い、アミン2’の工程1Aのための手段に類似する手段により標題の化合物を製造した。所望の化合物は、シリカゲルクロマトグラフィー(溶出液としてヘキサン:AcOEt=70:30〜50:50)の後、61%の収率で、淡黄色の油状物質として得られた。H NMR(300MHz,CDCl)δ1.24(3H,t,J=6.0Hz),2.63(3H,s),3.01(2H,q,J=6.0Hz),7.27(1H,d,J=6.0Hz),8.13−8.16(1H,m),9.07(1H,s)。MS(ESI)m/z 150(M+H)
【0210】
工程5B)(S)−2−メチル−N−((R)−1−(6−メチルピリジン−3−イル)プロピル)プロパン−2−スルフィンアミド
1−(6−メチルピリジン−3−イル)エタノンに代え、1−(6−メチルピリジン−3−イル)プロパン−1−オンを用い、アミン2’の工程1Bのための手段と同一の手段により標題の化合物を製造した。所望の化合物は、シリカゲルクロマトグラフィー(溶出液としてCHCl:MeOH=50:1〜30:1)の後、85%の収率で、淡黄色の油状物質として得られた。H NMR(300MHz,CDCl)δ0.87(3H,t,J=6.0Hz),1.23(9H,s),1.73−1.90(2H,m),2.75(3H,s),3.47(1H,d,J=3.0Hz),4.30(1H,q,J=6.6Hz),7.37(1H,d,J=6.0Hz),7.82−7.86(1H,m),8.70(1H,s)。MS(ESI)m/z 253(M−H),255(M+H)。ジアステレオマー比は、以下のシグナル、すなわちδ7.82−7.86(主要,1H),7.72−7.76(微量,0.18H)のH NMRにより、85:15と決定した。
【0211】
工程5C)(R)−1−(6−メチルピリジン−3−イル)プロパン−1−アミン塩酸塩
アミン2’の工程1Bのための一般的手段に従うことにより標題の化合物を得、所望の生成物を白色固体として72%収率で得た。H NMR(300MHz,DMSO−d)δ0.78(3H,t,J=6.0Hz),1.89−2.04(2H,m),2.66(3H,s),4.35(1H,brs),7.77(1H,d,J=9.0Hz),8.28−8.37(1H,m),8.73(3H.brs),8.82(1H,s)。MS(ESI)m/z 151(M+H)
【0212】
アミン6:(1R)−1−ピリジン−4−イルエタンアミン塩酸塩
WO2003076440 A1に開示された手段に従い、標題の化合物を製造した。
【0213】
アミン7:1−(2−メトキシピリジン−4−イル)メタンアミン
標題の化合物を、化学製品から商業的に入手した。
【0214】
アミン8:(1R)−1−(2−メチルピリジン−4−イル)エタンアミン塩酸塩
WO2003076440 A1に開示された手段に従い、標題の化合物を製造した。
【0215】
アミン9:1−(2,5−ジメチルピリジン−4−イル)メタンアミン塩酸塩
2,5−ジメチルイソニコチノニトリル(500mg,3.78ミリモル,Chemical & Pharmaceutical Bulletin,1966,14(5),518)、炭素上に担持された10%水酸化パラジウム(50mg)及び10%塩酸メタノール溶液(2mL)のメタノール(10mL)中の懸濁液を、水素雰囲気下(4気圧)、室温で2時間撹拌した。触媒をセライトにより除去し、メタノールで洗浄した。ろ液及び洗浄液を一緒にし、濃縮して標題の化合物を白色固体として得た(446mg,56%収率)。H NMR(300MHz,DMSO)δ2.35(3H,s),2.59(3H,s),4.15(2H,brs),7.65(1H,s),8.50(1H,s),8.83(2H,brs)。MS(ESI):m/z 137(M+H)
【0216】
カルボン酸
以下の実施例において用いられるカルボン酸は、以下の方法により製造した。
【0217】
カルボン酸1:6−tert−ブチル−2−ナフトエ酸
メチル6−tert−ブチル−2−ナフトエート
2−ブロモ−6−tert−ブチルナフタレン(980mg,3.72ミリモル)、酢酸パラジウム(84mg,0.37ミリモル)、1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン(153mg,0.37ミリモル)及びトリエチルアミン(1.56mL,11.2ミリモル)のMeOH(6mL)及びDMF(10mL)中の混合物を、バルーンを用いた一酸化炭素ガス圧力の下、80℃で15時間加熱した。室温まで冷却した後、混合物をEtOAc−トルエン(8:1)(160mL)で希釈し、セライトのパッドでろ過した。ろ液及び洗浄液を水、食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下に濃縮して粗生成物を得、ヘキサン/EtOAc(10:1)で溶出するシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、標題の化合物を無色の油状物質として得た(843mg,94%)。H NMR(CDCl):δ1.43(9H,s),3.97(3H,s),7.61−7.67(1H,m),7.79−7.93(3H,m),8.01−8.07(1H,m),8.57(1H,br,s)。
【0218】
6−tert−ブチル−2−ナフトエ酸
メチル6−tert−ブチル−2−ナフトエート(843mg,3.48ミリモル)及び2M水酸化ナトリウム溶液(6.96ミリモル,3.48ミリモル)のMeOH(30mL)中の混合物を、60℃で3時間加熱した。室温まで冷却した後、減圧下に溶媒を蒸発させ、2M塩酸水溶液で残渣をpH2まで酸性化した。水層をEtOAcで抽出し、一緒にした溶液を食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下に濃縮して粗生成物を得、EtOAc及びヘキサンから再結晶し、標題の化合物を白色固体として得た(614mg,77%)。H NMR(DMSO):δ1.39(9H,s),7.70−7.76(1H,m),7.90−8.08(4H,m),8.55(1H,br,s),13.00(1H,br,s)。
【0219】
カルボン酸2:6−tert−ブチルキノリン−2−カルボン酸
6−tert−ブチルキノリン1−オキシド
6−tert−ブチルキノリン(400mg,2.16ミリモル,Journal of the Indian Chemical Society,1998,823)、mCPBA(639mg,2.59ミリモル)のクロロホルム(10mL)中の混合物を室温で2時間撹拌した。混合物を濃縮し、粗残渣をシリカゲル(NHシリカ)カラムクロマトグラフィーに供し、DCM/MeOH(20:1)で溶出し、標題の化合物を淡いオレンジ色の油状物質として得た。(433mg,定量的)。H NMR(300MHz,CDCl)δ1.43(9H,s)7.26−7.30(1H,m),7.73(1H,d,J=8.1Hz),7.78(1H,s),7.85(1H,dd,J=1.5,8.8Hz),8.49(1H,d,J=5.9Hz),8.67(1H,d,J=8.8Hz) MS(ESI):m/z 202(M+H)
【0220】
6−tert−ブチルキノリン−2−カルボニトリル
6−tert−ブチルキノリン1−オキシド(310mg,1.54ミリモル)、トリメチルシリルシアニド(458mg,4.62ミリモル)、トリメチルアミン(312mg,3.08ミリモル)のアセトニトリル(3mL)中の混合物を、マイクロ波照射下、120℃で15分撹拌した。混合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに供し、ヘキサン/EtOAc(20:1)で溶出し、標題の化合物を白色固体として得た(295mg,91%収率)。H NMR(300MHz,CDCl)δ1.44(9H,s),7.68(1H,d,J=8.8Hz),7.79(1H,d,J=2.2Hz),7.94(1H,d,J=2.2,8.8Hz),8.11(1H,d,J=8.8Hz),8.26(1H,d,J=8.8Hz) MS(ESI):m/z 211(M+H)
【0221】
6−tert−ブチルキノリン−2−カルボン酸
6−tert−ブチルキノリン−2−カルボニトリル(295mg,1.40ミリモル)及び2M水酸化ナトリウム水溶液(3mL)のEtOH(4.5mL)中の溶液を、4時間撹拌還流した。混合物を水(10mL)で希釈し、2M塩酸水溶液で中和し、EtOAc(30mL)で抽出した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過し、減圧下に濃縮し、標題の化合物を白色固体として得た(313mg,定量的)。H NMR(300MHz,DMSO−d6)δ1.40(9H,s),7.93−7.97(2H,m),8.01−8.11(2H,m),8.41(1H,d,J=8.1Hz) MS(ESI):m/z 230(M+H)
【0222】
実施例A1〜A6
実施例1:アミン1(100mg,0.44ミリモル)のDMF(30mL)溶液に、カルボン酸1(73mg,0.44ミリモル)、HBTU(178mg,0.47ミリモル)及びトリメチルアミン(1mL)を加え、混合物を室温で3時間撹拌した。水で反応を停止し、生成物をEtOAcで抽出した。次いで、濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、標題の化合物を白色固体として得た(72.9mg,50%)。実施例A2〜A6の化合物は、以下の出発材料、及びスキーム1に記載したような適切な溶媒を用いて、実施例1の方法と同様の方法により製造した。
【0223】
出発材料:
実施例A2:アミン2及びカルボン酸1
実施例A3:アミン2及びカルボン酸1
実施例A4:アミン3及びカルボン酸1
実施例A5:アミン4及びカルボン酸1
実施例A6:アミン5及びカルボン酸1
【0224】
【表3】

【0225】
実施例B1
実施例B1の化合物は、以下の出発材料、及びスキーム1に記載したような適切な溶媒を用いて、実施例A1の方法と同様の方法により製造した。
【0226】
出発材料:
実施例B1:アミン2’及びカルボン酸2
【0227】
【表4】

【0228】
実施例C1〜C4
実施例C1〜C4の化合物は、以下の出発材料、及びスキーム1に記載したような適切な溶媒を用いて、実施例A1の方法と同様の方法により製造した。
【0229】
出発材料:
実施例C1:アミン6及びカルボン酸1
実施例C2:アミン7及びカルボン酸1
実施例C3:アミン8及びカルボン酸1
実施例C4:アミン9及びカルボン酸1
【0230】
【表5】

【0231】
実施例D1〜D2
実施例D1〜D2の化合物は、以下の出発材料、及びスキーム1に記載したような適切な溶媒を用いて、実施例A1の方法と同様の方法により製造した。
【0232】
出発材料:
実施例D1:アミン8及びカルボン酸2
実施例D2:アミン9及びカルボン酸2
【0233】
【表6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】

(式中、AはNであり、AはCRであるか、又はAはCRであり、AはNであり;
、Y及びYは、それぞれ独立してCH又はNであり、Y及びYは、それぞれ独立してCR又はNであるが、ただし、Y、Y、Y、Y及びYの1個がNである場合、他はNでなく;
及びRは、それぞれ独立して水素、ハロゲン、(C−C)アルキル、ハロ(C−C)アルキル又はヒドロキシ(C−C)アルキル、であり;
及びRは、それぞれ独立して水素、ハロゲン、ヒドロキシ、(C−C)アルキル、ヒドロキシ(C−C)アルコキシ、(C−C)アルコキシ−(C−C)アルキル、(C−C)アルコキシ−(C−C)アルコキシ、ハロ(C−C)アルキル、(C−C)アルキルチオ、(C−C)アルキルスルフィニル又は(C−C)アルキルスルホニルであり、
は、ハロゲン、(C−C)アルキル、(C−C)シクロアルキル、ハロ(C−C)アルキル、ヒドロキシ(C−C)アルキル、ハロ(C−C)アルコキシ、ヒドロキシ(C−C)アルコキシ、(C−C)アルコキシ−(C−C)アルキル、(C−C)アルコキシ−(C−C)アルコキシ、ハロ(C−C)アルキルスルホニル、ハロ(C−C)アルキルスルフィニル、ハロ(C−C)アルキルチオ、[(C−C)アルキル]NH−又は[(C−C)アルキル]N−であり;
、R及びRは、それぞれ独立して水素、ハロゲン、(C−C)アルキル、ヒドロキシ(C−C)アルキル又は(C−C)アルコキシである)の化合物、又は薬学的に許容されるその塩又は溶媒和物。
【請求項2】
及びRが、それぞれ独立して水素、(C−C)アルキル又はヒドロキシ(C−C)アルキルであり;
及びRが、それぞれ独立して水素、ハロゲン、ヒドロキシ、(C−C)アルキル、ヒドロキシ(C−C)アルコキシ又はハロ(C−C)アルキルであり;
が、ハロゲン、(C−C)アルキル、(C−C)シクロアルキル、ハロ(C−C)アルキル、ヒドロキシ(C−C)アルキル、ハロ(C−C)アルコキシ、ハロ(C−C)アルキルスルホニル、ハロ(C−C)アルキルスルフィニル又はハロ(C−C)アルキルチオであり;
、R及びRが、それぞれ独立して水素、ハロゲン、(C−C)アルキル、ヒドロキシ(C−C)アルキル又は(C−C)アルコキシである、請求項1記載の化合物、又は薬学的に許容されるその塩又は溶媒和物。
【請求項3】
及びRが、それぞれ独立して水素、(C−C)アルキル又はヒドロキシ(C−C)アルキルであり;
及びRが、それぞれ独立して水素又はハロゲンであり;
が、ハロゲン、(C−C)アルキル、(C−C)シクロアルキル、ハロ(C−C)アルキル、ヒドロキシ(C−C)アルキル、ハロ(C−C)アルコキシ、ハロ(C−C)アルキルスルホニル又はハロ(C−C)アルキルスルフィニルであり;
、R及びRが、それぞれ独立して水素、ハロゲン、(C−C)アルキル、ヒドロキシ(C−C)アルキル又は(C−C)アルコキシである、請求項1記載の化合物、又は薬学的に許容されるその塩又は溶媒和物。
【請求項4】
及びRが、それぞれ独立して水素、(C−C)アルキル、ハロ(C−C)アルキル又はヒドロキシ(C−C)アルキルであり;
及びRが、それぞれ独立して水素又はハロゲンであり;
が、(C−C)アルキル又はハロ(C−C)アルキルであり;
、R及びRが、それぞれ独立して水素、ハロゲン、(C−C)アルキル、ヒドロキシ(C−C)アルキル又は(C−C)アルコキシである、請求項1記載の化合物、又は薬学的に許容されるその塩又は溶媒和物。
【請求項5】
、Y及びYがCHであり、Y及びYがCRであり;
がNであり、Y及びYがCHであり、Y及びYがCRであり;
がNであり、Y及びYがCHであり、Y及びYがCRであり;又は
がNであり、Y、Y及びYがCHであり、YがCRである、請求項1〜4のいずれか1項記載の化合物、又は薬学的に許容されるその塩又は溶媒和物。
【請求項6】
が、(C−C)アルキル又はハロ(C−C)アルキルである、請求項1〜5のいずれか1項記載の化合物、又は薬学的に許容されるその塩又は溶媒和物。
【請求項7】
が、tert−ブチル、2,2,2−トリフルオロ−1,1−ジメチルエチル又はトリフルオロメチルである、請求項1〜6のいずれか1項記載の化合物、又は薬学的に許容されるその塩又は溶媒和物。
【請求項8】
前記化合物が、
6−tert−ブチル−N−[1−(6−メチルピリジン−3−イル)エチル]−2−ナフタミド;
6−tert−ブチル−N−[(1R)−1−(6−メチルピリジン−3−イル)エチル]−2−ナフタミド;
6−tert−ブチル−N−[(1R)−1−(2−メチルピリジン−4−イル)エチル]−2−ナフタミド;
6−tert−ブチル−N−[(2,5−ジメチルピリジン−4−イル)メチル]−2−ナフタミド;及び
6−tert−ブチル−N−[(2,5−ジメチルピリジン−4−イル)メチル]キノリン−2−カルボキサミドからなる群から選択される、請求項1記載の化合物、又は薬学的に許容されるその塩又は溶媒和物。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項記載の式(I)の化合物、又は薬学的に許容されるその塩又は溶媒和物を、薬学的に許容される賦形剤と一緒に含む医薬組成物。
【請求項10】
薬剤として用いるための、請求項1〜8のいずれか1項記載の式(I)の化合物、又は薬学的に許容されるその塩又は溶媒和物。
【請求項11】
VR1アンタゴニストを必要とする疾患を治療するための薬剤を製造するための、請求項1〜9のいずれか1項記載の式(I)の化合物、又は薬学的に許容されるその塩又は溶媒和物、又はその組成物の使用。
【請求項12】
前記疾患が、急性脳虚血、疼痛、慢性疼痛、神経障害性疼痛、炎症性疼痛、ヘルペス後神経痛、神経障害、神経痛、糖尿病性神経障害、HIV関連神経障害、神経損傷、リウマチ様関節炎、骨関節炎疼痛、熱傷、背痛、内臓痛、癌性疼痛、歯痛、頭痛、偏頭痛、手根管症候群、線維筋痛、神経炎、坐骨神経痛、骨盤過敏症、骨盤痛、生理痛;失禁、排尿障害、腎仙痛及び膀胱炎のような膀胱疾患;熱傷、リウマチ様関節炎及び変形性関節症のような炎症;脳卒中、脳卒中後の疼痛及び多発性硬化症のような神経変性疾患;喘息、咳、慢性閉塞性肺疾患(COPD)及び気管支収縮のような肺疾患;胃食道逆流性疾患(GERD)、嚥下障害、潰瘍、過敏性腸症候群(IBS)、炎症性腸疾患(IBD)、大腸炎及びクローン病のような胃腸病;脳血管虚血のような虚血;又は癌化学療法に誘発される嘔吐のような嘔吐及び肥満症から選択される、請求項11記載の使用。
【請求項13】
VR1アンタゴニストを必要とする疾患を治療するために、ヒトを含む哺乳動物を処置する方法であって、有効量の請求項1〜9のいずれか1項記載の式(I)の化合物、又は薬学的に許容されるその塩、溶媒和物又はその組成物で前記哺乳動物を処置することを含む方法。
【請求項14】
請求項1〜8のいずれか1項記載の式(I)の化合物、又は薬学的に許容されるその塩又は溶媒和物と、他の薬学的に活性な物質との組み合わせ。
【請求項15】
請求項1〜8のいずれか1項記載の式(I)の化合物、又は薬学的に許容されるその塩又は溶媒和物と、他の薬学的に活性な薬剤とを含む医薬組成物。

【公表番号】特表2010−503657(P2010−503657A)
【公表日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−527919(P2009−527919)
【出願日】平成19年9月10日(2007.9.10)
【国際出願番号】PCT/IB2007/002694
【国際公開番号】WO2008/032204
【国際公開日】平成20年3月20日(2008.3.20)
【出願人】(000204343)ファイザー株式会社 (38)
【Fターム(参考)】